説明

生物学的興奮性細胞

電気的ペースメーカーデバイスの代替の戦略として、本発明者らは、体細胞融合によって通常静止状態の心室筋細胞をペースメーカーに変換する可能性を探索した。このアイデアは、通常静止状態の心筋において、筋細胞と、HCN1ペースメーカーイオンチャネルを発現するように操作された同系の線維芽細胞(HCN1線維芽細胞)との間で、化学的に誘導された融合体を作製することである。HCN1を発現する線維芽細胞は、筋細胞と共に安定な異核共存体を形成し、これはインビボでの心室性ペースメーカー活性と同様に、自発的に振動する活動電位を生成し、かつ自己の非ウイルス性成熟体細胞療法のための基盤を提供した。本発明者らはまた、部位特異的変異誘発(S4内のR447N、L448A、およびR453I、ならびに孔内のG528S)によって、脱分極活性化カリウム選択チャネルであるKv1.4を過分極活性化非選択チャネルに変換した。心室筋への遺伝子導入は、ペースメーカー活性を誘導するこの構築物の能力を実証し、これは成人の心室筋細胞における自発的活動電位振動と、インビボ心電図検査による心室固有のリズムを伴った。ヒトの心室におけるKv1ファミリーのチャネルのまばらな発現を鑑みて、Kv1ファミリーに基づく合成ペースメーカーチャネルの遺伝子導入は、電気的ペースメーカーの生物学的代替物として、治療的有用性を有する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、興奮性細胞の領域に関する。特に、本発明は、細胞のイオンチャネルタンパク質の補体を変化させることにより、細胞の生物学的な興奮性を変更することに関する。
【0002】
本出願は、2005年10月14日に出願された米国仮出願番号第60/726,840号の恩典を主張し、その開示は、明白に本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
毎年米国では250,000人以上が、心臓の不整脈、典型的には遅いかまたは不規則な心拍動の処置のために、人工ペースメーカーをインプラントしている。生物学的ペースメーカーを用いて、人工ペースメーカーの機能と置き換えるか、またはその機能を増強することができる。
【0004】
洞房結節において、ゲート開閉と浸透特性が組み合わさって安定な振動を生成する脱分極電流と再分極電流とのバランスによって、ペースメーカーの活動が生み出される(DiFrancesco, D. (1995) Cardiovasc Res 29, 449-56(非特許文献1))。過分極活性化ヌクレオチドゲートチャネル(HCN)ファミリー遺伝子は、顕著に生理的自動能に関与し、バイオペースメーカーを作製する一つの方法として、そのような遺伝子を静止状態の心臓組織に導入することが探求されてきた(Qu, J., Plotnikov, A. N., Danilo, P., Jr, Shlapakova, I., Cohen, I. S., Robinson, R. B. & Rosen, M. R. (2003) Circulation 107, 1106-1109.(非特許文献2); Plotnikov, A. N., Sosunov, E. A., Qu, J., Shlapakova, I. N., Anyukhovsky, E. P., Liu, L., Janse, M. J., Brink, P. R., Cohen, I. S., Robinson, R. B., Danilo, P., Jr & Rosen, M. R. (2004) Circulation 109, 506-512.(非特許文献3); Potapova, I., Plotnikov, A., Lu, Z., Danilo, P., Jr, Valiunas, V., Qu, J., Doronin, S., Zuckerman, J., Shlapakova, I. N., Gao, J., Pan, Z., Herron, A. J., Robinson, R. B., Brink, P. R., Rosen, M. R. & Cohen, I. S. (2004) Circ Res 94, 952-959(非特許文献4))。しかしながら、標的細胞における複数の内因性HCNファミリーメンバーとのヘテロ多量体化の予測不可能な結果により、HCN遺伝子の使用が混乱する可能性がある(Ulens, C. & Tytgat, J. (2001) J. Biol. Chem. 276, 6069-6072(非特許文献5))、(Brewster, A. L., Bernard, J. A., Gall, C. M. & Baram, T. Z. (2005) Neurobiology of Disease 19, 200-207(非特許文献6))。心室筋細胞においてHCNが発現し、それが催不整脈に寄与し得るため(Cerbai, E., Pino, R., Porciatti, F., Sani, G., Toscano, M., Maccherini, M., Giunti, G. & Mugelli, A. (1997) Circulation 95, 568-571.(非特許文献7);, Hoppe, U. C., Jansen, E., Sudkamp, M. & Beuckelmann, D. J. (1998) Circulation 97, 55-65(非特許文献8))、インビボでのHCN遺伝子導入は予測不可能な結果をもたらす可能性がある。さらに、野生型チャネルの使用は、設計されたペースメーカーの周波数同調に関して柔軟性が低い。
【0005】
心臓のリズムに関連した障害は、インパルスの発生と伝導の機能不全によって引き起こされる。インパルスの発生に対する現在の療法は、幅広いアプローチに及ぶが、大部分は対症療法に留まっている。心拍数を維持する代理のペースメーカーとして、または過剰に早いリズムを処置するための除細動器として、埋め込み型のデバイスが機能し得る。そのようなデバイスは高価であり、インプランテーションは、肺虚脱、細菌感染、誘導または発生装置の欠損など多くの急性および慢性のリスクを含む(Bernstein, A. D. & Parsonnet, V. (2001) Pacing Clin Electrophysiol 24, 842-55(非特許文献9))。心臓の不整脈に対する細胞療法の概念は、従来の出願とは概念的に異なる。本明細書における目的は、有益な様式で組織の特定の電気特性を改変するよう、心臓組織の機能的な再構築を達成することである。本研究において、遺伝子操作した細胞を導入して、通常静止状態の心筋から自発的に活性化する生物学的ペースメーカーを作製する。洞房結節ペースメーカー細胞には存在するが、心房および心室筋細胞には主として存在しない重要なイオン電流は、ペースメーカー電流Ifである(Robinson, R. B. & Siegelbaum, S. A. (2003) Annu Rev Physiol 65, 453-80(非特許文献10))。Ifと関連する分子は、過分極活性化サイクリックヌクレオチドゲート(HCN)チャネル1〜4である(Stieber, J., Hofmann, F. & Ludwig, A. (2004) Trends Cardiovasc Med 14, 23-8(非特許文献11))。本発明者らは、Ifを心筋へ送達する方法として、ポリエチレングリコール(PEG)誘導性線維芽細胞-筋細胞融合の使用を検討し、インビボで細胞注入した部位で、異核共存体がペースメーカー活性を誘発可能であることを示す。本アプローチが、細胞-細胞のカップリングに依存せず、線維芽細胞注入の部位に定常的であることから、それは、心臓の特定の領域における生物学的ペースメーカー活性を達成するための安定で簡単な手順を保証する。
【0006】
当技術分野では、例えば疾患、遺伝的性質、薬物、および加齢によって引き起こされる心臓リズムの機能不全を制御する改善された方法に対して、継続的な必要性がある。
【0007】
【非特許文献1】DiFrancesco, D. (1995) Cardiovasc Res 29, 449-56
【非特許文献2】Qu, J., Plotnikov, A. N., Danilo, P., Jr, Shlapakova, I., Cohen, I. S., Robinson, R. B. & Rosen, M. R. (2003) Circulation 107, 1106-1109.
【非特許文献3】Plotnikov, A. N., Sosunov, E. A., Qu, J., Shlapakova, I. N., Anyukhovsky, E. P., Liu, L., Janse, M. J., Brink, P. R., Cohen, I. S., Robinson, R. B., Danilo, P., Jr & Rosen, M. R. (2004) Circulation 109, 506-512.
【非特許文献4】Potapova, I., Plotnikov, A., Lu, Z., Danilo, P., Jr, Valiunas, V., Qu, J., Doronin, S., Zuckerman, J., Shlapakova, I. N., Gao, J., Pan, Z., Herron, A. J., Robinson, R. B., Brink, P. R., Rosen, M. R. & Cohen, I. S. (2004) Circ Res 94, 952-959
【非特許文献5】Ulens, C. & Tytgat, J. (2001) J. Biol. Chem. 276, 6069-6072
【非特許文献6】Brewster, A. L., Bernard, J. A., Gall, C. M. & Baram, T. Z. (2005) Neurobiology of Disease 19, 200-207
【非特許文献7】Cerbai, E., Pino, R., Porciatti, F., Sani, G., Toscano, M., Maccherini, M., Giunti, G. & Mugelli, A. (1997) Circulation 95, 568-571.
【非特許文献8】Hoppe, U. C., Jansen, E., Sudkamp, M. & Beuckelmann, D. J. (1998) Circulation 97, 55-65
【非特許文献9】Bernstein, A. D. & Parsonnet, V. (2001) Pacing Clin Electrophysiol 24, 842-55
【非特許文献10】Robinson, R. B. & Siegelbaum, S. A. (2003) Annu Rev Physiol 65, 453-80
【非特許文献11】Stieber, J., Hofmann, F. & Ludwig, A. (2004) Trends Cardiovasc Med 14, 23-8
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明の1つの局面に従って、その両方の親細胞由来の電気特性を有する異核共存体の作製のための方法を提供する。外因性体細胞および膜融合(fusogen)試薬を、哺乳動物内のある部位に注入する。外因性体細胞は、イオンチャネルを発現する。この外因性体細胞は、ある内因性体細胞と融合し、これによってその両方の親由来の電気特性を有する異核共存体を形成する。
【0009】
本発明の別の局面は、生物学的ペースメーカーの作製方法である。筋細胞、ポリエチレングリコール(PEG)、およびSEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:5に示す過分極活性化サイクリックヌクレオチドゲート(HCN)イオンチャネル1(HCN1)を発現する同系または自己の線維芽細胞を、混合する。それによって筋細胞と線維芽細胞が融合する。
【0010】
本発明のさらに別の局面は、生物学的ペースメーカーの別の作製方法である。細胞膜を脱分極させる遺伝子、細胞膜を再分極させる遺伝子、および自発的に興奮する遺伝子をコードする1つまたは複数の核酸分子を、非興奮性哺乳動物細胞にトランスフェクトする。それによって哺乳動物細胞は、自発的振動活動電位を表す。
【0011】
本発明の一つの態様は、3つのイオンチャネルの各々に対するコード配列を含むプラスミドである。3つのイオンチャネルは、HCN1(SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5)、NaChBac(SEQ ID NO:2)、およびKir2.1(SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:6)である。
【0012】
本発明のなお別の態様は、過分極の際に活性化し、一価陽イオンに非選択的である電位依存性K+チャネルタンパク質である。
【0013】
本発明のなお別の態様は、SEQ ID NO:4に記載のKv1.4タンパク質の野生型配列に対する4つの変異を含む、過分極活性化内向き電流チャネルタンパク質である。4つの変異は、R447N、L448A、R453I、およびG528Sである。
【0014】
本明細書を読めば当業者には明らかであろうこれらのおよび他の態様は、哺乳動物体における電気的機能を増強し修復するための手段を伴う技術を提供する。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明者らは、生物学的ペースメーカーにおける使用のための方法および製品を開発してきた。一つの局面において、インビボまたはインビトロの融合を用いて、宿主の内因性興奮性細胞の機能を改善する。別の局面において、自発的振動活動電位を生成するのに共に十分なタンパク質の補体を細胞へ移入することによって、非興奮性細胞を興奮性にする。別の局面において、本発明者らは、過分極の際に活性化し、一価陽イオンに非選択的である電位依存性K+チャネルタンパク質を開発してきた。
【0016】
融合細胞を作製するために、インビトロまたはインビボのいずれかで、化学的または生物学的のいずれでも、当技術分野において公知の任意の膜融合試薬を用いることができる。用いることができる例示的な膜融合試薬には、NaNO3、人工海水、リゾチーム、高pH/Ca++、ポリエチレングリコール(PEG)、抗体、コンカナバリンA、ポリビニルアルコール、デキストランおよび硫酸デキストラン、脂肪酸、レクチンおよびエステルが含まれる。500〜2000、または1250〜1750、1400〜1600の分子量のような特定のサイズのPEGを、有利に用いることができる。同様に生物学的膜融合物質を使用してもよい。例えば、用いることができる生物学的膜融合物質には、クラスIウイルス融合タンパク質、例えばHA(インフルエンザウイルス赤血球凝集素)、Env(ヒト免疫不全ウイルス1に対するエンベロープタンパク質)、クラスIIウイルス融合タンパク質、例えばTBEウイルスのエンベロープタンパク質、v-SNAREおよびt-SNAREなどの細胞内小胞膜融合物質、CD9(哺乳動物の受精の際に用いる)およびCD47(マクロファージ融合のため)などのIgドメイン含有タンパク質、シンシチン(Syncytin)(胎盤における栄養芽細胞融合のため)が含まれる。融合の前に、細胞をより融合しやすいよう処理することができる。そのような処理には、トリプシン処理または細胞の外面を部分的に分解する他の酵素もしくは化学薬品が含まれてもよい。
【0017】
両方の親細胞由来の電気特性を有する異核共存体を、哺乳動物の体内でインサイチューで作製することができる。インサイチュー親細胞は、心臓細胞、特に心筋細胞、神経細胞、横紋筋細胞、内分泌細胞、または心室筋細胞などの任意の細胞タイプであり得る。インサイチュー親細胞は、所望のイオンチャネルを発現しなくてもよく、またはそれを十分にもしくは最適に発現しなくてもよい。本明細書において用いるイオンチャネルには、輸送体が含まれる。所望のイオンチャネルを発現する外因性体細胞との融合の際、融合細胞または異核共存体は、所望のイオンチャネルを発現する能力を獲得し、チャネルが伝える電気的機能性を得る。外因性細胞は、哺乳動物の心臓または他の所望の身体の部位に注入することができる。標的宿主細胞は、神経細胞であってよい。所望のチャネルは、カルシウムチャネルであってよい。より具体的には、所望のチャネルは、過分極活性化サイクリックヌクレオチドゲート(HCN)イオンチャネル1(HCN1)であり得る。外因性体細胞は、自己細胞または同系の細胞であってよい。線維芽細胞または任意の非興奮性細胞、例えば腎臓細胞であり得る。外因性体細胞は、天然に所望のチャネルを発現する細胞であってよく、または外因性である核酸を外因性体細胞へ遺伝的に伝達することにより所望のチャネルを発現する能力を獲得した細胞であってよい。遺伝的伝達は、チャネル発現を増強するか、別の方法ではチャネルを発現しない細胞にそのような発現を提供するかのいずれかであってよい。遺伝的伝達は、例えばプラスミドを用いる非ウイルス性、または例えばアデノウイルス、アデノ随伴ウイルスもしくはレンチウイルスを用いるウイルス性のいずれかであってよい。
【0018】
例えば筋緊張性ジストロフィー、てんかん、ナルコレプシー、記憶、興奮収縮連関、分泌、興奮転写連関の処置ため、例えばペースメーカーの作製、心臓の再分極の改変、筋肉の興奮性の増加または減少によって、そのように形成した融合細胞または異核共存体を用いて興奮性を改変することができる。
【0019】
外因性細胞および膜融合物質の投与後、当技術分野で公知の任意の手段によって異核共存体の融合および形成をモニターすることができる。これらは非限定的に、EKGの使用および外因性細胞由来の検出可能マーカーについての免疫組織化学の使用を含む。パッチクランプ測定法など、イオンチャネル活性を検出するための他の方法を用いることができる。
【0020】
本発明の異核共存体は、インビトロまたはインビボで作製することができる。インビトロで作製した場合、異核共存体をその後、それらの電気的機能を必要とする部位で哺乳動物体に投与することができる。
【0021】
本発明の方法を適用できる哺乳動物には、ヒト、ラット、マウス、ブタ、イヌ、ヒツジ、ウシ、ウマなどが含まれる。任意のそのような哺乳動物を、それ自体のためまたはヒトを処置するための実験モデルシステムとして処置することができる。
【0022】
外因性コード配列の小補体をトランスフェクト(形質導入、形質転換、または他の遺伝子導入手段を含む)することによって、非興奮性細胞から生物学的ペースメーカーを作製することができる。以下実施例に詳述するように、細胞膜を脱分極させる遺伝子、細胞膜を再分極させる遺伝子、および細胞を自発的かつ反復して興奮させる遺伝子の発現は、これまで非興奮性であった哺乳動物細胞において、振動活動電位を発生させるのに十分である。コード配列を、1つもしくは複数の核酸分子またはベクターに送達することができる。ベクターは、ウイルス性または非ウイルス性であり得る。興奮性にすることができる非興奮性細胞の1つの特定のタイプは、ヒト胚性腎細胞である。用いることができるイオンチャネルの例は、HCN1(SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5)、NaChBac(SEQ ID NO:2)、およびKir2.1(SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:6)である。その他は、当技術分野において公知のように用いることができる。例えば、細胞膜を脱分極させる遺伝子には、電位依存性ナトリウムチャネル、電位依存性カルシウムチャネル、およびニコチン性アセチルコリン受容体などのリガンド開口型陽イオンチャネルをコードする遺伝子が含まれる。細胞膜を再分極させる遺伝子には、カリウムチャネルまたはクロライドチャネルをコードする遺伝子が含まれる。細胞を自発的かつ反復して興奮させる遺伝子には、HCN遺伝子ファミリーまたは以下に記載するような操作した合成ペースメーカーチャネル(SPC)の遺伝子が含まれる。心臓ペーシングのため、または例えばナルコレプシー、オンディーンののろい、もしくは麻痺など、興奮の頻度が低くなる神経疾患もしくは筋疾患の処置のために、そのような生物学的ペースメーカーを用いることができる。
【0023】
過分極の際に活性化し、一価陽イオンに非選択的である電位依存性K+チャネルタンパク質もまた、本発明によって提供される。そのようなタンパク質の1つは、SEQ ID NO:4に記載の野生型Kv1.4の変異体である。その変異体には、Kv1.4タンパク質の野生型配列に対する4つの変異:R447N、L448A、R453I、およびG528Sが含まれる。同様の作用を有する他の変異もまた、用いることができる。タンパク質のそのような変異体のコード配列をコードする核酸は、望ましいならばウイルスベクターまたは非ウイルスベクター内にあってよい。この核酸を細胞に投与して、安定な形質移入体または形質導入体を形成することができる。この核酸はまた、動物の全身に投与することもできる。例えば、それらを哺乳動物の心臓に送達することができる。特に、それらを哺乳動物心臓の左心室または左心房に注入することができる。同様に、それらをニューロン部位に送達することができる。これらの変異タンパク質およびそれらをコードする核酸は、天然のペースメーカーチャネルの代替として用いることができる。これらの変異タンパク質は、より調整しやすく、かつ天然の遺伝子との多量体化を受けにくい。
【0024】
マウスおよびヒトハイブリドーマを作製するため(Shirahata, S., Katakura, Y. & Teruya, K. (1998) Methods Cell Biol 57, 111-45)、真核生物の細胞-細胞融合事象の研究のため(Lentz, B. R. & Lee, J. K. (1999) Mol Membr Biol 16, 279-96)、および外向きK+電流を筋細胞へ送達するため(Hoppe, U. C., Johns, D. C., Marban, E. & O'Rourke, B. (1999) Circ Res 84, 964-72)のモデルシステムとして、PEG誘導性膜融合事象が役立ってきた。本明細書において、本発明者らは、ドナー細胞としてHCN1チャネルを発現する同系の線維芽細胞を用いて、PEG誘導性細胞融合により、通常静止状態の心室筋細胞内で自発的活性を誘導した。融合を誘導した生物学的ペースメーカーは、3週間以上安定であり、心電図検査により明らかにされたように、注入後<1日は機能的であった。以前の研究により、融合を誘導した異核共存体は、各融合パートナー由来の核を少なくとも数ヶ月は個別に安定して維持することができることが示唆される(Gibson, A. J., Karasinski, J., Relvas, J., Moss, J., Sherratt, T. G., Strong, P. N. & Watt, D. J. (1995) J Cell Sci 108 ( Pt 1), 207-14. Gussoni, E., Bennett, R. R., Muskiewicz, K. R., Meyerrose, T., Nolta, J. A., Gilgoff, I., Stein, J., Chan, Y. M., Lidov, H. G., Bonnemann, C. G., Von Moers, A., Morris, G. E., Den Dunnen, J. T., Chamberlain, J. S., Kunkel, L. M. & Weinberg, K. (2002) J Clin Invest 110, 807-14. Alvarez-Dolado, M., Pardal, R., Garcia-Verdugo, J. M., Fike, J. R., Lee, H. O., Pfeffer, K., Lois, C., Morrison, S. J. & Alvarez-Buylla, A. (2003) Nature 425, 968-73)。幹細胞に基づく生物学的ペースメーカーは、インパルスの伝達について細胞-細胞カップリングに依拠する(Weimann, J. M., Johansson, C. B., Trejo, A. & Blau, H. M. (2003) Nat Cell Biol 5, 959-66)。そのようなギャップ結合性カップリングは、長期にわたり安定ではない可能性がある:不整脈のリスクの上昇に関連するヒト心臓疾患の主要形態の多くは、ギャップ結合の再構築および細胞-細胞カップリングの減少と同時に発生する(van der Velden, H. M. & Jongsma, H. J. (2002) Cardiovasc Res 54, 270-9)。さらに、奇形腫形成に伴い起こり得る合併症に加えて、幹細胞は一旦心筋に注入されると、増殖および遊走することが示された(16. Cao, F., Lin, S., Xie, X., Ray, P., Patel, M., Zhang, X., Drukker, M., Dylla, S. J., Connolly, A. J., Chen, X., Weissman, I. L., Gambhir, S. S. & Wu, J. C. (2006) Circulation 113, 1005-14)。これは、所望の部位以外の心臓領域からペースメーカー活性の予測不可能なパターンをもたらす可能性がある。対照的に、本アプローチは、PEG誘導性融合によって形成される異核共存体の部位に生物学的ペースメーカーをインサイチューで作製する。さらに、筋細胞との融合を受けなかった線維芽細胞は、細胞-細胞カップリングの欠如のため、細胞注入部位以外ではペーシングをもたらさない。本アプローチは、自己の非ウイルス性成熟細胞療法によって実行することができる。
【0025】
上記の開示は、本発明を概説するものである。本明細書で開示されたすべての参考文献は、参照により明白に組み入れられる。以下の特定の実施例を参照することによって、より完全な理解を得ることができるが、実施例は本明細書において、例示のみを目的として提供されるものであり、発明の範囲を限定することを意図しない。
【0026】
実施例1−材料および方法
プラスミド構築物、およびアデノウイルス調製物、および変異体
XL-4ベクター(OriGene Technologies, Inc. Rockville, MD)からpTracerCMV2プラスミド(Invitrogen, Carlsbad, CA)のEcoRIとNotI部位の間に、ヒトKv1.4 cDNAをサブクローニングした。アデノウイルスシャトルベクターpAdCGIを、アデノ/S4TK1.4GYS-IRES GFPの生成のために用いた。以前に記載されたように1、アデノウイルスを産生した。部位特異的変異誘発キット(Stratagene, La Jolla, CA)により、オリゴヌクレオチド変異誘発を実施した。
【0027】
培養細胞株の一過性トランスフェクション
トランスフェクションの前日に2.0×105/35-mm2の密度で、HEK293細胞を播種した。製造業者のプロトコールに従い、リポフェクタミン2000(Invitrogen, Carlsbad, CA)により細胞をトランスフェクトした。トランスフェクション後18〜48時間以内に、電位および電流クランプ法を実施した。
【0028】
心室筋細胞の単離
以前に記載されたように2、ランゲンドルフ灌流を用いてモルモットの左心室筋細胞を単離した。消化後、高カリウム溶液(K-グルタミン酸120、KCl 25、MgCl2 1、グルコース10、HEPES 10、およびEGTA 1(mmol/L);pH 7.4)中に室温で30分間、細胞を保存した。電気生理学的記録のため、通常のタイロード溶液内に細胞を再懸濁した(以下の電気生理学の項目を参照されたい)。インビトロ融合実験(セクション1)のために次いで、2%FBS(Invitrogen, Carlsbad, CA)を添加した培地199(Invitrogen, Carlsbad, CA)を入れた6ウェルプレート内のラミニンコーティング(20μL/mL; Becton Dickinson, Bedford, MA)カバーガラス上に、筋細胞を配置し、37℃の5%CO2加湿インキュベータ内で1時間、融合実験(セクション1)のために維持した。
【0029】
電気生理学
Axopatch 200B増幅器(Molecular Devices Corporation, Sunnyvale, CA)により、20 kHzのサンプリングレートおよび5 kHzでの低域ベッセルフィルターで、標準的な微小電極ホールセルパッチクランプ技術3を用いて実験を行った。実験はすべて室温で行った。NaCl 138、KCl 5、CaCl2 2、グルコース10、MgCl2 0.5、およびHEPES 10(mmol/L);pH 7.4を含むタイロード溶液で、細胞を灌流した。マイクロピペット電極溶液は、K-グルタミン酸130、KCl 9、NaCl 8、MgCl2 0.5、HEPES 10、EGTA 2、およびMg-ATP 5(mmol/L);pH 7.2から構成された。内部記録溶液で満たした場合、微小電極は2〜4 MΩの先端抵抗を有した。2.5秒のインターエピソード(interepisode)間隔で、電位-クランプ実験を実施した。活動電位は、対照(GFPのみ)筋細胞と融合した筋細胞上で短い脱分極電流パルス(2〜3 ms、500〜800 pA)によって開始されるか、またはHCN1-線維芽細胞と融合した筋細胞上でI=0モードで記録されるかのいずれかであった。ソフトウェアJCal5を用いて、測定された液間電位差(-18 mV)4に関するデータを収集した。キセノンアークランプを用いて、488/530 nm(励起/発光)でカルセインAM蛍光またはGFPを見た。
【0030】
動物の処理および筋細胞の単離
アデノウイルスを、モルモットの左心室自由壁に注入した。成熟メスモルモット(250〜300 g)を4%イソフルランで麻酔し、挿管して、1.5〜2%イソフルランを供給する気化器を備える換気装置上に配置した。側方開胸術後、30ゲージ針を左心室の自由壁へ挿入した。3×1010 PFU AdSPCまたは3×1010 PFU GFP(対照群)のアデノウイルスを、左心室に注入した。注入実施の48〜72時間後、左心室の自由壁筋細胞を、標準的な技術を用いて単離した(1 Mitra R, M. M. (1986) Proc Natl Acad Sci U S A. 83, 5340-4)。落射蛍光画像法を用いてそれらの鮮明な緑色蛍光により確認可能な形質導入した筋細胞の収量は、細胞が電気生理学的記録チャンバー内に分散した場合、視覚的な評価によって判断すると約3〜5%であった。提示した作業は、実験動物のケアと使用に関するNIHガイドラインに従って実施し、ジョンズ-ホプキンズ大学の動物実験委員会のガイドラインに従って実施した。
【0031】
心電図
以前に記載されたように(Ennis, I. L., Li, R. A., Murphy, A. M., Marban, E. & Nuss, H. B. (2002) J. Clin. Invest. 109, 393-400)、表面ECG(BIOPAC Systems. MP100)をアデノウイルス注入の72時間後に記録した。モルモットをイソフルランで軽く鎮静させ、針電極を皮膚の下に配置した。最大振幅の記録が得られるように、電極の位置を最適化した。標準的な肢誘導I、II、およびIIIからECGを同時に記録した。心室拍動を効果的に検出するため、本発明者らは、メタコリン(Sigma, 0.1〜0.5 mg/g)を腹腔内注入して徐脈を誘導した。本発明者らは、LV自由壁を手持ち式の電極でマッピングすることにより、心室拍動がどこに由来するかを確認した。
【0032】
インビトロ細胞融合
HCN1を安定して発現する線維芽細胞(HCN1-線維芽細胞)に、カルセイン-AM(2μL/mL 増殖培地;1 mmol/Lジメチルスルホキシドの原液;Molecular Probes, Eugene, OR)をロードし、サイトゾル蛍光マーカーを増加させた。染色後、細胞をトリプシン処理し、遠心分離し、白血球凝集素40μg/mL(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を添加した6 mL培地199に再懸濁した。筋細胞増殖培地を、0.5 mL/ウェルでこのHCN1-線維芽細胞懸濁液と交換した。コプレーティングの1時間後、筋細胞とHCN1-線維芽細胞を、H2O中、予熱した(37℃)40%ポリエチレングリコール1500(PEG)(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)で融合させた。PEGへの曝露の2〜4分後、細胞を高カリウム溶液(筋細胞単離後に用いた溶液と同じもの)で5〜10分間再水和し、次いで通常のタイロード溶液で灌流した(以下を参照されたい)。
【0033】
HCN1を発現する安定な線維芽細胞の細胞株を作製するための組換えレンチウイルスの産生
3-プラスミドシステム6を用いて、pLentiV-CAG-HCN1-IRES-GFP、pMD.G、およびpCMVΔR8.91を、HEK293細胞に同時トランスフェクションすることによって、組換えレンチウイルスを生成した。レンチウイルス構築物は、複合プロモーターCAGの制御下でペースメーカーチャネルであるHCN1を発現し、次いで内部リボソーム侵入部位(IRES)の後に緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する。モルモット肺線維芽細胞(ATCC, Manassas, VA)を、10%FBS(Invitrogen, Carlsbad, CA)を添加したF12K培地を入れた75 cm2フラスコ内で、80%コンフルエントまで増殖させた。形質導入を容易にする8μg/mLポリブレンにより、線維芽細胞に、10,000 TU/mLの最終濃度でpLentiV-CAG-HCN1-IRES-GFPを安定に形質導入した。HCN1-GFPを形質導入した線維芽細胞を、蛍光標識細胞分取(FACS)を用いて選択した。フローサイトメトリーは、Facstar(Becton Dickinson, Bedford, MA)を用いて実施し、CellQuest(Becton Dickinson, Bedford, MA)を用いて分析した。形質導入していないモルモット肺線維芽細胞を、非蛍光対照として用いた。緑色蛍光タンパク質(GFP)陽性細胞を、その蛍光強度が対照細胞の99.9%の蛍光を超える細胞として測定した(488/530 nm励起/発光)。
【0034】
HCN1-線維芽細胞のアデノウイルス形質導入およびモルモット心臓への細胞注入
lacZ遺伝子によってコードされる大腸菌β-ガラクトシダーゼを、アデノウイルスシャトルベクターpAd-Loxにサブクローニングし、7に記載されるようにCre-4/HEK293細胞内でCre-Lox組換えによりpAd-Lox-LacZを生成した。モルモットの心臓に注入する前に、6時間HCN1-線維芽細胞にAd-lacZを形質導入した。成熟メスモルモット(250〜300 g)を4%イソフルランで麻酔し、挿管して、1.5〜2%イソフルランを供給する気化器を備える換気装置上に配置した。典型的には、1×105HCN1-線維芽細胞の細胞をトリプシン処理(0.05%)し、100 mLの50%PEG 1500に再懸濁し、30G1/2針でモルモットの心臓の尖で心筋内に注入した。
【0035】
合成ペースメーカーイオンチャネルのアデノウイルス注入のため(セクション3)、3×1010 PFU Ad/S4TK1.4GYSまたは3×1010 PFU GFP(対照群)のウイルス溶液を、左心室に注入した。注入の48〜72時間後、標準的な技術8を用いて左心室の自由壁筋細胞を単離した。落射蛍光画像法を用いてそれらの鮮明な緑色蛍光により確認可能な形質導入した筋細胞の収量は、視覚的な評価によって判断すると約3〜5%であった。
【0036】
提示した作業は、実験動物のケアと使用に関するNIHガイドラインに従って実施し、ジョンズ-ホプキンズ大学の動物実験委員会のガイドラインに従って実施した。
【0037】
心電図
以前に記載されたように9、線維芽細胞注入後1〜6日の間(セクション1)またはアデノウイルス注入の72時間後(セクション3)、表面ECGをMP100(BIOPAC Systems. Goleta, CA)を用いて記録した。モルモットを1.8%イソフルランにより鎮静させた後、2 kHzで2-誘導デジタルECGシステム(誘導1および誘導3, BIOPAC Systems, Goleta, CA)を用いて、標準的な肢誘導IおよびIIIからECGを同時に記録した。Acqknowlege 3.7.3ソフトウェア(BIOPAC Systems, Goleta, CA)を用いてアイントーベンの三角により、誘導2をオフラインで算出した。生物学的ペースメーカーの注入部位に由来する異所的な心室拍動を解放するために(セクション1および3)、本発明者らは、メタコリンの腹膜注入(生理食塩水中で0.1〜0.5 mg/kg体重、Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を実施し、それにより心拍数を低下させた。
【0038】
細胞融合および色素添加
HCN1を安定して発現する線維芽細胞(HCN1-線維芽細胞)に、カルセイン-AM(2μL/mL 増殖培地;1 mmol/Lジメチルスルホキシドの原液;Molecular Probes, Eugene, OR)をロードし、サイトゾル蛍光マーカーを増加させた。染色後、細胞をトリプシン処理し、遠心分離し、白血球凝集素40μg/mL(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を添加した6 mL培地199に再懸濁した。筋細胞増殖培地を、0.5 mL/ウェルでこのHCN1-線維芽細胞懸濁液と交換した。コプレ―ティングの1時間後、筋細胞とHCN1-線維芽細胞を、H2O中、予熱した(37℃)40%ポリエチレングリコール1500(PEG)(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)で融合させた。PEGへの曝露の2〜4分後、細胞を高カリウム溶液(筋細胞単離後に用いた溶液と同じもの)で5〜10分間再水和し、次いで通常のタイロード溶液で洗浄した(以下を参照されたい)。
【0039】
電気生理学
Axopatch 200B増幅器(Axon instruments)により、20 kHzのサンプリングレートおよび5 kHzでの低域ベッセルフィルターで、標準的な微小電極ホールセルパッチクランプ技術(Hamill, O. P., Marty, A., Neher, E., Sakmann, B. & Sigworth, F. J. (1981) Pflugers Arch 391, 85-100)を用いて実験を行った。実験はすべて室温で行った。NaCl 138、KCl 5、CaCl2 2、グルコース10、MgCl2 0.5、およびHEPES 10(mmol/L);pH 7.4を含む通常のタイロード溶液で、細胞を洗浄した。マイクロピペット電極溶液は、K-グルタミン酸130、KCl 9、NaCl 8、MgCl2 0.5、HEPES 10、EGTA 2、およびMg-ATP 5(mmol/L);pH 7.2.から構成された。内部記録溶液で満たした場合、微小電極は2〜4 MΩの先端抵抗を有した。2.5秒のインターエピソード間隔で、電位-クランプ実験を実施した。活動電位は、対照(GFPのみ)筋細胞と融合した筋細胞上で短い脱分極電流パルス(2〜3 ms、500〜800 pA)によって開始されるか、またはHCN1-線維芽細胞と融合した筋細胞上でI=0モードで記録されるかのいずれかであった。測定された液間電位差(-18 mV)に関するデータを収集した(Neher, E. (1992) Methods Enzymol 207, 123-31)。キセノンアークランプを用いて、488/530 nm(励起/発光)でカルセインAM蛍光またはGFPを見た。
【0040】
X-gal染色および免疫組織化学
モルモットの心臓を切り取り、OCT(VWR Scientific, West Chester, PA)5μmスライスに凍結切断した。置き換えた切片を、免疫組織化学または5-ブロモ-4-クロロ-3-インドイルβ-D-ガラクトシド(X-gal)による染色のいずれかに用いた。切片を2%ホルムアルデヒド-0.2%グルタルアルデヒド中で15分間室温にて固定し、1.0 mg/ml X-gal、15 mMフェリシアン化カリウム、15 mMフェロシアン化カリウム、および1 mM MgCl2を含むPBS中で6時間37℃にて染色した。染色後、スライスをPBSで二回洗浄した。免疫組織化学のため、β-ガラクトシダーゼに対する200倍希釈したウサギポリクローナル(FITC結合、Abcam, Cambridge, MA)および400倍希釈したマウス心臓ミオシン重鎖(MHC, Abcam, Cambridge, MA)を一次抗体のために用い、AlexaFluor588抗マウス(200倍希釈、Invitrogen, Carlsbad, CA)を心臓MHCに対する二次抗体のために用いた。一次抗体および二次抗体とのインキュベーションの前に、PBS中10%ヤギ血清+0.01%TritonX-100で切片をブロックした。すべての抗体を2%ヤギ血清+0.01%TritonX-100中で希釈し、切片上で室温にて45分間インキュベートした。
【0041】
実施例2−細胞融合による生物学的ペースメーカーの作製
電気的ペースメーカーまたは遺伝子療法/幹細胞アプローチの代替の戦略として、本発明者らは、体細胞融合によって心室筋細胞をペースメーカーに変換することの可能性を探索した。このアイデアは、心室筋細胞と、ペースメーカーイオンチャネルであるHCN1を発現するように操作された同系の線維芽細胞との間で、化学的に誘導された融合体を作製することである。
【0042】
融合事象を検討するため、HCN1チャネルを安定に発現するモルモットの肺線維芽細胞(HCN1-線維芽細胞)を、単離した新鮮なモルモット心室筋細胞と、ポリエチレングリコール(PEG)を用いて融合した。3分間の脱水および再水和の間、カルセイン-AM蛍光の筋細胞への急激な導入により立証されるように、HCN1-線維芽細胞は心室筋細胞と融合した(図1A)。筋細胞/HCN1-線維芽細胞異核共存体の電流-クランプは、緩徐相4脱分極を伴い自発的な活動電位を示し(図1B)、これはペースメーカー電流Ifの発現を示唆した。自発的なペースメーカー活性は、GFPのみを発現する対照線維芽細胞と融合した筋細胞においては観察されなかった(図1C)。
【0043】
HCN1-線維芽細胞と形成される異核共存体の最大拡張期電位は、対照線維芽細胞と形成される異核共存体の静止膜電位(-80.5±2 mV、n=7)に対して、中程度に脱分極されるのみ(-76±9 mV、n=9)であった。IK1をブロックする1 mMの外部Ba2+によるその後の電位-クランプ法は、心室筋細胞のみ、または対照線維芽細胞と融合した筋細胞のいずれにおいても検出できなかった異種的に発現したペースメーカー電流Ifを示した。筋細胞とHCN1-線維芽細胞との間でインビボ融合により形成された単離した新鮮な異核共存体は、-770±7 pS/pF(n=9、図1D)のコンダクタンスを伴う強いペースメーカー電流を発現し、これは単離したウサギ洞房結節細胞において報告された2倍以上のIf密度であった(Honjo, H., Boyett, M. R., Kodama, I. & Toyama, J. (1996) J Physiol 496 (Pt 3), 795-808; van Ginneken, A. C. & Giles, W. (1991) J Physiol 434, 57-83)。異核共存体から発現されたIfは、-73.1±2.2 mVの最大半量の活性化の電位を伴う通常のHCN1活性化カイネティクスを示した。化学的に誘導したインビボ融合事象は、異核共存体の主要な興奮性イオン電流INaを改変しなかった(図1F;HCN1-線維芽細胞と融合した筋細胞について-40 mVで22.1±3 nA [n=9]、対してGFPのみの対照線維芽細胞について20.8±3 nA [n=7])。細胞融合は、電気容量の測定によって示すことができるパラメーターである細胞の表面総面積の増加を伴う。実際、GFP-陽性異核共存体は、GFP-陰性筋細胞よりも大きな膜電気容量を示し(それぞれ124±14 pF、n=9、および97±8 pF、n=15、p<0.05)、これはインビボ融合事象の概念を支持する。実際に、増加した細胞電気容量は過分極電流IK1の密度を20%希釈する。したがって、減少したIK1コンダクタンスと組み合わせた強いIfコンダクタンスは、異核共存体において自発的にペースを取るように作動させる。
【0044】
これらのデータを備えて、本発明者らは、50%PEGに懸濁したHCN1-線維芽細胞を、モルモット心臓の尖に限局的に注入した。HCN1-線維芽細胞を注入した部位から心室筋細胞をランゲンドルフ単離することにより、漸進的な4相脱分極を伴う自発的なペースメーカー活性を示したGFP陽性筋細胞が明らかとなった(図1D)。実際、IK1をブロックする2 mMの外部Ba2+によるその後の電位-クランプ法は、心室筋細胞のみ、またはGFPのみを発現する対照線維芽細胞と融合した筋細胞のいずれにおいても検出できなかった異種的に発現したIfを示した(図1E)。
【0045】
インビボ融合により生成される異所的なペースメーカー活性を検討するために、メタコリン注入によりモルモットの心拍数を低下させた。HCN1-線維芽細胞注入後1〜16日に記録された心電図により、同じ動物において尖の二極性ペースマッピングの間に記録されたものと、極性において同一であり、かつ形態が類似している異所的心室拍動が明らかになった(図2A、13のうちn=5)。場合によって、接合部補充調律(水平の矢印)を、異所的心室ペースメーカー活性が上回る(図2B)。これらの異所的拍動は、GFPのみを発現する対照線維芽細胞を注入した動物においては観察されなかった(データ示さず、n=4)。
【0046】
インビボ融合事象を調査するために、lacZ遺伝子によってコードされるβ-ガラクトシダーゼを発現するアデノウイルス(Ad-lacZ)を、HCN1-線維芽細胞に形質導入した。細胞注入部位での心臓切片のX-gal染色は、筋細胞との融合を受けていないHCN1-線維芽細胞内と同様に、筋細胞とHCN1-線維芽細胞との境界での長軸方向心室筋細胞内のβ-ガラクトシダーゼの存在を明らかにした(図3A)。心筋細胞上に共局在化する2つのタンパク質、β-ガラクトシダーゼとミオシン重鎖(MHC)に対する免疫組織化学は(図3B〜図3E)、細胞融合の際、HCN1-線維芽細胞の細胞質由来のβ-ガラクトシダーゼが、心筋細胞の細胞質に混合されたことを示唆する。
【0047】
HCN1-線維芽細胞由来のIfが、線維芽細胞と筋細胞の間の細胞-細胞連絡により心筋細胞へと取り次がれることが推測できる。細胞-細胞カップリングの可能性を検討するために、HCN1-線維芽細胞の集合に、膜不浸透性色素であるカルセイン-AMをロードし、ロードしていないHCN1-線維芽細胞と混合した。色素は、ロードしたHCN1-線維芽細胞から隣接するHCN1-線維芽細胞に拡散せず、これはこれらの線維芽細胞において細胞-細胞カップリングメカニズムがないことを示した(データ示さず)。これらのデータは、Ifによって指示されるペースメーカー活性が、筋細胞と線維芽細胞との間の電気緊張性カップリングより、むしろ独占的に筋細胞とHCN1-線維芽細胞との間で融合された異核共存体から生成された可能性が高いことを示唆した。総合すれば、これらのデータは、心室筋細胞とHCN1-線維芽細胞との間の化学的に誘導された細胞融合による異核共存体から生じる生物学的ペースメーカー活性に対する強力な証拠を提供する。
【0048】
マウスおよびヒトハイブリドーマ10を作製し、真核生物の細胞-細胞融合事象11を研究し、一過性外向きK+電流をモルモットの心室筋細胞に迅速に導入し、それによってモルモットの活動電位プロファル2を改変するために用いるモデルシステムとして、PEG誘導性膜融合事象が役立ってきた。本明細書において、PEG誘導性細胞融合の際、モルモットの心室筋細胞において4相脱分極を与えるために、本発明者らは、ドナー細胞としてHCN1チャネルを発現する同系の線維芽細胞を用いた。融合を誘導した生物学的ペースメーカーは、早ければ注入後1日で機能的となり、少なくとも2週間以上は安定であった。以前の研究により、融合を誘導した異核共存体は、各融合パートナー由来の核を少なくとも数ヶ月以上は個別に安定して維持することができることが示唆される12〜15。本発明者らのアプローチは、通常不活性な化学物質であるPEGによって誘導されるこれらの異核共存体ペースメーカーの即効性および安定性を十分に活かしている。さらに、以前の生物学的ペースメーカー16とは異なり、本アプローチは、細胞-細胞カップリングに依存せず、自己の非ウイルス性成熟細胞療法によって実行することができる。
【0049】
実施例3−非興奮性細胞の自給式生物学的ペースメーカーへの変換
洞房結節のペースメーカー細胞において、電位および時間依存性膜イオン電流は、自発的な活動電位(AP)を生成する。本発明者らは、特定のイオンチャネルの最小補体の異種発現によって、非興奮性細胞をペースメーカーへと変換することができると仮定した。この目的のために、HEK293細胞を遺伝子操作して、以下のイオン電流を発現させた:1)興奮性電流、2)初期再分極電流、および3)内向き整流電流。その遅いゲート開閉カイネティクスおよびその小型cDNAのため、細菌由来のNa+チャネル(NaChBac)17(図4A、左)を興奮性電流について選択し、活性化してNaChBacの脱分極効果に対向する再分極電流についてヒトether-a-go-go関連遺伝子チャネル(hERG)18(図4A、中央)を選択し、拡張期陰電位を支持するためにKir2.119(図4A、右)を選択した。
【0050】
室温での電流クランプ法において、短時間の脱分極電流による刺激の際(0.3〜0.7 nA)、活動電位は3つのイオンチャネルすべてを発現するHEK細胞(n=5/31)から生成され得た(図4B)。最大拡張期電位(MDP)は、575±33 msの90%再分極(APD90)値で、AP持続期間を伴い-78±7 mVであった(n=5)。Luo-Rudyモルモット式に基づく数学的モデリングは、IK1、INa、およびItoに加えてIfの添加が、筋細胞を自発的に拍動させ得ることを示唆した20。これらのデータを備えて、HCN1がさらに共発現され、過分極活性化脱分極電流であるIfを提供した。四重トランスフェクトしたHEK細胞からのホールセル記録により、心室筋細胞のAP形態に類似するが、自然な心臓ペースメーカー細胞の特徴である緩徐相4脱分極を伴う自発的APが明らかとなった(図5A)。自発的なAPは、-81.5 + 11.8 mVのMDP、21.6±8.6 V/sの最大立ち上がり速度(dV/dtmax)、660±189 msのAPD90、および3±1 bpmの周波数を示した(n=4)。
【0051】
単一プラスミド内に必要なチャネル遺伝子すべてを包含させるため、HCN1、NaChBac、Kir2.1-GFPを、IRES介してタンデムにサブクローニングし、三重遺伝子構築物を得た。このアイデアは、HEK293細胞内で自発的に振動する活動電位を生成できる単一プラスミドを作製することであった。大半のHEK293細胞が、INaの脱分極効果に対向し得る内因性外向きK+電流を発現することを認識した後は(データ示さず)、hERGチャネルを省略した。予想通り、三重遺伝子をトランスフェクトしたHEK293細胞のいくつかの電流クランプ法は、自発的に振動する活動電位を示した(図5B)。総合すれば、本データは、ペーシングのために必須で十分なイオンチャネルのセットを決定し、非興奮性ヒト細胞内の最初の自給式生物学的ペースメーカーの作製を実証する。
【0052】
実施例4−合成ペースメーカーチャネル
ペースメーカーの活性とは、ゲート開閉と浸透特性が組み合わさって安定な振動を生成する脱分極電流と再分極電流間のバランスの産物である。結節性ペースメーカーの一つの重要な要素は、HCNチャネル遺伝子ファミリーによってコードされるペースメーカー電流である。HCNチャネル遺伝子導入を用いて生物学的ペースメーカーを設計する21一方、標的細胞における複数の内因性HCNファミリーメンバーとのヘテロ多量体化の予測不可能な結果により、この戦略が混乱する可能性がある22、23。さらに、野生型チャネルの使用は、設計されたペースメーカーの周波数同調に関して可動性が低い。本明細書において、<2%のコード配列に関わる選択的変異誘発によって、本発明者らは、脱分極活性化K+選択チャネルであるKv1.4を、過分極活性化内向き電流へ変換した。
【0053】
生理的条件で過分極活性化内向き電流を発現するS4TKv1.4GYS
本発明者らはまず、チャネルを過分極活性化型にするため、Kv1.4のゲート開閉を改変しようと努めた。以前の報告24に基づき、本発明者らは、生理的条件でKv1.4チャネル内に、過分極活性化内向き電流を発現するチャネル(HCNチャネルと同様に)を設計した。Kv1.4バックボーン内で、本発明者らは、三点変異(R447N、L448A、およびR453I)をS4セグメントに導入し、単一変異(G528S)を孔に導入した(図1)(Heginbotham L, M. R. (1993) Biophys J. 65, 2089-96.; Miller AG, A. R. (1996) Neuron 16, 853-8)。S4領域内の三重変異、R447N、L448A、およびR453I(S4TKv1.4)は、HEK293細胞内で発現した場合(図7B)、高K+外部溶液中で過分極活性化内向き電流を示したが、その逆転電位は-80mVのままであった(データ示さず)。電位活性化を正にシフトさせるために、本発明者らはさらに、K+チャネルにおけるイオン選択性に対する以前の研究25に基づき、孔領域を変異させ、チャネルをNa+対K+について非選択的にした。Kv1.4チャネル孔の選択性フィルターにおいて残基を変異させることにより(G528S)、Kv1.4GYS変異チャネルは、負の電位範囲内でわずかな内向き電流を伴う脱分極活性化低外向き電流(野生型Kv1.4の約10分の1)を発現した(図7C)。Kv1.4チャネル内でS4三重変異と孔変異を組み合わせることにより、生理的条件下でS4TKv1.4GYSチャネルは過分極活性化内向き電流を発現した(図7D)。-130mVでのS4TKv1.4GYSの平均電流密度は、-30.3 pA/pF mVであった(n=10)。テール電流電位の関連性は、逆転電位が約0 mVであり、非活性化は-100 mVで非常に弱く、大半は存在しないことを示した(図8AおよびB)。総合すれば、S4TKv1.4GYSチャネルは、-80mVより負の電位で不活性化も非常に弱い非活性化も伴わず、生理的条件下で大きな過分極活性化内向き電流を発現する。本発明者らはさらに、外部溶液として高カリウム(K;130mM、Na;10mM)、等しい濃度のナトリウムおよびカリウム(Na;70mM、K;70mM)、ならびにバリウムを含む通常のタイロード溶液(Na;135mM、K;5mM、Ba;5uM)を用いて、外漕溶液がどのようにS4TKv1.4GYS電流に影響し得るのかを調査した。高カリウム溶液中では(図8C-a)、通常の対照タイロード溶液(データ示さず、図7D、Eを参照)と比較して最大電流密度は劇的に低下し、一方バリウムを含む通常のタイロード溶液中では最大電流密度はほとんど影響されなかった(図8C-c)。等しい濃度のナトリウムとカリウム(図8C-b)中でも同様に、それは60%低下した。これらの結果により、S4TKv1.4GYSがナトリウムの高い透過性を有する非選択チャネルであり、その電流はバリウムに感受性ではないことが確認された。カリウム/ナトリウム透過性割合(PNa/PK)をGoldman-Hodgkin式により算出すると、1.08であった(n=5)。Kv1.4チャネルがHCNチャネルとヘテロ多量体を形成しない23という事実を踏まえて、これらのS4TKv1.4GYSチャネルは、HCNチャネルの不在下でも合成ペースメーカーイオンチャネルとして機能し得る。
【0054】
アデノ/S4TKv1.4GYSを形質導入した単離筋細胞内で検出可能な活動電位振動
本発明者らは、アデノ/S4TKv1.4GYS注入の72時間後にモルモット筋細胞を単離し、GFP陽性細胞をパッチした。注入した動物由来の対照細胞内に、わずかに測定可能なペースメーカー電流があった(図9A)。対照的に、本発明者らは、S4TKv1.4GYSチャネルの過分極活性化内向き電流を検出したが(図9B)、外部バリウムはこの電流の表現型を部分的に改変する可能性があった。この条件下で、-80mVまたは-160mVでの平均電流密度はそれぞれ-7.2 pA/pFまたは-59.7 pA/pF mVであった(各々n=6)。本発明者らはまた、対照GFP陰性細胞(n=13)およびGFP陽性細胞(n=14)の活動電位(AP)を検討した。惹起された活動電位持続期間に有意差はなかった(306.2ms:対照、303.2ms:GFP陽性)。対照細胞は、自発的AP振動を全く示さなかった一方、GFP陽性細胞の半分は、自発的AP振動(図9C)を示したが、この振動は短時間しか継続しなかった(通常10秒未満)。時折、本発明者らはまた、APの速いリズム(平均速度は200 bpm以上であった、図9D)を検出し、これは新生児の心筋細胞由来のAP振動に類似していた。静止膜電位は、AP振動群(n=7)と非AP振動群(n=20)との間で異なった(-61.4±3.4 mV対-73.6±7.6 mV)。
【0055】
アデノ/S4TKv1.4GYS処理モルモットにおける持続性心室拍動を示すECG
心電図(ECG)を、ウイルス注入後48〜72時間で実施した。材料および方法の項目で記載したように、本発明者らは、メタコリン(0.1〜0.5 mg/g)を腹腔内注入して徐脈を誘導した。本発明者らは、HEK293細胞内でメタコリンがS4TKv1.4GYS電流に影響しないことを確認した(データ示さず)。メタコリン注入後約5分で、洞調律(150 bpm)が変化し、徐脈を伴う完全なAVブロック(<100 bpm)となり、次いで最終的に徐脈性接合部補充調律となった(<75 bpm)。対照動物(Ad-GFP、n=5)は心室からの異所的拍動を示さず、一方Ad/S4TKv1.4GYSウイルスを注入した動物(n=6)は、徐脈相において自発的な心室拍動を示した(対照に対してP<0.05)。代表的な実験(図10A)において、手持ち式電極によるLV自由壁のマッピングは、徐脈性接合部補充調律の間、ウイルス注入部位からの持続性心室拍動(150bpm)を実証した。ECGのマッピング(図10B-c)は、心室拍動(図10-a)と同一ではなかったが、各3つの誘導の極性は、Ad/S4TKv1.4GYSウイルス注入心臓からの異所的心室拍動と同じであり、これは電極が正確に心室拍動の焦点上ではないが、焦点周辺帯に配置されたことを示す。
【0056】
HCN遺伝子ファミリーと多量体を形成しないSPC
野生型Kv1.4はHCN遺伝子ファミリーと多量体を形成しないことが以前に報告されている(Xue, T., Marban, E. & Li, R. A. (2002) Circ Res 90, 1267-1273)。SPCのインビボでの使用の前に、本発明者らは、HEK細胞への同時トランスフェクションおよび逆転電位の分析により、SPCがHCN1と多量体を形成できないことを検証した。単独で発現するWtHCN1(図3(A)-a、左)は、-36.1±1.4mVで逆転し、一方SPCと同時トランスフェクトしたHCNは、-22.0±8.0mVの逆転電位を示した(それぞれn=5、テール電流は示さず)。HCN1ホモ多量体をブロックするCsによる灌流は、-11.1±2.3mVで逆転する電流を残し、これはSPCのみの逆転電位から識別不能である。薬理的分離除去は、任意の機能性SPC-HCNヘテロ多量体が存在しないことを示唆する。本発明者らはまた、成熟モルモット筋細胞においてSPC発現が本来のナトリウム、カリウム、またはカルシウム電流に影響し得る可能性を除外した(データ示さず)。
【0057】
インビボでのSPCペースメーカー能力
次に、成熟心室におけるそのペースメーカー能力を試験するために、本発明者らは、2シストロン性(GFPタグ付加)SPCアデノウイルス(AdSPC)を作製し、それをモルモット心臓に注入した。ウイルス注入の72時間後、AdSPCを形質導入した単離心室筋細胞を、ホールセル電位クランプにより検討した。注入した動物由来の対照細胞内に、わずかに測定可能なペースメーカー電流があった(データ示さず)。対照的に、本発明者らは、AdSPC形質導入筋細胞内で過分極活性化内向き電流を検出した。-80mVまたは-160mVでの平均電流密度はそれぞれ、-7.2±1.3 pA/pFまたは-59.7±5.5 pA/pF mVに相当した(各々n=5、図3B-b)。本発明者らはまた、対照細胞(n=13)およびSPC形質導入細胞(n=14)における活動電位(AP)を検討した。対照細胞は自発的AP振動(SAPO)を全く示さなかったが、SPC形質導入細胞の半分(14のうち7)はSAPOを示した。本明細書に示す実験において本発明者らは、それぞれ53.6±2.5mVと10.4mV/sの最大拡張期電位(MDP)と相4勾配を伴う迅速なSAPO(平均速度>200 bpm)を検出した。惹起されたAP持続期間に有意差はなかった(306.2±12.5ms:対照、303.2±10.9ms:AdSPC形質導入細胞)。これらの結果から、本発明者らは、SPCがモルモット筋細胞内でペースメーカー活性を誘導することができると結論づけた。
【0058】
インビボでペースメーカー活性を誘導するSPCの能力を確認するために、AdSPC注入の72時間後に心電図(ECG)を実施した。ECG記録の間、メタコリン(0.1〜0.5 mg/g)を腹腔内注入により投与して徐脈を誘導した。対照動物(AdGFP、n=6)は異所的心室拍動を示さなかったが、一方AdSPCを注入した動物(n=6)において頻繁な単形性心室固有拍動が検出された。代表的な実験において、ペースマッピングによるECGは、注入部位(LV自由壁)から起こる心室固有のリズム(150bpm)を実証した。これらの結果は直接、SPCがインビボでペースメーカーとして機能するということを実証した。
【0059】
SPCの周波数同調に対する可動性
心臓の他の領域へ送達されるアデノウイルス-HCN2による以前の研究とは異なり(Qu, J., Plotnikov, A. N., Danilo, P., Jr, Shlapakova, I., Cohen, I. S., Robinson, R. B. & Rosen, M. R. (2003) Circulation 107, 1106-1109.; Plotnikov, A. N., Sosunov, E. A., Qu, J., Shlapakova, I. N., Anyukhovsky, E. P., Liu, L., Janse, M. J., Brink, P. R., Cohen, I. S., Robinson, R. B., Danilo, P., Jr & Rosen, M. R. (2004) Circulation 109, 506-512)、本発明者らは、心室筋内でSPCによるバイオペースメーカー活性を誘導した。代替のアプローチは、心室への遺伝子送達のための基盤として間葉幹細胞を用いることであった(Potapova, I., Plotnikov, A., Lu, Z., Danilo, P., Jr, Valiunas, V., Qu, J., Doronin, S., Zuckerman, J., Shlapakova, I. N., Gao, J., Pan, Z., Herron, A. J., Robinson, R. B., Brink, P. R., Rosen, M. R. & Cohen, I. S. (2004) Circ Res 94, 952-959)。そのような細胞は十分に心臓細胞に分化せず(しかしそれらは、骨、軟骨、または脂肪組織に分化することができる(Deans RJ, M. A. (2000) Exp Hematol 28, 875-84))、それらの経時的な持続性は実証されていない。SPCの直接遺伝子導入は、これらの潜在的な複雑性および不確定度の多くを回避する(確かにその他は導入するが)。SPCの別の潜在的な利点は、合成ペースメーカー戦略の周波数同調に対するその可動性である。本発明者らは、3つのパターンのS4変異と5種の孔変異を調査し、S4変異と孔変異の合計15の可能な組み合わせを得た。これらの他の変異のいくつかは同様に、生理的条件下で過分極活性化内向き電流を発現した。例えば、S4三重変異と別の孔変異との組み合わせ(V525S, VGYG→SGYG)は、HEK細胞内で-25 mVの膜逆転電位を伴い、-100 mVで-6.1 pA/pFの電流密度を有する。本発明者らはまた、インビボでそれを試験し、短期間で遅い心室固有リズム(55 bpm)を検出した。これらの結果は、特定の変異がインビボで特定の心拍数を支持し得ることを示した。様々なS4変異を孔変異と組み合わせることにより、本発明者らは合成ペースメーカーのための幅広い候補を用意し、治療目的、すなわち任意の所与の望ましい基本心拍数でのペーシングを達成するのに最も適したものを選択した。
【0060】
要約すると、ヒトKv1.4チャネル内のS4および孔の選択的変異により、本発明者らは新規のペースメーカーチャネルを作製することに成功した。このチャネルは、生理的条件下で定常の活性化を伴う過分極活性化内向き電流を示した。SPCの遺伝子導入は、モルモットの成熟心室筋内でペースメーカー活性を誘導し、ECGにおいて心室固有リズムを産生した。ヒトの心室内でのKv1ファミリーチャネルの低密度発現(Mays DJ, F. J., Philipson LH, Tamkun MM (1995) J Clin Invest 96, 282-92)および振動の周波数を任意の所与の望ましい速度範囲に同調する能力を鑑みて、Kv1ファミリーに基づく合成ペースメーカーチャネルは、バイオペースメーカーの作製のための新規治療的ツールになる可能性を有する。
【0061】
総合すれば、上記の知見は、ヒト心筋内でS4TK1.4GYSチャネルが合成ペースメーカー電流を提供し得ることを示唆する。ヒト心室内でKv1ファミリーチャネルは低密度に発現している26ことから、本発明者らは、合成ペースメーカーを標的組織に遺伝子導入することは、内因性サブユニットとの多量体化による複雑化を比較的受けないないであろうと予測した。さらに、得られたペースメーカーの周波数は、特定のS4変異を望ましい比率範囲に合わせることにより同調させることができた。
【0062】
参考文献
引用されている各参考文献の開示は、本明細書に明白に組み込まれる。



【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1A:モルモット左心室筋細胞と線維芽細胞とのインビトロ融合の証拠を示す(黒矢印)。PEGによる融合の前に、線維芽細胞にカルセイン-AMをロードした。再水化の際に線維芽細胞から筋細胞へ急激に色素が導入されることにより、融合事象が証明された。コントラストを強調するため、色素は緑色のバックグラウンド内にオレンジ色(仮の呈色)で表した。図1B:HCN-1チャネルを発現する線維芽細胞と融合された心筋細胞から記録された自発的振動活動電位を示す。図1C:GFPのみを発現する対照線維芽細胞を融合したモルモット由来の代表的な活動電位を示す。図1D:インビボ注入後のHCN1-線維芽細胞と融合した単離筋細胞から記録された自発的活動電位を示す。(水平のバー:100 ms、垂直のバー:20 mV)。図1E:1 mM BaCl2中での洗浄後、パネルDの融合された筋細胞から記録されたHCN1電流を示す。
【図2】HCN1-線維芽細胞の細胞を注入したモルモットの心臓からの心電図を示す。図2A:HCN1-線維芽細胞注入部位における1 Hzでの二極性ペーシングは、HCN1-線維芽細胞注入の1日後にモルモット心臓によって生成される異所的心室拍動(斜めの矢印)と極性および形態において同じである心室拍動を生成した。図2B:いくつかの場合には、接合部補充調律(水平の矢印)を、異所的心室拍動が上回る(斜めの矢印、細胞注入の16日後)。
【図3】モルモットの心筋とHCN1-線維芽細胞との間のインビボ融合の証拠を示す。図3A1-2:モルモットの筋細胞-線維芽細胞融合に対するインビボでの証拠を示す。HCN1-線維芽細胞にAd-lacZを形質導入し、50%PEG1500中でモルモットの心臓の尖に注入した。モルモットの心臓の尖由来の切片のX-gal染色は、HCN1-線維芽細胞(丸い青色の細胞)と心筋との境界で、長軸方向の心筋細胞(矢印)の青色(X-gal)染色を明らかにする。図3B1〜図3B4:β-ガラクトシダーゼ(緑色、図3B1)およびミオシン重鎖(赤色、図3B2)に対する一次抗体による免疫組織化学を示す。Ad-lacZを形質導入したHCN1-線維芽細胞(図3B-4で明相円形細胞のクラスターとして示される)と同様に、合成した画像(図3B-3)は、隣接する筋細胞内のβ-ガラクトシダーゼ(緑色)の発現(白のハイライト、点線の円)を示す。
【図4】HEK293細胞由来の代表的な生トレースを示す。図4A:NaChBac(左)、hERG(中央)、またはKir2.1(右)のいずれかをトランスフェクトしたHEK293細胞由来の電位クランプ法を示す。点線は0の電流レベルを示す。図4B:電流クランプ法の間の3つの異なる細胞由来の活動電位を示す。各細胞は、NaChBac、hERG、およびKir2.1の3つのチャネルすべてを発現する。点線は0mVの電位を示す。
【図5】発現するHEK293細胞由来の自発的活動電位を示す。図5A:NaChBac、HCN1、HERG、Kir2.1(3:3:1:1、モル比)をトランスフェクトしたHEK293細胞由来の自発的活動電位を示す。図5B:NaChBac、HCN1、およびKir2.1を発現する単一プラスミドをトランスフェクトした細胞から記録した自発的活動電位を示す。
【図6】ヒトKv1.4変異の設計を示す。ヒトKv1.4チャネルを「HCN様」ペースメーカーチャネルに変換するために、本発明者らは、電位センサーとしてS4領域に、およびイオン選択性の決定因子として周辺の選択性フィルター領域(GYG)に焦点を当てた。本発明者らは、S4三重変異(R447N、L448A、およびR453I)が、チャネルのゲート開閉を、脱分極活性化外向き電流から過分極活性化内向き電流へと改変し、チャネルの孔変異(G528S)が、イオン選択性を、電位活性化の正へのシフトを誘導するNa+対K+に対して非選択的にすると推測した。
【図7】高K+外部溶液におけるヒトKv1.4野生型および異なる変異の電流のトレースである。図7A:野生型チャネルは、内向き電流を伴わずに大規模な脱分極活性化外向き電流を示した。図7B:S4三重変異(S4TKv1.4)は、高カリウム溶液中でかなりの過分極活性化内向き電流を発現したが、一方通常のタイロード溶液中では内向き電流をほとんど発現しなかった(データ示さず)。図7C:孔変異において(Kv1.4GYS)、電流の大きさは野生型と比較して減少し、その逆転電位は-80mV(野生型)から0 mVに変化した(データ示さず)。図7D:S4三重変異+孔変異(S4TKv1.4GYS)は、生理的条件下で過分極活性化内向き電流を示した。この電流は-100mVから時間依存性因子を示した。
【図8】S4TKv1.4GYSのテール電流を示す。図8A:このチャネルは、-80mVよりも負の電位で、非常に弱い非活性化を示した。図8B:通常のタイロード溶液では逆転電位は+5 mVであった。図8C:高カリウム(図8C-a)または等しい濃度のナトリウムとカリウム外部溶液(図8C-b)において、-150mVでのピーク電流は、通常のタイロード溶液の場合と比較して、それぞれ90%または60%減少した。バリウムは電流の時間依存性の増加を抑制する可能性が高かったが、バリウム感受性電流を完全に減少させることから(例えばIK1)、バリウムはピーク電流に大きく影響しなかった(図8C-c)。
【図9】単離した筋細胞の自発的活性に対するアデノ/S4TKv1.4GYSの効果を示す。-40mVの保持電位で、単離した対照筋細胞(図9A)は測定可能な電流を発現しなかったが、一方S4TKv1.4GYS形質導入筋細胞(図9B)は過分極活性化内向き電流を示した。この条件において、平均電流密度は-80mVで-7.2 pA/pFであった。自発的活動電位(AP)振動は、短い脱分極電流パルスにより引き起こされた第一のAP後に生成され得た(図9C)。迅速な自発的AP振動を示す生トレースである(図9D)。
【図10】ECG誘導II、I、IIIを示す。持続性心室拍動の概要を示す(図10A)。矢印は持続性心室拍動の開始および停止を示す。断続線の四角で示したECG(図10A)の高い振幅の同じECG(図10B-a)。接合部拍動(図10B-b)。手持ち式電極によるLV自由壁のマッピングである(図10B-c)。矢印はペーシングのアーチファクトを示す(150 bpm)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、両方の親細胞由来の電気特性を有する異核共存体を作製する方法:
外因性体細胞および膜融合(fusogen)試薬を哺乳動物内の部位に注入する段階であって、外因性体細胞がイオンチャネルを発現し、かつ内因性体細胞と融合し、それによってその両方の親由来の電気特性を有する異核共存体が形成される、注入段階。
【請求項2】
部位が心臓内にある、請求項1記載の方法。
【請求項3】
内因性細胞がイオンチャネルを発現しない、請求項1記載の方法。
【請求項4】
イオンチャネルがカルシウムチャネルである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
イオンチャネルが、過分極活性化サイクリックヌクレオチドゲート(HCN)イオンチャネル1(HCN1)である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
外因性体細胞が、該細胞に対して外因性でありイオンチャネルをコードする核酸配列を発現する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
内因性細胞が心室筋細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
膜融合物質(fusogen)がポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
PEGが500〜2000の分子量を有する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
PEGが1250〜1750の分子量を有する、請求項8記載の方法。
【請求項11】
哺乳動物において異核共存体内のイオンチャネルの活性を検出する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
注入部位が哺乳動物の心臓であり、膜融合物質がポリエチレングリコール(PEG)であり、かつ外因性体細胞がSEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:5に示す過分極活性化サイクリックヌクレオチドゲート(HCN)イオンチャネル1(HCN1)を発現する同系または自己の線維芽細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
外因性体細胞が、HCN1を発現する非ウイルス性プラスミドDNA構築物を安定にトランスフェクトされた線維芽細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
外因性体細胞が、HCN1を発現するウイルスを安定に形質導入された線維芽細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
注入段階の前に外因性細胞をトリプシン処理する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
内因性体細胞が神経細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
以下の段階を含む、生物学的ペースメーカーを作製する方法:
筋細胞、ポリエチレングリコール(PEG)、およびSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5に示す過分極活性化サイクリックヌクレオチドゲート(HCN)イオンチャネル1(HCN1)を発現する同系または自己の線維芽細胞を混合する段階であって、それによって筋細胞と線維芽細胞を融合させる、混合段階。
【請求項18】
混合の前に線維芽細胞をトリプシン処理する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
PEGが500〜2000の分子量を有する、請求項17記載の方法。
【請求項20】
PEGが1250〜1750の分子量を有する、請求項17記載の方法。
【請求項21】
混合をインビトロで実施する、請求項17記載の方法。
【請求項22】
混合をインビボで実施する、請求項17記載の方法。
【請求項23】
以下の段階を含む、生物学的ペースメーカーを作製する方法:
細胞膜を脱分極させる第一のタンパク質、細胞膜を再分極させる第二のタンパク質、および細胞を自発的かつ反復して興奮させる第三のタンパク質をコードする1つまたは複数の核酸分子を非興奮性哺乳動物細胞にトランスフェクトする段階であって、それによって哺乳動物細胞が自発的に振動する活動電位を示す、トランスフェクション段階。
【請求項24】
第一のタンパク質が、電位依存性ナトリウムチャネル、電位依存性カルシウムチャネル、およびリガンド開口型陽イオンチャネルからなる群より選択され、第二のタンパク質が、カリウムチャネルおよびクロライドチャネルからなる群より選択され、第三のタンパク質が、HCNファミリーメンバーからなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
1つまたは複数の核酸分子が1つまたは複数のプラスミドである、請求項23記載の方法。
【請求項26】
哺乳動物細胞がヒト胚性腎細胞である、請求項23記載の方法。
【請求項27】
3つのイオンチャネルの各々に対するコード配列を含むプラスミドであって、3つのイオンチャネルが、HCN1(SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5)、NaChBac(SEQ ID NO:2)、およびKir2.1(SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:6)である、プラスミド。
【請求項28】
過分極の際に活性化し、一価陽イオンに非選択的である、非天然の電位依存性K+チャネルタンパク質。
【請求項29】
請求項28記載のチャネルタンパク質をコードする核酸。
【請求項30】
請求項29記載の核酸を含む核酸ベクター。
【請求項31】
ウイルスベクターである、請求項30記載の核酸ベクター。
【請求項32】
ウイルスを哺乳動物に注入する段階を含む、請求項31記載の核酸ベクターを投与する方法。
【請求項33】
SEQ ID NO:4に記載のKv1.4タンパク質の野生型配列に対する4つの変異を含む過分極活性化内向き電流チャネルタンパク質であって、4つの変異がR447N、L448A、R453I、およびG528Sである、過分極活性化内向き電流チャネルタンパク質。
【請求項34】
請求項33記載の過分極活性化内向き電流チャネルタンパク質をコードする核酸。
【請求項35】
請求項34記載の核酸を含む核酸ベクター。
【請求項36】
ウイルスベクターである、請求項35記載の核酸ベクター。
【請求項37】
ウイルスを哺乳動物の心臓に注入する段階を含む、請求項36記載の核酸ベクターを投与する方法。
【請求項38】
ウイルスを哺乳動物心臓の心房に注入する、請求項37記載の方法。
【請求項39】
ウイルスを哺乳動物心臓の左心室に注入する、請求項37記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−511064(P2009−511064A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535747(P2008−535747)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/040228
【国際公開番号】WO2007/047522
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(506321481)ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティー (9)
【Fターム(参考)】