説明

生体物質測定チップ及びそれを用いた発光測定装置

【課題】スポットと光電子増倍管との位置決め精度を向上させ、感度よくスポットの発光を検出できる生体物質測定チップ及びそれを用いた発光測定装置を提供する。
【解決手段】基板上に生体試料を測定するため測定スポットを連ねた測定スポット列と、
前記測定スポット列の両側に位置あわせスポットを備えた生体物質測定チップを用いた発光測定装置において、前記生体物質測定チップ上の前記測定スポットを検出するための検出手段と、前記検出手段を移動するための移動ステージと、前記位置あわせスポットに光を照射する回転光源と、前記位置あわせスポット上の前記回転光源による光強度分布により中心座標を計算する中心座標演算部と、前記移動ステージを前記測定スポットに移動する際に予め与えられた測定スポットの座標に前記中心座標を加算するステージ制御部とからなる発光測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光標識剤の発光量を測定する生体物質測定チップ及びそれを用いた発光測定装置に関するものである。より詳細には、生体物質測定チップと発光測定装置の位置決め精度を向上する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のDNAマイクロアレイは、基板表面上に光学検出が可能なスポットがマトリックス状に形成されているスポット領域とその近辺に配置された複数の位置マークをCCDカメラによって同時に画像データとして記録し、その画像データ中の位置マークを検出することで、位置マークと相対関係にあるスポット領域の位置ずれを認識し補正している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−172840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、DNAマイクロアレイ上の複数のスポット領域と基準マークとをCCDカメラにて画像取得し個々のスポット領域を判別しているので光の利用効率が悪い。そのため個々のスポットに対応した光電子増倍管を配置すればよいがスポットと光電子増倍管との位置決め精度を良くしないと感度が良くないという課題を有していた。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、スポットと光電子増倍管との位置決め精度を向上させ、感度よくスポットの発光を検出できる生体物質測定チップ及びそれを用いた発光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の生体物質測定チップ及びそれを用いた発光測定装置は、基板上に生体試料を測定するため測定スポットを連ねた測定スポット列と、前記測定スポット列の両側に位置あわせスポットを備えたことを特徴としたものである。
また、本発明の生体物質測定チップ及びそれを用いた発光測定装置は、請求項1に記載の生体物質測定チップを用いた発光測定装置において、前記生体物質測定チップ上の前記測定スポットを検出するための検出手段と、前記検出手段を移動するための移動ステージと、
前記位置あわせスポットに光を照射する回転光源と、前記位置あわせスポット上の前記回転光源による光強度分布により中心座標を計算する中心座標演算部と、前記移動ステージを前記測定スポットに移動する際に予め与えられた測定スポットの座標に前記中心座標を加算するステージ制御部とからなることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の生体物質測定チップ及びそれを用いた発光測定装置によれば、測定スポットの中心と光電子増倍管の中心の位置あわせをすることができるので、光量の利用効率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の位置検出手段の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0008】
(実施の形態1)
本発明は、LEDの光を位置あわせスポットに照射し、そこからの透過光の光強度分布を光電子増倍管で計測することによって光のピークを検出し位置あわせスポットの中心とするものである。
【0009】
図1は、本発明の第1の実施の形態における生体物質測定チップの平面図を示す。図1において、生体物質測定チップ10の基板11上にはDNAやタンパク質などの生体物質を測定するスポットである電極13が8個、9mm間隔で形成されている。この電極13の中心にある作用極15のそれぞれのスポット中心は列方向に一致している。電極13の両端には位置あわせスポット12が設けられている。この位置あわせスポット12と電極13の中心は列方向で一致している。位置あわせスポット12は中心に光を透過するための円環の孔14が設けられており、ここからの透過光を検知することによって位置あわせスポットが認識できるように形成されている。そのため、生体物質測定チップ10の基板11は光を透過するような透明な材料、例えばガラスでなければならない。
【0010】
また、位置あわせスポット12の孔14以外の部分は、透過光を遮蔽できるものであれば良い。この位置あわせスポット12と電極13は、ガラス製の基板11上にチタン10nmを下地に金200nmを形成し、フォトリソグラフィ工程により電極パターンが形成されている。位置あわせスポット12及び電極13は同一のスパッタ装置(アルバック製SH−350)により連続で形成されているため、互いの位置関係が精度良く規定されている。
【0011】
図2は、生体物質測定チップ10を読み取るための発光測定装置の構成を示す図である。図2(a)は発光測定器の全体構成図を示し、図2(b)は、図2(a)の丸で囲んだ詳細図を示す。図2(a)において、先程図1で説明した生体物質測定チップ10の上側には、電極13の電気化学発光を光学的に検出するための光学ユニット22と、実際に光を受光し光の光量をパルス信号に変換して出力する光電子増倍管21がある。光電子増倍管21のパルス信号は光電子増倍管カウンタ25を用い一定時間間隔でカウントし、カウント値データを光の強度として中心位置演算部40の記録部に順次記憶する。中心座標演算部40の構成は図4で詳細に説明する。
【0012】
本発明のカウント間隔は100msに設定し、100ms単位でカウントして100ms間に発生したパルス数をカウント値データとした。光電子増倍管21のパルス分解能の幅は出力パルスの最小周期である70nsに設定しており、100ms間の最大パルス数は1428570個であるため、光電子増倍管カウンタ25には21ビットのものを採用している。
【0013】
この光電子増倍管21は、列方向の移動手段として列方向ステージ23に備え付けられており、この列方向ステージ23と直行する行方向の移動手段として、列方向ステージ23を行方向ステージ24に固定することで、生体物質測定チップ10の上を光電子増倍管21が行列方向に走査できる。これらの行列方向のステージは、ステージコントローラ26、27によって中心位置演算部40のステージ制御部で制御される。
【0014】
生体物質測定チップ10は、テーブル31に設置される。図2(b)においてテーブル31には、生体物質測定チップ10の位置あわせスポット12を下側から照射するようにLED32が取付けられている。LED32を回転させる機構として、LED32はLED基板33に貼り付けられており、LED基板33はブシュ34に固定されている。
【0015】
テーブル31にはベアリング35が取付けられており、先に述べたブシュ34とベアリング35の内輪を連結されることによって、LED32が回転することが可能である。LED32を回転させる手段として、歯車39が取付けられたステッピングモータ37がフランジ38でテーブル31に固定されており、LED基板33には歯車36が取付けてある。これらの歯車36、39を噛み合わせることで、ステッピングモータ37の回転をLED32の回転として伝達させることができる。
【0016】
ステッピングモータ37の回転はモータドライバ28、29で中心位置演算部40のモータ制御部で制御される。本発明では、光電子増倍管カウンタ25のカウント間隔が100msであることから、100msでLEDが一周できるよう、モータの回転数は600rpmで制御している。
【0017】
図3(a)は、位置あわせスポット12とLED32と透過光を受光する光電子増倍管21の受光面の配置を示した概略図である。LED32の光を位置検出スポット12へ照射し、位置検出スポット12の孔14からの透過光をステージ23、24にて受光面を走査し受光している。そのときの列方向に受光した結果を図3(b)に示す。図3(b)は、位置あわせスポット12の上を列方向に光電子増倍管21を走査したときの、光の出力値と座標の関係を表したグラフである。
【0018】
ここで、LED32が正常に取付けられている場合、光の出力値の結果は図3(b)の正常時のように中心軸を光のピークとした対称な強度分布を示す。しかし、LED32の発光面が傾きをもっていた場合、図3(b)の異常時のように中心軸と光のピーク値の位置にズレが生じる。そのため、この光のピーク位置を位置あわせスポット12の中心位置としたのでは、実際の中心とズレが生じるので、電極13と光電子増倍管21の中心を正確に合せることができない。
【0019】
そこで図3(c)で示すように、LED32を中心軸で回転しながら光の強度分布を計測した結果を図3(d)に示す。図3(d)に示すように、光の強度分布が中心軸で対称となる。スポットの中心位置16を検出し位置あわせスポット12の中心を求める具体的方法を以下に詳細に説明する。
【0020】
図4は、位置あわせスポット12の中心位置を検出する中心座標演算部40の構成を示す。ステージ制御部45に入力された座標位置に従い、光電子増倍管カウンタ25は、位置あわせスポット12上に移動する。その後、ステージ制御部45に入力された座標位置に従い光電子増倍管カウンタ25は、位置あわせスポット12の中心を含む位置あわせスポット12全体の光強度を測定し、この光強度を電子増倍管カウンタ25の座標位置とともに座標記憶部41に格納する。X方向演算部43とY方向演算部42は、それぞれ座標記憶部41に格納された座標と光強度の情報を元に、X方向とY方向の中心値を求める。XY方向についてそれぞれ求められた中心値は、中心位置記憶手段44に送られる。ステージ制御部45は、光電子増倍管カウンタ25を測定スポットに移動するときに、ステージ制御信号51に中心位置記憶手段44に格納された中心値を加算してXステージコントローラ26とYステージコントローラ27に出力する。
【0021】
図5は位置あわせスポットの中心位置を求めるフローを示す。図2〜4で説明した機能ブロックの具体的な動作について、中心位置を求めるフローのステップ毎に説明する。ステップS1において、位置あわせスポット12を照明するために、中心座標演算部40の出力ポートを動作させてLED32を点灯させる。
【0022】
ステップS2において、LED32を光電子増倍管カウント25のカウント間隔100msで一周させるために、中心座標演算部40からの指令に基づきモータドライバ29を動作させてステッピングモータ37を600rpmで回転させる。ステップS3において、位置あわせスポット12の上を光電子増倍管21で走査するために、中心座標演算部40のステージ制御部45からの指令に基づき、Xステージコントローラ26及びYステージコントローラ27を介して、Y方向ステージ23及びX方向ステージ24を動作させて光電子増倍管21を位置あわせスポット12上へ移動する。
【0023】
ステップS4において、位置あわせスポット12の周辺のLED32の透過光の強度分布を測定するために、中心座標演算部40のステージ制御部45で走査範囲と走査間隔をX及びYステージコントローラ26、27に送信し、ステージ23、24を動作させ、光電子増倍管21を位置あわせスポット12上で順次走査し、光電子増倍管カウンタ25のカウント値を測定する。そのときのステージ23、24の座標位置と光電子増倍管カウンタ25のカウント値を中心座標演算部40の座標記憶部41に記憶する。
【0024】
ステップS5において、先程座標記憶部41に記憶した座標値とカウント値をもとに、位置あわせスポット12と光強度分布の列方向のズレ量を演算する。ステップS6において、座標記憶部41に記憶した座標値とカウント値をもとに、位置あわせスポット12と光強度分布の行方向のズレ量を演算する。ステップS5とステップS6についてのズレ量を計算する方法は後に詳述する。
【0025】
ステップS7では、ステップS5及びステップS6で求めたズレ量をもとに、中心座標演算部40の中心位置記憶部44に位置あわせスポット12の中心位置として記憶する。このステップを両サイドの位置あわせスポット12で行い、相対座標位置を演算することで各電極13の座標位置が分かる。
【0026】
さて、ステップS5とステップS6で行う中心座標のズレを求める演算方法について、図6を用いて詳細に説明する。図6において、列方向ステージ23及び行方向ステージ24の走査方向をそれぞれX軸及びY軸とする2次元直交座標(X,Y)で設定する。このときステップS4で測定した光強度分布の測定点を(i,j)で表し、カウント値をD(i,j)とする。ここで、まずX軸方向の中心位置を検出する方法について説明する。Y軸方向に加算した結果をA1,A2,・・・AnとしたときY軸方向に走査した光強度の総和SumAは数1で表される。
【0027】
【数1】

【0028】
次に、補正を行うためのX方向の重み成分としてX方向の座標位置を先程の加算した結果のA1,A2,・・・Anに積算した結果の総和SumAXは数2で表される。
【0029】
【数2】

【0030】
このことから、数2の結果を数1の結果で除算することでX方向のズレ量Xgが数3より求められ、
【0031】
【数3】

【0032】
数3でもとめられX方向の測定開始点X0に加算することで位置あわせスポット12のX方向の中心位置が数4で求められる。
【0033】
【数4】

【0034】
また、Y軸方向の中心位置を検出する方法について説明する。Y軸方向に加算した結果をB1,B2,・・・BnとしたときY軸方向に走査した光強度の総和SumBは数5で表される。
【0035】
【数5】

【0036】
次に、補正を行うためのY方向の重み成分としてY方向の座標位置を先程の加算した結果のB1,B2,・・・Bnに積算した結果の総和SumBYは数6で表される。
【0037】
【数6】

【0038】
このことから、数6の結果を数5の結果で除算することでY方向のズレ量Ygが数7より求められ、
【0039】
【数7】

【0040】
数7で求められたY方向のズレ量を、Y方向の測定開始点Y0に加算することで位置あわせスポット12のY方向の中心位置が数8で求められる。
【0041】
【数8】

【0042】
本発明では、行列方向に±4mmの範囲を0.4mm間隔で行ったため、21列×21行の441個のカウント値とそのときの座標をカウント値及び座標記憶部41に記憶し演算を行っている。
【0043】
以上のように、実施の形態1で示したように、両端の位置あわせスポット12の中心を求めることができるので、そこから相対関係にある電極13と光電子増倍管21の中心を精度良く位置あわせすることができ、電極13の発光の光量の利用効率が上がる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明にかかる生体物質測定チップ及びそれを用いた発光測定装置は、測定スポットの中心と光電子増倍管の中心の位置あわせをすることができるので、光量の利用効率を上げる効果を有し、生体物質測定チップと発光測定装置の位置決め精度を向上する技術に関する用途として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態1における生体物質測定チップの平面図
【図2】本発明の実施の形態1における発光測定装置の構成図
【図3】本発明の実施の形態1における位置あわせスポットとLEDの概略図
【図4】本発明の実施の形態1における中心座標演算部のブロック図
【図5】本発明の実施の形態1における中心位置を求めるフローチャート
【図6】列方向ステージ23及び行方向ステージ24の走査方向をそれぞれX軸及びY軸とする2次元直交座標を示す図
【符号の説明】
【0046】
10 生体物質測定チップ
11 基板
12 位置あわせスポット
13 電極
14 孔
15 作用極
16 スポットの中心位置
21 光電子増倍管
22 光学ユニット
23 列方向ステージ
24 行方向ステージ
25 光電子増倍管カウンタ
26 Xステージコントローラ
27 Yステージコントローラ
28 モータドライバ1
29 モータドライバ2
31 テーブル
32 LED
33 LED基板
34 ブッシュ
35 ベアリング
36 LED基板の歯車
37 ステッピングモータ
38 フランジ
39 ステッピングモータ歯車
40 中心座標演算部
41 座標記憶部
42 Y方向演算部
43 X方向演算部
44 中心位置記憶部
45 ステージ制御部
50 発光面の傾き
51 ステージ制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に生体試料を測定するため測定スポットを連ねた測定スポット列と、
前記測定スポット列の両側に位置あわせスポットを備えた生体物質測定チップ。
【請求項2】
前記測定スポットの中心と前記位置あわせスポットの中心が一致している請求項1記載の生体物質測定チップ。
【請求項3】
前記位置合せスポット形状が円環状である請求項1記載の生体物質測定チップ。
【請求項4】
前記基板は、光を透過することができる透明な材質である前記生体物質測定チップ。
【請求項5】
請求項1に記載の生体物質測定チップを用いた発光測定装置において、
前記生体物質測定チップ上の前記測定スポットを検出するための検出手段と、
前記検出手段を移動するための移動ステージと、
前記位置あわせスポットに光を照射する回転光源と、
前記位置あわせスポット上の前記回転光源による光強度分布により中心座標を計算する中心座標演算部と、
前記移動ステージを前記測定スポットに移動する際に予め与えられた測定スポットの座標に前記中心座標を加算するステージ制御部とからなる発光測定装置。
【請求項6】
前記検出手段は、光電子増倍管である請求項5に記載の発光測定装置。
【請求項7】
前記回転光源は、LEDによる光源を有し前記LEDの中心を軸として回転する手段を持つ請求項5に記載の発光測定装置。
【請求項8】
前記中心座標演算部は、
前記検出手段を前記測定スポットの中心を含めてXY方向に所定の単位毎に移動するXY移動手段と、
前記XY移動手段で定められたXY座標ごとに前記回転光源による光強度を測定して前記XY座標と前記光強度との組を格納するための座標記憶部と、
前記座標記憶部からX方向の中心値を求めるX方向演算部と、
前記座標記憶部からY方向の中心値を求めるY方向演算部と、
前記X方向の中心値と前記Y方向の中心値とがなす座標を測定中心座標としてその値を格納する中心位置記憶部とからなる請求項5に記載の発光測定装置。
【請求項9】
前記ステージ制御部は、
前記検出手段を前記測定スポットに移動する際に、
予め与えられた前記測定スポットの座標に前記中心位置記憶部に測定中心座標を加算して出力する請求項8に記載の発光測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−264821(P2009−264821A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112360(P2008−112360)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】