説明

産業用ロボットのアーム構造

【課題】産業用ロボットのアームにおいて、モータの回転を伝達し所望の個所を駆動させるロッドを短く、細くすることができるとともに、アーム全体容積を小さくでき、かつ組立も簡便にすることができる産業用ロボットのアーム構造を提供する
【解決手段】モータに接続されて回転し、先端に設けられた小歯車4を回転させるロッド21と、小歯車4と噛み合って回転し、アームの筐体1の先端に設けられた手首部を駆動する大歯車2、3とを設け、大歯車2、3には、同一の歯形状と同一の回転中心軸とを有する第1の大歯車2と第2の大歯車3とが重ね合わされて締結された構成であるとともに、そののフランジ面には、回転中心軸から略同一径上において、中心位置が相対的にオフセットした互いに異なる径の貫通穴を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車を使用する産業用ロボットのアーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、産業用ロボットの従来のアーム構造を示す図である。(11)はアームの筐体を示しており、図はその内部の一部の断面図を示す。ここでは、図示しない図の右側に配置されているモータによって、ロッド(16)を介して大歯車(12)が回転される構成を示している。モータが複数使用される場合は、複数のロッド(16)を介して、他の大歯車(17)が回転される。
この従来例では、図5において小歯車(13)はロッド(16)の先端に構成されており、ロッド(16)は偏芯フランジ(14)に支持されている。偏芯フランジ(14)はロッド中心軸に対し、偏芯フランジ中心(15)に示すようにオフセットして製作されており、偏芯フランジ(14)を回転させることにより小歯車(13)の位置がずれて、大歯車(12)との軸間距離を変更することによりバックラッシを調整している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の産業用ロボットのアーム構造では偏芯フランジを用いてロッドを偏芯させるため、ロッドに対し常に曲げモーメントがかかるという問題があった。この問題に対応するためにロッドは長く、かつ太い物である必要があった。
また、複数軸について調整する場合には偏芯フランジが複数個必要であり、調整のための空間が必要であり、コンパクト化できないという問題があった。
また、組立作業の際には調整用穴から偏芯フランジを回転させる作業があるため工数がかかるというような問題もあった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、ロッドを短く、細くすることができるとともに全体容積を小さくでき、かつ組立も簡便にすることができる産業用ロボットのアーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、アームの筐体に設置されたモータと、前記モータに接続されて回転し、先端に設けられた小歯車を回転させるロッドと、前記小歯車と噛み合って回転し、前記アームの筐体の先端に設けられた手首部を駆動する大歯車と、からなる産業用ロボットのアーム構造において、前記大歯車は、同一の歯形状と同一の回転中心軸とを有する第1の大歯車と第2の大歯車とが重ね合わされて締結された構成であるとともに、前記第1の大歯車と前記第2の大歯車のフランジ面には、前記回転中心軸から略同一径上において、中心位置が相対的にオフセットした互いに異なる径の貫通穴が設けられていることを特徴とした産業用ロボットのアーム構造とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、アームの筐体に設置された複数のモータと、前記複数のモータの各々に接続されて回転し、先端に設けられた小歯車を各々回転させる複数のロッドと、同一回転中心軸に配置され、前記小歯車の各々と噛み合って回転し、前記アームの筐体の先端に設けられた手首部を駆動する複数の大歯車と、からなる産業用ロボットのアーム構造において、前記複数の大歯車の各々は、同一の歯形状と同一の回転中心軸とを有する第1の大歯車と第2の大歯車とが重ね合わされて締結された構成であるとともに、前記第1の大歯車と前記第2の大歯車のフランジ面には、前記回転中心軸から略同一径上において、中心位置が相対的にオフセットした異なる径の貫通穴が設けられ、前記複数の大歯車のうち、隣合う前記大歯車のうち少なくとも一方のフランジ面には、前記異なる径の貫通穴が設けられている前記回転中心軸からの略同一径上に、更なる別の貫通穴が配置されていることを特徴とした産業用ロボットのアーム構造とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、前記大歯車のフランジ面には、前記大歯車の回転中心軸に貫通穴が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボットのアーム構造とするものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1及び2に記載の発明によると、モータの回転を伝達するロッドを短く、細くすることができ、大歯車と小歯車とのバックラッシを調整するための空間容積を小さくすることができる。また、バックラッシ調整作業も簡便に実施できる。また、請求項2に記載の発明によると、複数の軸からなる手首部を駆動するアーム構造であっても、バックラッシの調整作業を行うことができる。また、基本軸に対する負荷も小さくすることができる。また、請求項3に記載の発明によると、大歯車のフランジ面に貫通穴を設けているので、そこにケーブル等を配置できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明の産業用ロボットのアーム構造を記した側断面図である。図において、歯車機構は筐体(1)内部に構成されており、大歯車は2枚の大歯車R1(2)及び大歯車R2(3)を重ね合わせた構造となっている。またモータ(6)と同軸上に接続された小歯車R(4)は、従来の実施例に示すロッド(16)に比較し、短くなっている。これらで構成される歯車構成をR軸とする。
【0008】
ここで、上記R軸のバックラッシ調整の際は、図4に示すように、筐体1に設けた棒状のR軸用偏芯ジグ挿入穴(5)より偏芯ジグ(10)を挿入して回転させることにより2枚の大歯車R1(2)と大歯車R2(3)の歯の位相をずらし、小歯車R(4)とのバックラッシを調整することができる。図4(a)は大歯車R1(2)を、図2においてR軸用偏芯ジグ挿入穴(5)のほうから見た部分図で、同じく図4(b)は大歯車R2(3)を、図2においてR軸用偏芯ジグ挿入穴(5)のほうから見た部分図を示している。また、図4(c)は、R軸用偏芯ジグ挿入穴(5)から挿入し、大歯車R1、R2(2)(3)に予め加工されたd1、d2の穴に挿入される偏芯ジグ(10)を示している。
つまり、大歯車R1(2)と大歯車R2(3)とを締結しているボルト(18)をR軸用偏芯ジグ挿入穴(5)から工具を挿入して緩め、偏芯ジグ(10)のd1部分を、予めd1とほぼ同径で製作されている大歯車R1のd1に挿入し、更に偏芯ジグ(10)のd2部分を、同じく予めd2とほぼ同径で製作されている大歯車R2のd2に挿入し、偏芯ジグ(10)を回転させることで、大歯車R1(2)と大歯車(3)との歯車の歯の相対的位相をずらし、小歯車R(4)の歯との隙間を調整することができる。そして、調整後ボルト(18)を締めこむ。
【実施例2】
【0009】
図3は第2実施例の構成を示す図である。ここで、上記R軸の大歯車R1R2(2)(3)の右横には、B軸用としてR軸用の大歯車と同様な構成の大歯車が設けられていることを示している。
即ち偏芯ジグ(10)は、筐体1に設けられたB軸用偏芯ジグ挿入穴(6)を通り大歯車R1(2)及び大歯車R2(3)を貫通し、2枚の大歯車B1(7)と大歯車B2(8)の歯の位相をずらし、小歯車B(9)とのバックラッシを調整することができる。
更に、B軸用大歯車の右横には、更に別の同様な大歯車(19)が設置されており、この大歯車のバックラッシを調整するために、別の挿入穴(20)が筐体1に設けられ、上記と同様な作用が得られることを示している。
【0010】
このように、偏芯ジグによりバックラッシを調整できる構成をしているので、小歯車(ロッド)に偏芯による過大な過重をかけることなく、簡便にバックラッシ調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
歯車を使用することにより通常減速機使用の場合では得ることができない中空部を設けることが可能であり、ユーザ用配管などをロボットアーム内に通すことが可能となる。
【0012】
偏芯ジグ挿入穴を再利用することによってロボット組立後に調整することが簡便にできるので、歯車磨耗後のバックラッシ調整を実施する場合にも簡便に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施例を示す産業用ロボットのアーム構造の側断面図
【図2】本発明の第1実施例を示す産業用ロボットのアーム構造の詳細側断面図
【図3】本発明の第2実施例を示す産業用ロボットのアーム構造の詳細側断面図
【図4】本発明に使用する歯車形状及び偏芯ピン形状を示す平面図
【図5】従来の産業用ロボットのアーム構造の側断面図
【符号の説明】
【0014】
1 筐体
2 大歯車R1
3 大歯車R2
4 小歯車R
5 R軸用偏芯ジグ挿入穴
6 B軸用偏芯ジグ挿入穴
7 大歯車B1
8 大歯車B2
9 小歯車B
10 偏芯ジグ
11 筐体
12 大歯車
13 小歯車
14 偏芯フランジ
15 偏芯フランジ中心
16 ロッド
17 他の大歯車
18 ボルト
19 別の大歯車
20 別の挿入穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームの筐体に設置されたモータと、
前記モータに接続されて回転し、先端に設けられた小歯車を回転させるロッドと、
前記小歯車と噛み合って回転し、前記アームの筐体の先端に設けられた手首部を駆動する大歯車と、からなる産業用ロボットのアーム構造において、
前記大歯車は、同一の歯形状と同一の回転中心軸とを有する第1の大歯車と第2の大歯車とが重ね合わされて締結された構成であるとともに、
前記第1の大歯車と前記第2の大歯車のフランジ面には、前記回転中心軸から略同一径上において、中心位置が相対的にオフセットした互いに異なる径の貫通穴が設けられていることを特徴とした産業用ロボットのアーム構造。
【請求項2】
アームの筐体に設置された複数のモータと、
前記複数のモータの各々に接続されて回転し、先端に設けられた小歯車を各々回転させる複数のロッドと、
同一回転中心軸に配置され、前記小歯車の各々と噛み合って回転し、前記アームの筐体の先端に設けられた手首部を駆動する複数の大歯車と、からなる産業用ロボットのアーム構造において、
前記複数の大歯車の各々は、同一の歯形状と同一の回転中心軸とを有する第1の大歯車と第2の大歯車とが重ね合わされて締結された構成であるとともに、前記第1の大歯車と前記第2の大歯車のフランジ面には、前記回転中心軸から略同一径上において、中心位置が相対的にオフセットした異なる径の貫通穴が設けられ、
前記複数の大歯車のうち、隣合う前記大歯車のうち少なくとも一方のフランジ面には、前記異なる径の貫通穴が設けられている前記回転中心軸からの略同一径上に、更なる別の貫通穴が配置されていることを特徴とした産業用ロボットのアーム構造。
【請求項3】
前記大歯車のフランジ面には、前記大歯車の回転中心軸に貫通穴が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボットのアーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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