説明

生薬含有錠剤、生薬含有錠剤用の生薬担持粒子の製造方法

【課題】崩壊性、耐衝撃性ともに向上し、生薬味も改善された生薬含有錠剤、および該生薬含有錠剤用として有用な生薬担持粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】水溶性生薬エキス成分をクロスポビドンに吸着させた生薬担持粒子を含有することを特徴とする生薬含有錠剤。水溶性生薬エキスおよび/または水溶性生薬乾燥エキス溶液を、流動層下または攪拌下にてクロスポビドンに添加し、含浸させ、乾燥する工程を有することを特徴とする、生薬含有錠剤用の生薬担持粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生薬含有錠剤、および生薬含有錠剤用の生薬担持粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生薬は粒剤として服用されることが多かったが、近年は、服用しやすさから、錠剤として服用されることが増えている。
生薬含有錠剤としては、生薬乾燥エキスのような粉末状の生薬を崩壊剤等とともに直接打錠したもの、粉末状の生薬を崩壊剤等とともに造粒粒子とし、これを打錠したもの(たとえば特許文献1〜2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−176861号公報
【特許文献2】特開2007−297313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、シャクヤク乾燥エキスをはじめとした水溶性生薬乾燥エキスを直接または造粒粒子として打錠した生薬含有錠剤は、水溶性生薬エキスを含まない錠剤に比べ、崩壊時間が大幅に遅延する。また、摩損度試験後に錠剤の欠けや割れが発生しやすく、耐衝撃性が低い。該水溶性生薬エキスを含む錠剤の組成に崩壊剤を添加することで崩壊時間は短縮するが、耐衝撃性は改善しない。さらに、水溶性生薬乾燥エキスを含有する生薬含有錠剤は、服用時に生薬味が強く感じられる問題もある。これは、特に口腔内崩壊錠またはチュアブル錠の場合に重要な問題となる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、崩壊性、耐衝撃性ともに向上し、生薬味も改善された生薬含有錠剤、および該生薬含有錠剤用として有用な生薬担持粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明は、以下の態様を有する。
[1]水溶性生薬エキス成分をクロスポビドンに吸着させた生薬担持粒子を含有することを特徴とする生薬含有錠剤。
[2]さらに崩壊剤を含有する、請求項1に記載の生薬含有錠剤。
[3]口腔内崩壊錠またはチュアブル錠である、請求項1または2に記載の生薬含有錠剤。
[4]前記生薬担持粒子が、水溶性生薬エキスおよび/または水溶性生薬乾燥エキス溶液をクロスポビドンに含浸させ、乾燥して得られるものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の生薬含有錠剤。
[5]水溶性生薬エキスおよび/または水溶性生薬乾燥エキス溶液を、流動層下または攪拌下にてクロスポビドンに添加し、含浸させ、乾燥する工程を有することを特徴とする、生薬含有錠剤用の生薬担持粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、崩壊性、耐衝撃性ともに向上し、生薬味も改善された生薬含有錠剤、および該生薬含有錠剤用として有用な生薬担持粒子の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の生薬含有錠剤(以下、錠剤という。)は、水溶性生薬エキス成分をクロスポビドンに吸着させた生薬担持粒子(以下、担持粒子という。)を含有する。水溶性生薬エキス成分をクロスポビドンに吸着させていることで、当該担持粒子を含有する錠剤の崩壊性および耐衝撃性が向上し、生薬味も改善される。
【0008】
<担持粒子>
ここで、「水溶性生薬エキス」は、水または40体積%以下のエタノール水溶液により生薬から抽出された抽出エキス、該抽出エキスを濃縮した濃縮エキス、および該抽出エキスを賦形剤に倍散させた希釈エキス(倍散品)を包含する。賦形剤は、たとえば乳糖、デキストリン、コーンスターチ、ポテトスターチ、これらの混合物等が挙げられる。
「水溶性生薬エキス成分」は、水溶性生薬エキスに含まれる純分(抽出溶媒である水およびエタノールを除いた抽出純分)を示す。
生薬としては特に限定されず、公知の生薬のなかから目的に応じて適宜選択できる。具体的には、たとえばアカメガシワ、エンゴサク、オウバク、オウレン、カノコソウ、ガラナ、カンゾウ、キキョウ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゲンノショウコ、コウボク、シャクヤク、ショウキョウ、セネガ、センナ、ソウジュツ、トウキ、ニンジン、ベラドンナ、木香、ロート、ヨクイニンなどが挙げられる。これらの生薬はいずれか1種単独でも2種以上を併用してもよい。本発明においては、上記の中でも、シャクヤク、ロート、エンゴサクから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、シャクヤクを含むことが特に好ましい。
水溶性生薬エキスの希釈または水溶性生薬乾燥エキス溶液の溶媒には、水または40体積%以下のエタノール水溶液を用いる。
【0009】
担持粒子中、水溶性生薬エキス成分の割合は、担持粒子の総質量に対し、10質量%以上とすることが好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。水溶性生薬エキス成分量が低くなるにしたがって、処方量の生薬エキスとするための担持粒子量が増加する。そのため、生薬の処方量によっては、製剤としての服用量が多くなり服用性の低下を招くおそれがある。上限は、90質量%以下とすることが好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が特に好ましく、60質量%以下が最も好ましい。前記以下の範囲で、特に良好な崩壊性を得ることができる。
【0010】
水溶性生薬エキス成分の担持体であるクロスポビドンは、水に不溶であり、分子の立体構造の間に水を吸収し、膨潤する(その本質を変化することなく体積を増す)膨潤性の賦形剤であり、医薬品添加物規格にも収載されている。
クロスポビドンが膨潤性を有することにより、クロスポビドンに水溶性生薬エキス成分を吸着させた担持粒子も膨潤性を有しており、該担持粒子を含有する錠剤の崩壊性が向上する。また、クロスポビドンに水溶性生薬エキス成分を吸着させていることで、成形性が向上し、錠剤の耐衝撃性が向上する。
【0011】
本発明において、クロスポビドンは、下記測定方法により測定される吸着能が2mg/吸着剤mg以上であることが好ましく、3mg/吸着剤mg以上がより好ましく、4mg/吸着剤mg以上がさらに好ましい。吸着能が高いほど、本発明の効果、特に生薬味の改善効果に優れる。一方、吸着能が低いと、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。また、攪拌造粒製造時に添加可能な液量が少なくなり、また流動層造粒時にも噴霧できる水分量が少ないため、製造条件の設定が難しくなる。吸着能の上限は特に限定されない。
【0012】
(吸着能の測定方法)
予め、吸着液として、担持粒子の調製に用いる水溶性生薬エキスおよび/または水溶性生薬乾燥エキス溶液と同じものを用意する。たとえば市販の水溶性生薬乾燥エキスと精製水とを所定の比率(たとえば水溶性生薬乾燥エキス:精製水=1:2(質量比))で混合して水溶性生薬乾燥エキス溶液を調製する。また、水溶性生薬乾燥エキスが市販されていない生薬の場合、市販の水溶性生薬エキス、または常法により調製した水溶性生薬エキスを用いてもよい。該水溶性生薬エキスは、希釈して用いてもよいが、吸着効率の向上の観点から、希釈せずに用いることが好ましい。
次に、原料粉体(クロスポビドン)10gを乳鉢にとり、そこに吸着液を1g滴下し、乳棒にて混合する。滴下から混合までの操作を繰り返し、粉体がひとかたまりになるときの吸着液の滴下量(g)を吸着液量とする。上記操作は3分以内に行う。粉体がひとかたまりになる前に、吸着液が吸着されずに染み出しがおこる場合は、染み出す1g前の滴下量(g)を吸着液量とする。該吸着液量(原料粉体10gに吸着する吸着液の量(g))から、原料粉体1mgに吸着する吸着液量(mg)を求め、その値を吸着能(mg/吸着剤mg)とする。
【0013】
上記吸着能は、クロスポビドンの吸水性や、水溶性生薬エキスの種類(乾燥エキス/エキス)、水溶性生薬エキスおよび/または水溶性生薬乾燥エキス溶液中の水溶性生薬エキス成分の濃度、構成成分(生薬)の種類、水溶性生薬エキスおよび/または水溶性生薬乾燥エキス溶液の溶媒組成、ロット差等に影響される。たとえばクロスポビドンの吸水性が高いほど、吸着能が高くなる。クロスポビドンの吸水性は、製品グレードにより異なり、水溶性生薬エキス成分の濃度により決定される。
前記クロスポビドンの吸水性は、吸着液が水の場合の吸着能であり、2mg/mg以上であることが好ましく、3mg/mg以上がより好ましく、4mg/mg以上がさらに好ましい。市販品の吸水量としては、例えば、コリドンCL(BASF製)の吸水量2.5mg/mg、コリドンCL−SF(BASF製)の吸水量4.0mg/mgなどが挙げられる。
【0014】
ここで、「水溶性生薬乾燥エキス」は、水溶性生薬エキスを乾燥させて粉末状としたものである。
水溶性生薬乾燥エキス、水溶性生薬エキスは、それぞれ、常法により調製したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。また、水溶性生薬エキスの倍散品を用いても良い。
水溶性生薬乾燥エキスの具体例としては、アカメガシワ乾燥エキス、エンゴサク乾燥エキス、オウバク乾燥エキス、ガラナ乾燥エキス、カンゾウエキス末、キキョウ乾燥エキス、ゲンノショウコ乾燥エキス、コウボク乾燥エキス、シャクヤク乾燥エキス、ショウキョウ乾燥エキス、センナ乾燥エキス、ソウジュツ乾燥エキス、トウキ乾燥エキス、ニンジン乾燥エキスなどが挙げられる。
水溶性生薬エキスの具体例としては、エンゴサクエキス、オウレンエキス、カノコソウエキス、カンゾウエキス、ケイヒエキス、ゲンチアナエキス、シャクヤクエキス、セネガエキス、ベラドンナエキス、木香エキス、ロートエキス、ヨクイニンエキスなどが挙げられる。
水溶性生薬エキスの倍散品としては、ロートエキス散、ロートエキス3倍散などが挙げられる。
【0015】
クロスポビドンは、市販のものを用いる。市販品としては、たとえばBASF社製のコリドンCL、コリドンCL−SF、ISP社製のポリプラスドンXL等が挙げられる。
クロスポビドンの平均粒子径は特に限定されず、通常賦形剤等として用いられているものと同様であってよい。一般的には5〜200μm程度のものが用いられている。
なお、本明細書において、平均粒子径は、ベックマンコールター株式会社製 LS13 320型(乾式測定)により測定される値であり、体積基準のメディアン径(D50;体積50%径)である。
【0016】
担持粒子中、クロスポビドンの割合は、クロスポビドンの吸水能にもよるが、崩壊性と耐衝撃性の点から、担持粒子の総質量に対し、10質量%以上とすることが好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が特に好ましく、30質量%以上が最も好ましい。また上限は、90質量%以下とすることが好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が特に好ましく、60質量%以下が最も好ましい。
【0017】
担持粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、水溶性生薬エキス成分およびクロスポビドン以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、たとえば本発明の錠剤が含有してもよい任意成分として後述する添加剤等が挙げられる。
【0018】
担持粒子は、具体的には、水溶性生薬エキスおよび/または水溶性生薬乾燥エキス溶液をクロスポビドンに含浸させ、乾燥して得られる。水溶性生薬エキス成分を溶液としてクロスポビドンに接触させると、該溶液がクロスポビドンに吸収され、クロスポビドン分子の立体構造の間に保持される。これを乾燥させることで、水溶性生薬エキス成分が吸着した担持粒子とすることができる。該担持粒子は、以下に示す製造方法により製造できる。ただし、本発明の担持粒子の製造方法は、これに限定されるものではなく、当業者に公知の方法により製造することができる。
【0019】
(担持粒子の製造方法)
前記担持粒子は、たとえば、水溶性生薬エキスおよび/または水溶性生薬乾燥エキス溶液を、流動層下または攪拌下にてクロスポビドンに添加し、含浸させ、乾燥して担持粒子を得る工程を有する製造方法により製造できる。
水溶性生薬乾燥エキス溶液は、水溶性生薬乾燥エキスを水または40体積%以下のエタノール水溶液に溶かして溶液としたものである。
水溶性生薬エキスおよび/または水溶性生薬乾燥エキス溶液(以下、これらをまとめて「生薬エキス含有溶液」という。)の含浸および乾燥は、流動層下で行ってもよく、撹拌下で行ってもよい。含浸および乾燥を同時進行で行うことができ、生薬エキス含有溶液の添加量の制限を加える必要がないことから、流動層下で行うことが好ましい。撹拌下で行う場合、生薬エキス含有溶液の添加量を、クロスポビドンに吸着可能な生薬エキス含有溶液量の上限(最大吸着量)を超えない量に調整する必要がある。生薬エキス含有溶液の添加量が該最大吸着量を超えると、水溶性生薬エキス成分がうまく吸着しない、捏和物が生じる等により、担持粒子とならないおそれがある。
最大吸着量(mg)は、下記式により求められる。
最大吸着量(mg)=原料粉体(クロスポビドン)の吸着能(mg/吸着剤mg)×原料粉体の配合量(mg)
【0020】
流動層下で含浸および乾燥を行う場合、生薬エキス含有溶液中の水溶性生薬エキス成分の濃度は、1〜70質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。水溶性生薬エキス成分の濃度が高すぎると、噴霧時に微粒化がうまく行われず、均一な噴霧が行えないほか、崩壊性が低下するおそれがある。これは、水溶性生薬エキス成分がクロスポビドン内に充分に吸収される前に乾燥されることで粒子表面に分布してしまうためではないかと推測される。一方、該濃度が低すぎると、噴霧時間が長くなるため製造時間が長く、製造性に影響するおそれがある。
【0021】
流動層下での含浸および乾燥は、一般に粒子のコーティングや造粒に用いられる流動層装置(たとえば流動層コーティング装置、転動流動コーティング装置等)を用いて実施できる。
流動層装置として具体的には、マルチプレックス(製品名、(株)パウレック製)等が挙げられる。
生薬エキス含有溶液の噴霧速度は、製造機器のスケールや能力により異なるが、含浸時に粉体の流動が停滞せず、吸着量が飽和しない条件で行うことが好ましい。
乾燥条件は、目的の水分含有量、使用する装置や配合する成分に応じて適宜設定すればよい。たとえばマルチプレックスの場合、排気温度は40〜75℃が好ましく、45〜55℃が好ましい。
乾燥は、水分含有量が0〜10質量%になるように行うことが好ましい。該水分含有量は、第十五改正日本薬局方 一般試験法 2.物理的試験法 その他の物理的試験法 41.乾燥減量試験法に従い、2g、105℃4時間の条件により測定される値である。
【0022】
撹拌下で含浸および乾燥を行う場合、生薬エキス含有溶液中の水溶性生薬エキス成分の濃度は特に限定されない。ただし上述したように、生薬エキス含有溶液の添加量を、最大吸着量を超えない量に調整する必要がある。
生薬エキス含有溶液の添加量は、最大吸着量に対する割合(生薬エキス含有溶液の添加量/最大吸着量×100)が85質量%未満となる量が好ましく、80質量%未満となる量がより好ましい。該割合が85質量%以上になると、撹拌時に捏和物が生じ、目的の担持粒子が得られないおそれがある。該割合の下限は特に限定されないが、増えることにより耐衝撃性が低下することを考慮すると、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
【0023】
撹拌下での含浸は、一般に粒子のコーティングや造粒に用いられる撹拌装置が利用できる。本発明においては、特に、高速攪拌造粒機が好ましい。高速攪拌造粒機は、攪拌羽が旋回することにより粉体を混合し、解砕羽により粒度をそろえる撹拌装置であり、たとえばハイスピードミキサー(製品名、深江パウテック(株)製)等が挙げられる。
撹拌は、撹拌装置の容積や攪拌羽の直径を考慮して、粉体が混ざる速度以上、(遠心力が働いて)壁面に付着しない程度の回転数を設定して行われる。具体例として、ハイスピードミキサーLFS−2(深江パウテック(株)製)を用いる場合では、アジテーター(攪拌羽)回転数200〜1000rpm、チョッパー(解砕羽)回転数1000〜2500rpmの条件が好ましい。
撹拌下で生薬エキス含有溶液を含浸させたクロスポビドンの乾燥は、通常、乾燥に用いられる何れの方法によってもよく、例えば棚型乾燥機等の乾燥機が使用できる。
乾燥条件は、目的の水分含有量、配合する成分に応じて適宜設定すればよい。通常、60〜80℃で、水分含有量が0〜10質量%になるように行うことが好ましい。
【0024】
乾燥後、得られた粒子はそのまま担持粒子として用いてもよく、適宜、整粒等の処理を行ってもよい。
整粒は、粉砕機等を用いた粉砕工程と、篩過工程とを組合せて行うことが好ましい。粉砕および篩過はそれぞれ公知の方法により実施できる。
【0025】
本発明において、担持粒子の粒子径は、他成分との混合の均一化の点から、1000μm以下であることが好ましい。該粒子径は、前記平均粒子径と同様、ベックマンコールター株式会社製 LS13 320型により乾式ユニットを用いて測定される値である。
また、担持粒子の平均粒子径は、5〜800μmであることが好ましく、10〜500μmであることがより好ましい。
【0026】
本発明の錠剤中、担持粒子の含有量は、使用する水溶性生薬の処方量に合わせて設定することができるが、該錠剤の総質量に対し、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。該含有量が多すぎると成形性が低下し、耐衝撃性が低下する。担持粒子の含有量の下限は、担持粒子中の水溶性生薬エキス成分の種類や割合によっても異なり特に限定されない。崩壊性の観点から、該錠剤の総質量に対し、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
【0027】
本発明の錠剤は、上記担持粒子のみから構成されてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、上記担持粒子以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、薬物、その他各種添加剤が挙げられる。
薬物としては、特に制限はなく、粒子状の原料(薬物粒子:薬物単品、倍散された薬物粒子、担持粒子に担持された薬物粒子等の粒子状薬物)として使用することができる。具体的には、たとえばタンニン酸ベルベリン、アルジオキサ、塩化ベルベリン、次硝酸ビスマス、塩酸プソイドエフェドリン、塩酸フェニレフリン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、ベラドンナ総アルカロイド、アスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イソプロピルアンチピリン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ロキソプロフェンナトリウム、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸カルビノキサミン、臭化水素酸デキストメトルファン、無水カフェイン、スクラルファート水和物、合成ヒドロタルサイト、タンニン酸アルブミン、塩酸ロペラミド、銅クロロフィリンカリウム、グリチルリチン酸及びその塩類、硫酸プソイドエフェドリン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0028】
添加剤としては錠剤に一般的に配合されるものが利用でき、たとえば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等が挙げられる。
賦形剤としては、たとえば結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類及びその誘導体、コーンスターチ、ポテトスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ等のスターチ及びその誘導体、乳糖、マンニトール等の糖及び糖アルコール類、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
結合剤としては、水溶性高分子、糖、糖アルコール等が挙げられる。水溶性高分子の例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、スターチ等が挙げられる。糖の例としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、マルトース、トレハロース、マルトトリオース、オリゴ糖等が挙げられる。糖アルコールの例としては、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
崩壊剤としては、たとえばクロスポビドン、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、その他の添加剤として、色素、矯味剤、香味剤、安定化剤等が挙げられる。
色素として、酸化チタン、三二酸化鉄、食用黄色5号等が挙げられる。
安定化剤として、エデト酸ナトリウム、安息香酸等が挙げられる。
矯味剤としては、甘味料であるアスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、トレハロース等のほか、酸味剤であるクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸等が挙げられる。
香味剤としてメントール、カンフル、ボルネオール、リモネンなどのモノテルペン類、それらを含有する精油等が挙げられる。
滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸等が挙げられる。
これらはそれぞれ1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0030】
上記任意成分は、それぞれ、粉末状のものをそのまま前記担持粒子と配合してもよく、溶液として配合してもよい。また、それらの少なくとも1種を錠剤用顆粒として前記担持粒子と配合してもよい。
本明細書において、錠剤用顆粒とは、上記任意成分の少なくとも1種を造粒した造粒粒子であって、前記担持粒子と混合して打錠することにより口腔内崩壊錠となし得るものを示す。
【0031】
錠剤用顆粒としては、薬物および/または賦形剤を、造粒用液を用いて造粒したものが好ましい。薬物、賦形剤はそれぞれ前記と同様のものが挙げられ、それぞれ1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。造粒用液としては、結合剤を水に溶解した結合剤水溶液等が挙げられる。結合剤は前記と同様のものが挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
造粒は、攪拌造粒法、流動層造粒法、押し出し造粒法、転動造粒法、捏和・破砕造粒等の公知の造粒法により実施できる。造粒後、任意で乾燥を行ってもよく、粒度分布を整えるために適宜整粒処理を行ってもよい。
錠剤用顆粒の平均粒子径は、3〜1000μmが好ましく、5〜800μmがより好ましい。
錠剤用顆粒は、1種単独で又は2種以上を適宜用いることができる。
本発明の錠剤中、錠剤用顆粒の含有量は、該錠剤の総質量に対し、40〜99.9質量%が好ましく、70〜90質量%がより好ましい。
【0032】
本発明の錠剤は、上記担持粒子に加えて、または担持粒子および錠剤用顆粒に加えて、さらに、崩壊剤を含有することが好ましい。これにより、崩壊性がさらに向上する。
ただし本発明の錠剤中、担持粒子中に含まれるクロスポビドンと、担持粒子以外の任意成分として配合される崩壊剤との合計量が、該錠剤の総質量に対し、25質量%以下であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。該合計量が25質量%を超えると成形性が低下するおそれがある。
【0033】
本発明の錠剤は、上記担持粒子および任意成分を含む混合物を打錠することにより得ることができる。
打錠は、一般に錠剤の成型に用いられる装置、例えば単発打錠機、ロータリー式打錠機等、を用いて実施できる。このとき、錠剤サイズに応じた強度となるように打錠を行う。錠剤サイズは特に制限されず、医薬製剤分野の慣用的な粉体の量に基づいた径の錠剤とするとよい。なお、錠剤強度は錠剤破壊強度測定器TH203CP(富山産業(株)製)により測定することができる。
錠剤の一錠当たりの質量は特に限定されず、用途、服用方法等に応じて適宜設定すればよい。たとえば口腔内崩壊錠またはチュアブル錠の場合、100〜2000mg/錠とすることが好ましい。
錠剤の剤型は、単層錠、積層錠、有核錠等、公知の剤型のなかから適宜選択できる。
錠剤は、円形錠、キャプレット錠、ドーナツ錠、オブロング錠等の任意の形状とすることができる。
錠剤には、識別性のためのマーク、文字、さらには分割用の割線を付してもよい。
【0034】
本発明の錠剤は、水溶性生薬エキス成分をクロスポビドンに吸着させた担持粒子を含有することで、崩壊性および耐衝撃性が向上し、生薬味も改善されている。
上記効果を奏する理由は定かではないが、担持粒子を構成するクロスポビドンが、クロスポビドン分子の立体構造(架橋ネットワーク構造)の間に水溶性生薬エキス成分を吸着、保持しているためと推測される。たとえば従来、生薬乾燥エキスを崩壊剤等とともに直接打錠した場合は、生薬乾燥エキスは固体のまま、他の粒子内に吸着することなく存在し、耐衝撃性、生薬味等に悪影響を与えていたと推測される。造粒粒子として打錠した場合も同様で、造粒では、通常、比較的水分値の高い条件下で撹拌等を行うことで粒子径の大きい造粒粒子を得ている。その際、吸湿性の高い生薬乾燥エキスの凝集の防止、造粒のコントロール等を目的として、予めケイ酸カルシウムや崩壊剤等と水とを混合し、そこに生薬乾燥エキスを添加することが行われている。この場合、造粒粒子内において、生薬乾燥エキスの大部分は固体のまま、たとえば崩壊剤の粒子の外側に分布し、これが崩壊性、耐衝撃性、生薬味等に悪影響を与えていたと推測される。
【0035】
本発明の錠剤は、生薬味が改善されている点で、口腔内崩壊錠またはチュアブル錠として有用である。
口腔内崩壊錠とは、口腔内で唾液により崩壊させ、服用するものをいう。現在、口腔内崩壊錠の崩壊性に関する明確な定義はないが、一般に錠剤の服用後、口腔内で速やかに崩壊することが好ましいため、期待される崩壊時間は、口腔内で咀嚼することなしに、60秒未満、好ましくは45秒未満、さらに好ましくは30秒未満である。
チュアブル錠とは、口腔内で咀嚼により崩壊させ、服用するものをいう。
本発明の錠剤は、崩壊性に優れることから、口腔内崩壊錠として好適である。
【実施例】
【0036】
本発明について、実施例を示してさらに具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の各実施例および比較例にて用いた生薬材料、担持粒子の製造に際して吸着液を吸着させた吸着剤、その他の原料はそれぞれ以下の通りである。
[生薬材料]
シャクヤク乾燥エキス:日本粉末薬品(株)製「シャクヤク乾燥エキス」。
水によりシャクヤクから抽出された抽出エキスを濃縮・乾燥した粉末。
シャクヤクエキス:日本粉末薬品(株)製「シャクヤクエキス-A」(水分含有量25〜35質量%)。
ロートエキス:アルプス薬品工業(株)製「ロートエキス」(水分含有量30〜40質量%)。
【0037】
[吸着剤]
担持粒子の製造に際し、吸着液を吸着させる吸着剤として使用した原料を以下に示す。
コリドンCL:製品名、BASF製、クロスポビドン、平均粒子径118μm。
コリドンCL−SF:製品名、BASF製、クロスポビドン、平均粒子径17μm。
NS−300:製品名、ニチリン化学工業(株)製、カルメロース、平均粒子径59μm。
EXPLOTAB:製品名、木村産業(株)製、カルボキシメチルスターチナトリウム、平均粒子径46μm。
フローライトRE:製品名、エーザイフード・ケミカル(株)製、ケイ酸カルシウム、平均粒子径28μm。
【0038】
[その他の原料]
L−HPC(低置換度ヒドロキシプロピルセルロース):信越化学工業(株)製「LH−31」。
【0039】
<試験例1:吸着能の測定>
上記吸着剤について、上述した手順で、吸着液としてシャクヤク乾燥エキス:精製水=1:2(質量比)のシャクヤクエキス水溶液を用いた場合の吸着能(吸着剤1mgに吸着できる吸着液量(mg))を測定した。結果を表1に示す。
また、ロートエキスを用いてコリドンCL−SFの吸着能を測定したところ、5.7mg/吸着剤mgであった。
【0040】
【表1】

【0041】
<製造例1〜2:錠剤用顆粒の製造>
表2に記載の組成の錠剤用顆粒(1)、(2)を以下の手順で製造した。
予め、果糖を精製水に溶かし、記載の組成量の1500錠分の果糖水溶液を調製した。果糖以外の成分を、記載の組成量の1000錠分、ハイスピードミキサーLFS−2(深江パウテック(株)製)に入れ、回転数をアジテーター400rpm、チョッパー2000rpmに設定し、撹拌した。撹拌下、果糖水溶液1000錠分を2分間かけて滴下し、その後、さらに2分間攪拌を行った。得られた混合物をバットにひろげ、棚型乾燥機DN−93(ヤマト科学製)にて80℃で5時間通風乾燥を行って造粒粒子を得た。
果糖水溶液の調製から乾燥までの操作を繰り返して得られた造粒粒子をあわせ、目開き1000μmの篩で篩過し、平均粒子径150〜300μmの造粒粒子(錠剤用顆粒(1)、(2))を得た。
【0042】
【表2】

【0043】
<実施例1〜14、比較例1〜6>
[1−1.撹拌による担持粒子の製造]
表3、表6に記載の組成の担持粒子を以下の手順で製造した。
予め、表3、表6の担持粒子欄に記載のシャクヤク乾燥エキス、シャクヤクエキスまたはロートエキスを精製水に溶かし、記載の組成量の1500錠分の吸着液を調製した。担持粒子欄に記載の吸着液以外の成分を、組成量の1000錠分、ハイスピードミキサーLFS−2(深江パウテック(株)製)に入れ、回転数をアジテーター400rpm、チョッパー2000rpmに設定し、撹拌した。撹拌下、吸着液1000錠分を2分間かけて滴下しながら攪拌し、その後、さらに2分間攪拌を行った。得られた混合物をバットにひろげ、棚型乾燥機DN−93(ヤマト科学製)にて80℃で5時間通風乾燥を行って担持粒子(水分含有量1.5質量%)を得た。
吸着液の調製から乾燥までの操作を繰り返して得られた担持粒子をあわせ、目開き1000μmの篩で篩過し、平均粒子径100〜300μmの担持粒子を得た。
【0044】
[1−2.流動層下での担持粒子の製造]
表4に記載の組成の担持粒子を以下の手順で製造した。
予め、表4の担持粒子欄に記載のシャクヤク乾燥エキスを精製水に溶かし、記載の組成量の1500錠分の吸着液を調製した。担持粒子欄に記載の吸着液以外の成分を組成量の1000錠分を、吸気温度80℃にて排気温度が55℃になるまで予熱しておいた転動流動コーティング装置MP−01((株)パウレック製)に入れ、吸気温度80℃、アトマイズエア圧0.49MPa、アトマイズエア量50L/min[s]になるように設定し、吸着液1000錠分を液速20mL/minで噴霧しながら、最初の5分間は風量0.3Nm/minで流動層造粒を行った。5分後以降は、風量を0.4Nm/minに上昇させて排気温度が30℃になるまで噴霧した。その後は、風量0.5Nm/minにして吸着液が所定量になるまで噴霧した。噴霧後、風量0.5Nm/minのまま乾燥させ、排気温度が35℃になった時点で風量を0.35Nm/minに落とし、排気温度が45℃に達したところで停止し、担持粒子を回収した。
生薬含有溶液の調製から担持粒子の回収までの操作を繰り返して得られた担持粒子をあわせ、目開き1000μmの篩で篩過し、平均粒子径50〜150μmの担持粒子を得た(含水率1.5〜4.0%)。
【0045】
[2.錠剤の製造]
表3〜6に記載の組成のうち、ステアリン酸マグネシウム以外の成分2000錠分を表所定の比にとり、ビニール袋に入れ、20回程度手で振って混合したのち、ステアリン酸マグネシウムを入れさらに10回混合した。この混合粉体を、クリーンプレス12HUK(菊水製作所製)を用いてオープンフィードシューにて打錠し、直径10.0mmの円形の錠剤を得た。このとき、錠剤破壊強度測定器TH−203CP(富山産業製)にて硬度3〜5kgfになるように打錠圧を調整した(回転盤回転数:10rpm、杵本数:12本)。
得られた錠剤について、以下の評価を行った。結果を表中に併記する。
【0046】
[口中崩壊性の評価]
成人男性3人、成人女性1人により、以下の手順で口中崩壊性を評価した。
錠剤を口腔内に入れ、舌で転がしながら錠剤を崩壊させ、錠剤が完全に崩壊するまでの時間を測定した。4人の崩壊時間の平均値から、下記評価基準に基づいて口中崩壊性を評価した。△以上を許容範囲とする。
(評価基準)
◎:30秒未満、○:30秒以上45秒未満、△:45秒以上60秒未満、×:60秒以上。
【0047】
[耐衝撃性の評価]
錠剤10錠について、第十五改正 日本薬局方 参考情報 12.錠剤の摩損度試験法に準じて試験を行った。試験後の錠剤の様子を目視で確認し、下記判定基準に基づき、割れまたは欠けが認められる錠剤の個数を数えた。
(判定基準)
下記項目(1)、(2)のいずれか一つにあてはまる錠剤を、欠けのある錠剤と数える。(1)〜(2)にあてはまらなくても、割れている錠剤を「割れ」と数える。
(1)錠剤の1箇所に1mm以上にわたる欠けが生じている。
(2)錠剤の周囲の1/3以上に1mm未満の欠けが見られる。
【0048】
摩損度試験を行った10錠のうち、割れまたは欠けが認められる錠剤の個数から、下記基準に基づき、耐衝撃性を評価した。△以上を許容範囲とする。
(評価基準)
◎:欠けが認められる錠剤の個数が0個。
○:欠けが認められる錠剤の個数が1〜2個。
△:欠けが認められる錠剤の個数が3〜4個。
×:欠けが認められる錠剤の個数が5〜7個、または割れが認められる錠剤の個数が1〜2個。
××:欠けが認められる錠剤の個数が8〜10個、または割れが認められる錠剤の個数が3個以上。
【0049】
[口中生薬味の評価]
成人男性3人、成人女性1人により、以下の手順で生薬味を評価した。
錠剤を口腔内に入れ、舌で転がしながら錠剤を崩壊させ、崩壊し終わった時点での生薬味(生薬独特の苦さ、甘苦さ)を下記判定基準で判定した。ただし、口中崩壊性が60秒以上のものに関しては、噛み砕いて崩壊させた後に評価した。
(判定基準)
5点:まったく感じない、4点:やや感じる、3点:少し感じる、2点:かなり感じる、1点:非常に感じる。
4人の判定結果の平均値から、下記評価基準に基づいて口中生薬味を評価した。△以上を許容範囲とする。
(評価基準)
○:3.5点以上、△:3.5点未満2点以上、×:2点未満。
【0050】
表3〜6に、各例で用いた吸着剤の最大吸着量(mg)、最大吸着量に対する吸着液の割合(%)、担持粒子中の生薬エキス成分量(%)、錠剤中の担持粒子の割合(%)および錠剤中の崩壊剤の割合(%)を併記する。
「最大吸着量(mg)」は、吸着能を各製剤中に換算した場合に、吸着可能な吸着液量であり、各例で用いた吸着剤の、試験例1で求めた吸着能(mg/吸着剤mg)と、錠剤1錠中の配合量(mg)とから下記式により求めた値である。
最大吸着量(mg)=吸着能(mg/吸着剤mg)×配合量(mg)
【0051】
「最大吸着量に対する吸着液の割合(%)」は、「最大吸着量(mg)」に対する「担持粒子の製造時に用いた吸着液の錠剤1錠あたりの配合量(mg)」の割合(質量%)である。
「担持粒子中の生薬エキス成分量(%)」は、「担持粒子の質量」(担持粒子の製造に用いた、精製水を除く全成分の合計量)に対する「生薬エキス成分量」の割合(質量%)である。ここで、「生薬エキス成分量」としては、シャクヤク乾燥エキスについてはその配合量をそのまま使用した。エキスに関してはカールフィッシャー容量滴定法により水分を測定し、シャクヤクエキスについては、水分を30質量%含むことを確認したため、配合量の70質量%を乾燥重量とし、該乾燥重量を使用した。同様に、水分を35%含むことを確認したロートエキスについては、配合量の65質量%を乾燥重量とし、該乾燥重量を使用した。精製水の量は、製造時に必要とした分量であり、乾燥時には蒸発するため、担持粒子の質量には含まれない。
「錠剤中の担持粒子の割合(%)」は、「錠剤の質量」(錠剤の製造に用いた、精製水を除く全成分の合計量)に対する「担持粒子の質量」の割合(質量%)である。精製水の量は、製造時に必要とした分量であり、乾燥時には蒸発するため、錠剤および担持粒子の質量には含まれない。
「錠剤中の崩壊剤の割合(%)」は、「錠剤の質量」に対する「錠剤に含まれる崩壊剤の合計量」の割合(質量%)である。ここでの「崩壊剤」は、コリドンCL、コリドンCL−SF、NS−300、EXPLOTABを示す。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
上記結果に示すとおり、担持粒子を配合した実施例1〜14の錠剤は全ての評価結果が許容範囲であった。これらのうち、担持粒子とともに崩壊剤(コリドンCL、L−HPC)を配合した実施例1〜13の錠剤は、崩壊性が良好で、口腔内崩壊錠として適したものであった。
一方、担持粒子を配合せず、各成分を直接混合、打錠した比較例1〜3の錠剤は耐衝撃性および生薬味が悪く、特にクロスポビドン(コリドンCL)の配合量が少ない比較例1〜2は崩壊性も悪かった。また、吸着剤としてクロスポビドン以外のものを使用した比較例4〜6は、崩壊性および耐衝撃性が悪く、生薬味も、許容範囲ではあるものの実施例1〜14よりも悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性生薬エキス成分をクロスポビドンに吸着させた生薬担持粒子を含有することを特徴とする生薬含有錠剤。
【請求項2】
さらに崩壊剤を含有する、請求項1に記載の生薬含有錠剤。
【請求項3】
口腔内崩壊錠またはチュアブル錠である、請求項1または2に記載の生薬含有錠剤。
【請求項4】
前記生薬担持粒子が、水溶性生薬エキスおよび/または水溶性生薬乾燥エキス溶液をクロスポビドンに含浸させ、乾燥して得られるものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の生薬含有錠剤。
【請求項5】
水溶性生薬エキスおよび/または水溶性生薬乾燥エキス溶液を、流動層下または攪拌下にてクロスポビドンに添加して含浸させ、乾燥する工程を有することを特徴とする、生薬含有錠剤用の生薬担持粒子の製造方法。

【公開番号】特開2011−136939(P2011−136939A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297589(P2009−297589)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】