説明

生物サンプル中の微生物の存在の高スループット試験

微生物を含み得る、又は含まない生物サンプルの高スループット試験のための方法と装置が提供される。前記方法は、試験対象微生物中の高度に保存された核酸配列に対するプライマー伸長反応を介して、前記生物サンプル中に存在しうる複数の潜在的微生物の同時同定のために特に構成された診断マルチプレックスパネル(DMP)の使用を含む。前記生物サンプルは、通常、前記DMPを使用する分析のために第2位置へ搬送される前に第1位置において固体基質上に固定される。本発明の前記方法と装置とは、前記生物サンプル中の感染性病原体の存在の診断、例えば、性感染症の診断、に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸酵素技術を使用して生物サンプル中に存在し得る微生物の高スループット多重試験に関する。より詳細には、本発明は、病原性微生物の同定に関する。
【背景技術】
【0002】
19世紀に疾病と死亡の主要な原因の1つとして微生物が同定されてから、感染性疾患の蔓延をモニターし制御する努力が続けられている。その最も初期の努力はジョン・スノウ博士等、未成熟な科学であった疫学科学における先駆者によってなされた。スノウ博士は、それが市全体に広がるコレラの大流行の原因であると同定した後、ロンドンのブロードストリートポンプのハンドルを取り除いたことで有名である。20世紀には、抗生物質、集団接種、及び抗ウイルス治療法の出現によって、少なくとも先進国では、そのような病気の蔓延がかつて無いレベルで制御されるようになった。しかしながら、感染病はいまだに世界中において主要な死因の一つであり、毎年「新たな」微生物性のキラーが絶え間なく出現し続けている。MRSA、SARS、鳥インフルエンザ、HIV、マラリアは世界中で不安と懸念を引き起こしている多くの感染性病原体のほんの僅かな例に過ぎない。
【0003】
UNやWHOなどの国際衛生機構は、それが多くの微生物種において抗生物質耐性のレベルを高めるものであるとして抗生物質化合物の無制限な使用に対して常に懸念を表明している。更に、性感染症 (STI)は、今日の世界における最も大きな感染病問題のひとつであり、いくつかの地域、特に、アフリカと、旧ソビエト連合、において流行のレベルにある。ある研究(アドラー・エム(Adler, M.)、2005年、「Why sexually transmitted infections are important.(性感染症はなぜ重要か。)」: In ABC of Sexually Transmitted Infections, 第5版、BMJ Books)によれば、西ヨーロッパにおいて報告された感染者の数は1700万人であり、米国では1500万人、アフリカでは7000万人、そして世界全体では約4億人であった。
【0004】
性感染症とHIV/AIDSとの戦いは、いまだ世界の政府の最重要衛生課題であり、医療保健サービスに対するアクセスの改善と、それらを必要とするすべての人々に対して利用可能な診断サービスを作り出し提供することの必要性は明らかである。多くのSTIは無症候性であり、試験を通じてのみ診断可能であるが、日常的なスクリーニングプログラムは極めてまれであり、社会的な不名誉は大きく、資金は不適切で大衆の意識は限られている。
【0005】
感染症の影響は人間集団に留まらず、家畜や作物における病気の発生によって重大な経済的ダメージが引き起こされる。ブタにおけるブタコレラ、家畜における口蹄疫、鳥インフルエンザの発生は、急速に蔓延し、農業生産と一国の経済に大打撃を与えうる。2001年英国において、口蹄疫の発生によって700万頭以上の家畜と羊が処分され、農村地帯が事実上「閉鎖」された。
【0006】
宿主(患者、動物又は植物源など)から採取されたサンプル中の微生物の存在をスクリーニングするために現在利用可能なシステムは低スループットである。臨床的環境において、その宿主が複数種の微生物感染症を患っているかもしれないということが医学的に示唆されない限り、通常は各サンプルについて試験される微生物は1種類にすぎない。これは、それぞれの試験において通常1つの感染症しか検出することができないということを意味し、このことが試験のコストと時間とに対して大きな影響を与えている。更に、無症状性の宿主においては、多くの場合、その患者がどの微生物に対して試験されるべきであるのかを決定することが困難である。2〜3種類の感染性生物体についての結果が陰性であれは、誤った安心感を与えてしまう可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実際に臨床的に使用されている現在の検出システムは、微生物感染の検出のためのDNAに基づくアッセイを使用している。最も一般的な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応、鎖置換増幅、転写媒介増幅、配列に基づく増幅アッセイ、その他いくつか、に基づくものである。これらのアプローチも低スループットで、時間がかかり、多量の実践時間を必要とし、自動化することが困難である。このことに加えて、宿主組織から採取された1つのサンプルを使用して、1つの試験で複数の病原体を検出するために使用することが可能な信頼性の高い方法はいまだ存在しない。
【0008】
したがって、1つの生物サンプル中に存在しうる複数の微生物を確実かつ安価に試験するための手段を提供することが望まれている。特に、家庭において、又は、その他の現場において、確実に生物サンプルを収集することを可能にする試験を実施するための手段を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
広義的に、本発明は、従来技術における上述した問題点を、微生物を含みうる又は含まない生物サンプルの高スループット試験用の方法と装置とを提供することによって解決するものである。前記方法は、前記生物サンプル中に存在し得る、又は存在しない複数の潜在的微生物の同時同定のために特に構成された診断マルチプレックスパネル(DMP: diagnostic multiplexing panel)の使用を含む。
【0010】
第1態様において、本発明は、潜在的に微生物を含む生物サンプル内に単数又は複数種の特定の微生物が存在するか否かを決定するための方法を提供し、前記方法は、
(a)前記生物サンプルを第1位置において固体基質上および/又は固体基質内に固定する工程と、
(b)前記固定された生物サンプルを、少なくとも第2位置へと移し、前記固体基質上および/又は固体基質内に固定された微生物DNAを抽出するべく前記固体基質に対して抽出工程を実行する工程と、
(c)工程(b)にて抽出された微生物DNAに対して核酸増幅を実行する工程、ここで、前記増幅工程は、単数又は複数種の微生物から、少なくとも一種の高度に保存された配列を増幅するように構成され、増幅された配列が標的配列として指定される、
(d)前記標的配列を、診断マルチプレックスパネル(DMP)から構成される複数のプライマー配列と組み合わせる工程、ここで、各プライマー配列は前記標的配列の遺伝子型決定を容易にする、
(e)前記工程(d)における前記標的配列とDMPとの組み合わせに対してプライマー伸長反応を行い、それによって、DMP反応産物を作り出す、そして
(f)前記反応産物中に存在する標的配列の遺伝子型を決定し、前記本能産物中の標的配列の遺伝子型を前記生物サンプル中に存在する特定の微生物の固体識別と相関させる工程、とを有する。
【0011】
第2態様において、本発明は、生物サンプル内に存在しうる少なくとも1つの感染症を引き起こすことが知られている病原性微生物の遺伝子型決定に適したDMPを提供し、前記DMPは、プライマー伸長反応に使用された時に、感染症を引き起こすことが知られている少なくとも1つの微生物の高度に保存された対立遺伝子内に存在する少なくとも二種類のSNPを同定するように構成された複数のプライマー配列を有する。
【0012】
第3態様において、本発明は、第1位置に位置するユーザによる個人使用に適した微生物試験キットを提供し、このキットは、封止可能なチャンバー内に位置する試験表面を有し、前記試験表面は、更に、生物サンプルをその内部又はその表面上に固定することが可能な固体基質を含み、生物サンプルが前記試験表面上に載置されたあと、前記試験キットを、前記生物サンプル中に単数又は複数種の微生物が存在するか否かを決定するための分析のために第2位置へと移送可能とするように前記チャンバーは前記試験表面周りで封止される。
【0013】
第4態様において、本発明は、単数又は複数種の感染性微生物のキャリアであることが疑われる、ヒトを含む動物を処理する方法を提供し、前記方法は、前記動物から生物サンプルを採取する工程と、ここに記載の方法によってこの生物サンプルを試験し、それによって前記動物が単数又は複数種の感染性微生物によって感染されているか否かを診断する工程と、前記動物に対して、前記生物サンプル中に存在することが発見されたタイプの感染性微生物に関する情報に鑑みて、適切に構成された治療を施す工程、とを有する。好ましくは、前記治療は、更に、前記生物サンプル中に存在することが発見された単数又は複数種の感染性微生物の抗生物質耐性に関する情報にも対応して構成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のこれら及びその他の利用法、特徴及び利点は、ここに提供される教示内容から当業者にとって明らかになるであろう。
【0015】
図面
図1−1〜2は、高度に保存されたDNAコンセンサス配列の概略を図示している−前記コンセンサス配列は、同じ種の複数の株の比較によって作り出された-前記増幅又はプライマー伸長反応のためのプライマーが本発明のDMP中における使用のために選択される位置が図示されている。各プライマーにおいて、最初の二つの文字は微生物を示し、その後の文字は前記種(1−3)のための標的配列を示す、第1PCRPは第1PCRプライマーを示し、第2PCRPは第2PCRプライマーを示し、E1又はE2は伸長プライマーを示し、ウレアプラズマについては、前記プライマーが指定された(UU1とUU2)二つの部位が存在する。これらプライマーの独自性が表1−1〜4に示されている。前記生物体は:(a)カンジダ・アルビカンス(Candida albicans);(b)クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis);(c)ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis);(d)マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitallium);(e)マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis);(f)ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoea);(g)トレポネーマ・パリヅム(Treponema pallidum);(h)トリコモナス・バギナリス(Trichomonas vaginalis);(f)ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)である。
【0016】
詳細説明
本発明を記載するに当たって、本発明の理解を助ける多くの定義が提供される。疑念を回避するために、ここに挙げられる全ての参考文献の全体をここに合体させる。特に定義されない限り、ここに使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。一般的な分子生物学的技術が記載される場合、当業者はそのような技術について、例えば、サムブルック,ジェイ(Sambrook J.)他, (2001) Molecular Cloning: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NYなどの標準的テキストから知識をうるものと予想される。
【0017】
ここでの使用される「特定微生物」という用語は、生物サンプル中に存在しうる、又は存在しない単数又は複数の特定種の微生物のことをいう。前記特定微生物は、好適には、ウイルス、バクテリア、真菌(単細胞酵母を含む)および/又は原生動物(プラスモジウムを含む)起源のものである。通常、前記特定微生物は、動物宿主に対して、それらのライフサイクル中のある時点において病原性となるものである。但し、本発明は、休眠状態、共生的感染、又は無症状感染を示す微生物種の試験に適している。
【0018】
ここで、「生物サンプル」という用語は、本発明によって試験される単数又は複数種の特定微生物を含みうるサンプルを含むものとされる。前記DMPの目的に応じて、前記生物サンプルは、ヒトの患者、ヒト以外の動物、植物、又は食物、から得ることができる。後者の場合、前記DMPは、食物由来の病原体による食物の汚染を測定するためのものとして構成される。前記サンプルは、好ましくは、例えば、尿、便、膣、鼻、直腸又は咽喉のスワブ、血液、唾液、および/又は痰、精液、膣又は尿道の排出物及びそれらのスワブ、涙(すなわち、涙管分泌液)、バイオプシー組織サンプル、及び上述の分泌物及び物質がその上で堆積した表面のスワブ、を含む。本発明の前記生物サンプルは、宿主生物、例えばヒトの患者、由来の細胞、組織および/又はDNAを含むことができ、本発明の目的はその宿主内における微生物の存在を試験することにあり、その宿主自身のDNAを試験するものではない。
【0019】
本発明の前記固体基質は、好適には、前記生物サンプル中に存在する任意の微生物を固定し不活性化する、或いは、もっと単純には、微生物体内に含まれる核酸の固定を引き起こすように作用する単数又は複数の試薬を含浸した吸収性繊維材から選択される。そのような試薬は、界面活性化合物、陰イオン性又は陽イオン性界面活性剤、キレート剤(例えばEDTA)、尿素および/又は尿酸を含むことができる。前記固体基質自身が、吸収材、セルロース性ペーパー(例えば吸い取りペーパー)、微細繊維材、グラスファイバ材、ポリマー繊維材(例えば、ナイロンフィルタ膜)、織布、不織布、から選択される材料を含むことができる。適当な固体基質は、例えば、米国特許第5496562、5756126、5807527、5939259、5972386、5985327、6168922、6746841及び6750059号に記載されている。本発明の具体的実施例において、固体基質は、Whatman FTA(登録商標)又はWhatman FTA Elute(登録商標)試薬によって処理されたフィルタペーパー、たとえば、Whatman FTA(登録商標)ペーパー、又はWhatman FTA Elute(登録商標)ペーパー、を含む。
【0020】
本発明の前記方法の大きな利点は、Whatman FTA Elute(登録商標)試薬などの試薬によって処理された固体基質を、臨床以外の設定において個人によって使用することが可能であることである。例えば、本発明の前記方法の最初のサンプル収集段階は、キットを購入する個人によって、そして、単純には前記固体基質を例えば尿や唾液のサンプルによって濡らすことによって行うことが可能である。前記固体基質は、前記尿又は唾液中に存在する微生物を固定し、それによって感染性病原体を安全に非感染性にして、サンプルを高価な取り扱い(すなわち、冷凍や追加の化学的固定処理)の必要無く、例えば、通常の郵便サービスによって、試験場所に搬送することができる。試験場所において、固定された微生物DNAは、通常、単純な熱及び水抽出工程によって、固体基質から容易に抽出することができる。このように本発明は、生体サンプル収集を家庭又は野外で行うことが可能で、サンプルを無期限に保存して後日に試験することが可能なシステムを提供する。この構成の利点は、重要である。というのは今日まで大半の診断試験が、サンプル収集を臨床環境で行う必要性によって阻害され、それによって人口全体間の取り込みが減少していたからである。
【0021】
本発明の一好適実施例による適当な家庭用試験キットは、試験表面を取り囲む封止可能チャンバーを有する。前記キットは、使用者に対して一滴の尿のようなサンプルを試験表面上に置くように指示する使用指示書を含む。前記試験表面は、上述したタイプの固体基質として構成される。前記サンプルを試験表面上に載置した後、前記封止可能チャンバーを、それによって試験表面を封入しそれを更なる干渉から保護するように閉じることができる。封止状態において、キットは、外部からの干渉又は汚染から保護された状態に維持され、ユーザーの家庭から離れた試験施設に送ることができる。そして試験施設においては、封止可能チャンバーを開放して(必要とあればチャンバーを破って開けることによって)、本発明の方法による分析目的のために試験表面へのアクセスを許容することができる。
【0022】
「核酸配列」とは、各ヌクレオチドの3’末端及び5’末端がホスホジエステル結合によって結合しているヌクレオチドの一本鎖又は二本鎖共有結合配列である。核酸配列は、通常、デオキシリボヌクレオチド塩基又はリボヌクレオチド塩基から構成されることが可能なポリヌクレオチドである。ポリヌクレオチドはDNAとRNAを含み、イン・ヴィトロ合成によって製造するか、もしくは、天然源から単離することができる。核酸配列のサイズは、通常、二本鎖ポリヌクレオチドの場合は塩基対(bp)の数、又は、一本鎖ポリヌクレオチドの場合は、ヌクレオチドの数(nt)として、表すことができる。1000bp又はntが1キロベース(kb)に等しい。約40個以下のヌクレオチドから成るポリヌクレオチドは通常「オリゴヌクレオチド」と呼ばれる。本発明において前記核酸増幅及びプライマー伸長工程のために利用される前記プライマー配列は一本鎖オリゴヌクレオチドである。
【0023】
ここでの使用において「核酸増幅反応」という用語は、プライマー伸長、変性、及びハイブリダイゼーションの連続ラウンドを使用してDNAの特定の配列を増幅するために熱安定性DNAポリメラーゼを利用する多数の関連酵素技術の全てを指す。通常、PCRが本発明の方法に使用される好適な核酸増幅反応である。
【0024】
「プライマー伸長反応」という用語は、核酸プライマーが、標的配列とハイブリダイズして、プライマーの3’末端に単数又は複数のヌクレオチドを付加することによって酵素伸長されるように構成される反応を指す。前記プライマーは、ある標的配列の5’の間近、或いは一塩基遺伝子多型等の遺伝子多型の位置の数塩基上流側でハイブリダイズする。プライマーが既知のSNP部位の上流側の塩基でハイブリダイズする本発明の実施例においては、単一塩基プライマー伸長は、プライマー標的配列ハイブリッドに作用して一本鎖終端ヌクレオチド、多くの場合ジデオキシヌクレオチド、を付加させる。プライマーを伸長する4つのヌクレオチドの1つだけが、標的鎖上の配列に対して相補的なものである。付加されたヌクレオチドの独自性が以下に詳述するように、本発明の方法の分析段階中に決定される。
【0025】
用語「多型対立遺伝子」は、ここで、同じ染色体遺伝子座を占め、同じ遺伝的特徴を制御する遺伝子配列の二つ以上の代替形態を指す。対立遺伝子バリエーションは、変異を通じて自然に発生し、集団内での表現型多型性、或いは、保守的(非表現型)多型性をもたらす可能性がある。遺伝子変異によって通常、核酸配列の変化が起こる。ここでの使用において、対立遺伝子多型性の現象は一塩基遺伝子多型(SNP)、挿入、欠失、反転、及び置換に関して利用され、これら全てが所与の種において高度に保存される遺伝子においてさえ発生可能である。SNPは、対立遺伝子がゲノム中の所与の位置におけるDNA配列中の単一のヌクレオチドの置き換え(replacement)/置換(substitution)によって異なる多型性である。高度に保存された遺伝子、例えば、バクテリア中の16S rRNA、は、高度に種及び株特異的であって、それによって、正確な遺伝子型決定情報を得ることを可能にする。微生物中の他の高度保存領域としては、バクテリア32S rRNA遺伝子、酵母16S及び18S rRNA遺伝子、ウイルスポリメラーゼ遺伝子がある。しかしながら、所与の微生物に対してゲノムの他の代替保存領域におけるSNPを同定するためにバイオインフォマティクス技術を利用することは当業者の技量範囲内に属する。上述したもののような多型性は、試験対象生物体中の特定の表現型特徴と関連している可能性がある。例えば、抗生物質耐性は、変異、従って、多型、に関連している。しかしながら、本発明の方法は、試験対象微生物のゲノム中の多型位置のみの同定に限定されるものではない。競合制御配列が所与の保存標的配列に対して使用される場合、用語「多型対立遺伝子」は、野生型配列(試験対象)と人工の競合配列との間の所与の部分でのバリエーションを大まかに指す。この例において、所謂多型性は、単に、各反応産物は互いに異なる相対的分子量を有するものとなることから、野生型鋳型に対する競合鋳型のプライマー伸長の反応産物の識別に役立つものとなる。
【0026】
本発明は、その一部、単数又は複数の生物サンプルの、そのサンプル中の微生物の存在に関する高信頼性高スループット試験のための方法に基づく。高スループット分析は、生物サンプル中に潜在的に存在する複数の微生物の遺伝型決定のために構成された診断マルチプレックスパネル(DMP)の使用によって可能とされる。前記DMPは、生物サンプル内に存在する可能性のある微生物から単離されたDNA中の高度保存配列と夫々特異的にハイブリダイズする、複数のプライマーの組み合わせを提供する。前記DMPによって、複数の生物体のうちの単数又は複数が単一のサンプル中に潜在的に存在するか否かを同定するために同時に複数のプライマー伸長反応を行うことが可能となる。本発明の前記DMPは、複数の試験対象微生物が、1つの疾患領域又はタイプ内に広義的に属する、特定の治療又は診断領域のために好適に構成することができる。以下更に詳述する本発明の利用法の一例において、DMPは、ヒト患者から採取された生物サンプル中の性感染症の存在の診断のために構成される。このタイプのDMPは、以下のような細菌性病原体;マイコプラズマ(Mycoplasma)属;クラミジア(Chlamydia)属;ウレアプラズマ(Ureaplasma)属;ナイセリア(Neisseria)属;ガードネレラ(Gardnerella)属;トリコモナス(Tricomonas)属;トレポネーマ(Treponema)属; 又は酵母カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、又は、以下のようなウイルス性病原体;サイトメガロウィルス(CMV);肝炎ウイルス(例えば、HAV、HBV及びHCV等);ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV);単純ヘルペスウイルス(HSV);伝染性軟属腫ウイルス(MCV);インフルエンザウイルス;エプスタイン・バーウイルス(EBV)、そして水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)等、の存在を好適に試験することができる。
【0027】
DMPがそれに対して好適に構成されるその他の疾患領域としは、食中毒、結核症、ウイルス誘導性ガン、脳炎、マラリア、肝炎、髄膜炎; リーシュマニア症、アフリカトリバノソーマ症、肺炎、ペスト、SARS; MRSA; 狂犬病、炭疽病、リフトバレー熱、野兎病、シゲラ、ボツリヌス中毒症、黄熱、Q熱、エボラ、デング熱、西ナイル熱、赤痢、インフルエンザ、はしか、そして発疹チフス、がある。
【0028】
本発明は、更に、DMP試験設計において、そのような配列を含ませることによって、バクテリア性病原体に抗生物質感受性を与える配列の検出を可能にする。これによって、抗生物質感受性の微生物同定の追加の別工程を無くすることによってそのような病原体を有していることが見つかった個人の治療の開始を早めることが可能である。更に、本発明は、多くのケースにおいてその疾患の進行を反映する検出された病原体の濃度を測定することによっていくつかの疾患の進行についての情報を提供することができる。濃度は、例えば、ウイルス量の評価を含むことができる。前記反応のプライマー伸長段階から、例えば、標的配列と比較して、その配列内の特定の位置において導入された多型を競合配列に含ませることによって、量的情報を得ることができる。前記競合配列は、好適には、他の点では同等でありながらの既知のSNPの位置のおいて別のヌクレオチドを含むことができる。もしも競合物(competitor)を既知の濃度(複製数)で前記核酸増幅段階中に供給するならば、それは、対象の微生物から多型含有標的配列の濃度を定量化するための基準として作用することが可能となる。本発明の一実施例において、元来の生物サンプル中の微生物の濃度の更に正確な定量化を可能にするために、すべて標的配列中の特定部位に導入された配列バリエーションを備えた、追加の複数の競合配列を異なる濃度(例えば、低、中、及び高濃度)で提供することが可能である。定量化のほかに、競合配列を含ませることによって、更に、本発明の診断方法における酵素工程全部を内部制御することも可能となる。
【0029】
本発明のDMPは、好適には、溶液に含まれた複数の適切な数(appropriately plexed)のプライマーとして提供される。但し、前記DMPは、更に、マイクロアレイ形態などの固体表面上に固定されたプライマーから構成することも可能である。前記固体表面は、シリコン基質又はガラス基質として好適に構成することができる。
【0030】
プライマー伸長後のDMP反応産物の分解は、蛍光標識化ヌクレオチド(例えば、Beckman Coulter社のSNPstream(登録商標)又はApplied Biosystem社のSNPlex)又はその他の標識(例えば、抗原、ビオチン、放射性物質標識)を介して、質量分析(例えば、MALDI-TOF)、電気泳動(例えば、キャピラリー電気泳動)、DNAマイクロアレイ(例えば、Affymetrix社のGeneChip(登録商標)又はプリントDNAアレイ)を含む多様な技術を使用して達成することができる。前記プライマー伸長産物の分解のための好適な方法は、相対分子量による測定を含み、質量分析とキャピラリー電気泳動との両方がこのために好適である。
【0031】
本発明の一実施例において、各プライマーは、プライマー伸長反応の前後においていずれの二つのプライマーも同じ相対分子量を有することがないように、DMP内において全ヌクレオチド長が異なるものとして構成された。質量分析を最適化するために反応産物は精製された。精製後、産物は適当な部材、通常は、質量分析部位の高密度フォトレジスタントアレイを内臓するシリコンチップ(例えば、SpectroCHIP(登録商標))、上にスポットされ、そしてマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析−飛行時間型(MALDI-TOF:例えば、米国特許第6500621、6300076、6258538、5869242、6238871、6440705及び6994969号に記載されている Sequenom社のMassArray(登録商標) Mass Spectrometer)。質量分析の結果は、適当なソフトウエアパッケージを使用して処理されて、前記生物サンプル中の特定の微生物の存在又は不在と相関されるプライマー伸長産物の存在又は不在に関する情報が提供される。
【実施例】
【0032】
本発明を、以下の非限定的具体例によって更に説明する。
【0033】
本発明者等は、単一のサンプル中の任意の数の感染症を測定する潜在力を有する、コスト的に有利な、頑強、かつ、高精度の試験を開発した。前記試験は、二つの部分から構成される。すなわち、単純な家庭用収集キット(サンプル坦持基質としてWhatman FTA Elute(登録商標)ペーパーを使用)と、DNAに基づく技術を使用してある個人が単数又は複数種の性感染性細菌、ウイルス、原生生物および/又は真菌病原体によって感染されているか否かを判断することが可能な前記診断マルチプレックスパネル(DMP)として新規な性感染症マルチプレックスパネル(STIMP)とから構成される。
【0034】
この例は以下を証明するものである。
・Whatman FTA Elute(登録商標)ペーパーは、ヒト尿サンプルに由来する細菌、ウイルス、原生生物および/又は真菌病原体の適切な媒体であること。
・Whatman FTA Elute(登録商標)ペーパー内に存在する化合物も尿も、下流側の酵素試験処理の障害とはならないこと。
・前記新規STIMPは、DMPとして機能し、病原体混合物からの個々の病原体を検出可能であること。
【0035】
材料と方法・臨床サンプル
全部で44サンプルを、ウクライナにある私設GUM(泌尿器医療)クリニックに通う患者から得た。
【0036】
実験群の患者は、診察時に、殺菌収集ポット内に第1回目排尿サンプル(約30ml〜50ml)を提供するように求められた。全てのサンプルは、患者のインフォームドコンセントと共に提供され、全ての倫理的要件と規則(サンプル収集の方法を含む)が満たされ、ウクライナ厚生省の規定に従って行われた。
【0037】
各尿サンプルを、先端に殺菌スポンジの付いたアプリケータを(Puritan、メーン、米国)一度尿サンプルに浸漬し、次に、カード上の4つの別々の領域を4回ブロッチングすることによって、Whatman FTA Elute(登録商標)ペーパー上に移した。
【0038】
サンプル移し変え後、各Whatman FTA Elute(登録商標)カードを完全に乾燥するまで室温で乾燥させた。二次汚染を防ぐために、乾燥したサンプルカードは、セルフシール式のポリエチレンバッグ内に別々に載置し、室温で更に保管された。
【0039】
次に、バッチ1と2のサンプル(それぞれ31個と13個の別々のサンプル)を、ドイツの研究所にある試験場所へ二つの便(Federal Express急便サービス)で発送した。バッチ1サンプルの収集は、2006年12月12日から12月26日(同日を含む)の期間中に行われた。バッチ2サンプルの収集は、2006年1月5日から1月12日(同日を含む)の期間中に行われた。
【0040】
全てのサンプルを、ウクライナ厚生省による推薦で、従来のDNAベースの検出技術を利用した性感染症試験を専門とする独立した現地の研究所(キエフ、ウクライナ)で平行して分析された。
【0041】
全てのサンプルを、下記の微生物の存在について試験した。
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)
クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)
ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)
マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitallium)
マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)
ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)
トリコモナス・バギナリス(Trichomonas vaginalis)
トレポネーマ・パリヅム(Treponema pallidum)
ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)
【0042】
その後、前記現地試験研究所(以下「クリニック」と称する)から得られた結果を、前記STIMPDMP法(以下「ラボ」と称する)を利用して得られた結果を使用して比較した。
【0043】
実験手順
DNA抽出
DNA濃度の違いに対応するために(account for)、各Whatman FTA Elute(登録商標)サンプルカードから6枚の6mmのサンプルディスクを、各2mlチューブにつき1×サークル、各2mlチューブにつき2×サークル、各2mlチューブにつき3×サークルの順序で手持ち式穿孔装置を使用して切断した。各サンプルカードの切断後、クリーンなフィルタペーパーを3回穿孔し、その後、70% EtOHに漬けたフィルタペーパーを3回穿孔することによって穿孔装置を洗浄した。相互汚染を明らかにするために、次に、クリーンなWhatman FTA Elute(登録商標)カードを一回穿孔し、DNAを下記のように抽出した(チューブ番号4)。
【0044】
DNA抽出は、推奨されている3mmのサンプルディスクパンチに対する6mmのサンプルディスクパンチに対応するべく(account for)、われわれが改造した構成のWhatman FTA Eluteカード(登録商標)DNA抽出プロトコルを使用して行われた。1枚、2枚、及び3枚の6mmのサンプルディスク又は切断ペーパーフラグメント(EPF)を、別々の2mlの丸底エッペンドルフチューブに入れ、それらに0.7ml、1.4ml及び2.1mlのddH2Oをそれぞれ添加した。
【0045】
各サンプルを、5秒間3回ボルテックスし、サンプルディスクをそれぞれ別々のクリーンな0.5mlエッペンドルフチューブに移した。
【0046】
それぞれ1枚、2枚、及び3枚のサンプルディスクを含む、各チューブに、50μl、80μl、100μlのddH2Oを加え、その後、これらのチューブを95℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、前記サンプルを、12000gで2分間回転させ、+4℃で保存した。PCR増幅のために、各サンプル1μlを直接、又は、ddH2Oとの1:1の希釈、として使用した。
【0047】
陽性対照
国際寄託当局(NCTC)から得た下記の細胞株を陽性対照として使用した。
細胞株番号 種
NC12700 N. ゴノレア(N. gonorrhoeae)
NC11148 N. ゴノレア(N. gonorrhoeae)
NC08448 N. ゴノレア(N. gonorrhoeae)
NC10177 U. ウレアリチカム(U. urealyticum)
NC10111 M. ホミニス(M. hominis)
NC10915 G. バギナリス(G. vaginalis)
NCPF3179 C. アルビカス(C. albicans)
NC10195 M. ゲニタリウム(M. genitallum)
【0048】
前記細胞を、500μlの新しい尿で希釈し、その後、各サンプルからの50μlを取り出して下記のようにして陽性対照を作成した。
【0049】
陽性対照No.1
NC12700 N. ゴノレア(N. gonorrhoeae)
NC10177 U. ウレアリチカム(U. urealyticum)
NC10111 M. ホミニス(M. hominis)
NC10915 G. バギナリス(G. vaginalis)
NCPF3179 C. アルビカス(C. albicans)
NC10195 M. ゲニタリウム(M. genitallum)
【0050】
陽性対照No.2
NC11148 N. ゴノレア(N. gonorrhoeae)
NC10177 U. ウレアリチカム(U. urealyticum)
NC10111 M. ホミニス(M. hominis)
NC10915 G. バギナリス(G. vaginalis)
NCPF3179 C. アルビカス(C. albicans)
NC10195 M. ゲニタリウム(M. genitallum)
【0051】
陽性対照No.3
NC08448 N. ゴノレア(N. gonorrhoeae)
NC10177 U. ウレアリチカム(U. urealyticum)
NC10111 M. ホミニス(M. hominis)
NC10915 G. バギナリス(G. vaginalis)
NCPF3179 C. アルビカス(C. albicans)
NC10195 M. ゲニタリウム(M. genitallum)
【0052】
前記陽性対照と細胞の希釈に使用した前記新規尿サンプルとを、Whatmanによって推奨されているように個々のFTA Elute(登録商標)カード上にピペットで取った(約1cm2につき50μl)。 前記サンプルの使用後、カードを60℃で1時間乾燥させ、上述したようにしてDNAを抽出した。
【0053】
更に、各陽性対照と(細胞の希釈に使用した)前記新規尿サンプルとの一定分量を、そのままと、そして、ddH2O中の1:5の希釈液との両方としてPCR増幅に使用した。
【0054】
実験時において、われわれは、C. トラコマチス(C. trachomatis)、T. バギナリス(T. vaginalis)又T.パリズム(T. pallidum)については陽性対照を得ることができなかった。
【0055】
アッセイ構成
DMPアッセイ構成は、対象種の異なる株間において高度に保存されたDNA配列に基づくものである。大きな変動性に対処するために、各病原体に対して3つのアッセイを構成するために保存領域の3つの異なる領域を使用した。全ての病原体に関して、選択された保存領域は、選択された保存領域が18S rRNA遺伝子であったC. アルビカンス(C. albicans)を除いて、16S rRNA遺伝子であった(図1を参照)。
【0056】
U. ウレアリチカム(U. urealyticum)については、6つのアッセイを構成するために二つの異なる保存領域を使用した。PCRとプライマー伸長(PE)のための正確なプライマーが図1に図示されている。
【0057】
前記アッセイは、サンプル中の下記の細菌、真菌、及び原生動物種の存在を同定するものである。
C. アルビカンス(C. albicans)
C. トラコマチス(C. trachomatis)
G. バギナリス(G. vaginalis)
M. ゲニタリウム(M. genitallium)
M. ホミニス(M. hominis)
N. ゴノレア(N. gonorrhoea)
T. バギナリス(T. vaginalis)
T. パリヅム(T. pallidum)
U. ウレアリチカム(U. urealyticum)
【0058】
二つのタイプのアッセイが実行された。第1のタイプは、各標的に対する対照競合配列を含むものであり、第2のものなんら競合配列を含まないものであった。競合配列の役割は、PCR, PE及びその他の酵素反応、更には、チップスポッティング(chip spotting)、のための内部陽性対照として作用することである。競合配列を含んだサンプル中において、たとえそのサンプルが病原体からの対応のDNA標的を含んでいないとしても、少なくともその競合配列からのシグナルは見えるものと期待される。競合配列は、対象のSNP部位における既知の単一のヌクレオチドの相違を除いて標的DNAに対して同一であるように設計され、競合配列の配列が表1−1〜4に図示されている。競合配列は、1回のPCR増幅につき1つの標的に対して約30の複製が付加された。競合配列無しで分析されたサンプルでは、病原体からの標的DNAがそのサンプル中に存在する時にのみにシグナルが予想された。同じマルチプレックス分析からの標的は、互いに対して内部陽性対照として作用するが、しかしながら、共に増幅された全ての標的についてシグナルが無ければ、そのサンプルがなんら標的病原体DNAを含んでいないのか、それとも、単数又は複数の酵素反応が失敗したのか、結論することは不可能である。
【0059】
PCR増幅
PCR増幅を、1.25×HotStar(登録商標) PCRバッファー、1.625 mM MgCl2、0.04mM の各dNTP、0.1μMの各プライマー、そして0.1UのHotStarTaq(登録商標)を含む5μlの反応量中で行った。サイクルパラメータは下記の通りである。
95℃ 15分
94℃ 20秒
56℃ 30秒
72℃ 1分、を45サイクル

72℃ 3分
4℃ 5分
15℃ 恒久的
【0060】
増幅は、MRJ Tetrad Thermo Cyclerで行った。
【0061】
SHRIMP ALKALINE PHOSPHATE(SAP)処理
PCR増幅後、下記を各チューブに添加した。1.53μlのH2O、0.17μlのTSバッファー、そして0.30μlのSAP。反応は下記のパラメータを使用して行われた。
37℃ 20分
85℃ 5分
4℃ 恒久的
【0062】
反応をMRJ Tetrad Thermo Cyclerで行った。
【0063】
プライマー伸長反応
プライマー伸長を、iPLEX(登録商標)プロトコル(Sequenom Inc., San Diego、CA、USA)に従って行った。インキュベーション後、1×iPLEXバッファー、1×iPLEX終結混合物、0.625μMの各伸長プライマー、そして1×iPLEX酵素、を含むiPLEXプライマー伸長混合物2μlを各チューブに添加した。iPLEX反応は下記のパラメーターを使用して行われた。
94℃ 30秒
94℃ 5秒
52℃ 5秒
80℃ 5秒

工程3へ進む×5回
工程2へ進む×40回
72℃ 3分
4℃ 恒久的
【0064】
反応をMRJ Tetrad Thermo Cyclerで行った。
【0065】
脱塩化
16μlのH2Oと6mgのSpectroCLEAN(登録商標)樹脂を上記混合物に添加し、円形シェーカで30分間回転させ、その後、5分間3,000gで遠心分離して前記樹脂を沈殿させた。
【0066】
サンプル・スポッティング
9ナノリットルの各サンプルを、MassARRY(登録商標) Nanospotterロボットを製造業者の指示に従って使用して384 SpectroCHIP(登録商標)上にスポッティングした。次に、各チップをMALDI-TOF質量分析計、MassARRY(登録商標) Compact Analyser上で読み取り、Typer v.3.3(又はその上位機種)を使用してデータを収集し、データベースに保存した。
【0067】
サンプルの感染状況の遺伝型スコアリングと測定
それぞれのアッセイ(DNA標的)において、ある特定の競合配列が、人工的に導入された一塩基遺伝子多型(SNP)において標的DNAと異なるように設計された。後者は、遺伝子型同定ソフトウエアによってMUT(変異)遺伝子型として指定された。病原性SNPは、C(対照)遺伝子型として指定された。競合配列と標的DNAとの両方が反応中に存在する場合は、前記ソフトウエアによって、C. MUT又はMUT.Cと命名された異型接合性の遺伝子型としてスコアされた。前記異型接合性遺伝子型中の対立遺伝子の順序は、反応中にける対応のDNAの相対的比率を反映している。
【0068】
3つのアッセイの内の少なくとも2つが単一のDNAサンプル中の病原性DNAの存在を示した場合、前記サンプルは感染されているものとみなされた。各患者サンプルから三種類のDNAサンプルが得られたので、3つのサンプルのすべてが同じ結果を示すはずであると予想された(尚、各サンプルは潜在的に、ある病原体の異なる数の複製を含んでいるので、2つ及び3つのサンプルディスクからのDNAサンプルは、単一のサンプルディスクから抽出されたDNAサンプルと比較して、病原性DNAの量が多いことにより、より信頼性の高い結果を提供するものと予想された)。時折、1つ又は2つのアッセイだけが、患者サンプル中の病原性DNAの存在を示したが、全てのDNAサンプルにおいてこの病原体のアッセイの大半は陰性であった。これらの結果は、人工産物であると考えられた(おそらくは、相互汚染による)が、サンプルは、陽性としてスコアされ、要約結果の表(表2)内の結果の横に”×”で示されている。
【0069】
結果と考察
Whatman FTA Elute(登録商標)ペーパー
Whatman FTA Elute(登録商標)ペーパー又は尿内に存在する任意の化合物が、下流側の酵素処理に干渉しうるか否かを調べるために、既知の良質なDNAの一定分量を含有する一連の偽サンプルを、1、2又は3枚のサンプルディスクの抽出後に得られた溶出液、又は新鮮な尿、の何れかと1:1で希釈した。次に、これらのサンプルを、PCRと他の下流側の酵素反応に使用した。全てのサンプルにつき、良質なPCR産物と質量スペクトルが得られた(データ提供無し)。このことは、選択した抽出法と洗浄プロトコルとがMALDI-TOF分析用として適当であったこと、そして、ヒトの尿中の物質が、DMP分析の信頼性に大きく影響しないこと、を示している。
【0070】
Whatman FTA Elute(登録商標)ペーパーが、尿サンプルからの病原性DNAを捕捉し保存することが出来るか否かを調べるために、地元の研究機関での分析(クリニック)によって陽性であると同定された患者に属する複数のDNAサンプル(カードから抽出)と、STIMP/DMPからのプライマーとを使用して50μl反応中で増幅し、そして産物を1×TBEバッファー中の2%アガロースゲル上で分離した(図1を参照)。全てのケースにおいて、正しいサイズの単位複製配列に対して良好なシグナルが観察され、Whatman FTA Elute(登録商標)ペーパー上の病原性DNAの存在が信頼性の高いPCR増幅のために十分な量であることを示した。
【0071】
同じ実験を、陽性対照尿サンプルを使用して行ったところ、類似の結果が観察された(データ提供せず)。
【0072】
これらの結果は、Whatman FTA Elute(登録商標)ペーパー等のセルロース系製品を、患者のサンプルを収集し移行させるために、適当な固体基質として使用することが可能であり、時間に依存する目に見える劣化が無いということを確認するものである。しかしながら、そのままの尿サンプルや他のタイプの基質上に固定された生物サンプルも、このSTIMP/DMP法を利用する試験のために利用可能であると考えられる。
【0073】
STIMP/DMP法
全てのサンプルを、競合対照配列を含む、又は含まない反応において試験した。競合配列が含まれる実験では、陽性対照を含める大半のケースで、競合DNAに対するシグナルが生成された。
【0074】
このセクションでは、競合配列が反応に含まれない場合の実験から得られた結果について記載する。
【0075】
これらの実験の結果は表2に提示されている。
【0076】
陽性対照
STIMP/DMP法が病原体混合物からの個々の病原体を検出するために使用可能であるか否かを確認するために、NCTCから得た性感染病原を混合することによって得られた三つの陽性対照を、媒体として尿を使用して作成した(上記を参照)。これら陽性対照サンプルを、尿サンプルとTFA Elute(登録商標)ペーパーサンプルとの両方として分析した(表3)。全てのケースにおいて、サンプル内の各病原体の存在は、その性質とは独立して検出された。陽性対照は、それらの内部にN. ゴノレア(N. gonorrhoeae)の株が存在することにおいて異なっていた。この種の全てのアッセイにおいて、前記STIMP/DMP法は、株タイプから独立して、N. ゴノレア(N. gonorrhoeae)の存在を検出することができた。このことは、前記N. ゴノレア(N. gonorrhoeae)アッセイを開発するために選択されたDNAの領域は株依存特異性を示さず、サンプル中の既知のN. ゴノレア(N. gonorrhoeae)種の存在を検出するために使用可能である、ということを示している。
【0077】
臨床サンプル
臨床サンプルを分析するとき、STIMP/DMPラボ結果によって、すべてのケースにおいてクリニックから独立的に得られ分析された結果を確認した(表2)。又、複数のサンプルが、試験研究所によって検出されなかった感染症について陽性であると同定された。しかし、前記病原体は全てのアッセイによっては検出されず、又、1つ(稀に二つ)のDNAサンプルだけが、陽性シグナルを有していたことから、これらの結果はこのパイロット研究の人工産物として処理されるべきである。大半のケースにおいて、これは、そのサンプルが予め穿孔されていたサンプルカード上にあった患者が特定の病原体について陽性であった(例えば、患者2及び3−U. ウレアリチカム(U. urealyticum)、患者11及び12−M. ゲニタリウム(M. genitallum)等)場合に起こった。これらの人工産物の最もありそうな説明は、前のサンプルからのDNAの持ち込みである。これは、患者サンプル間において使用された汚染対照サンプル(クリーンなWhatman ETA Elute(登録商標)カード)も、同じ感染症について陽性であることが判ったという事実によって裏付けられる。明らかに、このことは、本発明のDMPの高い感度を示すものであり、相互汚染を回避するために将来の実験手順は最適化されることになるであろう。
【0078】
各患者サンプルカードから三種類のDNAサンプルが収集された。これらのサンプルは、複製数の異なる病原性DNA(存在する場合)を含んでいた。大半のケースにおいて、二つ以上のサンプルディスクから抽出された陽性患者からのDNAサンプル中に感染を同定することができた。
【0079】
陽性患者からの大半のDNAサンプルについて、3つ全てのアッセイによって感染が同定された。非常に少数のケースにおいては、3つのアッセイのいずれも、良質のシグナルが生成させず、遺伝子型決定ソフトウエアによってフラッグされた。
【0080】
競合配列の量を滴定することにより、又は、同じ反応中に既知の初期濃度の3種類の競合配列を含ませることによって、反応中に存在する標的DNAの複製数を測定することも可能である。後者のアプローチは、その感染負荷のレベルが、臨床的観点から重要である病原体、例えば、HIVやG. バギナリス(G. vaginalis)によって感染した個人、における病原体、に関して推奨される。
【0081】
【表1−1】

【0082】
【表1−2】

【0083】
【表1−3】

【0084】
【表1−4】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
以上、本発明の特定の実施例について詳細に説明したが、これは例として、例示の目的のみのために行ったものである。上記実施例は、以下に添付の請求項の範囲に関してなんら限定的であることを意図したものではない。本発明に対して、種々の置き換え、改変及び改造が、請求項によって定義される要旨と範囲から逸脱することなく可能であることが本発明者等によって意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1−1】高度に保存されたDNAコンセンサス配列の概略を図示している−前記コンセンサス配列は、同じ種の複数の株の比較によって作り出された-前記増幅又はプライマー伸長反応のためのプライマーが本発明のDMP中における使用のために選択される位置が図示されている。各プライマーにおいて、最初の二つの文字は微生物を示し、その後の文字は前記種(1−3)のための標的配列を示す、第1PCRPは第1PCRプライマーを示し、第2PCRPは第2PCRプライマーを示し、E1又はE2は伸長プライマーを示し、ウレアプラズマについては、前記プライマーが指定された(UU1とUU2)二つの部位が存在する。これらプライマーの独自性が表1−1〜4に示されている。前記生物体は:(a)カンジダ・アルビカンス(Candida albicans);(b)クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis);(c)ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis);(d)マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitallium);(e)マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis);(f)ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoea);(g)トレポネーマ・パリヅム(Treponema pallidum);(h)トリコモナス・バギナリス(Trichomonas vaginalis);(f)ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)である。
【図1−2】高度に保存されたDNAコンセンサス配列の概略を図示している−前記コンセンサス配列は、同じ種の複数の株の比較によって作り出された-前記増幅又はプライマー伸長反応のためのプライマーが本発明のDMP中における使用のために選択される位置が図示されている。各プライマーにおいて、最初の二つの文字は微生物を示し、その後の文字は前記種(1−3)のための標的配列を示す、第1PCRPは第1PCRプライマーを示し、第2PCRPは第2PCRプライマーを示し、E1又はE2は伸長プライマーを示し、ウレアプラズマについては、前記プライマーが指定された(UU1とUU2)二つの部位が存在する。これらプライマーの独自性が表1−1〜4に示されている。前記生物体は:(a)カンジダ・アルビカンス(Candida albicans);(b)クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis);(c)ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis);(d)マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitallium);(e)マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis);(f)ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoea);(g)トレポネーマ・パリヅム(Treponema pallidum);(h)トリコモナス・バギナリス(Trichomonas vaginalis);(f)ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜在的に微生物を含む生物サンプル内に単数又は複数種の特定の微生物が存在するか否かを決定するための方法であって、以下の工程、(a)前記生物サンプルを第1位置において固体基質上および/又は固体基質内に固定する工程、
(b)前記固定された生物サンプルを、少なくとも第2位置に移行させ、前記固定基質上および/又は固体基質内に固定された任意の微生物DNAを抽出するべく前記固定基質に対して抽出工程を実行する工程、
(c)前記工程(b)にて抽出された微生物DNAに対して核酸増幅を実行する工程、ここで、この増幅工程は、単数又は複数種の微生物から、少なくとも一種の高度に保存された配列を増幅するように構成され、増幅された配列が標的配列として指定される、
(d)前記標的配列を診断マルチプレックスパネル(DMP)内に含まれる複数のプライマー配列と組み合わせる工程、ここで、各プライマー配列は前記標的配列の遺伝子型決定を容易にする、
(e)工程(d)に存在する前記標的配列と前記DMPとの組み合わせに対してプライマー伸長反応を行い、それによって、DMP反応産物を作り出す工程、そして
(f)存在する任意の標的配列の遺伝子型を決定するべく前記反応産物を分析し、前記反応産物中の前記標的配列の遺伝子型を、前記生物サンプル中に存在する特定の微生物の個体識別と相関させる工程、を含む方法。
【請求項2】
前記第1位置が、前記第2位置から離間している請求項1に記載の方法。
【請求項3】
微生物が、病原性生物体である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記生物サンプルは、尿、唾液、血液、痰、精液、便、鼻のスワブ、涙、膣スワブ、直腸スワブ、頸部スミア、組織生検、及び尿道スワブから成る群から選択される少なくとも1つである請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記生物サンプルが、前記第1位置において固定基質上および/又は固体基質内に固定され、前記第2位置において、この固体基質に対して抽出工程を実行して前記固定基質上および/又は固体基質内に固定された微生物DNAを抽出する請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記固体基質が、前記生物サンプル中に存在する任意の微生物を固定し不活性化するように作用する単数又は複数の試薬によって含浸された吸収性繊維材を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記固体基質が、セルロース性ペーパー、微細繊維膜、ガラス繊維材、ポリマー繊維材、織布、不織布、から選択される材料を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記固体基質が、Whatman FTA(登録商標)又はWhatman FTA(登録商標) Elute試薬を含む請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記固体基質が、Whatman FTA(登録商標) Eluteペーパーを含む請求項6又は7に記載の方法。
【請求項10】
前記特定微生物が、細菌、真菌、ウイルス、及び原生生物から成る群から選択される請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記特定微生物が、単数又は複数の感染性病原微生物を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記単数又は複数の病原微生物が、性感染症、食中毒;結核症;ウイルス誘導性ガン;脳炎;マラリア;肝炎;髄膜炎;リーシュマニア症;アフリカトリバノソーマ症;肺炎;ペスト;SARS;MRSA;狂犬病;炭疽病;リフトバレー熱;野兎病;シゲラ;ボツリヌス中毒症;黄熱;Q熱;エボラ;デング熱;西ナイル熱;赤痢;インフルエンザ;はしか;及び発疹チフスから成る群から選択される単数又は複数の疾患における原因物質であるヒト病原体を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細菌が、マイコプラズマ(Mycoplasma)属;クラミジア(Chlamydia)属;ウレアプラズマ(Ureaplasma)属;ナイセリア(Neisseria)属、ガードネレラ(Gardnerella)属;トリコモナス(Tricomonas)属;及びトレポネーマ(Treponema)属から成る群から選択される請求項10〜12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記酵母が、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)を含む請求項10〜13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ウイルスが、サイトメガロウィルス(CMV);A型肝炎ウイルス(HAV);B型肝炎ウイルス(HBV);C型肝炎ウイルス(HCV);E型肝炎ウイルス(HEV);G及びGB型肝炎ウイルス(GBV-C);ヒト免疫不全ウイルス(HIV);ヒトパピローマウイルス(HPV);単純ヘルペスウイルス(HSV);伝染性軟属腫ウイルス(MCV);インフルエンザウイルス;エプスタイン−バーウイルス(EBV);及び水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)から成る群から選択される請求項10〜14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記DMPは、前記生物サンプル中に潜在的に存在する微生物の組み合わせから対立遺伝子を同定するように構成され、前記組み合わせは、細菌、ウイルス及び真菌を含む請求項10〜15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記微生物が、全て病原体である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記DMPが、特定のタイプの疾患に関連する微生物の同定用に構成される請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記タイプの疾患が、性感染症;食中毒;結核症;ウイルス誘導性ガン;脳炎;マラリア;肝炎;髄膜炎;肺炎;ペスト;及びインフルエンザから成る群から選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患が、性感染症であり、前記DMPが、マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitallium);マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis);クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis);ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum);ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoea);ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis);トリコモナス・バギナリス(Trichomonas vaginalis);トレポネーマ・パリヅム(Treponema pallidum);CMV;HAV;HBV;HCV;HEV;GBV-C;HIV-1;HIV-2;HPV;HSV-1;HSV-2;MCV;VZV;EBV;及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)から成る群から選択される微生物から得られる単数又は複数の標的配列とハイブリダイズするプライマー配列を含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
高度に保存された多型対立遺伝子が、細菌16S rRNA;細菌32S rRNA;酵母16S rRNA;酵母18S rRNA;及びウイルスポリメラーゼから選択される微生物遺伝子の全部又は一部を含む請求項1〜20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
高度に保存された多型対立遺伝子が、一塩基遺伝子多型(SNP);挿入;欠失;反転;及び置換から成る群から選択される多型対立遺伝子を含む請求項1〜21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記生物サンプル中に単数又は複数の特定微生物が存在する場合、前記プライマー伸長反応によって、既知の所定の分子量の少なくとも1つの延長プライマー配列を含むDMP反応産物が作出される請求項1〜22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記生物サンプル中に2以上の複数の特定微生物が存在する場合、前記プライマー伸長反応によって、そのそれぞれが互いに異なる既知の所定の分子量の少なくとも二つの延長プライマー配列を含むDMP反応産物が作り出される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
DMP反応産物(単数又は複数)が、それらの分子量に応じて伸長プライマー配列を解離する技術を使用して分析させる請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
DMP反応産物(単数又は複数)が、MALD-TOF質量分光分析法;及び/又はキャピラリー電気泳動から選択される技術を使用して分析される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記プライマー伸長反応が、もし前記生物サンプル中に単数又は複数の特定微生物が存在するならば、前記プライマー伸長反応によって、標識試薬が前記プライマー伸長産物に取り込まれ、それによって、前記標識試薬を含むDMP反応産物が作り出されるように構成された、プライマー標識試薬を含む請求項1〜22の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記プライマー標識試薬が、放射物質標識、蛍光標識、及び抗原から選択される標識である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
DMP反応産物(単数又は複数)が、前記プライマー伸長産物中の取り込まれた標識試薬の存在を同定する技術を使用して分析される請求項23又は27に記載の方法。
【請求項30】
前記技術が、SNPstream(登録商標)及び/又はSNPlex(登録商標)から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記DMP内に構成された前記複数のプライマー配列が、固体基質上に固定される請求項1〜30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記固体基質が、ガラス及びシリコンの何れかから選択される請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記核酸増幅工程が、単数又は複数の特定微生物から複数の高度保存配列を増幅するように構成された複数の増幅プライマーを含む請求項1〜32の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記複数の増幅プライマーが、配列番号1/2;3/4;5/6;7/8;9/10;11/12;13/14;15/16;17/18;19/20;21/22;23/24;25/26;27/28;及び29/30から成る群から選択される単数又は複数のプライマー対を含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記複数の増幅プライマーが、配列番号46/47;48/49;50/51;52/53;54/55;56/57;58/59;60/61;62/63;64/65;66/67;68/69;70/71;72/73;及び74/75から成る群から選択される単数又は複数のプライマー対を含む請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記DMPが、配列番号31〜45から選択される単数又は複数のプライマー配列を含む請求項1〜35の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記DMPが、配列番号76〜90から選択される単数又は複数のプライマー配列を含む請求項1〜36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記(c)の核酸増幅工程の前に、単数又は複数の対照競合配列が前記標的配列と組み合わされ、ここで、各競合配列が、前記競合配列が対応の標的配列に対して、特定位置において配列バリエーションを含むことを除いて対応標的配列と同じである請求項1〜37の何れか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記配列バリエーションが、人工的に導入されたSNPを含む請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記(c)の核酸増幅工程の前に、単数又は複数の対照配列が前記標的配列と組み合わされ、ここで、前記単数又は複数の対照配列が、前記生物サンプルの種とは無関係の種、試験対象の前記微生物(単数又は複数)と無関係の種、合成DNA配列、から選択されるDNAの配列を含み、そして、前記核酸増幅工程と前記DMPが、前記単数又は複数の対照配列のそれぞれと特異的にハイブリダイズする対応のプライマー配列を含む請求項1〜39の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記生物サンプルが、ヒトから得られる請求項1〜40の何れか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記生物サンプルが、ヒト以外の動物;植物;及び食物から成る群から選択される何れかから得られる請求項1〜40の何れか一項に記載の方法。
【請求項43】
生物サンプル中に存在する可能性のある少なくともひとつの感染性疾患を引き起こすことが知られている病原性微生物の遺伝子型決定に適した診断マルチプレックスパネル(DMP)であって、前記DMPは、プライマー伸長反応に使用された時に、感染症疾患を引き起こすことが知られている少なくとも1種の微生物の少なくとも2以上の複数の高度に保存された配列の同定のために構成された複数のプライマー配列を含むDMP。
【請求項44】
前記感染症が、性感染症;食中毒;結核症;ウイルス誘導性ガン;脳炎;マラリア;肝炎;髄膜炎;肺炎;ペスト;及びインフルエンザから成る群から選択される請求項43に記載のDMP。
【請求項45】
前記DMPが、性感染症であり、前記DMPが、マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitallium);マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis);クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis);ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum);ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoea);ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis);トリコモナス・バギナリス(Trichomonas vaginalis);トレポネーマ・パリヅム(Treponema pallidum);CMV;HAV;HBV;HCV;HEV;GBV-C;HIV-1;HIV-2;HPV;HSV-1;HSV-2;MCV;VZV;EBV;及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)から成る群から選択される微生物の遺伝子型決定に適したプライマー配列を含む請求項43又は44に記載のDMP。
【請求項46】
高度に保存された配列が、細菌16S rRNA;細菌32S rRNA;酵母16S rRNA;酵母18S rRNA;及びウイルスポリメラーゼから選択される微生物遺伝子の全部又は一部を含む請求項43〜45の何れか一項に記載のDMP。
【請求項47】
前記高度に保存された配列が、一塩基遺伝子多型(SNP);挿入;欠失;反転;及び置換から成る群から選択される多型対立遺伝子を含む請求項43〜46の何れか一項に記載のDMP。
【請求項48】
前記複数のプライマー配列が、前記プライマー伸長反応によって、既知の所定の分子量の少なくとも1つの伸長プライマー配列を含むDMP反応産物が作出されるように構成されている請求項43〜47の何れか一項に記載のDMP。
【請求項49】
前記複数のプライマー配列が、前記生物サンプル中に単数又は複数の特定微生物が存在する場合、前記プライマー伸長反応によって、そのそれぞれが互いに異なる既知の所定の分子量の少なくとも二つの延長プライマー配列を含むDMP反応産物が作出されるように構成されている請求項43〜48の何れか一項に記載のDMP。
【請求項50】
DMP反応産物(単数又は複数)が、それらの分子量に応じて伸長プライマー配列を解離する技術を使用して分析される請求項48又は49に記載のDMP。
【請求項51】
前記DMP内に含まれる各プライマー配列が、異なる相対分子量のものである請求項48〜50の何れか一項に記載のDMP。
【請求項52】
前記DMP内に含まれる各プライマー配列は、前記DMP内の他のプライマー配列に対して異なる長さである請求項48〜51の何れか一項に記載のDMP。
【請求項53】
前記DMP反応産物(単数又は複数)が、MALD-TOF質量分光分析法;及び/又はキャピラリー電気泳動から選択される技術を使用して分析される請求項48〜52の何れか一項に記載のDMP。
【請求項54】
前記DMPが、配列番号31〜45から選択される単数又は複数のプライマー配列を含む請求項43〜53の何れか一項に記載のDMP。
【請求項55】
前記DMPが、配列番号76〜90から選択される単数又は複数のプライマー配列を含む請求項43〜53の何れか一項に記載のDMP。
【請求項56】
前記DMP内に含まれる前記複数のプライマー配列が、固体基質上に固定される請求項43〜55の何れか一項に記載のDMP。
【請求項57】
前記固体基質が、ガラス及びシリコンの何れかから選択される請求項56に記載のDMP。
【請求項58】
第1位置に位置するユーザーによる個人使用に適した微生物試験キットであって、該キットは、封止可能なチャンバー内に位置する試験表面を有し、該試験表面は、更に、生物サンプルをその内部又はその表面上に固定することが可能な固体基質を含み、生物サンプルが前記試験表面上に載置されたあと、前記試験キットを、前記生物サンプル中に単数又は複数種の微生物が存在するか否かを決定するための分析のために第2位置へと発送可能とするように前記チャンバーは前記試験表面周りで封止される、試験キット。
【請求項59】
前記第2位置において、前記試験キットは分解され、前記固体基質上および/又は前記固体基質内に固定された微生物DNAを抽出するべく前記固体基質に対して抽出工程が行われる請求項58に記載の試験キット。
【請求項60】
前記固体基質が、前記生物サンプル中に存在する微生物を固定し不活性化するように作用する単数又は複数の試薬によって含浸された吸収性繊維材を含む請求項58又は59に記載の試験キット。
【請求項61】
前記固体基質が、セルロース性ペーパー、微細繊維膜、ガラス繊維材、ポリマー繊維材、織布、不織布、から選択される材料を含む請求項60に記載の試験キット。
【請求項62】
前記固体基質が、Whatman FTA(登録商標)又はWhatman FTA(登録商標) Elute試薬を含む請求項60又は61に記載の試験キット。
【請求項63】
前記固体基質が、Whatman FTA(登録商標) Eluteペーパーを含む請求項60又は61に記載の試験キット。
【請求項64】
前記生物サンプルが、尿、唾液、血液、痰、精液、便、鼻のスワブ、涙、膣スワブ、直腸スワブ、頸部スミア、組織生検、及び尿道スワブから成る群から選択される少なくとも1つである請求項58〜63の何れか一項に記載の試験キット。
【請求項65】
前記単数又は複数の微生物が、病原性であり、そして、性感染症;食中毒;結核症;ウイルス誘導性ガン;脳炎;マラリア;肝炎;髄膜炎;肺炎;ペスト;及びインフルエンザから成る群から選択される疾患の原因物質である請求項58〜64の何れか一項に記載の試験キット。
【請求項66】
前記第2位置が、前記第1位置から離間している請求項58〜65の何れか一項に記載の試験キット。
【請求項67】
前記発送の手段が、普通郵便サービスによるものである請求項58〜66の何れか一項に記載の試験キット。
【請求項68】
単数又は複数種の感染性微生物のキャリアであることが疑われる動物を試験する方法であって、この方法は、前記動物から生物サンプルを採取する工程と、請求項1〜42の何れか一項に記載の方法によってこの生物サンプルを試験し、それによって前記動物が単数又は複数種の感染性微生物によって感染しているか否かを診断する工程と、前記動物に対して、前記生物サンプル中に存在することが発見されたタイプの感染性微生物に関する情報に鑑みて、適切に構成された治療を施す工程、とを含む方法。
【請求項69】
前記動物が、ヒトである請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記治療が、前記生物サンプル中に存在することが発見された単数又は複数種の感染性微生物の抗生物質耐性に関する情報にも対応して適切に構成されている請求項68又は69に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【公表番号】特表2009−523458(P2009−523458A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551858(P2008−551858)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000195
【国際公開番号】WO2007/083147
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(508222553)スティラス・グローバル・ソリューションズ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】