説明

生化学分析装置

【課題】生体試料分析用のチップ、ロータ等の担体に対するより効率の良い恒温化を図ると共に、消費電力などを抑えた当該担体及び読み取り装置を提案する。
【解決手段】規則的運動を行う担体の一面の一部を加温する加温手段、前記加温手段の部位と対向する部位を測温する測温手段、前記測温手段で測温した温度に基づいて、前記加温手段の加温量を調節制御する制御手段よりなると共に、好ましくは担体を加熱する面以外の面を黒色などの吸熱部材を付する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学反応を示す部位を複数有する担体を計測する生化学分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今般、糖尿病、がん、脳梗塞など生活習慣にかかわる疾病は、食生活、ストレス等、生活上の要件が深くかかわることから、これらの疾病の早期発見の為に、血液、尿などの体液成分を多項目にわたって迅速に計測でき、診断できる環境がより身近なところで実現されることが希求されている。
この様な体液を分析して診断する装置は、特殊な操作をしなくても、体液成分さえ、供給すれば 在宅での利用や、設備がない場所でも、手軽に短時間で診断可能となる事が好ましい。
生体成分計測において、代表される血液、尿、汗等の体液と酵素試薬とを発色反応させた反応槽に光を照射して、反射光又は透過光を受光し、受光した光を計測して、吸光度を求めることで、電解質項目、腫瘍マーカー、感染症項目、甲状腺項目、内分泌項目等の免疫項目、グルコース、総コレステロール、クレアチニン、低比重リポ蛋白質、総ビリルビン成分濃度を光学的に計測する成分分析装置では、複数の試薬反応槽を配列した一つの担体について、計測を行う際、個々の試薬反応槽の発色データについて電気的に認識する必要がある。
【0003】
これら生化学分析装置においては、試薬との反応を有効に且つ効果的におこなうためには、温度を37℃〜38℃前後で一定に保たなければならない。
そのための手法としては、ニクロム線等を利用した電熱器を保温空間上で、動作させて、担体そのものを暖める手段が利用される。
【特許文献1】特開2001−264337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2001−264337号公報には、検体と試薬等が入った多数の容器をターンテーブル上に配列し、個々の容器に対しハロゲンランプ等を照射して加熱し、ターンテーブル上の対向する部位で加熱した容器を測温することで、個々の容器内を一定の温度に維持することが記載されている。
容器全体を加熱する手法は、十分に大きな加熱用のランプを要することとなり、消費電力が大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑み本発明は、回転する担体の一面の一部を加温する加温手段、前記加温手段の部位と対向する部位を測温する測温手段、前記測温手段で測温した温度に基づいて、前記加温手段の加温量を調節制御する制御手段なる組み合わせ構成により、より消費電力の少ない加熱手段を用いながら、的確な温度制御を可能とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、よりコンパクトで、より多項目の体液成分を測定できる体液分析装置において、更に電気エネルギーの消費をより低減させることを可能とし、消費電力の低下と、小型化を図る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、回転又は周期的運動を行う担体の一面の一部を加熱する手段と、当該加熱手段に対向する部位の温度を計測する温度計測手段と、前記温度計測手段で計測した温度に基づいて加熱手段の担体を加熱する熱量を調節制御する制御手段及び担体の裏面に配置した吸熱部材により消費電力を抑えながら、温度管理を可能とする。
本発明おける加熱手段は、赤外線、遠赤外線を照射するもの、赤外線ランプ、ハロゲンランプ、等が例示される。
本発明における温度計測手段は、非接触タイプの温度センサー(サーモパイル等)が例示される。
加熱手段と温度計測手段は、一つの担体上の異なる位置であればよいが、対角線上に配置されることが好ましい。加熱手段と担体の距離は、5mm〜10mmが例示され、温度計測手段と担体の距離は、5mm〜10mmが例示される。
本発明における吸熱部材は、黒色材又は、熱を吸収し、保持する部材であり、担体裏面に溶液、ゲル材を塗布するか、黒色シートを貼り付けてなるものが例示される。
担体の上部の一部を加熱する際、まず担体上面を加熱し、担体内部を通過して吸熱部材を加熱することから、その両面を加熱する。担体は回転することから、担体全体が両面から加熱されていくことになる。
本発明では、ポリアクリル等の硬質性ポリマーよりなる、厚さ数mmの円盤状の担体が例示されるが、その他、シート状等であって、長手方向に、試薬反応槽が配列した構成
等が例示される。
本発明は、担体の裏面を吸熱性を有する部材を配し、表面の一部を加温し、且つ担体の対向部分を測温する構成によって足りることから、薄く又コンパクトな読み取り装置を実現可能とし、パソコンの内蔵型CD-ROMドライブ装置と同じように、パソコンに組み込んだ態様が例示され、安定した環境を形成可能とする。
【実施例1】
【0008】
本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。図1は、発熱部材、温度センサ、受光体を抜き出した状態での組み合わせ配置構成を示すものであり、図2は、実際蓋を閉じた状態、図3は、図2のX−X’切断面を示す。図4は、担体を示し図4(a)は、表面、図4(b)は、裏面を示す。
図4において、501は、担体であって、ポリエステル、PMMA、PC、PS、PET、PDMS、ガラス等よりなる回転体により構成され、例えば、中央に血液供給口、希釈液貯留部、等を具え、血球分離部、混合部、定量部、分配流路501f、供給用流路501cを介して各試薬反応槽501bに定量混合液を回転の速度、方向を調整する事で、供給する構成を有する。
蓋部501aは、透光性を有し、シート状で片面だけバッキング部材を剥離した両面粘着テープ、片面粘着テープ等が用いられるが好ましくは、非変形性を備える程度の厚み1mm前後を有する板状を有する。実際、図4で示す蓋部501a及び担体501には、血液を外部から供給するための供給口が設けられる。
図4(b)で示す501dは、吸熱部材であり、黒色のシート、黒色配色された状態などを示し、少なくとも吸熱状態を形成すればよい色のものが配置されている。
501eは、試薬反応槽の底面を光学計測するために穿設された計測用孔であり、試薬反応槽の直径よりも多少小さい口径を有した窓である。
512は、チャッキング用金属部材であり、磁性部材に対し、吸引反発力が作用する部材であれば、如何なる物でも良く、例えば、スチール、フェライト、その他セラミックス、プラスチック等の非金属と金属の複合材等が示される。
512aは、凹部であり、図3で示すように担体501内部にまで及ぶものである。
図3等で示す読み取り装置の下部509と上部510は、樹脂などの断熱部材を含み内部が保温される事が好ましい。
【0009】
図1において、502a〜502cは、光源であり、レーザ光、LED等で構成され、原色毎に複数の光源が配置されている。
例えば、502aは赤色光源、502bは緑色光源、502cは、青色光源で構成され、これらと対となる受光体を503a〜503cに示した。
503aは赤色受光体、503bは緑色受光体、503cは青色受光体を示す。
これら光源と、受光体を一対とする光学ユニットが一定の間隔で配置されている。
504は、発熱部材であり、照射方向に可視光遮断フィルタ504bを具えた遮光カバー内に例えばハロゲンランプが配置された構成を有する。
505は、温度センサーであり、非接触で表面温度を計測するもの(例えばサーモパイル)が例示される。
図3において、506は、回転体であり、上面の中央部位は、回転軸506cが形成されると共に、外周部には、環状の磁性部材506bが機械的又は接着剤などにより結合され、更に外周には摩擦部材506aが同心円状に付設形成されている。
摩擦部材506aの高さは、磁性部材506bの高さよりも高く構成され、担体512を回転体506に装着した際、チャッキング用金属部材512と、磁性部材506bが接触しないような状態を形成している。
回転体506は、図3で示す様に回転モータや変速機等を含む駆動手段511と結合している。
507は、発熱体に電気エネルギを供給するための発熱体用リード線であり、508は、温度センサで得られた電気信号を、信号処理装置、マイコン制御用変換手段などに供給するためのセンサ用リード線である。
発熱体用リード線及びセンサ用リード線は、何れも装置内に配線されていればよいが、これらの図では、説明のために外部へ延ばした状態とした。
【0010】
図1〜図4で示す実施例の動作を説明する。
まず、図4で示す担体501に血液、尿等の検体を供給し、更に必要に応じ希釈液も供給する。
検体等が供給された後、図3で示すように読み取り装置の下部509の回転体506上の回転軸506cに担体501の凹部512aを併せるようにして挿入装着する。
回転体506の磁性部材506bと、チャッキング用金属部材512は、磁力により結合しようとするが、摩擦部材506aがチャッキング用金属部材512,又は担体501の裏面に接触する為、非接触状態で固定される。
この状態で、駆動手段511が回転体506を回転駆動させる。
摩擦部材506aは,担体501を回転させ、血球分離、定量、各試薬反応槽への血液検体の供給が行われる。
図1で示すように、発熱部材504に発熱体用リード線507を介して電気エネルギーを供給し、温度センサー505で、担体501に接合した蓋部501aの表面温度を計測しながら試薬反応に適した温度36.5℃〜37.5℃前後になるように発熱部材504への電気エネルギーが制御される。
担体501には、吸熱部材501dが付設されており、上面からの発熱部材による局所的な発熱による表面での発熱であるが、更に担体内部を伝達した熱は吸熱部材501dでの発熱を生じさせるため目標温度への到達は、比較的速く達成される。
【0011】
発熱部材の発熱量を、温度センサで得られる温度値によって制御するフィードバック制御手段の具体例を図5に示す。
50aは、センサであり、図1で示す温度センサー505に相当する。
50bは、A/D変換部であり、入力したアナログ信号を、デジタル信号に変換するためのものである。
50cは、フィードバック制御部であり、前後に入力される温度情報に関連したデジタル電圧情報と所定の温度情報に関連したデジタル電圧情報とを比較して、フィードバック出力を行うためのものである。
【0012】
フィードバック制御部50cについての具体的な例を図6に示した。
図6において、
5aは、入力部であり、図5のフィードバック制御部50cの入力部に相当する。
51aは,加算部であり、現在入力されるデジタル信号値に、前のデジタル信号値を加算するためのものである。
51b、51d、51fは、乗算部であり、それぞれ入力信号に対し個々に設定された係数K1からK3を掛け合わせて出力するためのものである。
51cは、記憶部であり、入力される信号を一時的に記憶するためのものである。
51a, 51b, 51c, 51dによって1次の低域通過ディジタルフィルタを構成している
51eは、減算部であり、閾値電圧Vrefから入力される信号を減算するためのものである。
図5において、50dは、D/A変換部であり、フィードバックデジタル信号をアナログ信号に変換して出力するためのものであり、例えば後段のPWM出力部の出力パルス幅を制御するアナログ出力を行う。
50eは、PWM出力部であり、入力されるアナログ信号値によりパルス幅を調整して制御するためのものである。
PWM出力部50eは、例えば、鋸状波又は三角波を発振する自走発振器と、可変可能な閾値入力を持つシュミット回路、比較回路との組み合わせが示される。
50fは、熱源であり、例えば、図1の発熱部材504内部に配置したハロゲンランプなどである。
【0013】
次に図5、図6で示す実施例の動作について図7、図8を参照して説明する。
担体501が回転している状態で、その表面温度を図5で示すセンサ50aで計測する。
センサ50aが出力するアナログのセンサ信号は、A/D変換部50bで、デジタル信号値に変換され、フィードバック制御部50cに入力される。
図6で示す入力部5aに入力された温度データXnは、加算部51aで、前に入力された温度データに係数K1が乗算されたデータと加算され加算温度データynとして乗算部51dに出力される。
又、加算部51aで前の温度データと加算出力された加算温度データynは、記憶部51cで一時的に記憶されると共に、前の温度データyn--1として乗算部51bに入力され、係数K1が乗算されて、加算部51aへ出力される。
乗算部51dは、入力された温度データynに更に係数K2を乗算した乗算データK2*ynを形成し、減算部51eへ出力する。
乗算データK2*ynは、予め設定された参照電圧Vrefから減算され、更に乗算部51fで係数K3が乗算され、出力部5bに乗算データ(K3*(Vref−(K2*yn)))が出力される。
【0014】
即ち、現在の温度データに直前の温度データを加算した値と参照電圧との差が大きいと、後段のPWM出力部に、パルス幅が大きいパルスを出力する旨の信号を出力し、差が小さくなるに従って、パルス幅が小さいパルスを出力する旨の信号を出力することで、温度情報電圧K2*ynは、参照電圧Vrefと同じくなるように、常に調整された状態が形成される。
図5で示すD/A変換部50dは、フィードバック制御部50cが出力するフィードバックデータをD/A変換して、図7(a)で示すような出力を行い、図5で示すPWM出力部50eは、このアナログフィードバックデータに基づいてパルス幅を調整したパルス信号(図7(b))を図5で示す熱源50fへ出力する。
即ち、予め設定された参照電圧Vrefと、温度データ電圧との差が、大きいと、その差に基づいたデータを接続点5bに出力し、図5のD/A変換部50dは、このデータに基づいたアナログ信号をPWM出力部50eに出力し、このアナログ信号に基づいたパルス幅を有するパルスを熱源50fに出力する。
この様なフィードバックによれば、PWM出力部50eの出力は、担体の表面温度が低い場合は、パルス幅が大きいパルスを連続して熱源50fに出力し、温度が37℃前後になるにつれて、パルス幅が小さいパルスを熱源50fに出力するような制御を行う。
図8は、センサ(サーモパイル)50aの出力電圧と、D/A変換部50dの出力電圧の関係を示したものである。
最初図5で示すD/A変換部50dの出力電圧は、最大電圧を出力することで、PWM変換部50eからの出力パルスのパルス幅も大きい状態とし、センサの出力電圧が大きくなるにつれ、D/A変換部50dの出力も小さくなっていき、PWM変換部50eからの出力パルス幅も小さくなっていくことで、熱源50fの発熱量を小さくしていき、所定の温度37℃〜38℃前後に調整するものである。
【0015】
担体の一面に、発熱源と、センサーを併設した場合、発熱源の発する熱線が、直接センサーに伝達してしまう場合があることから、発熱源の発熱と、センサーによる計測のタイミングを異なるようにし、これを繰り返すことで、センサーの誤計測を防止しても良い。
例えば、発熱源からの発熱を所定時間(例えば25秒から30秒)継続して行い、その後発熱を停止させて、センサーによる温度計測を例えば1秒から5秒行う。次にセンサーの温度計測を中断して発熱源の発熱を再開する。
これを繰り返すという手法を、本発明は好適に適用する。
尚、交互に発熱、温度計測を繰り返す場合、発熱源とセンサの位置関係は特に限定されなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、より小型で、簡易でありながら、多項目に渡る体内成分の情報を測定することができ、より身近な体内情報の検出装置の提案を行う。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す図。
【図2】本発明を説明するための図。
【図3】本発明を説明するための図。
【図4】本発明を説明するための図。
【図5】本発明を説明するための図。
【図6】本発明を説明するための図。
【図7】本発明を説明するための図。
【図8】本発明を説明するための図。
【符号の説明】
【0018】
501 担体
501a 蓋部
501d 吸熱部材
501e 計測用孔
502a〜502c 光源
503a〜503c 受光体
504 発熱部材
505 回転体
506 温度センサー
507 発熱体用リード線
508 センサ用リード線
509 読み取り装置の下部
510 読み取り装置の上部
511 駆動手段
512 チャッキング用金属部材
512a 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体の一部を加温する加温手段、前記加温手段の部位と対向する部位を測温する測温手段、前記測温手段で測温した温度に基づいて、前記加温手段の加温量を調節制御する制御手段よりなる生化学分析装置。
【請求項2】
前記担体の他面に吸熱部材を配置してなる請求項1に記載の生化学分析装置。
【請求項3】
前記加温手段がハロゲンランプよりなる請求項1に記載の生化学分析装置。
【請求項4】
前記担体は、規則性を有する運動を行う請求項1に記載の生化学分析装置。
【請求項5】
担体の一部を加温する加温手段、前記担体の表面を測温する測温手段、前記測温手段で測温した温度に基づいて、前記加温手段の加温量を調節制御する制御手段よりなり前記加温手段による加温と、前記測温手段を異なるタイミングで行う生化学分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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