説明

生理的イオン強度でタンパク質を吸着させるためのクロマトグラフィー材料

イオン交換および疎水性相互作用クロマトグラフィー材料は、疎水性リンカーによって末端結合官能基を固体担体につなぐことによって構成されている。リンカーの骨格は、通常硫黄含有部分を含む。適当な末端結合官能基は、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、または疎水基である。これらのクロマトグラフィー材料は、それらを使用するために定めた条件下で疎水性およびイオン特徴の両方を有する。生理的イオン強度における粗製混合物からのタンパク質分離は、pHまたはイオン強度勾配を使用し、それによってタンパク質吸着および脱着を行うことによって、このタイプのクロマトグラフィー材料で達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、概して分離科学および分析生化学におけるイオン交換および疎水性相互作用クロマトグラフィー材料の分野に関する。
【0002】
バルク量のタンパク質など生物関連分子(すなわち、生体分子)の要求の増大により、生理的分離物からこうした生体分子を単離するための種々の技術が生まれてきた。この点に関する従来の技術には、沈殿法、電気泳動分離、および膜ろ過がある。しかし、より有望な高度分離法の1つは、液体クロマトグラフィーである。
【0003】
複雑な生体分子のクロマトグラフィー分離は、通常、その生体分子を含む試料の1種または複数の改変を必要とする。生体分子とクロマトグラフィー吸着剤の間の相互作用には、静電引力および反発力、イオン交換、疎水結合、電荷移動、ならびにファンデルワールス引力がある。これらの力はしばしば互いに競合して、生体分子がクロマトグラフィー吸着剤上に吸着するのに適した条件と生体分子がその下で脱着できる条件との間の繊細なバランスを与えている。全血などの加工していない生理的分離物は、例えば、所望のタンパク質が通常の吸着剤に吸着するのに理想的でないpHおよびイオン強度を示す。これらの相互作用の結果、生体分子吸着を達成するために生理学的試料のpHおよび/またはイオン強度を調整することが必要である。さらに、クロマトグラフィー分離の前に化学添加剤の添加あるいは試料の希釈または濃縮が必要となるかもしれない。
【0004】
これらの制限を受けたクロマトグラフィー樹脂の有用なサブセットは、イオン交換樹脂であり、それは樹脂およびタンパク質上の反対の電荷によって主にタンパク質などの生体分子を引きつける。この点について、通常のイオン交換樹脂は、タンパク質をpH4〜10および低〜極低イオン強度で吸着する。タンパク質を含む試料のpHは、そのタンパク質の実効電荷を表し、それはもちろんクロマトグラフィー樹脂の電荷と反対でなければならない。したがって、加工していない生物試料は、タンパク質分離のための実効電荷を与える前提条件としてより高いまたはより低いpHに調整しなければならない。
【0005】
試料の正確なpHの実現は、イオン交換樹脂へのタンパク質の吸着を促進するのに必ずしも十分ではない。塩の形で存在する対イオンは帯電した樹脂に対してタンパク質の電荷と競合し得るので、試料のイオン強度は吸着に対して強い影響を及ぼす。試料のイオン強度が高すぎる場合、タンパク質は樹脂に吸着しないはずである。ほとんどの生物抽出物の生理的イオン強度は15〜20mS/cmであるが、ほとんどのクロマトグラフィー分離条件では、イオン強度が約1mS/cm〜10mS/cmであることが要求される。例えば、Johanssonらは、生体分子の吸着について、陰イオン交換基として第1級または第2級アミンを、または陽イオン交換基としてある種のカルボン酸を特徴とするいくつかの多様なリガンドを記載している。しかし、これらのリガンドは、生体分子吸着のために高いイオン強度を必要とする。B.-L. Johansson et al. "Preparation and Characterization ofPrototypes for Multi-Modal Separation Media Aimed for Capture of NegativelyCharged Biomolecules at High Salt Conditions," 814 J. Chromatography A71-81 (1998)およびB.-L. Johanson et al. "Preparation and Characterization ofPrototypes for Multi-Modal Separation Aimed for Capture of Positively ChargedBiomolecules at High Salt Conditions," 1016 J. Chromatography A 35-49(2003)を参照のこと。
【0006】
クロマトグラフィー樹脂の別の有用なサブセットは、樹脂と試料分子の間の疎水性相互作用に依存する。疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)では、溶液中の分子の溶媒化を低減させるために相互作用には一般に高塩バッファー濃度が必要となり、それによって結果的に疎水性樹脂によって吸着される試料分子中の疎水性領域が明らかになる。米国特許第5,641,870号を参照のこと。イオン交換クロマトグラフィーと同様に、例えば、S. C. Burton et al. "Hydrophobic Charge InductionChromatography: Salt Independent Protein Adsorption and Facile Elution WithAqueous Buffer," 814 J. Chromatography A 71-81 (1998)によって論じられているように、イオン強度およびpHの正確なバランスを実現して試料分子の有用な分離をもたらすのはしばしば難しい。多くの従来のHIC樹脂は、このように中性pHで作用するが、高塩条件を必要とし、それは以下で論じるように実際上の問題点をもたらす。
【0007】
上述したように、このような理由で、生理的分離物からのタンパク質および他の生体分子の分離には、イオン交換およびHIC樹脂の正確なpHおよびイオン強度要件を実現するための分離物の処理が必要となる。特にイオン強度問題を克服するための従来の解決策は、試料を極低イオン強度バッファー(または水でもよい)で希釈し、試料を所望のイオン強度のバッファーに対して透析することを含む。しかし、これらの操作は両方とも時間がかかり、しばしば大規模な生体分子分離に不適合である。
【0008】
上述の難点を克服するためのより最近の試みは、デュアルモードリガンドに基づくタンパク質分離を重視しており、それは例えば、同じ捕獲リガンドへのイオン性および疎水性特徴の取り込みを求め、それによってタンパク質捕獲のために高塩条件を使用する必要性が減少する。タンパク質捕獲のために穏和な疎水結合および電荷誘導を組み合わせる樹脂の記述については、L. Guerrier et al. "New Method for the Selective Capture ofAntibodies Under Physiological Conditions," 9 Bioseparation 211-221 (2000)を参照のこと。G. H. Scholz et al."Salt-Independent Binding of Antibodies from Human Serum to ThiophilicHeterocyclic Ligands," 709 J. Chromatography B: Biomedical Sciences andApplications 189-196 (1998)に開示されているように、本発明と対照してみると、他の樹脂は、メルカプトニコチン酸などの複素環部分を取り込む好硫黄リガンドに依存する。
【0009】
基本的には、強力な分析方法は、上記で論じたイオン交換およびHIC吸着剤で実現することができる。例えば、分析物/吸着剤相互作用による疾患マーカーの迅速な同定は、こうしたマーカーと特異的に結合する試薬を調製するために従来の臨床検査薬で必要とされた退屈で時間のかかる作業に取って代わるだろう。さらに、示差的に発現されたタンパク質の直接的および迅速な同定は、この分野で重要な利益になるはずであり、それによって例えば、所望の免疫グロブリンを生成させるためのポリペプチド単離とその後の免疫化の長いプロセスが回避される。しかし、前述の従来の吸着剤の欠点は、こうした分析ツールの感度および分解能を制限する。
【0010】
したがって、当技術分野では、高い結合能力および特異性を示し、生理化学的分解を受けずに大幅に再生でき、かつ生理的pHおよび/またはイオン強度下で作用し得る改良されたイオン交換クロマトグラフィーおよびHIC材料の要求が継続して存在する。生物学的に重要な分子の迅速な同定に有用な改良された生化学的分析ツールの要求も存在する。
【発明の概要】
【0011】
これらおよび他の要求を検討するために、本発明は、(a)末端結合官能基;(b)末端結合官能基とは異なる少なくとも1種の官能基を含む疎水性リンカー;および(c)固体担体を含み、疎水性リンカーが末端結合官能基を固体担体と連結させる、クロマトグラフィー材料を提供する。これらの条件の範囲内で、クロマトグラフィー材料は、生理的イオン強度でウシアルブミンを結合する能力がある。
【0012】
本発明のクロマトグラフィー材料は、一般式(I)に適合することが好ましい:
【化1】



式中、R、R、R、およびRは、各出現時に、それぞれ独立にH、C1〜6−アルキル、C1〜6−アルコキシ、C1〜6−アルキル−C1〜6−アルコキシ、アリール、C1〜6−アルカリル、−NR'C(O)R''、−C(O)NR'R''、およびヒドロキシからなる群から選択される。R'およびR''は、それぞれ独立にC1〜6−アルキルから選択され、RおよびRのうち1個以下はヒドロキシである。Rは、H、C1〜6−アルキル、アリール、C1〜6−アルカリル、−C(O)OH、−S(O)OH、および−P(O)(OH)からなる群から選択される。RおよびR3'は、それぞれXおよびYと一緒に、それぞれ独立に不在であっても存在していてもよく、存在している場合、RおよびR3'は、それぞれ独立にH、C1〜6−アルキル、C1〜6−アルコキシ、C1〜6−アルキル−C1〜6−アルコキシ、アリール、およびC1〜6−アルカリルからなる群から選択される。XおよびYは、互いに独立しており、陰イオンを表す。hetおよびhet'は、それぞれ独立に−O−、−S−、−S(O)−、および−S(O)−からなる群から選択されるヘテロ原子部分である。添え字a、a'、a''、およびa'''は、それぞれ独立に整数0〜6から選択され;bおよびb'は、それぞれ独立に0または1であり;cは、0または1であり、cが1の場合、(R)Xは不在であり;dおよびd'は、それぞれ独立に0または1である。式(I)では、波線は、固体担体を表す。
【0013】
特定の実施形態では、a、a'、a''、およびa'''のうち少なくとも1または2個は2であり、また好ましくはa、a'、a''、およびa'''のうち少なくとも1個は3である。他の実施形態では、a、a'、a''、およびa'''のうち少なくとも1または2個は3である。
【0014】
好ましいクロマトグラフィー材料は、式中aが3、hetがS、bが1のものである。これらの制約の範囲内で、a'は、好ましくは2、3、4、5、または6であり;b'は0であり;cおよびdは両方とも0または1であり;d'は、1である。他の材料では、d'は0または1であってもよい。RおよびRは、好ましくはそれぞれ独立にHおよびC1〜6−アルキルから選択され、より好ましくはRおよびRはそれぞれHである。
【0015】
好ましい末端基の1つのグループでは、R3'、RおよびRは、それぞれ独立にH、C1〜6−アルキル、アリール、およびC1〜6−アルカリルからなる群、好ましくはC1〜6−アルキルおよびアリール、最も好ましくはC1〜6−アルキルから選択される。これに関するグループの例は、メチルおよびエチルである。この実施形態では、a''およびa'''のうち一方は1であるが、他方は1または2であり、(R3')Yが不在であることが好ましい。
【0016】
クロマトグラフィー材料の別の好ましいサブセットは、式中d'が0、Rが好ましくはH、C1〜6−アルキル、アリール、またはC1〜6−アルカリル、より好ましくは、C1〜6−アルキルおよびアリールのものである。Rはフェニルであることが最も好ましい。あるいは、Rは、−C(O)OH、−S(O)OH、または−P(O)(OH)である。組み合わせて、a''とa'''のうち一方は好ましくは1であり、他方は1または2である。
【0017】
別の実施形態では、aは3、a'は2、aは3であり;a'は2であり;bは1であり;(CR中のRのうちの1個が場合によってはOHである点以外は、(CRおよび(CRa'中のRおよびRはそれぞれHである。(CR中のRのうちの1個はOHであることが好ましい。a''、a'''、およびb'はそれぞれ0であることがより好ましい。
【0018】
別の実施形態では、a''は3であり;a'''は2であり;b'は1であり;(CRa''中のRのうちの1個が場合によってはOHである点以外は、(CRa''および(CRa'''中のRおよびRはそれぞれHである。(CRa''中のRのうちの1個はOHであることが好ましい。a、a'、およびb''はそれぞれ0であることがより好ましい。
【0019】
さらに別の実施形態では、aは3であり;a'は3であり;bは1であり;(CRおよび(CRa'中のRおよびRはそれぞれHである。a''、a'''、およびb'はそれぞれ0であることが好ましい。
【0020】
さらに別の実施形態では、a''は3であり;a'''は3であり;b'は1であり;(CRa''および(CRa'''中のRおよびRはそれぞれHである。a、a'、およびbはそれぞれ0であることが好ましい。
【0021】
別の実施形態では、aは3であり;a'は5であり;bは1であり;(CRおよび(CRa'中のRおよびRはそれぞれHである。
【0022】
別の実施形態では、b'は0であり;a''とa'''のうち一方は2または3であり、他方は0であり;(CRa''および(CRa'''中のRのうちの1個が場合によってはOHである点以外は、(CRa''および(CRa'''中のRおよびRはそれぞれHである。a''またはa'''は3、(CRa''および(CRa'''中のRのうちの1個はOHであることが好ましい。
【0023】
別の実施形態では、aまたはa'は3であり、他方は0であり;a''またはa'''は3であり;b、b'、およびcはそれぞれ0であり;dは1である。d'も1であることが好ましい。
【0024】
さらに別の実施形態では、RおよびRはそれぞれHであり;R、R3'、R、R、およびRは、それぞれ独立にH、C1〜6−アルキル、アリール、およびC1〜6−アルカリルからなる群から選択され;hetはSであり;aは3であり;a'は2、3、4、5、および6からなる群から選択され;a''およびa'''のうち一方は1であり、他方は1または2であり;bは1であり、b'は0である。
【0025】
最も好ましいクロマトグラフィー材料は、以下の式によって表される:
【化2】



【0026】
特定の実施形態では、固体担体は有機材料である。有機材料は、セルロース、アガロース、デキストラン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、スチレンとジビニルベンゼンのコポリマー、ならびにその混合物からなる群から選択されるものであることが好ましい。
【0027】
他の実施形態では、固体担体は無機材料である。無機材料は、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、セラミックス、およびその混合物からなる群から選択されるものであることが好ましい。
【0028】
固体担体は、ビーズまたは粒子の形態であってよい。あるいは、固体担体は、平面である。後者の場合、クロマトグラフィー材料は、バイオチップの形態であってよい。これに関する好ましい固体担体には、金属、金属酸化物、ケイ素、ガラス、ポリマー、および複合材料がある。バイオチップが特に好ましく、その多数の末端結合官能基および末端結合官能基が連結している疎水性リンカーは、固体担体上の複数のアドレス可能位置に分離される。このシナリオでは、少なくとも2つの異なるアドレス可能位置は、同じ末端結合官能基および疎水性リンカーを含む。バイオチップは、質量分析計プローブであってよい。
【0029】
本発明はまた、(a)入口端および出口端を有する管状部材;(b)前記管状部材内に配置した第1および第2の多孔質部材;ならびに(c)管状部材内の第1と第2の孔質部材の間に詰めた本発明に基づくクロマトグラフィー材料を含むクロマトグラフィーカラムを提供する。いくつかの実施形態では、クロマトグラフィーカラム体積は、約1マイクロリットル〜約5000リットルである。カラム体積は、約1リットル〜約100リットルであることが好ましい。カラムは、クロマトグラフィー材料中に液体試料を上向きまたは下向きに流すための1種または複数の流体制御装置を含んでいてよい。
【0030】
本発明はまた、試料から少なくとも1種の物質を分離する方法を提供する。この方法は、(a)本発明に基づくクロマトグラフィー材料を、少なくとも1種の物質を含む液体試料と接触させて、それによって物質がクロマトグラフィー材料に吸着すること;(b)物質が樹脂から脱着するようにpH、イオン強度、または両方を調整することを伴う。この方法は、(a)で得られたクロマトグラフィー材料を平衡バッファーで洗浄することをさらに含むことが好ましい。
【0031】
最も好ましい実施形態では、分離すべき物質は、生物物質である。生物物質は、タンパク質、ウィルス、核酸、炭水化物、オリゴ糖、多糖類、脂質、およびリポ多糖類から選択されることが好ましい。より好ましくは、生物物質は、免疫グロブリン、ホルモン、凝固因子、サイトカイン、ペプチド、ポリペプチド、または酵素などのタンパク質である。最も好ましい物質は、免疫グロブリンである。
【0032】
この方法の一態様では、液体試料は生理的イオン強度にある。液体試料はまた、生理的pHにあってもよい。この点について好ましいイオン強度は、約0.1M〜約0.2Mである。さらに、生物物質の濃度は、生理的濃度であってよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、この方法は、ステップ(a)の前に液体試料のイオン強度を生理的イオン強度に調整することをさらに含む。他の実施形態では、この方法は、イオン強度を増大させることだけを伴う。
【0034】
この方法は、いくつかの形態によって達成することができる。これらには、固定床、流動床、またはバッチクロマトグラフィーがある。
【0035】
本発明はまた、(a)このクロマトグラフィー材料のアドレス可能位置と分析物を含む試料とを接触させることを含む、分析物を検出する方法を企図する。これによって分析物がクロマトグラフィー材料に固定される。分析物は、その末端結合官能基および疎水性リンカーとの結合によって検出され、好ましくは質量分析計中で検出される。後者のシナリオでは、アドレス可能位置は、質量分析計中のレーザー光に近接して配置され、好ましくはそこで検出は、レーザーパルスを用いて分析物の脱着およびイオン化に十分な時間および出力でクロマトグラフィー材料をアドレス可能位置で照射することを含む。質量分析計は、気相イオン分光計であってよい。
【0036】
この方法のいくつかの実施形態では、試料は血液試料である。血液試料は、血清試料であることが好ましい。
【0037】
本発明はまた、本発明のクロマトグラフィー材料を作製するためのプロセスを企図する。この方法は一般に、固体担体を、試薬と固体担体を結合させるために疎水性リンカーの一部または全部を含む二価性試薬の一方の官能基と接触させることよって、固体担体を活性化させることを含む。次いで活性化した固体担体を、疎水性リンカーと末端結合官能基の間に結合を形成するために末端結合官能基を含む試薬と反応させる。二価性試薬は、それだけには限らないが、クロロ、ブロモ、ヨード、エポキシド、カルボキシル、エステル、アルデヒド、ケトン、アミド、アルケニル、シアノ、およびイミノを含む少なくとも2種の官能基を含んでいてよい。
【0038】
一実施形態では、接触ステップは、活性化した固体担体の目立たないスポットをもたらす。これに関して、クロマトグラフィー材料は、バイオチップの形態であるのが好ましい。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0039】
本発明は、生物関連分子を含む種々の物質の分離および単離に使用するのに有効な吸着剤であるクロマトグラフィー材料を提供する。本発明のクロマトグラフィー材料は、例えば、カラムクロマトグラフィーなどの分離技術およびバイオチップなどの分析装置に使用することができる。
【0040】
本明細書に記載したこのクロマトグラフィー材料の利点の1つは、従来技術の基質に必要とされる、費用がかかりしばしば有害な洗浄プロセスの回避と共に、タンパク質などの生物物質に対するその高い選択性および特異性である。第2の利点は、本発明のクロマトグラフィー材料が、生理的イオン強度pHおよび/または生理的pHで生物試料と使用するのに申し分なく適しており、それによってイオン強度および/またはpH調整ならびに従来の材料によって定められた脱着のためのリオトロピック塩の添加の必要性が回避されることである。第3の利点は、この基質の高い生物学的分子結合能力であり、それは、それらを調製するために使用した試薬が低価格であることを考慮すると、特殊化した従来技術のクロマトグラフィー材料の使用に対して著しい経済的利益を示す。このため、処理時間を短縮させるため、または単位カラム体積当たり大量の試料を処理するために、より小さい体積の試料を処理することが可能である。
【0041】
I.クロマトグラフィー材料
本発明のクロマトグラフィー材料は、固体担体および疎水性リンカーを介して固体担体に結合している末端結合官能基を含む。末端結合官能基は、試料中の物質を部分的に誘引する働きをする。疎水性リンカーは、末端結合官能基と異なる少なくとも1個の官能基を含み、通常硫黄および/または窒素原子を含有する。したがって、全体として、リンカーは、固体担体と末端結合官能基の間に疎水性、および場合によっては好硫黄性領域を示す。官能基は、ある範囲の分子間力を生じさせることができ;したがって、クロマトグラフィー材料は、相補的モードの選択的誘引物質をもたらす。
【0042】
A.官能基
末端結合官能基は、分けるのが望ましい物質の特性によって、また疎水性リンカーの相補的特徴によって選択することができる。例えば、末端結合官能基が陰イオンまたは陽イオン交換基の場合、リンカーが少なくとも疎水性になるように調製することによって試料相互作用の補助モードを維持することが望ましい。この実施形態では、疎水性リンカーは、陰イオンまたは陽イオン交換基を含んでいてよいが、本発明の規定によれば、リンカーは、それぞれ陰イオンまたは陽イオン交換基とは異なる少なくとも1種の官能基を含むことが好ましい。この点で好ましい官能基は、−S−または−S(O)−などの硫黄含有基である。
【0043】
他の実施形態では、末端結合官能基自体が疎水基である。したがって、リンカーは通常疎水性領域から構成されるが、リンカーは、疎水性末端結合官能基と同じではない少なくとも1種の官能基を含んでいなければならない。この点に関する官能基は、もちろん陰イオンおよび陽イオン交換基を、場合によっては前述の硫黄含有部分と一緒に含む。
【0044】
本明細書に企図した「末端結合官能基」は、その名のとおり疎水性リンカーの末端に存在し、したがって本発明のクロマトグラフィー材料の吸着剤特性に対する最大の寄与を示すと考えられる。いくつかの実施形態では、末端結合官能基は、アミンおよび第4級アンモニウム塩などの陰イオン交換基である。他の実施形態では、末端結合官能基は陽イオン交換基である。さらに他の実施形態では、下記に定義したように、疎水基は、末端結合官能基に最も適している。
【0045】
疎水性リンカーのための要件には、末端結合官能基と異なる少なくとも1種の官能基の存在が含まれる。この官能基は、疎水性リンカー内に組み込まれていることによって、本発明のクロマトグラフィー材料に第2の吸着剤特性を付与することが考えられる。
【0046】
「疎水性」という用語は、本明細書では、一般に、当技術分野で水などの極性単位に反発する、または同等にタンパク質中の疎水性領域など他の疎水性単位を誘引すると理解されている無極性化学部分を意味する。本発明を考慮すると例示的な疎水基は、アルキル、アリール、およびアルカリル基を含むがそれだけには限定されない。通常の疎水基は、エチルおよびプロピルなど単純な炭化水素鎖であり、あるいは別の基に組み込まれた場合、それぞれエチレンまたはプロピレンスペーサーである。疎水性を評価するための一般標準が存在しないが、本発明において少なくとも2−炭素鎖は疎水性領域を形成するのに十分であると理解されている。しかし、基の全体的な疎水性特徴は、限られた数の極性基の存在によっては打ち消されないが、当技術分野ではイオンまたは極性基の存在は、一般に、全体的な疎水性特徴を維持するためにより長いまたは大きい疎水基を必要とすることがわかっている。米国特許第3,917,527号を参照のこと。したがって、例えば、本発明の疎水性リンカーは、アミンまたは第4級アンモニウム基、エーテルまたはチオエーテル、アミド、あるいはヒドロキシル基で置換することができる。
【0047】
本発明の好ましい実施形態は、一般に上記に記載したように、一般式(I)に適合する:
【化3】



この式では、R、R、R、およびRは、それぞれ独立にH、C1〜6−アルキル、C1〜6−アルコキシ、C1〜6−アルキル−C1〜6−アルコキシ、アリール、C1〜6−アルカリル、−NR'C(O)R''、−C(O)NR'R''、およびヒドロキシから選択される。R、R、R、およびRは、それぞれ独立にH、C1〜6−アルキルから選択されることが好ましい。最も好ましい実施形態は、RおよびRはHであるが、RおよびRはC1〜6−アルキルであるものである。
【0048】
所望の末端結合官能基に応じて、Rは、H、C1〜6−アルキル、アリール、C1〜6−アルカリル、−C(O)OH、−S(O)OH、および−P(O)(OH)からなる群から選択される。概して末端結合官能基は、このように一般に式(I)中−(NR)(R3')Y−Rによって表される。好ましい一実施形態では、例えば、d'は1であり、したがって末端結合官能基はアミン((R3')Yが不在の場合)または第4級アンモニウム塩((R3')Yが存在する場合)として示される。これらの実施形態では、RはC1〜6−アルキルであることが好ましい。
【0049】
他の実施形態では、d'は0であり、したがって主にRによって表される末端結合官能基を提供する。これらの場合には、疎水性末端結合官能基が望ましい場合、Rは、H、C1〜6−アルキル、アリール、およびC1〜6−アルカリル基から選択されることが好ましい。末端結合官能基が陽イオン交換基の場合、Rは結果的に−C(O)OH、−S(O)OH、および−P(O)(OH)から選択される。
【0050】
(R)Xおよび(R3')Y部分は、式(I)中に存在するとき、各部分が結合しているそれぞれの窒素原子と一緒に第4級アンモニウム塩を形成する。式(I)の要求に応じて、XおよびYは陰イオンを表す。クロマトグラフィー材料の所定の使用に適合する限りは、これらの陰イオンの同一性が特定の要件に制限されることはない。この点に関する陰イオンの例には、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、硝酸塩、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、およびギ酸塩がある。
【0051】
したがって、式(I)のバランスは、一般に疎水性リンカーを表す。先に定義した疎水基の定義に従って、リンカーは全体として疎水性であり、その性質は、好ましくはリンカー中にアルキレン鎖を取り込むことによって得られ、a、a'、a''、およびa'''の選択に対応する。好ましくは、a、a'、a''、およびa'''のうち少なくとも1つが2または3であり、より好ましくはa、a'、a''、およびa'''のうち少なくとも2つが2または3であり、最も好ましくはaが3であると同時にa'が2、3、4、5、または6である。
【0052】
好ましい実施形態では、リンカーは、疎水性であることに加えて好硫黄性である。したがって、式(I)のhetおよびhet'の一方または両方は、ますます好硫黄性の基−S−、=S(O)−、および−S(O)−から選択され、Sが最も好ましい。最も好ましいクロマトグラフィー材料では、hetはSであると同時にhet'は不在である。
【0053】
発明者らは、クロマトグラフィー材料のある種のサブセットが特に有効であることを発見した。これがそうなのは、材料が、疎水性リンカー中の疎水性の重要なパッチまたは領域を提供し、その性質は一般にアルキレン断片を一緒に結合させることによって得られるからである。したがって、(CR、(CRa'、(CRa''および(CRa'''のうち少なくとも2つが2個の非置換エチレン基(すなわち、−CH−CH−)を表す。あるいは、疎水性リンカーは、少なくとも2個の非置換プロピレン基を含んでいてよい。すなわち、(CR、(CRa'、(CRa''および(CRa'''のうち少なくとも2つが2個のプロピレン基(すなわち、−CH−CH−CH−)を表す。別の実施形態では、疎水性リンカーは、少なくとも1個の非置換エチレン基と少なくとも1個の一置換プロピレン基を含むことができる。例えば、(CR、(CRa'、(CRa''および(CRa'''のうち少なくとも1つが−CH−CH−であり、少なくとも1つが−C(OH)−である。別の実施形態では、疎水性リンカーは、少なくとも2個の一置換プロピレン基を含むことができる。例えば、(CR、(CRa'、(CRa''および(CRa'''のうち少なくとも2つが−C(OH)である。これらの実施形態では、アルキレン基は、−O−、−S−、−NH−または−C(O)N(H)−など、ヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基によって離すことができる。これらのすべての組合せを企図している。
【0054】
より具体的には、一実施形態は、式中、例えば、a(またはa'')は3であり、a'(またはa'''は2であり)、またb(またはb')は1である一般式(I)中でhetまたはhet'によって離されている非置換プロピレン基および非置換エチレン基を取り込む。しかし、この実施形態では、プロピレン基を1個のヒドロキシル基と置換し、リンカーの全体的な疎水性を維持することが可能である。
【0055】
別の好ましい実施形態では、疎水性リンカーは、hetまたはhet'によって離されている2個の非置換プロピレン基を含む。したがって一般式(I)を参照すると、aとa'の両方とも3であると同時にbは1であり、あるいはa''とa'''の両方とも3であると同時にb'は1である。
【0056】
さらに別の好ましい実施形態では、疎水性リンカーは、非置換プロピレン基および少なくともhetによって離されている非置換ペンチレン基を含み、したがって一般式(I)中でaが3、a'が5、またbが1になることに相当する。この実施形態では、プロピレン基は、1度ヒドロキシル基で置換することができる。
【0057】
さらに別の好ましい実施形態では、疎水性リンカーは、1個のアミノ部分によって離されている2個の非置換プロピレン基を含む。したがって一般式(I)を参照すると、aまたはa'は3であり、他方が0であり;a''またはa'''は3であり;hetおよびhet'は不在であり;cが0であると同時にdは1である。
【0058】
一般式(I)では、波線は、疎水性リンカーが結合している固体担体を表す。しかし、明確にするために、一般式(I)は、1個の(1)リンカー−末端結合官能基だけが固体担体につながれていることを示すことを理解されたい。本発明のクロマトグラフィー材料は、実際に約50〜約150μmol/mLクロマトグラフィー材料、好ましくは約80〜約150μmol/mL、より好ましくは100〜約150μmol/mLのリンカー−末端結合官能基密度を示す。
【0059】
「アルキル」は、本明細書では、1〜12個の炭素原子、好ましくは1から6個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状炭化水素を意味する。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルである。鎖の一部であるアルキル断片は必ず二価であり、「アルキレン」基と称される。
【0060】
「アリール」は、本明細書では、6〜12個の炭素原子を有する環状、縮合または非縮合、全芳香族炭化水素を意味する。アリール基の例には、フェニル、ナフチル、およびビフェニルが含まれるが、それだけには限定されない。
【0061】
「アルカリル」は、それぞれ前記で定義されているアリール基によって置換されたアルキル基を意味する。アルカリル基の例には、ベンジルおよびフェネチルが含まれるが、それだけには限定されない。
【0062】
「アルコキシ」は、本明細書では、アルキルが前記で定義されている式−O−アルキルの基を意味する。アルコキシ基の例には、メトキシおよびエトキシが含まれるが、それだけには限定されない。
【0063】
「アルキルアルコキシ」は、本明細書では、アルコキシ部分によって置換されているアルキル部分であり、すなわち、一般式−アルキレン−O−アルキルに相当する。
【0064】
前述したように、本発明の主な利点は、クロマトグラフィー材料が生理的イオン強度で種々の生物物質を結合させることである。したがって、本発明は生理的イオン強度でウシアルブミンを結合しないクロマトグラフィー吸着剤を含まないことが好ましいことが理解されよう。
【0065】
どんな特定の理論にも自身を限定するものではないが、発明者らは、本発明のクロマトグラフィー材料が、クロマトグラフィー材料と物質の間の複合相互作用によって作用すると考えている。生物物質の分離において、クロマトグラフィー材料と生物物質の間の弱疎水性および/または好硫黄性相互作用は、陰イオンまたは陽イオン交換末端基から生じるより強い静電引力を強化すると考えられる。また、クロマトグラフィー材料と生物物質の間の弱イオン性および好硫黄性相互作用は、疎水性末端基から生じる相互作用の強度を強化することも考えられる。これらの複合相互作用から生まれる主要な利点は、生理的イオン強度における塩がクロマトグラフィー材料の選択的な吸着剤特性を妨げないことである。
【0066】
B.固体担体
本発明は、疎水性リンカーおよび末端結合官能基が結合している固体担体を企図する。2つの異なるフォーマットを特に企図している。一方のフォーマットでは、固体担体は通常、クロマトグラフィー媒質、すなわち、ビーズまたは粒子に使用する形態である。これらのビーズまたは粒子は、疎水性リンカーと末端結合官能基の組合せによって誘導化される。ビーズまたは粒子は、例えば、カラムを詰めるのに使用できるクロマトグラフィー媒質を形成する。他方のフォーマットでは、固体担体は、チップ、すなわち、一般に疎水性リンカーおよび末端結合官能基が共有結合的にまたはその他の方法で結合できる平面を有する固体担体の形態をとる。質量分析計などの検出装置のプローブ界面に連結するようになされたチップは、一名「プローブ」という。
【0067】
1.ビーズおよび粒子
本発明の教示によれば、クロマトグラフィー材料は、まず固体担体を含み、それは有機材料を含んでいてよい。有機材料の例は、セルロース、デンプン、寒天、アガロース、およびデキストランなどの多糖類である。置換または非置換のポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコールなどのポリビニル親水性ポリマー、ポリスチレン、ポリスルホン、ならびにスチレンとジビニルベンゼンのコポリマー、ならびにその混合物を含む親水性合成ポリマーが企図される。あるいは、無機材料を固体担体材料として使用してもよい。こうした無機材料には、シリカなどの多孔質鉱物材料;ヒドロゲル含有シリカ、ジルコニア、チタニア、アルミナ;および他のセラミックス材料があるが、それだけには限定されない。これらの材料の混合物、あるいは米国特許第5,268,097号、第5,234,991号、および第5,075,371号に開示されているものなど2つ材料の共重合または相互侵入ネットワークによって形成した複合材料を使用することも可能である。
【0068】
固体担体は、直径約0.1mm〜約1000mmのビーズまたは不規則な粒子の形態であってよい。あるいは、固体担体は、繊維、膜、またはミクロンから数ミリメートルサイズの穴が広がったスポンジ様材料にすることができる。
【0069】
2.バイオチップ
好ましい実施形態は、このように説明したクロマトグラフィー材料を「バイオチップ」またはマイクロアレイフォーマットで含んでおり、その場合材料は一般に捕獲試薬:ここでは、疎水性リンカーと末端結合官能基の組合せが結合している平面を示す。したがって、バイオチップは、分析物が選択的に捕獲されているかもしれない定義した領域またはサイト、より一般に、定義した領域またはサイトの集合を示す。捕獲後、分析物は、検出でき、場合によっては、下記により詳細記載した種々の技術によって特徴付けることができる。
【0070】
したがって、固体担体は、金、アルミニウム、鉄、チタン、クロム、白金、銅およびそれぞれの合金などの金属を含んでいてよい。こうした金属は、それらの表面に例えば二酸化ケイ素で誘導体化して、連結するための反応性基を生成することができる。金属表面を誘導体化する一方法は、金属表面上に一酸化ケイ素などの金属酸化物をスパッタリングすることである。あるいは、固体担体は、ケイ素、ガラスまたはプラスチックなどの有機ポリマーを含んでいてよい。特定の実施形態では、固体担体は透明であってよい。
【0071】
特に、本発明のバイオチップの表面上のサイトの配列により、好ましくは同時に複数のサイトの識別が可能になって、より高いスループットおよびスピードが達成される。したがって、バイオチップの使用は、それぞれが異なるクロマトグラフィーカラムを用いて複数のクロマトグラフィー実験を同時に実施することと本質的に等しく、このバイオチップには、単一システムだけを必要とする利点がある。
【0072】
したがって、本発明のバイオチップは複数のアドレス可能位置を含み、こうした各位置に特別な組合せの疎水性リンカーと末端結合官能基がつながれていることが好ましい。バイオチップは、単独のアドレス可能位置あるいは8、10、16、100、1000、10,000またはそれ以上ほどのアドレス可能位置を取り込むことができ、それはレーザーなど衝突エネルギー源ほど大きければ十分である。この点について、「アドレス可能」は、適切なアドレス体系またはアルゴリズムを用いて、例えばエネルギー源によって位置付けできるクロマトグラフィー材料上の位置を意味する。したがって、各アドレス可能位置または位置のサブセットは優先的に生物物質を結合でき、バイオチップ上の定義された位置で捕獲が起こるということによって結合の位置が定められる。
【0073】
アドレス可能位置は、どんなパターンにも配置できるが、線または直交配列などの規則的なパターン、あるいは円などの曲線として現れることも好ましい。アドレス可能位置の円形配置は、円板状バイオチップ上で特に有用である。このように配置されていると、アドレス可能位置は、既知の結合能力の勾配をクロマトグラフィー材料上にもたらすことができる。
【0074】
特に好ましい実施形態では、このバイオチップの形態のクロマトグラフィー材料は、質量分析計などの検出機器で使用するプローブであり、それによって既知および未知の生物学的分析物を捕獲および同定するための強力な分析ツールを提供する。プローブの例は米国特許第6,225,047号に記載されており、それは参照によって本明細書に組み込まれている。例えば、質量分析計プローブ(「MSプローブ」)は、位置的に識別可能な関係をイオン化源、例えば、レーザー脱離/イオン化源と築いており、また大気圧または減圧で好ましいレーザー脱離/イオン化飛行時間型分光器の検出器と同時通信しているとき、分光器に分析物由来のイオンを導入するのに使用できる装置を意味する。好ましいレーザー源には、窒素レーザー、Nd−Yagレーザーおよび他のパルスレーザー源がある。したがって、MSプローブは、通常MSプローブをイオン化源と識別可能な関係に位置付け、また検出器と通信させるプローブ界面と可逆的に結合可能(例えば、除去できるように挿入可能)である。
【0075】
別の実施形態では、結合した疎水性リンカーおよび末端結合官能基を含むバイオチップは、SEND(Surface Enhanced Neat Desorption)に適合させている。これは、レーザーエネルギーを吸収し、気相への分析物の脱離およびイオン化を促進する固体担体分子に結合させることによって達成される。エネルギー吸収分子は、基質結晶中で分析物を包囲せず、イオン化エネルギーとの接触後に脱離しない状態で表面に結合している。SENDはさらに、米国特許第6,124,137号(HutchensおよびYip)および国際公開第03/064594号パンフレット(Kitagawa)に記載されている。
【0076】
II.クロマトグラフィー材料を製造する方法
上記の末端結合官能基は、固体担体と疎水性リンカーの間、ならびに疎水性リンカーと末端結合官能基の間に共有結合を形成することによって固体担体上に化学的に固定されている。通常のシナリオでは、まず固体担体上に疎水性リンカーの一部または全部を生成する反応性基を導入するのに役立つ二価性試薬で固体担体を処理する。セルロース、ヒドロゲルを含む複合材、またはヒドロキシル基を提示する他の材料などいくつかの固体担体では、しばしば二価性試薬との反応の前に、例えば水酸化物源を用いてヒドロキシル基を脱プロトン化することが有利である。二価性試薬は、固体担体と末端結合官能基を含む試薬の両方と反応する能力を有する。同じまたは異なる官能基を含む二価性試薬の例には、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ジブロモおよびジクロロプロパノール、ジブロモブタン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジビニルスルホン、アリルグリシジルエーテル、および臭化アリルがあるが、それだけには限定されない。臭化アリルなどのアリルヘテロ官能性化合物は、好ましい二価性試薬である。
【0077】
官能化の後、次いで固体担体を1種または複数の溶媒で徹底的に洗浄して、未反応の二価性試薬、反応副生成物、または両方を除去する。この点で使用される典型的な溶媒は水である。
【0078】
次いでこうした官能基を含む試薬によって末端結合官能基を導入する。こうした試薬は、上記の官能化固体担体によって提示される官能基と反応する。
【0079】
二価性試薬と末端結合官能基試薬の特定の対形成は、よく知られている化学反応によって誘導される。例えば、エポキシドで官能化された固体担体は、メルカプト、ヒドロキシ、またはアミノ含有試薬と反応して基質にエチレン含有結合基を与えることができる。例えば、臭化アリルで修飾した他の固体担体は、メルカプト含有試薬と直接反応できるアルケン基を提示し、それによって硫黄原子を含む疎水性リンカーを提供する。あるいは、アルケン基をさらに臭素化して反応性ブロモ誘導体を適切に与えることができる。
【0080】
好ましい実施形態には、得られたクロマトグラフィー材料の好硫黄性を増大させるために疎水性リンカーが硫黄原子を含むものがある。硫黄原子は、硫黄原子の供給源に応じていくつかの方法で導入することができる。上記のように、1番目は、固体担体とジビニルスルホン(DVS)などの硫黄含有二価性試薬との直接的な反応である。この場合、末端結合官能基を含む試薬は、DVS活性化固体担体によって提示されたビニル基と反応するだけでよい。
【0081】
硫黄原子を疎水性リンカー中に導入する代替方法は、末端結合官能基を含む試薬によるものである。好ましい実施形態では、この点に関して適当な試薬、例えば、トリメチルアミノエチルメルカプタン、トリメチルアミノプロピルメルカプタン、およびジエチルアミノエチルメルカプタンは、既にそれらの構造中に硫黄原子を有している。硫黄を含まないが、ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミンなどの第1級アミン、およびそれらに対応する第4級アンモニウム塩誘導体を含む他の試薬は、まずN−アセチル−ホモシステインチオラクトンと反応させることができる。このシナリオでは、生成物は、疎水性リンカーの一部を含有し、末端結合官能基を含むチオール含有試薬である。したがって、これらの試薬のチオール部分は、上記のようにアルケンおよびブロモ基を提示しているものなど適切に活性化した固体担体と既知の方法によって反応する。
【0082】
第2の代替ルートでは、上記のように活性化した固体担体を、所望の硫黄含有部分を含む中間二価性試薬で処理する。次いでこの反応の生成物を、末端結合官能基を含む試薬で処理する。この点に関する実例は、上記のアリル活性化固体担体とメルカプトヘキサン酸の間の反応である。得られたペンダントカルボキシル基は、例えば、第1級アミンを持つ任意の好都合な末端結合官能基試薬と反応させることができる。この方法を用いる実施形態では、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)などのカップリング試薬またはジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など一般に知られているカルボジイミドを使用することが必要であろう。
【0083】
固定化疎水性リンカーおよび末端結合官能基の濃度は、固体担体を作るのに使用した二価性試薬の濃度に応じて固体担体1ミリリットル当たりわずか1マイクロモルから数百マイクロモルの間で異なっていてよい。固定化基が低濃度の場合、通常低分離能力のクロマトグラフィー材料が得られるが、高濃度の場合、一般に高い能力がもたらされる。
【0084】
III.クロマトグラフィー材料を使用する方法
本発明の利益は、極端なイオン強度の使用を必要とする従来のクロマトグラフィー材料と対照的に、生理的イオン強度で分析物を結合する本発明のクロマトグラフィー材料の能力である。したがって、好ましい実施形態では、本発明のクロマトグラフィー材料は、タンパク質、ウィルス、核酸、炭水化物、および脂質などの生物関連分子を含む種々の物質を分離および単離するのに使用することができる。多くの場合、これらの物質は、以下に説明するクロマトグラフィー材料の使用のために定めた条件下で生の供給原料に変更を加えないで分離することができる。分離するのに適した他の物質には、オリゴ糖および多糖類、色素、リポ多糖類、ポリペプチド、および合成可溶性ポリマーがある。生物物質は通常、それだけには限らないが、唾液、血液、尿、リンパ液、前立腺液、精液、乳、乳清、器官抽出物、植物抽出物、細胞抽出物、細胞培地、発酵ブロス、血清、腹水、ならびにトランスジェニック植物および動物抽出物などの液体試料を含む供給源に由来する、または含まれている。
【0085】
これに関して、特に好ましいクラスの生物物質は、免疫グロブリンである。「免疫グロブリン」カテゴリーは、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびにそのFab断片、F(ab')断片、F断片およびF断片を含む免疫グロブリン全体を包含する。
【0086】
A.物質を分離する方法
少なくとも1種の生物物質をクロマトグラフィー材料と結合させるのに十分な時間、1種または複数の生物物質を含む液体試料を本発明のクロマトグラフィー材料と接触させる。通常、この接触時間は約30秒〜約12時間である。
【0087】
前述のように、本発明の利点は、液体試料のpH、イオン強度、または両方を、試料をクロマトグラフィー材料と接触させる前に調整する必要がないことである。さらに、試料を濃縮、希釈、または塩などの添加剤と混合する必要がない。したがって、本発明のクロマトグラフィー材料上に液体試料を直接導入することが可能である。しかし、液体試料のpHは、吸着のために最適化した実験的に決定した値に調整することができる。一連のタンパク質のための通常の捕獲pH値は、約4〜約10である。好ましくは、約4〜約7の範囲のpHでは、陽イオン交換部分を特徴としているクロマトグラフィー材料へのタンパク質吸着が促進され、一方約6〜約10の範囲のpHでは、陰イオン交換部分を使用している場合同じことが達成されるはずである。
【0088】
多くの生物物質は、生理的イオン強度でクロマトグラフィー材料に容易に吸着するはずである。本明細書では、生理的イオン強度は、一般に約15〜約20mS/cmの範囲である。この範囲に対応する通常の塩濃度は、約0.1〜約0.2M、好ましくは0.14〜約0.17Mの範囲に入る。
【0089】
液体試料をクロマトグラフィー材料と接触させる温度は、試料および所与のクロマトグラフィー材料間で異なる。温度は周囲温度であることが好ましいが、変えることもできる。
【0090】
試料をクロマトグラフィー材料と接触させた後、クロマトグラフィー材料を平衡バッファーで洗浄することが好ましい。本明細書で定義したように、平衡バッファーは、好ましくは液体試料をクロマトグラフィー材料と接触させたときのpHのバッファーである。さらに、平衡バッファーは、クロマトグラフィー材料から基質に吸着しない任意の物質を洗い流す。適当な平衡バッファーには、酢酸バッファーおよびリン酸緩衝塩類溶液がある。洗浄は、結合した生物物質を含むクロマトグラフィー材料を平衡バッファー中に入れる、つける、または浸すことによって達成することができる。あるいは、平衡バッファーは、クロマトグラフィー材料一面にすすぎ、噴霧し、または洗うことができる。
【0091】
所望の生物物質は、通常クロマトグラフィー材料に吸着するものである。しかし、本発明は、対象の生物物質が平衡バッファー洗浄中に取り出されるシナリオを企図する。この場合、物質は、通常の方法によってバッファーから単離することができる。
【0092】
次いで、一実施形態ではその物質が脱着できる値にpHを調整することによってクロマトグラフィー材料に吸着している生物物質を脱着する。脱着が起こるpHは、物質および所与のクロマトグラフィー材料によって決まる。例えば、陰イオン交換部分を含むクロマトグラフィー材料では、脱着は一般に約pH8から始めて約pH3まで低下させたpH勾配に対して起こる。陽イオン交換部分を含むクロマトグラフィー材料では、適用したpH勾配は、約pH4から始まり、約pH11まで増加させる。主に疎水基を特徴としているクロマトグラフィー材料では、脱着のためのpH勾配は、約pH7から始め、約pH3まで低下させる。最後のシナリオでは、イオン強度勾配も以下に記載のように適用することが好ましい。pHは、トリスHCl水溶液または炭酸バッファーなど通常入手可能な任意の試薬によって調整することができる。
【0093】
場合によっては、前述のように、溶離液のイオン強度の調整により、クロマトグラフィー材料の有効性が増大し得る。したがって、主に疎水基を含むクロマトグラフィー材料では、イオン強度は、pHと同時に低下させてもよい。これは、さらに−NH−部分を含む材料で特にそうであり、それはイオン強度を低下させるにつれてより有効になる弱イオン電荷を生じ得る。塩勾配の使用は当技術分野でよく知られている。通常、本発明のクロマトグラフィー材料に対する塩濃度は、約0.5Mを超える必要はない。
【0094】
次いで脱着した生物物質を捕集する。本発明の方法によって精製する抗体などの生物物質の通常の純度は、約70%〜約99%、好ましくは85%〜約99%、最も好ましくは約90%〜約99%の範囲である。
【0095】
上記の分離方法は、固定床、流動床、およびバッチクロマトグラフィーを使用する調製方法を含む種々の技術で使用するのに適合させることができる。あるいは、この方法は、装置体積が数マイクロリットルほど小さくてよいスピンカラムまたはマルチウェルプレートフォーマットなどの小装置を利用する高スループットの分離技術に関して実施することができる。
【0096】
前述の技術は、生物物質を含む溶液をクロマトグラフィー材料と接触させ、それによりクロマトグラフィー材料によって溶液中の少なくとも1種の生物物質の選択的な吸着をもたらすことを含む。所望の生物物質がクロマトグラフィー材料に固定される事象では、後者の溶離によりそれまたはそれらの分離ならびに精製および濃縮形態での捕集が可能になる。処理した溶液中に所望の生物物質が残っている場合(その他の生物物質はクロマトグラフィー材料に固定されている)、溶離液を捕集することによって所望の分離が直接達成される。
【0097】
バッチ吸着/分離を用いている場合、クロマトグラフィー材料を生物物質の溶液に直接加え、クロマトグラフィー材料/生物物質の混合物を、生物物質がクロマトグラフィー材料に結合するのに十分な時間穏やかに撹拌する。次いで、吸着した生物物質を伴ったクロマトグラフィー材料は、遠心分離またはろ過によって取り出し、続いて別のステップで生物物質をクロマトグラフィー材料から溶離することができる。
【0098】
あるいは、カラムクロマトグラフィーを使用してもよい。固定床カラムクロマトグラフィーでは、クロマトグラフィー材料をカラムに充填し、分離すべき生物物質を含む溶液を、クロマトグラフィー材料への生物物質の結合を可能にする速度でクロマトグラフィー材料を通して注ぐことによってクロマトグラフィー材料に加える。
【0099】
固定床クロマトグラフィーの利点には、カラム体積および使用水量が極小であることが含まれる。カラムクロマトグラフィー法の欠点は、カラムを通る液体の流速が遅く、したがって時間がかかることである。粒子を含むカラムに材料を加える場合、こうした粒子材料はクロマトグラフィー材料をある程度「詰まらせる」可能性があるので、この流速は、さらにもっと低減され得る。
【0100】
流動床カラムクロマトグラフィーでは、高まった力に対して平衡を維持するために高まったろ過流量および大きい/高密度粒子を使用する。重ねて置いた1〜5つのステージで構成される本質的に垂直なカラムを使用しており、溶液は連続的に各ステージを通過し、上層ステージの上部でのオーバーフローによって除かれる。カラムは3つのステージを有することが好ましい。最上層のものを除いて、各ステージは2つの分配システムによって分かれており、一方は当該のステージの底部で溶液を分配し、他方は真上に位置したステージに向かって溶液を分配する。
【0101】
流動床の利点は、固定床クロマトグラフィーと比較してより低圧でより高流速であることである。より高流速であることはクロマトグラフィー分離に対してある種の利点があるが、この方法にはいくつかの欠点がある。この方法では、上向きの高液体速度下でのみ膨張する粒径が大きいおよび/または高密度のクロマトグラフィー材料が必要である。直径が大きい樹脂は、使用している小さなクロマトグラフィー材料よりも単位体積当たりの表面積が小さく、それに対応して表面結合能力がより小さい。これが、ビーズクロマトグラフィー材料が極めて高密度でなければならない場合に小ビーズクロマトグラフィー材料が好ましい理由である。
【0102】
一方では、流動床クロマトグラフィーは、目詰まり、洗浄の必要性、加圧および洗浄に誘発されたクロマトグラフィー材料の劣化を含む固定床の多くの重大な欠点を回避する。実際に、流動床では目詰まりのリスクなしに溶液中の固体不純物を自由に通過させ;より厳しくない洗浄が必要とされるのでクロマトグラフィー材料の寿命は非常に延びている。しかし、生物物質のためのクロマトグラフィー材料は通常、密度が水と近過ぎであり、あるいは粒度分析で小さすぎて流動床クロマトグラフィーには適していない。このことにより、粒子を流れに引き込まずに流動化するのは不可能になる。生物物質の流動床クロマトグラフィーについての別の問題は、ビーズ間の大きな隙間に関するものであり、これは効率の低下をもたらす。
【0103】
これらの要因を考えると、バッチおよび固定床クロマトグラフィーは、生物物質のための従来技術の分離技術における選り抜きの方法である。本発明のクロマトグラフィー材料は、一方では、バッチ、固定床、または流動床クロマトグラフィーで使用することができる。
【0104】
B.クロマトグラフィーカラム
したがって、好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に記載のクロマトグラフィー材料を充填した管状部材であるクロマトグラフィーカラムを提供する。この管状部材は、ガラス、プラスチック、または金属など任意の適当な材料でできていてよい。充填したクロマトグラフィー材料は、基質を管状部材内に固定しておく多孔質部材によって各端部に接している。
【0105】
いくつかの実施形態では、カラムを通る溶離液の重力流は十分である。他の実施形態では、カラムを通る溶離液の上昇流を得るために、カラムは1種または複数の流体移動装置を含んでよい。こうした装置には、ポンプ、注入器、および通常クロマトグラフィー機器と関連して使用される任意の他の装置がある。
【0106】
本発明のクロマトグラフィーカラムの体積は任意であってよい。例えば、実験室規模の分離では、約1ミリリットルまたはさらには約1マイクロリットルほどの小ささのカラム体積が保証される。生物物質の大規模な精製および単離は、5000リットルほどの大きさのカラムで行うことができる。より標準的な体積は、1リットル〜100リットルである。カラムの一般的な形状は管状であるが、他の場合には長さまたは直径は特に限定されていない。カラムを使用する状況に応じて、カラム直径は約0.5mm〜約1000mmで異なっていてよい。さらに、カラム長は約50mm〜約1000mmで異なっていてよい。したがって、本発明は、種々の寸法および対応する体積のカラムを企図する。
【0107】
本発明のカラムは、他のクロマトグラフィー材料を含むカラムと並行して使用することができ、それは異なる不純物を試料から除去するのに有効となる。したがって、本発明のカラムの利点は、他のまたは従来のカラムの特徴と相補的であると見なすことができる。これに関して、このようなカラムの並行配置により溶離液および平衡バッファーが一定に保たれ、それによってさらなる試料調節および調製の必要性がなくなる。
【0108】
C.分析物を検出する方法
本発明は、分析物の好都合な検出方法を提供する。上記のバイオチップのアドレス可能位置を、少なくとも1種の分析物を含む試料と接触させる。分析物は、アドレス可能位置に吸着する(すなわち、捕獲される)、本明細書に記載されているものなどの生物物質であってよい。したがって、本発明の方法は、単一試料中に含まれる複数の分析物の検出に適応しており、各分析物はバイオチップ上の特有の位置に結合している。
【0109】
次いで、バイオチップは、上記の溶離液で洗浄して非結合材料を除去することが好ましい。これに関して、クロマトグラフィー材料の直径が小さいスポットへの溶離液の導入は、ミクロな流体プロセスによって最適に達成される。
【0110】
バイオチップに結合したままの分析物の検出は、種々の方法によって達成することができる。これらには、顕微鏡法および他の光学技術、質量分析、および電気技術がある。光ベースの検出パラメーターには、例えば、吸光度、反射率、透過率、複屈折、屈折率、および回折計測技術がある。
【0111】
標識分析物の蛍光検出は、特に一般的である。蛍光に関連する方法には、直接および間接蛍光測定がある。特定の方法には、例えば、ELISAまたはサンドイッチアッセイなどの免疫学的方法の蛍光タギングがある。
【0112】
他の有用な技術には、例えば、表面プラズモン共鳴、偏光解析、共鳴ミラー技術、回折格子結合導波路技術、多極共鳴分光法、障害検出、化学発光検出、および導電性/還元−酸化法がある。直接分析のためにバイオチップから分析物を脱着および/またはイオン化する方法は、当技術分野でよく知られており、一般に、例えば、米国特許第6,225,047号に記載されている。
【0113】
特に好ましい分析方法は、表面増強レーザー脱離/イオン化(「SELDI」)であり、それは、例えば、米国特許第5,719,060号および第6,255,047号に記載されている。SELDIでは、バイオチップ上のアドレス可能位置は、レーザーなどのエネルギー源に提示され、それはアドレス可能位置に結合した分析物を脱着およびイオン化する。次いで、イオン化した分析物を、例えば、飛行時間型(「TOF」)質量分析計で直接検出し、それによって脱着した分析物の質量対電荷比を得る。プローブ界面内でバイオチップを繰返し移動および位置合わせしてレーザーと協調させることによって、バイオチップ上の各アドレス可能位置を同様に分析することができる。
【0114】
さらに、イオン移動度分光計を使用して試料を分析することができる。イオン移動度分光計の原理は、イオンの異なる移動度に基づいている。特に、イオン化によって生成した試料のイオンは、それらの例えば、質量、電荷、または形状の差によって、電界の影響下にあるチューブを通って異なる速度で移動する。通常電流の形態をとるイオンは、検出器で記録され、次いで試料を同定するのに使用することができる。イオン移動度分光計の1つの利点は、大気圧で操作できることである。
【0115】
さらに、全イオン電流測定装置は、試料を分析するのに使用することができる。この装置は、プローブが単一クラスの分析物だけを結合させる界面化学を有する場合に使用することができる。単一クラスの分析物がプローブに結合している場合、イオン化した分析物から発生した全電流は、分析物の性質を反映する。次いで、分析物由来の全イオン電流は、既知の化合物の蓄積全イオン電流と比較することができる。したがって、プローブ上に結合した分析物の同一性を決定することができる。
【0116】
本発明のバイオチップおよび分析方法の利点は、分析物の結合および検出がピコモルまたはさらにはアトモル量の分析物で有効であることである。本発明の教示によれば、バイオマーカーと称されるある種のサブクラスの生物物質を発見するのがこのように可能である。この状況では、バイオマーカーは、有機生物物質、特にポリペプチドまたはタンパク質であり、これは健康な対象から採取した試料と比べて病気の対象から採取した試料中に差別的に存在する。バイオマーカーは、健康な対象から採取した試料中に存在するレベルに対して高いレベルまたは低いレベルで存在する場合、病気の対象から採取した試料中に差別的に存在する。特にバイオチップの形態の本発明のクロマトグラフィー材料は、バイオマーカーの迅速な発見および同定を可能にする。
【0117】
この方法は、本発明の1種または複数の異なるクロマトグラフィー材料を用いて試料中のタンパク質を捕獲し、次いで捕獲した分析物を検出するタンパク質のプロファイリングに有用である。同様に、タンパク質のプロファイリングは、異なる試料のタンパク質プロファイルを比較して試料間のタンパク質発現の相違を検出する相違マッピング(difference mapping)に有用である。
【0118】
以下の実施例は、本発明を例示するために示している。しかし、本発明は、これらの実施例に記載の特定の条件または詳細に限定されるものではないことを理解されたい。特許を含む公に入手可能な文献に対するすべての引用は、その全体を完全に記載するように参照により本明細書に組み込む。
【0119】
実施例1.セルロースのジメチルアミノプロピルチオール誘導体の調製
【0120】
セルロースビーズ100mlを1M水酸化ナトリウム溶液で、次いで中性pHが得られるまで水で広範囲に洗浄した。水切りしたビーズに0.5M水酸化ナトリウム18mlおよび臭化アリル10mlを加えた。次いで、得られた混合物を室温で終夜強く撹拌した。
【0121】
ビーズを水で洗浄して副生成物を除去し、様々な官能基を吸着させるための基質としてアリル−セルロースを得た。
【0122】
アリル−セルロースのビーズをジメチルアミノプロピルチオール25gと縮合させて、以下に示す材料を得た:
【化4】



【0123】
生成物樹脂は、ジメチルアミノ部分密度150μmol/mL樹脂を示した。生理的イオン強度およびpH8.6におけるウシアルブミンの結合能力は、39mg/mLであった。
【0124】
実施例2.セルロースのジメチルアミノエチルチオール誘導体の調製
【0125】
実施例1で前述したプロトコルによって得たアリルセルロースビーズ100mLをジメチルアミノエチルチオール25gと縮合させて、以下の材料を得た:
【化5】



【0126】
生成物は、ジメチルアミノ部分密度87μmol/mL樹脂を示した。生理的イオン強度およびpH8.6におけるウシアルブミンの結合能力は、21mg/mLであった。pH12で6時間塩化ジエチルアミノエチルを加えることによって末端ジメチルアミノ部分を4級化して誘導体が得られ、それは1mL当たりアルブミン27mgに達する樹脂の結合能力を示した。
【0127】
実施例3.アリル化固体担体へのジメチルアミノプロピルアミンのカップリング
【0128】
実施例1で前述したプロトコルによって得たアリルセルロースビーズ100mLをジメチルアミノプロピルアミン25gと縮合させて、以下の材料を得た:
【化6】



【0129】
生成物は、ジメチルアミノ部分密度126μmol/mL樹脂を示した。生理的イオン強度およびpH8.6におけるウシアルブミンの結合能力は、38mg/mLであった。
【0130】
実施例4.セルロースのジメチルアミノエチルアミン誘導体の調製
【0131】
実施例1で前述したプロトコルによって得たアリルセルロースビーズ100mLを、まずチオヘキサン酸25gと縮合させた。次いで、縮合剤としてEEDQを用いて、得られたカルボキシル誘導体をジメチルアミノエチルアミンと縮合させて、以下の生成物を得た:
【化7】



【0132】
生成物は、ジメチルアミノ部分密度95μmol/mL樹脂を示した。生理的イオン強度およびpH8.6におけるウシアルブミンの結合能力は、35mg/mLであった。
【0133】
実施例5.セルロースのチオコリン誘導体の調製
実施例1で前述したプロトコルによって得たアリルセルロースビーズ100mLをチオコリン20gと縮合させて、以下の生成物を得た:
【化8】



【0134】
生成物は、トリメチルアンモニウム部分密度86μmol/mL樹脂を示した。生理的イオン強度およびpH8.6におけるウシアルブミンの結合能力は、22mg/mLであった。
【0135】
実施例6.セルロースのジメチルアミノプロピルアミン誘導体の調製
【0136】
実施例1で前述したプロトコルによって得たアリルセルロースビーズ100mLを、まずチオヘキサン酸25gと縮合させた。縮合剤としてEEDQを用いて、得られたカルボキシル誘導体をジメチルアミノプロピルアミンと反応させて、以下の生成物を得た:
【化9】



【0137】
生成物は、ジメチルアミノ部分密度70μmol/mL樹脂を示した。生理的イオン強度およびpH8.6におけるウシアルブミンの結合能力は、13mg/mLであった。
【0138】
実施例7.セルロースのフェニルエチル誘導体の調製
【0139】
セルロースビーズ100mlを1M水酸化ナトリウム溶液で、次いで中性pHが得られるまで水で広範囲に洗浄した。水切りしたビーズに0.5M水酸化ナトリウム18mlおよび臭化アリル10mlを加えた。次いで、得られた混合物を室温で終夜強烈に撹拌した。
【0140】
ビーズを水で洗浄して副生成物を除去し、様々な官能基を吸着させるための基質としてアリル−セルロースを得た。
【0141】
酸性条件下で臭化カリウムおよびN−ブロモスクシンイミドを加えることによってアリル−セルロースビーズを臭素化し、次いでフェニルエチルメルカプタン5gと混合して以下の生成物を得た:
【化10】



【0142】
生成物は、フェニルエチル部分密度約50μmol/mL固定ビーズを示した。生理的イオン強度およびpH7におけるウシアルブミンの結合能力は、27mg/mLであった。対照的に、HICクロマトグラフィー(フェニルセファロース)に対する市販のフェニル誘導体は、2mg/mLの結合能力を示した。
【0143】
実施例8.セルロースのフェニル−プロピル疎水性誘導体の調製
【0144】
酸性条件下で臭化カリウムおよびN−ブロモスクシンイミドを加えることによって実施例7によって調製したアリル−セルロースビーズ100mLを臭素化し、次いでフェニル−プロピル−アミン6mLと混合して以下の生成物を得た:
【化11】



【0145】
生成物は、フェニルプロピル部分密度約50μmol/mL固定ビーズを示した。生理的イオン強度およびpH7におけるウシアルブミンの結合能力は、45mg/mLであった。
【0146】
実施例9.セルロースの脂肪族疎水性誘導体の調製
【0147】
酸性条件下で臭化カリウムおよびN−ブロモスクシンイミドを加えることによって実施例7により調製したアリル−セルロースビーズ100mLを臭素化し、次いでヘキシルアミン−アミン6mLと混合して以下の生成物を得た:
【化12】



【0148】
生成物は、ヘキシルアミノ部分密度約55μmol/mL固定ビーズを示した。生理的イオン強度およびpH7におけるウシアルブミンの結合能力は、47mg/mLであった。対照的に、ヘキシルアミンの代わりにグルカミン(親水性リガンド)を用いて得た類似の生成物は、4mg/mLの結合能力を示した。
【0149】
実施例10.セルロースのオクタノール疎水性誘導体の調製
【0150】
酸性条件下で臭化カリウムおよびN−ブロモスクシンイミドを加えることによって実施例7によって調製したアリル−セルロースビーズ100mLを臭素化し、次いで1,8−チオオクタノール6mLと混合して以下の生成物を得た:
【化13】



【0151】
生成物は、50μmol/mL固定ビーズより高いオクタノール部分密度を示した。生理的イオン強度およびpH7におけるウシアルブミンの結合能力は、40mg/mLであった。
【0152】
実施例11.ジルコニア複合体ビーズのフェニル−プロピル疎水性誘導体の調製
【0153】
実施例7に記載のものと類似のプロトコルを用いて、アガロースゲル(6体積%)を充填したジルコニア多孔質ビーズ50mlを、臭化アリル2mLおよび1M水酸化ナトリウム2mLを用いてアリル化した。副生成物を除去するために、かつ中性pHが得られるまで、得られたアリル化ジルコニア複合体ビーズを水で広範囲に洗浄した。
【0154】
酸性条件下で臭化カリウムおよびN−ブロモスクシンイミドを加えることによってアリル−誘導体を臭素化し、次いでフェニル−プロピル−アミン6mLと混合した。
【0155】
生成物は、フェニルプロピル部分密度約60μmol/mL固定ビーズを示した。生理的イオン強度およびpH7におけるウシアルブミンの結合能力は、30mg/mLであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)末端結合官能基、
(b)前記末端結合官能基とは異なる少なくとも1種の官能基を含む疎水性リンカー、および
(c)固体担体を含むクロマトグラフィー材料であって、
前記疎水性リンカーが、前記末端結合官能基を前記固体担体と連結させ、
前記クロマトグラフィー材料が、生理的イオン強度でウシアルブミンを結合する能力をもつクロマトグラフィー材料。
【請求項2】
前記クロマトグラフィー材料は、以下の一般式Iを有し:
【化1】



式中、
、R、R、およびRは、各出現時に、それぞれ独立にH、C1〜6−アルキル、C1〜6−アルコキシ、C1〜6−アルキル−C1〜6−アルコキシ、アリール、C1〜6−アルカリル、−NR'C(O)R''、−C(O)NR'R''、およびヒドロキシからなる群から選択され、
式中、R'およびR''は、それぞれ独立にC1〜6−アルキルから選択され、
式中、RおよびRのうち1個以下はヒドロキシであり;
は、H、C1〜6−アルキル、アリール、C1〜6−アルカリル、−C(O)OH、−S(O)OH、および−P(O)(OH)からなる群から選択され;
およびR3'は、それぞれXおよびYと一緒に、それぞれ独立に不在であっても存在していてもよく、存在している場合、RおよびR3'は、それぞれ独立にH、C1〜6−アルキル、C1〜6−アルコキシ、C1〜6−アルキル−C1〜6−アルコキシ、アリール、およびC1〜6−アルカリルからなる群から選択され、
式中、XおよびYは、互いに独立しており、陰イオンを表し;
hetおよびhet'は、それぞれ独立に−O−、−S−、−S(O)−、および−S(O)−からなる群から選択されるヘテロ原子部分であり;
a、a'、a''、およびa'''は、それぞれ独立に整数0〜6から選択され;
bおよびb'は、それぞれ独立に0または1であり;
cは、0または1であり、cが1の場合、(R)Xは不在であり;
dおよびd'は、それぞれ独立に0または1であり;
波線は、固体担体を表す、
請求項1に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項3】
a、a'、a''、およびa'''のうち少なくとも1個が2である、請求項2に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項4】
a、a'、a''、およびa'''のうち少なくとも2個が2である、請求項3に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項5】
さらにa、a'、a''、およびa'''のうち少なくとも1個が3である、請求項3に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項6】
a、a'、a''、およびa'''のうち少なくとも1個が3である、請求項2に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項7】
a、a'、a''、およびa'''のうち少なくとも2個が3である、請求項6に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項8】
aが3である、請求項6に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項9】
hetがSであり、bが1である、請求項8に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項10】
a'が2、3、4、5、および6からなる群から選択される、請求項9に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項11】
b'が0である、請求項10に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項12】
cおよびdが両方とも0である、請求項11に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項13】
d'が1であり、(R3')Yが不在である、請求項12に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項14】
d'が1であり、(R3')Yが存在する、請求項12に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項15】
d'が0である、請求項12に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項16】
cが1であり、dが1である、請求項11に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項17】
d'が1であり、(R3')Yが不在である、請求項16に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項18】
d'が1であり、(R3')Yが存在する、請求項16に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項19】
d'が0である、請求項16に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項20】
およびRが、それぞれ独立にHおよびC1〜6−アルキルから選択される、請求項10に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項21】
それぞれのRおよびRがHである、請求項20に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項22】
d'が1である、請求項8に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項23】
3'、R、およびRが、それぞれ独立にH、C1〜6−アルキル、アリール、およびC1〜6−アルカリルからなる群から選択される、請求項22に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項24】
3'、R、およびRが、それぞれ独立にC1〜6−アルキルおよびアリールから選択される、請求項23に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項25】
3'、R、およびRが、それぞれ独立にC1〜6−アルキルから選択される、請求項24に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項26】
3'、R、およびRが、それぞれ独立にメチルおよびエチルから選択される、請求項25に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項27】
a''およびa'''のうち一方が1であり、他方が1または2である、請求項24に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項28】
(R3')Yが不在である、請求項25に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項29】
d'が0である、請求項8に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項30】
がH、C1〜6−アルキル、アリール、またはC1〜6−アルカリルである、請求項29に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項31】
がC1〜6−アルキルおよびアリールから選択される、請求項30に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項32】
がフェニルである、請求項31に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項33】
a''とa'''のうち一方が1であり、他方が1または2である、請求項31に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項34】
が−C(O)OH、−S(O)OH、および−P(O)(OH)である、請求項29に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項35】
a''とa'''のうち一方が1であり、他方が1または2である、請求項34に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項36】
aが3であり;
a'が2であり;
bが1であり;
(CR中のRのうちの1個が場合によってはOHである点以外は、(CRおよび(CRa'中のRおよびRがそれぞれHである、
請求項2に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項37】
(CR中のRのうちの1個がOHである、請求項36に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項38】
a''、a'''、およびb'がそれぞれ0である、請求項37に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項39】
a''が3であり;
a'''が2であり;
b'が1であり;
(CRa''中のRのうちの1個が場合によってはOHである点以外は、(CRa''および(CRa'''中のRおよびRがそれぞれHである、
請求項2に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項40】
(CRa''中のRのうちの1個がOHである、請求項39に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項41】
a、a'、およびb''がそれぞれ0である、請求項40に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項42】
aが3であり;
a'が3であり;
bが1であり;
(CRおよび(CRa'中のRおよびRがそれぞれHである、
請求項2に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項43】
a''、a'''、およびb'がそれぞれ0である、請求項42に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項44】
a''が3であり;
a'''が3であり;
b'が1であり;
(CRa''および(CRa'''中のRおよびRがそれぞれHである、
請求項2に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項45】
a、a'、およびbがそれぞれ0である、請求項44に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項46】
aが3であり;
a'が5であり;
bが1であり;
(CRおよび(CRa'中のRおよびRがそれぞれHである、
請求項2に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項47】
b'が0であり;
a''とa'''のうち一方が2または3であり、他方が0であり;
(CRa''および(CRa'''中のRのうちの1個が場合によってはOHである点以外は、(CRa''および(CRa'''中のRおよびRがそれぞれHである、
請求項46に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項48】
a''またはa'''が3であり、(CRa''および(CRa'''中のRのうちの1個がOHである、請求項47に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項49】
aまたはa'が3であり、他方が0であり;
a''またはa'''が3であり;
b、b'、およびcがそれぞれ0であり;
dが1である、
請求項2に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項50】
d'が1である、請求項49に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項51】
およびRがそれぞれHであり;
、R3'、R、R、およびRが、それぞれ独立にH、C1〜6−アルキル、アリール、およびC1〜6−アルカリルからなる群から選択され;
hetがSであり;
aが3であり;
a'が2、3、4、5、および6からなる群から選択され;
a''およびa'''のうち一方が1であり、他方が1または2であり;
bが1であり、b'が0である、
請求項2に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項52】
【化2】



からなる群から選択される、請求項2に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項53】
前記固体担体が有機材料である、請求項1に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項54】
前記有機材料が、セルロース、アガロース、デキストラン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、スチレンとジビニルベンゼンのコポリマー、ならびにその混合物からなる群から選択されるものである、請求項53に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項55】
前記固体担体が無機材料である、請求項1に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項56】
前記無機材料が、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、セラミックス、およびその混合物からなる群から選択されるものである、請求項55に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項57】
前記固体担体がビーズまたは粒子の形態である、請求項1に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項58】
前記固体担体が平面固体担体である、請求項1に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項59】
前記クロマトグラフィー材料がバイオチップの形態である、請求項58に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項60】
前記固体担体が、金属、金属酸化物、ケイ素、ガラス、ポリマー、および複合材料からなる群から選択される、請求項59に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項61】
多数の末端結合官能基、および前記末端結合官能基が連結している前記疎水性リンカーが、前記固体担体上の複数のアドレス可能位置に分離される、請求項59に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項62】
前記バイオチップが質量分析計プローブである、請求項59に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項63】
少なくとも2つの異なるアドレス可能位置が、同じ末端結合官能基および疎水性リンカーを含む、請求項61に記載のクロマトグラフィー材料。
【請求項64】
(a)入口端および出口端を有する管状部材;
(b)前記管状部材内に配置した第1および第2の多孔質部材;ならびに
(c)管状部材内の第1と第2の孔質部材の間に詰めた請求項1に記載のクロマトグラフィー材料
を含むクロマトグラフィーカラム。
【請求項65】
前記カラム体積が約1マイクロリットル〜約5000リットルである、請求項64に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項66】
前記カラム体積が約1リットル〜約100リットルである、請求項65に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項67】
クロマトグラフィー材料中に液体試料を上向きまたは下向きに流すための1種または複数の流体制御装置をさらに含む、請求項64に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項68】
試料から少なくとも1種の物質を分離する方法であって、
(a)請求項1に記載のクロマトグラフィー材料を少なくとも1種の物質を含む液体試料と接触させて、それによって前記物質が前記クロマトグラフィー材料に吸着するステップと、
(b)前記物質が前記樹脂から脱着するようにpH、イオン強度、または両方を調整するステップと
を含む方法。
【請求項69】
(a)で得られたクロマトグラフィー材料を平衡バッファーで洗浄するステップをさらに含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記物質が生物物質である、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記生物物質が、タンパク質、ウィルス、核酸、炭水化物、オリゴ糖、多糖類、脂質、およびリポ多糖類からなる群から選択される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記生物物質がタンパク質である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記タンパク質が、免疫グロブリン、ホルモン、凝固因子、サイトカイン、ペプチド、ポリペプチド、および酵素からなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記タンパク質が免疫グロブリンである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記液体試料が生理的イオン強度にある、請求項70に記載の方法。
【請求項76】
前記液体試料中ではさらに生理的pHである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記生物物質の濃度が生理的濃度である、請求項70に記載の方法。
【請求項78】
前記液体試料がさらに生理的pHにある、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記イオン強度が約0.1M〜約0.2Mである、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
(a)の前に前記液体試料のイオン強度を生理的イオン強度に調整するステップをさらに含む、請求項70に記載の方法。
【請求項81】
(b)が前記イオン強度を増大させることだけを伴う、請求項68に記載の方法。
【請求項82】
(b)が前記イオン強度を増大させることだけを伴う、請求項70に記載の方法。
【請求項83】
前記分離が固定床、流動床、またはバッチクロマトグラフィーによって達成される、請求項68に記載の方法。
【請求項84】
分析物を検出する方法であって、
(a)請求項61に記載のクロマトグラフィー材料のアドレス可能位置を前記分析物を含む試料と接触させ、それによって前記分析物がクロマトグラフィー材料に固定されるステップと、
(b)その前記末端結合官能基および疎水性リンカーとの結合によって前記分析物を検出するステップと
を含む方法。
【請求項85】
前記検出ステップが質量分析計で行われる、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記アドレス可能位置が、前記質量分析計中のレーザー光に近接して配置される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記検出ステップが、レーザーパルスを用いて前記分析物の脱着およびイオン化に十分な時間および出力で前記クロマトグラフィー材料を前記アドレス可能位置で照射することを含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記質量分析計が気相イオン分光計である、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
前記試料が血液試料である、請求項84に記載の方法。
【請求項90】
前記血液試料が血清試料である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
請求項1に記載のクロマトグラフィー材料を作製する方法であって、
(a)前記固体担体を、試薬と前記固体担体を結合させるために疎水性リンカーの一部または全部を含む二価性試薬の一方の官能基と接触させることよって、前記固体担体を活性化させるステップと、
(b)(a)で得られた固体担体を、前記疎水性リンカーと末端結合官能基の間に結合を形成するために前記末端結合官能基を含む試薬と反応させるステップと
を含む方法。
【請求項92】
前記固体担体が有機材料である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記有機材料が、セルロース、アガロース、デキストラン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、スチレンとジビニルベンゼンのコポリマー、ならびにその混合物からなる群から選択されるものである、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記固体担体が無機材料である、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
前記無機材料が、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、セラミックス、およびその混合物からなる群から選択されるものである、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記接触ステップが、活性化した固体担体の目立たないスポットをもたらす、請求項91に記載の方法。
【請求項97】
前記クロマトグラフィー材料がバイオチップの形態である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記二価性試薬が、クロロ、ブロモ、ヨード、エポキシド、カルボキシル、エステル、アルデヒド、ケトン、アミド、アルケニル、シアノ、およびイミノからなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも2種の官能基を含む、請求項91に記載の方法。

【公表番号】特表2007−522444(P2007−522444A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551171(P2006−551171)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/001304
【国際公開番号】WO2005/073711
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(596064112)ポール・コーポレーション (70)
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
【住所又は居所原語表記】2200 Northern Boulevard East Hills, New York
【Fターム(参考)】