説明

生理食塩水に可溶の無機繊維

【課題】生理食塩水に対する溶解性に優れると共に、収縮率が小さく、アルミノシリケート耐火煉瓦と反応しない無機繊維を含む断熱材を提供する。
【解決手段】以下の組成:
72重量%<SiO2<86重量%
MgO<10重量%
14重量%<CaO<28重量%
Al23≦0.29重量%若しくは0.35重量%≦Al23<2重量%であり、且つZrO2<3重量%、又はZrO2≦0.70重量%若しくは0.73重量%≦ZrO2<3重量%であり、且つAl23<2重量%
23<5重量%
25<5重量%
95重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25
を有する繊維を含む断熱材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理食塩水に可溶の、非金属製で、非晶質で、無機酸化物の耐火性の繊維材料に関するものである。本発明は、特にそれらの主要な構成成分としてシリカを有するガラス状繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機繊維材料はよく知られており、多くの用途(例えば、嵩のあるマット又はブランケットの形状の断熱材または防音材として、真空形成された造形品として、真空成形されたボード及び紙として、さらにロープ、ヤーン(yarn)、織物として;建築材料のための強化繊維として;車輌用ブレーキ片の構成成分として)に幅広く用いられている。これらの用途のほとんどにおいて、無機繊維材料が使用されるときの特性としては、耐熱性や、しばしばアグレッシブな化学環境に対する耐性が要求される。
【0003】
無機繊維材料は、ガラス状又は結晶であることができる。アスベストは、呼吸器疾患に強く関係する無機繊維材料の一つの形態である。
【0004】
アスベストを疾患に関連付ける原因となる機構が何であるかは、未だに明らかにされていないが、何人かの研究者は、この機構は、機械的なもの及びサイズに関係すると考えている。臨界サイズのアスベストは、身体の中の細胞を貫通することができ、そして長く繰り返された細胞の損傷により、健康に悪い影響を有する。この機構が真実かそうでないか、関係当局は、呼吸して吸い込まれる部分を有する全ての無機繊維製品を危険物として分類する意向を示した(このような分類を支持するための証拠があるかどうかに関わらず)。不幸なことに、無機繊維が使用される多くの用途の場合、現実的な代用品がない。
【0005】
従って、できる限り危険性がなく(もしあるなら)、またそれらを安全と考える客観的な理由がある、無機繊維が求められている。
【0006】
研究の方針は、もし生理学的流体に十分に可溶であり、その人間の身体における滞留時間も短い無機繊維が製造されるならば、損傷は起こらないか、少なくとも最小化されることを提案している。アスベストに関係する疾患の危険性は、曝露の時間に大きく依存すると思われるので、この考えは合理的であろう。アスベストは極めて不溶性である。
【0007】
細胞間の流体は、事実上、生理食塩水であるので、生理食塩水溶液における繊維溶解度の重要性が、長い間認識されてきた。もし繊維が生理食塩水溶液に可溶であるならば、溶解された成分が有毒ではない場合、繊維は、溶解しない繊維よりも安全であるに違いない。繊維が身体中に滞留する時間が短いほど、損傷を少なくすることができる。フォレスター(Forster)は、「生理学的溶液における鉱物繊維の挙動」(1982 WHO IARC会議議事録、コペンハーゲン、2巻、27〜55頁、1988年)において、商業的に生産されている鉱物繊維の生理食塩水溶液における挙動を討論した。多種多様な溶解度の繊維が討論された。
【0008】
国際特許出願WO87/05007号明細書には、マグネシア、シリカ、カルシア及び10重量%未満のアルミナを含む繊維が、生理食塩水溶液に可溶であると開示されている。開示された繊維の溶解度は、生理食塩水溶液に5時間さらした後、該溶液に存在するケイ素(繊維のシリカ含有材料から抽出された)の100万分の1(ppm)で表した。実施例において明らかにされた最も高い値は、67ppmのケイ素濃度を有していた。対照的に、フォレスターの論文に開示された、同じ測定方法としたときの最も高い値は、約1ppmであった。逆に言えば、国際特許出願に明らかにされた最高値を、フォレスターの論文と同じ測定法に換算した場合、901,500mg Si/kg繊維の抽出率、すなわちフォレスターが試験した繊維よりも約69倍も高い抽出率となるであろう。また、フォレスターの試験において最高の抽出率を持っていた繊維は、アルカリ含有量の高いガラス繊維であり、そしてこれは低い融点を持つであろう。このことは試験溶液及び実験の持続時間の相違のような因子を考慮にいれたとしても、納得のいく良好な能力である。
【0009】
国際特許出願WO89/12032号明細書には、生理食塩水溶液に可溶の別の繊維が開示されており、このような繊維に存在することのできる構成成分のいくつかを討論している。
欧州特許出願第0399320号明細書には、高い生理学的な溶解度を有するガラス繊維が開示されている。
【0010】
更に、生理食塩水への溶解度による繊維の選択を開示する特許明細書には、例えば、欧州特許第0412878号及び同第0459897号、仏国特許第2662687号及び同第2662688号、PCT WO86/04807号、同WO90/02713号、同WO92/09536号、同WO93/22251号、同WO94/15883号、同WO97/16386号及び米国特許第5250488号が挙げられる。
【0011】
これら様々な従来技術に開示された繊維の耐火性は大きく異なり、アルカリ土類シリケート材料に関して、その特性は組成に決定的に依存する。
【0012】
WO94/15883号は、1260℃以上までの温度で、耐火性断熱材として使用可能な多くの繊維を開示している。これらの繊維は、主要な構成成分として、CaO、MgO、SiO2及び任意にZrO2を含んでいた。そのような繊維は、CMS(カルシウムマグネシウムシリケート)又はCMZS(カルシウムマグネシウムジルコニウムシリケート)繊維として、よく知られている。WO94/15883号は、如何なるアルミナも、少量でのみ存在することを要求した。
【0013】
これらの繊維の使用で見つかった欠点は、約1300℃〜1350℃の間の温度で、該繊維の収縮率が、かなりの増加することである。典型的には、1200℃で約1〜3%から、例えば、1300℃で5%以上、1350℃で20%を超えるまで、収縮率は増加する。これは、例えば、炉の温度超過が、断熱材に損傷を与え、それ故に炉自体に損傷を与える結果となり得ることを意味する。
【0014】
更なる欠点は、共晶組成物の形成のために、カルシウムマグネシウムシリケート繊維が、アルミナ含有材料と反応し、該材料に付着し得ることである。アミノシリケート材料は、幅広く用いられているので、これは大きな問題である。
【0015】
WO97/16386号は、1260℃以上までの温度で、耐火性断熱材として使用可能な繊維を開示している。これらの繊維は、主要な構成成分として、MgO、SiO2及び任意にZrO2を含んでいた。WO94/15883号と同じように、この特許も、如何なるアルミナも、少量でのみ存在することを要求した。
【0016】
これらの繊維は、WO94/15883号の繊維のような明白な収縮率の劇的な変化を示さないものの、それらは、通常の使用温度で、著しく高い収縮率を示し、1200℃〜1450℃の範囲で3〜6%の収縮率を典型的に有する。これらの繊維は、アルミナ含有材料と反応し、該材料に付着する欠点を有するようには思われないが、それらは製造することが難しい傾向にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
出願人は、WO97/16386号の繊維よりも、温度範囲の全域で、より低い収縮率を有し、同時にWO94/15883号の繊維よりも、収縮率の増加のより高い開始及び収縮率のより穏やかな変化を有し、アルミナとの反応及びアルミナへの付着の傾向が低減された繊維群を発明した。
従って、本発明は、アルミノシリケート耐火煉瓦と反応せずに、1260℃の温度に対する持続的な耐性が要求される用途で使用する断熱材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記断熱材は、
72重量%<SiO2<86重量%
MgO<10重量%
14重量%<CaO<28重量%
Al23≦0.29重量%若しくは0.35重量%≦Al23<2重量%であり、且つZrO2<3重量%、又はZrO2≦0.70重量%若しくは0.73重量%≦ZrO2<3重量%であり、且つAl23<2重量%
23<5重量%
25<5重量%
95重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25
の組成を有する繊維を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】いくつかの商業用繊維と比較した本発明によるいくつかの繊維の温度に対する収縮率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の断熱材は、
72重量%<SiO2<86重量%
MgO<10重量%
14重量%<CaO<28重量%
Al23≦0.29重量%若しくは0.35重量%≦Al23<2重量%であり、且つZrO2<3重量%、又はZrO2≦0.70重量%若しくは0.73重量%≦ZrO2<3重量%であり、且つAl23<2重量%
23<5重量%
25<5重量%
95重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25
の組成を有する繊維を含む。
【0021】
好ましい範囲の組成は、
72重量%<SiO2<80重量%
18重量%<CaO<26重量%
0重量%<MgO<3重量%
0重量%<Al23≦0.29重量%若しくは0.35重量%≦Al23<1重量%であり、且つ0重量%<ZrO2<1.5重量%、又は0重量%<ZrO2≦0.70重量%若しくは0.73重量%≦ZrO2<1.5重量%であり、且つ0重量%<Al23<1重量%
98.5重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25
である。
さらに、より好ましい範囲は、
72重量%<SiO2<74重量%
24重量%<CaO<26重量%
の組成を有する。
【0022】
さらに、出願人は、少量のランタノイド元素、特にランタンの添加が、改善された強度結果のように、繊維の品質、特に繊維の長さや厚さが改善されることを見出した。僅かに低い溶解度の点において交換条件があるが、改善された強度は、特にブランケットのような製品の製造に役立つ。製造の際、繊維は縫われて繊維の連結ウェブを形成する。
【0023】
従って、本発明は、
72重量%<SiO2<86重量%
MgO<10重量%
14重量%<CaO<28重量%
Al23<2重量%
ZrO2<3重量%
23<5重量%
25<5重量%
95重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25
0.1重量%<R23<4重量%
を含むシリケート繊維を包含する。
ここでRは、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y又はそれらの混合物の群から選択される。
【0024】
好ましい元素は、La及びYである。繊維品質の著しい改善を達成するために、R23の量は、好ましくは>0.25重量%であり、より好ましくは>0.5重量%であり、さらに好ましくは>1.0重量%である。生じる溶解度の減少を最小にするために、R23の量は、好ましくは<2.5重量%であり、より好ましくは<1.5%重量%である。大変良好な結果が、
SiO2 :73±0.5重量%
CaO :24±0.5重量%
La23 :1.3〜1.5重量%
残りの成分 :<2重量%、好ましくは<1.5重量%
の組成を有する繊維で得られた。
【0025】
本発明の更なる特徴は、次の実例となる記載を踏まえて、またいくつかの商業用繊維と比較した本発明によるいくつかの繊維の温度に対する収縮率のグラフである図面の図1を参照し、請求項から明らかとなるであろう。
発明者らは、実験装置を使用して一連のカルシウムシリケート繊維を製造した。その装置では、公知の方法で、適切な組成の溶融物を形成し、8〜16mmのオリフィスを通して取り出し、そしてブローして繊維が製造される。(流出口のサイズは、溶融物の粘性を考慮して変更された。これは、使用される装置及び組成によって実験的に決定されなければならない調整である。)。
【0026】
繊維を試験し、いくつかのMgOを有する主にカルシウムシリケート繊維である繊維の結果を、表1に示した。その中で、
・収縮率図は、方法(下記を参照)によって、繊維のプレフォームで測定されて示され、
・組成は、湿式化学分析によって、ホウ素を用いたX線蛍光により測定されて示され、
・生理食塩水溶液における24時間静止試験後の主要なガラス成分のppmで全溶解度が示され、
・m2gの比表面積、
・繊維品質の質的評価、及び
・及びプレフォームが、アルミノシリケート煉瓦(Thermal Ceramics Italianaから入手可能なJM28ブリックスであり、アルミナ70重量%及びシリカ30重量%というおおよその組成を有している)に付着するか否かの表示を行った。
【0027】
【表1−1】

【0028】
【表1−2】

【0029】
収縮率は、0.2%の澱粉溶液500cm3中の繊維75gを用い、120×65mmのツール中に、減圧注型プレフォームを製造する方法によって測定された。白金のピン(約0.1〜0.3mmの直径)を、100×45mm離して、4端に置いた。最も長い長さ(L1及びL2)及び対角線(L3及びL4)を、移動顕微鏡を用いて±5μmの精度に測定した。サンプルを、炉の中に置き、試験温度より低い温度50℃に300℃/時間で傾斜させ、最後の50℃の間、試験温度に120℃/時間で傾斜させ、24時間放置した。炉から取り除く際、サンプルを自然に冷却してもよい。収縮率の値は、4回測定の平均として与えられる。
【0030】
本発明者らは、72重量%未満のシリカ含有量を有するそれらの繊維が、アルミノシリケート煉瓦に付着する傾向があることを見出した。本発明者らは、MgO含有量の高い繊維(>12重量%)が(WO97/16386号の特性から予測されたようには)付着しないことも見出した。
【0031】
中間濃度のMgO(12〜20重量%)を有するカルシウムシリケート繊維がアルミノシリケート煉瓦に付着することは知られているに対し、マグネシウムシリケート繊維はアルミノシリケート煉瓦に付着しない。驚くことに、本発明の繊維については、そのような中間濃度のMgOが許容され得る。<10重量%のMgO、又は<5重量%のMgO濃度は、要求される付着のない結果を与えるが、耐火性の観点から、2.5重量%のMgOの最高濃度を有することが好ましく、その量が1.75重量%未満であるべきことがより好ましいと思われる。
【0032】
表2は、これらの繊維におけるアルミナ及びジルコニアの影響を示している。アルミナは、繊維品質に弊害をもたらすことが知られており、表2の最初3つの組成物は、2重量%を超えるAl23を有し、アルミノシリケート煉瓦に付着する。さらに、アルミナの増加は、溶解度の低下をもたらす。従って、本発明者らは、それら発明組成物におけるアルミナの上限として2重量%を決定した。
【0033】
対照的に、ジルコニアは、耐火性を改善することが知られており、表2は、SiO2とZrO2との合計が72重量%を超え、ZrO2の量が十分である場合、72重量%未満のシリカ濃度が許容され得ることを示している。しかしながら、ジルコニアを増加させると、生理食塩水溶液中の繊維の溶解度が低下するので、好ましいZrO2の濃度は3重量%未満である。
【0034】
【表2】

【0035】
他のいくつかの共通のガラス添加物の効果を表3に表わす。表3は、ガラス形成添加物としてP25及びB23の効果を示している。P25は、67.7重量%という低いSiO2を含む繊維がアルミノシリケート煉瓦に付着しないような、これら組成物の付着特性への不釣合いな効果を有するものと理解され得る。
【0036】
23も、70.9重量%という低いSiO2を含む繊維が付着しないという効果を有している。本発明者らは、アルミノシリケート煉瓦への付着が、次の関係を満たす繊維には起こらない傾向があると判断した。
72重量%<SiO2+B23+ZrO2+5*25
本発明者らは、B23及びP25について、それぞれ5重量%の最大濃度を仮定した。
【0037】
【表3−1】

【0038】
【表3−2】

【0039】
表1〜3は、少量の他成分が包含されてもよいことを示している。本発明は5重量%までの他成分が許容されるが、他成分は耐火性が低い繊維を製造する傾向があるので、これら他成分の量は、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満である。(しかし、特定のランタノイド添加物の効果については以下を参照のこと)
【0040】
上記結果は、不確実性が引き起こす全てを取り入れた実験装置で得られた。最も良好に現れる繊維の試作は、二つの別個の場所で行われ、試みられるべき組成物のブローイング(blowing)とスピニング(spinning)の両方が許容された。表4は、得られた結果の抽出(重複は省略した)を示し、非常に有用な繊維が生じることを示した。試作において試験された繊維は、おおよそ次の範囲に収まる組成を有していた。
72重量%<SiO2<80重量%
18重量%<CaO<26重量%
0重量%<MgO<3重量%
0重量%<Al23<1重量%
0重量%<ZrO2<1.5重量%
であり、且つ
98.5重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25
である。
1.75重量%を超えるMgO濃度を有する組成物が、より低いMgO濃度を有する組成物よりも1350℃でより高い収縮率を有する傾向があることが分かる。
【0041】
【表4】

【0042】
図1は、本発明の繊維の重要な特徴をグラフ形式で示し、表4の最初の3つの繊維及び5番目の繊維(それぞれSW613として参照)と、商業用繊維のIsofrax[登録商標](Unifrax Corporationのマグネシウムシリケート繊維)、RCF(標準的なアルミノシリケート耐火性セラミック繊維)及びSW607 MAX[登録商標]、SW607[登録商標]及びSW612[登録商標](Thermal Ceramics Europe Limitedのカルシウムマグネシウムシリケート繊維)との収縮率特性を比較している。
【0043】
Isofrax[登録商標]及びRCFは、1200〜1450℃の範囲全体において、3〜6%の範囲の収縮率を有していることが分かる。SW607 MAX[登録商標]、SW607[登録商標]及びSW612[登録商標]は、1200℃で2〜5%の範囲の収縮率を有しているが、1300℃の後は急速に増加する。本発明の繊維は、1350℃まで2%未満の収縮率を有し、1400℃で5〜8%まで上がり、それ以降は急速に増加する。
【0044】
従って、本発明の繊維は、1300℃で、マグネシウムシリケート、商業用カルシウムマグネシウムシリケート又はRCFよりも低い収縮率の利益を有し;商業用カルシウムマグネシウムシリケート繊維よりも、より高温で収縮率の増加が始まり;商業用カルシウムマグネシウムシリケート繊維よりも、温度で収縮率のより浅い上昇を有し;商業用カルシウムマグネシウムシリケート繊維が付着する可能性のある方法で、アルミノシリケート煉瓦に付着しない。
【0045】
この繊維は、断熱材に使用されることができ、その断熱材の構成成分(例えば、他の繊維及び/又はフィラー及び/又はバインダーと共に)を形成しても、全体の断熱材を形成してもよい。繊維は、断熱材からブランケットに形成されてもよい。
【0046】
上述された単純なカルシウムシリケート繊維で見られる問題は、その繊維が短い傾向にあり、その結果、低品質ブランケットとなることであった。より良いブランケット用繊維を生産するための方法が要求され、出願人は、組成物への添加物としての、他元素の追加の繊維品質に与える効果を調査するためにスクリーニング試験を行った。ランタノイド元素、特にLa及びYが繊維品質を改善することが見出された。Laは、最も商業的に興味深い元素であると判断され、この最初のスクリーニングテストの後、努力をLaの効果を調査することに集中した。
【0047】
73.5重量%のSiO2、バランスのCaO及び最小量の不純物を含む繊維に、添加物としてLa23を0〜4重量%の量で使用して、最適の量を決定した。La23の添加は繊維化(fiberisation)を改善し、その上耐火性を低下させないということが分かった。その繊維は、アルミナ煉瓦と反応しなかった。しかしながら、最高濃度のLa23では、溶解度は著しく減少された。従って、妥協濃度である1.3〜1.5重量%La23を繊維組成物の更なる試験で使用した。
【0048】
ランタン含有材料の耐火性及び繊維化に関して、最適の処方を調査及び定義するために、1.3重量%のLa23(一定を保った)、バランスのCaO+最小の不純物MgO及びAl23を含有する材料において、シリカを67重量%から78重量%SiO2へ増加することに目を向けて研究が行われた。
シリカを増加すると、繊維の耐火性が増加し、より低い収縮率、より高い融点を与え、さらに高温でのアルミナとの反応が減少した。
【0049】
耐火性と繊維化との間の最善の妥協は、次の組成に関して見出された。
SiO2 :73重量%
CaO :24重量%
La23 :1.3〜1.5重量%
残りの不純物(Al23、MgO、その他)<1.5重量%
この組成は、下記の表5で示された組成物「La有り」を有するブランケットの生産規模での製造で試作された。
【0050】
この組成物は、Laを含まないもの(表5では「La無し」)よりも、より優れた繊維を生産するということが確認された。さらに、その繊維は、アルミナ煉瓦と反応することは無く、優れた耐火性を有していた。
より優れた繊維化が観察され、128kg/m3の密度を有する25mm厚のブランケットの引張強度を調べることによって評価した。
【0051】
【表5】

【0052】
1.3重量%だけのLa23の添加が、非常に改善された繊維を示す引張強度における相当な改善につながるということが分かる。
出願人は、繊維化を改善するこの効果が、アルカリ土類シリケート繊維に一般に適用可能な粘度及び表面張力を変更する効果であると推測し、そのため本発明は、アルカリ土類シリケート繊維の繊維化を改善するために、そのような添加物を上記で示された量で一般に使用することを包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
72重量%<SiO2<86重量%
MgO<10重量%
14重量%<CaO<28重量%
Al23≦0.29重量%若しくは0.35重量%≦Al23<2重量%であり、且つZrO2<3重量%、又はZrO2≦0.70重量%若しくは0.73重量%≦ZrO2<3重量%であり、且つAl23<2重量%
23<5重量%
25<5重量%
95重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25
の組成を有する繊維を含む断熱材。
【請求項2】
前記繊維中に存在するMgOの量が、2.5重量%未満である請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
前記繊維中に存在するMgOの量が、1.75重量%未満である請求項2に記載の断熱材。
【請求項4】
CaOの量が、18重量%<CaO<26重量%の範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載の断熱材。
【請求項5】
98重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25である請求項1〜4のいずれか一項に記載の断熱材。
【請求項6】
98.5重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25である請求項5に記載の断熱材。
【請求項7】
99重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25である請求項6に記載の断熱材。
【請求項8】
72重量%<SiO2<80重量%
18重量%<CaO<26重量%
0重量%<MgO<3重量%
0重量%<Al23≦0.29重量%若しくは0.35重量%≦Al23<1重量%であり、且つ0重量%<ZrO2<1.5重量%、又は0重量%<ZrO2≦0.70重量%若しくは0.73重量%≦ZrO2<1.5重量%であり、且つ0重量%<Al23<1重量%
98.5重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25
の組成を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の断熱材。
【請求項9】
72重量%<SiO2<74重量%
24重量%<CaO<26重量%
の組成を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の断熱材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項で特定された繊維を全体的に含む断熱材。
【請求項11】
断熱材がブランケットの形状である請求項1〜10のいずれか一項に記載の断熱材。
【請求項12】
72重量%<SiO2<86重量%
MgO<10重量%
14重量%<CaO<28重量%
Al23≦0.29重量%若しくは0.35重量%≦Al23<2重量%であり、且つZrO2<3重量%、又はZrO2≦0.70重量%若しくは0.73重量%≦ZrO2<3重量%であり、且つAl23<2重量%
23<5重量%
25<5重量%
95重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25
の組成を有する繊維を含む断熱材の、1260℃の温度に24時間曝した後にアルミノシリケート耐火煉瓦と反応しないという特性による断熱材としての使用。
【請求項13】
1260℃の温度に24時間曝した後に断熱材がアルミノシリケート耐火煉瓦と反応しないことを要求する用途における断熱方法であって、
72重量%<SiO2<86重量%
MgO<10重量%
14重量%<CaO<28重量%
Al23≦0.29重量%若しくは0.35重量%≦Al23<2重量%であり、且つZrO2<3重量%、又はZrO2≦0.70重量%若しくは0.73重量%≦ZrO2<3重量%であり、且つAl23<2重量%
23<5重量%
25<5重量%
95重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25
の組成を有する繊維を含む断熱材の使用を含む方法。
【請求項14】
72重量%<SiO2<86重量%
MgO<10重量%
14重量%<CaO<28重量%
Al23<2重量%
ZrO2<3重量%
23<5重量%
25<5重量%
95重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25
0.1重量%<R23<4重量%
(ここでRは、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y又はそれらの混合物の群から選択される)
を含むシリケート繊維。
【請求項15】
Rが、La、Y又はそれらの混合物である請求項14に記載のシリケート繊維。
【請求項16】
Rが、Laである請求項15に記載のシリケート繊維。
【請求項17】
23の量が、0.25重量%を超える請求項14〜16のいずれか一項に記載のシリケート繊維。
【請求項18】
23の量が、0.5重量%を超える請求項14〜16のいずれか一項に記載のシリケート繊維。
【請求項19】
23の量が、1.0重量%を超える請求項14〜16のいずれか一項に記載のシリケート繊維。
【請求項20】
23の量が、2.5重量%未満である請求項14〜19のいずれか一項に記載のシリケート繊維。
【請求項21】
23の量が、1.5重量%未満である請求項14〜19のいずれか一項に記載のシリケート繊維。
【請求項22】
72重量%<SiO2<80重量%
18重量%<CaO<26重量%
0重量%<MgO<3重量%
0重量%<Al23<1重量%
0重量%<ZrO2<1.5重量%
1重量%<R23<2.5重量%
の組成を有する請求項14〜21のいずれか一項に記載のシリケート繊維。
【請求項23】
RがLaを含む請求項22に記載のシリケート繊維。
【請求項24】
SiO2 :73±0.5重量%
CaO :24±0.5重量%
La23 :1.3〜1.5重量%
残りの成分 :<2重量%
の組成を有する請求項23に記載のシリケート繊維。
【請求項25】
前記残りの成分が、1.5重量%未満である請求項24に記載のシリケート繊維。
【請求項26】
請求項14〜22のいずれか一項に記載のシリケート繊維を含む断熱材。
【請求項27】
請求項14〜25のいずれか一項で特定された繊維を全体的に含む断熱材。
【請求項28】
断熱材がブランケットの形状である請求項26又は27に記載の断熱材。
【請求項29】
アルミノシリケート耐火煉瓦と反応せずに、1300℃の温度に対する持続的な耐性が要求される用途で使用するための請求項26〜28のいずれか一項に記載の断熱材。
【請求項30】
アルミノシリケート耐火煉瓦と反応せずに、1260℃の温度に対する持続的な耐性が要求される用途における請求項14〜25のいずれか一項に記載の繊維を含む本体の断熱材としての使用。
【請求項31】
アルミノシリケート耐火煉瓦と反応せずに、1300℃の温度に対する持続的な耐性が要求される用途における請求項30に記載の使用。
【請求項32】
72重量%<SiO2<86重量%
MgO<10重量%
14重量%<CaO<28重量%
Al23<2重量%
ZrO2<3重量%
23<5重量%
25<5重量%
95重量%<SiO2+CaO+MgO+Al23+ZrO2+B23+P25
の組成を有するアルカリ土類シリケート繊維の繊維化を改善する方法であって、
23(ここでRは、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y又はそれらの混合物の群から選択される)の繊維の成分を1〜4重量%の範囲の量で包含させることによって改善する方法。
【請求項33】
Rが、La、Y又はそれらの混合物である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
Rが、Laである請求項33に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−116648(P2011−116648A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34718(P2011−34718)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【分割の表示】特願2003−559944(P2003−559944)の分割
【原出願日】平成15年1月2日(2003.1.2)
【出願人】(397042300)ザ・モーガン・クルーシブル・カンパニー・ピーエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】THE MORGAN CRUCIBLE COMPANY PLC
【住所又は居所原語表記】MORGAN HOUSE, MADEIRA WALK, WINDSOR, BERKSHIRESL4 1EP, GREAT BRETAIN
【Fターム(参考)】