説明

生物学的物質を連続的に熱分解する装置および方法

汚泥を管状反応器に供給し、続いて反応器内の温度および圧力を上昇させることにより、連続的な熱加水分解を実施する方法。汚泥は、汚泥を熱交換器またはより小さいユニットで冷却するかわりに、汚泥内に水を導入することにより冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的物質の熱加水分解を連続的に実施する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
世界のほとんどの地域において、家庭、工業プロセスおよび農業からの廃水は、小川、入江および河川に排出される前に生物学的に処理される。これは、ある種の生物学的な在中物が、当該ストリーム、入江および河川を汚染することを防止するために行われる。
【0003】
そのような処理は、生物学的な粒子が分解する(または劣化する)生物学的な分解(または劣化)であり得る。しかしながら、ある種の生物学的な粒子は、他のものよりも分解しにくく、そのために、生物学的な物質を含む生物学的な物質を加熱し、それを約140℃〜160℃の温度に、所定の時間(例えば、少なくとも半時間)維持することによって、生物学的な物質を処理することにより、分解プロセスをスピードアップさせることが知られている。そのようなプロセスは、熱加水分解として知られており、生物学的な分解への依存を示す生物学的な物質を、容易に分解可能な物質に変化せしめる。
【0004】
そのような熱加水分解は、通常、バッチプロセスにおいて実施され、バッチプロセスにおいては、汚泥(またはスラッジ)のバッチを熱加水分解に付し、続いて消化槽に供給する。しかしながら、熱加水分解を連続プロセスとして実施できることが望ましい。
【0005】
そのような連続プロセスの例が、EP 1198424において開示されており、当該文献は、乾燥固形分が1〜20%である汚泥を反応器に供給する方法を開示している。汚泥は、5〜60分間の間、130〜180℃の温度にて、3〜10バールの圧力にて、反応器内に維持される。続いて、処理した生物学的物質は、熱交換器によって冷却されて、汚泥の温度が消化槽内のバクテリアが死滅するのを避けるほど十分に低くなることを確保する。エネルギを回収するために、熱交換器はしばしば、汚泥が反応器に供給される前に、汚泥を予熱するように配置される。
【0006】
さらなる背景技術は、WO96/09882、WO2006/027062、WO92/06925およびWO2004/096866において、見ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施形態の目的は、乾燥固形分(または乾燥固形分濃度もしくは乾燥個体濃度)が少なくとも20%である汚泥を処理するようにされた連続熱加水分解のためのシステムを提供することである。
【0008】
さらにまた、本発明の一実施形態の目的は、汚泥を冷却するために熱交換器を要しない連続熱加水分解のシステムを提供することである。
【0009】
さらに、本発明の一実施形態の目的は、生物学的物質の冷却が、管型反応器の内側表面に粒子を全く付着させない又は僅かに付着させる、システムを提供することである。
【0010】
さらにまた、本発明のさらに別の一実施形態の目的は、熱加水分解の反応器に接続されている、水蒸気供給ラインのような供給ラインに、粒子が付着することを防止するようになっているシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の説明
第1の要旨において、本発明は、有機物質を含む汚泥の連続的な熱加水分解を、管型反応器において、連続的に:
−有機物質を反応器の供給ゾーンに供給して、有機物質を沸騰させることなく、圧力を上昇させ、温度を100℃よりも高くすること;
−水蒸気供給ゾーンにおいて、反応器内に水蒸気を供給し、温度を100℃を超える温度に上昇させること;
−反応器内の圧力を、所定の時間の間、維持すること;
−冷却ゾーンにおいて反応器内に水を供給し、温度を100℃未満の温度に低下させること;および
−有機物質を出口ゾーンに放出すること
により実施する方法に関する。
【0012】
本発明のシステムの一つの利点は、藍鉄鉱(vivianite)および/またはスツルバイト(struvite)のような物質の析出(または付着)が全く生じない、または僅かに生じるということである。そのような析出は、通常、生物学的物質が、所定の化学物質の溶解度が温度の減少とともに減少することに起因して、所定の化学物質の濃度が過飽和させられる程度に冷却されるときに生じる。過飽和は、通常、物質がその新しい飽和レベルに達することを生じさせるのに十分な量の化学物質の析出をもたらす。
【0013】
本発明において、汚泥は、冷却水を注入することにより冷却され、したがって、生物学的物質は、管状反応器の内側表面に沿ってではなく、管状反応器内部で冷却される。従来のシステムにおいて、生物学的物質は、管状反応器の1または複数の内側表面を冷却するようにされた熱交換器によって冷却され、それにより当該1または複数の表面と接触する汚泥が冷却される。しかしながら、内側表面が冷却されると、より冷たい内側表面の領域に配置された、又は当該内側表面と接触する汚泥は、生物学的物質が冷却され、上記温度を過ぎる(または超える)ときに、当該表面に粒子を析出させるであろう。その結果、システムを、適切に機能するように、頻繁に洗浄しなければならない。
【0014】
本発明の別の利点は、汚泥の供給入口の下流側のポイントにて、生物学的物質が薄められるために、システムに供給される生物学的物質の乾燥固形分をより高くし得ることである。乾燥固形分のより高いレベルに起因して、本発明のシステムの処理能力は、後に続く消化槽における処理に適した温度にまで、生物学的物質を冷却するための熱交換器を含む既知のシステムよりも、大きい。
【0015】
本発明のさらに別の利点は、高い温度および上昇した圧力が、長鎖炭素分子の酵素加水分解のような、所望の化学反応をもたらし得るということであり得る。
【0016】
本発明に関して、「生物学的物質」という用語は、いずれの生物学的な起源(または生体起源)の物質および有機物質を含む物質として、理解されるべきである。例は、工業的なプロセスからの廃棄物、農業(または農場)/飼育(または畜産場)からの廃棄物(肥料および食肉処理場からの廃棄物を含む)および家庭、工業および/または農業/飼育からの廃水の処理から得られる汚泥である。
【0017】
管状反応器は、殆どの形態において、長くされて、生物学的物質が、所定の速度にて一端に供給され、徐々に管状反応器内部に移動させられることを許容するとともに、処理温度および圧力を維持する。所定の供給速度(単位時間あたりの質量)に関して、反応器の長さが同じである場合には、保持時間は、より厚い管については、より薄い管よりも長くなることが理解されるであろう。加えて、所定の供給速度に関して、反応器の厚さ(直径)および長さは、反応時間を決定することが理解されるであろう。
【0018】
管状反応器は、生物学的物質が水平方向に流れる、少なくとも1つの水平部分、および/または生物学的物質が垂直方向に流れる、少なくとも1つの垂直部分を含み得る。一例として、全体の管状反応器は、水平方向において延びてよく、あるいは全体の管状反応器は、垂直方向に延びてよい。
【0019】
1つの形態において、垂直部分は、水平部分の上流側に設けられ、水蒸気供給ゾーンが垂直部分の下側部分に設けられる。生物学的物質に対する水蒸気の浮揚性に起因して、水蒸気供給ゾーンを垂直部分の下側部分に設けることは、水蒸気供給ゾーンを水平部分に設ける場合よりも、水蒸気と生物学的物質とを、より良い方法で混合せしめる。その理由は、水蒸気供給ゾーンが水平部分に設けられる場合、水蒸気および生物学的物質は、2つの層、水蒸気を含む上側層および生物学的物質を含む下側層に分離する傾向を有することがある。
【0020】
本発明に関して、管状反応器の「垂直部分」という用語は、垂直方向の幾何学的な成分を有する反応器のいずれの部分をも指すものとする。したがって、垂直部分は、水平方向を横切る方向に延びる。
【0021】
1つの特定の形態において、即ち、垂直部分が厳密に垂直に配置される場合において、「垂直部分」は垂直方向の幾何学的な成分のみを有し、水平方向の幾何学的な成分を有しない。他の形態において、垂直部分は、垂直方向に対して0°および90°とは異なる角度にて設けられ得る。例は、垂直方向に対して、30°、例えば45°、例えば60°である。
【0022】
本発明に関連して、管状反応器の「水平部分」という用語は、水平方向の幾何学的な成分を有する反応器のいずれの部分をも指すものとする。したがって、垂直部分は、垂直方向を横切る方向に延びる。
【0023】
1つの特定の形態において、即ち、水平部分が厳密に水平に配置される場合において、「水平部分」は、水平方向の幾何学的な成分のみを有し、垂直方向の幾何学的な成分を有しない。他の形態において、水平部分は、水平方向に対して0°および90°とは異なる角度にて設けられ得る。例は、水平方向に対して、30°、例えば45°、例えば60°である。
【0024】
静的または動的ミキサーを、水蒸気供給ゾーンのエリアまたはその下流側に設けて、水蒸気および生物学的物質の混合を向上させてよい。1つの効果は、温度が均質化されるということである。そのような静的または動的ミキサーは、水蒸気供給ゾーンが水平部分に設けられている場合には、非常に好都合である。さらに、垂直部分における静的または動的ミキサーの設置は、水蒸気および生物学的物質を、より改良された方法で混合せしめることが理解されるであろう。
【0025】
水蒸気供給ゾーンは、垂直部分の下側半分、例えば下側3分の1、例えば下側4分の1、例えば下側5分の1の位置に設けてよい。1つの形態において、水蒸気供給ゾーンは、垂直部分の底部に設けられる。
【0026】
1つの形態において、複数の静的および/または動的ミキサーが、水蒸気供給ゾーンと冷却ゾーンとの間に設けられる。そのような複数のミキサーは、均等に配置させられ(即ち、実質的に等距離で離れていて)、あるいは複数のミキサーは複数の群において設けられる。複数のミキサーは、2個のミキサー、または3個のミキサー、または4個のミキサー、または5個のミキサー、または6個のミキサー、または10個のミキサーを含んでよい。1つの形態において、反応器の管は、管の内容物が管の全長に沿って混合されるように設計される。これは、狭い距離(例えば10cm、例えば20cm、例えば30cm、例えば40cm、例えば50cm、例えば1m)で離れている複数のミキサーを設けることにより達成され得る。
【0027】
反応器は、反応器の上流方向において、冷却水の逆流を防止するようにされていてよい。これは、一方向のバルブを冷却ゾーンの上流に設けることにより、達成され得る。別法として、又は追加として、反応器の水平部分において冷却ゾーンの上流に、拘束体(例えば、垂直な壁)を設けてよい。拘束体は、反応器の下側部分に設けてよい。別法として、又は追加として、反応器は、冷却ゾーンの上流に、垂直部分を形成してよい。
【0028】
1つの形態において、反応器は、第1および第2の垂直部分であって、それらの部分の間に水平部分が設けられる2つの垂直部分を含み、第1の垂直部分は水平部分の上流側に設けられ、第2の垂直部分は水平部分の下流側に設けられる。この形態において、水蒸気供給ゾーンは、第1の垂直部分の下側部分に設けられてよく、冷却ゾーンは、第2の垂直部分(例えば、その下側部分)に設けられてよい。別の形態において、さらに別の水平部分を、第2の垂直部分の下流側に設けてよく、冷却ゾーンはこのさらに別の水平部分に設けられる。
【0029】
1つの形態において、管状反応器の長さは、5〜50メートルの範囲内にあり、例えば10〜40メートルの範囲内にあり、例えば20〜30メートルの範囲内にある。1つの形態において、管状反応器の直径は、50〜500mmの範囲内にあり、例えば100〜400mmの範囲内にあり、例えば200〜300mmの範囲内にある。
【0030】
本発明に関して、「連続的な熱加水分解」という用語は、熱加水分解が行われるとともに、新しい未処理の生物学的物質がシステムに供給されると同時に、処理された生物学的物質がシステムから出ていくプロセスとして理解されものとする。
【0031】
管状反応器に供給される水蒸気の圧力は、2バールを超えてよく、例えば5バールを超えてよく、例えば10バールを超えてよく、例えば15バールを超えてよく、あるいは例えば20バールを超えてよい。
【0032】
1つの形態において、管状反応器は、所定の保持時間が、5分を超える、例えば20分を超える、例えば30分を超える、例えば45分を超える、例えば60分を超える、例えば90分を超える、例えば180分を超えることが許容されるように、設計される。
【0033】
1つの形態において、方法は、反応器の少なくとも1つの化学薬品供給ゾーン中に、化学薬品を供給する工程を含む。1つの形態において、化学薬品供給ゾーンは、水蒸気供給ゾーンの上流側に設けられる。別法として、化学薬品供給ゾーンは、水蒸気供給ゾーンの下流側に設けてよい。さらに別の形態において、化学薬品供給ゾーンは、冷却ゾーンの上流側に設けられ、および/または化学薬品供給ゾーンは、冷却ゾーンの下流側に設けられる。注入される化学薬品は、NaOHのようなアルカリであってよく、それは、長鎖の有機物質(例えば、バイオマスのリグノセルロース成分および微生物の細胞壁成分)の加水分解反応を促進するために注入してよい。別法として、または追加として、アルカリを、加水分解が低い温度(例えば120℃)および/または低い圧力(例えば7バール)にて起こさせることを許容するために注入してよい。
【0034】
アルカリは、脂っぽい廃棄物、例えば食品工業または都市活動からの脂肪廃棄物の予備加水分解のために、装置を用いる場合に、加えてよい。
【0035】
別の形態において、化学薬品を、生物学的物質から重金属を除去するための酸性化のために添加する。酸性条件における加水分解は、例えば、工業廃水処理プラントの生物学的物質に吸着されている金属を可溶性にし得る(またはその溶解度を高め得る)。熱加水分解の後、液体からの金属の分離した沈殿および除去を許容し、かつpH中性化後に固体相を嫌気性の消化槽に送ることを許容するために、液体相を固体フラクションから分離してよい。
【0036】
さらに別の形態において、注入される化学薬品は、酸化剤(例えば、H2O2もしくはO3)または過酢酸である。酸化剤は、pH調節のためのアルカリまたは鉱酸を含んでもよいし、含んでいなくてもよい。酸化剤を供給することは、いくつかの有機物質(例えばBTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)またはPCB(ポリクロロビフェニル)のような塩素化成分)の毒性効果を減少させ得る。したがって、PCBのような有害な有機物質に起因して、農業用の土地に散布することが受け入れられない生物学的物質を、本発明の装置および/または方法によれば、解毒することができる。
【0037】
1つの形態において、水は、冷却ゾーンにおいて、反応器内に供給されて:
−生物学的物質の温度を、100℃未満の温度に低下させること、および
−処理された生物学的物質の所望の乾燥固形分を達成すること
のうち少なくとも1つを満たす。
【0038】
1つの形態において、消化槽における後の処理に適した所定の乾燥固形分を達成するために、水が冷却ゾーンに供給されて、濃度を希釈する。そのような所定の乾燥固形分は、15%未満、例えば12%未満、例えば9%未満、例えば6%未満の乾燥固形分であり得る。生物学的物質の理想的な乾燥固形分は、後の消化槽に依存し、たいていの形態において、乾燥固形分は、消化槽のアンモニア中毒(または被毒)の危険を避けるように、選択されなければならないことが理解されよう。
【0039】
1つの所定の形態において、冷却水は、生物学的物質を約9%の乾燥固形分にまで希釈するように、冷却ゾーン内に供給される。
【0040】
水蒸気供給ゾーンにおける、水蒸気の添加はまた、乾燥固形分のレベル/パーセンテージを、供給ゾーンにて管状反応器内に供給される生物学的物質の当該レベル/パーセンテージよりも低くする。
【0041】
1つの形態において、冷却水は、冷却ゾーンに供給されて、温度を、100℃未満の温度、例えば80℃未満、例えば60℃未満、例えば50℃未満、例えば40℃未満の温度にまで低下させる。
【0042】
冷却ゾーンに供給される水は、1〜100℃の範囲内にあってよく、例えば、10〜50℃の範囲内にあってよい。システム中に供給される水は、水道水および/または処理された水(例えば、処理された廃水)であってよい。
【0043】
殆どの形態において、水蒸気供給ゾーンは、冷却ゾーンの上流側に設けられて、汚泥の温度を、汚泥が冷却される前に上昇させることが理解されよう。
【0044】
1つの形態において、反応器は、例えば互いに連続して設けられた、1よりも多い冷却ゾーンを含む。一例として、2以上の冷却ゾーンを、前述した第2の垂直部分のような、反応器の垂直部分に設けてよい。加えて、反応器は、例えば互いに連続して設けられた、1よりも多い水蒸気供給ゾーンを含み得る。一例として、2以上の水蒸気供給ゾーンを、前述した第1の垂直部分のような、反応器の垂直部分に設けてよい。
【0045】
1つの形態において、有機物質は、供給ゾーンから連続的に供給されて、水蒸気供給ゾーンおよび冷却ゾーンを経由して出口ゾーンに至る。
【0046】
1つの形態において、反応器は、有機物質が、水蒸気供給ゾーンから冷却ゾーンに供給されるときに、所定の時間が経過するように、設計され且つ制御される。所定の時間は、少なくとも20分であってよく、例えば少なくとも30分、例えば少なくとも45分、例えば少なくとも60分であってよい。1つの形態において、所定の時間は、20〜120分の範囲内にあってよく、例えば30〜60分の範囲内にあってよい。
【0047】
システムは、供給速度、システムに供給される水蒸気の温度および圧力、生物学的物質を冷却するためにシステムに供給される冷却水の温度および圧力のうち、1または複数を制御するためのコントローラを含んでよい。
【0048】
1つの特定の形態において、注入される水蒸気の量は、廃棄物質/汚泥の入ってくるフローに合わせて調節され、所望の温度が達成されるようにする。
【0049】
先に言及したように、本発明は、例えば、有機物質が、供給ゾーン内に供給される汚泥において1〜50%、例えば10〜40%の乾燥固形分を提供するような、乾燥固形分の高い生物学的物質がシステムに供給される、システムを提供する。別の形態において、生物学的物質は、汚泥の少なくとも20%、例えば少なくとも25%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも35%、例えば少なくとも40%を規定(または画定)する。
【0050】
水蒸気の注入に際して、生物学的な乾燥固形分のパーセンテージは、僅かに減少することが理解されるであろう。
【0051】
1つの特定の形態において、汚泥は、管状反応器で処理されると、約9%の乾燥固形分で消化槽に入り得る。一旦消化槽に配置されると、汚泥は、少なくとも1週間、例えば少なくとも2週間、例えば少なくとも4週間の保持時間を有し得る。
【0052】
1つの形態において、管状反応器内の圧力を維持する手段が、管状反応器の出口の領域に設けられる。当該圧力を維持する手段は、所望の圧力を維持しながら、生物学的物質が出口を介して管状反応器を出ることを許容するようにされる。換言すれば、圧力を維持する手段は、管状反応器内でプロセスが生じるのに必要とされる最低圧力よりも小さい圧力に低下させることなく、生物学的物質が、管状反応器から出て行くことを許容するようになっている。圧力を維持する手段は、例えば、圧力が所定のレベルを超えない限り、バルブを閉じさせるスプリングでバイアスされたエレメントを含む、圧力バルブの形態をとってよい。別の形態において、圧力を維持する手段は、所望の最低圧力を維持しつつ、管状反応器の外に生物学的物質を移動させるように回転するように配置された、プログレッシブキャビティポンプの形態を取る。
【0053】
第2の要旨において、本発明は、有機物質を含む汚泥の連続的な加水分解の装置に関し、当該装置は、
−供給ゾーンにおいて反応器内に汚泥を供給する少なくとも1つの入口、
−水蒸気供給ゾーンにおいて反応器内に水蒸気を供給する少なくとも1つの入口、
−冷却ゾーンにおいて反応器内に冷却水を供給する少なくとも1つの入口、および
−処理された汚泥が反応器から出て行くことを許容する少なくとも1つの出口
を備えた管状反応器を含む。
【0054】
第2の要旨に係る発明は、第1の要旨に係る発明の特徴および/または要素の任意の組み合わせを含み得る。
【0055】
一例として、装置は、水蒸気供給ゾーンへの水蒸気の供給を制御して、圧力を上昇させて、管状反応器内で生物学的物質を沸騰させることなく、温度が100℃を超えることを許容するようにされた、コントロールユニットを含んでよい。
【0056】
別の例として、反応器は、本発明の第1の要旨において説明した、静的または動的ミキサーを含んでよい。さらに別の例として、反応器は、第1の要旨において説明した水平および/または垂直部分を含んでよい。
【0057】
別法として、または追加として、コントロールユニットは、冷却水の冷却ゾーンへの供給を制御して、温度を100℃未満の温度にまで低下させるようにされている。
【0058】
1つの形態において、反応器は、化学薬品供給ゾーンにおいて、反応器内に化学薬品を供給する入口を含む。
【0059】
1つの形態において、反応器は、反応器の上流方向への冷却水の逆流を防止するようにされている。
【0060】
前述の第1の要旨の例示は、本発明の第2の要旨にも適用され、それらは例示にすぎず、第1の要旨のいずれの特徴および要素も、第2の要旨に適用される。
【0061】
第3の要旨において、本発明は、バイオ燃料、バイオケミカルズまたはバイオポリマーのようなバイオ製品の製造のために生物学的物質を製造するために、それぞれ第1および第2の要旨に係る方法および/または装置を使用することに関する。
【0062】
そのような製品を製造するときに、原料(または未加工の)バイオマスは、価値のある製品に転化することが困難であり得、したがって、一般的に、そのような製品の製造の第1の工程は、原料バイオマスの熱加水分解であり得る。未加工の生物学的物質の熱加水分解コンポーネントのそのような使用は、それらを、最終的なバイオ製品への化学的および/または生物学的な変換(または変質)により適したものにする。
【0063】
この加水分解プロセスは、100〜200℃の範囲内の温度にて、および/または1〜12バールの圧力にて、および/または例えば0〜5時間の所定の時間にて、行われ得る。さらに、プロセスは、水性の化学処理剤を加えて又は加えることなく、および先に言及した生物学的物質の固体濃度でもって行われ得る。
【0064】
第4の要旨において、本発明は、生物学的物質の低温殺菌のために、それぞれ第1および第2の要旨に係る方法および/または装置を使用することに関する。
【0065】
1つの形態において、低温殺菌プロセスは、生物学的物質を所定の温度、例えば、70℃を超える温度に加熱する工程を含む。さらに、低温殺菌プロセスは、温度を所定時間(例えば1時間)維持する工程を含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明による連続熱加水分解のシステムの一形態を示す。
【図2】図2は、本発明の管状反応器を示す。
【図3】図3は、本発明の管状反応器の一形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明を、図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0068】
図面の詳細な説明
図1は、生物学的物質を処理する、汚泥処理システム100を開示する。汚泥処理システム100は、生物学的物質を含むのに適していて、生物学的物質の供給システム104と流体連通している容器102を含む。生物学的物質の温度は、0〜100℃の範囲内にあってよい。生物学的物質は、少なくとも20%の生物学的物質の乾燥固形分を有してよい。汚泥処理システム100はさらに、管状反応器106および消化槽108を含む。容器102は、消化槽108と、管状反応器106および冷却装置110(これはオプションであり、システムが機能するために必要なものではない)を介して流体連通している。管状反応器106は、汚泥入口112および汚泥出口114を含み、当該入口を介して汚泥が管状反応器106に供給され得、当該出口を介して汚泥が所定の処理時間の後、例えば、5分〜5時間後、例えば30分後、例えば60分後、例えば2時間後、例えば3時間後、例えば4時間後に、管状反応器106から出て行く。
【0069】
1つの形態において、管状反応器の長さは、5〜50メートルであり、例えば10メートルであり、例えば20メートルであり、例えば30メートルであり、例えば40メートルである。1つの形態において、管状反応器の直径は、50〜500mmの範囲内にあり、例えば100mmであり、例えば200mmであり、例えば300mmであり、例えば400mmである。本発明の1つの形態において、管状反応器の直径は、1メートルであり、例えば2メートルであり、例えば3メートルであり、例えば4メートルであり、例えば5メートルである。本発明の1つの形態において、管状反応器の長さは100メートルであり、例えば200メートルであり、例えば300メートルであり、例えば400メートルであり、例えば500メートルである。
【0070】
使用中、容器102に含まれる汚泥は、管状反応器106に、管状反応器106内に汚泥入口112を経由して汚泥を供給するためのフィーダー(または供給装置)116によって供給される。
【0071】
フィーダー116は、管状反応器106内の圧力を上昇させるために、汚泥を反応器106内に押し進めるようにされてよい。反応器内部の圧力が上昇すると、汚泥を沸騰させることなく、管状反応器106内の汚泥の温度を100℃を超える温度に上昇させ得ることが理解されよう。
【0072】
汚泥処理システム100は、水蒸気供給入口118を含み、当該入口を経由して水蒸気が管状反応器106内に供給されて、温度を、100℃を超える温度に上昇させる。管状反応器106内の圧力がフィーダー116によって上昇させられると、管状反応器106内の内容物を沸騰させることなく、温度を、100℃を超える温度に上昇させ得る。いくつかの形態において、管状反応器106に供給される水蒸気は、少なくとも15バールの圧力にて管状反応器106に供給される。
【0073】
1つの形態において、消化槽108において生成されるガスの少なくとも一部は、水を加熱して、水蒸気を生成するために用いられる。したがって、少なくとも一部のガスを、ガス供給システム111を介して、水蒸気発生装置109に供給してよい。
【0074】
出口圧力バルブ120によって、所定の圧力を、管状反応器の内部で維持しながら、汚泥を汚泥入口112から、汚泥出口114に向けて供給する。当該所定の圧力は、沸騰を避けるほど、十分に高いものでなければならない。管状反応器106内の在中物の沸騰は反応器を損傷させるからである。
【0075】
さらに、管状反応器106は、周囲の温度に対して、管状反応器106を断熱する手段を含む。したがって、汚泥は、汚泥入口112から汚泥出口114に向かって通過する間、さらにプロセスに熱を加えることなく、実質的に同じ温度を維持し得る。
【0076】
殆どの形態において、出口圧力バルブ120の下流側の圧力は、大気圧に等しい又は実質的に等しい。したがって、汚泥が沸騰することを防止するために、汚泥の温度は、出口圧力バルブ120を通過する前に、低下させなければならない。温度は、システムのサイトにおける大気圧での沸点よりも低い温度、即ち、平均海面にて100℃に低下させる必要があることが理解されよう。
【0077】
汚泥の温度を低下させるために、汚泥処理システム100は、冷却水を汚泥に加えるための1または複数の冷却水入口122を含む。先に説明したように、冷却水を加えることの1つの利点は、温度を低下させ得ることである。別の利点は、管状反応器106に入る汚泥の乾燥固形分を、水が加えられず、汚泥がもっぱら熱交換器によって冷却される従来のシステムにおけるそれよりも高くし得ることである。
【0078】
本発明のシステムを通過して供給される汚泥は、冷却水を加えることによって冷却され、そのことは汚泥を薄めさせる。したがって、本発明のシステムにおいては、冷却水入口122の上流側で、乾燥固形分が必然的により高いことが理解されよう。したがって、当業者は、本発明のシステムへの汚泥のフィードの濃度が、各システムから出て行く汚泥における同じ乾燥固形分について、従来のシステムにおけるそれよりも、高くなることを容易に理解するであろう。
【0079】
冷却水入口122内に供給される冷却水は、水道水、処理された水、または消化槽108で通常行われる処理を乱さない又は妨げない任意の他の種類の水であってよいことが理解されよう。
【0080】
1つの形態において、管状反応器106に供給される汚泥の乾燥固形分は約19%であり、温度は少なくとも150℃に上昇させられる。後者の形態において、保持時間(即ち、汚泥が管状反応器106に維持される時間)は、半時間または1時間の範囲内にある。後者の形態において、冷却水入口122の下流側の汚泥の乾燥固形分は、約9%であり、温度は約80℃である。
【0081】
いくつかの形態において、システムは、処理された汚泥の温度をさらに低下させるための冷却装置110を含む。冷却装置110は、汚泥から熱エネルギを回収するために用いられる熱交換器の形態をとってよく、それにより、汚泥(例えば汚泥入口112内に供給される前の汚泥)を加熱するために、熱エネルギを用いることができる。
【0082】
システムにおける最終のプロセス工程は、汚泥が消化槽108に供給されることであり、消化槽において、細菌学的処理が開始されて、生物学的に汚泥を分解する。
【0083】
処理された汚泥を消化槽108に既に含まれている汚泥と混合するために、汚泥処理システム100は、攪拌機124を含んでよい。別法として、または追加として、汚泥処理システム100は、再循環システム126を含んでよく、当該再循環システムは、消化槽108に既に存在する汚泥を、管状反応器106から出て行く汚泥と混合するようになっている。
【0084】
消化槽108に既に存在する汚泥の温度は、通常、管状反応器106から出て行く汚泥の温度よりも低いので、再循環システムはまた、管状反応器106から出て行く汚泥のさらなる冷却に寄与するであろう。
【0085】
一例として、管状反応器106から出て行く汚泥および消化槽108に既に存在する汚泥は、1:19の関係で混合してよい(即ち、管状反応器106から出て行く汚泥の各単位(またはユニット)が、消化槽に既にある汚泥の19の単位(またはユニット)と混合される)。管状反応器106から出て行く汚泥の温度が80℃であり、消化槽108からリサイクルされる汚泥の温度が55℃である場合、再循環システムから消化槽に入る汚泥の温度は約56℃、即ち、消化槽108に既に存在する汚泥よりも約1℃高くなる。
【0086】
より高い温度のスラッジが消化槽108に入ることに起因して、消化槽108内の汚泥の温度が徐々に上昇することを防止するために、消化槽108はそれに応じて断熱されなければならず、あるいは管状反応器106から出て行く汚泥の温度をそれに応じて調節しなければならない。
【0087】
さらに、システムは、管状反応器106と流体連通している供給ライン、即ち、水蒸気供給入口118および/または冷却水入口122および/または汚泥入口112における、(例えば、スツルバイトまたは藍鉄鉱またはカルシウムの)析出を防止するための手段128を含んでよい。そのような析出は、システムのシャットダウンの間に生じ得る。当該手段128は、1または複数の前記供給入口が減圧されたときに、汚泥が当該入口内に引き込まれて、汚泥が冷却されたときに当該入口にて析出が生じないように、植物油のようなオイルを当該入口にポンプ注入するようになっていてよい。当該手段128は、自動的に制御可能であってよく、および/または手動で制御可能であってよい。鉱物油が低価格であるために、当該手段128は、よりコストのかかる出口を保護する、単純で安価な方法を提供する。
【0088】
図3は、反応器106が垂直部分130および水平部分132を含む、管状反応器106の一形態を開示している。図3の形態において、垂直部分130は、水平部分132の上流側に設けられている。さらに、図3の形態において、2つの部分130、132は、互いに対して直角に設けられていて、垂直部分が水平方向の幾何学的な成分134を有しておらず、水平部分が垂直方向の幾何学的な成分136を有していない。
【0089】
管状反応器は、生物学的物質がそれを経由して供給される汚泥入口112、および2つの水蒸気供給入口118であって、下側の入口が垂直部分130の下側3分の1のところにあり、上側の入口が垂直部分130の下半分のところに設けられている、水蒸気供給入口を含む。
【0090】
さらに、管状反応器106は、冷却水入口122の下流側に設けられた出口圧力バルブ120を含む。冷却水の逆流を防止するために、逆流を防止するための手段138が、冷却水導入口122の上流側に設けられている。図3の形態において、逆流を防止するための手段138は、管状反応器106の下側部分において障壁(またはバリアー)の形態で設けられている。しかしながら、先に説明したように、手段138は、一方向性のバルブとして設けられてよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物質を含む汚泥の連続的な熱加水分解を、管型反応器において、連続的に:
−有機物質を反応器の供給ゾーンに供給して、有機物質を沸騰させることなく、圧力を上昇させ、温度を100℃よりも高くすること;
−水蒸気供給ゾーンにおいて、反応器内に水蒸気を供給し、温度を100℃を超える温度に上昇させること;
−反応器内の圧力を、所定の時間の間、維持すること;
−冷却ゾーンにおいて反応器内に水を供給し、温度を100℃未満の温度に低下させること;および
−有機物質を出口ゾーンに放出すること
により実施する方法。
【請求項2】
化学薬品を反応器の化学薬品供給ゾーンに供給する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
冷却ゾーンに供給される水の温度が1〜100℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
管状反応器が、生物学的物質が水平方向に流れる少なくとも1つの水平部分、および/または生物学的物質が垂直方向に流れる少なくとも1つの垂直部分を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
水蒸気供給ゾーンが、冷却ゾーンの上流側に設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
有機物質が連続的に、水蒸気供給ゾーンおよび冷却ゾーンを経由して、供給ゾーンから出口ゾーンに供給される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
有機物質が水蒸気供給ゾーンから冷却ゾーンに供給されたときに、最小の所定時間が経過するように、反応器が設計され制御されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
管状反応器に供給される生物学的物質の乾燥固形分を概算すること、および
冷却ゾーンに水を供給して、管状反応器から出て行く処理された生物学的物質の乾燥固形分が、所定のレベルとなることを確保すること
をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
有機物質が、1〜50%の、供給ゾーンに供給される汚泥における乾燥固形分を規定する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
供給ゾーンに供給される汚泥において、有機物質が少なくとも20%の乾燥固形分を規定する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
有機物質を含む汚泥の連続的な加水分解のための装置であって、
−供給ゾーンにおいて反応器内に汚泥を供給する入口、
−水蒸気供給ゾーンにおいて反応器内に水蒸気を供給する入口、
−冷却ゾーンにおいて反応器内に冷却水を供給する入口、および
−処理された汚泥が反応器から出て行くことを許容する出口
を備えた管状反応器を含む、装置。
【請求項12】
反応器が、化学薬品を、化学薬品供給ゾーンにおいて、反応器内に供給する入口を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
装置が、
−圧力を上昇させて、管状反応器内の生物学的物質を沸騰させることなく、温度が100℃を超えること許容するように、汚泥供給ゾーン内に汚泥を供給すること、および
−温度を上昇させるために、水蒸気供給ゾーン内へ水蒸気を供給すること
を制御するようになっているコントロールユニットを含む、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
反応器が、反応器の上流側の方向における冷却水の逆流を防止するようになっている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
温度を100℃未満の温度に低下させるために、コントロールユニットが、冷却ゾーン内への冷却水の供給を制御するようになっている、請求項13または14に記載の装置。
【請求項16】
水蒸気の入口が、冷却水の入口の上流側に設けられている、請求項11〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
管状反応器に入る生物学的物質の乾燥固形分を決定する手段をさらに含み、コントロールユニットが、管状反応器から出て行く生物学的物質が所定の乾燥固形分を有することを確保するように、冷却ゾーン内に冷却水を供給するようになっている、請求項13〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
装置の1または複数の入口における析出を防止するための手段をさらに含み、当該手段は、反応器がシャットダウンされたときに、油を供給するようになっている、請求項11〜17のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−516246(P2011−516246A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502371(P2011−502371)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053802
【国際公開番号】WO2009/121873
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510259781)ヴェオリア・ウォーター・ソリューション・アンド・テクノロジーズ・サポート (1)
【氏名又は名称原語表記】Veolia Water Solutions & Technologies Support
【Fターム(参考)】