説明

生体試料解析システム、生体試料解析手法、生体試料前処理装置及び生体試料前処理方法

【課題】
LC-MSによるタンデムマス(MS/MS)解析に適用でき,精度の優れた生体試料、特にタンパク質に適した生体試料解析システム、生体試料解析手法、解析に必要な生体試料前処理装置及び生体試料前処理方法を提供する。
【解決手段】
生体試料の分解酵素を支持体上に固定化された複数の固定化酵素をそれぞれ別の反応部で前記生体試料と反応させる前処理装置と、前記前処理から得られる反応物をそれぞれMS/MS解析するLC-MS装置からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料、特にタンパク質に適した生体試料解析システム、生体試料解析手法、生体試料前処理装置及び生体試料前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は細胞内における転写・翻訳によって生合成された後、様々な修飾を受けることで機能を持った生体分子となる。これまでに300種類以上の翻訳後修飾が報告されており、それぞれタンパク質の構造、機能、局在性、相互作用等と密接に関連していることから、翻訳後修飾解析はタンパク質の機能や生体内メカニズムの解明に不可欠となっているまた異常な翻訳後修飾はガン、アルツハイマー病、糖尿病等、様々な疾患との関わりが報告されており、翻訳後修飾は有効な疾患マーカーや創薬ターゲットとして期待されている。
【0003】
翻訳後修飾の解析には、質量分析(MS)が有効な技術の一つとなっている。タンパク質のMS解析においては、通常タンパク質をトリプシン等のタンパク質分解酵素によってペプチドへと分解した後に測定、解析され修飾部位を同定する。そのためには、修飾部位のMS検出に適したペプチドを生成可能なタンパク質分解酵素を選択する必要がある。しかし、前記選択のために初期段階で複数の酵素反応系を構築することは、研究者等にとって大きな負担となっている。たとえば、候補となる酵素としては約20種類が存在し、一般的な酵素消化は一種類につき10時間を要する。ゆえに20種類の酵素を検討するには200時間必要となり、試料毎にこの検討を実施することは現実的には不可能である。
【0004】
本課題を克服するためには、固定化酵素を用いたタンパク質分解技術が有効となる。この場合、n種類のタンパク質分解酵素を同一支持体上に固定化して反応を行うことでスループットをn倍向上させ、短時間で適したタンパク質分解酵素を決定することが可能となる。また短時間で多くの実験数を稼ぐことができるため、高精度データが取得可能となる。
【0005】
このような、複数種類の酵素によりタンパク質分解酵素を決定する方法としては、(1)特開2006-262829、(2)特開2005-513490および特開2007-309673が開示されている。
(1)には、支持体上に複数種類の酵素を固定化し、複数種類の酵素と一種類の試料を単独反応槽内部で同時に反応させる手法が報告されている。
また、(2)には、複数種類のタンパク質分解酵素を固相化したMALDIターゲット上に添加し、試料をMALDI-MSによって解析する手法が報告されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005-513490号公報
【特許文献2】特開2007-309673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記(1)は試料を単独反応槽内部で同時に反応させるため、効率よく反応を進めることはできるが、酵素間のコンタミが発生し、精度が低下するということが課題となる。
一方、(2)は、MALDI-MSの解析手法であり、これらによって酵素反応に必要なタンパク質量は約0.2 ugと微量であり,液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)による翻訳後修飾解析を行うためには不十分である。
【0008】
本発明の目的は、LC-MSによるタンデムマス(MS/MS)解析に適用でき,精度の優れた生体試料、特にタンパク質に適した生体試料解析システム、生体試料解析手法、解析に必要な生体試料前処理装置及び生体試料前処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、生体試料の分解酵素を支持体上に固定化された複数の固定化酵素をそれぞれ別の反応部で前記生体試料と反応させる前処理装置と、前記前処理から得られる反応物をそれぞれMS/MS解析するLC-MS装置からなることを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明は、生体試料の分解酵素を支持体上に固定化された複数の固定化酵素とそれぞれ別の反応部で前記生体試料と反応させる前処理工程と、前記工程で得られた反応物をそれぞれLC-MS装置によるMS/MS解析する分析工程を有する。
【0011】
さらに、上記目的を達成するために、本発明は、生体試料の分解酵素を支持体上に固定化された複数の固定化酵素と前記生体試料と反応させる前処理装置であって、前記複数の固定化酵素はそれぞれ別の反応部で反応させることを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明は、生体試料の分解酵素を支持体上に固定化された複数の固定化酵素と前記生体試料と反応させる前処理方法であって、前記複数の固定化酵素はそれぞれ別の反応部で反応させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、LC-MSによるタンデムマス(MS/MS)解析に適用でき,精度の優れた生体試料解析システム、生体試料解析手法、解析に必要な生体試料前処理装置及び生体試料前処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施するための最良の形態としてタンパク質解析を例とって説明する。対象となるタンパク質としては、人工的に強制発現および精製したタンパク質またはタンパク質複合体、細胞や組織からの抽出物あるいは血液(血清、血漿)、尿、脳髄液、唾液等から精製したタンパク質またはタンパク質複合体、および未精製の細胞や組織からの抽出物あるいは血液(血清、血漿)、尿、脳髄液、唾液等が想定される。
【0015】
固定化するタンパク質分解酵素としては、トリプシン、キモトリプシン、エンドプロテイナーゼArgC、エンドプロテイナーゼAspN、エンドプロテイナーゼGluC、エンドプロテイナーゼLysC、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、パパイン、ペプシン、プラスミン、プラスミノーゲン、スロンビン、ファクターX等が想定される。
【0016】
後述するタンパク質分解酵素の固定化用の支持体の形状としては、固体の平面基板、ビーズ、ならびに中空構造体が用いられ、その材質としては、例えばニトロセルロースやPVDF等のメンブレン、ガラス、ウエハー等のシリコン、プラスチック等の樹脂、金属等に、必要に応じて固定に適した表面修飾を施したものを用いることができる。表面修飾としては、物理吸着によって目的分子を固定化することができるポリ-L-リジンやアミノシラン、共有結合によって目的分子を固定化することができるアルデヒド基やエポキシ基のような官能基、及び目的分子との親和性を利用して固定化することができるアビジンやNi-NTAなどを用いることができる。本発明では支持体に固定化した酵素を固体化酵素と呼ぶ。
【0017】
本発明では、従来とは異なり平面の支持体上で酵素反応を行うためには、支持体上で試料を反応させるための反応槽を複数個形成する。そして、その反応槽内部で複数のタンパク質分解酵素をそれぞれ異なった反応槽で固定化し、反応槽内部で試料と反応させる。反応槽としては、隣接する反応槽における試料反応とのコンタミを避けるために、それぞれの反応槽は、反応時には可能の限り開口部が少なく、密封状態となることが望ましい。
【0018】
反応槽の形状は、反応槽内部での試料の対流を促し、反応を効率的に行う角のない形状、例えば円形、楕円形がよい。反応槽内部で対流等により発生の気泡は反応効率の低下を引き起こす。そこで、それを抑止するために、反応槽の内面形状が一部に窪んで幅が狭くなっている形状が特に有効である。必要な試料量が多くなると反応槽も大きくなり、窪みの数も多くする。
【0019】
反応槽の材質としては、支持体に吸着させることができるシリコーンゴム等が想定される。例えばPDMS(polydimethylsiloxane、ポリジメチルシロキサン)は生体試料の吸着が少なく、優れた素材である。
【0020】
まず、第1の実施形態を図1から図7を用いて説明する。図1にタンパク質解析システムの実施例を示す。本タンパク質解析システムは、酵素反応前の試料を保管するための酵素反応前試料保管部701と、試料を酵素消化するための試料酵素反応部702と、酵素反応後の試料を保管するための酵素反応後試料保管部703と、試料を解析するためのLC-MS装置704と、酵素反応前試料保管部分701からへ試料を導入するための試料導入部705と、酵素反応後の試料を試料酵素反応部702から酵素反応後試料保管部703へ回収するための試料回収部706と、酵素反応後試料保管部703からLC-MS装置704へ試料を導入するための試料移動部707を備えている。
【0021】
ここで、試料導入部705、試料回収部706、試料移動部707は,対象部分へ移動するための位置決め機構および可動機構を備えている一般的な機構を用いることができる。また、反応前試料保管部分701と反応後試料保管部703も従来のものを用いることができる。
【0022】
そこで、試料酵素反応消化部702とLC-MS装置704について図2乃至図7用いて説明する。図2は、本実施形態のタンパク質解析をする工程を示し、図3は、図2に示す工程にそって主に試料酵素反応消化部702の構成、プロセスを示す。図2及び図3における(1)〜(9)の数字は以下に説明する工程を示す。
【0023】
本実施形態は、(1)平面支持体上に複数種類のタンパク質分解酵素を固定化するための固定化反応槽を形成する工程、(2)複数種類のタンパク質分解酵素を支持体上の固定化反応槽内部に添加する工程、(3)タンパク質分解酵素を支持体に固定化する工程、(4)支持体を洗浄して固定化されなかったタンパク質分解酵素を除去する工程、(5)固定化タンパク質分解酵素と試料を反応させるための試料反応槽を形成する工程、(6)試料反応槽内部に試料を添加する工程、(7)試料を添加した試料反応槽内部に振動を加えることで撹拌して分解反応を行う工程、(8)生成したタンパク質分解物を回収する工程及び(9)回収したタンパク質分解物をLC-MS解析するする工程、からなる。ただし、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0024】
以下、各工程について詳細に説明する。
(1)平面支持体上に複数種類のタンパク質分解酵素を固定化するための固定化反応槽を形成する工程
タンパク質分解酵素固定化用の支持体201として、ProteoChipTM (TypeA、Proteogen)を用いた。支持体201にはあらかじめPDMS製の反応槽シート202を貼付した。反応槽シート202は、お面のように形状しており、お面側の中央部に反応槽を形成する楕円状の窪みを設けている。そこで、反応槽シート202を支持体に密着させるとその空間に溶液を導入できる固定化反応槽203が形成される。支持体201とシート202とを密着させるために専用ホルダ205によって両者を固定する。これを固定化支持体220という。本実施例における固定化反応槽の容量は40μLである。
【0025】
(2)複数種類のタンパク質分解酵素を支持体上の固定化反応槽内部に添加する工程
タンパク質分解酵素としてトリプシン、エンドプロテイナーゼLysC(以下LysC)、エンドプロテイナーゼGluC(以下V8)を用いた。各タンパク質分解酵素の特性を図4に示す。トリプシン(T8802、SIGMA)はPBS(pH 7.4)を用いて1 mg/mLに調製した。LysC(1047825、Roche)およびV8(1047817、Roche)は滅菌水によってそれぞれ20μg/mLおよび10μg/mLに調製した。反応槽シート202に設けられた溶液注入口204より形成されたそれぞれの反応槽203に、3種類のタンパク質分解酵素溶液206、 207、 208をマイクロピペッター209を用いて40μL注入した。
【0026】
(3)タンパク質分解酵素を支持体に固定化する工程
固定化支持体220を密封容器210中に置き、密封容器210中の4隅に滅菌水211を200μLずつ添加して蓋をし、湿度を保った状態で4℃の恒温槽212内部で一晩静置した。
【0027】
(4)支持体を洗浄して固定化されなかったタンパク質分解酵素を除去する工程
固定化支持体220から反応槽シート202を剥がした支持体201を洗浄溶液213(PBS(pH 7.4))を満たした容器中に浸漬し、シェーカーで10分間振盪して洗浄する操作を2回行った後、50 mM(M:mol/L) 重炭酸アンモニウムを用いて2回すすいだ。濾紙により、支持体201上の水分を除去した。
【0028】
(5)固定化タンパク質分解酵素と試料を反応させるための試料反応槽を形成する工程
洗浄済みの支持体201上に工程(1)で使用した同形状のPDMS製の反応槽シート202を貼付し、専用ホルダ205によって固定し、試料反応槽231を持つ反応用支持体230を作成する。
【0029】
(6)試料反応槽内部に試料を添加する工程
あらかじめ0.1 mg/mLに希釈した試料214(還元アルキル化済みBSAまたは還元アルキル化済みオボアルブミンまたはβカゼイン)を各試料反応槽231内部に溶液注入口204から30μL注入し、封入シールを流入口204に貼って塞ぎ、各試料反応槽231を密封状態にした。
【0030】
(7)試料を添加した反応槽に振動を加えることで撹拌してタンパク質分解反応を行う工程
試料反応槽内部の試料を効率的に分解するためには試料を撹拌することが望ましい。そこで、試料反応槽231上部に振動モーター215を設置して作動させ、37℃の恒温槽212内部で試料溶液を撹拌しながら一晩反応した。他の攪拌方法としては超音波を加える手法が考えられる。
【0031】
(8)生成したタンパク質分解物を回収する工程
振動モーター215を停止して溶液流入口204に貼り付けたシールを剥がし、マイクロピペッター209を用いて試料溶液を回収した。
【0032】
(9)回収したタンパク質分解物をLC-MS解析する工程
回収したタンパク質分解物をLC-MS216(NanoFrontierLD、日立ハイテクノロジーズ)によりMS/MS測定した。得られた質量データをもとに、解析用ソフトウエアであるMASCOT(Matrix Science)を用いたMS/MSイオンサーチにより、タンパク質データベースNCBIspを検索してタンパク質を同定した。測定ならびにデータベース検索の条件は以下の通りである。
【0033】
LC部:
カラム:Monocap for Fast 50um x 150mmL、 tip10um、 GL Science
移動相A液:0.1%ギ酸を含む2%アセトニトリル
移動相B液:0.1%ギ酸を含む98%アセトニトリル
グラジエント:測定開始後60分間でA液比率100%→60%(B液比率0%→40%)のリニアグラジエント
流速:0.1μL/min
MS部:
Ion source:electrospray
Polarity:positive ion mode
Mass scan range: 200-2000
Database: NCBIsp
Taxonomy: Mammalia (BSA、βカゼインの場合) 、 Metazoa (オボアルブミンの場合)
Enzyme: Trypsin or LysC or V8
Missed cleavages: 1
Fixed modifications: Carbamidomethyl (C) (BSA、オボアルブミンの場合)
Variable modifications: Oxydation (HMW)、 Phospho (STY)
Peptide tol:± 0.3 Da
MS/MS tol:± 0.1 Da
Instrument: ESI-TRAP
【0034】
上記の工程で得れた実験結果を以下に示す。
タンパク質同定結果を図5に示す。配列中灰色で表示した部分が、MSによって検出されたペプチドに相当し、囲み線で表示した部分が検出されたリン酸化ペプチドに相当する。また、各タンパク質の同定ペプチド数、スコア、シーケンスカバー率を図6に示す。各酵素処理によってタンパク質中の異なる部分が同定され、3種類のデータを組み合わせることで、全体のカバー率が向上(BSA:56~76% →89%、βカゼイン:16~21% →32%、 オボアルブミン:14~51% → 65%)可能であった。また、βカゼインのLysC分解産物およびオボアルブミンのV8分解産物において、各タンパク質由来のリン酸化ペプチドが確認された。各リン酸化ペプチドのMS/MS測定結果を図7(A)(B)にそれぞれ示す。
【0035】
上記結果から、複数種類のタンパク質分解酵素を用いた解析結果を組み合わせることで、タンパク質のシーケンスカバー率を向上させることが可能であり、また、リン酸化のような修飾ペプチドの検出は、使用するタンパク質分解酵素の種類によって影響され、βカゼインのリン酸化解析にはLysC、オボアルブミンのリン酸化解析にはV8の使用が最適であることが分かった。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、複数酵素固定化デバイスは上記のような最適なタンパク質分解酵素の選択を一回の実験で実施可能であることから、精度の優れたタンパク質解析システム、解析手法及び解析に必要な前処理装置を提供することができる。
【0037】
第2の実施形態を図8を用いて説明する。図8は、複数種類の酵素と一種類の試料の反応を別々反応槽として液体クロマトグラム用カラムを用いた解析システムを示す。
【0038】
液体クロマトグラム用カラム503は、液体クロマトグラムを送液系に複数並列に配置さていおり、そのそれぞれのカラムには複数種類の酵素をそれぞれ別に固定化したビーズが酵素の種類毎に予め充填されている。ここで、ビーズに酵素固定する方法は、実施形態1で示した固定化反応槽にビーズを入れて作成してもよいし、従来の他の方法用いて作成してもよい。ここで、ポンプ501を用い、タンパク質などの試料をオートサンプラ502から切換えバルブ505を経由して各カラムに導入して反応させ、再び切換えバルブ506を経た後,オンラインでLC-MS504に導入して解析する。上記液体クロマトグラムを送液系に複数直接接続し、試料を挿入してもよい。
【0039】
本実施形態においても、反応槽としてカラムを用いて試料を個々に複数種類の酵素と独立して反応させることができるので、生体試料の解析システム、解析手法及び解析に必要な前処理装置を提供することができる。
【0040】
第3の実施形態として、健康診断の疾患一次スクリーニング検査における、本手法の適用例について図9に示す。疾患マーカータンパク質を用いた検査では、マーカータンパク質をタンパク質分解酵素処理して得られる特定のペプチドを定量する手法が有効となる。各受診者601から採取した検体602を、タンパク質分解酵素固定化デバイス603を第1の実施形態又は第2の実施形態にした方法にて個別の反応槽内部に導入し、多検体を同時並行で分解した後、LC-MS604に導入する。特定の分子量を持つペプチドを、LC-MSにおけるシグナル強度から定量解析した結果605に基づき、疾患の診断606を行う。
【0041】
本実施形態に示すように、本発明を健康診断の疾患一次スクリーニング検査にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、疾患マーカー探索や創薬開発、タンパク質機能解析を行っている病院、製薬会社、大学等の研究を対象とし、生体試料、特にタンパク質に適した解析装システム、解析手法及び解析に必要な前処理装置を提供できる。また、今後疾患マーカータンパク質を検査・検診において実用化するに当たり、多数の試料を同時にハイスループットで処理するための消耗品としての提供が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】複数のタンパク質解析システムの本発明の実施形態を示す図である。
【図2】本実施形態のタンパク質解析をする工程を示す図である。
【図3】図2に示す工程にそって主に試料酵素反応消化部702の構成、プロセスを示す図である。
【図4】各タンパク質分解酵素の特性を示す表である。
【図5】LC-MSによるタンパク質同定結果を示す図である。
【図6】LC-MSによるタンパク質同定結果を示す表である。
【図7】LC-MSによるリン酸化ペプチドMS/MS解析結果を示す図である。(A)βカゼインのLysC分解産物由来リン酸化ペプチド解析結果、(B)オボアルブミンのV8分解産物由来リン酸化ペプチド解析結果。
【図8】タンパク質分解酵素を固定化した液体クロマトグラム用カラムによるオンライン解析技術に適用した本発明の他の実施形態を示す図である。
【図9】健康診断での疾患一次スクリーニング検査に適用した本発明の他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
201:固定化支持体
202:(PDMS製の)反応槽シート
203:固定化反応槽
204:溶液流入口
205:ホルダ
206:タンパク質分解酵素A
207:タンパク質分解酵素B
208:タンパク質分解酵素C
209:マイクロピペッター
210:密封容器
211:水滴
212:恒温槽
213:洗浄溶液
214:試料
215:振動モーター
216:LC-MS
220:固定化支持体
230:反応用支持体
231:試料反応槽
501:ポンプ
502:オートサンプラ
503:タンパク質分解酵素固定化カラム
504:LC-MS
505:切り替えバルブ
601:健康診断受診者
602:健康診断受診者より採取した検体
603:タンパク質分解酵素固定化デバイス
604:LC-MS
605:LC-MSデータ
606:診断結果
701:酵素反応前試料保管部
702:試料酵素反応部
703:酵素反応後試料保管部
704:LC-MS装置
705:試料導入部
706:試料回収部
707:試料移動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料の分解酵素を支持体上に固定化された複数の固定化酵素をそれぞれ別の反応部で前記生体試料と反応させる前処理装置と、前記前処理から得られる反応物をそれぞれMS/MS解析するLC-MS装置からなることを特徴とする生体試料解析システム。
【請求項2】
前記生体試料がタンパク質であること特徴とする請求項1に記載の生体試料解析システム。
【請求項3】
前記前処理装置は、前記複数の固定化酵素が同一の支持体に設けられており、前記固定化酵素がそれぞれ個別に内在するように前記支持体と前記反応部を形成する部材を有すること特徴とする請求項2に記載の生体試料解析システム。
【請求項4】
前記支持体が平面基板であり、前記部材は凹部を有するシートであり、前記凹部と前記支持体と反応槽を形成していることを特徴とする請求項3に記載の生体試料解析システム。
【請求項5】
前記反応部は複数個設けられたLC用カラムであり、前記LCカラムには前記固定化酸素がそれぞれ別途に内在していることを特徴とする請求項2に記載の生体試料解析システム。
【請求項6】
前記支持体はビーズであることを特徴とする請求項5に記載の生体試料解析システム。
【請求項7】
前記MS/MS解析結果に基づいて診断材料を提供することを特徴とする請求項1に記載の生体試料解析システム。
【請求項8】
生体試料の分解酵素を支持体上に固定化された複数の固定化酵素とそれぞれ別の反応部で前記生体試料と反応させる前処理工程と、前記工程で得られた反応物をそれぞれLC-MS装置によるMS/MS解析する分析工程を有することを特徴とする生体試料解析方法。
【請求項9】
前処理工程は、前記複数の固定化酵素が同一の支持体に設けられる工程と、前記固定化酵素がそれぞれ個別に内在するように前記支持体と前記反応部を形成する反応部形成工程と有すること特徴とする請求項8に記載の生体試料解析方法。
【請求項10】
前記支持体が平面基板であり、前記反応部形成工程は前記反応部を凹部を有するシートと前記支持体とで形成する反応槽を有する反応槽工程を有することを特徴とする請求項9に記載の生体試料解析方法。
【請求項11】
前記固定酵素は凹部を有するシートと前記支持体とで形成された固定化反応槽を形成し、前記固定化反応槽内で形成される工程を有することを特徴とする請求項11に記載の生体試料解析方法。
【請求項12】
前記反応部は複数個設けられたLC用カラムであり、前記反応部形成工程は前記固定化酵素がそれぞれが個別にLC用カラム内在するように形成する工程と、前記前処理工程は前期LC用カラムに前記試料を導入する工程を有することを特徴とする請求項8に記載の生体試料解析方法。
【請求項13】
生体試料の分解酵素を支持体上に固定化された複数の固定化酵素と前記生体試料と反応させる前処理装置であって、前記複数の固定化酵素はそれぞれ別の反応部で反応させることを特徴とする生体試料前処理装置。
【請求項14】
前記複数の固定化酵素が同一の支持体に設けられており、前記固定化酵素がそれぞれ個別に内在するように前記支持体と前記反応部を形成する部材を有すること特徴とする請求項13に記載の生体試料前処理装置。
【請求項15】
前記支持体が平面基板であり、前記部材は凹部を有するシートであり、前記凹部と前記支持体と反応槽を形成していることを特徴とする請求項14に記載の生体試料前処理装置。
【請求項16】
前記それぞれの別の反応部が同一基板上に設けられたことを特徴とする請求項13に記載の生体試料前処理装置。
【請求項17】
前記反応部は複数個設けられたLC用カラムであり、前記LCカラムには前記固定化酸素がそれぞれ別途に内在していることを特徴とする請求項13に記載の生体試料前処理装置。
【請求項18】
生体試料の分解酵素を支持体上に固定化された複数の固定化酵素と前記生体試料と反応させる前処理方法であって、前記複数の固定化酵素はそれぞれ別の反応部で反応させることを特徴とする生体試料前処理方法。
【請求項19】
前記複数の固定化酵素が同一の支持体に設けられており、前記固定化酵素がそれぞれ個別に内在するように前記支持体と前記反応部を形成すること特徴とする請求項18に記載の生体試料前処理方法。
【請求項20】
前記支持体が平面基板であり、前記部材は凹部を有するシートであり、前記凹部と前記支持体と反応槽を形成していることを特徴とする請求項19に記載の生体試料前処理方法。
【請求項21】
生体試料の分解酵素を支持体上に固定化された複数の固定化酵素と前記生体試料と反応させる前処理方法であって、複数個設けられたLC用カラム設け、前記LCカラムには前記固定化酸素がそれぞれ別途に内在していることを特徴とする生体試料前処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−288160(P2009−288160A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142884(P2008−142884)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】