説明

生体組織の輸送装置及び輸送方法

【課題】生体組織を含む医療用具の輸送中の品質を容易且つ迅速に証明可能とし、さらに、各医療用具の個体の正当性を証明可能とすることを目的とする。
【解決手段】IDを記憶した第1のメモリと、温度センサ及び無線通信機構を備えたICタグ10とを備えた輸送品格納容器1に生体組織を格納し、ICタグ10のIDを記憶可能な第2のメモリと、温度センサ及び無線通信機構を備えた第2のICタグ20とを備えた個装容器2に輸送品格納容器1を格納し、生体組織の輸送開始前に、ICタグ20のメモリに、ICタグ10の識別子の複製を格納し、恒温輸送容器3に個装容器2を格納し、恒温輸送容器3の制御装置が輸送中のICタグ10と20と通信を行い、輸送品格納容器1と個装容器2の温度センサの読み込んだ温度が予め設定した温度範囲から逸脱した場合には、ICタグ10の第1のメモリとICタグ20の第2のメモリに、温度に異常が発生した情報を書き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養細胞などの生体組織を輸送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人工的に培養した皮膚や角膜などの細胞組織や、検査のために採取した生体組織を含む医療用具を輸送する際には、細胞に損傷を与えることのないように所定の温度範囲を保持して搬送する技術が知られている(例えば、特許文献1)。これは、生体組織を含む医療用具を、断熱機能と蓄熱機能または加温機能を備えた容器に格納し、所定の温度範囲を維持しながら輸送するものである。そして、輸送途中の温度を補償するため、容器内の温度を記録する温度記録装置を備えている。
【特許文献1】特開2004−217290号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来例では輸送後に所定の温度範囲を保持していたかを検証する際には、上記温度記録装置の記録結果を参照して判断しなければならず、この検証作業に労力と時間を要するという問題があった。
【0004】
また、上記従来例では、多数の医療用具を同一の容器に格納して輸送する場合、容器への格納時に医療用具の取り違えなどの作業ミスがあると、納品先に到着してから指定された医療用具であるかを確認するまでは、作業ミス等による医療用具の個体の違いを発見できないという問題があった。特に、手術などのため医療用具が特定の患者に使用される場合、納品先の医療機関などに納品する医療用具が、当該患者用の製品であることを証明する必要があるが、上記従来例では、生体組織の保管温度のみを補償するだけであり、納品する製品の正当性を証明するのが難しいという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、生体組織を含む医療用具を輸送するに当たって、輸送中の品質を容易且つ迅速に証明可能とし、さらに、各医療用具の個体の正当性を証明可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、保温機能を有する容器に生体組織を格納して、前記生体組織を輸送する方法であって、予め設定した第1の識別子を記憶した第1の記憶部と、温度を測定する第1の温度センサ及び無線通信機構を備えた第1のICタグとを備えた第1の容器に前記生体組織を格納する手順と、前記第1のICタグの第1の識別子を記憶可能な第2の記憶部と、温度を測定する第2の温度センサ及び無線通信機構を備えた第2のICタグとを備えた第2の容器に前記第1の容器を格納する手順と、前記生体組織の輸送開始前に、前記第2の記憶部に、前記第1のICタグの第1の識別子の複製を格納する手順と、保温機能を備えた第3の容器に前記第2の容器を格納する手順と、前記第3の容器を輸送する手順と、前記第3の容器に備えた制御装置が輸送中の前記第1のICタグと第2のICタグと通信を行い、前記第1の温度センサと第2の温度センサの温度を読み込む手順と、前記第1の温度センサまたは第2の温度センサから読み込んだ温度が予め設定した温度範囲から逸脱した場合には、前記第1のICタグの第1の記憶部と前記第2のICタグの第2の記憶部に、温度に異常が発生した情報を書き込む手順と、を含む。
【0007】
そして、前記異常が発生した場合には異常が発生した情報を前記第3の容器に設けた表示装置に表示し、異常が発生していない場合には前記第1の温度センサまたは第2の温度センサの温度を前記表示装置に表示する。
【0008】
また、前記第1の容器と第2の容器を、輸送が完了した後に前記第1のICタグ及び第2のICタグとともに廃棄する。
【発明の効果】
【0009】
したがって、本発明は、輸送開始前に第1の容器を格納する第2の容器の第2のICタグに、第1のICタグの識別子を複写しておき、輸送完了後に第2のICタグに複写しておいた第1の識別子と、第1の容器の第1のICタグから読み込んだ第1の識別子を比較することで、極めて容易且つ迅速に納入された生体組織の正当性を保証することが可能となるのである。
【0010】
そして、生体組織の輸送中に第1または第2の容器に温度の異常が発生した場合には表示装置に異常の内容が表示される。したがって、第1または第2の容器を第3の容器から取り出す以前に、表示装置を視認することにより、極めて迅速且つ容易に異常の有無を知ることができるのである。
【0011】
また、第1及び第2のICタグを付した第1及び第2の容器2を使い捨てとすることで、容器の衛生状態を確保する一方、再利用による識別子の重複を回避でき、衛生面と情報(正当性)の信頼性を保証することができる。また、使い捨てとなる第1及び第2の容器2には第1及び第2のICタグを付すだけであるので、輸送コストの上昇を抑制しながら信頼性の高いサービスを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、第1の実施形態を示し、培養組織などの生体組織を格納する容器の構成を示し、図2は、当該容器を用いて生体組織を輸送する輸送システムの構成図である。
【0014】
図1において、輸送品格納容器(第1の容器)1はシャーレ状の容器であり、内部には培養した細胞や検体などの生体組織を含む溶液やゲルなどの医療用具11が格納される。そして、輸送品格納容器1の蓋1aには、固有の識別子(第1の識別子)を予め記憶したメモリと、輸送品格納容器1の温度を測定する温度センサとを内蔵するラベル状のパッシブタグ10(以下、温度センサ付きパッシブタグ、無線ICタグ、ICタグとも称する)が付されている。そして、この輸送品格納容器1は、1回の輸送が終了すると納品先で廃棄される使い捨ての容器として使用される。
【0015】
上記輸送品格納容器1は、円盤状の個装容器2(第2の容器)に格納される。個装容器2は、複数の輸送品格納容器1を内部に格納する容器であり、蓋2aには格納した複数の輸送品格納容器1の識別子(第1の識別子)などを書き込み可能なメモリを備えたラベル状の温度センサ付きパッシブタグ20が付されている。なお、個装容器2の温度センサ付きパッシブタグ20は、固有の識別子(第2の識別子)が予め設定されている。そして、この個装容器2は、1回の輸送が終了すると納品先で廃棄される使い捨ての容器として使用される。
【0016】
また、個装容器2は、断熱効果に優れた発泡スチロールなどで形成され、内部には輸送品格納容器1を保持するための構造(凹部等)を有し、輸送中に輸送品格納容器1が個装容器2から脱落しないように構成される。
【0017】
温度センサ付きパッシブタグ20への情報の読み書きは、リーダ・ライタ6とコンピュータ60を介して後述するように行われ、リーダ・ライタ6上に載置した個装容器2内に格納された輸送品格納容器1の温度センサ付きパッシブタグ10から識別子などを読み込んで、個装容器2の温度センサ付きパッシブタグ20に識別子などを書き込む。
【0018】
上記個装容器2は、円筒状の恒温輸送容器3に格納される。恒温輸送容器3は、複数の個装容器2を内部に重ねて格納する円筒状の容器であり、後述するように、個装容器2内の輸送品格納容器1を保温するための断熱部材と蓄熱部材で構成される。例えば、断熱部材で外部から熱的に遮断し、内部に設けた蓄熱部材により輸送品格納容器1内の生体組織を一定の温度(例えば、人間の体温程度)を保持する。
【0019】
そして、恒温輸送容器3(第3の容器)は、内部に格納した輸送品格納容器1や個装容器2の温度センサ付きパッシブタグ10、20との間で情報の読み書きを行う制御装置30(図2参照)を有する。また、恒温輸送容器3の蓋3aには、表示装置31が配置され、輸送品格納容器1の状態や異常の有無などを表示する。
【0020】
この恒温輸送容器3は単体で輸送の用途に用いることができるが、本実施形態では、より多くの輸送品格納容器1を輸送するため、複数の恒温輸送容器3を格納する搬送容器4を用いる例を説明する。
【0021】
搬送容器4(第4の容器)は、箱状の外形を備え、複数の恒温輸送容器3を格納する円筒状の凹部を備えている。搬送容器4は、複数の個装容器2を外部から熱的に遮断するため断熱部材を含んで構成される。
【0022】
そして、搬送容器4は、内部に格納した恒温輸送容器3の制御装置30との間で情報の読み書きを行う制御装置40(図2参照)を有する。また、搬送容器4の外周4aには、表示装置41が配置され、恒温輸送容器3に格納された輸送品格納容器1の状態や異常の有無などを表示する。
【0023】
このように、生体組織を保持する医療用具11は、入れ子状の搬送容器4、恒温輸送容器3、個装容器2、輸送品格納容器1に格納され、車両や航空機などで輸送される。
【0024】
なお、搬送容器4と恒温輸送容器3は、繰り返して使用されるのに対し、内部に格納した温度センサ付きパッシブタグ10、20を有する輸送品格納容器1と個装容器2は1回の使用で廃棄される。すなわち、輸送中の振動などにより液体やゲル等の医療用具11や生体組織が付着する可能性のある容器は使い捨てとして、容器の衛生状態を確保できる。また、これら輸送品格納容器1、個装容器2の温度センサ付きパッシブタグ10、20も使い捨てとなる。温度センサ付きパッシブタグ10、20には医療用具11や生体組織の識別子が記憶されており、再利用した場合に識別子が消去されないと、監視センタの管理サーバ5上の過去のデータに異なるデータが上書きされる恐れがある。このため、温度センサ付きパッシブタグ10、20を付した輸送品格納容器1と個装容器2を使い捨てとすることで、容器の衛生状態を確保する一方、識別子の重複を回避でき、衛生面と情報の信頼性を保証することができる。
【0025】
図2は、輸送システムの構成図で、搬送容器4の制御装置40(第2の制御装置)は、通信機装置(無線通信端末)を備えており携帯電話網や無線ネットワーク等の移動体通信網を介して監視センタの管理サーバ5と通信することができる。また、搬送容器4の制御装置40は、GPS衛星や移動体通信網を用いて現在位置を検出する位置検出装置を有しており、医療用具11の送り主や医療用具11を受け取る医療機関などは、管理サーバ5に問い合わせることで、輸送中の医療用具11の状態や現在位置を取得することができる。
【0026】
このため、管理サーバ5は、上記移動体通信網に接続される通信インターフェース50と、輸送品格納容器1や個装容器2の温度センサ付きパッシブタグ10、20から取得した情報を格納するデータベース51と、このデータベース51に対するアクセスを制御するデータ処理部52と、表示装置などを含む出力端末53などから構成される。なお、出力端末53は監視センタの管理者などが利用するものである。また、通信インターフェース50は、有線ネットワークにも接続されて上述の送り主や医療機関などと通信を行うことができる。
【0027】
図3は、温度センサ付きパッシブタグ10、20の構成を示すブロック図である。輸送品格納容器1と個装容器2に付す温度センサ付きパッシブタグ10、20は同一の構成であるので、温度センサ付きパッシブタグ10についてのみ説明する。
【0028】
図3において、輸送品格納容器1の表面に貼り付け可能なラベル(またはシール)111には、識別子などの情報を記憶するメモリと温度センサ101を含む温度センサ付きパッシブタグ10(無線ICタグ110)が取り付けられる。
【0029】
無線ICタグ110は、メモリ100に情報の読み書きを行い、また、温度センサ101から測定した温度の読込を行う制御部102と、恒温輸送容器3や搬送容器4の制御装置30、40と通信を行うためのアンテナ103が設けられる。制御部102は無線通信機能を有し、制御装置30から所定の信号を受信すると、メモリ100の読み書きや温度センサ101のデータを読み込んで制御装置30に送ったり、制御装置30からの情報をメモリ100へ書き込む。なお、メモリ100は記憶保持動作が可能なフラッシュメモリなどで構成される。なお、無線ICタグ110の構成は、例えば、特開2004−348469号などと同様に構成される。
【0030】
また、ラベル111の表面には、内容物に関する情報を印刷または手書き記入できる領域を有する。
【0031】
なお、温度センサ付きパッシブタグ10(無線ICタグ110)には、ユニークなIDを予め設定しておく。例えば、医療用具11や生体組織を輸送品格納容器1へ入れる際に、ラベル状の温度センサ付きパッシブタグ10を貼り付け、図1に示したリーダ・ライタ6等でユニークなID(識別子)をメモリ100に書き込んでおく。
【0032】
なお、個装容器2の温度センサ付きパッシブタグ20には、後述するように、輸送品格納容器1を格納した後にユニークなIDを書き込む。
【0033】
輸送品格納容器1に貼り付けられるラベル状の温度センサ付きパッシブタグ10に書き込まれる情報としては、上記IDの他に、次のような付加情報がある。なお、以下の例では、生体組織として培養組織を輸送する場合を示している。
【0034】
(1−1−1) 培養組織の注文番号等商品としての識別番号
(1−1−2) 搬送先病院名(または識別コード)
(1−1−3) 出荷日時
(1−1−4) 到着期限
(1−1−5) 培養組織を利用する患者名(またはカルテ等の識別コード)
(1−1−6) 患者本人を識別する情報(生年月日またはパスワードまたは指紋等のバイオメトリクス情報)
(1−1−7) 培養組織部位名称
(1−1−8) 出荷主名
(1−1−9) 異常情報(初期値は「正常」)、(異常種類、発生時刻)
(1−1−10) 容器種 (「輸送品格納容器」、「個装容器」)
また、個装容器2の温度センサ付きパッシブタグ20に書き込まれる情報としては、上記IDの他に、次のような付加情報がある。
【0035】
(1−2−1) 培養組織の注文番号等商品としての識別番号
(1−2−2) 搬送先病院名(または識別コード)
(1−2−3) 出荷日時
(1−2−4) 到着期限
(1−2−5) 培養組織を利用する患者名(またはカルテ等の識別コード)
(1−2−6) 格納する全ての「輸送品格納容器」に添付したタグのID(複数)
(1−2−7) 出荷主名
(1−2−8) 異常情報(初期値は「正常」)、(異常種類、発生時刻)
(1−2−10) 容器種別 (「輸送品格納容器」、「個装容器」)
次に、図4は、複数の個装容器2を格納するとともに搬送容器4に格納される恒温輸送容器3の構成を示す。
【0036】
円筒状の恒温輸送容器3は、内部に円盤状の個装容器2を複数(この例では3つ)積み重ねて収容する空間を有する容器本体3bと、容器本体3bの上部で開閉可能に形成された蓋3aを主体に構成される。
【0037】
容器本体3bは、個装容器2aを収容する空間を取り囲むように断熱材32が配置され、この空間の底部には各個装容器2及び個装容器2内の輸送品格納容器1を保温するための蓄熱材33が配置される。
【0038】
恒温輸送容器3の上部には開閉可能な蓋3aが設けられる。この蓋3aの内部には図5に示す制御装置30が配置される。
【0039】
蓋3aの上面には、制御装置30に接続されて内部の温度や異常の有無などの状況を報知する表示装置31が配置される。また、蓋3aの上面には搬送容器4と通信を行うための外部データ出力端子303、恒温輸送容器3の外部の温度を検知する蓋外部温度センサ301、さらに後述する電池を充電するための充電端子308が配置されている。
【0040】
蓋3aの内面には恒温輸送容器3の内部の温度を検知する蓋内部温度センサ302と、個装容器2と輸送品格納容器1の温度センサ付きパッシブタグ10、20と通信を行うリーダライタ311のアンテナ304と、蓋3aの開放を検知する蓋開閉センサ306が配置される。そして、制御装置30は恒温輸送容器3に加わる加速度を検知する加速度センサ307と、電池313の充電量を検知する電池残量センサ305を備えている。
【0041】
また、図示はしないが、蓋3aの所定の位置には制御装置30の起動・停止を行うためのスイッチが設けられる。
【0042】
次に、恒温輸送容器3の制御装置30について図5を参照しながら説明する。蓋3aの内部には、恒温輸送容器3の制御の中核となるセンサ制御回路310、アンテナ304を介して内部に格納した温度センサ付きパッシブタグ10、20と通信を行うリーダライタ311、収集した情報などを格納する記録メモリ312、各回路に電力を供給する電池(二次電池)313を主体に構成された制御装置30が配置されている。
【0043】
センサ制御回路310は、所定の周期で上記各センサや端子またはリーダライタ311からの情報を収集し、収集した情報を記録メモリ312に格納する。
【0044】
また、センサ制御回路310は、各センサから収集した情報から異常の有無を後述するように判定し、異常が検出されたときにはリーダライタ311により温度センサ付きパッシブタグ10、20に異常の種類と発生時刻を書き込む。この異常としては、恒温輸送容器3の内部温度や温度センサ付きパッシブタグ10、20が検出した温度が所定の範囲から逸脱したときや、予め設定した基準値を超える加速度が検出されたとき(衝撃の検知)、あるいは、輸送途中に蓋3aが開放されたとき等がある。
【0045】
次に、図6で示すように、搬送容器4の蓋4aには、内部に格納した複数の恒温輸送容器3を管理するための制御装置40を備える。
【0046】
搬送容器4の上部には開閉可能な蓋4aが設けられる。この蓋4aの内部には制御装置30が配置される。
【0047】
蓋4aの上面には、制御装置40に接続されて内部の温度や異常の有無などの状況を報知する表示装置31が配置される。また、蓋4aの上面には外部のコンピュータ(図示省略)と通信を行うための外部データ出力端子403、搬送容器4の外部の温度を検知する蓋外部温度センサ401、電池413を充電するための充電端子408が配置されている。さらに、蓋4aの上面には、図2に示した移動体通信網と通信を行うための無線端末用アンテナ415と、現在位置を検知するためにGPS衛星からの情報を受信するGPS用アンテナが配置される。
【0048】
蓋3aの内面には搬送容器4の内部の温度を検知する蓋内部温度センサ402と、格納した恒温輸送容器3の制御装置30と通信を行うための接続端子404と、蓋4aの開放を検知する蓋開閉センサ406とを備えている。そして、制御装置40は、搬送容器4に加わる加速度を検知する加速度センサ407と、電池413の充電量を検知する電池残量センサ405を備えている。なお、接続端子404は内部に格納した恒温輸送容器3の外部データ出力端子303に接触する。
【0049】
また、図示はしないが、蓋4aの所定の位置には制御装置40の起動・停止を行うためのスイッチが設けられる。
【0050】
次に、搬送容器4の制御装置40は、接続端子404を介して内部に格納した恒温輸送容器3と通信を行い、また、外部との通信を行って情報の収集または転送を行うセンサ制御回路410と、収集した情報などを格納する記録メモリ412と、無線端末用アンテナ415を介して移動体通信網と通信を行う無線端末モジュール414と、GPS用アンテナから受信した情報から搬送容器4の現在位置を測定するGPSモジュール416と、各回路に電力を供給する電池(二次電池)413を有する。
【0051】
センサ制御回路410は、所定の周期で上記各センサや接続端子404から情報を収集し、収集した情報を記録メモリ412に格納する。
【0052】
また、センサ制御回路410は、各センサから収集した情報から異常の有無を後述するように判定し、異常が検出されたときには接続端子404を介して恒温輸送容器3の制御装置30に対して輸送中の温度センサ付きパッシブタグ10、20に異常の種類と発生時刻を書き込むように指令する。
【0053】
次に、図7、図8は上記輸送品格納容器1、個装容器2、恒温輸送容器3、搬送容器4を用いて培養した生体組織を含む医療用具の輸送を行う際の準備を示す。図7は個装容器2の温度センサ付きパッシブタグ20に輸送品格納容器1の情報を書き込む際の説明図で、図8は個装容器2の温度センサ付きパッシブタグ20に輸送品格納容器1の情報を書き込む処理のフローチャートである。
【0054】
まず、生体組織を含む医療用具を格納する輸送品格納容器1には、格納する培養組織に関する情報を予め書き込んだ温度センサ付パッシブタグ(ICタグ)10を添付しておく。そして、輸送する輸送品格納容器1を、個装容器2へ格納する。
【0055】
個装容器2にもICタグ20を添付しておくが、このICタグ20には初期状態を表す情報が格納されている。
【0056】
そして、出荷の際には図7で示すように、必要数の輸送品格納容器1を格納した個装容器2を、コンピュータ60に接続されたリーダ・ライタ6に載置し、コンピュータ60では図8に示す処理を行う。
【0057】
図8において、S1では、リーダ・ライタ6上のすべてのICタグ10、20(図中ICタグ)の情報を読み出す。ここで、リーダ・ライタ6上のICタグ10、20は、輸送品格納容器1に添付したICタグ10にはすべて同じ付加情報が記録されているはずであり、個装容器2のICタグ20は初期状態であるので、1つだけ何も書かれていない(初期状態)はずである。
【0058】
S2では、読み出した値が上記のように1つが初期状態、残りはすべて同じ付加情報であるかを判定し、個装容器2のICタグ20のみが初期情報という状態でない場合は、S5に進んでコンピュータ50の表示装置上に異常を示すメッセージおよび、相違情報を表示する。
【0059】
読み出したICタグ10、20の値が、予想された状態(つまり、一つのICタグの付加情報が初期状態で、その他のICタグの付加情報が同一)である場合は、S3、S4に進んで全ての輸送品格納容器1に添付したICタグ10の情報を、個装容器2に添付したICタグ20に書き込む。このとき以下のコピー処理を行う。
(1−1−1)培養組織の識別番号 →(1−2−1)培養組織の識別番号
(1−1−2)搬送先病院名(または識別コード)→(1−2−2)搬送先病院名(または識別コード)
(1−1−3)出荷日時 →(1−2−3)出荷日時
(1−1−4)到着期限 →(1−2−4)到着期限
(1−1−5)培養組織を利用する患者名(またはカルテ等の識別コード)→(1−2−5)
(1−1−8)出荷主名 →(1−2−7)出荷主名
更に、輸送品格納容器1に添付した全てのICタグ10のID情報を、個装容器2のICタグ20の(1−2−6)の領域に格納し、(1−2−10)には「個装容器」情報を格納する。
【0060】
以上のように、リーダ・ライタ6で初期状態の個装容器2のICタグ20に、格納した輸送品格納容器1のICタグ10の情報を複写する。
【0061】
この後、図1で示したように、複数の個装容器2を恒温輸送容器3に格納して蓋3aを閉じ、恒温輸送容器3の制御装置30を起動する。そして、恒温輸送容器3を搬送容器4に格納し、蓋4aを閉じてから制御装置40を起動する。
【0062】
次に、恒温輸送容器3の制御装置30で行われる処理について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0063】
制御装置30の電源投入後では、記録メモリ312に設定されるすべてのフラグはOFFとし、加速度センサ307を常時動作させて常時加速度を監視する。そして、図9のフローチャートにしたがって、センサ制御回路310内のインターバルタイマ(図示省略)を用いて、定期的に(例えば5分に1回)各センサを駆動し、センサ制御回路310は各センサから測定値を読み込む。そして、各センサの値に基づいて異常の判定を行う。なお、加速度センサ307の測定値と開閉センサ306の検出値は、センサ制御回路310が所定期間(例えば5分間)だけ記録メモリ312に記憶する。
【0064】
まず、S10では、タグリーダライタ311により、恒温輸送容器3に格納した個装容器2のICタグ20と、個装容器2内の輸送品収納容器1のICタグ10のIDを読み込む。そして、S11、S12では個装容器2と輸送品収納容器1の各ICタグ10、20のそれぞれについて温度センサ101の測定値を読み込む。
【0065】
S13では、恒温輸送容器3の蓋3aに設けた蓋外部温度センサ301の測定値を読み込む。
【0066】
S14では、恒温輸送容器3の蓋3aに設けた蓋内部温度センサ302の測定値を読み込む。
【0067】
S15では、恒温輸送容器3の電池残量センサ305の測定値を読み込む。S16では、恒温輸送容器3の加速度センサ307の記憶値を記録メモリ312から読み込む。同様に、S17では、恒温輸送容器3の蓋開閉センサ306の記憶値を記録メモリ312から読み込む。
【0068】
次に、S18では、読み込んだ加速度と予め設定した加速度範囲を比較し、測定値が所定の加速度範囲を逸脱していれば大きな衝撃が加わる異常が発生したと判定してS19に進む。一方、加速度の測定値が所定の加速度範囲内であれば、加速度は正常であったと判定しS20に進む。
【0069】
加速度に異常があったS19では、記録メモリ312の「衝撃フラグ」をONにし、時刻(現在時刻)を記録する。既にフラグがONの場合には新たに記録せず、最初に生じた異常について記録する。
【0070】
次に、S20では、読み込んだ個装容器2と輸送品収納容器1の温度と予め設定した温度範囲を比較し、測定値が所定の温度範囲を逸脱していれば保管温度に異常が発生したと判定してS21に進む。一方、温度の測定値が所定の温度範囲内であれば、個装容器2と輸送品収納容器1の温度は正常であったと判定してS22に進む。
【0071】
個装容器2または輸送品収納容器1に異常があったS21では、記録メモリ312の「内部容器温度異常フラグ」をONにし、時刻(現在時刻)を記録する。既にフラグがONの場合には新たに記録せず、最初に生じた異常について記録する。この内部温度異常フラグは、格納している輸送品収納容器1と個装容器2に対応してそれぞれ設定され、ID毎に温度と時刻が記録される。
【0072】
次に、S22では、読み込んだ蓋外部温度センサ301の温度と予め設定した温度範囲を比較し、測定値が所定の温度範囲を逸脱していれば外部温度に異常が発生したと判定してS23に進む。一方、温度の測定値が所定の温度範囲内であれば、蓋3aの外部の温度は正常であったと判定しS24に進む。
【0073】
蓋3aの外部温度に異常があったS23では、記録メモリ312の「外部温度異常フラグ」をONにし、時刻(現在時刻)を記録する。既にフラグがONの場合には新たに記録せず、最初に生じた異常について記録する。
【0074】
次に、S24では、読み込んだ電池残量センサ305の電池残量(電圧)と予め設定した電圧とを比較し、測定値が所定の電圧以下であれば電池残量に異常が発生したと判定してS25に進む。一方、電圧の測定値が所定の電圧を超えていれば、電池313の電池残量が正常であったと判定しS26に進む。
【0075】
電池残量に異常があったS25では、記録メモリ312の「電池残量異常フラグ」をONにし、時刻(現在時刻)を記録する。既にフラグがONの場合には新たに記録せず、最初に生じた異常について記録する。
【0076】
次に、S26では、読み込んだ蓋内部温度センサ302の温度と予め設定した温度範囲を比較し、測定値が所定の温度範囲を逸脱していれば蓋内部温度に異常が発生したと判定してS27に進む。一方、蓋内部温度の測定値が所定の温度範囲内であれば、蓋3aの内部の温度は正常であったと判定しS28に進む。
【0077】
蓋3aの内部温度に異常があったS25では、記録メモリ312の「内部温度異常フラグ」をONにし、時刻(現在時刻)を記録する。既にフラグがONの場合には新たに記録せず、最初に生じた異常について記録する。
【0078】
次に、S28では、読み込んだ蓋開閉センサ306の検出値が開放を示す値(例えば、ON)になったか否かを比較し、検出値が開放を示していれば輸送中に蓋3aが開放される異常が発生したと判定してS29に進む。一方、蓋開閉センサ306の検出値が閉鎖を示す値(例えば、OFF)であれば、蓋3aの状態は正常であったと判定しS30に進む。
【0079】
蓋3aが開放されていたS27では、記録メモリ312の「蓋開状態フラグ」をONにし、時刻(現在時刻)を記録する。既にフラグがONの場合には新たに記録せず、最初に生じた異常について記録する。
【0080】
なお、上記S19、S21、S23、S25、S27、S29の異常情報記録処理では、上記異常フラグのうち、一つでもONのものがあれば、表示装置31に異常の発生を表示する。
【0081】
そして、S30では上記異常フラグのうち、一つでもONのものがあれば、タグリーダライタ311から、恒温輸送容器3内のすべてのICタグ10、20に対して、現在書かれている異常情報欄が「正常」の場合、あるいは異常種の優先度が低い場合に、上記異常情報のうちの発生している優先度の高い異常種と現在時刻を書き込む。また、異常の情報があった場合には、これらのデータを外部データ出力端子303から搬送容器4の制御装置40に送る。
【0082】
一方、全ての異常フラグがOFFの場合には、表示装置31に現在の輸送品格納容器1または個装容器2の温度を表示する。
【0083】
ここで、異常情報の優先度は、内部容器温異常>内部温度異常>衝撃>蓋開状態>外部温度異常>電池残量異常の順で低く設定される。
【0084】
なお、制御装置30がICタグ10、20に異常情報を書き込む記録モードは次の4種類がある。これらは恒温輸送容器3毎にあらかじめ設定されている(記録モードを切り替えるスイッチを備えても良い)。
【0085】
(D−1) 記録なしモード: 何も記録せず。
【0086】
(D−2) 全記録モード:すべてのセンサ情報を記録する。ただし、加速度センサ307の測定値は、継続的に取得しているため全てを記録するとデータ量が膨大となるので、加速度については異常発生時のみ記録する。
【0087】
(D−3) 異常時記録モード:上記S18〜S28の異常判定で、判定条件が成立した場合のみ記録する。
【0088】
以上のように、恒温輸送容器3の輸送中では、制御装置30が上記図9の処理を行い、恒温輸送容器3の内部(個装容器2、輸送品格納容器1)の状態を監視する。
【0089】
次に、搬送容器4の制御装置40で行われる処理について、図10のフローチャートを参照しながら説明する。
【0090】
制御装置40の電源投入後では、記録メモリ412に設定されるすべてのフラグはOFFとし、加速度センサ407を常時動作させて常時加速度を監視する。そして、図9のフローチャートにしたがって、センサ制御回路410内のインターバルタイマ(図示省略)を用いて、定期的に(例えば5分に1回)各センサを駆動し、センサ制御回路410は各センサから測定値を読み込む。そして、各センサの値に基づいて異常の判定を行う。なお、加速度センサ407の測定値と開閉センサ406の検出値は、センサ制御回路410が所定期間(例えば5分間)だけ記録メモリ412に記憶する。
【0091】
図10において、S40では、接続端子404を介して搬送容器4に格納した恒温輸送容器3から、全てのICタグ10、20のIDを読み込んで、S41では制御装置30の上記異常情報を読み込む。
【0092】
S42では、搬送容器4の蓋4aに設けた蓋外部温度センサ401の測定値を読み込む。
【0093】
S43では、搬送容器4の蓋4aに設けた蓋内部温度センサ402の測定値を読み込む。
【0094】
S44では、搬送容器4の電池残量センサ405の測定値を読み込む。S45では、搬送容器4の加速度センサ407の記憶値を記録メモリ412から読み込む。同様に、S46では、搬送容器4の蓋開閉センサ406の記憶値を記録メモリ412から読み込む。
【0095】
次に、S47では、読み込んだ加速度と予め設定した加速度範囲を比較し、測定値が所定の加速度範囲を逸脱していれば大きな衝撃が加わる異常が発生したと判定してS48に進む。一方、加速度の測定値が所定の加速度範囲内であれば、加速度は正常であったと判定しS49に進む。
【0096】
加速度に異常があったS48では、記録メモリ412の「衝撃フラグ」をONにし、時刻(現在時刻)を記録する。既にフラグがONの場合には新たに記録せず、最初に生じた異常について記録する。
【0097】
次に、S49では、読み込んだ蓋外部温度センサ401の温度と予め設定した温度範囲を比較し、測定値が所定の温度範囲を逸脱していれば外部温度に異常が発生したと判定してS50に進む。一方、温度の測定値が所定の温度範囲内であれば、蓋4aの外部の温度は正常であったと判定してS51に進む。
【0098】
蓋4aの外部温度に異常があったS50では、記録メモリ412の「外部温度異常フラグ」をONにし、時刻(現在時刻)を記録する。既にフラグがONの場合には新たに記録せず、最初に生じた異常について記録する。
【0099】
次に、S51では、読み込んだ電池残量センサ405の電池残量(電圧)と予め設定した電圧を比較し、測定値が所定の電圧以下であれば電池残量に異常が発生したと判定してS52に進む。一方、電圧の測定値が所定の電圧を超えていれば、電池413の電池残量が正常であったと判定しS53に進む。
【0100】
電池残量に異常があったS52では、記録メモリ412の「電池残量異常フラグ」をONにし、時刻(現在時刻)を記録する。既にフラグがONの場合には新たに記録せず、最初に生じた異常について記録する。
【0101】
次に、S53では、読み込んだ蓋内部温度センサ402の温度と予め設定した温度範囲を比較し、測定値が所定の温度範囲を逸脱していれば蓋内部温度に異常が発生したと判定してS54に進む。一方、蓋内部温度の測定値が所定の温度範囲内であれば、蓋4aの内部の温度は正常であったと判定しS55に進む。
【0102】
蓋4aの内部温度に異常があったS54では、記録メモリ412の「内部温度異常フラグ」をONにし、時刻(現在時刻)を記録する。既にフラグがONの場合には新たに記録せず、最初に生じた異常について記録する。
【0103】
次に、S55では、読み込んだ蓋開閉センサ406の検出値が開放を示す値(例えば、ON)になったか否かを比較し、検出値が開放を示していれば輸送中に蓋4aが開放される異常が発生したと判定してS56に進む。一方、蓋開閉センサ406の検出値が閉鎖を示す値(例えば、OFF)であれば、蓋4aの状態は正常であったと判定しS57に進む。
【0104】
蓋4aが開放されていたS56では、記録メモリ412の「蓋開状態フラグ」をONにし、時刻(現在時刻)を記録する。既にフラグがONの場合には新たに記録せず、最初に生じた異常について記録する。
【0105】
なお、上記S48、S50、S52、S54、S56の異常情報記録処理では、上記異常フラグのうち、一つでもONのものがあれば、表示装置41に異常の発生を表示する。
【0106】
そして、S57では制御装置40の上記異常フラグのうち、一つでもONのものがあれば、恒温輸送容器3の制御装置30から、恒温輸送容器3内のすべてのICタグ10、20に対して、現在書かれている異常情報欄が「正常」の場合、あるいは異常種の優先度が低い場合に、上記異常情報のうちの発生している優先度の高い異常種と現在時刻を書き込む。なお、異常情報の優先度は、上記恒温輸送容器3の制御装置30と同一である。
【0107】
一方、全ての異常フラグがOFFの場合には、表示装置41に現在の輸送品格納容器1または個装容器2の温度を表示する。
【0108】
また、搬送容器4の制御装置40から制御装置30を介してICタグ10、20に異常情報を書き込む記録モードは次の4種類がある。これらは恒温輸送容器3毎にあらかじめ設定されている(記録モードを切り替えるスイッチを備えても良い)。
【0109】
(D−1) 記録なしモード: 何も記録せず。
【0110】
(D−2) 全記録モード:すべてのセンサ情報を記録する。ただし、加速度センサ407の測定値は、継続的に取得しているため全てを記録するとデータ量が膨大となるので、加速度については異常発生時のみ記録する。また、制御装置30から送られてきた異常情報は制御装置30側でICタグ10、20に書き込んでいるのでそのままとし、制御装置30に返送しない。
【0111】
(D−3) 異常時記録モード:上記S48〜S56の異常判定で、判定条件が成立した場合のみ記録する。
【0112】
また、搬送容器4の制御装置40は、無線端末モジュール414を備えて監視センタの管理サーバ5と通信を行う。このとき、GPSモジュール416により、搬送容器4の現在位置を取得する。
【0113】
センサ制御回路410内のインターバルタイマ(図示省略)を用いて、定期的に(例えば10分に1回)外部への通信の回線接続を試みる。そして、接続に失敗した場合は一定時間後(例えば1分後)に再度試みる。N回(例えば3回)試みても接続できなかった場合は現在の通信処理は終了し、次回まで待機する。
【0114】
通信回線を接続できた場合には、記録メモリ412に記録しておいた異常情報やセンサ値等に加え、搬送容器4の現在位置を管理サーバ5に送信する。
【0115】
上記情報の送信後、送信先(管理サーバ5)からの返信信号を受信する。返信信号が受信できなかった場合、あるいは返信信号が「データ異常」であれば再度送信する。
【0116】
送信が完了すると、記録メモリ412に記録していたセンサ値等を消去する。
【0117】
以上の通信により、管理サーバ5には所定の周期で輸送中の搬送容器4〜輸送品収納容器1の状態と現在位置が蓄積され、医療用具11の送り主や医療用具11を受け取る医療機関などは、管理サーバ5に問い合わせることで、輸送中の医療用具11の状態や現在位置を取得することができる。
【0118】
以上のように、搬送容器4の輸送中では、制御装置40が上記図10の処理を行い、搬送容器4の内部(恒温輸送容器3、個装容器2、輸送品格納容器1)の状態を監視する。
【0119】
なお、搬送容器4の制御装置40に設けた外部データ出力端子403には、各測定毎に時刻と測定値、およびIDのデジタル値と、異常の判定結果(各フラグの値)を出力する。外部データ出力端子403に車両などのコンピュータを接続すれば、輸送中の医療用具11の状態を随時確認することができる。
【0120】
なお、無線端末モジュール414から外部へ通信しなかった場合、あるいはできなかった場合には、異常情報として記録メモリ412に記録しても良い。
【0121】
また、恒温輸送容器3の制御装置30は、ICタグ10、20から取得した温度の測定値から温度勾配(温度変化量)を求め、ICタグ10に書き込まれた上記(1−1−4)到着期限までに所定の温度範囲を維持できるか否かを判定し、維持できない場合には現在の輸送品収納容器1や個装容器2の温度が正常であっても、納入先への到着時に所定の温度範囲を逸脱する可能性があることを異常として記録しても良い。
【0122】
特に、恒温輸送容器3の保温能力は、蓄熱材33の蓄熱量に依存しており、外部の温度が変化すれば保温時間(保温可能期間)も変化するので、恒温輸送容器3の外部と内部の温度を測定し、保温可能期間を求め、到着期限まで保温能力が維持できない場合には、表示装置31、41などに警告を表示するようにしても良い。
【0123】
以上のような恒温輸送容器3の制御装置30及び搬送容器4の制御装置40の処理により、生体組織を含む医療用具11の輸送中に輸送品格納容器1や個装容器2に温度などの異常が発生した場合には表示装置31、41に異常の内容が表示される。したがって、輸送品収納容器1や個装容器2を恒温輸送容器3から取り出す以前に、搬送容器4や恒温輸送容器3の表示装置31、41を視認することにより、極めて迅速且つ容易に異常の有無を知ることができるのである。
【0124】
次に、個々の輸送品収納容器1の正当性の確認について、図11のフローチャートに基づいて説明する。この確認処理は、図7示したように、リーダライタ6とコンピュータ60を用いて行い、コンピュータ60は図11の処理を実行する。
【0125】
表示装置31、41に異常を示す情報が表示されていれば、輸送中の温度や加速度などは正常であることが保証される。搬送容器4から納入先に指定された恒温輸送容器3を取り出し、恒温輸送容器3から納入先に指定された個装容器2を納品する。
【0126】
納品された個装容器2を、上記リーダ・ライタ6に載置してから図11の処理を行う。S60では、個装容器2のICタグ20から上記S3、S4で複写された輸送品収納容器1のICタグ10のID(1−2−6)を読み込む。また、個装容器2内の輸送品収納容器1のICタグ10のIDを読み込む。
【0127】
そして、S61にて、個装容器2から読み出した輸送品収納容器1のICタグ10のIDと、輸送品収納容器1のICタグ10から読み出したIDを比較し、一致するか否かを判定する。一致しない場合には、S64に進んで輸送品収納容器1のICタグ10のIDが個装容器2のICタグ20に複写されたIDと一致しない旨のエラー表示を行う。
【0128】
2つのIDが一致した場合には、S62へ進んで、ICタグ10、20に異常情報があるか否かを判定し、異常情報がなければS63に照合結果は正常と表示する。異常情報があった場合には、S65に進んで異常情報の内容を表示する。
【0129】
このように、輸送開始時に個装容器2のICタグ20に、個装容器2に格納された輸送品収納容器1のICタグ10のIDを複写しておき、納入先でICタグ20に複写しておいたIDと、輸送品収納容器1のICタグ10のIDが一致することを確認することで、輸送品収納容器1内の医療用具11の正当性を保証できるのである。
【0130】
なお、上記第1実施形態において、ICタグ10、20のラベル111を温度により色が変わる温度ラベルを添付してもよく、この場合、所定の温度範囲を逸脱すると温度ラベルが変色することから、温度に異常が発生したことを容易に知ることができる。
【0131】
以上のように、温度センサ付きパッシブタグ10、20を付した輸送品格納容器1と個装容器2を使い捨てとすることで、容器の衛生状態を確保する一方、IDの重複を回避でき、衛生面と情報(正当性)の信頼性を保証することができる。また、使い捨てとなる輸送品収納容器1と個装容器2にはICタグ10、20を付すだけであるので、輸送コストの上昇を抑制しながら信頼性の高いサービスを提供できる。
【0132】
そして、輸送品収納容器1を格納する個装容器2のICタグ20に、輸送品収納容器1のICタグ10のIDを複写しておくことで、複写しておいたIDと輸送品収納容器1のICタグ10のIDを比較することで、極めて容易且つ迅速に納入された医療用具11の正当性を保証することが可能となるのである。
【0133】
また、上記第1実施形態においては、医療用具11の温度を保持するために蓄熱材を用いたが、前記従来例と同様に加温装置を備えることができる。
【0134】
また、上記第1実施形態においては、輸送開始の際に、輸送品収納容器1の温度センサ付きパッシブタグ10のIDを、個装容器2の温度センサ付きパッシブタグ20に複写する際に外部のリーダ・ライタ6を用いたが、恒温輸送容器3の制御装置30が前記IDの複写を行うようにしても良い。
【0135】
また、上記第1実施形態において、輸送後の輸送品収納容器1の温度センサ付きパッシブタグ10のIDと個装容器の温度センサ付きパッシブタグ20に格納された輸送品収納容器1のIDの照合を、リーダ・ライタ6に接続したコンピュータ60で行ったが、図示はしないが、照合機能を備えたリーダ・ライタのみで行うようにしても良い。
【0136】
<第2実施形態>
図12は第2の実施形態を示し、図5に示した恒温輸送容器3の制御装置30に無線端末モジュール314とGPSモジュール316及び無線端末用アンテナ315とGPS用アンテナ317を設けたもので、その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0137】
この第2の実施形態では、前記第1実施形態の搬送容器4を用いることなく、恒温輸送容器3単体で輸送品収納容器1を輸送することができ、前記第1実施形態の搬送容器4の制御装置40と同様に、現在位置を含めて輸送品収納容器1の状態を管理サーバ5に送信することができる。この場合、少量の医療用具11を単一の納入先へ輸送する際には、搬送容器4が不要となるためコストを削減することができる。
【0138】
また、上記実施形態では、生体組織を含む医療用具11を輸送する例を示したが、温度管理と個体の識別を必要とする物体の輸送であれば、本発明を適用することができる。
【0139】
<第3実施形態>
図13は第3の実施形態を示し、図2に示した管理サーバ5と、搬送容器4の間に無線通信を中継する外部中継装置9を設け、搬送容器4の制御装置40の無線端末モジュール414で近距離無線通信を行うようにしたもので、その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0140】
この第2の実施形態では、外部中継装置9は、近距離無線通信網に接続する近距離無線通信モジュール93と、携帯電話網に接続する無線端末モジュール92を備え、近距離無線通信網と携帯電話網の相互変換が可能となっている。
【0141】
搬送容器4の制御装置40は、近距離無線通信網を利用して管理サーバ5と通信することができ、電池413の消耗を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上のように、本発明では輸送中の環境と個体の同一性を保証できるので、生体組織を含む医療用具の輸送システムや輸送方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の輸送品収納容器と個装容器と恒温輸送容器及び搬送容器の関係を示す説明図。
【図2】輸送システムの概要を示す構成図。
【図3】温度センサ付きパッシブタグの構成を示すブロック図。
【図4】恒温輸送容器の断面図。
【図5】恒温輸送容器の制御装置のブロック図。
【図6】搬送容器の制御装置のブロック図。
【図7】リーダ・ライタによる輸送品収納容器と個装容器の温度センサ付きパッシブタグへの読み書きの様子を示す説明図。
【図8】リーダ・ライタによる個装容器の温度センサ付きパッシブタグへの書き込みの処理の流れを示すフローチャート。
【図9】恒温輸送容器の制御装置で行われる処理の流れを示すフローチャート。
【図10】搬送容器の制御装置で行われる処理の流れを示すフローチャート。
【図11】納入先のコンピュータで行われる照合処理のフローチャート。
【図12】第2の実施形態を示し、恒温輸送容器の制御装置のブロック図。
【図13】第3の実施形態を示し、輸送システムの概要を示す構成図。
【符号の説明】
【0144】
1 輸送品格納容器
2 個装容器
3 恒温輸送容器
4 搬送容器
10 温度センサ付きパッシブタグ(第1のICタグ)
11 医療用具
20 温度センサ付きパッシブタグ(第2のICタグ)
30、40 制御装置
31、41 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保温機能を有する容器に生体組織を格納し、前記生体組織を輸送する輸送装置において、
前記生体組織を格納する第1の容器と、
前記第1の容器を格納する第2の容器と、
保温機能を備えて前記第2の容器を格納する第3の容器と、
前記第1の容器に付されて、予め設定した第1の識別子を記憶した第1の記憶部と、温度を測定する第1の温度センサ及び無線通信機構を備えた第1のICタグと、
前記第2の容器に付されて、前記第1のICタグの第1の識別子を記憶可能な第2の記憶部と、温度を測定する第2の温度センサ及び無線通信機構を備えた第2のICタグと、
前記第3の容器に配置されて、前記第1のICタグと第2のICタグと通信を行い前記第1及び第2の記憶部の情報を読み出しまたは書き込みを行い、前記第1の温度センサと第2の温度センサの温度を読み込む制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記第1の温度センサまたは第2の温度センサから読み込んだ温度を予め設定した温度範囲と比較して、前記読み込んだ温度が前記温度範囲から逸脱した場合に、前記第1のICタグの第1の記憶部と前記第2のICタグの第2の記憶部に、温度に異常が発生した情報を書き込むことを特徴とする生体組織の輸送装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記異常が発生した場合には異常が発生した情報を表示し、異常が発生していない場合には前記第1の温度センサまたは第2の温度センサの温度を表示する表示装置を有することを特徴とする請求項1に記載の生体組織の輸送装置。
【請求項3】
前記第1の容器と第2の容器は、前記第1のICタグ及び第2のICタグとともに使い捨て可能に形成されたことを特徴とする特徴とする請求項1に記載の生体組織の輸送装置。
【請求項4】
前記第1のICタグの第1の記憶部から前記第1の識別子を読み込んで、この第1の識別子を前記第2のICタグの第2の記憶部へ書き込むリーダライタを備え、前記第2の記憶部は前記第1の識別子の複製を保持することを特徴とする請求項1に記載の生体組織の輸送装置。
【請求項5】
前記リーダライタは、第2のICタグの第2の記憶部に保持された第1の識別子の複製と、前記第1のICタグの第1の記憶部から第1の識別子とを読み込み、
前記リーダライタに接続された計算機が、前記第1の識別子と第1の識別子の複製が一致するか否かを判定することを特徴とする請求項4に記載の生体組織の輸送装置。
【請求項6】
前記第3の容器は、蓄熱材により前記第1及び第2の容器の保温を行い、
前記制御装置は、
前記第3の容器の内部の温度を測定する内部温度センサと、
前記第3の容器の外部の温度を測定する外部温度センサと、
前記外部の温度と内部の温度及び前記蓄熱材の蓄熱量から保温可能期間を演算し、前記保温可能期間が経過する場合には前記表示装置に警告を表示することを特徴とする請求項2に記載の生体組織の輸送装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
移動体通信網に接続する通信部を有し、
前記前記第1の温度センサ及び第2の温度センサから読み込んだ温度と、前記異常が発生した情報を前記通信部から送信することを特徴とする請求項1に記載の生体組織の輸送装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
現在の位置を検出する位置検出部を有し、
前記前記第1の温度センサ及び第2の温度センサから読み込んだ温度と、前記異常が発生した情報に加えて、現在の位置を前記通信部から送信することを特徴とする請求項7に記載の生体組織の輸送装置。
【請求項9】
前記第3の容器を複数格納する第4の容器と、
前記第4の容器に配置されて、前記第3の容器の制御装置と通信を行い、前記第1の温度センサと第2の温度センサの温度及び前記異常が発生した情報を読み込む第2の制御装置と、を備え、
前記第2の制御装置は、前記温度または異常が発生した情報を表示する第2の表示装置を有することを特徴とする請求項1に記載の生体組織の輸送装置。
【請求項10】
保温機能を有する容器に生体組織を格納して、前記生体組織を輸送する方法であって、
予め設定した第1の識別子を記憶した第1の記憶部と、温度を測定する第1の温度センサ及び無線通信機構を備えた第1のICタグとを備えた第1の容器に前記生体組織を格納する手順と、
前記第1のICタグの第1の識別子を記憶可能な第2の記憶部と、温度を測定する第2の温度センサ及び無線通信機構を備えた第2のICタグとを備えた第2の容器に前記第1の容器を格納する手順と、
前記生体組織の輸送開始前に、前記第2の記憶部に、前記第1のICタグの第1の識別子の複製を格納する手順と、
保温機能を備えた第3の容器に前記第2の容器を格納する手順と、
前記第3の容器を輸送する手順と、
前記第3の容器に備えた制御装置が輸送中の前記第1のICタグと第2のICタグと通信を行い、前記第1の温度センサと第2の温度センサの温度を読み込む手順と、
前記第1の温度センサまたは第2の温度センサから読み込んだ温度が予め設定した温度範囲から逸脱した場合には、前記第1のICタグの第1の記憶部と前記第2のICタグの第2の記憶部に、温度に異常が発生した情報を書き込む手順と、
を含むことを特徴とする生体組織の輸送方法。
【請求項11】
前記異常が発生した場合には異常が発生した情報を前記第3の容器に設けた表示装置に表示し、異常が発生していない場合には前記第1の温度センサまたは第2の温度センサの温度を前記表示装置に表示する手順を含むことを特徴とする請求項10に記載の生体組織の輸送方法。
【請求項12】
前記第1の容器と第2の容器を、輸送が完了した後に前記第1のICタグ及び第2のICタグとともに廃棄する手順を含むことを特徴とする特徴とする請求項10に記載の生体組織の輸送方法。
【請求項13】
前記輸送が完了した後に前記第1のICタグの第1の記憶部から前記第1の識別子を読み込む手順と、
前記第2のICタグの第2の記憶部に保持された第1の識別子の複製を読み込む手順と、
前記第1の識別子と第1の識別子の複製が一致するか否かを判定する手順と、
を含むことを特徴とする請求項10に記載の生体組織の輸送方法。
【請求項14】
前記第3の容器の内部の温度を測定する手順と、
前記第3の容器の外部の温度を測定する手順と、
前記外部の温度と内部の温度及び前記蓄熱材の蓄熱量から保温可能期間を演算する手順と、
前記保温可能期間が経過する場合には前記表示装置に警告を表示する手順と、
を含むことを特徴とする請求項11に記載の生体組織の輸送方法。
【請求項15】
前記前記第1の温度センサ及び第2の温度センサから読み込んだ温度と、前記異常が発生した情報を移動体通信網から管理計算機に送信する手順を含むことを特徴とする請求項10に記載の生体組織の輸送方法。
【請求項16】
前記第3の容器の現在の位置を検出する手順と、
前記前記第1の温度センサ及び第2の温度センサから読み込んだ温度と、前記異常が発生した情報に加えて、現在の位置を移動体通信網から管理計算機に送信する手順と、
を含むことを特徴とする請求項10に記載の生体組織の輸送方法。
【請求項17】
前記第3の容器を第4の容器に格納する手順と、
前記第4の容器に配置された第2の制御装置で、前記第3の容器の制御装置と通信を行い、前記第1の温度センサと第2の温度センサの温度及び前記異常が発生した情報を読み込む手順と、
前記温度または異常が発生した情報を前記第4の容器に設けた第2の表示装置に表示する手順と、
を含むことを特徴とする請求項10に記載の生体組織の輸送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−240809(P2006−240809A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57734(P2005−57734)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】