説明

生石灰の製造設備並びに消石灰の製造設備および製造方法

【課題】簡易な製造設備によって活性度の高い生石灰を製造することができるとともに、生石灰の製造時に発生するCO2ガスを高い濃度で分離して回収することが可能となる生石灰の製造設備を提供する。
【解決手段】内部に粒状の石灰石Cを供給するための供給口11aが設けられ、かつ内部を石灰石のか焼温度以上の温度雰囲気下に保持可能な加熱手段が設けられ、上部に加熱手段の燃焼排ガスおよび石灰石のか焼によって発生したCO2ガスを排出する排気管15が接続されるとともに、上記か焼によって生成した生石灰を取り出す排出口14が設けられた蓄熱か焼炉11と、上記石灰石よりも大きな粒径を有し、蓄熱か焼炉11の内部に充填された熱媒体16とを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い反応性を有する消石灰を製造することができるとともに、その原料となる生石灰の焼成時に発生するCO2ガスを高濃度で回収することが可能になる生石灰の製造設備並びに消石灰の製造設備および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的かつ全産業にわたって、地球温暖化の主因たる二酸化炭素(CO2)ガスを削減する試みが推進されている。
ちなみに、石灰産業は、セメント産業、電力や鉄鋼等と共にCO2ガスの排出量が多い産業の一つであり、当該石灰産業におけるCO2ガスの排出削減は、日本全体におけるCO2ガスの排出削減に大きな貢献を果たすことになる。
【0003】
図5は、上記石灰産業における一般的な生石灰の製造設備を示すもので、図中符号1が生石灰を焼成するためのロータリーキルン(生石灰キルン)である。なお、ロータリーキルン1は、横型焼成炉であるが、生石灰を焼成するための従来の縦型焼成炉として、メルツ炉やベッケンバッハ炉等が知られている。
そして、このロータリーキルン1の図中左方の窯尻部分2には、石灰石塊を予熱するためのプレヒータ3が設けられるとともに、図中右方の窯前に、内部を加熱するための主バーナ5が設けられている。
【0004】
ここで、プレヒータ3としては、例えばグレートプレヒータ等が用いられており、当該グレートプレヒータは、複数のグレートをリング状に連結させたものである。そして、供給ライン4からグレートプレヒータ3内の上流側に供給された石灰石塊は、上記グレートにのって順次当該プレヒータ3の下流側へ移動するにしたがって、ロータリーキルン1から排出される高温の排ガスによって予熱され、ロータリーキルン1の窯尻部分2に導入されるようになっている。
【0005】
他方、ロータリーキルン1から排出された燃焼排ガスは、上記プレヒータ3に導入され、その上流側へと送られて上記石灰石塊を予熱するとともに、最終的にプレヒータ3の出口より、排気ファン6によって排気ライン7を介して排気されて行くようになっている。
【0006】
このような構成からなる生石灰の製造設備においては、先ず石灰石(CaCO3)塊をプレヒータ3で予熱し、次いでロータリーキルン1内において約1400℃の高温雰囲気下で焼成することにより、塊状生石灰を製造している。
【0007】
そして、このか焼時に、CaCO3→CaO+CO2↑で示される化学反応が生じて、CO2ガスが発生する(原料起源によるCO2ガスの発生)。この原料起源によるCO2ガスの濃度は、原理的には100%である。また、上記ロータリーキルン1を上記高温雰囲気下に保持するために、主バーナ5において化石燃料が燃焼される結果、当該化石燃料の燃焼によってもCO2ガスが発生する(燃料起源によるCO2ガスの発生)。ここで、主バーナ5からの排ガス中には、燃焼用空気中のN2ガスが多く含まれているために、当該排ガス中に含まれる燃料起源によるCO2ガスの濃度は、約15%と低い。
【0008】
この結果、上記ロータリーキルン1から排出される排ガス中には、上述した濃度の高い原料起源によるCO2ガスと、濃度の低い燃料起源によるCO2が混在するために、当該CO2の排出量が多いにもかかわらず、そのCO2濃度は30〜35%程度であり、回収が難しいという問題点があった。
【0009】
これに対して、現在開発されつつあるCO2ガスの回収方法としては、液体回収方式、膜分離方式、固体吸着方式等があるものの、未だ回収コストが極めて高いという課題があった。
また、上記生石灰製造設備から排出されたCO2による地球温暖化を防止する方法として、当該排出源から低濃度で排出されたCO2を分離・回収して略100%にまで濃度を高め、液化した後に地中に貯留する方法等も提案されているものの、分離・回収のためのコストが高く、同様に実現には至っていない。
【0010】
他方、下記特許文献1には、石灰石の焼成過程において発生するCO2ガスを、利用価値の高い高純度のCO2ガスとして回収する装置として、石灰石が供給される分解反応塔と、熱媒体として生石灰(CaO)が供給されるとともに当該生石灰を燃焼ガスによって石灰石の焼成温度以上に加熱する再熱塔と、これら分解反応塔と再熱塔とを連結する連結管とを備えたCO2ガスの生成回収装置が提案されている。
【0011】
そして、上記従来の回収装置においては、再熱塔で加熱された生石灰を、連結管を通じて分解反応塔に供給し、流動層を形成させて石灰石を焼成することにより当該分解反応塔内にCO2ガスを生成させるとともに、これによって生じた生石灰の一部を排出し、他部を再び連結管を通じて再熱塔に送って再加熱するようになっている。
【0012】
このように、上記CO2ガスの生成回収装置によれば、石灰石の分解反応を行う場所である分解反応塔と、分解反応に必要な熱量の発生を行う場所である再熱塔とを分離することによって、石灰石の分解反応によって発生するCO2ガスと熱媒体の加熱のために発生する燃焼排ガスとが混合することを防止することができるために、分解反応塔から高い濃度のCO2ガスを回収することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭57−67013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記特許文献1において開示されているCO2ガスの生成回収装置によれば、石灰石の分解反応を行う場所である分解反応塔と、分解反応に必要な熱量の発生を行う場所である再熱塔とを分離しているために、設備が大掛かりになるという問題が生じる。
【0015】
加えて、上記CO2ガスの生成回収装置においては、熱媒体として生石灰を用い、この生石灰によって石灰石を加熱して焼成しているために、再熱塔において上記生石灰を石灰石の焼成温度以上、具体的には1000℃以上に加熱しておく必要がある。この結果、分解反応塔や再熱塔内で流動する生石灰等の粉体が固化しやすくなり、連結管等において付着や閉塞が生じて運転不能になるという問題点もある。
【0016】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、簡易な製造設備によって活性度の高い生石灰を製造することができ、よって反応性が高い消石灰を製造することができるとともに、上記生石灰の製造時に発生するCO2ガスを高い濃度で分離して回収することが可能となり、かつ当該CO2ガスの熱エネルギーを有効活用することができて経済性に優れる生石灰の製造設備並びに消石灰の製造設備および製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明に係る生石灰の製造設備は、内部に粒状の石灰石を供給するための供給口が設けられ、かつ上記内部を当該石灰石のか焼温度以上の温度雰囲気下に保持可能な加熱手段が設けられ、上部に上記加熱手段の燃焼排ガスおよび上記石灰石のか焼によって発生したCO2ガスを排出する排気管が接続されるとともに、上記か焼によって生成した生石灰を取り出す排出口が設けられた蓄熱か焼炉と、上記石灰石よりも大きな粒径を有し、上記蓄熱か焼炉の内部に充填された熱媒体とを備えてなることを特徴とするものである、
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記熱媒体が、生石灰であることを特徴とするものである。
【0019】
次いで、請求項3に記載の本発明に係る消石灰の製造設備は、請求項1または2に記載の生石灰の製造設備と、この生石灰の製造設備によって製造された生石灰に消化水を供給して消石灰を生成させる消化器と、この消化器から排出された上記消石灰を熟成する熟成器と、この熟成器で熟成された水分を含む消石灰を乾燥させる乾燥器と、上記生石灰の製造設備の排気管から排出された燃焼排ガスまたはCO2ガスと水とを熱交換させることにより発生した蒸気を上記乾燥器の熱源として供給する熱交換手段とを備えてなることを特徴とするものである。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、上記生石灰の製造設備と上記消化器との間に、上記排出口から取り出された生石灰を一時貯留するバッファタンクを設けたことを特徴とするものである。
【0021】
さらに、請求項5に記載の本発明に係る消石灰の製造方法は、請求項3または請求項4に記載の消石灰の製造設備を用いて消石灰を製造するとともに、上記熱交換手段を経た上記CO2ガスを回収することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1または2に記載の発明によれば、加熱手段によって蓄熱か焼炉内に充填した熱媒体を石灰石のか焼温度以上に加熱して、内部を上記か焼温度以上の温度雰囲気下に保持しつつ、供給口より石灰石を供給する。すると、当該石灰石は、これよりも粒径が大きい熱媒体間に入り込み、効率的に加熱されてか焼され、CaCO3→CaO+CO2↑、で示すように、生石灰が生成されるとともに、CO2ガスが発生する。この結果、上記蓄熱か焼炉内は、石灰石のか焼によって発生したCO2ガスで満たされ、当該CO2ガス濃度が略100%になる。これにより、排気管を介して、上記蓄熱か焼炉から略100%の濃度のCO2ガスを回収することができる。加えて、か焼温度を低めに設定することにより、活性度の高い粉末状の生石灰を得ることが可能になる。
【0023】
この際に、上記蓄熱か焼炉において、石灰石よりも粒径が大きく、よって極端に比表面積が小さい熱媒体によって石灰石を加熱してか焼させているために、蓄熱か焼炉内において大きな熱量を確保することができるとともに、当該蓄熱か焼炉において上記熱媒体をか焼温度以上の1000℃以上に加熱しても、熱媒体同士あるいは熱媒体と炉壁の固着や融着を抑えて、コーチングトラブル等の発生を抑止することが可能になる。
【0024】
さらに、熱媒体として、石灰石よりも粒径の大きなものを用いているために、生成した粉末状の生石灰が、上記か焼時に発生したCO2ガスによって流動化させて、上記蓄熱か焼炉からオーバーフローさせ、あるいは上記か焼時に発生したCO2ガスに同伴させて、当該CO2ガスから固気分離させることにより、簡便に上記蓄熱か焼炉から取り出すことができる。
【0025】
ここで、上記熱媒体としては、蓄熱か焼炉における加熱温度に対する耐熱性と、石灰石と混合された場合の耐摩耗性を有するものであれば、珪石(SiO2)、アルミナ(Al23)等のセラミックス材料、耐熱合金等の金属材料等を用いることができる。
【0026】
特に、請求項2に記載の発明にように、生石灰を用いれば、融点が2500℃程度と高く、融着し難いという利点があるとともに、熱媒体として蓄熱か焼炉内で上記石灰石のか焼を繰り返し行う間に、徐々に摩耗して微粉が発生した場合にも、何等の弊害を生じることがないために好適である。
【0027】
また、請求項3〜5のいずれかに記載の発明によれば、上記請求項1または2に記載の発明によって得られた活性度の高い粉末状の生石灰を原料として用いることができ、よって反応性が高い消石灰を製造することができる。
【0028】
しかも、熱交換手段において、生石灰の製造設備から排出された高温かつ高濃度のCO2によって、乾燥器の熱源となる蒸気を得ているために、熱効率が高く、経済性に優れるとともに、上記熱交換手段から温度が低下した略100%の濃度のCO2ガスを回収することができる。
【0029】
なお、本発明においては、複数の蓄熱か焼炉を設ければ、少なくとも一つの蓄熱か焼炉において、石灰石をか焼している際に、他の蓄熱か焼炉の少なくとも一つにおいて、上記熱媒体をか焼温度以上に加熱し蓄熱することができ、これを交互にまたはローテーションを決めて繰り返し行うことにより、石灰石を連続的にか焼して生石灰を製造することができる。
【0030】
これに対して、請求項5に記載の発明によれば、上記生石灰の製造設備と消化器との間に、蓄熱か焼炉の排出口から取り出された生石灰を一時貯留するバッファタンクを設けているために、1基の蓄熱か焼炉によるバッチ処理によっても、後段の消化器等において消石灰を連続的に製造することが可能になり、設備コストおよびメンテナンスコストの低減を図ることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る消石灰の製造設備の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る生石灰の製造設備の一実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図2の変形例を模式的に示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る生石灰の製造設備の他の実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図5】従来の生石灰の製造設備を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1および図2は、本発明に係る生石灰の製造設備およびこれを用いた消石灰の製造設備の一実施形態を示すもので、図中符号10が生石灰の製造設備であり、符号11がこの生石灰の製造設備の主体となる蓄熱か焼炉である。
この蓄熱か焼炉11は、上側部に、内部に10μm〜1mmの粒径に粉砕された石灰石Cを供給するための供給口11aが設けられるとともに、下部には、内部を石灰石のか焼温度以上の温度雰囲気下(例えば、約900℃)に保持可能なバーナ(加熱手段:図示を略す。)が設けられた横型の炉である。
【0033】
そして、この蓄熱か焼炉11の底部には、1または複数のバーナに燃料あるいは燃焼用空気を供給する燃料管12および空気管13が接続されている。
他方、蓄熱か焼炉11の側壁であって底部から所定の高さ位置には、か焼されることによって生成した粉末状の生石灰を取り出すための排出口14が設けられ、天井部には、バーナの燃焼排ガス、あるいは石灰石のか焼によって発生したCO2ガスを排出するための排気管15が接続されている。
【0034】
さらに、この蓄熱か焼炉11の内部には、熱媒体16が充填されている。この熱媒体16としては、内部に供給される石灰石Cよりも粒径が大きい生石灰が用いられている。
【0035】
そして、以上の構成からなる生石灰の製造設備10の後段に、順次排出口14からオーバーフロー管14aを介して取り出された生石灰を一時貯留するバッファタンク17と、消化器18と、この消化器18から排出された消石灰を熟成する熟成器19と、この熟成器19で熟成された水分を含む消石灰を乾燥させる乾燥器20とが配置されている。
【0036】
ここで、消化器18、熟成器19および乾燥器20は、一般的な消石灰の製造設備において用いられている周知のものである。すなわち、消化器18は、バッファタンク17の排出管17aから定量ずつホッパ18aを介して内部に投入される生石灰に、図示されない消化水の供給ラインからエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の添加剤を含む冷水からなる消化水を供給して撹拌されることにより消石灰を生成させるものである。
【0037】
また、熟成器19は、消化器17における消化反応によって生成した水を含む消石灰を、撹拌しつつ熟成させるものであり、乾燥器20は、熟成された消石灰を撹拌しつつ乾燥して水分を除去するものである。そして、この乾燥器20を経た消石灰を、別途粉砕して分級することにより、製品となる所定の粒度の消石灰を得るようになっている。
【0038】
さらに、この消石灰の製造設備においては、生石灰の製造設備10の蓄熱か焼炉11から排出された排ガスまたはCO2ガスを加熱源として利用して、乾燥器20に乾燥用の蒸気を供給するための排熱ボイラ(熱交換手段)21が設けられている。すなわち、蓄熱か焼炉11の排気管15には、三方切換弁22が接続されるとともに、この三方切換弁22の2つの吐出側ポートに、各々燃焼排ガスの移送管23およびCO2ガスの移送管24が接続されている。
【0039】
そして、これら燃焼排ガスの移送管23およびCO2ガスの移送管24が、それぞれ排熱ボイラ21の熱源供給側に接続されている。また、この排熱ボイラ21の熱源排出管25にも、三方切換弁26が接続され、この三方切換弁26の2つの吐出側ポートに、各々燃焼排ガスの排出管27およびCO2ガスの排出管28が接続されている。なお、上記三方切換弁22および燃焼排ガスの移送管23およびCO2ガスの移送管24を用いることなく、蓄熱か焼炉11の排気管15を直接排熱ボイラ11に接続して、上記三方切換弁26のみによって燃焼排ガスとCO2ガスとを切り換えることも可能である。
【0040】
他方、排熱ボイラ21と加熱器20との間には、排熱ボイラ21において、水の供給管29から供給された水を移送管24または25から供給された燃焼排ガスまたはCO2ガスによって気化させることにより発生した蒸気を、乾燥器20に熱源として供給する蒸気供給管30が接続されている。
【0041】
次に、以上の構成からなる消石灰の製造設備を用いた本発明に係る消石灰の製造方法の一実施形態について説明する。
先ず、生石灰の製造設備の蓄熱か焼炉11においては、底部に設けられたバーナに燃料管12および空気管13から燃料および燃焼用空気を供給して、内部の熱媒体16を石灰石Cのか焼温度以上(例えば、1200℃)に加熱され蓄熱される。そして、この際に排出された燃焼排ガスは、排気管15から三方切換弁22によって燃焼排ガスの移送管23を介して排熱ボイラ21の熱源として供給される。なお、排熱ボイラ21において熱交換して降温した燃焼排ガスは、熱源排出管25から三方切換弁26を経て燃焼排ガスの排出管27から排出されてゆく。
【0042】
次いで、蓄熱か焼炉11内が、石灰石Cのか焼温度以上の温度雰囲気に保持されると、三方切換弁22がCO2移送管24と連通するように切り換えられるとともに、供給口11aから内部に粒状の石灰石Cが供給され、内部の熱媒体16によってか焼温度以上(例えば、900℃)に加熱されて、CaCO3→CaO+CO2↑、で示すように、生石灰が生成されるとともに、CO2ガスが発生する。
【0043】
そして、蓄熱か焼炉11内に発生したCO2ガスは、排気管15から三方切換弁22によってCO2ガスの移送管24を介して排熱ボイラ21の熱源として供給される。そして、排熱ボイラ21において水と熱交換することにより降温したCO2ガスは、切り換えられた三方切換弁26から、CO2ガスの排出管28を経て、高濃度のCO2ガスとして回収される。
【0044】
このようにして、排熱ボイラ21においては、熱源として燃焼排ガスまたはCO2ガスが供給されることにより、連続的に供給管29から供給される水から蒸気が生成されて、蒸気供給管30から乾燥器20へと供給される。
【0045】
他方、蓄熱か焼炉11内において生成した生石灰は、か焼の際に発生したCO2ガスにより流動化され、オーバーフローによりオーバーフロー管14aをからバッファタンク17へと送られて、一時貯留される。
【0046】
そして、このバッファタンク17に蓄えられた生石灰は、排出管17aから定量ずつホッパ18aを介して消化器18内に投入され、図示されない消化水の供給ラインから供給される消化水が加えられて撹拌されることにより、CaO+H2O→Ca(OH)2 で示すように消石灰が生成される。
【0047】
そして、消化器17における消化反応によって生成した消石灰は、熟成器19に送られて熟成された後に、乾燥器20において、排熱ボイラ21から供給される蒸気によって乾燥されて排出される。
【0048】
このように、上記構成からなる生石灰の製造設備10およびこれを備えた消石灰の製造設備並びにこれを用いた消石灰の製造方法によれば、バーナによって蓄熱か焼炉11内に充填した熱媒体16を石灰石のか焼温度以上に加熱して、内部を上記か焼温度以上の温度雰囲気下に保持しつつ供給口11aより石灰石Cを供給し、当該石灰石Cをか焼することによって発生した略100%の濃度のCO2ガスを、移送管24および排熱ボイラ21を介して、その排出管28から回収することができる。
【0049】
この際に、蓄熱か焼炉11において、石灰石Cよりも粒径が大きく、よって極端に比表面積が小さい熱媒体16によって石灰石Cを加熱してか焼させているために、蓄熱か焼炉11内において大きな熱量を確保することができるとともに、当該蓄熱か焼炉11において熱媒体16をか焼温度以上の1000℃以上に加熱しても、熱媒体16同士あるいは熱媒体16と炉壁の固着や融着を抑えて、コーチングトラブル等の発生を抑止することが可能になる。
【0050】
さらに、熱媒体16として、石灰石Cよりも粒径の大きなものを用いているために、生成した粉末状の生石灰を、上記か焼時に発生したCO2ガスによって流動化させて、上記蓄熱か焼炉11からオーバーフローさせて、簡便に蓄熱か焼炉11から取り出すことができる。
【0051】
しかも、熱媒体16として、生石灰を用いているために、融点が2500℃程度と高く、融着し難いうえに、蓄熱か焼炉11内で石灰石Cのか焼を繰り返し行う間に、徐々に摩耗して微粉が発生した場合にも、何等の弊害を生じることがない。
加えて、生石灰の製造設備から排出された高温の燃焼排ガスおよび高温かつ高濃度のCO2を排熱ボイラ11に送って、乾燥器20の熱源となる蒸気を得ているために、熱効率が高く、経済性に優れる。
【0052】
また、図3は、上記構成からなる生石灰の製造設備の変形例を示すもので、この製造設備においては、蓄熱か焼炉31の下部側面の一方側に、内部を加熱するバーナが設けられ、当該バーナに各々燃料および燃焼用空気を供給するための燃料管32および空気管33が接続されている。
【0053】
また、この蓄熱か焼炉31の下部側面の他方側には、熱媒体16を加熱して蓄熱する際に発生する燃焼排ガスを排出するための移送管34が設けられ、この移送管34が直接排熱ボイラ21の熱源供給側に接続されている。他方、蓄熱か焼炉31の天井部には、内部で発生したCO2を排出するための移送管35が設けられ、この移送管35が直接排熱ボイラ21の熱源供給側に接続されている。なお、図中符号36は、粒状の石灰石Cの供給口であり、符号37は、内部で生成した生石灰の排出口である。
【0054】
したがって、上記構成からなる生石灰の製造設備においては、蓄熱時に発生した燃焼排ガスが、移送管34から直接排熱ボイラ21に送られるとともに、石灰石Cのか焼時に生成したCO2ガスが、移送管35から直接排熱ボイラ21の熱媒体として送られるようになっている。また、蓄熱か焼炉31内において生成した生石灰は、か焼の際に発生したCO2ガスにより流動化され、排出口37からオーバーフローして上記バッファタンク17へと送られて一時貯留されることになる。
【0055】
さらに、図4は、本発明に係る生石灰の製造設備の他の実施形態を示すもので、この製造設備においては、内部に同様の熱媒体16が充填された縦型の蓄熱か焼炉41が設けられている。
そして、この蓄熱か焼炉41の下部側面に、燃料を供給する供給管42が接続されたバーナが設けられているとともに、底部には燃焼用空気の供給管43が設けられている。さらに、側面の一方側に粒状の石灰石Cを導入するための供給口44が設けられている。
【0056】
また、この蓄熱か焼炉41の天井部には、内部の燃焼排ガスまたはCO2ガスを排出するための排出管45が設けられ、この排出管45の出口側にサイクロン46が設けられている。そして、このサイクロン46の天井部には、燃焼排ガスまたはCO2ガスを排気するための排ガス管47が設けられ、この排ガス管47に上記三方切換弁22が接続されている。
【0057】
他方、サイクロン46の底部には、か焼時に発生したCO2ガスが分離された生石灰C´を抜き出すための排出口48が設けられ、この排出口48から排出された生石灰C´が、上述したバッファタンク17に投入されるようになっている。
【0058】
以上の構成からなる生石灰の製造設備によれば、供給口44から供給された石灰石Cが、熱媒体16によってか焼されることにより発生したCO2ガスは、生成した生石灰C´を同伴して、排出管45からサイクロン46に導入される。そして、サイクロン46内で、CO2ガスとか生石灰C´とに分離される。そして、分離された生石灰C´は、底部に設けられた排出口48から排出されて、バッファタンク17に投入される。他方、サイクロン46で分離されたCO2ガスは、天井部の排ガス管47から三方切換弁22を経て、同様に排熱ボイラ21の熱媒体として供給される。
【0059】
したがって、これらの蓄熱か焼炉31、41を用いた生石灰の製造設備およびこれを用いた消石灰の製造設備並びに製造方法によっても、同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
生石灰および消石灰の製造および生石灰の製造時に発生するCO2ガスを、高濃度で回収する際に利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
11、31、41 蓄熱か焼炉
11a、36、44 石灰石の供給口
14、37、48 生石灰の排出口
15、45 排気管
16 熱媒体
17 バッファタンク
18 消化器
19 熟成器
20 乾燥器
21 排熱ボイラ(熱交換手段)
C 石灰石
C´ 生石灰

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に粒状の石灰石を供給するための供給口が設けられ、かつ上記内部を当該石灰石のか焼温度以上の温度雰囲気下に保持可能な加熱手段が設けられ、上部に上記加熱手段の燃焼排ガスおよび上記石灰石のか焼によって発生したCO2ガスを排出する排気管が接続されるとともに、上記か焼によって生成した生石灰を取り出す排出口が設けられた蓄熱か焼炉と、上記石灰石よりも大きな粒径を有し、上記蓄熱か焼炉の内部に充填された熱媒体とを備えてなることを特徴とする生石灰の製造設備。
【請求項2】
上記熱媒体は、生石灰であることを特徴とする請求項1に記載の生石灰の製造設備。
【請求項3】
請求項1または2に記載の生石灰の製造設備と、この生石灰の製造設備によって製造された生石灰に消化水を供給して消石灰を生成させる消化器と、この消化器から排出された上記消石灰を熟成する熟成器と、この熟成器で熟成された水分を含む消石灰を乾燥させる乾燥器と、上記生石灰の製造設備の排気管から排出された燃焼排ガスまたはCO2ガスと水とを熱交換させることにより発生した蒸気を上記乾燥器の熱源として供給する熱交換手段とを備えてなることを特徴とする消石灰の製造設備。
【請求項4】
上記生石灰の製造設備と上記消化器との間に、上記排出口から取り出された生石灰を一時貯留するバッファタンクを設けたことを特徴とする請求項3に記載の消石灰の製造設備。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の消石灰の製造設備を用いて消石灰を製造するとともに、上記熱交換手段を経た上記CO2ガスを回収することを特徴とする消石灰の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−201571(P2012−201571A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69611(P2011−69611)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】