説明

産業用車両

【課題】充分な放熱を行え、ブレーキ部の冷却を効率良く行える産業用車両を提供する。
【解決手段】車体2側にアクスル20を設け、アクスルにおけるアクスル本体21の車幅方向の両端に、アクスルシャフト24が挿通されるブレーキ部22を設け、ブレーキ部の外周に放熱用フィン23を設けた。アクスルシャフトの外端部に終減速機25を介して車輪4を設けた。放熱用フィンに向けて送風可能な冷却用羽根体26を、車輪側と一体回転自在に設けた。産業用車両を走行しているとき、車輪側と一体に回転している冷却用羽根体が、周辺の空気を巻き込んで放熱用フィンに向けて送風することになり、放熱用フィンを強制冷却できて充分な放熱を行うことができ、ブレーキ部の冷却を効率良く行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばホイールローダなどの産業用車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の産業用車両におけるアクスルとしては、次のような構成が提供されている。すなわち、アクスルハウジングの車幅方向の両端にファイナル&ブレーキが設けられるとともに、ファイナル&ブレーキの外周には放熱用フィンが設けられている。そして、ファイナル&ブレーキにはアクスルシャフトが挿通され、このアクスルシャフトの外端部にはホイールハブが設けられている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来構成によると、アクスルシャフトの回転により、ホイールハブを介して車輪が駆動回転されて前後進走行が行われ、そしてファイナル&ブレーキのブレーキ作用により回転を停止して停車し得る。その際に、ブレーキ作用によってファイナル&ブレーキの部分に生じた熱は、放熱用フィンを介して放熱している。
【特許文献1】特開平8−150806号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来構成によると、回転しないファイナル&ブレーキに設けた放熱用フィンのみを介して放熱することから、充分な放熱は期待し難く、ファイナル&ブレーキの冷却を効率良く行えない。
【0005】
そこで本発明の請求項1記載の発明は、充分な放熱を行え、ブレーキ部の冷却を効率良く行える産業用車両を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明の請求項1記載の産業用車両は、車体側にはアクスルが設けられ、このアクスルにおけるアクスル本体の車幅方向の両端には、アクスルシャフトが挿通されるブレーキ部が設けられるとともに、ブレーキ部の外周には放熱用フィンが設けられ、前記アクスルシャフトの外端部には終減速機を介して車輪が設けられ、前記放熱用フィンに向けて送風可能な冷却用羽根体が、前記車輪側と一体回転自在に設けられていることを特徴としたものである。
【0007】
したがって請求項1の発明によると、アクスルにおけるアクスルシャフトを正逆回転させることで、終減速機を介して車輪を前後進回転し得、以て産業用車両を前後進走行し得る。このような前後進走行時において、ブレーキ部においてブレーキを掛けることで産業用車両を停車し得る。このとき、ブレーキ部は発熱し、その熱が放熱用フィンに伝導され、停車中などにおいては放熱用フィンから放熱される。また、産業用車両を走行しているとき、車輪側と一体に回転している冷却用羽根体が、周辺の空気を巻き込んで放熱用フィンに向けて送風することになり、これにより放熱用フィンを強制冷却し得る。
【0008】
また本発明の請求項2記載の産業用車両は、上記した請求項1記載の構成において、冷却用羽根体が、車輪を構成するリムに設けられていることを特徴としたものである。
したがって請求項2の発明によると、冷却用羽根体を、放熱用フィンに接近した好適な位置に容易に配設し得る。
【発明の効果】
【0009】
上記した本発明の請求項1によると、アクスルにおけるアクスルシャフトを正逆回転させることで、終減速機を介して車輪を前後進回転できて産業用車両を前後進走行でき、また、ブレーキ部においてブレーキを掛けることで産業用車両を停車できる。このとき、ブレーキ部は発熱し、その熱を放熱用フィンに伝導して、停車中などにおいて放熱用フィンから放熱できる。また、産業用車両を走行しているとき、車輪側と一体に回転している冷却用羽根体が、周辺の空気を巻き込んで放熱用フィンに向けて送風することになり、これにより放熱用フィンを強制冷却できて充分な放熱を行うことができ、ブレーキ部の冷却を効率良く行うことができる。
【0010】
また上記した本発明の請求項2によると、冷却用羽根体を、放熱用フィンに接近した好適な位置に容易に配設できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[実施の形態1]
以下に、本発明の実施の形態1を、ホイールローダに採用した状態として、図1〜図3に基づいて説明する。
【0012】
図1において、産業用車両の一例であるホイールローダ(建設車両)1は、その車体2が、左右一対の前車輪3が設けられた前車体部2Aと、左右一対の後車輪4が設けられた後車体部2Bとにより構成されている。両車体部2A,2B間は、上下に振り分けられた縦連結軸5により相対回動自在に連結され、そして両車体部2A,2B間には、左右一対のステアリングシリンダ6が配設されている。後車体部2Bの前端上部には、座席、ブーム操作レバー7、バケット操作レバー8、アクセルペダル、ブレーキペダル9などが配置された運転部10が設けられている。
【0013】
この運転部10の前方で前車体部2Aには、左右一対のブーム11が上下揺動自在に配設され、そして、このブーム11を上下揺動させる左右一対のブームシリンダ12が設けられる。両ブーム11の遊端間には、バケット装置13が回動自在に取り付けられるとともに、その遊端がバケット装置13に相対回動自在に連結されたリンク機構14が設けられている。そしてリンク機構14の基端と前車体部2Aとの間には、その伸縮動によりリンク機構14を介してバケット装置13を回動させるバケットシリンダ15が設けられている。また後車体部2Bの上部にはエンジン16が搭載されている。
【0014】
そして車体2側にはリヤアクスル(アクスル)20が設けられ、このリヤアクスル20を介して後車輪4が駆動回転自在に設けられている。すなわち図2、図3において、リヤアクスル20は、後車体部(車体)2B側に取り付けられるアクスル本体21を有し、このアクスル本体21の車幅方向の両端にはブレーキ部22が設けられるとともに、ブレーキ部22の外周には放熱用フィン23群が設けられている。前記ブレーキ部22にはアクスルシャフト24が挿通され、このアクスルシャフト24の外端部には終減速機25を介して前記後車輪(車輪)4が設けられる。
【0015】
ここで後車輪4は、終減速機25の回転部25a側に取り付けられるリム4Aと、このリム4Aに装着されるタイヤ4Bなどにより構成されている。そしてリム4Aには、前記放熱用フィン23に向けて送風可能な冷却用羽根体26が、溶接結合などにより設けられている。すなわち冷却用羽根体26は板状であって、前記リム4Aの内周面で周方向の複数箇所(たとえば8箇所)に設けられ、これにより冷却用羽根体26群は、後車輪4とともに車輪軸心4Cの周りで一体回転自在に構成される。
【0016】
その際に冷却用羽根体26群は、前進回転(正回転)a時に空気を前記放熱用フィン23に向けて送風Wし得るように、車輪軸心4Cに対して外周側が前進回転a側に位置するように傾斜し、かつ車輪軸心4Cの方向において先端側が前進回転a側に位置するように傾斜して配設されている。また冷却用羽根体26は、リム4Aに設けられることで、放熱用フィン23に接近した好適な位置に容易に配設し得る。
【0017】
以下に、上記した実施の形態1における作用を説明する。
リヤアクスル20におけるアクスルシャフト24を正回転させることで、終減速機25を介して後車輪4を前進回転aし得、以てホイールローダ1を前進走行Aし得る。また、アクスルシャフト24を逆回転させることで、終減速機25を介して後車輪4を後進回転bし得、以てホイールローダ1を後進走行Bし得る。このような前後進走行A,B時において、適宜、レバー7,8の操作などによってバケット装置13を作動することで、所期の作業を行える。
【0018】
そして前後進走行A,B時において、ブレーキペダル9を足踏み操作することで、ブレーキ部22を介してブレーキを掛け、以てホイールローダ1を停車し得る。このとき、ブレーキ部22は発熱し、その熱が放熱用フィン23に伝導され、停車中などにおいては放熱用フィン23から放熱される。
【0019】
また、ホイールローダ1を前進走行Aしているとき、後車輪4と一体に車輪軸心4Cの周りで前進回転aしている冷却用羽根体26群が、周辺の空気を巻き込んで前記放熱用フィン23に向けて送風Wすることになり、これにより放熱用フィン23を強制冷却することになって充分な放熱を行え、ブレーキ部22の冷却を効率良く行えることになる。
【0020】
次に、本発明の実施の形態2を図4に基づいて説明する。
この実施の形態2は、ブレーキ部22が後車輪4の幅から内側に突出された形式であって、冷却用羽根体30は、リング板状のブラケット31の一側面で周方向の複数箇所(たとえば8箇所)に設けられている。そして冷却用羽根体30群は、アクスルシャフト24などに外嵌したブラケット31の他側面を終減速機25の回転部25aに当接させて固定具(ボルト・ナットなど)32により取り付けることで、放熱用フィン23の外方に所定の隙間を置いた状態で位置される。これにより冷却用羽根体30群は、回転部25aや後車輪4とともに車輪軸心4Cの周りで一体回転自在に構成される。
【0021】
また前記アクスル本体21の両端部分には、冷却用羽根体30の外方に位置されるカバー体33が設けられている。すなわちカバー体33は、半割筒状部34と、この半割筒状部34の一側面を覆う半割円板部35とからなり、半割円板部35の内縁部分がブレーキ部22の内側面に当接された状態で固定具(ボルト・ナットなど)36により取り付けられることで、半割筒状部34が、冷却用羽根体30群の外方に所定の隙間を置いた状態で位置される。その際に半割筒状部34は、ブレーキ部22の上半分に対向される。
【0022】
以下に、上記した実施の形態2における作用を説明する。
ホイールローダ1を前進走行Aしているとき、回転部25aと一体に車輪軸心4Cの周りで前進回転aしている冷却用羽根体30群が、周辺の空気を巻き込んで放熱用フィン23に向けて送風Wすることになり、これにより放熱用フィン23を強制冷却することになって充分な放熱を行え、ブレーキ部22の冷却を効率良く行えることになる。また、前進走行A時などにおいて、跳ね上げた泥などが冷却用羽根体30群や放熱用フィン23に向けて落下しようとしたとき、この泥などをカバー体33により受け止めることになり、以て冷却用羽根体30群や放熱用フィン23への落下を避け得る。
【0023】
上記した実施の形態1では、8箇所の冷却用羽根体26を、車輪軸心4Cに対して外周側が前進回転a側に位置するように傾斜し、かつ車輪軸心4Cの方向において先端側が前進回転a側に位置するように傾斜して配設することで、前進回転a時に空気を前記放熱用フィン23に向けて送風Wし得るように構成されているが、冷却用羽根体26の数、角度、向き、形状などは任意に設定されるものである。
【0024】
上記した実施の形態1では、ホイールローダ1は後進走行Bよりも前進走行Aの方が多く、しかも前進走行Aの方が高速であることなどにより、前進走行Aしているときに冷却用羽根体26群が、周辺の空気を巻き込んで放熱用フィン23に向けて送風する形式が示されているが、これは各冷却用羽根体26をV状に形成して、後進走行時にも、冷却用羽根体群が、周辺の空気を巻き込んで放熱用フィン23に向けて送風する形式などであってもよい。
【0025】
上記した実施の形態1,2では、後車輪4、すなわちリヤアクスル20に対応して、冷却用羽根体26,30群が設けられた形式が示されているが、これは前車輪3にアクスルを採用したときには、この前車輪3側に冷却用羽根体群が設けられた形式や、両車輪3,4側にそれぞれ冷却用羽根体群が設けられた形式などであってもよい。
【0026】
上記した実施の形態1の形式において、実施の形態2のように作用されるカバー体が、好適な形状としてアクスル本体21側に設けられた形式などであってもよい。
上記した実施の形態1では、産業用車両としてホイールローダ1が示されているが、これは、他の建設車両や、フォークリフトやコンテナ運搬車などの運搬車両などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1を示し、産業用車両の側面図である。
【図2】同産業用車両におけるリヤアクスル部分の一部切り欠き背面図である。
【図3】同産業用車両におけるリヤアクスル部分の一部切り欠き側面図である。
【図4】本発明の実施の形態2を示し、産業用車両におけるリヤアクスル部分の一部切り欠き背面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ホイールローダ(産業用車両)
2 車体
3 前車輪
4 後車輪(車輪)
4A リム
4B タイヤ
4C 車輪軸心
10 運転部
11 ブーム
13 バケット装置
20 リヤアクスル(アクスル)
21 アクスル本体
22 ブレーキ部
23 放熱用フィン
24 アクスルシャフト
25 終減速機
25a 回転部
26 冷却用羽根体
30 冷却用羽根体
31 ブラケット
33 カバー体
A 前進走行
B 後進走行
a 前進回転
b 後進回転
W 送風


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側にはアクスルが設けられ、このアクスルにおけるアクスル本体の車幅方向の両端には、アクスルシャフトが挿通されるブレーキ部が設けられるとともに、ブレーキ部の外周には放熱用フィンが設けられ、前記アクスルシャフトの外端部には終減速機を介して車輪が設けられ、前記放熱用フィンに向けて送風可能な冷却用羽根体が、前記車輪側と一体回転自在に設けられていることを特徴とする産業用車両。
【請求項2】
冷却用羽根体が、車輪を構成するリムに設けられていることを特徴とする請求項1記載の産業用車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−306116(P2006−306116A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127239(P2005−127239)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】