説明

生体状態取得装置、生体状態取得プログラム、生体状態取得装置を備えた機器及び空気調和機

【課題】非接触で生体の生体信号を取得し、生体信号に対して周波数解析などの複雑な処理をせずに、生体状態に関する情報を取得することのできる生体状態取得装置等を提供する。
【解決手段】生体の体表面に電磁波を送信し、その反射波をIQ検波して、I信号とQ信号を出力するIQ検波器20から出力されたI信号とQ信号とを時系列に順次取得するIQ信号取得手段51と、IQ信号取得手段51で取得した取得信号のIQ平面上の軌跡に基づいて、生体の状態を取得する生体状態取得手段52とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸、心拍、体動などの生体信号を処理して生体状態情報を取得する生体状態取得装置、生体状態取得プログラム、生体状態取得装置を備えた機器及び空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、呼吸、心拍、体動などの生体状態を非接触で取得する方法として、ドップラレーダセンサーを用いた装置が知られている。ドップラレーダセンサーを用いた生体状態取得装置として、例えば、マイクロ波を人体に向けて送信し、その送信波と人体からの反射波の波長の変化であるドップラ信号の周波数を求め、その周波数からヒトの脈拍数、あるいは呼吸数を演算する装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年では、この種の生体状態取得装置で得られた生体状態情報を用いて、就寝中のヒトの睡眠深度を測定する技術や、自律神経機能の状態を推定する技術、更には生体状態情報に基づいて各種機器を制御する技術も提案されている(例えば、特許文献2,特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−71825号公報(第3頁)
【特許文献2】特開2006−263032号公報(第6頁〜8頁、図1)
【特許文献3】特開平05−92040号公報(第2頁、第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、生体状態を取得するにあたり、ドップラ信号の周波数を求めており、反射波に対して周波数解析などの複雑な処理が必要となる。生体状態情報を各種機器の制御に利用する場合には、生体信号(センサ情報)を高速且つ高精度に処理してリアルタイムに生体状態を取得することが求められる。このため、従来技術では、CPUに対して高い処理能力が求められ、低コスト化及び機器の簡略化が困難であるという問題があった。また、生体状態情報を用いた睡眠深度測定、自律神経状態の推定、機器の制御を行うそれぞれの技術においても、生体状態情報を高速且つ高精度に取得することが求められている。
【0006】
本発明はこのような点を鑑みなされたもので、非接触で生体の生体信号を取得し、生体信号に対して周波数解析などの複雑な処理を行うことなく、生体状態に関する情報を取得することが可能な生体状態取得装置、生体状態取得プログラム、生体状態取得装置を備えた機器及び空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る生体状態取得装置は、生体の体表面に電磁波を送信し、その反射波をIQ検波して、I信号とQ信号を出力するIQ検波器から出力されたI信号とQ信号とを時系列に順次取得するIQ信号取得手段と、IQ信号取得手段で取得した取得信号のIQ平面上の軌跡に基づいて、生体の状態を取得する生体状態取得手段とを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、IQ信号取得手段で取得した取得信号のIQ平面上の軌跡に基づいて生体の状態を取得するようにしたので、周波数解析などの負荷の高い処理が不要で、低い処理能力で生体状態に関する情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係る生体状態取得装置を備えた生体状態取得システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の演算装置における生体状態取得処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】ヒトの呼吸時の体表面の動きに応じた反射波のIQ平面を示す図である。
【図4】速度ベクトルのノルムの時系列データの一例を示す図である。
【図5】図4の時系列データから呼吸を検出するための演算処理の説明図(その1)である。
【図6】図4の時系列データから呼吸を検出するための演算処理の説明図(その2)である。
【図7】図4の時系列データから呼吸を検出するための演算処理の説明図(その3)である。
【図8】体表面の動きが複雑な場合の体表面の変位量(の平均値)の時系列データの一例を示す図である。
【図9】図8の体表面の動きを計測した場合のIQ平面を示す図である。
【図10】図9のIQ平面の速度ベクトルのノルムの時系列データを示す図である。
【図11】呼吸カウントが正常に行われている場合の呼吸周期(呼吸時間)とその分布とを示す図である。
【図12】呼吸カウントが正常に行われていない場合の呼吸周期(呼吸時間)とその分布とを示す図である。
【図13】図2の補正要否判定処理及び補正処理(補正必要の場合)の流れを示すフローチャートである。
【図14】図10の速度ベクトルのノルムの時系列データから呼吸をカウントする際の演算処理の説明図(その1)である。
【図15】図10の速度ベクトルのノルムの時系列データから呼吸をカウントする際の演算処理の説明図(その2)である。
【図16】図10の速度ベクトルのノルムの時系列データから呼吸をカウントする際の演算処理の説明図(その3)である。
【図17】本発明の実施の形態2に係る生体状態取得システムの構成を示すブロック図である。
【図18】本発明の実施の形態2に係る演算装置における生体状態取得処理の流れを示すフローチャートである。
【図19】心拍信号と体動信号とが混在した状態のIQ信号出力を示す図である。
【図20】図19の信号出力を包絡線処理後、ローパスフィルター処理した後のベクトルノルムの波形を示す図である。
【図21】ローパスフィルター処理後のI信号及びQ信号の信号強度(振幅=I及びQそれぞれの自乗和の平方根)の時系列データを示す図である。
【図22】図21の振幅時系列データから心拍を検出するための演算処理の説明図(その1)である。
【図23】図21の振幅時系列データから心拍を検出するための演算処理の説明図(その2)である。
【図24】図21の振幅時系列データから心拍を検出するための演算処理の説明図(その3)である。
【図25】1拍の中で体表面が2段階に脈打つ場合の、ローパスフィルター処理後のI信号及びQ信号の信号強度(振幅=I、Qの自乗和の平方根)の時系列データを示す図である。
【図26】図25の時系列データから心拍をカウントする際の演算処理の説明図(その1)である。
【図27】図25の時系列データから心拍をカウントする際の演算処理の説明図(その2)である。
【図28】図25の時系列データから心拍をカウントする際の演算処理の説明図(その3)である。
【図29】図18の補正要否判定処理及び補正処理(補正要の場合)の流れを示すフローチャートである。
【図30】心拍数カウントが正常に行われている場合の単位期間毎の心拍数とその分布とを示す図である。
【図31】心拍数カウントが正常に行われていない場合の単位期間毎の心拍数とその分布とを示す図である。
【図32】本発明の実施の形態3に係る生体状態取得システムの構成を示すブロック図である。
【図33】本発明の実施の形態3に係る演算装置における生体状態取得処理の流れを示すフローチャートである。
【図34】本発明の実施の形態4に係る生体状態取得システムの構成を示すブロック図である。
【図35】浅睡眠(覚醒含む)、深睡眠及びREM睡眠のそれぞれの場合の体動、呼吸及び心拍の特徴を示した図である。
【図36】本発明の実施の形態4に係る演算装置における生体状態取得処理の流れを示すフローチャートである。
【図37】本発明の実施の形態5に係る生体状態取得システムの構成を示すブロック図である。
【図38】ある期間内のIQ平面の安定した軌跡(深睡眠)を示す図である。
【図39】ある期間内のIQ平面の不安定な軌跡(深睡眠以外)を示す図である。
【図40】本発明の実施の形態5に係る演算装置における生体状態取得処理の流れを示すフローチャートである。
【図41】本発明の実施の形態1〜5に係る生体状態取得システムを備えた空気調和機の構成を示すブロック図である。
【図42】本発明の実施の形態6に係る空気調和機の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。実施の形態1〜5では、生体状態取得装置について詳細に説明する。以下に説明する生体状態取得装置では、呼吸、心拍、体動等の生体の活動状態を基礎データとして取得するとともに、この基礎データを基に、更に、自律神経の状態(交感神経優位、副交感神経優位等)と、生体の睡眠深度とを取得する。以下の各実施の形態では、睡眠中の生体(例えば、ヒト)の生体状態を取得する場合を例に説明する。
【0011】
実施の形態1.(呼吸検出)
図1は、本発明の実施の形態1に係る生体状態取得装置を備えた生体状態取得システムの構成を示すブロック図である。実施の形態1では、生体状態の基礎データとして呼吸に関する呼吸情報を取得する。そして、取得した呼吸情報に基づいて自律神経の状態と、ヒトの睡眠深度とを算出(取得)する場合について説明する。
生体状態取得システム100は、睡眠中のヒトに対して電磁波(マイクロ波)を送信し、その送信波のヒトからの反射波を受信するドップラレーダセンサー10と、IQ検波器20と、バンドパスフィルター30と、AD変換器40とを備えている。生体状態取得システム100は更に、生体状態取得装置としての演算装置50と、各種データ(後述の学習データ等)を記憶する記憶装置60とを備えている。
【0012】
ドップラレーダセンサー10は、睡眠中のヒトに向けて電磁波を照射するとともに、ヒト体表面で反射される反射波を取り込み可能に配置されている。ドップラレーダセンサー10は、反射波を受信波として受信するアンテナと、入出力の増幅器と、発振器と、IQミキサ(検波器)と、電源と、周辺部品とを収容したモジュールで構成(何れも図示せず)されている。
【0013】
IQ検波器20は、ドップラレーダセンサー10のアンテナで受信した反射波を入射波に対する同相成分(I信号)と直交成分(Q信号)に分解し、バンドパスフィルター30に出力する。バンドパスフィルター30は、呼吸検出用の低域のバンドパスフィルター31を有し、ターゲットとする信号を抽出してAD変換器40に出力する。IQ検波器20の出力は、呼吸だけでなく、心拍及び体動も全て重畳された信号であるため、その信号をバンドパスフィルター31を通すことにより呼吸信号を抽出する。そして、バンドパスフィルター31を通過後の信号をAD変換器40でデジタル信号に変換して演算装置50に出力する。なお、呼吸検出用のバンドパスフィルター31の通過周波数帯域は予め設定されている。
【0014】
演算装置50はマイクロコンピューターで構成され、内部にCPU、ROM及びRAMを備えており、ROMに記憶されている各種プログラムに従って動作する。CPUがROMに記憶されている生体状態取得プログラムを実行することにより、AD変換器40からのIQ信号を取得するIQ信号取得手段51と、生体状態取得手段52とが機能的に構成されている。
【0015】
生体状態取得手段52は、ドップラレーダセンサー10を睡眠中のヒトに対して適用し、呼吸や心拍、寝返りなどの体動によりヒトの体表面が動くことによるドップラ効果を利用して生体状態(呼吸、自律神経の状態、睡眠深度等)を取得するものである。
【0016】
生体状態取得手段52は、生体の呼吸を検出して呼吸数等の呼吸情報を算出する呼吸検出手段53と、呼吸検出手段53で算出した呼吸情報に基づいて生体の自律神経状態を判定する自律神経状態判定手段54とを備えている。生体状態取得手段52は更に、呼吸検出手段53で算出した呼吸情報に基づいて生体の睡眠深度を判定する睡眠深度判定手段55を備えている。
【0017】
なお、図1ではドップラレーダセンサー10の後段にバンドパスフィルター31及びAD変換器40を設けた例を示したが、バンドパスフィルター31及びAD変換器40は、ドップラレーダセンサー10のモジュールに組み込んでも良い。また、バンドパスフィルター31をディジタルフィルターで構成し、AD変換器40の後段に配置してもよい。また、IQ検波器20の出力が足りない場合にはAD変換器40の前段に更に増幅器を配置するなど、IQ信号が正確にフィルタリングされて演算装置50に入力できれば構成はどのような構成でも良い。
【0018】
以下、生体状態取得システム100の動作について説明する。
ドップラレーダセンサー10は、睡眠中のヒトに向けて電磁波を照射し、ヒトからの反射波をアンテナ(図示せず)で受信する。そして、ドップラレーダセンサー10は、受信した反射波を増幅器で増幅してIQ検波器20に出力する。IQ検波器20に入力された信号は、I信号とQ信号に分解された後、バンドパスフィルターにより呼吸信号が抽出され、AD変換器40でデジタル信号に変換された後、演算装置50に出力される。演算装置50には、AD変換器40からの呼吸信号(I信号とQ信号)が時系列に順次入力される。
【0019】
演算装置50は、AD変換器40からのI信号及びQ信号をIQ信号取得手段51で取得し、取得した取得信号のIQ平面上の軌跡に基づいて呼吸検出を行う。以下、演算装置50の呼吸検出手段53における呼吸検出方法について詳細に説明する。
【0020】
ここでまず、生体状態の測定原理について簡単に説明する。ヒトは、呼吸による呼吸筋、横隔膜の活動による動作や、心拍による脈動、体動によって体表面が動く。呼吸の場合、呼吸によって胸部分の体表面が動く。このため、ドップラレーダセンサー10のアンテナで受信されるヒトからの反射波には、呼吸による体表面の動きの速度に応じたドップラシフトが生じている。
【0021】
呼吸時の体表面の挙動を細かく分析すると、呼吸開始(吸い込み開始)前は体表面の動きの速度は略ゼロであり、吸い込み開始後、徐々に速度が上昇してピークに達する。そして、呼吸の端点(吸う吐くの切り替わり時)に向かって今度は速度が下降し、呼吸の端点で略ゼロとなる。そして、吐き出し開始後、体表面の動きの速度は徐々に上昇してピークに達し、その後、吐き出しの端点(吐き出し終了時)に向かうに従って今度は速度が下降し、吐き出しの端点で速度は略ゼロとなる。このような体表面の速度変化をIQ検波の検波結果から検出することにより呼吸を検出する。
【0022】
図2は、図1の演算装置における生体状態取得処理の流れを示すフローチャートである。以下、図2を参照して生体状態取得処理の流れを説明する。
(S1:I信号及びQ信号取得)
演算装置50のIQ信号取得手段51は、ヒトの体表面の動きに応じてAD変換器40から時系列に順次出力されたIQ信号を取得する。そして、生体状態取得手段52は、取得したI信号及びQ信号のIQ平面上の軌跡に基づき、まず、速度ベクトルのノルムを算出する。以下、速度ベクトルのノルム算出について説明する。
【0023】
(S2:速度ベクトルのノルム算出、S2:呼吸検出)
IQ信号取得手段51で取得した取得信号をIQ平面上にプロットすると、ヒトの体表面の動きに応じて次の図3に示すような軌跡を描く。
【0024】
図3は、ヒトの呼吸時の体表面の動きに応じた反射波のIQ平面の一例を示す図である。図3(A)は、体表面がドップラレーダセンサー10に近づく場合、図3(B)は体表面がドップラレーダセンサー10から遠ざかる場合を示している。
図3(A)の反時計回り方向の矢印は、体表面がドップラレーダセンサー10に近づいたときのIQ信号のIQ平面上の座標の軌跡の方向を示している。図3(B)の時計回り方向の矢印は、体表面がドップラレーダセンサー10から遠ざかったときのIQ信号のIQ平面上の座標の軌跡の方向を示している。また、図3(A)の各点1〜9及び図3(B)の各点1〜9はサンプリングタイム毎のIQ信号の座標をプロットしたものである。
呼吸時の体表面の動作は、上述したように吸い込み時は、吸い込み開始後、徐々に速度が上昇してピークに達する。そして、呼吸の端点(吸う吐くの切り替わり時)に向かって今度は速度が下降し、呼吸の端点で略ゼロとなる。体表面の動きが速いと、ドップラ効果による反射波の位相変化が大きくなる。このため、IQ平面上において図3(A)の各点間の間隔が、動作開始時は間隔が狭く、次第に間隔が広くなり、軌跡の中間部分では最も長くなった後、再度間隔が狭くなっていく様子が示されている。吐き出し時も同様の特徴を有するIQ平面となる。
【0025】
速度ベクトルは、サンプリング間隔毎に得られたIQ平面上の各点(図中の点1から点9・・・)のベクトル差に相当する。矢印(a)は点5と点6間の速度ベクトルを示している。各点間のベクトル差の長さがそのタイミングにおける速度ベクトルのノルムに相当する。この速度ベクトルのノルムを時系列に図示すると、次の図4に示す図となる。
【0026】
図4は、速度ベクトルのノルムの時系列データを示す図である。図4において横軸は時間、縦軸は速度ベクトルのノルムを示している。
呼吸によって体表面が動く場合、上述したように吸い込みと吐き出しのそれぞれの動作の略中間で体表面の動きの速度が最も速くなり、また、呼吸の端点(吸う吐くの切り替わり時)で、体表面の速度は略ゼロとなる。よって、速度ベクトルのノルムの時系列データは、図4に示したように、吸い込み動作と吐き出し動作のそれぞれで山型のカーブを描く。従って、速度ベクトルのノルムの時系列データの2山分が1呼吸を示すことになる。よって、IQ信号から速度ベクトルのノルムを順次算出し、ノルムの時系列データから呼吸を検出することが可能となる。
【0027】
このように、呼吸による体表面の動きの特徴を利用し、呼吸の端点でIQ平面上の軌跡速度が略ゼロとなることを手がかりにして、呼吸信号から1呼吸を抽出する。すなわち、呼吸の吸い込みと吐き出しの切り替わり時に速度ベクトルのノルムが略ゼロとなることによる、速度ベクトルのノルムの時系列データの波形の周期的な変動に基づいて1呼吸に対応する呼吸信号を検出する。ノルムの算出に際しては周波数解析が不要であるため、簡易且つ低負荷で呼吸を検出できる。
【0028】
速度ベクトルのノルムの時系列データから、2山のカーブを1呼吸分として検出するための具体的な演算処理としては、図5〜図7に示す方法を用いることができる。図5の方法では、速度ベクトルのノルムの時系列データから一定値を引き算し、その引き算後の時系列データのゼロクロス点を検出する。そして、4つのゼロクロス点ごとに1呼吸とカウントする。また別の方法として、図6に示すように速度ノルムベクトルのデータのピークを抽出し、一つのピークが現れてから二つ目のピークが現れるまでを1呼吸とカウントするようにしてもよい。また図6と逆の方法として図7に示すように速度ベクトルノルムのデータの谷の底辺を抽出し、一つの谷が現れてから二つ目の谷が現れるまでを1呼吸とカウントするようにしてもよい。図5の方法では速度ベクトルのノルムの振幅に変動がある場合、一定値の数値の設定次第でゼロクロスしない部分が生じ、その部分の呼吸をカウントできない可能性がある。これに対し、図6及び図7の方法の場合では、速度ベクトルのノルムの振幅が一定とならない場合などでも呼吸をカウント可能である。
【0029】
(S3:呼吸数、呼吸周期の変動幅(標準偏差)算出)
呼吸検出手段53は、時系列のノルム算出結果から、上述したように2山のカーブを1呼吸として検出し、呼吸情報を算出する。呼吸情報として、一定期間(例えば過去2分間)の呼吸数を算出する。また、一定期間の呼吸周期の変動幅(1呼吸に要する時間の変動幅(標準偏差))を算出する。
【0030】
(S4:呼吸数の補正要否判定・補正(補正要の場合))
睡眠中において、呼吸による体表面の動きが安定している場合は上記の方法で呼吸を検知できるが、体表面の動きが複雑な場合、呼吸を正確にカウントできないことがある。例えば複数の筋肉が活動してドップラシフトを相殺し、体表面の動きを検知できない場合が考えられる。このような場合、呼吸数の補正が必要である。よって、ステップS4では、呼吸を正確にカウントできているかを判別するための、呼吸数の補正要否判定処理を行う。なお、補正要否判定処理の詳細は後述することにし、ここでは呼吸数を正確にカウントでき、補正不要と判定した場合の生体状態取得処理の説明を続ける。
【0031】
(S5:自律神経の状態判定)
自律神経の状態が交感神経優位状態では、呼吸数が多く且つ呼吸周期の変動幅が大きくなり、逆に副交感神経優位状態では、呼吸数が少なく呼吸周期の変動幅が小さくなる特徴がある。よって、呼吸数及び呼吸周期の変動幅を求めることにより、自律神経の状態判定が可能となる。
【0032】
自律神経状態判定手段54は、呼吸検出手段で算出された呼吸情報に基づいて自律神経の状態を判定するための指標を算出する。この指標は、呼吸数又は呼吸周期の変動幅そのものの値であってもよいし、何らかの関数にそれぞれを代入して得られた値等でもよく、ここでは交感神経が優位なほど大きい値を取るものとする。この指標により自律神経の状態を判定することができる。例えば、指標と予め設定した閾値とを比較し、指標が閾値よりも大きい場合、交感神経優位と判定し、指標が閾値未満の場合、副交感神経優位と判定する。その他、例えば交感神経の活動度合いを判定するようにしてもよい。
【0033】
(S6〜S10:睡眠深度判定)
また、睡眠深度判定手段55は、呼吸情報に基づいて睡眠深度を判定する。次に、睡眠深度判定手段55の動作について説明する。
【0034】
ここで、睡眠深度判定手段55の動作を説明するに先立ち、まず、睡眠深度について説明する。睡眠は、一般的に眠りの浅いREM睡眠と、眠りの深いノンREM睡眠とに大別される。更に細かく睡眠深度が定義されており、覚醒、REM睡眠、睡眠深度1、2、3、4の6つの状態が定義されている。睡眠深度1、2、3、4は、ノンREM睡眠を更に4つの段階に分けたものであり、ノンREM睡眠のなかでは、睡眠深度1が最も眠りが浅く、睡眠深度4が最も深い。
【0035】
ヒトが入眠を開始してから次に目覚めるまでの間には、REM睡眠、睡眠深度1、2、3、4と睡眠が深くなるように移行し、その後、睡眠深度3、2、1、REM睡眠へと移行するという睡眠サイクルが通常約90分周期で繰り返されている。本例では、呼吸数及び呼吸周期の変動幅に基づいてREM睡眠、浅睡眠(例えば睡眠深度1、2)、深睡眠(例えば睡眠深度3、4)の何れかを判定する。
【0036】
睡眠中のヒトの呼吸数は睡眠深度によって様相が変化することが知られている。一般的に深睡眠中の呼吸数は低く安定(呼吸周期の変動幅は小さい)しており、浅い睡眠中の呼吸数は高く不安定(呼吸周期の変動幅が大きい)である。また、REM睡眠中は最も不安定で、呼吸周期の変動幅は更に大きい。よって、REM睡眠、浅睡眠、深睡眠を判定するための第1呼吸数閾値、第2呼吸数閾値(<第1呼吸数閾値)、第1変動幅閾値、第2変動幅閾値(<第1変動幅閾値)を予め実験などにより求めて設定しておき、各閾値との比較により睡眠深度を判定する。
【0037】
すなわち、呼吸数が第1呼吸数閾値以上で且つ呼吸周期の変動幅が第1変動幅閾値以上であればREM睡眠と判定する(S6、S8)。呼吸数が第1呼吸数閾値未満で第2呼吸数閾値以上、且つ呼吸周期の変動幅が第1変動幅閾値未満で第2変動幅閾値以上であれば浅睡眠と判定する(S6、S9)。呼吸数が第2呼吸数閾値未満且つ呼吸周期の変動幅が第2変動幅閾値未満であれば深睡眠と判定する(S6、S10)。
【0038】
これらの各閾値は、学習期間を設けて1睡眠サイクル以上の睡眠データを取得し、その睡眠データに基づいて個人毎に設定するようにしてもよい。また、学習期間の睡眠データを所定のアルゴリズムに基づいて分析し、閾値となる値を判別して自動設定するようにしてもよい。
【0039】
(図2のステップS4の呼吸数の補正要否判定の詳細説明)
以下、呼吸数の補正要否判定の詳細について説明する。呼吸数の補正が必要な場合とは、上述したように例えば呼吸中の体表面の動きが複雑でドップラシフトを相殺してしまう場合等が該当する。次の図8に、体表面の動きが複雑な場合の体表面の変位量(の平均値)の時系列データの一例を示す。
【0040】
図8は、体表面の動きが複雑な場合の体表面の変位量(の平均値)の時系列データの一例を示す図である。実線は体表面の動きが複雑な場合を示している。なお、図8において上下方向に伸びる点線は、参考のために体表面の動きが通常の場合を示したものであり、時間の経過と共に体表面の変位量が徐々に上昇し、その後下降に転じる動作が繰り返される様子が示されている。
図8の例では、体表面の動きが複雑な場合の例として、吸い込み及び吐き出しのそれぞれの動作に際し、体表面全体の動きの平均値が変動しない期間が存在する例を示している。図8の横長の楕円で囲った部分がその期間を示している。図中実線で示す体表面の動きを計測した場合のIQ平面は、次の図8のようになる。
【0041】
図9は、図8に示すような体表面の動きを計測した場合のIQ平面を示す図である。なお、図9では、図8の1呼吸における吸い込み動作と吐き出し動作を図示している。
体表面全体の動きの平均値が変化しない期間では、体表面全体においてドップラレーダセンサーに近づく動作と離れる動作とが混在し、結果としてドップラシフトが相殺されている。よって、その期間のIQ信号のIQ平面上での速度ベクトルはゼロとなる。図9において縦長の楕円で囲った部分が、速度ベクトルがゼロになる部分を示している。従って、図9に示すような速度ベクトルのノルムの時系列データは次の図10のようになる。
【0042】
図10は、図9のIQ平面の速度ベクトルのノルムの時系列データを示す図である。
図9のIQ平面の場合、速度ベクトルのノルムの時系列データでは、図10に示すように吸い込み動作及び吐き出し動作のそれぞれが2山となって現れる。すなわち、1呼吸が4山となって現れる。呼吸検出手段53では、上述したように2山を1呼吸とカウントするアルゴリズムを採用しているため、1呼吸が4山となって現れると、正確には1呼吸である部分が2呼吸としてカウントされてしまうことになる。
【0043】
図11及び図12は、呼吸周期(呼吸時間)とその分布とを示す図であり、図11は呼吸カウントが正常に行われている場合、図12は正常に行われていない場合を示している。図11及び図12は、横軸に取った各呼吸順に、各呼吸それぞれの呼吸周期を縦軸としてプロットした図である。
呼吸周期は、図4の速度ベクトルのノルムの場合、時間Ta、Tb、Tcに示される時間である。呼吸周期の頻度分布を取ると、図11に示すように、略正規分布状の形状となる。これに対し、図10の速度ベクトルのノルムの場合、正確には4山を1呼吸としてカウントし、呼吸周期を時間TA+TBとして算出すべきところ、2山を1呼吸としてカウントし、呼吸周期が時間TA、TB・・・と算出される。従って、呼吸周期の頻度分布は、図12に示されるように、明らかに2極化された分布となり、2つの山を持つ形状となる。したがって、呼吸検出手段53は呼吸数カウント後、呼吸周期の頻度分布を算出し、頻度分布が略正規分布状の形状であるか否かによって呼吸カウントが正常に行われているかいないかを判定できる。
【0044】
ところで、呼吸による体表面の動きが複雑となる場合とは、具体的には例えば横向きで寝ている場合等が該当し、睡眠時の姿勢等が影響する。よって、一定期間の短い時間内に正常な呼吸カウントと正常でない呼吸カウントとが混在して行われることはあまりない。仮に混在してもその数は少ない。この前提の基、呼吸周期の頻度分布から呼吸カウントが正常に行われているか行われていないかを判定可能としている。
【0045】
図13は、図2の補正要否判定処理及び補正処理(補正必要の場合)の流れを示すフローチャートである。以下、補正要否判定処理及び補正処理(補正必要の場合)の流れを図13を参照して説明する。
呼吸検出手段53は、呼吸周期の頻度分布を算出し(S21)、該分布が略正規分布状の形状であるか否かをチェックする(S22)。分布が略正規分布状の形状であれば、正常な呼吸数カウントが行われているものと判断し、補正不要と判定する(S23)。一方、呼吸周期の分布が略正規分布状の形状から乖離していれば、正常な呼吸数カウントが行われていないものと判断し、補正必要と判定する(S24)。呼吸周期の頻度分布が略正規分布状の形状であるか否かについては、呼吸周期の頻度分布のモーメントを算出し、これを閾値判定することで判定する。具体的には例えば3次モーメントである尖り度を算出し、この尖り度が予め設定した閾値3(正規分布)から乖離していれば、略正規分布状の形状から乖離していると判定する。
【0046】
上記アルゴリズムで補正必要と判定した場合、呼吸検出手段53は呼吸周期の頻度分布の山の個数Nを推定する(例えば最尤推定などで)(S25)。なお、図8〜図12では、N=2の場合を例示して説明したが、体表面の動きによっては2個に限られたものではなく、更に複数個の場合もある。そして、個数Nに基づいてステップS3(図2参照)で算出した過去一定期間の呼吸数及び呼吸周期を補正する(S26)。以下、この補正について具体例で説明する。
【0047】
図14〜図16は、図10の速度ベクトルのノルムの時系列データから呼吸をカウントする際の演算処理の説明図である。図14はゼロクロス点によるカウント、図15はピーク抽出によるカウント、図16は谷抽出によるカウントを示す。なお、ここでは呼吸周期の分布の山の個数N=2とする。
ステップS3では、2山を1呼吸としてカウントするアルゴリズムを採用しているため、図10の測定データの場合、図14〜図16に示すように、正確には1呼吸であるところ、2呼吸とカウントされる。よって、2呼吸を1呼吸としてカウントし直す補正を行うとともに、呼吸周期を補正する。具体的には、一定期間の呼吸数を算出後、その算出結果の呼吸数を2で除算し、補正後の呼吸数とする。なお、一定期間の速度ベクトルのノルムの時系列データそのものから、例えばゼロクロス点によるカウント方法により、4(ゼロクロスの個数)×N(山の数)個分で1呼吸とカウントし直す補正を行うようにしてもよい。また、呼吸周期の補正は、例えば図10の例で説明すると、時間TA+TBを呼吸周期として算出し直す補正を行う。
【0048】
以上のように、ステップS24で補正必要と判定した場合には、補正を行う。そして、補正後の呼吸数及び呼吸周期に基づいてステップS5の自律神経の状態判定及びステップS6〜10の睡眠深度の判定を行う。
【0049】
演算装置50は以上のようにして判定した自律神経の状態及び睡眠深度の判定結果を例えば空気調和機等の外部機器に出力する。判定結果を受信した機器側では、判定結果に応じた機器制御が行われることになる。機器制御の具体例については後述の実施の形態6で説明する。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態1ではIQ平面の軌跡から差分ベクトル(速度ベクトル)を算出し、その差分ベクトルのノルムを算出し、そのノルムの時系列データから呼吸情報(呼吸数及び呼吸周期)を得るようにした。よって、従来のような周波数解析などの負荷が高い処理が不要となり、安価な演算装置50を用いて呼吸情報を得ることができる。また、呼吸情報と相関の深い自律神経の状態及び生体の睡眠深度を高速で判定することができる。なお、自律神経の状態と睡眠深度とには互いに関係性があることから、自律神経の状態を示す前記指標に基づいて睡眠深度を判定するようにしてもよい。呼吸に伴った自律神経の活動を推定することで、生理モデルに沿った睡眠状態の判定が可能になる。
【0051】
また、本実施の形態1によれば、1呼吸を複数呼吸にカウントしてしまうカウント誤りを検出することができ、カウント誤りを検出した場合、呼吸数を補正するようにしたので、呼吸数の算出精度を向上することができる。その結果、自律神経の状態及び睡眠深度の判定精度を向上することができる。
【0052】
また、呼吸数と呼吸周期の変動幅との両方を用いて多次元空間で自律神経の状態判定及び睡眠深度判定を行うようにしているため、高精度に判定することが可能である。なお、多少の精度低下は否めないが、呼吸数と呼吸周期の変動幅のどちらか一方に基づいて自律神経の状態判定及び睡眠深度判定を行うようにしても良い。また、本実施の形態1では、呼吸情報として、呼吸数と呼吸周期の変動幅を例に挙げたが、これに限られたものではなく、呼吸数の変動幅を更に呼吸情報に含めてもよい。
【0053】
また、体表面の移動速度が速い場合、IQ信号の位相が360度以上変化することがある。この場合、IQ平面上の座標は同じとなるため、単なるIQ平面の座標からでは1呼吸をカウントすることが難しい。しかしながら、本実施の形態1では、各サンプリング間のIQ信号の速度ベクトルのノルムを用い、各サンプリング時間の間に体表面が動いたかあるいは止まったかといった事象に基づいて呼吸を検出しているため、体表面の移動速さによらず、呼吸をカウントすることができる。
【0054】
また、本実施の形態1では、呼吸を検出する場合について説明したが、心拍及び脈波などIQ検波により変化を情報として取得できるものであれば上記と同様の方法で検知できる。なお、呼吸の場合は、心拍や脈波などに比べて体表面の動き幅が大きく、ゆっくりとした動きであるので、呼吸の折り返し点で速度が略ゼロになることを見い出し易い。このため、呼吸の場合は実施の形態1の方法が特に好ましい。また、呼吸の場合、体表面の動き幅が大きいため、体表面から離れた位置でも検出可能である。
【0055】
また、本実施の形態1では、睡眠中を中心に呼吸検出する例を説明したが、睡眠中だけではなく、リラックスしている状態、運転中など別の状態でもフィルター変更などにより、呼吸検出が可能である。ディジタルフィルターであれば自動でフィルター変更も可能であり、生体状態を取得するシーンに合わせて自動で設定を変更することも可能である。
【0056】
なお、呼吸の複数誤カウントを防止する方法として、例えば、IQ平面上の軌跡自体を移動平均でフィルターをかけて図9の波形において速度がゼロになる部分を吸収し、フィルター処理後の軌跡に基づき呼吸数カウントを行うようにしてもよい。この場合、呼吸が複数誤カウントされてしまうことを抑制できる。フィルターは移動平均としたが、微小変化や急峻な変化を抑制できるフィルターであればどれでも良い。
【0057】
実施の形態2.(心拍検出)
実施の形態2は、心拍のように体動による体表面の動きが小さく、また、複雑な動きをする生体状態を取得する場合に好適な方法を説明するものである。
【0058】
図17は、本発明の実施の形態2に係る生体状態取得システムの構成を示すブロック図である。図17において、図1に示した実施の形態1と同一部分には同一符号を付す。
実施の形態2の生体状態取得システム200は、バンドパスフィルター30が実施の形態1の呼吸用のバンドパスフィルター31に代えて心拍・体動用の高域のバンドパスフィルター32を備えている。また、生体状態取得手段52が、生体の心拍を検出して心拍数等の心拍情報を算出する心拍検出手段56と、自律神経状態判定手段54Aと、睡眠深度判定手段55Aとを備えている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0059】
IQ検波器20の出力は、呼吸や心拍並びに体動も全て重畳された信号であるため、この信号を心拍及び体動検出用の高域のバンドパスフィルター32を通すことにより、心拍及び体動の信号を抽出する。抽出された信号は、AD変換器40でデジタル信号に変換されて演算装置50に入力される。なお、バンドパスフィルター32の通過周波数帯域は予め設定されている。
【0060】
心拍検出手段56は、IQ信号取得手段51で取得された取得信号(I信号及びQ信号)から高域成分を除去するローパスフィルター(図示せず)を備えている。演算装置50に入力された測定データをローパスフィルターに通過させることにより心拍信号を抽出する。そして、心拍検出手段56は、心拍信号の波形の周期的な変動に基づいて1心拍に対応する心拍信号を検出し、単位期間における心拍数を心拍情報として算出する。
【0061】
自律神経状態判定手段54Aは、心拍検出手段56で算出された心拍情報に基づいて自律神経状態を示す指標を算出する。
【0062】
睡眠深度判定手段55Aは、心拍検出手段56で算出された心拍情報に基づいて睡眠深度を判定する。
【0063】
以下、実施の形態2が実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
図18は、本発明の実施の形態2に係る演算装置における生体状態取得処理の流れを示すフローチャートである。
(S31:I信号及びQ信号取得)
生体状態取得システムにおいてIQ検波器20から出力されたI信号及びQ信号は、呼吸や心拍並びに体動も全て混在した信号である。このため、IQ検波器20から出力されたI信号及びQ信号を心拍及び体動検知用の高域のバンドパスフィルター32に通すことにより、心拍信号及び体動信号を抽出する。そして、この信号がAD変換器40でデジタル信号に変換されてIQ信号取得手段51に入力される。なお、バンドパスフィルター32の通過周波数帯域は予め設定されている。このように、IQ信号取得手段51は、ヒトの体表面の動きに応じてAD変換器40から時系列に順次出力されるIQ信号(心拍及び体動信号)を取得する。
【0064】
(S32:IQベクトルのノルムの時系列データを算出)
そして、心拍検出手段56は、IQ信号取得手段51で取得された取得信号(心拍信号及び体動信号が混在した信号)のIQ平面上の点を原点からのベクトルで表現する(以下、このベクトル(IQ平面上の取得信号の位置ベクトル)をIQベクトルという)。そして、そのIQベクトルのノルム(振幅=I及びQそれぞれの自乗和の平方根)を算出する。
【0065】
(S33:心拍信号抽出)
ここで、IQ信号取得手段51で取得された取得信号は、心拍信号及び体動信号が混在した信号であるため、心拍検出手段56は、上述したようにローパスフィルター(図示せず)を通過させる。この結果、心拍による脈動を示す心拍信号の波形が得られる。
【0066】
図19は、心拍信号と体動信号とが混在した状態のIQ信号出力を示す図で、バンドパスフィルター後のIQ信号を示している。図20は、図19の信号出力を包絡線処理後、ローパスフィルター処理した後のベクトルノルムの波形を示す図である。図20には、参考のため、リファレンス(実際の脈動波形)も示している。
図19と図20とを比較して明らかなように、ローパスフィルター(図示せず)を通過させることにより、実際の脈動波形と同期した心拍信号の波形が得られている。
【0067】
心拍検出手段56は、ローパスフィルター通過後の心拍信号(I信号及びQ信号)の波形の周期的な変動に基づいて1心拍に対応する心拍信号を検出し、単位期間における心拍数を心拍情報として算出する。以下、心拍検出の具体的な処理について説明する。
【0068】
(S34:単位期間の心拍数と一定期間の心拍数の変動幅算出)
図21は、ローパスフィルター処理後のI信号及びQ信号の信号強度(振幅=I及びQそれぞれの自乗和の平方根)の時系列データを示す図である。図21は図20の一部拡大図に相当する。
心拍検出手段56は、ローパスフィルター処理後のI信号及びQ信号の信号強度(振幅=I及びQそれぞれの自乗和の平方根)の時系列データ(以下、振幅時系列データという)から心拍数をカウントする。図21に示すように、振幅時系列データのピークから次のピークまでを1拍としてカウントする。
【0069】
振幅時系列データから心拍数をカウントするための具体的な演算処理としては、図22〜図24に示す方法を用いることができる。図22の方法では、振幅時系列データから一定値を引き算し、引き算後のデータのゼロクロス点を検出する。そして、3つのゼロクロス点ごとに1拍とカウントする。また、別の方法として、図23に示すように振幅時系列データのピークを抽出し、一つのピークが現れてから次のピークが現れるまでを1拍としてカウントするようにしてもよい。また、更に別の方法として、図24に示すように振幅時系列データの谷の底辺を抽出し、一つの谷底辺が現れてから次の谷底辺が現れるまでを1拍としてカウントするようにしてもよい。
【0070】
(心拍数時系列データ生成)
心拍検出手段56は、以上の方法で単位期間(例えば過去1分間)の心拍数を算出する。以上の心拍数の算出を一定期間(例えば3分間)に渡って行い、心拍数時系列データを生成する。また、心拍検出手段56は、一定期間内の心拍数の変動幅(標準偏差)を算出する。以上のように、心拍検出手段56は、心拍数及び心拍数の変動幅を心拍情報として算出する。
【0071】
(S35:心拍数の補正要否判定・補正(補正要の場合))
睡眠中において、心拍による体表面の脈動が複雑である場合、例えば1拍の中で体表面が2段階に脈打つ場合が考えられる。この場合、上記の方法では1拍が複数の拍動としてカウントされる場合がある。この場合、心拍数の補正が必要である。よって、ステップS35では、心拍を正確にカウントできているかを判別するための、心拍数の補正要否判定を行う。なお、補正要不要判定処理の詳細は後述することにし、ここでは心拍数を正確にカウントでき、補正不要と判定した場合の生体状態取得処理の説明を続ける。
【0072】
(S36:自律神経の状態判定)
自律神経状態判定手段54Aは、心拍検出手段56で算出された心拍情報に基づいて自律神経の状態を判定するための指標を算出する。この指標は、単位時間の心拍数又は一定期間における心拍数の変動幅そのものの値であってもよいし、何らかの関数にそれぞれを代入して得られた値等でもよく、交感神経が優位なほど、大きい値を取るものとする。この指標により自律神経の状態を判定することができる。例えば、指標と予め設定した閾値とを比較し、指標が閾値よりも大きい場合、交感神経優位と判定し、指標が閾値未満の場合、副交感神経優位と判定する。その他、例えば交感神経の活動度合いを判定するようにしてもよい。
【0073】
(S37〜S41:睡眠深度判定)
また、睡眠深度判定手段55Aは、心拍検出手段56で算出された心拍情報に基づいて睡眠深度を判定する。次に、睡眠深度判定手段55Aの動作について説明する。
【0074】
睡眠中のヒトの心拍数は、上述した呼吸数と同様、睡眠深度によって様相が変化することが知られている。一般的に深睡眠中の心拍数は低く安定(心拍数変動幅は小さい)、浅い睡眠中は心拍数が高く不安定(心拍数変動幅が大きい)である。また、REM睡眠中は最も不安定で、心拍数変動幅は更に大きい。よって、REM睡眠、浅睡眠、深睡眠を判定するための第1心拍数閾値、第2心拍数閾値(<第1心拍数閾値)、第1心拍数変動幅閾値、第2心拍数変動幅閾値(<第1心拍数変動幅閾値)を予め設定しておき、各閾値との比較により睡眠深度を判定する。
【0075】
すなわち、心拍数が第1心拍数閾値以上で且つ心拍数変動幅が第1心拍数変動幅閾値以上であればREM睡眠と判定する(S37、S39)。心拍数が第1心拍数閾値未満で第2心拍数閾値以上、且つ心拍数変動幅が第1心拍数変動幅閾値未満で第2心拍数変動幅閾値以上であれば浅睡眠と判定する(S38、S40)。心拍数が第2心拍数閾値未満且つ心拍数変動幅が第2心拍数変動幅閾値未満であれば深睡眠と判定する(S38、S41)。
【0076】
これらの各閾値は、学習期間を設けて1睡眠サイクル以上の睡眠データを取得し、その睡眠データに基づいて個人毎に設定するようにしてもよい。学習期間の睡眠データを所定のアルゴリズムに基づいて分析し、閾値となる値を判別して自動設定するようにしてもよい。
【0077】
(図18のステップS35の心拍数の補正要否判定の詳細説明)
以下、心拍数の補正要否判定の詳細について説明する。心拍数の補正が必要な場合とは、上述したように、例えば1拍の中で体表面が2段階に脈打つ場合等が該当する。次の図25に、体表面の動きが複雑な場合の体表面の変位量(の平均値)の時系列データの一例を示す。
【0078】
図25は、振幅時系列データを示す図で、1拍の中で体表面が2段階に脈打つ場合の心拍信号を示している。
心拍検出手段56は、振幅時系列データから心拍数をカウントする場合、図25の測定データでは、正確には1拍であるところ、図26〜図28に示すように2拍としてカウントされる。図26〜図28は、それぞれ図22〜図24で示したカウント方法に対応している。心拍数の補正要否判定のアルゴリズムは、基本的に実施の形態1の呼吸数の補正要否判定のアルゴリズムと同様であり、以下、心拍数の補正要否判定処理について簡単に説明する。
【0079】
図29は、図18の補正要否判定処理及び補正処理(補正要の場合)の流れを示すフローチャートである。また、図30及び図31は、単位期間毎の心拍数と、心拍数の頻度分布とを示す図であり、図30は心拍数カウントが正常に行われている場合、図31は正常に行われていない場合を示している。
図30及び図31との比較から分かるように、正常に心拍数カウントが行われている場合は略正規分布状の形状となるのに対し、正常に行われていない場合は複数(ここでは2つ)の山を持つ形状となる。
【0080】
よって、心拍検出手段56は心拍数の頻度分布を算出し(S51)、該分布が略正規分布状の形状であるか否かをチェックする(S52)。分布が略正規分布状の形状であれば、正常な心拍数算出が行われているものと判断して補正不要と判定する(S53)。一方、分布が略正規分布状の形状から乖離していれば、正常な心拍数算出が行われていないものと判断して補正必要と判定する(S54)。心拍数の分布が略正規分布状の形状であるか否かの判断は、実施の形態1と同様の方法を使用できる。
【0081】
上記アルゴリズムで補正必要と判定した場合(S55)、心拍検出手段56は、心拍数の分布の山の個数Nを推定する(例えば最尤推定などで)(S56)。そして、個数Nに基づいてステップS34(図18参照)で算出した心拍数を過去一定期間に渡って補正する(S57)。具体的には、山の個数がN個であった場合、N拍を1拍としてカウントし直す。これによって正確な心拍数の情報を得ることができる。
【0082】
以上のように、ステップS54で補正が必要と判定した場合には、補正を行う。そして、補正後の心拍情報に基づいてステップS36の自律神経の状態判定及びステップS37〜S41の睡眠深度の判定を行う。
【0083】
演算装置50は以上のようにして判定した自律神経の状態及び睡眠深度の判定結果を例えば空気調和機等の外部機器に出力する。判定結果を受信した機器側では、判定結果に応じた機器制御が行われることになる。機器制御の具体例については後述の実施の形態6で説明する。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態2ではIQベクトルのノルムを算出し、そのノルムの時系列データから心拍数を検出するようにした。よって、従来のような周波数解析などの負荷が高い処理が不要となり、低負荷で高速に心拍数の算出を行うことができる。また、負荷が高い処理が不要となるため、安価な演算装置50を用いて心拍数を得ることができる。また、心拍数と相関の深い自律神経の状態及び生体の睡眠深度を高速に判定することができる。なお、自律神経の状態と睡眠深度とには互いに関係性があることから、自律神経の状態を示す前記指標に基づいて睡眠深度を判定するようにしてもよい。心拍に伴った自律神経の活動を推定することで、生理モデルに沿った睡眠状態の判定が可能になる。
【0085】
また、本実施の形態2によれば、1心拍を複数心拍にカウントしてしまうカウント誤りを検出することができ、カウント誤りを検出した場合、心拍数を補正するようにしたので、心拍数の算出精度を向上することができる。その結果、自律神経の状態及び睡眠深度の判定精度を向上することができる。
【0086】
なお、心拍による体表面の脈動は動きが速く、且つ動きが複雑であるため、実施の形態1の方法では心拍信号を抽出できない場合がある。すなわち、心拍の折り返し点以外にも速度がゼロになる点が多い(個人差も大きい)。このため、速度がゼロになることを手がかりとする実施の形態1の方法では、心拍を検出することが難しい。これに対し、実施の形態2の方法では、信号強度の時系列変化から心拍を検出するため、簡易に心拍を検出することができる。
【0087】
また、本実施の形態2では、心拍を検出する場合について説明したが、必ずしも心拍に限定されず、呼吸及び脈波などIQ検波により変化を情報として取得できるものであれば同様の方法で検出できる。
【0088】
また、本実施の形態2では、心拍数と心拍数変動幅との両方に基づいて自律神経の状態判定及び睡眠深度判定を行う例を示したが、心拍数と心拍数変動幅のどちらか一方に基づいて判定を行うようにしても良い。心拍数と心拍数変動幅との両方を用いた場合、多次元空間で判定することで、高精度に判定することが可能である。また、自律神経の状態と睡眠深度とには互いに関係性があることから、自律神経の状態を示す前記指標に基づいて睡眠深度を判定するようにしてもよい。
【0089】
実施の形態3.(体動検出)
実施の形態3は、生体状態として、特に体動を取得する生体状態取得装置について説明する。
【0090】
図32は、本発明の実施の形態3に係る生体状態取得システムの構成を示すブロック図である。図32において、図17に示した実施の形態2と同一部分には同一符号を付す。
実施の形態3の生体状態取得システム300は、生体状態取得手段52が、体動検出手段57と、自律神経状態判定手段54Bと、睡眠深度判定手段55Bとを備えており、その他の構成は実施の形態2と同様である。以下、実施の形態3が実施の形態2と異なる部分を中心に説明する。
体動検出手段57は、IQ信号取得手段51で取得された取得信号(I信号及びQ信号)のIQ平面上の軌跡から例えば寝返りなどの体動を検出するものである。
【0091】
体動検出手段57は、IQ信号取得手段51で取得された取得信号(I信号及びQ信号)のIQ平面上の点を原点からのベクトルで表現する(以下、このベクトル(IQ平面上の取得信号の位置ベクトル)をIQベクトルという)。体動が生ずるときは、心拍や呼吸と比べて体表面の動きは変位量が大きく、変位する時間は短い。よって、体動が生じた瞬間のIQベクトルのノルムは大きな値となる。体動検出手段57はこの特徴を利用して体動検出を行う。すなわち、体動検出手段57は、各サンプリング毎のIQベクトルのノルム又はノルムの自乗を算出し、単位期間(例えば5秒間)に得られたこれらの値を積算(積分または総和を算出)する。そして、積算値に対して閾値判定を行い、その単位期間における体動の有無を判定する。また、体動検出手段57は、体動の有無判定の結果に基づいて一定期間(例えば8分)内の体動数を算出する。
【0092】
自律神経状態判定手段54Bは、体動検出手段57で算出された体動数に基づいて自律神経の状態を判定する。
【0093】
睡眠深度判定手段55Bは、体動検出手段57で算出された体動数に基づいて睡眠深度を判定する。
【0094】
図33は、本発明の実施の形態3に係る演算装置における生体状態取得処理の流れを示すフローチャートである。
(S61:I信号及びQ信号取得)
生体状態取得システムにおいてIQ検波器20から出力されたI信号及びQ信号は、呼吸や心拍並びに体動も全て混在した信号である。このため、IQ検波器20から出力されたI信号及びQ信号を心拍及び体動検知用の高域のバンドパスフィルター32に通すことにより、心拍信号及び体動信号を抽出する。そして、この信号がAD変換器40でデジタル信号に変換されてIQ信号取得手段51に入力される。なお、バンドパスフィルター32の通過周波数帯域は予め設定されている。このように、IQ信号取得手段51は、ヒトの体表面の動きに応じてAD変換器40から時系列に順次出力されるIQ信号(心拍及び体動信号)を取得する。
【0095】
(S62:ノルム積算)
そして、体動検出手段57は、サンプリングタイム毎の取得信号(心拍信号及び体動信号が混在した信号)のIQベクトルのノルム(=I及びQそれぞれの自乗和の平方根)を算出し、単位期間(例えば、5秒)のノルムの積算値を算出する。
【0096】
(S63〜66:一定期間の体動数算出)
体動検出手段57は、単位期間のノルムの積算値と予め設定された閾値とを比較し(S63)、単位期間のノルムの積算値が閾値以上であれば体動有りと判定し、体動発生数としてカウントする(S64)。単位期間のノルムの積算値が閾値未満であれば、体動無しと判定する(S65)。ステップS31〜S34までの処理を一定期間(例えば8分)行う(S66)。
【0097】
(S67:自律神経の状態判定)
一定期間が経過すると、自律神経状態判定手段54Bは、ステップS63〜S66でカウントされた一定期間内の体動数に基づき自律神経の状態を判定するための指標を算出する。この指標は、体動数そのものの値であってもよいし、何らかの関数にそれぞれを代入して得られた値等でもよく、ここでは交感神経が優位なほど、大きい値を取るものとする。この指標により、自律神経の状態を判定することができる。例えば、指標と予め設定した閾値とを比較し、指標が閾値よりも大きい場合、交感神経優位と判定し、指標が閾値未満の場合、副交感神経優位と判定する。その他、例えば交感神経の活動度合いを判定するようにしてもよい。
【0098】
(S68〜S74:睡眠深度判定)
また、睡眠深度判定手段55Bは、一定期間の体動数に基づいて睡眠深度を判定する。次に、睡眠深度判定手段55Bの動作について説明する。
【0099】
睡眠中のヒトの体動は、睡眠深度によって様相が変化することが知られている。一般的に深睡眠中及びREM睡眠中の体動数は少なく、睡眠が浅くなるほど体動数が多くなり、覚醒状態では最も体動数が多くなる。よって、覚醒、浅睡眠、REM睡眠及び深睡眠をそれぞれ判定するための第1体動数閾値、第2体動数閾値(<第1体動数閾値)及び第3体動数閾値(<第2体動数閾値)を予め実験などにより求めて設定しておき、各閾値との比較により睡眠深度を判定する。
【0100】
すなわち、一定期間の体動数が第1体動数閾値以上であれば覚醒と判定する(S68、S69)。一定期間の体動数が第1体動数閾値未満で且つ第2体動数閾値以上であれば浅睡眠と判定する(S70、S71)。一定期間の体動数が第2体動数閾値未満で且つ第3体動数閾値以上であればREM睡眠と判定する(S72、S73)。一定期間の体動数が第3体動数閾値未満であれば深睡眠と判定する(S72、S74)。
【0101】
これらの各閾値は、学習期間を設けて1睡眠サイクル以上の睡眠データを取得し、その睡眠データに基づいて個人毎に設定するようにしてもよい。また、学習期間の睡眠データを所定のアルゴリズムに基づいて分析し、閾値となる値を判別して自動設定するようにしてもよい。
【0102】
演算装置50は以上のようにして判定された自律神経の状態及び睡眠深度の判定結果を例えば空気調和機等の外部機器に出力する。判定結果を受信した機器側では、判定結果に応じた機器制御が行われることになる。機器制御の具体例については後述の実施の形態6で説明する。
【0103】
以上説明したように、本実施の形態3ではIQベクトルのノルムの積算値から体動の有無を検出するようにした。すなわち、従来のような周波数解析などの負荷が高い処理が不要となり、低負荷で高速に体動の有無検出及び一定期間内の体動数算出を行うことができる。また、負荷が高い処理が不要となるため、安価な演算装置50を用いて体動情報を得ることができる。また、体動情報と相関の深い自律神経の状態及び睡眠深度を高速に判定することができる。なお、自律神経の状態と睡眠深度とには互いに関係性があることから、自律神経の状態を示す前記指標に基づいて睡眠深度を判定するようにしてもよい。心拍に伴った自律神経の活動を推定することで、生理モデルに沿った睡眠状態の判定が可能になる。
【0104】
実施の形態4.(呼吸、心拍及び体動の組合せ)
上記実施の形態1〜3では、生体状態取得手段52がそれぞれ呼吸検出手段53、心拍検出手段56、体動検出手段57を別々に備えた例を説明した。実施の形態4の生体状態取得システムにおける生体状態取得手段52は、これら全ての検出手段を備えた構成としたものである。
【0105】
図34は、本発明の実施の形態4に係る生体状態取得システムの構成を示すブロック図である。図34において、図1、図17、図32に示した実施の形態1〜3のブロック図と同一部分には同一符号を付す。
実施の形態4の生体状態取得システム400は、生体状態取得手段52が、実施の形態1〜3と同様の呼吸検出手段53、心拍検出手段56及び体動検出手段57を備えている。更に、生体状態取得手段52は、各検出手段53,56,57の検出結果(ヒト(生体)の呼吸数、呼吸周期変動(呼吸数変動)、心拍数、心拍数変動、体動数)を適宜組み合わせて自律神経状態を判定する自律神経状態判定手段54Cを備えている。また、生体状態取得手段52は、各検出手段53,56,57の検出結果(ヒト(生体)の呼吸数、呼吸周期変動(呼吸数変動)、心拍数、心拍数変動、体動数)を適宜組み合わせてヒトの睡眠深度を判定する睡眠深度判定手段55Cを備えている。これら複数の検出結果を組み合わせて自律神経の状態及び睡眠深度を判定することにより、心拍、呼吸及び体動のそれぞれのみを用いて自律神経の状態及び睡眠深度を判定する方法と比べて、高精度な判定が可能である。以下、実施の形態4が実施の形態1〜3と異なる部分を中心に説明する。
【0106】
図35は、浅睡眠(覚醒含む)、深睡眠及びREM睡眠のそれぞれの場合の体動、呼吸及び心拍の特徴を示した図で、単位期間の体動数、呼吸数及び心拍数をそれぞれ時系列にプロットした図である。なお、体動についてはIQベクトルのノルムの時系列データも図35と同様の特徴を示す線図となる。浅睡眠と覚醒とは、体動、呼吸及び心拍のそれぞれにおいて同様の特徴を有していることから、一つの項目にまとめている。なお、覚醒時の体動は、浅睡眠の場合に比べて更に体動の動きが大きく、また発生数も多い特徴を有しており、図中に点線で示している。
【0107】
図35から明らかなように、体動は、浅睡眠(覚醒含む)の場合、深睡眠及びREM睡眠の場合に比べて動きが大きくまた発生回数も多い。このため、体動情報により浅睡眠である第1状態か、深睡眠又はREM睡眠のどちらかである第2状態かを区別できる。また、実施の形態3で説明したように、体動数のみで深睡眠とREM睡眠とを区別することも可能ではあるが、両睡眠状態共、体動の動きが小さくまた発生回数が少ないため、高精度な睡眠状態の判定は難しい。しかし、図35の呼吸及び心拍に着目すると、呼吸及び心拍は深睡眠では安定し、REM睡眠では不安定であるという特徴がある。よって、呼吸と心拍のうち少なくとも一方を更に用いることにより深睡眠とREM睡眠とを区別することが可能である。
実施の形態4の演算装置50は、以上の特徴を踏まえた睡眠深度の判定を行う。
【0108】
図36は、本発明の実施の形態4に係る演算装置における生体状態取得処理の流れを示すフローチャートである。
(S81〜S83:体動、呼吸、心拍に関する情報取得)
生体状態取得手段52の体動検出手段57、呼吸検出手段53及び心拍検出手段56のそれぞれは、ある睡眠深度判定期間(例えば8分間)内において、体動、呼吸及び心拍をそれぞれ検出する。体動検出手段57、呼吸検出手段53及び心拍検出手段56のそれぞれの動作は上記実施の形態と同様であり、体動検出手段57は体動数を算出し(S81)、呼吸検出手段53は呼吸数及び呼吸周期の変動幅を算出する(S82)。心拍検出手段56は心拍数及び心拍数変動幅を算出する(S83)。
【0109】
(S84:自律神経状態判定)
そして、自律神経状態判定手段54Cは、体動、呼吸及び心拍に関する各種算出結果に基づき自律神経の状態を判定する。すなわち、体動発生数、呼吸数、呼吸周期の変動幅、心拍数及び心拍数の変動幅を複数組み合わせて用い、自律神経の状態を判定するための指標を算出する。この指標は何らかの関数にそれぞれを代入して得られた値等でもよく、交感神経が優位なほど、大きい値を取るものとする。この指標により、自律神経の状態を判定することができる。例えば、指標と予め設定した閾値とを比較し、指標が閾値よりも大きい場合、交感神経優位と判定し、指標が閾値未満の場合、副交感神経優位と判定する。その他、例えば交感神経の活動度合いを判定するようにしてもよい。
【0110】
(S85〜S91:睡眠深度判定)
また、睡眠深度判定手段55Cは、体動検出手段57で算出された一定期間の体動数に基づいて、まず、睡眠深度が覚醒又は浅睡眠の第1状態か、REM睡眠又は深睡眠のどちらかである第2状態かを区別する。すなわち、体動数が第2体動数閾値(実施の形態3の図33参照)以上で、且つ体動信号のIQベクトルのノルムの積算値が予め設定された第1体動積算値閾値よりも大きいか否かを判断する(S85)。この判断がYESであれば、睡眠深度が第1状態と判定し、覚醒又は浅睡眠のどちらかであると判断できる。
【0111】
この場合、続いて、睡眠深度が覚醒と浅睡眠のどちらであるかを区別するための判断を行う。すなわち、一定期間の体動数が第1体動数閾値(実施の形態3の図33参照)以上で、且つ体動信号のIQベクトルのノルムの積算値が予め設定された第2体動積算値閾値(>第1体動積算値閾値)以上の場合(S86)、覚醒と判定する(S87)。一方、このステップS87の判断がNOであれば、浅睡眠と判定する(S88)。
【0112】
また、ステップS85の判断がNOであり、第2状態と判定した場合、続いて、睡眠深度判定手段55Cは睡眠深度がREM睡眠又は深睡眠のどちらであるかを判定する。すなわち、呼吸と心拍の少なくとも一方が安定であるか、又は不安定であるかを判断する。不安定と判断した場合、REM睡眠と判定し(S90)、安定と判断した場合、深睡眠と判定する(S91)。安定又は不安定の判定は、呼吸数及び呼吸周期の変動幅、又は心拍数及び心拍数変動幅に基づいて行うようにすればよい。
【0113】
以上説明したように、本実施の形態4では、呼吸検出手段53、心拍検出手段56及び体動検出手段57の算出結果を組み合わせて自律神経の状態及び睡眠深度を判定する。これにより、心拍、呼吸及び体動のそれぞれのみを用いて自律神経の状態及び睡眠深度を判定する方法と比べて高精度で詳細な判定が可能である。すなわち、上記実施の形態3の体動検出手段57の算出結果のみでは高精度な判定が難しかった深睡眠とREM睡眠との判定精度を高めることが可能となる。なお、図36のフローチャートでは、呼吸及び心拍の両方を検出するようにしているが、少なくともどちらか一方を検出し、ステップS89では、検出した側の安定又は不安定を判定すればよい。
【0114】
ところで、上記実施の形態1〜4で用いる各閾値(第1呼吸数閾値、第2呼吸数閾値、第1心拍数閾値等)の設定は、例えば脳波等の測定データと組み合わせて、例えば以下のようにして求めることもできる。すなわち、脳波等の別装置の測定データに基づく睡眠深度の判別結果を基に、以下の方法で各閾値を求める。
数日間睡眠状態を測定する学習期間を設けて入眠から起床までの睡眠深度サイクルを学習し、その学習期間における学習データが、脳波等の別装置の測定データに基づく睡眠深度の判別結果と一致するように各閾値を設定する。
【0115】
また、睡眠深度判定手段55は、学習期間を設けて入眠から起床までの睡眠深度サイクルを学習し、その学習期間における睡眠深度サイクルが基本の睡眠深度サイクルに近づくように各閾値を変更するようにしてもよい。具体的には例えば、深睡眠の時間が全体の2〜3割の割合になるように各閾値を調整する。閾値の設定次第でREM睡眠、浅睡眠及び深睡眠それぞれの割合が変化するため、閾値の値を少しずつ変更しながら深睡眠の割合が全体の2〜3割となるように閾値を決定するようにしてもよい。
【0116】
また、体動のみで睡眠深度を判定する場合に、体動のみでは区別し難いREM睡眠と深睡眠とを区別するための閾値を決定する際には、以下のように設定してもよい。例えば深睡眠の割合を深睡眠とREM睡眠との合計に対して3〜4割(前記全体の2〜3割よりも少し高い値)となるように閾値を設定する。
【0117】
また、学習期間における睡眠深度サイクルが基本の睡眠深度サイクルに近づくように各閾値を変更する例として、他に例えば、睡眠中の90分の睡眠サイクルの繰り返し回数から各閾値を設定することも可能である。90分の睡眠サイクルの繰り返し回数を何回かに設定(例えば4回)し、その回数となるように各閾値を設定する。また、深睡眠の割合と睡眠サイクルの繰り返し回数から決定しても良い。また、例えば年齢などに応じて、深睡眠の割合や睡眠サイクルの繰り返し回数の傾向が異なる場合には、その年齢に応じた傾向に基づいて各閾値を設定するようにしてもよい。
【0118】
実施の形態5.(IQ平面上の軌跡の安定度に基づく自律神経の状態及び睡眠深度判定)
上記各実施の形態では、呼吸、心拍、体動に基づいて自律神経の状態及び睡眠深度を判定していたが、実施の形態5では、IQ平面上に描かれる軌跡から直接自律神経の状態及び睡眠深度を判定する生体状態取得システムについて説明する。
【0119】
図37は、本発明の実施の形態5に係る生体状態取得システムの構成を示すブロック図である。図37において、図1に示した実施の形態1と同一部分には同一符号を付す。
実施の形態5の生体状態取得システム500は、生体状態取得手段52が、安定度算出手段58と、自律神経状態判定手段54Dと、睡眠深度判定手段55Dとを備えている。また、バンドパスフィルター30Aの通過周波数帯域は、安定度算出手段58における安定算出処理に適した帯域として予め設定されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。以下、実施の形態5が実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
安定度算出手段58は、IQ信号取得手段51で取得された取得信号(I信号及びQ信号)のIQ平面上の軌跡の安定度を算出する。安定度の算出方法については後述する。測定対象となる生体が深睡眠中にあるときは筋肉の活動が安定するため、図38に示すように、取得信号はIQ平面上でほぼ同じ軌跡を繰り返し描く。一方、深睡眠以外の場合は、取得信号はIQ平面上に図39のような不安定な軌跡を描く。このように、軌跡の安定度は、覚醒、REM睡眠、浅睡眠、深睡眠の順に高くなり、睡眠深度と相関がある。よって、軌跡の安定度から睡眠深度を判定することが可能である。
【0120】
以下、安定度の算出方法の具体例について説明する。
(安定度の算出方法1)
IQ平面をM×M個の画素からなる量子化した有限平面で表現する。一定期間内に測定データがIQ平面上に描く軌跡に用いられる画素数をカウントし、この逆数を軌跡の安定度の指標とする。量子化したIQ平面上で用いられる画素数は、軌跡が不安定である度合いに応じて多くなる。よって、不安定であるほど安定度の指標は小さな値となり、これを安定度の指標とする。
【0121】
(安定度の算出方法2)
IQ平面上に一定期間に描かれる軌跡と、この直後に描かれる軌跡の類似度を算出し、これを軌跡の安定度の指標とする。類似度は相互情報量、相関係数などを用いる。
【0122】
睡眠深度判定手段55Dは、安定度算出手段58で算出した軌跡の安定度の指標を閾値判定することで睡眠深度を判定する。判定に用いる閾値(第1安定度閾値、第2安定度閾値及び第3安定度閾値)は、予め演算装置50内のメモリに記憶されていても良いし、個人別に自動設定するようにしてもよい。自動設定する場合には、学習期間を設けて1睡眠サイクル以上の睡眠データを取得し、その睡眠データから軌跡の安定度の分布推定を行い、その分布に基づいて適宜閾値を設定する。
【0123】
図40は、本発明の実施の形態5に係る演算装置における生体状態取得処理の流れを示すフローチャートである。
(S101:I信号及びQ信号取得)
生体状態取得システム500においてIQ検波器20から出力されたI信号及びQ信号は、呼吸や心拍並びに体動も全て混在した信号であるため、その信号をバンドパスフィルター30Aに通すことにより安定度算出に適した信号が抽出される。そして、この信号がAD変換器40でデジタル信号に変換されてIQ信号取得手段51に入力される。このように、IQ信号取得手段51は、ヒトの体表面の動きに応じてAD変換器40から時系列に順次出力されるIQ信号を取得する。
【0124】
(S102:一定期間の測定データをIQ平面上にプロット)
安定度算出手段58は、一定期間内にサンプリングタイム毎に得られる取得信号(I信号及びQ信号)をIQ平面上にプロットする。
【0125】
(S103:軌跡の安定度算出)
安定度算出手段58は、IQ平面上にプロットされたサンプリングタイム毎の取得信号が描く軌跡の安定度を算出する。なお、軌跡の安定度そのものを自律神経の状態を判定するための指標としてもよい。この指標により自律神経の状態を判定することができる。例えば、指標と予め設定した閾値とを比較し、指標が閾値よりも大きい場合、交感神経優位と判定し、指標が閾値未満の場合、副交感神経優位と判定する。その他、例えば交感神経の活動度合いを判定するようにしてもよい。
【0126】
(S104〜S110:睡眠深度判定)
睡眠深度判定手段55Dは、安定度算出手段58で算出された安定度と予め設定された第1安定度閾値、第2安定度閾値(<第1安定度閾値)、第3安定度閾値(<第2安定度閾値)とを比較し、睡眠深度を判定する。すなわち、安定度が第1安定度閾値以上であれば覚醒と判定し(S104、S105)、第1安定度閾値未満で且つ第2安定度閾値以上であればREM睡眠と判定する(S106、S107)。また、安定度が第2安定度閾値未満で且つ第3安定度閾値以上であれば浅睡眠と判定し(S108、S109)、第3安定度閾値未満であれば深睡眠と判定する(S108、S110)。
【0127】
演算装置50は以上のようにして判定された睡眠深度の判定結果を例えば空気調和機等の外部機器に出力する。判定結果を受信した機器側では、判定結果に応じた機器制御が行われることになる。機器制御の具体例については後述の実施の形態6で説明する。
【0128】
以上説明したように、実施の形態5では、一定期間内に取得信号がIQ平面上で描く軌跡の安定度を指標とし、これを基に自律神経の状態及び睡眠深度を判定するようにした。このため、上記実施の形態1〜4の場合と同様に、周波数解析などが不要で、低負荷、高速に自律神経の状態及び睡眠状態の判定が行える。また、心拍数又は呼吸数を算出することなく、軌跡の安定度から直接的且つ簡易に自律神経の状態及び睡眠深度を判定することができる。よって、体表面の動きが複雑で心拍数、呼吸数の誤算出が避けられないような場合でも、その影響を受けることなく自律神経の状態及び睡眠深度の判定が可能である。
【0129】
また軌跡の安定度に基づいて数値で閾値判定する方法だけでなく、以下の方法を用いても良い。IQ平面上に描かれた軌跡のうち、一定期間内にIQ平面上に描かれる軌跡のパターンを各睡眠深度毎(又は自律神経の状態毎)に予め記憶装置60に保持しておく。そして、記憶装置60に保持された軌跡パターンと、測定データ(IQ信号)による軌跡パターンとを照合し、最も似ているものを探索することで、睡眠深度を判定する。安定度の指標の数値的には同程度の軌跡を描く場合でも、このようにパターン判定することにより、軌跡の形状によって更に詳細に睡眠状態を分類することができる。また、照合用の軌跡パターンを各年代別、性別毎や、更には利用者毎に用意するようにすれば、より高精度に睡眠深度を判定することができる。なお、自律神経の状態も同様に、例えば交感神経優位や副交感神経優位等のそれぞれの状態に応じた軌跡パターンを予め保持しておくことで、詳細で高精度な自律神経状態の判定が可能となる。
【0130】
また、取得信号に基づく軌跡を、利用者毎の睡眠状態に応じた軌跡データと照合することにより、睡眠中の利用者が誰であるかを同定することが可能となる。このため、後述の実施の形態6で説明するように、生体状態取得装置の出力(睡眠深度)を機器(例えば空気調和機)の制御に使用する場合に、利用者に合わせた機器制御が可能となる。
【0131】
ところで、上記実施の形態1〜5の生体状態取得システムの睡眠深度判定手段は、ヒトの起床状態(一番目覚めかけている状態)を判定することも可能である。一般的に、REM睡眠の前後は目覚めやすく、REM睡眠後に起床すると快適に起床できる、また、自然と起床するとされている。このため、起床状態を検出し、そのタイミングで例えば目覚まし機能を有する機器を駆動するなどしてヒトを目覚めさせるようにすると、快適な起床を提供できる。
【0132】
以下、起床状態の判定方法について簡単に説明する。
入眠開始から一定時間後、又は睡眠サイクルの所定回数繰り返し後のREM睡眠の後、又はREM睡眠時間がある一定以上の時間となる場合の3つの条件のうち、少なくとも1以上の条件が満たされる状態を、起床状態(一番目覚めかけている状態)と判定する。入眠から起床までの睡眠中に、複数回、REM睡眠状態となるが、その各REM睡眠の時間は、起床に向けて徐々に長くなる。このため、REM睡眠の時間がある一定以上の時間となる場合を条件として、その条件を満たすREM睡眠後が起床状態にあると判定できる。起床状態を判定するための各条件は、学習機能に基づいて設定しても良い。
【0133】
また、実施の形態5のようにIQ平面上の軌跡パターンを用いて睡眠深度を判定する装置の場合、次のようにして起床状態を判定することも可能である。学習期間を設けて、少なくとも就寝から起床までを含む睡眠データを収集し、起床より一定期間前に現れるIQ平面上の軌跡を取得しておく。そして、その軌跡データを起床予兆データとして保持しておき、この起床予兆データに合致(類似)する測定データが得られるタイミングを起床状態と判定する。
【0134】
以上のようにして得られた起床状態は、上述したように例えば目覚まし機能を有する機器の制御に利用することができる。具体的には、起床状態にあるときに目覚めさせるよう、例えば室内の照度を徐々に上げたり、音を発生させるなど、目覚めを促す制御を行うようにすればよい。なお、目覚まし設定時刻で強制的に目覚めを促す制御を行うと、ヒトの睡眠状態が起床状態でない場合には快適な目覚めが得られない。よって、目覚まし設定時刻より前の起床状態のときに目覚めを促す制御を行うようにする。これにより、快適に起床できる上、設定時刻より前に起床できるため、時間も有効に利用できる。
【0135】
実施の形態6.
実施の形態6は、実施の形態1〜5で説明した生体状態取得システムを備えた機器に関するもので、特にここでは空気調和機について説明する。
【0136】
図41は、本発明の実施の形態1〜5に係る生体状態取得システムを備えた空気調和機の構成を示すブロック図である。図41には実施の形態1の生体状態取得システム100を備えた例を示しているが、実施の形態2〜4の何れの生体状態取得システムでも良い。なお、図41には、本発明に関わる要部の構成のみを示しており、空気調和機に通常備わる各種構成部の図示は省略している。
空気調和機600は、生体状態取得システム100と、室内空間を空調する空調手段610と、生体状態取得システムの取得結果に基づき空調手段610を制御するとともに空気調和機600全体の制御を行う演算装置620とを備えている。演算装置620はマイクロコンピューターで構成され、内部にCPU、ROM及びRAMを備えており、ROMに記憶されている各種プログラムに従って動作する。なお、生体状態取得システム100の演算装置50の生体状態取得プログラムを演算装置620に記憶することにより、演算装置620に生体状態取得装置としての機能を持たせるようにしてもよい。
【0137】
演算装置620は、生体状態取得手段52で取得した睡眠深度の判定結果に基づいて空調手段610を制御し、省エネで快適な睡眠環境を提供するための空調制御を行う。演算装置620には睡眠深度に応じた目標温度が予め設定されているものとする。この目標温度は、省エネ性や快適性を考慮して設定されたものとする。
【0138】
図42は、本発明の実施の形態6に係る空気調和機の制御を示すフローチャートである。
演算装置620は、生体状態取得システム100からの睡眠深度の判定結果を取得し(S121)、判定結果に応じた空調制御を行う。すなわち、判定結果がREM睡眠又は浅睡眠の場合には、その睡眠深度対応の目標温度に設定する(S122、S123)。判定結果が深睡眠の場合には深睡眠対応の目標温度に設定し(S122、S124)、起床時であれば、起床時対応の目標温度に設定する(S122、S125)。そして、演算装置620は、室内空間の温度が目標温度となるように空調手段610を制御する(S126)。
【0139】
以上説明したように、実施の形態6によれば、生体状態取得システム100で取得した睡眠深度の判定結果に基づいて自動で空調手段610を制御するので、省エネで快適な睡眠環境を提供することが可能である。
【0140】
なお、生体状態取得機能を備えた機器としては、上述したように目覚まし時計や空気調和機の他、例えば照明、芳香機能など5感を刺激する機能を有する機器、TVや音楽プレーヤーなどのAV機器、湯たんぽ、加湿器、除湿機、空気清浄機などの空調機器としても良い。
【0141】
また、快適な睡眠環境を提供する機器として、以下のような制御を行う機器を構成してもよい。入眠時に音や光を一定時間(例えば30分)かけて徐々に下げていき、入眠リズムを誘発する。睡眠中はノイズキャンセルなどの機能で周囲雑音を下げる。照度は起床に必要な条件である生体リズムをコントロールする作用があるため、起床時刻の前に、一定時間(例えば30分)かけて光の照度を上げていく。音は起床時間に大きくするように調整し、設定により不快な音量にまでコントロール可能とする。また、人体検知手段を設け、光がヒトに直接当たらないように調節する。調節方法はレンズのシボ、アクチュエータ、複数LEDのON/OFFのどの様な方法でも良い。人体検知でドップラレーダセンサー10のアンテナをヒトの方に向けるようにし、LEDはその方向とは違う位置に向けておけばよい。
【0142】
また、湯たんぽの場合は温度を徐々に下げていき、起床時に再び上昇させる。温湿度センサなどで発汗しない程度に温める事も可能である。
【0143】
なお、上記各実施の形態では、ドップラレーダセンサー10により常にセンシングしている場合を想定した説明を行ったが、省電力化のためにドップラレーダセンサー10を一定間隔で停止し、睡眠深度の判定間隔を空けるようにしてもよい。この場合、常にセンシングしている場合に比べ、消費電力を削減できる。しかし、停止時間が長い場合には睡眠深度判定に支障が出る。深睡眠の状態では体動がほとんどなく、起き辛い状態であるので、次の睡眠深度へと移行する確率が低い。このため、深睡眠の状態において停止時間を長く設定してセンシング間隔を長くするようにすれば、睡眠深度の判定に支障を出さずに省電力化が可能である。また、深睡眠時間が所定時間以上続いた場合には、センシングを一時停止するなどの方式にしてもよい。センシング時間を短くすることにより、更に省エネを行うことができる。また、浅睡眠ではその逆でセンシング間隔を短くすることにより睡眠深度判定に支障が出ないように制御を行う。このような制御を行う場合、通電する時間も短くなるので長寿命化にも効果がある。
【0144】
また、深睡眠時は、音、光、温度変化などの外来ノイズで目覚める確率が少ないので、機器としてノイズになるような制御を深睡眠時に行うようにしてもよい。例えば、空気調和機では、お掃除機能、風向変更、換気ファン駆動等を行うことができる。
【符号の説明】
【0145】
10 ドップラレーダセンサー、20 IQ検波器、30 バンドパスフィルター、30A バンドパスフィルター、31 バンドパスフィルター、32 バンドパスフィルター、40 AD変換器、50 演算装置、51 IQ信号取得手段、52 生体状態取得手段、53 呼吸検出手段、54 自律神経状態判定手段、54A 自律神経状態判定手段、54B 自律神経状態判定手段、54C 自律神経状態判定手段、54D 自律神経状態判定手段、55 睡眠深度判定手段、55A 睡眠深度判定手段、55B 睡眠深度判定手段、55C 睡眠深度判定手段、55D 睡眠深度判定手段、56 心拍検出手段、57 体動検出手段、58 安定度算出手段、60 記憶装置、100 生体状態取得システム、200 生体状態取得システム、300 生体状態取得システム、400 生体状態取得システム、500 生体状態取得システム、600 空気調和機、610 空調手段、620 演算装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の体表面に電磁波を送信し、その反射波をIQ検波して、I信号とQ信号を出力するIQ検波器から出力されたI信号とQ信号とを時系列に順次取得するIQ信号取得手段と、
該IQ信号取得手段で取得した取得信号のIQ平面上の軌跡に基づいて、前記生体の状態を取得する生体状態取得手段と
を有することを特徴とする生体状態取得装置。
【請求項2】
前記生体状態取得手段は、前記生体の呼吸を検出する呼吸検出手段を有することを特徴とする請求項1記載の生体状態取得装置。
【請求項3】
前記呼吸検出手段は、前記IQ平面上の軌跡から各取得信号間の速度ベクトルのノルムの時系列データを求め、該時系列データから1呼吸に対応する呼吸信号を検出して一定期間内の呼吸数を呼吸情報として算出する呼吸検出手段を有することを特徴とする請求項2記載の生体状態取得装置。
【請求項4】
前記呼吸検出手段は、呼吸の吸い込みと吐き出しの切り替わり時に前記速度ベクトルのノルムが略ゼロとなることによる、前記時系列データの波形の周期的な変動に基づいて1呼吸に対応する呼吸信号を検出することを特徴とする請求項3記載の生体状態取得装置。
【請求項5】
前記呼吸検出手段は、前記一定期間内の呼吸数と前記一定期間における呼吸周期の変動幅のうち少なくとも一方を呼吸情報として算出することを特徴とする請求項4記載の生体状態取得装置。
【請求項6】
前記生体状態取得手段は、前記呼吸検出手段で算出された前記呼吸情報の少なくとも1以上に基づいて前記生体の自律神経の状態を判定する自律神経状態判定手段を備えたことを特徴とする請求項3乃至請求項5の何れかに記載の生体状態取得装置。
【請求項7】
前記生体状態取得手段は、前記呼吸検出手段で算出された前記呼吸情報の少なくとも1以上に基づいて前記生体の睡眠深度を判定する睡眠深度判定手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至請求項5の何れかに記載の生体状態取得装置。
【請求項8】
前記呼吸検出手段は、前記一定期間内の呼吸周期の頻度分布を算出し、該頻度分布が略正規分布状の形状であるか否かに基づいて呼吸数のカウントが正常に行われているか否かを判断することを特徴とする請求項5記載の生体状態取得装置。
【請求項9】
前記呼吸検出手段は、前記呼吸周期の頻度分布が略正規分布状の形状ではなく、2つ以上の山を持つ形状である場合、正常な呼吸数のカウントが行われていないと判断し、前記山の個数Nに基づいて、過去の一定期間内の呼吸数を、N呼吸が1呼吸となるように補正することを特徴とする請求項8記載の生体状態取得装置。
【請求項10】
前記呼吸検出手段は、前記呼吸周期の頻度分布のモーメントを算出し、該モーメント算出結果に基づいて前記頻度分布が略正規分布状の形状であるか否かを判断することを特徴とする請求項8又は請求項9記載の生体状態取得装置。
【請求項11】
前記生体状態取得手段は、前記生体の心拍を検出する心拍検出手段を有することを特徴とする請求項1記載の生体状態取得装置。
【請求項12】
前記心拍検出手段は、IQ平面上の前記取得信号の位置ベクトルのノルムを算出し、そのベクトルノルムの時系列データをローパスフィルタ処理して心拍信号を抽出することを特徴とする請求項11記載の生体状態取得装置。
【請求項13】
前記心拍検出手段は、前記抽出した心拍信号の波形の周期的な変動に基づいて1心拍に対応する心拍信号を検出し、単位期間における心拍数を心拍情報として算出することを特徴とする請求項12記載の生体状態取得装置。
【請求項14】
前記心拍検出手段は、前記単位期間における心拍数を一定期間に渡って算出し、該一定期間内の心拍数の変動幅を心拍情報として算出することを特徴とする請求項12又は請求項13記載の生体状態取得装置。
【請求項15】
前記生体状態取得手段は、前記心拍検出手段で算出された前記心拍情報の少なくとも一つ以上に基づいて前記生体の自律神経の状態を判定する自律神経状態判定手段を備えたことを特徴とする請求項13又は請求項14記載の生体状態取得装置。
【請求項16】
前記生体状態取得手段は、前記心拍検出手段で算出された前記心拍情報の少なくとも1以上に基づいて前記生体の睡眠深度を判定する睡眠深度判定手段を備えたことを特徴とする請求項13又は請求項14記載の生体状態取得装置。
【請求項17】
前記心拍検出手段は、前記単位期間における心拍数を一定期間に渡って算出し、該一定期間内の心拍数の頻度分布を算出し、該頻度分布が略正規分布状の形状であるか否かに基づいて心拍数のカウントが正常に行われているか否かを判断することを特徴とする請求項13乃至請求項16の何れかに記載の生体状態取得装置。
【請求項18】
前記心拍検出手段は、前記心拍数の頻度分布が略正規分布状の形状ではなく、2つ以上の山を持つ形状である場合、正常な心拍数のカウントが行われていないと判断し、前記山の個数Nに基づいて、過去の前記一定期間内の心拍数を、N心拍が1心拍となるように補正することを特徴とする請求項17記載の生体状態取得装置。
【請求項19】
前記心拍検出手段は、前記心拍数の頻度分布のモーメントを算出し、該モーメント算出結果に基づいて前記頻度分布が略正規分布状の形状であるか否かを判断することを特徴とする請求項17又は請求項18記載の生体状態取得装置。
【請求項20】
前記生体状態取得手段は、IQ平面上の前記取得信号の位置ベクトルのノルムを単位期間分積算し、その積算値に対して閾値判定を行って前記単位期間内の体動の有無を判定する体動検出手段を備え、
該体動検出手段は、前記積算値が閾値以上の場合に体動有り、前記積算値が閾値未満の場合に体動無しと判定することを特徴とする請求項1記載の生体状態取得装置。
【請求項21】
前記体動検出手段は、体動の有無判定の結果に基づいて一定期間内の体動数を算出し、前記生体状態取得手段は、前記体動検出手段で算出された体動数に基づいて自律神経の状態を判定する自律神経状態判定手段を備えたことを特徴とする請求項20記載の生体状態取得装置。
【請求項22】
前記体動検出手段は、体動の有無判定の結果に基づいて一定期間内の体動数を算出し、
前記生体状態取得手段は、前記体動検出手段で算出された前記体動数に基づいて前記生体の睡眠深度を判定する睡眠深度判定手段を備えたことを特徴とする請求項20記載の生体状態取得装置。
【請求項23】
前記生体状態取得手段は、
前記生体の呼吸を検出して呼吸に関する呼吸情報を算出する呼吸検出手段と、前記生体の心拍を検出して心拍に関する心拍情報を算出する心拍検出手段のうち少なくとも一方と、
IQ平面上の前記取得信号の位置ベクトルのノルムを単位期間分積算し、その積算値に対して閾値判定を行い、前記単位期間内の体動の有無を判定し、判定結果に基づいて一定期間内の体動数を算出する体動検出手段と、
前記生体の自律神経の状態を判定する自律神経状態判定手段とを備え、
該自律神経状態判定手段は、前記呼吸検出手段と前記心拍検出手段のうち少なくとも一方の算出結果と、前記体動検出手段の算出結果とに基づいて自律神経の状態を判定することを特徴とする請求項1乃至請求項22の何れかに記載の生体状態取得装置。
【請求項24】
前記生体状態取得手段は、
前記生体の呼吸を検出して呼吸に関する呼吸情報を算出する呼吸検出手段と、前記生体の心拍を検出して心拍に関する心拍情報を算出する心拍検出手段のうち少なくとも一方と、
IQ平面上の前記取得信号の位置ベクトルのノルムを単位期間分積算し、その積算値に対して閾値判定を行い、前記単位期間内の体動の有無を判定し、判定結果に基づいて一定期間内の体動数を算出する体動検出手段と、
前記生体の睡眠深度を判定する睡眠深度判定手段とを備え、
該睡眠深度判定手段は、前記呼吸検出手段と前記心拍検出手段のうち少なくとも一方の算出結果と、前記体動検出手段の算出結果とに基づいて睡眠深度を判定することを特徴とする請求項1乃至請求項22の何れかに記載の生体状態取得装置。
【請求項25】
前記睡眠深度判定手段は、前記体動検出手段の算出結果に基づいて、浅睡眠である第1状態か、深睡眠又はREM睡眠のどちらかである第2状態かを判定し、
前記睡眠深度判定手段は、前記第2状態と判定した場合、前記呼吸検出手段と前記心拍検出手段のうち少なくとも一方の算出結果に基づいて、呼吸と心拍のうち少なくとも一方の安定度を判定し、安定度が高い場合、深睡眠と判定し、安定度が低い場合、REM睡眠と判定することを特徴とする請求項24記載の生体状態取得装置。
【請求項26】
前記生体状態取得手段は、
前記IQ信号取得手段で取得した取得信号のIQ平面上の軌跡の安定度の指標を算出する安定度算出手段と、
該安定度算出手段で算出された安定度の指標に基づいて前記生体の自律神経の状態を判定する自律神経状態判定手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の生体状態取得装置。
【請求項27】
前記生体状態取得手段は、
前記IQ信号取得手段で取得した取得信号がIQ平面上で描く前記軌跡の安定度の指標を算出する安定度算出手段と、
前記安定度算出結果で算出された安定度の指標に基づいて前記生体の睡眠深度を判定する睡眠深度判定手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の生体状態取得装置。
【請求項28】
自律神経の状態が反映されたIQ平面上の軌跡のパターンと睡眠深度が反映されたIQ平面上の軌跡のパターンのうち少なくとも一方を予め保持する記憶装置を備え、
前記生体状態取得手段は、前記IQ信号取得手段で取得した取得信号に基づくIQ平面上の軌跡と、前記記憶装置に記憶された軌跡のパターンとを照合することで、自律神経の状態と睡眠深度のうち少なくとも一方を判定することを特徴とする請求項26又は請求項27記載の生体状態取得装置。
【請求項29】
前記睡眠深度判定手段は、予め設定された閾値による閾値判定により、REM睡眠、浅睡眠及び深睡眠の何れの睡眠深度であるかを判定することを特徴とする請求項7、16、22の何れかに記載の生体状態取得装置。
【請求項30】
前記睡眠深度判定手段は、学習期間を設けて入眠から起床までの睡眠深度サイクルを学習し、その学習期間における睡眠深度サイクルが基本の睡眠深度サイクルに近づくように前記閾値を変更することを特徴とする請求項29記載の生体状態取得装置。
【請求項31】
前記睡眠深度判定手段は、入眠開始から一定時間後、又は睡眠サイクルの所定回数繰り返し後のREM睡眠の後、又はREM睡眠時間がある一定以上の時間となる場合の3つの条件のうち、少なくとも1以上の条件が満たされる状態を、目覚めかけている起床状態であると判定することを特徴とする請求項29記載の生体状態取得装置。
【請求項32】
コンピュータを、
請求項1乃至請求項31の何れかに記載の前記IQ信号取得手段と、
請求項1乃至請求項31の何れかに記載の前記生体状態取得手段として機能させるための生体状態取得プログラム。
【請求項33】
請求項1乃至請求項31の何れかに記載の生体状態取得装置と、
該生体状態取得装置で取得された生体状態に基づいて機器本体の運転を制御する演算装置と
を備えたことを特徴とする生体状態取得装置を備えた機器。
【請求項34】
請求項1乃至請求項31の何れかに記載の生体状態取得装置と、
室内空間を空調する空調手段と、
前記生体状態取得装置で取得された生体状態に基づいて前記空調手段を制御する演算装置と
を備えたことを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2011−15887(P2011−15887A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163637(P2009−163637)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】