説明

生物発光分析およびそれに有用な細胞

本発明は、新規の生物発光分析、および、それに有用な細胞およびキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の生物発光分析、および、それに有用な細胞およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、化学物質の突然変異誘発性の可能性は、物質の発癌性の可能性にほぼ比例することが認められている。Grossblatt,N.(1983年)。ある種の物質が突然変異誘発性の危険を示すかどうかを早期に決定することは、化学、化粧品、食品添加剤および製薬産業に関する製品開発にとって重要である。
【0003】
突然変異誘発物質は、突然変異(すなわち生物の遺伝物質における検出可能で遺伝性の構造変化)の割合の増加を引き起こす物質である。このような変化としては、染色体全体の付加または欠失、染色体の構造変化(例えばトランスロケーション)、および、ゲノム配列の一部の構造変化(例えば、点突然変異、複数の連続するヌクレオチドの突然変異、および、ゲノム配列の部分的な欠失)が挙げられる。突然変異誘発性の変化は、遺伝子の作用にダメージを与えるか、または別の方法で妨害することができるので、突然変異誘発物質は、遺伝毒性物質、すなわち遺伝子にとって毒性の物質とみなされている。
【0004】
突然変異誘発物質を検出するための広く知られているインビトロ試験は、エイムス(Ames)分析である。この試験は、ヒスチジン依存性のサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)試験菌株における突然変異の逆戻り、それによる、それらの自身のヒスチジンを生産する細胞の能力を復元させる物質の能力を測定するものである(Ames等,1973a,1973bおよび1975;また、Ames,B.N.,1971年も参照)。エイムス分析に類似した、サルモネラ株(Lee,C−C,等,1994年、および、Hour,T−C.等,1995年)、および、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)株(Bosworth,D.等,1987年;および、Foster,P.L.等,1987年)におけるβ−ラクタマーゼ遺伝子の逆突然変異によるアンピシリン耐性の回復を測定する方法が開発されている。このような試験はいずれも、1個のヌクレオチドのその他のヌクレオチドでの置換、または、配列のフレームシフトを引き起こすヌクレオチド挿入または欠失のいずれかによって、単一のヌクレオチド逆突然変異による突然変異誘発物質を検出する菌株を用いる。
【0005】
エイムス型の分析の改変法が報告されており、例えば、Yahagi,T.等(1975年);Prival,M.J.およびMitchell,V.D.(1982年);Haworth,S.等(1983年);Kado,N.Y.,等(1983年);および、Reid,T.M.等(1984年);および、Current Protocols in Toxicology,ジョン・ワイリー&サンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)(2000年),第3章.Genetic Toxicology:Mutagenesis and Adduct Formation,第3章 Introduction,ユニット3.1 The Salmonella(Ames)Test for Mutagenicity,Alternate Protocol 1:Plate Assay With Preincubation Procedure;Alternate Protocol 2:Desiccator Assay for Volatile Liquids;Alternate Protocol 3:Desiccator Assay for Gases;Alternate Protocol
4:Reductive Metabolism Assay;Alternate Protocol 5:Modified(Kado)Microsuspension
Assayで報告されている。これらの改変法は、一般的に、用いられる試験物質の量
を最小化すること、および、分析の速度と作業効率を高めることを目的としている。
【0006】
共に譲渡された米国特許出願番号10/029,741は、新規のエイムス型の分析を開示しており、この分析は、特に、細菌細胞と、試験物質および外因性の代謝活性化系とを接触させることを含み、ここにおいて、この細菌細胞は、発現可能な異種lux(CDABE)遺伝子複合体(またはオペロン)を含み、さらに、突然変異していない形態で細胞が選択的培地中で代謝的に活性になることにおいて機能化されることが重要なポリペプチドをコードする遺伝子における可逆的な点変異を含む。
【0007】
突然変異誘発物質を同定するためのさらなる方法が説明されており、例えば、点突然変異のための、マウスリンパ腫系(Amacher等(1979年));染色体異常および姉妹染色分体の変換のための、チャイニーズハムスター卵巣系(Evans(1983年)およびWolff(1983年));小核分析(FenechおよびMorley(1985年));および、ショウジョウバエ変異誘発分析(Rasmuson等(1978年))が挙げられる。
【0008】
Schiestl等(1988年)は、酵母、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)における染色体内組換えに関する正の選択系を報告しており、これは、一方の3’末端と他方の5’末端において末端が欠失している遺伝子の2つのコピーを生産するHIS3遺伝子座におけるHIS3遺伝子の内部フラグメントを含むプラスミドの組み込みによる。
Sommers等(1995年)は、Schiestl等(1988年)によって説明された染色体内組換え系のための自動化方法を報告しており、これは、マルチウェルプレートを利用し、マイクロウェル波動方法を用いて逆突然変異の頻度を測定する。
Cote等(1995年)は、サルモネラ・チフィムリウムの生物発光株を用いたエイムス突然変異誘発分析を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在のところ利用可能な試験物質の突然変異誘発性の可能性を評価する方法、特にエイムス試験は、有用かつ重要な機能を提供してきたが、それにもかかわらず、可能性のある突然変異誘発性の信頼性のある的確な評価を、比較的速く経済的な手段で提供する新しい方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一形態において、物質を試験する方法に関し、本方法は、DEL選択マーカーと生物発光マーカーとを含む真核細胞を試験物質で処理すること、および、適切な選択培地の存在下で、細胞からの生物発光のレベルを測定することを含む。
【0011】
本発明のその他の形態は、物質を試験する方法を提供し、本方法は、DEL選択マーカーと生物発光マーカーとを含む真核細胞培養物を提供すること、前記真核細胞培養物の処理部分を試験物質で処理すること、処理部分の生物発光を示す細胞の数を測定すること;および、真核細胞培養物の未処理部分の生物発光を示す細胞の数を測定することを含む。
【0012】
本発明のさらなる形態は、物質を試験する方法を提供し、本方法は、DEL選択マーカーと生物発光マーカーとを含む真核細胞培養物を提供すること、前記真核細胞培養物の処理部分を試験物質で処理すること;適切な選択培地の存在下で、処理部分の生物発光を示す細胞の数を測定すること、適切な選択培地の存在下で真核細胞培養物の未処理部分の生物発光を示す細胞の数を測定すること、並びに以下から選択されるカテゴリー、すなわち、前記選択培地の存在下における前記未処理部分と比較して、前記処理部分の生物発光を
示す細胞の数を増加させる物質;および、前記選択培地の存在下における前記未処理部分と比較して、前記処理部分の生物発光を示す細胞の数を増加させない物質から選択されたカテゴリーに従って、試験物質を特徴付けることを含む。
【0013】
本発明の追加の形態は、DEL選択マーカーと生物発光マーカーとを含む真核細胞を提供する。
本発明の方法の形態の好ましい実施態様において、前記生物発光の増加は、前記未処理部分と比較して統計学的に有意である。
本発明の方法の形態のさらなる好ましい実施態様において、前記生物発光を示す細胞の増加は、前記未処理部分と比較して少なくとも2倍である。
本発明の方法の形態のその他の好ましい実施態様において、前記真核細胞は、哺乳動物のリンパ系細胞;ヒトのリンパ芽球様細胞;酵母細胞;および、サッカロミセス・セレビジエの細胞から選択される細胞から誘導され、好ましくはサッカロミセス・セレビジエの細胞から誘導される。
【0014】
本発明の細胞の形態の好ましい実施態様において、前記真核細胞は、哺乳動物のリンパ系細胞;ヒトのリンパ芽球様細胞;酵母細胞;および、サッカロミセス・セレビジエの細胞から選択される細胞から誘導され、好ましくはサッカロミセス・セレビジエの細胞から誘導され、より好ましくはサッカロミセス・セレビジエRS112−luc株の細胞から誘導される。
【0015】
〔図面の簡単な説明〕
本発明のさらなる理解、同様に、それらのその他の目的とさらなる特徴のために、以下のそれらの様々な好ましい実施態様の詳細な説明について添付の図面と合わせて説明する:
図1は、DEL組換えのメカニズムを示す。DEL組換えは、DNA二本鎖の破断によって開始され、これは、一本鎖のアニーリングによって修復される。これにより、介在配列(Leu)を用いた複製された対立遺伝子の欠失と、野生型His3マーカーの復元が起こる。
【0016】
図2は、pYES−GL3−GPDプラスミドのマップであり、ルシフェラーゼ遺伝子、luc+、構成的グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GPD)プロモーターを示し、pYES6/CT主鎖のベクター、細菌および酵母の複製起点(それぞれpUCoriおよび2μ)、および、ブラスチシジンおよびアンピシリン耐性遺伝子由来である。
【0017】
図3は、DEL組換えを受ける細胞の生物発光検出の原理を示す。細胞は、DELマーカーの組換えによって選択培地で生存できるようになる。生存する細胞のみが代謝的に活性であり、生物発光の表現型を維持するのに十分なATPを生産する。
【0018】
図4は、DEL組換え頻度(A部)および生存(B部)に関するRS112luc細胞のメタンスルホン酸メチル(MMS)処理の作用のグラフ表示である。
【0019】
〔発明の詳細な説明〕
本明細書で用いられる用語は、それらの当業界において一般的な意味を有する。しかしながら、本発明をさらに明確にするためと、便宜上、本明細書(実施例や添付の請求項を含む)で用いられている所定の用語および成句の意味は、以下に示す通りである。
【0020】
「生物発光」は、生きている細胞における光の放出を意味しており、ここにおいて光の放出は、代謝活性に依存しており、それに対応するものである(例えば図3を参照)。
「生物発光マーカー」は、細胞に取り込ませて発現させる場合、細胞の代謝活性の際に生物発光を引き起こすヌクレオチド配列を意味する。
「遺伝子」は、特定のタンパク質を発現する核酸フラグメントを意味し、コード配列の前の調節配列(5’非コード配列)と、後の調節配列(3’非コード配列)を含む。用語「遺伝子」は、ゲノム中の天然の位置に存在する内因性遺伝子、または、宿主生物中に通常は見出されないが、遺伝子移入によって宿主生物に導入される外来遺伝子を含む。
【0021】
「突然変異誘発物質」は、突然変異の割合の増加を引き起こす物質である。突然変異誘発物質は、遺伝子の作用にダメージを与えるか、または別の方法で妨害することによって遺伝毒性作用を有する可能性がある。
「突然変異」は、生物の遺伝物質における検出可能で遺伝性の構造変化であり、例えば、染色体全体の付加または欠失、染色体の構造変化(例えばトランスロケーション)、および、ゲノム配列の一部の構造変化(例えば、点突然変異、複数の連続するヌクレオチドの突然変異、および、ゲノム配列の部分的な欠失)が挙げられる。
【0022】
「DEL選択マーカー」は、破壊された遺伝子配列を意味し、ここにおいて:(1)上記破壊は、遺伝子配列内へのヌクレオチド配列の挿入を含み;(2)前記ヌクレオチド配列は、遺伝子配列の一部の1つの複製を含み;(3)前記ヌクレオチド配列の複製された部分の頭から尾(すなわち、5’末端から3’末端)の方向は、遺伝子配列の方向と同じであり;および(4)遺伝子配列は、適切な選択培地で成長させた場合、細胞表現型の選択に有用である。DEL選択マーカーの様々な実施態様を、以下で説明する。
【0023】
「選択培地」は、細胞の表現型の選択に用いることができる組成物を意味する。例えば、ヒスチジンを生産することができる酵母細胞を選択的にスクリーニングするためには、ヒスチジンが欠損した栄養組成物を用いることができる。neo耐性遺伝子を有する細胞を選択的にスクリーニングするためには、抗生物質G−418を含む栄養組成物を用いることができる。
「適切な選択培地」は、DEL選択マーカーに関して用いられる場合、DEL選択マーカーの遺伝子配列に基づく細胞の表現型の選択に用いることができる組成物を含む選択培地を意味する。
【0024】
本明細書で用いられる略語は、それらの当業界において一般的な意味を有する。しかしながら、本発明をさらに明確にするためと、便宜上、所定の略語の意味は、以下に示す通りである:
「℃」は、セ氏温度を意味し;「μL」は、マイクロリットルを意味し;「ATCC」は、バージニア州マナサスにあるアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)を意味する(ウェブサイト:www.atcc.org);「DNA」は、デオキシリボ核酸を意味し;「EDTA」は、エチレンジアミンテトラ酢酸を意味し;「g」は、グラムを意味し;「kg」は、キログラムを意味し;「mg」は、ミリグラムを意味し;「mL」は、ミリリットルを意味し;「mM」は、ミリモルを意味し;MMSは、メタンスルホン酸メチルを意味し;「ng」は、ナノグラムを意味し;「PBS」は、リン酸緩衝生理食塩水を意味し;「RNA」は、リボ核酸を意味し;および「RPM」は、毎分回転数を意味する。
【0025】
環境要因は、ガンの原因に関連する。実際に、環境要因の役割は、遺伝よりも緊密なガンとの因果関係を有する可能性もある(Lichtenstein等(2000年))。結果として、発ガン性物質であることがわかっているか、またはその疑いがある天然化学物質および人工の化学物質を同定し、それらとヒトとの接触を少なくする努力がなされてきた。
【0026】
上述したように、化学物質の発癌性の可能性は、一般的に、その突然変異誘発性によって少なくとも部分的に予想可能であるとみなされている。Grossblatt,N.(1983年)。そのために、化学、化粧品、食品添加剤および製薬産業のような産業で、それらの製品の発癌性の危険を、それらの突然変異誘発性の特性を最小化することによって緩和することが可能となってきた。
【0027】
DEL分析はまた、染色体内組換え分析としても知られており、最初に、Schiestl等(1988年)によってサッカロミセス・セレビジエを用いて説明されており、ここにおいて、標的とする遺伝子配列において誘導されたゲノム配列の一部の欠失を突然変異誘発物質によって測定する。従って、この分析は、試験化合物の突然変異誘発性の可能性に関する評価が可能である。
【0028】
DEL分析で用いられる標的遺伝子配列は、外因性DNAフラグメントの組み込みによって機能が破壊されている遺伝子である。例えば、Schiestle等(1988年)は、HIS3遺伝子が外因性DNAフラグメントの組み込みによって破壊されている「RSY6」と命名されたS.セレビジエ株(ATCCより入手可能,寄託番号201682)の使用を説明している。得られたhis−酵母株は、その増殖培地において成長するためにヒスチジンを必要とする。ヒスチジン非含有培地において、自発的にhis+に復帰する細胞は極めて少数であると予想される。しかしながら、細胞が突然変異誘発物質で処理されると、逆突然変異速度は、通常のバックグラウンドレベルを超えて増加する。
【0029】
図1で、DEL分析の機能について提唱されているメカニズムが説明されている(GalliおよびSchiestl(1998年))。図1に示されるように、突然変異誘発物質は、二本鎖DNAの破断の形成を引き起こす。このような破断が破壊された遺伝子で起こった場合、細胞自身の修復メカニズムにより、外因性DNAの除去、および、一本鎖アニーリングを介した配列の修復を起こし、それによって遺伝子がその野生型に逆突然変異する可能性がある。
【0030】
DEL分析は、その他の突然変異誘発性分析よりも確かな利点を有する。例えば、DEL分析は、より一般的に使用されるサルモネラ逆突然変異エイムス分析よりも優れた発癌性の予測精度を有することが報告されている。エイムス分析を用いると陰性の結果が得られる発癌性化合物の多くが、DEL法では陽性である。(BishopおよびSchiestl(2000年))。
【0031】
しかしながら、現在のところ利用可能なDEL分析の一つの不利点は、可能性のある突然変異誘発物質の大規模で自動化されたスクリーニング(すなわち、ハイスループットスクリーニング)における非実際性である。例えば、現状の分析では、試験化合物が可能性のある発癌性物質であるかどうかを決定するために、目視できるコロニーまで成長できるような十分な時間を細胞に与えることが必要である。その上、成長するコロニーを可視化する必要があるために、現状の分析では、例えば必要な試験物質の量を減少させることが可能なマルチウェルプレートシステムに小型化することができない。
【0032】
本発明は、一形態において、DEL組換え現象のような突然変異誘発性の正の指標として生物発光を使用するDELタイプの方法の発見に基づいている。本発明によれば、これまで利用不可能であった様式で、未知の発癌性を有する可能性のある物質を、DEL組換えに関して迅速かつ経済的に試験することが可能である。
【0033】
本発明は、一成分として、生物発光マーカーを含み、同様に、破壊されたDELタイプの選択マーカーを含む細胞の使用に関与する。生物発光マーカーは、DEL組換えの結果として野生型の表現型に復帰した細胞の極めて初期の検出を可能にする。選択培地で成長
させた復帰突然変異細胞における生物発光は、非復帰突然変異体と比較すれば、それらの代謝活性の結果として発生する(図3を参照)。十分に高感度の検出手段が利用可能な場合、本発明の方法は、試験物質で処理した後極めて迅速に、個々の細胞の復帰突然変異体またはこれらの細胞微小コロニーの検出を可能にする。これは、検出を可能にするために細胞を大きなコロニーに成長させる必要性を不要にすると予想される。
【0034】
現在のところ利用可能なDEL分析に比べると、本発明の復帰突然変異細胞の生物発光の検出に基づく方法および細胞は、小型化された物質試験システム(例えばマルチウェルプレートを使用するシステム)の使用が可能である。本発明の方法および細胞は、突然変異誘発性の試験に必要な試験物質の量を顕著に減少させることが可能である。これは、試験物質がほんの少量しか利用できない場合に顕著な利点となり得る。加えて、生物発光の使用は、生物発光シグナルの迅速かつ正確な検出のための、高感度の装置(例えばCCDチップベースのフォトンカウンティングカメラ)の使用を可能にする。
【0035】
当業者であれば本発明の開示に基づき明白であるが、本発明の実施においてあらゆる適切な真核細胞が使用可能である。例えば、上記細胞は、脊椎動物(例えば哺乳動物、鳥類、魚類、爬虫類および両生類)由来、同様に、無脊椎動物(例えば、昆虫、線虫)由来、および、単細胞真核生物由来のものが挙げられる。多細胞真核生物については、上記細胞は、血液、内皮、胸腺、脾臓、骨髄、肝臓、腎臓、心臓、精巣、卵巣、心臓および骨格筋などのあらゆる臓器または組織から誘導されたものでもよいし、一次細胞でも、または、不死化細胞系から誘導された細胞でもよい。好ましい細胞としては、ヒトのリンパ芽球様細胞系、例えばGM6804(例えば、Monnat,R.J.等(1992年)、および、Aubrecht,J.等(1995年)を参照)、および、酵母細胞、例えばサッカロミセス・セレビジエ属の酵母細胞が挙げられる。
【0036】
本発明の方法に使用するための細胞および細胞系は、例えば、ATCC(マナサス,バージニア州20110−2209)から得てもよい。
【0037】
上記で定義したように、DEL選択マーカーは、破壊された遺伝子配列を意味し、ここにおいて:(1)上記破壊は、遺伝子配列内のヌクレオチド配列の挿入を含み;(2)前記ヌクレオチド配列は、遺伝子配列の一部の1つの複製を含み;(3)前記ヌクレオチド配列の複製された部分の頭から尾(すなわち、5’末端から3’末端)の方向は、遺伝子配列の方向と同じであり;および、(4)遺伝子配列は、細胞の表現型の選択に有用である。
【0038】
例えば、遺伝子配列に要素A−B−C−D−E−F−Gが含まれる場合、このような遺伝子配列に基づく適切なDEL選択マーカーは、配列A−B−C−B−C−D−E−F−G、A−B−C−X−B−C−D−E−F−G、および、A−B−C−B−C−X−D−E−F−G(ここにおいて、Xは、それ自身が、破壊の取り込みが成功した形質転換細胞を選択するために用いることができる選択マーカーである)を包含していてもよい。
【0039】
当業者であれば当然であるが、本発明の開示に基づき、本発明の実施において、DEL選択マーカーに適切なあらゆる表現型の選択マーカーが使用可能である。さらに当然ながら、用いられる選択マーカーのタイプは、一形態において、本発明の実施で用いられる細胞のタイプに応じて様々であり得る。
【0040】
本発明の一実施態様において、DEL選択マーカーは、破壊の結果として細胞が生存、代謝活性または成長を維持するために特定の栄養素が必要になるように栄養マーカー遺伝子の機能の破壊を含む。この実施態様において、栄養マーカーの非破壊型への逆突然変異を引き起こすことによって、細胞がそれに対応する栄養素が欠失した培地で増殖すること
を可能にする能力に関して物質を試験してもよい。典型的な栄養マーカーとしては、酵母細胞の場合、細胞のヒスチジン要求性を改変するhis3が挙げられる。その他の栄養マーカーは、本発明の開示に基づき当業者には明白であると予想される。
【0041】
その他の実施態様において、DEL選択マーカーは、細胞にとって毒性でしかない(すなわち、生存、代謝活性または成長を妨害する)と予想される特定の物理的な物質または化学物質に対する耐性を運搬する遺伝子である。このような「耐性マーカー」は、抗生物質、代謝拮抗物質または除草剤などの化学物質に対する耐性を細胞に与えるものである。耐性マーカー遺伝子の機能の破壊は、毒性物質に晒された場合に細胞に毒性を引き起こす。そのようなものとして、この実施態様は、遺伝子の非破壊型への逆突然変異を引き起こすことによって、細胞が毒性物質を含む培地で増殖することを可能にする能力に関して物質を試験することを含む。典型的な耐性マーカーとしては、以下が挙げられる:dhfr(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)、これはメトトレキセート耐性を付与する;neo、これは、アミノグルコシド系、ネオマイシン、および、G−418耐性を付与する;および、alsおよびpat、これは、それぞれクロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ耐性を付与する(Wigler,M.等(1980年);Colbere−Garapin,F.等(1981年)を参照)。その他の耐性マーカーは当業者既知であるか、または、本発明の開示に基づき当業者には明白と予想される。
【0042】
この開示に基づき当業者には明白と予想されるが、本発明の範囲内で、DEL選択マーカーはまた、二次的な遺伝学的要素で制御可能な非破壊型の栄養マーカーまたは耐性マーカーを包含していてもよく、ここにおいて、上記二次的な遺伝学的要素の機能は、破壊されている。このような二次的な遺伝学的要素としては、活性化ドメインに結合することによって、栄養マーカーまたは耐性マーカーの転写を開始させるか、またはその速度を促進する転写活性化タンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。従って、この実施態様によれば、二次的な遺伝学的要素のその機能的な形態への逆突然変異を引き起こすことによって、栄養マーカーまたは耐性マーカー遺伝子の発現を可能にする能力に関して、物質を試験してもよい。典型的な転写活性化因子および活性化ドメイン配列の組み合わせとしては、BD(R)Tet−Off遺伝子発現系(BDバイオサイエンシズ(BD Biosciences),パロアルト,カリフォルニア州)の一部であるTet調節性転写活性化因子が挙げられる。その他の転写活性化因子および活性化ドメイン配列は当業者既知であるか、または、本発明の開示に基づき当業者には明白と予想される。
【0043】
当業者には本発明の開示に基づきさらに当然と予想されるが、DEL選択マーカーはまた、転写抑制因子の遺伝学的要素によって制御可能な非破壊型の負の選択マーカー遺伝子を包含していてもよく、ここにおいて、転写抑制因子の機能が破壊されている。負の選択マーカーは、活性な場合、細胞にとって毒性である。従って、このような実施態様によれば、転写抑制因子のその機能的な形態への逆突然変異を引き起こすことによって、負の選択マーカー遺伝子の発現を可能にする能力に関して、物質を試験してもよい。典型的な負の選択マーカーは、単純疱疹ウイルス遺伝子、チミジンキナーゼであり、これは、薬物、ガンシクロビルの存在下で細胞毒性を引き起こす(Moolton(1986年))。その他の負の選択マーカーとしては、Hprt(6−チオグアニン、または、6−チオキサンチンの存在下で細胞毒性)、および、ジフテリア毒素、リシン毒素、および、シトシンデアミナーゼ(5−フルオロシトシンの存在下で細胞毒性)が挙げられる。
【0044】
転写抑制因子の遺伝学的要素は、発現された場合、負の選択マーカーの発現を抑制すると予想される。典型的な転写抑制因子は、例えばFire等(1998年)、Brummelkamp等(2002年)で説明されている方法を用いて、および、当業者既知のその他の方法で、RNA干渉(RNAi)の使用を介する。
【0045】
当業者には本発明の開示に基づき明白と予想されるが、本発明の方法および細胞で用いられるDEL選択マーカーを構成する破壊された遺伝子または遺伝学的要素は、内因性の遺伝子または遺伝学的要素であってもよいし、または、本発明の開示に基づき当業者周知の組換え方法によって前駆細胞に導入された外因性の遺伝子または遺伝学的要素であってもよい。その上、本発明で用いられる細胞は、一倍体(各タイプの染色体の1つのコピーを有する)、または、二倍体(各タイプの染色体の2つのコピーを有する)のいずれでもよい。従って、本発明の方法および細胞で二倍体細胞が用いられ、DEL選択マーカーを構成する破壊された遺伝子または遺伝学的要素が、内因性遺伝子または遺伝学的要素である場合、または、それ以外に内因的に存在する遺伝子または遺伝学的要素の2以上のコピーが存在する場合、本発明の方法の実施および細胞の使用のために前記遺伝子または遺伝学的要素の全てのコピーを崩壊させることが好ましい。
【0046】
好ましい実施態様において、サッカロミセス・セレビジエ酵母細胞で使用するためのDEL選択マーカーは、HIS3遺伝子を含み、これは、Schiestl等(1988年)で説明されているようにプラスミドpRS6の挿入によって破壊されており、さらに、米国特許第4,997,757号で説明されているように、S.セレビジエRSY6株およびRS112株に含まれている。
【0047】
当業者であれば当然であるが、本発明の開示に基づき、本発明の実施においてあらゆる適切な生物発光マーカーが使用可能である。さらに当然ながら、用いられる生物発光マーカーのタイプは、一形態において、本発明の実施で用いられる細胞のタイプに応じて様々であってよい。酵母細胞に使用するための典型的な生物発光マーカーは、ホタルルシフェラーゼ(luc)遺伝子であり(GeneBank(R)登録番号AAA89084)、これは、構成的なグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GPD)プロモーターによって作動する。Mumberg,D.等(1995年)。luc遺伝子によって触媒された生物発光は、基質(ルシフェリン)と、内因性ATPの形態のエネルギーとを必要とする。細胞が成長している培地に補助物質としてルシフェリンが含まれる限り、酵母細胞の生物発光はもっぱら細胞内ATPの利用可能性に依存する。細胞内ATP濃度はエネルギー代謝に依存するため、生物発光の生産高は、酵母細胞の代謝活性のレベルを示す。本発明の方法において、欠失組換え現象を引き起こしてDEL選択マーカーの機能を回復させる試験化合物によって、細胞は、該当する栄養素の非存在下で、または、細胞毒性を有する可能性のある物質の存在下で代謝活性を維持し増殖することが可能である(図3を参照)。
【0048】
本発明の方法および細胞で使用可能なその他の生物発光マーカーは当業者既知であるか、または、本発明の開示に基づき当業者には明白と予想される。例えば、Bronstein等(1994年)は、本発明で使用可能な生物発光マーカーを説明している。
【0049】
本発明の方法および細胞で用いられる生物発光マーカーおよびDEL選択マーカーは、このようなマーカーをコードするヌクレオチド配列を適切なベクターに挿入することによって細胞に取り込ませることもできる。このようなベクターは、細胞の染色体DNAに安定して取り込まれるように設計してもよいし、または、染色体へ組み込まなくても適用できるマーカーが発現されるように設計してもよい。
【0050】
細胞に挿入されたコード配列の転写および翻訳制御に必要な要素を含む発現ベクターを用いて、試験物質での処理後に、逆突然変異の際に生物学的に活性になると予想される生物学的に活性な生物発光マーカーまたはDEL選択マーカーを細胞に取り込ませてもよい。転写および翻訳調節要素としては、調節配列、例えばエンハンサー、構成的および誘導性プロモーター、ならびに、適用可能なマーカーをコードするベクターやポリヌクレオチド配列中の5’および3’非翻訳領域が挙げられる。このような要素は、それらの強度や特異性の点で様々なものが可能である。また、上記マーカーをコードする配列のより効率的な翻訳を達成するために、特定の開始シグナルを用いてもよい。このようなシグナルとしては、ATG開始コドン、および、隣接する配列、例えばコザック配列が挙げられる。マーカーおよびその開始コドンならびに上流調節配列をコードする配列が適切な発現ベクターに挿入されている場合、追加の転写または翻訳制御シグナルが必要ないこともある。しかしながら、コード配列またはそれらのフラグメントしか挿入されていない場合、インフレームのATG開始コドンなどの外因性翻訳制御シグナルがベクターによって提供されるべきである。外因性翻訳要素および開始コドンは、様々な由来のものが可能であり、天然でも合成でもよい。発現効率は、用いられる特定の宿主細胞系に適したエンハンサーを含ませることによって強化することもできる(例えば、Scharf,D.等(1994年)を参照)。
【0051】
本発明の開示に基づき当業者周知の方法を用いて、生物発光マーカーおよびDEL選択マーカー、ならびに、適切な転写および翻訳調節要素をコードする配列を含む発現ベクターを構築してもよい。これらの方法としては、インビトロでの組換えDNA技術、合成技術、および、インビボでの遺伝子組換えが挙げられる。(例えば、Sambrook,J.等(1989年),第4,8および16〜17章;Ausubel等(2003年),9,13および16を参照)。
【0052】
本発明のDEL選択マーカーが内因性遺伝子の破壊に関与する実施態様において、DEL選択マーカーを組み込む好ましい方法は、相同組換えによるものである。操作された遺伝子コンストラクトを細胞の染色体DNAに組み込むための相同組換え方法は当業者周知であり、および/または、当業者には本発明の開示に基づきさらに明白であると予想される。
【0053】
DEL選択マーカーを含む細胞の製造において、DEL選択マーカー標的化ベクターは、非破壊型の標的遺伝子を有する細胞に導入される。導入されたベクターは、標的遺伝子に相同なベクター中のヌクレオチド配列を用いて上記遺伝子を標的とする。この相同配列が、ベクターと標的遺伝子の配列とのハイブリダイゼーションを容易にする。ハイブリダイゼーションは、交差現象を介してベクター配列の標的遺伝子への組み込みを起こし、標的遺伝子の破壊を発生させる。
【0054】
標的化に用いられるベクターの構築に関する一般的な原理は、Bradley等(1992年)に総論されている。本発明の説明に基づき相同組換えに有効な配列の選択および使用に関する指針は、文献で説明されている(例えば、DengおよびCapecchi(1992年);Bollag等(1989年);ならびに、WaldmanおよびLiskay(1988年)を参照)。
【0055】
当業者であれば本発明に基づき理解できると思われるが、多種多様のクローニングベクターが、本発明のDEL選択マーカー標的化ベクターの構築において、ベクター主鎖として使用可能であり、例えば、pBluescript関連プラスミド(例えば、Bluescript KS+11)、pQE70、pQE60、pQE−9、pBS、pD10、ファージスクリプト(phagescript)、phiX174、pBKファージミド、pNH8A、pNH16a、pNH18Z、pNH46A、ptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、および、pRIT5PWLNEO、pSV2CAT、pXT1、pSG(ストラタジーン(Stratagene))、pSVK3、pBPV、pMSG、および、pSVL、pBR322、および、pBR322ベースのベクター、pMB9、pBR325、pKH47、pBR328、pHC79、ファージCharon28、pKB11、pKSV−10、pK19関連プラスミド、pUCプラスミド、および、pGEMシリーズのプラスミドである。これらのベクターは、多種多様な商業的な供給源より入手可能である(例えば、ベーリンガー・マンハイム・バイオケミカルズ(Boehringer Mannheim Biochemicals),インディアナポリス,インディアナ州;キアゲン(Qiagen),バレンシア,カリフォルニア州;ストラタジーン,ラホヤ,カリフォルニア州;プロメガ(Promega),マディソン,ウィスコンシン州;および、ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs),ビバリー,マサチューセッツ州)。しかしながら、望ましい宿主中で複製可能で生存可能でさえあれば、その他のあらゆるベクター、例えばプラスミド、ウイルス、またはそれらの部分も使用可能である。また、このようなベクターは、ゲノムを改変する予定の宿主細胞中でそれらの複製を可能にする配列を含んでいてもよい。このようなベクターの使用によって、組換えが起こっている最中の相互作用期間を延長させることができ、そのため、標的化効率を高めることができる(Ausubel等(2003年),ユニット9.16,図9.16.1を参照)。
【0056】
本発明の標的化ベクターを増殖させるために用いられた具体的な宿主細胞は、重要ではない。例えば、E.coli K12RR1(Bolivar等(1977年))、E.coli K12HB101(ATCC番号33694)、E.coli MM21(ATCC番号336780)、E.coli DH1(ATCC番号33849)、E.coli
DH5α株、および、E.coli STBL2が挙げられる。あるいは、C.セレビジエ(C.cerevisiae)、または、B.ズブチリス(B.subtilis)のような宿主細胞を用いてもよい。上述の典型的な宿主、同様に、その他の適切な宿主は、市販されている(例えば、ストラタジーン,ラホヤ,カリフォルニア州;および、ライフテクノロジーズ(Life Technologies),ロックビル,メリーランド州)。
【0057】
好ましくは、標的遺伝子を破壊するための標的化コンストラクトとしては、耐性マーカータンパク質をコードする外因性ヌクレオチド配列も挙げられる。様々な可能性のあるDEL選択マーカーのタイプに関して上述したように、耐性マーカーは、細胞にとって毒性でしかないと予想される特定の物理的な物質または化学物質に対する耐性を運搬する。耐性マーカー遺伝子は、交差現象に続いて耐性マーカー遺伝子が標的遺伝子に統合するように、耐性マーカー遺伝子が組み込みの後に発現できるような位置に置かれるような様式で、2つの端にある相同性領域間に位置する。選択可能な条件を与えることによって、ベクター配列の統合がうまくいかなかったその他の細胞から、耐性マーカーをコードするベクター配列を安定して発現する細胞を生存に基づいて単離することが可能である。
【0058】
上述の耐性マーカーを使用すると、標的化された相同組換えによってベクターが標的遺伝子の遺伝子座に統合された細胞と、染色体のあらゆる位置へのランダムな非相同的なベクター配列の組み込みによる細胞とが区別されない。それゆえに、本発明の細胞を作製するための相同組換え用の置換ベクターを用いた場合、負の選択マーカータンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むことも好ましい。DEL選択マーカーの様々な可能性のあるタイプに関して上述したように、負の選択マーカーは、発現されると細胞にとって毒性のタンパク質である。負の選択マーカーをコードするヌクレオチド配列は、置換ベクターの2つの相同領域の外側に位置する。この位置付けであれば、組み込みがランダムな非相同組換えによって発生した場合、細胞は、負の選択マーカーだけを統合し安定してそれを発現すると予想される;すなわち、標的化コンストラクトにおける標的遺伝子と2つの相同領域との相同組換えは、負の選択マーカーをコードする配列を組み込みから排除する。従って、負の条件を与えることによって、ランダムな非相同組換えによって標的化ベクターを統合した細胞は、生存能力を失う。
【0059】
上記生物発光マーカーおよび/またはDEL選択マーカー(またはそれらの標的配列)を含むベクターは、当業者周知の標準的な方法、または、本発明の開示に基づき当業者に
は明白と予想される方法に従って細胞に導入されていてもよい。当業者には明白と予想されるが、選択される形質転換プロトコールは、例えば対象の遺伝子の細胞型や性質に依存すると予想され、慣例的な実験に基づき選択することができる。数種の形質転換プロトコールが、Kaufman(1988年)に総論されている。方法としては、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、レトロウイルス感染、マイクロインジェクション、遺伝子銃、リポソームトランスフェクション、DEAE−デキストラントランスフェクション、または、トランスファーインフェクション(transferrinfection)が挙げられる(例えば、Neumann等(1982年);Potter等(1984年);Chu等(1987年);ThomasおよびCapecchi(1987年);Baum等(1994年);Biewenga等(1997年);Zhang等(1993年);RayおよびGage(1992年);Lo(1983年);Nickoloff等(1998年);Linney等(1999年);ZimmerおよびGruss,(1989年);および、Robertson等(1986年)を参照)。本発明の実施において外来DNAを酵母細胞に導入するための好ましい方法は、GietzおよびWoods(2002年)で説明されているように、酢酸リチウム/PEGの使用を含む。
【0060】
本発明の方法の実施で用いることができる細胞は、本発明の開示に基づき、当業者周知の方法に従って、保存および培養してもよい。例えば、哺乳動物細胞は、Bonifacino等(2003年),第1章で説明されている方法に従って培養してもよい。酵母細胞は、Ausubel等(2003年),第13章で説明されている一般的な方法に従って培養してもよい。
【0061】
本発明の実施方法において、細胞の試験物質での処理は、本発明の開示に基づき、当業者既知の方法に従って用いることもできる。用いられる方法は、用いられる細胞のタイプ、DEL選択マーカーおよび生物発光マーカーの特徴、ならびに、用いられる試験物質の特徴などの多くの変数に応じて様々であると予想される。
【0062】
一実施態様において、DEL選択マーカーとしてhis遺伝子の破壊を有する酵母細胞(サッカロミセス・セレビジエ)を、96ウェルプレート中で約17時間、約30℃で、試験物質で処理する。処理の後、この細胞を洗浄し(例えばPBSで)、超音波破砕して、単一の細胞の懸濁液への細胞の分離を確実にする。次に、この細胞を、適切な希釈で、ヒスチジン欠失培地、同様に、ヒスチジンを含む標準培地で平板培養する(以下を参照)。ヒスチジン欠失培地は、組換え頻度を決定するのに用いられる。標準培地(ヒスチジンを含む培地)は、試験物質の総体的な毒性を決定するのに用いられる。
【0063】
平板培養に最適な細胞希釈を決定するために、細胞計数装置を用いて(例えば、コールター・パーティクル・カウンター(Coulter Particle Counter),コールター社(Coulter Corp.,マイアミ,フロリダ州)を用いて)、細胞を計数してもよい。次に、10倍の連続希釈液を製造する(D0〜D5、ここにおいてD0は、最初の細胞培養物である)。最適な細胞の希釈は、(a)試験物質の毒性;(b)細胞の基準となる組換え頻度(処理なし);および、(c)処理後のDEL組換えのレベルを測定できる十分な細胞が存在するような濃度である。例えば、S.セレビジエ細胞を用いる場合の好ましい希釈は、1×105〜1×107細胞/mLである。
【0064】
ハイスループット検出のためには、細胞は、マルチウェルプレート(例えば、12、24または48ウェル)で平板培養してもよい。次に、この細胞を、復帰突然変異体のコロニーの成長を可能にする十分な時間(S.セレビジエ細胞の場合、好ましくは約30℃で約48時間)インキュベートする。
【0065】
当業者には明白と予想されるが、本発明の開示に基づき、生物発光を示す復帰突然変異
体コロニーは、あらゆる光検出装置を用いて可視化することもでき、このような装置としては、例えば、マルチウェルプレートでコロニーを同定するのに用いられるルミ−イメージャー(Lumi−lmager)(R)F1フォトンカウンティング装置(ロシュ・ダイアグノースティックス(Roche Diagnostics),インディアナポリス,インディアナ州)が挙げられる。使用可能なその他の光検出装置としては、ナイトアウル(NightOwl,ベルトールド(Berthold),ドイツ)、および、コダック(Kodak)IS1000(コダック(Kodak),ロチェスター,MY)が挙げられる。その上、細胞の生物発光コロニーのデジタル画像は、画像解析ソフトウェア(例えば、イメージ・プラス・プロ(Image Plus Pro)(R),バージョン4.1(メディア・サイバネティックス社(Media Cybernetics,Inc.),カールスバッド,カリフォルニア州)を用いた自動データ評価に適している。
【0066】
逆突然変異頻度は、試験物質での処理から生き残った細胞総数に対する復帰突然変異細胞の数で示すこともできる。例えば、his−DEL選択マーカーを有するS.セレビジエの場合、以下の式を用いて、逆突然変異頻度を計算してもよい。
【0067】
FR=(R×D)/(S×D′)
式中:
FR=逆突然変異頻度、
R=ヒスチジン欠失培地上の復帰突然変異体コロニーの数、
S=標準培地上のコロニーの数(を含む、
D=ヒスチジン欠失培地で平板培養した細胞の希釈係数、
D′=標準培地で平板培養した細胞の希釈係数。
【0068】
逆突然変異頻度が、コントロールと比較して少しでも統計学的に有意に増加していれば、遺伝毒性および/または発癌性の特性を有する可能性のある試験物質であることを示すと予想される。統計的有意性の測定は当業者周知であるか、または、本発明の開示に基づき明白と予想される。その結果は、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.01以下のp値が得られると予想される(Brownlee(1960年))。あるいは、逆突然変異頻度の増加は、少なくともコントロールの約2倍である。
【0069】
当業者には本発明の開示に基づき明白と予想されるが、コントロールと比較した細胞群の逆突然変異頻度の生物発光による測定は、試験物質の二次的な作用の補正を必要とする。例えば、逆突然変異頻度の増加を引き起こす所定の試験物質はまた、成長および/または細胞分裂の速度を減少させることもある。結果として、未処理コントロール細胞における復帰突然変異細胞の数は、処理された細胞群よりも速く成長し、コントロールの生物発光する総個体数が処理された細胞の生物発光する総個体数を超える可能性がある。このような二次的な作用は、細胞の生物発光がひとまとめに測定される場合(例えば、細胞を液状媒体に入れて全ての生物発光を測定することによって)、特に顕著になると予想される。
【0070】
このような二次的な作用を補正する好ましい方法は、例えば細胞が個別のコロニーを形成するような選択培地(固体または半固体の)を用いて、処理された細胞とコントロール細胞それぞれの個体群を固定することによる方法である。次いで、生物発光によって検出可能なコロニーまたは微小コロニーの数に基づき逆突然変異頻度が決定され得る。
【0071】
上述の分析方法は、単に説明のために示されたものである。本発明の開示に基づき当業者には明白と予想されるが、本発明の実施において多種多様な分析様式が利用可能である。用いられる細胞のタイプ、DEL選択マーカー、生物発光マーカーおよび試験物質、処理方法および細胞培養方法、ならびに、復帰突然変異体の検出方法に基づいて、改変をなすことができる。
【0072】
本発明の方法および細胞の好ましい使用は、化学的突然変異誘発性/遺伝毒性の物質の検出に関するが、本発明はまた、突然変異誘発性/遺伝毒性を引き起こす可能性のあるその他の物質、例えば電離放射線のような環境物質にも適用可能である。
【0073】
本明細書で引用された全ての特許、出願、公報、および、小冊子や技術報告などの文献の開示は、それらの全体が参照により開示に含まれる。当業者であれば、実施例、図面および添付の請求項を含む本発明の説明に基づき、本発明を最大限に利用することが可能であると考えられる。
【0074】
以下の実施例は、本発明の実施の単なる説明と解釈されるべきであり、あらゆる方式における開示されていない部分を何であれ限定するものではない。
【実施例】
【0075】
〔実施例1〕
酵母RS112−luc試験株の製造
pYES−GL3−GPDプラスミドの製造
プラスミドのpGL3−コントロール(プロメガ,マディソン,ウィスコンシン州)5μgを、HindIII(100ユニット)、および、XbaI(100ユニット)(ニューイングランドバイオラボ,ビバリー,マサチューセッツ州)を用いて、製造元が供給した緩衝液(総反応体積20μl)の存在下で、37℃で1時間消化した。次に、このサンプルを0.8%アガロースゲルにローディングし、TAE緩衝液(40mMトリス酢酸塩;2mM Na2EDTA×2H2O)中で、50mVで、1時間泳動した。エチジウムブロマイド(5ng/ml,30分間)を用いてバンドを染色し、トランスイルミネーター(transluminator)で2500μW/cm2で可視化した。2つのバンドが観察され、1つは、ルシフェラーゼ遺伝子の1.7kbのバンドであり、もう1つは、プラスミド主鎖を含む3.5kbのバンドであった。1.7kbのルシフェラーゼDNAを含むバンドを寒天ゲル断片として切り出し、この断片から、キアクイック(QIAquick)キット(キアゲン,バレンシア,カリフォルニア州)を用いてDNAを精製した。
【0076】
発現ベクターのpYES6/CT(インビトロジェン(Invitrogen),カールスバッド,カリフォルニア州)5μgを、上述のようにHindIIIとXbaI(いずれも、ニューイングランドバイオラボ製)で消化し、得られた消化物を、上述のようにアガロースゲル電気泳動で分離した。得られた単一の検出可能な5.8kbフラグメントのバンドを、上述のように切り出して精製した。
【0077】
得られたルシフェラーゼと直線状にしたpYES6/CTフラグメントを、ラピッドDNAライゲーションキット(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals),インディアナポリス,インディアナ州)を製造元のプロトコールに従って用いてライゲートし、プラスミドのpYES−GL3を作製した。
【0078】
このpYES−GL3を含むライゲーション混合物を用いて、E.coli細胞(UltraMax(R)DH5α−FT(R)コンピテント細胞,ライフテクノロジーズ,ロックビル,メリーランド州)を製造元の推奨プロトコールに従って形質転換させた。形質転換された細胞をアンピシリン培地で平板培養し、pYES−GL3を含むコロニーを選択した。
【0079】
グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GPD)のための強い構成的プロ
モーター(Mumberg等(1995年)を参照)を、p416GPD(ATCC寄託番号87361,M.Funkによって寄託された)をSacIとHindIIIで消化し0.7kbのDNAフラグメントを作製することによって製造した。
【0080】
pYES−GL3中のSwaIクローニング部位を、上述のようにpYES−GL3をSwaIで消化し、ウシ腸由来アルカリホスファターゼ(ニューイングランドバイオラボ)で37℃で2時間処理して5’リン酸基を除去することによって、SacIに改変した。得られたDNAをキアクイックキット(キアゲン)を用いて精製し、滅菌水10μlに再懸濁し、ラピッドDNAライゲーションキット(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ)を用いてSacIリンカー(ニューイングランドバイオラボ)にライゲートし、pYES−GL3−Sacプラスミドを作製し、これを、形質転換されたE.coli細胞(UltraMax(R)DH5α−FT(R)コンピテント細胞,ライフテクノロジーズ)から単離した。単離されたpYES−GL3−Sacを、SacIとHindIIIで消化し、Pgal1プロモーターを除去し、0.97kbのフラグメント(Pgal1プロモーターをコードする)、および、6.5kbのフラグメント(プラスミドをコードする)を得た。
【0081】
SacI/HindIIIが両端にあるGPDプロモーターフラグメントを、ラピッドDNAライゲーションキット(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ)を用いてpYES−GL3−Sacフラグメントにライゲートし、pYES−GL3−GPDプラスミドを作製した(図2を参照)。
【0082】
RSY112−luc株の製造
20〜50マイクロリットルの酵母RS112株の接種材料(米国特許第4,997,757号の段落34,46〜64行で説明されている)を、YPDプレートから(Bio101,カールスバッド,カリフォルニア州)回収し、滅菌水1mlに再懸濁した。この細胞をマイクロ遠心分離機を用いて15秒間沈降させ、水を除去した。得られた細胞のペレットを、50%PEG(240μl)、1M酢酸リチウム(36μl)、2mg/ml一本鎖DNA(25μl)、pYES−GL2−GPDプラスミド(5μl)1μg、および、滅菌水(45μl)からなる形質転換混合物に再懸濁し、42℃で60〜180分間インキュベートした。形質転換の後、この細胞懸濁液をマイクロ遠心分離機で15秒間沈降させ、上清を捨てた。得られたペレットを滅菌水200〜400μlに穏やかに再懸濁し、この細胞を、50μg/mlブラスチシジン(インビトロジェン)を含む寒天プレートで平板培養した。30℃で3日後に、形質転換されたブラスチシジン耐性酵母細胞のコロニーを可視化した。液状媒体中、0.4mMルシフェリン(プロメガ)の存在下で、1つの発光コロニーを選択し、RS112−luc細胞を作製した。
実施例1は、本発明の方法で使用可能な、本発明のRS112−luc細胞の製造を説明する。
【0083】
〔実施例2〕
RS112−luc細胞を用いて遺伝毒性物質を同定するための分析
水600mlに溶解させた酵母窒素原礎培地(Bio101,カールスバッド,カリフォルニア州)4g、−Leuアミノ酸混合物(アデニンヘミ硫酸塩1.8g,ヒスチジンHCl1.2g,ウラシル1.2g,これら全て、シグマ−アルドリッチ社製(Sigma−Aldrich Co.,セントルイス,ミズーリ州))0.4g、および、デキストロース12gからなるロイシン欠損最小培地(−LEU培地)50mL中で、RS112−luc細胞の接種材料を30℃で一晩(17〜22時間)成長させた。植菌の前に、−LEU培地をオートクレーブ処理で滅菌し、ろ過滅菌したアデニンヘミ硫酸塩(2.5mg/mL)溶液4mLを添加して、オートクレーブ処理によって失われたアデニンを補給した。得られたRS112−luc細胞の培養物を32000RPMで回転沈降させ、PBSで2回洗浄した。次に、この細胞を、−LEU培地に2×106/mlの濃度で再懸濁し、氷上に置いた。この細胞を、96ウェルプレート中で、遺伝毒性メチル化物質、メタンスルホン酸メチル(MMS,シグマ−アルドリッチ社)で、30℃で17時間処理した。各ウェルには、細胞懸濁液200μlと適切な濃度の試験化合物または媒体とを入れた。処理後に、このプレートを、3200RPMで10分間回転させ、上清を除去した。次に、この細胞を、PBS200μlで2回洗浄し、超音波発生装置(ブランソン・ウルトラソニック社(Branson Ultrasonic Corp.),ダンベリー,コネチカット州)を用いて5分間再懸濁した。細胞濃度を、コールター・パーティクル・カウンター(コールター社,マイアミ,フロリダ州)を用いて測定し、平板培養に最も適した希釈を決定した。希釈していない培養物についてはD0、および、10倍の連続希釈についてはD1〜D5と指定された細胞懸濁液の希釈液を製造した。細胞懸濁液50μlを2組のマルチウェルプレート(例えば、12、24または48ウェルプレート)で平板培養した。復帰突然変異体を検出するための第一の組には、水10mlに溶解させた酵母窒素原礎培地(Bio101,カールスバッド,カリフォルニア州)0.6g、−hisアミノ酸混合物(アデニンヘミ硫酸塩1.8g、ロイシン1.8g、ウラシル1.2g,全てシグマ−アルドリッチ社製)0.7g、デキストロース(フィッシャー・サイエンティフィック,フェアーローン,ニュージャージー州)2g、および、寒天(バクトアガー(Bacto Agar),ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson),スパークス,メリーランド州)1.7gからなるヒスチジン欠失寒天培地を入れた。細胞生存率を検出するための第二の組には、酵母窒素原礎培地0.6g、+4アミノ酸混合物(アデニンヘミ硫酸塩1.8g、ヒスチジンHCl1.2g、ロイシン1.8g、ウラシル1.2g,全てシグマ−アルドリッチ社製)0.4g、デキストロース(フィッシャー・サイエンティフィック)2g、および、寒天(バクトアガー、ベクトン・ディッキンソン)1.7gからなる基礎プラス4培地を入れた。平板培養の後、この細胞に、2.4%寒天水溶液5ml、PBS5ml、50mg/mlブラスチシジン10μl、および、0.1M甲虫ルシフェリン(beetle luciferin,プロメガ,マディソン,ウィスコンシン州)40μlからなるルシフェリンを含む軟寒天150μlを上塗りした。次に、このプレートを30℃で約48時間インキュベートした。生物発光を示す復帰突然変異体または生存する細胞のコロニーを、フォトンカウンティング装置ルミイメージャー(Lumimager F1,ロシュ・ダイアグノスティックス,インディアナポリス,インディアナ州)を用いて可視化した。
実施例2は、それらの生物発光のレベルに基づく復帰突然変異細胞の数に基づき試験物質の遺伝毒性を決定するために、本発明のRS112−luc細胞が試験される本発明の方法を説明する。
【0084】
RS112−luc細胞の寄託
本発明のRS112−luc細胞は、2004年2月17日に、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づき、米国バージニア州マナサスにあるアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に特許寄託番号PTA−5822として寄託された。
【0085】
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【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】DEL組換えのメカニズムを示す。
【図2】pYES−GL3−GPDプラスミドのマップである。
【図3】DEL組換えを受ける細胞の生物発光検出の原理を示す。
【図4】DEL組換え頻度(A部)および生存(B部)に関するRS112luc細胞のメタンスルホン酸メチル(MMS)処理の作用のグラフ表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DEL選択マーカーと生物発光マーカーとを含む真核細胞を試験物質で処理すること、および、適切な選択培地の存在下で、該細胞からの生物発光のレベルを測定することを含む、試験物質を特徴付ける方法。
【請求項2】
DEL選択マーカーと生物発光マーカーとを含む真核細胞培養物を提供すること、該真核細胞培養物の処理部分を試験物質で処理すること、適切な選択培地の存在下で、該処理部分の生物発光を示す細胞の数を測定すること、および、該選択培地の存在下で、該真核細胞培養物の未処理部分の生物発光を示す細胞の数を測定することを含む、試験物質を特徴付ける方法。
【請求項3】
DEL選択マーカーと生物発光マーカーとを含む真核細胞培養物を提供すること、該真核細胞培養物の処理部分を試験物質で処理すること、適切な選択培地の存在下で、該処理部分の生物発光を示す細胞の数を測定すること、該選択培地の存在下で、該真核細胞培養物の未処理部分の生物発光を示す細胞の数を測定すること、および、該試験物質を、選択されたカテゴリー(該選択培地の存在下における該未処理部分と比較して、該処理部分の生物発光を示す細胞の数を増加させる物質;および、該選択培地の存在下における該未処理部分と比較して、該処理部分の生物発光を示す細胞の数を増加させない物質)に従って特徴付けることを含む、試験物質を特徴付ける方法。
【請求項4】
生物発光を示す細胞の増加は、未処理部分と比較して統計学的に有意である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
生物発光を示す細胞の増加は、未処理部分と比較して少なくとも2倍である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
真核細胞または細胞培養物は、哺乳動物のリンパ系細胞;ヒトのリンパ芽球様細胞;酵母細胞;および、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の細胞から選択される細胞から誘導される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
真核細胞または細胞培養物は、サッカロミセス・セレビジエから誘導される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
DEL選択マーカーと生物発光マーカーとを含む真核細胞。
【請求項9】
哺乳動物のリンパ系細胞;ヒトのリンパ芽球様細胞;酵母細胞;および、サッカロミセス・セレビジエの細胞から選択される細胞から誘導された、請求項8に記載の細胞。
【請求項10】
サッカロミセス・セレビジエの細胞である、請求項9に記載の細胞。
【請求項11】
RS112−luc株(ATCC寄託番号PTA−5822)である、請求項9に記載の細胞。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか一項に記載の細胞および容器を含むキット。
【請求項13】
DEL選択マーカーと生物発光マーカーとを含む酵母細胞の胞子を含むキット。
【請求項14】
酵母細胞は、サッカロミセス・セレビジエである、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
酵母細胞は、RS112−luc株(ATCC寄託番号PTA−5822)から誘導される、請求項13に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−516716(P2007−516716A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546359(P2006−546359)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004124
【国際公開番号】WO2005/066628
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】