説明

生薬の抗腫瘍性有効物質の抽出法

【課題】抗腫瘍活性を有する多糖類が豊富な茸類である茯苓から有効成分を効率よくしかも大量に抽出する。
【解決手段】抗腫瘍活性を有する多糖類が豊富な茸類である茯苓を用いた生薬の抗腫瘍性有効物質の抽出法であって、該茸類を外皮と共に煎じると共に、少なくとも95℃以上の水を使用し、且つ5〜6時間煎じる。この抽出法によって、これに含まれる有効成分のβ−グルカンとその外皮に含まれる微量成分を良好に抽出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生薬の抗腫瘍性有効物質の抽出法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古来より、サルノコシカケ科の茸は、難病に効くと伝えられ、近年アガリスクを始めとする茸類に含まれる有効成分が、人体の免疫力を高めるとの論文の発表があり注目された。このサルノコシカケ科の茸には、茯苓、猪苓、霊芝、サルノコシカケ等を代表として、約600種類以上が存在しており、特に中国において前記猪苓、霊芝、サルノコシカケ等は癌の特効薬として大量に使用されている。
【0003】
これらのサルノコシカケ科の茸には、表1に示すようにβ−グルカンが大量に含まれており、このβ−グルカンを有効成分とする抽出物が人体の免疫力を高める効果があるとされ、特に癌を抑制する効果が期待されている。
【0004】
【表1】

【0005】
しかしながら、上記サルノコシカケ科の茯苓は、大量のβ−グルカンを含有しているものの、中国においては癌の特効薬としては使用されておらず、また日本薬局方においては利尿剤として位置付けされており、またその使用法としては外皮を除くことが明記されており、癌などに対する抗腫瘍性剤としての利用はなされていなかった。
【0006】
そこで、抗腫瘍活性の多糖類を有する茸類などの生薬の抗腫瘍活性を有効に発現できる抗腫瘍活性強化方法が提案されている(特許文献1参照。)。また本発明者は、サルノコシカケ科の茯苓等に含まれるβ−グルカンを有効に活用できる抽出法を提案している(特許文献2参照。)。
【0007】
【特許文献1】特開2000−159682号公報
【特許文献1】特開2003−104905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に提案した生薬の抗腫瘍性活性強化方法の場合、β−グルカンを含む茸類を遠赤外線による焙煎や微生物による発酵工程とを必要とし、作業工程が複雑となり費用が係るという問題点がある。
【0009】
また、上記特許文献2に提案した生薬の抗腫瘍性有効物質の抽出法を使用する方法においては、外皮に含まれる微量成分に関しては何らの記載も開示もなく、β−グルカンの抽出量に言及したものであった。
【0010】
上記の問題点に鑑み本発明者らは、β−グルカンの人体に対する吸収性が、サルノコシカケ科の茯苓の外皮に含まれる微量成分によって大幅に改善されるとの知見により、本発明の生薬の抗腫瘍性有効物質の抽出法を提供するにいたった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため本発明は、抗腫瘍活性を有する多糖類が豊富な茸類である茯苓を用いた生薬の抗腫瘍性有効物質の抽出法であって、該茯苓を外皮と共に煎じると共に、少なくとも95℃以上の水を使用し、且つ5〜6時間煎じることを第1の特徴とする。
【0012】
また、前記有効成分がβ−グルカンであることを第2の特徴とする。
【0013】
そして、前記有効成分が前記外皮に含まれる微量成分をさらに含むことを第3の特徴とする。
【0014】
尚、上記微量成分としては、有機ゲルマニウム、キチン質、レクチン、テルペノイド等が含まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る生薬の抗腫瘍性有効物質の抽出法によれば、抗腫瘍活性を有する多糖類が豊富な茸類である茯苓を外皮と共に煎じる際に、少なくとも95℃以上の水を使用し、且つ5〜6時間煎じるため、β−グルカンを効率よく大量に抽出することができるという優れた効果を有する。
【0016】
しかも、茯苓の外皮に含まれる微量成分も効率よく抽出できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明では、従来の抽出方法では得られなかった高濃度のβ−グルカンを効率よく抽出することができ、しかも茯苓の外皮に含まれる微量成分と共に抽出を行なうことによって得られたβ−グルカンは、人体の吸収に優れる。
【0018】
特に、サルノコシカケ科の茯苓を外皮と共に一気圧の条件下、沸騰点摂氏100度以内で、5〜6時間煮沸することによって高分子多糖体であるβ−グルカンを抽出し、さらに外皮に含まれる微量成分の有機ゲルマニウム、キチン質、レクチン、テルペノイド等を効率よく抽出する抽出方法を完成させたものである。
【0019】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明が本実施例に限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0020】
(抽出条件)
(1)材料 天然茯苓 100g
(2)浸漬 5lの水に1時間以上浸漬
(3)一次抽出 強火で沸騰させた後、さらに強火で2時間以上抽出
(4)二次抽出 3lの水に一次抽出した残渣を投入し、1時間以上抽出
(5)三次抽出 二次抽出と同様に1時間以上抽出
【0021】
上記の抽出方法にて得られた抽出液の分析を行なったところ、抗腫瘍活性を有する多糖類であるβ−グラカンを多量に含有し、さらに微量成分である微量成分の有機ゲルマニウム、キチン質、レクチン、テルペノイド等が含まれていた。
【0022】
上記で得られた3種の抽出物を混合し煎じ液として癌患者に投与したところ、人体の免疫力が向上し、延命効果が見られるという多数の治験が得られた。
【0023】
以上、本発明の生薬の抗腫瘍性有効物質の抽出法によって、サルノコシカケ科の茯苓から抗腫瘍活性を有する多糖類β−グルカンを効率よく抽出できると共に、茯苓の外皮に含まれる微量成分の抽出が可能となるため、人体へのβ−グルカンの吸収性に優れた抽出物が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明による生薬の抗腫瘍性有効物質の抽出法によれば、サルノコシカケ科の茯苓から癌などに対して有効な抗腫瘍活性を有する多糖類β−グルカンを効率よく抽出できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗腫瘍活性を有する多糖類が豊富な茸類である茯苓を用いた生薬の抗腫瘍性有効物質の抽出法であって、該茯苓を外皮と共に煎じると共に、少なくとも95℃以上の水を使用し、且つ5〜6時間煎じることを特徴とする生薬の抗腫瘍性有効物質の抽出法。
【請求項2】
前記有効成分がβ−グルカンである、請求項1又は2に記載の生薬の抗腫瘍性有効物質の抽出法。
【請求項3】
前記有効成分が前記外皮に含まれる微量成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の生薬の抗腫瘍性有効物質の抽出法。

【公開番号】特開2008−105972(P2008−105972A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288768(P2006−288768)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(501382270)有限会社 長友薬品 (1)
【Fターム(参考)】