生物組織を加熱治療するための組立体に含まれるエネルギー発生手段を位置決めするための装置
本発明は、生物組織を加熱治療するための組立体のエネルギー発生手段(20)を位置決めするための装置(90)に関し、それによって、エネルギー発生手段(20)は、照準面に存在する1つの照準方向にエネルギーを放射するように適合される。本発明による装置(90)は、それが、エネルギー発生手段(20)の位置を変えることができ、その結果として、照準面内に存在するターゲット領域の周囲で前記照準面における照準方向を変えることができる移動手段を備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱(hyperthermia)によって生物組織を治療する分野に関し、より詳細には、乳房組織の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
温熱療法は、生物組織を局部的に治療するために一般的に使用されている技術である。それらは、エネルギー源(レーザー、マイクロ波、高周波、超音波)によって生物組織のターゲット領域を加熱することからなる。
【0003】
一般的には、局部温熱療法は、侵襲性(invasive nature)を最小限に抑制する医学的介入を可能にする。使用されるエネルギーの種類の中、とりわけ、集束超音波(FSU(focused ultrasound))は、興味のあるものである。なぜなら、集束超音波は、組織内におけるターゲット領域を深く非侵襲的に加熱するのを可能にするからである。
【0004】
仏国特許第2,823,678号公報(2002年10月25日に公開)は、治療されるべき組織のターゲット領域における温度を自動的に制御することを可能にする加熱治療のための組立体を開示している。そのユニットは、超音波発生器、ターゲット領域における温度の空間分布を測定および記録するためのMRI画像形成手段、および、温度の空間分布を各点ごとにディジタル処理する手段を備えた制御ユニットを備える。制御ユニットは、ターゲット領域における温度が温度設定プロフィールに追従するように、画像形成手段によって測定された温度の分布に応じて超音波発生器の空間における変位を制御する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乳房治療の構造においては、エネルギー発生手段の位置決めは、細心の注意を要することである。なぜなら、乳房は、胸膜、肺、および、心臓のような重要臓器の近くに存在するからである。組織の温度が上昇することによって発生する壊死がこれらの重要臓器に拡大するような状況を回避することは重要なことである。
【0006】
本発明によって解決される課題は、乳房を治療するように適合されかつ近くの臓器を傷つける可能性を最小限に抑制するエネルギー発生手段の位置決め装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
− 照準面に含まれる照準方向にエネルギーを放射するように適合されたエネルギー発生手段と、
− 患者の体の前頭面が照準方向にほぼ平行に延びかつ患者の乳房が照準方向を横切る位置に患者の体を維持するように適合された支持手段と、
を備えた乳房を加熱治療するための組立体であって、
前記組立体は、照準面において患者の乳房を中心にしてエネルギー発生手段の位置を変えるように適合された移動手段を含む位置決め装置をさらに備え、照準面が、前頭面にほぼ平行に延びる、ことを特徴とする組立体によってこの課題を解決する。
【0008】
そのような位置決め組立体によって、治療されるべき患者の体は、患者の体の前頭面が照準方向にほぼ平行に延びかつ患者の乳房がこの照準方向を横切る位置に維持される。照準方向に放射されるエネルギーは、乳房の中にだけ伝搬し、重要臓器に到達することは決してない。
【0009】
本発明の枠組みにおいて、「前頭面(coronal plane)」は、体を前方部分(anterior potion)と後方部分(posterior potion)とに分割する、体の重心を通る平面を意味する。前頭面(または、前額面)は、矢状面に垂直に延びる(脊柱を含む矢状面は、体の対称面であり、体を左部分と右部分とに区切る)。
【0010】
移動手段は、乳房を中心にして照準面におけるエネルギー発生手段の位置を変え、治療されるべきターゲット領域におけるエネルギー発生手段の焦点の位置を調節し、例えば温度の空間分布に応じて、エネルギーの分布を時間とともに変化させる。
【0011】
そのような構成において、エネルギーが、胸膜、肺、または、心臓のようなリスクのある臓器に蓄積する可能性は、減少する。なぜなら、超音波エネルギーは、乳房の中にしか伝搬しないからである。
【0012】
以下の記述から分かる、その他の特徴および利点は、ただ単に説明のためのものであり、限定的なものではない。そして、以下の記述は、添付の図面を参照して読まれるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1において、図示される加熱治療組立体1は、磁石10を含むMRI画像形成装置を備える。組立体1は、集束超音波トランスデューサ20の形態を有するエネルギー発生手段およびトランスデューサ20に供給することを意図したマルチチャンネル発生器(multichannel generator)60を備える。マルチチャンネル発生器60(これは、少なくとも8つの正弦波供給チャンネルを備える)は、電子的インピーダンス整合装置70を介してトランスデューサ20に接続される。
【0014】
組立体1は、また、画像再構成装置80と、画像再構成装置80から到着する入力データを受け取ることのできる中央演算処理装置を含む捕捉ユニット40と、トランスデューサ20によって放射されるエネルギーの分布を、MRI画像形成装置によって測定された温度の分布に応じて変化させるために、マルチチャンネル発生器60および移動システム30を、捕捉ユニット40によって提供されるデータに応じて制御することのできる制御ユニット50と、を備える。
【0015】
MRI画像形成装置は、それと同時に、約1ミリメータ程度の空間分解能、約1°C程度の精度、および、約1秒程度の時間分解能を備えた対象領域の3次元温度マップおよび解剖学的マップを提供する。
【0016】
マルチチャンネル発生器は、256のチャンネルを備え、それぞれのチャンネルは、プローブ20の超音波発生エレメントに供給することを意図したものである。それぞれのチャンネルにおいて生成される信号は、電子的なインピーダンス整合装置70によって、50Ωの同軸ケーブルを介してプローブ20に送信される。電子的なインピーダンス整合装置70は、また、米国特許第6,148,225号公報(2000年11月14日に公開)に記載された干渉を伴うことなく、集束超音波およびMRIを同時に使用することを可能にする低域通過フィルタの機能をも有する。
【0017】
磁石10の内側で捕捉された測定値は、画像再構成装置80によって、画像に変換され、そして、捕捉ユニット40に送信される。捕捉ユニット40は、高速フーリエ変換を実行し、捕捉された画像をフィルタリングし、そのようにして処理された画像をディスプレイ上に表示する。医者は、画像をディスプレイ上で可視化し、治療されるべき腫瘍を突き止めることができる。
【0018】
加熱されるべきターゲット領域を含む温度マップは、MRI画像形成装置によって生成される。データは、高速ネットワーク接続によって、捕捉ユニット40から制御ユニット50にリアルタイムで転送され、その制御ユニット50は、集束超音波発生手段を制御するために専用される。制御ユニット50は、マルチチャンネル発生器60および移動システム30の制御アルゴリズムを実行するための適切なプログラムを含む。このアルゴリズムは、MRI画像形成装置によって提供される温度マップに応じて、壊死させるために必要な熱を増加生成させることを意図して実行される超音波照準の座標および強度を計算することができる。制御アルゴリズムは、ターゲット領域における温度が所望のプロフィールに追従するようにマルチチャンネル発生器60および移動装置90を制御する。
【0019】
制御ユニット50によって送出される制御信号は、光ファイバー導線を介して、マルチチャンネル発生器60に送信される。
【0020】
治療の終了時点において、造影剤を使用するかまたは使用しない拡散MRIからの画像またはT2強調MRIからの画像が、生成された壊死の寸法およびそれの時間的な変化を確認するために患者の追跡検査を実行することを可能にする。
【0021】
(集束超音波トランスデューサ)
円形プローブの欠点は、照準軸に沿った焦点の細長い形状である。温度を大きく増加生成させるために、あるいは、大きな体積を治療するために、大量のエネルギーを沈積している間に、壊死は、トランスデューサに向かって皮膚の表面にまで進行する。
【0022】
図6から分かるように、いくつかの近接した連続パルスを放射している間に、それぞれのビームの一部分が、重なり合う。したがって、いくつかの連続パルスをディスクの表面全体を横切らせることによって、楕円が、得られ、その幅長さ比(length ratio)は、焦点の幅長さ比に等しい。超音波伝搬軸に沿ったこのエネルギー蓄積効果は、壊死が重要臓器の近くにまで拡大する場合、危険なことがある。
【0023】
超音波トランスデューサ20の場合、とりわけ、乳房の腫瘍を治療するように適合される。
【0024】
図2において、トランスデューサ20は、治療されるべき患者の乳房に対して配置されることを意図したものであり、そのために、超音波の照準方向は、患者の前頭面にほぼ平行に延びる。そのような構成において、エネルギーが、胸膜、肺、または、心臓のようなリスクのある臓器に蓄積する可能性は、減少する。なぜなら、超音波エネルギーは、乳房の中にしか伝搬しないからである。
【0025】
図3〜図5に示されるように、トランスデューサ20は、一般的に凹面の細長い形状を有する能動超音波放射面22を有する。より詳細には、トランスデューサの能動面22は、第1の方向における口径が90°よりも大きく、かつ、第1の方向に垂直な第2の方向における口径が90°よりも小さい球面の一部分である。能動面22は、8cmの曲率半径を有し、照準面の方向へ延びている。したがって、トランスデューサ20は、体内の8cmまでの深さに存在する領域を治療することを可能にする。
【0026】
図4は、YZ照準面におけるトランスデューサの平面図である。この平面において、能動面22は、144°の口径を有する。図5は、YZ照準面に垂直なYX平面におけるトランスデューサの側面図である。この平面において、能動面は、50°の口径を有する。十分な出力を得るために、能動面は、68cm2である。
【0027】
さらに、トランスデューサの口径を増加させることによって、焦点の長さを増加させることが可能である。その周辺における前頭面に焦点を配置することは、ほぼ半円弧を形成する。半円弧は、プローブの一方の面が他方の面上に放射するのを妨げることができず、そのことは、プローブの自己破壊の原因となる場合がある。XY平面におけるトランスデューサの口径は、144°である(図4)。十分にコンパクトなトランスデューサ、すなわち、68cm2の能動面を備えたトランスデューサを有するために、XZ平面におけるプローブの口径は、50°にまで低下する(図5)。これは、図2に示されるように、トランスデューサを体の近くに配置するのを可能にする。
【0028】
トランスデューサの口径を1つの方向において増加させることは、焦点の長さを低下させるのを可能にする。したがって、144°の口径によって、焦点の長さは、波長(ここでは1mm)に近い。
【0029】
このトランスデューサの細長い形状は、さらに、MRI画像形成装置内の容積を最適化することを可能にする。実際には、MRIの直径は、現在、60cmの半径に制限されている。これは、すでに、肥満体の患者がMRI診断を受けることを妨げている。MRIの治療プラットフォームによって、患者が使用することのできる空間は、さらに減少する。これらの理由から、このプラットフォームの厚さを最適化することは、きわめて重要なことであり、それは、図18に示されるように、主として、トランスデューサの大きさに依存する。トランスデューサは、十分な出力を有するために、少なくとも68cm2の放射面を有しなければならず、また、プラットフォームにおける最小限の高さを有しなければならない。トランスデューサが最大の口径と可及的に高い密度で配置されたエレメントとを有することは、望ましいことである。しかしながら、トランスデューサの口径は、180°を超えてはならない。さもなければ、トランスデューサは、それ自身に放射することになる。
【0030】
図10に示されるように、トランスデューサ20の能動面22は、超音波発生エレメントからなるマトリックスネットワークによって覆われ、かつ、トランスデューサ20が発生器60によって供給されたときに焦点Pの方向に超音波を放射することのできる256個の円形の発生エレメントを含む。
【0031】
トランスデューサが、マルチチャンネル発生器によってそれの接続を介して供給されたとき、超音波発生エレメント21は、約1.5MHzの周波数で放射することができる。焦点Pは、波長と同じ程度の寸法、すなわち、約1mmの寸法を有する。焦点において発生する音圧は、マルチチャンネル発生器60から供給される信号の振幅および位相シフトを変化させることによって調節されてもよい。
【0032】
超音波発生エレメント21によって形成されるマトリックスネットワークは、コンパクトであり、かつ、非対称である。マトリックスネットワークがコンパクトであるということは、それぞれの発生エレメント21が少なくとも2つのその他のエレメントと接触していることを意味し、発生エレメントによって占有される表面積を最小限にする。発生エレメントは、それらのエレメントがお互いから2mm以下の距離だけ離れて配置される場合、別の発生エレメントと接触しているとみなされる。マトリックスネットワークが非対称であるということは、発生エレメント21が能動面22上に非対称に分布することを意味する。
【0033】
反復アルゴリズムが、以下の原則に基づいて、エレメントを1つずつ配置する。
【0034】
第1のn個のエレメントの座標を知ることによって、プログラムは、(n+1)個のエレメントによって占有される表面積を最小にするために、n個のエレメントの中の少なくとも2つのエレメントと接触するエレメントの位置を計算する。2mmの最小距離を考慮せずに、計算は、散布マトリックスネットワークの場合と同様に、エレメントを無作為に配置することによって実行されてもよい。しかしながら、エレメント間の空間は、エレメントの接続間における電気的なアークの発生を防止するために、また、逆位相で振動するエレメント間の機械的な摩擦を防止するために、必要である。このエレメント間の空間は、ここで説明されるトランスデューサの場合、0.4mmに等しくなるように選択されている。
【0035】
プログラムは、占有される表面積を最小にする構成の中から、最も小さい対称度を示すものを選択するのを可能にする。
【0036】
このプログラムによって実行され得る第1のプロセスによれば、対称度は、Y軸を含むそれぞれの平面ごとに、それらの平面の1つに関して、エレメント間で対称なエレメント数を検索することによって、評価される。あるエレメントは、完全に対称でなくてもお互いにほぼ対称であり得るので、自己相関関数は、離散的によりももっと連続的に対称度を定量化することを可能にする。したがって、維持されるエレメント分布は、Y軸を含むそれぞれの平面が最小対称自己相関をもたらすエレメント分布である。対称軸を抑圧することは、マトリックスネットワークを使用するときに最も大きな制約となる対称のローブを減少させることを可能にする。
【0037】
より厳密ではあるがはるかに長い計算時間を必要とする第2の反復プロセスによれば、音場のシミュレーションが、図7、図8、および、図9に示されるように、占有される表面積を最小にするそれぞれの構成ごとに実行される。このプロセスは、トランスデューサによって生成される2次ローブを最小にする構成を正確に決定することを可能にする。
【0038】
しかしながら、第1のプロセスも、また、トランスデューサ上の層分布を抑圧することを可能にする。なぜなら、2つのエレメントが、Y軸上の同じ座標を有するとき、それらのエレメントは、Y軸を通る平面の1つに対してお互いに正確に対称であるからである。この特性から、ネットワークローブを最小にすることが得られる。
【0039】
これらのプロセスは、第1のエレメントの位置の選択によって、いくつかの異なる分布をもたらす。この不確実性を除去するために、256個のエレメントのそれぞれの分布を比較し、それによって、焦点品質の点から最良の特性を提供するものを選択してもよい。
【0040】
このようにして得られたマトリックスネットワークは、Gravillov,L.R.等による文献「A theoretical assessment of the relative performance of spherical phased arrays for ultrasound surgery」,IEEE transactions on ultrasonic, ferroelectrics and frequency control,January 2000,47,125−139に記載されるような散乱半無作為ネットワークの焦点品質の利点を提供し、かつ、コンパクトなままであるという利点を提供する。コンパクトさは、トランスデューサを利用できる空間が磁石の寸法によって制限されるMRI画像形成装置の内側で使用するのに都合がよいことである。
【0041】
発生エレメント21からなるマトリックスネットワークは、固有焦点を中心にしてすべての方向に7.5mmの精度で焦点Pの位置を電子的に調節することを可能にする。さらに、エレメント21の緻密で非対称な分布は、これまでに説明した領域の焦点の位置に関係なく、焦点における強度の8%よりも小さい2次強度ローブを維持することを可能にする。
【0042】
図7、図8、および、図9は、様々な形状を有する集束超音波トランスデューサによって生成される音場の強度曲線を示す。これらの図面から、細長い形状を有するトランスデューサによって生成された音場を、伝統的なトランスデューサによって生成された音場と比較することができる。
【0043】
図7は、左上隅に示される円形マトリックストランスデューサの焦点Pを中心にした20×20mm2のウィンドウ内のXY平面における音場の強度を示す。256個の同一エレメントを含むこのトランスデューサは、80mmの焦点距離および55mmの開口半径を有し、86°の口径をもたらす。音場の強度の計算は、1,540m/sの伝搬速度を有する媒体において1.5MHzの発生エレメントの放射周波数に関して、実行された。この計算は、寸法が0.76×0.76×3.5mm3の焦点を生成する。
【0044】
図8は、図3に関して説明されかつ左上隅に示されるトランスデューサの焦点Pを中心にした20×20mm2のウィンドウ内のYZ平面における音場の強度を示す。このトランスデューサは、同様に、80mmの焦点距離を有し、1,540m/sの伝搬速度を有する媒体において1.5MHzで動作する。この計算は、YZ平面における寸法が1.28×1.6mm2の焦点を生成する。
【0045】
図9は、図3に関して説明されかつ左上隅に示されるトランスデューサの焦点Pを中心にした20×20mm2の窓内のXY平面における音場の強度を示す。図7の計算パラメータと同じ計算パラメータによって、寸法が0.48×1.28×1.6mm3の焦点が、得られる。
【0046】
さらに、トランスデューサの照準中心を機械的に上下に移動させることを可能にするために(図18における右側の双方向矢印)、円形矢印に基づいてトランスデューサを旋回させることは、トランスデューサを並進させることよりも賢明なことである。並進移動は、より大きな空間をプラットフォームに要求し、胸郭に隣接する乳房の部分に到達するのを不可能にする。青軸に沿ったトランスデューサの回転の最大自由度を有するために、トランスデューサは、それの断面が半楕円形に対応するような形で切断される。3次元において、それは、楕円柱と球体との共通部分(intersection)に対応する。三角形の断面は、より大きな回転を可能にするが、丸みのある角が、トランスデューサの人間工学および剛性のために必要とされる。
【0047】
(トランスデューサ位置決め装置)
信号の電子制御は、迅速かつ正確なものである。しかしながら、先端の位置を電子的に調節することは、制限され、それだけでは、先端が乳房のあらゆる領域に到達するのを可能にしない。この理由から、腫瘍の中心にトランスデューサを機械的にセンタリングすることが、必要である。
【0048】
図13において、図示される乳房の加熱治療のための組立体は、患者の体の前頭面が照準方向にほぼ平行に延びるとともに患者の乳房が照準方向を横切る位置に患者の体を維持するように適合された支持手段100を備える。
【0049】
支持手段は、患者が横たわるMRI画像形成装置10のベッド110上に配置されるように適合されたプラットフォームから構成される。プラットフォーム100が、ベッド110上に配置されたとき、それは、プラットフォームとベッドとの間に空間を形成することによって、ベッドにほぼ平行に延びる。プラットフォームとベッドとの間に形成された空間は、集束超音波トランスデューサとトランスデューサの位置決め装置とを備えたエネルギー発生手段を収容することを意図したものである。
【0050】
図19からより詳細に分かるように、プラットフォーム100は、患者がMRI画像形成装置10のベッド110上にうつぶせに横たわっているときに患者の乳房が治療のために穴101および102の中へ案内されるような形で配置された2つの穴101および102を備える。人間工学的なプラットフォーム100は、患者が快適であることを保証するとともに患者の体重がプラットフォームの下に配置されたトランスデューサにかかることを防止することを可能にする。
【0051】
位置決め装置90が、図14に示される。移動手段は、エネルギー発生手段20が患者の前頭面に平行な照準方向にエネルギーを放射する位置にそれらのエネルギー発生手段20を維持するように適合される。また、位置決め装置は、エネルギー発生手段20の位置を患者の乳房を中心にして患者の前頭面に平行な照準面において変化させるように適合される。
【0052】
移動装置は、患者が配置されるMRI画像形成装置のベッド110の長手方向エッジに沿って配置されることを意図した2つのロッド901および902と、2つのガイドレール910および912とを備え、それらのガイドレール910および912は、それらの先端でロッド901および902上に置かれ、ロッド901および902に沿って摺動し、ベッド110の方向を横切って延びる。2つのガイドレール910および912のそれぞれは、支柱920および922をそれぞれ収容し、それらの支柱920および922は、MRI画像形成装置のベッド110に対しておおよそ垂直な方向に延び、それのレール910および912に沿って摺動することができる。2つの支柱920および922は、一般的にはリング状のフレーム903を支持し、そのフレーム903上に、エネルギー発生手段が、搭載される。リング状のフレーム903は、患者の乳房が収容される中央照準領域の境界を定める。
【0053】
エネルギー発生手段は、一般的には球面状の能動面を有する集束超音波トランスデューサ20を備える。トランスデューサは、トランスデューサ20の照準面がリング状フレーム903の平面内に延びるような仕方で、かつ、トランスデューサ20の球面状能動面の固有焦点がフレーム903の中心に配置されるような仕方で、リング状のフレーム903上に搭載される。
【0054】
図20からより詳細に分かるように、位置決め装置90は、フレーム903の位置を変化させるように適合された第1の移動手段930を備える。これらの移動手段930によって、フレーム903は、照準面において、それの中心を軸にして回転することができ(回転R1)、それにより、照準面において患者の乳房の周囲でトランスデューサ20の位置を変化させることを可能にする。このために、第1の位置決め装置930は、ベルトおよび歯車からなる機械的なシステムを備える。第1の位置決め装置の駆動ベルト932は、ベッドの長手方向に延び、かつ、クランク931によって制御される。
【0055】
さらに、位置決め装置は、フレーム903の平面内に延びる回転軸943の形態で照準面の角度を変化させるように適合された第2の移動手段940を含む。エネルギー発生手段20は、軸943を中心にしてフレーム903に対して回転するように組み立てられる。したがって、エネルギー発生手段20は、患者の前頭面に対してわずかに傾斜することができる(回転R2)。第2の移動手段940は、フレームに対して、したがって、患者の前頭面に対して、+40°から−40°までの間隔(clearance)で照準面を傾斜させることを可能にする。 この特徴は、超音波トランスデューサの焦点Pの位置をさらに調節することを可能にする。
【0056】
エネルギー発生手段20は、有利には、丸みのある輪郭を備えた超音波トランスデューサからなり、それは、トランスデューサをベッド110または支持手段100に接触させることなく、トランスデューサの位置および角度を変化させることを可能にする。
【0057】
さらに、位置決め装置は、ベッド110の長手方向エッジに沿って延びるロッド901および902を備えた第3の並進移動手段950を含む。トランスデューサ20、リング状フレーム903、支柱920および922、および、レール910および912から構成される組立体は、ロッド901および902に沿ってベッド110の長手方向に動かされてもよい(並進移動T1)。このために、オペレータは、クランク931および941を回転させて、組立体をベッド110の長手方向に引き出しあるいは押し込むだけでよい。
【0058】
位置決め装置は、ガイドレール910および912を備えた第4の並進移動手段960を含む。トランスデューサ20、リング状フレーム903、および、支柱920および922から構成される組立体は、ベッド110の横方向に延びるレール910および912に沿って摺動することができる(並進移動T2)。したがって、組立体は、MRI画像形成装置のベッドの幅方向に沿って配置されてもよい。並進移動装置960は、トランスデューサ20の位置を、治療されるべき患者の乳房の位置に適合させることを可能にする。このために、並進移動手段960は、ロッド901を含み、そのロッド901の端部には、クランク961が、搭載される。オペレータは、クランク961を回転させることによって、ロッド901の回転を制御することができる。ロッド901の回転は、ベッド110に対して横方向に延びるベルト(図示しない)を制御する。そのベルトには、トランスデューサ20、リング状フレーム903、および、支柱920および922から構成される組立体が、取り付けられている。ベルトは、レール910および912に沿って組立体を並進させる。
【0059】
したがって、トランスデューサ20は、これまでに説明された4つの移動手段930、940、950、および、960によって、2つの並進移動軸および2つの回転軸に沿って移動することができる。このようにして、照準の中心を乳房内のどのような領域にでも位置することができ、それと同時に、照準方向を前頭面にほぼ平行に維持することができる。移動手段930、940、および、960は、ベッドの足元に配置されたクランク931、941、および、961によって遠隔制御される。したがって、これらの移動手段は、ベッド110上の患者の位置を変えずに、トランスデューサ20の位置を調節することを可能にする。
【0060】
位置決め装置および支持手段は、きわめて簡素な設備を提供する。なぜなら、その設備は、それらの手段をMRI画像形成装置のベッド上に直接に配置するだけでよいからである。
【0061】
さらに、上述された位置決め装置は、あまり場所をとらず、そのことは、位置決め装置を支持手段の下に設置することを可能にし、それによって、患者のための最大量の空間をMRI画像形成装置10内に確保する。
【0062】
(超音波伝搬を促進するためのインタフェース手段)
患者の体の外部に存在するエネルギー発生手段によって放射されるエネルギーは、部分的に、患者の体の内部に存在する治療されるべき領域に向けて放射され、かつ、部分的に、異なる音響密度の媒体間のインタフェースのために失われる。
【0063】
治療されるべきターゲット領域への超音波の送信を簡素化するための解決法が、図15に示される。
【0064】
図15は、集束超音波トランスデューサを示す。トランスデューサの能動面は、治療されるべき患者の皮膚と接触することを意図した変形可能な膜によって覆われる。トランスデューサの能動面と膜との間に形成される空間は、水で満たされる。この特徴は、トランスデューサによって生成された超音波が患者の体の内部へ伝搬することを助長する。実際に、超音波発生エレメントによって放射された超音波は、ほぼ一定の音響密度を有する媒体内を伝搬する。
【0065】
水中におけるキャビテーションの作用を抑圧するために、水は、真空ポンプによって事前に脱気されてもよい。
【0066】
(マルチチャンネル供給発生器)
図16は、集束超音波トランスデューサに供給することを意図したマルチチャンネル発生器の電子的なアーキテクチャーの例を概略的に示す。マルチチャンネル発生器は、加熱治療組立体の制御ユニットによって制御される。マルチチャンネル発生器60は、振幅および位相をお互いに独立して制御されることが可能な、かつ、100ms以下のスイッチング時間を提供することが可能な、少なくとも256の正弦波供給チャンネルを含む。
【0067】
図16において、制御ユニットは、シリアルポートの速度を115,200kb/sから460,800kb/sにまで増加させることを可能にする「MOXA C104H」ボードを含む。制御ユニットは、周波数、位相、および、振幅に関する情報をマルチチャンネル発生器に送信し、それらの周波数、位相、および、振幅は、対応する制御信号を生成するために、発生器によって使用される。そのようなシステムによって、制御信号は、65msごとに、完全に設定し直されてもよい。
【0068】
2m/sの速度を備えたハイドロリックピストンの場合、集束超音波トランスデューサの焦点の移動は、それぞれの点間の最大距離が4mmであれば、2秒ごとに1つの点に制限される。他方において、マトリックストランスデューサと組み合わせると、この発生器は、1秒ごとに15の独立した点を加熱することを可能にする。
【0069】
治療組立体は、MRI画像形成装置を取り囲むファラデー箱の外部に配置された制御ユニットを、ファラデー箱の内部に配置されたマルチチャンネル発生器に接続することを可能にする光ファイバーバンドルを備える。光ファイバーバンドルは、長距離にわたる高速伝送を可能にし、電磁妨害に対する優れた保護を実現する。光ファイバーバンドルは、外部からの電磁障害を発生させることなく、制御ユニットによって生成された情報を、ファラデー箱を介して送信することを可能にする。したがって、MRI画像形成装置の動作を妨害することなく、制御ユニットと発生器との間の接続が確保される。
【0070】
さらに、発生器は、MRI室の中で動作するように設計される。発生器が含むボードは、微弱な電磁波を生成するように選択されたものである。したがって、マルチチャンネル発生器の設置は、2つの光ファイバーを設置することしか必要としない。
【0071】
マルチチャンネル発生器は、68HC11マイクロプロセッサを含む。マイクロプロセッサの機能は、データを32のボード上のプログラマブルロジック装置(PLD)に配信することであり、それらのボードは、それぞれ、8つの正弦波を生成する。そして、プログラマブルロジック装置は、位相および周波数に関する情報をダイレクトディジタルシンセサイザー(DDS)に送信し、出力に関する情報を増幅器に送信する。それらのダイレクトディジタルシンセサイザー(DDS)は、並列に配置され、かつ、それらが受信した位相情報および周波数情報に従ってトランスデューサの超音波発生エレメントからなるマトリックスネットワークに供給される信号を生成することができる。ダイレクトディジタルシンセサイザーは、信号を高速かつ正確にスイッチングすることを確実にする。この特徴は、±5°よりも大きな位相精度を超えることのない遅延線を備えた伝統的な超音波信号発生器の改善を意味する。そして、正弦波の振幅は、可変利得増幅器によって調節される。
【0072】
すべてのダイレクトディジタルシンセサイザーに共通のクロックを使用することは、マルチチャンネル発生器のすべての出力状態を同期してスイッチングすることを確実にする。この特徴は、超音波トランスデューサによって生成された超音波信号が集束しない過渡状態を回避することを可能にする。共通クロックは、信号の集束を維持することによって、患者の安全性を改善する。
【0073】
制御ユニットによる信号の設定は、データを含むファイルを以下の順序でマルチチャンネル発生器のマイクロプロセッサに送信することによってなされる。
【0074】
− すべての超音波発生エレメントに共通の周波数を符号化する4つのオプションバイト、および、それらの値は、
【数1】
である。したがって、周波数Fは、±3MHzの精度で0〜24MHzの範囲内において定義される。
【0075】
− 以下のようにしてそれぞれの信号のそれぞれの位相φを2バイトで定義する512バイト、すなわち、
【数2】
512バイトで符号化することは、すべての位相を±0.04°の精度で0〜360°の範囲内において調節することを可能にする。
【0076】
− 以下の関係式に従ってそれぞれのチャンネルの出力電力を定義する256バイト、すなわち、
【数3】
【0077】
したがって、出力電力は、±8mWの精度で最大4Wまで変化させることができる。
【0078】
通信プロトコルは、半二重接続モードにおけるXMODEMフォーマットである。伝送される128バイトのそれぞれのパケットは、1バイトで符号化された巡回冗長検査(CRC(cyclic redundancy check))文字によって受信を制御するレシーバーによって送信される。このようにして、制御ユニットは、周波数、位相、および、振幅を設定するファイルを22msごとに送信することができる。
【0079】
256チャンネル発生器のアーキテクチャは、以下の利点を有する。
− 制御信号を設定し直す際の速度、
− 信号の同時変更、
− 微弱な電磁波、
− 出力正弦波の設定における精度、
− 確実なデータ交換、
− ポータビリティ。
【0080】
(インピーダンス整合装置)
256チャンネルのそれぞれにおいて、図17に示される電子的なインピーダンス整合装置が、マルチチャンネル発生器の出力と圧電エネルギー発生エレメントとの間に挿入される。磁石の中央へのアクセスを妨げることなくエネルギー発生手段にできるだけ近づけるために、256の回路は、磁石の下に配置されたハウジング内に配置される。
【0081】
インピーダンス整合装置は、2つの役割を有する。
【0082】
一方において、インピーダンス整合装置は、圧電エネルギー発生エレメントのインピーダンスを50Ωに適合させることを可能にする。
【0083】
このために、図17に示される装置は、低域通過フィルタ内に組み立てられた誘導部L1および容量C1の部品を備える。インダクタンス値および容量値は、以下のように選択される。
【数4】
【0084】
ここで、ZRおよびZIは、圧電エネルギー発生エレメントの電気的なインピーダンスの実数部および虚数部である。そのようなインダクタンス値および容量値によって、マルチチャンネル発生器から見た電気的なインピーダンスは、50Ωに設定される。
【0085】
電子的な整合装置は、発生器から50Ωの同軸ケーブルを介して到着するエネルギーの最適な伝達を可能にする。インダクタンスL1の値が大きすぎて高い周波数において動作せず、あまりにも大きな損失を発生させないために、電子的なインピーダンス整合装置がプローブの近くに存在することが必要である。
【0086】
他方において、インピーダンス整合装置は、MRI画像形成装置(磁場勾配)から信号発生器への干渉および超音波信号からMRI信号への干渉を制限する。このために、部品L1およびC1は、2次低域通過フィルタを生成する。しかしながら、高い周波数におけるフィルタの動作は、制限される。このことから、
【数5】
において共振するノッチフィルタからなる回路ネットワークが、この周波数における信号を1/200に減衰させるために、マルチチャンネル発生器の出力と誘導部品L1および容量部品C1を備えた低域通過フィルタとの間に挿入される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】乳房を加熱治療するための組立体の様々な構成要素を概略的に示す図である。
【図2】集束超音波トランスデューサの形態を有するエネルギー発生手段を患者の乳房に対して位置決めすることを示す図である。
【図3】集束超音波トランスデューサの斜視図である。
【図4】集束超音波トランスデューサの平面図である。
【図5】集束超音波トランスデューサの側面図である。
【図6】集束超音波トランスデューサの連続する2つの照準間の空間カバーレージを概略的に示す図である。
【図7】様々な形状を呈する集束超音波トランスデューサによって生成される音場強度曲線を示す図である。
【図8】様々な形状を呈する集束超音波トランスデューサによって生成される音場強度曲線を示す図である。
【図9】様々な形状を呈する集束超音波トランスデューサによって生成される音場強度曲線を示す図である。
【図10】トランスデューサの能動面上に存在する超音波発生エレメントの分布を概略的に示す正面図である。
【図11】トランスデューサの能動面上に存在する超音波発生エレメントの分布を概略的に示す側面図である。
【図12】トランスデューサの能動面上に存在する超音波発生エレメントの分布を概略的に示す平面図である。
【図13】本発明による加熱治療組立体において患者の体を維持するように適合された支持手段を概略的に示す図である。
【図14】本発明によるエネルギー発生手段の位置決め装置を概略的に示す図である。
【図15】乳房において超音波の伝搬を促進することを意図したインタフェース手段を備えた集束超音波トランスデューサの形態を有するエネルギー発生手段を概略的に示す図である。
【図16】集束超音波トランスデューサに供給することを意図したマルチチャンネル発生器の電子的なアーキテクチャーの例を概略的に示す図である。
【図17】発生器供給チャンネルと超音波発生エレメントとの間のインピーダンス整合回路を概略的に示す図である。
【図18】患者を維持するために提供された支持手段の内部において、エネルギー発生手段を位置決めすること、および、MRI受信アンテナを位置決めすることを概略的に示す図である。
【図19】図13に示される支持手段をより詳細に示す平面図である。
【図20】図14に示される位置決め装置の構成要素手段を概略的に示す平面図であり、これらの位置決め手段は、図19に示される支持手段の下に配置される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱(hyperthermia)によって生物組織を治療する分野に関し、より詳細には、乳房組織の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
温熱療法は、生物組織を局部的に治療するために一般的に使用されている技術である。それらは、エネルギー源(レーザー、マイクロ波、高周波、超音波)によって生物組織のターゲット領域を加熱することからなる。
【0003】
一般的には、局部温熱療法は、侵襲性(invasive nature)を最小限に抑制する医学的介入を可能にする。使用されるエネルギーの種類の中、とりわけ、集束超音波(FSU(focused ultrasound))は、興味のあるものである。なぜなら、集束超音波は、組織内におけるターゲット領域を深く非侵襲的に加熱するのを可能にするからである。
【0004】
仏国特許第2,823,678号公報(2002年10月25日に公開)は、治療されるべき組織のターゲット領域における温度を自動的に制御することを可能にする加熱治療のための組立体を開示している。そのユニットは、超音波発生器、ターゲット領域における温度の空間分布を測定および記録するためのMRI画像形成手段、および、温度の空間分布を各点ごとにディジタル処理する手段を備えた制御ユニットを備える。制御ユニットは、ターゲット領域における温度が温度設定プロフィールに追従するように、画像形成手段によって測定された温度の分布に応じて超音波発生器の空間における変位を制御する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乳房治療の構造においては、エネルギー発生手段の位置決めは、細心の注意を要することである。なぜなら、乳房は、胸膜、肺、および、心臓のような重要臓器の近くに存在するからである。組織の温度が上昇することによって発生する壊死がこれらの重要臓器に拡大するような状況を回避することは重要なことである。
【0006】
本発明によって解決される課題は、乳房を治療するように適合されかつ近くの臓器を傷つける可能性を最小限に抑制するエネルギー発生手段の位置決め装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
− 照準面に含まれる照準方向にエネルギーを放射するように適合されたエネルギー発生手段と、
− 患者の体の前頭面が照準方向にほぼ平行に延びかつ患者の乳房が照準方向を横切る位置に患者の体を維持するように適合された支持手段と、
を備えた乳房を加熱治療するための組立体であって、
前記組立体は、照準面において患者の乳房を中心にしてエネルギー発生手段の位置を変えるように適合された移動手段を含む位置決め装置をさらに備え、照準面が、前頭面にほぼ平行に延びる、ことを特徴とする組立体によってこの課題を解決する。
【0008】
そのような位置決め組立体によって、治療されるべき患者の体は、患者の体の前頭面が照準方向にほぼ平行に延びかつ患者の乳房がこの照準方向を横切る位置に維持される。照準方向に放射されるエネルギーは、乳房の中にだけ伝搬し、重要臓器に到達することは決してない。
【0009】
本発明の枠組みにおいて、「前頭面(coronal plane)」は、体を前方部分(anterior potion)と後方部分(posterior potion)とに分割する、体の重心を通る平面を意味する。前頭面(または、前額面)は、矢状面に垂直に延びる(脊柱を含む矢状面は、体の対称面であり、体を左部分と右部分とに区切る)。
【0010】
移動手段は、乳房を中心にして照準面におけるエネルギー発生手段の位置を変え、治療されるべきターゲット領域におけるエネルギー発生手段の焦点の位置を調節し、例えば温度の空間分布に応じて、エネルギーの分布を時間とともに変化させる。
【0011】
そのような構成において、エネルギーが、胸膜、肺、または、心臓のようなリスクのある臓器に蓄積する可能性は、減少する。なぜなら、超音波エネルギーは、乳房の中にしか伝搬しないからである。
【0012】
以下の記述から分かる、その他の特徴および利点は、ただ単に説明のためのものであり、限定的なものではない。そして、以下の記述は、添付の図面を参照して読まれるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1において、図示される加熱治療組立体1は、磁石10を含むMRI画像形成装置を備える。組立体1は、集束超音波トランスデューサ20の形態を有するエネルギー発生手段およびトランスデューサ20に供給することを意図したマルチチャンネル発生器(multichannel generator)60を備える。マルチチャンネル発生器60(これは、少なくとも8つの正弦波供給チャンネルを備える)は、電子的インピーダンス整合装置70を介してトランスデューサ20に接続される。
【0014】
組立体1は、また、画像再構成装置80と、画像再構成装置80から到着する入力データを受け取ることのできる中央演算処理装置を含む捕捉ユニット40と、トランスデューサ20によって放射されるエネルギーの分布を、MRI画像形成装置によって測定された温度の分布に応じて変化させるために、マルチチャンネル発生器60および移動システム30を、捕捉ユニット40によって提供されるデータに応じて制御することのできる制御ユニット50と、を備える。
【0015】
MRI画像形成装置は、それと同時に、約1ミリメータ程度の空間分解能、約1°C程度の精度、および、約1秒程度の時間分解能を備えた対象領域の3次元温度マップおよび解剖学的マップを提供する。
【0016】
マルチチャンネル発生器は、256のチャンネルを備え、それぞれのチャンネルは、プローブ20の超音波発生エレメントに供給することを意図したものである。それぞれのチャンネルにおいて生成される信号は、電子的なインピーダンス整合装置70によって、50Ωの同軸ケーブルを介してプローブ20に送信される。電子的なインピーダンス整合装置70は、また、米国特許第6,148,225号公報(2000年11月14日に公開)に記載された干渉を伴うことなく、集束超音波およびMRIを同時に使用することを可能にする低域通過フィルタの機能をも有する。
【0017】
磁石10の内側で捕捉された測定値は、画像再構成装置80によって、画像に変換され、そして、捕捉ユニット40に送信される。捕捉ユニット40は、高速フーリエ変換を実行し、捕捉された画像をフィルタリングし、そのようにして処理された画像をディスプレイ上に表示する。医者は、画像をディスプレイ上で可視化し、治療されるべき腫瘍を突き止めることができる。
【0018】
加熱されるべきターゲット領域を含む温度マップは、MRI画像形成装置によって生成される。データは、高速ネットワーク接続によって、捕捉ユニット40から制御ユニット50にリアルタイムで転送され、その制御ユニット50は、集束超音波発生手段を制御するために専用される。制御ユニット50は、マルチチャンネル発生器60および移動システム30の制御アルゴリズムを実行するための適切なプログラムを含む。このアルゴリズムは、MRI画像形成装置によって提供される温度マップに応じて、壊死させるために必要な熱を増加生成させることを意図して実行される超音波照準の座標および強度を計算することができる。制御アルゴリズムは、ターゲット領域における温度が所望のプロフィールに追従するようにマルチチャンネル発生器60および移動装置90を制御する。
【0019】
制御ユニット50によって送出される制御信号は、光ファイバー導線を介して、マルチチャンネル発生器60に送信される。
【0020】
治療の終了時点において、造影剤を使用するかまたは使用しない拡散MRIからの画像またはT2強調MRIからの画像が、生成された壊死の寸法およびそれの時間的な変化を確認するために患者の追跡検査を実行することを可能にする。
【0021】
(集束超音波トランスデューサ)
円形プローブの欠点は、照準軸に沿った焦点の細長い形状である。温度を大きく増加生成させるために、あるいは、大きな体積を治療するために、大量のエネルギーを沈積している間に、壊死は、トランスデューサに向かって皮膚の表面にまで進行する。
【0022】
図6から分かるように、いくつかの近接した連続パルスを放射している間に、それぞれのビームの一部分が、重なり合う。したがって、いくつかの連続パルスをディスクの表面全体を横切らせることによって、楕円が、得られ、その幅長さ比(length ratio)は、焦点の幅長さ比に等しい。超音波伝搬軸に沿ったこのエネルギー蓄積効果は、壊死が重要臓器の近くにまで拡大する場合、危険なことがある。
【0023】
超音波トランスデューサ20の場合、とりわけ、乳房の腫瘍を治療するように適合される。
【0024】
図2において、トランスデューサ20は、治療されるべき患者の乳房に対して配置されることを意図したものであり、そのために、超音波の照準方向は、患者の前頭面にほぼ平行に延びる。そのような構成において、エネルギーが、胸膜、肺、または、心臓のようなリスクのある臓器に蓄積する可能性は、減少する。なぜなら、超音波エネルギーは、乳房の中にしか伝搬しないからである。
【0025】
図3〜図5に示されるように、トランスデューサ20は、一般的に凹面の細長い形状を有する能動超音波放射面22を有する。より詳細には、トランスデューサの能動面22は、第1の方向における口径が90°よりも大きく、かつ、第1の方向に垂直な第2の方向における口径が90°よりも小さい球面の一部分である。能動面22は、8cmの曲率半径を有し、照準面の方向へ延びている。したがって、トランスデューサ20は、体内の8cmまでの深さに存在する領域を治療することを可能にする。
【0026】
図4は、YZ照準面におけるトランスデューサの平面図である。この平面において、能動面22は、144°の口径を有する。図5は、YZ照準面に垂直なYX平面におけるトランスデューサの側面図である。この平面において、能動面は、50°の口径を有する。十分な出力を得るために、能動面は、68cm2である。
【0027】
さらに、トランスデューサの口径を増加させることによって、焦点の長さを増加させることが可能である。その周辺における前頭面に焦点を配置することは、ほぼ半円弧を形成する。半円弧は、プローブの一方の面が他方の面上に放射するのを妨げることができず、そのことは、プローブの自己破壊の原因となる場合がある。XY平面におけるトランスデューサの口径は、144°である(図4)。十分にコンパクトなトランスデューサ、すなわち、68cm2の能動面を備えたトランスデューサを有するために、XZ平面におけるプローブの口径は、50°にまで低下する(図5)。これは、図2に示されるように、トランスデューサを体の近くに配置するのを可能にする。
【0028】
トランスデューサの口径を1つの方向において増加させることは、焦点の長さを低下させるのを可能にする。したがって、144°の口径によって、焦点の長さは、波長(ここでは1mm)に近い。
【0029】
このトランスデューサの細長い形状は、さらに、MRI画像形成装置内の容積を最適化することを可能にする。実際には、MRIの直径は、現在、60cmの半径に制限されている。これは、すでに、肥満体の患者がMRI診断を受けることを妨げている。MRIの治療プラットフォームによって、患者が使用することのできる空間は、さらに減少する。これらの理由から、このプラットフォームの厚さを最適化することは、きわめて重要なことであり、それは、図18に示されるように、主として、トランスデューサの大きさに依存する。トランスデューサは、十分な出力を有するために、少なくとも68cm2の放射面を有しなければならず、また、プラットフォームにおける最小限の高さを有しなければならない。トランスデューサが最大の口径と可及的に高い密度で配置されたエレメントとを有することは、望ましいことである。しかしながら、トランスデューサの口径は、180°を超えてはならない。さもなければ、トランスデューサは、それ自身に放射することになる。
【0030】
図10に示されるように、トランスデューサ20の能動面22は、超音波発生エレメントからなるマトリックスネットワークによって覆われ、かつ、トランスデューサ20が発生器60によって供給されたときに焦点Pの方向に超音波を放射することのできる256個の円形の発生エレメントを含む。
【0031】
トランスデューサが、マルチチャンネル発生器によってそれの接続を介して供給されたとき、超音波発生エレメント21は、約1.5MHzの周波数で放射することができる。焦点Pは、波長と同じ程度の寸法、すなわち、約1mmの寸法を有する。焦点において発生する音圧は、マルチチャンネル発生器60から供給される信号の振幅および位相シフトを変化させることによって調節されてもよい。
【0032】
超音波発生エレメント21によって形成されるマトリックスネットワークは、コンパクトであり、かつ、非対称である。マトリックスネットワークがコンパクトであるということは、それぞれの発生エレメント21が少なくとも2つのその他のエレメントと接触していることを意味し、発生エレメントによって占有される表面積を最小限にする。発生エレメントは、それらのエレメントがお互いから2mm以下の距離だけ離れて配置される場合、別の発生エレメントと接触しているとみなされる。マトリックスネットワークが非対称であるということは、発生エレメント21が能動面22上に非対称に分布することを意味する。
【0033】
反復アルゴリズムが、以下の原則に基づいて、エレメントを1つずつ配置する。
【0034】
第1のn個のエレメントの座標を知ることによって、プログラムは、(n+1)個のエレメントによって占有される表面積を最小にするために、n個のエレメントの中の少なくとも2つのエレメントと接触するエレメントの位置を計算する。2mmの最小距離を考慮せずに、計算は、散布マトリックスネットワークの場合と同様に、エレメントを無作為に配置することによって実行されてもよい。しかしながら、エレメント間の空間は、エレメントの接続間における電気的なアークの発生を防止するために、また、逆位相で振動するエレメント間の機械的な摩擦を防止するために、必要である。このエレメント間の空間は、ここで説明されるトランスデューサの場合、0.4mmに等しくなるように選択されている。
【0035】
プログラムは、占有される表面積を最小にする構成の中から、最も小さい対称度を示すものを選択するのを可能にする。
【0036】
このプログラムによって実行され得る第1のプロセスによれば、対称度は、Y軸を含むそれぞれの平面ごとに、それらの平面の1つに関して、エレメント間で対称なエレメント数を検索することによって、評価される。あるエレメントは、完全に対称でなくてもお互いにほぼ対称であり得るので、自己相関関数は、離散的によりももっと連続的に対称度を定量化することを可能にする。したがって、維持されるエレメント分布は、Y軸を含むそれぞれの平面が最小対称自己相関をもたらすエレメント分布である。対称軸を抑圧することは、マトリックスネットワークを使用するときに最も大きな制約となる対称のローブを減少させることを可能にする。
【0037】
より厳密ではあるがはるかに長い計算時間を必要とする第2の反復プロセスによれば、音場のシミュレーションが、図7、図8、および、図9に示されるように、占有される表面積を最小にするそれぞれの構成ごとに実行される。このプロセスは、トランスデューサによって生成される2次ローブを最小にする構成を正確に決定することを可能にする。
【0038】
しかしながら、第1のプロセスも、また、トランスデューサ上の層分布を抑圧することを可能にする。なぜなら、2つのエレメントが、Y軸上の同じ座標を有するとき、それらのエレメントは、Y軸を通る平面の1つに対してお互いに正確に対称であるからである。この特性から、ネットワークローブを最小にすることが得られる。
【0039】
これらのプロセスは、第1のエレメントの位置の選択によって、いくつかの異なる分布をもたらす。この不確実性を除去するために、256個のエレメントのそれぞれの分布を比較し、それによって、焦点品質の点から最良の特性を提供するものを選択してもよい。
【0040】
このようにして得られたマトリックスネットワークは、Gravillov,L.R.等による文献「A theoretical assessment of the relative performance of spherical phased arrays for ultrasound surgery」,IEEE transactions on ultrasonic, ferroelectrics and frequency control,January 2000,47,125−139に記載されるような散乱半無作為ネットワークの焦点品質の利点を提供し、かつ、コンパクトなままであるという利点を提供する。コンパクトさは、トランスデューサを利用できる空間が磁石の寸法によって制限されるMRI画像形成装置の内側で使用するのに都合がよいことである。
【0041】
発生エレメント21からなるマトリックスネットワークは、固有焦点を中心にしてすべての方向に7.5mmの精度で焦点Pの位置を電子的に調節することを可能にする。さらに、エレメント21の緻密で非対称な分布は、これまでに説明した領域の焦点の位置に関係なく、焦点における強度の8%よりも小さい2次強度ローブを維持することを可能にする。
【0042】
図7、図8、および、図9は、様々な形状を有する集束超音波トランスデューサによって生成される音場の強度曲線を示す。これらの図面から、細長い形状を有するトランスデューサによって生成された音場を、伝統的なトランスデューサによって生成された音場と比較することができる。
【0043】
図7は、左上隅に示される円形マトリックストランスデューサの焦点Pを中心にした20×20mm2のウィンドウ内のXY平面における音場の強度を示す。256個の同一エレメントを含むこのトランスデューサは、80mmの焦点距離および55mmの開口半径を有し、86°の口径をもたらす。音場の強度の計算は、1,540m/sの伝搬速度を有する媒体において1.5MHzの発生エレメントの放射周波数に関して、実行された。この計算は、寸法が0.76×0.76×3.5mm3の焦点を生成する。
【0044】
図8は、図3に関して説明されかつ左上隅に示されるトランスデューサの焦点Pを中心にした20×20mm2のウィンドウ内のYZ平面における音場の強度を示す。このトランスデューサは、同様に、80mmの焦点距離を有し、1,540m/sの伝搬速度を有する媒体において1.5MHzで動作する。この計算は、YZ平面における寸法が1.28×1.6mm2の焦点を生成する。
【0045】
図9は、図3に関して説明されかつ左上隅に示されるトランスデューサの焦点Pを中心にした20×20mm2の窓内のXY平面における音場の強度を示す。図7の計算パラメータと同じ計算パラメータによって、寸法が0.48×1.28×1.6mm3の焦点が、得られる。
【0046】
さらに、トランスデューサの照準中心を機械的に上下に移動させることを可能にするために(図18における右側の双方向矢印)、円形矢印に基づいてトランスデューサを旋回させることは、トランスデューサを並進させることよりも賢明なことである。並進移動は、より大きな空間をプラットフォームに要求し、胸郭に隣接する乳房の部分に到達するのを不可能にする。青軸に沿ったトランスデューサの回転の最大自由度を有するために、トランスデューサは、それの断面が半楕円形に対応するような形で切断される。3次元において、それは、楕円柱と球体との共通部分(intersection)に対応する。三角形の断面は、より大きな回転を可能にするが、丸みのある角が、トランスデューサの人間工学および剛性のために必要とされる。
【0047】
(トランスデューサ位置決め装置)
信号の電子制御は、迅速かつ正確なものである。しかしながら、先端の位置を電子的に調節することは、制限され、それだけでは、先端が乳房のあらゆる領域に到達するのを可能にしない。この理由から、腫瘍の中心にトランスデューサを機械的にセンタリングすることが、必要である。
【0048】
図13において、図示される乳房の加熱治療のための組立体は、患者の体の前頭面が照準方向にほぼ平行に延びるとともに患者の乳房が照準方向を横切る位置に患者の体を維持するように適合された支持手段100を備える。
【0049】
支持手段は、患者が横たわるMRI画像形成装置10のベッド110上に配置されるように適合されたプラットフォームから構成される。プラットフォーム100が、ベッド110上に配置されたとき、それは、プラットフォームとベッドとの間に空間を形成することによって、ベッドにほぼ平行に延びる。プラットフォームとベッドとの間に形成された空間は、集束超音波トランスデューサとトランスデューサの位置決め装置とを備えたエネルギー発生手段を収容することを意図したものである。
【0050】
図19からより詳細に分かるように、プラットフォーム100は、患者がMRI画像形成装置10のベッド110上にうつぶせに横たわっているときに患者の乳房が治療のために穴101および102の中へ案内されるような形で配置された2つの穴101および102を備える。人間工学的なプラットフォーム100は、患者が快適であることを保証するとともに患者の体重がプラットフォームの下に配置されたトランスデューサにかかることを防止することを可能にする。
【0051】
位置決め装置90が、図14に示される。移動手段は、エネルギー発生手段20が患者の前頭面に平行な照準方向にエネルギーを放射する位置にそれらのエネルギー発生手段20を維持するように適合される。また、位置決め装置は、エネルギー発生手段20の位置を患者の乳房を中心にして患者の前頭面に平行な照準面において変化させるように適合される。
【0052】
移動装置は、患者が配置されるMRI画像形成装置のベッド110の長手方向エッジに沿って配置されることを意図した2つのロッド901および902と、2つのガイドレール910および912とを備え、それらのガイドレール910および912は、それらの先端でロッド901および902上に置かれ、ロッド901および902に沿って摺動し、ベッド110の方向を横切って延びる。2つのガイドレール910および912のそれぞれは、支柱920および922をそれぞれ収容し、それらの支柱920および922は、MRI画像形成装置のベッド110に対しておおよそ垂直な方向に延び、それのレール910および912に沿って摺動することができる。2つの支柱920および922は、一般的にはリング状のフレーム903を支持し、そのフレーム903上に、エネルギー発生手段が、搭載される。リング状のフレーム903は、患者の乳房が収容される中央照準領域の境界を定める。
【0053】
エネルギー発生手段は、一般的には球面状の能動面を有する集束超音波トランスデューサ20を備える。トランスデューサは、トランスデューサ20の照準面がリング状フレーム903の平面内に延びるような仕方で、かつ、トランスデューサ20の球面状能動面の固有焦点がフレーム903の中心に配置されるような仕方で、リング状のフレーム903上に搭載される。
【0054】
図20からより詳細に分かるように、位置決め装置90は、フレーム903の位置を変化させるように適合された第1の移動手段930を備える。これらの移動手段930によって、フレーム903は、照準面において、それの中心を軸にして回転することができ(回転R1)、それにより、照準面において患者の乳房の周囲でトランスデューサ20の位置を変化させることを可能にする。このために、第1の位置決め装置930は、ベルトおよび歯車からなる機械的なシステムを備える。第1の位置決め装置の駆動ベルト932は、ベッドの長手方向に延び、かつ、クランク931によって制御される。
【0055】
さらに、位置決め装置は、フレーム903の平面内に延びる回転軸943の形態で照準面の角度を変化させるように適合された第2の移動手段940を含む。エネルギー発生手段20は、軸943を中心にしてフレーム903に対して回転するように組み立てられる。したがって、エネルギー発生手段20は、患者の前頭面に対してわずかに傾斜することができる(回転R2)。第2の移動手段940は、フレームに対して、したがって、患者の前頭面に対して、+40°から−40°までの間隔(clearance)で照準面を傾斜させることを可能にする。 この特徴は、超音波トランスデューサの焦点Pの位置をさらに調節することを可能にする。
【0056】
エネルギー発生手段20は、有利には、丸みのある輪郭を備えた超音波トランスデューサからなり、それは、トランスデューサをベッド110または支持手段100に接触させることなく、トランスデューサの位置および角度を変化させることを可能にする。
【0057】
さらに、位置決め装置は、ベッド110の長手方向エッジに沿って延びるロッド901および902を備えた第3の並進移動手段950を含む。トランスデューサ20、リング状フレーム903、支柱920および922、および、レール910および912から構成される組立体は、ロッド901および902に沿ってベッド110の長手方向に動かされてもよい(並進移動T1)。このために、オペレータは、クランク931および941を回転させて、組立体をベッド110の長手方向に引き出しあるいは押し込むだけでよい。
【0058】
位置決め装置は、ガイドレール910および912を備えた第4の並進移動手段960を含む。トランスデューサ20、リング状フレーム903、および、支柱920および922から構成される組立体は、ベッド110の横方向に延びるレール910および912に沿って摺動することができる(並進移動T2)。したがって、組立体は、MRI画像形成装置のベッドの幅方向に沿って配置されてもよい。並進移動装置960は、トランスデューサ20の位置を、治療されるべき患者の乳房の位置に適合させることを可能にする。このために、並進移動手段960は、ロッド901を含み、そのロッド901の端部には、クランク961が、搭載される。オペレータは、クランク961を回転させることによって、ロッド901の回転を制御することができる。ロッド901の回転は、ベッド110に対して横方向に延びるベルト(図示しない)を制御する。そのベルトには、トランスデューサ20、リング状フレーム903、および、支柱920および922から構成される組立体が、取り付けられている。ベルトは、レール910および912に沿って組立体を並進させる。
【0059】
したがって、トランスデューサ20は、これまでに説明された4つの移動手段930、940、950、および、960によって、2つの並進移動軸および2つの回転軸に沿って移動することができる。このようにして、照準の中心を乳房内のどのような領域にでも位置することができ、それと同時に、照準方向を前頭面にほぼ平行に維持することができる。移動手段930、940、および、960は、ベッドの足元に配置されたクランク931、941、および、961によって遠隔制御される。したがって、これらの移動手段は、ベッド110上の患者の位置を変えずに、トランスデューサ20の位置を調節することを可能にする。
【0060】
位置決め装置および支持手段は、きわめて簡素な設備を提供する。なぜなら、その設備は、それらの手段をMRI画像形成装置のベッド上に直接に配置するだけでよいからである。
【0061】
さらに、上述された位置決め装置は、あまり場所をとらず、そのことは、位置決め装置を支持手段の下に設置することを可能にし、それによって、患者のための最大量の空間をMRI画像形成装置10内に確保する。
【0062】
(超音波伝搬を促進するためのインタフェース手段)
患者の体の外部に存在するエネルギー発生手段によって放射されるエネルギーは、部分的に、患者の体の内部に存在する治療されるべき領域に向けて放射され、かつ、部分的に、異なる音響密度の媒体間のインタフェースのために失われる。
【0063】
治療されるべきターゲット領域への超音波の送信を簡素化するための解決法が、図15に示される。
【0064】
図15は、集束超音波トランスデューサを示す。トランスデューサの能動面は、治療されるべき患者の皮膚と接触することを意図した変形可能な膜によって覆われる。トランスデューサの能動面と膜との間に形成される空間は、水で満たされる。この特徴は、トランスデューサによって生成された超音波が患者の体の内部へ伝搬することを助長する。実際に、超音波発生エレメントによって放射された超音波は、ほぼ一定の音響密度を有する媒体内を伝搬する。
【0065】
水中におけるキャビテーションの作用を抑圧するために、水は、真空ポンプによって事前に脱気されてもよい。
【0066】
(マルチチャンネル供給発生器)
図16は、集束超音波トランスデューサに供給することを意図したマルチチャンネル発生器の電子的なアーキテクチャーの例を概略的に示す。マルチチャンネル発生器は、加熱治療組立体の制御ユニットによって制御される。マルチチャンネル発生器60は、振幅および位相をお互いに独立して制御されることが可能な、かつ、100ms以下のスイッチング時間を提供することが可能な、少なくとも256の正弦波供給チャンネルを含む。
【0067】
図16において、制御ユニットは、シリアルポートの速度を115,200kb/sから460,800kb/sにまで増加させることを可能にする「MOXA C104H」ボードを含む。制御ユニットは、周波数、位相、および、振幅に関する情報をマルチチャンネル発生器に送信し、それらの周波数、位相、および、振幅は、対応する制御信号を生成するために、発生器によって使用される。そのようなシステムによって、制御信号は、65msごとに、完全に設定し直されてもよい。
【0068】
2m/sの速度を備えたハイドロリックピストンの場合、集束超音波トランスデューサの焦点の移動は、それぞれの点間の最大距離が4mmであれば、2秒ごとに1つの点に制限される。他方において、マトリックストランスデューサと組み合わせると、この発生器は、1秒ごとに15の独立した点を加熱することを可能にする。
【0069】
治療組立体は、MRI画像形成装置を取り囲むファラデー箱の外部に配置された制御ユニットを、ファラデー箱の内部に配置されたマルチチャンネル発生器に接続することを可能にする光ファイバーバンドルを備える。光ファイバーバンドルは、長距離にわたる高速伝送を可能にし、電磁妨害に対する優れた保護を実現する。光ファイバーバンドルは、外部からの電磁障害を発生させることなく、制御ユニットによって生成された情報を、ファラデー箱を介して送信することを可能にする。したがって、MRI画像形成装置の動作を妨害することなく、制御ユニットと発生器との間の接続が確保される。
【0070】
さらに、発生器は、MRI室の中で動作するように設計される。発生器が含むボードは、微弱な電磁波を生成するように選択されたものである。したがって、マルチチャンネル発生器の設置は、2つの光ファイバーを設置することしか必要としない。
【0071】
マルチチャンネル発生器は、68HC11マイクロプロセッサを含む。マイクロプロセッサの機能は、データを32のボード上のプログラマブルロジック装置(PLD)に配信することであり、それらのボードは、それぞれ、8つの正弦波を生成する。そして、プログラマブルロジック装置は、位相および周波数に関する情報をダイレクトディジタルシンセサイザー(DDS)に送信し、出力に関する情報を増幅器に送信する。それらのダイレクトディジタルシンセサイザー(DDS)は、並列に配置され、かつ、それらが受信した位相情報および周波数情報に従ってトランスデューサの超音波発生エレメントからなるマトリックスネットワークに供給される信号を生成することができる。ダイレクトディジタルシンセサイザーは、信号を高速かつ正確にスイッチングすることを確実にする。この特徴は、±5°よりも大きな位相精度を超えることのない遅延線を備えた伝統的な超音波信号発生器の改善を意味する。そして、正弦波の振幅は、可変利得増幅器によって調節される。
【0072】
すべてのダイレクトディジタルシンセサイザーに共通のクロックを使用することは、マルチチャンネル発生器のすべての出力状態を同期してスイッチングすることを確実にする。この特徴は、超音波トランスデューサによって生成された超音波信号が集束しない過渡状態を回避することを可能にする。共通クロックは、信号の集束を維持することによって、患者の安全性を改善する。
【0073】
制御ユニットによる信号の設定は、データを含むファイルを以下の順序でマルチチャンネル発生器のマイクロプロセッサに送信することによってなされる。
【0074】
− すべての超音波発生エレメントに共通の周波数を符号化する4つのオプションバイト、および、それらの値は、
【数1】
である。したがって、周波数Fは、±3MHzの精度で0〜24MHzの範囲内において定義される。
【0075】
− 以下のようにしてそれぞれの信号のそれぞれの位相φを2バイトで定義する512バイト、すなわち、
【数2】
512バイトで符号化することは、すべての位相を±0.04°の精度で0〜360°の範囲内において調節することを可能にする。
【0076】
− 以下の関係式に従ってそれぞれのチャンネルの出力電力を定義する256バイト、すなわち、
【数3】
【0077】
したがって、出力電力は、±8mWの精度で最大4Wまで変化させることができる。
【0078】
通信プロトコルは、半二重接続モードにおけるXMODEMフォーマットである。伝送される128バイトのそれぞれのパケットは、1バイトで符号化された巡回冗長検査(CRC(cyclic redundancy check))文字によって受信を制御するレシーバーによって送信される。このようにして、制御ユニットは、周波数、位相、および、振幅を設定するファイルを22msごとに送信することができる。
【0079】
256チャンネル発生器のアーキテクチャは、以下の利点を有する。
− 制御信号を設定し直す際の速度、
− 信号の同時変更、
− 微弱な電磁波、
− 出力正弦波の設定における精度、
− 確実なデータ交換、
− ポータビリティ。
【0080】
(インピーダンス整合装置)
256チャンネルのそれぞれにおいて、図17に示される電子的なインピーダンス整合装置が、マルチチャンネル発生器の出力と圧電エネルギー発生エレメントとの間に挿入される。磁石の中央へのアクセスを妨げることなくエネルギー発生手段にできるだけ近づけるために、256の回路は、磁石の下に配置されたハウジング内に配置される。
【0081】
インピーダンス整合装置は、2つの役割を有する。
【0082】
一方において、インピーダンス整合装置は、圧電エネルギー発生エレメントのインピーダンスを50Ωに適合させることを可能にする。
【0083】
このために、図17に示される装置は、低域通過フィルタ内に組み立てられた誘導部L1および容量C1の部品を備える。インダクタンス値および容量値は、以下のように選択される。
【数4】
【0084】
ここで、ZRおよびZIは、圧電エネルギー発生エレメントの電気的なインピーダンスの実数部および虚数部である。そのようなインダクタンス値および容量値によって、マルチチャンネル発生器から見た電気的なインピーダンスは、50Ωに設定される。
【0085】
電子的な整合装置は、発生器から50Ωの同軸ケーブルを介して到着するエネルギーの最適な伝達を可能にする。インダクタンスL1の値が大きすぎて高い周波数において動作せず、あまりにも大きな損失を発生させないために、電子的なインピーダンス整合装置がプローブの近くに存在することが必要である。
【0086】
他方において、インピーダンス整合装置は、MRI画像形成装置(磁場勾配)から信号発生器への干渉および超音波信号からMRI信号への干渉を制限する。このために、部品L1およびC1は、2次低域通過フィルタを生成する。しかしながら、高い周波数におけるフィルタの動作は、制限される。このことから、
【数5】
において共振するノッチフィルタからなる回路ネットワークが、この周波数における信号を1/200に減衰させるために、マルチチャンネル発生器の出力と誘導部品L1および容量部品C1を備えた低域通過フィルタとの間に挿入される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】乳房を加熱治療するための組立体の様々な構成要素を概略的に示す図である。
【図2】集束超音波トランスデューサの形態を有するエネルギー発生手段を患者の乳房に対して位置決めすることを示す図である。
【図3】集束超音波トランスデューサの斜視図である。
【図4】集束超音波トランスデューサの平面図である。
【図5】集束超音波トランスデューサの側面図である。
【図6】集束超音波トランスデューサの連続する2つの照準間の空間カバーレージを概略的に示す図である。
【図7】様々な形状を呈する集束超音波トランスデューサによって生成される音場強度曲線を示す図である。
【図8】様々な形状を呈する集束超音波トランスデューサによって生成される音場強度曲線を示す図である。
【図9】様々な形状を呈する集束超音波トランスデューサによって生成される音場強度曲線を示す図である。
【図10】トランスデューサの能動面上に存在する超音波発生エレメントの分布を概略的に示す正面図である。
【図11】トランスデューサの能動面上に存在する超音波発生エレメントの分布を概略的に示す側面図である。
【図12】トランスデューサの能動面上に存在する超音波発生エレメントの分布を概略的に示す平面図である。
【図13】本発明による加熱治療組立体において患者の体を維持するように適合された支持手段を概略的に示す図である。
【図14】本発明によるエネルギー発生手段の位置決め装置を概略的に示す図である。
【図15】乳房において超音波の伝搬を促進することを意図したインタフェース手段を備えた集束超音波トランスデューサの形態を有するエネルギー発生手段を概略的に示す図である。
【図16】集束超音波トランスデューサに供給することを意図したマルチチャンネル発生器の電子的なアーキテクチャーの例を概略的に示す図である。
【図17】発生器供給チャンネルと超音波発生エレメントとの間のインピーダンス整合回路を概略的に示す図である。
【図18】患者を維持するために提供された支持手段の内部において、エネルギー発生手段を位置決めすること、および、MRI受信アンテナを位置決めすることを概略的に示す図である。
【図19】図13に示される支持手段をより詳細に示す平面図である。
【図20】図14に示される位置決め装置の構成要素手段を概略的に示す平面図であり、これらの位置決め手段は、図19に示される支持手段の下に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 照準面に含まれる照準方向にエネルギーを放射するように適合されたエネルギー発生手段(20)と、
− 患者の体の前頭面が前記照準方向にほぼ平行に延びかつ該患者の乳房が前記照準方向を横切る位置に該患者の体を維持するように適合された支持手段(100)と、
を備え、
前記照準面において患者の乳房を中心にして前記エネルギー発生手段(20)の位置を変えるように適合された移動手段(903、930)を含む位置決め装置(90)をさらに備え、前記照準面は、前記前頭面にほぼ平行に延びることを特徴とする乳房を加熱治療するための組立体。
【請求項2】
前記位置決め装置(90)は、前記照準面の位置を変えるように適合された移動手段(940、950、960)を備えた、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記照準面の位置を変えるように適合された移動手段が、該照準面の角度を変えるように適合された移動手段(940)を含む、請求項2に記載の組立体。
【請求項4】
前記照準面の角度を変えるように適合された前記移動手段(940)は、+40°から−40°までの範囲の間隔で前記照準面を傾けることを可能にする、請求項3に記載の組立体。
【請求項5】
前記照準面の位置を変えるように適合された前記移動手段は、前記照準面を並進させるように適合された手段(950、960)を含む、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項6】
前記照準面において前記エネルギー発生手段(20)の位置を変えるように適合された前記移動手段(903、930)は、一般的にはリング状のフレーム(903)を含み、そのフレーム(903)上に、前記エネルギー発生手段(20)とフレームの中心を軸にしてフレームを回転させるための手段とが、搭載された請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項7】
前記照準面において前記エネルギー発生手段(20)の位置を変えるように適合された前記移動手段(903、930)は、駆動手段(931)によって制御される機械的なシステムを含み、該駆動手段(931)は、前記エネルギー発生手段に対して或る距離を置いて配置された、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項8】
前記機械的なシステムは、前記駆動手段(931)によって駆動される伝動ベルト(932)と歯車とを含む、請求項7に記載の組立体。
【請求項9】
前記駆動手段(931)は、クランクを備えた、請求項7または請求項8のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項10】
前記エネルギー発生手段(20)は、超音波を放射するための能動面(22)を含む集束超音波トランスデューサを備え、該能動面(22)は、一般的には凹面の細長い形状を有する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項11】
前記トランスデューサの前記能動面(22)は、第1の方向における口径が90°よりも大きくかつ該第1の方向に対して垂直な第2の方向における口径が90°よりも小さい球面の一部分である、請求項10に記載の組立体。
【請求項12】
前記トランスデューサの前記能動面(22)は、マトリックスネットワークを形成する超音波発生エレメント(21)によって覆われた、請求項10または請求項11のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項13】
前記超音波発生エレメント(21)によって形成される前記マトリックスネットワークは、コンパクトでありかつ非対称である、請求項12に記載の組立体。
【請求項14】
前記エネルギー発生手段に供給することを意図した供給手段(60)と、該供給手段(60)が供給信号を生成するように該供給手段(60)を制御することのできる制御ユニット(50)とを備え、該制御ユニット(50)は、該供給制御ユニットから前記供給手段(60)に制御情報を伝達することのできる光学的伝達エレメントによって供給手段(60)に接続された、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項15】
前記エネルギー発生手段に供給することを意図した供給手段(60)を備え、該供給手段は、並列に配置された複数のダイレクトディジタルシンセサイザー(DDS)を含み、該ダイレクトディジタルシンセサイザー(DDS)が、それらが受信した位相情報および周波数情報に従って、超音波発生手段の超音波発生エレメントからなるマトリックスネットワークのための供給信号を生成することができる、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項16】
マルチチャンネル発生器の形態で供給手段(60)を備え、該供給手段(60)は、少なくとも8つの正弦波供給チャンネルを含み、互いに独立して、振幅および周波数を制御されることが可能であり、100msよりも小さいスイッチング時間を提供する、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項1】
− 照準面に含まれる照準方向にエネルギーを放射するように適合されたエネルギー発生手段(20)と、
− 患者の体の前頭面が前記照準方向にほぼ平行に延びかつ該患者の乳房が前記照準方向を横切る位置に該患者の体を維持するように適合された支持手段(100)と、
を備え、
前記照準面において患者の乳房を中心にして前記エネルギー発生手段(20)の位置を変えるように適合された移動手段(903、930)を含む位置決め装置(90)をさらに備え、前記照準面は、前記前頭面にほぼ平行に延びることを特徴とする乳房を加熱治療するための組立体。
【請求項2】
前記位置決め装置(90)は、前記照準面の位置を変えるように適合された移動手段(940、950、960)を備えた、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記照準面の位置を変えるように適合された移動手段が、該照準面の角度を変えるように適合された移動手段(940)を含む、請求項2に記載の組立体。
【請求項4】
前記照準面の角度を変えるように適合された前記移動手段(940)は、+40°から−40°までの範囲の間隔で前記照準面を傾けることを可能にする、請求項3に記載の組立体。
【請求項5】
前記照準面の位置を変えるように適合された前記移動手段は、前記照準面を並進させるように適合された手段(950、960)を含む、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項6】
前記照準面において前記エネルギー発生手段(20)の位置を変えるように適合された前記移動手段(903、930)は、一般的にはリング状のフレーム(903)を含み、そのフレーム(903)上に、前記エネルギー発生手段(20)とフレームの中心を軸にしてフレームを回転させるための手段とが、搭載された請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項7】
前記照準面において前記エネルギー発生手段(20)の位置を変えるように適合された前記移動手段(903、930)は、駆動手段(931)によって制御される機械的なシステムを含み、該駆動手段(931)は、前記エネルギー発生手段に対して或る距離を置いて配置された、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項8】
前記機械的なシステムは、前記駆動手段(931)によって駆動される伝動ベルト(932)と歯車とを含む、請求項7に記載の組立体。
【請求項9】
前記駆動手段(931)は、クランクを備えた、請求項7または請求項8のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項10】
前記エネルギー発生手段(20)は、超音波を放射するための能動面(22)を含む集束超音波トランスデューサを備え、該能動面(22)は、一般的には凹面の細長い形状を有する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項11】
前記トランスデューサの前記能動面(22)は、第1の方向における口径が90°よりも大きくかつ該第1の方向に対して垂直な第2の方向における口径が90°よりも小さい球面の一部分である、請求項10に記載の組立体。
【請求項12】
前記トランスデューサの前記能動面(22)は、マトリックスネットワークを形成する超音波発生エレメント(21)によって覆われた、請求項10または請求項11のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項13】
前記超音波発生エレメント(21)によって形成される前記マトリックスネットワークは、コンパクトでありかつ非対称である、請求項12に記載の組立体。
【請求項14】
前記エネルギー発生手段に供給することを意図した供給手段(60)と、該供給手段(60)が供給信号を生成するように該供給手段(60)を制御することのできる制御ユニット(50)とを備え、該制御ユニット(50)は、該供給制御ユニットから前記供給手段(60)に制御情報を伝達することのできる光学的伝達エレメントによって供給手段(60)に接続された、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項15】
前記エネルギー発生手段に供給することを意図した供給手段(60)を備え、該供給手段は、並列に配置された複数のダイレクトディジタルシンセサイザー(DDS)を含み、該ダイレクトディジタルシンセサイザー(DDS)が、それらが受信した位相情報および周波数情報に従って、超音波発生手段の超音波発生エレメントからなるマトリックスネットワークのための供給信号を生成することができる、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項16】
マルチチャンネル発生器の形態で供給手段(60)を備え、該供給手段(60)は、少なくとも8つの正弦波供給チャンネルを含み、互いに独立して、振幅および周波数を制御されることが可能であり、100msよりも小さいスイッチング時間を提供する、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の組立体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2007−534398(P2007−534398A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510041(P2007−510041)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051935
【国際公開番号】WO2005/107870
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【出願人】(503127873)ユニヴェルシテ ヴィクトール セガラン ボルドー 2 (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051935
【国際公開番号】WO2005/107870
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【出願人】(503127873)ユニヴェルシテ ヴィクトール セガラン ボルドー 2 (7)
【Fターム(参考)】
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