説明

生物学的排水処理装置

【課題】
新たな設置空間を必要とすることなく処理能力を向上させることができる生物学的排水処理装置を得る。
【解決手段】
この発明に係る生物学的排水処理装置は、流入水を生物学的に処理する生物反応槽101と、生物反応槽101内に設けられた下部に通水路108を有する上流側壁106と上部に通水路109を有する下流側壁107とを有し、上流側壁106および下流側壁107で仕切られた散気室105があり、この散気室105の下部には散気手段110が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水、排水などの汚水を単独の生物反応槽において、好ましくは担体を存在させて処理する生物学的排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の水処理として活性汚泥法が多く用いられており、運転方法として回分式活性汚泥法、高速曝気法、オキシデーションディッチ法など挙げることができる。従来のこの種の水処理装置の一つとして、攪拌・曝気・沈殿・排出の各工程を単独の処理槽において繰り返すバッチ(回分)式活性汚泥処理装置が知られている。この水処理装置では、処理槽の底部には、曝気工程で汚水に曝気ブロアからの空気を吹き込むための散気装置が配置されている。この散気装置は攪拌工程と、これに続く曝気工程との両工程を曝気ブロアの切換制御のみで行なえるように、例えばジェット式散気装置が用いられ、空気供給管および水供給管が接続されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭60−150894号公報(第2頁左上欄第12−19行、および第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の水処理装置は、単独の処理槽内で攪拌・曝気工程を所定回数所定時間ずつ交互に繰り返した後に沈殿・排出工程を行なうことにより、脱窒・脱リン効果を向上させることができるといる利点を有している。しかし、この水処理装置は、近年の下水処理や排水処理の進展に伴って流入汚水量が増大していることに対して、処理能力が必ずしも十分ではないという課題を有している。また、処理能力を増大させるためには新たな水処理装置を設置する必要があるが、そのための設置空間を確保することは困難な状況となっているので、既設の水処理装置の処理能力を増大させることが課題となっている。また、担体を用いた処理をする場合、担体は浮上することもあるので、処理水に混入して排出されて維持管理が難しくなり、担体を分離することが課題となっている。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、新たな設置空間を必要とすることなく処理能力を向上させることができる生物学的排水処理装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る生物学的排水処理装置は、流入水を生物学的に処理する生物反応槽と、該生物反応槽内に設けられ、下部に通水路を有する上流側壁と、前記生物反応槽内に設けられ、上部に通水路を有する下流側壁と、前記上流側壁および前記下流側壁で仕切られた散気室と、該散気室の下部に設けられた散気手段とからなることを特徴とする。
【0007】
この発明に係る生物学的排水処理装置において、前記生物反応槽は、無終端槽であることを特徴とする。
【0008】
この発明に係る生物学的排水処理装置において、前記生物反応槽には、微生物を保持する担体が存在することを特徴とする。
【0009】
この発明に係る生物学的排水処理装置において、前記生物反応槽は、担体分離器を備えた仕切板により複数の槽に区画されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、とくに無終端槽を採用することにより、下部に通水路を有する上流側壁と上部に通水路を有する下流側壁とを生物反応槽に設け、これらの上流側壁と下流側壁の間に散気管を設ければ、次の効果を得ることができる。すなわち、生物反応槽は無終端槽であるので、担体を返送する必要が無く、設置空間の増大を抑制することができる。また、従来オキシデーションディッチに用いられていた循環流を発生させる空気を供給するための曝気機としての回転ブラシやプロペラは、担体を投入する場合に、担体を摩耗させる可能性があるが、この発明はエアリフト効果によって被処理水を撹拌して流速を確保するので、担体を摩耗させることがない。さらに、散気管のみで特殊な撹拌機を必要としないので、維持管理が容易となる。また、被処理水に担体を添加することによって、汚泥の沈降性が向上し、すなわちSVIが低下する。さらに、エアリフト効果を発生させる散気管を深い位置に配することにより、酸素の供給量を増加させることができる。
【0011】
この発明は、単独の生物反応槽に担体を添加することにより、次のような特有の効果を得ることができる。すなわち、必要な微生物量を担体によって確保することができるので、担体外の浮遊微生物の濃度を低く維持することができる。これにより、沈殿工程時の固形物負荷を下げて処理水質を向上させることができ、処理水量を増やすことが可能となる。また、浮遊微生物の濃度を担体無投入時と同程度にすれば、全体の微生物の量を増やすことが可能となるので、好気性生物処理時の負荷を上げることができる。これに対し、好気性生物処理時の負荷を上げなければ、処理水質を向上させることが可能となり、発生汚泥量を減少させることができる。さらに、成長速度の遅い硝化菌を担体に保持できるので硝化能力を向上でき、また、担体に嫌気部分ができることで好気槽脱窒が可能となり脱窒能力を向上させることができる。また、担体分離器を備えることで、担体が処理水に排出することが防止できるので維持管理が容易となる。
【0012】
その上に、担体を返送する必要が無く、設置空間の増大を抑えることができる。また、汚泥滞留時間を長くすることができるので、環境ホルモンなどの難分解性物質の除去に対応することができる。さらに、貯留槽を必要とせず、曝気、沈殿、放流とすることによって担体による吸着濾過が可能となる。要約すれば、被処理水に担体を添加することによって汚泥の沈降性を向上させることができるので、生物反応槽の容量(設置空間)を増加させることなく負荷(処理能力)の増加に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明を実施するための実施の形態1における生物学的排水処理装置の水平断面図、図2は垂直A断面図である。この実施の形態1における生物学的排水処理装置は、無終端槽、例えばオキシデーションディッチ(OD)法による処理が可能な生物反応槽101を備えている。したがって、この生物反応槽101は無終端槽とし、担体102を含んだ被処理水103を循環させるようにしてある。この生物反応槽101は、平面長円状の側壁101aと、平坦な底壁101bを有している。生物反応槽101の中央には隔壁104を長手方向に延在させ、担体102を含んだ被処理水103を隔壁104の周りに循環させるようにしてある。そして、生物反応槽101の内部には、2つの散気室105を隔壁104に対して対称な位置に設けてある。
【0014】
各散気室105は、循環する被処理水103の上流側において、隔壁104と側壁101aとを直角に繋いだ上流側壁106と、この上流側壁106の下流側において底壁101bからほぼ垂直な角度で上方に延在し、隔壁104と側壁101aとを直角に繋いだ下流側壁107によって仕切ってある。上流側壁106の下端と底壁101bとの間は通水路108とし、下流側壁107の上端は水面下として通水路109としてある。そして、上流側壁106と下流側壁107の間の底部に散気管110を配置してある。なお、流入水流入口111は一方の散気室105の上流側に設け、処理水排出口112と流出手段113は流入水流入口111の上流に設け、処理水流出口113に担体分離器114を設けてある。
【0015】
図3に示すように、散気室105において散気管110から空気が吐出すると、いわゆるエアリフト効果によって被処理水103の水面103aが上昇する。これにより、散気室105内の被処理水103が下流側壁107の上端を越流するので、被処理水103は上流側壁106の下方の通水路108を通って散気室105に流入し、担体102を含んだ被処理水103が生物反応槽101内を全体的に循環する。したがって、この実施の形態17では、従来の撹拌羽根を必要とすることなく被処理水103を循環させることができるので、担体102を用いた場合、これを磨耗させたり粉砕したりすることはない。なお、散気室105において下流側壁107側の隅部に図示しないハンチを設ければ、被処理水103をより滑らかに循環させることができ、酸素溶解効率を向上させることができる。また、散気室105の底壁を他の生物反応槽の底壁より低くして、散気室105の底壁までの水深を深くすることで、散気管110の設置する位置を低い位置にして酸素溶解効率を向上させることもできる。
【0016】
生物反応槽に微生物を保持する担体を用いる場合、例えば担体102、125は、微生物を表面または内部に付着させて固定するもの、または微生物を包括して固定するものとし、一辺が5〜30mmの矩形、または直径が5〜30mmの球体の形をした多孔質な材料、例えばスポンジとすることができる。この種の担体102、125の材料には、流動性を有し、生物分解性が極めて低く、耐食性・耐久性に優れた材料、例えばポリウレタン、ポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチック材料、活性炭のような天然素材などを用いることができる。しかし、担体102、125は、攪拌や曝気によって被処理水中を流動して微生物を保持し得るものであれば、その形状、大きさ、材料などを限定するものではない。なお、担体102、125の添加率は20〜50%とするのが好ましい。
【0017】
生物反応槽で好気性生物処理するため散気手段を設けるが、例えば散気管110、127は、ブロワからの空気を高速度で吐出して高速曝気を可能とし、担体102、125を水面に浮遊させることなく水面下に巻き込むような旋回流を被処理水に発生させるように、生物反応槽101、141の底部に配置してある。被処理水の旋回流の発生状態は、散気管110、127の配置状態を変化させることによって調整することができる。この種の散気管110、127には、ゴムなどの弾性材料から成るフレキシブルチューブに多数の空気吐出孔を設けたものを用いることができる。フレキシブルチューブは、散気する時に空気吐出孔を開き、散気しない時には空気吐出孔を閉じるようにしてある。散気管110、127を円筒型散気設備(OHR式)とすれば、散気管110、127に可動部が存在しないので、散気管110、127の交換頻度を減らすことができ、全体的な維持管理が容易になる。複数の散気管110、127に図示しない空気切替器を介して空気を送るようにすれば、複数の散気管110、127から空気を間欠的に吐出することが可能となるので、デッドスペースが無くなり、処理効率が向上する。そして、複数の空気切替器を設置すれば、無酸素状態や好気状態を調整しながら硝化や脱窒を行うことができる。
【0018】
生物反応槽に微生物を保持する担体を用いる場合、例えば担体分離器114、153は担体102、125を通過させないスクリーンとし、例えば担体102、125の外形よりも小さな多数の孔を有するパンチングメタル(多孔板)とすることができる。担体分離器114、153には、上記のパンチングメタルの他に網掛け、バースクリーン、傾斜板の組合せ、またはパンチングメタルと傾斜板の組合せから成る複合体を用いることができる。担体分離器124は傾斜板の組合せたものを用いる場合には、例えば、図6に示すように、傾斜板121cの付近の担体125の下降速度が処理水の上昇速度よりも大きくなるようにすることで、担体125と処理水を分離して処理水が得られる。この場合の傾斜板121cの傾斜角度は、担体125を沈降し易くするために、底壁と傾斜板との成す角度を45〜90°とするのが好ましく、60°以上とするのがより好ましい。なお、担体分離器114、124、153の孔径は担体102、125の外形に応じて決定するが、常に目詰まりのない状態に保持する必要があることは云うまでもない。
【0019】
生物反応槽に微生物を保持する担体を用いる場合、例えば担体分離器114、153の目詰まりを防止するためには、それらを洗浄するためのシャワーや、それらを振動させるための設備を設けることもできる。また、担体分離器139に傾斜板の組合せを用いる場合には、例えば、図8に示すように、傾斜板の組合せ付近に散気管を設け、この散気管からの気泡によって旋回流を起こし、処理水の流出速度より旋回する速度を速くすることで、担体125と処理水を分離するのが好ましい。そして、図10に示すように、生物反応槽141の容積を負荷が高くて、大きくした場合には、生物反応槽141の内部を幾つかに区切り、区切り毎に担体分離器139付近に散気管を設ければ、担体125と処理水を分離するだけでなく、エアリフトポンプなどを設置して担体125を返送する代りとすることができる。
【0020】
この実施の形態1における生物学的排水処理装置では、担体102に微生物が付着して増殖するので、浮遊汚泥が余剰汚泥として系外へ引き抜かれる場合と比べて、汚泥滞留時間を格段に長くすることができ、比増殖速度が小さい硝化細菌や、難分解性の物質を分解する細菌を良好に保持することができる。また、担体102の内部に無酸素状態を作り易いので、脱窒反応を容易に発生させて、窒素を効率的に除去することができる。
【0021】
そして、従来は担体を生物反応槽内に均一に分布させるために、生物反応槽内の被処理水をジェット式散気装置またはエアリフトポンプによって循環させるので、相当なエネルギーが必要であったが、この実施の形態1では散気管110からの空気によって発生する被処理水103の流れで担体102を循環させ、従来の担体を返送するためのジェット式散気装置またはエアリフトポンプが不要となり、設備費や維持管理費を削減することができる。また、担体分離器114によって担体102の流出を防止することができ、担体102を生物反応槽101内で均一に流動させることができる。さらに、生物反応槽101の容積を負荷が高くて、大きくした場合は、段落〔0019〕に記述したように、生物反応槽101の内部を幾つかに区切り、区切り毎に散気管を設ければ、担体と処理水を分離するだけでなく、エアリフトポンプなどを設置して担体を返送する代りとすることができる。
【0022】
また、必要な微生物量を担体102によって確保することができるので、担体102以外の浮遊微生物の濃度を低く維持することができる。したがって、沈殿部分の固形物負荷を下げて処理水質を向上させることができ、処理水量を増やすことができる。さらに、浮遊微生物の濃度を担体無投入時と同程度にすれば、好気性生物処理時の負荷を上げることができる。逆に、好気性生物処理時の負荷を上げなければ、処理水質を向上させて発生汚泥量を減少させることができる。すなわち、生物反応槽101に担体102を用いることにより、生物反応槽101の容積を増加させることなく、負荷の増加に対応することが可能となる。そして、汚泥の沈降性、硝化能力、および脱窒能力を向上させることができ、BODのみを除去するタイプの運転であっても、溶存酸素に余裕ができるので窒素除去まで期待することができる。また、無終端槽、例えばオキシデーションディッチ法を採用してあるので、担体102を返送する必要がなく、設置空間の増大を抑えることができる。さらに、汚泥滞留時間を長くすることができるので、環境ホルモンなどの難分解性物質の除去に対応することができる。
【0023】
実施の形態2.
図4はこの発明を実施するための実施の形態2における生物学的排水処理装置の水平断面図、図5は垂直B断面図であり、図1および図2と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。上記実施の形態1では2つの散気室105を設けたが、この実施の形態2では生物反応槽101Aに4つの散気室105Aを隔壁104の両側に2つずつ設けてある。そして、各散気室105Aの上流側壁106と下流側壁107の間隔を実施の形態1における場合よりも狭くし、各散気室105Aに散気管110Aを配置してある。そして、隔壁104の片側に位置する2つの散気室105A同士は間隔をおいて配置してある。なお、散気管110の設置する数や、散気室105Aの設置数は生物反応槽101Aの大きさや水深により、良好な循環流が得られるなら設置数や設置位置は本実施の形態2に縛られるものではない。この実施の形態2でも、実施の形態1と同様な効果を得ることができる。
【0024】
実施の形態3.
図6はこの発明を実施するための実施の形態3における生物学的排水処理装置の断面図である。この実施の形態3における生物学的排水処理装置は、側壁121aと底壁121bを有する単独の生物反応槽121を備えている。この生物反応槽121の下流側の側壁121aの上部には外側傾斜板121cを外側上方に向けて延在させ、その外側傾斜板121cの上端から外側鉛直板101dを鉛直上方に向けて延在させ、外側鉛直板101dの上端は生物反応槽121の他方の側壁121aの高さと一致させてある。また、外側傾斜板121cの内側には、内側傾斜板122を外側傾斜板121cの傾斜方向と反対の方向に向けて延在させ、内側傾斜板122の下端と外側傾斜板121cとの間には移流口123を設けてある。これらの内側傾斜板121cと外側傾斜板122によって担体分離器124を構成してある。このような生物反応槽121には、担体125を含んだ被処理水126を収容してある。そして、生物反応槽121の内部において、担体分離器124の反対側の隅部に散気管127を配置してある。この実施の形態3における生物学的排水処理装置では、散気管127からの空気によって被処理水126は時計回り方向に旋回するので、担体125は上側傾斜板122に沿って下方に流れ、移流口123から流出することはない。
【0025】
実施の形態4.
図7はこの発明を実施するための実施の形態4における生物学的排水処理装置の断面図であり、図6と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この実施の形態4における生物学的排水処理装置は実施の形態3における生物学的排水処理装置と基本的に一致させてあるが、実施の形態3の平坦な内側傾斜板122の代りに、内側傾斜部128aと内側鉛直部128bを有する内側傾斜板128としてある。したがって、この実施の形態4では、外側傾斜板121cと内側傾斜板128の内側傾斜部128aとによって担体分離器129を構成してある。この実施の形態4でも、実施の形態3と同様な効果を得ることができる。
【0026】
実施の形態5.
図8は、この発明を実施するための実施の形態5における生物学的排水処理装置の断面図であり、図6と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この実施の形態5における生物学的排水処理装置は、側壁131aと底壁131bを有する単独の生物反応槽131を備えている。この生物反応槽131の内部において、その下流側に仕切板132を側壁131aと平行に配置し、仕切板132の下流側と側壁131aとの間に集泥ボックス133を構成してある。仕切板132の下端と底壁131bとの間には移流口134を設けてある。仕切板132の下端部の近傍には、上方に向かって仕切板132から離れるように傾斜する内側傾斜板135と外側傾斜板136を仕切板132に関して対に設けてある。また、移流口134の近傍において、上流側には上流側鉛直板137を底壁131bからほぼ垂直に延在させ、下流側には下流側鉛直板138を底壁131bからほぼ垂直に延在させ、散気管127を上流側鉛直板137の上流側の近傍に配置してある。したがって、傾斜板135、136と鉛直板137、138によって担体分離器139を構成してある。
【0027】
担体分離器139には、凝集汚泥を集泥ボックス133に移流させる機能と、汚泥から担体125を分離する機能を持たせてある。担体分離器139は散気管127の少し上方に設け、散気管127からの空気が担体分離器139の近傍を上昇する際に、担体125が担体分離器139に付着するのを防止できるようにしてある。
この実施の形態5では、実施の形態3と同様な効果を得ることができる上に、散気管127が担体分離器139近傍に設けてあることで、被処理水126は反時計回りに旋回するので、担体125は内側傾斜板135に沿って上昇し、集泥ボックス133内に流出することはない。
【0028】
実施の形態6.
図9はこの発明を実施するための実施の形態6における生物学的排水処理装置の断面図であり、図6と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この実施の形態6における生物学的排水処理装置では、上記実施の形態5における仕切板132、傾斜板135、136、および鉛直板137、138を上下に反転した構造とし、移流口134は上部に位置させてある。そして、散気管127は担体分離139の反対側の隅部に配置してある。この実施の形態6では、実施の形態3と同様な効果を得ることができる上に、被処理水126は時計回りに旋回するので、担体125は上流側鉛直板137と傾斜板135に沿って下降し、集泥ボックス133側に流出することはない。
【0029】
実施の形態7.
図10はこの発明を実施するための実施の形態7における生物学的排水処理装置の断面図であり、図8と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この実施の形態7における生物学的排水処理装置は基本的に実施の形態5と同様としてあるが、この実施の形態7における生物反応槽141は実施の形態5における生物反応槽131で、容積負荷が高くて槽を大きくした場合で、生物反応槽141を、担体分離器139を備えた仕切板132によって生物反応槽141Aと生物反応槽141Bに区画してある。そして、実施の形態5における場合と同様に生物反応槽141の下流側の側壁141aの近傍に、実施の形態5と同様な仕切板132、集泥ボックス133、移流口134、傾斜板135、136、および鉛直板137、138を設け、担体分離器139を構成してある。その上に、同様な仕切板132、移流口134、傾斜板135、136、鉛直板137、138を生物反応槽141内に設け、更なる担体分離器139を構成してある。そして、生物反応槽141内には複数の散気管127を隅部に配置してある。この実施の形態7では、実施の形態5と同様な効果を得ることができる上に、担体分離器139の上流側近傍に散気管127を設けることで被処理水126が反時計回りに旋回するので、担体125が移流口134に流出することはない。さらに、担体分離器139の下流側近傍に散気管127を設けることで被処理水126が時計回りに旋回するので、担体125が移流口134に移流することはない。また、生物反応槽141の担体分離器139で区画された生物反応槽141A、生物反応槽141Bでは、それぞれの区画から担体125が移動することがないので、従来のように担体125を動力を使って上流側へ返送する必要がなくエネルギーが少なくて済む。
【0030】
なお、担体分離器139に傾斜板の組合せを用い、かつその近傍に空気を発生させる散気管を設ける構成とした場合には、担体分離器139の近傍では担体125の下降(上昇)速度が処理水の上昇(下降)流速よりも大きくなり、担体125を生物反応槽101内に均一に流動させることができるとともに担体125と処理水を分離することができる。また、担体分離器139として傾斜板の組合せを用いることによって、処理水中の浮遊汚泥が傾斜板に沿って沈降して良好な処理水が得られる。
【0031】
実施の形態8.
図11はこの発明を実施するための実施の形態8における生物学的排水処理装置の断面図であり、図8と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この実施の形態8も実施の形態7と同様に生物反応槽141が大きい場合に用いると良く、生物反応槽141を、担体分離器153を備えた仕切板151によって生物反応槽141Aと生物反応槽141Bに区画してある。この実施の形態8では、実施の形態7の仕切板132、集泥ボックス133、移流口134、傾斜板135、136、鉛直板137、138の代りに担体分離器153を備えた仕切板151を設け、一例として一方の仕切板151と側壁141aとの間に集泥ボックス152を構成してある。この仕切板151には、上側鉛直部151a、中間傾斜部151b、および下側鉛直部151cを設け、下側鉛直部151cは上側鉛直部151aよりも上流側に位置させてある。また、中間傾斜部151bに多数の孔151dを形成することによって担体分離器153を構成してある。そして、担体分離器153の下方に単独または複数の散気管127を配置してあると共に、担体分離器153の上流側において仕切板151の下側鉛直部151cの近傍にも散気管127を配置してある。その上に、同様な仕切板151、担体分離器153散気管127を生物反応槽141内に設けてある。この実施の形態8では、実施の形態7と同様な効果を得ることができる上に、担体分離器153の下方に配置した散気管127からの空気によって担体分離器153の目詰まりを確実に防止することができる。また、生物反応槽141の担体分離器153を備えた仕切板151で区画された生物反応槽141A、生物反応槽141Bでは、それぞれの区画から担体125が移動することがないので、従来のように担体125を動力を使って上流側へ返送する必要がなくエネルギーが少なくて済む。また、区画された各槽それぞれに適した、例えば比増殖速度が小さい硝化細菌や、難分解性の物質を分解する細菌を良好に保持することができる。
【実施例1】
【0032】
図1〜図3に示す実施の形態1における無終端槽、例えばオキシデーションディッチ法の生物反応槽101を用い、処理水量を1,000m3/日とし、担体102の添加率を20%とした。その他の実施条件として、担体保持汚泥量は15,000mg/L、生物反応槽101の容量は1,000m3、浮遊MLSS濃度は3,153mg/L、BOD−SS負荷は0.05kg−BOD/kg−SS・日、HRTは17.4時間、必要酸素量は449kg−O2/日、ブロワの出力は15kW(1台)とした。そして、46本の超微細空気円筒型(ニューフレックスM型)の散気管110を用い、1本当りの空気量を350L/分とした。この実施例1では、散気管110をエアリフト効果が生じるように複数箇所に設置し、生物反応槽101の全体に速度がほぼ0.1m/s(10cm/s)の循環流を保持することができた。また、同じ槽容量でBOD−SS負荷を増加させずに、処理水量を380m3/日ほど増やすことができ、活性汚泥の濃度を安定して保つことができた。この実施例5では、被処理水103をエアリフト効果によって循環させるので、特殊な撹拌機を必要とせず、維持管理が容易となる。
【実施例2】
【0033】
図4および図5に示す実施の形態2における無終端槽、例えばオキシデーションディッチ法の生物反応槽101Aを用い、処理水量は1,000m3/日とし、担体102の添加率は30%とした。その他の実施条件として、担体保持汚泥量は15,000mg/L、生物反応槽101Aの容量は1,000m3、浮遊MLSS濃度は2,500mg/L、BOD−SS負荷は0.05kg−BOD/kg−SS・日、HRTは16時間、必要酸素量は488kg−O2/日、ブロワの出力は18.5kW(1台)とした。そして、50本の超微細空気円筒型(ニューフレックスM型)の散気管110を用い、1本当りの空気量を350L/分とした。この実施例2でも、散気管110をエアリフト効果が生じるように複数箇所に設置し、生物反応槽101Aの全体に速度がほぼ0.1m/s(10cm/s)の循環流を保持することができた。また、同じ槽容量でBOD−SS負荷を増加させずに、処理水量を500m3/日ほど増やすことができ、活性汚泥の濃度を安定して保つことができた。この実施例2でも、被処理水103をエアリフト効果によって循環させるので、特殊な撹拌機を必要とせず、維持管理が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の実施の形態1による生物学的排水処理装置の水平断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1による生物学的排水処理装置の垂直A断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】この発明の実施の形態2による生物学的排水処理装置の水平断面図である。
【図5】この発明の実施の形態2による生物学的排水処理装置の垂直B断面図である。
【図6】この発明の実施の形態3による生物学的排水処理装置の断面図である。
【図7】この発明の実施の形態4による生物学的排水処理装置の断面図である。
【図8】この発明の実施の形態5による生物学的排水処理装置の断面図である。
【図9】この発明の実施の形態6による生物学的排水処理装置の断面図である。
【図10】この発明の実施の形態7による生物学的排水処理装置の断面図である。
【図11】この発明の実施の形態8による生物学的排水処理装置の断面図である。
【符号の説明】
【0035】
101、101A、121、131、141、141A、141B 生物反応槽
103、126 被処理水
102、125 担体
110、110A、127 散気管
133、152 集泥ボックス
132、151 仕切板
123、134 移流口
105 散気室
106 上流側壁
107 下流側壁
108、109 通水路
110 散気管(散気手段)
114、124、129、139、153 担体分離器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入水を生物学的に処理する生物反応槽と、
該生物反応槽内に設けられ、下部に通水路を有する上流側壁と、
前記生物反応槽内に設けられ、上部に通水路を有する下流側壁と、
前記上流側壁および前記下流側壁で仕切られた散気室と、
該散気室の下部に設けられた散気手段と
からなることを特徴とする生物学的排水処理装置。
【請求項2】
前記生物反応槽は、無終端槽である
ことを特徴とする請求項1に記載の生物学的排水処理装置。
【請求項3】
前記生物反応槽には、微生物を保持する担体が存在する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の生物学的排水処理装置。
【請求項4】
前記生物反応槽は、
担体分離器を備えた仕切板により複数の槽に区画されている
ことを特徴とする請求項3に記載の生物学的排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−246483(P2008−246483A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149192(P2008−149192)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【分割の表示】特願2004−318172(P2004−318172)の分割
【原出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000147408)株式会社西原環境テクノロジー (44)
【Fターム(参考)】