説明

生物活性薬の封入

本発明は、ナノ粒子などの微粒子担体中に、タンパク質などの生物活性薬を封入する方法提供する。またかかる方法によって得られた微粒子担体を含む組成物、および治療におけるかかる組成物の使用も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子などの微粒子担体中に、タンパク質などの生物活性薬を封入する方法提供する。またかかる方法によって得られた微粒子担体を含む組成物、および治療におけるかかる組成物の使用も提供する。
【背景技術】
【0002】
いくつもの薬物は脳内または眼内の標的において活性を有し、これらがその標的に到達するためには血液脳関門などの生物学的関門を通過しなければならない。いくつかの分子は生物学的関門を横切ることができる一方、他の分子はこれらの関門を効率的にまたは事実上全く通過しない。多くの薬物はまた、直接標的組織中に投与されたときにのみ有効であって、もしこの標的組織に到達できなければその薬物は作用することができない。それ故に、多くの潜在的に効力を持つ薬物はかかる生物学的関門を通過する能力がないために臨床的に無用になる。
【0003】
これらの生物学的関門を通って薬物貫入を増加するいくつもの手法が当技術分野では記載されている。
【0004】
1つの手法は関門それ自体の機能を改変することであった。例えば、浸透剤またはコリン様アレコリンは血液脳関門を開放するかまたは透過性の変化をもたらす(Saija A et al、J Pharm. Pha. 42:135-138 (1990))。
【0005】
他の手法は薬物分子自体の改変を行う。例えば、血液脳関門の通過を企てるタンパク質の改変には、かかるタンパク質の糖化、あるいはプロドラッグの形成が挙げられる(WO/2006/029845)。
【0006】
さらに他の手法は制御放出ポリマーの移植であって、この手法は活性成分をマトリックス系から神経組織中に直接放出する。しかし、この手法は侵襲性であり、もし脳または脊髄中に直接移植するのであれば外科介入を必要として(Sableら、米国特許第4,833,666号)患者コンプライアンスの問題があり、通常非常に速やかに排出される投与薬による脳内の局所送達にだけ行われることが多い(WO/2006/029845)。
【0007】
これらの制限を克服するために薬物担体系が使用されている、しかし、標的化薬物送達における主な問題は、肝臓および脾臓における細網内皮系(RES)による、とりわけマクロファージによる速やかなオプソニン化と注入された担体の取込みである。
【0008】
それ故に、タンパク質などの巨大分子を脳および眼に送達する効率的かつ効果的な手法に対するニーズが存続している。特に、巨大分子の血液脳関門を横切る送達の方法であって、脳中に進入して活性を保持し得て、かつ所望の放出動力学も提供してタンパク質安定性と活性を維持し、そしてクリアランス機構を避けることができる前記方法を見出すことが所望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO/2006/029845
【特許文献2】米国特許第4,833,666号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Saija A et al、J Pharm. Pha. 42:135-138 (1990)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様においては、生物活性薬を微粒子担体に封入する方法、例えばタンパク質および/またはペプチドをナノ粒子中に、または、中におよび上に、または、によって封入する方法、ならびにタンパク質および/またはペプチドを、ナノ粒子中に、または、中におよび上に、または、によって封入することにより血液脳関門を横切って送達する方法、ならびにタンパク質および/またはペプチドを、微粒子担体中に、または、中におよび上に、または、によって封入することにより眼に送達する方法を提供する。
【0012】
本発明の他の実施形態においては、粒子形成物質およびタンパク質および/またはペプチドなどの生物活性薬を含む微粒子担体であって、タンパク質またはペプチドを血液から脳へ血液脳関門を横切って送達するかまたは眼へ送達するための前記微粒子担体を提供する。本発明の他の実施形態においては、ナノ粒子の組成物ならびに中枢神経系および/または眼の障害または疾患を治療する上でのそれらの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1a】動的光散乱(DLS)によりナノ粒子製剤に対して得た粒度分布測定データであり、懸濁液中で中空法を介して調製したナノ粒子の存在を示す。図1(a)は動的光散乱によるナノ粒子懸濁液の分析によって得たコレログラム(Correlogram)である。
【図1b】動的光散乱(DLS)によりナノ粒子製剤に対して得た粒度分布測定データであり、懸濁液中で中空法を介して調製したナノ粒子の存在を示す。図1(b)はプロットしたナノ粒子の多モードサイズ分布(誘導したデータ)であり、全サイズ範囲にわたる粒子集団(数)の分布を示す。
【図1c】動的光散乱(DLS)によりナノ粒子製剤に対して得た粒度分布測定データであり、懸濁液中で中空法を介して調製したナノ粒子の存在を示す。図1(c)はプロットしたナノ粒子の多モードサイズ分布(誘導したデータ)であり、全サイズ範囲にわたる粒子集団(数)の分布を示す。
【図1d】動的光散乱(DLS)によりナノ粒子製剤に対して得た粒度分布測定データであり、懸濁液中で中空法を介して調製したナノ粒子の存在を示す。図1(d)はプロットしたナノ粒子の多モードサイズ分布(誘導したデータ)であり、全サイズ範囲にわたる粒子集団(数)の分布を示す。
【図2】SEMにより分析したナノ粒子である。
【図3】TEMによる中空ナノ粒子の画像であり、比較のために固体PBCAナノ粒子の上書きした画像を共に示す。
【図4】モノクローナルIgG1(抗CD23)の封入効率測定値である。
【図5】粒子の酵素分解およびELISAによる放出酵素の分析によって得た放出プロファイルである。
【図6】ビシンコニン酸アッセイ(BCAアッセイ)による、中空PBCA中のドメイン抗体(雌鳥卵リゾチームdAb)の封入効率の測定値である。
【図7】モノクローナルIgG1(抗CD23)の封入効率測定値である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は粒子形成物質と生物活性薬を含む微粒子担体、ならびに前記微粒子担体を作製する方法を提供する。
【0015】
一実施形態においては、中空内腔の水相に生物活性薬を含むポリマー微粒子担体を提供する。
【0016】
本発明の他の実施形態においては、眼送達用の微粒子担体中に生物活性薬を封入する方法であって、
a) ポリマーを有機溶媒に溶解してポリマー溶液を作るステップ;
b) 生物活性薬を含有する水溶液をポリマー溶液に加えて、連続有機相中に水滴の一次乳濁液を作るステップ;
c) 一次乳濁液を水媒質と混合してW/O/W乳濁液を作るステップ;ならびに
d) 有機相を蒸発させ、それにより前記生物活性薬を水相に含有する中空内腔を含む微粒子担体を得るステップ
を含むものである前記方法を提供する。
【0017】
さらなる実施形態において、眼送達は、眼周囲、例えば、経強膜、結膜下、テノン嚢下、眼球周囲、局所、眼球後方であるかまたは下方、上方または外側直筋へ送達する。一実施形態において、眼送達は経強膜である。
【0018】
有機相を蒸発させるステップは受動的であってもまたは能動的であってもよい。例えば、能動的蒸発は熱を用いてもよい。
【0019】
本発明の他の実施形態においては、血液脳関門へのタンパク質の送達用のナノ粒子を作製する方法であって、
a) ポリマーを有機溶媒に溶解してポリマー溶液を作るステップ;
b) タンパク質を含有する水溶液をポリマー溶液に加えて、連続有機相中に水滴の一次乳濁液を作るステップ;
c) 一次乳濁液を水媒質と混合してW/O/W乳濁液を作るステップ;ならびに
d) 有機相を蒸発させ、それにより前記タンパク質を水相に含有する中空内腔を含むナノ粒子を得るステップ
を含むものである前記方法を提供する。
【0020】
有機相を蒸発させるステップは受動的であってもまたは能動的であってもよい。例えば、能動的蒸発は熱を用いてもよい。
【0021】
さらなる実施形態において、上記の方法のいずれかに使用するポリマーは、限定されるものでないが、ポリ-L-乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLG)、ポリ(乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)および/またはそれらのコポリマーから選択される。好適な粒子形成物質としては、限定されるものでないが、ポリ(ジエン)、例えばポリ(ブタジエン)など;ポリ(アルケン)、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなど;ポリ(アクリル酸)、例えばポリ(アクリル酸)など;ポリ(メタクリル酸)、例えばポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)など;ポリ(ビニルエーテル類);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルケトン);ポリ(ハロゲン化ビニル)、例えばポリ(塩化ビニル)など;ポリ(ビニルニトリル)、ポリ(ビニルエステル)、例えばポリ(酢酸ビニル)など;ポリ(ビニルピリジン)、例えばポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(5-メチル-2-ビニルピリジン)など;ポリ(スチレン);ポリ(カーボネート);ポリ(エステル);ポリ(オルトエステル);ポリ(エステルアミド);ポリ(無水物);ポリ(ウレタン);ポリ(アミド);セルロースエーテル類、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど;セルロースエステル、例えば酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロースなど;多糖類、タンパク質、ゼラチン、デンプン、ガム、樹脂などが挙げられる。これらの材料は単独で、物理的混合物(ブレンド)として、またはコポリマーとして用いることができる。また、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブチルシアノアクリレート、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリアリールアミド、ポリ無水物、ポリオルトエステル、N,N-L-リシンジイルテレフタレート、ポリ無水物、脱溶媒した生物活性薬または炭水化物、多糖、ポリアクロレイン、ポリグルタルアルデヒドおよび誘導体、コポリマーおよびポリマーブレンドも好適な粒子形成物質として挙げられる。
【0022】
本発明の他の実施形態においては、生物活性薬を微粒子担体を作ることにより封入する方法であって、
a) ポリブチルシアノアクリレート(PBCA)を有機溶媒に溶解していポリマー溶液を作るステップ;
b) 生物活性薬を含有する水溶液をポリマー溶液に加えて、連続有機相中に水滴の一次乳濁液を作るステップ;
c) 一次乳濁液を水媒質と混合してW/O/W乳濁液を作るステップ;ならびに
d) 有機相を蒸発させ、それにより前記生物活性薬を水相に含有する中空内腔を含む微粒子担体を得るステップ
を含むものである前記方法を提供する。
【0023】
有機相を蒸発させるステップは受動的であってもまたは能動的であってもよい。例えば、能動的蒸発は熱を用いてもよい。
【0024】
本明細書に記載した方法のさらなる実施形態においては、ステップ(d)はさらにゲル形成ポリマーの添加を含む。さらなる実施形態において、ゲル形成ポリマーはアガロースである。
【0025】
一実施形態において、本発明の微粒子担体はタンパク質またはペプチドなどの生物活性薬を含む。かかるタンパク質は抗原結合分子であって、本明細書で抗体、抗体断片および標的と結合することができる他のタンパク質構築物を意味しうる。
【0026】
抗原結合分子はドメインを含みうる。「ドメイン」はタンパク質の残部とは独立した三次構造を有するフォールドされたタンパク質構造である。一般に、ドメインはタンパク質の明確な機能特性に関わり、多くの場合、タンパク質および/またはドメインの残部の機能を喪失することなく、他のタンパク質に加えるか、取り除くかまたは伝達することができる。「単一抗体可変ドメイン」は抗体可変ドメインの特徴的な配列を含むフォールドしたポリペプチドドメインである。それ故に、単一抗体可変ドメインには、完全な抗体可変ドメイン、および、例えば、1以上のループが抗体可変ドメインの特徴でない配列により置き換えられている改変された可変ドメイン、または末端切断されているかまたはN-もしくはC-末端伸長部を含む抗体可変ドメイン、ならびに全長ドメインの少なくとも結合活性および特異性を保持する可変ドメインのフォールドされた断片が含まれる。
【0027】
抗原結合分子は少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメインを含んでもよく、例えば、かかる分子は抗体、ドメイン抗体、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、ScFv、ダイアボディ、ヘテロコンジュゲート抗体を含んでもよい。かかる抗原結合分子は単一標的と結合することができてもよく、または多特異的、すなわち、いくつもの標的と結合してもよく、例えば、これらの分子は二特異的または三特異的であってもよい。一実施形態において、抗原結合分子は抗体である。他の実施形態において、抗原結合分子はドメイン抗体(dAb)である。なおさらなる実施形態において、抗原結合分子は抗体と抗原結合断片の組合わせ、例えば、モノクローナル抗体と結合した1以上のdAbおよび/または1以上のScFvであってもよい。なおさらなる実施形態において、抗原結合分子は抗体とペプチドの組合わせであってもよい。抗原結合分子は少なくとも1つの非-Ig結合ドメイン、例えば、異なるV領域またはドメインとは独立した抗原またはエピトープと特異的に結合するドメインを含んでもよく、このドメインはdAb、例えばヒト、ラクダ科動物またはサメ免疫グロブリン単一可変ドメインであってもよく、またはこのドメインはCTLA-4(エヴィボディ);リポカリン;プロテインAから誘導される分子、例えばプロテインA(アフィボディ、SpA)のZ-ドメイン、A-ドメイン(アビマー/マキシボディ);熱ショックタンパク質、例えばGroELおよびGroES;トランスフェリン(trans-body);アンキリン反復タンパク質(DARPin);ペプチドアプタマー;C型レクチンドメイン(テトラネクチン);ヒト-クリスタリンおよびヒト-ユビキチン(アフィリン);PDZドメイン;scorpion毒素;ヒト-プロテアーゼインヒビターのkunitz型ドメイン;およびフィブロネクチン(アドネクチン)からなる群より選択されるスカフォールドの誘導体であって;自然リガンド以外のリガンドとの結合を得るためにタンパク質工学で処理されていてもよい。
【0028】
CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4)は、主にCD4+T細胞で発現されるCD28ファミリー受容体である。その細胞外ドメインは可変ドメイン様Igフォールドを有する。抗体のCDRに対応するループを、異なる結合特性を与える異種配列で置換することができる。異なる結合特異性を有するように遺伝子操作で作られたCTLA-4分子はエヴィボディ(Evibody)としても公知である。さらなる詳細は、Journal of Immunological Methods 248 (1-2), 31-45 (2001)を参照されたい。
【0029】
リポカリンはステロイド、ビリン、レチノイドおよび脂質などの小さい疎水性分子を輸送する細胞外タンパク質のファミリーである。これらはコニカル構造の開放端末にいくつものループをもつ強固なシート二次構造を有し、この構造は異なる標的抗原を結合するように遺伝子操作で作ることができる。アンチカリンは、サイズが160〜180アミノ酸であって、リポカリンから誘導される。さらなる詳細は、Biochim Biophys Acta 1482: 337-350 (2000)、US7250297B1およびUS20070224633を参照されたい。
【0030】
アフィボディは黄色ブドウ球菌のプロテインAから誘導されたスカフォールドであって、抗原と結合するように遺伝子操作で作ることができる。そのドメインはおよそ58アミノ酸の3つのヘリカル束から成る。ライブラリーを表面残基の無作為化により作製することができる。さらなる詳細については、Protein Eng. Des. Sel. 17, 455-462 (2004)およびEP1641818A1を参照されたい。
【0031】
アビマーは、A-ドメインスカフォールドファミリーから誘導されたマルチドメインタンパク質である。およそ35アミノ酸の生来のドメインは規定されたジスルフィド結合構造を採用している。多様性は、A-ドメインのファミリーにより表された自然変異シャッフリングにより作られる。さらなる詳細については、Nature Biotechnology 23(12), 1556 - 1561 (2005)およびExpert Opinion on Investigational Drugs 16(6), 909-917 (June 2007)を参照されたい。
【0032】
トランスフェリンは単量体の血清輸送糖タンパク質である。トランスフェリンは、許容しうる表面ループにおいてペプチド配列の挿入により異なる標的抗原と結合するように遺伝子操作することができる。遺伝子操作で作られたトランスフェリンスカフォールドの例にはtrans-bodyが含まれる。さらなる詳細は、J. Biol. Chem 274, 24066-24073 (1999)を参照されたい。
【0033】
設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin)は、内在膜タンパク質の細胞骨格との結合に介在するタンパク質のファミリーであるアンキリンから誘導される。単一アンキリン反復は、2つのヘリックスと1つのターンから成る33残基モチーフである。これらを、各反復の第1ヘリックスと1つのターン内の残基を無作為化することにより、遺伝子操作で異なる標的抗原と結合するように作ることができる。これらの結合界面はモジュール数を増加することにより増加することができる(アフィニティ成熟の方法)。さらなる詳細は、J. Mol. Biol. 332, 489-503 (2003), PNAS 100(4), 1700-1705 (2003)およびJ. Mol. Biol. 369, 1015-1028 (2007)およびUS20040132028A1を参照されたい。
【0034】
フィブロネクチンは抗原と結合するように遺伝子操作で作ることができる。
【0035】
アドネクチンは、ヒトフィブロネクチンIII型(FN3)の15反復ユニットの第10ドメインの自然アミノ酸配列の骨格から成る。そのサンドイッチの一端の3ループを遺伝子操作して、アネクチンが目的の治療標的を特異的に認識できるようにすることができる。さらなる詳細は、Protein Eng. Des. Sel. 18, 435-444 (2005)、US20080139791、WO2005056764およびUS6818418B1を参照されたい。
【0036】
ペプチドアプタマーは、定常スカフォールドタンパク質、典型的にはチオレドキシン(TrxA)から成るコンビナトリアル認識分子であり、この分子は活性部位に挿入された束縛された可変ペプチドループを含有する。さらなる詳細は、Expert Opin. Biol. Ther. 5, 783-797 (2005)を参照されたい。
【0037】
ミクロボディは、長さで25〜50アミノ酸の3〜4システイン架橋を含有する天然ミクロタンパク質から誘導され、ミクロタンパク質の例にはKalata B1およびコノトキシンおよびノッティンsが含まれる。ミクロタンパク質は、ミクロタンパク質の全フォールドに影響を与えずに25アミノ酸まで含むように遺伝子操作で作ることができるループを有する。遺伝子操作で作ったknottinドメインのさらなる詳細はWO2008098796を参照されたい。
【0038】
他の非Ig結合ドメインには、異なる標的抗原結合特性を遺伝子操作で作るスカフォールドとして使用されたタンパク質が含まれ、それには、ヒト-クリスタリンおよびヒトユビキチン(アフィリン)、ヒトプロテアーゼインヒビターのkunitz型ドメイン、Ras-結合プロテインAF-6のPDZ-ドメイン、スコルピン毒素 (カリブドトキシン)、C-型レクチンドメイン(テトラネクチン)が含まれ、Handbook of Therapeutic Antibodies (2007、Stefan Dubel編)の第7章「非抗体スカフォールド」およびProtein Science 15:14-27 (2006)に総括されている。本発明の非Ig結合ドメインはこれらの代わりのタンパク質ドメインのいずれかから誘導してもよい。
【0039】
本発明のさらなる実施形態において、抗原結合分子は中枢神経系に、例えば脳または脊髄に、または例えば神経細胞組織に見出される標的と結合する。
【0040】
本明細書に記載した本発明のなおさらなる実施形態において、抗原結合分子は神経性疾患または障害に関連することが公知の標的、例えばMAG(ミエリン関連糖タンパク質)、NOGO(神経突起成長阻害タンパク質)またはβ-アミロイドと特異的に結合する。
【0041】
かかる抗原結合分子には、NOGOと結合することができる抗原結合分子、例えば抗NOGO抗体が含まれる。本発明で用いる抗NOGO抗体の一例は、配列番号1の重鎖および配列番号2の軽鎖により規定された抗体、または配列番号1および2に記載した抗体のCDRを含む抗NOGO抗体またはその抗原結合断片である。この抗体(H28 L16)のさらなる詳細は、本明細書に参照により組み入れられるPCT出願WO2007068750に見出すことができる。
【0042】
かかる抗原結合分子には、MAGと結合することができる抗原結合分子、例えば抗MAG抗体が含まれる。本発明で使用する抗MAG抗体の一例は、配列番号11の重鎖可変域および配列番号12の軽鎖可変域により規定された抗体、または配列番号1および2に記載した抗体のCDRを含む抗MAG抗体またはその抗原結合断片である。この抗体(BvH1 CvL1)のさらなる詳細は、本明細書に参照により組み入れられるPCT出願WO2004014953に見出すことができる。
【0043】
かかる抗原結合分子には、β-アミロイドと結合することができる抗原結合分子、例えば抗β-アミロイド抗体が含まれる。本発明で使用する抗β-アミロイド抗体の一例は、配列番号5の重鎖および配列番号6の軽鎖により規定された抗体、または抗β-アミロイド抗体または配列番号5および7に記載した抗体のCDRを含むその抗原結合断片である。この抗体(H2 L1)のさらなる詳細は、本明細書に参照により組み入れられるPCT出願WO2007113172に見出すことができる。本発明で使用する代替的な抗β-アミロイド抗体は、配列番号7の重鎖および配列番号8の軽鎖により規定された抗体または抗β-アミロイド抗体または配列番号7および8に記載した抗体のCDRを含むその抗原結合断片である。
【0044】
かかる抗体のCDR配列はKabat番号系(Kabat et al; Sequences of proteins of Immunological Interest NIH, 1987)、Chothia番号系(Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948)、接触定義法(MacCallum R.M., and Martin A.C.R. and Thornton J.M, (1996), Journal of Molecular Biology, 262 (5), 732-745)または抗体の残基を番号付けるためのおよび当業者に公知のCDRを確認するための他の確立された方法により確認することができる。
【0045】
本発明の一実施形態において、抗原結合タンパク質は、眼中に見出される標的、例えば、TNF、TNFr-1、TNFr-2、TGFβ受容体-2、VEGF、NOGO、MAG、IL-1、IL-2、IL-6、IL-8、IL-17、CD20、βアミロイド、FGF-2、IGF-1、PEDF、PDGFまたは補因子、例えばC3、C5、C5aR、CFD、CFH、CFB、CFI、sCR1またはC3と結合することができる。
【0046】
本発明の一実施形態において、抗原結合タンパク質はVEGFと結合する。本発明の代わりの実施形態において、抗原結合タンパク質はβ-アミロイドと結合する。
【0047】
本発明の一実施形態において、微粒子担体はミクロスフェアまたはナノ粒子であってもよい。かかる一実施形態において、微粒子担体はナノ粒子であり、生物活性薬はタンパク質である。他の実施形態において、微粒子担体はナノ粒子であり、生物活性薬はペプチドである。さらなる実施形態において、微粒子担体はナノ粒子であり、生物活性薬は抗原結合分子、例えばドメイン抗体または抗体を含む。なおさらなる実施形態において、微粒子担体はナノ粒子であり、生物活性薬はドメインを含む。他の実施形態において、微粒子担体はミクロスフェアであり、生物活性薬はタンパク質である。さらなる実施形態において、微粒子担体はミクロスフェアであり、生物活性薬はペプチドである。なおさらなる実施形態において、微粒子担体はミクロスフェアであり、生物活性薬は抗原結合分子、例えばドメイン 抗体または抗体を含む。なおさらなる実施形態において、微粒子担体はミクロスフェアであり、生物活性薬はドメインを含む。
【0048】
本発明の一実施形態においては、本明細書に記載した本発明のいずれかの方法によるナノ粒子を含む組成物を提供する。さらなる実施形態においては、動的光散乱法を用いて測定すると、数で少なくとも約90%のナノ粒子は約1nm〜約1000nmの範囲内にある。さらなる実施形態においては、動的光散乱法を用いて測定すると、数で少なくとも約90%のナノ粒子は約1nm〜約400nmの範囲内、または約1nm〜約250nmの範囲内、または約1nm〜約150nmの範囲内、または約40nm〜約250nmの範囲内、または約40nm〜約150nmの範囲内、または約40nm〜約100nmの範囲内にある。
【0049】
本発明のなおさらなる実施形態においては、動的光散乱法を用いて測定すると、数で少なくとも約90%のナノ粒子は約40nm〜約250nmの範囲内にある。
【0050】
本発明のなおさらなる実施形態においては、動的光散乱法を用いて測定すると、数で少なくとも約90%のナノ粒子は約40nm〜約150nmの範囲内にある。
【0051】
本発明のなおさらなる実施形態においては、本発明のナノ粒子を含む組成物であって、組成物中のナノ粒子のメジアンサイズは、動的光散乱法を用いて測定すると、直径で約1000nm未満である、例えば直径で約400nm未満である、例えば直径で約250nm未満である、例えば直径で約150nm未満である前記組成物を提供する。
【0052】
本発明のなおさらなる実施形態において、組成物中のナノ粒子のメジアンサイズは約40nm〜約250nmである。
【0053】
本発明のなおさらなる実施形態において、組成物中のナノ粒子のメジアンサイズは約40nm〜約150nmである。
【0054】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載した本発明のいずれかの方法によるミクロスフェアを含む組成物を提供する。さらなる実施形態において、低角レーザー光散乱法を用いて測定すると、数によりミクロスフェアの少なくとも約90%は約1μm〜約100μmの範囲内の直径を有する。さらなる実施形態において、低角レーザー光散乱法を用いて測定すると、数により粒子の少なくとも約90%は約1μm〜約80μm、または約1μm〜約60μmまたは約1μm〜約40μm、または約1μm〜約30μmまたは約1μm〜約10μmの範囲にある。
【0055】
本発明のなおさらなる実施形態において、低角レーザー光散乱法を用いて測定すると、数によりミクロスフェアの少なくとも約90%は約1μm〜約60μmの範囲にある。
【0056】
本発明のなおさらなる実施形態において、低角レーザー光散乱法を用いて測定すると、数によりミクロスフェアの少なくとも約90%は約1μm〜約30μmの範囲にある。
【0057】
なおさらなる実施形態においては、本発明のミクロスフェアを含む組成物であって、低角レーザー光散乱法により測定すると、その組成物中のミクロスフェアのメジアンサイズは直径が約100μm以下であり、例えば直径が約80μmであり、例えば直径が約60μmであり、例えば直径が約40μmである前記組成物を提供する。
【0058】
なおさらなる実施形態において、組成物中のミクロスフェアのメジアンサイズは約1μm〜約6μm、または1μm〜約30μmである。
【0059】
本発明の他の実施形態において、微粒子担体は活性生物分子の治療量を、少なくとも3ヶ月以上、または6カ月まで、または12か月以上の期間にわたって放出し続ける。
【0060】
一実施形態において、タンパク質のポリマーに対するw/w比は0.5%〜50%であってもよく、例えば、少なくとも約0.5%であるか、または少なくとも約1%であるか、または少なくとも約2%であるか、または少なくとも約5%であるか、または少なくとも約7%であるか、または少なくとも約10%であるか、または少なくとも約11%であるか、または少なくとも約14%であるか、または少なくとも約20%であるか、または少なくとも約40%、であるか、または少なくとも約50%である。例えば、タンパク質がペプチドである場合、ペプチド対ポリマー比は少なくとも約11%であってもよく、またはタンパク質が抗体である場合、抗体対ポリマー比は少なくとも約14%であってもよく、またはタンパク質がドメイン抗体である場合、ドメイン抗体対ポリマー比は少なくとも約11%であってもよい。
【0061】
本発明の一実施形態において、粒子の封入効率は、少なくとも約1%であるか、または少なくとも約2%であるか、または少なくとも約10%であるか、または少なくとも約20%であるか、または少なくとも約40%であるか、または少なくとも約50%であるか、または少なくとも約60%であるか、または少なくとも約70%であるか、または少なくとも約80%であるか、または少なくとも約90%であるか、または少なくとも約95%であるか、または少なくとも約97%であるか、または少なくとも約99%である。例えば、タンパク質がペプチドである場合、封入効率は少なくとも約60%でありうるし、タンパク質が抗体である場合、封入効率は少なくとも約90%でありうるし、タンパク質がドメイン抗体である場合、封入効率は少なくとも約60%でありうる。
【0062】
本発明の方法で使用するのに好適な有機溶媒の例としては、限定されるものでないが、水-非混和性エステル、例えば酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n-ブチル、イソ酪酸イソブチル、酢酸2-エチルヘキシル、エチレングリコールジアセテート;水-非混和性ケトン、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルn-アミルケトン、ジイソブチルケトン;水-非混和性のアルデヒド、例えばアセトアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2-エチルヘキスアルデヒド、イソブチルアルデヒドおよびプロピオンアルデヒド;水-非混和性エーテルエステル、例えば3-エトキシプロピオン酸エチル;水-非混和性の芳香族炭化水素、例えばトルエンキシレンおよびベンゼン;水-非混和性ハロゲン化炭化水素、例えば1,1,1-トリクロロエタン;水-非混和性グリコールエーテルエステル、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル酢酸エステル、エチレングリコールモノエチルエーテル酢酸エステル、エチレングリコールモノブチルエーテル酢酸エステル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル酢酸エステル;水-非混和性フタル酸エステル可塑剤、例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル、テレフタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルオクチル、ベンジルフタル酸ブチル、フタル酸アルキルベンジル;水-非混和性可塑剤、例えばアジピン酸ジオクチル、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリメリット酸トリオクチル、グリセリルトリアセテート、グリセリルトリプロピオネート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、塩化メチレン、酢酸エチルまたはジメチルスルホキシド、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ヘプタン、ヘキサンおよび他の炭化水素、メチル-tert-ブチルエーテル、ペンタン、トルエン、2,2,4-トリメチルペンタン、1-オクタノールおよびその異性体またはベンジルアルコールが挙げられる。
【0063】
本発明の一実施形態において、本発明の方法に使用する溶媒は塩化メチレン、酢酸エチルまたはジメチルスルホキシド、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ヘプタン、ヘキサンおよびその他の炭化水素、メチル-tert-ブチルエーテル、ペンタン、トルエン、2,2,4-トリメチルペンタン、1-オクタノールおよびその異性体、ベンジルアルコールから選択しうる。
【0064】
本明細書に記載した本発明の全ての態様において、微粒子担体、それらを含む組成物またはそれらを作る方法はさらに、界面活性剤の添加を含みうるのであって、前記界面活性剤としては、例えば、限定されるものでないが、コール酸ナトリウム、ポロキサマー188(プルロニックF68(登録商標)、またはF127)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート80、デキストラン、ポロキサマー、ポロキサミン、多官能性アルコールのカルボン酸エステル、アルコキシル化エーテル類、アルコキシル化エステル、アルコキシル化モノ-、ジおよびトリグリセリド、アルコキシル化フェノールおよびジフェノール、エトキシル化エーテル類、エトキシル化エステル、エトキシル化トリグリセリド、GenapolR(登録商標)およびBaukiR(登録商標)シリーズの物質、脂肪酸の金属塩、カルボン酸の金属塩、アルコール硫酸エステルの金属塩、および脂肪族アルコール硫酸エステルの金属およびスルホコハク酸の金属塩および前記物質の2種以上の混合物が挙げられる。
【0065】
さらなる実施形態において、界面活性剤はコール酸ナトリウム、ポロキサマー188(プルロニックF68(登録商標))、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート80およびデキストランから選択される。
【0066】
本発明の一実施形態においては、本明細書に記載した本発明の方法のいずれかにより得ることができる、生物活性薬を含む微粒子担体を提供する。
【0067】
本発明の微粒子担体および/または組成物に封入された生物活性薬は微粒子担体から放出されると少なくともいくらかの生物活性を保持し、例えば、生物活性薬が結合剤である場合、組成物中の分子の一部分は少なくともいくらかのそれらの標的と結合する能力を保持し、生物活性薬が粒子から放出されると生物学的応答を誘発しうる。かかる結合は好適な生物学的結合アッセイで測定することができ、好適なアッセイの例としては、限定されるものでないが、ELISAまたはBiacore(登録商標)が挙げられる。さらなる実施形態において、組成物は、生物学的結合アッセイにより粒子からの放出を測定した場合、例えば、ELISA、Biacoreにより測定した一実施形態において、標的に対してアフィニティの少なくとも50%、または、標的に対してアフィニティ(Kd)の少なくとも70%または少なくとも90%を保持する。一実施形態において、本組成物は投与した被験者において治療効果を誘発する能力を有しうる。本発明の組成物の生物活性は、封入された生物活性分子の活性を測定するいずれかの好適なアッセイにより測定することができる。
【0068】
本発明の一実施形態においては、タンパク質をナノ粒子に封入することにより、生物学的関門、例えば血液脳関門を横切って患者へ送達する方法を提供する。さらなる実施形態において、患者はヒトである。
【0069】
本発明の一実施形態においては、微粒子担体、例えばミクロスフェアに封入されたタンパク質を哺乳動物、例えばヒトの眼へ送達する方法を提供する。
【0070】
他の実施形態においては、本発明に記載した本発明の微粒子担体に封入された生物活性薬を含む医薬組成物を提供する。
【0071】
さらなる実施形態においては、本発明に記載した本発明のナノ粒子に封入されたタンパク質を含む医薬組成物を提供する。さらなる実施形態においては、眼の疾患を治療および/または予防するための本明細書に記載した眼送達用のミクロスフェアに封入されたタンパク質を含む医薬組成物を提供する。
【0072】
さらなる実施形態においては、本発明の組成物は、血液脳関門を越える微粒子担体を伴う、障害または疾患の治療および/または予防に使用することができる。
【0073】
さらなる実施形態においては、本明細書に記載した本発明の組成物を中枢神経系障害または疾患を治療および/または予防するために使用してもよく、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、ウシ海綿状脳症、西ナイルウイルス脳炎、神経-エイズ、脳傷害、脊椎損傷、脳の転移性癌、または多発性硬化症、脳卒中を治療および/または予防するために使用してもよい。
【0074】
さらなる実施形態において、本組成物は脳卒中または神経細胞傷害の治療および/または予防用の抗MAG抗体を含んでもよい。
【0075】
他の実施形態において、本組成物は脳卒中または神経細胞傷害の治療および/または予防用の、または例えば神経変性疾患、例えばアルツハイマー病の治療および/または予防用の抗NOGO抗体を含んでもよい。
【0076】
他の実施形態において、本組成物は脳卒中または神経細胞傷害の治療および/または予防用の、または例えば神経変性疾患、例えばアルツハイマー病の治療および/または予防用の抗βアミロイド抗体を含んでもよい。
【0077】
本明細書に記載した本発明の一実施形態においては、微粒子担体を、患者へ非経口注射または注入、静脈内または動脈内投与により投与することができる。
【0078】
さらなる実施形態においては、本明細書に記載した本発明の組成物を用いて、眼の障害または疾患を治療および/または予防することができる。さらなる実施形態においては、本明細書に記載した本発明の組成物を用いて、障害、例えば、限定されるものでないが、加齢に関係する黄斑変性症(新生血管性/湿性)、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞疾患、ブドウ膜炎、角膜新血管新生または緑内障を治療および/または予防することができる。
【0079】
なおさらなる実施形態においては、本組成物を用いて、AMD(加齢に関係する黄斑変性症)、例えば湿性AMD、または感性AMDを治療および/または予防することができる。
【0080】
本発明の他の実施形態においては、本明細書に記載したナノ粒子およびまたはミクロスフェアに封入された、医薬に使用するための生物活性薬を提供する。
【0081】
本発明の一実施形態においては、中枢神経系の疾患の治療および/または予防用の医薬品の製造における、本明細書に記載した本発明の組成物の使用を提供する。さらに他の実施形態においては、アルツハイマー病の治療および/または予防用の医薬品の製造における、本明細書に記載した本発明の組成物の使用を提供する。なおさらなる実施形態においては、脳卒中または神経細胞傷害の治療および/または予防用の医薬品の製造における、本明細書に記載した本発明の組成物の使用を提供する。
【0082】
本発明の他の実施形態においては、眼の疾患の治療および/または予防用の医薬品の製造における、例えばAMDの治療および/または予防用の医薬品の製造における、本明細書に記載した本発明の組成物の使用を提供する。
【0083】
本発明は、本発明の組成物を用いて中枢神経系の疾患を治療および/または予防する方法を提供する。さらなる実施形態においては、本発明の組成物を用いてアルツハイマー病を治療および/または予防する方法を提供する。本発明のなお他の実施形態においては、本発明の組成物を用いて脳卒中または神経細胞傷害を治療および/または予防する方法を提供する。
【0084】
本発明はまた、本発明の組成物を用いて眼の疾患を治療および/または予防する方法を提供する。さらなる実施形態においては、本発明の組成物を用いてAMDを治療および/または予防する方法を提供する。
【0085】
定義:
本明細書で使用する用語「粒子形成物質」を用いて、重合することができるいずれかのモノマーおよび/またはオリゴマー、または水性環境で不溶粒子を形成することができるポリマー、例えばPBCA、PLGAを記載する。粒子形成物質は重合していないときには有機溶媒に可溶である。
【0086】
本明細書で使用する用語「微粒子担体」はナノ粒子とミクロスフェアの両方を包含するために用いられる。「ミクロスフェア」は1μmを超える直径をもつ様々な天然および合成材料から構成される粒子であるが、本明細書で使用する「ナノ粒子」はサブミクロンサイズの粒子、例えば1〜1000nmである。
【0087】
一実施形態において、本明細書で使用する用語「微粒子担体」、「ナノ粒子」および「ミクロスフェア」は、生体適合性でありかつ使用環境による化学および/または物理的破壊に十分な耐性をもつ担体構造を示し、投与に続いてヒトまたは動物身体に進入後、および所望の標的器官または組織、例えば脳または眼に到達可能な十分な時間の間、粒子の十分な量が実質的に無傷のまま残存する。
【0088】
本明細書で使用する用語「生物活性薬」は、分子がそれらの所望の標的に到達するときに少なくともいくらかの生物学的活性を果たす能力を有するに違いないことを示すために用いる用語である。疑念を晴らすために述べると、本明細書全体を通して使用する用語「生物活性薬」と「生物活性分子」は同じ意味を有しかつ互換的に使用しうると意図している。
【0089】
用語「可溶化」は、溶媒中の個々の分子の形態での溶液の形成かまたは液に懸濁した分子の微細な固体凝集物の形態での懸濁液中の固体の形成として定義される。可溶化プロセスはまた、完全に溶解した分子と懸濁した固体凝集物の混合物をもたらしうる。
【0090】
微粒子担体中の封入に対する本明細書を通して使用する用語「タンパク質」には、少なくとも11kDa、または少なくとも12kDa、または少なくとも50kDa、または少なくとも100kDa、または少なくとも150kDaまたは少なくとも200kDaの分子量を有するタンパク質が含まれる。封入のためのタンパク質はまた、かなりの長さ、例えば長さで少なくとも70アミノ酸または長さで少なくとも100アミノ酸または長さで少なくとも150アミノ酸または長さで少なくとも200アミノ酸でありうる。
【0091】
微粒子担体中の封入に対する本明細書を通して使用する用語「ペプチド」には、約10kDa以下、または約8kDa以下、または約5kDa以下、または約2kDa以下または約1kDa以下または1kDa未満の分子量を有するアミノ酸の短い配列が含まれる。封入のためのペプチドは、例えば長さで70アミノ酸以下または長さで50アミノ酸以下または長さで40アミノ酸以下または長さで20アミノ酸以下または長さで10アミノ酸以下でありうる。
【0092】
用語「眼周囲」は、眼の外側を囲む位置への局所投与を意味し、限定されるものでないが、次を含む:「結膜下」‐結膜(眼球を強膜の上方で覆う透明な粘液膜)の下;「テノン嚢下」‐眼を包むテノン膜の下で、強膜の外側;「眼球周囲」‐眼腔内に位置する眼球の下の空間;「眼球後方」‐視神経に近接した眼球の直ぐ背部の空間;「上脈絡膜」‐強膜の下で、上脈絡膜空間中への脈絡膜の外側;「経強膜」‐この用語はまた、横切る、すなわち、強膜の外側からの送達を意味しうる。
【0093】
表現「免疫グロブリン単一可変ドメイン」は、異なるV域またはドメインとは独立した抗原またはエピトープと特異的に結合する抗体可変ドメイン(VH、VHH、VL)を意味する。免疫グロブリン単一可変ドメインは他の異なる可変域またはドメインを伴うフォーマット(例えば、ホモ-またはヘテロ-多量体)で存在することができ、その場合、他の領域またはドメインは単一免疫グロブリン可変ドメインによる抗原結合に必要でない(すなわち、その場合、免疫グロブリン単一可変ドメインはさらなる可変ドメインとは独立して抗原と結合する)。「ドメイン抗体」または「dAb」は、抗原と結合することができる本明細書で使用する「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。免疫グロブリン単一可変ドメインはヒト抗体可変ドメインであってもよいがまた、他の種、例えばげっ歯類(例えば、WO00/29004に開示された)、ナースサメ(nurse shark)およびラクダ科動物VHHdAb由来の単一抗体可変ドメインも含む。ラクダ科動物VHHは、軽鎖を天然に欠く重鎖抗体を産生するラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、およびグアナコを含む種由来の免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドである。かかるVHH ドメインは、当技術分野で利用可能な標準技法によってヒト化することができ、かかるドメインも本発明による「ドメイン抗体」と考えられる。本明細書で使用する「VH」はラクダ科動物VHHドメインを含む。
【0094】
本明細書で使用する用語「抗原結合分子」は、標的と結合することができる抗体、抗体断片および他のタンパク質構築物を意味する。
【0095】
「ドメイン」はタンパク質の残部とは独立した三次構造を有するフォールドされたタンパク質構造である。一般に、ドメインはタンパク質の明確な機能特性に関わり、そして、多くの場合、タンパク質および/またはドメインの残部の機能を喪失することなく、他のタンパク質に加えるか、除去するかまたは伝達することができる。「単一抗体可変ドメイン」は抗体可変ドメインの特徴的な配列を含むフォールドしたポリペプチドドメインである。それ故に、単一抗体可変ドメインには、完全な抗体可変ドメイン、ならびに、例えば1以上のループが、抗体可変ドメインの特徴でない配列により置き換えられている改変された可変ドメイン、または末端切断されているかまたはN-もしくはC-末端伸長部を含む抗体可変ドメイン、ならびに全長ドメインの少なくとも結合活性および特異性を保持する可変ドメインのフォールドされた断片が含まれる。
【0096】
本明細書で使用する用語「光散乱技法」は溶液中の小粒子のサイズ 分布 プロファイルを測定するために用いられる手法であり、る。光散乱技法の一例としては例えば、ナノ粒子の測定に用いられ得る動的光散乱が挙げられる、また別の例としては、ミクロスフェアを測定するために用いら得るはナノ粒子を測定するために用いられかつ静的光散乱または低角度光散乱はミクロスフェアを測定するために用いられるが挙げられる。
【0097】
本明細書で使用する用語「動的光散乱」(DLS)は、粒子分散液により散乱される光を利用して粒子のサイズに関する情報を得る方法である。動的光散乱は、液懸濁液において、粒子のブラウン運動が粒子径に依存しかつ粒子のブラウン運動が粒子サンプルから散乱された光の強度の揺らぎを生じるという事実に依存する。相関関数を用いてこれらの揺らぎを分析することにより粒子径を誘導する。次いでストークス-アインシュタイン式を適用して粒子の平均水力学的直径を得る。
【0098】
多指数分析からサイズ分布を得ることができ、これがサンプル内に異なる種の存在についての洞察を与える。DLSはナノ粒子の分析に一般的に受け入れられている。
【0099】
本明細書全体で相互互換的に使用する「静的光散乱」はまたは「低角レーザー光散乱」はレーザー回折とも呼ばれる。レーザー回折は、回折角が粒子径に反比例するという事実に依存する。その方法は、全Mie理論を利用し、これは光と物質の相互作用に対する式を完全に解く。レーザー回折は、ナノ粒子およびミクロ粒子(直径で0.02〜2000μm)の分析に用いることができる。
【0100】
本明細書で使用する用語「血液脳関門」(BBB)は主に脳を血液中の化学物質から保護する一方、なお必須の代謝機能を可能にする膜構造である。BBBは、脳毛細管に非常に緻密に詰められている脳ミクロ血管内皮細胞から構成される。この高い密度は、身体の随所にある毛細管の内皮細胞よりはるかに厳しく血流からの物質通過を制限する。
【0101】
本明細書全体を通して「パーセント薬物負荷」は粒子製剤(ポリマー重量)に用いた材料の重量当たりの薬物の重量w/wのパーセント:
%薬物負荷=(薬物の重量/粒子製剤に用いた材料の重量)x100%
として規定した。
【0102】
本明細書においては、本発明を実施形態を参照して明確かつ簡潔な説明ができるように記載した。実施形態は、本発明から引き離すことなく、様々に組み合わせたりまたは分離したりすることができると考えておりかつ理解されるべきである。
【実施例】
【0103】
実施例1 BCA(ブチルシアノアクリレート)モノマーの重合
有機溶媒中の迅速な重合反応を用いてポリマーを形成させた。
【0104】
BCAモノマー(200μl、Vetbond、3M)を、ゆっくり回旋している25mlビーカー中の1ml絶対エタノールに加えた。得られる溶液を重合反応が開始するまで静かに混合した。重合反応によって白色の固体分散液を得た。反応混合物が粘性が高くなって攪拌できなくなると直ちに分散液の混合を停止した。
【0105】
次いで、反応混合物中のエタノールをヒュームフード内で少なくとも1時間蒸発させた。エタノールの蒸発後、砕かれた白色固体ケーキを得た。固体を採集し、ナノ粒子調製プロセスに用いた。
【0106】
実施例2 二重乳濁液法による中空ナノ粒子の調製:
PBCAポリマーをジクロロメタンに1%w/vの濃度で溶解し、これを用いて、次の通り、二重乳濁液(水中油中水、w/o/w)への乳濁化により中空PBCAナノ粒子を調製した。
【0107】
(i)一次乳濁液(w/o)
内部相(w):水またはバッファー中の5%コール酸ナトリウム(SIGMA)を、
500μlの水またはバッファーおよび
500μlのコール酸ナトリウム(10%w/vストック溶液)
を混合することにより調製した。
【0108】
内部水相の総体積は1mlであった。溶液は使用時まで氷上に置いた。使用前に各溶液を1mlインスリンシリンジ(Terumo1ml、BDミクロランスニードル19G 1.5")中に引き入れた。
【0109】
外部(有機)相(o):ジクロロメタン(DCM、Fischer)中のPBCAポリマー(1%w/v)。
【0110】
有機相(DCM中のPBCAポリマー、6ml)を10mlビーカー(氷上に置いて冷却を保った)に注ぎ、ホモジナイザーのプローブを挿入した(Ultra-Turrax、T25、50mlプローブ)。溶液をパラフィルム(ビーカーとプローブに添付された)で覆い、24,000rpmの速度でローターステーターホモジナイザー(UIltra-Turrax T25 basic)を用いてホモジナイズした。
【0111】
一次乳濁液の形成:
ホモジナイザーが所要速度に到達すると直ちに、内部の水相をプローブ近くの溶液の内部に注入して加えた。得られる乳濁液を2分間(氷上で)ホモジナイズし、次いでガラス製シリンジ(SGE、25ml、気密性で、有機溶媒に好適な、P/N 009462 25MDR-LL-GT、バッチ番号F06-A2190、ブラント5cm 2R2ニードル、0.7mm IDを備えた)へ移した。
【0112】
(ii)二次乳濁液(w/o/w)
内部相(w/o):上記ホモジナイズステップからの一次乳濁液
外部相(w):コール酸ナトリウム(1.25%w/v)の水溶液。
【0113】
二次乳濁液の形成:
一次単一乳濁液(w/o)を用いて、二次水相(1.25%w/vコール酸ナトリウム)に加えてホモジナイズすることにより、二重乳濁液(w/o/w)を形成した。コール酸ナトリウム溶液(1.25% w/v、30ml)を50mlのトールビーカー(氷上で乳濁液を冷却保持している)に移し、Silverson L4RTホモジナイザーのプローブを挿入した(3/4インチプローブ、high emulsor screen)。その溶液を(ビーカーとプローブに添付された)パラフィルムで覆い、8,000rpmの速度でホモジナイズした。ホモジナイザーが8,000rpmの速度に到達すると直ちに、一次乳濁液をプローブ近くの溶液中に注入した。得られる乳濁液を6分間ホモジナイズした。
【0114】
形成した二重乳濁液を50mlショートビーカーに移し、その有機相をヒュームフード内で絶えず攪拌しながら(IKA 磁性攪拌子、設定4)3時間蒸発させた。
【0115】
遠心分離によるナノ粒子の洗浄:
有機溶媒の除去後、形成したナノ粒子を遠心分離により16,200rcfで洗浄して水(10ml)に再懸濁した。
【0116】
実施例3 動的光散乱によるナノ粒子形成の確認
ナノ粒子の形成は、動的光散乱(DLS)としても知られる準弾性光散乱(QELS)を用いる粒度分布測定により確認した。粒子をBrookhaven Instruments Corporationの粒子径分析計(BIC 90 plus)を用いて製造業者提供の標準手順に従い分析した。粒子懸濁液を水に200倍希釈し、標準粒度分布測定パラメーター(温度25℃、レーザービーム角度90°、レーザー波長658nm)を用いて粒度分布測定した。粒子を、時間1分の粒度分布測定処理を10回実施することによりそれぞれ分析した。
【0117】
計器は生データを標準型のコレログラム(correlogram)で表示した。コレログラムは、異なる時間間隔における粒子からの散乱光強度の自己相関関数C(τ)および自己相関が減衰時間τとともにどう減衰するかを示す。散乱光の自己相関の減衰は、粒子径に依存し、小粒子ほど速やかである。計器はストークス-アインシュタイン式を適用することにより粒子径に関する情報を誘導する。この情報から、サンプル中の粒子の平均水力学直径およびさらに粒子集団について誘導されたデータが得られる。
【0118】
動的光散乱は大粒子の存在に高感度であって、サンプルの1%未満のときですら測定値に有意に影響を与えうる。その結果、計器が与える平均水力学直径は、サンプル中の大粒子の影響を強く受けて大いに変わりうる。その結果、バッチ間で数10ナノメートルのサイズの差が観察されることがあり、この理由で、計器が与える完全なデータセットを見ることが重要であって、コレログラムは最も重要である。
【0119】
完全なデータセットを見ることにより、少数の大粒子が存在しても計器はサンプル中に存在する大多数の小粒子を容易に検出しうるので、サンプルを正確に特徴付けることが可能である。コレログラムの形状はそれ自体、粒子が小さいかどうかならびにサンプルが多分散物であるかどうかを非常に明確に示す。基線指数もデータの品質を正確に表示する。本文書中のデータは全て5以上の基線指数を示し、ここで10が読取値の最高可能品質に対する最高値である。
【0120】
図1aはQELSによる粒子懸濁液の粒度分布測定によって得たコレログラム(生データ)を示す。粒子が存在しないと光散乱は生じないので、このコレログラムは、粒子調製プロセスによりナノ粒子懸濁液が作られたことを明らかに示した。コレログラムの形状は、粒子が小さくかつ大きい凝集物は存在しないので懸濁液が優良な医薬品質であることを示した。QELSによるナノ粒子懸濁液の粒度分布測定は、平均水力学直径262.6nmのナノ粒子が形成されたことを示した(図1a)。粒子集団はまた、比較的単分散であって、サンプル中の粒子径の範囲の広さの尺度である多分散指数は0.262であることも見出された(図1a)。この値は粒子製剤に対する最高許容値の0.300より低い。全体的に、コレログラムは、二重乳濁液プロセスが良い品質のPBCAナノ粒子懸濁液を首尾よく作製したことを確認した。
【0121】
誘導されたデータ(ストークス-アインシュタイン式を用いて計器により作製された)は粒子の大部分が小さかったことを示唆する(図1b〜d)。この結果は、粒子集団のおよそ87.5%が138.19nm以下の直径を有することを示唆する(図1b)。懸濁液は大きい凝集物を含まずかつ直径506.81 nmを超える粒子を含有せず、粒子集団の大部分は有意に小さいことが見出された(図1c)。さらに、製剤は99.86nmより小さい粒子を含有しなかった(図1d)。それ故に、粒子の大部分は99.86〜138.19nmの直径であり、静脈内投与に理想的であるが薬物負荷を損なうほど小さくない。
【0122】
図1は、懸濁液中のナノ粒子の存在を示すQELSにより得た粒度分布測定データである。
【0123】
図1(a)は動的光散乱によるナノ粒子懸濁液の分析に従って得たコレログラムである。得たデータによると粒子の平均水力学直径は262.6 nmであり、多分散指数は0.262である。
【0124】
図1(b) 全サイズ範囲にわたる粒子集団(数)の分布を示すためにプロットしたナノ粒子の多モードサイズ分布(誘導したデータ)である。粒子集団の大部分(87.5%)は138.19nm以下の直径を有すると思われた。
【0125】
図1(c) 全サイズ範囲にわたる粒子集団(数)の分布を示すためにプロットしたナノ粒子の多モードサイズ分布(誘導したデータ)である。このデータは粒子サンプルの87.5%が138.19nm以下の直径を有しかつ100%が506.81nm以下の直径を有することを示唆する。それ故に、懸濁液は大きい凝集物を含まずかつそれ故に静脈内投与用に好適であると考えれらる。
【0126】
図1(d) 全サイズ範囲にわたる粒子集団(数)の分布を示すためにプロットしたナノ粒子の多モードサイズ分布(誘導したデータ)である。
【0127】
このデータは粒子サンプルの14.9%が99.86 nm以下の直径を有することを示唆する。
【0128】
色々なナノ粒子製剤を調製したときに、本プロセスは類似のナノ粒子径を生じることが見出された。表1は4回の異なる製剤試験のシリーズで得た粒度分布測定データを総括したものである。
【表1】

【0129】
全体的に、中空PBCAナノ粒子調製プロセスは所望の直径および多分散を生じることが見出された。
【0130】
実施例4 ナノ粒子の分析 電子顕微鏡によるナノ粒子形成および中空形態学の確認
粒子が形成されることおよびそれらが中空であることを確認するために、サンプルを電子顕微鏡により可視化した。ナノ粒子懸濁液を透過電子顕微鏡(TEM)により試験した。凍結乾燥したナノ粒子を走査顕微鏡(SEM)により分析した。両方の顕微鏡技法による分析はナノ粒子の形成を確認した。SEMは安定なナノ粒子が形成されたことを示した。TEMはナノ粒子が中空であり、PBCAポリマー壁によって囲まれた水コアを持つことを確認した。
【0131】
図2はSEMにより分析したナノ粒子を示す。
【0132】
図3はTEMによる中空ナノ粒子の画像を、比較のために固体PBCAナノ粒子を重ねた画像と共に示す。
【0133】
実施例5 モノクローナル抗体(ヒト抗CD23)の中空PBCAナノ粒子内への封入
モノクローナル抗体(WO99/58679に開示されたヒト抗CD23mAb)を、ホモジナイズ化プロセスの内部水相中への封入によりナノ粒子の水コア内に捕獲した。抗体の溶液を用いて一次乳濁液(w/o)を調製し、次いでこれを二次水相によりホモジナイズして二重乳濁液(w/o/w)を次の通り形成した。
【0134】
(iii)一次乳濁液(w/o)
内部相(w):5%コール酸ナトリウム(SIGMA)中のWO99/58679に開示した抗CD23 mAb(600μg)を、
78μl mAb溶液(7.2mg/ml)、
344μl H2Oおよび
500μl コール酸ナトリウム溶液(10% w/vストック溶液)を混合することにより調製した。内部水相の総体積は1mlであった。溶液は使用時まで氷上に置いた。使用前に、各溶液を1mlのインスリン・シリンジ(Terumo1ml、BDミクロランスニードル19G 1.5")中に吸い込んだ。
【0135】
外部相(o):ジクロロメタン(Fischer)中のPBCAポリマー(1%w/v)。
【0136】
有機相(DCM中のPBCAポリマー、6ml)を10mlビーカー(氷上に置いて冷却を保った)に注ぎ入れ、ホモジナイザーのプローブ(Ultra-Turrax、T25、50mlプローブ)を挿入した。
【0137】
溶液をパラフィルム(ビーカーとプローブに添付された)で覆い、24,000rpmの速度でホモジナイズした。
【0138】
一次乳濁液の形成:
ホモジナイザーが最高速度に到達すると直ちに、内部水相をプローブ近くの溶液の内部に注入して加えた。得られる乳濁液を2分間(氷上で)ホモジナイズし、次いでガラス製シリンジ(SGE、25ml、気密性、有機溶媒に好適な、P/N 009462 25MDR-LL-GT、バッチ番号F06-A2190、ブラント5cm 2R2ニードル、0.7mm IDを備えた)へ移した。
【0139】
(iv)二次乳濁液(w/o/w)
内部相(w/o):上記ホモジナイズ化ステップからの一次乳濁液
外部相(w):コール酸ナトリウム水溶液(1.25% w/v)
二次乳濁液の形成:
一次単一乳濁液(w/o)を用いて、二次水相(1.25%w/vコール酸ナトリウム)に加えてホモジナイズすることにより、二重乳濁液(w/o/w)を形成した。コール酸ナトリウム溶液(1.25%w/v、30ml)を50mlのトールビーカー(氷上で乳濁液を冷却保持している)に移し、Silverson L4RTホモジナイザーのプローブ(3/4インチプローブ、high emulsor screen)を挿入した。その溶液をパラフィルム(ビーカーとプローブに添付された)で覆い、8,000rpmの速度でホモジナイズした。ホモジナイザーが8,000rpmの速度に到達すると直ぐに一次乳濁液をプローブ近くの溶液中に注入した。得られる乳濁液を6分間ホモジナイズした。
【0140】
形成した二重乳濁液を50mlショートビーカーに移し、その有機相をヒュームフード内で絶えず攪拌しながら(IKA 磁性攪拌子、設定4)3時間蒸発させた。
【0141】
遠心分離によるナノ粒子の洗浄:
得られるナノ粒子を遠心分離によりペレット化し、封入された抗体を分離した。ペレット(捕捉された抗体)および上清(フリーの抗体)を全タンパク質アッセイにより分析して封入効率を決定した。
【0142】
600μg抗体の全量を用いたとき、封入効率は52%であることがわかった。封入の効率は十分に高く、PBCAポリマーの最高許容用量(マウスで50mg/kg)を超えることなく、治療可能量の抗体の送達が可能であることがわかった。さらに、異なるモノクローナル抗体、ヒト抗IL13を含有する粒子を調製することがその後に可能であった。このことは本方法がいずれの水溶性生物医薬品にも適用可能であることを示唆する。
【0143】
図4は封入効率測定値から得た結果を示す。
【0144】
実施例6 ナノ粒子からのモノクローナル抗体の放出
生物医薬品の効率的封入を達成するだけでなく、この材料が投与後に粒子から放出されかつその活性を保持し得ることを実証することが必要であった。粒子からの活性抗体の放出は最初、in vitroでの粒子の分解と続いての放出された抗体のELISAによる検出によって研究した。封入された抗体を放出するために、PBCAポリマーのブチルエステルを切断すると報じられたブチルエステラーゼ(ブタ肝臓由来、SIGMA)によって粒子を処理した。反応(リンゲル液、pH 7.0、37℃)の間、サンプルを異なる時点(0、1、2、3、4および24時間)に採取し、活性抗体の存在をELISAにより分析した。
【0145】
図5は粒子の酵素分解および放出された酵素のELISAによる分析後に得た放出プロファイルを示す。
【0146】
実施例7 ドメイン抗体(抗-雌鳥卵リゾチームdAb)の中空PBCAナノ粒子内への封入
以下の例においては、BCAアッセイを、Sigmaから入手したBCAキット(QPBCA)を用いて実施し、その取扱説明書に従って行った。フリーdAbは2倍および10倍に希釈して分析に供した。封入されたdAbは100倍に希釈した。
【0147】
ドメイン抗体(抗雌鳥卵リゾチームdAb)を、ホモジナイズ化プロセスの内部水相中への封入により、ナノ粒子の水コア内に捕捉した。この場合、内部水相は、dAbの20mg/ml溶液の0.5ml(10mgタンパク質)と安定剤溶液(コール酸ナトリウム、10%w/v)0.5mlの混合により調製した。次いでナノ粒子を、実施例4に記載の二重乳濁液プロセスにより調製した。得られるナノ粒子を遠心分離によりペレット化して封入された抗体を分離した。ペレット(捕捉された抗体)および上清(フリーの抗体)を全タンパク質アッセイ(ビシンコニン酸 アッセイ)により分析して封入効率を決定した。分析の結果を図6に示す。封入されたdAbの量は6.66mgであることが見出された。フリーdAbの量はで4.83mgあった。封入の効率は、従って、ほぼ66.6%であり、負荷効率は11.1%であった。従って、二重乳濁液法を用いてミリグラム量のタンパク質を中空PBCAナノ粒子に効率良く封入することが可能であった。
【0148】
実施例8 モノクローナル抗体(抗IL-13mAb)の中空PBCAナノ粒子内への封入
ホモジナイズ化プロセスの内部水相中への封入により、モノクローナル抗体(抗IL-13mAb)をナノ粒子の水コア内に捕捉した。内部水相を、mAb(10mgタンパク質)の20mg/ml溶液0.5mlと安定剤溶液(コール酸ナトリウム、10%w/v)0.5mlを混合することにより調製した。次いでナノ粒子を、実施例5に記載した二重乳濁液プロセスにより調製した。得られるナノ粒子を遠心分離によりペレット化して封入された抗体からフリーな抗体を分離した。両方のペレット(封入された抗体)と上清(フリーな抗体)を全タンパク質アッセイ(ビシンコニン酸 アッセイ)により分析して、封入効率を確認した。
【0149】
分析結果を図12に示した。封入されたmAbの量は8.62mgであることが見出された。フリーmAbの量は1.79mgであった。封入効率は86.2%であり、負荷効率は14.4%w/wであった。
【0150】
配列表

【0151】
配列





【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子担体の製造方法であって、以下のステップ:
a) ポリブチルシアノアクリレート(PBCA)を有機溶媒に溶解してポリマー溶液を形成するステップ;
b) 生物活性薬を含有する水溶液を該ポリマー溶液に加え、連続有機相中に水滴の一次乳濁液を形成するステップ;
c) 該一次乳濁液を水媒質と混合して二次乳濁液を形成するステップ;および
d) 有機相を蒸発させ、それによって生物活性薬を水相中に含有する中空内腔を含む微粒子担体を得るステップ、
を含む、上記方法。
【請求項2】
ステップ(a)がさらに、ゲル形成剤の添加を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ゲル形成剤がアガロースである、請求項3に記載の方法。
【請求項4】
ポリマーがペグ化されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
微粒子担体がミクロスフェアである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
微粒子担体がナノ粒子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
生物活性薬がタンパク質またはペプチドである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
生物活性薬が抗原結合分子である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
生物活性薬がドメインを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
生物活性薬が抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
生物活性薬がドメイン抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法で得られた封入された生物活性薬を含む微粒子担体。
【請求項13】
微粒子担体がナノ粒子である、請求項12に記載の微粒子担体。
【請求項14】
生物活性薬がタンパク質である、請求項13に記載の微粒子担体。
【請求項15】
ナノ粒子中タンパク質のポリマーに対する比が少なくとも約5% w/w、少なくとも約10% w/wまたは少なくとも約14% w/wである、請求項14に記載の微粒子担体。
【請求項16】
生物活性薬がペプチドである、請求項13に記載の微粒子担体。
【請求項17】
ナノ粒子中ペプチドのポリマーに対する比が少なくとも約5%w/wまたは少なくとも約10% w/wである、請求項16に記載の微粒子担体。
【請求項18】
生物活性薬が抗体である、請求項13に記載の微粒子担体。
【請求項19】
ナノ粒子中抗体のポリマーに対する比が少なくとも約5% w/wまたは少なくとも約10% w/wである、請求項18に記載の微粒子担体。
【請求項20】
生物活性薬がdAbである、請求項13に記載の微粒子担体。
【請求項21】
ナノ粒子中dAbのポリマーに対する比が少なくとも約5%w/w、少なくとも約10%w/wまたは少なくとも約14% w/wである、請求項20に記載の微粒子担体。
【請求項22】
請求項12〜21のいずれか1項に記載の微粒子担体を含む医薬組成物。
【請求項23】
疾患の治療または予防における請求項22に記載の組成物の使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−519893(P2011−519893A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507898(P2011−507898)
【出願日】平成21年5月5日(2009.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055437
【国際公開番号】WO2009/135854
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】