説明

生分解性リン酸エステルポリアミン

新規な生分解性リン酸エステルポリアミンを開示する。この生分解性リン酸エステルポリアミンは、組織の接着剤または封止剤として使用することができる吹付可能組成物のための架橋剤として利用することができる。いくつかの実施形態において、この生分解性リン酸エステルポリアミンには、ポリアミン官能化リン酸エステル−エステル−エーテルのオリゴマーおよびポリマー等が挙げられる。これらの生体適合性組成物は、吹付可能組成物のための架橋剤として利用することができる。いくつかの実施形態において、この吹付可能組成物には、マルチイソシアネート−ポリエーテル−ポリウレタン封止剤を含む、組織の接着剤および封止剤が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2006年2月22日に出願された、米国仮特許出願第60/775,749号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/775,749号は、全開示が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、生分解性リン酸エステルポリアミン、および接着剤または組織封止剤等の組成物の形成におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
関連分野の背景
近年、接着剤による縫合の代替または補強に対する関心が高まってきている。この高い関心の理由として、(1)回復を達成しうる潜在的な速度、(2)完全な封止をして流体の漏出を防止する接着物質の能力、および(3)組織を過度に変形することなく接着を形成する可能性が挙げられる。
【0004】
外科用接着剤が外科医に受け入れられるためには、高い初期タックおよび生体組織に速やかに接着する能力を示さなければならず、その接着の強度は、接着が不良となる前に組織が損傷を起こすだけ十分に強くなければならず、その接着は、ブリッジ、一般的には透過性で柔軟なブリッジを形成すべきであり、接着ブリッジおよび/またはその代謝産物は、局所的な、組織毒性または発癌性作用を生じさせるべきではない。
【0005】
現在、組織接着剤または組織封止剤として有用な、いくつかの材料が入手可能である。現在入手可能な接着剤の一種に、シアノアクリレート接着剤がある。しかし、シアノアクリレート接着剤は、その有用性を制限しうる高い曲げ弾性率を有することがある。現在入手可能な組織封止剤の別の種類には、ウシおよび/またはヒト源由来の成分を利用しているものがあり、例えば、フィブリン封止剤が入手可能である。しかし、任意の天然材料と同様に、材料にばらつきが認められることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
全合成の生物学的な、接着剤または封止剤を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、生分解性リン酸エステルポリアミンを提供する。いくつかの実施形態において、この生分解性リン酸エステルポリアミンには、ポリアミン官能化リン酸エステル−エステル−エーテルのオリゴマーおよびポリマー等が挙げられる。これらの生体適合性組成物は、吹付可能組成物のための架橋剤として利用することができる。いくつかの実施形態において、この吹付可能組成物には、マルチイソシアネート−ポリエーテル−ポリウレタン封止剤を含む、組織の接着剤および封止剤が挙げられる。
【0008】
いくつかの実施形態において、本開示は、以下の式
【0009】
【化6】

の生分解性リン酸エステルポリアミンを含む、生体適合性の組成物を提供し、式中、Rは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(エーテル−エステル)ブロックおよびそれらの組合せからなる群から選択され、Rは、水素原子、保護基、または約1個から約50個の炭素原子を有する有機部分であり、NH−R−NHは、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、リシン、N−(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミンの異性体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビスヘキサメチレントリアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,2−エタンジアミン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N−(2−アミノエチル)−1,3プロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキサンジアミンの異性体、4,4’−メチレンビスシクロヘキサンアミン、4’4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサンアミン)、トルエンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン、フェナルキレンポリアミン、アミノ官能化ポリアルキレンオキシド、ポリペプチドおよびそれらの組合せからなる群から選択されるポリアミンに由来する。
【0010】
他の実施形態において、本開示は、イソシアネートプレポリマー、および以下の式
【0011】
【化7】

の生分解性リン酸エステルポリアミンを含む組成物を提供し、式中、Rは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(エーテル−エステル)ブロックおよびそれらの組合せからなる群から選択され、Rは、水素原子、保護基、または約1個から約50個の炭素原子を有する有機部分であり、NH−R−NHは、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、リシン、N−(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミンの異性体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビスヘキサメチレントリアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,2−エタンジアミン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N−(2−アミノエチル)−1,3プロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキサンジアミンの異性体、4,4’−メチレンビスシクロヘキサンアミン、4’4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサンアミン)、トルエンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン、フェナルキレンポリアミン、アミノ官能化ポリアルキレンオキシド、ポリペプチドおよびそれらの組合せからなる群から選択されるポリアミンに由来し、この生分解性リン酸エステルポリアミンは、イソシアネートプレポリマーを架橋する。
【0012】
他の実施形態において、本開示は、末端ヒドロキシル成分をリン酸エステルと合わせて、リン酸エステル官能化化合物を形成することと、このリン酸エステル官能化化合物をポリアミンと合わせて、生分解性リン酸エステルポリアミンを生成することとを含む方法を提供する。
【0013】
本開示は、新規な生分解性リン酸エステルポリアミンに関する。このリン酸エステルポリアミンは、生体適合性、非免疫原性および生分解性である。いくつかの実施形態において、生分解性リン酸エステルポリアミンは、マルチイソシアネート−ポリエーテル−ポリウレタン封止剤を含む、組織の接着剤および封止剤のための架橋剤として利用することができる。こうした封止剤は、組織の縁部を接着し、組織中の空気/流体の漏れを封止し、医用デバイスすなわちインプラントを組織に接着し、組織中の空隙または欠損を、封止するまたは充填する等、組織を補強するために使用することができる。この組成物は、ヒトを含む動物の、生体組織および/または肉に塗布することが可能である。
【0014】
本開示の生分解性リン酸エステルポリアミンには、ポリアミン官能化リン酸エステル−エステル−エーテルのオリゴマーおよびポリマーを挙げることができる。いくつかの実施形態において、この生分解性リン酸エステルポリアミンは、リン酸エステルにより末端ヒドロキシル成分を末端封止することにより、場合によっては第3級アミン等のアミンの存在下で生成することができる。次いで、このリン酸エステル基は、少なくとも1種の第1級/第2級のアミノ基を有するポリアミンにより末端封止することができる。ポリアミンをリン酸エステル基と反応させる方法は、当業者の理解の範囲内であり、例えば、Dewaら、「Novel Polyamine−Dialkyl Phosphate Conjugates for Gene Carriers. Facile Synthetic Route via an Unprecedented Dialkyl Phosphate.」Bioconjugate Chem.、2004年、15巻、824〜830頁に開示される方法が挙げられ、その開示全体を本明細書に引用して援用する。
【0015】
適切な末端ヒドロキシル成分には、例えば、末端ヒドロキシルの、ポリエーテル、ポリエステルおよび/またはポリ(エーテルエステル)ブロックが挙げられる。利用することができる適切なポリエーテルは、当業者の理解の範囲内であり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコールおよびそれらの組合せの、ポリマーおよびコポリマーが挙げられる。利用することができる適切なポリエステルは、当業者の理解の範囲内であり、例えば、トリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、グリコリド、ラクチド、1,5−ジオキセパン−2−オン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレートおよびそれらの組合せの、ポリマーおよびコポリマーが挙げられる。適切なポリ(エーテル−エステル)ブロックは、当業者の理解の範囲内であり、ポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール−ポリラクチド、ポリエチレングリコール−ポリグリコリド、ならびに本明細書に記載の個々のポリエーテルおよびポリエステルの様々な組合せが挙げられるが、それらに限定されるものではない。ポリ(エーテル−エステル)ブロックの追加的な例が、米国特許第5578662号および米国特許出願2003/0135238に開示されており、それらそれぞれの内容全体を本明細書に引用して援用する。
【0016】
いくつかの実施形態において、末端ヒドロキシル前駆体成分は、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、グリコリド−ポリエチレングリコール−カプロラクトンコポリマー、脂肪族オリゴエステルおよびそれらの組合せ等であってよい。
【0017】
この末端ヒドロキシル前駆体成分を末端封止するために利用することができる適切なリン酸エステルには、エチルジクロロホスフェート(EOP)等のジクロロ−リン酸エステルが挙げられるが、それらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、末端ヒドロキシル前駆体は、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン(CHCl)およびそれらの組合せ等の有機溶媒中で、リン酸エステルと合わせることができる。他の実施形態において、リン酸エステルは、第3級アミン等のアミンの存在下で末端ヒドロキシル前駆体と合わせることができる。利用することができる適切な第3級アミンには、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ピリジン、ジメチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’−ジオクチル−p−フェニレンジアミンおよびそれらの組合せ等が挙げられる。
【0018】
いくつかの実施形態において、リン酸エステルにより末端ヒドロキシル前駆体成分を官能化するための反応スキームは、下記
【0019】
【化8】

[式中、Rは、上述のポリエーテル、ポリエステルおよび/またはポリ(エーテル−エステル)ブロック、あるいはそれらの組合せであってよく、Rは、水素原子、保護基、または約1個から約50個、いくつかの実施形態においては約2個から約20個の炭素原子を含む有機部分であってよい]
を含んでよい。
【0020】
このように生成されたリン酸エステル官能化化合物は、次いで、少なくとも1種の第1級または第2級のアミノ基を有するポリアミンにより末端封止してもよい。少なくとも1種の第1級/第2級のアミノ基を有する適切なポリアミンには、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、リシン、スペルミジン(N−(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン)、スペルミン(N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン)、ヘキサメチレンジアミンの異性体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビスヘキサメチレントリアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,2−エタンジアミン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N−(2−アミノエチル)−1,3プロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキサンジアミンの異性体、4,4’−メチレンビスシクロヘキサンアミン、4’4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサンアミン)、トルエンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミンおよびフェナルキレンポリアミンが挙げられるが、それらに限定されるものではない。いくつかの実施形態においては、前述のポリアミンの組合せを利用することができる。
【0021】
別の実施形態において、ポリアミンは、Huntsman Performance Chemicals(ヒューストン、テキサス州)によりJEFFAMINE(登録商標)という名で販売されるポリオキシアルキレンアミン、他のアミノ官能化ポリアルキレンオキシド、ならびにリシンおよび/またはアルギニンの残留物を有するポリペプチドを含むポリペプチド等を含む、ポリアミノ官能性マクロマー化合物であってよい。いくつかの実施形態においては、前述のポリアミンのどれかを組み合わせて利用することができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、リン酸エステル官能化化合物は、以下の反応スキーム
【0023】
【化9】

[式中、RおよびRは、上述のとおりであってよく、NH−R−NHは、上述のポリアミンに由来してよい]
に従って、ポリアミンにより末端封止することができる。
【0024】
本開示の生成生分解性リン酸エステルポリアミンは、多くの医療用途において利用できる。いくつかの実施形態において、本開示の生分解性リン酸エステルポリアミンは、組織の接着剤または封止剤のための架橋剤として使用できる。例えば、本開示の生分解性リン酸エステルポリアミンは、吹付可能なマルチイソシアネート−ポリウレタン封止剤のための架橋剤として利用できる。このような実施形態において、本開示の生分解性リン酸エステルポリアミンは、式中、Xは、ポリエーテル基、ポリエステル基またはポリエーテル−エステル基であり、Rは、芳香族基、脂肪族基または脂環式基である、式
【0025】
【化10】

により表されるイソシアネートプレポリマー等の第2の成分と合わせることができる。
【0026】
イソシアネートプレポリマー成分として利用することができる適切なポリエーテルは、当業者の理解の範囲内であり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコールが挙げられる。特に有用な実施形態において、ポリエーテルは、ポリエチレングリコール、またはメトキシポリエチレングリコール等のその誘導体である。
【0027】
イソシアネートプレポリマー成分として利用することができる適切なポリエステルは、当業者の理解の範囲内であり、例えば、トリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、グリコリド、ラクチド、1,5−ジオキセパン−2−オン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートおよびポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0028】
さらに、第2の成分はポリ(エーテル−エステル)ブロックを含んでよい。当業者の理解の範囲内である任意の適切なポリ(エーテル−エステル)ブロックを、イソシアネートプレポリマーの成分として利用することができる。いくつかの例として、ポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール−ポリラクチド、ポリエチレングリコール−ポリグリコリド、ならびに本明細書に記載の個々のポリエーテルおよびポリエステルの様々な組合せが挙げられるが、それらに限定されるものではない。ポリ(エーテル−エステル)ブロックの追加的な例が、米国特許第5578662号および米国特許出願2003/0135238に開示されており、それらそれぞれの内容全体を本明細書に引用して援用する。
【0029】
ポリエーテル、ポリエステルまたはポリ(エーテル−エステル)ブロックに加えて、第2の成分を、イソシアネートにより末端封止して、ジイソシアネート官能性化合物を生成することができる。脂肪族の、ポリエーテル、ポリエステルまたはポリ(エーテル−エステル)ブロックを末端封止するための適切なイソシアネートには、芳香族の、脂肪族の、および脂環式のイソシアネートが挙げられる。例として、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)またはテトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジメチルジイソシアネート、リシンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートまたは2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリメチル1,3−フェニレンジイソシアネートまたは市販のBayer Material Science製DESMODURS(登録商標)等の脂環式ジイソシアネートが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0030】
ジイソシアネートにより、ポリエーテル、ポリエステルまたはポリ(エーテル−エステル)ブロックを末端封止する方法は、当業者の理解の範囲内である。いくつかの実施形態において、ポリエーテル、ポリエステルまたはポリ(エーテル−エステル)ブロックを、適切なジイソシアネート、いくつかの実施形態においてはトルエンジイソシアネートと合わせ、約55℃から約75℃、いくつかの実施形態においては約60℃から約70℃、いくつかの実施形態においては約65℃の適温に加熱することができる。いくつかの実施形態においては、次いで、石油エーテルでの熱抽出により、生成ジイソシアネート官能性化合物を得ることができる。
【0031】
第2の成分の粘度は、約10cPから約500000cP、いくつかの実施形態では、約100cPから約200000cP、一般的には約200cPから約100000cPであってよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、第2の成分は極性溶媒と混合することができる。利用することができる適切な極性溶媒は、当業者の理解の範囲内であり、例えば、水と、エタノール、トリエチレングリコール、メトキシ−ポリエチレングリコール等のアルコールと、ジメチルホルムアミドと、ジメチルアセトアミドと、ガンマ−ブチロラクトンと、N−メチルピロリドンと、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトンと、ジエチルエーテル等のエーテルと、これらおよび他の極性溶媒の混合物とが挙げられる。
【0033】
極性溶媒は、第2の成分と約1:0.25から約1:10(重量比)の比率で、いくつかの実施形態においては約1:1から約1:4(重量比)の比率で混合することができる。
【0034】
本明細書に記載の、第2の成分と極性溶媒との混合物は、乳濁液または希釈溶液を生じうる。生成する乳濁液または溶液の粘度は、約400cP未満、いくつかの実施形態においては約200cP未満でありうる。いくつかの実施形態においては、生成する乳濁液または溶液の粘度は、約5cPから約400cP、他の実施形態においては約25cPから約300cP、さらに他の実施形態においては約50cPから約150cPでありうる。粘度を低減させると、接着剤、封止剤またはドラッグデリバリーシステムとしての組成物の接着特性および物理機械的特性を犠牲にすることなく、乳濁液または溶液の吹付が改善される。
【0035】
本明細書に記載の極性溶媒に加えて、第2の成分は、極性薬物とも混合できることが想定される。極性溶媒と同様に、極性薬物は第2の成分と反応でき、低減された粘度の、乳濁液または溶液を生成する。この第2の成分は、極性薬物および場合によって第2の成分と混合して、その場で合成ドラッグデリバリーシステムを形成することができる。当業者の理解の範囲内である任意の適切な極性薬物を使用することができる。
【0036】
したがって、上述した任意選択の第2の成分と合わせた、本開示の生分解性リン酸エステルポリアミンを利用し、いくつかの実施形態においては、本開示の生体適合性組成物を生成することができる。いくつかの実施形態において、本開示の生体適合性組成物は、組織の接着剤または封止剤として利用することができる。
【0037】
本開示の生分解性リン酸エステルポリアミンは、当業者の理解の範囲内である任意の方法で、第2の成分と混合することができる。いくつかの実施形態においては、上述のように、第2の成分を極性溶媒と合わせることができる。他の実施形態において、本開示の生分解性リン酸エステルポリアミンは、同様に第2の成分と合わされる水溶液中で、場合によって上述のように極性溶媒と合わせることができる。
【0038】
一例として、第2の成分および極性溶媒を含む、乳濁液または溶液を、本開示の生分解性リン酸エステルポリアミンと別々にしたまま、個々の成分を同一の位置上に連続的に吹き付けることにより、2成分を混合しその場で接着を形成することが挙げられる。別の例として、第2の成分および極性溶媒を含む、乳濁液または溶液を、本開示の生分解性リン酸エステルポリアミンと別々にしたまま、2成分を同一ノズルを通じて同時に吹き付けることにより、2成分を吹き付けつつ混合することが挙げられる。
【0039】
生分解性リン酸エステルポリアミンおよび第2の成分の濃度は、用いられる特定の成分、および目的の最終使用用途の、種類および分子量を含むいくつかの要因、すなわち接着剤または封止剤として用いるための、本開示の組成物を形成する要因に依存して異なるだろう。
【0040】
生分解性リン酸エステルポリアミンおよび第2の成分を合わせて接着剤または封止剤を生成する場合、本明細書において生物活性剤と呼ぶこともある生物学的に活性な作用剤を、本開示の組成物中に含んでよい。例えば、コラーゲン等のタンパク質、およびグリコサミノグリカン等の様々な天然多糖類の誘導体を含む、天然高分子を本開示の組成物中に組み入れることができる。これらの他の生物学的に活性な作用剤が官能基をも含有するとき、この基は、本開示の生体適合性組成物の第1のおよび/または第2の成分の官能基と反応することになろう。
【0041】
薬剤を含む、様々な任意選択の成分を、本開示の生体適合性組成物に加えることもできる。抗菌安定化特性を提供し、生体適合性組成物中で他の材料の分散を促進するリン脂質界面活性剤を加えることができる。追加的な薬剤には、抗菌剤、着色剤、防腐剤、または例えば、タンパク質およびペプチドの製剤、解熱剤、消炎剤および鎮痛剤、抗炎症剤、血管拡張剤、抗高血圧剤および抗不整脈剤、降圧剤、鎮咳剤、抗悪性腫瘍薬、局所麻酔薬、ホルモン製剤、抗喘息剤および抗アレルギー剤、抗ヒスタミン薬、抗凝固剤、鎮痙剤、脳の循環および代謝の改善薬、抗うつ剤および抗不安剤、ビタミンD製剤、血糖降下薬、抗潰瘍薬、催眠薬、抗生物質、抗真菌薬、鎮静薬、気管支拡張薬、抗ウイルス薬、ならびに排尿障害薬等の薬剤が挙げられる。
【0042】
ヨウ素もしくは硫酸バリウム、またはフッ素等の画像診断薬を本開示の組成物と合わせ、エックス線、MRIおよびCATスキャンを含む画像診断装置を用いることにより、手術領域を視覚化することもできる。
【0043】
そのうえ、酵素を本開示の組成物に加え、その分解速度を増大させることができる。適切な酵素には、例えば、エラスターゼ、カテプシンG、カテプシンE、カテプシンB、カテプシンH、カテプシンL、トリプシン、ペプシン、キモトリプシンおよびγ−グルタミルトランスフェラーゼ(γ−GTP)等のペプチド加水分解酵素、ホスホリラーゼ、ノイラミニダーゼ、デキストラナーゼ、アミラーゼ、リゾチームおよびオリゴサッカラーゼ等の糖鎖加水分解酵素、アルカリホスファターゼ、エンドリボヌクレアーゼおよびエンドデオキシリボヌクレアーゼ等のオリゴヌクレオチド加水分解酵素が挙げられる。酵素を加えるいくつかの実施形態においては、この酵素をリポソームまたはミクロスフェアの中に包含してその放出速度を制御し、それによって、本開示の生体適合性組成物の分解速度を制御することができる。酵素をリポソームおよび/またはミクロスフェアに組み入れる方法は、当業者には既知である。
【0044】
本開示の生体適合性組成物は、創傷閉鎖(外科的切開および他の創傷を含む)、医用デバイス(インプラントを含む)のための接着剤、封止剤、および塞栓薬を含むが、それらに限定されるものではない、いくつかの異なるヒトおよび動物の医療用途に用いることができる。これらの組成物は、縫合、ステープル、テープおよび/または包帯の、代替または補助のいずれかとして組織を一緒に結合するために用いることができる。本開示の組成物を接着剤として使用することにより、現行の診療の間に通常必要とされる縫合の数をなくしまたは実質的に減少させ、その後にステープルおよびある種の縫合を除去する必要をなくすことができ、したがって縫合、鉗子、または他の従来の組織閉鎖機構が、さらなる組織損傷を引き起こすかもしれない繊細な組織に用いるのに特に有用でありうる。
【0045】
追加的な用途には、組織を封止して、縫合線またはステープルラインでの血液または他の流体の漏れを防止しまたは制御することが挙げられる。別の実施形態において、生体適合性組成物は、再建手術の間に、植皮をくっつけ、組織弁の位置決めをするために用いることができる。さらに別の実施形態においては、この接着剤を、歯周外科手術において組織弁を閉鎖するために用いることができる。
【0046】
2つの組織縁部の連結を達成するためには、この2つの縁部を接近させ、本開示の組成物を適用し、いくつかの実施形態においては吹き付けることにより適用する。生分解性リン酸エステルポリアミンおよび第2の成分は、概して1分未満で速やかに架橋する。本開示の組成物を、接着剤として使用し、外科的切開を含む創傷を閉鎖することができる。このような場合においては、本開示の組成物を、創傷に適用して固めることができ、それによって創傷を閉鎖する。
【0047】
科学界内部では、用語「肉」と「組織」の用法の間に、特定の区別がなされることがあるが、本明細書においてこれらの用語は、医療分野内で患者の治療のために本接着剤が利用されると当業者が理解する一般的な基体を指して、互換的に用いられる。本明細書において用いられる、「組織」は、皮膚、骨、神経、軸索、軟骨、血管、角膜、筋肉、筋膜、脳、前立腺、胸部、子宮内膜、肺、膵臓、小腸、血液、肝臓、精巣、卵巣、頚部、大腸、胃、食道、脾臓、リンパ節、骨髄、腎臓、末梢血、胚または腹水の組織を含みうるが、それらに限定されるものではない。
【0048】
別の実施形態において、本開示は、本開示の生体適合性組成物を用いて、2つの組織縁部を固定するのではなく、医用デバイスを組織に接着する方法を対象とする。いくつかの実施形態においては、医用デバイスの組成物に依存して、医用デバイス上にコーティングが必要なことがある。いくつかの場合において、このようなコーティングには、本開示の組成物の生分解性リン酸エステルポリアミンまたは第2の成分を挙げることができる。いくつかの態様においては、医用デバイスにはインプラントが含まれる。他の医用デバイスには、ペースメーカー、ステントおよびシャント等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。一般に、デバイスを動物組織の表面に接着するために、本開示の組成物をデバイス、組織表面またはその両者に適用することができる。次いで、デバイス、生体適合性組成物および組織表面を互いに接触させ、組成物を固まらせ、それによってデバイスと表面とを互いに接着させる。
【0049】
本開示の組成物は、手術後の癒着を防ぐために用いることもできる。このような用途において、生体適合性組成物は、治癒する過程の間に手術部位に癒着が形成されるのを防ぐために適用し、内部組織の表面上の層として硬化させる。
【0050】
癒着バリアを形成することに加えて、いくつかの実施形態において、この生体適合性組成物は、インプランテーションのためのガスケット、バットレスまたは綿球等のインプラントを形成するために利用することができる。
【0051】
封止剤として使用する場合、本開示の組成物は、手術処置の間と後の両方における出血または流体漏れを防止または抑制するために手術において用いることができる。本開示の組成物は、肺の手術と関連する空気漏れを防ぐために適用することも可能である。組織中の任意の欠損を封鎖し、任意の流体または空気の移動を封鎖するために少なくとも必要な量で、この封止剤を所望の領域に直接適用することができる。
【0052】
本生体適合性組成物は、いくつかの有利な特性を有する。本開示の生成生体適合性組成物は安全で、生体適合性であり、組織への増進された接着性を有し、生分解性であり、止血の潜在能力を有し、低コストであり、調製および使用をしやすい。本明細書に記載の生分解性リン酸エステルポリアミンおよび第2の成分から調製される本開示の接着剤または封止剤の組成物は、リン酸エステルおよび場合によってエステル結合を、本開示の生分解性リン酸エステルポリアミンに組み入れることにより、その場で最初に適用したときに接着剤または封止剤の機械的性能へのいかなる負の影響なく、非特異的な加水分解、より速い分解、およびより速い質量減少をより受けやすいことがある。
【0053】
以下の実施例は、本開示の実施形態を例証するために提示されている。これらの実施例は、例証となることだけを意図したものであって、本開示の範囲を制限することを意図したものではない。また、別途示されなければ、部およびパーセントは重量による。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
リン酸エステルによりメトキシポリエチレングリコールを官能化し、次いで、そのリン酸エステルをポリアミンにより末端封止することにより、生分解性リン酸エステルポリアミンを合成した。
【0055】
約1900の分子量を有するメトキシポリエチレングリコール(mPEG)を、トリエチルアミン(NEt)およびジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下で、エチルジクロロホスフェート(EOP)と合わせ、末端リン酸エステルのメトキシポリエチレングリコールを形成した。mPEG、NEtおよびDMAPは、ジクロロメタン(250ml)を含んだフラスコ中で合わせた。このフラスコを氷浴することで、反応を約0〜3℃の温度で行った。次いで、約2.5時間の間、EOPおよびジクロロメタンを含む溶液を、フラスコに滴下して加えた。この粗混合物を、冷蔵庫内におき、約19時間の間、一晩保管した。この合成で利用された化合物を、以下の表1に明示する。
【0056】
【表1】

このリン酸エステル官能化mPEGを合成する反応スキームの概略は、以下
【0057】
【化11】

のとおりであった。
【0058】
末端リン酸エステルのmPEGの生成溶液は濾過した後、次いでスペルミンと反応させ、末端アミンのリン酸エステル官能性mPEGを形成した。スペルミンをジメチルホルムアミド(DMF)約10mLに溶解し、HCl捕捉剤として作用するトリエチルアミンを加えた。合成のこの部分で利用された化合物、およびそれらの量を、以下の表2に明示する。
【0059】
【表2】

スペルミン/トリメチルアミン/DMFの溶液を、約0℃の温度でリン酸エステル官能化mPEGに滴下して加え、約4時間経過後、沈殿物を得た。この材料を、濾過および蒸発にかけたところ、濾液は無色の液体であった。蒸発により容積の約90%を減らした後、生成した材料をPE/エーテルの中で沈殿した。エーテル中での沈殿の後、得られた白色固体の沈殿物を、真空ポンプにより約1週間乾燥した。フーリエ変換赤外(FTIR)分析および核磁気共鳴(NMR)分析を用いて、最終生成物の構造を確認した。この生分解性リン酸エステルポリアミンを合成する反応スキームの概略は、以下
【0060】
【化12】

のとおりであった。
【0061】
(実施例2)
概して上記実施例1に記載のとおり、メトキシポリエチレングリコールをリン酸エステルにより官能化した。
【0062】
約200の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)、トリエチルアミン(NEt3)およびジメチルアミノピリジン(DMAP)を、ジクロロメタンに溶解した。この材料をフラスコ中で合わせ、約0℃まで冷却した。ジクロロメタンおよびエチルジクロロホスフェート(EOP)を含有する溶液を窒素下で滴下して加えた。反応は、約0℃の温度で生じ、約2時間の間進行させた。次いでこの材料を一晩保管した。
【0063】
合成において利用された化合物を、以下の表3に明示する。
【0064】
【表3】

生成材料を、濾過、およびROTAVAPOR(登録商標)ロータリーエバポレータ(BUCHI Labortechnik AG)での濾液の蒸発にかけ、次いで、エーテル中での沈殿により回収して、乾燥白色沈殿物を得た。この沈殿物をDMF約150mLに再溶解し、再度濾過した。
【0065】
スペルミンをDMF約150mLに溶解し、HCl捕捉剤として作用するトリエチルアミンを加えた。次いでこのスペルミンを上述の沈殿物に加えた。合成のこの部分において利用された化合物、およびその量を、以下の表4に明示する。
【0066】
【表4】

スペルミン/トリメチルアミンのDMF溶液を、リン酸エステル官能化PEG−200に、一晩攪拌しつつ約0℃の温度で滴下して加えた。約60℃の真空下でDMFの塩を濾過することにより、生成材料を回収した。得られた最終生成物は、粘性の油状物質であった。収率は90%超であり、構造をNMR、IRおよび示差走査熱量測定(DSC)により確認した。
【0067】
当然のことながら、上に開示された様々なこと、ならびに他の特徴および機能、またはそれらの代替は、多くの他の異なる系および用途に好ましく組み合わせることができることが理解されよう。また、様々な、現在は不測のまたは予期しない、それにおける代替、変更、変化または改良が、後に当業者によりなされるかもしれないが、それらも添付の特許請求の範囲に包含されることを意図している。請求項の中で特に述べなければ、特許請求の範囲のステップまたは成分は、いかなる特定の順序、数、位置、大きさ、形状、角度、色または材料について、明細書または他のいかなる請求項から、暗示されまたは示されてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式
【化1】

[式中、Rは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(エーテル−エステル)ブロックおよびそれらの組合せからなる群から選択され、Rは、水素原子、保護基または約1個から約50個の炭素原子を有する有機部分であり、NH−R−NHは、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、リシン、N−(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミンの異性体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビスヘキサメチレントリアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,2−エタンジアミン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N−(2−アミノエチル)−1,3プロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキサンジアミンの異性体、4,4’−メチレンビスシクロヘキサンアミン、4’4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサンアミン)、トルエンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン、フェナルキレンポリアミン、アミノ官能化ポリアルキレンオキシド、ポリペプチドおよびそれらの組合せからなる群から選択されるポリアミンに由来する]
の生分解性リン酸エステルポリアミンを含む、生体適合性組成物。
【請求項2】
が、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、それらのコポリマーおよびそれらの組合せからなる群から選択されるポリエーテルを含む、請求項1に記載の生体適合性組成物。
【請求項3】
が、トリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、グリコリド、ラクチド、1,5−ジオキセパン−2−オン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレートおよびそれらの組合せからなる群から選択されるポリエステルを含む、請求項1に記載の生体適合性組成物。
【請求項4】
が、ポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール−ポリラクチド、ポリエチレングリコール−ポリグリコリド、およびそれらの組合せからなる群から選択されるポリ(エーテル−エステル)ブロックを含む、請求項1に記載の生体適合性組成物。
【請求項5】
が、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、グリコリド−ポリエチレングリコール−カプロラクトンコポリマー、脂肪族オリゴエステルおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の生体適合性組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の生体適合性組成物を含む接着剤。
【請求項7】
請求項1に記載の生体適合性組成物を含む封止剤。
【請求項8】
末端ヒドロキシル成分をリン酸エステルと合わせて、リン酸エステル官能化化合物を形成することと、
前記リン酸エステル官能化化合物をポリアミンと合わせて、生分解性リン酸エステルポリアミンを生成することと
を含む方法。
【請求項9】
前記末端ヒドロキシル成分が、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(エーテル−エステル)ブロックおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記末端ヒドロキシル成分が、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、トリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、グリコリド、ラクチド、1,5−ジオキセパン−2−オン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール−ポリラクチド、ポリエチレングリコール−ポリグリコリド、グリコリド−ポリエチレングリコール−カプロラクトンコポリマー、脂肪族オリゴエステルおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記リン酸エステルが、ジクロロ−リン酸エステルを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
末端ヒドロキシル成分をリン酸エステルと合わせて、リン酸エステル官能化化合物を形成することが、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタンおよびそれらの組合せからなる群から選択される溶媒の存在下で生じる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
末端ヒドロキシル成分をリン酸エステルと合わせて、リン酸エステル官能化化合物を形成することが、トリエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ピリジン、ジメチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’−ジオクチル−p−フェニレンジアミンおよびそれらの組合せからなる群から選択される第3級アミンの存在下で生じる、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記リン酸エステル官能化化合物が、式
【化2】

[式中、Rは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(エーテル−エステル)ブロックおよびそれらの組合せからなる群から選択され、Rは、水素原子、保護基、および約1個から約50個の炭素原子を含む有機部分からなる群から選択される]
である請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリアミンが、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、リシン、N−(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミンの異性体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビスヘキサメチレントリアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,2−エタンジアミン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N−(2−アミノエチル)−1,3プロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキサンジアミンの異性体、4,4’−メチレンビスシクロヘキサンアミン、4’4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサンアミン)、トルエンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン、フェナルキレンポリアミン、アミノ官能化ポリアルキレンオキシド、ポリペプチドおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記生分解性リン酸エステルポリアミンが、式
【化3】

[式中、Rは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(エーテル−エステル)ブロックおよびそれらの組合せからなる群から選択され、Rは、水素原子、保護基、または約1個から約50個の炭素原子を有する有機部分からなる群から選択され、NH−R−NHは、ポリアミンに由来する]
である、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
イソシアネートプレポリマーと、
下式
【化4】

の生分解性リン酸エステルポリアミン
[式中、Rは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(エーテル−エステル)ブロックおよびそれらの組合せからなる群から選択され、Rは、水素原子、保護基、または約1個から約50個の炭素原子を有する有機部分であり、NH−R−NHは、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、リシン、N−(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミンの異性体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビスヘキサメチレントリアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,2−エタンジアミン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N−(2−アミノエチル)−1,3プロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキサンジアミンの異性体、4,4’−メチレンビスシクロヘキサンアミン、4’4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサンアミン)、トルエンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン、フェナルキレンポリアミン、アミノ官能化ポリアルキレンオキシド、ポリペプチドおよびそれらの組合せからなる群から選択されるポリアミンに由来する]と
を含む、生体適合性組成物であって、
前記生分解性リン酸エステルポリアミンが、前記イソシアネートプレポリマーを架橋する、生体適合性組成物。
【請求項18】
前記イソシアネートプレポリマーが、式
【化5】

[式中、Xは、ポリエーテル、ポリエステルおよびポリエーテル−エステルからなる群から選択され、Rは、芳香族基、脂肪族基および脂環式基からなる群から選択される]
である、請求項17に記載の生体適合性組成物。
【請求項19】
第1の組織表面と第2の組織表面とを接近させることと、
前記接近させた第1および第2の組織表面に、請求項17に記載の生体適合性組成物を適用し、第1の組織表面を第2の組織表面に接着することと
を含む、組織を接着する方法。
【請求項20】
医用デバイスと組織表面とを接近させることと、
請求項17に記載の生体適合性組成物を、前記医用デバイス、前記組織表面、または両方に適用することと
を含む、医用デバイスを組織表面に接着する方法であって、
前記生体適合性組成物の適用により、前記医用デバイスを前記組織表面に接着する方法。

【公表番号】特表2009−529068(P2009−529068A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556404(P2008−556404)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/004477
【国際公開番号】WO2007/100574
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】