説明

産業車両用データ通信システムの動作切替装置及びモード切替装置

【課題】
産業車両の走行系および作業系の積算処理を行う機器が分散していたとしても、各機器に一括して積算処理及び積算処理の中断を指示できるようにし、積算処理と積算処理の中断との切替作業を簡易にすることによって作業時間を短縮する。
【解決手段】
制御部71はデータ伝送路20を介して特定のデータ送信部72sから送信される信号を受信しなければ、データ送信部72から送信されるデータを使用する第1の動作態様で動作する。特定のデータ送信部72sがデータ伝送路20に接続されると、特定のデータ送信部72sはデータ伝送路20に自己が接続されていることを示す信号(例えば起動信号)を送信する。制御部71はデータ伝送路20を介してこの信号(例えば起動信号)を受信すると、特定のデータ送信部72sから送信されるデータを使用する第2の動作態様に切り替わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御部を所望の動作態様に切り替える産業車両用データ通信システムの動作切替装置に関し、特に動作態様の切り替えを切替スイッチを用いることなく行えるようにするものである。また本発明は、制御部の標準モードと設定モードとを切り替える産業車両用データ通信システムのモード切替装置に関し、特にモードの切り替えを切替スイッチを用いることなく行えるようにするものである。
【背景技術】
【0002】
近年のフォークリフト(リーチ型も含む)のように走行モータを駆動源とする産業車両には、各種車載機器等をデータ伝送路で接続してLANを構築して各種情報を互いに共有可能な車両情報通信システムが採用されている。
【0003】
図8はLANを利用した車両情報通信システムを簡略化して示している。本システムではコントローラが分散されており、動力源毎にコントローラ11〜13が設けられている。本システムでは一台の産業車両にデータ伝送路20が設けられ、このデータ伝送路20に第1走行コントローラ11と第2走行コントローラ12と荷役コントローラ13と表示装置8とサブコントローラ9が接続されている。またデータ伝送路20にはオプション30を任意に接続可能である。
【0004】
データ伝送路20を用いたデータ通信は例えばCANバスプロトコルに基づいて行われる。CANとはController Area Networkの略称であり、Robert Bosch GmbH社によって開発され、ISOで国際的に標準化された通信プロトコルである。
【0005】
第1走行コントローラ11には、第1走行コントローラ11に信号を入力する機器として操作信号出力21が接続され、第1走行コントローラ11から制御指示を受ける機器として右側駆動輪用の走行モータ22が接続されている。第2走行コントローラ12には、第2走行コントローラ12から制御指示を受ける機器として左側駆動輪用の走行モータ23が接続されている。
【0006】
操作信号出力部21に接続される操作レバー21aが操作されると、操作信号出力部21はレバー操作に応じた走行操作信号を第1走行コントローラ11に送信する。第1走行コントローラ11はその走行操作信号に応じて走行モータ22を制御する。また、レバー操作に応じた走行操作信号はデータ伝送路20を介して第2走行コントローラ12に送信される。第2走行コントローラ12はその走行操作信号に応じて走行モータ23を制御する。
【0007】
以上は左右駆動輪用の走行モータ22、23を別々に有する2モータドライブ車の構成例であるが、左右駆動輪用の走行モータを一つのみを有する1モータドライブ車もある。1モータドライブ車の場合は、例えば図8の構成のうち第1走行コントローラ11、操作信号出力部21、走行モータ22のみが左右駆動輪用として用いられ、第2走行コントローラ12、走行モータ23は設けられない。
【0008】
荷役コントローラ13には、荷役コントローラ13に信号を入力する機器として操作信号出力部24とステアリング操作部26が接続され、荷役コントローラ13から制御指示を受ける機器として荷役モータ27とステアリングユニット28が接続されている。荷役モータ27は図示しない油圧ポンプに連結されている。油圧ポンプから吐出される圧油は図示しない作業機用油圧アクチュエータ(油圧シリンダ等)に供給される。
【0009】
操作信号出力部24は手動操作弁25を動作させる操作レバー24aに接続されており、操作レバー24aの操作に応じた作業機操作信号を荷役コントローラ13に送信する。荷役コントローラ13はその作業機操作信号に応じて荷役モータ27を制御する。また、ステアリング操作部26のステアリングが操作されると、ステアリング操作部26はステアリング操作に応じたステアリング操作信号をステアリングユニット28に送信する。荷役コントローラ13はその作業機操作信号に応じてステアリングユニット28を制御する。
【0010】
作業機用油圧アクチュエータと油圧ポンプとの間の管路上には操作レバー24aに接続された手動操作弁25が配置されている。操作レバー24aが操作されると手動操作弁25の弁位置が変更され、油圧ポンプから作業機用油圧アクチュエータに供給される圧油の方向が変更される。
【0011】
表示装置8は走行モータ22、23や荷役モータ27等の動作に関する情報を画面に表示したり、表示装置8自身が有するキー等の操作子の操作を介して入力された各種機器の設定を変更するための設定変更信号を各コントローラ11〜13に送信する。
【0012】
表示装置8は表示切替用の表示切替スイッチ8aを有する。表示切替スイッチ8aは産業車両の仕様に応じて動作態様が切り替えられる。例えば1モータドライブ車の場合には、表示切替スイッチ8aが1モータドライブ車側に切り替えられる。すると表示装置8は第1走行コントローラ11から送信されるデータに基づいて車速等のデータを表示する動作態様に切り替わる。2モータドライブ車の場合には、表示切替スイッチ8aが2モータドライブ車側に切り替えられる。すると表示装置8は第1、第2走行コントローラ11、12から送信されるデータに基づいて車速等のデータを表示する動作態様に切り替わる。
【0013】
また表示装置8はモード切替用のモード切替スイッチ8bを有する。モード切替スイッチ8bのスイッチ操作に応じてシステムの動作モードが標準モード又は設定モードに切り替えられる。モード切替スイッチ8bが標準モード側に切り替えられている場合は、標準モード信号がデータ伝送路20に送信され、この信号を受信した各コントローラ11〜13は標準モードに切り替わる。各コントローラ11〜13は操作信号出力部21またはステアリング操作部26から送信される操作信号に従って各モータ22、23、27を制御する。モード切替スイッチ8bが設定モード側に切り替えられている場合は、設定モード信号がデータ伝送路20に送信され、この信号を受信した各コントローラ11〜13は設定モードに切り替わる。各コントローラ11〜13は各種パラメータ、例えば操作レバーの操作量に対するモータの動作比率等、を設定変更自在にする。
【0014】
なお特許文献1には産業車両のモード切替に関して記載されており、標準モードと調整モードと充電モードを切り替えるシステムが開示されている。ここにはメータパネル(表示装置)のスイッチ操作によって調整モード(設定モード)に切り替えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−328800号公報(段落[0032])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
図8に示す従来システムの場合は、表示装置8に表示切替スイッチ8aやモード切替スイッチ8bを実装する必要がある。表示装置8自体に切替スイッチ8a、8bを実装すると表示装置8の大型化や材料費のコスト増を招く。
【0017】
またに示す従来システムの場合は、表示切替スイッチ8aやモード切替スイッチ8bを切り替える作業が必要である。これらの切替スイッチ8a、8bは頻繁に使用するものではないため、一般には隠れた箇所に設けられており、切替スイッチ8a、8bの切替作業が煩雑である。
【0018】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、産業車両の車載ネットワークに接続された機器の動作態様の切り替え及びモードの切り替えをスイッチの操作を介することなく行えるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、第1発明は、
複数の動作態様のうち指示された動作態様で動作して産業車両に設けられた所定装置を制御する制御部と、
前記制御部が通信自在に接続されるデータ伝送路と、
前記制御部に前記データ伝送路を介してデータを送信する複数のデータ送信部と、を備え、
前記制御部を所望の動作態様に切り替える産業車両用データ通信システムの動作切替装置において、
前記制御部は、前記複数のデータ送信部のうちの特定のデータ送信部から前記データ伝送路を介して送信される信号を受信するに応じて、当該特定のデータ送信部から送信されるデータを使用する動作態様に切り替わること
を特徴とする。
【0020】
第2発明は、第1発明において、
前記制御部は、前記複数のデータ送信部のうちの特定のデータ送信部から前記データ伝送路を介して送信される起動信号を受信するに応じて、当該特定のデータ送信部から送信されるデータを使用する動作態様に切り替わること
を特徴とする。
【0021】
第3発明は、第1または第2発明において、
前記制御部は、前記複数のデータ送信部のうちの特定のデータ送信部から前記データ伝送路を介して送信される信号を受信するに応じて、当該特定のデータ送信部から送信されるデータを他のデータよりも優先して使用する動作態様に切り替わること
を特徴とする。
【0022】
第1、第2発明に係る第3発明を図1を参照しつつ説明する。
データ伝送路20には、フォークリフトに設けられた所定装置を制御する制御部71と、制御部71にデータ伝送路20を介してデータ信号を送信する複数のデータ送信部72が接続される。
【0023】
制御部71の動作態様は、複数のデータ送信部72の中に特定のデータ送信部72sが含まれる場合と含まれない場合とで異なる。制御部71はデータ伝送路20を介して特定のデータ送信部72sから送信される信号を受信しなければ、データ送信部72から送信されるデータを使用する第1の動作態様で動作する。特定のデータ送信部72sがデータ伝送路20に接続されると、特定のデータ送信部72sはデータ伝送路20に自己が接続されていることを示す信号(例えば起動信号)を送信する。制御部71はデータ伝送路20を介してこの信号(例えば起動信号)を受信すると、特定のデータ送信部72sから送信されるデータを優先して使用する第2の動作態様に切り替わる。
【0024】
第4発明は、第1または第2発明において、
前記制御部は、前記複数のデータ送信部のうちの特定のデータ送信部から前記データ伝送路を介して送信される信号を受信するに応じて、当該特定のデータ送信部から送信されるデータと他のデータとを比較して使用するデータを決定する動作態様に切り替わること
を特徴とする。
第1、第2発明に係る第4発明を図1を参照しつつ説明する。
データ伝送路20には、フォークリフトに設けられた所定装置を制御する制御部71と、制御部71にデータ伝送路20を介してデータ信号を送信する複数のデータ送信部72が接続される。
制御部71の動作態様は、複数のデータ送信部72の中に特定のデータ送信部72sが含まれる場合と含まれない場合とで異なる。制御部71はデータ伝送路20を介して特定のデータ送信部72sから送信される信号を受信しなければ、データ送信部72から送信されるデータを使用する第1の動作態様で動作する。特定のデータ送信部72sがデータ伝送路20に接続されると、特定のデータ送信部72sはデータ伝送路20に自己が接続されていることを示す信号(例えば起動信号)を送信する。制御部71はデータ伝送路20を介してこの信号(例えば起動信号)を受信すると、特定のデータ送信部72sから送信されるデータと他のデータ送信部72から送信されるデータを使用する第2の動作態様に切り替わる。
【0025】
上記目的を達成するために、第5発明は、
標準モードと設定モードの切り替えが自在であり、標準モードで産業車両に設けられた所定装置を制御し、設定モードで所定装置の動作パラメータを設定自在にする制御部と、
前記制御部が通信自在に接続されるデータ伝送路と、
前記制御部に動作パラメータを送信するパラメータ設定部と、を備え、
前記制御部の標準モードと設定モードとを切り替える産業車両用データ通信システムのモード切替装置において、
前記パラメータ設定部には所定のタイミングで切替信号を送信するソフトウェアがインストールされており、
前記制御部は、前記パラメータ設定部から前記データ伝送路を介して送信される切替信号を受信するに応じて、設定モードに切り替わること
を特徴とする。
【0026】
第6発明は、第5発明において、
前記制御部は、前記パラメータ設定部から前記データ伝送路を介して送信される起動信号を受信するに応じて、設定モードに切り替わること
を特徴とする。
【0027】
第5、第6発明を図5を参照しつつ説明する。
データ伝送路20には、標準モードと設定モードの切り替えが自在であり、標準モードでフォークリフトに設けられた所定装置を制御し、設定モードで所定装置の動作パラメータを設定自在にする制御部81と、所定のタイミングで切替信号を送信するソフトウェアがインストールされており、制御部81にデータ伝送路20を介して切替信号及び動作パラメータを送信するパラメータ設定部82が接続される。
【0028】
制御部81はデータ伝送路20を介してパラメータ設定部82から送信される信号を受信しなければ、標準モードで動作する。パラメータ設定部82はインストールされたソフトウェアの動作によりデータ伝送路20にモード切替信号(例えばソフトウェアの起動信号)を送信する。制御部81はデータ伝送路20を介してこのモード切替信号(例えばソフトウェアの起動信号)を受信すると、標準モードから設定モードに切り替わる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、動作態様を切り替えるための切替スイッチを設ける必要がない。またモードを切り替えるための切替スイッチを設ける必要がない。このため切替スイッチの部品コストが不必要になり、また切替スイッチを取り付ける作業が不必要になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1、第2の実施形態の概念を簡単に示す図。
【図2】第1の実施形態に係る産業車両用データ通信システムの動作切替装置を簡略化して示す図。
【図3】第1の実施形態に係る荷役コントローラで行われる処理フローの一例を示す図。
【図4】第2の実施形態に係る表示装置で行われる処理フローの一例を示す図。
【図5】第3の実施形態の概念を簡単に示す図。
【図6】第3の実施形態に係る産業車両用データ通信システムのモード切替装置を簡略化して示す図。
【図7】第3の実施形態に係るパラメータ変更の処理フローの一例を示す図。
【図8】LANを利用した車両情報通信システムを簡略化して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
以下で説明する第1、第2の実施形態は、フォークリフトに搭載されるコントローラのような動作制御機器や表示装置のような表示制御機器などの動作態様を切り替える実施形態であり、第3の実施形態は、フォークリフトに搭載されるコントローラのような動作制御機器の動作モードを切り替える実施形態である。
【実施例1】
【0032】
第1の実施形態の概念を図1を参照しつつ説明する。
【0033】
データ伝送路20には、フォークリフトに設けられた所定装置を制御する制御部71と、制御部71にデータ伝送路20を介してデータ信号を送信する複数のデータ送信部72が接続される。フォークリフトでいえば、駆動装置や作業装置を制御する各コントローラや表示制御する表示装置などは制御部71になり得る。またデータ伝送路に各種データを送信するコントローラなどはデータ送信部にもなり得る。
【0034】
制御部71の動作態様は、複数のデータ送信部72の中に特定のデータ送信部72sが含まれる場合と含まれない場合とで異なる。制御部71はデータ伝送路20を介して特定のデータ送信部72sから送信される信号を受信しなければ、データ送信部72から送信されるデータを使用する第1の動作態様で動作する。特定のデータ送信部72sがデータ伝送路20に接続されると、特定のデータ送信部72sはデータ伝送路20に自己が接続されていることを示す信号(例えば起動信号)を送信する。制御部71はデータ伝送路20を介してこの信号(例えば起動信号)を受信すると、特定のデータ送信部72sから送信されるデータを優先して使用する第2の動作態様に切り替わる。
【0035】
次に第1の実施形態をフォークリフトの具体例として説明する。
【0036】
図2は第1実施形態に係る産業車両用データ通信システムの動作切替装置を簡略化して示している。図2では、図8に示す構成要素と同一の要素には同一の符号を付している。
【0037】
図2に示す実施形態においては、荷役コントローラ13が図1の制御部71に相当し、操作弁コントローラ15が図1のデータ送信部72sに相当する。
【0038】
本実施形態は、データ伝送路20に操作弁コントローラ15が接続されるか否かを動作態様切替の判断基準として、荷役コントローラ13の動作態様を切り替える実施形態である。以下では、荷役コントローラ13に接続された操作信号出力部24から送信される駆動指令に応じて荷役モータ27を制御する動作態様か、操作弁コントローラ15に接続された操作信号出力部42から送信される駆動指令に応じて荷役モータ27を制御する動作態様の何れかに切り替える実施形態を説明する。
【0039】
図2で示すように、産業車両にはデータ伝送路20が設けられ、このデータ伝送路20に第1走行コントローラ11と荷役コントローラ13と表示装置8とサブコントローラ9が接続されている。またデータ伝送路20には他のコントローラやシステムなどのオプション30を任意に接続可能である。また操作弁コントローラ15が接続される場合もある。
【0040】
先ず図示しない作業機用油圧アクチュエータと油圧ポンプとの間の管路上に手動操作弁25が配置される場合の構成について説明する。この場合の構成は図8に示す従来の構成と同様であり、データ伝送路20に操作弁コントローラ15は接続されない。
【0041】
荷役コントローラ13には、荷役コントローラ13に信号を入力する機器として操作信号出力部24とステアリング操作部26が接続され、荷役コントローラ13から制御指示を受ける機器として荷役モータ27とステアリングユニット28が接続されている。荷役モータ27は図示しない油圧ポンプに連結されている。油圧ポンプから吐出される圧油は図示しない作業機用油圧アクチュエータ(油圧シリンダ等)に供給される。
【0042】
操作信号出力部24は手動操作弁25を操作するための操作レバー24aの操作に応じて信号を出力する。操作信号出力部24には例えばマイクロスイッチまたは変位センサなどが設けられる。マイクロスイッチは操作レバー24aの傾動・中立に応じてオン・オフ信号を荷役コントローラ13に送信する。荷役コントローラ13はオン信号を受信すると荷役モータ27を動作させ、オフ信号を受信すると荷役モータ27を停止させる。変位センサは操作レバー24aの傾動量に応じた操作信号(電圧値等)を荷役コントローラ13に送信する。荷役コントローラ13はこの操作信号に応じた速度で荷役モータ27を動作させる。
【0043】
荷役モータ27は図示しない油圧ポンプに連結されており、荷役モータ27の動作に応じて油圧ポンプが駆動し、油圧ポンプから吐出された圧油が作業機用油圧アクチュエータに供給される。
【0044】
作業機用油圧アクチュエータと油圧ポンプとの間の管路上には操作レバー24aに接続された手動操作弁25が配置されている。操作レバー24aが操作されると手動操作弁25の弁位置が変更され、油圧ポンプから作業機用油圧アクチュエータに供給される圧油の方向が変更される。
【0045】
次に図示しない作業機用油圧アクチュエータと油圧ポンプとの間の管路上に手動操作弁25に代わり電磁操作弁43が配置される場合の構成について説明する。この場合はデータ伝送路20に操作弁コントローラ15が接続される。一方、手動操作弁25、操作レバー24a、操作信号出力部24は設けられない。
【0046】
操作弁コントローラ15は電磁操作弁43の制御を主として行うことを目的とする。操作弁コントローラ15には、操作弁コントローラ15に信号を入力する機器として操作信号出力部42が接続され、操作弁コントローラ15から制御指示を受ける機器として電磁操作弁43が接続されている。
【0047】
操作信号出力部42は電磁操作弁43を操作する操作レバー42aの操作に応じて信号を出力する。操作信号出力部42には例えば変位センサ(ポテンショメータ等)が設けられる。変位センサは操作レバー42aの傾動量に応じた操作信号(電圧値等)を操作弁コントローラ15に送信する。操作弁コントローラ15はこの操作信号に応じた方向及び量だけ電磁操作弁43の弁位置を移動させる。また操作弁コントローラ15はデータ伝送路20を介して荷役コントローラ13にこの操作信号を送信する。そして荷役コントローラ13はこの操作信号に応じた速度で荷役モータ27を動作させる。
【0048】
本実施形態では荷役モータ27の操作を手動操作弁25の操作レバー24aまたは電磁操作弁43の操作レバー42aで行うように切替るものである。本実施形態では切替の判断を次のようにして行うことにしている。
【0049】
操作弁コントローラ15はデータ伝送路20に接続信号を送信する。この接続信号としては、操作弁コントローラ15が起動時にデータ伝送路20に送信する起動信号を使用しもよいし、何らかのタイミングで送信される信号や自己ID等の信号を使用してもよい。
【0050】
荷役コントローラ13には、操作弁コントローラ15の接続信号を受信した場合に、操作弁コントローラ15から送信されるモータ駆動信号に応じて荷役モータ27を制御する動作態様に切り替わるように、また操作弁コントローラ15の接続信号を受信しない場合に、操作信号出力部24から送信される操作信号に応じて荷役モータ27を制御する動作態様に切り替わるようにプログラミングされたソフトウェアがインストールされている。
【0051】
図3は第1の実施形態に係る荷役コントローラで行われる処理フローの一例を示している。
【0052】
荷役コントローラ13はデータ伝送路20から操作弁コントローラ15の接続信号を受信した場合に、操作弁コントローラ15から送信される信号に応じて荷役モータ27を制御する動作態様に切り替わる(ステップS31の判断Y)。
【0053】
この場合、操作弁コントローラ15は操作レバー42aの傾動操作に応じたモータ制御信号をデータ伝送路20に送信する。荷役コントローラ13はデータ伝送路20を介して操作弁コントローラ15から送信されたモータ制御信号を受信し(ステップS32)、受信したモータ制御信号に応じて荷役モータ27を制御する(ステップS33)。
【0054】
荷役コントローラ13はデータ伝送路20から操作弁コントローラ15の接続信号を受信しない場合に、操作レバー24aの傾動操作に応じて荷役モータ27を制御する動作態様に切り替わる(ステップS31の判断N)。
【0055】
この場合、操作信号出力部24は操作レバー24aの傾動操作に応じたモータ制御信号を荷役コントローラ13に送信する。荷役コントローラ13はこのモータ駆動信号を受信し(ステップS34)、受信したモータ制御信号に応じて荷役モータ27を制御する(ステップS33)。
【0056】
本実施形態によれば、荷役コントローラ13は操作弁コントローラ15の接続信号を受信するか否かのみで動作態様を切り替える。したがって、表示装置8に動作態様を切り替えるための切替スイッチを設ける必要がない。
【実施例2】
【0057】
第2の実施形態の概念を図1を参照しつつ説明する。
【0058】
データ伝送路20には、フォークリフトに設けられた所定装置を制御する制御部71と、制御部71にデータ伝送路20を介してデータ信号を送信する複数のデータ送信部72が接続される。フォークリフトでいえば、駆動装置や作業装置を制御する各コントローラや表示制御する表示装置などは制御部71になり得る。またデータ伝送路に各種データを送信するコントローラなどはデータ送信部にもなり得る。
【0059】
制御部71の動作態様は、複数のデータ送信部72の中に特定のデータ送信部72sが含まれる場合と含まれない場合とで異なる。制御部71はデータ伝送路20を介して特定のデータ送信部72sから送信される信号を受信しなければ、データ送信部72から送信されるデータを使用する第1の動作態様で動作する。特定のデータ送信部72sがデータ伝送路20に接続されると、特定のデータ送信部72sはデータ伝送路20に自己が接続されていることを示す信号(例えば起動信号)を送信する。制御部71はデータ伝送路20を介してこの信号(例えば起動信号)を受信すると、特定のデータ送信部72sから送信されるデータと他のデータ送信部72から送信されるデータを使用する第2の動作態様に切り替わる。
【0060】
次に第2の実施形態をフォークリフトの具体例として図8を用いて説明する。
【0061】
図8に示す実施形態においては、表示装置8が図1の制御部71に相当し、第1走行コントローラ11が図1のデータ送信部72に相当し、第2走行コントローラ12が図1のデータ送信部72sに相当する。
【0062】
本実施形態は、データ伝送路20に第2走行コントローラ12が接続されるか否かを動作態様切替の判断基準として、表示装置8の動作態様を切り替える実施形態である。以下では、表示装置8に第1走行コントローラ11から送信される車速データを表示する動作態様か、または第1走行コントローラ11から送信される車速データと第2走行コントローラ12から送信される車速データとの平均車速を表示する動作態様か、の何れかに切り替える実施形態を説明する。
【0063】
図8で示すように、産業車両にはデータ伝送路20が設けられ、このデータ伝送路20に第1走行コントローラ11と荷役コントローラ13と表示装置8とサブコントローラ9が接続されている。またデータ伝送路20には他のコントローラやシステムなどのオプション30を任意に接続可能である。1モータドライブ車の場合は第1走行コントローラ11のみが設けられるが、2モータドライブ車の場合は第1走行コントローラ11に加えて第2走行コントローラ12が設けられる。
【0064】
第1走行コントローラ11は操作信号出力部21に設けられた操作レバー21aの操作量に応じて走行モータ22を駆動制御し、第2走行コントローラ12は操作レバー21aの操作量に応じて走行モータ23を駆動制御する。1モータドライブ車の場合は走行モータ22の駆動軸は図示しない駆動輪に連結される。2モータドライブ車の場合は、走行モータ22の駆動軸は図示しない右側駆動輪に連結され、走行モータ23の駆動軸は図示しない左側駆動輪に連結される。
【0065】
第1走行コントローラ11はデータ伝送路20に接続信号を送信する。同様に第2走行コントローラ12はデータ伝送路20に接続信号を送信する。この接続信号としては、各走行コントローラ11、12が起動時にデータ伝送路20に送信する起動信号を使用しもよいし、何らかのタイミングで送信される信号や自己ID等の信号を使用してもよい。
【0066】
1モータドライブ車の場合は何れかの駆動輪に図示しない車速計測装置(例えばエンコーダなど)が設けられており、第1走行コントローラ11はこの車速計測装置から車速データを受信する。第1走行コントローラ11は車速データをデータ伝送路20を介して表示装置8に送信する。
【0067】
2モータドライブ車の場合は左右の駆動輪に図示しない車速計測装置(例えばエンコーダなど)が設けられており、第1走行コントローラ11は右側駆動輪用の車速計測装置から車速データを受信し、第2走行コントローラ12は左側駆動輪用の車速計測装置から車速データを受信する。第1、第2走行コントローラ11、12は車速データをデータ伝送路20を介して表示装置8に送信する。
【0068】
表示装置8には、第1走行コントローラ11の接続信号のみを受信した場合に、第1走行コントローラ11から送信される車速データをそのまま表示する動作態様に切り替わるように、また第1走行コントローラ11の接続信号と第2走行コントローラ12の接続信号を受信した場合に、第1走行コントローラ11から送信される車速データと第2走行コントローラ12から送信される車速データとを使用して車速を求めて、求めた車速を表示する動作態様に切り替わるようにプログラミングされたソフトウェアがインストールされている。
【0069】
図4は第2の実施形態に係る表示装置で行われる処理フローの一例を示している。
【0070】
表示装置8はデータ伝送路20から第2走行コントローラ12の接続信号を受信した場合は車両が2モータドライブ車であると判断し、2モータドライブ車用の動作態様に切り替わる(ステップS41の判断Y)。
【0071】
2モータドライブ車用の動作態様では、表示装置8は、データ伝送路20から第1走行コントローラ11の車速データ1を受信し(ステップS42)、またデータ伝送路20から第2走行コントローラ12の車速データ2を受信する(ステップS43)。車速データ1と車速データ2との差が一定値Kを超えている場合は(ステップS44の判断Y)、車速データ1と車速データ2の平均を表示すべき車速とし(ステップS45)、その車速を表示する(ステップS46)。車速データ1と車速データ2との差が一定値K以下の場合は(ステップS44の判断N)、車速データ1を表示すべき車速とし(ステップS47)、その車速を表示する(ステップS46)。
【0072】
表示装置8はデータ伝送路20から第2走行コントローラ12の接続信号を受信しない場合は車両が1モータドライブ車であると判断し、1モータドライブ車用の動作態様に切り替わる(ステップS41の判断N)。
【0073】
1モータドライブ車用の動作態様では、表示装置8は、データ伝送路20から第1走行コントローラ11の車速データ1を受信し(ステップS48)、受信した車速データ1を表示すべき車速とし(ステップS49)、その車速を表示する(ステップS46)。
【0074】
なお、ステップS44以降で、第1走行コントローラ11と第2走行コントローラ12の何れかからエラー信号が送信されている場合に、エラー信号を送信していない走行コントローラから送信された車速データを表示すべき車速とする処理を行うようにしてもよい。
【0075】
本実施形態によれば、表示装置8は第2走行コントローラ12の接続信号を受信するか否かのみで動作態様を切り替える。したがって、表示装置8に動作態様を切り替えるための切替スイッチを設ける必要がない。
【実施例3】
【0076】
第3の実施形態の概念を図5を参照しつつ説明する。
【0077】
データ伝送路20には、標準モードと設定モードの切り替えが自在であり、標準モードでフォークリフトに設けられた所定装置を制御し、設定モードで所定装置の動作パラメータを設定自在にする制御部81と、所定のタイミングで切替信号を送信するソフトウェアがインストールされており、制御部81にデータ伝送路20を介して切替信号及び動作パラメータを送信するパラメータ設定部82が接続される。フォークリフトでいえば、駆動装置や作業装置を制御する各コントローラや表示制御する表示装置などは制御部81になり得る。またデータ伝送路にパラメータ信号を送信する表示装置やパーソナルコンピュータなどはパラメータ設定部82になり得る。
【0078】
制御部81はデータ伝送路20を介してパラメータ設定部82から送信される信号を受信しなければ、標準モードで動作する。パラメータ設定部82はインストールされたソフトウェアの動作によりデータ伝送路20にモード切替信号(例えばソフトウェアの起動信号)を送信する。制御部81はデータ伝送路20を介してこのモード切替信号(例えばソフトウェアの起動信号)を受信すると、標準モードから設定モードに切り替わる。
【0079】
図6は第3実施形態に係る産業車両用データ通信システムのモード切替装置を簡略化して示している。
図6に示す実施形態においては、第1走行コントローラ11が図5の制御部81に相当し、パーソナルコンピュータ(以下、単に「パソコン」という)51が図5のパラメータ設定部82に相当する。
【0080】
本実施形態は、パソコン51にインストールされたパラメータ設定用のソフトウェアが起動されるか否かをモード切替の判断基準として、第1走行コントローラ11及び荷役コントローラ13のモードを切り替える実施形態である。以下では、第1走行コントローラ11及び荷役コントローラ13が各操作信号出力部21、24から送信される操作信号に従って各モータ22、27を制御する標準モードから、第1走行コントローラ11及び荷役コントローラ13に設定されたパラメータを設定変更自在にする設定モードに切り替える実施形態を説明する。
【0081】
図6で示す各構成要素のうち、図2、図8に示す構成要素と同一のものには同一の符号を付す。パソコン51はCPUやメモリや通信装置等を有するハードウェア、出力装置(ディスプレイ等)、入力装置(キーボード、マウス等)を有する。パソコン51はデータ伝送路20に着脱自在に設けられている。パソコン51には各種ソフトウェハをインストールすることができ、起動するソフトウェアに応じて様々な機能を備えることが可能である。例えばパソコン51には、データ伝送路20を介して各コントローラ11、13から送信された各種データ信号を受信し、それらのデータを画面表示するようにプログラミングされたモニタ用ソフトウェアがインストールされている。
【0082】
またパソコン51には、自身が送信するモード切替信号によって第1走行コントローラ11と荷役コントローラ13を標準モードから設定モードに切り替えたうえで、各コントローラ11、13のパラメータを設定・変更するようにプログラミングされたパラメータ設定用ソフトウェアがインストールされている。パソコン51は、このソフトウェアの起動に伴いデータ伝送路20にモード切替信号として起動信号を送信する。
【0083】
第1走行コントローラ11は操作信号出力部21から送信される操作信号に従い走行モータ22を予め記憶された動作パラメータに基づいて制御する。荷役コントローラ13は操作信号出力部24から送信される操作信号に従い荷役モータ27を予め記憶された動作パラメータに基づいて制御する。各コントローラ11、13はデータ伝送路20から各種信号を受信する。各コントローラ11、13には、パソコン51から送信されたパラメータ設定用ソフトウェアの起動信号を受信した場合に、標準モードから設定モードに切り替わり、さらにパソコン51から送信されたパラメータを新たに記憶するようにプログラミングされたソフトウェアがインストールされている。
【0084】
図7は第3の実施形態に係るパラメータ変更の処理フローの一例を示している。
【0085】
通常時に各コントローラ11、13は標準モードにされており、各操作信号出力部21、24から送信される操作信号に従って各モータ22、27を制御する(ステップS71)。メンテナンス時などに作業員がパソコン51を操作してパラメータ設定用ソフトウェアを起動させると(ステップS72)、パソコン51はデータ伝送路20にパラメータ設定用ソフトウェアの起動信号を送信する(ステップS73)。
【0086】
各コントローラ11、13はデータ伝送路20からパラメータ設定用ソフトウェアの起動信号を受信すると(ステップS74)、標準モードから設定モードに切り替わる(ステップS75)。
【0087】
作業員がパソコン51のマウスやキーを操作してパラメータを設定するコントローラを指定しパラメータを入力すると、パソコン51はデータ伝送路20にパラメータ信号を送信する(ステップS76)。指定されたコントローラ11、13はデータ伝送路20からパラメータ信号を受信し(ステップS77)、新たなパラメータを記憶する(ステップS78)。
【0088】
なお、本実施形態では、パソコン51から送信されるパラメータ設定用ソフトウェアの起動信号に応じて各コントローラ11、13でモードが切り替えられているが、作業員の操作に応じてパソコン51からモード切替信号が送信されるようにし、そのモード切替信号に応じて各コントローラ11、13でモードが切り替えられるようにしてもよい。
【0089】
本実施形態によれば、各コントローラ11、13は、パソコン51にインストールされたソフトウェアの動作によって送信される切替信号に応じて標準モードから設定モードに切り替えられる。したがって、モードを切り替えるための切替スイッチを設ける必要がない。
【符号の説明】
【0090】
20…データ伝送路
71…制御部 72、72s…データ送信部
81…制御部 82…パラメータ設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業車両に搭載された産業車両用データ通信システムの動作切替装置であって、
入力された操作信号に従い、設定された動作パラメータに基づいて所定の駆動装置を駆動制御する駆動制御用コントローラと、
前記駆動制御用コントローラおよびパーソナルコンピュータが接続され、当該駆動制御用コントローラおよびパーソナルコンピュータ間でデータの送受信が行なわれるデータ伝送路と、
前記データ伝送路に接続が可能で、新たな動作パラメータを生成するパーソナルコンピュータであって、当該パーソナルコンピュータが前記データ伝送路に接続され、当該パーソナルコンピュータが起動されると、起動信号を当該データ伝送路に送信し、前記新たな動作パラメータを前記データ伝送路に送信するパーソナルコンピュータとを備え、
前記駆動制御用コントローラには、
前記データ伝送路を介して前記起動信号が入力された場合には、前記新たな動作パラメータを設定する設定処理を行い、
前記データ伝送路を介して前記起動信号が入力されていない場合には、現在設定されている動作パラメータに基づいて前記所定の駆動装置を駆動制御する
ソフトウェアがインストールされていることを特徴とする産業車両用データ通信システムのモード切替装置。
【請求項2】
前記駆動制御用コントローラは、荷役モータを駆動制御する荷役コントローラまたは走行モータを駆動制御する走行コントローラであること
を特徴とする請求項2に記載の産業車両用データ通信システムのモード切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−96927(P2012−96927A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259123(P2011−259123)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【分割の表示】特願2007−28053(P2007−28053)の分割
【原出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】