説明

生分解性プラスチック部材を備えた薬物送達デバイス

本発明は、少なくとも一つのハウジング部材(2)、中に摺動可能に配置されたピストンを有する医薬品含有カートリッジ(3)を受け取るためのカートリッジホルダ部材(4)、医薬品の用量を投与するため、カートリッジ(3)のピストンと操作可能に係合可能な駆動機構部材を含んでなり;
医薬品の事前に定義された量を投与するための薬物送達デバイスに関し:
ここで、該部材(2、4、6)の少なくとも一つは、プラスチック材料の分解過程を改質するよう適合された少なくとも一つの添加剤を含む生分解性プラスチック材料を少なくとも部分的に含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者に注射可能な医薬品の複数用量を、設定用量の投与のため、及び該医薬品を患者に対して、好ましくは、注射による投与のために、使用者に選択させることを可能にする薬物送達デバイスに関する。特に、本発明は、使用者、又は患者自身により取り扱われるようなデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
患者に対して、液体薬剤の必要用量の複数回投与及び液体の投与を可能にする薬物送達デバイスは、当該分野において公知である。一般的に、そのようなデバイスは、普通の注射器と実質的に同一の目的を有する。
【0003】
この種の注射器は、使用者の要望に合致する多くの要求事項を満足させなければならない。デバイスは構造上強固で、尚、部材(parts)の操作及び使用者によるその操作の理解の二つの観点より容易に使用できる必要がある。糖尿病患者の場合、多くの使用者は肉体的に虚弱で、そしてまた、視力に障害があるかもしれない。注射器が再使用可能よりむしろ使い捨ての場合、注射器は、製造するのに安く、そして捨てるのに容易でなければならない。好ましくは、薬物送達デバイスはリサイクリングに好適なければならない。
【0004】
典型的な薬物送達デバイス、例えば、ペン形注射器は、ハウジング、カートリッジホルダ及び駆動機構などの多くの部材(components)を含み、ここで、駆動機構は、デバイスにより用量を投与する医薬品又は薬剤を含むカートリッジのピストンにスラスト(thrust)を加えるよう適合される。そのような薬物送達デバイスの少なくとも幾つかの部材、特に、取り外し可能なキャップ、ハウジング、及び/又は、カートリッジホルダは、一般的に、機械的安定性及び剛性に関する要求事項を満たすことを要求され、なおかつ、一般的に、そのようなデバイスの製造に関する低コストの要求に応じる必要がある、射出成形プラスチック部材として製造される。
【0005】
使用者が、又は患者が操作するペン形注射器及び薬物送達デバイスの使用は、それぞれの医薬品又は液体薬剤の注射を必要とする疾病の多様性の故に成長しつつある。これらの間で、インスリンのような液体薬剤の皮下又は皮下投与を必要とする糖尿病においては主要な役割を果たす。
【0006】
使い捨て又は1回使用の薬物送達デバイスは、一般的には、使用後プラスチック廃棄物になり、従って、環境に対する負荷を引き起こし、特に、埋め立てに廃棄される場合そうである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、環境に対する負荷を低下させ、そして向上した環境への適合性を提供する医薬品を投与するための薬物送達デバイスを提供することである。また、薬物送達デバイスは、製造するのに安価で、並びに、組立てるのに迅速で、そして容易であるべきである。更にその上、薬物送達デバイス及びその多くの部材は機械的に安定し、そして強固であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づく薬物送達デバイスは、よく定義された方法で、医薬品を、特に、ヘパリン又はインスリンなどの液体薬剤を投与するために適合される。デバイスは、特に、医薬品の事前に定義された用量の設定及びその後の投与により医薬品の事前に定義された用量を投与するために適合される。薬物送達デバイスは、駆動機構及びそれぞれの駆動機構の部材を収納するために、特に、適合される少なくとも一つのハウジング部材を含み、ここで、少なくとも一つの駆動機構の部材は、投与すべき医薬品を含有するカートリッジのピストンと操作可能に係合可能である。
【0009】
薬物送達デバイスは、更に、医薬品含有カートリッジを受け取り、そして保持するよう適合されたカートリッジホルダ部材を含む。カートリッジは、一般的には、実質的に円筒形状であり、その中に変位可能に配置されたピストンを含む。遠位的に加えられたスラストの衝撃の元で、ピストンは遠位方向に動き、それによりカートリッジから液体医薬品の事前に定義された用量を放出する。
【0010】
カートリッジの遠位出口は、針、カニューレ、点滴チューブ、又は同様の送達デバイスを流体輸送方法で連結できる。カートリッジそれ自身は、代替可能な、又は使い捨てのアンプル、カプール(carpoule)、注射器、又は同様の医薬品含有容器として設計できる。
【0011】
スラストをカートリッジのピストンに適用する目的のために、駆動機構は、ピストンロッド、親ねじ、又は、直接的に、若しくは圧力ピースの介在によりピストンの近位端面に隣接するように適合させた駆動スリーブを含み得る。
【0012】
薬物送達デバイスの環境適合性を向上させるために、薬物送達デバイスの前記部材の少なくとも一つは、少なくとも部分的に生分解性プラスチック材料を含む。一般的に、一つだけでなく、ハウジング部材、カートリッジホルダ部材又は少なくとも一つの駆動機構などの数個の薬物送達デバイスの部材は、従来の石油化学プラスチック材料及び部材と比較して、むしろ迅速に分解するよう適合させた生分解性プラスチック材料を含むことができる。この方法で、また、ペン形注射器などの薬物送達デバイスは、環境に優しい廃棄物処理に貢献できる。
【0013】
本発明の範囲内で、生分解性プラスチック材料は、従来の石油ベースのプラスチック材料より迅速に、好ましくは、はるかに迅速に分解する。本発明の薬物送達デバイスに使用されている材料は、それが生分解性であると呼ばれるために、商業的な堆肥化条件下で、いかに迅速に、どの程度のプラスチックが分解しなければならないかを定義するISO−EN−13432などの国内又は国際規格に合致する必要はない。ISO−EN−13432規格によると、材料はその有機炭素の90%が最大180日以内で分解する場合、完全に生分解性であると分類される。
【0014】
従って、本発明に基づく「生分解性プラスチック材料」は、商業的な堆肥化ユニットで90日以内に、大量に生分解する必要はない。生分解性プラスチック材料を含む薬物送達デバイスの部材は、また、大きい時間スケールで生分解してもよい。好ましくは、薬物送達デバイスの少なくとも一部材で使用される材料は、商業的な堆肥化条件下で180日、360日又は720日間で少なくとも、60%、50%又は40%の生分解率を特徴付ける。
【0015】
しかし、薬物送達デバイスに使用される生分解性プラスチック材料は、好ましくは、例えば、ISO−EN−13432又はASTM−6400米国規格などの生分解性規格を満足させる。
【0016】
好ましくは、生分解性プラスチック材料は、プラスチック材料の分解過程を改質、及び/又は、調整するために適合された少なくとも一つの添加剤を含む。それ故、プラスチック材料は、実質的に非生分解である基礎又は担体材料を含んでもよい。その後、添加剤の故に、基礎又は担体材料が実質的に分解する過程を誘導し、及び/又は、引き起こす。
【0017】
第一の好ましい実施態様において、薬物送達デバイスの少なくとも一部材は、少なくとも一つのバイオマス源から誘導できる有機プラスチック材料を含む。それ故、生分解性プラスチック材料は、一般的に、酸素と一緒に好気性分解し、又は酸素なしで嫌気性分解する有機材料を含む。また、そのようなプラスチック材料は、有機材料が鉱物に転換される生物鉱物化(biomineralisation)に対する課題となるかもしれない。薬物送達デバイスの少なくとも一部材で使用されている有機プラスチック材料又はバイオプラスチックスは、植物油からの、トウモロコシからの、エンドウ豆からの、又は大豆からの澱粉などの再生可能なバイオマス源から誘導できる。その上、前記有機プラスチック材料は、また、バイオポリマーが活性スラッジバイオマス中に蓄積される、微生物叢から誘導してもよい。
【0018】
更なる好ましい実施態様において、薬物送達デバイスの少なくとも一つの生分解性成分は、澱粉、トウモロコシ又は大豆を原料にしたプラスチック、ポリ乳酸プラスチック(PLA)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリビニルアルコール(PVA)、及び/又は、遺伝子組み換えのバイオプラスチック材料を含む。
【0019】
適切な酸処理を用いて、澱粉成分は、一般的にラクトースに転換される。重縮合法により、その物理的性質がポリエチレン(PE)と比較できるポリ乳酸が生成される。そのような材料は、全製造サイクル中、中性の炭素バランスを特徴とする。それ故、植物成長中の結合炭素量は、実質的に分解過程中の解放炭素量に等しい。
【0020】
可塑剤又は柔軟剤として作用するグリセリン又はソルビトールなどの添加剤を使用することにより、また、澱粉ベースのプラスチック材料は熱可塑的に成形することができる。添加剤の量を選択的に変化させることにより、材料の特性は、薬物送達デバイスの具体的な要求事項に合わせることができる。
【0021】
ポリ乳酸(PLA)は、ショ糖又はグルコースから製造できる。それは、その特性及び性質において従来のポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)などの石油化学の大量生産プラスチックに類似しているばかりではない。また、従来のPE−又はPP−ベースのプラスチック材料の生産のために既に使用されている標準的な製造装置で容易に加工できる。
【0022】
ポリ−3−ヒドロキシ酪酸(PHB)は、ある種の微生物が生成するグルコース又は澱粉より製造されたポリエステルである。それは、また、石油プラスチックであるポロプロピレンと比較して類似の性質及び特性を含む。それは残渣なしの完全な生分解性である。
【0023】
また、ポリカプロラクトン(PCL)及びポリビニルアルコール(PVA)は、自然の又はその改質形体での澱粉が一般に使用されるポリマーグループに属する。
【0024】
更にその上、また、ポリ−ε−カプロラクトンなどの完全に合成されたバイオポリマーは、一般的に、少なくとも一つの生分解性部材用として使用できる。また、合成コポリエステルは、少なくとも一つのデバイス部材の製造に好適であるかもしれない。コポリエステルは、LDPEと比較可能な熱的、及び機械的性質を有する半結晶性ポリマーを含む。更に、自然及び合成ベースの分解可能なポリマーを構成する様々な化合物が考えられる。特に、生分解性の合成熱可塑性マトリックス及び90%までの澱粉を含むバイオプラスチック材料の使用は、本発明に対して有益であると考えられる。澱粉の比較的大きいパーセントに起因して、化合物材料は十分に大きい脂肪−及び酸素−遮断性を特徴とする。
【0025】
この文脈において、用語「遺伝子組み換えバイオプラスチック材料」は、遺伝子組み換えトウモロコシ、大豆又は小麦などの遺伝子組み換え自然源から誘導されるプラスチック材料に言及する。ここで、遺伝子組み換えは、バイオプラスチック材料の生分解性に焦点を絞ってもよい。
【0026】
発明の更なる好ましい実施態様によると、少なくとも一つの薬物送達デバイスの部材、従って、それぞれの生分解性プラスチック材料は、少なくとも一つのポリマー及び添加剤を含み、ここで、添加剤は、すくなとも一つのポリマー又は生分解性プラスチック化合物の分解過程を強化し、増大させ、又は引き起こすために適合される。ポリマー又はモノマーは、石油化学タイプであってもよい。それは、特別の添加剤により生分解性を示す。前記添加剤は、例えば、微生物環境下に置かれたとき、微生物を引き付けるよう適合された有機化合物を含む。それ故、添加剤は、プラスチックに対して分解開始剤として作用し、それにより、ポリマーをCO2及びH2Oに、そして場合により他の残渣に分解する調整過程を実施する。
【0027】
代替法において、添加剤は分解過程のための阻害剤として作用することが考えられる。この方法において、また、実質的な分解挙動を本質的に示すそのようなプラスチック材料は、薬物送達デバイスの部材用として使用することができる。添加剤の量又は濃度を変更することにより、前記成分の分解挙動は選択的に調整できる。
【0028】
更なる好ましい実施態様において、少なくとも一つの生分解性成分としては、ポリエチレン(PE)、ポロプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフテレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、及び/又は、そのコポリマーを含む。これら生分解性プラスチック材料のいずれか一つは、従来の石油化学ベースのポリマー及びそれぞれのプラスチック材料を生分解性状態にする少なくとも一つの添加剤を含んでもよい。改質された石油化学ベースのプラスチック材料の使用は、そのような生分解性プラスチック材料の製造、使用、一般的な取扱い、並びに、機械的性質が従来の純粋に石油化学ベースのプラスチックに比較可能であるという利点をもたらす。
【0029】
都合よく、分解過程は、薬物送達デバイス全体又は特にその生分解可能なプラスチック部材が分解可能な環境に曝露される前に、始まることはない。そのような挙動は有益である。何故ならば、薬物送達デバイスの使用及び機能は、その後、実質的にその部材の生分解的性質により影響を受けないからである。この方法において、それぞれのバイオプラスチック部材の無制限の寿命が達成可能である。
【0030】
発明の更なる好ましい実施態様において、ポリマーベースの生分解性プラスチック部材の添加剤は、電磁放射、及び/又は、熱、及び/又は、水分、及び/又は、微生物環境に感受性である。添加剤のタイプに依存して、石油化学ベースのプラスチック材料は、電磁放射、特に、UV放射下で曝露されたとき、分解するかもしれない。また、熱曝露はそれぞれの分解過程を引き起こし、少なくとも増大させ、及び強化させるかもしれない。
【0031】
薬物送達デバイスの少なくとも一つのプラスチック部材の生分解性は、ポリマー有機化合物中に加えられた添加剤が微生物環境下に置かれたとき、微生物を誘引するように適合されるならば、更に強化され、そしてブラスチック部材は微生物環境に感受性になるであろう。誘引された微生物は、順番に、プラスチック部材の生分解過程を初期化し、強化し、及び/又は、増強し得る余分な細胞質材料を生成し得る。
【0032】
発明の更に好ましい実施態様によると、添加剤は、電磁放射への曝露に対応して、及び/又は、熱曝露に対応して、及び/又は、水分に対応して、及び/又は、微生物環境への移動に対応してポリマーの分子鎖切断のために少なくとも一種類の金属イオン及び触媒を含む。
【0033】
特別な実施態様において、薬物送達デバイスの生分解性プラスチック部材は、微生物及びそれぞれの微生物環境に対して排他的に感受性であるが、電磁放射に対して、及び/又は、熱に対して、又は水分に対して曝露されたとき安定に維持される。この方法において、それぞれのバイオプラスチック部材の制限されない寿命を提供することができ、そして分解過程は、デバイスが使用されている限り阻害される。
【0034】
更なる好ましい実施態様において、薬物送達デバイスの少なくとも一つの生分解性部材が、単一又は多成分の射出成形過程を用いて製造される。好ましくは、選択された生分解性プラスチック材料は射出成形に、好ましくは、従来の純粋に石油化学ベースのプラスチック材料用に使用されているものと同じ装置を用いた射出成形に好適である。
【0035】
発明の更なる好ましい実施態様によると、駆動機構の少なくとも一部を収納するよう適合された薬物送達デバイスの少なくとも一つのハウジング部材は、少なくとも部分的に、好ましくは、完全に生分解性プラスチック材料より作られる。更に又はあるいは、カートリッジホルダ、及び/又は、取り外し可能なニードル保護キャップは、上記で記述した、及び上記で特定した生分解性プラスチック材料より作られる。
【0036】
特に、取り外し可能なニードル保護キャップは、生分解性プラスチック材料より作ることができる。例えば、それは使用後に、薬物送達デバイスから容易に取り外すことができ、そして、他の生分解性廃棄物と分離して、一緒に処分することができる。
【0037】
保護キャップは、単に、薬物送達デバイスの遠位出口部分に配置されるニードルを保護する働きをし、そして、キャップは、駆動機構に操作可能に係合されないので、機械的安定性及び剛性に対して、従来の石油化学材料ベースのプラスチックより劣るいかなる生分解性プラスチック材料でも、ほとんど、前記ニードルキャップのために使用できる。
【0038】
更なる独立の態様において、発明は、また、カートリッジホルダ部材、少なくとも一つの駆動機構部材又はハウジング部材、特に取り外し可能なキャップなどの薬物送達デバイスの部材内に、又は一緒に、少なくとも一つ生分解性プラスチック材料の使用を参照する。
【0039】
更にその上、及び別の好ましい実施態様によると、薬物送達デバイスは、医薬品で充填されたカートリッジを含む。デバイスは再使用可能、及び/又は、使い捨てタイプであってもよい。好ましくは、デバイスは、その中に容易に配置される充填されたカートリッジと一緒に商業的に流通しており、そして使い捨てタイプである。この方式において、医薬品を消費した後、デバイス全体は、捨てることができるか、及び/又は、リサイクル過程に提供することができる。更にその上、使用済み薬物送達デバイスの廃棄過程において、デバイスの生分解性及び非生分解性部材は分別することができ、かくして、バイオ適合性のあるゴミ、及び/又は、再使用可能リサイクル材料として分別して処理できる。
【0040】
本明細書で使用する用語「薬剤」又は「医薬品」は、少なくとも一つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで一実施態様において、薬学的に活性な化合物は、最大で1500Daまでの分子量を有し、及び/又は、ペプチド、蛋白質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、抗体、酵素、抗体、ホルモン又はオリゴヌクレオチド、若しくは上記の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈又は肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症、及び/又は、関節リウマチの処置、及び/又は、予防に有用であり、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置、及び/又は、予防のための、少なくとも一つのペプチドを含み、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも一つのヒトインスリン又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、又はその類似体若しくは誘導体、又はエキセンジン−3又はエキセンジン−4、若しくはエキセンジン−3又はエキセンジン−4の類似体若しくは誘導体を含む。
【0041】
インスリン類似体は、例えば、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリンであり、ここで、B28位におけるプロリンは、Asp、Lys、Leu、Val又はAlaで代替され、そして、B29位において、Lysは、Proで代替されてもよく;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0042】
インスリン誘導体は、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイル ヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0043】
エキセンジン−4は、例えば、エキセンジン−4(1−39)、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドを意味する。
【0044】
エキセンジン−4誘導体は、例えば、以下の化合物リスト:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);又は
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28] エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
ここで、基−Lys6−NH2は、エキセンジン−4誘導体のC−末端と結合してもよく;
【0045】
又は以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−desAsp28 Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
desMet(O)14,Asp28,Pro36,Pro37,Pro38 エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5,desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25, Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
又は前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物;
から選択される。
【0046】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(ホリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロパイン(ソマトロピン)、デスモプレッシン、テルリプレッシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどのRote Liste、2008年版、50章に表示されている脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は規制活性ペプチド及びそれらの拮抗剤である。
【0047】
多糖類としては、例えば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、又は超低分子量ヘパリン、若しくはその誘導体、又はスルホン化された、例えば、上記多糖類のポリスルホン化形体、及び/又は、薬学的に許容可能なその塩がある。ポリスルホン化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例としては、エノキサパリンナトリウム塩がある。
【0048】
薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸付加塩、及び塩基塩がある。酸付加塩としては、例えば、HCl又はHBr塩がある。塩基塩は、例えば、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、Na+、又は、K+、又は、Ca2+から選択されるカチオン、又は、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)を有する塩であり、ここで、R1〜R4は互いに独立に、水素;場合により置換されるC1〜C6アルキル基;場合により置換されるC2〜C6アルケニル基;場合により置換されるC6〜C10アリール基、又は場合により置換されるC6〜C10ヘテロアリール基を意味する。薬学的に許容される塩の別の例は、“Remington's Pharmaceutical Sciences” 17編、Alfonso R.Gennaro(編集),Mark Publishing社,Easton, Pa., U.S.A.,1985 及び Encyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0049】
薬学的に許容可能な溶媒和物としては、例えば、水和物がある。
【0050】
様々な改質体及び変形体は、本発明の精神及び範囲から離れることなく、本発明に対して実施できることは当業者には明白であろう。更に、添付の請求項において使用されるいかなる参照記号も、本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではないことは、留意すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
いかなる制限もなしで、本発明は、参照することにより、特別の薬物送達デバイスの例と関連して説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】透視図において、薬物送達デバイス及び幾つかのその部材を概略図示する。
【0053】
図1で描かれる薬物送達デバイスは、ペン形注射器を含む。それは、医薬品の用量を自己投与するために特に適用可能である。薬物送達デバイス1は、ハウジング2及び取り外し可能キャップ6を含む。その遠位端において、デバイスは、例えば、薬物送達デバイス1の遠位出口に取り外し可能に連結できる注射針5を含む。ハウジング2は、薬物送達デバイス1のカートリッジホルダ4に配置され、取り付けられるカートリッジ3のピストンと操作可能に係合するよう適合された更なる例示用駆動機構を受け取らない働きをする。駆動機構は、一般的には、カートリッジ3のピストンに対して、遠位方向に向いたスラストに適用するために適合された数多くの機械的に相互作用する部材を含む。この方法において、流動性医薬品の十分に定義された用量がカートリッジ3から放出することができる。
【0054】
その近位端部分において、薬物送達デバイス1は、投与すべき用量の設定及び投与を可能にする回転ノブ8及び解除ノブ(release knob)10を含む。更にその上、ハウジング2は、表示窓14を含み、ここでは、インジケータ16は視認できる。図示された実施態様において、インジケータ16は、薬物送達デバイス1により、投与すべき医薬品の量を指示する少なくとも一つの用量設定ダイヤル12を含む。
【0055】
少なくとも一つの薬物送達デバイス1の図示された部材又は薬物送達デバイス1全体でも、少なくとも部分的には、生分解性プラスチック材料を含む。
【0056】
好ましくは、少なくとも取り外し可能キャップ6は、少なくとも一つの上記の生分解性プラスチック材料で作られる。選択された生分解性プラスチック材料の特性及び機械的性質に依存して、また、ハウジング2、回転ノブ8、解除ノブ10、インジケータユニット16、及び/又は、カートリッジホルダ14は、生分解性プラスチック部材として製造してもよい。この方法において、薬物送達デバイス1又は少なくとも幾つかのその部材の環境適合性は強化できる。
【0057】
更に、注目すべきは、図1に記載の図示された実施態様は、典型的なペン形注射器を例示的に示すのみである。駆動機構及びインジケータユニット16のデザイン及び機能性、並びに、解除ノブ10又は回転ノブ8は任意に変化し得るものである。回転ノブ8又は解除ノブ10のような作動手段は、例えば、完全に異なった方法で設計してもよい。用量の設定、及び/又は、用量の投与は、例えば、並進運動可能な移動可能作動手段を用いて調整してもよい。
【0058】
参照番号リスト:
1:デバイス;
2:ハウジング;
3:カートリッジ;
4:カートリッジホルダ;
5:針;
6:取り外し可能なキャップ;
8:回転ノブ;
10:解除ノブ;
12:用量設定ダイヤル;
14:表示窓;

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−少なくとも一つのハウジング部材(2)、
−中に摺動可能に配置されたピストンを有する、医薬品含有カートリッジを受け取るためのカートリッジホルダ部材(4)、
−医薬品の用量を投与するため、カートリッジ(3)のピストンと操作可能に係合可能な駆動機構部材;
を含んでなり、
ここで、該部材(2、4、6)の少なくとも一つは、プラスチック材料の分解過程を改質するよう適合された少なくとも一つの添加剤を含んでなる生分解性プラスチック材料を少なくとも部分的に含む、医薬品の事前に定義された量を投与するための薬物送達デバイス。
【請求項2】
少なくとも一つの生分解性部材(2、4、6)は、少なくとも一つのバイオマス源から誘導可能な有機プラスチック材料を含む、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
少なくとも一つの生分解性部材(2、4、6)は、澱粉又はトウモロコシを原料にしたプラスチック、ポリ乳酸プラスチック(PLA)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリビニルアルコール(PVA)、及び/又は遺伝子組み換えバイオプラスチック材料を含む、請求項1又は2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
少なくとも一つの生分解性部材(2、4、6)は、少なくとも一つのポリマー及び添加剤を含み、ここで添加剤は分解過程を強いるよう、又はトリガするように適合される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
少なくとも一つの生分解性部材(2、4、6)は、少なくとも一つのポリマー及び添加剤を含み、ここで該添加剤は、分解過程を阻害するように適合される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
少なくとも一つの生分解性部材(2、4、6)は、ポリエテン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)又はそのコポリマーを含む、請求項4又は5に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
添加剤が電磁放射、及び/又は熱、及び/又は水分、及び/又は微生物環境に感受性である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
添加剤は、電磁放射、及び/又は熱、及び/又は水分、及び/又は微生物環境への曝露に反応して、ポリマーの分子鎖を切断するための少なくとも一種類の金属イオン及び触媒を含む、請求項4〜7のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項9】
少なくとも一つの部材(2、4、6)が、一つ又はそれ以上の成分系の射出成形を用いて製造される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
ハウジング部材(2)、及び/又はカートリッジホルダ部材(4)、及び/又はニードル保護キャップ(6)は、生分解性プラスチックを全体的に含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
医薬品を充填したカートリッジを更に含んでなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2013−507156(P2013−507156A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532615(P2012−532615)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065094
【国際公開番号】WO2011/042537
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】