生分解性ヒドロゲルの滅菌
本発明は、照射を用いた生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの最終的な滅菌方法に関する。保護溶媒の存在が、ヒドロゲルの三次元特性及び物理化学特性が機能上保全されて無傷のままであることを確実なものにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
生分解性PEGベースヒドロゲルは、組織再生、創縫合や薬物送達等のさまざまな医療・医薬適用で重要である。安全の理由から、例えばドラッグデリバリーのような一部の応用では、PEGヒドロゲルに生分解性を付与することが強く望まれている。生分解性は、インビボ水性環境で自然又は酵素加水分解を受けるエステル結合によりヒドロゲルに導入され得る。
【背景技術】
【0002】
埋め込みあるいは局所適用が意図された医薬組成物又は医療デバイスの滅菌は、対応の市販製品としての認可を受けるためには必須である。さまざまな滅菌の方法、例えば加熱、加圧、濾過、化学薬品あるいは照射が提案されている。残念なこととして、これらの滅菌方法は、それらの方法がヒドロゲルの構造と特性を保持することとは両立できないため、生分解性PEGヒドロゲルには適用できない。つまり、生分解性PEGヒドロゲルの医療使用は限られている。
【0003】
例えば、注射液は、ほとんどの場合、オートクレーブ処理により注射液バイアル中で滅菌されるが、生分解性結合は、高温に曝された場合、劇的に加速された分解を受けるだろう。したがって、生分解性PEGヒドロゲルのオートクレーブ処理は、治療適用に向いていない前分解された物質をもたらすだろう。
【0004】
あるいは、微生物汚染物質を除去するために、溶液はポアサイズが0.2μmのフィルターを用いて濾過により滅菌され、続いてその滅菌溶液が無菌条件下でバイアルの中に充填され得る。しかしながら、不溶性架橋PEGヒドロゲルの場合、この材料は不溶なので、微小粒子の懸濁液の形態で、あるいは典型的にはサイズが0.2μmより大きい他の三次元物体(例えば、ディスクあるいはチューブ)として存在し得るので、このような懸濁液又はゲル物体は濾過によっては滅菌され得ないのである。
【0005】
国際特許出願である(特許文献1)は、滅菌微小粒子の調製ができる閉鎖循環式装置を記載している。フィルター滅菌された各化学薬品成分は粒子形成過程の全体を通して系の無菌環境内に滅菌保持され、結果として滅菌微小粒子がもたらされる。
【0006】
出発原料の段階で滅菌濾過工程を適用してその処理の間中無菌状態を維持するような無菌処理は、ヒドロゲル合成後滅菌(最後滅菌と呼ばれる)に比較するといくつかの欠点を有している。製造過程で滅菌工程が現れるのが早ければ早いほど、突発的な汚染のリスクは高くなる。無菌処理はまた精巧な専用の装置を必要とし、結果として製造コストが高くなる。したがって、最後滅菌法が好ましい。
【0007】
高分子のUV光あるいはガンマ線照射での光分解は、ラジカル及び/又はイオンを発生し、これは多くの場合開裂や架橋をもたらす。光への曝露は酸素の不存在下ではめったにないので、酸化も起こり、状況を複雑にしている。一般には、これらのことはヒドロゲルの特性並びに材料の生分解に対する感受性を変える(非特許文献1)。
【0008】
エチレンオキサイドガスあるいは過酸化水素含有溶液での処理は同じような副反応を引き起こしてヒドロゲルの生分解特性に悪影響を及ぼし、処理済ヒドロゲル材料の未処理ヒドロゲル材料に比較しての分解速度の相当な偏移を引き起こすだろう。加えて、有毒であって望ましくない副作用を引き起こし得る、例えばエチレンオキサイドの有意な量がヒドロゲル中に残っていないことを確実にするための配慮がなされなければならない。
【0009】
最後滅菌に伴う困難を回避するために、架橋と滅菌の工程が組み合わせられたことがある。(特許文献2)は、ガンマ線照射による架橋PEGヒドロゲルの作製方法を詳述している。この方法では、線状PEG(MW200kDa)が生理食塩水に溶解され、脱気されてCo60等のガンマ線源で照射された。2.5〜25Mrad(25〜250kGyに相当)の線量がラジカル形成並びに鎖間連結によるPEG鎖の架橋をもたらすのに十分であって、結果として水和された不溶性ヒドロゲルがもたらされた。この照射線量は滅菌にも十分高いという事実から、1工程で、眼の角膜の中に埋め込むのに適している材料が得られた。
【0010】
同様に、米国特許出願である(特許文献3)は、クロスリンカー及び有機溶媒の存在下にUV及び/又はガンマ線照射によって架橋される、ポリアルキレンオキシド、ポリアリーレンオキシド、又はポリグリシジルエーテルをベースとする、電子デバイスに用いられるための架橋高分子ゲルの形成方法を詳述している。
【0011】
医薬の送達のような、他の適用では、PEGヒドロゲルが生分解性であることが望ましい。(特許文献4)は、ガンマ線照射による分解性PEGヒドロゲルの作製方法を詳述している。この方法では、生分解性エステル連結を介して接続された線状PEG鎖が用いられている(MW10kDa)。25又は30kGyでの照射は鎖間架橋並びに不溶性PEGヒドロゲルを形成した。
【0012】
また、UV又はガンマ線照射PEGヒドロゲル中の架橋の度合いを変化させることによって薬物放出速度を調節することも試みられた(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)。とはいっても、この試みでは、照射処理の間中の薬物の存在は薬物の取り込みをもたらすために必要とされているが、高分子鎖への酸化又は加水分解あるいは共役化のような照射が誘発する副反応の可能性が、この方法をほとんどの治療用要素にとって実行不可能なものにしている。
【0013】
また、照射は、膨潤や粗さのようなPEGベースヒドロゲルの他の特性に影響を及ぼすことも示されている(非特許文献7)。
【0014】
文献ではさまざまなPEGベースヒドロゲルが記載されている。例えば、(特許文献5)は、プロドラッグの高分子ヒドロゲル複合体を記載しており、このヒドロゲルは生分解性の結合を含んでいるクロスリンカーによって相互接続された非生分解性骨格部分から構成されている。
【0015】
欧州特許出願である(特許文献6)は、特徴的な後期爆発的分解速度を有するPEGベースヒドロゲルを記載している。
【0016】
PEG部分のみからなるヒドロゲルが欧州特許である(特許文献7)に記載されている。このヒドロゲルには分解を可能にするために加水分解不安定性結合が組み込まれている。この特許はそのようなヒドロゲルの薬物送達系としての使用も特許請求している。
【0017】
(特許文献8)は、特に、診断用標識物質を、単独又は治療用薬物との組み合わせで含有していて良いPEGベースヒドロゲルを記載している。同様に、(特許文献9)は、インビボ注射され得る生物活性剤を含有している、PEG−キトサンヒドロゲルを記載している。PCT出願である(特許文献10)は、薬物送達デバイスとしてあるいは他の生医学利用で用いられるカルバマート架橋を有するポリ(エチレンオキシド)含有ヒドロゲルを開示している。
【0018】
上記で述べたヒドロゲルは、すべて滅菌を必要とする適用に用いられることを意図しているが、上述の問題はこれらの特許又は特許出願によっては対処されておらず、これが産業へのそれらの適用性を限定している。
【0019】
ヒドロゲル滅菌における不十分な点の結果として、不溶性架橋生分解性PEGベースヒドロゲルはそのままではまだ認可されておらず、投与後in situでヒドロゲルを形成する前駆体組成物としてのみ認可されている(Corgel(商標)BioHydrogel、Focal(登録商標)Technology)。したがって、汚染に敏感な応用に際してヒドロゲルを十分利用するためには、コスト効率的且つ保全的な方法でヒドロゲルを最後滅菌するための手段を提供するというニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2003/035244号
【特許文献2】米国特許第5,634,943号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0030102号明細書
【特許文献4】米国特許第6,537,569号明細書
【特許文献5】国際公開第2006/003014号
【特許文献6】欧州特許第09167026.5号明細書
【特許文献7】欧州特許第1019446号明細書
【特許文献8】米国特許5,514,379号明細書
【特許文献9】米国特許6,602,952号明細書
【特許文献10】国際公開第2006/38462号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Encyclopedia of Polymer Science and Technology, Mark Herman (Ed) Wiley, 2004, p. 263 ff
【非特許文献2】Minkova et al., J. Polym. Sci., Polym. Phys. 27 (1989) 621-642
【非特許文献3】Belcheva et al., Macromol. Symp. 103 (1996) 193
【非特許文献4】Rosiak and Yoshii, Nuclear Instruments and Methods/Physics research B 151 (1999) 56-64
【非特許文献5】Rosiak and Ulansky, Radiation Physics and Chemistry 55 (1999) 139-151
【非特許文献6】Dimitrov et al., Acta Pharmaceutica Turcica 46 (2004) 49-54
【非特許文献7】Kanjickal et al, J Biomed Mater Res A. 2008 Jan 9 - Effects of sterilization on poly(ethylene glycol) hydrogels
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
すなわち、本発明の目的は、欠点を少なくとも一部克服するための、また上記に記載したニーズを満たすための不溶性の生分解性PEGベースヒドロゲルの代替滅菌方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的は、加水分解性結合により相互接続されている骨格部分を含む生分解性ポリ(エチレングリコール)ベース不溶性ヒドロゲルの滅菌方法であって、次の工程
(a)ヒドロゲルを準備する工程;
(b)このヒドロゲルを保護溶媒又は2種もしくはそれ以上の保護溶媒の混合物又はそれらの水溶液に溶媒和させる工程;
(c)溶媒和したヒドロゲルにガンマ線照射を行う工程;
を含む方法によって達成される。
【0024】
この度、意外なこととして、予め形成された生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは、ガンマ線の照射が、保護溶媒(好ましくはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、DMA、DMF又はDMI、より好ましくはNMP)の存在下に行われる場合は、不安定性生分解結合への損傷なしに、したがって安定結合への損傷も全くなしに且つ架橋を引き起こすこともなしにガンマ線照射によって滅菌され得ることを見出した。
【0025】
特に、本発明によるそのような照射された不溶性生分解性PEGヒドロゲルのインビトロ分解速度は、照射されていないPEGヒドロゲルのインビトロ分解速度に等しいものであった。さらには、そのような照射された不溶性生分解性PEGヒドロゲルは、なお十分に生分解性であった。もしラジカル生成による鎖間架橋が形成されていたとすると、分解速度は影響を受けていたであろうし、また、不溶性生分解性PEGヒドロゲル分解過程はもっとゆっくりしたものであろうし、分解曲線はフラットであろうし、分解も完結まで至らなかったであろう。
【0026】
不溶性生分解性PEGベースヒドロゲルが官能性の基を含有している場合、そのような基は、滅菌後もなお官能性である。
【0027】
本発明において使われている用語は以下の通りの意味を有している。
【0028】
ヒドロゲルとは、大量の水を取り込むことができる三次元の、親水性もしくは両親媒性高分子網目構造体と定義され得る。この網目構造体は、ホモポリマー又はコポリマーからなり、化学的な共有結合もしくは物理的(イオン、疎水相互作用、絡み合い)架橋が存在することから不溶である。この架橋により網目構造及び物理的一体性がもたらされる。
【0029】
本明細書において理解される用語「PEGベースヒドロゲル」(PEGヒドロゲル)は、ヒドロゲル中のPEG鎖の質量割合が、ヒドロゲルの全体重量を基準にして、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも25%であることを意味している。残りの部分は、他の高分子及び他の部分構造から構成され得る。
【0030】
用語「高分子」は、合成もしくは生物由来又は両者の組み合わせであり得る、線状、環状、分岐状、架橋もしくは樹枝型分岐状又はこれらの組み合わせによる化学結合により接続された繰り返し構造単位からなっている分子を表す。例として、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリラート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アルキルオキシ)ポリマー、ポリ(アミド)、ポリ(アミドアミン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(アスパルトアミド)、ポリ(酪酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カーボナート)、ポリ(シアノアクリラート)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(エステル)、ポリ(エチレン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリラート)、ポリ(ヒドロキシエチルオキサゾリン)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリラート)、ポリ(ヒドロキシプロピルオキサゾリン)、ポリ(イミノカーボナート)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(メタクリラート)、ポリ(メチルオキサゾリン)、ポリ(プロピレンフマラート)、ポリ(オルガノホスファゼン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(シロキサン)、ポリ(ウレタン)、ポリ(ビニルアルコホール)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルピロリドン)、シリコーン、リボ核酸、デゾキシ核酸、アルブミン、これらの抗体及び断片、血漿蛋白、コラーゲン、エラスチン、ファシン、フィブリン、ケラチン、ポリアスパルタート、ポリグルタマート、プロラミン、トランスフェリン、シトクロム、フラボプロテイン、グリコプロテイン、ヘモプロテイン、リポプロテイン、メタロプロテイン、フィトクロム、ホスホプロテイン、オプシン、カンテン、アガロース、アルギナート、アラビナン、アラビノガラクタン、カラギーナン、セルロース、カルボメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース並びに他の炭水化物ベース高分子、キトサン、デキストラン、デキストリン、ゼラチン、ヒアルロン酸及び誘導体、マンナン、ペクチン、ラムノガラクツロナン、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、キシラン、並びにこれらのコポリマー及び機能性誘導体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0031】
滅菌ヒドロゲルに関しての「無傷」とは、不安定な生分解性結合に損傷がなかったこと及びしたがって安定な結合にも損傷がなかったこと並びに滅菌化の間に検出可能なさらなる架橋も起こらなかったことを意味する。ヒドロゲルの「無傷度」は、本発明に従って滅菌された生分解性PEGベースヒドロゲルのインビトロ分解速度により測定することができ、滅菌されていない生分解性PEGヒドロゲルのインビトロ分解速度にそれが同じである度合いである。さらには、照射されたそのような生分解性PEGヒドロゲルは、なお十分に生分解性である。もしラジカル生成による鎖間架橋が形成されていたとすると、分解速度は影響を受けていたであろうし、したがってPEGヒドロゲル分解過程はもっとゆっくりしたものであろうし、分解曲線はフラットであろうし、分解も完結まで至らなかったであろう。もし鎖の切断が起こると、PEGヒドロゲル分解過程は加速されるだろう。2つの分解速度に関しての用語「等しい」は、X%の分解を得るのに必要とされる時間が2つの分解速度間で20%以上、好ましくは15%以上変わらないことを意味する(ここで、Xは5〜90の範囲内にあるものとする)。
【0032】
生分解性PEGベースヒドロゲルが官能基を含有している場合、それらの官能基は保全される。例えば、官能基がアミン基である場合、PEGベースヒドロゲルのアミン含有量は滅菌前と滅菌処理後で同じである。好ましくは、この文脈での用語「同じ」は、本発明に従って滅菌されたヒドロゲル中の官能基の数が滅菌前のヒドロゲル中の官能基の数から30%未満、好ましくは20%未満だけ変わることを意味する。
【0033】
分解速度を測定するためには、不溶性生分解性PEGベースヒドロゲルから可溶骨格分解生成物のアリコートを分離して、そのヒドロゲルから脱離された他の可溶分解生成物からの干渉なしに定量することができる。沈殿又は遠心によりヒドロゲル物体は生理浸透圧の緩衝液の過剰水と分離され得る。遠心は、上澄み液が膨潤ヒドロゲルの体積の少なくとも10%を占めるようなやり方で行われ得る。そのような沈殿又は遠心工程の後は可溶ヒドロゲル分解生成物は水性上澄み液中に残り、1種又はそれ以上の骨格部分を含んでいる水可溶分解生成物はそのような上澄み液のアリコートを適する分離及び/又は分析方法に付することによって検出できる。
【0034】
別法として、水可溶分解生成物は0.45μmフィルターを通す濾過により水不溶性分解生成物から分離することができ、この後、その水可溶分解生成物は通過流中に見出され得る。水可溶分解生成物は遠心と濾過処理の組み合わせによっても水不溶性分解生成物から分離され得る。
【0035】
例として、骨格部分は、他の分解生成物がUV吸収を呈さない波長でUV吸収を呈する基を有し得る。そのような選択的UV吸収基は、アミド結合等の骨格部分の構造成分であり得るし、あるいはインドリル基等の芳香族環系を用いてその反応性官能基に結合させることによって骨格に導入されたものであり得る。
【0036】
薬物のインビボ物理化学又は薬理速度特性を向上させるためには、そのような薬物は、担体(例えば、ヒドロゲル)と複合体化され得る。薬物が担体及び/又はリンカーに一時的に結合されている場合、そのようなシステムは一般に担体連結プロドラッグとして分類される。IUPACによって提供されている定義(http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac.medchemに掲載、2009年7月22日にアクセス)によれば、担体連結プロドラッグとは、改善された物理化学又は薬理速度特性をもたらし且つ一般には加水分解開裂によって容易にインビボ除去され得る一時的担体基と所与の活性物質との仮の連結を含有しているプロドラッグである。
【0037】
用語「薬物」、「生物活性分子」、「生物活性部分」、「生物活性剤」、「活性剤」等は、限定するものではないがウイルス、細菌、菌類、植物、動物、及びヒトを含めた、生物有機体の任意の物理又は生化学特性に影響を及ぼすことができるあらゆる物質を意味する。特に、本明細書で使われる場合、生物活性分子には、ヒト又は他の動物における病気を診断、治療、軽減、処置、又は予防することが意図された、あるいはそうでなければヒト又は動物の身体又は精神の健康状態を高めることが意図されたあらゆる物質が包含される。生物活性分子の例としては、限定するものではないが、ペプチド、蛋白、酵素、小分子ドラッグ(例えば、非ペプチドドラッグ)、染料、脂質、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、細胞、ウイルス、リポソーム、微小粒子及びミセルが挙げられる。本発明で用いるのに適している生物活性剤の類としては、限定するものではないが、催眠薬及び鎮静薬、精神高揚薬、精神安定薬、呼吸器ドラッグ、抗痙攣薬、筋弛緩薬、抗パーキンソン作用薬(ドーパミン拮抗薬)、鎮痛薬、抗炎症薬、抗アレルギー薬、抗不安薬(不安緩解剤)、食欲抑制剤、肥満防止薬、抗片頭痛薬、筋肉収縮剤、抗感染症薬(抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌薬、抗菌薬、ワクチン)、抗炎症薬、抗関節炎薬、抗マラリア薬、制吐剤、抗癲癇薬、抗糖尿病薬、気管支拡張薬、サイトカイン、成長因子、抗がん剤、抗凝固剤、抗高血圧薬、心血管薬、血管拡張薬、血管収縮薬、抗不整脈薬、抗酸化薬、反喘息薬、中枢神経系活性剤、避妊薬を含めたホルモン剤、免疫調節剤、交感神経興奮薬、利尿薬、脂質調節薬、抗アンドロゲン剤、抗寄生虫薬、抗凝固薬、新生物、抗新生物薬、低血糖薬、ステロイド薬、栄養剤及び補助食品、成長補助食品、抗腸炎剤、ワクチン、抗体、診断薬、対照用剤等が挙げられる。
【0038】
「小分子生物活性部分」とは、分子量が3000Dalton以下の上記に記載した生物活性部分のことをいう。
【0039】
本発明による方法に合ったヒドロゲルの生分解性は、加水分解性結合の導入によって達成される。
【0040】
本発明の文脈内での用語「生分解性」とは、生理条件(pH7.4、37℃にある水性緩衝液)下で1時間〜3ヶ月の半減期で非酵素的に加水分解で分解される連結を指し、これには、限定するものではないが、アコニチル、アセタール、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、イミン、ヒドラゾン、マレアミド酸アミド、オルトエステル、ホスホアミド、ホスホエステル、ホスホシリルエステル、シリルエステル、スルホン酸エステル、芳香族カルバマート、これらの組み合わせ他が挙げられる。好ましい生分解性連結は、カルボン酸エステル、カーボナート、ホスホエステル及びスルホン酸エステルであり、最も好ましいのはカルボン酸エステル又はカーボナートである。インビトロ研究には、例えば、pH9、37℃、水性緩衝液のような加速条件が実用的な目的のために用いられ得ることは理解されるところである。
【0041】
つまり、加水分解性結合は、例えば、アコニチル、アセタール、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、イミン、ヒドラゾン、マレアミド酸アミド、オルトエステル、ホスホアミド、ホスホエステル、ホスホシリルエステル、シリルエステル、スルホン酸エステル、芳香族カルバマート、これらの組み合わせ等である。好ましい加水分解性結合は、カルボン酸エステル、カーボナート、ホスホエステル及びスルホン酸エステルであり、最も好ましいのはカルボン酸エステル又はカーボナートである。
【0042】
用語「中断された」は、尿素、アミド、又はカルバマート基もしくはエーテルが炭素鎖の2つの炭素間に挟み込まれていることを意味する。
【0043】
「非生分解性」(安定)とは、非開裂性の永久結合である連結のことをいい、それぞれの接続部分が生理条件(pH7.4、37℃にある水性緩衝液)下で少なくとも6ヶ月の半減期を有していることを意味する。
【0044】
「徐放送達システム」とは、長期間に亘って患者の身体に薬物を放出する組成物のことをいう。
【0045】
「外科用密閉剤」又は「医用密閉剤」とは、ヒドロゲルベースの接着剤並びに切り口、破傷、穿刺、擦過傷、挫傷や剥離のような、創傷を密閉するためのその他の手段のことをいう。
【0046】
「止血剤」とは、創傷からの出血を停止させるのに使われる作用剤のことをいう。
【0047】
「手術用スポンジ」とは、手術部位からの液体を吸収するのに使われるスポンジを意味する。
【0048】
ガンマ線照射は、その照射源に関係なく、200keVより大きい量子エネルギーでの電磁照射と定義されている。好ましくは、照射源は、コバルト60である。
【0049】
「滅菌」とは、あらゆる成長段階並びに形態にある、細菌、酵母、真菌、ウイルス、胞子を含めた、検出可能な伝染性外的病原因子が存在しないことを意味する。
【0050】
「滅菌処理」とは、例えば照射(例えばUVあるいはガンマ線での照射)により材料を滅菌にするための処理のことをいう。好ましくは、ガンマ線での照射が用いられる。
【0051】
「保護溶媒」は、三次元構造及び物理化学特性を保全するために、つまりヒドロゲルが無傷であることを保全するために滅菌前に乾燥ヒドロゲルを溶媒和させるのに用いられる化学薬品化合物を表している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1a】pH10.3、37℃における4aの滅菌後インビトロ分解速度を、3a(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1b】pH10.3、37℃における4bの滅菌後インビトロ分解速度を、3a(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1c】pH10.3、37℃における4cの滅菌後インビトロ分解速度を、3a(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1d】pH10.3、37℃における4dの滅菌後インビトロ分解速度を、3a(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1e】pH10.3、37℃における4eの滅菌後インビトロ分解速度を、3a(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1f】pH9.0、37℃における4fの滅菌後インビトロ分解速度を、3b(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1g】pH9.0、37℃における4gの滅菌後インビトロ分解速度を、3b(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1h】pH9.0、37℃における4hの滅菌後インビトロ分解速度を、3b(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1i】pH9.0、37℃における4iの滅菌後インビトロ分解速度を、3b(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1j】pH9.0、37℃における4jの滅菌後インビトロ分解速度を、3b(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1k】pH9.0、37℃における4kの滅菌後インビトロ分解速度を、3b(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図2】pH9.0、37℃における6の滅菌後インビトロ分解速度を、5(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0054】
本発明は、ヒドロゲルを無傷に保持する保護溶媒の存在下に照射によって生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルを滅菌する方法に関する。本発明に従って滅菌された生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは、同じ分解速度を有しており且つ十分に分解性であるが、このことは不安定な生分解性結合に損傷がないこと、したがって安定結合への損傷も起こっていないこと、さらには望ましくない架橋も起こっていないこと、つまりヒドロゲルが無傷であることが保全されることを意味している。本発明に従って滅菌された生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルが反応性の官能基を含有している場合、そのような基の官能性も保全される、すなわち基はそのまま保全される。そのような反応性官能基は、アフィニティーリガンド、キレート基、ドラッグ、プロドラッグ、担体連結プロドラッグ他を直接又は間接的に連結するための結合ポイントとして役立ち得る。そのような反応性官能基の非限定的な例としては、限定するものではないが、カルボン酸及び活性化誘導体、アミノ、マレイミド、チオール、スルホン酸及び誘導体、カーボナート及び誘導体、カルバマート及び誘導体、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン、イソシアナート、イソチオシアナート、リン酸及び誘導体、ホスホン酸及び誘導体、ハロアセチル、ハロゲン化アルキル、アクリロイル及び他のα−β不飽和マイケル受容体、アリールフルオリドのようなアリール化剤、ヒドロキシルアミン、ピリジルジスルフィドのようなジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ジアゾアルカン、ジアゾアセチル化合物、エポキシド、オキシラン、及びアジリジン;好ましくはカルボン酸及び活性化誘導体、アミノ、チオール、スルホン酸及び誘導体、カーボナート及び誘導体、カルバマート及び誘導体、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン、イソシアナート、イソチオシアナート、リン酸及び誘導体、ホスホン酸及び誘導体、ハロアセチル、ハロゲン化アルキル、アリールフルオリドのようなアクリロイルアリール化剤、ヒドロキシルアミン、ピリジルジスルフィドのようなジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、オキシラン、及びアジリジンが挙げられる。好ましい反応性官能基としては、チオール、マレイミド、アミノ、カルボン酸及び誘導体、カーボナート及び誘導体、カルバマート及び誘導体、アルデヒド、及びハロアセチルが挙げられ、より好ましくはチオール、アミノ、カルボン酸及び誘導体、カーボナート及び誘導体、カルバマート及び誘導体、アルデヒド、及びハロアセチルが挙げられる。好ましくは、反応性官能基は、一級アミノ基又はカルボン酸、最も好ましくは一級アミノ基である。
【0055】
一実施形態では、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの反応性官能基は保護基で保護されているが、これは滅菌後に脱離される。
【0056】
本発明に従って滅菌されたPEGベース不溶性ヒドロゲルは、例えば、再生医療、皮膚再生、眼内デバイス、医用埋め込み剤、外科用密閉剤及びスポンジ、止血剤、徐放送達システム、医用画像化剤及びプロドラッグ担体のような、滅菌が有益であるあるいは必要とされているあらゆる適用で用いられ得る。好ましい使用は、徐放送達システム及びプロドラッグ担体としてであり、最も好ましいのはプロドラッグ担体としてである。予め形成された三次元ヒドロゲルは保護溶媒の存在下に又は2種又はそれ以上の保護溶媒の混合物もしくはこれらの水性溶液中で照射により滅菌され、滅菌ヒドロゲルは続いて場合により、例えば、例えばペプチド、プロテイン又は小分子のような生物活性部分を持ち得る。そのような生物活性部分はヒドロゲルには安定なスペーサー部分を介して又は分解性リンカー部分を介して連結され得る。
【0057】
代替の実施形態では、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは、最初に小分子生物活性部分が搭載され、その後保護溶媒の存在下に又は2種又はそれ以上の保護溶媒の混合物もしくはそれらの水性溶液中で照射により滅菌される。
【0058】
本発明による滅菌に適しているPEGベース不溶性ヒドロゲルはさまざまな形状のものであり得るが、そのようなものとしては、限定するものではないが、無定形、球形、水晶形、フラット形(例えばフィルムでの)又は管形のヒドロゲルが挙げられる。好ましい実施形態では、PEGベース不溶性ヒドロゲルは、粒子直径が1〜1000ミクロン、好ましくは10〜100ミクロンの球形微小粒子からなっている。
【0059】
本発明による滅菌に適しているPEGベース不溶性ヒドロゲルは、分解性結合で相互接続された骨格部分からできている。場合によっては、この骨格部分は、骨格とは分解性結合を介して繋ぎ合わされていて、さらに分解性結合をもち得る、オリゴマー、高分子又は低分子量架橋部分を通して架橋されているものであり得る。場合により、骨格部分は、以下(リガンド、キレート基、スペーサー分子、ブロック基)のうちの1つ又はそれ以上への永久連結をもち得る。
【0060】
本発明の一実施形態ではヒドロゲルは以下の組成を有している。
【0061】
生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは、加水分解性結合により相互接続された骨格部分からできている。好ましくは、その骨格部分は、1kDa〜20kDa、より好ましくは1kDa〜15kDaの範囲内にある分子量を有している。
【0062】
好ましくは、この生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルにおいては、骨格部分は、相互接続された生分解性官能基及び反応性官能基からなる、多くある官能性基を特徴としている。好ましくは、相互接続された生分解性基と反応性官能基の和は16以上、好ましくは16〜128(20〜100好ましい、20〜40も好ましい、24〜80より好ましい、28〜32もより好ましい、30〜60さらにより好ましい)であり;最も好ましいのは30〜32である。この相互接続された官能基及び反応性官能基に加えて保護基も存在し得ることは理解されるところである。
【0063】
この官能基は、線状鎖に結合されたものであり得る。この場合、官能基は、鎖に沿って規則的に又は不規則的に間隔を置いて配置されたものであり得るし、あるいは別形態としては、この鎖は、官能基の全体をもたらしている、2つの樹枝状部分で終端されたものであり得る。
【0064】
優先的に、骨格部分は、少なくとも3つのPEGベース高分子鎖を延ばしている、分岐コアを有していることを特徴としている。そのような分岐コアは、結合形態で、ポリ−又はオリゴ−アルコール、好ましくはペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、ヘキサグリセリン、スクロース、ソルビトール、フルクトース、マンニトール、グルコース、セルロース、アミロース、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、ポリビニルアルコホール、デキストラン、ヒアルロナンを含んだものであり得るし、あるいは分岐コアは、結合形態で、オルニチン、ジアミノ酪酸、トリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシン、オクタリシン、ノナリシン、デカリシン、ウンデカリシン、ドデカリシン、トリデカリシン、テトラデカリシン、ペンタデカリシン又はオリゴリシン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミンのようなポリ−又はオリゴ−アミンを含んだものであり得る。好ましくは、分岐コアは、結合形態で、トリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシン、オクタリシン、ノナリシン、デカリシン、ウンデカリシン、ドデカリシン、トリデカリシン、テトラデカリシン、ペンタデカリシン又はオリゴリシン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミンのようなポリ−又はオリゴ−アミンを含んだものであり得る。
【0065】
好ましくは、この分岐コアは、3〜16のPEGベース高分子鎖を延ばしている(より好ましくは4〜8)。
【0066】
骨格部分の相互接続された官能基と反応性官能基の和は、この分岐コアから延びているPEGベース高分子鎖の数だけ等しく分けられている。分岐コアから延びているPEGベース高分子鎖の数が均等な分布を可能としない場合は、PEGベース高分子鎖1本当たりの相互接続された官能基と反応性官能基の和の平均数からの逸脱が最小に保たれることが好ましい。
【0067】
より好ましくは、骨格部分の相互接続された官能基と反応性官能基の和は、分岐コアから延びているPEGベース高分子鎖の数だけ均等に分けられている。例として、32個の相互接続された官能基と反応性官能基がある場合、8個の基が、そのコアから延びている4PEGベース高分子鎖のそれぞれによって、好ましくは各PEGベース高分子鎖の終端に結合された樹枝状部分によってもたらされ得る。別形態としては、4個の基がコアから延びている8PEGベース高分子鎖のそれぞれによってあるいは2個の基が16PEGベース高分子鎖のそれぞれによってもたらされ得る。
【0068】
骨格部分に好適な分岐コアから延びている対応するPEGベース高分子鎖の好ましい構造は、例としてであるが、JenKem Technology,USAのプロダクトリスト(2009年7月28日にwww.jenkemusa.comからダウンロードによりアクセス)に詳述されている、4ARM−PEG Derivatives(ペンタエリトリトールコア)、8ARM−PEG Derivatives(ヘキサグリセリンコア)及び8ARM−PEG Derivatives(トリペンタエリトリトールコア)のようなmulti−arm(多腕)PEG誘導体である。最も好ましいのは、4arm PEG Amine(ペンタエリトリトールコア)及び4arm PEG Carboxyl(ペンタエリトリトールコア)、8arm PEG Amine(ヘキサグリセリンコア)、8arm PEG Carboxyl(ヘキサグリセリンコア)、8arm PEG Amine(トリペンタエリトリトールコア)、及び8arm PEG Carboxyl(トリペンタエリトリトールコア)である。骨格部分中のそのような多腕PEG誘導体の好ましい分子量は、1kDa〜20kDa、より好ましくは2.5kDa〜15kDa、なおより好ましくは5kDa〜10kDaである。このような試薬はヒドロゲル中には結合形態で存在していることは理解されるところである。
【0069】
そのようなさらなる官能性の基は樹枝状部分によってもたらされ得る。好ましくは、それぞれの樹枝状部分は、0.4kDa〜4kDa、より好ましくは0.4kDa〜2kDaの範囲内の分子量を有している。好ましくは、それぞれの樹枝状部分は、少なくとも3分岐及び少なくとも4反応性官能基、且つ多くて63分岐及び64反応性官能基を有しており、少なくとも7分岐及び少なくとも8反応性官能基且つ多くて31分岐及び32反応性官能基が好ましい。
【0070】
そのような樹枝状部分の例は、結合形態のトリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシン、オクタリシン、ノナリシン、デカリシン、ウンデカリシン、ドデカリシン、トリデカリシン、テトラデカリシン、ペンタデカリシン、ヘキサデカリシン、ヘプタデカリシン、オクタデカリシン、ノナデカリシンである。好ましいそのような樹枝状部分の例には、結合形態のトリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシンが含まれる(最も好ましいのはトリリシン、ペンタリシン又はヘプタリシン)。
【0071】
最も好ましくは、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは、その骨格部分が式C(A−Hyp)4で表される四級炭素を有していることを特徴としていることであって、この式においてはそれぞれのAは独立にその四級炭素に永久共有結合で終端結合されたポリ(エチレングリコール)ベース高分子鎖であり、このPEGベース高分子鎖の遠位終端は樹枝状部分Hypに共有結合されており、それぞれの樹枝状部分Hypは相互接続された生分解性官能基と反応性官能基を代表する少なくとも4個の官能性の基並びに永久結合を有している。それぞれの骨格部分は、少なくとも16個の相互接続された生分解性官能基及び反応性官能基並びに永久結合、好ましくは20〜64、より好ましくは28〜64個の相互接続された生分解性官能基及び反応性官能基並びに永久結合を含有している。
【0072】
好ましくは、それぞれのAは、式−(CH2)n1(OCH2CH2)nX−[式中、n1は1又は2であり;nは5〜50の範囲内の整数であり;XはAとHypを共有連結している官能基である]から独立に選択される。
【0073】
好ましくは、AとHypとは、アミド官能基により共有連結されている。
【0074】
好ましくは、樹枝状部分Hypは、超分岐ポリペプチドである。好ましくは、この超分岐ポリペプチドは、結合形態のリシンからなっていて、最も好ましくはHypはウンデカリシニル又はヘプタリシニルである。好ましくは、それぞれの樹枝状部分Hypは、0.4kDa〜4kDaの範囲内の分子量を有している。骨格部分C(A−Hyp)4は同じ又は異なる樹枝状部分Hypからなっていること及びそれぞれのHypは独立に選択され得ることは理解されるところである。それぞれの部分Hypは5〜21リシン、好ましくは少なくとも7リシンからなっている、すなわちそれぞれの部分Hypは結合形態の5〜32リシン、好ましくは結合形態の少なくとも7リシンからなっている。
【0075】
好ましくは、C(A−Hyp)4は、1kDa〜20kDa、より好ましくは1kDa〜15kDa、なおより好ましくは1kDa〜10kDaの範囲内の分子量を有している。
【0076】
本発明によるヒドロゲルの生分解性は、加水分解性結合の導入により達成される。
【0077】
好ましくは、骨格部分はクロスリンカー部分を通して一緒に連結されていて良く、それぞれのクロスリンカー部分は少なくとも2つの加水分解性結合で終端されている。この終端分解性結合に加えて、クロスリンカー部分は、さらなる生分解性結合を含有していて良い。つまり、骨格部分に連結されたクロスリンカー部分のそれぞれの終端には加水分解性結合が含まれ、クロスリンカー部分にはさらなる生分解性結合が場合により存在していて良い。
【0078】
つまり、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルには、加水分解性結合で相互接続された骨格部分が含まれており、ここにおける骨格部分は好ましくはクロスリンカー部分を通して一緒に連結されており、それぞれのクロスリンカー部分は少なくとも2つの加水分解性結合で終端されている。
【0079】
生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは1種又はそれ以上の異なるタイプのクロスリンカー部分を含有し得る(好ましくは1種)。クロスリンカー部分は線状もしくは分岐分子であり得、好ましくは線状分子である。本発明の好ましい実施形態では、クロスリンカー部分は、骨格部分に少なくとも2つの生分解性結合で接続されている。
【0080】
用語の生分解性結合とは、生理条件(pH7.4、37℃にある水性緩衝液)下において1時間〜3ヶ月の半減期で非酵素的に加水分解で分解される連結を表しており、そのようなものとしては、限定するものではないが、アコニチル、アセタール、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、イミン、ヒドラゾン、マレアミド酸アミド、オルトエステル、ホスホアミド、ホスホエステル、ホスホシリルエステル、シリルエステル、スルホン酸エステル、芳香族カーボナート、これらの組み合わせ他が挙げられる。好ましい生分解性連結は、カルボン酸エステル、カーボナート、ホスホエステル及びスルホン酸カルボン酸エステルであり、最も好ましいのはカルボン酸エステル又はカーボナートである。
【0081】
好ましくは、クロスリンカー部分は、60Da〜5kDa(より好ましくは、60Da〜4kDa、なおより好ましくは60Da〜3kDa)、さらにより好ましくは0.5〜4kDa、なおより好ましくは1kDa〜4kDa、最も好ましくは1kDa〜3kDaの範囲内の分子量を有している。一実施形態では、クロスリンカー部分は、高分子からなっている。
【0082】
オリゴマー又は高分子架橋部分に加えて、特にこの生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルを形成するのに親水性高分子量骨格部分が用いられる場合は、低分子量架橋部分が用いられ得る。
【0083】
好ましくは、このポリ(エチレングリコール)ベースクロスリンカー部分は、場合によりさらなる官能基を含んでいる、エチレングリコール単位を含む炭化水素鎖であり、ここにおける各ポリ(エチレングリコール)ベースクロスリンカー部分には、それぞれ、少なくともmエチレングリコール単位が含まれ、ここにおけるmは、3〜100、好ましくは1〜70、最も好ましくは10〜70の範囲内の整数である。より好ましくは、ポリ(エチレングリコール)ベースクロスリンカー部分は、60Da〜5kDa、より好ましくは0.5kDa〜5kDaの範囲内の分子量を有している。
【0084】
好ましくは、クロスリンカー部分は、好ましくは唯一のPEGベース分子鎖によって表される、PEGベースである。好ましくは、ポリ(エチレングリコール)ベースクロスリンカー部分は、場合によりさらなる化学官能基を含んでいる、1個又はそれ以上のエチレングリコール単位を含む炭化水素鎖であり、ここにおけるポリ(エチレングリコール)ベースクロスリンカー部分には、それぞれ、少なくともmエチレングリコール単位が含まれ、ここにおけるmは、1〜100(好ましくは3〜100)、好ましくは1〜70、さらにより好ましくは10〜70の範囲内の整数である。好ましくは、ポリ(エチレングリコール)ベースクロスリンカーは、60Da〜5kDa、好ましくは0.5kDa〜5kDaの分子量を有している。
【0085】
本発明の好ましい実施形態においてはこのクロスリンカー部分は、超分岐樹枝状部分に永久アミド結合を通して接続されている骨格部分によってもたらされる2つのα−、ω−脂肪族ジカルボン酸スペーサーにエステル結合を通して対称的に接続されている、PEG鎖からなっている。
【0086】
骨格部分に接続されたスペーサー部分及びそのもう一方の側が架橋部分に接続されたスペーサー部分のジカルボン酸は、3〜12炭素原子(最も好ましくは5〜8炭素原子)からなっていて、1つ又はそれ以上の炭素原子において置換されていて良い。好ましい置換基は、アルキル基、ヒドロキシ基又はアミド基あるいは置換されたアミノ基である。この脂肪族ジカルボン酸のメチレン基の1つ又はそれ以上は、O又はNHあるいはアルキル置換Nで場合により置換されていて良い。好ましいアルキルは、1〜6炭素原子を有する線状又は分岐アルキルである。
【0087】
骨格部分とクロスリンカー部分との間の生分解性結合の加水分解速度は、PEG−エステルカルボキシ基に隣接して接続された原子の数及びタイプによって影響を受け、もしくは決定される。例として、PEGエステルを形成するのにコハク酸、アジピン酸又はグルタル酸から選択することにより、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの分解半減期を変えることができる。
【0088】
代替の実施形態では、反応性官能基の数を増やす(これは、例えば、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルのドラッグ搭載量を増大させることを可能にする)ために重合ヒドロゲルの反応性官能基には多官能部分がカップリングされる。そのような多官能部分は、適切に置換された結合形態のリシン、ジリシン、トリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシン、又はオリゴリシンの誘導体、低分子量PEIによってもたらされ得る。好ましくは、この多官能部分は、結合形態のリシンからできている。場合によっては、そのような多官能部分は、保護基で保護されていて良い。
【0089】
さらに、本発明によるそのようなヒドロゲルは、同じ官能基をもっているスペーサーで官能化されていて良く、例として、ヒドロゲルには、適切に活性化されたCOOH−PEG6−NH−Fmocのような、ヘテロ二官能スペーサーをカップリングして、そのFmoc保護基を除去することでアミノ基が導入され得る。
【0090】
1つの好ましいクロスリンカー部分を以下に示す(点線は、骨格部分への相互接続生分解性連結を示している):
【化1】
【0091】
[式中、qは5〜50の整数である]。
【0092】
好ましくは、PEGベース不溶性ヒドロゲルは、加水分解性結合により相互接続された骨格部分からできている。
【0093】
より好ましくは、骨格部分は、以下の式:
【化2】
【0094】
[式中、点線は、骨格部分の残りの部分への結合を示している]
で表される分岐コアを含んでいる。
【0095】
より好ましくは、骨格部分は、以下の式:
【化3】
【0096】
[式中、nは5〜50の整数であり、点線は、骨格部分の残りの部分への結合を示している]
で表される構造を含んでいる。
【0097】
より好ましくは、骨格部分は、超分岐部分Hypを含んでいる。
【0098】
より好ましくは、骨格部分は、以下の式:
【化4】
【0099】
[式中、点線は、分子の残部への結合を示しており、*でマークされた炭素原子は好ましい実施形態においてS配置を示している]
で表される超分岐部分Hypを含んでいる。ところで、上記に示されている超分岐部分HypはR配置にあっても良いしあるいはラセミ体であっても良いことは理解されるところである。
【0100】
より好ましくは、骨格部分は、以下の式:
【化5】
【0101】
[式中、各点線の一方は超分岐部分Hypへの結合を示しており、もう一方の点線は分子の残部への結合を示している;またmは2〜4の整数である]
で表される少なくとも1つのスペーサーに結合されている。
【0102】
より好ましくは、骨格部分は、以下の構造:
【化6】
【0103】
[式中、qは3〜100の整数である]
を有しているクロスリンカー部分によって一緒に連結されている。
【0104】
より好ましくは、PEGベース不溶性ヒドロゲルの骨格部分は、以下の式:
【化7】
【0105】
[式中、各点線は、それぞれ、骨格部分への結合を示しており、またnは45である]
で表される部分によって一緒に連結されている。
【0106】
また、より好ましくは、PEGベース不溶性ヒドロゲルの骨格部分は以下の式:
【化8】
【0107】
[式中、各点線は、それぞれ、骨格部分への結合を示しており、またnは22である]
で表される部分によって一緒に連結されている。
【0108】
本発明は、保護溶媒の存在下での照射による生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの滅菌を記載するものである。この滅菌処理に用いられる生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは照射の前に保護溶媒で溶媒和され、その保護溶媒は照射の間中そのままで存在している。好ましくは、保護溶媒は、酢酸(水溶液、0.01〜1%(v/v))、アセトニトリル、4−アセチルモルホリン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジクロロメタン(DCM)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルカーボナート、ジメチルホルムアミド、1−エチル−2−ピロリドン、N−エチルアセトアミド、N−エチルホルムアミド、ホルムアミド、4−ホルミルモルホリン、1−ホルミルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、アルキルアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール)、ホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、N−メチルアセトアミド、ニコチンアミド(水溶液、0.1〜5%(w/w))、ピリドキシン(水溶液、0.1〜5%(w/w))、N−メチルホルムアミド、NMP、1,2−プロピレンカーボナート、テトラヒドロフラン(THF)、スルホラン、水、又はこれらの混合物からなる群から選択される。
【0109】
より好ましくは、保護溶媒は、酢酸(水溶液、0.01〜1%(v/v))、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルカーボナート、ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、アルキルアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール)、ホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ニコチンアミド(水溶液、0.1〜5%(w/w))、N−メチルホルムアミド、NMP、テトラヒドロフラン(THF)、スルホラン、水、又はこれらの混合物からなる群から選択される。
【0110】
最も好ましくは、保護溶媒は、4−アセチルモルホリン、DMA、DMF、DMI、DMPU、1−エチル−2−ピロリドン、N−エチルアセトアミド、N−エチルホルムアミド、4−ホルミルモルホリン、1−ホルミルピロリドン、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、DMSO又はNMPから選択される。なおより好ましくは保護溶媒は、DMSO、DMA、DMF、DMI又はNMPから;なおより好ましくはDMA、DMF、DMI又はNMPから;さらになおより好ましくはDMSO又はNMP、なおより好ましくはNMPから選択される。
【0111】
場合によっては、保護溶媒は脱気されて、他の、その保護溶媒に溶ける、塩等の、1種又はそれ以上の保護剤を場合により含有していて良い。好ましくは、保護剤は、0.01〜10%の濃度で含まれている。保護溶媒はまた、2種又はそれ以上の保護溶媒の混合物もしくはそれらの水性希釈液であり得ることは理解されるところである。
【0112】
保護剤は、置換されていて良い線状、分岐、又は環状C1〜C10アルキルアミン、置換されていて良い線状又は分岐C1〜C10アルキルカルボン酸、置換されていて良い線状又は分岐C1〜C10アルキルスルホン酸、置換されていて良い線状又は分岐C1〜C10アルキルチオール、又は炭水化物からなる群から選択され得る。保護剤は、ヒドロキシル基で置換されていて良いしあるいは尿素、アミド、又はカルバマート基で置換又は中断されていて良いしあるいはエーテルで中断されていても良い。2種又はそれ以上の保護剤の混合物が保護溶媒に加えられ得る。
【0113】
好ましい保護剤は、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、sec−ブチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、セリノール、トリスヒドロキシメチル−アミノメタン、酢酸、ギ酸、アスコルビン酸、グリシネアミド、ピバル酸、プロパン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、チオグリセリン、ジチオトレイトール、メルカプトエタノール、還元グルタチオンから選択される。
【0114】
滅菌するためには、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは適する容器に入れられるが、これは滅菌処理後の滅菌性を確実なものにする。つまり、ヒドロゲルは保護溶媒で溶媒和され、そして適する容器は密閉されて滅菌処理に付される。適する容器は、容器密閉後の滅菌性を確実なものにしてその滅菌処理が行われるものが選択される。別形態としては、PEGベース不溶性ヒドロゲルは、最初に保護溶媒で溶媒和され、その後適する容器の中に移され、そしてこの中で滅菌されて、その適する容器がこの後密閉される。生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの滅菌は、線量が5〜100kGy、好ましくは8〜50kGy、より好ましくは20〜40kGy(例えば32〜40kGy等)、より好ましくは20〜30kGyの照射(好ましくはガンマ線の照射)により行われる。本発明による生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの照射は室温(25℃)〜−80℃の温度で行われ得る。好ましくは、照射は、室温にて行われる。室温より低い温度を得るためには、滅菌されるべき生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルが含まれている適する容器は冷却可能な環境内に格納され得るしあるいは氷やドライアイス等の冷却材で囲まれ得る。
【0115】
そのような滅菌生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは、例えば埋め込み物として、直接用いられ得るし、あるいは、例えばその滅菌生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルに生物活性部分をカップリングすることでさらに改変され得る。後者の場合は、さらなる処理が、滅菌済み化学薬品及び生物活性部分を用いて、滅菌条件下で行われる。
【0116】
本発明の一実施形態では、小分子生物活性部分が生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの官能基にカップリングされて、いわゆる小分子生物活性部分保持生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルがもたらされ、これがこの後保護溶媒の存在下に照射により滅菌される。ガンマ線照射の間中その化学構造を維持するような小分子生物活性部分のみが適していることは当業者には明らかである。
【0117】
つまり、本発明の好ましい態様は、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルが小分子生物活性部分を持っている、本発明による方法である。
【0118】
生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルが小分子生物活性部分を持ち、本発明の方法による照射により滅菌される場合は、その小分子生物活性部分は保全されているはずである。この文脈での用語「保全されている」とは、質量分光分析、超高速液体クロマトグラフィーあるいは薬理活性試験のような、当業者に知られている方法で測定できるが、そのような滅菌ヒドロゲルから放出される小分子生物活性部分の少なくとも90%は変化していないことを好ましくは意味する。
【0119】
本発明の好ましい実施形態では、乾燥生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルが5〜10ml NMP/g乾燥生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルで溶媒和され、滅菌後汚染を回避するために密閉容器を用いて、線量が25kGyのガンマ線で照射される。滅菌ヒドロゲルに生物活性部分をカップリングするような、さらなる処理をするためには、NMPは、フィルター装着シリンジあるいは適するカラムを用いて所望溶媒に交換される。生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルを滅菌した後のすべての工程は、滅菌溶液を用いて、無菌状態下で行われることは当業者には明らかである。
【0120】
本発明のなおより好ましい実施形態では、1gの乾燥生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲル当たり、0.1%〜2%(v/v)アミノエタノール又はプロピルアミンを含んでいる5〜10ml NMPが生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルを溶媒和させるのに用いられ、そのような溶媒和された生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは、滅菌後汚染を回避するために密閉容器を用いて、線量が32kGyのガンマ線で続いて照射される。滅菌ヒドロゲルに生物活性部分をカップリングするような、さらなる処理をするためには、0.1%〜2%(v/v)アミノエタノール又はプロピルアミンを含んでいるNMPは、フィルター装着シリンジあるいは適するカラムを用いて所望の溶媒に交換される。生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルを滅菌した後のすべての工程は、滅菌溶液を用いて、無菌状態下で行われることは当業者には明らかである。
【0121】
本発明のさらなる態様は、本発明のいずれの方法によっても得ることができる、特に小分子生物活性部分を持つ、滅菌生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルである。
【実施例】
【0122】
(材料及び方法)
材料
Amino 4−arm PEG5000は、JenKem Technology(Beijing,P.R.China)から入手した。
【0123】
他の化学薬品はすべてSigma−ALDRICH Chemie GmbH(Taufkirchen,Germany)から入手した。
【0124】
ヒドロゲルビーズに対しては、反応容器としてはあるいは洗浄工程にはポリプロピレンフリットが装着されたシリンジを用いた。
【0125】
分析:
エレクトロスプレーイオン質量分析(ESI−MS)は、Waters Acquity UPLC Systemが装着されたThermo Fisher Orbitrap Discovery機器で行った。
【0126】
PEG出発材料が多分散であるためPEG生成物のMSスペクトルは一続きの(CH2CH2O)n部分を示した。理解をより容易にするため実施例には1つだけの単一代表的m/zシグナルが記載されている。
【0127】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、特に断らない限り、Superdex75 5/150 GLカラム(Amersham Bioscience/GE Healthcare)が装着されたAmersham Bioscience AEKTAbasic装置を用いて行った。4/1(v/v)水性緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、0.005%TWEEN 20、pH7.4)/アセトニトリル混合物を移動相として用いた。吸収は215nmで検出した。
【0128】
(実施例1)
骨格試薬1gの合成
【化9】
【0129】
骨格試薬1gをAmino 4−arm PEG5000(1a)から以下のスキーム:
【化10】
【0130】
に従って合成した。
【0131】
化合物1bの合成には、4−Arm−PEG5000テトラアミン1a(MW約5200g/mol、5.20g、1.00mmol、HCl塩)を20mLのDMSO(無水)に溶解させた。Boc−Lys(Boc)−OH(2.17g、6.25mmol)/5mLのDMSO(無水)、EDC HCl(1.15g、6.00mmol)、HOBt・H2O(0.96g、6.25mmol)、及びコリジン(5.20mL、40mmol)を加えた。この反応混合物をRTにて30分間撹拌した。
【0132】
この反応混合物を1200mLのジクロロメタンで希釈し、600mLの0.1N H2SO4(2×)、ブライン(1×)、0.1M NaOH(2×)、及び1/1(v/v)ブライン/水(4×)で洗浄した。水層を500mLのDCMで再抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、6.3gの粗製生成物1bを無色の油状物として得た。化合物1bをRP−HPLCにより精製した。
収量3.85g(59%)無色ガラス状生成物1b
MS:m/z1294.4=[M+5H]5+(計算=1294.6)
【0133】
3.40gの化合物1b(0.521mmol)/5mLのメタノールと9mLの4N HCl/ジオキサンをRTにて15分間撹拌することにより化合物1cを得た。揮発分を真空で除去した。この生成物をさらに精製することなく次の工程で用いた。
MS:m/z1151.9=[M+5H]5+(計算=1152.0)
【0134】
化合物1dの合成には、3.26gの化合物1c(0.54mmol)を15mLのDMSO(無水)に溶解させた。2.99g Boc−Lys(Boc)−OH(8.64mmol)/15mL DMSO(無水)、1.55g EDC HCl(8.1mmol)、1.24g HOBt・H2O(8.1mmol)、及び5.62mLのコリジン(43mmol)を加えた。この反応混合物をRTにて30分間撹拌した。
【0135】
反応混合物を800mL DCMで希釈し、400mLの0.1N H2SO4(2×)、ブライン(1×)、0.1M NaOH(2×)、及び1/1(v/v)ブライン/水(4×)で洗浄した。水層を800mLのDCMで再抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、ガラス状粗製生成物を得た。
【0136】
生成物をDCMに溶解させて冷却(−18℃)ジエチルエーテルで沈殿させた。この処理を2回繰り返し、その沈殿物を真空で乾燥させた。
収量:4.01g(89%)無色ガラス状生成物1d(これをさらに精製することなく次の工程で用いた)
MS:m/z1405.4=[M+6H]6+(計算=1405.4)
【0137】
溶液の化合物1d(3.96g、0.47mmol)/7mLのメタノールと20mLの4N HCl/ジオキサンをRTにて15分間撹拌することにより化合物1eを得た。揮発分を真空で除去した。この生成物をさらに精製することなく次の工程で用いた。
MS:m/z969.6=[M+7H]7+(計算=969.7)
【0138】
化合物1fの合成には、化合物1e(3.55g、0.48mmol)を20mLのDMSO(無水)に溶解させた。Boc−Lys(Boc)−OH(5.32g、15.4mmol)/18.8mLのDMSO(無水)、EDC HCl(2.76g、14.4mmol)、HOBt・H2O(2.20g、14.4mmol)、及び10.0mLのコリジン(76.8mmol)を加えた。この反応混合物をRTにて60分間撹拌した。
【0139】
この反応混合物を800mLのDCMで希釈し、400mLの0.1N H2SO4(2×)、ブライン(1×)、0.1M NaOH(2×)、及び1/1(v/v)ブライン/水(4×)で洗浄した。水層を800mLのDCMで再抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、粗製生成物1fを無色の油状物として得た。
【0140】
生成物をDCMに溶解させて冷却(−18℃)ジエチルエーテルで沈殿させた。この工程を2回繰り返し、その沈殿物を真空で乾燥させた。
収量4.72g(82%)無色ガラス状生成物1f(これをさらに精製することなく次の工程で用いた)
MS:m/z1505.3=[M+8H]8+(計算=1505.4)
【0141】
溶液の化合物1f(MW約12035g/mol、4.72g、0.39mmol)/20mLのメタノールと40mLの4N HCl/ジオキサンをRTにて30分間撹拌することにより骨格試薬1gを得た。揮発分を真空で除去した。
収量3.91g(100%)、ガラス状生成物骨格試薬1g
MS:m/z977.2=[M+9H]9+(計算=977.4)
【0142】
(1gの代替の合成経路)
化合物1bの合成には、4−Arm−PEG5000テトラアミン(1a)(50.0g、10.0mmol)/250mLのiPrOH(無水)の45℃懸濁液に、boc−Lys(boc)−OSu(26.6g、60.0mmol)及びDIEA(20.9mL、120mmol)を加え、この混合物を30分間撹拌した。
【0143】
続いて、n−プロピルアミン(2.48mL、30.0mmol)を加えた。5分後この溶液を1000mLのMTBEで希釈し、一晩−20℃で撹拌なしで保存した。上澄み液のおよそ500mLをデカント分離して捨てた。300mLの冷MTBEを加え、1分震盪の後その生成物をガラスフィルターを通す濾過により回収し、500mLの冷MTBEで洗浄した。この生成物を真空で16時間乾燥させた。
収量:65.6g(74%)1b(白色の塊状固形物)
MS:m/z=937.4=[M+7H]7+(計算=937.6)
【0144】
前の工程からの化合物1b(48.8g、7.44mmol)/156mLの2−プロパノールを40℃で撹拌することにより化合物1cを得た。196mLの2−プロパノールと78.3mLの塩化アセチルの混合物を撹拌下で1〜2分以内に加えた。この溶液を40℃で30分間撹拌し、撹拌なしで一晩−30℃に冷却させた。100mLの冷MTBEを加え、この懸濁液を1分間震盪し、−30℃で1時間冷却させた。生成物をガラスフィルターを通す濾過により回収し、200mLの冷MTBEで洗浄した。生成物を真空で16時間乾燥させた。
【0145】
収量:38.9g(86%)1c(白色の粉末)
MS:m/z=960.1[M+6H]6+(計算=960.2)。
【0146】
化合物1dの合成には、前の工程からの1c(19.0g、3.14mmol)/80mL2−プロパノールの45℃懸濁液にboc−Lys(boc)−OSu(16.7g、37.7mmol)及びDIEA(13.1mL、75.4mmol)を加え、この混合物を45℃で30分間撹拌した。続いて、n−プロピルアミン(1.56mL、18.9mmol)を加えた。5分後この溶液を600mLの冷MTBEで沈殿させ、遠心した(3000分−1、1分)。この沈殿物を真空で1時間乾燥させ、400mL THFに溶解させた。200mLのジエチルエーテルを加え、その生成物を撹拌なしで16時間、−30℃に冷却した。この懸濁液をガラスフィルターで濾過し、300mL冷MTBEで洗浄した。生成物を真空で16時間乾燥させた。
収量:21.0g(80%)1d(白色の粉末)
MS:m/z1405.4=[M+6H]6+(計算=1405.4)
【0147】
前の工程からの化合物1d(15.6g、1.86mmol)を3N HCl/メタノール(81mL、243mmol)に溶解させて40℃で90分間撹拌することにより化合物1eを得た。200mLのMeOH及び700mLのiPrOHを加え、この混合物を−30℃で2時間保存した。結晶化が完結するよう、100mLのMTBEを加え、この懸濁液を一晩−30℃で保存した。250mLの冷MTBEを加え、その懸濁液を1分間震盪し、ガラスフィルターで濾過し、100mLの冷MTBEで洗浄した。生成物を真空で乾燥させた。
収量:13.2g(96%)1e(白色の粉末)
MS:m/z=679.1=[M+10H]10+(計算=679.1)
【0148】
化合物1fの合成には、前の工程からの1e(8.22g、1.12mmol)の165mL2−プロパノール中45℃懸濁液にboc−Lys(boc)−OSu(11.9g、26.8mmol)及びDIEA(9.34mL、53.6mmol)を加え、この混合物を30分間撹拌した。続いて、n−プロピルアミン(1.47mL、17.9mmol)を加えた。5分後この溶液を2時間、−18℃に冷却させ、その後165mLの冷MTBEを加え、その懸濁液を1分間震盪し、ガラスフィルターで濾過した。続いて、そのフィルターケーキを4×200mLの冷MTBE/iPrOH4:1及び1×200mLの冷MTBEで洗浄した。生成物を真空で16時間乾燥させた。
収量:12.8g、MW(90%)1f(淡黄色の塊状固形物)
MS:m/z1505.3=[M+8H]8+(計算=1505.4)
【0149】
4ArmPEG5kDa(−LysLys2Lys4(boc)8)4(1f)(15.5g、1.29mmol)を30mLのMeOHに溶解させて0℃に冷却することにより骨格試薬1gを得た。4N HCl/ジオキサン(120mL、480mmol、0℃に冷却)を3分以内に加え、氷浴を取り除いた。20分後、3N HCl/メタノール(200mL、600mmol、0℃に冷却)を15分以内に加え、この溶液を室温にて10分間撹拌した。この生成物溶液を480mLの冷MTBEで沈殿させ、3000rpmで1分間遠心した。この沈殿物を真空で1時間乾燥させ、90mLのMeOHに再溶解させ、240mLの冷MTBEで沈殿させ、この懸濁液をもう一度3000rpmで1分間遠心した。生成物を真空で乾燥させた。
収量:11.5g(89%)(淡黄色フレーク)
MS:m/z=1104.9[M+8H]8+(計算=1104.9)
【0150】
(実施例2)
クロスリンカー試薬2dの合成
以下のスキーム:
【化11】
【0151】
に従ってアジピン酸モノベンジルエステル(English, Arthur R. et al., Journal of Medicinal Chemistry, 1990, 33(1), 344-347)とPEG2000からクロスリンカー試薬2dを調製した。
【0152】
PEG2000(2a)(11.0g、5.5mmol)+ベンジルアジパート半エステル(4.8g、20.6mmol)/ジクロロメタン(90.0mL)の溶液を0℃に冷却させた。ジシクロヘキシルカルボジイミド(4.47g、21.7mmol)、その後触媒量のDMAP(5mg)を加え、この溶液を撹拌し、一晩(12時間)室温まで到達させた。このフラスコを5時間+4℃で保存した。その固形物を濾過し、溶媒を真空での蒸留により完全に除去した。残留物を1000mL1/1(v/v)エーテル/酢酸エチルに溶解させ、2時間RTにて保存したがこの間フレーク状固形物が形成された。この固形物をCelite(登録商標)のパッドを通す濾過により除去した。この溶液をしっかり栓をしたフラスコ中冷凍庫の−30℃に12時間結晶化が完結するまで保存した。この結晶生成物をガラスフリットで濾過し、冷却エーテル(−30℃)で洗浄した。この濾過ケーキを真空で乾燥させた。収量:11.6g(86%)2b(無色の固形物)。この生成物をさらに精製することなく次の工程で用いた。
MS:m/z813.1=[M+3H]3+(計算=813.3)
【0153】
500mLガラスオートクレーブ中でPEG2000−ビス−アジピン酸−ビス−ベンジルエステル2b(13.3g、5.5mmol)を酢酸エチル(180mL)に溶解させ、10%パラジウム/炭(0.4g)を加えた。この溶液を6bar、40℃で水素の消費が止まるまで(5〜12時間)水素化した。触媒をCelite(登録商標)のパッドを通す濾過により除去し、溶媒を真空で除去した。収量:12.3g(定量)2c(黄色っぽい油状物)。この生成物をさらに精製することなく次の工程で用いた。
MS:m/z753.1=[M+3H]3+(計算=753.2)
【0154】
PEG2000−ビス−アジピン酸半エステル2c(9.43g、4.18mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(1.92g、16.7mmol)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(3.44g、16.7mmol)/75mLのDCM(無水)の溶液を室温にて一晩撹拌した。この反応混合物を0℃に冷却させ、沈殿物を濾過で除去した。DCMを蒸発させ、残留物をTHFから再結晶させた。
収量:8.73g(85%)クロスリンカー試薬2d(無色固形物)
MS:m/z817.8=[M+3H]3+(計算=817.9)
【0155】
(実施例3)
遊離アミノ基3a含有低密度ヒドロゲルビーズの調製
300mg 1g+900mg 2d/10.80mL DMSOの溶液を100mgArlacel P135(Croda International Plc)/80mLヘプタンの溶液に加えた。この混合物をRTにて10分間自家製金属スターラーを用いて700rpmで撹拌して懸濁液を形成させた。1.1mLのN,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン(TMEDA)を加えて重合を起こさせた。2時間後、スターラースピードを400rpmに下げ、混合物をさらに16時間撹拌した。1.6mLの酢酸を加え、その10分後50mLの水を加えた。5分後、スターラーを停止させ、水相を流出させた。
【0156】
ビーズサイズ分別には、この水−ヒドロゲル懸濁液を75、50、40、32及び20μm鋼製シーブで湿式シーブ分別した。その32、40、及び50μmシーブに保持されたビーズフラクションを貯留し、水で3回、エタノールで10回洗浄し、0.1mbarで16時間乾燥させて、3aを白色の粉末として得た。
【0157】
遊離アミノ基3b含有中密度ヒドロゲルビーズの調製
1200mg 1g+3840mg 2d/28.6mL DMSOの溶液を425mg Arlacel P135(Croda International Plc)/100mLヘプタンに加えた。この混合物をRTにて10分間自家製金属スターラーを用いて650rpmで撹拌して懸濁液を形成させた。4.3mLのN,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン(TMEDA)を加えて重合を起こさせた。2時間後、スターラースピードを400rpmに下げ、混合物をさらに16時間撹拌した。6.6mLの酢酸を加え、その10分後50mLの水を加えた。5分後、スターラーを停止させ、水相を流出させた。
【0158】
ビーズサイズ分別には、この水−ヒドロゲル懸濁液を63、50、40、32及び20μm鋼製シーブで湿式シーブ分別した。その32、40、及び50μmシーブに保持されたビーズフラクションを貯留し、水で3回、エタノールで10回洗浄し、0.1mbarで16時間乾燥させて、3bを白色の粉末として得た。
【0159】
遊離アミノ基3c含有高密度ヒドロゲルビーズの調製
2400mg 1g+3600mg 2d/24.0mL DMSOの溶液を425mg Arlacel P135(Croda International Plc)/110mLヘプタンに加えた。この混合物をRTにて10分間自家製金属スターラーを用いて850rpmで撹拌して懸濁液を形成させた。8.6mLのN,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン(TMEDA)を加えて重合を起こさせた。2時間後、スターラースピードを400rpmに下げ、混合物をさらに16時間撹拌した。13.2mLの酢酸を加え、その10分後50mLの水を加えた。5分後、スターラーを停止させ、水相を流出させた。
【0160】
ビーズサイズ分別には、この水−ヒドロゲル懸濁液を63、50、40、32及び20μm鋼製シーブで湿式シーブ分別した。その32、40、及び50μmシーブに保持されたビーズフラクションを貯留し、水で3回、エタノールで10回洗浄し、0.1mbarで16時間乾燥させて、3.00gの3cを白色の粉末として得た。
【0161】
(実施例4)
ヒドロゲルビーズ(4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j、4k)の調製とそれに続くガンマ線照射
フィルター装着シリンジ中の乾燥ヒドロゲル3aの20mg部分を以下の保護溶媒(NMP(4a)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DGDE)(4b)、DMSO(4c)、又は0.1%酢酸/水(4d))で5回洗浄した。
【0162】
同様にフィルター装着シリンジ中の乾燥ヒドロゲル3bの20mg部分を以下の保護溶媒(DMI(4f)、DMA(4g)、NMP+0.5vol%1−プロピルアミン(4h)、NMP+0.5vol%2−アミノエタノール(エタノールアミン)(4i)、NMP+0.1vol%酢酸(4j)、又は0.2M AcOH及び0.1Mプロピルアミン含有NMP(4k))で5回洗浄した。
【0163】
最後の洗浄の後、シリンジを密閉し、ヒドロゲルビーズを少し過剰の保護溶媒で膨潤状態にしておいた。
【0164】
加えてヒドロゲル3aの乾燥サンプルをその乾燥状態で照射して4eを得た。
【0165】
サンプルを室温にて40kGy(4a、4b、4c、4d、4e、4f)又は32kGy(4g、4h、4i、4j、4k)の線量でガンマ線照射した(照射源:Co60)。続いて、このサンプルをエタノールで5回洗浄し、0.1mbarで16時間乾燥させた。
【0166】
(実施例5)
アミノ含有量の決定
Fmoc−Asp(OtBu)−OSu(49mg、116μmol)を0.9mLアセトニトリルに溶解させて、0.5mL50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)を加えた。この溶液をシリンジ反応器中の20mgヒドロゲル3a及び4aに加え、周囲温度で30分間震盪した。
【0167】
続いて、このヒドロゲルをアセトニトリル/水2:1(v/v)+0.1%TFAで10×さらにDMFで10×洗浄した。
【0168】
DMF/DBU98/2(v/v)で3×10分震盪し、DMF/DBU98/2(v/v)で10×洗浄することによりFmoc−基を開裂させた。これらのフラクションすべてを貯留し、DMFで希釈し、9−メチレンフルオレンの量を295nmにおけるUV吸収を測定することにより決定した。9141L mol−1cm−1の減衰係数を使った。
3aのアミノ量:0.13mmol/g
4aのガンマ線照射後アミノ量:0.12mmol/g
Fmoc−Asp(OtBu)−OSuの代わりにFmoc−Gly−OSuの代替使用は同じアミノ量をもたらした。
【0169】
(実施例6)
ヒドロゲルビーズの加速インビトロ分解解析
加速条件下での滅菌後ヒドロゲルビーズ4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j及び4k並びに3a及び3b(参考材料、滅菌なし)のインビトロ分解速度を各サンプルの5mgを37℃にある0.5mL0.5M炭酸ナトリウム緩衝液(pH10.3)中でインキュベートすることにより測定した(3a、4a、4b、4c、4d及び4e)。別形態としては加速インビトロ分解には37℃状態にある0.5mL0.5Mホウ酸ナトリウム緩衝液pH9.0を用いた(3b、4f、4g、4h、4i、4j及び4k)。アリコートを一定時間間隔で採取し、SECで分析した。ヒドロゲルの放出水可溶分解生成物(1種又はそれ以上の骨格部分を含んでいる)に対応するUVシグナルを積分し、インキュベーション時間に対してプロットした(図1)。
【表1】
【0170】
(実施例7)
ガンマ線照射パリペリドン搭載ヒドロゲル6の調製
国際特許出願であるPC/EP2010/064874に説明されているようにしてヒドロゲル3cをリシンで変性し、続いてパリペリドン−グルタリルエステルをカップリングさせることによりパリペリドン搭載ヒドロゲル5を調製した。フィルター装着シリンジ中にある乾燥ヒドロゲルビーズ5の20mg部分を製剤緩衝液(85g/lトレハロース二水和物、50mMスクシナート/トリス緩衝液pH5.0、0.05%Tween 20、1mM EDTA)で5回洗浄した。最後の洗浄工程の後、シリンジを密閉し、ヒドロゲルビーズを少し過剰の保護溶媒で膨潤形態のままにしておいた。このサンプルをドライアイスのベッド中で40kGy(照射源:Co60)の線量でガンマ線照射した。続いて、製剤緩衝液でヒドロゲル6を5回、水で5回、エタノールで5回洗浄し、0.1mbarで16時間乾燥させた。
【0171】
(実施例8)
照射された6のpH9・37℃におけるインビトロ分解
ヒドロゲル6(滅菌後)及び参考5(滅菌なし)の加速条件下でのインビトロ分解速度をそれぞれのサンプルの2mgを37℃にある1.0mL0.5Mホウ酸ナトリウム緩衝液pH9.0中でインキュベートすることにより測定した。アリコートを一定時間間隔で採取し、SECで分析した。ヒドロゲルの放出水可溶分解生成物(1種又はそれ以上の骨格部分を含んでいる)に対応するUVシグナル(215nm)を積分し、インキュベーション時間に対してプロットした。分解挙動におけるほんの少しの逸脱が観察された(図2)。
【0172】
(実施例9)
照射されたヒドロゲル6から放出されたパリペリドンの品質
1mg照射パリペリドン−リンカー−ヒドロゲル6を37℃にある1.5mLpH7.4リン酸緩衝液(60mM、3mM EDTA、0.01%Tween−20)中でインキュベートした。4日後、上澄み液中に放出されたパリペリドンの品質をHPLCにより検証した。Waters Acquity UPLCを用いたがこれにはWaters BEH C18カラム(50×2.1mm I.D.、1.7μm粒子サイズ)が装着されていた(溶媒A:0.05%TFA/水、溶媒B:0.04%TFA/アセトニトリル)。4分で0→50%Bの線形勾配を採用した。パリペリドン純度は95%であることが判明した(215nm)。
【0173】
略記号:
AcOEt 酢酸エチル
AcOH 酢酸
Asp アスパラギン酸
Boc t−ブチルオキシカルボニル
DBU 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
DCC ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM ジクロロメタン
DGDE ジエチレングリコールジエチルエーテル
DMA N,N−ジメチルアセトアミド
DMAP ジメチルアミノ−ピリジン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMI 1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
ESI エロクトロスプレーイオン化
eq 化学量論当量
EtOH エタノール
Fmoc フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt N−ヒドロキシベンゾトリアゾール
iPrOH イソプロパノール
kGy キログレイ
LCMS 質量分光分析直結液体クロマトグラフィー
MeOH メタノール
MS 質量スペクトル
MTBE メチルtert−ブチルエーテル
MW 分子量
NHS N−ヒドロキシスクシンイミド
NMP N−メチル−2−ピロリジノン
OtBu tert−ブチルオキシ
OSu N−ヒドロキシスクシンイミジル
PEG ポリ(エチレングリコール)
PyBOP ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−
ホスホニウムヘキサフルオロホスファート
RP−HPLC 逆相高性能液体クロマトグラフィー
RT 室温
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
tBu tert−ブチル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TMEDA N,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン
UV 紫外
VIS 可視
【技術分野】
【0001】
生分解性PEGベースヒドロゲルは、組織再生、創縫合や薬物送達等のさまざまな医療・医薬適用で重要である。安全の理由から、例えばドラッグデリバリーのような一部の応用では、PEGヒドロゲルに生分解性を付与することが強く望まれている。生分解性は、インビボ水性環境で自然又は酵素加水分解を受けるエステル結合によりヒドロゲルに導入され得る。
【背景技術】
【0002】
埋め込みあるいは局所適用が意図された医薬組成物又は医療デバイスの滅菌は、対応の市販製品としての認可を受けるためには必須である。さまざまな滅菌の方法、例えば加熱、加圧、濾過、化学薬品あるいは照射が提案されている。残念なこととして、これらの滅菌方法は、それらの方法がヒドロゲルの構造と特性を保持することとは両立できないため、生分解性PEGヒドロゲルには適用できない。つまり、生分解性PEGヒドロゲルの医療使用は限られている。
【0003】
例えば、注射液は、ほとんどの場合、オートクレーブ処理により注射液バイアル中で滅菌されるが、生分解性結合は、高温に曝された場合、劇的に加速された分解を受けるだろう。したがって、生分解性PEGヒドロゲルのオートクレーブ処理は、治療適用に向いていない前分解された物質をもたらすだろう。
【0004】
あるいは、微生物汚染物質を除去するために、溶液はポアサイズが0.2μmのフィルターを用いて濾過により滅菌され、続いてその滅菌溶液が無菌条件下でバイアルの中に充填され得る。しかしながら、不溶性架橋PEGヒドロゲルの場合、この材料は不溶なので、微小粒子の懸濁液の形態で、あるいは典型的にはサイズが0.2μmより大きい他の三次元物体(例えば、ディスクあるいはチューブ)として存在し得るので、このような懸濁液又はゲル物体は濾過によっては滅菌され得ないのである。
【0005】
国際特許出願である(特許文献1)は、滅菌微小粒子の調製ができる閉鎖循環式装置を記載している。フィルター滅菌された各化学薬品成分は粒子形成過程の全体を通して系の無菌環境内に滅菌保持され、結果として滅菌微小粒子がもたらされる。
【0006】
出発原料の段階で滅菌濾過工程を適用してその処理の間中無菌状態を維持するような無菌処理は、ヒドロゲル合成後滅菌(最後滅菌と呼ばれる)に比較するといくつかの欠点を有している。製造過程で滅菌工程が現れるのが早ければ早いほど、突発的な汚染のリスクは高くなる。無菌処理はまた精巧な専用の装置を必要とし、結果として製造コストが高くなる。したがって、最後滅菌法が好ましい。
【0007】
高分子のUV光あるいはガンマ線照射での光分解は、ラジカル及び/又はイオンを発生し、これは多くの場合開裂や架橋をもたらす。光への曝露は酸素の不存在下ではめったにないので、酸化も起こり、状況を複雑にしている。一般には、これらのことはヒドロゲルの特性並びに材料の生分解に対する感受性を変える(非特許文献1)。
【0008】
エチレンオキサイドガスあるいは過酸化水素含有溶液での処理は同じような副反応を引き起こしてヒドロゲルの生分解特性に悪影響を及ぼし、処理済ヒドロゲル材料の未処理ヒドロゲル材料に比較しての分解速度の相当な偏移を引き起こすだろう。加えて、有毒であって望ましくない副作用を引き起こし得る、例えばエチレンオキサイドの有意な量がヒドロゲル中に残っていないことを確実にするための配慮がなされなければならない。
【0009】
最後滅菌に伴う困難を回避するために、架橋と滅菌の工程が組み合わせられたことがある。(特許文献2)は、ガンマ線照射による架橋PEGヒドロゲルの作製方法を詳述している。この方法では、線状PEG(MW200kDa)が生理食塩水に溶解され、脱気されてCo60等のガンマ線源で照射された。2.5〜25Mrad(25〜250kGyに相当)の線量がラジカル形成並びに鎖間連結によるPEG鎖の架橋をもたらすのに十分であって、結果として水和された不溶性ヒドロゲルがもたらされた。この照射線量は滅菌にも十分高いという事実から、1工程で、眼の角膜の中に埋め込むのに適している材料が得られた。
【0010】
同様に、米国特許出願である(特許文献3)は、クロスリンカー及び有機溶媒の存在下にUV及び/又はガンマ線照射によって架橋される、ポリアルキレンオキシド、ポリアリーレンオキシド、又はポリグリシジルエーテルをベースとする、電子デバイスに用いられるための架橋高分子ゲルの形成方法を詳述している。
【0011】
医薬の送達のような、他の適用では、PEGヒドロゲルが生分解性であることが望ましい。(特許文献4)は、ガンマ線照射による分解性PEGヒドロゲルの作製方法を詳述している。この方法では、生分解性エステル連結を介して接続された線状PEG鎖が用いられている(MW10kDa)。25又は30kGyでの照射は鎖間架橋並びに不溶性PEGヒドロゲルを形成した。
【0012】
また、UV又はガンマ線照射PEGヒドロゲル中の架橋の度合いを変化させることによって薬物放出速度を調節することも試みられた(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)。とはいっても、この試みでは、照射処理の間中の薬物の存在は薬物の取り込みをもたらすために必要とされているが、高分子鎖への酸化又は加水分解あるいは共役化のような照射が誘発する副反応の可能性が、この方法をほとんどの治療用要素にとって実行不可能なものにしている。
【0013】
また、照射は、膨潤や粗さのようなPEGベースヒドロゲルの他の特性に影響を及ぼすことも示されている(非特許文献7)。
【0014】
文献ではさまざまなPEGベースヒドロゲルが記載されている。例えば、(特許文献5)は、プロドラッグの高分子ヒドロゲル複合体を記載しており、このヒドロゲルは生分解性の結合を含んでいるクロスリンカーによって相互接続された非生分解性骨格部分から構成されている。
【0015】
欧州特許出願である(特許文献6)は、特徴的な後期爆発的分解速度を有するPEGベースヒドロゲルを記載している。
【0016】
PEG部分のみからなるヒドロゲルが欧州特許である(特許文献7)に記載されている。このヒドロゲルには分解を可能にするために加水分解不安定性結合が組み込まれている。この特許はそのようなヒドロゲルの薬物送達系としての使用も特許請求している。
【0017】
(特許文献8)は、特に、診断用標識物質を、単独又は治療用薬物との組み合わせで含有していて良いPEGベースヒドロゲルを記載している。同様に、(特許文献9)は、インビボ注射され得る生物活性剤を含有している、PEG−キトサンヒドロゲルを記載している。PCT出願である(特許文献10)は、薬物送達デバイスとしてあるいは他の生医学利用で用いられるカルバマート架橋を有するポリ(エチレンオキシド)含有ヒドロゲルを開示している。
【0018】
上記で述べたヒドロゲルは、すべて滅菌を必要とする適用に用いられることを意図しているが、上述の問題はこれらの特許又は特許出願によっては対処されておらず、これが産業へのそれらの適用性を限定している。
【0019】
ヒドロゲル滅菌における不十分な点の結果として、不溶性架橋生分解性PEGベースヒドロゲルはそのままではまだ認可されておらず、投与後in situでヒドロゲルを形成する前駆体組成物としてのみ認可されている(Corgel(商標)BioHydrogel、Focal(登録商標)Technology)。したがって、汚染に敏感な応用に際してヒドロゲルを十分利用するためには、コスト効率的且つ保全的な方法でヒドロゲルを最後滅菌するための手段を提供するというニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2003/035244号
【特許文献2】米国特許第5,634,943号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0030102号明細書
【特許文献4】米国特許第6,537,569号明細書
【特許文献5】国際公開第2006/003014号
【特許文献6】欧州特許第09167026.5号明細書
【特許文献7】欧州特許第1019446号明細書
【特許文献8】米国特許5,514,379号明細書
【特許文献9】米国特許6,602,952号明細書
【特許文献10】国際公開第2006/38462号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Encyclopedia of Polymer Science and Technology, Mark Herman (Ed) Wiley, 2004, p. 263 ff
【非特許文献2】Minkova et al., J. Polym. Sci., Polym. Phys. 27 (1989) 621-642
【非特許文献3】Belcheva et al., Macromol. Symp. 103 (1996) 193
【非特許文献4】Rosiak and Yoshii, Nuclear Instruments and Methods/Physics research B 151 (1999) 56-64
【非特許文献5】Rosiak and Ulansky, Radiation Physics and Chemistry 55 (1999) 139-151
【非特許文献6】Dimitrov et al., Acta Pharmaceutica Turcica 46 (2004) 49-54
【非特許文献7】Kanjickal et al, J Biomed Mater Res A. 2008 Jan 9 - Effects of sterilization on poly(ethylene glycol) hydrogels
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
すなわち、本発明の目的は、欠点を少なくとも一部克服するための、また上記に記載したニーズを満たすための不溶性の生分解性PEGベースヒドロゲルの代替滅菌方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的は、加水分解性結合により相互接続されている骨格部分を含む生分解性ポリ(エチレングリコール)ベース不溶性ヒドロゲルの滅菌方法であって、次の工程
(a)ヒドロゲルを準備する工程;
(b)このヒドロゲルを保護溶媒又は2種もしくはそれ以上の保護溶媒の混合物又はそれらの水溶液に溶媒和させる工程;
(c)溶媒和したヒドロゲルにガンマ線照射を行う工程;
を含む方法によって達成される。
【0024】
この度、意外なこととして、予め形成された生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは、ガンマ線の照射が、保護溶媒(好ましくはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、DMA、DMF又はDMI、より好ましくはNMP)の存在下に行われる場合は、不安定性生分解結合への損傷なしに、したがって安定結合への損傷も全くなしに且つ架橋を引き起こすこともなしにガンマ線照射によって滅菌され得ることを見出した。
【0025】
特に、本発明によるそのような照射された不溶性生分解性PEGヒドロゲルのインビトロ分解速度は、照射されていないPEGヒドロゲルのインビトロ分解速度に等しいものであった。さらには、そのような照射された不溶性生分解性PEGヒドロゲルは、なお十分に生分解性であった。もしラジカル生成による鎖間架橋が形成されていたとすると、分解速度は影響を受けていたであろうし、また、不溶性生分解性PEGヒドロゲル分解過程はもっとゆっくりしたものであろうし、分解曲線はフラットであろうし、分解も完結まで至らなかったであろう。
【0026】
不溶性生分解性PEGベースヒドロゲルが官能性の基を含有している場合、そのような基は、滅菌後もなお官能性である。
【0027】
本発明において使われている用語は以下の通りの意味を有している。
【0028】
ヒドロゲルとは、大量の水を取り込むことができる三次元の、親水性もしくは両親媒性高分子網目構造体と定義され得る。この網目構造体は、ホモポリマー又はコポリマーからなり、化学的な共有結合もしくは物理的(イオン、疎水相互作用、絡み合い)架橋が存在することから不溶である。この架橋により網目構造及び物理的一体性がもたらされる。
【0029】
本明細書において理解される用語「PEGベースヒドロゲル」(PEGヒドロゲル)は、ヒドロゲル中のPEG鎖の質量割合が、ヒドロゲルの全体重量を基準にして、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも25%であることを意味している。残りの部分は、他の高分子及び他の部分構造から構成され得る。
【0030】
用語「高分子」は、合成もしくは生物由来又は両者の組み合わせであり得る、線状、環状、分岐状、架橋もしくは樹枝型分岐状又はこれらの組み合わせによる化学結合により接続された繰り返し構造単位からなっている分子を表す。例として、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリラート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アルキルオキシ)ポリマー、ポリ(アミド)、ポリ(アミドアミン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(アスパルトアミド)、ポリ(酪酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カーボナート)、ポリ(シアノアクリラート)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(エステル)、ポリ(エチレン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリラート)、ポリ(ヒドロキシエチルオキサゾリン)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリラート)、ポリ(ヒドロキシプロピルオキサゾリン)、ポリ(イミノカーボナート)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(メタクリラート)、ポリ(メチルオキサゾリン)、ポリ(プロピレンフマラート)、ポリ(オルガノホスファゼン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(シロキサン)、ポリ(ウレタン)、ポリ(ビニルアルコホール)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルピロリドン)、シリコーン、リボ核酸、デゾキシ核酸、アルブミン、これらの抗体及び断片、血漿蛋白、コラーゲン、エラスチン、ファシン、フィブリン、ケラチン、ポリアスパルタート、ポリグルタマート、プロラミン、トランスフェリン、シトクロム、フラボプロテイン、グリコプロテイン、ヘモプロテイン、リポプロテイン、メタロプロテイン、フィトクロム、ホスホプロテイン、オプシン、カンテン、アガロース、アルギナート、アラビナン、アラビノガラクタン、カラギーナン、セルロース、カルボメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース並びに他の炭水化物ベース高分子、キトサン、デキストラン、デキストリン、ゼラチン、ヒアルロン酸及び誘導体、マンナン、ペクチン、ラムノガラクツロナン、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、キシラン、並びにこれらのコポリマー及び機能性誘導体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0031】
滅菌ヒドロゲルに関しての「無傷」とは、不安定な生分解性結合に損傷がなかったこと及びしたがって安定な結合にも損傷がなかったこと並びに滅菌化の間に検出可能なさらなる架橋も起こらなかったことを意味する。ヒドロゲルの「無傷度」は、本発明に従って滅菌された生分解性PEGベースヒドロゲルのインビトロ分解速度により測定することができ、滅菌されていない生分解性PEGヒドロゲルのインビトロ分解速度にそれが同じである度合いである。さらには、照射されたそのような生分解性PEGヒドロゲルは、なお十分に生分解性である。もしラジカル生成による鎖間架橋が形成されていたとすると、分解速度は影響を受けていたであろうし、したがってPEGヒドロゲル分解過程はもっとゆっくりしたものであろうし、分解曲線はフラットであろうし、分解も完結まで至らなかったであろう。もし鎖の切断が起こると、PEGヒドロゲル分解過程は加速されるだろう。2つの分解速度に関しての用語「等しい」は、X%の分解を得るのに必要とされる時間が2つの分解速度間で20%以上、好ましくは15%以上変わらないことを意味する(ここで、Xは5〜90の範囲内にあるものとする)。
【0032】
生分解性PEGベースヒドロゲルが官能基を含有している場合、それらの官能基は保全される。例えば、官能基がアミン基である場合、PEGベースヒドロゲルのアミン含有量は滅菌前と滅菌処理後で同じである。好ましくは、この文脈での用語「同じ」は、本発明に従って滅菌されたヒドロゲル中の官能基の数が滅菌前のヒドロゲル中の官能基の数から30%未満、好ましくは20%未満だけ変わることを意味する。
【0033】
分解速度を測定するためには、不溶性生分解性PEGベースヒドロゲルから可溶骨格分解生成物のアリコートを分離して、そのヒドロゲルから脱離された他の可溶分解生成物からの干渉なしに定量することができる。沈殿又は遠心によりヒドロゲル物体は生理浸透圧の緩衝液の過剰水と分離され得る。遠心は、上澄み液が膨潤ヒドロゲルの体積の少なくとも10%を占めるようなやり方で行われ得る。そのような沈殿又は遠心工程の後は可溶ヒドロゲル分解生成物は水性上澄み液中に残り、1種又はそれ以上の骨格部分を含んでいる水可溶分解生成物はそのような上澄み液のアリコートを適する分離及び/又は分析方法に付することによって検出できる。
【0034】
別法として、水可溶分解生成物は0.45μmフィルターを通す濾過により水不溶性分解生成物から分離することができ、この後、その水可溶分解生成物は通過流中に見出され得る。水可溶分解生成物は遠心と濾過処理の組み合わせによっても水不溶性分解生成物から分離され得る。
【0035】
例として、骨格部分は、他の分解生成物がUV吸収を呈さない波長でUV吸収を呈する基を有し得る。そのような選択的UV吸収基は、アミド結合等の骨格部分の構造成分であり得るし、あるいはインドリル基等の芳香族環系を用いてその反応性官能基に結合させることによって骨格に導入されたものであり得る。
【0036】
薬物のインビボ物理化学又は薬理速度特性を向上させるためには、そのような薬物は、担体(例えば、ヒドロゲル)と複合体化され得る。薬物が担体及び/又はリンカーに一時的に結合されている場合、そのようなシステムは一般に担体連結プロドラッグとして分類される。IUPACによって提供されている定義(http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac.medchemに掲載、2009年7月22日にアクセス)によれば、担体連結プロドラッグとは、改善された物理化学又は薬理速度特性をもたらし且つ一般には加水分解開裂によって容易にインビボ除去され得る一時的担体基と所与の活性物質との仮の連結を含有しているプロドラッグである。
【0037】
用語「薬物」、「生物活性分子」、「生物活性部分」、「生物活性剤」、「活性剤」等は、限定するものではないがウイルス、細菌、菌類、植物、動物、及びヒトを含めた、生物有機体の任意の物理又は生化学特性に影響を及ぼすことができるあらゆる物質を意味する。特に、本明細書で使われる場合、生物活性分子には、ヒト又は他の動物における病気を診断、治療、軽減、処置、又は予防することが意図された、あるいはそうでなければヒト又は動物の身体又は精神の健康状態を高めることが意図されたあらゆる物質が包含される。生物活性分子の例としては、限定するものではないが、ペプチド、蛋白、酵素、小分子ドラッグ(例えば、非ペプチドドラッグ)、染料、脂質、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、細胞、ウイルス、リポソーム、微小粒子及びミセルが挙げられる。本発明で用いるのに適している生物活性剤の類としては、限定するものではないが、催眠薬及び鎮静薬、精神高揚薬、精神安定薬、呼吸器ドラッグ、抗痙攣薬、筋弛緩薬、抗パーキンソン作用薬(ドーパミン拮抗薬)、鎮痛薬、抗炎症薬、抗アレルギー薬、抗不安薬(不安緩解剤)、食欲抑制剤、肥満防止薬、抗片頭痛薬、筋肉収縮剤、抗感染症薬(抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌薬、抗菌薬、ワクチン)、抗炎症薬、抗関節炎薬、抗マラリア薬、制吐剤、抗癲癇薬、抗糖尿病薬、気管支拡張薬、サイトカイン、成長因子、抗がん剤、抗凝固剤、抗高血圧薬、心血管薬、血管拡張薬、血管収縮薬、抗不整脈薬、抗酸化薬、反喘息薬、中枢神経系活性剤、避妊薬を含めたホルモン剤、免疫調節剤、交感神経興奮薬、利尿薬、脂質調節薬、抗アンドロゲン剤、抗寄生虫薬、抗凝固薬、新生物、抗新生物薬、低血糖薬、ステロイド薬、栄養剤及び補助食品、成長補助食品、抗腸炎剤、ワクチン、抗体、診断薬、対照用剤等が挙げられる。
【0038】
「小分子生物活性部分」とは、分子量が3000Dalton以下の上記に記載した生物活性部分のことをいう。
【0039】
本発明による方法に合ったヒドロゲルの生分解性は、加水分解性結合の導入によって達成される。
【0040】
本発明の文脈内での用語「生分解性」とは、生理条件(pH7.4、37℃にある水性緩衝液)下で1時間〜3ヶ月の半減期で非酵素的に加水分解で分解される連結を指し、これには、限定するものではないが、アコニチル、アセタール、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、イミン、ヒドラゾン、マレアミド酸アミド、オルトエステル、ホスホアミド、ホスホエステル、ホスホシリルエステル、シリルエステル、スルホン酸エステル、芳香族カルバマート、これらの組み合わせ他が挙げられる。好ましい生分解性連結は、カルボン酸エステル、カーボナート、ホスホエステル及びスルホン酸エステルであり、最も好ましいのはカルボン酸エステル又はカーボナートである。インビトロ研究には、例えば、pH9、37℃、水性緩衝液のような加速条件が実用的な目的のために用いられ得ることは理解されるところである。
【0041】
つまり、加水分解性結合は、例えば、アコニチル、アセタール、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、イミン、ヒドラゾン、マレアミド酸アミド、オルトエステル、ホスホアミド、ホスホエステル、ホスホシリルエステル、シリルエステル、スルホン酸エステル、芳香族カルバマート、これらの組み合わせ等である。好ましい加水分解性結合は、カルボン酸エステル、カーボナート、ホスホエステル及びスルホン酸エステルであり、最も好ましいのはカルボン酸エステル又はカーボナートである。
【0042】
用語「中断された」は、尿素、アミド、又はカルバマート基もしくはエーテルが炭素鎖の2つの炭素間に挟み込まれていることを意味する。
【0043】
「非生分解性」(安定)とは、非開裂性の永久結合である連結のことをいい、それぞれの接続部分が生理条件(pH7.4、37℃にある水性緩衝液)下で少なくとも6ヶ月の半減期を有していることを意味する。
【0044】
「徐放送達システム」とは、長期間に亘って患者の身体に薬物を放出する組成物のことをいう。
【0045】
「外科用密閉剤」又は「医用密閉剤」とは、ヒドロゲルベースの接着剤並びに切り口、破傷、穿刺、擦過傷、挫傷や剥離のような、創傷を密閉するためのその他の手段のことをいう。
【0046】
「止血剤」とは、創傷からの出血を停止させるのに使われる作用剤のことをいう。
【0047】
「手術用スポンジ」とは、手術部位からの液体を吸収するのに使われるスポンジを意味する。
【0048】
ガンマ線照射は、その照射源に関係なく、200keVより大きい量子エネルギーでの電磁照射と定義されている。好ましくは、照射源は、コバルト60である。
【0049】
「滅菌」とは、あらゆる成長段階並びに形態にある、細菌、酵母、真菌、ウイルス、胞子を含めた、検出可能な伝染性外的病原因子が存在しないことを意味する。
【0050】
「滅菌処理」とは、例えば照射(例えばUVあるいはガンマ線での照射)により材料を滅菌にするための処理のことをいう。好ましくは、ガンマ線での照射が用いられる。
【0051】
「保護溶媒」は、三次元構造及び物理化学特性を保全するために、つまりヒドロゲルが無傷であることを保全するために滅菌前に乾燥ヒドロゲルを溶媒和させるのに用いられる化学薬品化合物を表している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1a】pH10.3、37℃における4aの滅菌後インビトロ分解速度を、3a(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1b】pH10.3、37℃における4bの滅菌後インビトロ分解速度を、3a(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1c】pH10.3、37℃における4cの滅菌後インビトロ分解速度を、3a(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1d】pH10.3、37℃における4dの滅菌後インビトロ分解速度を、3a(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1e】pH10.3、37℃における4eの滅菌後インビトロ分解速度を、3a(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1f】pH9.0、37℃における4fの滅菌後インビトロ分解速度を、3b(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1g】pH9.0、37℃における4gの滅菌後インビトロ分解速度を、3b(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1h】pH9.0、37℃における4hの滅菌後インビトロ分解速度を、3b(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1i】pH9.0、37℃における4iの滅菌後インビトロ分解速度を、3b(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1j】pH9.0、37℃における4jの滅菌後インビトロ分解速度を、3b(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図1k】pH9.0、37℃における4kの滅菌後インビトロ分解速度を、3b(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【図2】pH9.0、37℃における6の滅菌後インビトロ分解速度を、5(滅菌していないヒドロゲル;参考)と一緒にして示している。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0054】
本発明は、ヒドロゲルを無傷に保持する保護溶媒の存在下に照射によって生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルを滅菌する方法に関する。本発明に従って滅菌された生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは、同じ分解速度を有しており且つ十分に分解性であるが、このことは不安定な生分解性結合に損傷がないこと、したがって安定結合への損傷も起こっていないこと、さらには望ましくない架橋も起こっていないこと、つまりヒドロゲルが無傷であることが保全されることを意味している。本発明に従って滅菌された生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルが反応性の官能基を含有している場合、そのような基の官能性も保全される、すなわち基はそのまま保全される。そのような反応性官能基は、アフィニティーリガンド、キレート基、ドラッグ、プロドラッグ、担体連結プロドラッグ他を直接又は間接的に連結するための結合ポイントとして役立ち得る。そのような反応性官能基の非限定的な例としては、限定するものではないが、カルボン酸及び活性化誘導体、アミノ、マレイミド、チオール、スルホン酸及び誘導体、カーボナート及び誘導体、カルバマート及び誘導体、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン、イソシアナート、イソチオシアナート、リン酸及び誘導体、ホスホン酸及び誘導体、ハロアセチル、ハロゲン化アルキル、アクリロイル及び他のα−β不飽和マイケル受容体、アリールフルオリドのようなアリール化剤、ヒドロキシルアミン、ピリジルジスルフィドのようなジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ジアゾアルカン、ジアゾアセチル化合物、エポキシド、オキシラン、及びアジリジン;好ましくはカルボン酸及び活性化誘導体、アミノ、チオール、スルホン酸及び誘導体、カーボナート及び誘導体、カルバマート及び誘導体、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン、イソシアナート、イソチオシアナート、リン酸及び誘導体、ホスホン酸及び誘導体、ハロアセチル、ハロゲン化アルキル、アリールフルオリドのようなアクリロイルアリール化剤、ヒドロキシルアミン、ピリジルジスルフィドのようなジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、オキシラン、及びアジリジンが挙げられる。好ましい反応性官能基としては、チオール、マレイミド、アミノ、カルボン酸及び誘導体、カーボナート及び誘導体、カルバマート及び誘導体、アルデヒド、及びハロアセチルが挙げられ、より好ましくはチオール、アミノ、カルボン酸及び誘導体、カーボナート及び誘導体、カルバマート及び誘導体、アルデヒド、及びハロアセチルが挙げられる。好ましくは、反応性官能基は、一級アミノ基又はカルボン酸、最も好ましくは一級アミノ基である。
【0055】
一実施形態では、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの反応性官能基は保護基で保護されているが、これは滅菌後に脱離される。
【0056】
本発明に従って滅菌されたPEGベース不溶性ヒドロゲルは、例えば、再生医療、皮膚再生、眼内デバイス、医用埋め込み剤、外科用密閉剤及びスポンジ、止血剤、徐放送達システム、医用画像化剤及びプロドラッグ担体のような、滅菌が有益であるあるいは必要とされているあらゆる適用で用いられ得る。好ましい使用は、徐放送達システム及びプロドラッグ担体としてであり、最も好ましいのはプロドラッグ担体としてである。予め形成された三次元ヒドロゲルは保護溶媒の存在下に又は2種又はそれ以上の保護溶媒の混合物もしくはこれらの水性溶液中で照射により滅菌され、滅菌ヒドロゲルは続いて場合により、例えば、例えばペプチド、プロテイン又は小分子のような生物活性部分を持ち得る。そのような生物活性部分はヒドロゲルには安定なスペーサー部分を介して又は分解性リンカー部分を介して連結され得る。
【0057】
代替の実施形態では、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは、最初に小分子生物活性部分が搭載され、その後保護溶媒の存在下に又は2種又はそれ以上の保護溶媒の混合物もしくはそれらの水性溶液中で照射により滅菌される。
【0058】
本発明による滅菌に適しているPEGベース不溶性ヒドロゲルはさまざまな形状のものであり得るが、そのようなものとしては、限定するものではないが、無定形、球形、水晶形、フラット形(例えばフィルムでの)又は管形のヒドロゲルが挙げられる。好ましい実施形態では、PEGベース不溶性ヒドロゲルは、粒子直径が1〜1000ミクロン、好ましくは10〜100ミクロンの球形微小粒子からなっている。
【0059】
本発明による滅菌に適しているPEGベース不溶性ヒドロゲルは、分解性結合で相互接続された骨格部分からできている。場合によっては、この骨格部分は、骨格とは分解性結合を介して繋ぎ合わされていて、さらに分解性結合をもち得る、オリゴマー、高分子又は低分子量架橋部分を通して架橋されているものであり得る。場合により、骨格部分は、以下(リガンド、キレート基、スペーサー分子、ブロック基)のうちの1つ又はそれ以上への永久連結をもち得る。
【0060】
本発明の一実施形態ではヒドロゲルは以下の組成を有している。
【0061】
生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは、加水分解性結合により相互接続された骨格部分からできている。好ましくは、その骨格部分は、1kDa〜20kDa、より好ましくは1kDa〜15kDaの範囲内にある分子量を有している。
【0062】
好ましくは、この生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルにおいては、骨格部分は、相互接続された生分解性官能基及び反応性官能基からなる、多くある官能性基を特徴としている。好ましくは、相互接続された生分解性基と反応性官能基の和は16以上、好ましくは16〜128(20〜100好ましい、20〜40も好ましい、24〜80より好ましい、28〜32もより好ましい、30〜60さらにより好ましい)であり;最も好ましいのは30〜32である。この相互接続された官能基及び反応性官能基に加えて保護基も存在し得ることは理解されるところである。
【0063】
この官能基は、線状鎖に結合されたものであり得る。この場合、官能基は、鎖に沿って規則的に又は不規則的に間隔を置いて配置されたものであり得るし、あるいは別形態としては、この鎖は、官能基の全体をもたらしている、2つの樹枝状部分で終端されたものであり得る。
【0064】
優先的に、骨格部分は、少なくとも3つのPEGベース高分子鎖を延ばしている、分岐コアを有していることを特徴としている。そのような分岐コアは、結合形態で、ポリ−又はオリゴ−アルコール、好ましくはペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、ヘキサグリセリン、スクロース、ソルビトール、フルクトース、マンニトール、グルコース、セルロース、アミロース、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、ポリビニルアルコホール、デキストラン、ヒアルロナンを含んだものであり得るし、あるいは分岐コアは、結合形態で、オルニチン、ジアミノ酪酸、トリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシン、オクタリシン、ノナリシン、デカリシン、ウンデカリシン、ドデカリシン、トリデカリシン、テトラデカリシン、ペンタデカリシン又はオリゴリシン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミンのようなポリ−又はオリゴ−アミンを含んだものであり得る。好ましくは、分岐コアは、結合形態で、トリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシン、オクタリシン、ノナリシン、デカリシン、ウンデカリシン、ドデカリシン、トリデカリシン、テトラデカリシン、ペンタデカリシン又はオリゴリシン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミンのようなポリ−又はオリゴ−アミンを含んだものであり得る。
【0065】
好ましくは、この分岐コアは、3〜16のPEGベース高分子鎖を延ばしている(より好ましくは4〜8)。
【0066】
骨格部分の相互接続された官能基と反応性官能基の和は、この分岐コアから延びているPEGベース高分子鎖の数だけ等しく分けられている。分岐コアから延びているPEGベース高分子鎖の数が均等な分布を可能としない場合は、PEGベース高分子鎖1本当たりの相互接続された官能基と反応性官能基の和の平均数からの逸脱が最小に保たれることが好ましい。
【0067】
より好ましくは、骨格部分の相互接続された官能基と反応性官能基の和は、分岐コアから延びているPEGベース高分子鎖の数だけ均等に分けられている。例として、32個の相互接続された官能基と反応性官能基がある場合、8個の基が、そのコアから延びている4PEGベース高分子鎖のそれぞれによって、好ましくは各PEGベース高分子鎖の終端に結合された樹枝状部分によってもたらされ得る。別形態としては、4個の基がコアから延びている8PEGベース高分子鎖のそれぞれによってあるいは2個の基が16PEGベース高分子鎖のそれぞれによってもたらされ得る。
【0068】
骨格部分に好適な分岐コアから延びている対応するPEGベース高分子鎖の好ましい構造は、例としてであるが、JenKem Technology,USAのプロダクトリスト(2009年7月28日にwww.jenkemusa.comからダウンロードによりアクセス)に詳述されている、4ARM−PEG Derivatives(ペンタエリトリトールコア)、8ARM−PEG Derivatives(ヘキサグリセリンコア)及び8ARM−PEG Derivatives(トリペンタエリトリトールコア)のようなmulti−arm(多腕)PEG誘導体である。最も好ましいのは、4arm PEG Amine(ペンタエリトリトールコア)及び4arm PEG Carboxyl(ペンタエリトリトールコア)、8arm PEG Amine(ヘキサグリセリンコア)、8arm PEG Carboxyl(ヘキサグリセリンコア)、8arm PEG Amine(トリペンタエリトリトールコア)、及び8arm PEG Carboxyl(トリペンタエリトリトールコア)である。骨格部分中のそのような多腕PEG誘導体の好ましい分子量は、1kDa〜20kDa、より好ましくは2.5kDa〜15kDa、なおより好ましくは5kDa〜10kDaである。このような試薬はヒドロゲル中には結合形態で存在していることは理解されるところである。
【0069】
そのようなさらなる官能性の基は樹枝状部分によってもたらされ得る。好ましくは、それぞれの樹枝状部分は、0.4kDa〜4kDa、より好ましくは0.4kDa〜2kDaの範囲内の分子量を有している。好ましくは、それぞれの樹枝状部分は、少なくとも3分岐及び少なくとも4反応性官能基、且つ多くて63分岐及び64反応性官能基を有しており、少なくとも7分岐及び少なくとも8反応性官能基且つ多くて31分岐及び32反応性官能基が好ましい。
【0070】
そのような樹枝状部分の例は、結合形態のトリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシン、オクタリシン、ノナリシン、デカリシン、ウンデカリシン、ドデカリシン、トリデカリシン、テトラデカリシン、ペンタデカリシン、ヘキサデカリシン、ヘプタデカリシン、オクタデカリシン、ノナデカリシンである。好ましいそのような樹枝状部分の例には、結合形態のトリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシンが含まれる(最も好ましいのはトリリシン、ペンタリシン又はヘプタリシン)。
【0071】
最も好ましくは、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは、その骨格部分が式C(A−Hyp)4で表される四級炭素を有していることを特徴としていることであって、この式においてはそれぞれのAは独立にその四級炭素に永久共有結合で終端結合されたポリ(エチレングリコール)ベース高分子鎖であり、このPEGベース高分子鎖の遠位終端は樹枝状部分Hypに共有結合されており、それぞれの樹枝状部分Hypは相互接続された生分解性官能基と反応性官能基を代表する少なくとも4個の官能性の基並びに永久結合を有している。それぞれの骨格部分は、少なくとも16個の相互接続された生分解性官能基及び反応性官能基並びに永久結合、好ましくは20〜64、より好ましくは28〜64個の相互接続された生分解性官能基及び反応性官能基並びに永久結合を含有している。
【0072】
好ましくは、それぞれのAは、式−(CH2)n1(OCH2CH2)nX−[式中、n1は1又は2であり;nは5〜50の範囲内の整数であり;XはAとHypを共有連結している官能基である]から独立に選択される。
【0073】
好ましくは、AとHypとは、アミド官能基により共有連結されている。
【0074】
好ましくは、樹枝状部分Hypは、超分岐ポリペプチドである。好ましくは、この超分岐ポリペプチドは、結合形態のリシンからなっていて、最も好ましくはHypはウンデカリシニル又はヘプタリシニルである。好ましくは、それぞれの樹枝状部分Hypは、0.4kDa〜4kDaの範囲内の分子量を有している。骨格部分C(A−Hyp)4は同じ又は異なる樹枝状部分Hypからなっていること及びそれぞれのHypは独立に選択され得ることは理解されるところである。それぞれの部分Hypは5〜21リシン、好ましくは少なくとも7リシンからなっている、すなわちそれぞれの部分Hypは結合形態の5〜32リシン、好ましくは結合形態の少なくとも7リシンからなっている。
【0075】
好ましくは、C(A−Hyp)4は、1kDa〜20kDa、より好ましくは1kDa〜15kDa、なおより好ましくは1kDa〜10kDaの範囲内の分子量を有している。
【0076】
本発明によるヒドロゲルの生分解性は、加水分解性結合の導入により達成される。
【0077】
好ましくは、骨格部分はクロスリンカー部分を通して一緒に連結されていて良く、それぞれのクロスリンカー部分は少なくとも2つの加水分解性結合で終端されている。この終端分解性結合に加えて、クロスリンカー部分は、さらなる生分解性結合を含有していて良い。つまり、骨格部分に連結されたクロスリンカー部分のそれぞれの終端には加水分解性結合が含まれ、クロスリンカー部分にはさらなる生分解性結合が場合により存在していて良い。
【0078】
つまり、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルには、加水分解性結合で相互接続された骨格部分が含まれており、ここにおける骨格部分は好ましくはクロスリンカー部分を通して一緒に連結されており、それぞれのクロスリンカー部分は少なくとも2つの加水分解性結合で終端されている。
【0079】
生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは1種又はそれ以上の異なるタイプのクロスリンカー部分を含有し得る(好ましくは1種)。クロスリンカー部分は線状もしくは分岐分子であり得、好ましくは線状分子である。本発明の好ましい実施形態では、クロスリンカー部分は、骨格部分に少なくとも2つの生分解性結合で接続されている。
【0080】
用語の生分解性結合とは、生理条件(pH7.4、37℃にある水性緩衝液)下において1時間〜3ヶ月の半減期で非酵素的に加水分解で分解される連結を表しており、そのようなものとしては、限定するものではないが、アコニチル、アセタール、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、イミン、ヒドラゾン、マレアミド酸アミド、オルトエステル、ホスホアミド、ホスホエステル、ホスホシリルエステル、シリルエステル、スルホン酸エステル、芳香族カーボナート、これらの組み合わせ他が挙げられる。好ましい生分解性連結は、カルボン酸エステル、カーボナート、ホスホエステル及びスルホン酸カルボン酸エステルであり、最も好ましいのはカルボン酸エステル又はカーボナートである。
【0081】
好ましくは、クロスリンカー部分は、60Da〜5kDa(より好ましくは、60Da〜4kDa、なおより好ましくは60Da〜3kDa)、さらにより好ましくは0.5〜4kDa、なおより好ましくは1kDa〜4kDa、最も好ましくは1kDa〜3kDaの範囲内の分子量を有している。一実施形態では、クロスリンカー部分は、高分子からなっている。
【0082】
オリゴマー又は高分子架橋部分に加えて、特にこの生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルを形成するのに親水性高分子量骨格部分が用いられる場合は、低分子量架橋部分が用いられ得る。
【0083】
好ましくは、このポリ(エチレングリコール)ベースクロスリンカー部分は、場合によりさらなる官能基を含んでいる、エチレングリコール単位を含む炭化水素鎖であり、ここにおける各ポリ(エチレングリコール)ベースクロスリンカー部分には、それぞれ、少なくともmエチレングリコール単位が含まれ、ここにおけるmは、3〜100、好ましくは1〜70、最も好ましくは10〜70の範囲内の整数である。より好ましくは、ポリ(エチレングリコール)ベースクロスリンカー部分は、60Da〜5kDa、より好ましくは0.5kDa〜5kDaの範囲内の分子量を有している。
【0084】
好ましくは、クロスリンカー部分は、好ましくは唯一のPEGベース分子鎖によって表される、PEGベースである。好ましくは、ポリ(エチレングリコール)ベースクロスリンカー部分は、場合によりさらなる化学官能基を含んでいる、1個又はそれ以上のエチレングリコール単位を含む炭化水素鎖であり、ここにおけるポリ(エチレングリコール)ベースクロスリンカー部分には、それぞれ、少なくともmエチレングリコール単位が含まれ、ここにおけるmは、1〜100(好ましくは3〜100)、好ましくは1〜70、さらにより好ましくは10〜70の範囲内の整数である。好ましくは、ポリ(エチレングリコール)ベースクロスリンカーは、60Da〜5kDa、好ましくは0.5kDa〜5kDaの分子量を有している。
【0085】
本発明の好ましい実施形態においてはこのクロスリンカー部分は、超分岐樹枝状部分に永久アミド結合を通して接続されている骨格部分によってもたらされる2つのα−、ω−脂肪族ジカルボン酸スペーサーにエステル結合を通して対称的に接続されている、PEG鎖からなっている。
【0086】
骨格部分に接続されたスペーサー部分及びそのもう一方の側が架橋部分に接続されたスペーサー部分のジカルボン酸は、3〜12炭素原子(最も好ましくは5〜8炭素原子)からなっていて、1つ又はそれ以上の炭素原子において置換されていて良い。好ましい置換基は、アルキル基、ヒドロキシ基又はアミド基あるいは置換されたアミノ基である。この脂肪族ジカルボン酸のメチレン基の1つ又はそれ以上は、O又はNHあるいはアルキル置換Nで場合により置換されていて良い。好ましいアルキルは、1〜6炭素原子を有する線状又は分岐アルキルである。
【0087】
骨格部分とクロスリンカー部分との間の生分解性結合の加水分解速度は、PEG−エステルカルボキシ基に隣接して接続された原子の数及びタイプによって影響を受け、もしくは決定される。例として、PEGエステルを形成するのにコハク酸、アジピン酸又はグルタル酸から選択することにより、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの分解半減期を変えることができる。
【0088】
代替の実施形態では、反応性官能基の数を増やす(これは、例えば、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルのドラッグ搭載量を増大させることを可能にする)ために重合ヒドロゲルの反応性官能基には多官能部分がカップリングされる。そのような多官能部分は、適切に置換された結合形態のリシン、ジリシン、トリリシン、テトラリシン、ペンタリシン、ヘキサリシン、ヘプタリシン、又はオリゴリシンの誘導体、低分子量PEIによってもたらされ得る。好ましくは、この多官能部分は、結合形態のリシンからできている。場合によっては、そのような多官能部分は、保護基で保護されていて良い。
【0089】
さらに、本発明によるそのようなヒドロゲルは、同じ官能基をもっているスペーサーで官能化されていて良く、例として、ヒドロゲルには、適切に活性化されたCOOH−PEG6−NH−Fmocのような、ヘテロ二官能スペーサーをカップリングして、そのFmoc保護基を除去することでアミノ基が導入され得る。
【0090】
1つの好ましいクロスリンカー部分を以下に示す(点線は、骨格部分への相互接続生分解性連結を示している):
【化1】
【0091】
[式中、qは5〜50の整数である]。
【0092】
好ましくは、PEGベース不溶性ヒドロゲルは、加水分解性結合により相互接続された骨格部分からできている。
【0093】
より好ましくは、骨格部分は、以下の式:
【化2】
【0094】
[式中、点線は、骨格部分の残りの部分への結合を示している]
で表される分岐コアを含んでいる。
【0095】
より好ましくは、骨格部分は、以下の式:
【化3】
【0096】
[式中、nは5〜50の整数であり、点線は、骨格部分の残りの部分への結合を示している]
で表される構造を含んでいる。
【0097】
より好ましくは、骨格部分は、超分岐部分Hypを含んでいる。
【0098】
より好ましくは、骨格部分は、以下の式:
【化4】
【0099】
[式中、点線は、分子の残部への結合を示しており、*でマークされた炭素原子は好ましい実施形態においてS配置を示している]
で表される超分岐部分Hypを含んでいる。ところで、上記に示されている超分岐部分HypはR配置にあっても良いしあるいはラセミ体であっても良いことは理解されるところである。
【0100】
より好ましくは、骨格部分は、以下の式:
【化5】
【0101】
[式中、各点線の一方は超分岐部分Hypへの結合を示しており、もう一方の点線は分子の残部への結合を示している;またmは2〜4の整数である]
で表される少なくとも1つのスペーサーに結合されている。
【0102】
より好ましくは、骨格部分は、以下の構造:
【化6】
【0103】
[式中、qは3〜100の整数である]
を有しているクロスリンカー部分によって一緒に連結されている。
【0104】
より好ましくは、PEGベース不溶性ヒドロゲルの骨格部分は、以下の式:
【化7】
【0105】
[式中、各点線は、それぞれ、骨格部分への結合を示しており、またnは45である]
で表される部分によって一緒に連結されている。
【0106】
また、より好ましくは、PEGベース不溶性ヒドロゲルの骨格部分は以下の式:
【化8】
【0107】
[式中、各点線は、それぞれ、骨格部分への結合を示しており、またnは22である]
で表される部分によって一緒に連結されている。
【0108】
本発明は、保護溶媒の存在下での照射による生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの滅菌を記載するものである。この滅菌処理に用いられる生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは照射の前に保護溶媒で溶媒和され、その保護溶媒は照射の間中そのままで存在している。好ましくは、保護溶媒は、酢酸(水溶液、0.01〜1%(v/v))、アセトニトリル、4−アセチルモルホリン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジクロロメタン(DCM)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルカーボナート、ジメチルホルムアミド、1−エチル−2−ピロリドン、N−エチルアセトアミド、N−エチルホルムアミド、ホルムアミド、4−ホルミルモルホリン、1−ホルミルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、アルキルアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール)、ホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、N−メチルアセトアミド、ニコチンアミド(水溶液、0.1〜5%(w/w))、ピリドキシン(水溶液、0.1〜5%(w/w))、N−メチルホルムアミド、NMP、1,2−プロピレンカーボナート、テトラヒドロフラン(THF)、スルホラン、水、又はこれらの混合物からなる群から選択される。
【0109】
より好ましくは、保護溶媒は、酢酸(水溶液、0.01〜1%(v/v))、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルカーボナート、ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、アルキルアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール)、ホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ニコチンアミド(水溶液、0.1〜5%(w/w))、N−メチルホルムアミド、NMP、テトラヒドロフラン(THF)、スルホラン、水、又はこれらの混合物からなる群から選択される。
【0110】
最も好ましくは、保護溶媒は、4−アセチルモルホリン、DMA、DMF、DMI、DMPU、1−エチル−2−ピロリドン、N−エチルアセトアミド、N−エチルホルムアミド、4−ホルミルモルホリン、1−ホルミルピロリドン、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、DMSO又はNMPから選択される。なおより好ましくは保護溶媒は、DMSO、DMA、DMF、DMI又はNMPから;なおより好ましくはDMA、DMF、DMI又はNMPから;さらになおより好ましくはDMSO又はNMP、なおより好ましくはNMPから選択される。
【0111】
場合によっては、保護溶媒は脱気されて、他の、その保護溶媒に溶ける、塩等の、1種又はそれ以上の保護剤を場合により含有していて良い。好ましくは、保護剤は、0.01〜10%の濃度で含まれている。保護溶媒はまた、2種又はそれ以上の保護溶媒の混合物もしくはそれらの水性希釈液であり得ることは理解されるところである。
【0112】
保護剤は、置換されていて良い線状、分岐、又は環状C1〜C10アルキルアミン、置換されていて良い線状又は分岐C1〜C10アルキルカルボン酸、置換されていて良い線状又は分岐C1〜C10アルキルスルホン酸、置換されていて良い線状又は分岐C1〜C10アルキルチオール、又は炭水化物からなる群から選択され得る。保護剤は、ヒドロキシル基で置換されていて良いしあるいは尿素、アミド、又はカルバマート基で置換又は中断されていて良いしあるいはエーテルで中断されていても良い。2種又はそれ以上の保護剤の混合物が保護溶媒に加えられ得る。
【0113】
好ましい保護剤は、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、sec−ブチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、セリノール、トリスヒドロキシメチル−アミノメタン、酢酸、ギ酸、アスコルビン酸、グリシネアミド、ピバル酸、プロパン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、チオグリセリン、ジチオトレイトール、メルカプトエタノール、還元グルタチオンから選択される。
【0114】
滅菌するためには、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは適する容器に入れられるが、これは滅菌処理後の滅菌性を確実なものにする。つまり、ヒドロゲルは保護溶媒で溶媒和され、そして適する容器は密閉されて滅菌処理に付される。適する容器は、容器密閉後の滅菌性を確実なものにしてその滅菌処理が行われるものが選択される。別形態としては、PEGベース不溶性ヒドロゲルは、最初に保護溶媒で溶媒和され、その後適する容器の中に移され、そしてこの中で滅菌されて、その適する容器がこの後密閉される。生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの滅菌は、線量が5〜100kGy、好ましくは8〜50kGy、より好ましくは20〜40kGy(例えば32〜40kGy等)、より好ましくは20〜30kGyの照射(好ましくはガンマ線の照射)により行われる。本発明による生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの照射は室温(25℃)〜−80℃の温度で行われ得る。好ましくは、照射は、室温にて行われる。室温より低い温度を得るためには、滅菌されるべき生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルが含まれている適する容器は冷却可能な環境内に格納され得るしあるいは氷やドライアイス等の冷却材で囲まれ得る。
【0115】
そのような滅菌生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは、例えば埋め込み物として、直接用いられ得るし、あるいは、例えばその滅菌生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルに生物活性部分をカップリングすることでさらに改変され得る。後者の場合は、さらなる処理が、滅菌済み化学薬品及び生物活性部分を用いて、滅菌条件下で行われる。
【0116】
本発明の一実施形態では、小分子生物活性部分が生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの官能基にカップリングされて、いわゆる小分子生物活性部分保持生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルがもたらされ、これがこの後保護溶媒の存在下に照射により滅菌される。ガンマ線照射の間中その化学構造を維持するような小分子生物活性部分のみが適していることは当業者には明らかである。
【0117】
つまり、本発明の好ましい態様は、生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルが小分子生物活性部分を持っている、本発明による方法である。
【0118】
生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルが小分子生物活性部分を持ち、本発明の方法による照射により滅菌される場合は、その小分子生物活性部分は保全されているはずである。この文脈での用語「保全されている」とは、質量分光分析、超高速液体クロマトグラフィーあるいは薬理活性試験のような、当業者に知られている方法で測定できるが、そのような滅菌ヒドロゲルから放出される小分子生物活性部分の少なくとも90%は変化していないことを好ましくは意味する。
【0119】
本発明の好ましい実施形態では、乾燥生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルが5〜10ml NMP/g乾燥生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルで溶媒和され、滅菌後汚染を回避するために密閉容器を用いて、線量が25kGyのガンマ線で照射される。滅菌ヒドロゲルに生物活性部分をカップリングするような、さらなる処理をするためには、NMPは、フィルター装着シリンジあるいは適するカラムを用いて所望溶媒に交換される。生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルを滅菌した後のすべての工程は、滅菌溶液を用いて、無菌状態下で行われることは当業者には明らかである。
【0120】
本発明のなおより好ましい実施形態では、1gの乾燥生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲル当たり、0.1%〜2%(v/v)アミノエタノール又はプロピルアミンを含んでいる5〜10ml NMPが生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルを溶媒和させるのに用いられ、そのような溶媒和された生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルは、滅菌後汚染を回避するために密閉容器を用いて、線量が32kGyのガンマ線で続いて照射される。滅菌ヒドロゲルに生物活性部分をカップリングするような、さらなる処理をするためには、0.1%〜2%(v/v)アミノエタノール又はプロピルアミンを含んでいるNMPは、フィルター装着シリンジあるいは適するカラムを用いて所望の溶媒に交換される。生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルを滅菌した後のすべての工程は、滅菌溶液を用いて、無菌状態下で行われることは当業者には明らかである。
【0121】
本発明のさらなる態様は、本発明のいずれの方法によっても得ることができる、特に小分子生物活性部分を持つ、滅菌生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルである。
【実施例】
【0122】
(材料及び方法)
材料
Amino 4−arm PEG5000は、JenKem Technology(Beijing,P.R.China)から入手した。
【0123】
他の化学薬品はすべてSigma−ALDRICH Chemie GmbH(Taufkirchen,Germany)から入手した。
【0124】
ヒドロゲルビーズに対しては、反応容器としてはあるいは洗浄工程にはポリプロピレンフリットが装着されたシリンジを用いた。
【0125】
分析:
エレクトロスプレーイオン質量分析(ESI−MS)は、Waters Acquity UPLC Systemが装着されたThermo Fisher Orbitrap Discovery機器で行った。
【0126】
PEG出発材料が多分散であるためPEG生成物のMSスペクトルは一続きの(CH2CH2O)n部分を示した。理解をより容易にするため実施例には1つだけの単一代表的m/zシグナルが記載されている。
【0127】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、特に断らない限り、Superdex75 5/150 GLカラム(Amersham Bioscience/GE Healthcare)が装着されたAmersham Bioscience AEKTAbasic装置を用いて行った。4/1(v/v)水性緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、0.005%TWEEN 20、pH7.4)/アセトニトリル混合物を移動相として用いた。吸収は215nmで検出した。
【0128】
(実施例1)
骨格試薬1gの合成
【化9】
【0129】
骨格試薬1gをAmino 4−arm PEG5000(1a)から以下のスキーム:
【化10】
【0130】
に従って合成した。
【0131】
化合物1bの合成には、4−Arm−PEG5000テトラアミン1a(MW約5200g/mol、5.20g、1.00mmol、HCl塩)を20mLのDMSO(無水)に溶解させた。Boc−Lys(Boc)−OH(2.17g、6.25mmol)/5mLのDMSO(無水)、EDC HCl(1.15g、6.00mmol)、HOBt・H2O(0.96g、6.25mmol)、及びコリジン(5.20mL、40mmol)を加えた。この反応混合物をRTにて30分間撹拌した。
【0132】
この反応混合物を1200mLのジクロロメタンで希釈し、600mLの0.1N H2SO4(2×)、ブライン(1×)、0.1M NaOH(2×)、及び1/1(v/v)ブライン/水(4×)で洗浄した。水層を500mLのDCMで再抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、6.3gの粗製生成物1bを無色の油状物として得た。化合物1bをRP−HPLCにより精製した。
収量3.85g(59%)無色ガラス状生成物1b
MS:m/z1294.4=[M+5H]5+(計算=1294.6)
【0133】
3.40gの化合物1b(0.521mmol)/5mLのメタノールと9mLの4N HCl/ジオキサンをRTにて15分間撹拌することにより化合物1cを得た。揮発分を真空で除去した。この生成物をさらに精製することなく次の工程で用いた。
MS:m/z1151.9=[M+5H]5+(計算=1152.0)
【0134】
化合物1dの合成には、3.26gの化合物1c(0.54mmol)を15mLのDMSO(無水)に溶解させた。2.99g Boc−Lys(Boc)−OH(8.64mmol)/15mL DMSO(無水)、1.55g EDC HCl(8.1mmol)、1.24g HOBt・H2O(8.1mmol)、及び5.62mLのコリジン(43mmol)を加えた。この反応混合物をRTにて30分間撹拌した。
【0135】
反応混合物を800mL DCMで希釈し、400mLの0.1N H2SO4(2×)、ブライン(1×)、0.1M NaOH(2×)、及び1/1(v/v)ブライン/水(4×)で洗浄した。水層を800mLのDCMで再抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、ガラス状粗製生成物を得た。
【0136】
生成物をDCMに溶解させて冷却(−18℃)ジエチルエーテルで沈殿させた。この処理を2回繰り返し、その沈殿物を真空で乾燥させた。
収量:4.01g(89%)無色ガラス状生成物1d(これをさらに精製することなく次の工程で用いた)
MS:m/z1405.4=[M+6H]6+(計算=1405.4)
【0137】
溶液の化合物1d(3.96g、0.47mmol)/7mLのメタノールと20mLの4N HCl/ジオキサンをRTにて15分間撹拌することにより化合物1eを得た。揮発分を真空で除去した。この生成物をさらに精製することなく次の工程で用いた。
MS:m/z969.6=[M+7H]7+(計算=969.7)
【0138】
化合物1fの合成には、化合物1e(3.55g、0.48mmol)を20mLのDMSO(無水)に溶解させた。Boc−Lys(Boc)−OH(5.32g、15.4mmol)/18.8mLのDMSO(無水)、EDC HCl(2.76g、14.4mmol)、HOBt・H2O(2.20g、14.4mmol)、及び10.0mLのコリジン(76.8mmol)を加えた。この反応混合物をRTにて60分間撹拌した。
【0139】
この反応混合物を800mLのDCMで希釈し、400mLの0.1N H2SO4(2×)、ブライン(1×)、0.1M NaOH(2×)、及び1/1(v/v)ブライン/水(4×)で洗浄した。水層を800mLのDCMで再抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、粗製生成物1fを無色の油状物として得た。
【0140】
生成物をDCMに溶解させて冷却(−18℃)ジエチルエーテルで沈殿させた。この工程を2回繰り返し、その沈殿物を真空で乾燥させた。
収量4.72g(82%)無色ガラス状生成物1f(これをさらに精製することなく次の工程で用いた)
MS:m/z1505.3=[M+8H]8+(計算=1505.4)
【0141】
溶液の化合物1f(MW約12035g/mol、4.72g、0.39mmol)/20mLのメタノールと40mLの4N HCl/ジオキサンをRTにて30分間撹拌することにより骨格試薬1gを得た。揮発分を真空で除去した。
収量3.91g(100%)、ガラス状生成物骨格試薬1g
MS:m/z977.2=[M+9H]9+(計算=977.4)
【0142】
(1gの代替の合成経路)
化合物1bの合成には、4−Arm−PEG5000テトラアミン(1a)(50.0g、10.0mmol)/250mLのiPrOH(無水)の45℃懸濁液に、boc−Lys(boc)−OSu(26.6g、60.0mmol)及びDIEA(20.9mL、120mmol)を加え、この混合物を30分間撹拌した。
【0143】
続いて、n−プロピルアミン(2.48mL、30.0mmol)を加えた。5分後この溶液を1000mLのMTBEで希釈し、一晩−20℃で撹拌なしで保存した。上澄み液のおよそ500mLをデカント分離して捨てた。300mLの冷MTBEを加え、1分震盪の後その生成物をガラスフィルターを通す濾過により回収し、500mLの冷MTBEで洗浄した。この生成物を真空で16時間乾燥させた。
収量:65.6g(74%)1b(白色の塊状固形物)
MS:m/z=937.4=[M+7H]7+(計算=937.6)
【0144】
前の工程からの化合物1b(48.8g、7.44mmol)/156mLの2−プロパノールを40℃で撹拌することにより化合物1cを得た。196mLの2−プロパノールと78.3mLの塩化アセチルの混合物を撹拌下で1〜2分以内に加えた。この溶液を40℃で30分間撹拌し、撹拌なしで一晩−30℃に冷却させた。100mLの冷MTBEを加え、この懸濁液を1分間震盪し、−30℃で1時間冷却させた。生成物をガラスフィルターを通す濾過により回収し、200mLの冷MTBEで洗浄した。生成物を真空で16時間乾燥させた。
【0145】
収量:38.9g(86%)1c(白色の粉末)
MS:m/z=960.1[M+6H]6+(計算=960.2)。
【0146】
化合物1dの合成には、前の工程からの1c(19.0g、3.14mmol)/80mL2−プロパノールの45℃懸濁液にboc−Lys(boc)−OSu(16.7g、37.7mmol)及びDIEA(13.1mL、75.4mmol)を加え、この混合物を45℃で30分間撹拌した。続いて、n−プロピルアミン(1.56mL、18.9mmol)を加えた。5分後この溶液を600mLの冷MTBEで沈殿させ、遠心した(3000分−1、1分)。この沈殿物を真空で1時間乾燥させ、400mL THFに溶解させた。200mLのジエチルエーテルを加え、その生成物を撹拌なしで16時間、−30℃に冷却した。この懸濁液をガラスフィルターで濾過し、300mL冷MTBEで洗浄した。生成物を真空で16時間乾燥させた。
収量:21.0g(80%)1d(白色の粉末)
MS:m/z1405.4=[M+6H]6+(計算=1405.4)
【0147】
前の工程からの化合物1d(15.6g、1.86mmol)を3N HCl/メタノール(81mL、243mmol)に溶解させて40℃で90分間撹拌することにより化合物1eを得た。200mLのMeOH及び700mLのiPrOHを加え、この混合物を−30℃で2時間保存した。結晶化が完結するよう、100mLのMTBEを加え、この懸濁液を一晩−30℃で保存した。250mLの冷MTBEを加え、その懸濁液を1分間震盪し、ガラスフィルターで濾過し、100mLの冷MTBEで洗浄した。生成物を真空で乾燥させた。
収量:13.2g(96%)1e(白色の粉末)
MS:m/z=679.1=[M+10H]10+(計算=679.1)
【0148】
化合物1fの合成には、前の工程からの1e(8.22g、1.12mmol)の165mL2−プロパノール中45℃懸濁液にboc−Lys(boc)−OSu(11.9g、26.8mmol)及びDIEA(9.34mL、53.6mmol)を加え、この混合物を30分間撹拌した。続いて、n−プロピルアミン(1.47mL、17.9mmol)を加えた。5分後この溶液を2時間、−18℃に冷却させ、その後165mLの冷MTBEを加え、その懸濁液を1分間震盪し、ガラスフィルターで濾過した。続いて、そのフィルターケーキを4×200mLの冷MTBE/iPrOH4:1及び1×200mLの冷MTBEで洗浄した。生成物を真空で16時間乾燥させた。
収量:12.8g、MW(90%)1f(淡黄色の塊状固形物)
MS:m/z1505.3=[M+8H]8+(計算=1505.4)
【0149】
4ArmPEG5kDa(−LysLys2Lys4(boc)8)4(1f)(15.5g、1.29mmol)を30mLのMeOHに溶解させて0℃に冷却することにより骨格試薬1gを得た。4N HCl/ジオキサン(120mL、480mmol、0℃に冷却)を3分以内に加え、氷浴を取り除いた。20分後、3N HCl/メタノール(200mL、600mmol、0℃に冷却)を15分以内に加え、この溶液を室温にて10分間撹拌した。この生成物溶液を480mLの冷MTBEで沈殿させ、3000rpmで1分間遠心した。この沈殿物を真空で1時間乾燥させ、90mLのMeOHに再溶解させ、240mLの冷MTBEで沈殿させ、この懸濁液をもう一度3000rpmで1分間遠心した。生成物を真空で乾燥させた。
収量:11.5g(89%)(淡黄色フレーク)
MS:m/z=1104.9[M+8H]8+(計算=1104.9)
【0150】
(実施例2)
クロスリンカー試薬2dの合成
以下のスキーム:
【化11】
【0151】
に従ってアジピン酸モノベンジルエステル(English, Arthur R. et al., Journal of Medicinal Chemistry, 1990, 33(1), 344-347)とPEG2000からクロスリンカー試薬2dを調製した。
【0152】
PEG2000(2a)(11.0g、5.5mmol)+ベンジルアジパート半エステル(4.8g、20.6mmol)/ジクロロメタン(90.0mL)の溶液を0℃に冷却させた。ジシクロヘキシルカルボジイミド(4.47g、21.7mmol)、その後触媒量のDMAP(5mg)を加え、この溶液を撹拌し、一晩(12時間)室温まで到達させた。このフラスコを5時間+4℃で保存した。その固形物を濾過し、溶媒を真空での蒸留により完全に除去した。残留物を1000mL1/1(v/v)エーテル/酢酸エチルに溶解させ、2時間RTにて保存したがこの間フレーク状固形物が形成された。この固形物をCelite(登録商標)のパッドを通す濾過により除去した。この溶液をしっかり栓をしたフラスコ中冷凍庫の−30℃に12時間結晶化が完結するまで保存した。この結晶生成物をガラスフリットで濾過し、冷却エーテル(−30℃)で洗浄した。この濾過ケーキを真空で乾燥させた。収量:11.6g(86%)2b(無色の固形物)。この生成物をさらに精製することなく次の工程で用いた。
MS:m/z813.1=[M+3H]3+(計算=813.3)
【0153】
500mLガラスオートクレーブ中でPEG2000−ビス−アジピン酸−ビス−ベンジルエステル2b(13.3g、5.5mmol)を酢酸エチル(180mL)に溶解させ、10%パラジウム/炭(0.4g)を加えた。この溶液を6bar、40℃で水素の消費が止まるまで(5〜12時間)水素化した。触媒をCelite(登録商標)のパッドを通す濾過により除去し、溶媒を真空で除去した。収量:12.3g(定量)2c(黄色っぽい油状物)。この生成物をさらに精製することなく次の工程で用いた。
MS:m/z753.1=[M+3H]3+(計算=753.2)
【0154】
PEG2000−ビス−アジピン酸半エステル2c(9.43g、4.18mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(1.92g、16.7mmol)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(3.44g、16.7mmol)/75mLのDCM(無水)の溶液を室温にて一晩撹拌した。この反応混合物を0℃に冷却させ、沈殿物を濾過で除去した。DCMを蒸発させ、残留物をTHFから再結晶させた。
収量:8.73g(85%)クロスリンカー試薬2d(無色固形物)
MS:m/z817.8=[M+3H]3+(計算=817.9)
【0155】
(実施例3)
遊離アミノ基3a含有低密度ヒドロゲルビーズの調製
300mg 1g+900mg 2d/10.80mL DMSOの溶液を100mgArlacel P135(Croda International Plc)/80mLヘプタンの溶液に加えた。この混合物をRTにて10分間自家製金属スターラーを用いて700rpmで撹拌して懸濁液を形成させた。1.1mLのN,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン(TMEDA)を加えて重合を起こさせた。2時間後、スターラースピードを400rpmに下げ、混合物をさらに16時間撹拌した。1.6mLの酢酸を加え、その10分後50mLの水を加えた。5分後、スターラーを停止させ、水相を流出させた。
【0156】
ビーズサイズ分別には、この水−ヒドロゲル懸濁液を75、50、40、32及び20μm鋼製シーブで湿式シーブ分別した。その32、40、及び50μmシーブに保持されたビーズフラクションを貯留し、水で3回、エタノールで10回洗浄し、0.1mbarで16時間乾燥させて、3aを白色の粉末として得た。
【0157】
遊離アミノ基3b含有中密度ヒドロゲルビーズの調製
1200mg 1g+3840mg 2d/28.6mL DMSOの溶液を425mg Arlacel P135(Croda International Plc)/100mLヘプタンに加えた。この混合物をRTにて10分間自家製金属スターラーを用いて650rpmで撹拌して懸濁液を形成させた。4.3mLのN,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン(TMEDA)を加えて重合を起こさせた。2時間後、スターラースピードを400rpmに下げ、混合物をさらに16時間撹拌した。6.6mLの酢酸を加え、その10分後50mLの水を加えた。5分後、スターラーを停止させ、水相を流出させた。
【0158】
ビーズサイズ分別には、この水−ヒドロゲル懸濁液を63、50、40、32及び20μm鋼製シーブで湿式シーブ分別した。その32、40、及び50μmシーブに保持されたビーズフラクションを貯留し、水で3回、エタノールで10回洗浄し、0.1mbarで16時間乾燥させて、3bを白色の粉末として得た。
【0159】
遊離アミノ基3c含有高密度ヒドロゲルビーズの調製
2400mg 1g+3600mg 2d/24.0mL DMSOの溶液を425mg Arlacel P135(Croda International Plc)/110mLヘプタンに加えた。この混合物をRTにて10分間自家製金属スターラーを用いて850rpmで撹拌して懸濁液を形成させた。8.6mLのN,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン(TMEDA)を加えて重合を起こさせた。2時間後、スターラースピードを400rpmに下げ、混合物をさらに16時間撹拌した。13.2mLの酢酸を加え、その10分後50mLの水を加えた。5分後、スターラーを停止させ、水相を流出させた。
【0160】
ビーズサイズ分別には、この水−ヒドロゲル懸濁液を63、50、40、32及び20μm鋼製シーブで湿式シーブ分別した。その32、40、及び50μmシーブに保持されたビーズフラクションを貯留し、水で3回、エタノールで10回洗浄し、0.1mbarで16時間乾燥させて、3.00gの3cを白色の粉末として得た。
【0161】
(実施例4)
ヒドロゲルビーズ(4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j、4k)の調製とそれに続くガンマ線照射
フィルター装着シリンジ中の乾燥ヒドロゲル3aの20mg部分を以下の保護溶媒(NMP(4a)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DGDE)(4b)、DMSO(4c)、又は0.1%酢酸/水(4d))で5回洗浄した。
【0162】
同様にフィルター装着シリンジ中の乾燥ヒドロゲル3bの20mg部分を以下の保護溶媒(DMI(4f)、DMA(4g)、NMP+0.5vol%1−プロピルアミン(4h)、NMP+0.5vol%2−アミノエタノール(エタノールアミン)(4i)、NMP+0.1vol%酢酸(4j)、又は0.2M AcOH及び0.1Mプロピルアミン含有NMP(4k))で5回洗浄した。
【0163】
最後の洗浄の後、シリンジを密閉し、ヒドロゲルビーズを少し過剰の保護溶媒で膨潤状態にしておいた。
【0164】
加えてヒドロゲル3aの乾燥サンプルをその乾燥状態で照射して4eを得た。
【0165】
サンプルを室温にて40kGy(4a、4b、4c、4d、4e、4f)又は32kGy(4g、4h、4i、4j、4k)の線量でガンマ線照射した(照射源:Co60)。続いて、このサンプルをエタノールで5回洗浄し、0.1mbarで16時間乾燥させた。
【0166】
(実施例5)
アミノ含有量の決定
Fmoc−Asp(OtBu)−OSu(49mg、116μmol)を0.9mLアセトニトリルに溶解させて、0.5mL50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)を加えた。この溶液をシリンジ反応器中の20mgヒドロゲル3a及び4aに加え、周囲温度で30分間震盪した。
【0167】
続いて、このヒドロゲルをアセトニトリル/水2:1(v/v)+0.1%TFAで10×さらにDMFで10×洗浄した。
【0168】
DMF/DBU98/2(v/v)で3×10分震盪し、DMF/DBU98/2(v/v)で10×洗浄することによりFmoc−基を開裂させた。これらのフラクションすべてを貯留し、DMFで希釈し、9−メチレンフルオレンの量を295nmにおけるUV吸収を測定することにより決定した。9141L mol−1cm−1の減衰係数を使った。
3aのアミノ量:0.13mmol/g
4aのガンマ線照射後アミノ量:0.12mmol/g
Fmoc−Asp(OtBu)−OSuの代わりにFmoc−Gly−OSuの代替使用は同じアミノ量をもたらした。
【0169】
(実施例6)
ヒドロゲルビーズの加速インビトロ分解解析
加速条件下での滅菌後ヒドロゲルビーズ4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j及び4k並びに3a及び3b(参考材料、滅菌なし)のインビトロ分解速度を各サンプルの5mgを37℃にある0.5mL0.5M炭酸ナトリウム緩衝液(pH10.3)中でインキュベートすることにより測定した(3a、4a、4b、4c、4d及び4e)。別形態としては加速インビトロ分解には37℃状態にある0.5mL0.5Mホウ酸ナトリウム緩衝液pH9.0を用いた(3b、4f、4g、4h、4i、4j及び4k)。アリコートを一定時間間隔で採取し、SECで分析した。ヒドロゲルの放出水可溶分解生成物(1種又はそれ以上の骨格部分を含んでいる)に対応するUVシグナルを積分し、インキュベーション時間に対してプロットした(図1)。
【表1】
【0170】
(実施例7)
ガンマ線照射パリペリドン搭載ヒドロゲル6の調製
国際特許出願であるPC/EP2010/064874に説明されているようにしてヒドロゲル3cをリシンで変性し、続いてパリペリドン−グルタリルエステルをカップリングさせることによりパリペリドン搭載ヒドロゲル5を調製した。フィルター装着シリンジ中にある乾燥ヒドロゲルビーズ5の20mg部分を製剤緩衝液(85g/lトレハロース二水和物、50mMスクシナート/トリス緩衝液pH5.0、0.05%Tween 20、1mM EDTA)で5回洗浄した。最後の洗浄工程の後、シリンジを密閉し、ヒドロゲルビーズを少し過剰の保護溶媒で膨潤形態のままにしておいた。このサンプルをドライアイスのベッド中で40kGy(照射源:Co60)の線量でガンマ線照射した。続いて、製剤緩衝液でヒドロゲル6を5回、水で5回、エタノールで5回洗浄し、0.1mbarで16時間乾燥させた。
【0171】
(実施例8)
照射された6のpH9・37℃におけるインビトロ分解
ヒドロゲル6(滅菌後)及び参考5(滅菌なし)の加速条件下でのインビトロ分解速度をそれぞれのサンプルの2mgを37℃にある1.0mL0.5Mホウ酸ナトリウム緩衝液pH9.0中でインキュベートすることにより測定した。アリコートを一定時間間隔で採取し、SECで分析した。ヒドロゲルの放出水可溶分解生成物(1種又はそれ以上の骨格部分を含んでいる)に対応するUVシグナル(215nm)を積分し、インキュベーション時間に対してプロットした。分解挙動におけるほんの少しの逸脱が観察された(図2)。
【0172】
(実施例9)
照射されたヒドロゲル6から放出されたパリペリドンの品質
1mg照射パリペリドン−リンカー−ヒドロゲル6を37℃にある1.5mLpH7.4リン酸緩衝液(60mM、3mM EDTA、0.01%Tween−20)中でインキュベートした。4日後、上澄み液中に放出されたパリペリドンの品質をHPLCにより検証した。Waters Acquity UPLCを用いたがこれにはWaters BEH C18カラム(50×2.1mm I.D.、1.7μm粒子サイズ)が装着されていた(溶媒A:0.05%TFA/水、溶媒B:0.04%TFA/アセトニトリル)。4分で0→50%Bの線形勾配を採用した。パリペリドン純度は95%であることが判明した(215nm)。
【0173】
略記号:
AcOEt 酢酸エチル
AcOH 酢酸
Asp アスパラギン酸
Boc t−ブチルオキシカルボニル
DBU 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
DCC ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM ジクロロメタン
DGDE ジエチレングリコールジエチルエーテル
DMA N,N−ジメチルアセトアミド
DMAP ジメチルアミノ−ピリジン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMI 1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
ESI エロクトロスプレーイオン化
eq 化学量論当量
EtOH エタノール
Fmoc フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt N−ヒドロキシベンゾトリアゾール
iPrOH イソプロパノール
kGy キログレイ
LCMS 質量分光分析直結液体クロマトグラフィー
MeOH メタノール
MS 質量スペクトル
MTBE メチルtert−ブチルエーテル
MW 分子量
NHS N−ヒドロキシスクシンイミド
NMP N−メチル−2−ピロリジノン
OtBu tert−ブチルオキシ
OSu N−ヒドロキシスクシンイミジル
PEG ポリ(エチレングリコール)
PyBOP ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−
ホスホニウムヘキサフルオロホスファート
RP−HPLC 逆相高性能液体クロマトグラフィー
RT 室温
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
tBu tert−ブチル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TMEDA N,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン
UV 紫外
VIS 可視
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性結合により相互接続されている骨格部分を含む生分解性ポリ(エチレングリコール)ベース不溶性ヒドロゲルの滅菌方法であって、次の工程
(a)ヒドロゲルを準備する工程;
(b)ヒドロゲルを保護溶媒又は2種もしくはそれ以上の保護溶媒の混合物又はそれらの水溶液に溶媒和させる工程;
(c)溶媒和したヒドロゲルにガンマ線照射を行う工程;
を含む、上記方法。
【請求項2】
保護溶媒が、酢酸(水溶液、0.05〜1%(v/v))、アセトニトリル、4−アセチルモルホリン、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルカーボナート、ジメチルホルムアミド、1−エチル−2−ピロリドン、N−エチルアセトアミド、N−エチルホルムアミド、4−ホルミルモルホリン、1−ホルミルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、アルキルアルコール、ホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルアセトアミド、ニコチンアミド(水溶液、0.1〜5%(w/w))、ピリドキシン(水溶液、0.1〜5%(w/w))、N−メチルホルムアミド、NMP、1,2−プロピレンカーボナート、テトラヒドロフラン、スルホラン、水、又はこれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
保護溶媒が、NMP、DMA、DMF又はDMIである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
滅菌が、線量が5〜100kGyのガンマ線照射により得られる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
滅菌が、線量が8〜50kGyのガンマ線照射により得られる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ヒドロゲルが、小分子生物活性部分を持っている、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ヒドロゲルの骨格部分が、それぞれ、1kDa〜20kDaの範囲内の分子量を有している、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ヒドロゲルの骨格部分が、加水分解性結合により相互接続されていて、骨格部分はクロスリンカー部分を介して一緒に連結されており、それぞれのクロスリンカー部分は少なくとも2つの加水分解性結合により終端されている、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
加水分解性結合が、カルボン酸エステル、カーボナート、ホスホエステル又はスルホン酸エステルである、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
クロスリンカー部分が、60Da〜5kDaの範囲内の分子量を有している、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの骨格部分が、以下の式:
【化1】
[式中、点線は、骨格部分の残りの部分への結合を示している]
で表される分岐コアを含んでいる、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの骨格部分が、以下の式:
【化2】
[式中、nは5〜50の整数であり、点線は、分子の残部への結合を示している]
で表される構造を含んでいる、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの骨格部分が、超分岐部分Hypを含んでいる、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの骨格部分が、以下の式:
【化3】
[式中、点線は、分子の残部への結合を示しており、*でマークされた炭素原子はS配置を示している]
で表される超分岐部分Hypを含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
骨格部分が、以下の式:
【化4】
[式中、点線のうちの一方は超分岐部分Hypへの結合を示しており、もう一方の点線は分子の残部への結合を示しており、mは2〜4の整数である]
で表される少なくとも1個のスペーサーに結合している、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
骨格部分が、以下の構造
【化5】
[式中、qは3〜100の整数である]
を含むクロスリンカー部分を介して一緒に連結されている、請求項1〜15のいずれかに記載のプロドラッグ。
【請求項17】
保護溶媒が、1種又はそれ以上の保護剤を含有している、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
保護剤が、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、sec−ブチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、セリノール、トリスヒドロキシメチル−アミノメタン、酢酸、ギ酸、アスコルビン酸、グリシンアミド、ピバル酸、プロパン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、チオグリセリン、ジチオトレイトール、メルカプトエタノール、還元グルタチオンから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18にいずれかに記載の方法により取得可能な滅菌生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲル。
【請求項1】
加水分解性結合により相互接続されている骨格部分を含む生分解性ポリ(エチレングリコール)ベース不溶性ヒドロゲルの滅菌方法であって、次の工程
(a)ヒドロゲルを準備する工程;
(b)ヒドロゲルを保護溶媒又は2種もしくはそれ以上の保護溶媒の混合物又はそれらの水溶液に溶媒和させる工程;
(c)溶媒和したヒドロゲルにガンマ線照射を行う工程;
を含む、上記方法。
【請求項2】
保護溶媒が、酢酸(水溶液、0.05〜1%(v/v))、アセトニトリル、4−アセチルモルホリン、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルカーボナート、ジメチルホルムアミド、1−エチル−2−ピロリドン、N−エチルアセトアミド、N−エチルホルムアミド、4−ホルミルモルホリン、1−ホルミルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、アルキルアルコール、ホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルアセトアミド、ニコチンアミド(水溶液、0.1〜5%(w/w))、ピリドキシン(水溶液、0.1〜5%(w/w))、N−メチルホルムアミド、NMP、1,2−プロピレンカーボナート、テトラヒドロフラン、スルホラン、水、又はこれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
保護溶媒が、NMP、DMA、DMF又はDMIである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
滅菌が、線量が5〜100kGyのガンマ線照射により得られる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
滅菌が、線量が8〜50kGyのガンマ線照射により得られる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ヒドロゲルが、小分子生物活性部分を持っている、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ヒドロゲルの骨格部分が、それぞれ、1kDa〜20kDaの範囲内の分子量を有している、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ヒドロゲルの骨格部分が、加水分解性結合により相互接続されていて、骨格部分はクロスリンカー部分を介して一緒に連結されており、それぞれのクロスリンカー部分は少なくとも2つの加水分解性結合により終端されている、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
加水分解性結合が、カルボン酸エステル、カーボナート、ホスホエステル又はスルホン酸エステルである、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
クロスリンカー部分が、60Da〜5kDaの範囲内の分子量を有している、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの骨格部分が、以下の式:
【化1】
[式中、点線は、骨格部分の残りの部分への結合を示している]
で表される分岐コアを含んでいる、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの骨格部分が、以下の式:
【化2】
[式中、nは5〜50の整数であり、点線は、分子の残部への結合を示している]
で表される構造を含んでいる、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの骨格部分が、超分岐部分Hypを含んでいる、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲルの骨格部分が、以下の式:
【化3】
[式中、点線は、分子の残部への結合を示しており、*でマークされた炭素原子はS配置を示している]
で表される超分岐部分Hypを含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
骨格部分が、以下の式:
【化4】
[式中、点線のうちの一方は超分岐部分Hypへの結合を示しており、もう一方の点線は分子の残部への結合を示しており、mは2〜4の整数である]
で表される少なくとも1個のスペーサーに結合している、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
骨格部分が、以下の構造
【化5】
[式中、qは3〜100の整数である]
を含むクロスリンカー部分を介して一緒に連結されている、請求項1〜15のいずれかに記載のプロドラッグ。
【請求項17】
保護溶媒が、1種又はそれ以上の保護剤を含有している、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
保護剤が、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、sec−ブチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、セリノール、トリスヒドロキシメチル−アミノメタン、酢酸、ギ酸、アスコルビン酸、グリシンアミド、ピバル酸、プロパン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、チオグリセリン、ジチオトレイトール、メルカプトエタノール、還元グルタチオンから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18にいずれかに記載の方法により取得可能な滅菌生分解性PEGベース不溶性ヒドロゲル。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図1g】
【図1h】
【図1i】
【図1j】
【図1k】
【図2】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図1g】
【図1h】
【図1i】
【図1j】
【図1k】
【図2】
【公表番号】特表2013−509216(P2013−509216A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535835(P2012−535835)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066404
【国際公開番号】WO2011/051406
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(510209133)アセンディス ファーマ エー/エス (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066404
【国際公開番号】WO2011/051406
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(510209133)アセンディス ファーマ エー/エス (6)
【Fターム(参考)】
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