生体試料観察計測システムおよび生体試料観察計測方法
【課題】生細胞(生体試料)の蛍光強度等を正確、かつ、リアルタイム測定することが可能で、生細胞(生体試料)へのダメージを低減する。
【解決手段】所定の観測条件を記憶し、生体試料が持つ活性に基づき所定の観測条件を制御する生体試料観察計測システム1を提供する。所定の観測条件とは、例えば観測・培養に関する情報(項目)であって、具体的には、生体試料の種類、培養温度、pH、播種濃度、細胞密度、播種からの時間、蛍光色素種類、蛍光素濃度、投入薬剤の有無、生体試料に照射される光の量(例えば、照射光強度/1細胞、照射光照度等)、照射光の波長、照射光の連続性(CW、パルス周波数、パルス幅)、1回の照射時間、観測回数、観測間隔等を示す。生体試料とは生きている組織(生体組織)や細胞(生細胞)を指す。生体試料は培養細胞でもよいし、生体から取り出した組織でもよい。さらにはin vivo(生体内)観測における生体でもよい。
【解決手段】所定の観測条件を記憶し、生体試料が持つ活性に基づき所定の観測条件を制御する生体試料観察計測システム1を提供する。所定の観測条件とは、例えば観測・培養に関する情報(項目)であって、具体的には、生体試料の種類、培養温度、pH、播種濃度、細胞密度、播種からの時間、蛍光色素種類、蛍光素濃度、投入薬剤の有無、生体試料に照射される光の量(例えば、照射光強度/1細胞、照射光照度等)、照射光の波長、照射光の連続性(CW、パルス周波数、パルス幅)、1回の照射時間、観測回数、観測間隔等を示す。生体試料とは生きている組織(生体組織)や細胞(生細胞)を指す。生体試料は培養細胞でもよいし、生体から取り出した組織でもよい。さらにはin vivo(生体内)観測における生体でもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料を経時的に観察・計測する生体試料観察計測システムおよび生体試料観察計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料を経時的に観察・計測(以下、「観測」とする。)するシステムとして、特許文献1のような例が挙げられる。この技術では、特定の一細胞に由来する細胞群を培養することや、細胞を培養する過程で相互作用させる細胞を特定しながら培養観察すること、細胞濃度を一定にしたまま細胞を培養すること、培養している細胞群の中の特定の細胞のみにシグナル物質等の薬剤等の細胞と相互作用する物質を散布し、その細胞と他の細胞との変化の違いを観察すること等を可能とする技術手段を提供している。
【0003】
このために、基板上に設けた凹部からなる細胞培養部と、細胞培養部の上面を覆う半透膜と、半透膜上部に設けた培養液交換部とを有する細胞培養容器を備え、細胞培養容器への細胞培養液の供給手段と、細胞培養部内の細胞を長期観察することのできる顕微光学手段とを備えている。
また、観測対象を生体としたものに、特許文献2のような例もある。この技術は蛍光内視鏡に関するもので、生体へ蛍光剤を注入し蛍光像を検出することで、その蛍光像から生体組織の変性や癌等の疾患状態(種類や浸潤度)を診断するものである。
【特許文献1】特開2002−153260号公報
【特許文献2】特開平7−155290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生体試料は環境による影響を受け、活性を損ない易い。例えば、生体試料は光に対して非常に弱く、一定以上の時間、光に曝されると簡単に死滅する。つまり、光により活性が低下するという性質を生体試料は有するといえる。言い換えれば、照射光は生体試料に対して毒性を有するといえる。そこで、照射光の持つ毒性、あるいはこの毒性に対する生体試料の耐性を考慮しないまま、生体試料に照射光を照射して観測を行うと、生体試料の活性が徐々に低下していく(活性が失われていく)。その結果、観測開始時点と略同じ活性状態の生体試料で観測ができないので、観測結果の信頼性を著しく低下させることとなる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、信頼性の高い観測結果を得ることができる生体試料観察計測システムおよび生体試料観察計測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明は、所定の観測条件を記憶するとともに、生体試料が持つ活性に基づき前記所定の観測条件を制御する生体試料観察計測システムを提供する。
また、生体試料を保持する培養ユニットと、前記培養ユニットに照射光を導く照明ユニットと、前記培養ユニットを撮像する撮像ユニットと、撮像した画像や所定の観測条件を記憶する記憶部と、演算部と、前記培養ユニット、前記照明ユニットおよび前記撮像ユニットの制御を行う制御部とを有する処理ユニットとを備え、前記演算部は、前記生体試料がもつ活性度を求める工程と、前記所定の観測条件に基づいて光毒性値を求める工程と、閾値を求める工程を備え、前記制御部が、前記閾値に基づいて、前記培養ユニット、前記照明ユニットおよび前記撮像ユニットの少なくとも1つを制御する生体試料観察計測システムを提供する。
【0007】
また、所定の観測条件を制御して生体試料の観測を行う生体試料観察計測システムであって、前記所定の観測条件は、前記生体試料が持つ活性から求めた閾値よりも低い値の光毒性値となるように設定されている生体試料観察計測システムを提供する。
また、所定の観測条件を記憶するとともに、生体試料が持つ活性に基づき前記所定の観測条件を制御する生体試料観察計測方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、観測の開始から終了までの間、生体試料の活性劣化を防止できる。言い換えると、観測の開始から終了までの間、観測結果に影響を及ぼさない程度に、生体試料の活性を維持することができる。よって、観測開始時点の活性度を維持したまま、生体試料の観測を行うことが可能となる。また、観測開始時点の活性度よりもある程度活性が低下する場合であっても、その低下の度合いが観測結果に影響を及ぼさない程度となるようにして、生体試料の観測を行うことが可能となる。このように、観測結果に影響を及ぼさない程度に生体試料の活性を確実に維持して観測ができるので、信頼性の高い観測結果を得ることができる。
【0009】
また、生体試料の活性劣化を防止できるので、短時間(短期間)はもちろん、長時間(長期間)にわたっても、生体試料を正確かつリアルタイムに観測することが可能となる。特に、蛍光観測において、長時間にわたって生体試料から発する蛍光の量を正確に観測することができる。
また、生体試料の活性の度合(活性度)に応じて観測の続行や中止を行うことができ、生体試料の死滅を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
生体試料観察計測システム、あるいは生体試料観察計測方法(以下、本システムとする。)の説明に先立って、用語について説明をしておく。
【0011】
「生体試料」について
「生体試料」とは生きている組織(生体組織)や細胞(生細胞)を指す。生きている組織や細胞は、培養組織や培養細胞でもよいし、生体から取り出した組織や細胞でもよい。さらにはin vivo(生体内)観測における組織や細胞でもよい。
【0012】
「所定の観測条件」について
「所定の観測条件」とは、例えば、観測に関連する情報(項目)である。観測に関連する情報は、より具体的には、生体試料に照射される光の量(例えば、照射光強度/1細胞、照射光照度等)、1回の照射時間、照射回数、照射間隔、照射光の連続性(連続発振(発光)かパルス発振(発光)か、パルス発振の場合のパルス周波数やパルス幅)、照射光の波長、照射量および照射範囲、1回の観測時間、観測回数、観測間隔、1回の撮像時間、撮像回数、撮像間隔等である。
【0013】
また、上記の観測に関連する情報の組み合わせから得られる新たな情報も、所定の観測条件に含まれる。例えば、図30に示す関係から、観測期間は下記式によって求めることができる。
観測期間=(1回の照射時間+照射間隔)×照射回数
ここで、照射が行われるごとに観測(撮像)が行われた場合、照射回数は観測回数(撮像回数)と等しくなる。よって、観測期間は以下のように表すこともできる。
観測期間=(1回の照射時間+照射間隔)×観測(撮像)回数
【0014】
なお、図30では、観測開始と1回目の照射における照射開始のタイミングが一致し、観測終了とN回目の照射における照射終了のタイミングが一致している。しかしながら、必ずしも、これらのタイミングを一致させる必要はない。すなわち、観測開始の後に、1回目の照射における照射を開始してもよい。あるいは、N回目の照射における照射終了の後に、観測を終了してもよい。
【0015】
また、図31(a)では、照射開始と観測開始、照射終了と観測終了を同じにして観測を実行している。このような場合、照射時間(1回分)と観測時間(1回分)、照射間隔(1回分)と観測間隔(1回分)は、それぞれ等しくなる。ただし、照射開始と観測開始、照射終了と観測終了を異ならせて観測を実行してもよい。この場合、照射時間(1回分)と観測時間(1回分)、照射間隔(1回分)と観測間隔(1回分)は異なる。
なお、総照射時間と総観測時間は、各々以下のように表される。
総照射時間=1回の照射時間×照射回数
総観測時間=1回の観測時間×観測回数
【0016】
図31(a)の場合、総照射時間と総観測時間は同じになるが、図31(b)の場合、両者の値は異なる。
なお、図31(b)では、照射開始後に観測を開始し、照射終了前に観測を終了している。しかしながら、照射開始前に観測を開始しても、照射終了後に観測を終了してもよい。
【0017】
また、光の量としては、放射量と測光量で表される量がある。放射量としては、放射束、放射強度、放射輝度、放射照度および放射発散度のいずれか、あるいはこれらの組み合わせで表される量がある。また、測光量としては、光束、光度、輝度、照度、光束発散度および光量のいずれか、あるいはこれらの組み合わせで表される量がある。
【0018】
また、上記の観測に関連する情報は、光源の種類、励起フィルタの種類、リレー光学系の種類、対物レンズの種類、コンデンサレンズの種類、各種フィルタの種類(NDフィルタや吸収フィルタを含む)等によって決まる。例えば、照射光の波長は、観測に関連する情報の1つである。この照射光の波長は、光源の種類や励起フィルタの種類を選択すれば自動的に決まる。そして、光源や励起フィルタは、いずれも本システムを構成する構成物である。このように、所定の観測条件である照射光の波長が、光源や吸収フィルタ、すなわち、本システムを構成する構成物によって決まることから、本システムを構成する構成物も所定の観測条件ということができる。
【0019】
このように、光源、励起フィルタ、リレー光学系、対物レンズ、コンデンサレンズおよび各種フィルタは、いずれも本システムを構成する構成物であって、所定の観測条件に必要なものである。よって、これらの構成物自体も所定の観測条件に含まれる。
また、観測に適した画像を得るには、撮像ユニットに入射する光の量を調整するか、撮像時間を調整すればよい。光の量や撮像時間を調整手する段としては、撮像ユニットの電子シャッタがある。よって、撮像ユニットも所定の観測条件とすることができる。あるいは、機械的シャッタを撮像ユニットとは別に設けてもよい。このような場合、機械的シャッタも所定の観測条件に含まれる。
【0020】
また、生体試料情報としては、生体試料の種類(名称)、生体試料の組織密度、生体試料を培養する環境(温度、湿度、培養液のpH、二酸化炭素濃度)、生体組織の接着状態、生体試料が培養組織か非培養組織か、生体試料に投入される薬剤の有無、投入された薬剤の種類、生体試料を播種するときの濃度、生体試料を播種してからの経過時間等がある。生体試料情報の内容は、観測開始時に既に決まっている。よって、生体試料情報は、基本的には観測条件に含まれない。しかしながら、例えば、観測中に培養環境を変化させて観測を行うこともあり得る。よって、生体試料情報も、観測条件とすることができる。
【0021】
また、蛍光色素情報としては、蛍光色素の種類、蛍光色素の濃度等がある。この蛍光色素情報の内容も、観測開始時に既に決まっている。よって、蛍光色素情報は、基本的には観測条件に含まれない。しかしながら、例えば、観測中に蛍光色素の濃度を変化させて観測を行うこともあり得る。よって、蛍光色素情報も観測条件にすることができる。
【0022】
このように、所定の観測条件には、(1)本システムを構成する構成物自体(例えば、レーザ、対物レンズ、NDフィルタあるいはCCD等)、(2)観測に関連する情報、および(3) 観測に関連する情報や構成物自体の特性を定量的に表す数値(前者であれば、例えば、10mW(光の量)という数値や、488nm(照射光の波長)という数値、後者であれば、例えば、4%(NDフィルタの減光率)という数値等。)が含まれる。また、場合によって、生体試料情報や蛍光色素情報が、所定の観測条件に含まれる。
なお、以下の説明では、「所定の観測条件」を単に「観測条件」と称する。
【0023】
「光毒性」について
「光毒性」に関しては、「光がある種の物質を励起して光化学反応が生じ、皮膚や目の生体組織を傷害する現象。」(最新医学大事典、第2版、医歯薬出版株式会社)と定義されている。このように、光とある種の物質(原因物質あるいは光毒性物質)の少なくとも2つが、光毒性に関与している。よって、この定義によれば、光毒性は、光に関する情報とある種の物質に関する情報で表現されることになる。
【0024】
一方、本システムでは、光を、生体試料の活性に影響を及ぼす主要因としている。そこで、本システムにおける説明では、「光毒性」を「照射光が持つ毒性」とする。よって、「原因物質(光毒性物質)に関する情報」を含まない形で、光毒性を表現している。なお、光毒性の度合いを数値化したものを、光毒性値とする。
また、本システムにおいて、光毒性によって障害が発生する対象は、皮膚や目という限定された生体組織だけでない。また、生体組織を構成する細胞も、光毒性によって障害が発生する対象に含まれる。
【0025】
「活性度」について
「活性度」は、生体試料における活性の度合いを数値化したものである。生体試料の活性が低下する原因としては、例えば、光照射により細胞内で発生する活性酸素や、光照射により細胞内で発生する熱が考えられる。どのような原因にせよ、生体試料は光が照射されたらすぐに死滅するわけではなく、活性が徐々に低下していく。なお、光の量があまりにも多い(光毒性があまりにも強い)場合、生体試料は瞬時に死滅することもあるが、ここでは想定していない。よって、生体試料は、光毒性に対して、ある程度は耐性を有しているといえる。この光毒性に対して生体試料が持っている耐性を「耐光毒性」とする。また、耐光毒性の度合いを数値化したものを、耐光毒性値とする。
【0026】
ここで、耐光毒性と生体試料の活性との間には相関がある。すなわち、耐光毒性が高ければ活性も高く、耐光毒性が低ければ活性も低い。よって、耐光毒性値と活性度は、例えば、図32(a)に示すような関係となる。この関係から、生体試料の活性は、耐光毒性(耐光毒性値)でも表せることになる。以下では、活性あるいは活性度という表現を主に使用して説明するが、活性あるいは活性度を耐光毒性あるいは耐光毒性値に置き換えても技術的内容に違いは生じない。また、図32(a)では、活性と耐光毒性との関係を線形としたが、非線形の場合もある。
【0027】
また、光毒性値と生体試料の活性度との間にも相関がある。すなわち、光毒性値が大きければ活性度の変化量(劣化の割合)も大きく、光毒性値が小さければ活性度の変化量も小さい。よって、光毒性値と活性度の変化量は、例えば、図32(b)に示すような関係となる。なお、図32(b)では、光毒性値と活性度の変化量の関係を線形としたが、非線形の場合もある。
【0028】
また、光毒性値と活性度との関係を、時間を横軸にとって表すと、例えば、図33(a)のようになる。実線は光毒性値がゼロの場合、一点鎖線は光毒性値が小さい場合、破線は光毒性値が大きい場合を示している。光毒性値がゼロの場合、活性度は初期値のままである。また、光毒性値がゼロではない場合、時間の経過と共に、活性度は徐々に低下していく。なお、図33(a)のグラフでは、生体試料の活性を低下させる他の要因(光毒性以外の要因)は考慮していない。
【0029】
「閾値」について
「閾値」とは、生体試料が所定の活性を維持することができる限界を示す数値である。上述のように、生体試料は光毒性に対する耐性、すなわち、耐光毒性を有する。そして、耐光毒性は、生体試料の活性と相関がある。よって、生体試料が所定の活性を維持できるか否かは、活性度、光毒性値および閾値によって決まることになる。
【0030】
活性度、光毒性値および閾値の関係は、例えば、図33(b)のようになる。図33(b)に示すように、閾値は活性度に対して設定することができる。光毒性値が大きい場合は、光毒性値が小さい場合に比べて活性度の変化量が大きい(図33(a))。そのため、光毒性値が大きい場合では、光毒性値が小さい場合と比べて、短い時間で活性の劣化が生じる。よって、光毒性値が小さい場合と比べて、短い時間で活性度が閾値を下回る。
【0031】
また、図33(b)において、初期値と閾値の差(Δ)が、許容できる活性度の変化量である。そこで、図34に示すように、光毒性値と活性度の変化量のグラフから、光毒性値に対して閾値を設定することができる。この場合、閾値は、光毒性値を使って表すことができる。
【0032】
なお、閾値は、活性度そのものから求めることができる。あるいは、活性度を基にしてさらに演算や推測を行い、得られた結果から閾値を求めてもよい。光毒性値に対して閾値を設定する場合も、活性度の情報は必要である。結局、閾値を求めるには、活性度を求めることが必要となる。
【0033】
また、所定の活性とは、観測結果に影響を及ぼさない程度(すなわち、信頼性の高い観測結果を得ることできる程度)の活性のことである。観測結果の信頼性は、観測目的や観測者の主観等で変わるので、閾値の設定基準もこのような要因によって変わる。
また、生体試料の活性が劣化したという状態は、生体試料の活性が閾値を下回った状態のことをいう。例えば、図33(b)を見ると、t0からt1の区間で活性が徐々に低下している。しかしながら、この区間の活性度は閾値以上である。よって、この区間では生体試料の活性は劣化していないことになる。よって、生体試料の活性が劣化した状態を示している区間は、t1以降の区間となる。
【0034】
「観測法」について
「観測法」とは光を用いて生体試料を観測する手段である。観測法の例としては、蛍光観察、明視野、位相差、ホフマン、偏射、微分干渉、暗視野等がある。なお、生体試料を観察することが可能であれば、例示以外の観測法であってもよい。また、各観測法の検出方法として、共焦点、非共焦点いずれを用いてもよい。
【0035】
「記憶」について
「記憶」とは本システムで得られる情報や、本システムを制御する情報を、メモリやデータベースに登録、保存あるいは記録することである。本システムで得られる情報の例としては、生体試料の画像がある。また、本システムを制御する情報としては、観測条件がある。本システムでは、観測に先立ってこの観測条件を設定する場合や、観測中に観測条件を変更する場合、新たな観測条件を追加する場合がある。いずれの場合においても、設定、変更あるいは追加された観測条件を記憶・記録することは「記憶」に含まれる。
【0036】
「制御」について
「制御」とは、記憶した観測条件に基づいて、本システムを構成する構成物を作動させることである。なお、構成物は、記憶した観測条件のみに基づいて作動するわけではなく、観測条件以外の情報によっても作動可能である。よって、少なくとも記憶した観測条件に基づいて構成物が作動可能になっていればよい。
【0037】
ここで、本システムを作動させるには、本システムを構成する構成物のうち、作動に必要な構成物を選択することが必要になる。例えば、本システムは、照射光を照射する光学系(照明光学系)として、透過光学系と落射光学系を構成物として備えている。このようなシステムで、蛍光観察法で生体試料の観測を行う場合、透過光学系と落射光学系のうちから、落射光学系を選択する。さらに、落射光学系に使用する光源や光学フィルタを選択する。よって、制御には、本システムの構成物自体を選択することが含まれる。
【0038】
また、選択した構成物についても、その構成物が持つパラメータを選択する場合がある。ここで、上述のように、構成物が持つパラメータは観測に関連する情報でもある。例えば、光源には多波長の光を発生させるものがある。このような光源を選択した場合、複数の波長のうちから照射光の波長を選択する必要がある。照射光の波長は光源が持つパラメータのうち1つであるが、一方では観測に関連する情報でもある。よって、制御には、構成物のパラメータすなわち観測に関連する情報を選択することが含まれる。
【0039】
また、観測に関連する情報についても、その観測に関連する情報を定量的に表す数値を設定する場合がある。例えば、選択した光源(レーザ)が30mWまでの青色の光を出力できる場合、生体試料に照射される光の量(観測に関連する情報)として10mWを設定する。よって、制御には、観測に関連する情報の数値を設定することが含まれる。
【0040】
前述のように、(1)本システムを構成する構成物自体、(2)観測に関連する情報(構成物が持つパラメータ)および(3)観測に関連する情報を定量的に表す数値は、いずれも観測条件に含まれる。よって、観測条件の制御には、これらの観測条件を選択(追加や削除を含む)すること、設定すること、変更すること、あるいは数値を入力することも含まれる。また、強制的に観測を停止することも制御に含まれる。
【0041】
本システムの形態について説明する。
本システムは、所定の観測条件を記憶するとともに、生体試料が持つ活性に基づき所定の観測条件を制御するものである。
【0042】
なお、観測条件の制御は、観測者が行っても、システムが自動的に行ってもよい。観測条件の制御では、まず、選択・設定・変更された観測条件が記憶部に記憶される。そして、生体試料の活性に基づいて評価が行われる、その評価結果に基づいて、システムが観測者に観測条件に関して新たな制御を促す。あるいは、システムが自動的に、観測条件に関して新たな制御を行う。あるいは、生体試料の活性を劣化させない観測条件しか設定できないように、観測条件をシステムが制御する。
【0043】
また、この観測条件の制御は、観測を開始する前に行ってもよいし、観測中に(リアルタイムで)行ってもよい。制御は、観測結果に関係なく行ってもよいし、観測中に得た観測結果に基づいて行ってもよい。観測条件の制御が観測中に行われた場合は、新たに制御された観測条件に基づいて観測が行われる。また、評価は、1つの観測条件が制御されるごとに行ってもよいし、全ての観測条件が制御された後に行ってもよい。
【0044】
次に、より好ましい形態について、以下に述べる。
本システムでは、観測条件とその寄与度をデータベースとして有している。この寄与度は、観測条件ごとに設定されていて、数値で表現されている。このようにすれば、制御された観測条件の有効性(観測が実行可能な観測条件か否か)を、データベースを使って評価することができる。
【0045】
また、データベースは、観測条件の組み合わせ(複数)で構成されていてもよい。この場合、観測条件の組み合わせ(寄与度の組み合わせ)は、生体試料の活性を低下させないことを前提とした組み合わせとなっている。よって、制御された観測条件の組み合わせをデータベースに登録された観測条件の組み合わせと比較するだけで、制御された観測条件の有効性の判断が簡単にできる。
【0046】
また、データベースは、観測条件の組み合わせ(複数)と光毒性値で構成されていてもよい。この光毒性値は、組み合わせごとに設けられている。よって、光毒性値と生体試料が持つ耐光毒性から、制御した観測条件が生体試料の活性を劣化させるか否かについて、判断が簡単にできる。なお、観測条件の組み合せ(寄与度の組み合わせ)は、生体試料の活性を低下させないことを前提としていなくてよい。
【0047】
このような構成によれば、データベースをもとにして、生体試料の活性を劣化させない観測条件を制御することができる。その結果、信頼性の高い観測結果を得ることができる。また、生体試料の長期観測が可能となる。また、数値化された寄与度をもとに、観測条件をさらに最適な観測条件へ観測者自身が制御することも可能である。
【0048】
また、観測条件に基づいて光毒性値を求める機能をシステムが備えてもよい。なお、以降の説明において、「求める」には算出すること、推測することおよび類推することが含まれる。光毒性値を求めるには、所定の演算を行うことが必要になる。よって、システムには、光毒性値を求める機能として、演算部を有することが好ましい。
【0049】
また、独自式(独自の演算式)をもとにして光毒性値を求めてもよい。このとき、独自式は、6つの変数(照射光の波長、1回の照射時間、生体試料に照射される光の量、照射間隔、照射回数、照射光の連続性)のうち、少なくとも2つの変数を有する関数で表現することができる。全ての変数を使った場合、独自式Dは以下のように表される。
【0050】
D=f(λ,t,I,b,n,p)
ここで、λは照射光の波長、tは1回の照射時間、Iは生体試料に照射される光の量、bは照射間隔、nは照射回数、pは照射光の連続性である。
【0051】
なお、照射光の波長は、単一の波長だけでなく、ある幅を持った範囲(波長幅)で表すことができる。また、例えば、n(λ)というように、1つの変数が関数で表され、その関数の変数が、他の変数であるというようにしてもよい。(n(λ)では、照射回数は、照射光の波長の関数で表されている。)
【0052】
なお、1回目の照射から2回目の照射の間、生体試料には照射光が照射されていない。この間では、生体試料の活性は低下しない。逆に、活性が向上することもある。よって、照射間隔は、基本的には生体試料の活性に関与するパラメータと考えることができる。しかしながら、生体試料の活性が向上することは、光毒性値が相対的に小さくなったと考えることもできる。よって、上記独自式Dでは、照射間隔を、光毒性値を求める際のパラメータにしている。
【0053】
このように、独自式Dは、複数の観測条件を変数として持つ関数である。この観測条件の各々は数値で表されるが、その表現方法としては、構成物自体の仕様から求まる数値、寄与度あるいは係数がある。
例えば、光源として、定格出力が30mW(仕様)レーザが選択されたとする。そして、15mWを、生体試料に照射される光の量(観測条件)として設定したとする。この場合、構成物自体の仕様から求まる数値は15mWということになる。このように、設定した観測条件の数値は、構成物自体の仕様から求めた数値ということになる。
【0054】
次に、寄与度や係数であるが、これは、構成物自体の仕様から求めた数値を換算することで求めることができる。上記例では、構成物自体の仕様から求めた数値は、15mWである。そこで、この15mWに基づいた換算を行うことで、寄与度として5.4という数値、係数として0.5という数値が得られる。
【0055】
寄与度ついて説明する。光源としてレーザを用い、生体試料に照射される光の量を徐々に大きくしていく。その結果、5mWのときに生体試料の活性低下が始まり、30mWのときに生体試料が死滅したとする。そこで、生体試料の活性が低下しないときの寄与度を1、生体試料が死滅したときの寄与度を10とすると、5mWの寄与度は1、30mWの寄与度は10になる。ここで、生体試料に照射される光の量と光毒性値の関係が線形(正比例)であったとする。そうすると、例えば、15mWに対する寄与度は(10−1)/(30−5)×15=5.4となる。このようにして、15mWに対する寄与度を求めることができる。
【0056】
また、係数であれば、30mWの係数を1として規格化すると、15mWに対する係数は0.5となる。なお、上記の例では、係数を算出する際に、生体試料の活性低下が始まる時点(5mWの時点)については考慮していない。しかしながら、寄与度と同じように、生体試料の活性低下が始まる時点を考慮した換算を行ってもよい。当然のことながら、寄与度についても、例示した係数の換算方法を用いてもよい。
なお、データベースの寄与度から所定の換算を行って、係数を求めてもよい。また、離散データによってータベースが構築されている場合、補間によって寄与度や係数を求めてもよい。
【0057】
光毒性値が求まると、この光毒性値と生体試料が持つ活性から、システムは最適な観測条件を求める。そして、求めた観測条件を自動的に制御することで、システムは観測を実行する。
なお、過去に行った観測における観測条件を用いて、光毒性値を求める(この場合は類推する)ことができる。
【0058】
このような構成によれば、記憶した観測条件をもとにして、システム自身が光毒性値を求めることができる。よって、観測条件の制御を観測者が行うにあたって、その作業を簡略化することができる。すなわち、システムの作業性を向上させることができる。また、信頼性の高い観測結果を得ることができる。
【0059】
また、システムが、活性を数値化する機能を備えてもよい。
光毒性値が得られた場合、その光毒性値と生体試料の活性から、光毒性値が生体試料の活性に影響を及ぼすか否かを評価することができる。そこで、システムが活性を数値化する機能を備えるのが好ましい。この機能により、生体試料の活性度を得ることができる。
【0060】
ここで、生体試料の活性度は、生体試料の生存状態に依存する。生体試料の生存状態は、例えば、培養環境や薬剤の有無等によって左右される。これらは、生体試料情報や蛍光色素情報であることから、生体試料の活性度は生体試料情報や蛍光色素情報に基づいて求めることができる。生体試料情報や蛍光色素情報は数値化できる場合があるので、所定の計算式を用いて生体試料の活性度を求めることは可能である。この場合、演算を行う必要がある。よって、システムが活性度を求める機能として演算部を有することが好ましい。
【0061】
あるいは、生体試料は活性度によって外観形状が異なることから、形状を観測することによっても活性度を求めることができる。また、生体試料からの光の量を測定することによって、活性度を求めることができる。よって、システムは、活性を数値化する(活性度を求める)機能として、計測機能部を有することが好ましい。
このように、生体試料情報や蛍光色素情を使った計算式、あるいは生体試料の観測結果から、生体試料の活性度を求めることができる。
【0062】
また、観測中に、生体試料の活性度を求めることが望ましい。これは、観測中の生体試料の活性度を実測することができれば、活性度をより正確に求めることができるからである。このようにすることで、観測条件をより適切に制御することができる。
なお、実測によって活性度を求める方法としては、例えば、MMT試薬を用いて吸光度の測定を行う方法がある。また、別の方法としては、生体試料の形態の観測から活性度を求める方法がある。いずれの方法でも、計測機能部を使用する。この計測機能部は、培養環境内に設けられている。
このように、試薬等を用いて活性度を求めること、あるいは、生体試料の形態の観測から活性度を求めることができる。
【0063】
このような構成によれば、観測値や観測画像をもとに活性度が数値化できる。よって、活性に基づいて観測条件の制御を観測者が行う場合、その作業を簡略化することができる。すなわち、システムの作業性を向上させることができる。また、システムによって活性度を求める場合は、短時間で活性度を求めることができるので、リアルタイムで観測条件を見直すことが可能となる。
【0064】
また、観測者の経験に基づいて求めた活性度を、システムで求めた活性度の補正に利用することもできる。このように、両者で求めた活性度を利用することで、活性度をより正確に求めることができる。その結果、信頼性の高い観測結果を得ることができる。
また、観測中に生体試料の活性が劣化した場合、観測者に警告することや、あるいは強制的に観測を中断することができる。その結果、生体試料の活性劣化や死滅を防止することができる。
【0065】
また、光毒性を判断する機能をシステムが有してもよい。
データベースの説明で述べたように、本システムは、観測条件の組み合わせをデータベースとして持つことができる。ここで、観測条件の組み合わせが活性を低下させないことを前提としている場合、どの観測条件の組み合わせを選択してもよいことになる。この場合、光毒性を判断する必要がない。
【0066】
これに対して、光毒性値と活性度を求めることができる場合、光毒性値と活性度から光毒性を判断することができる。よって、光毒性を判断する機能をシステムが有するのが好ましい。光毒性を判断する機能は、独立した機能として設けてもよいが、光毒性値を求める機能、あるいは活性度を求める機能と一緒にしてもよい。
なお、光毒性の判断には、(1)光毒性の有無を判断すること、(2)光毒性がある場合、その程度を判断することが含まれる。
【0067】
判断を行うには、判断基準が必要となる。判断基準としては閾値が考えられる。前述のように、閾値は、活性度に基づいて求めた値である。
閾値としては、(1)観測開始前の活性度、(2)観測開始前の活性度よりも小さい値(例えば、観測開始前の活性度80%)が考えられる。この閾値は、寄与度と同じように、データベースとして有することができる。あるいは、活性度と同様に、演算や推測等によって得ることができる。
【0068】
このようにすることで、観測条件より求まった光毒性値が閾値を超えた場合、あるいは超えることが予想された場合、この観測条件が生体試料の活性を劣化させる危険を伴うとシステムが判断することができる。そして、観測条件について新たな制御(選択・設定・変更)を観測者に促すことや、あるいは自動で新たに制御することで、活性を低下させない測定を可能とする。
【0069】
また、判断機能をシステム自身が有することで、活性を劣化させない最適な観測条件での観測が常に可能となる。また、リアルタイムで、観測条件を自動制御することが可能となる。よって、システムの作業性を向上させることができる。また、信頼性の高い観測結果を得ることができる。
【0070】
また、観測者が設定した判断基準をもとに光毒性を判断できるようにしてもよい。
上述のように、閾値は活性度から求めることができる。また、生体試料の活性度は、生体試料の形態の観測から求めることができる。生体試料の形態の観測では、生体試料の形態が画像化される。そして、画像化された形態を解析することで、活性度を求めることができる。解析は、画像処理によって、あるいは観測者が経験に基づいて行うことができる。後者の場合は、判断基準を観測者が設定していると見なすことができる。このように、観測者が設定した判断基準をもとに光毒性を判断できるようにすれば、観測者の経験を利用できる。
【0071】
なお、活性度が観測者の経験から求まったとしても、判断基準、すなわち閾値はシステムが最終的に求める(設定する)ことになる。しかしながら、活性度が観測者の経験から求まった以上、判断基準も観測者が設定したとみなすことができる。
また、画像処理や観測者の経験に関係なく、システムが最終的に求めた閾値を用いずに、この閾値とは別の閾値を観測者が設定することも「判断基準を観測者が設定できる」に含まれる。
【0072】
判断基準は、その観測目的によって大きく異なる可能性がある。したがって、判断基準を観測者が設定できる機能を有することで、観測者の観測定目的に合致した観測(自動観測)が可能となる。その結果、測定対象を拡大することができる。
【0073】
また、過去の観測条件と光毒性の値について計測履歴を記憶し、光毒性の判断基準が計測履歴に基づき更新されるようにしてもよい。
システムは、観測が開始されてから終了するまでの間、観測履歴データを作成する機能を有することが好ましい。このとき、観測履歴データには、観測条件と光毒性値、活性度および閾値が自動で記録されればさらによい。そして、システムは、次の観測の前に、この観測履歴データに基づいてデータベースを自動で更新する。
【0074】
ここで、1回の照射回数で観測が終了する場合は、その1回の照射における光毒性値、活性度および閾値が記録される。また、N回の照射回数で観測が終了する場合、1回の照射ごとに、光毒性値、活性度および閾値が記録される。また、照射条件が同じ場合は、照射回数にかかわらず、1つの光毒性値、活性度および閾値を記録すればよい。そして、このような記録に基づいて、光毒性値、活性度あるいは閾値が更新される。
【0075】
なお、1回の照射回数で観測が終了する場合は、次の観測とは、1回の照射が終了した後に行われる新たな観測のことである。また、N回の照射回数で観測が終了する場合は、次の観測とは、N回の照射が終了した後に行われる新たな観測のことである。図35は2つの観測の関係を示す図である。前の観測は複数回の照射が行う観測で、次の観測は1回の照射を行う観測になっている。この例では、前の観測と次の観測では、照射回数を含め、観測条件が全く異なっている。
【0076】
データベースが寄与度(あるいは係数)と光毒性値で構成されている場合、光毒性値が更新される。例えば、最初の観測における観測条件が、1回の照射時間、生体試料に照射される光の量および照射間隔で、それぞれの寄与度がt1、I1、b1だったとする。また、この観測条件の組み合わせによる光毒性値がx1であったとする。そして、この観測条件で観測を実行したところ、生体試料の活性に劣化が生じたとする。この場合、光毒性値が適切でなかったということなので、データベースの光毒性値x1は新たな光毒性値x2に更新される。そして、この更新された光毒性値で観測条件が制御され、次の観測が行われる。
【0077】
また、独自式Dの場合、式に表現形式が更新される。例えば、独自式Dが下記の式で表されているとする。
D=f(λ,t,I,b,n,p)=(t×I×n×p)/(λ×b2)
【0078】
最初の観測において観測条件t1,I1,n1,p1,λ1,b1とすると、毒性値D1は、
D1=(t1×I1×n1×p1)/(λ1×b12)
となる。
【0079】
そして、この観測条件で観測を実行したところ、生体試料の活性に劣化が生じたとする。この場合、式の表現が適切でなかった(光毒性値を小さく算出する式であった)ということなので、独自式は例えば下記式のように更新される。
D=f(λ,t,I,b,n,p)=(t×I×n×p)/(λ×b)
【0080】
そして、この更新された独自式から算出した光毒性値で観測条件が制御され、次の観測が行われる。この例では、観測条件自身がb2からbに更新されたが、観測条件間の演算子が更新されてもよい。また、更新は、観測条件の削除や追加(最初の観測条件が5つ以下の場合)であってもよい。
【0081】
以上、光毒性値の更新について説明したが、活性度あるいは閾値についても、同様の考え方で更新することができる。なお、光毒性値、活性度あるいは閾値を観測者自身が記録できるようにしてもよい。そして、データベースあるいは独自式Dを、マニュアルで更新することにしてもよい。
【0082】
このような構成によれば、より正確な光毒性値、活性度あるいは閾値を求めることができ、生体試料の活性劣化をより確実に防止することができる。よって、正確な観測が可能となる。また、観測者の観測目的に合致した観測において、判断確度を観測者自ら向上させることができる。
【0083】
観測条件は観測に関連する情報とすることができる。
観測に関連する情報には、生体試料に照射される光の量1回の照射時間、照射回数、照射間隔、照射光の連続性(連続発振(発光)かパルス発振(発光)か、パルス発振の場合のパルス周波数やパルス幅)、照射光の波長、照射量等、照射光に関する情報がある。
このような構成によれば、照射光に関する情報(すなわち光毒性値)を制御でき、生体試料の活性を劣化させずに、目的の観測を行うことができる。
【0084】
また、観測条件は、1回の照射量と総照射量を組み合わせたものとすることができる。
ここで、1回の照射量と総照射量は、以下のように表される。
1回の照射量=生体試料に照射される光の量×1回の照射時間
総照射量=1回の照射量×観測回数
【0085】
観測に必要な1回の照射量(生体試料に照射される光の量の時間的総和)は、ほぼ一定である。よって、生体試料に照射される光の量が多ければ1回の照射時間を短くし、生体試料に照射される光の量が少なければ照射時間を長くできる。生体試料の活性劣化を防止するという観点からすると、照射量の制御が大切といえる。短期的には1回の照射量が重要であり、長期的には、総照射量が重要である。
【0086】
したがって、1回の照射量と総照射量との組み合わせを観測条件とし、この観測条件を制御することで、長期的・短期的に生体試料の活性劣化を防止することが可能となる。1回の照射量の制御とは、試料面における光の量と照射時間の制御を指す。具体的には、LED、LD、アークランプ等の光源への供給電力(投入電流)を制御することである。これは、生体試料に照射射される光の量を、直接的に制御することである。
【0087】
また、生体試料に照射される光の量は一定にしておき、光源から試料面までの間に、NDフィルタを配置する。そして、NDフィルタの挿脱、他のNDフィルタへの交換を行うことで、細胞に照射射される光の量を調節してもよい。これは、生体試料に照射射される光の量を、間接的に制御することである。
【0088】
また、照射時間の制御は、供給電力のオンオフ、シャッタ等によって行うことができる。
このような構成によれば、長期的・短期的な観測において、生体試料の活性劣化を防止することが可能となる。
【0089】
また、観測条件は照射時間とすることができる。
照射光の照射時間は、生体試料の活性に直接的に寄与する。したがって、照射時間を必要最低限の時間にすることが重要となる。なお照射時間には、1回の照射時間と総照射時間がある。総照射時間は、1回の照射時間と観測回数の積である。よって、1回の照射時間を制御できれば、総照射時間を制御することができる。
【0090】
照射時間の制御は、例えば、光源への電流値を制御することや、あるいは光路を機械的に遮蔽することで実現できる。また、生体試料の活性劣化が非常に小さいと判断した場合、高速化を優先し、観測中は照射時間の制御を行わないようにしてもよい。
このような構成によれば、長期的・短期的な観測において、生体試料の活性維持を可能とするとともに、観測の高速化も可能となる。
【0091】
また、観測条件は照射間隔とすることができる。
照射間隔は、1つの照射が終了してから次の照射を開始するまでの時間である。光毒性には、複数の照射光条件が関与している。例えば、照射光量が多くても照射間隔がある程度長いと、生体試料自身の活性が向上する。よって、相対的に、生体試料に対する光毒性の影響は低下する。したがって、照射間隔を制御することが重要となる。例えば、生体試料の活性劣化が予測されるという場合、シャッタを制御するかあるいは光源への投入電流を制御して、照射間隔を制御する。
【0092】
また、高速観測を優先し、照射光をパルス照射から連続照射へ切り替えることや、あるいはその逆を行うことで、照射間隔を制限してもよい。また、生体試料の活性が急激に低下した場合、照射間隔の変更を行ってもよい。
このような構成によれば、長期的・短期的な観測において、生体試料の活性維持が可能となる。
【0093】
また、観測条件は照度とすることができる。
光毒性に関しては、観測に関連する情報の複数のパラメータが絡みあって光毒性に影響を及ぼす。例えば、同じ照射量であっても光の量に応じて光毒性の特性は変化する。そこで、最終的に設定された照射間隔に基づき、測光量、特に照度を制御する。
【0094】
照度の制御は、具体的には、光源、フィルタ等で行えばよい。また、高速観測を優先し、照射光強度を増大させることで制限してもよい。
このような構成によれば、長期的・短期的活性な観測において、生体試料の活性維持が可能となる。
【0095】
また、観測条件は照射光のパルス周波数、あるいはパルス幅とすることができる。
そのため、照射光をパルス状の光にすることが望ましい。「パルス状」には、光の明るさがδ関数のように明るさがステップ的(非連続的)に変動する状態はもちろん、正弦波や鋸歯波のように光の強弱が連続的に変動する状態も含まれる。
【0096】
パルス状の照射光による照射では、生体試料を複数回照射することになる。よって、エネルギーが十分に低い光を、照射光として用いることができる。これにより、生体試料の活性劣化を抑えることができる。また、蛍光の退色を防ぐことができる。その結果、十分に明るい観測像を得ることが可能となる。なお、連続照射よりパルス光照射の方が、全照射エネルギで比較しても光毒性が小さいことが確認できている。したがって、パルス周波数、あるいはパルス幅を制御することで、光毒性の低減を図ることができる。
【0097】
このような照射光を得るため光源としては、例えば、ストロボ光源またはパルスレーザがある。また光源が、一定の明るさの光を発生する光源(連続発光光源)と、この連続発光光源からの光を変調してパルス光を形成する変調装置を備えることとしてもよい。また、LEDを用いてもよい。この場合、入力する電力(電圧、電流)を高速変調することで、安定性および高速性に優れたパルス光源を得ることができる。
このような構成によれば、長期的・短期的な観測において、生体試料の活性維持が可能となる。
【0098】
また、観測条件は照射範囲とすることができる。
例えば、観測範囲に合わせ、照射範囲を限定する。最低限の範囲を照射することで、必要以上に生体試料が照射光に曝されることを防ぐ。照射範囲の制御は、光学系(対物レンズ、コンデンサレンズあるいは視野絞り(照野絞り)で行えばよい。
このような構成によれば、無駄な照射を防ぎ、長期的・短期的な観測において、生体試料の活性劣化を防止することが可能となる。
【0099】
また、本システムは、生体試料を保持する培養ユニットと、培養ユニットに照射光を導く照明ユニットと、培養ユニットを撮像する撮像ユニットと、撮像した画像や所定の観測条件を記憶する記憶部と、所定の演算を行う演算部と、前記培養ユニット、照明ユニットおよび撮像ユニットの制御を行う制御部とを有する処理ユニットとを備え、演算部は、生体試料がもつ活性度を求める工程と、所定の観測条件に基づいて光毒性値を求める工程と、閾値を求める工程を備え、制御部は、閾値に基づいて、培養ユニット、照明ユニットおよび撮像ユニットの少なくとも1つを制御するようにできる。
【0100】
このような構成によれば、生体試料の活性を低下させない最適な条件での観測が常に可能となる。よって、信頼性の高い観測結果を得ることができる。また、リアルタイムで、観測条件を自動制御することが可能となる。よって、システムの作業性を向上させることができる。
【0101】
また、本システムは、所定の観測条件を制御して生体試料の観測を行う生体試料観察計測システムであって、所定の観測条件は、生体試料が持つ活性から求めた閾値よりも低い値の光毒性値となるように設定されているようにすることができる。
このような構成によれば、観測条件を制御するだけで、活性を低下させない最適な条件での観測が常に可能となる。また、生体試料の活性を低下させない最適な条件での観測が常に可能となる。よって、信頼性の高い観測結果を得ることができる。
【0102】
(実施形態)
次に、本発明の一実施形態に係る生体試料観察計測システムについて、図1〜図29を参照して説明する。図1は本実施形態に係る生体試料観測システムであって、生細胞を観測する観察計測システム(以下、生細胞観察計測システム1とする)の全体構成を示すブロック図を示す。
【0103】
生細胞観察計測システム1は、各種制御部、各種演算部、記憶部、観測部を備えている。各種制御部は、統合制御部2、照野制御部4、照射時間制御部5、照射エネルギー制御部6、ステージ制御部7、照射波長制御部8、培養環境制御部10および撮像制御部11である。各種演算部は、光毒性値演算部22および活性度演算部23である。記憶部はデータ保存メモリ9からなる。観測部は、撮像ユニット12、波長選択ユニット13、対物レンズ14、透過照明ユニット15、落射照明ユニット16、培養ユニット19およびステージ20からなる。培養ユニット19は、培養容器17と活性監視ユニット18を備えている。また、生細胞観察計測システム1は、ユーザインタフェース3を有する。
【0104】
観測者は、ユーザインタフェース3を介して観測条件を制御する。観測条件は、統合制御部2を介して光毒性値演算部22に送られる。光毒性値演算部22は、観測条件に基づいて、あるいはデータ保存メモリ9のデータベースを参照して光毒性値を算出する。一方、活性度演算部23は、活性監視ユニットからの情報、あるいはデータ保存メモリ9の情報を参照して、活性度を求める。光毒性値および活性度は統合制御部2に送られて、統合制御部2で閾値が求められた後、光毒性の判断が行われる。
【0105】
光毒性値が閾値よりも小さい場合、統合制御部2は観測条件に基づいて、各種制御部(統合制御部2を除く)に実行を指示する。これにより、観測が開始される。一方、光毒性値が閾値よりも大きい場合、統合制御部2はユーザインタフェース3を介して、観測者に対し、観測条件の再制御を促す。あるいは、観測可能な観測条件に自動的に制御し、観測を開始する。
【0106】
<各種制御部>
以下、各制御部について詳細に説明する。
統合制御部2は、観測・培養に関する全ての機器を統括する制御器である。各種制御部(統合制御部2を除く)、各種演算部、データ保存メモリ9およびユーザインタフェース3は、いずれも統合制御部2と接続している。統合制御部2は、各機器に指示を出すとともに、各機器からの情報を得て、観測の実行や中止、生細胞の培養を行う。
【0107】
統合制御部2は、光毒性値演算部22から出力される光毒性値と、活性度演算部23から出力される活性度に基づいて、閾値を求める処理を行う。また、統合制御部2には、判断部21が設けられている。判断部21は、光毒性値と閾値に基づいて、生細胞の活性が劣化するか否かを判断する。そして、統合制御部2は、判断結果に基づいて、決められた制御を実行する。
【0108】
培養環境制御部10は、生細胞の培養に必要な環境を形成・維持するための制御機能を有する。培養環境制御部10は、培養ユニット19と接続している。培養ユニット19は、生細胞の培養に適した環境が維持された空間(領域)である。培養環境を左右する環境要因は、哺乳類の生細胞等では、CO2、湿度、pH、塩濃度および温度である。これらの環境要因の設定は、観測者によって行われる。環境要因の各々の値は、基本的には、37℃、CO2濃度5%(pH6.8〜7.2)、飽和湿度が多用される。培養ユニット19は環境光から遮光されている。そのため、生細胞には、観測に必要な光以外は照射されない。
【0109】
撮像制御部11は、撮像ユニット12における撮像のタイミングや、撮像時間を制御する。撮像制御部11は、撮像ユニット12と接続している。撮像ユニット12としてはCCDカメラや光電子増倍管(photomultiplier-tube)等を用いることができる。なお、撮像ユニット12として光電子増倍管を使用する場合は、照射光をスポット状にし、この照射光で生細胞を走査することになる。
【0110】
照射時間制御部5は、照射光の1回の照射時間、照射間隔、照射回数および照射光連続性を制御する。具体的な制御手段としては、例えば、シャッタの制御がある。シャッタを使って照射光を遮光、通過させることで、1回の照射時間、照射間隔、照射回数および照射光連続性を制御することができる。また、照明ユニットは光源を備えているので、この光源自体を制御手段としてもよい。すなわち、光源に供給する電力(電圧、電流)を制御(オン、オフ)することで、1回の照射時間、照射間隔、照射回数および照射光連続性を制御することができる。
【0111】
照射エネルギー制御部6は、生細胞に照射される光の量を制御する。具体的な制御手段としては、例えば、NDフィルタの制御がある。減光率の異なるNDフィルタを光路中で挿脱することで、生細胞に照射される光の量を制御することができる。あるいは円周方向に沿って減光率が変化する円板を、光路中で回転させるようにしてもよい。また、照明ユニットは光源を備えているので、この光源自体を制御手段としてもよい。すなわち、光源に供給する電力(電圧、電流)を制御(変化させる)することで、1回の照射時間、照射間隔、照射回数および照射光連続性を制御することができる。
【0112】
照野制御部4は、観測者が設定した観測範囲に合わせて、照射光の照射範囲を制御(制限)する。
照野制御部4は、照射時間制御部5はおよび照射エネルギー制御部6は、透過照明ユニット15および落射照明ユニット16の少なくとも一方と接続している。
【0113】
照射波長制御部8は、生細胞に照射する照射光の波長を制御する。照射波長制御部8は、波長選択ユニット13と接続している。具体的な制御手段としては、光学フィルタの制御がある。分光透過率特性の異なる光学フィルタを光路中で挿脱することで、生細胞に照射される照射光の波長を制御することができる。また、照明ユニットは光源を備えているので、この光源自体を制御手段としてもよい。すなわち、光源に供給する電力(電圧、電流)を制御(変化させる)することで、照射光の波長を制御することができる。
【0114】
ステージ制御部7は、生細胞の位置を制御する。ステージ制御部7は、ステージ20と接続している。生細胞を観測するためには、生細胞を対物レンズ14の視野内に位置させる必要がある。生細胞は培養容器17に保持されている。そして、培養容器17はステージ20上に載置されている。よって、ステージ20を移動させることで、生細胞を対物レンズ14の視野内に位置させることができる。
【0115】
<観測部>
透過照明ユニット15および落射照明ユニット16は、共に、光源と光学系を有している。また、透過照明ユニット15および落射照明ユニット16は、視野絞りや明るさ絞り、NDフィルタを有する。視野絞りは照野を制限する絞りでもある。さらに、透過照明ユニット15および落射照明ユニット16に、拡散板や色フィルタ等を設けることもできる。
【0116】
透過照明ユニット15は、主に形態観察に用いられる。一方、落射照明ユニット16は、主に蛍光観察に用いられる。透過照明ユニット15および落射照明ユニット16は、光源と照明光学系を備えている。光源は、ハロゲンランプ、水銀ランプ、キセノンランプ、レーザあるいはLED等である。なお、生細胞観察計測システム1は、透過照明ユニット15と落射照明ユニット16の少なくとも一方を備えていればよい。
【0117】
光源は連続発振(CW光)の他、パルス発振も可能であることが望ましい。パルス発振の場合、光源は、ストロボ光源またはパルスレーザである。パルス光を得るために、連続発光光源と変調装置の組み合わせで光源を構成してもよい。変調装置は、連続発光光源からの光を変調してパルス光を形成する機能を有する。また、光源自体の電力を制御してもよい。例えば、LEDを用い、電力(電圧)を高速変調することで、安定で高速なパルス光を得ることができる。また、安定性および高速性に優れたパルス光源を得ることができる。
【0118】
培養ユニット19は、培養容器17と活性監視ユニット18を備えている。培養容器17は生細胞を培養・保持するためのものである。
活性監視ユニット18は、生細胞の活性を求める機能を有する。活性監視ユニット18は計測機能部であって、活性度演算部23に接続している。生細胞の活性を求めるにあたっては、観測対象の生細胞を計測するのではなく、コントロール細胞を計測の対象にする。なお、観測対象の生細胞を計測することで、生細胞の活性度を求めることができる。このような場合、活性監視ユニット18を設ける必要はない。
【0119】
培養環境の内部には、1つの培養容器17が配置されている。そして、培養容器17の内部は、2つの培養領域が設定されている。このうち一方の培養領域(培養領域A)には、観測対象となる生細胞が存在している。他方の培養領域(培養領域B)には、コントロール細胞が存在している。コントロール細胞は、培養領域Aと同じ培養条件、観測条件で保持されている。そして、培養領域Bの近傍に、活性監視ユニット18が設けられている。培養領域Aの生細胞が観測されている間、活性監視ユニット18によって、コントロール細胞における活性度を求めるための測定が行われる。
【0120】
コントロール細胞における活性度を求める方法の1つは、MMT試薬を用いて吸光度の測定を行う方法である。この方法は、生細胞の活性が低下すると吸光度が低下する現象を利用している。このように、吸光度と生細胞の活性度は相関があるので、吸光度から生細胞の活性度を求めることができる。そのため、この測定方法における活性監視ユニット18は、吸光度を測定できるように、光源、光学系および受光素子(CCD、PDあるいは光電子増倍管)を少なくとも備えていることが好ましい。また、吸光度から活性度を求めるために演算が必要であるので、演算部を備えておくことが望ましい。この演算部は活性監視ユニット18に持たせてもよい。あるいは、この演算部は、生体試料情報や蛍光色素情報に基づいて求めるときに用いる演算部と共用してもよい。
【0121】
なお、試薬としては、Live/Dead等の試薬、あるいは素の他の薬剤等を用いてもよい。また、薬剤に応じて測定方法が異なることもある。よって、活性監視ユニット18の具体的な構成は薬剤に応じて異なる。
このように、試薬等を用いて活性度を求めることができる。
【0122】
また、コントロール細胞における活性度の測定方法の他の1つは、生細胞の形態の観測から活性度を求める方法である。生細胞の形態の観測には、例えば、位相差・微分干渉等の観察法を用いればよい。そのため、この測定方法における活性監視ユニット18も、コントロール細胞の像を画像化するために、光源、光学系および受光素子(CCD、PDあるいは光電子増倍管)を少なくとも備えていることが好ましい。
【0123】
活性度は、生細胞の厚み・形状から求めればよい。例えば、活性が低下してくると、生細胞の厚みは薄くなる。また、活性が低下してくると、全体が丸みを帯びた形状になり、しかも面積が小さくなる。そこで、生細胞の厚み、面積、輪郭等の情報を予め記憶しておく。そして、観測の進行に合わせて、適宜、生細胞の形態の観測を行う。続いて、観測結果から、生細胞の厚み、面積、輪郭を求め、予め記憶していた情報と比較して、その変化量から活性度を求める。
【0124】
その際、生細胞画像の解析をシステム(画等処理装置等)で行って形態の変化を求め、その結果に基づいて自動的にシステムが活性度を求めるようにすればよい。あるいは、形態画像から経験に基づいて、観測者が活性度を求める(推測する)ようにしてもよい。また、両者を併用してもよい。また、長期間観察による細胞周期の異常をもとに、活性度を求めてもよい。この場合も、演算部を備えておくことが望ましい。この演算部は活性監視ユニット18に持たせてもよい。あるいは、この演算部は、生体試料情報や蛍光色素情報に基づいて求めるときに用いる演算部と共用してもよい。あるいは、この演算部は、画像処理装置等で代用してもよい。
このように、生細胞の形態の観測から活性度を求めることができる。
【0125】
上記のように、培養領域Bでは、観測対象の生細胞と同一の観測条件(照射条件)でコントロール細胞が培養・照射(露光)され、活性監視ユニット18で活性度が実測されている。そして、実測結果は、観測対象の生細胞の活性度を表す結果と見なすことができる。このようにして、より正確に、生細胞の活性度を求めることができる。
【0126】
また、観測対象の生細胞とコントロール細胞とで観測条件を同一にするには、例えば、観測対象の生細胞とコントロール細胞に対して、同時に照射光が照射されるのが好ましい。そのためには、照射光を照射する構成が2つ(1組)必要になる。しかしながら、照射光を照射する構成を1つにして、照射領域に観測対象の生細胞とコントロール細胞を順次移動させてもよい。この場合、同時照射にはならないが、活性監視ユニット18の一部を、生細胞を観測するための構成物(例えば、対物レンズ14)と共通化できる。よって、システム構成を複雑にすることなく、ほとんど同じ観測条件の制御が観測対象の生細胞とコントロール細胞に対して可能となる。
なお、2つの培養容器を用意し、一方の培養容器を培養領域A、他方の培養容器を培養領域Bとし、他方の培養容器の近傍に活性監視ユニット18を設けてもよい。
【0127】
ステージ20は、培養ユニット19を保持している。また、移動機構を有している。この移動機構により、培養容器17を直行する2軸方向に移動させる。この移動により、対物レンズ14の視野内に生細胞を位置させることができる。
【0128】
波長選択ユニット13は、分光透過率特性の異なる光学フィルタを備えている。具体的構造としては、例えば、光路の外側に、光路に沿って複数の光学フィルタを配置しておく。そして、少なくとも1枚の光学フィルタを光路に挿入することで、観測に必要な波長(波長帯域)を有する照射光を得ることができる。また、円板の円周方向に沿って複数の光学フィルタを配置する。そして、この円板の中心を通る軸が光路と平行となるように、円板を配置する。そして、円板を回転させることで、光路中に光学フィルタを挿脱する。このようにしても、観測に必要な波長を有する照射光を得ることができる。
【0129】
ユーザインタフェース3は、観測者が観測・培養に関する所望の観測条件を制御するものである。必要に応じて、キーボードやマウス等の入力装置、および画面表示を行う表示装置を備える。
【0130】
データ保存メモリ9は、撮像ユニット12によって撮像された画像を保存する。また、ユーザインタフェース3から入力された観測条件を保存する。また、内部にデータベースを保有していてもよい。データ保存メモリ9の配置位置は、固定の場所でもよいし、観測者によって指定された場所でもよい。
【0131】
また、システム1に通信機能を持たせることで、本システムとは物理的に独立して存在する構成物(例えば、遠隔地に設置されたデータベースサーバー)にデータベースを設けることができる。
また、データ保存メモリ9に、撮像した生細胞の画像を解析する解析機能が付与されていてもよい。
【0132】
データベースには、観測条件の値に対応する寄与度あるいは係数が、観測条件ごとに登録されている。また、光毒性値もデータベースに登録されていてもよい。ユーザインタフェース3から入力された観測条件の値がデータベースにない場合、その入力値に対応する寄与度あるいは係数は、データベースの数値を使った補間によって求めることができる。この結果、どのような値が入力されても、観測条件に基づいて光毒性値を求めることができる。
【0133】
データベースを使用する場合、データベースは、生細胞の活性を劣化させないことを前提とした観測条件の組み合わせ(寄与度の組み合わせ)とすることができる。このデータベースは、例えば、図2に示すように、5種類の観測条件(観測条件1〜5)を有している。図2では、観測条件1〜5の組み合わせとなっているが、これに限られない。例えば、観測条件1,3,5というような3つの観測条件による組み合わせや、観測条件2,3,4,7,8,9というような6つの観測条件による組み合わせであってもよい。
【0134】
そして、観測条件1〜5の各々には、寄与度が付与されている。ここで、寄与度は1〜6の範囲の数値であって、観測条件の各々は、1〜6の範囲の値をとることができる。よって、寄与度の組み合わせは65とおり存在することになる。ただし、ここでのデータベースは、生細胞の活性を劣化させないことを条件(前提)としているので、この条件を満足しない寄与度の組み合わせは登録されていない。例えば、データAでは3,1,4,2,2という寄与度の組み合わせで、データFでは3,1,6,2,2の寄与度の組み合わせとなっている。
【0135】
このような観測条件と寄与度がデータベースに登録されているので、観測者は観測条件をデータベースに登録されている組み合わせを選択するだけとなる。この場合、どの組み合わせを選んでも、生細胞の活性を劣化させる観測条件とはならない。よって、光毒性を判断する必要がない。
【0136】
なお、このようなデータベースの場合、観測者はデータベースの内容を知らないと、ユーザインタフェース3から観測条件と寄与度を入力できない。よって、データベースの内容を一覧表にして、システムとは別体にして用意しておくか、システムの表示装置にデータベースの内容を表示して、観測者が選択できるようにしておく必要がある。
【0137】
また、図2のデータベースを使って、光毒性の判断もできる。
例えば、入力された観測条件が表1のような組み合わせだったとする。この場合、観測条件の組み合わせは、データベースに登録された観測条件の組み合わせと一致する。ただし、寄与度の組み合わせについては、データA〜Fのいずれとも一致しない。ここで、データA〜Cと観測者が設定した観測条件を比較すると、観測条件1,3〜5については、両者は一致する。一方、観測条件2に関しては、観測者が設定した数値5の方が、最大値3(データC)よりも大きい。よって、統合制御部2は「光毒性あり」と判断する。
【0138】
【表1】
【0139】
また、入力された観測条件が表2のような組み合わせだったとする。この場合、観測条件の組み合わせと寄与度の組み合わせは、データベースに登録されたデータEと一致する。よって、統合制御部2は「光毒性なし」と判断する。
【0140】
【表2】
【0141】
また、入力された観測条件が表3のような組み合わせだったとする。この場合、観測条件の組み合わせは、データベースに登録された観測条件の組み合わせと一致する。ただし、寄与度の組み合わせについては、データA〜Fのいずれとも一致しない。ここで、データD,Eと観測者が設定した観測条件を比較すると、観測条件1,3〜5については、両者は一致する。一方、観測条件2に関しては、観測者が設定した数値1.5は、最大値2(データE)よりも小さい。よって、統合制御部2は「光毒性なし」と判断する。
【0142】
【表3】
【0143】
なお、上記の例では、観測条件の数値として寄与度が入力されている。しかしながら、一般的には、観測条件の数値は、構成物が持つパラメータに関する数値(例えば、レーザの出力値5mW)である。よって、この構成物が持つパラメータに関する数値を入力するのがよい。この場合、構成物が持つパラメータに関する数値は、自動的に寄与度(あるいは係数)に換算される。
【0144】
<演算部>
活性度演算部23は、観測対象の生細胞から活性度を求める機能を有する。生細胞の活性度は、生体試料情報や蛍光色素情報、あるいは生細胞の観測から求めることができる。ここで、生体試料情報や蛍光色素情報はユーザインタフェース3から入力される他、データ保存メモリ9に予め保存されている。よって、活性度演算部23は、統合制御部2を介して、ユーザインタフェース3やデータ保存メモリ9に接続している。
【0145】
また、活性度を生細胞の観測から求めることができるように、活性度演算部23は活性監視ユニット18に接続している。なお、活性度演算部23で閾値を求めることもできるが、これは統合制御部2で行えばよい。
【0146】
次に、光毒性値演算部22は、観測条件から光毒性値を求める機能を有する。光毒性値は、観測条件から求めることができる。ここで、観測条件はユーザインタフェース3から制御されるか、あるいはデータ保存メモリ9に予め保存されている。よって、光毒性値演算部22は、統合制御部2を介して、ユーザインタフェース3やデータ保存メモリ9に接続している。
【0147】
光毒性値演算部22は、観測条件(λ:照射光の波長、t:1回の照射時間、I:生体試料に照射される光の量、b:照射間隔、n:照射回数、p:照射光の連続性、)を使った独自式D、あるいはデータベースの情報をもとに光毒性値を求める。データベースの情報をもとに光毒性値を求める場合、データベースに条件(前提)はない。すなわち、観測条件の組み合わせ(寄与度の組み合わせ)は、生細胞の活性を低下させないことを条件(前提)としない
【0148】
なお、光毒性値演算部22で閾値を求めることや、観測条件の再設定を行ってもよいが、これは統合制御部2で行えばよい。観測者は、まずユーザインタフェース3を介して、所望の観測条件を入力する。これは、観測条件の初期設定に相当する。観測条件は統合制御部2を介して、データ保存メモリ9に記憶される。同時に、記憶された条件に基づいて、光毒性値を求める処理が行われる。
以下、順番に説明する。
【0149】
(1)光毒性の数値化
生細胞の活性を劣化させる照射光の照射条件としては、照射光の波長、照射間隔、照射回数、一回の照射量が要因と考えられる。よって、光毒性値は、それらをパラメータとする関数として表現することができる。例えば、光毒性値は、以下の独自式Dで求めることができる。
光毒性値=照射光の波長×照射間隔×照射回数×1回の照射量
【0150】
ここで、照射光の波長、照射間隔、照射回数および1回の照射量の数値は、観測条件の数値、寄与度または係数のいずれで表された数値でも構わない。また、例えば、1つのパラメータは、他のパラメータの関数であっても構わない(例えば、照射回数をn(λ)としてもよい。この場合、照射回数は、照射光の波長の関数になっている。)
【0151】
寄与度や係数を使用する場合、寄与度や係数はデータベースに記憶されている。さらに観測条件の数値がデータベースに登録されていない場合、データベースに登録されている数値をもとに、内挿法あるいは外挿法を用い各寄与度や係数の数値を求めてもよい。なお、係数であれば、数値範囲を0〜1とする。(例えば、照射光の波長では、ダメージ(活性度の変化量)の最も大きい波長の係数を1とする。)
【0152】
光の量のうち、放射束を除く残りの量は、いずれも放射束に基づく量である。ここで、放射束は、単位時間あたりの放射エネルギー(単位:W)である。また、光の量のなかには、単位面積当たりで表されているもの(輝度、照度、発散度等)がある。このような場合、1回の照射量は以下の式で表される。
1回の照射量=「生細胞に照射される光の量」×1回の照射時間
【0153】
なお、単位面積当たりで表されていないもの(放射束、強度、光束等)の場合、1回の照射量は、以下のようになる。
1回の照射量=単位面積あたりの「生細胞に照射される光の量」×1回の照射時間
【0154】
そして、単位面積あたりの「生細胞に照射される光の量」は、以下のように表される。
単位面積あたりの生細胞に照射される光の量=「生細胞に照射される光の量」/照射範囲
なお、連続発振光源の場合とパルス発振光源の場合とでは光源の定格出力が異なるが、光源の定格出力は光源の種類を選択すると決まる。
【0155】
生細胞に照射される光の量は、試料面上で実測してもよいし、光源の直後で出力をモニタしていてもよい。後者の場合、試料面上における生細胞に照射される光の量は、下記の式から求めることができる。
試料面上における生細胞に照射される光の量=光源の定格出力×光学系の透過率
【0156】
光学系の透過率は、データ保存メモリ9に、内部データとして予め登録されている。よって、光学系(コンデンサレンズ・対物レンズ・光学フィルタ)をそれぞれ選択すると、自動的に光学系全体の透過率が求まる。
照射範囲は照明光学系(コンデンサレンズおよび対物レンズ)によって決まる。これら光毒性値を求めるための観測条件と、この観測条件に関する具体的構成物の関係を示すと図3となる。
【0157】
光毒性値演算部22で光毒性値を求める方法は、独自式Dにもとづく算出方法に限らない。例えば、データベースから光毒性を求めてもよい。この場合、データベースには、観測条件とその寄与度、およびその寄与度の組み合わせに対応する光毒性値が、予め登録されている。つまり、図4のように、観測条件と光毒性値との対応がデータベース化されている。このようにすれば、観測条件の組み合わせと、その数値をユーザインタフェース3から入力するだけで、光毒性値が容易に求まる。
なお、入力された観測条件の数値がデータベースに登録されていない場合、内挿法あるいは外挿法を用いて、光毒性値を求めるようにすればよい。
【0158】
光毒性値演算部22は、過去の観測における観測条件および光毒性値の履歴に基づき、光毒性値を更新する機能を有してもよい。光毒性値は、観測者が自ら蓄積・更新してもよいし、自動で蓄積・更新してもよい。なお、この機能を統合制御部2に持たせてもよい。
【0159】
(2)活性の数値化
図5に示したように、光毒性の有無判断は、光毒性値が閾値を超えるか否かで判定する。閾値は、活性度に基づいて求めることができる。よって、活性度演算部23によって生細胞の活性を数値化、すなわち、活性度を予め求めておく必要がある。
【0160】
以下に活性度の数値化について示す。
生細胞の活性度は、例えば播種から測定までの時間に左右される。また、生細胞の活性度は、接着状態にも左右される。例えば、未接着の細胞は接着した細胞に比して弱い。よって、未接着状態での測定は、接着状態での測定に比べて観測感度に影響が出る。
【0161】
また、生細胞の活性に影響を与える要因として、細胞密度(細胞数/単位面積)や播種密度が挙げられる。細胞密度や播種密度が必要以上に疎であると、光毒性の影響を受けやすい。
その他、生体試料情報(生細胞に関するパラメータ)として考えられるのは以下の通りである。
細胞の種類(生体試料の種類)、
細胞密度(生体試料の組織密度:細胞数/単位面積で表される)、
培養環境(生体試料を培養する環境:温度・湿度・培養液のpH、二酸化炭素等)、
接着状態(生体組織の接着状態)、
培養細胞か非培養細胞か(生体試料が培養組織か非培養組織か)、
投入薬剤の有無(生体試料に投入される薬剤の有無)、
播種濃度(生体試料を播種するときの濃度)、
播種からの経過時間(生体試料を播種してからの経過時間)。
【0162】
また、蛍光色素情報(蛍光色素に関するパラメータ)として考えられるのは以下の通りである。
蛍光色素の種類、
蛍光色素濃度。
【0163】
このように、生細胞の活性度は、生体試料情報や蛍光色素情報に基づいて求めることができる。
また、表4に示すようにデータベース化しておいてもよい。
【0164】
【表4】
【0165】
このようにしておけば、生細胞Aについて、培養環境、蛍光色素名および蛍光色素濃度から、活性度を求めることができる。表4の活性度は、寄与度で表されているものとする。
【0166】
データベース(ルックアップテーブル:LUT)にない値については、内挿法や外挿法等により推定することができる。
例1:培養環境1で、蛍光色素濃度0.3%における活性度は、蛍光色素濃度0.1%と0.5%の活性度の値から、内挿法等により推定すればよい。
例2:蛍光色素濃度0.5%で、培養温度39℃における活性度は、温度37℃と温度38℃(場合によっては、温度36℃)の活性度の値から、外挿法等により推定すればよい。
【0167】
次に、生体試料情報や蛍光色素情報から、生細胞の活性度を求める方法について述べる。ここで、これらの情報の数値は、構成物自体の仕様から求まる数値、寄与度あるいは係数で表すことができる。ここでは、係数で表すことにする。
接着状態、細胞密度については、所定の条件下(同じ培養環境および蛍光色素濃度)で、接着の状態・細胞密度に応じてそれぞれの係数を求める。そして、最大となる接着状態あるいは細胞密度の値を基準として、他の値を規格化すればよい。
【0168】
例えば、完全分離状態を0.1、完全接着状態を1(接着状態係数)とすればよい。あるいは、逆に分離状態を1、完全接着状態を0.1としてもよい。分離状態は、他の条件(培養環境、蛍光色素濃度)の変化に依存しない可能性が高いので、どの条件でも同じとみなすことも可能である。
【0169】
なお、接着状態は細胞播種からの時間に大きく依存するため、播種からの経過時間に簡易的に置き換え係数化してもよい。
また、培養細胞と非培養細胞による違い、投入薬剤の有無についても、同様にして数値化(培養細胞係数、投入薬剤係数)することができる。
【0170】
以上の結果、活性度は、以下の関係式によって、求まることになる。
活性度=細胞密度係数×接着状態係数(播種からの経過時間係数)
×培養細胞係数×投入薬剤係数
【0171】
このような演算を、活性度演算部23で行えばよい。
なお、当然のことながら、活性度を表す式は、接着状態係数、細胞密度係数、培養細胞係数および投入薬剤係数のみで決まるわけではない。また、上記式の演算式のみで決まるわけではない。よって、場合によっては、生体試料情報、蛍光色素情報あるいは演算子に関して、付加、削除あるいは変更を行うことになる。
【0172】
また、生細胞の形態から活性度を求める場合は、観測開始前の生細胞の形態と観測開始後の生細胞の形態の比から、活性度を求めることができる。また、形態に変化率は生細胞の種類で変わる可能性がある。よって、単なる比ではなく、その比と生体試料情報の係数を組み合わせてもよい。
例えば、細胞面積であれば、下記式のように表される。
【0173】
活性度=観測開始後における生細胞の面積/観測開始前の生細胞の面積
あるいは
活性度=観測開始後における生細胞の面積/観測開始前の生細胞の面積×培養細胞係数
【0174】
その際、細胞密度係数・接着状態係数・培養細胞係数・投入薬剤係数は、他の係数の関数で表されていてもよい(例えば、細胞密度係数は、培養細胞係数を変数とする関数で表されている等。)。
また、活性度演算部23は、過去の活性度測定結果、観測結果の履歴に基づき新たな活性度を求めることができる。
【0175】
(3)判断基準(閾値)の設定
判断基準(閾値)の設定は、統合制御部2で行う。統合制御部2は、活性度に対して閾値を設定する(図31(b))か、光毒性値に対して閾値を設定する(図31(c))。
活性度に対して閾値を設定する場合、閾値は、(1)観測開始前の活性度、(2)観測開始前の活性度よりも小さい値となる。閾値をどの値にするかは、観測結果の履歴、観測目的および観測者の経験等に基づいて、総合的に決めればよい。統合制御部2は、過去の活性度測定結果、観測結果の履歴および観測目的を自動的に記録する機能を備えておくことが望ましい。また、統合制御部2は、その判定基準(閾値)を更新する機能を有することが望ましい。また、閾値のデータは、観測者が自ら蓄積・更新してもよいし、自動で蓄積・更新してもよい。
以上は、統合制御部2が閾値を設定する場合を示したが、観測者が経験等に基づいて、直接閾値を入力・設定してもよい。
【0176】
(4)初期設定パラメータ
また、生体試料情報および蛍光色素情報の種類と値は、観測時に既に決まっている。したがって、これらのパラメータは、基本的には、最初の観測条件の制御に用いられることはない。しかしながら、観測中に変更できることから、観測条件に含めることはできる。
初期設定パラメータは、観測に先立ってユーザインタフェース3を介して制御(入力・設定等)される観測条件である。初期パラメータの設定については、以下に詳細を補足する。
【0177】
初期設定では、以下の3つの情報について設定を行う。どの情報をどの順番で設定するかは自由である。
3−1 ハードウェア情報(観測条件)の設定
3−2 蛍光色素情報の設定
3−3 生体試料情報の設定
設定例を以下に示す。図6の例では、本システムの装置構成をグラフィック表示する。そして、所定の構成をクリックすることで、その構成に関して設定可能な情報が表示される。
【0178】
そこで、観測者は、表示された情報について設定を行う。
まず、照射方法を決定する(なお、照射と照明は同じ意味で使用する。)。上記例では、画面の所定の場所に、透過照明か落射照明かを選択するブロックを表示されている。また、図7のように、コンデンサレンズ、透過投光管、透過光源を囲むブロック、対物レンズ、落射投光管、落射光源を囲むブロックを表示し、このブロックを選択するようにしてもよい。
【0179】
いずれの場合も、選択が終わると、ブロックが消滅するようにしておく。
図8では、透過照明方法が選択されたものとする。この場合、対物レンズ、落射投光管、落射光源のブロックが強調される。
【0180】
次に、図9に示したように観測者は各ブロックについて、設定を行う。
例えば、カーソルを対物レンズのブロックに移動させると、対物レンズの一覧が表示される。そこで、観測者は、カーソルを移動させて、観測に適した対物レンズの種類と倍率を選択する。選択が終わると、一覧表は自動的に消滅する。また、対物レンズのブロックの強調表示も終了する。
【0181】
次に、図10に示したように落射光源のブロックにカーソルを一致させる。すると、利用可能な光源の一覧が表示される。そこで、観測者は観察に適した光源を選択する。選択が終わると、一覧表は自動的に消滅する。また、対物レンズのブロックの強調表示も終了する。
【0182】
なお、蛍光観察の場合、光源の種類は、蛍光色素によって限定される。これは、蛍光色素の種類によって励起波長が異なるからである。
そこで、落射光源のブロックが選択された場合、光源の一覧表を表示せず、観察方法を設定するようにしてもよい。例えば、図11に示したように、落射光源のブロックが選択されると、標本部のブロックが強調される(標本は生細胞、すなわち生体試料と同じ意味で使用する。)。このとき、落射光源のブロックは、設定途中である表示に変わる(図ではブロックの外枠を破線表示)。観測者が、標本部のブロックにカーソルを一致させると、標本の種類の表示が行われる。(標本部のブロックの強調と同時に、標本部のブロックに、カーソルが自動的に移動してもよい。)
【0183】
ここで、標本として蛍光標本が選択されると、図12に示したように蛍光色素名の一覧が表示される。(蛍光色素名を入力するようにしてもよい。)観測者は、標本作成時に使用した蛍光色素を選択する。
選択が終わると、一覧表は自動的に消滅する。
【0184】
続いて、落射光源の一覧が表示される。ここで、選択された蛍光色素に適した光源のみが表示される。図13は、赤色の波長域で励起される蛍光色素が選択された場合の例である。このようにすれば、観測者は、多数の光源の中から、使用する光源の設定を素早く、簡単に行える。
【0185】
次に、図14に示したように落射投光管の選択を行う。落射投光管では、リレー光学系と各種光学フィルタ(特に励起フィルタ)の設定を行う。ここで、落射光源と落射投光管が一対一に対応していれば、落射光源を選択した時点で自動的に設定することもできる。また、リレー光学系が1つしかない場合、リレー光学系の選択は行われない。また、蛍光色素の種類が決まっていれば、励起波長が決まるので、励起フィルタも自動的に設定することができる。
【0186】
ただし、同じような励起フィルタがある場合、あるいは、目的を持って所定のリレー光学系を使用することもあるので、観測者が自由に選択できるようにしておく方が好ましい。
そこで、以下の例では、励起フィルタを設定する様子について説明する。
【0187】
落射投光管のブロックにカーソルを一致させると、リレー光学系のブロックと光学フィルタのブロックが表示される。ここで、光学フィルタが選択されると、光学フィルタの一覧が表示される。(光学フィルタを入力するようにしてもよい。)観測者は、使用する光学フィルタを選択する。選択が終わると、一覧表は自動的に消滅する。複数の光学フィルタを使用する場合は、最初に使用する数を入力できるようにして、後は、上記の例のように、1つ1つ設定しておけばよい。
【0188】
あるいは、図15のように、落射投光管のブロック中に、光学フィルタを示すブロックを複数表示する。そして、ブロックごとに、光学フィルタの種類を設定するようにしてもよい。
以上のようにして、ハードウェア情報の設定が終了する。
なお、透過照明を選択した場合は、コンデンサレンズ、透過投光管、透過光源の各ブロックについて、設定すればよい。
【0189】
次に、蛍光色素情報の設定を行う。蛍光色素情報の設定では、蛍光色素の種類と、蛍光色素濃度を設定する。いずれの設定も、この例では、標本部を選択することで行う。上記例では、落射光源ブロックを選択すると、自動的に標本部を選択するようになっている。しかしながら、独立して標本部を選択可能にしておけば、最初に蛍光色素情報の設定を行うことができる。蛍光色素の種類を設定する様子は、上記で説明したとおりである。また、蛍光色素濃度の設定も、蛍光色素の種類の設定と同じようにすればよい。すなわち、蛍光色素名の一覧の代わりに、濃度の一覧が表示されればよい。ただし、濃度については数値が連続的なので、数値を入力する方式の方が好ましい。あるいは、図16に示すように、選択可能範囲を表示し、カーソルを移動させて、任意の値を選択できるようにしてもよい。
【0190】
さらに、生体試料情報の設定を行う。生体試料情報としては、以下のものが考えられる。これらの情報について、上述の設定方法を利用して設定すればよい。
細胞の種類、
培養環境(温度、湿度、培養液のpH、二酸化炭素濃度)、
接着状態、
培養細胞か非培養細胞か、
投入薬剤の有無
播種濃度、
細胞密度、
播種から観測開始までの経過時間。
【0191】
なお、設定に先立って、観測条件(光源、リレー光学系、光学フィルタ、蛍光色素名、細胞の種類等)を予めデータベースに登録しておかなければならないのは、当然である。観測条件のうち、光源についての出力値や分光発光特性は、カタログ等に記載されている仕様値を用いることができる。ただし、実際の出力値や分光発光特性は、仕様値と実際と異なる場合がある。よって、観測を行い、実測値をデータベースに登録した方が好ましい。また、リレー光学系、対物レンズ、コンデンサレンズ、各種光学フィルタは、その種類だけでなく、分光透過率特性も予め登録しておく。これは、光毒性値を算出するにあたって、光学系においける照射光の損失割合を計算するのに必要だからである。
【0192】
(4)観測条件の設定
上述のように、観測条件は以下の1〜11である。
1、光源の種類
2、励起フィルタの種類
3、リレー光学系の種類
4、対物レンズの種類
5、コンデンサレンズの種類
6、各種フィルタの種類(NDフィルタや吸収フィルタを含む)
7、1回の照射時間
8、照射回数
9、総観測時間
10、照射間隔
11、照射光の連続性(連続発振(発光)かパルス発振(発光)か、パルス発振の場合のパルス周波数やパルス幅)
このうち、1〜6は、初期設定でも使用している。
【0193】
次に、観測条件の設定手順について以下の順に説明する。
1.観測した結果をフィードバックしない例
(1)観測条件の数値入力が全て自由な例(図17,図18)
(2)観測条件の数値入力の一部は自由、残りは選択する例(図19,図20)
(3)観測条件の数値を全て選択する例(図21,図22)
2.観測した結果をフィードバックする例(光情報)
(1)初回の観測結果のみをフィードバックする。(蛍光観察以外に有効)(図23)
(2)毎回観測結果をフィードバックする。(図25〜図27)
3.観測した結果をフィードバックする例(細胞活性情報)
(1)毎回観測結果をフィードバックする。(図28)
4.観測した結果をフィードバックする例(蛍光退色情報)
(1)毎回観測結果をフィードバックする。(図29)
【0194】
1.観測した結果をフィードバックしない例
(1)観測条件の数値入力が全て自由な例(図17,図18)
図17にフローチャートを示す。なお、ハードウェア情報・蛍光色素情報・生体組織情報等に関する初期設定は、観測条件の設定前に完了しているものとする。(初期設定情報:観測条件の設定前に、設定が完了しているハードウェア情報・蛍光色素情報・生体組織情報等)
【0195】
まず、観測者はユーザインタフェース3を介し、観測条件の設定を開始する。次に、観測者は、選択された観測条件の一つについて数値を入力する。ここで、残りの観測条件については、予めデフォルト値が設定されている。よって、1つの観測条件の値が設定されると、設定された値とデフォルト値によって、光毒性値の算出が行われる。デフォルト値は、例えば、各観測条件の最小値である。あるいは、過去の観測から得たデータを参考にした値が用いられてもよい。
【0196】
入力値は光毒性値演算部22入力され、光毒性値演算部22は光毒性値を算出する。光毒性値の算出は、前記独自式に基づいてもよいし、観測条件と毒性値からなるデータベースに基づいてもよい。また、活性度演算部23において活性度の算出を行う。そして、統合制御部2において、光毒性値に対して閾値を設定する。設定した閾値と光毒性値より光毒性の判定を、判断部21で行う。判断部21で光毒性ありと判断された場合、統合制御部2は警告を表示し、観測者に観測条件の再入力を要求する。一方、判断部21で毒性なしと判断された場合、統合制御部2は他の観測条件の設定(制御)を行うか否かの選択を観測者に促す。観測条件の再設定を行う場合、一覧表示に戻る。設定を行わない場合、測定を開始する。なお、観測終了までに観測結果を表示してもよいし、観測と同時に、観測結果を解析・表示してもよい。
【0197】
図18に、実際の設定画面の一例を示す。(なお、図の順番は、左欄の上から下、続いて右上欄の上から下で、他の図面も同じである。右欄の下に、変形例が例示されている場合もある。)観測条件Aを入力するときの画面、続いて観測条件Bを入力するときの画面、判断部21により「毒性あり」と判断された場合の画面、および再入力したときの画面を示す。
【0198】
(2)観測条件の数値入力の一部は自由、残りは選択する例
図19は図17の変形例であり、観測条件の一部を自由に入力し、残りを一覧から選択するものである。一部観測条件を選択式とすることで、観測条件の設定、光毒性の判断、観測条件の再設定、という繰り返し作業を避けることができる。その結果、生細胞の活性劣化を生じない観測条件の設定を行うにあたって、観測者が要する時間を短縮化することが可能である。
【0199】
選択する際は、選択可能な範囲(例えば、一覧)が表示されるのが望ましい。選択可能な範囲は、独自式に基づき算出してもよいし、観測条件と光毒性値からなるデータベースから算出してもよい。さらには、生細胞の活性劣化が生じない観測条件の組み合わせが記録さているデータベースから導出してもよい。
【0200】
本例では、各観測条件の設定ごとに、光毒性の判断を行っている。設定対象となっている観測条件については、それ以前に設定された観測条件から求めた光毒性値を元に選択可能な範囲が提示される。例えば、観測条件A(たとえば1回の照射量)の設定後、観測条件B(撮像間隔)を観測条件として設定する場合を考える。この場合、撮像間隔(観測条件B)の設定よりも以前に、1回の照射量(観測条件A)の値が設定されている。よって、まず1回の照射量(観測条件A)に関して光毒性値を求めることができる。ここで、撮像間隔に対する光毒性を求めるときに、1回の照射量(観測条件A)から求めた光毒性値を利用する。すなわち、1回の照射量における光毒性値が閾値以下であれば、光毒性値と閾値の差から撮像間隔の選択可能な数値範囲を求め、それを表示する。
【0201】
1回の照射量は、1回の照射時間と生体試料に照射される光の量から求めることができる。そして、この1回の照射量を用いて、光毒性値を求める。光毒性値が閾値より大きければ、観測条件Aに関わる値、つまり1回の照射時間や生体試料に照射される光の量の値を変更するように観測者に促す。光毒性値が閾値より小さければ、撮像間隔(観測条件B)について、選択可能な数値範囲を求めて表示する。このようにして、撮像間隔の数値の設定を観測者に促す。
このようにすることで、設定された観測条件の値を、他の観測条件と関連付けつつ、かつ個別に観測条件ごとに細胞毒性を評価することができる。これにより、観測条件について観測者が不適切な値を設定した場合、そのことを観測者に指摘しやすい。
【0202】
図20には、実際の設定画面の一例を示す。「観測条件Bを選択した場合」で示すとおり、観測者に選択可能な範囲を示すことで、観測者が煩雑な作業をする必要がない。図20では、選択範囲を「選択可能な範囲:1〜10」とし表示したが、「選択可能な範囲:1、2、3、・・・10」と表現してもよい。また、図20の変形例1のように、指標(黒四角)をスライドさせることで、観測条件の値を指定できてもよい。また、観測条件が数値以外で表示される場合は、変形例2のように観測条件を文字で表現し、カーソルで選択できるようにしてもよい。
【0203】
(3)観測条件の数値を全て選択する例
図21、図22は、図19、図20の変形例であり、観測条件の全てを選択するものである。全て選択式とすることで、観測条件の設定、光毒性の判断、観測条件の再設定、という繰り返し作業を避けることができる。その結果、生細胞の活性劣化を生じない観測条件の設定を行うにあたって、観測者が要する時間をより短縮化することが可能である。
【0204】
2.観測した結果をフィードバックする例(光情報)
(1)初回の観測結果のみをフィードバックする。(蛍光観察以外に有効)
図23は初回の観測結果をもとに、照明光の量を求める機能を有する例である(なお、照明光の量、照射光の量、撮像素子に入射した光の量は、光の量で説明した放射量あるいは測光量で表されているものとする。)。また、1回の照射時間も求めるようにしてもよい。
【0205】
図23のフローチャートに示すように、本構成では、「設定された観測条件に基づいて標本を照明する」、「標本を撮像する」、「撮像結果に基づいて照明光の量を推定する」および「観測条件のうち、照明光の量に関する条件の値を推定値に変更する」の工程の後に光毒性値を算出する。
「光毒性の判断」の後、「毒性なし」と判断した場合、「全観測期間での光毒性を算出」する工程を実行し、さらに、毒性なしと「判断」した場合、観測を続行する。各「判断」ポイントで「毒性あり」と判断した場合、「観測条件の値を変更」する。
【0206】
図23の「撮像結果に基づいて照明光の量を推定する」部分について詳細を説明する。
特に、透過観察あるいは反射光観察では、基本的に、撮像に必要な照明の条件は変化しない。したがって、1回の撮像結果を利用することで、全観測期間における観測条件のうちの照明に関する観測条件を、全観測期間において設定することができる。
【0207】
撮像ユニット12における撮像素子の光電変換特性は既知である。よって、撮像素子の出力と光電変換特性から、撮像素子に入射した光の量が判明する。そして、光学系の透過率も既知であることから、光学系の透過率と撮像素子に入射した光の量から、標本上での照明光の量を推定することができる。
【0208】
ここで、撮像した標本の画像全体が極端に暗い画像でない場合や、あるいは極端に明るい画像でない場合、標本上での照明光の量は適正と判断できる。よって、最初に設定された観測条件のうち「照明光の量に関連する観測条件」に関して変更は行われない。一方、撮像した画像に、極端に暗い部分や極端に明るい部分がある場合、正確な観測が行えない。そこで、撮像した画像全体から、適正と思われる照明光の量について推定を行う。そして、照明光の量に関連する観測条件の値を推定値に変更する。
【0209】
このようにすることで、適切な明るさの画像(撮像素子のダイナミックレンジを最大限利用した画像)を得ることができる。なお、このようにして求まった照明光の量に関連する観測条件は、必ずしも光毒性値の低い条件とは限らない。よって、他の観測条件を含めて光毒性値が算出され、光毒性の判断が行われる。
【0210】
なお、標本上での照明光の量は、「生体試料に照射される光の量」である。よって、標本上での照明光の量は観測条件となるので、制御の対象となる。また、最初に設定された観測条件は、ある程度画像を得ることができる値に設定されている。よって、推定できないような画像が得られることはないものとする。
ここでは撮像素子自体を用いて照明光の量を推定する例を示したが、もちろん、光源からの出射される光の量あるいは標本面での光の量を別光路で直接モニタしてもよい。
【0211】
以上は「撮像結果に基づいて照明光の量を推定する」例を挙げたが、図24に示したように、「撮像中の観測に基づいて、照明光の量を推定する」ようにしてもよい。変形個所を太枠で示した。
【0212】
撮像ユニット12における撮像素子は、標本の像を撮像するためのものである。ただし、撮像だけでなく測光にも利用できる。例えば、撮像素子がCCDであったとする。ここで、CCDからの電荷(出力)読み出し時間を適宜選択し、その電荷読み出し時間で電荷を読み出す。このようにすれば、電荷の時間変化を知ることができる。そして、電荷の時間変化から、適切な明るさの画像が得られるまでの時間、あるいはCCDに入射する光の量を推定することができる。その結果、適切と思われる照射時間や光の量を推定することができる。
【0213】
このようにすれば、最後まで測光しなくても、適切と思われる照射時間や光の量に関して推定値が得られるので、観測条件の設定が素早く行える。なお、時間がかかってもよい場合であれば、最後まで測光を行ってもよい。この場合、適切と思われる照射時間や光の量に関して、推定値ではなく確定値が得られる。よって、図23の場合に比べて、より正確に、照明光の量に関連する観測条件を設定できる。また上記例では、撮像素子自身を測光に利用したが、撮像素子とは別に受光素子を設けてもよい。
【0214】
なお、標本上での照明光の量は、光学系の透過率と光源によって決まる。ここで、フィラメントやアークの劣化等により、光源が発する光の量は経時的変化を生じる。よって、光源が発する光の量については、予めその経時変化の様子をデータとして保有しておくことが望ましい。そして、このデータと上記推定値を使って、観測を実行する。このようにすることで、全観測期間において、より適切に、照明光の量に関連する観測条件を推定することができる。その結果、より信頼性の高い観測結果を得ることができる。
【0215】
以上により、1回の撮像を利用し、全観測期間での照明条件を予測、光毒性を推測できる。よって、観測結果に影響を及ぼさない程度に生体試料の活性を確実に維持して観測ができるので、信頼性の高い観測結果を得ることができる。
なお、本例を蛍光観察法に用いてもよいが、その場合、退色がないこと、および励起光と蛍光の強度が比例することを前提とする。
【0216】
(2)毎回観測結果をフィードバックする。
図25は図23の変形例である。本例では、図23の「撮像結果に基づいて照明光の量を推定する」ことを、全測定期間中、毎回行う例である。毎回撮像した結果を利用するので、図23で示す例と比べ、より正確に、照明光の量に関連する観測条件を推定することができる。その結果、さらに信頼性の高い観測結果を得ることができる。
【0217】
図26、図27は図25の変形例である。変形個所を太枠で示した。
図26に示した変形例は、特に、蛍光観察で有効である。蛍光観察においては、生細胞から発せられる蛍光の量が経時的に大きく変化する。したがって、撮像素子のダイナミックレンジを有効に活用するためには以下の策が考えられる。
・全観測期間で1回の観測時間を変える。
・観測期間中、撮像中の観測を基に照明光の量を変える。
【0218】
特に、蛍光観察では、図25のように、撮像結果(撮像が終了した結果)から最適な照明光の量を推測するのは好ましくない。この点について説明する。上述のように、蛍光観察では、蛍光の量が時間的に大きく変化する場合がある。この場合、推定値を得るための観測では、生細胞に照射される光の量や時間を最小限に留める必要がある。そうしないと、推定値を得るための観測とその後に行う観測(正式な観測)とで、生細胞の活性度に大きな乖離が生じる可能性がある。また、照射光によって、蛍光の退色が生じる可能性もある。すると、推定値を得るための観測による照射よって退色が進み、その後に行う観測で十分な蛍光を得ることができなくなる可能性がある。
【0219】
そこで、図26や図27の変形例のようにすれば、生細胞に照射される光の量や時間を最小限に留めることができる。そして、適切な明るさの画像が得られるまでの時間(1回の観測時間、図27)、あるいはCCDに入射する光の量(照明光の量、図26)を推定することができる。よって、観測結果に影響を及ぼさない程度に生体試料の活性を確実に維持して観測ができる。また、照明光の量に関連する観測条件を毎回推定することになるので、より正確な観測条件で観測が行える。よって、信頼性の高い観測結果を得ることができる。
【0220】
このようにすれば、観測者が不要な設定を行うことなく、最適な観測条件により生細胞を撮像できる。また、不要な光刺激による生細胞の形質・形態変化等を気にすることなく、観測を行うことができる。
【0221】
3.観測した結果をフィードバックする例(標本活性情報)
図28に、標本の活性を実測し、観測条件にフィードバックする例を示す。図25との違いは、以下の3点である。
・光毒性値の算出工程と閾値の算出工程の間に、「撮像結果、あるいは外部情報に基づいて、標本の活性度を推定する」工程が加わった点。
・閾値の算出工程が、「初期設定情報および/または活性度から閾値を算出する」工程に変わった点。
・「光毒性データベース(光毒性算出式、閾値算出式を含む)の更新」工程が加わった点。
【0222】
以下、外部情報の入手手段を示す。
培養環境ユニット19の内部には、活性監視ユニット18が設けられている(図1参照)。この活性監視ユニット18は、特定の細胞培養領域の近傍に設けられている。ここで、特定の細胞培養領域とは、測定対象の生細胞とは別に設けられた培養領域である。特定の細胞培養領域は、測定対象の生細胞と同一の条件で照明光が照射される。
【0223】
活性の評価では、形態観察を用いた判定を利用してもよいし、活性試薬を用いた判定を利用してもよい。形態観察では、位相差・微分干渉法等を用いればよい。活性の数値化では、標本の形態から観測者が数値を決定してもよいし、取得画像の形態・形態の時間的変化を画像処理により抽出し数値化してもよい。また、試薬を用いた場合、吸光度を活性度(例えば0〜1)に換算させることで活性を数値化することもできる。
【0224】
活性監視ユニット18は、観測情報を活性度演算部23へ出力する。活性度演算部23は、入力された情報に基づいて「標本の活性度を推定する」。そして、統合制御部2が、「活性度から閾値を算出する」の工程を行う。この閾値は、活性度に対する閾値でもよい。しかしながら、本例では次の工程で、閾値と光毒性値で光毒性判断が行われている。よって、最終的には光毒性値に対する閾値を算出することになる。
【0225】
このように、本例では、閾値の算出において、外部情報に基づいて活性度を算出することができる。よって、初期設定情報のみから活性度を求める場合に比べて、活性度をより正解邦求めることができる。これは、閾値をより正確に求めることになる。結果、光毒性の判断の確度をあげることができる。よって、信頼性の高い観測結果を得ることができる。また、必要に応じ測定途中からの観測条件を見直し、適切に観測条件を制御することが可能である。
【0226】
また、活性の評価・数値化のデータは、データ保存メモリ9のデータベース(光毒性算出式、閾値算出式を含む)の更新へ反映してもよい。
さらに、「光毒性あり」と判断しても、観測者の判断で観測を継続してもよい。測定を継続するか否かの判断は観測者によって決定される。例えば、撮像間隔等の設定を行う際に、許容値をオーバーした際に測定を停止するか否かの指定をしておけばよい。
【0227】
4.観測した結果をフィードバックする例(蛍光退色情報)
(1)毎回観測結果をフィードバックする。(図29)
蛍光色素は光による褪色する。その結果、標本から発せられる蛍光の量(光の量)は、時間の経過とともに少なくなっていくことが多い。退色自身は直接光毒性とは無関係であるが、蛍光像の撮影が困難になる場合がある。そこで、蛍光の退色の度合いを観測して、全観測期間で観測が可能になるようにすることが望ましい。
【0228】
図29に示す実施例は、褪色を撮像結果から推測し、結果に基づき、観測条件を変更するループを有する。退色度は、例えば、
退色度=観測時の蛍光量/初期の蛍光量
で表すことできる。
初期の蛍光量は、初期設定条件および観測条件から推定する。ただし、観測前に撮像し、その撮像結果から初期の蛍光量の値を決定した方がより正確になる。
【0229】
あるいは、
退色度=n回目の観測における蛍光量/n−1回目の観測における蛍光量
としてもよい。この場合、第1回目の観測では、0回目の観測における蛍光量=初期の蛍光量となる。
【0230】
上記観測した褪色度より、観測条件(照明光の量と1回の照射時間の関係、照射光の連続性(パルス長、周波数)等)を変更し、より褪色の影響の少ない観測条件へ変更する。
以上、閾値および光毒性値を装置が設定する観測法を示したが、これらを観測者が設定してもよい。これにより、観測者本位の自由な測定を行うことができる。
【0231】
以上のように、本実施形態の生細胞観察計測システムによれば、生体試料の活性を損なう要因を制御することにより、細胞の活性を損なうことなく、長期間生体試料を観察計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】本発明の一実施形態に係る生細胞観察計測システムを示すブロック図である。
【図2】データベースとして登録されている光毒性の発生しない観測条件である。
【図3】光毒に寄与するパラメータを示した図である。
【図4】観測条件と光毒性寄与度の対応を示したデータベースである。
【図5】光毒性の判定条件について示した図である。
【図6】グラフィック表示された装置構成である。
【図7】グラフィック表示された装置構成であり、コンデンサレンズ、透過投光管、透過光源を囲むブロック、対物レンズ、落射投光管、落射光源を囲むブロックを表示した状態である。
【図8】同グラフィック表示において透過照射方法が選択され、対物レンズ、落射投光管、落射光源のブロックが強調された状態を示した図である。
【図9】同グラフィック表示において、各ブロックの設定を行う状態について示した図である。
【図10】同グラフィック表示において、各ブロックの設定を行う状態について示した図である。
【図11】同グラフィック表示において、各ブロックの設定を行う状態について示した図である。
【図12】同グラフィック表示において、各ブロックの設定を行う状態について示した図である。
【図13】同グラフィック表示において、各ブロックの設定を行う状態について示した図である。
【図14】同グラフィック表示において、各ブロックの設定を行う状態について示した図である。
【図15】同グラフィック表示において、落射投光管のブロック中に光学フィルタを示すブロックを複数表示した状態について示した図である。
【図16】同グラフィック表示において、蛍光色素濃度の選択方法を示した図である。
【図17】観測条件の設定手順について示した図であり、観測条件の数値入力が全て自由な場合のフローチャートである。
【図18】同設定手順における実際の設定画面の例である。
【図19】観測条件の設定手順について示した図であり、観測条件の数値入力の一部は自由、残りは選択する場合のフローチャートである。
【図20】同設定手順における実際の設定画面の例である。
【図21】観測条件の設定手順について示した図であり、観測条件の数値を全て選択する場合のフローチャートである。
【図22】同設定手順における実際の設定画面の例である。
【図23】観測条件の設定手順について示した図であり、初回の観測結果のみをフィードバックする場合のフローチャートである。
【図24】同設定手順の変形例である。
【図25】観測条件の設定手順について示した図であり、毎回観測結果をフィードバックする場合のフローチャートである。
【図26】同設定手順の変形例である。
【図27】同設定手順の変形例である。
【図28】観測条件の設定手順について示した図であり、細胞の活性の情報を実測し、観測条件にフィードバックする場合のフローチャートである。
【図29】観測条件の設定手順について示した図であり、蛍光退色情報を観測条件にフィードバックする場合のフローチャートである。
【図30】観測期間を示す図である。
【図31】照射と観測の関係を示す図であって、(a)時間(間隔)が同じ場合、(b)時間(間隔)が異なる場合である。
【図32】(a)活性と耐光毒性の関係を示す図、(b)活性度の変化量と光毒性値の関係を示す図である。
【図33】(a)光毒性値に対する活性度の時間変化を示す図、(b)活性度と閾値の関係を示す図である。
【図34】光毒性値と閾値の関係を示す図である。
【図35】前の観測と次の観測の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0233】
1 生体試料観察システム
2 統合制御部(制御部)
3 ユーザインタフェース
4 細胞毒性演算部(演算部)
9 データ保存メモリ(記憶部)
12 撮像ユニット
15 照明ユニット
19 培養ユニット
22 光毒性演算部(演算部)
23 活性度演算部(演算部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料を経時的に観察・計測する生体試料観察計測システムおよび生体試料観察計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料を経時的に観察・計測(以下、「観測」とする。)するシステムとして、特許文献1のような例が挙げられる。この技術では、特定の一細胞に由来する細胞群を培養することや、細胞を培養する過程で相互作用させる細胞を特定しながら培養観察すること、細胞濃度を一定にしたまま細胞を培養すること、培養している細胞群の中の特定の細胞のみにシグナル物質等の薬剤等の細胞と相互作用する物質を散布し、その細胞と他の細胞との変化の違いを観察すること等を可能とする技術手段を提供している。
【0003】
このために、基板上に設けた凹部からなる細胞培養部と、細胞培養部の上面を覆う半透膜と、半透膜上部に設けた培養液交換部とを有する細胞培養容器を備え、細胞培養容器への細胞培養液の供給手段と、細胞培養部内の細胞を長期観察することのできる顕微光学手段とを備えている。
また、観測対象を生体としたものに、特許文献2のような例もある。この技術は蛍光内視鏡に関するもので、生体へ蛍光剤を注入し蛍光像を検出することで、その蛍光像から生体組織の変性や癌等の疾患状態(種類や浸潤度)を診断するものである。
【特許文献1】特開2002−153260号公報
【特許文献2】特開平7−155290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生体試料は環境による影響を受け、活性を損ない易い。例えば、生体試料は光に対して非常に弱く、一定以上の時間、光に曝されると簡単に死滅する。つまり、光により活性が低下するという性質を生体試料は有するといえる。言い換えれば、照射光は生体試料に対して毒性を有するといえる。そこで、照射光の持つ毒性、あるいはこの毒性に対する生体試料の耐性を考慮しないまま、生体試料に照射光を照射して観測を行うと、生体試料の活性が徐々に低下していく(活性が失われていく)。その結果、観測開始時点と略同じ活性状態の生体試料で観測ができないので、観測結果の信頼性を著しく低下させることとなる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、信頼性の高い観測結果を得ることができる生体試料観察計測システムおよび生体試料観察計測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明は、所定の観測条件を記憶するとともに、生体試料が持つ活性に基づき前記所定の観測条件を制御する生体試料観察計測システムを提供する。
また、生体試料を保持する培養ユニットと、前記培養ユニットに照射光を導く照明ユニットと、前記培養ユニットを撮像する撮像ユニットと、撮像した画像や所定の観測条件を記憶する記憶部と、演算部と、前記培養ユニット、前記照明ユニットおよび前記撮像ユニットの制御を行う制御部とを有する処理ユニットとを備え、前記演算部は、前記生体試料がもつ活性度を求める工程と、前記所定の観測条件に基づいて光毒性値を求める工程と、閾値を求める工程を備え、前記制御部が、前記閾値に基づいて、前記培養ユニット、前記照明ユニットおよび前記撮像ユニットの少なくとも1つを制御する生体試料観察計測システムを提供する。
【0007】
また、所定の観測条件を制御して生体試料の観測を行う生体試料観察計測システムであって、前記所定の観測条件は、前記生体試料が持つ活性から求めた閾値よりも低い値の光毒性値となるように設定されている生体試料観察計測システムを提供する。
また、所定の観測条件を記憶するとともに、生体試料が持つ活性に基づき前記所定の観測条件を制御する生体試料観察計測方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、観測の開始から終了までの間、生体試料の活性劣化を防止できる。言い換えると、観測の開始から終了までの間、観測結果に影響を及ぼさない程度に、生体試料の活性を維持することができる。よって、観測開始時点の活性度を維持したまま、生体試料の観測を行うことが可能となる。また、観測開始時点の活性度よりもある程度活性が低下する場合であっても、その低下の度合いが観測結果に影響を及ぼさない程度となるようにして、生体試料の観測を行うことが可能となる。このように、観測結果に影響を及ぼさない程度に生体試料の活性を確実に維持して観測ができるので、信頼性の高い観測結果を得ることができる。
【0009】
また、生体試料の活性劣化を防止できるので、短時間(短期間)はもちろん、長時間(長期間)にわたっても、生体試料を正確かつリアルタイムに観測することが可能となる。特に、蛍光観測において、長時間にわたって生体試料から発する蛍光の量を正確に観測することができる。
また、生体試料の活性の度合(活性度)に応じて観測の続行や中止を行うことができ、生体試料の死滅を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
生体試料観察計測システム、あるいは生体試料観察計測方法(以下、本システムとする。)の説明に先立って、用語について説明をしておく。
【0011】
「生体試料」について
「生体試料」とは生きている組織(生体組織)や細胞(生細胞)を指す。生きている組織や細胞は、培養組織や培養細胞でもよいし、生体から取り出した組織や細胞でもよい。さらにはin vivo(生体内)観測における組織や細胞でもよい。
【0012】
「所定の観測条件」について
「所定の観測条件」とは、例えば、観測に関連する情報(項目)である。観測に関連する情報は、より具体的には、生体試料に照射される光の量(例えば、照射光強度/1細胞、照射光照度等)、1回の照射時間、照射回数、照射間隔、照射光の連続性(連続発振(発光)かパルス発振(発光)か、パルス発振の場合のパルス周波数やパルス幅)、照射光の波長、照射量および照射範囲、1回の観測時間、観測回数、観測間隔、1回の撮像時間、撮像回数、撮像間隔等である。
【0013】
また、上記の観測に関連する情報の組み合わせから得られる新たな情報も、所定の観測条件に含まれる。例えば、図30に示す関係から、観測期間は下記式によって求めることができる。
観測期間=(1回の照射時間+照射間隔)×照射回数
ここで、照射が行われるごとに観測(撮像)が行われた場合、照射回数は観測回数(撮像回数)と等しくなる。よって、観測期間は以下のように表すこともできる。
観測期間=(1回の照射時間+照射間隔)×観測(撮像)回数
【0014】
なお、図30では、観測開始と1回目の照射における照射開始のタイミングが一致し、観測終了とN回目の照射における照射終了のタイミングが一致している。しかしながら、必ずしも、これらのタイミングを一致させる必要はない。すなわち、観測開始の後に、1回目の照射における照射を開始してもよい。あるいは、N回目の照射における照射終了の後に、観測を終了してもよい。
【0015】
また、図31(a)では、照射開始と観測開始、照射終了と観測終了を同じにして観測を実行している。このような場合、照射時間(1回分)と観測時間(1回分)、照射間隔(1回分)と観測間隔(1回分)は、それぞれ等しくなる。ただし、照射開始と観測開始、照射終了と観測終了を異ならせて観測を実行してもよい。この場合、照射時間(1回分)と観測時間(1回分)、照射間隔(1回分)と観測間隔(1回分)は異なる。
なお、総照射時間と総観測時間は、各々以下のように表される。
総照射時間=1回の照射時間×照射回数
総観測時間=1回の観測時間×観測回数
【0016】
図31(a)の場合、総照射時間と総観測時間は同じになるが、図31(b)の場合、両者の値は異なる。
なお、図31(b)では、照射開始後に観測を開始し、照射終了前に観測を終了している。しかしながら、照射開始前に観測を開始しても、照射終了後に観測を終了してもよい。
【0017】
また、光の量としては、放射量と測光量で表される量がある。放射量としては、放射束、放射強度、放射輝度、放射照度および放射発散度のいずれか、あるいはこれらの組み合わせで表される量がある。また、測光量としては、光束、光度、輝度、照度、光束発散度および光量のいずれか、あるいはこれらの組み合わせで表される量がある。
【0018】
また、上記の観測に関連する情報は、光源の種類、励起フィルタの種類、リレー光学系の種類、対物レンズの種類、コンデンサレンズの種類、各種フィルタの種類(NDフィルタや吸収フィルタを含む)等によって決まる。例えば、照射光の波長は、観測に関連する情報の1つである。この照射光の波長は、光源の種類や励起フィルタの種類を選択すれば自動的に決まる。そして、光源や励起フィルタは、いずれも本システムを構成する構成物である。このように、所定の観測条件である照射光の波長が、光源や吸収フィルタ、すなわち、本システムを構成する構成物によって決まることから、本システムを構成する構成物も所定の観測条件ということができる。
【0019】
このように、光源、励起フィルタ、リレー光学系、対物レンズ、コンデンサレンズおよび各種フィルタは、いずれも本システムを構成する構成物であって、所定の観測条件に必要なものである。よって、これらの構成物自体も所定の観測条件に含まれる。
また、観測に適した画像を得るには、撮像ユニットに入射する光の量を調整するか、撮像時間を調整すればよい。光の量や撮像時間を調整手する段としては、撮像ユニットの電子シャッタがある。よって、撮像ユニットも所定の観測条件とすることができる。あるいは、機械的シャッタを撮像ユニットとは別に設けてもよい。このような場合、機械的シャッタも所定の観測条件に含まれる。
【0020】
また、生体試料情報としては、生体試料の種類(名称)、生体試料の組織密度、生体試料を培養する環境(温度、湿度、培養液のpH、二酸化炭素濃度)、生体組織の接着状態、生体試料が培養組織か非培養組織か、生体試料に投入される薬剤の有無、投入された薬剤の種類、生体試料を播種するときの濃度、生体試料を播種してからの経過時間等がある。生体試料情報の内容は、観測開始時に既に決まっている。よって、生体試料情報は、基本的には観測条件に含まれない。しかしながら、例えば、観測中に培養環境を変化させて観測を行うこともあり得る。よって、生体試料情報も、観測条件とすることができる。
【0021】
また、蛍光色素情報としては、蛍光色素の種類、蛍光色素の濃度等がある。この蛍光色素情報の内容も、観測開始時に既に決まっている。よって、蛍光色素情報は、基本的には観測条件に含まれない。しかしながら、例えば、観測中に蛍光色素の濃度を変化させて観測を行うこともあり得る。よって、蛍光色素情報も観測条件にすることができる。
【0022】
このように、所定の観測条件には、(1)本システムを構成する構成物自体(例えば、レーザ、対物レンズ、NDフィルタあるいはCCD等)、(2)観測に関連する情報、および(3) 観測に関連する情報や構成物自体の特性を定量的に表す数値(前者であれば、例えば、10mW(光の量)という数値や、488nm(照射光の波長)という数値、後者であれば、例えば、4%(NDフィルタの減光率)という数値等。)が含まれる。また、場合によって、生体試料情報や蛍光色素情報が、所定の観測条件に含まれる。
なお、以下の説明では、「所定の観測条件」を単に「観測条件」と称する。
【0023】
「光毒性」について
「光毒性」に関しては、「光がある種の物質を励起して光化学反応が生じ、皮膚や目の生体組織を傷害する現象。」(最新医学大事典、第2版、医歯薬出版株式会社)と定義されている。このように、光とある種の物質(原因物質あるいは光毒性物質)の少なくとも2つが、光毒性に関与している。よって、この定義によれば、光毒性は、光に関する情報とある種の物質に関する情報で表現されることになる。
【0024】
一方、本システムでは、光を、生体試料の活性に影響を及ぼす主要因としている。そこで、本システムにおける説明では、「光毒性」を「照射光が持つ毒性」とする。よって、「原因物質(光毒性物質)に関する情報」を含まない形で、光毒性を表現している。なお、光毒性の度合いを数値化したものを、光毒性値とする。
また、本システムにおいて、光毒性によって障害が発生する対象は、皮膚や目という限定された生体組織だけでない。また、生体組織を構成する細胞も、光毒性によって障害が発生する対象に含まれる。
【0025】
「活性度」について
「活性度」は、生体試料における活性の度合いを数値化したものである。生体試料の活性が低下する原因としては、例えば、光照射により細胞内で発生する活性酸素や、光照射により細胞内で発生する熱が考えられる。どのような原因にせよ、生体試料は光が照射されたらすぐに死滅するわけではなく、活性が徐々に低下していく。なお、光の量があまりにも多い(光毒性があまりにも強い)場合、生体試料は瞬時に死滅することもあるが、ここでは想定していない。よって、生体試料は、光毒性に対して、ある程度は耐性を有しているといえる。この光毒性に対して生体試料が持っている耐性を「耐光毒性」とする。また、耐光毒性の度合いを数値化したものを、耐光毒性値とする。
【0026】
ここで、耐光毒性と生体試料の活性との間には相関がある。すなわち、耐光毒性が高ければ活性も高く、耐光毒性が低ければ活性も低い。よって、耐光毒性値と活性度は、例えば、図32(a)に示すような関係となる。この関係から、生体試料の活性は、耐光毒性(耐光毒性値)でも表せることになる。以下では、活性あるいは活性度という表現を主に使用して説明するが、活性あるいは活性度を耐光毒性あるいは耐光毒性値に置き換えても技術的内容に違いは生じない。また、図32(a)では、活性と耐光毒性との関係を線形としたが、非線形の場合もある。
【0027】
また、光毒性値と生体試料の活性度との間にも相関がある。すなわち、光毒性値が大きければ活性度の変化量(劣化の割合)も大きく、光毒性値が小さければ活性度の変化量も小さい。よって、光毒性値と活性度の変化量は、例えば、図32(b)に示すような関係となる。なお、図32(b)では、光毒性値と活性度の変化量の関係を線形としたが、非線形の場合もある。
【0028】
また、光毒性値と活性度との関係を、時間を横軸にとって表すと、例えば、図33(a)のようになる。実線は光毒性値がゼロの場合、一点鎖線は光毒性値が小さい場合、破線は光毒性値が大きい場合を示している。光毒性値がゼロの場合、活性度は初期値のままである。また、光毒性値がゼロではない場合、時間の経過と共に、活性度は徐々に低下していく。なお、図33(a)のグラフでは、生体試料の活性を低下させる他の要因(光毒性以外の要因)は考慮していない。
【0029】
「閾値」について
「閾値」とは、生体試料が所定の活性を維持することができる限界を示す数値である。上述のように、生体試料は光毒性に対する耐性、すなわち、耐光毒性を有する。そして、耐光毒性は、生体試料の活性と相関がある。よって、生体試料が所定の活性を維持できるか否かは、活性度、光毒性値および閾値によって決まることになる。
【0030】
活性度、光毒性値および閾値の関係は、例えば、図33(b)のようになる。図33(b)に示すように、閾値は活性度に対して設定することができる。光毒性値が大きい場合は、光毒性値が小さい場合に比べて活性度の変化量が大きい(図33(a))。そのため、光毒性値が大きい場合では、光毒性値が小さい場合と比べて、短い時間で活性の劣化が生じる。よって、光毒性値が小さい場合と比べて、短い時間で活性度が閾値を下回る。
【0031】
また、図33(b)において、初期値と閾値の差(Δ)が、許容できる活性度の変化量である。そこで、図34に示すように、光毒性値と活性度の変化量のグラフから、光毒性値に対して閾値を設定することができる。この場合、閾値は、光毒性値を使って表すことができる。
【0032】
なお、閾値は、活性度そのものから求めることができる。あるいは、活性度を基にしてさらに演算や推測を行い、得られた結果から閾値を求めてもよい。光毒性値に対して閾値を設定する場合も、活性度の情報は必要である。結局、閾値を求めるには、活性度を求めることが必要となる。
【0033】
また、所定の活性とは、観測結果に影響を及ぼさない程度(すなわち、信頼性の高い観測結果を得ることできる程度)の活性のことである。観測結果の信頼性は、観測目的や観測者の主観等で変わるので、閾値の設定基準もこのような要因によって変わる。
また、生体試料の活性が劣化したという状態は、生体試料の活性が閾値を下回った状態のことをいう。例えば、図33(b)を見ると、t0からt1の区間で活性が徐々に低下している。しかしながら、この区間の活性度は閾値以上である。よって、この区間では生体試料の活性は劣化していないことになる。よって、生体試料の活性が劣化した状態を示している区間は、t1以降の区間となる。
【0034】
「観測法」について
「観測法」とは光を用いて生体試料を観測する手段である。観測法の例としては、蛍光観察、明視野、位相差、ホフマン、偏射、微分干渉、暗視野等がある。なお、生体試料を観察することが可能であれば、例示以外の観測法であってもよい。また、各観測法の検出方法として、共焦点、非共焦点いずれを用いてもよい。
【0035】
「記憶」について
「記憶」とは本システムで得られる情報や、本システムを制御する情報を、メモリやデータベースに登録、保存あるいは記録することである。本システムで得られる情報の例としては、生体試料の画像がある。また、本システムを制御する情報としては、観測条件がある。本システムでは、観測に先立ってこの観測条件を設定する場合や、観測中に観測条件を変更する場合、新たな観測条件を追加する場合がある。いずれの場合においても、設定、変更あるいは追加された観測条件を記憶・記録することは「記憶」に含まれる。
【0036】
「制御」について
「制御」とは、記憶した観測条件に基づいて、本システムを構成する構成物を作動させることである。なお、構成物は、記憶した観測条件のみに基づいて作動するわけではなく、観測条件以外の情報によっても作動可能である。よって、少なくとも記憶した観測条件に基づいて構成物が作動可能になっていればよい。
【0037】
ここで、本システムを作動させるには、本システムを構成する構成物のうち、作動に必要な構成物を選択することが必要になる。例えば、本システムは、照射光を照射する光学系(照明光学系)として、透過光学系と落射光学系を構成物として備えている。このようなシステムで、蛍光観察法で生体試料の観測を行う場合、透過光学系と落射光学系のうちから、落射光学系を選択する。さらに、落射光学系に使用する光源や光学フィルタを選択する。よって、制御には、本システムの構成物自体を選択することが含まれる。
【0038】
また、選択した構成物についても、その構成物が持つパラメータを選択する場合がある。ここで、上述のように、構成物が持つパラメータは観測に関連する情報でもある。例えば、光源には多波長の光を発生させるものがある。このような光源を選択した場合、複数の波長のうちから照射光の波長を選択する必要がある。照射光の波長は光源が持つパラメータのうち1つであるが、一方では観測に関連する情報でもある。よって、制御には、構成物のパラメータすなわち観測に関連する情報を選択することが含まれる。
【0039】
また、観測に関連する情報についても、その観測に関連する情報を定量的に表す数値を設定する場合がある。例えば、選択した光源(レーザ)が30mWまでの青色の光を出力できる場合、生体試料に照射される光の量(観測に関連する情報)として10mWを設定する。よって、制御には、観測に関連する情報の数値を設定することが含まれる。
【0040】
前述のように、(1)本システムを構成する構成物自体、(2)観測に関連する情報(構成物が持つパラメータ)および(3)観測に関連する情報を定量的に表す数値は、いずれも観測条件に含まれる。よって、観測条件の制御には、これらの観測条件を選択(追加や削除を含む)すること、設定すること、変更すること、あるいは数値を入力することも含まれる。また、強制的に観測を停止することも制御に含まれる。
【0041】
本システムの形態について説明する。
本システムは、所定の観測条件を記憶するとともに、生体試料が持つ活性に基づき所定の観測条件を制御するものである。
【0042】
なお、観測条件の制御は、観測者が行っても、システムが自動的に行ってもよい。観測条件の制御では、まず、選択・設定・変更された観測条件が記憶部に記憶される。そして、生体試料の活性に基づいて評価が行われる、その評価結果に基づいて、システムが観測者に観測条件に関して新たな制御を促す。あるいは、システムが自動的に、観測条件に関して新たな制御を行う。あるいは、生体試料の活性を劣化させない観測条件しか設定できないように、観測条件をシステムが制御する。
【0043】
また、この観測条件の制御は、観測を開始する前に行ってもよいし、観測中に(リアルタイムで)行ってもよい。制御は、観測結果に関係なく行ってもよいし、観測中に得た観測結果に基づいて行ってもよい。観測条件の制御が観測中に行われた場合は、新たに制御された観測条件に基づいて観測が行われる。また、評価は、1つの観測条件が制御されるごとに行ってもよいし、全ての観測条件が制御された後に行ってもよい。
【0044】
次に、より好ましい形態について、以下に述べる。
本システムでは、観測条件とその寄与度をデータベースとして有している。この寄与度は、観測条件ごとに設定されていて、数値で表現されている。このようにすれば、制御された観測条件の有効性(観測が実行可能な観測条件か否か)を、データベースを使って評価することができる。
【0045】
また、データベースは、観測条件の組み合わせ(複数)で構成されていてもよい。この場合、観測条件の組み合わせ(寄与度の組み合わせ)は、生体試料の活性を低下させないことを前提とした組み合わせとなっている。よって、制御された観測条件の組み合わせをデータベースに登録された観測条件の組み合わせと比較するだけで、制御された観測条件の有効性の判断が簡単にできる。
【0046】
また、データベースは、観測条件の組み合わせ(複数)と光毒性値で構成されていてもよい。この光毒性値は、組み合わせごとに設けられている。よって、光毒性値と生体試料が持つ耐光毒性から、制御した観測条件が生体試料の活性を劣化させるか否かについて、判断が簡単にできる。なお、観測条件の組み合せ(寄与度の組み合わせ)は、生体試料の活性を低下させないことを前提としていなくてよい。
【0047】
このような構成によれば、データベースをもとにして、生体試料の活性を劣化させない観測条件を制御することができる。その結果、信頼性の高い観測結果を得ることができる。また、生体試料の長期観測が可能となる。また、数値化された寄与度をもとに、観測条件をさらに最適な観測条件へ観測者自身が制御することも可能である。
【0048】
また、観測条件に基づいて光毒性値を求める機能をシステムが備えてもよい。なお、以降の説明において、「求める」には算出すること、推測することおよび類推することが含まれる。光毒性値を求めるには、所定の演算を行うことが必要になる。よって、システムには、光毒性値を求める機能として、演算部を有することが好ましい。
【0049】
また、独自式(独自の演算式)をもとにして光毒性値を求めてもよい。このとき、独自式は、6つの変数(照射光の波長、1回の照射時間、生体試料に照射される光の量、照射間隔、照射回数、照射光の連続性)のうち、少なくとも2つの変数を有する関数で表現することができる。全ての変数を使った場合、独自式Dは以下のように表される。
【0050】
D=f(λ,t,I,b,n,p)
ここで、λは照射光の波長、tは1回の照射時間、Iは生体試料に照射される光の量、bは照射間隔、nは照射回数、pは照射光の連続性である。
【0051】
なお、照射光の波長は、単一の波長だけでなく、ある幅を持った範囲(波長幅)で表すことができる。また、例えば、n(λ)というように、1つの変数が関数で表され、その関数の変数が、他の変数であるというようにしてもよい。(n(λ)では、照射回数は、照射光の波長の関数で表されている。)
【0052】
なお、1回目の照射から2回目の照射の間、生体試料には照射光が照射されていない。この間では、生体試料の活性は低下しない。逆に、活性が向上することもある。よって、照射間隔は、基本的には生体試料の活性に関与するパラメータと考えることができる。しかしながら、生体試料の活性が向上することは、光毒性値が相対的に小さくなったと考えることもできる。よって、上記独自式Dでは、照射間隔を、光毒性値を求める際のパラメータにしている。
【0053】
このように、独自式Dは、複数の観測条件を変数として持つ関数である。この観測条件の各々は数値で表されるが、その表現方法としては、構成物自体の仕様から求まる数値、寄与度あるいは係数がある。
例えば、光源として、定格出力が30mW(仕様)レーザが選択されたとする。そして、15mWを、生体試料に照射される光の量(観測条件)として設定したとする。この場合、構成物自体の仕様から求まる数値は15mWということになる。このように、設定した観測条件の数値は、構成物自体の仕様から求めた数値ということになる。
【0054】
次に、寄与度や係数であるが、これは、構成物自体の仕様から求めた数値を換算することで求めることができる。上記例では、構成物自体の仕様から求めた数値は、15mWである。そこで、この15mWに基づいた換算を行うことで、寄与度として5.4という数値、係数として0.5という数値が得られる。
【0055】
寄与度ついて説明する。光源としてレーザを用い、生体試料に照射される光の量を徐々に大きくしていく。その結果、5mWのときに生体試料の活性低下が始まり、30mWのときに生体試料が死滅したとする。そこで、生体試料の活性が低下しないときの寄与度を1、生体試料が死滅したときの寄与度を10とすると、5mWの寄与度は1、30mWの寄与度は10になる。ここで、生体試料に照射される光の量と光毒性値の関係が線形(正比例)であったとする。そうすると、例えば、15mWに対する寄与度は(10−1)/(30−5)×15=5.4となる。このようにして、15mWに対する寄与度を求めることができる。
【0056】
また、係数であれば、30mWの係数を1として規格化すると、15mWに対する係数は0.5となる。なお、上記の例では、係数を算出する際に、生体試料の活性低下が始まる時点(5mWの時点)については考慮していない。しかしながら、寄与度と同じように、生体試料の活性低下が始まる時点を考慮した換算を行ってもよい。当然のことながら、寄与度についても、例示した係数の換算方法を用いてもよい。
なお、データベースの寄与度から所定の換算を行って、係数を求めてもよい。また、離散データによってータベースが構築されている場合、補間によって寄与度や係数を求めてもよい。
【0057】
光毒性値が求まると、この光毒性値と生体試料が持つ活性から、システムは最適な観測条件を求める。そして、求めた観測条件を自動的に制御することで、システムは観測を実行する。
なお、過去に行った観測における観測条件を用いて、光毒性値を求める(この場合は類推する)ことができる。
【0058】
このような構成によれば、記憶した観測条件をもとにして、システム自身が光毒性値を求めることができる。よって、観測条件の制御を観測者が行うにあたって、その作業を簡略化することができる。すなわち、システムの作業性を向上させることができる。また、信頼性の高い観測結果を得ることができる。
【0059】
また、システムが、活性を数値化する機能を備えてもよい。
光毒性値が得られた場合、その光毒性値と生体試料の活性から、光毒性値が生体試料の活性に影響を及ぼすか否かを評価することができる。そこで、システムが活性を数値化する機能を備えるのが好ましい。この機能により、生体試料の活性度を得ることができる。
【0060】
ここで、生体試料の活性度は、生体試料の生存状態に依存する。生体試料の生存状態は、例えば、培養環境や薬剤の有無等によって左右される。これらは、生体試料情報や蛍光色素情報であることから、生体試料の活性度は生体試料情報や蛍光色素情報に基づいて求めることができる。生体試料情報や蛍光色素情報は数値化できる場合があるので、所定の計算式を用いて生体試料の活性度を求めることは可能である。この場合、演算を行う必要がある。よって、システムが活性度を求める機能として演算部を有することが好ましい。
【0061】
あるいは、生体試料は活性度によって外観形状が異なることから、形状を観測することによっても活性度を求めることができる。また、生体試料からの光の量を測定することによって、活性度を求めることができる。よって、システムは、活性を数値化する(活性度を求める)機能として、計測機能部を有することが好ましい。
このように、生体試料情報や蛍光色素情を使った計算式、あるいは生体試料の観測結果から、生体試料の活性度を求めることができる。
【0062】
また、観測中に、生体試料の活性度を求めることが望ましい。これは、観測中の生体試料の活性度を実測することができれば、活性度をより正確に求めることができるからである。このようにすることで、観測条件をより適切に制御することができる。
なお、実測によって活性度を求める方法としては、例えば、MMT試薬を用いて吸光度の測定を行う方法がある。また、別の方法としては、生体試料の形態の観測から活性度を求める方法がある。いずれの方法でも、計測機能部を使用する。この計測機能部は、培養環境内に設けられている。
このように、試薬等を用いて活性度を求めること、あるいは、生体試料の形態の観測から活性度を求めることができる。
【0063】
このような構成によれば、観測値や観測画像をもとに活性度が数値化できる。よって、活性に基づいて観測条件の制御を観測者が行う場合、その作業を簡略化することができる。すなわち、システムの作業性を向上させることができる。また、システムによって活性度を求める場合は、短時間で活性度を求めることができるので、リアルタイムで観測条件を見直すことが可能となる。
【0064】
また、観測者の経験に基づいて求めた活性度を、システムで求めた活性度の補正に利用することもできる。このように、両者で求めた活性度を利用することで、活性度をより正確に求めることができる。その結果、信頼性の高い観測結果を得ることができる。
また、観測中に生体試料の活性が劣化した場合、観測者に警告することや、あるいは強制的に観測を中断することができる。その結果、生体試料の活性劣化や死滅を防止することができる。
【0065】
また、光毒性を判断する機能をシステムが有してもよい。
データベースの説明で述べたように、本システムは、観測条件の組み合わせをデータベースとして持つことができる。ここで、観測条件の組み合わせが活性を低下させないことを前提としている場合、どの観測条件の組み合わせを選択してもよいことになる。この場合、光毒性を判断する必要がない。
【0066】
これに対して、光毒性値と活性度を求めることができる場合、光毒性値と活性度から光毒性を判断することができる。よって、光毒性を判断する機能をシステムが有するのが好ましい。光毒性を判断する機能は、独立した機能として設けてもよいが、光毒性値を求める機能、あるいは活性度を求める機能と一緒にしてもよい。
なお、光毒性の判断には、(1)光毒性の有無を判断すること、(2)光毒性がある場合、その程度を判断することが含まれる。
【0067】
判断を行うには、判断基準が必要となる。判断基準としては閾値が考えられる。前述のように、閾値は、活性度に基づいて求めた値である。
閾値としては、(1)観測開始前の活性度、(2)観測開始前の活性度よりも小さい値(例えば、観測開始前の活性度80%)が考えられる。この閾値は、寄与度と同じように、データベースとして有することができる。あるいは、活性度と同様に、演算や推測等によって得ることができる。
【0068】
このようにすることで、観測条件より求まった光毒性値が閾値を超えた場合、あるいは超えることが予想された場合、この観測条件が生体試料の活性を劣化させる危険を伴うとシステムが判断することができる。そして、観測条件について新たな制御(選択・設定・変更)を観測者に促すことや、あるいは自動で新たに制御することで、活性を低下させない測定を可能とする。
【0069】
また、判断機能をシステム自身が有することで、活性を劣化させない最適な観測条件での観測が常に可能となる。また、リアルタイムで、観測条件を自動制御することが可能となる。よって、システムの作業性を向上させることができる。また、信頼性の高い観測結果を得ることができる。
【0070】
また、観測者が設定した判断基準をもとに光毒性を判断できるようにしてもよい。
上述のように、閾値は活性度から求めることができる。また、生体試料の活性度は、生体試料の形態の観測から求めることができる。生体試料の形態の観測では、生体試料の形態が画像化される。そして、画像化された形態を解析することで、活性度を求めることができる。解析は、画像処理によって、あるいは観測者が経験に基づいて行うことができる。後者の場合は、判断基準を観測者が設定していると見なすことができる。このように、観測者が設定した判断基準をもとに光毒性を判断できるようにすれば、観測者の経験を利用できる。
【0071】
なお、活性度が観測者の経験から求まったとしても、判断基準、すなわち閾値はシステムが最終的に求める(設定する)ことになる。しかしながら、活性度が観測者の経験から求まった以上、判断基準も観測者が設定したとみなすことができる。
また、画像処理や観測者の経験に関係なく、システムが最終的に求めた閾値を用いずに、この閾値とは別の閾値を観測者が設定することも「判断基準を観測者が設定できる」に含まれる。
【0072】
判断基準は、その観測目的によって大きく異なる可能性がある。したがって、判断基準を観測者が設定できる機能を有することで、観測者の観測定目的に合致した観測(自動観測)が可能となる。その結果、測定対象を拡大することができる。
【0073】
また、過去の観測条件と光毒性の値について計測履歴を記憶し、光毒性の判断基準が計測履歴に基づき更新されるようにしてもよい。
システムは、観測が開始されてから終了するまでの間、観測履歴データを作成する機能を有することが好ましい。このとき、観測履歴データには、観測条件と光毒性値、活性度および閾値が自動で記録されればさらによい。そして、システムは、次の観測の前に、この観測履歴データに基づいてデータベースを自動で更新する。
【0074】
ここで、1回の照射回数で観測が終了する場合は、その1回の照射における光毒性値、活性度および閾値が記録される。また、N回の照射回数で観測が終了する場合、1回の照射ごとに、光毒性値、活性度および閾値が記録される。また、照射条件が同じ場合は、照射回数にかかわらず、1つの光毒性値、活性度および閾値を記録すればよい。そして、このような記録に基づいて、光毒性値、活性度あるいは閾値が更新される。
【0075】
なお、1回の照射回数で観測が終了する場合は、次の観測とは、1回の照射が終了した後に行われる新たな観測のことである。また、N回の照射回数で観測が終了する場合は、次の観測とは、N回の照射が終了した後に行われる新たな観測のことである。図35は2つの観測の関係を示す図である。前の観測は複数回の照射が行う観測で、次の観測は1回の照射を行う観測になっている。この例では、前の観測と次の観測では、照射回数を含め、観測条件が全く異なっている。
【0076】
データベースが寄与度(あるいは係数)と光毒性値で構成されている場合、光毒性値が更新される。例えば、最初の観測における観測条件が、1回の照射時間、生体試料に照射される光の量および照射間隔で、それぞれの寄与度がt1、I1、b1だったとする。また、この観測条件の組み合わせによる光毒性値がx1であったとする。そして、この観測条件で観測を実行したところ、生体試料の活性に劣化が生じたとする。この場合、光毒性値が適切でなかったということなので、データベースの光毒性値x1は新たな光毒性値x2に更新される。そして、この更新された光毒性値で観測条件が制御され、次の観測が行われる。
【0077】
また、独自式Dの場合、式に表現形式が更新される。例えば、独自式Dが下記の式で表されているとする。
D=f(λ,t,I,b,n,p)=(t×I×n×p)/(λ×b2)
【0078】
最初の観測において観測条件t1,I1,n1,p1,λ1,b1とすると、毒性値D1は、
D1=(t1×I1×n1×p1)/(λ1×b12)
となる。
【0079】
そして、この観測条件で観測を実行したところ、生体試料の活性に劣化が生じたとする。この場合、式の表現が適切でなかった(光毒性値を小さく算出する式であった)ということなので、独自式は例えば下記式のように更新される。
D=f(λ,t,I,b,n,p)=(t×I×n×p)/(λ×b)
【0080】
そして、この更新された独自式から算出した光毒性値で観測条件が制御され、次の観測が行われる。この例では、観測条件自身がb2からbに更新されたが、観測条件間の演算子が更新されてもよい。また、更新は、観測条件の削除や追加(最初の観測条件が5つ以下の場合)であってもよい。
【0081】
以上、光毒性値の更新について説明したが、活性度あるいは閾値についても、同様の考え方で更新することができる。なお、光毒性値、活性度あるいは閾値を観測者自身が記録できるようにしてもよい。そして、データベースあるいは独自式Dを、マニュアルで更新することにしてもよい。
【0082】
このような構成によれば、より正確な光毒性値、活性度あるいは閾値を求めることができ、生体試料の活性劣化をより確実に防止することができる。よって、正確な観測が可能となる。また、観測者の観測目的に合致した観測において、判断確度を観測者自ら向上させることができる。
【0083】
観測条件は観測に関連する情報とすることができる。
観測に関連する情報には、生体試料に照射される光の量1回の照射時間、照射回数、照射間隔、照射光の連続性(連続発振(発光)かパルス発振(発光)か、パルス発振の場合のパルス周波数やパルス幅)、照射光の波長、照射量等、照射光に関する情報がある。
このような構成によれば、照射光に関する情報(すなわち光毒性値)を制御でき、生体試料の活性を劣化させずに、目的の観測を行うことができる。
【0084】
また、観測条件は、1回の照射量と総照射量を組み合わせたものとすることができる。
ここで、1回の照射量と総照射量は、以下のように表される。
1回の照射量=生体試料に照射される光の量×1回の照射時間
総照射量=1回の照射量×観測回数
【0085】
観測に必要な1回の照射量(生体試料に照射される光の量の時間的総和)は、ほぼ一定である。よって、生体試料に照射される光の量が多ければ1回の照射時間を短くし、生体試料に照射される光の量が少なければ照射時間を長くできる。生体試料の活性劣化を防止するという観点からすると、照射量の制御が大切といえる。短期的には1回の照射量が重要であり、長期的には、総照射量が重要である。
【0086】
したがって、1回の照射量と総照射量との組み合わせを観測条件とし、この観測条件を制御することで、長期的・短期的に生体試料の活性劣化を防止することが可能となる。1回の照射量の制御とは、試料面における光の量と照射時間の制御を指す。具体的には、LED、LD、アークランプ等の光源への供給電力(投入電流)を制御することである。これは、生体試料に照射射される光の量を、直接的に制御することである。
【0087】
また、生体試料に照射される光の量は一定にしておき、光源から試料面までの間に、NDフィルタを配置する。そして、NDフィルタの挿脱、他のNDフィルタへの交換を行うことで、細胞に照射射される光の量を調節してもよい。これは、生体試料に照射射される光の量を、間接的に制御することである。
【0088】
また、照射時間の制御は、供給電力のオンオフ、シャッタ等によって行うことができる。
このような構成によれば、長期的・短期的な観測において、生体試料の活性劣化を防止することが可能となる。
【0089】
また、観測条件は照射時間とすることができる。
照射光の照射時間は、生体試料の活性に直接的に寄与する。したがって、照射時間を必要最低限の時間にすることが重要となる。なお照射時間には、1回の照射時間と総照射時間がある。総照射時間は、1回の照射時間と観測回数の積である。よって、1回の照射時間を制御できれば、総照射時間を制御することができる。
【0090】
照射時間の制御は、例えば、光源への電流値を制御することや、あるいは光路を機械的に遮蔽することで実現できる。また、生体試料の活性劣化が非常に小さいと判断した場合、高速化を優先し、観測中は照射時間の制御を行わないようにしてもよい。
このような構成によれば、長期的・短期的な観測において、生体試料の活性維持を可能とするとともに、観測の高速化も可能となる。
【0091】
また、観測条件は照射間隔とすることができる。
照射間隔は、1つの照射が終了してから次の照射を開始するまでの時間である。光毒性には、複数の照射光条件が関与している。例えば、照射光量が多くても照射間隔がある程度長いと、生体試料自身の活性が向上する。よって、相対的に、生体試料に対する光毒性の影響は低下する。したがって、照射間隔を制御することが重要となる。例えば、生体試料の活性劣化が予測されるという場合、シャッタを制御するかあるいは光源への投入電流を制御して、照射間隔を制御する。
【0092】
また、高速観測を優先し、照射光をパルス照射から連続照射へ切り替えることや、あるいはその逆を行うことで、照射間隔を制限してもよい。また、生体試料の活性が急激に低下した場合、照射間隔の変更を行ってもよい。
このような構成によれば、長期的・短期的な観測において、生体試料の活性維持が可能となる。
【0093】
また、観測条件は照度とすることができる。
光毒性に関しては、観測に関連する情報の複数のパラメータが絡みあって光毒性に影響を及ぼす。例えば、同じ照射量であっても光の量に応じて光毒性の特性は変化する。そこで、最終的に設定された照射間隔に基づき、測光量、特に照度を制御する。
【0094】
照度の制御は、具体的には、光源、フィルタ等で行えばよい。また、高速観測を優先し、照射光強度を増大させることで制限してもよい。
このような構成によれば、長期的・短期的活性な観測において、生体試料の活性維持が可能となる。
【0095】
また、観測条件は照射光のパルス周波数、あるいはパルス幅とすることができる。
そのため、照射光をパルス状の光にすることが望ましい。「パルス状」には、光の明るさがδ関数のように明るさがステップ的(非連続的)に変動する状態はもちろん、正弦波や鋸歯波のように光の強弱が連続的に変動する状態も含まれる。
【0096】
パルス状の照射光による照射では、生体試料を複数回照射することになる。よって、エネルギーが十分に低い光を、照射光として用いることができる。これにより、生体試料の活性劣化を抑えることができる。また、蛍光の退色を防ぐことができる。その結果、十分に明るい観測像を得ることが可能となる。なお、連続照射よりパルス光照射の方が、全照射エネルギで比較しても光毒性が小さいことが確認できている。したがって、パルス周波数、あるいはパルス幅を制御することで、光毒性の低減を図ることができる。
【0097】
このような照射光を得るため光源としては、例えば、ストロボ光源またはパルスレーザがある。また光源が、一定の明るさの光を発生する光源(連続発光光源)と、この連続発光光源からの光を変調してパルス光を形成する変調装置を備えることとしてもよい。また、LEDを用いてもよい。この場合、入力する電力(電圧、電流)を高速変調することで、安定性および高速性に優れたパルス光源を得ることができる。
このような構成によれば、長期的・短期的な観測において、生体試料の活性維持が可能となる。
【0098】
また、観測条件は照射範囲とすることができる。
例えば、観測範囲に合わせ、照射範囲を限定する。最低限の範囲を照射することで、必要以上に生体試料が照射光に曝されることを防ぐ。照射範囲の制御は、光学系(対物レンズ、コンデンサレンズあるいは視野絞り(照野絞り)で行えばよい。
このような構成によれば、無駄な照射を防ぎ、長期的・短期的な観測において、生体試料の活性劣化を防止することが可能となる。
【0099】
また、本システムは、生体試料を保持する培養ユニットと、培養ユニットに照射光を導く照明ユニットと、培養ユニットを撮像する撮像ユニットと、撮像した画像や所定の観測条件を記憶する記憶部と、所定の演算を行う演算部と、前記培養ユニット、照明ユニットおよび撮像ユニットの制御を行う制御部とを有する処理ユニットとを備え、演算部は、生体試料がもつ活性度を求める工程と、所定の観測条件に基づいて光毒性値を求める工程と、閾値を求める工程を備え、制御部は、閾値に基づいて、培養ユニット、照明ユニットおよび撮像ユニットの少なくとも1つを制御するようにできる。
【0100】
このような構成によれば、生体試料の活性を低下させない最適な条件での観測が常に可能となる。よって、信頼性の高い観測結果を得ることができる。また、リアルタイムで、観測条件を自動制御することが可能となる。よって、システムの作業性を向上させることができる。
【0101】
また、本システムは、所定の観測条件を制御して生体試料の観測を行う生体試料観察計測システムであって、所定の観測条件は、生体試料が持つ活性から求めた閾値よりも低い値の光毒性値となるように設定されているようにすることができる。
このような構成によれば、観測条件を制御するだけで、活性を低下させない最適な条件での観測が常に可能となる。また、生体試料の活性を低下させない最適な条件での観測が常に可能となる。よって、信頼性の高い観測結果を得ることができる。
【0102】
(実施形態)
次に、本発明の一実施形態に係る生体試料観察計測システムについて、図1〜図29を参照して説明する。図1は本実施形態に係る生体試料観測システムであって、生細胞を観測する観察計測システム(以下、生細胞観察計測システム1とする)の全体構成を示すブロック図を示す。
【0103】
生細胞観察計測システム1は、各種制御部、各種演算部、記憶部、観測部を備えている。各種制御部は、統合制御部2、照野制御部4、照射時間制御部5、照射エネルギー制御部6、ステージ制御部7、照射波長制御部8、培養環境制御部10および撮像制御部11である。各種演算部は、光毒性値演算部22および活性度演算部23である。記憶部はデータ保存メモリ9からなる。観測部は、撮像ユニット12、波長選択ユニット13、対物レンズ14、透過照明ユニット15、落射照明ユニット16、培養ユニット19およびステージ20からなる。培養ユニット19は、培養容器17と活性監視ユニット18を備えている。また、生細胞観察計測システム1は、ユーザインタフェース3を有する。
【0104】
観測者は、ユーザインタフェース3を介して観測条件を制御する。観測条件は、統合制御部2を介して光毒性値演算部22に送られる。光毒性値演算部22は、観測条件に基づいて、あるいはデータ保存メモリ9のデータベースを参照して光毒性値を算出する。一方、活性度演算部23は、活性監視ユニットからの情報、あるいはデータ保存メモリ9の情報を参照して、活性度を求める。光毒性値および活性度は統合制御部2に送られて、統合制御部2で閾値が求められた後、光毒性の判断が行われる。
【0105】
光毒性値が閾値よりも小さい場合、統合制御部2は観測条件に基づいて、各種制御部(統合制御部2を除く)に実行を指示する。これにより、観測が開始される。一方、光毒性値が閾値よりも大きい場合、統合制御部2はユーザインタフェース3を介して、観測者に対し、観測条件の再制御を促す。あるいは、観測可能な観測条件に自動的に制御し、観測を開始する。
【0106】
<各種制御部>
以下、各制御部について詳細に説明する。
統合制御部2は、観測・培養に関する全ての機器を統括する制御器である。各種制御部(統合制御部2を除く)、各種演算部、データ保存メモリ9およびユーザインタフェース3は、いずれも統合制御部2と接続している。統合制御部2は、各機器に指示を出すとともに、各機器からの情報を得て、観測の実行や中止、生細胞の培養を行う。
【0107】
統合制御部2は、光毒性値演算部22から出力される光毒性値と、活性度演算部23から出力される活性度に基づいて、閾値を求める処理を行う。また、統合制御部2には、判断部21が設けられている。判断部21は、光毒性値と閾値に基づいて、生細胞の活性が劣化するか否かを判断する。そして、統合制御部2は、判断結果に基づいて、決められた制御を実行する。
【0108】
培養環境制御部10は、生細胞の培養に必要な環境を形成・維持するための制御機能を有する。培養環境制御部10は、培養ユニット19と接続している。培養ユニット19は、生細胞の培養に適した環境が維持された空間(領域)である。培養環境を左右する環境要因は、哺乳類の生細胞等では、CO2、湿度、pH、塩濃度および温度である。これらの環境要因の設定は、観測者によって行われる。環境要因の各々の値は、基本的には、37℃、CO2濃度5%(pH6.8〜7.2)、飽和湿度が多用される。培養ユニット19は環境光から遮光されている。そのため、生細胞には、観測に必要な光以外は照射されない。
【0109】
撮像制御部11は、撮像ユニット12における撮像のタイミングや、撮像時間を制御する。撮像制御部11は、撮像ユニット12と接続している。撮像ユニット12としてはCCDカメラや光電子増倍管(photomultiplier-tube)等を用いることができる。なお、撮像ユニット12として光電子増倍管を使用する場合は、照射光をスポット状にし、この照射光で生細胞を走査することになる。
【0110】
照射時間制御部5は、照射光の1回の照射時間、照射間隔、照射回数および照射光連続性を制御する。具体的な制御手段としては、例えば、シャッタの制御がある。シャッタを使って照射光を遮光、通過させることで、1回の照射時間、照射間隔、照射回数および照射光連続性を制御することができる。また、照明ユニットは光源を備えているので、この光源自体を制御手段としてもよい。すなわち、光源に供給する電力(電圧、電流)を制御(オン、オフ)することで、1回の照射時間、照射間隔、照射回数および照射光連続性を制御することができる。
【0111】
照射エネルギー制御部6は、生細胞に照射される光の量を制御する。具体的な制御手段としては、例えば、NDフィルタの制御がある。減光率の異なるNDフィルタを光路中で挿脱することで、生細胞に照射される光の量を制御することができる。あるいは円周方向に沿って減光率が変化する円板を、光路中で回転させるようにしてもよい。また、照明ユニットは光源を備えているので、この光源自体を制御手段としてもよい。すなわち、光源に供給する電力(電圧、電流)を制御(変化させる)することで、1回の照射時間、照射間隔、照射回数および照射光連続性を制御することができる。
【0112】
照野制御部4は、観測者が設定した観測範囲に合わせて、照射光の照射範囲を制御(制限)する。
照野制御部4は、照射時間制御部5はおよび照射エネルギー制御部6は、透過照明ユニット15および落射照明ユニット16の少なくとも一方と接続している。
【0113】
照射波長制御部8は、生細胞に照射する照射光の波長を制御する。照射波長制御部8は、波長選択ユニット13と接続している。具体的な制御手段としては、光学フィルタの制御がある。分光透過率特性の異なる光学フィルタを光路中で挿脱することで、生細胞に照射される照射光の波長を制御することができる。また、照明ユニットは光源を備えているので、この光源自体を制御手段としてもよい。すなわち、光源に供給する電力(電圧、電流)を制御(変化させる)することで、照射光の波長を制御することができる。
【0114】
ステージ制御部7は、生細胞の位置を制御する。ステージ制御部7は、ステージ20と接続している。生細胞を観測するためには、生細胞を対物レンズ14の視野内に位置させる必要がある。生細胞は培養容器17に保持されている。そして、培養容器17はステージ20上に載置されている。よって、ステージ20を移動させることで、生細胞を対物レンズ14の視野内に位置させることができる。
【0115】
<観測部>
透過照明ユニット15および落射照明ユニット16は、共に、光源と光学系を有している。また、透過照明ユニット15および落射照明ユニット16は、視野絞りや明るさ絞り、NDフィルタを有する。視野絞りは照野を制限する絞りでもある。さらに、透過照明ユニット15および落射照明ユニット16に、拡散板や色フィルタ等を設けることもできる。
【0116】
透過照明ユニット15は、主に形態観察に用いられる。一方、落射照明ユニット16は、主に蛍光観察に用いられる。透過照明ユニット15および落射照明ユニット16は、光源と照明光学系を備えている。光源は、ハロゲンランプ、水銀ランプ、キセノンランプ、レーザあるいはLED等である。なお、生細胞観察計測システム1は、透過照明ユニット15と落射照明ユニット16の少なくとも一方を備えていればよい。
【0117】
光源は連続発振(CW光)の他、パルス発振も可能であることが望ましい。パルス発振の場合、光源は、ストロボ光源またはパルスレーザである。パルス光を得るために、連続発光光源と変調装置の組み合わせで光源を構成してもよい。変調装置は、連続発光光源からの光を変調してパルス光を形成する機能を有する。また、光源自体の電力を制御してもよい。例えば、LEDを用い、電力(電圧)を高速変調することで、安定で高速なパルス光を得ることができる。また、安定性および高速性に優れたパルス光源を得ることができる。
【0118】
培養ユニット19は、培養容器17と活性監視ユニット18を備えている。培養容器17は生細胞を培養・保持するためのものである。
活性監視ユニット18は、生細胞の活性を求める機能を有する。活性監視ユニット18は計測機能部であって、活性度演算部23に接続している。生細胞の活性を求めるにあたっては、観測対象の生細胞を計測するのではなく、コントロール細胞を計測の対象にする。なお、観測対象の生細胞を計測することで、生細胞の活性度を求めることができる。このような場合、活性監視ユニット18を設ける必要はない。
【0119】
培養環境の内部には、1つの培養容器17が配置されている。そして、培養容器17の内部は、2つの培養領域が設定されている。このうち一方の培養領域(培養領域A)には、観測対象となる生細胞が存在している。他方の培養領域(培養領域B)には、コントロール細胞が存在している。コントロール細胞は、培養領域Aと同じ培養条件、観測条件で保持されている。そして、培養領域Bの近傍に、活性監視ユニット18が設けられている。培養領域Aの生細胞が観測されている間、活性監視ユニット18によって、コントロール細胞における活性度を求めるための測定が行われる。
【0120】
コントロール細胞における活性度を求める方法の1つは、MMT試薬を用いて吸光度の測定を行う方法である。この方法は、生細胞の活性が低下すると吸光度が低下する現象を利用している。このように、吸光度と生細胞の活性度は相関があるので、吸光度から生細胞の活性度を求めることができる。そのため、この測定方法における活性監視ユニット18は、吸光度を測定できるように、光源、光学系および受光素子(CCD、PDあるいは光電子増倍管)を少なくとも備えていることが好ましい。また、吸光度から活性度を求めるために演算が必要であるので、演算部を備えておくことが望ましい。この演算部は活性監視ユニット18に持たせてもよい。あるいは、この演算部は、生体試料情報や蛍光色素情報に基づいて求めるときに用いる演算部と共用してもよい。
【0121】
なお、試薬としては、Live/Dead等の試薬、あるいは素の他の薬剤等を用いてもよい。また、薬剤に応じて測定方法が異なることもある。よって、活性監視ユニット18の具体的な構成は薬剤に応じて異なる。
このように、試薬等を用いて活性度を求めることができる。
【0122】
また、コントロール細胞における活性度の測定方法の他の1つは、生細胞の形態の観測から活性度を求める方法である。生細胞の形態の観測には、例えば、位相差・微分干渉等の観察法を用いればよい。そのため、この測定方法における活性監視ユニット18も、コントロール細胞の像を画像化するために、光源、光学系および受光素子(CCD、PDあるいは光電子増倍管)を少なくとも備えていることが好ましい。
【0123】
活性度は、生細胞の厚み・形状から求めればよい。例えば、活性が低下してくると、生細胞の厚みは薄くなる。また、活性が低下してくると、全体が丸みを帯びた形状になり、しかも面積が小さくなる。そこで、生細胞の厚み、面積、輪郭等の情報を予め記憶しておく。そして、観測の進行に合わせて、適宜、生細胞の形態の観測を行う。続いて、観測結果から、生細胞の厚み、面積、輪郭を求め、予め記憶していた情報と比較して、その変化量から活性度を求める。
【0124】
その際、生細胞画像の解析をシステム(画等処理装置等)で行って形態の変化を求め、その結果に基づいて自動的にシステムが活性度を求めるようにすればよい。あるいは、形態画像から経験に基づいて、観測者が活性度を求める(推測する)ようにしてもよい。また、両者を併用してもよい。また、長期間観察による細胞周期の異常をもとに、活性度を求めてもよい。この場合も、演算部を備えておくことが望ましい。この演算部は活性監視ユニット18に持たせてもよい。あるいは、この演算部は、生体試料情報や蛍光色素情報に基づいて求めるときに用いる演算部と共用してもよい。あるいは、この演算部は、画像処理装置等で代用してもよい。
このように、生細胞の形態の観測から活性度を求めることができる。
【0125】
上記のように、培養領域Bでは、観測対象の生細胞と同一の観測条件(照射条件)でコントロール細胞が培養・照射(露光)され、活性監視ユニット18で活性度が実測されている。そして、実測結果は、観測対象の生細胞の活性度を表す結果と見なすことができる。このようにして、より正確に、生細胞の活性度を求めることができる。
【0126】
また、観測対象の生細胞とコントロール細胞とで観測条件を同一にするには、例えば、観測対象の生細胞とコントロール細胞に対して、同時に照射光が照射されるのが好ましい。そのためには、照射光を照射する構成が2つ(1組)必要になる。しかしながら、照射光を照射する構成を1つにして、照射領域に観測対象の生細胞とコントロール細胞を順次移動させてもよい。この場合、同時照射にはならないが、活性監視ユニット18の一部を、生細胞を観測するための構成物(例えば、対物レンズ14)と共通化できる。よって、システム構成を複雑にすることなく、ほとんど同じ観測条件の制御が観測対象の生細胞とコントロール細胞に対して可能となる。
なお、2つの培養容器を用意し、一方の培養容器を培養領域A、他方の培養容器を培養領域Bとし、他方の培養容器の近傍に活性監視ユニット18を設けてもよい。
【0127】
ステージ20は、培養ユニット19を保持している。また、移動機構を有している。この移動機構により、培養容器17を直行する2軸方向に移動させる。この移動により、対物レンズ14の視野内に生細胞を位置させることができる。
【0128】
波長選択ユニット13は、分光透過率特性の異なる光学フィルタを備えている。具体的構造としては、例えば、光路の外側に、光路に沿って複数の光学フィルタを配置しておく。そして、少なくとも1枚の光学フィルタを光路に挿入することで、観測に必要な波長(波長帯域)を有する照射光を得ることができる。また、円板の円周方向に沿って複数の光学フィルタを配置する。そして、この円板の中心を通る軸が光路と平行となるように、円板を配置する。そして、円板を回転させることで、光路中に光学フィルタを挿脱する。このようにしても、観測に必要な波長を有する照射光を得ることができる。
【0129】
ユーザインタフェース3は、観測者が観測・培養に関する所望の観測条件を制御するものである。必要に応じて、キーボードやマウス等の入力装置、および画面表示を行う表示装置を備える。
【0130】
データ保存メモリ9は、撮像ユニット12によって撮像された画像を保存する。また、ユーザインタフェース3から入力された観測条件を保存する。また、内部にデータベースを保有していてもよい。データ保存メモリ9の配置位置は、固定の場所でもよいし、観測者によって指定された場所でもよい。
【0131】
また、システム1に通信機能を持たせることで、本システムとは物理的に独立して存在する構成物(例えば、遠隔地に設置されたデータベースサーバー)にデータベースを設けることができる。
また、データ保存メモリ9に、撮像した生細胞の画像を解析する解析機能が付与されていてもよい。
【0132】
データベースには、観測条件の値に対応する寄与度あるいは係数が、観測条件ごとに登録されている。また、光毒性値もデータベースに登録されていてもよい。ユーザインタフェース3から入力された観測条件の値がデータベースにない場合、その入力値に対応する寄与度あるいは係数は、データベースの数値を使った補間によって求めることができる。この結果、どのような値が入力されても、観測条件に基づいて光毒性値を求めることができる。
【0133】
データベースを使用する場合、データベースは、生細胞の活性を劣化させないことを前提とした観測条件の組み合わせ(寄与度の組み合わせ)とすることができる。このデータベースは、例えば、図2に示すように、5種類の観測条件(観測条件1〜5)を有している。図2では、観測条件1〜5の組み合わせとなっているが、これに限られない。例えば、観測条件1,3,5というような3つの観測条件による組み合わせや、観測条件2,3,4,7,8,9というような6つの観測条件による組み合わせであってもよい。
【0134】
そして、観測条件1〜5の各々には、寄与度が付与されている。ここで、寄与度は1〜6の範囲の数値であって、観測条件の各々は、1〜6の範囲の値をとることができる。よって、寄与度の組み合わせは65とおり存在することになる。ただし、ここでのデータベースは、生細胞の活性を劣化させないことを条件(前提)としているので、この条件を満足しない寄与度の組み合わせは登録されていない。例えば、データAでは3,1,4,2,2という寄与度の組み合わせで、データFでは3,1,6,2,2の寄与度の組み合わせとなっている。
【0135】
このような観測条件と寄与度がデータベースに登録されているので、観測者は観測条件をデータベースに登録されている組み合わせを選択するだけとなる。この場合、どの組み合わせを選んでも、生細胞の活性を劣化させる観測条件とはならない。よって、光毒性を判断する必要がない。
【0136】
なお、このようなデータベースの場合、観測者はデータベースの内容を知らないと、ユーザインタフェース3から観測条件と寄与度を入力できない。よって、データベースの内容を一覧表にして、システムとは別体にして用意しておくか、システムの表示装置にデータベースの内容を表示して、観測者が選択できるようにしておく必要がある。
【0137】
また、図2のデータベースを使って、光毒性の判断もできる。
例えば、入力された観測条件が表1のような組み合わせだったとする。この場合、観測条件の組み合わせは、データベースに登録された観測条件の組み合わせと一致する。ただし、寄与度の組み合わせについては、データA〜Fのいずれとも一致しない。ここで、データA〜Cと観測者が設定した観測条件を比較すると、観測条件1,3〜5については、両者は一致する。一方、観測条件2に関しては、観測者が設定した数値5の方が、最大値3(データC)よりも大きい。よって、統合制御部2は「光毒性あり」と判断する。
【0138】
【表1】
【0139】
また、入力された観測条件が表2のような組み合わせだったとする。この場合、観測条件の組み合わせと寄与度の組み合わせは、データベースに登録されたデータEと一致する。よって、統合制御部2は「光毒性なし」と判断する。
【0140】
【表2】
【0141】
また、入力された観測条件が表3のような組み合わせだったとする。この場合、観測条件の組み合わせは、データベースに登録された観測条件の組み合わせと一致する。ただし、寄与度の組み合わせについては、データA〜Fのいずれとも一致しない。ここで、データD,Eと観測者が設定した観測条件を比較すると、観測条件1,3〜5については、両者は一致する。一方、観測条件2に関しては、観測者が設定した数値1.5は、最大値2(データE)よりも小さい。よって、統合制御部2は「光毒性なし」と判断する。
【0142】
【表3】
【0143】
なお、上記の例では、観測条件の数値として寄与度が入力されている。しかしながら、一般的には、観測条件の数値は、構成物が持つパラメータに関する数値(例えば、レーザの出力値5mW)である。よって、この構成物が持つパラメータに関する数値を入力するのがよい。この場合、構成物が持つパラメータに関する数値は、自動的に寄与度(あるいは係数)に換算される。
【0144】
<演算部>
活性度演算部23は、観測対象の生細胞から活性度を求める機能を有する。生細胞の活性度は、生体試料情報や蛍光色素情報、あるいは生細胞の観測から求めることができる。ここで、生体試料情報や蛍光色素情報はユーザインタフェース3から入力される他、データ保存メモリ9に予め保存されている。よって、活性度演算部23は、統合制御部2を介して、ユーザインタフェース3やデータ保存メモリ9に接続している。
【0145】
また、活性度を生細胞の観測から求めることができるように、活性度演算部23は活性監視ユニット18に接続している。なお、活性度演算部23で閾値を求めることもできるが、これは統合制御部2で行えばよい。
【0146】
次に、光毒性値演算部22は、観測条件から光毒性値を求める機能を有する。光毒性値は、観測条件から求めることができる。ここで、観測条件はユーザインタフェース3から制御されるか、あるいはデータ保存メモリ9に予め保存されている。よって、光毒性値演算部22は、統合制御部2を介して、ユーザインタフェース3やデータ保存メモリ9に接続している。
【0147】
光毒性値演算部22は、観測条件(λ:照射光の波長、t:1回の照射時間、I:生体試料に照射される光の量、b:照射間隔、n:照射回数、p:照射光の連続性、)を使った独自式D、あるいはデータベースの情報をもとに光毒性値を求める。データベースの情報をもとに光毒性値を求める場合、データベースに条件(前提)はない。すなわち、観測条件の組み合わせ(寄与度の組み合わせ)は、生細胞の活性を低下させないことを条件(前提)としない
【0148】
なお、光毒性値演算部22で閾値を求めることや、観測条件の再設定を行ってもよいが、これは統合制御部2で行えばよい。観測者は、まずユーザインタフェース3を介して、所望の観測条件を入力する。これは、観測条件の初期設定に相当する。観測条件は統合制御部2を介して、データ保存メモリ9に記憶される。同時に、記憶された条件に基づいて、光毒性値を求める処理が行われる。
以下、順番に説明する。
【0149】
(1)光毒性の数値化
生細胞の活性を劣化させる照射光の照射条件としては、照射光の波長、照射間隔、照射回数、一回の照射量が要因と考えられる。よって、光毒性値は、それらをパラメータとする関数として表現することができる。例えば、光毒性値は、以下の独自式Dで求めることができる。
光毒性値=照射光の波長×照射間隔×照射回数×1回の照射量
【0150】
ここで、照射光の波長、照射間隔、照射回数および1回の照射量の数値は、観測条件の数値、寄与度または係数のいずれで表された数値でも構わない。また、例えば、1つのパラメータは、他のパラメータの関数であっても構わない(例えば、照射回数をn(λ)としてもよい。この場合、照射回数は、照射光の波長の関数になっている。)
【0151】
寄与度や係数を使用する場合、寄与度や係数はデータベースに記憶されている。さらに観測条件の数値がデータベースに登録されていない場合、データベースに登録されている数値をもとに、内挿法あるいは外挿法を用い各寄与度や係数の数値を求めてもよい。なお、係数であれば、数値範囲を0〜1とする。(例えば、照射光の波長では、ダメージ(活性度の変化量)の最も大きい波長の係数を1とする。)
【0152】
光の量のうち、放射束を除く残りの量は、いずれも放射束に基づく量である。ここで、放射束は、単位時間あたりの放射エネルギー(単位:W)である。また、光の量のなかには、単位面積当たりで表されているもの(輝度、照度、発散度等)がある。このような場合、1回の照射量は以下の式で表される。
1回の照射量=「生細胞に照射される光の量」×1回の照射時間
【0153】
なお、単位面積当たりで表されていないもの(放射束、強度、光束等)の場合、1回の照射量は、以下のようになる。
1回の照射量=単位面積あたりの「生細胞に照射される光の量」×1回の照射時間
【0154】
そして、単位面積あたりの「生細胞に照射される光の量」は、以下のように表される。
単位面積あたりの生細胞に照射される光の量=「生細胞に照射される光の量」/照射範囲
なお、連続発振光源の場合とパルス発振光源の場合とでは光源の定格出力が異なるが、光源の定格出力は光源の種類を選択すると決まる。
【0155】
生細胞に照射される光の量は、試料面上で実測してもよいし、光源の直後で出力をモニタしていてもよい。後者の場合、試料面上における生細胞に照射される光の量は、下記の式から求めることができる。
試料面上における生細胞に照射される光の量=光源の定格出力×光学系の透過率
【0156】
光学系の透過率は、データ保存メモリ9に、内部データとして予め登録されている。よって、光学系(コンデンサレンズ・対物レンズ・光学フィルタ)をそれぞれ選択すると、自動的に光学系全体の透過率が求まる。
照射範囲は照明光学系(コンデンサレンズおよび対物レンズ)によって決まる。これら光毒性値を求めるための観測条件と、この観測条件に関する具体的構成物の関係を示すと図3となる。
【0157】
光毒性値演算部22で光毒性値を求める方法は、独自式Dにもとづく算出方法に限らない。例えば、データベースから光毒性を求めてもよい。この場合、データベースには、観測条件とその寄与度、およびその寄与度の組み合わせに対応する光毒性値が、予め登録されている。つまり、図4のように、観測条件と光毒性値との対応がデータベース化されている。このようにすれば、観測条件の組み合わせと、その数値をユーザインタフェース3から入力するだけで、光毒性値が容易に求まる。
なお、入力された観測条件の数値がデータベースに登録されていない場合、内挿法あるいは外挿法を用いて、光毒性値を求めるようにすればよい。
【0158】
光毒性値演算部22は、過去の観測における観測条件および光毒性値の履歴に基づき、光毒性値を更新する機能を有してもよい。光毒性値は、観測者が自ら蓄積・更新してもよいし、自動で蓄積・更新してもよい。なお、この機能を統合制御部2に持たせてもよい。
【0159】
(2)活性の数値化
図5に示したように、光毒性の有無判断は、光毒性値が閾値を超えるか否かで判定する。閾値は、活性度に基づいて求めることができる。よって、活性度演算部23によって生細胞の活性を数値化、すなわち、活性度を予め求めておく必要がある。
【0160】
以下に活性度の数値化について示す。
生細胞の活性度は、例えば播種から測定までの時間に左右される。また、生細胞の活性度は、接着状態にも左右される。例えば、未接着の細胞は接着した細胞に比して弱い。よって、未接着状態での測定は、接着状態での測定に比べて観測感度に影響が出る。
【0161】
また、生細胞の活性に影響を与える要因として、細胞密度(細胞数/単位面積)や播種密度が挙げられる。細胞密度や播種密度が必要以上に疎であると、光毒性の影響を受けやすい。
その他、生体試料情報(生細胞に関するパラメータ)として考えられるのは以下の通りである。
細胞の種類(生体試料の種類)、
細胞密度(生体試料の組織密度:細胞数/単位面積で表される)、
培養環境(生体試料を培養する環境:温度・湿度・培養液のpH、二酸化炭素等)、
接着状態(生体組織の接着状態)、
培養細胞か非培養細胞か(生体試料が培養組織か非培養組織か)、
投入薬剤の有無(生体試料に投入される薬剤の有無)、
播種濃度(生体試料を播種するときの濃度)、
播種からの経過時間(生体試料を播種してからの経過時間)。
【0162】
また、蛍光色素情報(蛍光色素に関するパラメータ)として考えられるのは以下の通りである。
蛍光色素の種類、
蛍光色素濃度。
【0163】
このように、生細胞の活性度は、生体試料情報や蛍光色素情報に基づいて求めることができる。
また、表4に示すようにデータベース化しておいてもよい。
【0164】
【表4】
【0165】
このようにしておけば、生細胞Aについて、培養環境、蛍光色素名および蛍光色素濃度から、活性度を求めることができる。表4の活性度は、寄与度で表されているものとする。
【0166】
データベース(ルックアップテーブル:LUT)にない値については、内挿法や外挿法等により推定することができる。
例1:培養環境1で、蛍光色素濃度0.3%における活性度は、蛍光色素濃度0.1%と0.5%の活性度の値から、内挿法等により推定すればよい。
例2:蛍光色素濃度0.5%で、培養温度39℃における活性度は、温度37℃と温度38℃(場合によっては、温度36℃)の活性度の値から、外挿法等により推定すればよい。
【0167】
次に、生体試料情報や蛍光色素情報から、生細胞の活性度を求める方法について述べる。ここで、これらの情報の数値は、構成物自体の仕様から求まる数値、寄与度あるいは係数で表すことができる。ここでは、係数で表すことにする。
接着状態、細胞密度については、所定の条件下(同じ培養環境および蛍光色素濃度)で、接着の状態・細胞密度に応じてそれぞれの係数を求める。そして、最大となる接着状態あるいは細胞密度の値を基準として、他の値を規格化すればよい。
【0168】
例えば、完全分離状態を0.1、完全接着状態を1(接着状態係数)とすればよい。あるいは、逆に分離状態を1、完全接着状態を0.1としてもよい。分離状態は、他の条件(培養環境、蛍光色素濃度)の変化に依存しない可能性が高いので、どの条件でも同じとみなすことも可能である。
【0169】
なお、接着状態は細胞播種からの時間に大きく依存するため、播種からの経過時間に簡易的に置き換え係数化してもよい。
また、培養細胞と非培養細胞による違い、投入薬剤の有無についても、同様にして数値化(培養細胞係数、投入薬剤係数)することができる。
【0170】
以上の結果、活性度は、以下の関係式によって、求まることになる。
活性度=細胞密度係数×接着状態係数(播種からの経過時間係数)
×培養細胞係数×投入薬剤係数
【0171】
このような演算を、活性度演算部23で行えばよい。
なお、当然のことながら、活性度を表す式は、接着状態係数、細胞密度係数、培養細胞係数および投入薬剤係数のみで決まるわけではない。また、上記式の演算式のみで決まるわけではない。よって、場合によっては、生体試料情報、蛍光色素情報あるいは演算子に関して、付加、削除あるいは変更を行うことになる。
【0172】
また、生細胞の形態から活性度を求める場合は、観測開始前の生細胞の形態と観測開始後の生細胞の形態の比から、活性度を求めることができる。また、形態に変化率は生細胞の種類で変わる可能性がある。よって、単なる比ではなく、その比と生体試料情報の係数を組み合わせてもよい。
例えば、細胞面積であれば、下記式のように表される。
【0173】
活性度=観測開始後における生細胞の面積/観測開始前の生細胞の面積
あるいは
活性度=観測開始後における生細胞の面積/観測開始前の生細胞の面積×培養細胞係数
【0174】
その際、細胞密度係数・接着状態係数・培養細胞係数・投入薬剤係数は、他の係数の関数で表されていてもよい(例えば、細胞密度係数は、培養細胞係数を変数とする関数で表されている等。)。
また、活性度演算部23は、過去の活性度測定結果、観測結果の履歴に基づき新たな活性度を求めることができる。
【0175】
(3)判断基準(閾値)の設定
判断基準(閾値)の設定は、統合制御部2で行う。統合制御部2は、活性度に対して閾値を設定する(図31(b))か、光毒性値に対して閾値を設定する(図31(c))。
活性度に対して閾値を設定する場合、閾値は、(1)観測開始前の活性度、(2)観測開始前の活性度よりも小さい値となる。閾値をどの値にするかは、観測結果の履歴、観測目的および観測者の経験等に基づいて、総合的に決めればよい。統合制御部2は、過去の活性度測定結果、観測結果の履歴および観測目的を自動的に記録する機能を備えておくことが望ましい。また、統合制御部2は、その判定基準(閾値)を更新する機能を有することが望ましい。また、閾値のデータは、観測者が自ら蓄積・更新してもよいし、自動で蓄積・更新してもよい。
以上は、統合制御部2が閾値を設定する場合を示したが、観測者が経験等に基づいて、直接閾値を入力・設定してもよい。
【0176】
(4)初期設定パラメータ
また、生体試料情報および蛍光色素情報の種類と値は、観測時に既に決まっている。したがって、これらのパラメータは、基本的には、最初の観測条件の制御に用いられることはない。しかしながら、観測中に変更できることから、観測条件に含めることはできる。
初期設定パラメータは、観測に先立ってユーザインタフェース3を介して制御(入力・設定等)される観測条件である。初期パラメータの設定については、以下に詳細を補足する。
【0177】
初期設定では、以下の3つの情報について設定を行う。どの情報をどの順番で設定するかは自由である。
3−1 ハードウェア情報(観測条件)の設定
3−2 蛍光色素情報の設定
3−3 生体試料情報の設定
設定例を以下に示す。図6の例では、本システムの装置構成をグラフィック表示する。そして、所定の構成をクリックすることで、その構成に関して設定可能な情報が表示される。
【0178】
そこで、観測者は、表示された情報について設定を行う。
まず、照射方法を決定する(なお、照射と照明は同じ意味で使用する。)。上記例では、画面の所定の場所に、透過照明か落射照明かを選択するブロックを表示されている。また、図7のように、コンデンサレンズ、透過投光管、透過光源を囲むブロック、対物レンズ、落射投光管、落射光源を囲むブロックを表示し、このブロックを選択するようにしてもよい。
【0179】
いずれの場合も、選択が終わると、ブロックが消滅するようにしておく。
図8では、透過照明方法が選択されたものとする。この場合、対物レンズ、落射投光管、落射光源のブロックが強調される。
【0180】
次に、図9に示したように観測者は各ブロックについて、設定を行う。
例えば、カーソルを対物レンズのブロックに移動させると、対物レンズの一覧が表示される。そこで、観測者は、カーソルを移動させて、観測に適した対物レンズの種類と倍率を選択する。選択が終わると、一覧表は自動的に消滅する。また、対物レンズのブロックの強調表示も終了する。
【0181】
次に、図10に示したように落射光源のブロックにカーソルを一致させる。すると、利用可能な光源の一覧が表示される。そこで、観測者は観察に適した光源を選択する。選択が終わると、一覧表は自動的に消滅する。また、対物レンズのブロックの強調表示も終了する。
【0182】
なお、蛍光観察の場合、光源の種類は、蛍光色素によって限定される。これは、蛍光色素の種類によって励起波長が異なるからである。
そこで、落射光源のブロックが選択された場合、光源の一覧表を表示せず、観察方法を設定するようにしてもよい。例えば、図11に示したように、落射光源のブロックが選択されると、標本部のブロックが強調される(標本は生細胞、すなわち生体試料と同じ意味で使用する。)。このとき、落射光源のブロックは、設定途中である表示に変わる(図ではブロックの外枠を破線表示)。観測者が、標本部のブロックにカーソルを一致させると、標本の種類の表示が行われる。(標本部のブロックの強調と同時に、標本部のブロックに、カーソルが自動的に移動してもよい。)
【0183】
ここで、標本として蛍光標本が選択されると、図12に示したように蛍光色素名の一覧が表示される。(蛍光色素名を入力するようにしてもよい。)観測者は、標本作成時に使用した蛍光色素を選択する。
選択が終わると、一覧表は自動的に消滅する。
【0184】
続いて、落射光源の一覧が表示される。ここで、選択された蛍光色素に適した光源のみが表示される。図13は、赤色の波長域で励起される蛍光色素が選択された場合の例である。このようにすれば、観測者は、多数の光源の中から、使用する光源の設定を素早く、簡単に行える。
【0185】
次に、図14に示したように落射投光管の選択を行う。落射投光管では、リレー光学系と各種光学フィルタ(特に励起フィルタ)の設定を行う。ここで、落射光源と落射投光管が一対一に対応していれば、落射光源を選択した時点で自動的に設定することもできる。また、リレー光学系が1つしかない場合、リレー光学系の選択は行われない。また、蛍光色素の種類が決まっていれば、励起波長が決まるので、励起フィルタも自動的に設定することができる。
【0186】
ただし、同じような励起フィルタがある場合、あるいは、目的を持って所定のリレー光学系を使用することもあるので、観測者が自由に選択できるようにしておく方が好ましい。
そこで、以下の例では、励起フィルタを設定する様子について説明する。
【0187】
落射投光管のブロックにカーソルを一致させると、リレー光学系のブロックと光学フィルタのブロックが表示される。ここで、光学フィルタが選択されると、光学フィルタの一覧が表示される。(光学フィルタを入力するようにしてもよい。)観測者は、使用する光学フィルタを選択する。選択が終わると、一覧表は自動的に消滅する。複数の光学フィルタを使用する場合は、最初に使用する数を入力できるようにして、後は、上記の例のように、1つ1つ設定しておけばよい。
【0188】
あるいは、図15のように、落射投光管のブロック中に、光学フィルタを示すブロックを複数表示する。そして、ブロックごとに、光学フィルタの種類を設定するようにしてもよい。
以上のようにして、ハードウェア情報の設定が終了する。
なお、透過照明を選択した場合は、コンデンサレンズ、透過投光管、透過光源の各ブロックについて、設定すればよい。
【0189】
次に、蛍光色素情報の設定を行う。蛍光色素情報の設定では、蛍光色素の種類と、蛍光色素濃度を設定する。いずれの設定も、この例では、標本部を選択することで行う。上記例では、落射光源ブロックを選択すると、自動的に標本部を選択するようになっている。しかしながら、独立して標本部を選択可能にしておけば、最初に蛍光色素情報の設定を行うことができる。蛍光色素の種類を設定する様子は、上記で説明したとおりである。また、蛍光色素濃度の設定も、蛍光色素の種類の設定と同じようにすればよい。すなわち、蛍光色素名の一覧の代わりに、濃度の一覧が表示されればよい。ただし、濃度については数値が連続的なので、数値を入力する方式の方が好ましい。あるいは、図16に示すように、選択可能範囲を表示し、カーソルを移動させて、任意の値を選択できるようにしてもよい。
【0190】
さらに、生体試料情報の設定を行う。生体試料情報としては、以下のものが考えられる。これらの情報について、上述の設定方法を利用して設定すればよい。
細胞の種類、
培養環境(温度、湿度、培養液のpH、二酸化炭素濃度)、
接着状態、
培養細胞か非培養細胞か、
投入薬剤の有無
播種濃度、
細胞密度、
播種から観測開始までの経過時間。
【0191】
なお、設定に先立って、観測条件(光源、リレー光学系、光学フィルタ、蛍光色素名、細胞の種類等)を予めデータベースに登録しておかなければならないのは、当然である。観測条件のうち、光源についての出力値や分光発光特性は、カタログ等に記載されている仕様値を用いることができる。ただし、実際の出力値や分光発光特性は、仕様値と実際と異なる場合がある。よって、観測を行い、実測値をデータベースに登録した方が好ましい。また、リレー光学系、対物レンズ、コンデンサレンズ、各種光学フィルタは、その種類だけでなく、分光透過率特性も予め登録しておく。これは、光毒性値を算出するにあたって、光学系においける照射光の損失割合を計算するのに必要だからである。
【0192】
(4)観測条件の設定
上述のように、観測条件は以下の1〜11である。
1、光源の種類
2、励起フィルタの種類
3、リレー光学系の種類
4、対物レンズの種類
5、コンデンサレンズの種類
6、各種フィルタの種類(NDフィルタや吸収フィルタを含む)
7、1回の照射時間
8、照射回数
9、総観測時間
10、照射間隔
11、照射光の連続性(連続発振(発光)かパルス発振(発光)か、パルス発振の場合のパルス周波数やパルス幅)
このうち、1〜6は、初期設定でも使用している。
【0193】
次に、観測条件の設定手順について以下の順に説明する。
1.観測した結果をフィードバックしない例
(1)観測条件の数値入力が全て自由な例(図17,図18)
(2)観測条件の数値入力の一部は自由、残りは選択する例(図19,図20)
(3)観測条件の数値を全て選択する例(図21,図22)
2.観測した結果をフィードバックする例(光情報)
(1)初回の観測結果のみをフィードバックする。(蛍光観察以外に有効)(図23)
(2)毎回観測結果をフィードバックする。(図25〜図27)
3.観測した結果をフィードバックする例(細胞活性情報)
(1)毎回観測結果をフィードバックする。(図28)
4.観測した結果をフィードバックする例(蛍光退色情報)
(1)毎回観測結果をフィードバックする。(図29)
【0194】
1.観測した結果をフィードバックしない例
(1)観測条件の数値入力が全て自由な例(図17,図18)
図17にフローチャートを示す。なお、ハードウェア情報・蛍光色素情報・生体組織情報等に関する初期設定は、観測条件の設定前に完了しているものとする。(初期設定情報:観測条件の設定前に、設定が完了しているハードウェア情報・蛍光色素情報・生体組織情報等)
【0195】
まず、観測者はユーザインタフェース3を介し、観測条件の設定を開始する。次に、観測者は、選択された観測条件の一つについて数値を入力する。ここで、残りの観測条件については、予めデフォルト値が設定されている。よって、1つの観測条件の値が設定されると、設定された値とデフォルト値によって、光毒性値の算出が行われる。デフォルト値は、例えば、各観測条件の最小値である。あるいは、過去の観測から得たデータを参考にした値が用いられてもよい。
【0196】
入力値は光毒性値演算部22入力され、光毒性値演算部22は光毒性値を算出する。光毒性値の算出は、前記独自式に基づいてもよいし、観測条件と毒性値からなるデータベースに基づいてもよい。また、活性度演算部23において活性度の算出を行う。そして、統合制御部2において、光毒性値に対して閾値を設定する。設定した閾値と光毒性値より光毒性の判定を、判断部21で行う。判断部21で光毒性ありと判断された場合、統合制御部2は警告を表示し、観測者に観測条件の再入力を要求する。一方、判断部21で毒性なしと判断された場合、統合制御部2は他の観測条件の設定(制御)を行うか否かの選択を観測者に促す。観測条件の再設定を行う場合、一覧表示に戻る。設定を行わない場合、測定を開始する。なお、観測終了までに観測結果を表示してもよいし、観測と同時に、観測結果を解析・表示してもよい。
【0197】
図18に、実際の設定画面の一例を示す。(なお、図の順番は、左欄の上から下、続いて右上欄の上から下で、他の図面も同じである。右欄の下に、変形例が例示されている場合もある。)観測条件Aを入力するときの画面、続いて観測条件Bを入力するときの画面、判断部21により「毒性あり」と判断された場合の画面、および再入力したときの画面を示す。
【0198】
(2)観測条件の数値入力の一部は自由、残りは選択する例
図19は図17の変形例であり、観測条件の一部を自由に入力し、残りを一覧から選択するものである。一部観測条件を選択式とすることで、観測条件の設定、光毒性の判断、観測条件の再設定、という繰り返し作業を避けることができる。その結果、生細胞の活性劣化を生じない観測条件の設定を行うにあたって、観測者が要する時間を短縮化することが可能である。
【0199】
選択する際は、選択可能な範囲(例えば、一覧)が表示されるのが望ましい。選択可能な範囲は、独自式に基づき算出してもよいし、観測条件と光毒性値からなるデータベースから算出してもよい。さらには、生細胞の活性劣化が生じない観測条件の組み合わせが記録さているデータベースから導出してもよい。
【0200】
本例では、各観測条件の設定ごとに、光毒性の判断を行っている。設定対象となっている観測条件については、それ以前に設定された観測条件から求めた光毒性値を元に選択可能な範囲が提示される。例えば、観測条件A(たとえば1回の照射量)の設定後、観測条件B(撮像間隔)を観測条件として設定する場合を考える。この場合、撮像間隔(観測条件B)の設定よりも以前に、1回の照射量(観測条件A)の値が設定されている。よって、まず1回の照射量(観測条件A)に関して光毒性値を求めることができる。ここで、撮像間隔に対する光毒性を求めるときに、1回の照射量(観測条件A)から求めた光毒性値を利用する。すなわち、1回の照射量における光毒性値が閾値以下であれば、光毒性値と閾値の差から撮像間隔の選択可能な数値範囲を求め、それを表示する。
【0201】
1回の照射量は、1回の照射時間と生体試料に照射される光の量から求めることができる。そして、この1回の照射量を用いて、光毒性値を求める。光毒性値が閾値より大きければ、観測条件Aに関わる値、つまり1回の照射時間や生体試料に照射される光の量の値を変更するように観測者に促す。光毒性値が閾値より小さければ、撮像間隔(観測条件B)について、選択可能な数値範囲を求めて表示する。このようにして、撮像間隔の数値の設定を観測者に促す。
このようにすることで、設定された観測条件の値を、他の観測条件と関連付けつつ、かつ個別に観測条件ごとに細胞毒性を評価することができる。これにより、観測条件について観測者が不適切な値を設定した場合、そのことを観測者に指摘しやすい。
【0202】
図20には、実際の設定画面の一例を示す。「観測条件Bを選択した場合」で示すとおり、観測者に選択可能な範囲を示すことで、観測者が煩雑な作業をする必要がない。図20では、選択範囲を「選択可能な範囲:1〜10」とし表示したが、「選択可能な範囲:1、2、3、・・・10」と表現してもよい。また、図20の変形例1のように、指標(黒四角)をスライドさせることで、観測条件の値を指定できてもよい。また、観測条件が数値以外で表示される場合は、変形例2のように観測条件を文字で表現し、カーソルで選択できるようにしてもよい。
【0203】
(3)観測条件の数値を全て選択する例
図21、図22は、図19、図20の変形例であり、観測条件の全てを選択するものである。全て選択式とすることで、観測条件の設定、光毒性の判断、観測条件の再設定、という繰り返し作業を避けることができる。その結果、生細胞の活性劣化を生じない観測条件の設定を行うにあたって、観測者が要する時間をより短縮化することが可能である。
【0204】
2.観測した結果をフィードバックする例(光情報)
(1)初回の観測結果のみをフィードバックする。(蛍光観察以外に有効)
図23は初回の観測結果をもとに、照明光の量を求める機能を有する例である(なお、照明光の量、照射光の量、撮像素子に入射した光の量は、光の量で説明した放射量あるいは測光量で表されているものとする。)。また、1回の照射時間も求めるようにしてもよい。
【0205】
図23のフローチャートに示すように、本構成では、「設定された観測条件に基づいて標本を照明する」、「標本を撮像する」、「撮像結果に基づいて照明光の量を推定する」および「観測条件のうち、照明光の量に関する条件の値を推定値に変更する」の工程の後に光毒性値を算出する。
「光毒性の判断」の後、「毒性なし」と判断した場合、「全観測期間での光毒性を算出」する工程を実行し、さらに、毒性なしと「判断」した場合、観測を続行する。各「判断」ポイントで「毒性あり」と判断した場合、「観測条件の値を変更」する。
【0206】
図23の「撮像結果に基づいて照明光の量を推定する」部分について詳細を説明する。
特に、透過観察あるいは反射光観察では、基本的に、撮像に必要な照明の条件は変化しない。したがって、1回の撮像結果を利用することで、全観測期間における観測条件のうちの照明に関する観測条件を、全観測期間において設定することができる。
【0207】
撮像ユニット12における撮像素子の光電変換特性は既知である。よって、撮像素子の出力と光電変換特性から、撮像素子に入射した光の量が判明する。そして、光学系の透過率も既知であることから、光学系の透過率と撮像素子に入射した光の量から、標本上での照明光の量を推定することができる。
【0208】
ここで、撮像した標本の画像全体が極端に暗い画像でない場合や、あるいは極端に明るい画像でない場合、標本上での照明光の量は適正と判断できる。よって、最初に設定された観測条件のうち「照明光の量に関連する観測条件」に関して変更は行われない。一方、撮像した画像に、極端に暗い部分や極端に明るい部分がある場合、正確な観測が行えない。そこで、撮像した画像全体から、適正と思われる照明光の量について推定を行う。そして、照明光の量に関連する観測条件の値を推定値に変更する。
【0209】
このようにすることで、適切な明るさの画像(撮像素子のダイナミックレンジを最大限利用した画像)を得ることができる。なお、このようにして求まった照明光の量に関連する観測条件は、必ずしも光毒性値の低い条件とは限らない。よって、他の観測条件を含めて光毒性値が算出され、光毒性の判断が行われる。
【0210】
なお、標本上での照明光の量は、「生体試料に照射される光の量」である。よって、標本上での照明光の量は観測条件となるので、制御の対象となる。また、最初に設定された観測条件は、ある程度画像を得ることができる値に設定されている。よって、推定できないような画像が得られることはないものとする。
ここでは撮像素子自体を用いて照明光の量を推定する例を示したが、もちろん、光源からの出射される光の量あるいは標本面での光の量を別光路で直接モニタしてもよい。
【0211】
以上は「撮像結果に基づいて照明光の量を推定する」例を挙げたが、図24に示したように、「撮像中の観測に基づいて、照明光の量を推定する」ようにしてもよい。変形個所を太枠で示した。
【0212】
撮像ユニット12における撮像素子は、標本の像を撮像するためのものである。ただし、撮像だけでなく測光にも利用できる。例えば、撮像素子がCCDであったとする。ここで、CCDからの電荷(出力)読み出し時間を適宜選択し、その電荷読み出し時間で電荷を読み出す。このようにすれば、電荷の時間変化を知ることができる。そして、電荷の時間変化から、適切な明るさの画像が得られるまでの時間、あるいはCCDに入射する光の量を推定することができる。その結果、適切と思われる照射時間や光の量を推定することができる。
【0213】
このようにすれば、最後まで測光しなくても、適切と思われる照射時間や光の量に関して推定値が得られるので、観測条件の設定が素早く行える。なお、時間がかかってもよい場合であれば、最後まで測光を行ってもよい。この場合、適切と思われる照射時間や光の量に関して、推定値ではなく確定値が得られる。よって、図23の場合に比べて、より正確に、照明光の量に関連する観測条件を設定できる。また上記例では、撮像素子自身を測光に利用したが、撮像素子とは別に受光素子を設けてもよい。
【0214】
なお、標本上での照明光の量は、光学系の透過率と光源によって決まる。ここで、フィラメントやアークの劣化等により、光源が発する光の量は経時的変化を生じる。よって、光源が発する光の量については、予めその経時変化の様子をデータとして保有しておくことが望ましい。そして、このデータと上記推定値を使って、観測を実行する。このようにすることで、全観測期間において、より適切に、照明光の量に関連する観測条件を推定することができる。その結果、より信頼性の高い観測結果を得ることができる。
【0215】
以上により、1回の撮像を利用し、全観測期間での照明条件を予測、光毒性を推測できる。よって、観測結果に影響を及ぼさない程度に生体試料の活性を確実に維持して観測ができるので、信頼性の高い観測結果を得ることができる。
なお、本例を蛍光観察法に用いてもよいが、その場合、退色がないこと、および励起光と蛍光の強度が比例することを前提とする。
【0216】
(2)毎回観測結果をフィードバックする。
図25は図23の変形例である。本例では、図23の「撮像結果に基づいて照明光の量を推定する」ことを、全測定期間中、毎回行う例である。毎回撮像した結果を利用するので、図23で示す例と比べ、より正確に、照明光の量に関連する観測条件を推定することができる。その結果、さらに信頼性の高い観測結果を得ることができる。
【0217】
図26、図27は図25の変形例である。変形個所を太枠で示した。
図26に示した変形例は、特に、蛍光観察で有効である。蛍光観察においては、生細胞から発せられる蛍光の量が経時的に大きく変化する。したがって、撮像素子のダイナミックレンジを有効に活用するためには以下の策が考えられる。
・全観測期間で1回の観測時間を変える。
・観測期間中、撮像中の観測を基に照明光の量を変える。
【0218】
特に、蛍光観察では、図25のように、撮像結果(撮像が終了した結果)から最適な照明光の量を推測するのは好ましくない。この点について説明する。上述のように、蛍光観察では、蛍光の量が時間的に大きく変化する場合がある。この場合、推定値を得るための観測では、生細胞に照射される光の量や時間を最小限に留める必要がある。そうしないと、推定値を得るための観測とその後に行う観測(正式な観測)とで、生細胞の活性度に大きな乖離が生じる可能性がある。また、照射光によって、蛍光の退色が生じる可能性もある。すると、推定値を得るための観測による照射よって退色が進み、その後に行う観測で十分な蛍光を得ることができなくなる可能性がある。
【0219】
そこで、図26や図27の変形例のようにすれば、生細胞に照射される光の量や時間を最小限に留めることができる。そして、適切な明るさの画像が得られるまでの時間(1回の観測時間、図27)、あるいはCCDに入射する光の量(照明光の量、図26)を推定することができる。よって、観測結果に影響を及ぼさない程度に生体試料の活性を確実に維持して観測ができる。また、照明光の量に関連する観測条件を毎回推定することになるので、より正確な観測条件で観測が行える。よって、信頼性の高い観測結果を得ることができる。
【0220】
このようにすれば、観測者が不要な設定を行うことなく、最適な観測条件により生細胞を撮像できる。また、不要な光刺激による生細胞の形質・形態変化等を気にすることなく、観測を行うことができる。
【0221】
3.観測した結果をフィードバックする例(標本活性情報)
図28に、標本の活性を実測し、観測条件にフィードバックする例を示す。図25との違いは、以下の3点である。
・光毒性値の算出工程と閾値の算出工程の間に、「撮像結果、あるいは外部情報に基づいて、標本の活性度を推定する」工程が加わった点。
・閾値の算出工程が、「初期設定情報および/または活性度から閾値を算出する」工程に変わった点。
・「光毒性データベース(光毒性算出式、閾値算出式を含む)の更新」工程が加わった点。
【0222】
以下、外部情報の入手手段を示す。
培養環境ユニット19の内部には、活性監視ユニット18が設けられている(図1参照)。この活性監視ユニット18は、特定の細胞培養領域の近傍に設けられている。ここで、特定の細胞培養領域とは、測定対象の生細胞とは別に設けられた培養領域である。特定の細胞培養領域は、測定対象の生細胞と同一の条件で照明光が照射される。
【0223】
活性の評価では、形態観察を用いた判定を利用してもよいし、活性試薬を用いた判定を利用してもよい。形態観察では、位相差・微分干渉法等を用いればよい。活性の数値化では、標本の形態から観測者が数値を決定してもよいし、取得画像の形態・形態の時間的変化を画像処理により抽出し数値化してもよい。また、試薬を用いた場合、吸光度を活性度(例えば0〜1)に換算させることで活性を数値化することもできる。
【0224】
活性監視ユニット18は、観測情報を活性度演算部23へ出力する。活性度演算部23は、入力された情報に基づいて「標本の活性度を推定する」。そして、統合制御部2が、「活性度から閾値を算出する」の工程を行う。この閾値は、活性度に対する閾値でもよい。しかしながら、本例では次の工程で、閾値と光毒性値で光毒性判断が行われている。よって、最終的には光毒性値に対する閾値を算出することになる。
【0225】
このように、本例では、閾値の算出において、外部情報に基づいて活性度を算出することができる。よって、初期設定情報のみから活性度を求める場合に比べて、活性度をより正解邦求めることができる。これは、閾値をより正確に求めることになる。結果、光毒性の判断の確度をあげることができる。よって、信頼性の高い観測結果を得ることができる。また、必要に応じ測定途中からの観測条件を見直し、適切に観測条件を制御することが可能である。
【0226】
また、活性の評価・数値化のデータは、データ保存メモリ9のデータベース(光毒性算出式、閾値算出式を含む)の更新へ反映してもよい。
さらに、「光毒性あり」と判断しても、観測者の判断で観測を継続してもよい。測定を継続するか否かの判断は観測者によって決定される。例えば、撮像間隔等の設定を行う際に、許容値をオーバーした際に測定を停止するか否かの指定をしておけばよい。
【0227】
4.観測した結果をフィードバックする例(蛍光退色情報)
(1)毎回観測結果をフィードバックする。(図29)
蛍光色素は光による褪色する。その結果、標本から発せられる蛍光の量(光の量)は、時間の経過とともに少なくなっていくことが多い。退色自身は直接光毒性とは無関係であるが、蛍光像の撮影が困難になる場合がある。そこで、蛍光の退色の度合いを観測して、全観測期間で観測が可能になるようにすることが望ましい。
【0228】
図29に示す実施例は、褪色を撮像結果から推測し、結果に基づき、観測条件を変更するループを有する。退色度は、例えば、
退色度=観測時の蛍光量/初期の蛍光量
で表すことできる。
初期の蛍光量は、初期設定条件および観測条件から推定する。ただし、観測前に撮像し、その撮像結果から初期の蛍光量の値を決定した方がより正確になる。
【0229】
あるいは、
退色度=n回目の観測における蛍光量/n−1回目の観測における蛍光量
としてもよい。この場合、第1回目の観測では、0回目の観測における蛍光量=初期の蛍光量となる。
【0230】
上記観測した褪色度より、観測条件(照明光の量と1回の照射時間の関係、照射光の連続性(パルス長、周波数)等)を変更し、より褪色の影響の少ない観測条件へ変更する。
以上、閾値および光毒性値を装置が設定する観測法を示したが、これらを観測者が設定してもよい。これにより、観測者本位の自由な測定を行うことができる。
【0231】
以上のように、本実施形態の生細胞観察計測システムによれば、生体試料の活性を損なう要因を制御することにより、細胞の活性を損なうことなく、長期間生体試料を観察計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】本発明の一実施形態に係る生細胞観察計測システムを示すブロック図である。
【図2】データベースとして登録されている光毒性の発生しない観測条件である。
【図3】光毒に寄与するパラメータを示した図である。
【図4】観測条件と光毒性寄与度の対応を示したデータベースである。
【図5】光毒性の判定条件について示した図である。
【図6】グラフィック表示された装置構成である。
【図7】グラフィック表示された装置構成であり、コンデンサレンズ、透過投光管、透過光源を囲むブロック、対物レンズ、落射投光管、落射光源を囲むブロックを表示した状態である。
【図8】同グラフィック表示において透過照射方法が選択され、対物レンズ、落射投光管、落射光源のブロックが強調された状態を示した図である。
【図9】同グラフィック表示において、各ブロックの設定を行う状態について示した図である。
【図10】同グラフィック表示において、各ブロックの設定を行う状態について示した図である。
【図11】同グラフィック表示において、各ブロックの設定を行う状態について示した図である。
【図12】同グラフィック表示において、各ブロックの設定を行う状態について示した図である。
【図13】同グラフィック表示において、各ブロックの設定を行う状態について示した図である。
【図14】同グラフィック表示において、各ブロックの設定を行う状態について示した図である。
【図15】同グラフィック表示において、落射投光管のブロック中に光学フィルタを示すブロックを複数表示した状態について示した図である。
【図16】同グラフィック表示において、蛍光色素濃度の選択方法を示した図である。
【図17】観測条件の設定手順について示した図であり、観測条件の数値入力が全て自由な場合のフローチャートである。
【図18】同設定手順における実際の設定画面の例である。
【図19】観測条件の設定手順について示した図であり、観測条件の数値入力の一部は自由、残りは選択する場合のフローチャートである。
【図20】同設定手順における実際の設定画面の例である。
【図21】観測条件の設定手順について示した図であり、観測条件の数値を全て選択する場合のフローチャートである。
【図22】同設定手順における実際の設定画面の例である。
【図23】観測条件の設定手順について示した図であり、初回の観測結果のみをフィードバックする場合のフローチャートである。
【図24】同設定手順の変形例である。
【図25】観測条件の設定手順について示した図であり、毎回観測結果をフィードバックする場合のフローチャートである。
【図26】同設定手順の変形例である。
【図27】同設定手順の変形例である。
【図28】観測条件の設定手順について示した図であり、細胞の活性の情報を実測し、観測条件にフィードバックする場合のフローチャートである。
【図29】観測条件の設定手順について示した図であり、蛍光退色情報を観測条件にフィードバックする場合のフローチャートである。
【図30】観測期間を示す図である。
【図31】照射と観測の関係を示す図であって、(a)時間(間隔)が同じ場合、(b)時間(間隔)が異なる場合である。
【図32】(a)活性と耐光毒性の関係を示す図、(b)活性度の変化量と光毒性値の関係を示す図である。
【図33】(a)光毒性値に対する活性度の時間変化を示す図、(b)活性度と閾値の関係を示す図である。
【図34】光毒性値と閾値の関係を示す図である。
【図35】前の観測と次の観測の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0233】
1 生体試料観察システム
2 統合制御部(制御部)
3 ユーザインタフェース
4 細胞毒性演算部(演算部)
9 データ保存メモリ(記憶部)
12 撮像ユニット
15 照明ユニット
19 培養ユニット
22 光毒性演算部(演算部)
23 活性度演算部(演算部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の観測条件を記憶するとともに、生体試料が持つ活性に基づき前記所定の観測条件を制御する生体試料観察計測システム。
【請求項2】
前記所定の観測条件とその寄与度をデータベースとして有する請求項1に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項3】
前記所定の観測条件の組み合わせを前記データベースとして有する請求項2に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項4】
前記データベースがさらに光毒性値を有する請求項3に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項5】
記憶した前記所定の観測条件に基づき光毒性値を求める機能を備えた請求項1に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項6】
独自式に基づいて前記光毒性値を求める請求項5に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項7】
前記独自式は、照射光の波長、1回の照射時間、生体試料に照射される光の量、照射間隔、照射回数、照射光の連続性のうち、少なくとも2つを有する関数よりなる請求項6に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項8】
前記活性を数値化する機能を備えた請求項1に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項9】
光毒性を判断する機能を有する請求項1に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項10】
観測者が設定した判断基準をもとに前記光毒性を判断する請求項9に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項11】
過去の観測条件と前記光毒性の値について計測履歴を記憶し、前記光毒性の判断基準が該計測履歴に基づき更新される請求項9または請求項10に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項12】
前記所定の観測条件は観測に関連する情報である請求項1から請求項11のいずれかに記載の生体試料観察計測システム。
【請求項13】
前記所定の観測条件が、1回の照射量と総照射量とを組み合わせたものである請求項1から請求項11のいずれかに記載の生体試料観察計測システム。
【請求項14】
前記所定の観測条件が照射時間である請求項1から請求項11のいずれかに記載の生体試料観察計測システム。
【請求項15】
前記所定の観測条件が照射間隔である請求項1から請求項11のいずれかに記載の生体試料観察計測システム。
【請求項16】
前記所定の観測条件が照度である請求項1から請求項11のいずれかに記載の生体試料観察計測システム。
【請求項17】
前記所定の観測条件が照射光のパルス周波数あるいはパルス幅である請求項1から請求項11のいずれかに記載の生体試料観察計測システム。
【請求項18】
前記所定の観測条件が照射範囲である請求項1から請求項11のいずれかに記載の生体試料観察計測システム。
【請求項19】
生体試料を保持する培養ユニットと、
前記培養ユニットに照射光を導く照明ユニットと、
前記培養ユニットを撮像する撮像ユニットと、
撮像した画像や所定の観測条件を記憶する記憶部と、演算部と、前記培養ユニット、前記照明ユニットおよび前記撮像ユニットの制御を行う制御部とを有する処理ユニットとを備え、
前記演算部は、前記生体試料がもつ活性度を求める工程と、前記所定の観測条件に基づいて光毒性値を求める工程と、閾値を求める工程とを備え、
前記制御部は、前記閾値に基づいて、前記培養ユニット、前記照明ユニットおよび前記撮像ユニットの少なくとも1つを制御する生体試料観察計測システム。
【請求項20】
前記所定の観測条件は、前記培養ユニット、前記照明ユニットおよび前記撮像ユニットに関する情報のうちの少なくとも1つの情報である請求項19に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項21】
所定の観測条件を制御して生体試料の観測を行う生体試料観察計測システムであって、
前記所定の観測条件は、前記生体試料が持つ活性から求めた閾値よりも低い値の光毒性値となるように設定されている生体試料観察計測システム。
【請求項22】
所定の観測条件を記憶するとともに、生体試料が持つ活性に基づき前記所定の観測条件を制御する生体試料観察計測方法。
【請求項23】
前記生体試料がもつ活性度を求め、
前記所定の観測条件に基づいて光毒性値を求め、
前記活性度と前記光毒性値に基づいて、前記所定の観測条件を制御し、
前記生体試料の観測を行う請求項22に記載の生体試料観察計測方法。
【請求項1】
所定の観測条件を記憶するとともに、生体試料が持つ活性に基づき前記所定の観測条件を制御する生体試料観察計測システム。
【請求項2】
前記所定の観測条件とその寄与度をデータベースとして有する請求項1に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項3】
前記所定の観測条件の組み合わせを前記データベースとして有する請求項2に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項4】
前記データベースがさらに光毒性値を有する請求項3に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項5】
記憶した前記所定の観測条件に基づき光毒性値を求める機能を備えた請求項1に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項6】
独自式に基づいて前記光毒性値を求める請求項5に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項7】
前記独自式は、照射光の波長、1回の照射時間、生体試料に照射される光の量、照射間隔、照射回数、照射光の連続性のうち、少なくとも2つを有する関数よりなる請求項6に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項8】
前記活性を数値化する機能を備えた請求項1に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項9】
光毒性を判断する機能を有する請求項1に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項10】
観測者が設定した判断基準をもとに前記光毒性を判断する請求項9に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項11】
過去の観測条件と前記光毒性の値について計測履歴を記憶し、前記光毒性の判断基準が該計測履歴に基づき更新される請求項9または請求項10に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項12】
前記所定の観測条件は観測に関連する情報である請求項1から請求項11のいずれかに記載の生体試料観察計測システム。
【請求項13】
前記所定の観測条件が、1回の照射量と総照射量とを組み合わせたものである請求項1から請求項11のいずれかに記載の生体試料観察計測システム。
【請求項14】
前記所定の観測条件が照射時間である請求項1から請求項11のいずれかに記載の生体試料観察計測システム。
【請求項15】
前記所定の観測条件が照射間隔である請求項1から請求項11のいずれかに記載の生体試料観察計測システム。
【請求項16】
前記所定の観測条件が照度である請求項1から請求項11のいずれかに記載の生体試料観察計測システム。
【請求項17】
前記所定の観測条件が照射光のパルス周波数あるいはパルス幅である請求項1から請求項11のいずれかに記載の生体試料観察計測システム。
【請求項18】
前記所定の観測条件が照射範囲である請求項1から請求項11のいずれかに記載の生体試料観察計測システム。
【請求項19】
生体試料を保持する培養ユニットと、
前記培養ユニットに照射光を導く照明ユニットと、
前記培養ユニットを撮像する撮像ユニットと、
撮像した画像や所定の観測条件を記憶する記憶部と、演算部と、前記培養ユニット、前記照明ユニットおよび前記撮像ユニットの制御を行う制御部とを有する処理ユニットとを備え、
前記演算部は、前記生体試料がもつ活性度を求める工程と、前記所定の観測条件に基づいて光毒性値を求める工程と、閾値を求める工程とを備え、
前記制御部は、前記閾値に基づいて、前記培養ユニット、前記照明ユニットおよび前記撮像ユニットの少なくとも1つを制御する生体試料観察計測システム。
【請求項20】
前記所定の観測条件は、前記培養ユニット、前記照明ユニットおよび前記撮像ユニットに関する情報のうちの少なくとも1つの情報である請求項19に記載の生体試料観察計測システム。
【請求項21】
所定の観測条件を制御して生体試料の観測を行う生体試料観察計測システムであって、
前記所定の観測条件は、前記生体試料が持つ活性から求めた閾値よりも低い値の光毒性値となるように設定されている生体試料観察計測システム。
【請求項22】
所定の観測条件を記憶するとともに、生体試料が持つ活性に基づき前記所定の観測条件を制御する生体試料観察計測方法。
【請求項23】
前記生体試料がもつ活性度を求め、
前記所定の観測条件に基づいて光毒性値を求め、
前記活性度と前記光毒性値に基づいて、前記所定の観測条件を制御し、
前記生体試料の観測を行う請求項22に記載の生体試料観察計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公開番号】特開2007−209219(P2007−209219A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30317(P2006−30317)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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