説明

生体認証装置

【課題】
特別な装置や機構を用意することなく、生体認証装置の盗難対策と装置異常の検出を行なう。
【解決手段】
生体認証装置において、生体情報の取得に使用するカメラを用い、装置が設置または任意の初期設定を実施した時点に撮影した天井・壁面・端末機器の一部などの基準画像と、実稼動時に撮影した天井・壁面などの稼動時画像を比較する。そしてその比較した画像の一致率に応じて、カメラの故障、レンズ等の汚れ、悪戯、装置盗難検知を実施して装置の異常診断を行う。また、盗難と判断した場合は認証プログラムデータを消去して認証ロジックの漏洩を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行の自動取引装置(ATM)等における生体認証装置の画像入力手段、具体的にはカメラを具備した認証装置等において、撮影した画像中の不可視基準マークを検出することでの装置の盗難時対処および異常状態検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、銀行の自動取引装置(ATM)では、第3者によるカードの不正利用等を防止してセキュリティを強化する目的のため、指静脈等の生体情報を用いて真の利用者を識別する生体認証装置の導入が進められている。このような生体認証装置は、既存のATM装置本体の外部へ装填することも可能であるため、新規導入へのコストが少なくて済む反面、生体認証装置そのものが強引に取り外されて盗難される危険性もあり、その対策が必要となる。また、カメラを用いて生体情報を取得する生体認証装置では、カメラのレンズ部分に汚れが付着した場合は速やかにそれを検知して清掃等、然るべき処置を施す必要がある。
【0003】
従来、個人情報を保持する装置の盗難を検知する手段として特許文献1に開示の構成がある。また、個人認証用カメラの汚れ検知の発明として特許文献2に開示の構成が挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−264891号公報
【特許文献2】特開2004−153422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の構成においては、盗難防止のための別途装置や手段が必要となって、コスト的にも装置規模的も不都合である。また、認証装置がそのまま取り外されて盗難にあった場合、内部の認証プログラムが解析されて認証ロジックが漏洩するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
生体認証装置において、生体情報の取得に使用するカメラを用い、装置が設置または任意の初期設定を実施した時点に撮影した天井・壁面・端末機器の一部などの基準画像と、実稼動時に撮影した天井・壁面などの稼動時画像を比較する。そしてその比較した画像の一致率に応じて、カメラの故障、レンズ等の汚れ、悪戯、装置盗難検知を実施して装置の異常診断を行う。また、盗難と判断した場合は認証プログラムデータを消去して認証ロジックの漏洩を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本実施形態に係る画像入力手段(例:赤外線カメラ)120を持つ認証装置(例:指静脈認証)110を付加する端末装置(例:ATM)100の概略を示す概観図である。赤外線カメラ120の撮影領域140には赤外線カメラ120の状態確認に用いる基準マーク(例:不可視赤外線反射塗装)130、150が端末装置100および壁面160に付加されている。
【0008】
図2は、本実施形態に係る認証装置110の構成図である。全体を制御する制御部200、画像入力手段であるカメラ120、入力した画像を格納する画像メモリ210、画像の比較を行う画像比較部220、処理結果等をATMと通信する通信部230、上位装置であるATM100、認証を行うプログラムやデータおよび異常チェック用プログラムが暗号化して格納されている非揮発性メモリ240、暗号化されたプログラムを展開、実行する揮発性メモリ250、およびバッテリ260で構成されている。
【0009】
図3は、認証装置110の初期設定時に行うテンプレート画像採取処理についての概略を示す図である。まず、異常チェックに用いる基準マーク130,150を撮影してテンプレート画像を採取し(ステップ300)、次に採取したテンプレート画像を画像メモリ210に格納する(ステップ310)。なお、基準マークとテンプレート画像の例を図6に示す。
【0010】
図4は、認証装置110の動作切り替え処理の1例を説明するフローチャートである。まず、電源ON直後にフラッシュメモリ240より異常チェック用プログラム・データを解読して揮発メモリ250に格納し(ステップ400)、カメラ120を起動して(ステップ401) 認証装置の異常チェック処理を実施する(ステップ402)。
【0011】
処理終了直後にカメラ120の停止(ステップ403)および揮発メモリ250の初期化を行い(ステップ404)、異常チェック用プログラム・データを揮発メモリ250より消去する。次に異常チェック結果の判定を行い(ステップ405)、異常が検出された場合はフラッシュメモリ240の初期化を行い認証プログラム・データおよび異常チェックプログラム・データを完全に消去し(ステップ409)、 終了情報に異常終了と書き込んで終了する(ステップ410)。
【0012】
ステップ405で警告アラームが発生しかつ前回の終了情報が異常終了であった場合(ステップ406)も同様に終了する。次にステップ405で正常であった場合かつ、ATM停止信号ONチェックでYesとなった場合(ステップ407)、終了情報に正常終了と書き込んで終了する(ステップ408)。ステップ407でNoとなった場合、ATM・認証装置状態検出を行う(ステップ411)。
【0013】
次に状態遷移チェックを行い(ステップ412)、状態遷移が無い場合は再度ATM・認証装置状態検出を行う(ステップ411)。ステップ412で状態遷移が有った場合は以降の状態チェック分岐判定を行い、状態が「ATM起動信号ON」または「認証装置異常チェック要求信号ON」または「ATM起動信号ON」の場合(ステップ413、414、415)はステップ400以降の異常チェック処理を再実行する。
【0014】
状態が「ATM正規応答なし」または「認証装置電源断」の場合(ステップ416、417)は、装置異常とみなして終了情報に異常終了と書き込んで終了する(ステップ410)。状態が「認証開始信号ON」の場合(ステップ418)は、認証処理を実行する(ステップ419〜423)。
【0015】
図5は、認証装置110の認証装置異常チェック処理の1例を説明するフローチャートある。まず、異常チェックに用いる基準マーク130、150を撮影し、採取画像として保持する(ステップ500)。次にメモリ上に保持しているテンプレート画像(図7:700)および、上下左右にずらしたテンプレート画像(図7:701〜704)と採取画像とを図8に示す画像マッチングを行って比較し(ステップ501、502)、もっとも差分値が小さい物よりテンプレート画像と採取画像の一致度を算出する(ステップ503)。
【0016】
次に一致度判定1(ステップ504)を行い、一致度が故障・盗難基準値(例:20%)未満の場合には故障・盗難アラームを通信部230を介してATM100に発信し(ステップ510)、異常終了する(ステップ511)。次に上下左右にずらしたテンプレート画像で一致度が最も高かった場合(ステップ505)、カメラずれアラームを通信部230を介してATM100に発信する(ステップ506)。
【0017】
次に一致度判定2(ステップ507)を行い、一致度が汚れ・悪戯異常基準値(例:70%)以上ある場合には正常終了する(ステップ509)。汚れ・悪戯異常基準値(例:70%)未満であった場合は汚れ・悪戯アラームを通信部230を介してATM100に発信し正常終了する(ステップ508)。
【0018】
図6に基準マークとテンプレート画像の例を示す。可視光画像600に付加されているマークは実際には不可視の赤外線反射塗装のマークで、テンプレート画像601はこれを据付時に赤外線カメラで撮影した基準画像であり、602〜604の採取画像は異常チェック時に撮影した画像である。602は採取した画像がテンプレート画像と比較してずれている状態を示している。603はカメラレンズの部分的な汚れ等によって、採取画像の一部の領域がテンプレート画像と異なっている状態を示している。また、604は盗難や故障等によって採取画像の全ての領域がテンプレート画像と異なっている状態を示している。
【0019】
図7はテンプレート画像と採取画像のマッチング例を示すものである。テンプレート画像700は通常のテンプレート画像で、テンプレート画像701〜704は上下左右にずらしたテンプレート画像である。マッチング画像705〜709はそれぞれのテンプレート画像と採取画像をマッチングした状態の概念図である。
【0020】
図8は画像の一致率計算方法を示すものである。テンプレート画像Tと採取画像Iを左上より順に比較して差分を求めて一致率を計算する。
【0021】
図9は、認証装置110の認証装置異常チェック処理の1例として、対人接近検出機能を付加した場合の処理を説明するフローチャートである。まず、異常チェックに用いる基準マーク130、150を撮影し、画像[1]として保持する(ステップ900)。次に一定時間(例:2秒)待ち(ステップ901)、再度基準マーク130、150を撮影し、画像[2]として保持する(ステップ902)。次に画像[1]と画像[2]を比較し(ステップ904)、一致度が人物接近基準値(例:90%)未満であった場合は人物接近アラームを通信部230を介してATM100に発信し(ステップ914)人物接近終了する(ステップ915)。
【0022】
ステップ904で一致度が人物接近基準値(例:90%)以上あった場合は、メモリ上に保持しているテンプレート画像(図7:700)および、上下左右にずらしたテンプレート画像(図7:701〜704)と採取画像とを図8に示す画像マッチングを行って比較し(ステップ905、906)、もっとも差分値が小さい物よりテンプレート画像と採取画像の一致度を算出する(ステップ907)。
【0023】
次に一致度判定1(ステップ908)を行い、一致度が故障・盗難基準値(例:20%)未満の場合には故障・盗難アラームを通信部230を介してATM100に発信し(ステップ916)、異常終了する(ステップ917)。次に上下左右にずらしたテンプレート画像で一致度が最も高かった場合(ステップ909)、カメラずれアラームを通信部230を介してATM100に発信する(ステップ910)。次に一致度判定2(ステップ911)を行い、一致度が汚れ・悪戯異常基準値(例:70%)以上ある場合には正常終了する(ステップ913)。汚れ・悪戯異常基準値(例:70%)未満であった場合は汚れ・悪戯アラームを通信部230を介してATM100に発信し正常終了する(ステップ912)。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明における生体認証装置の外観構成を示す図である。
【図2】本発明における生体認証装置の構成図である。
【図3】本発明におけるテンプレート撮影方法のフローチャートである
【図4】本発明におけるの動作切り替え処理方法のフローチャートである
【図5】本発明における異常チェック処理方法のフローチャートである
【図6】本発明における基準マークとテンプレート画像を説明する図である。
【図7】本発明におけるテンプレート画像と採取画像のマッチングを説明する図である。
【図8】本発明における画像の一致率計算方法を説明する図である。
【図9】本発明における異常チェック処理方法2のフローチャートである
【符号の説明】
【0025】
100…端末装置(ATM)、110…認証装置(指静脈認証装置)、120…認証装置のカメラ、130…端末装置上の基準マーク(不可視赤外線反射塗装)、140…認証装置カメラの撮影領域、150…壁面上の基準マーク(不可視赤外線反射塗装)、160…ATM設置壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報を取得する画像入力手段と、
前記画像入力手段にて撮影可能な場所にある対象物の画像を格納する記憶手段と、
前記画像入力手段にて取得した第1の画像と、前記記憶手段に格納された第2の画像とを比較する比較手段と、
を有する生体認証装置であって、
前記比較手段による比較結果に応じて、当該生体認証装置の状態を検知することを特徴とする生体認証装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体認証装置であって、
前記記憶手段に格納された第2の画像は、当該生体認証装置に異常がない状態で事前に前記画像入力手段にて所定の対象物を撮影した画像であり、
前記比較手段による前記第1の画像と前記第2の画像の差分量に応じて当該生体認証装置の異常度合を検知することを特徴とする生体認証装置。
【請求項3】
請求項2に記載の認証装置であって、
前記比較手段による前記第1の画像と前記第2の画像の画像のズレに応じて、前記画像入力手段の取付け角度のズレを検知することを特徴とする生体認証装置。
【請求項4】
請求項1に記載の生体認証装置であって、
前記比較手段による前記第1の画像と前記第2の画像の差分量に応じて、当該生体認証装置への人物の接近を検知することを特徴とする生体認証装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の生体認証装置であって、
当該生体認証装置の盗難を検知した場合は、保持している認証プログラムおよび認証データを消去することを特徴とする生体認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−252211(P2006−252211A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68336(P2005−68336)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】