説明

生分解性樹脂の改質

【課題】生分解性樹脂に柔軟性を与え、生分解性にあまり影響することなく、(1)汎用の成形加工機で、汎用樹脂の成形条件の範囲で経済的な生産が可能な生分解性樹脂組成物、及び、(2)硬質から半硬質、軟質製品まで広範囲の用途に適する生分解性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】生分解性樹脂100重量部に対し炭素数4以上のアルキルアクリレート30%以上を含むアクリルースチレン系共重合体3〜80重量部及び樹脂用可塑剤3〜80重量部よりなる樹脂組成物。樹脂用可塑剤が体積固有抵抗値及び/又は表面固有抵抗値が10Ω・cm以下である導電性又は帯電防止性可塑剤。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【001】
本発明は生分解性樹脂の成形加工性の改善及び用途拡大を目的とする改質に関する。
【背景技術】
【002】
近年、樹脂による環境汚染問題、例えば海洋汚染や土壌汚染がクローズアップされてきた。その対策として、生分解性樹脂や自然崩壊性樹脂が提案され、市場の評価がなされてきた。しかし、品質、成形加工性の問題や使い勝手の悪さで普及が遅れているのが現状である。
品質、性能上の問題点としては
(1)成形加工幅が狭く、汎用の成形機では経済的な生産が難しい。
(2)品質上では柔軟性がなく、硬くて脆いので用途的に限定される。
(3)他樹脂等を多量に添加する改質は生分解性を損ねる。
等の問題が指摘されている。
【本発明が解決しようとする課題】
【003】
本発明は生分解性樹脂に柔軟性を与え、生分解性にあまり影響することなく、
(1)汎用の成形加工機で、汎用樹脂の成形条件の範囲で経済的な生産が可能な生分解性樹脂組成物を提供すること。
(2)硬質から半硬質、軟質製品まで広範囲の用途に適する生分解性樹脂組成物を提供すること。
【問題を解決するための手段】
【004】
本発明者は、本課題を達成するため多年にわたり研究の結果、生分解性樹脂に対し炭素数4以上のアルキルアクリレート30%以上を含むアクリルースチレン系共重合体及び樹脂用可塑剤よりなる樹脂組成物が前記の課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
本発明は以下の構成を有する。
(1)生分解性樹脂100重量部に対し、炭素数4以上のアルキルアクリレート30重量以上を含む%アクリルースチレン系共重合体3〜80重量部好ましくは5〜50重量部、樹脂用可塑剤3〜50重量部好ましくは5〜50重量部よりなる生分解樹脂組成物。
(2)生分解性樹脂がポリ乳酸であることを特徴とする(1)の樹脂組成物。
(3)樹脂用可塑剤が体積固有抵抗値及び/又は表面固有抵抗値が10(Ω・cm)以下である導電性又は帯電防止用可塑剤であることを特徴とする(1)に記載の生分解性樹脂組成物。
【発明の効果】
【005】
例えば、ポリ乳酸の場合、融点が通常170℃以上であり、成型加工条件としては180℃以上にしないと成型品が出来ない。しかし、本樹脂組成物では150℃で成形加工が可能となる。そのため、汎用の蒸気加熱、オイル加熱成形機でも十分成形可能である。また本組成物は可塑剤の量に応じて柔軟性を調整できるので、用途に応じて硬質製品、半硬質製品、軟質製品に展開可能である。
【発明を実施するための形態】
【006】
本発明で用いる生分解性樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、脂肪族ポリエステルのような化学合成品、微生物多糖類のような微生物合成品、キトサン/セルロースのような天然高分子等々が用いられる。
【007】
本発明に用いられる炭素数4以上のアルキルアクリレートを30重量%以上含むアクリルースチレン系共重合体はアクリル酸又はメタクリル酸60〜70重量%、炭素数4以上のアルキルアクリル酸30〜40重量%、スチレン2〜5重量%よりなる。各成分がこの範囲を外れると可塑剤吸収性が著しく低下する。
【008】
可塑剤は通常に用いられる樹脂用可塑剤である。例えば,DOP,DINP,TOTM等のフタル酸系可塑剤,DOA,DINA等の脂肪酸系可塑剤、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等の植物性油由来の可塑剤、ポリエステル系可塑剤、TCP,TPP等のホスファイト系の可塑剤が含まれる。
これら可塑剤は生分解性樹脂100重量部に対して3〜80重量部好ましくは5〜50重量部添加される。3重量部以下では効果が少なく、80重量部以上では品質上問題があり実用的ではない。
【009】
これらの可塑剤の中でもが体積固有抵抗値及び/又は表面固有抵抗値が10(Ω・cm)以下である導電性又は帯電防止用可塑剤は極めて生分解樹脂に対する親和性が大きく、可塑化効果が顕著である。このような導電性又は帯電防止用可塑剤としては、アジピン酸系、ポリエステル系、フタル酸系のものが市販されているが、いずれも上記の抵抗値を示すものであれば効果がある。しかし、抵抗値が低いものほど効果は大である。
【010】
本発明の樹脂組成物は通常の混合装置、例えばヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー、リボンブレンダー等を用いて混合し、直接又は造粒してから射出成型法、押出成型法、ブロー成型法、カレンダー成型法等により目的とする成形品の製造に供される。
【011】
[比較例1,2]
ポリ乳酸(三井化学製レーシアH100J)100重量部に対して、アクリル樹脂系の加工助剤(三菱レーヨン製、メタブレンP530)を3重量部,及び炭素数4以上のアルキルアクリレートを30重量%以上含むアクリルースチレン系共重合体(三菱レーヨン製)を3重量部、樹脂用可塑剤(DOP)を各々3重量部および適量の酸化防止剤、滑剤を計量、混合し160〜180℃に温度設定した8インチロールにて混練し、約0.5ミリ厚のシートを作成した。このシートについてJISA硬度計にて硬度を、ショッパー式引張り試験機にて引張り強度及び伸びを測定した。結果を表1に示す。これから判るように、加工温度は180℃、樹脂温度は175℃であり、硬度(JISA)は95度以上と塩ビ樹脂でいうと硬質相当である。
【012】
[実施例1〜3]
比較例1,2で用いたポリ乳酸100重量部、これまた比較例で用いたアクリルースチレン共重合体を10〜40重量部に対して、樹脂用可塑剤(DOP)10〜40重量部、及びエポキシ化大豆油10重量部及び適量の酸化防止剤、滑剤を計量、混合し150〜170℃に温度設定した8インチロールで比較例と同様に製膜した。このシートについて比較例と同様の測定を行った。結果を表1に示す。これから判るように、加工温度、樹脂温度は10〜20℃低下し、硬度(JISA)も90〜95度と塩ビ樹脂で言うと半硬質相当にまで低下した。
【013】
[実施例4,5]
比較例1,2で用いたポリ乳酸100重量部、これまた比較例で用いたアクリルースチレン共重合体を40〜60重量部に対して、導電性可塑剤(アデカ社製、LV808、体積固有抵抗値 8.2×10 )40〜80重量部及び適量の酸化防止剤、滑剤を計量、混合し150〜170℃に温度設定した8インチロールで比較例と同様に製膜した。このシートについて比較例と同様の測定を行った。結果を表1に示す。これから判るように、加工温度、樹脂温度は10〜20℃低下し、硬度(JISA)も80〜85度と塩ビ樹脂で言うと軟質相当にまで低下した。
【014】
[比較例3]
比較例1,2で用いたポリ乳酸100重量部、これまた比較例で用いたアクリルースチレン共重合体を40重量部に対して、実施例4,5で用いた導電性可塑剤を100重量部及び適量の酸化防止剤、滑剤を計量、混合し150〜160℃に温度設定した8インチロールで比較例1,2と同様に製膜した。しかし、そのままではロール上の溶融物が柔らかすぎて、シートに引き出せなかった。そこで、ロール温度140℃迄落として製膜した。そして、同様の物性測定を行ったが、測定後室温で2〜3日放置していたら、可塑剤が表面に吹き出していた。結果を表1に示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂100重量部に対し、炭素数4以上のアルキルアクリレートを30重量%以上含むアクリルースチレン系共重合体3〜80重量部、樹脂用可塑剤3〜80重量部よりなる生分解性樹脂組成物。
【請求項2】
生分解性樹脂がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂用可塑剤が体積固有抵抗値及び/又は表面固有抵抗値が10(Ω・cm)以下である導電性又は帯電防止用可塑剤であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−84704(P2011−84704A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253455(P2009−253455)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(502269354)大同化成株式会社 (6)
【Fターム(参考)】