説明

生体適合性ポリマーの調製方法、生体適合性ポリマーおよびそれらの使用

本発明は、遊離のアルファ−アミノ官能基およびカルボキシ官能基を有するイプシロン結合L−リシンを含んでなる生体適合性ポリマーを調製する方法に関する。本発明はさらに、得られた生体適合性ポリマーおよびそのポリマーから作製された製品、特にコンタクトレンズならびに眼内レンズを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、イプシロン結合L−リシンを含んでなる新規の生体適合性ポリマーを調製する方法、生体適合性ポリマーならびにそれらの使用、特に、コンタクトレンズおよび眼内レンズの製造のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ポリマーは、生物医学的適用、ならびに衣類など、ヒトの皮膚または組織に接触する他の製品に広範に使用される。生物医学的適用にしばしば用いられるポリマーとしては、アクリル類、ポリウレタン類、シリコーン類および種々の親水性物質が挙げられる。眼内レンズおよびコンタクトレンズなどの眼用レンズの分野で一般的に用いられるポリマーは、ポリメチルメタクリレート、ポリフェニルエチルメタクリレート、セルロースアセテートブチレート、シリコーン−メチルメタクリレート、コポリマー、親水性化合物とのメチルメタクリレートコポリマー、ならびにヒドロキシエチルメタクリレートおよびジヒドロキシプロピルメタクリレートベースのヒドロゲルなどのヒドロゲル類である。シリコーン含有ヒドロゲル類は、メタクリルオキシプロピルトリス(トリ−メチルシロキシ)シラン(TRIS)などのシリコーンモノマーおよび/またはシロキサンマクロマーと、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−カルボキシビニルエステルなどの親水性モノマーとの共重合によって調製されてきた。これらの材料に共通なのは、公知の生体表面とはきわめて異なる表面を備えており、したがって、様々な程度の組織不適合性または生体不適合性を示すということである。生体表面との接触を目的としてポリマーにアミノ酸を組み込むことによって、それらの生体適合性を増強させることができる。Bawaは、特許文献1において、アミノ酸を含んでいるポリマーを記載した。しかしながら、Bawaのポリマーに含有されるアミノ酸は、遊離のアルファ−アミノ−カルボキシ基を欠いているため、ポリマーの生体適合性を顕著に改善することはない。Hitzらは、特許文献2において、側鎖活性アクリルアミノ酸および従来のアクリルモノマーの共重合から得られるポリマーを記載した。遊離のアルファ−アミノ−カルボキシ基を持つこれらのアミノ酸含有ポリマーは、先行技術のポリマーに比較して、劇的に生体適合性が増加していることが示された。ポリマーに組み込まれたアミノ酸残基は、ペプチド結合を介して結合してはいないため、ポリマーは組織プロテアーゼ類による生物学的分解に対して抵抗性であり、血液学的応答の低下を引き起こす可能性がある。さらに、ポリマー内のアミノ酸残基の存在により、ポリマーの疎水性が増加する。ポリマーの性質に依って、これは、水の取込み、酸素透過性および表面湿潤性を増加させる結果となり得る。
【0003】
本発明は、関連する特徴を有するポリマーを調製する新規な方法に関する。本法は、特許文献2に記載された方法よりもはるかに簡便であり、経済的に実行可能である。さらに、新規の生体適合性ポリマーを含有する製品の製造を目的として、最少の努力とコストで、ハードレンズならびにヒドロゲルレンズ用の現行の製造法を適合させることができる。本発明のポリマーは、化学的に、最近の先行技術のポリマーに関連しているが同一ではない。本発明のポリマーは、2,3−結合(置換または非置換)スクシニル−イプシロン−リシニルアミドモノマーを含有するが、一方、最近の先行技術のポリマーは、1,2−結合、2−メチル化または非置換のプロピオニル−イプシロン−リシニルアミドモノマーを含む。機能レベルでは、新規ポリマーは、中性pHで過剰の負の電荷を含有し、これらの電荷は、ポリマーが接触する生体表面に存在するタンパク質および他の負に荷電した分子との相互作用の減少に重要な生物学的役割を果たし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,668,506号明細書
【特許文献2】国際公開第2006126095号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、遊離のアルファ−アミノカルボキシ官能基を有するイプシロン−結合L−リシンを含んでなる生体適合性ポリマーを調製する方法に関する。本法は、(a)少なくとも2種のモノマーを含んでなる重合混合物であり、モノマーのうちの第一のモノマーが、無水マレイン酸、2−メチル化無水マレイン酸または2,3−ジメチル化無水マレイン酸であり、モノマーのうちの第二のモノマーまたはさらなるモノマーが、少なくとも1つのエチレン様不飽和基を有する異なるモノマーであり、重合混合物が任意に、フリーラジカル開始剤および複数のエチレン様不飽和基を有する架橋剤のうちの1つまたは双方をさらに含む重合混合物を調製するステップと;(b)重合を誘導するステップと;(c)重合反応が完了したら、形成したポリマーを、ポリマーに存在する実質的に全ての無水スクシニル基をアミド化するために、中性または塩基性条件下、L−リシンに曝露するステップと、を含んでなる。より具体的な実施形態において、本法は、レンズの製造に用いられる。コンタクトレンズを作製するために、ステップ(a)の重合混合物をレンズの型に移し、そこで重合を誘導する。重合反応が完了したら、形成したレンズをL−リシンに曝露させる。コンタクトレンズを製造する一般的方法および眼内レンズの調製では、ステップ(a)の重合混合物をロッドを作成するための型に移す。重合に引き続き、ロッドを型から取り出し、適切な厚さの切片に切断する。当業界に周知の圧延処理により、切片からレンズを調製する。最後に、レンズをL−リシンに曝露させる。
【0006】
上記の方法の具体的な実施形態において、無水マレイン酸、2−メチル無水マレイン酸または2,3−ジメチル無水マレイン酸は、重合混合物中に約0.01重量%から0.25重量%の間の量で存在する。
【0007】
本発明の方法において、第二のモノマーまたはさらなるモノマーは、アルファ−不飽和カルボン酸、ベータ−不飽和カルボン酸、N−ビニルラククタムまたは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のN−置換または非置換のヒドロキシアルキルエステルまたはヒドロキシアルキルアミドなどの親水性モノマーであり得る。
【0008】
第二のモノマーまたはさらなるモノマーはまた、アルキル、シクロアルキルまたはアリールアクリレートまたはアリールメタクリレート、モノ−またはジ置換イタコネート、スチレンまたはスチレン誘導体、アクリロニトリル、ビニルエステル、ビニルエーテル、アリルエステル、またはフッ素含有もしくはシリコン含有アクリレートあるいはメタクリレートなどの疎水性モノマーであり得る。
【0009】
第二のモノマーまたはさらなるモノマーはまた、ヒドロキシエチルメタクリレートとメチルメタクリレート、ビニルピロリドンとヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピロリドンとメチルメタクリレート、グリセラルメタクリレートとメチルメタクリレート、グリセリルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルメタクリレート類、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとヒドロキシアルキルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと2個から6個の炭素原子を有するアルキル基を持つアクリレート類、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとビニルヒドロキシアセテート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとビニルヒドロキシプロピオレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとビニルヒドロキシブチレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN−ビニルラクタム類すなわちN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムおよびN−ビニルピペリドン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと0個から2個の炭素原子を有するアルキル基を持つN,Nジアルキルアミノエチルメタクリレート類およびアクリレート類、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと2個から4個の炭素原子を有するアルキル基を持つヒドロキシアルキルビニルエーテル類、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ2−ヒドロキシエチレン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ5−ヒドロキシ3−オキサペンタン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ8−ヒドロキシ3,6−ジオキサオクタン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ14−ヒドロキシ3,6,9,12テトラオキサテトラデクタン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN―ビニルモルホリン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと0個から3個の炭素原子を有するアルキル基を持つN,Nジアルキルアクリルミド(N−イソプロピル−アクリルアミド)、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1個から2個の炭素原子を有するアルキル基を持つアルキルビニルケトン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN−ビニルスクシンイミドまたはN−ビニルグルタルイミド、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN−ビニルイミダゾール、およびヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN−ビニル3−モルホリノンからなる群から選択される、ヒドロゲルを形成できるモノマーの組み合わせを含むことができる。
【0010】
具体的な実施形態において、第二のモノマーまたはさらなるモノマーは、式
【化1】

の化合物であり得、
式中:Xは、HまたはCHであり;mは、0〜10であり;Yは、無し、O、SまたはNR(式中、Rは、H、CH、C2n+1(n=1〜10)イソ−OC、CまたはCHである)であり;Arは、非置換か、またはH、CH、C、n−C、イソ−C、OCH、C11、Cl、Br、CまたはCHで置換し得るベンゼンなどの任意の芳香族環である。より具体的な実施形態において、第二のモノマーまたはさらなるモノマーは、2−エチルフェノキシアクリレート、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルチオフェニルアクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、2−エチルアミノフェニルアクリレート、2−エチルアミノフェニルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルアクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、3−プロピルフェノキシアクリレート、3−プロピルフェノキシメタクリレート、4−ブチルフェノキシアクリレート、4−ブチルフェノキシメタクリレート、4−フェニルブチルアクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、4−メチルフェニルアクリレート、4−メチルフェニルメタクリレート、4−メチルベンジルアクリレート、4−メチルベンジルメタクリレート、2−2−メチルフェニルエチルアクリレート、2−2−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−3−メチルフェニルエチルアクリレート、2−3−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−4−メチルフェニルエチルアクリレート、2−4−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルアクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルアクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ベンジルフェニル)エチルアクリレート、および2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレートからなる群から選択され得る。本発明の方法の後半の具体的な実施形態において、重合混合物は、親水性モノマーをさらに含み得る。親水性モノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはアルファ−、ベータ−不飽和カルボン酸、N−ビニルラクタムまたは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のN−置換または非置換のヒドロキシアルキルエステルまたはヒドロキシアルキルアミドなどの別の親水性モノマーであり得る。
【0011】
本発明の方法の他の具体的な実施形態において、第二のモノマーは、エチレン様不飽和基、シロキシマクロマーまたはシクロシロキサンを含んでなるシリコン含有モノマーであり得る。シリコンヒドロゲル類を作製するために、重合混合物は、親水性モノマーであるさらなるモノマーを含み得る。親水性モノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはアルファ−不飽和カルボン酸、ベータ−不飽和カルボン酸、N−ビニルラククタムまたは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のN−置換または非置換のヒドロキシアルキルエステルまたはヒドロキシアルキルアミドなどの別の親水性モノマーであり得る。より具体的な実施形態において、シリコン含有モノマーは、トリス(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシプロピルシラン(TRIS)、トリス(トリメチルシロキシ)プロピルビニルカルバメート、ポリ[ジメチルシロキシル]ジ[シリルブタノール]ビス[ビニルカルバメート]、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールメタクリレート、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールエチルメタクリレート、またはヘプタメチルトリシロキサニルエチルアクリレートであり得る。
【0012】
本発明の方法の特定の実施形態において、重合混合物は、光増感剤、紫外線吸収化合物および/または青色光吸収化合物を含み得る。
【0013】
本発明はさらに、上記の方法により調製された2,3−結合スクシニル−イプシロン−L−リシニルアミド、2−メチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドまたは2,3−ジメチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドを含んでなる生体適合性ポリマーに関する。より具体的な実施形態において、スクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドモノマー、2−メチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドモノマーまたは2,3−ジメチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドモノマーは、約0.02%から0.50%の範囲の量でポリマー中に存在する。生体適合性ポリマーはさらに、紫外線吸収化合物および/または青色光吸収化合物を含み得る。
【0014】
さらなる実施形態は、少なくとも2種の異なるモノマーを含んでなり、そのうちの1種が、スクシニル−イプシロン−L−リシニルアミド、2−メチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドまたは2,3−ジメチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドを含んでなる生体適合性ポリマーに関する。より具体的な実施形態において、スクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドモノマー、2−メチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドモノマーまたは2,3−ジメチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドモノマーは、約0.02%から0.50%の範囲の量でポリマー中に存在する。生体適合性ポリマーはさらに、紫外線吸収化合物および/または青色光吸収化合物を含み得る。
【0015】
生体適合性ポリマーから作製されるコンタクトレンズ、ならびに視覚部分および/または触覚部分が本発明のポリマーから作製される眼内レンズもまた本発明に包含される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の生体適合性ポリマーは、生体適合性の眼内レンズまたはコンタクトレンズの作製に使用することができる。これらの生体適合性ポリマーは、連続的方法で製造される。第一に、ポリマーは、少なくとも1つのエチレン様不飽和基を有することを特徴とする1種または複数種の重合可能なモノマーと無水マレイン酸との共重合により形成される。無水マレイン酸の替わりに、2−メチル無水マレイン酸または2,3−ジメチル無水マレイン酸を使用することができる。重合混合物は一般に、ビニルモノマーまたはアクリルモノマー、無水マレイン酸、ならびに任意に、フリーラジカル開始剤および複数の重合可能なエチレン様不飽和基を有する架橋剤を含む。無水マレイン酸(または、2−メチル無水マレイン酸または2,3−ジメチル無水マレイン酸)は、重合混合物中に約0.01重量%から0.25重量%の範囲の量で存在する。重合混合物はまた、光増感剤、紫外線吸収化合物および青色光吸収化合物も含み得る。フリーラジカル開始剤を使用する替わりに、放射線照射によって重合を誘導できることが留意される。無水マレイン酸、2−メチル無水マレイン酸および2,3−ジメチル無水マレイン酸は、Fluka Chemie AG, Buchs, Switerlandから入手できる。
【0017】
有用なモノマーは、エチレン様不飽和基を含有する化合物を含むのみならず、開環に誘導され得る環構造を有する化合物を含むことが留意される。このような化合物は、例えば、米国特許第6,066,172号明細書に記載されている。このようなモノマーの使用もまた本発明の範囲内にあることが考慮されるべきである。
【0018】
昼間使用または長時間使用(夜通し使用)のコンタクトレンズを製造する場合、重合は、好適な型において直接誘導できる。眼内レンズまたはコンタクトレンズの製造では一般に、ポリマーのロッドを製造し、引き続き切断してペレットを得、これらペレットから、当業界に周知の技法によりレンズを圧延することができる。
【0019】
本発明のポリマーを作製するために使用できるモノマーは、疎水性または親水性の特徴を有し得る。使用されるモノマーの特徴、または使用される異なる特性を有するモノマーの相対量に依って、製品ポリマーは、疎水性であるか、またはより親水性の特徴を示す。本発明のヒドロゲルコポリマーは、メチル化または非メチル化無水マレイン酸と1種または複数種のモノマー成分との共重合によって調製することができ、モノマー成分のうちの少なくとも1種は親水性を有し、架橋ポリマー中でヒドロゲルを形成することができる。「ヒドロゲル」は、水和の際に、約5%と95%との間の平衡含量の水分を有する架橋ポリマーとして理解される。本発明のヒドロゲルポリマーは、コンタクトレンズおよび折り畳み可能な眼内レンズなどの生体適合性の眼用ソフトレンズの製造に使用することができる。多くのイントロキュラーレンズは、識別できる視覚部分と触覚部分を有する。折り畳み可能な眼内レンズの視覚部分またはソフトコンタクトレンズは、少なくとも約25%の水分含量を有することが好ましい。
【0020】
本発明のポリマーの調製に有用で好適な疎水性モノマーとしては、限定はしないが、シクロアルキルエステル、第三級ブチルスチレン、多環式アクリレートまたは多環式メタクリレートなど、ならびにそれらの混合物が挙げられる。より具体的には、多環式アクリル類は、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタンジエニルアクリレート、ジシクロペンタンジエニルメタクリレート、アダマンチルアクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソピノカンフィルアクリレート、イソピノカンフィルメタクリレートなど、ならびにそれらの混合物であり得る。シクロアルキルエステルモノマーは、下記の式I(米国特許第4,668,506号明細書からの式I)を有するものである。これらのシクロアルキルエステル類の例には、メンチルメタクリレート、メンチルアクリレート、第三級ブチルシクロヘキシルメタクリレート、イソヘキシルシクロペンチルアクリレート、メチルイソペンチルシクロオクチルアクリレートなどがある。
【化2】

式中、Dは、3個から6個の炭素原子を有する分枝状または直鎖のアルキルであり、EはHまたはCHであり、Zは、HまたはCHであり、nは、3から8の整数である。
【0021】
他のよく知られた疎水性モノマーとしては、アルキル、シクロアルキル、およびアリールアクリレート類およびアリールメタクリレート類ならびにモノ置換またはジ置換のイタコネート類、スチレンおよびその誘導体、アクリロニトリル、ビニルアセテートまたはビニルペントアセチルグルコネートなどのビニルエステル類、ビニルブチルエーテルなどのビニルエーテル類、アリルアセテート、アリルプロピオネートまたはアリルブチレートなどのアリルエステル類、オクタフルオロペンチルメタクリレートなどのフッ素含有モノマーならびにトリス(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシプロピルシラン(TRIS)、トリス(トリメチルシロキシ)プロピルビニルカルバメート、ポリ[ジメチルシロキシル]ジ[シリルブタノール]ビス[ビニルカルバメート]、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールメタクリレート(Tanakaに対する米国特許第4139513号明細書に記載)、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールエチルメタクリレート(同上)、またはヘプタメチルトリシロキサニルエチルアクリレートなどのシリコン含有モノマーが挙げられる。下記の式IIは、アリールアリレートおよびメタクリルアリレートならびに関連化合物の特定の基を表している。
【化3】

式中、XはHまたはCHであり;mは0〜10であり;Yは、無し、O、S、またはNR(式中、RはHまたはCH、CH2n+1(n=1〜10)イソ−OCH、C、またはCHである)であり;Arは、非置換か、H、CH、C、n−C、イソ−C、OCH、C11、Cl、Br、CまたはCHにより置換できるベンゼンなどの任意の芳香環である。
【0022】
式IIの好適なモノマーとしては、限定はしないが、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルフェノキシアクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、2−エチルチオフェニルアクリレート、2−エチルアミノフェニルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、3−プロピルフェノキシメタクリレート、4−ブチルフェノキシメタクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、4−メチルフェニルメタクリレート、4−メチルベンジルメタクリレート、2−2−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−3−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−4−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレートなどが挙げられ、対応するメタクリレート類およびアクリレート類を含む。
【0023】
親水性の反応性モノマーとしては、例えば、アルファ−不飽和カルボン酸、ベータ−不飽和カルボン酸、N−ビニルラクタム類、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のN−置換および非置換双方のヒドロキシアルキルエステル類およびアミド類が挙げられる。本発明に有用なアルファ−不飽和酸、ベータ−不飽和酸は、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸などである。ヒドロキシアルキルエステル類を形成する多官能価アルコール類としては、グリコール、グリセロール、プロピレングリコール、トリメチレングリコールおよび他の多価アルカノール類、2個から12個の炭素原子を有するジアルキレングリコール類、ポリアルキレングリコール類などが挙げられる。ポリアルキレングリコール類の例としては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコールなどがある。好ましい親水性モノマーは、ヒドロキシアルキルエステル類、特に、ヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0024】
ヒドロゲルポリマーを製造するために、無水マレイン酸またはメチル化無水マレイン酸の存在下、共重合できるモノマー成分の好適な組み合わせとしては、ヒドロキシエチルメタクリレートとメチルメタクリレート、ビニルピロリドンとヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピロリドンとメチルメタクリレート、グリセラルメタクリレートとメチルメタクリレート、グリセリルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとヒドロキシアルキルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと2個から6個の炭素原子を有するアルキル基を持つアクリレート類、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとビニルヒドロキシアセテート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとビニルヒドロキシプロピオネート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとビニルヒドロキシブチレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN−ビニルラクタム類すなわちN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムおよびN−ビニルピペリドン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと0個から2個の炭素原子を有するアルキル基を持つN,Nジアルキルアミノエチルメタクリレート類およびアクリレート類、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと2個から4個の炭素原子を有するアルキル基を持つヒドロキシアルキルビニルエーテル類、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ2−ヒドロキシエチレン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ5−ヒドロキシ3−オキサペンタン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ8−ヒドロキシ3,6−ジオキサオクタン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ14−ヒドロキシ3,6,9,12テトラオキサテトラデクタン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN―ビニルモルホリン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと0個から3個の炭素原子を有するアルキル基を持つN,Nジアルキルアクリルアミド(N−イソプロピル−アクリルアミド)、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1個から2個の炭素原子を有するアルキル基を持つアルキルビニルケトン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN−ビニルスクシンイミドまたはN−ビニルグルタルイミド、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN−ビニルイミダゾール、およびヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN−ビニル3−モルホリノンを含んでなる。
【0025】
シリコンヒドロゲル類の調製の仕方は当業界によく知られている。本発明のシリコンヒドロゲルを作製するために、メチル化または非メチル化無水マレイン酸を、シリコン含有モノマーまたはマクロマーおよび少なくとも1種の親水性モノマーと共重合させる。シリコン含有モノマーの例には、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールメタクリレートおよびメチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールエチルメタクリレートがある。これらのモノマーを、エチレングリコールモノメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、N−ビニルピロリドンまたはジメチルアクリルアミド(米国特許第4139513号明細書)などの親水性モノマーと共重合させることができる。Bausch & Lomb’s PureVisionレンズは、トリス(トリメチルシロキシ)プロピルビニルカルバメート、ポリ[ジメチルシロキシル]ジ[シリルブタノール]ビス[ビニルカルバメート]、N−ビニルピロリドンとN−カルボキシビニルエステルとの共重合によって調製された。CIBA Vision’s “Focus Night & Day”レンズは、トリス(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシプロピルシラン(TRIS)、フルオロエーテルシロキサンマクロマーおよびN,N−ジメチルアクリルアミドのコポリマーである。他のシリコンヒドロゲルレンズは、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシクロトリシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン(米国特許第6,066,172号明細書)の共重合、またはTRIS、N,N−ジメチルアクリルアミド、メチルメタクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート(米国特許出願公開第20090190090号明細書)の共重合によって調製された。本発明の対応するシリコン含有ヒドロゲル類は、後者のモノマー混合物と約0.01重量%から0.25重量%の間の量で添加されたメチル化または非メチル化無水マレイン酸との共重合によって製造することができる。
【0026】
本発明のポリマー製造のための重合混合物は、共重合可能な架橋剤を含むこともできる。好適な架橋剤は、2つ以上の不飽和基、すなわち、複数の不飽和基を有する任意の末端エチレン様不飽和化合物であり得る。より具体的に、好適な架橋剤としては、限定はしないが、以下のものがあげられる:エチレングリコールジアクリレートまたはエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレートまたはジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレートまたはトリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレートまたはテトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートまたはポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートまたはトリメチロールプロパントリメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレートまたはビスフェノールAジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレートまたはエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、ペンタエリトリトールトリ−アクリレートおよびペンタエリトリトールテトラ−アクリレートまたはペンタエリトリトールトリ−メタクリレートおよびペンタエリトリトールテトラ−メタクリレート、テトラメチレンジアクリレートまたはテトラメチレンジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミドまたはメチレンビスメタクリルアミド、ジメチレンビスアクリルアミドまたはジメチレンビスメタクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレンビスアクリルアミドまたはN,N’−ジヒドロキシエチレンビスメタクリルアミド、ヘキサメチレンビスアクリルアミドまたはヘキサメチレンビスメタクリルアミド、デカメチレンビスアクリルアミドまたはデカメチレンビスメタクリルアミド、ジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレートなど。有用な架橋剤としてはさらに、1,3−ビス(4−メタクリロイルオキシアルキル)テトラジシロキサンおよび米国特許第4,153,641号明細書に記載された同様のポリ(オルガノ−シロキサン)モノマーが挙げられる。有用な架橋剤の他の群は、共鳴の無いジ(アルキレン第三級アミン)環式化合物、例えば、米国特許第4,436,887号明細書に開示されたN,N’−ジビニルエチレン尿素である。さらに他の群は、エチレングリコールジビニルエーテルなどの二価もしくは多価アルコール類のジもしくはポリビニルエーテル類である。架橋剤は、存在する全モノマーの約0.1重量%から約20重量%の種々の量で使用できるが、約0.5重量%の量で存在することが好ましい。
【0027】
本発明のポリマー製造のための重合混合物は、一般にフリーラジカル開始剤を含む。開始剤は、熱開始剤または光開始剤であり得る。代表的な熱フリーラジカル開始剤としては、ベンゾフェノンペルオキシドなどのペルオキシド類、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネートなどのペルオキシカルボネート類、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾニトリル類などが挙げられる。好ましい開始剤は、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネートである。あるいは、モノマー類は、アクリルモノマー類の重合を開始できる波長の照射に対して透過性の容器または型の中で光重合させることができる。重合を促進させるために、従来の光開始剤化合物、例えば、ベンゾフェノンタイプの光開始剤を、導入することもできる。より長い波長の使用を可能にするために、光増感剤を導入することもできるが、人の身体または組織内での長期滞留またはそれらとの接触が意図されるポリマーを調製する場合、ポリマーから組織へ浸出し得る物質の存在を回避するために、ポリマー中の成分の数を最少に維持することが一般に好ましい。
【0028】
紫外線吸収材料を、本発明のポリマーに含むこともできる。このことは、本発明のポリマーから作製された眼内レンズの場合に特に重要であり、この場合、眼の天然水晶体と近似した吸光度を生じるように紫外線吸収材料の包含が意図される。紫外線吸収材料は、紫外線、すなわち約400nmよりも短い波長の光を吸収するが、実質的な量の可視光は吸収しない任意の化合物であり得る。紫外線吸収化合物は、重合混合物に組み入れられ、重合の際にポリマーマトリックスに取り込まれる。好適な紫外線吸収化合物としては、2−ヒドロキシベンゾフェノンなどの置換ベンゾフェノン類および2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類が挙げられる。モノマー類と共重合可能で、それによってポリマーマトリックスに共有結合する紫外線吸収化合物を使用することが好ましい。このようにして、本発明のポリマーから作製された製品から、例えばレンズから、紫外線吸収化合物が眼の内部へ浸出する可能性を最少にする。好適な共重合可能な紫外線吸収化合物は、米国特許第4,304,895号明細書に開示された置換2−ヒドロキシベンゾフェノン類および米国特許第4,528,311号明細書に開示された2−ヒドロキシ−5−アクリルオキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール類である。最も好ましい紫外線吸収化合物は、2−(3’−メタリル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールである。UV吸収剤は一般に、重合混合物中に存在する全モノマーの0.1〜5重量%の量で存在する。
【0029】
高エネルギーの青色光が、網膜を損傷する可能性があることも知られている。実際、ヒトの眼内レンズは、このような損傷を緩和する黄色色素を生じる。したがって、置換用眼内レンズを調製するために本発明のポリマーを使用する場合、青色光吸収化合物を本発明のポリマーに含ませてもよい。好適な共重合可能な青色光ブロック発色団は、例えば、米国特許第4,528,311号明細書および米国特許第5,470,932号明細書に記載されている。青色光吸収剤は一般に、存在する全モノマーの0.01〜0.5重量%の量で存在する。
【0030】
本発明の生体適合性ポリマーを製造する最終ステップにおいて、上記のとおり調製したポリマーを、高濃度にL−リシンを含有する溶液中で長時間インキュベートする。親水性ポリマー、すなわち、浸漬するとヒドロゲルを形成するポリマーに関して、溶液は、完全水性ベースであり得る。より疎水性で水和性の低いポリマー類に関しては、70%の水−30%のジメチルホルムアミド中のL−リシン溶液を利用する必要がある。例えば、ポリマーを、10%のL−リシン(遊離塩基)に室温で約72時間曝露させることができる。インキュベーション混合物のpHは、中性または塩基性である必要があり、理想的には、pHが約7と9との間であることに留意する。このインキュベーション中に、ポリマーは水和され、L−リシンが、共重合したスクシニル無水物と反応することにより、スクシニルイプシロン−リシルアミドが形成する。長時間のインキュベーションにより、ほぼ全ての無水物の官能基が、確実にアミド化され、まだ無水物基を含有する本発明のポリマーから作製されたレンズが、涙液に存在する一定の化合物に曝露された場合に眼に生じ得る問題が回避される。過剰の遊離L−リシンは、水溶液中でのインキュベーションにより最終的にポリマーから除去される。ステップ1のポリマー内およびポリマー表面上に、遊離アルファ−アミノカルボキシ官能基を有するイプシロン結合L−リシンを組み込むことにより、製品の生体適合性を大いに増強させる生物学的コーティングがポリマーに提供される。
【0031】
生体適合性ポリマーの上記の好ましい調製方法は、メチル化または非メチル化無水マレイン酸とエチレン様不飽和基もしくは開環可能な環構造を含有する第二のモノマーまたはさらなるモノマーとの共重合に基づいたイプシロン結合L−リシンを含んでなる。類似の方法は、置換または非置換のビニル無水フタル酸もしくはアクリル無水フタル酸、例えば、アクリロイル−2−アミド−無水フタル酸ならびにマレイニル−ジ−2−アミド無水フタル酸と第二のモノマーまたはさらなるモノマーとの共重合を含んでなる。本発明は、これの代替法、得られたポリマーおよびそれから製造された製品を含むことも考慮されている。本明細書に提供された好ましい方法とその製造物の詳細な説明は、変更すべき点を変更して後半の代替法およびその製造物に適用される。アクリロイル−2−アミド−無水フタル酸は、ジエチルエーテル中、と2−アミノ−無水フタル酸(CAS17011−53−9;Aldrich)によるアクリルクロリド(Fluka)のアミド化(60℃で1時間還流)、溶媒の蒸発、およびエタノールからの再結晶により調製することができる。マレイニル−ジ−2−アミド無水フタル酸は、出発物質としてマレイニルジクロリド(Merck)および2−アミノ−無水フタル酸(Aldrich)を用いて同様に調製することができる。
【0032】
本明細書に引用された参考文献は全て、それらの全体が援用されたものとして考える。本発明は、以下の実施例によりさらに詳述する。これらの実施例は、当業者への例示を目的として提供されており、請求項に記載された本発明の範囲を限定するものではない。したがって、本発明を、提供された実施例に限定されるものと解釈してはならず、本明細書に提供された教示の結果、明らかとなる任意の、また全ての変型を含むものと解釈すべきである。
【実施例】
【0033】
実施例1:ポリマーAの調製
無水マレイン酸(0.75g;Fluka Chemie AG, Buchs, Switzerlandから入手)およびN,N’−メチレン−ビス(アクリルアミド)(0.75g;Flukaから入手)を、攪拌下、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(60g;Alfa Chemicals Ltd., Binfield, UKから入手)に溶解させた。次にアゾビスイソブチロニトリル(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル))(15mg;Flukaから入手)を、溶液に加えた。混合物の10ml分割量を、ポリプロピレンチューブに加えた。チューブを、油浴中、95℃で10分間インキュベートした。重合したロッドをチューブから取り出し、3ミリメートル厚さのペレットに切断した。さらにこれらのペレットを、レンズ、一般的には永続的コンタクトレンズまたは眼内レンズに加工(圧延により)することができる。重合混合物は、1日使用または長期使用のコンタクトレンズ製造のために直接、型に分配することもできる。本発明のポリマー形成を完了させるために、ペレットを、L−リシンの10%水溶液中、室温で24時間インキュベートし、引き続きリン酸緩衝生理食塩水(50mMのリン酸ナトリウム、0.8%のNaCl、pH7.2)(PBS)中で48時間再平衡にした。
【0034】
実施例2:ポリマーBの調製
無水マレイン酸(15g;Flukaから入手)、N,N’−メチレン−ビス(アクリルアミド)(1.5g;Flukaから入手)およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(75mg;Flukaから入手)を、攪拌下、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(60g;Alfaから入手)に溶解した。次にアゾビスイソブチロニトリル(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル))(30mg;Flukaから入手)を、溶液に加えた。混合物の10ml分割量を、ポリプロピレンチューブに加えた。チューブを、油浴中、95℃で10分間インキュベートした。重合したロッドをチューブから取り出し、3ミリメートル厚さのペレットに切断した。本発明のポリマー形成を完了させるために、ペレットを、L−リシンの10%水溶液中、室温で24時間インキュベートし、引き続きPBS中で48時間再平衡にした。
【0035】
実施例3:ポリマーCの調製
無水マレイン酸(120g;Flukaから入手)、N,N’−メチレン−ビス(アクリルアミド)(3g;Flukaから入手)およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(75mg;Flukaから入手)を、攪拌下、メチルメタクリレート(60g;Flukaから入手)に溶解した。次にアゾビスイソブチロニトリル(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル))(15mg;Flukaから入手)を、溶液に加えた。混合物の10ml分割量を、ポリプロピレンチューブに加えた。チューブを、油浴中95℃で10分間インキュベートした。重合したロッドをチューブから取り出し、3ミリメートル厚さのペレットに切断した。本発明のポリマーを調製するために、ペレットを、水70%/ジメチルホルムアミド30%中10%のL−リシン溶液中、室温で24時間インキュベートした。引き続きペレットをPBS中で48時間再平衡させた。
【0036】
実施例4:ポリマーDの調製
以下の化学薬品:メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(47部)、N,N−ジメチルアクリルアミド(42部)、無水マレイン酸(10部)、メチルメタクリレート(8部)、ヒドロキシエチルメタクリレート(2部)、エチレングリコールジメタクリレート(1.5部)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(1部)を混合して透明溶液(全部で110g)を形成した。混合物の10ml分割量を、ポリプロピレンチューブに加えた。チューブを、油浴中、95℃で10分間インキュベートした。重合したロッドをチューブから取り出し、3ミリメートル厚さのペレットに切断した。本発明のポリマーを調製するために、ペレットを、L−リシンの10%水溶液中、室温で24時間インキュベートした。引き続きペレットをPBS中で48時間再平衡させた。
【0037】
実施例5:イプシロン結合L−リシンを含有する本発明のポリマーおよび対応するリシン非含有(従来の)ポリマーの生物学的分析の比較
驚くべきことに、本発明のポリマーは、高い生体適合性(または生体親和性)を有する。このことは、下表1に記載した種々のポリマーのスラブ上のヒト胚組織由来の一次線維芽細胞の増殖分析の比較から明白であった。代表的な実験からのデータを示す。
【0038】
【表1】

【0039】
ポリカーボネート製ペトリ皿(直径2cm)に挿入用の円形ポリマースラブを、以下のとおり調製した。2−ミリメートルのスペーサーにより分離された5−cmの長方形ガラスプレート対に、先の実施例で記載したポリマーA〜Dに関する重合混合物を充填し、適切な対照を提供するために、無水マレイン酸を欠いた対応混合物を充填した。重合のため、充填し、密封したガラスチャンバを40℃で5時間加熱し、80℃で6時間、後硬化させた。ガラスプレートから重合したスラブを取り出し,各々を、滅菌条件下、10%L−リシン(水または水/ジメチルホルムアミド中)(実施例1〜4を参照)100ml中、室温で24時間インキュベートした。引き続きスラブを、100mlの滅菌水で3回濯いだ。最後にスラブを、100mlのPBSと共に48時間インキュベートした。滅菌条件を維持しながら、長方形のスラブから円形スラブ(直径1.9cm)を切断し、2cmのペトリ皿に入れた。2.2g/lの重炭酸ナトリウムにより緩衝化させ、5%のウシ胎児血清、10%の熱不活化ウマ血清、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを添加した2mlのダルベッコー修飾イーグル培地を、滅菌皿に添加した。ヒト胚組織由来の一次線維芽細胞(スイス国バーゼル(Basel)大学病院から入手)を約5%の集密に接種した後、5%CO下、37℃で皿をインキュベートした。培地は、24時間毎に交換した。コラーゲン含有皿が集密になるまで実験を続けた。最後に、実験期間の終了時に取られた種々の培養物の写真分析から集密度(%で表す)を判定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離のアルファ−アミノ官能基およびカルボキシ官能基を有するイプシロン結合L−リシンを含んでなる生体適合性ポリマーを調製する方法であって、
(a)少なくとも2種のモノマーを含んでなる重合混合物であり、前記モノマーのうちの第一のモノマーが、2−メチル化、2,3−ジメチル化または非メチル化無水マレイン酸であり、前記モノマーのうちの第二のモノマーまたはさらなるモノマーが、少なくとも1つのエチレン様不飽和基を有する異なるモノマーであり、前記重合混合物が任意に、フリーラジカル開始剤および複数のエチレン様不飽和基を有する架橋剤のうちの1つまたは双方をさらに含む前記重合混合物を調製するステップと;
(b)重合を誘導するステップと;
(c)前記重合反応が完了したら、形成した前記ポリマーを、前記ポリマーに存在する実質的に全ての無水スクシニル基をアミド化するために、中性または塩基性条件下、L−リシンに曝露するステップと、
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記無水マレイン酸、前記2−メチル無水マレイン酸または前記2,3−ジメチル無水マレイン酸が、前記重合混合物中に約0.01重量%から0.25重量%の間の量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二のモノマーまたはさらなるモノマーが、アルファ−不飽和カルボン酸、ベータ−不飽和カルボン酸、N−ビニルラククタムまたは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のN−置換または非置換のヒドロキシアルキルエステルまたはヒドロキシアルキルアミドの親水性モノマーである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二のモノマーまたはさらなるモノマーが、アルキル、シクロアルキルまたはアリールアクリレートまたはアリールメタクリレート、モノ−またはジ置換イタコネート、スチレンまたはスチレン誘導体、アクリロニトリル、ビニルエステル、ビニルエーテル、アリルエステル、またはフッ素含有もしくはシリコン含有アクリレートあるいはメタクリレートの疎水性モノマーである請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第二のモノマーまたはさらなるモノマーが、ヒドロキシエチルメタクリレートとメチルメタクリレート、ビニルピロリドンとヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピロリドンとメチルメタクリレート、グリセラルメタクリレートとメチルメタクリレート、グリセリルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとヒドロキシアルキルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと2個から6個の炭素原子を有するアルキル基を持つアクリレート類、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとビニルヒドロキシアセテート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとビニルヒドロキシプロピオネート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとビニルヒドロキシブチレート、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN−ビニルラクタム類すなわちN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムおよびN−ビニルピペリドン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと0個から2個の炭素原子を有するアルキル基を持つN,Nジアルキルアミノエチルメタクリレート類およびアクリレート類、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと2個から4個の炭素原子を有するアルキル基を持つヒドロキシアルキルビニルエーテル類、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ2−ヒドロキシエチレン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ5−ヒドロキシ3−オキサペンタン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ8−ヒドロキシ3,6−ジオキサオクタン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1−ビニルオキシ14−ヒドロキシ3,6,9,12テトラオキサテトラデクタン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN―ビニルモルホリン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと0個から3個の炭素原子を有するアルキル基を持つN,Nジアルキルアクリルミド、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドと1個から2個の炭素原子を有するアルキル基を持つアルキルビニルケトン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN−ビニルスクシンイミドまたはN−ビニルグルタルイミド、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN−ビニルイミダゾール、およびヒドロキシエチルメタクリレートまたはジアセトンアシルアミドとN−ビニル3−モルホリノンからなる群から選択される、ヒドロゲルを形成できるモノマーの組み合わせを含んでなる請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記第二のモノマーまたはさらなるモノマーが、式
【化1】

の化合物であり、
式中:
Xは、HまたはCHであり;mは、0〜10であり;Yは、無し、O、SまたはNR(式中、Rは、H、CH、C2n+1(n=1〜10)イソ−OC、CまたはCHである)であり;Arは、非置換か、またはH、CH、C、n−C、イソ−C、OCH、C11、Cl、Br、CまたはCHで置換し得るベンゼンなどの任意の芳香族環である請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記第二のモノマーまたはさらなるモノマーが、2−エチルフェノキシアクリレート、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルチオフェニルアクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、2−エチルアミノフェニルアクリレート、2−エチルアミノフェニルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルアクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、3−プロピルフェノキシアクリレート、3−プロピルフェノキシメタクリレート、4−ブチルフェノキシアクリレート、4−ブチルフェノキシメタクリレート、4−フェニルブチルアクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、4−メチルフェニルアクリレート、4−メチルフェニルメタクリレート、4−メチルベンジルアクリレート、4−メチルベンジルメタクリレート、2−2−メチルフェニルエチルアクリレート、2−2−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−3−メチルフェニルエチルアクリレート、2−3−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−4−メチルフェニルエチルアクリレート、2−4−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルアクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルアクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルアクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルアクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ベンジルフェニル)エチルアクリレート、および2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレートからなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
さらなるモノマーが、親水性モノマーである請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記さらなるモノマーが、ヒドロキシエチルメタクリレートまたは請求項3に記載の前記親水性モノマーのうちの別のものである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第二のモノマーまたはさらなるモノマーが、エチレン様不飽和基、シロキシマクロマーまたはシクロシロキサンを含んでなるシリコン含有モノマーである請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
さらなるモノマーが、親水性モノマーである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記さらなるモノマーが、ヒドロキシエチルメタクリレートまたは請求項3に記載の前記親水性モノマーのうちの別のものである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記シリコン含有モノマーが、トリス(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシプロピルシラン(TRIS)、トリス(トリメチルシロキシ)プロピルビニルカルバメート、ポリ[ジメチルシロキシル]ジ[シリルブタノール]ビス[ビニルカルバメート]、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールメタクリレート、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールエチルメタクリレート、またはヘプタメチルトリシロキサニルエチルアクリレートである請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記重合混合物が、光増感剤、紫外線吸収化合物および青色光吸収化合物からなる群から選択される1つまたは複数の成分をさらに含む請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(a)少なくとも2種のモノマーを含んでなる重合混合物であり、前記モノマーのうちの第一のモノマーが、2−メチル化、2,3−ジメチル化または非メチル化無水マレイン酸であり、前記モノマーのうちの第二のモノマーまたはさらなるモノマーが、少なくとも1つのエチレン様不飽和基を有する異なるモノマーであり、前記重合混合物が任意に、フリーラジカル開始剤および複数のエチレン様不飽和基を有する架橋剤のうちの1つまたは双方をさらに含む前記重合混合物を調製するステップと;
(b)重合混合物をレンズ用の型に移し、その中で重合を誘導するステップと;
(c)前記重合反応が完了したら、次に前記型から前記レンズを取り出し、形成した前記レンズを、前記レンズに存在する実質的に全ての無水スクシニル基をアミド化するために、中性または塩基性条件下、L−リシンに曝露するステップと、
を含んでなる生体適合性コンタクトレンズを調製する方法。
【請求項16】
(a)少なくとも2種のモノマーを含んでなる重合混合物であり、前記モノマーのうちの第一のモノマーが、2−メチル化、2,3−ジメチル化または非メチル化無水マレイン酸であり、前記モノマーのうちの第二のモノマーまたはさらなるモノマーが、少なくとも1つのエチレン様不飽和基を有する異なるモノマーであり、前記重合混合物が任意に、フリーラジカル開始剤および複数のエチレン様不飽和基を有する架橋剤のうちの1つまたは双方をさらに含む前記重合混合物を調製するステップと;
(b)ロッドを製造するために、重合混合物を型に移し、その中で重合を誘導するステップと;
(c)前記重合反応が完了したら、前記の型から前記ロッドを取り出し、前記型を適切な厚さの切片に切断し、切片をレンズに圧延するステップと、
(d)前記レンズを、前記レンズに存在する実質的に全ての無水スクシニル基をアミド化するために、中性または塩基性条件下、L−リシンに曝露させるステップと、
を含んでなる生体適合性のコンタクトレンズまたは眼内レンズを調製する方法。
【請求項17】
前記無水マレイン酸、前記2−メチル無水マレイン酸または前記2,3−ジメチル無水マレイン酸が、前記重合混合物中に約0.01重量%から0.25重量%の間の量で存在する請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記第二のモノマーまたはさらなるモノマーが、請求項3〜13のいずれか一項に記載のモノマーか、またはモノマー類の組み合わせである請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法により調製された2,3−結合スクシニル−イプシロン−L−リシニルアミド、2−メチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドまたは2,3−ジメチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドを含んでなる生体適合性ポリマー。
【請求項20】
前記スクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドモノマー、2−メチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドモノマーまたは2,3−ジメチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドモノマーが、約0.02重量%から0.50重量%の間の量で存在する請求項19に記載のポリマー。
【請求項21】
紫外線吸収化合物および青色光吸収化合物のうちの1つまたは双方をさらに含んでなる請求項19または20に記載のポリマー。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか一項に記載の生体適合性ポリマーから作製されるか、または請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法に従って作製されるコンタクトレンズ。
【請求項23】
視覚部分または触覚部分が、請求項19〜21のいずれか一項に記載の生体適合性ポリマーから作製されるか、または請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法に従って作製される眼内レンズ。
【請求項24】
少なくとも2種の異なるモノマーを含んでなり、そのうちの1種が、スクシニル−イプシロン−L−リシニルアミド、2−メチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドまたは2,3−ジメチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドである生体適合性ポリマー。
【請求項25】
前記スクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドモノマー、2−メチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドモノマーまたは2,3−ジメチルスクシニル−イプシロン−L−リシニルアミドモノマーが、約0.02重量%から0.50重量%の間の量で存在する請求項24に記載のポリマー。
【請求項26】
紫外線吸収化合物および青色光吸収化合物のうちの1つまたは双方をさらに含んでなる請求項24または25に記載のポリマー。
【請求項27】
請求項24〜26のいずれか一項に記載のポリマーを含んでなるか、または請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法によって調製されるポリマーを含んでなるコンタクトレンズまたは眼内レンズ。

【公表番号】特表2013−517339(P2013−517339A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548379(P2012−548379)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000129
【国際公開番号】WO2011/085988
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(507389761)ヒェーミシェス・インスティトゥート・シェーファー・アクチェンゲゼルシャフト (4)
【氏名又は名称原語表記】CHEMISCHES INSTITUT SCHAEFER AG
【Fターム(参考)】