産生能を増大させるタンパク質因子、新規な細胞株及びその使用

本発明は、アデノウイルス以外の標的ウイルス又は標的タンパク質を、特定の異種調節タンパク質をコードする遺伝子をそのゲノムに安定的に組み込んでいる強力な発現細胞株を利用して調製する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アデノウイルス以外の標的ウイルス又は標的タンパク質を、特定の異種調節タンパク質をコードする遺伝子がそのゲノムに安定的に組み込まれた強力な発現細胞株を利用して調製する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
真核生物細胞から得られるバイオ医薬製品は現代医療の欠くことのできない一部である。しかしながら、増大した産生能及び増大した安全性は、相当な最適化を依然として必要とする重要なパラメーターである。最適化に向けた努力における最も大きな障害は細胞実体そのものである。バイオ医薬プロセスにおける使用のために既に公表されている細胞株に、そのような操作された細胞からの製品収量を増大させるために導入することができる安全な導入遺伝子は、極めて有益である。
【0003】
アデノウイルスは、広範囲の動物に感染する、エンベロープを有さない(裸の)二本鎖DNAウイルスである。最もよく特徴づけされているメンバーの1つがヒトアデノウイルス血清型5(Ad5)である。このウイルスは感冒症状の原因となることが多く、感染が多くの場合には小児において生じる。
【0004】
アデノウイルスは遺伝子操作が容易であり、Ad5(配列についてのGenBankアクセション番号:AC 000008)を含む、様々な複製不能なアデノウイルスが、遺伝子治療におけるベクターとして使用され、また、治療的ワクチン接種のために使用される。複製不能なウイルスを得るために、ゲノムDNAのいくつかの大きな領域が非ウイルス性の配列により置換される。失われたウイルス機能が、ベクターにおいて欠失される遺伝子により安定的にトランスフェクションされている宿主細胞株によってトランス作用で提供される。開発されたより初期のシステムの1つは、対応するE1タンパク質を提供する細胞株で産生される、調節E1領域が欠失されたアデノウイルスベクターからなる。
【0005】
本目的のための最も一般的な細胞株が293細胞株である。この細胞株は、フラグメント化されたアデノウイルスゲノムDNAを初代ヒト細胞にトランスフェクションすることによって1977年に作製された(Graham et al., J. Gen. Virol., 36, 59-74 (1977))。これは、アデノウイルスが遺伝子治療ベクターとして役立ち得ることが認識されたよりもかなり前であった。得られた細胞株は、その後、E1領域を含むゲノムDNAのヌクレオチド1〜4344を含有することが示された(Louis et al., Virology, 233, 423-429 (1997))。この特徴づけにより、E1領域が初代細胞の不死化及び形質転換のために使用できることが明らかにされた。
【0006】
E1領域の隣には、pIX(「タンパク質9」;ゲノムDNAでのヌクレオチド3609〜4031)に対する遺伝子が続く。pIXに対するプロモーターがE1領域のE1B成分の内部に埋め込まれている。プロモーター閉塞と呼ばれる機構は、ウイルスのDNA複製が始まるとき、ウイルス感染サイクルにおける遅れた初期時間でのpIXの発現を可能にし、ウイルスDNAのコピー数を増大させる(Fessler and Young, J. Virol., 72, 4049-4056 (1998))。その遺伝子は、293細胞に組み込まれた4344個のヌクレオチドの中に存在するが、pIXの発現は、高感度な放射能標識化方法を用いた場合でさえ、検出することができない(Spectoret al., J. Virol., 36, 860-871 (1980))。
【0007】
上記のように、複製欠陥アデノウイルスベクターは、ウイルスゲノムからのE1領域の欠失によって作製されている。E1産物はウイルスの複製及びE1領域の機能のために不可欠であり、従って、アデノウイルスパッケージング細胞(例えば、293細胞株など)における安定なE1導入遺伝子を介してトランス作用で提供されなければならなかった。E1領域に近いために、pIX遺伝子は、欠失型アデノウイルスベクターと、宿主ゲノムにおけるE1との間での頻繁な組換えを引き起こした。この組換え事象は、複製能を有するアデノウイルス(RCA)を生じさせた(これは、ベクター調製における重大な混入である)。この組換え事象を抑制するために、pIXがアデノウイルスのゲノムから欠失された。これらの実験の途中で、pIXは、アデノウイルスのカプシドを、主要な組み立てブロック(ヘキソン)の相互作用を増大させることによって熱的ストレス及び立体的ストレスに対して安定化することが認識された(Colby and Shenk, J. Virol., 39, 977-980 (1981); Ghosh-Choudhury et al., EMBO J., 6, 1733-1739 (1987))。pIXの不在下での形態形成では、野生型の35938塩基対の105%を越えるゲノムDNA分子を送達することができない温度感受性ウイルスが生じる。正常なパッケージング能力及び熱安定性を依然として可能にするために、pIXタンパク質は、アデノウイルスベクターのためのパッケージング細胞として意図される細胞株に安定的に導入された(Krougliak and Graham, Hum. Gene Ther., 6, 1575-1586 (1995);WO99/57296;及び、Imler et al., Gene Therapy, 3, 75-84 (1996))。
【0008】
また、pIXがビリオンの表面を装飾するという認識により、pIX融合タンパク質は、アデノウイルスベクターの宿主範囲を拡大する目的で、又はウイルス粒子の形態形成及び細胞内移動を追跡する目的で作製されている(これは、Parks, Mol. Ther., 11, 19-25 (2005)によって総説される)。
【0009】
pIXは、構造タンパク質として明らかではあるが、アデノウイルスが複製するための調節タンパク質としても関与する。PIXは、E1Aの発現を増大させるための転写のトランス活性化因子として機能することが仮定される(この機能は、場合により感染段階においてカプシドから生じるPIXタンパク質によりウイロカイン(virokine)としても発揮される)(これは、Parks, Mol. Ther., 11, 19-25 (2005)によって総説される)。PIXは、初期タンパク質のE4 Orf3と一緒になった場合、PML体と呼ばれる核内封入体と相互作用することもまた記載される(Puvion-Dutilleul et al., Exp. Cell. Res., 218、9-16 (1995); Leppard and Everett, J. Gen. Virol., 80、997-1008 (1999))。これらは、サイズが250nm〜500nmの動的な凝集物であり、細胞分化の調節(Wang et al., Science, 279, 1547-1551 (1998))、アポトーシスの制御(Quignon et al., Nature Gen., 20, 259-265 (1998))、及びウイルス感染に対する応答(Moeller and Schmitz, Arch Immunol Ther Exp (Warsz), 51, 295-300 (2003))に関与することが提案される。
【0010】
その多形質発現的作用のために、本発明者らは、PIXが、アデノウイルス又はアデノウイルスベクターに関連しないバイオ医薬製品に関し、細胞増殖又は産生能を増大させるかを調べるために、PIXタンパク質を細胞株に導入した。樹立した細胞株においてこれらの能力を調節する因子が一般に求められている。
【0011】
例えば、弱毒化(弱化)ウイルスは有望なワクチン候補物である。接種されたとき、弱毒化(弱化)ウイルスは天然の感染を模倣するが、ワクチン被接種者により所望される保護的免疫応答が確立されるためにはより多くの時間がかかる。免疫低下患者(例えば、HIV感染による免疫低下患者)の数が増大しつつあることにより、非常に弱毒化された株が望ましい。弱毒化株は依然として(通常の場合には良性の)感染に向かって進行するのに対して、非常に弱毒化された株は、機能的な免疫システムの不在下でさえ、細胞レベルで阻止される。弱毒化を確立及び維持するための頻繁に使用される方法は、ウイルスを異なる宿主組織で継代培養することである。例えば、ヒトへのワクチン接種のために意図された麻疹・おたふく風邪ウイルスは、孵化した鶏卵又はその由来培養物のいずれかにおいてであっても、初代細胞において継代培養される。新しい世代のワクチンは、産生のために初代ニワトリ細胞に同様に依存する非常に弱毒化されたポックスウイルスに基づく。従って、初代ニワトリ細胞に取って代わることができ、同時にまた、二次的操作(例えば、PIX導入遺伝子の導入など)に起因するウイルス感染から自身をあまり効率よく守ることができない細胞株は、非常に望ましい実体(substrate)を提供する。
【0012】
他の目的のために、(トリではなく)哺乳動物の細胞株が好ましい場合がある。そのような好ましい細胞株は既に存在し、安全性、及び得られるバイオ医薬製品によって引き起こされる危険性に関して保健当局による審査に合格している。この場合でもまた、利用可能な適用の範囲又は産生効率を、安全性の特徴を損なうことなく増大させるための二次的操作(例えば、PIX導入遺伝子の導入など)が非常に望ましい。
【発明の開示】
【0013】
アデノウイルス遺伝子pIX(又はそのキメラな融合アナログ)により安定的にトランスフェクションされている細胞株を調製するとき、本発明者らは、pIXがトリ細胞及びヒト細胞において表現型作用を発揮することを予想外にも発見した。トリ細胞について、このことは特に驚くべきことである。これは、トリ細胞には、ヒトアデノウイルスが感染することができず、また、トリアデノウイルス(例えば、CELO又は家禽アデノウイルス8型など)はPIXホモログをコードしないからである(Ojkic and Nagy, J. Gen. Virol., 81, 1833-1837 (2000))。その上、本発明者らは、PIXの安定な存在が、おそらくはtoll様受容体3を介して、二本鎖RNAアナログによる誘導に対する細胞の感受性を増大させることを観察した。おそらくはこの関連であるかもしれないが、本発明者らはまた、PIXタンパク質の存在が、非常に弱毒化されたポックスウイルスの収量をトリ宿主細胞において増大させることを予想外にも観察した。ポックスウイルス感染細胞は二本鎖RNAアナログによる誘導をあまり受けなかったので、本発明者らは、PIXタンパク質と、ポックスウイルスの抗インターフェロン遺伝子との間における、以前には記載されていない相互作用を見出した可能性がある。本発明者らはまた、安定的にトランスフェクションされた細胞株によって放出される(ウイルスだけではない)タンパク質性産物の収量において驚くほどの増大を観察した。
【0014】
従って、本発明は、
(1)アデノウイルス以外の標的ウイルスあるいは1又はそれ以上の標的タンパク質を調製する方法であって、
(a)前記標的ウイルス、前記標的ウイルスをコードする核酸配列を有するベクター、あるいは前記1又はそれ以上の標的タンパク質をコードする核酸配列を有するベクターを宿主細胞に感染させるか又はトランスフェクションすることによって得ることができる発現細胞であって、異種調節タンパク質としてのアデノウイルスPIX又はその機能的改変体をコードする遺伝子をそのゲノムに安定的に組み込まれて有し、かつ前記調節タンパク質又はその機能的改変体を安定的に発現する発現細胞を培養すること(この場合、アデノウイルス以外の標的ウイルスは前記調節タンパク質を含有せず、かつ標的タンパク質は前記調節タンパク質又はその機能的改変体とは異なる)、及び
(b)標的ウイルス又は標的タンパク質を単離すること
を含む方法;
(2)前記PIXタンパク質又はその機能的改変体が非同族のウイルス因子と協同し、前記タンパク質以外の因子の細胞内分布を調節し、転写及び/又は細胞増殖を調節し、かつ、前記調節タンパク質を含有しないウイルスの産生において、及び前記調節タンパク質又はその機能的改変体とは異なるタンパク質の産生において細胞の産生能を高める、上記(1)の好ましい実施形態;
(3)アデノウイルスpIXが、アデノウイルスpIXの活性又は細胞内分布を調節又は拡大する別のタンパク質との融合タンパク質として提供され、例えば、レチノイン酸受容体αに融合され、好ましくは、配列番号4に示される配列を有する融合タンパク質であるか、又はGFPに融合され、NLSを含有し、好ましくは、配列番号23に示される配列を有する融合タンパク質である、上記(1)及び(2)の好ましい実施形態;
(4)宿主細胞及び発現細胞が、哺乳動物細胞及びトリ細胞を含む脊椎動物細胞であり、好ましくは、哺乳動物細胞がヒト脳由来細胞であり、トリ細胞がアヒル網膜由来細胞又はアヒル体節由来細胞である、上記(1)〜(3)の好ましい実施形態;
(5)宿主細胞及び発現細胞がヒト脳に由来し、好ましくはヒト胎児脳に由来し、最も好ましくはNC5T11細胞であり、かつ前記細胞が、アデノウイルスPIX又はその機能的改変体をコードする核酸配列を異種調節タンパク質として有し、好ましくは、前記異種調節タンパク質が、配列番号1、配列番号3又は配列番号22に示される核酸によってコードされる、上記(1)〜(4)の好ましい実施形態;
(6)宿主細胞がNC5T11#34細胞であり、発現細胞がNC5T11#34細胞に由来し、ただし、前記NC5T11#34細胞はDSMZにアクセション番号DSM ACC2744で寄託される、上記(5)の好ましい実施形態;
(7)宿主細胞及び発現細胞がトリ細胞であり、好ましくはアヒルの網膜又はアヒルの体節に由来し、かつ前記細胞が、アデノウイルスPIX又はその機能的改変体をコードする核酸配列を異種調節タンパク質として有し、好ましくは、前記異種調節タンパク質が、配列番号1、配列番号3又は配列番号22に示される核酸によってコードされる、上記(1)〜(4)の好ましい実施形態;
(8)宿主細胞がCR.PIX(17a11b)細胞であり、発現細胞がCR.PIX(17a11b)細胞に由来し、ただし、前記CR.PIX(17a11b)細胞はDSMZにアクセション番号DSM ACC2749で寄託される、上記(7)の好ましい実施形態;
(9)上記(1)〜(8)において定義される、標的ウイルスあるいは1又はそれ以上の標的タンパク質を生産するための発現細胞、好ましくは、発現が、上記(5)〜(8)において定義される通りである;
(10)上記(1)〜(8)において定義される宿主細胞株に、ウイルス、前記ウイルスをコードする核酸配列を有するベクター、あるいは前記1又はそれ以上の標的タンパク質をコードする核酸配列を有するベクターを感染又はトランスフェクションをすることを含む、上記(9)において定義される発現細胞を調製する方法;
(11)上記(5)〜(8)において定義される宿主細胞;
(12)適切な出発細胞に、前記調節タンパク質又はその機能的改変体を有するベクターをトランスフェクションすることを含む、上記(11)の宿主細胞を調製する方法;
(13)標的ウイルスあるいは1又はそれ以上の標的タンパク質を調製するための、上記(7)において定義される発現細胞の使用;
(14)調節タンパク質を含む少なくとも1つの第1のドメインと、転写調節因子として、及び/又は上記(2)若しくは(3)において定義される細胞内標的化のためのシグナルとして作用するタンパク質又はペプチドを含む少なくとも1つの第2のドメインとを含む融合タンパク質;及び
(15)上記(14)において定義される融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列
を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態(1)の方法では、異種調節タンパク質、すなわち、pIX、又はその機能的改変体をコードする遺伝子をそのゲノムに組み込んでいる発現細胞が利用される。前記調節タンパク質は下記の性質を有する。
1.前記調節タンパク質は転写を調節し、また、特に適切な調節因子又はレギュレーターに連結されるならば、細胞増殖にも影響を及ぼす。
【0016】
2.前記調節タンパク質は、細胞株の産生能を、前記調節タンパク質を含有しないウイルスの産生に関して高め(すなわち、前記調節タンパク質は、ウイルスから欠失されたタンパク質の代替物ではない)、及び/あるいは、前記調節タンパク質又はその機能的改変体とは異なるタンパク質の産生に関して高める。
【0017】
本発明によれば、異種調節タンパク質は、アデノウイルス血清型5のタンパク質pIX(例えば、配列番号2に示されるaa配列を有するタンパク質)、その変異体(これには、付加変異体、置換変異体及び/又は欠失変異体が含まれる)、及びその改変体(例えば、異なる血清型のアデノウイルスから得られる改変体)などである。
【0018】
本発明による「異種調節タンパク質の機能的改変体」には、血清型5以外のアデノウイルスに由来するホモログ、それぞれの野生型調節タンパク質の特定のアミノ酸残基の変異のすべてのタイプ(付加、置換及び/又は欠失)、さらなる活性タンパク質配列又はペプチド配列の融合による修飾などが含まれる。特に好ましいものは、融合タンパク質、すなわち、本明細書中で定義される調節タンパク質を含む少なくとも1つの第1のドメインと、転写調節因子として作用するタンパク質又はペプチドを含む少なくとも1つの第2のドメインとを含む融合タンパク質である。本発明の好ましい実施形態において、前記転写調節因子は、レチノイン酸受容体αを含む転写因子であり、これは完全な形態又は不完全な形態(すなわち、短縮化形態)で存在してもよい。調節因子はまた、NLF配列(例えば、配列番号21に示されるNLF配列)を含む輸送ペプチドであってもよい。本発明によれば、第1及び第2のドメインは直接又はペプチドリンカーを介して互いに共有結合により結合する。好適なペプチドリンカーには、柔軟な親水性構造体(例えば、ポリgly−serなど)が含まれる。
【0019】
下記の詳細な説明において使用される用語「細胞」及び用語「細胞株」は、発現細胞/発現細胞株及び宿主細胞/宿主細胞株を示す。
【0020】
本発明によれば、異種調節タンパク質又はその機能的改変体が、少なくとも1pg/μg細胞タンパク質の量で、好ましくは、少なくとも10pg/μg細胞タンパク質の量で細胞において発現し、その結果、その発現がウエスタンブロッティングによって決定され得ることが好ましい。
【0021】
本発明の細胞において、異種調節タンパク質又はその機能的改変体は、好ましくは、安定な同種プロモーター又は異種プロモーターの制御下にある。好適なプロモーターは構成的な細胞プロモーター又はその改変体であり、例えば、ヒトのトランスロケーション伸長因子2プロモーターなどである。本発明において利用されるヒトのトランスロケーション伸長因子2プロモーターの具体的な改変体は、配列番号12に示される配列を有する。示された配列は、ヒトの第19染色体:3,935,325〜3,936,638(ヒトゲノムアセンブリー、2004年5月)に位置するプロモーターの「短い」形を表し、安定な中程度のレベルの発現をもたらす。より強い発現のために、chr19:3,935,349〜3,938,957(ヒトゲノムアセンブリー、2004年5月)に位置するプロモーターの「より長い」形を使用することができる。
【0022】
本発明によれば、細胞は、哺乳動物細胞及びトリ細胞などを含む脊椎動物細胞である。好適な哺乳動物細胞は、ヒト細胞、及びマウス、ラット、ハムスターを含む齧歯類細胞などである。本発明による特に好ましい哺乳動物細胞は、ヒト脳に由来する細胞(具体的には、ヒト胎児脳に由来する細胞)、マウスのNSO細胞又はSp2/0細胞、BHK細胞又はCHO細胞である。好適なトリ細胞は、アヒル、ニワトリ、ウズラ又はガチョウの細胞である。本発明による特に好ましいトリ細胞は、アヒルの網膜由来細胞又は体節由来細胞に由来する細胞である。
【0023】
他方で、本発明の細胞は初代細胞に由来し得るか、又は以前に不死化された細胞に由来し得る。その上、細胞は、アデノウイルスのE1タンパク質(例えば、マストアデノウイルスC群5型のE1タンパク質など)を含むさらなる不死化(ウイルス)遺伝子を有することができる。本発明によれば、細胞が配列番号5に示されるアデノウイルスのE1A遺伝子及び/又はE1B遺伝子をさらに有することは、特に好ましい。
【0024】
本発明の実施形態(1)の方法で利用される細胞は、機能的な配列、例えば、発現細胞としてのその適用のために要求される配列、例えば、選択マーカー配列、スプライスドナー/アクセプター部位、及び/又は、細胞において発現される標的核酸配列の組み込みを可能にするリコンビナーゼ認識配列などをさらに有することができる。
【0025】
本発明の実施形態(1)、実施形態(10)及び実施形態(12)の方法で行われる「感染させる」、「トランスフェクションする」及び「形質転換する」は、当業者には公知である標準的な手順に従って行うことができる。前記方法はさらに、必要に応じて、選択、単離及び拡大の好適な工程をさらに包含することができる。
【0026】
実施形態(1)の方法において、標的ウイルスには、野生型ウイルス、変異ウイルス又は欠失ウイルス、低温適合ウイルス又は弱毒化ウイルス、ワクチン株、異種の遺伝子を有するウイルスベクター、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウイルス(aav)、ヘルペスウイルス及びフラビウイルスなど)が含まれる。
【0027】
さらに、実施形態(1)の方法において、1又はそれ以上の標的タンパク質には、抗体、組換えタンパク質(例えば、エリスロポイエチン、α−1−アンチトリプシン、血液凝固因子VIII、血液凝固因子IX及びインターフェロンなど)、ウイルス抗原(例えば、インフルエンザHA、インフルエンザNA、インフルエンザM、HBV−S、ヘルペスGタンパク質及び狂犬病Gタンパク質など)、及びペプチドホルモンなどが含まれる。本方法は、2つ以上の標的タンパク質の同時発現が可能である細胞の作製を可能にするが、この方法では、1つだけの標的タンパク質がコードされることが特に好ましい。
【0028】
本発明の実施形態(1)の方法の培養及び単離は、当業者が容易に利用することができる標準的な手順に従って行うことができる。前記方法はさらに、標準的な精製工程、ならびに標的ウイルス又は標的タンパク質のその後の修飾工程を含むことができる。
【0029】
実施形態(9)及び実施形態(11)の発現細胞株及び宿主細胞株のそれぞれ好ましい実施形態、ならびに、実施形態(10)及び実施形態(12)の前記細胞株についての製造方法に関して、実施形態(1)に関連して本明細書中で提供された詳しい議論が参照される。
【0030】
実施形態(14)及び実施形態(15)によれば、本発明は、調節タンパク質を含む少なくとも1つの第1のドメインと、本明細書中で定義される転写調節因子として作用するタンパク質又はペプチドを含む少なくとも1つの第2のドメインとを含む融合タンパク質、及び前記融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列をそれぞれ提供する。本発明はまた、例えば、すべてのタイプのベクター構築物、細胞株、組織培養、トランスジェニック動物などにおいて、実施形態(14)及び実施形態(15)の、前記融合タンパク質の(例えば、診断適用及び医薬適用などにおける)使用、及び前記融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列の使用にそれぞれ関連する。
【0031】
細胞株NC5T11#34が、2005年11月4日に、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Mascheroder Weg 1b、38124 Braunschweig、ドイツ)にアクセション番号DSM ACC2744で寄託された。細胞株CR.PIX(17a11b)が、2005年11月24日に、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Mascheroder Weg 1b、38124 Braunschweig、ドイツ)にアクセション番号DSM ACC2749で寄託された。
【0032】
本発明は下記の実施例によってより詳細に説明される。しかしながら、下記の実施例は、本発明を限定するように解釈してはならない。
【実施例】
【0033】
実施例1:細胞株NC5T11の開発
この細胞株を、非ウイルス性トランスフェクションによるアデノウイルス5のE1A遺伝子及びE1B遺伝子での不死化によって、胎児脳から得られた細胞の混合物から開発した。
【0034】
組織サンプルを誘発性流産後の胎児の脳の脳室周囲域から採取した。組織サンプルは、20ng/mlのhFGF(Invitrogen、Carlsbad、CA 92008、米国)、20ng/mlのhEGF(Invitrogen)、1x N2補充物(Invitrogen)及び8μg/mlのヘパリン(Sigma Aldrich、St.Louis、米国)を含有するDEMEM/F12をベースとしたニューロン培養培地において、ハサミで切り刻み、組織培養ピペットによる吸引によってホモジナイズした。細胞を200gで3分間沈降させた。細胞の生存率は、トリパンブルーを使用して評価し、また、フローサイトメーター(BD Biosciences、Jose、CA 95131、米国)を使用するときにはプロピジウムヨードを使用して評価した。生存率は75%であった。0.5×106個の細胞をT25フラスコに播種した。細胞を37℃及び5%CO2でインキュベーションした。細胞は培養の5日目までにニューロスフェアを形成した。ニューロスフェアを図1Aに示す。8日目に、細胞を接着させるために、また、増殖を刺激するために、5%のFCSが補充されたDMEM/F12に移した。細胞は、図1Bに示されるような均質な単層を形成し、これを、1週間に1回、1:5で継代培養した。この初代神経細胞培養物はNC5と名付けた。
【0035】
血清含有培地で2週間後、トランスフェクション試薬としてのEffectene(Qiagen、40724 Hilden、ドイツ)を製造者の説明書に従って使用して、サブコンフルエントの6ウエルプレートにおいて細胞にベクターp79をトランスフェクションした。プラスミドp79は下記の構成要素を含有する。pBluescript(Stratagene、米国)はプラスミド骨格として役立ち、この場合、アンピシリン抵抗性マーカーは、大腸菌における増殖及び選択を可能にする、細菌プロモーターにより駆動されるカナマイシン抵抗性遺伝子に置換した。ベクターは、E1Aの上流側の配列だけでなく、E1A(CR3ドメインを含むスプライス改変体13S、及びCR3ドメインを含まないスプライス改変体12S)ならびにE1Bの55k及び19kについてのオープンリーディングフレームを含有する野生型アデノウイルス5型に由来するフラグメント(配列番号5)を有する。E1A遺伝子の前には、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター(マウス)が置かれる。アデノウイルスの配列の後には、単純ヘルペスのチミジンキナーゼ遺伝子に由来するポリアデニル化シグナルが続き、これはE1Bのポリアデニル化シグナルの代用として役立つ。様々なエレメントが、PCRによって、それぞれの生物から、又はドナープラスミドから得られ、従来の組換えDNA技術を使用してクローン化され、配列決定によって確認された。トランスフェクション後2日で、細胞をトリプシン処理し、10cmディッシュに移した。2週間後、高い核/細胞質比及び明瞭に識別可能な境界を伴う小さい細胞の増殖巣が、モック処理の細胞ではなく、トランスフェクションされた細胞において形成された(図1C)。11番目のトランスフェクションから、8個の独立した増殖巣を、クローニングシリンダー(Corning、米国)を使用してトリプシンにより単離し、24ウエルプレートのウエルに播種し、12ウエルプレート、6ウエルプレートを介して、T25フラスコに拡大した。すべての単離された増殖巣は2つのタイプの細胞を含有した。境界が鮮明である小さい細胞、及び広がった線維芽細胞様細胞。
【0036】
トランスフェクション後3週間で、15個のさらなるクローンがトランスフェクションT11において認められ、そのうちのいくつかは、既に単離された初代クローンの残存する細胞に由来するかもしれない。
【0037】
クローンT11a.1及びクローンT11a.6は最も速い増殖を示し、トランスフェクション後8週間で、DMEM/F12、10%DMSO、25%血清において凍結保存された。この時点で、すべてのクローンが依然として、初代の表現型に類似する拡大した細胞質を有する少数の細胞を含有した。しかしながら、スプリット比がT11a.1及びT11a.6について1:5の場合、それらは過度に増殖し、トランスフェクション後のおよそ3ヶ月で除かれた。免疫蛍光実験は、変化した形態とE1A及びE1Bの発現とを関連させるために行った。メタノールによる固定処理の後、細胞を、E1A及びE1B 55kそれぞれに対するラット抗体で処理し、その後、テキサスレッドコンジュゲート化抗ラット抗体で処理した。図2に示されるように、サンプルにおけるすべての細胞は、E1Aについて典型的な核染色、及びE1Bについての細胞質染色を示した。
【0038】
トランスフェクション後3ヶ月で、クローンT11a.1及びクローンT11a.6は、トリプシン処理後の1.6×106個の細胞を播種することによって無血清培地ProPER(Cambrex、ベルギー)に移した。細胞は、1週間に一度、遠心分離によって集め、培地を遠心分離によって交換した。細胞集団は生存するが、トランスフェクション後6ヶ月でさえ、細胞は低い生存率を依然として示し、60時間〜80時間の高い倍加時間で増殖した。
【0039】
細胞は、ProPER培地で3ヶ月後、5%のFCSを含むDMEM/F12に戻されたとき、40時間の倍加時間を有する均質な、高生存率の培養物は両方のクローンについて形成している。T11a.1をさらなる実験のための最も頑強な細胞クローンとして選び、NC5T11と名付けた(図1D)。
【0040】
実施例2:NC5T11puroクローン#8の確立
細胞株におけるタンパク質産生は効率的なトランスフェクション方法及び選択方法に依存する。NC5T11についての一般に使用される選択マーカー(G418、ピューロマイシン、ヒグロマイシン、ブラスチシジン、MTX、ヒスチジノール)の適合性は不明である。第1の評価段階において、種々の市販されているトランスフェクション試薬(Lipofectamine(Invitrogene)、Fugene(Roche、ドイツ)、Polyfect(Qiagen)及びEffectene)を製造者のプロトコルに従って試験した。gfpをヒトCMVプロモーターから発現するプラスミドpEGFP−N1(Clontech、米国)を、一過性トランスフェクション効率を測定するために使用した。最大の効率がEffectene(Qiagen)により得られ、DMEM/F12/10%FCSにおいて増殖する接着細胞に適用されたとき、細胞密度に依存して20%〜50%に達した。
【0041】
選択マーカー遺伝子を調べるために、ヒトCMVプロモーターの制御下にあり、ウシ成長ホルモンのポリAシグナルが続くヒトα−1−アンチトリプシン(aat)遺伝子と、弱いプロモーターによって制御されるそれぞれの選択マーカーとを含有する発現ベクターを構築した。より具体的には、ピューロマイシン選択について調べるために、ヒトPGKプロモーターによって駆動され、SV40初期ポリアデニル化シグナルが続くピューロマイシン抵抗性遺伝子を含有するベクターC55を使用した。
【0042】
トランスフェクション後、細胞を、0.75μg/mlのピューロマイシンを含有するDMEM/F12/5%FCSに播種し、毎週の培地交換を行いながら3週間にわたって選択した。クローンプールを作製し、発現を、ヤギポリクローナル抗α−1−アンチトリプシン抗体(Innogenetics、米国)、その後、ビオチン標識された二次のウサギ抗ヤギ抗体と、ストレプトアビジン−テキサスレッドコンジュゲートとを使用する免疫蛍光によって確認した。
【0043】
個々の細胞クローンを単離するために、クローンプールの10000個の細胞を15cmディッシュに播種した。4週間後、クローンを、クローンシリンダー(Corning)を使用して単離し、クローン#1、クローン#2、クローン#7、クローン#8、クローン#9、クローン#10をaat発現について分析した。より具体的には、細胞を12ウエルプレートに7×104個の細胞で播種し、細胞数及びaat発現を測定した。計算された細胞の比産生能速度を図3に示す。クローンNC5T11puro#8が、100pg/細胞・日を越える比産生能を示し、これをさらなる開発のために使用した。
【0044】
実施例3:産生培地へのNC5T11及びNC5T11puro#8の移行ならびに振とう機回分培養における発現分析
ProPER培地(Cambrex)におけるNC5T11及びNC5T11puro#8の両方の増殖速度は、血清含有培地と比較して、およそ2倍低下した。従って、Xcell VPRO(JRH Biosciences)を代替物として調べた。適合化は、4.5×106個の細胞をT25フラスコにおいて5mlのEXCELL VPROに直接に播種することによって行った。2週間後、細胞増殖が再び始まり、1:3の毎週のスプリット比が確立した。次の段階として、両方のクローンを剪断ストレスの存在下での増殖に適合させた。細胞を50mlのポリプロピレンシェーカーチューブ(TPP、スイス)において12mlのEXCELL VPROに6×104細胞/mlで播種し、1cmの半径及び160rpmの速度による回転に供した。反復した継代培養の後、回分物のアッセイを、指数増殖期及び定常増殖期の期間中における最大細胞密度及び生成物の蓄積を測定するために行った。下記の観測結果が得られた。クローンNC511puroは、18日目まで70%を越えて維持された高い生存率を示した。最大細胞密度は1×106を越えなかった。生成物の蓄積は定常期の期間中も継続した(図5)。特定の培地開発又はさらなる細胞改良が、CHO細胞により得られる細胞密度に匹敵し得る高い細胞密度を達成するためには必要であると結論づけられた。これにより、相当の増大した生成物力価がもたらされる可能性がある。
【0045】
実施例4:融合タンパク質pIX−RARAならびにpIX−RARA及びpIXの両方のための組み込みベクターの構築
アデノウイルスPIX及びレチノイン酸受容体α(RARA)についての配列を、下記のプライマーを使用してアデノウイルス5型及びヒトゲノムDNAからそれぞれPCRによって得た。
PIXについては、
1.AACCAGCGCTACCATGAGCACCAACTCGT(配列番号6)
2.AATGGTGGCAACCGCATTGGGAGGGGAGG(配列番号7)
及び
RARAについては、
3.CCAATGCGGTTGCCACCATTGAGACCCAGA(配列番号8)
4.AAGGAGCGCTGGCGAGGGCTGTGTCCAT(配列番号9)。
【0046】
両方のフラグメントを別々に増幅した。プライマー2とプライマー3との重複部は、両方のフラグメントを、プライマー3及びプライマー4を使用してPCRによってつなげることを可能にした。融合遺伝子はベクターpEFpromhygにクローン化し、これによりpEFpIXRARAを得た。このベクターは、chr19:3,935,325〜3,936,638(ヒトゲノムアセンブリー、2004年5月)に位置するヒト伸長因子2プロモーター(配列番号12)を含有する。このプロモーターはEF2遺伝子の上流エレメント及び第1イントロンを含有する。EF2の天然の開始コドン(これは第1イントロンの5’に位置する)を変異誘発によって除いた。ベクターpEFpromhygにおいて、EF2配列の後には、pIX−RARAを挿入するために使用される特異な制限部位(AfeI)が続く。AF1部位に続く内部リボソーム結合部位は、pIX−RARAを伴う結合されたRNAにおける第2のオープンリーディングフレームとしてのヒグロマイシン抵抗性遺伝子の発現を可能にする。この形態により、すべてのヒグロマイシン耐性細胞におけるpIX−RARAの発現が維持される。
【0047】
wt型pIXについての遺伝子は、AACCAGCGCTACCATGAGCACCAACTCGT(配列番号10)及びACCGAGCGCTTGTTTTAAACCGCATTGG(配列番号11)のプライマーを使用して増幅し、pIX−RARAの代わりにpEFpromhygのAfe部位に組み込んで、pEFpIXを得た。
【0048】
実施例5:PIX遺伝子及びPIX−レチノイン酸受容体融合タンパク質による細胞株NC5T11及び細胞株NC5T11puro#8の改変
細胞クローンNC5T11及び細胞クローンNC5T11puro#8は、1.3×106細胞/ウエルでDMEM/F12/5%FCSに播種することによって6ウエルプレートにおいてトランスフェクションするために調製した。プラスミドF67(pEFpIXRARA)及びプラスミドF76(pEFpIX)は制限酵素Asp700(Roche)で線状化し、エタノール沈殿後、Effectene(Qiagen)を使用してトランスフェクションした。DNAは16μlのEnhancer及び200μlのEC緩衝液と混合した。室温で2分後、18μlのEffecteneを加え、リポソーム形成を室温で10分間行わせた。トランスフェクションミックスを、前日に6ウエルプレートにおいて80%のコンフルエンシーに播種された細胞の上の1mlの培養液に加えた。高いトランスフェクション効率がpEGFP−N1(Clontech、Palo Alto、CA 94303−4230、米国)の並行したトランスフェクションにより確認された。トランスフェクション後1日で、培地は、10%のFCSを含むDMEM/F12に交換し、75μg/ml又は100μg/mlのヒグロマイシン(NC5T11)及び50μg/mlのヒグロマイシン(NC5T11puro#8)を加えた。選択培地は1週間に2回取り替えた。18日後、15個〜20個の明瞭なクローンがウエルのそれぞれにおいて視認された。クローンプールはトリプシンで処理し、選択をさらに2週間続けた。クローンプールをRTPCRによってPIXRARAの発現について調べた。クローンプールのほとんどにおいて、強いシグナルがプライマー1及びプライマー2により検出され、より弱いシグナルがプライマー1及びプライマー4により検出された。個々の細胞クローンを単離するために、クローンプールの10000個及び1000個の細胞を15cmディッシュに播種した。4週間後、クローンを、クローンシリンダー(Corning)を使用して単離した。F76のトランスフェクションから生じたクローンについては、異なる方針を適用した。クローンプールはトリプシンで処理し、75μg/mlのヒグロマイシンを含有するEXCELL VPROにおいて50mlのシェーカーチューブに移し、2週間の浮遊培養の後、2000個の生細胞を12mlのクローンマトリックス(Genetix、英国)と混合し、6ウエルプレート(Greiner)に播種し(2ml/ウエル)、自動化されたコロニー選択(clonepixFL、Genetix、英国)に供した。NC5T11puro#8から生じるクローンには、#10〜#21の番号を与えた。NC5T11から生じるクローンには、#34〜#45を与えた。pEF2PIXをトランスフェクションしたクローンはNC5T11PIXA〜NC5T11PIXEと名付けた。クローンをPCRによってそれぞれのベクターの存在について調べた。プライマー1及びプライマー2を使用する最初の試験を図6に示す。陽性シグナルを示すすべてのクローンはExCell VPROにおける増殖にシフトした。再度の適合化は、4.5×106個の細胞をT25フラスコにおいて5mlのEXCEL VPROに直接播種することによって行った。静置培養で6週間後、細胞は、12mlの総量でEXCELL VPROにおいて6×104細胞/mlの播種密度で50mlのポリプロピレンシェーカーチューブ(TPP、スイス)に移し、1cmの半径及び160rpmの速度による回転に供した。クローン#10、クローン#12、クローン#14(NC5T11puro#8pIXRARA)、ならびに、クローン#34、クローン#43(NC5T11pIXRARA)、ならびに、クローンNC5T11PIXB、クローンNC5T11PIXCは、剪断ストレス下でのそれらの非常に高い生存率のために選んだ。クローン#34、クローン#43及びクローンNC5T11PIXCは再度クローン化し、組み込まれたDNAの安定性について分析した。安定性は、PIXとE1Bとの遺伝子比率を測定して評価した。これは、E1A+E1B及びpIXRARAが別個のトランスフェクションで導入されたが、E1遺伝子が導入されて、2年以上の選択の不在下で維持されることから、安定的に組み込まれていると見なされるからである。ゲノムDNAは、2つの時点、すなわち、hyg選択を止めた直後(初期)、選択圧の不在下で2ヶ月後(後期)で、選択された細胞クローンから単離した。PIX及びE1BのDNAレベルは2つのDNA濃度でのリアルタイムPCR(ABI 7000、CYBR Green)によって測定した。この評価の例を図7に示す。ベクターpEF2PIXRARAは、E1Bに対して約0.4コピー〜0.6コピーのPIXRARAで、#34及び#43のサブクローンにおいて安定的に維持される。クローンNC5T11PIXCは元々、E1Bに対して4コピーのpIXを含有する。この数字は実験の経過期間中に2倍低下する。
【0049】
実施例6:NC5T11pIX−RARAのレチノイン酸依存的増殖
レチノイン酸(RA)は細胞分化の誘導因子である。分化には典型的には、低下した細胞増殖が伴う。RAに対する応答はレチノイン酸受容体α(RAによって活性化された転写因子)の発現に依存する。RAは、形質転換された表現型を増殖停止によって逆戻りさせる、PML(前骨髄球性白血病)に対する顕著な作用を有する。
【0050】
図8に示されるように、6μg/mlの濃度でのRA処理は、NC5T11又はα−1−アンチトリプシン発現クローン(NC5T11puro#8)のいずれかの増殖に対する効果を何ら有しなかった。しかしながら、クローン#14(NC5T11puro#8pIXRARA)及びクローン#34(NC5T11pIXRARA)の増殖は、5%のFCSを含むDMEM/F12における接着培養での5日間の6μg/mlによる処理によって停止した。
【0051】
実施例7:PIXRARAはインターフェロンによるウイルス複製の阻害を妨げる
NC5T11細胞及びNC5T11#34細胞は、DMEM/F12/5%FCSにおいて8.0×105細胞/ウエルで6ウエルプレートに播種した。12時間後、インターフェロンβ(Seronoのrebif44)を1IU/ml及び8IU/mlの濃度でウエルに加えた。30分後、NC5T11及びNC5T11#34の両方のインターフェロン処理細胞及び対照細胞に脳心筋炎ウイルス(EMCV)を0.004の感染多重度(MOI)で感染させた。24時間後、培養物を集め、細胞を破砕するために−80℃で凍結した。この懸濁物を解凍し、800xgによる10分間の遠心分離によって清澄化した。溶解物をA549細胞でのプラークアッセイによるウイルス力価測定に供した。簡単に記載すると、A549細胞を24ウエルプレートに播種し、増殖させてコンフルエンシーに到達させ、10倍〜2×108倍まで希釈された清澄化溶解物と30分間インキュベーションし、RPMI/10%FCSにおける0.2%の低ゲル化アガロースタイプVIIにより覆い、37℃で24時間インキュベーションした。アガロース層を吸引し、細胞をPBSにおける2%グルタルアルデヒドにより20分間、20℃で固定処理し、水により洗浄し、50%エタノールにおける1%クリスタルバイオレット溶液と室温で30分間インキュベーションして、ウイルスプラークを計数した。図9に示される結果は、EMCVの複製がNC5T11細胞ではかなり有効でないこと、及びEMCVの複製は感染前のインターフェロン処理に対して非常に感受性であることを明らかにする。8IU/mlでは、生存ウイルスを培養物から回収することができない。対照的に、NC5T11#34におけるウイルス複製はインターフェロン処理によってほんのわずかに影響されるだけである。その上、外因性IFNの不在下でさえ、より高い力価がNC5T11#34については認められる。多くのワクチン株が、無傷のIFN経路を有する産生細胞においてIFN応答を誘導するので、示された現象は典型的なワクチンプロセスをたどり、産生プロセスにおいて好ましい低い感染多重度(MOI)での感染は、初めに感染しなかった細胞のウイルス複製の阻止をもたらすIFN分泌を引き起こし得る。従って、PIXの発現は、低いMOIにより出発する高力価ウイルス産生を可能にする。
【0052】
実施例8:pIX−RARAによるタンパク質産生の刺激
α−1−アンチトリプシンだけでなく、ベクターF67を有するNC5T11puro#8pIXRARAを、振とう機回分アッセイで、α−1−アンチトリプシンを産生するその能力をスターターであるクローンNC5T11puro#8と比較した。細胞は12mlの総量で50mlのポリプロピレンシェーカーチューブ(TPP、スイス)においてEXCELL VPRO(JRH Biosciences)に6×104細胞/mlで播種し、1cmの半径及び160rpmの速度による回転に供した。培養は22日目まで続けた。浮遊細胞のほかに、チューブ壁に接着している細胞クラスターのリングが形成された。このようなクラスターにおける細胞は、プロセス期間中を通して70%を越える生存率を保持していた。トリプシン又はアクターゼ(Acutase)(PAA)によるこのようなクラスターの解離は成功しなかったので、増殖キネティクス及び最大細胞密度は測定されなかった。サンプルは、9日目、13日目及び22日目で採取し、力価は、α−1−アンチトリプシンのELISAを使用して測定した。結果を図10に示す。
【0053】
実施例9:pIXを発現するアヒル網膜細胞の作製
初代アヒル網膜細胞に由来し、規定された危険性ガイドラインに従って不死化された細胞株CRは他に記載されている(特許出願WO05042728、プラスミド60Eをトランスフェクションした網膜細胞)。この細胞は、5%のウシ胎児血清(Biochrom AG、12213 Berlin、ドイツ)に補充されたDMEM:F12培地(Invitrogen、Carlsbad、CA 92008、米国)において39℃及び7.5%CO2で培養した。継代培養のために、細胞を短時間、TrypLE Express(Invitrogen)で処理した。プラスミド76F(pEFPIX1)は、制限酵素SspI及びXmnI(両方ともNew England Biolabs(Beverly、MA 01915−5599、米国)から得られる)で線状化し、アフィニティークロマトグラフィー(Qiagen(40724、Hilden、ドイツ)から得られるゲル抽出キット)によって400ng/μlに精製した。精製されたDNAの5μl(2μg)をEffectene試薬(Qiagen)とともにCR細胞にトランスフェクションした。DNAは16μlのEnhancer及び200μlのEC緩衝液と混合した。室温で2分後、18μlのEffecteneを加え、リポソーム形成を室温で10分間行わせた。トランスフェクションミックスを、前日に6ウエルプレートにおいて80%のコンフルエンシーで播種された細胞の上の1mlの培養液に加えた。高いトランスフェクション効率はpEGFP−N1(Clontech、Palo Alto、CA 94303−4230、米国)の並行したトランスフェクションにより確認された。
【0054】
pIXをトランスフェクションした培養物をトランスフェクション後3日でT75フラスコに拡大し、選択を25μg/mlのヒグロマイシンB(Invitrogen)で開始した。培地を1週間に1回取り替え、ヒグロマイシンBを50μg/mlに上げた。3週間後、合計で4つの大きな増殖巣が生存し、これらをT25フラスコに再度播種した。細胞をTrypLEにより剥離させ、10分間の100×gにより集め、新鮮な培地に再懸濁し、T25フラスコに入れた。
【0055】
トランスフェクション後4週間で、T25フラスコにおける健全なサブコンフルエント培養物に由来する細胞を、TrypLEを用いて5mlのDMEM:F12/5%FCSの中に剥離させた。その2mlを培地#63032−1000M(JRH Biosciences、KS 66215、米国)(浮遊培養物の維持のために意図された、動物由来成分を含まない培地)と混合した。ヒグロマイシンBを50μg/mlに加えた。ゲノムDNAを2mlの培養物から単離し、V293及びV294のプライマーを用いたpIX導入遺伝子に対するPCRに供した。陰性対照は、DNAを伴わない並行反応によって提供し、陽性対照は、プラスミド76Fを伴う並行反応によって提供した。図11(左パネル)における予想されるPCR産物は、pIX導入遺伝子がCR細胞に安定的に挿入されていることを明らかにする(この細胞は今後、「CRpIX」と呼ぶ)。
【0056】
PIXタンパク質の発現をウエスタンブロッティングによって確認した。6×105個の細胞を(20mM Tris(pH7.4)、300mM NaCl、1% デスオキシコール酸Na、1% Triton(登録商標)X−100、0.1% SDS)において煮沸することによって破砕し、タンパク質をゲル電気泳動によって分離し、その後、ナイロンメンブランに転写した。PIXは一次抗体pIX(W.Seidel博士(Ernst−Moritz−Arndt−Universitaet、Greifswald、ドイツ)からの譲渡物)により検出し、その後、一次抗体に対する、アルカリホスファターゼにより標識された二次抗体と反応させた。
【0057】
図11(右パネル)における予想サイズのシグナルにより、CRpIX細胞におけるpIXの発現が確認される。並行した反応で調製された293細胞に由来する陰性対照にはシグナルが存在しなかった。
【0058】
細胞をさらに2回の継代培養のために培地#63032−1000Mにおいて培養し、その後、さらに2回の継代培養のために培地#14561−1000M(これもまた、JRH Biosciencesから得られる)に移した。すべてのJRH培地には、1×Glutamax I(Invitrogen)及び100μg/mlのヒグロマイシンBが補充された。
【0059】
培地#14561−1000Mにおける2回目の継代培養の場合、少量(5mlの浮遊培養物のおよそ2%)をDMEM:F12/FCS培地に完全に再懸濁し、直径15cmのペトリディッシュに入れた。6日後、11個の増殖巣を12ウエルプレートの個々の穴に取り出し、DMEM:F12/FCS培地で維持した。クローン移送のために、培地を吸引し、クローニング用ディスク(Sigma、MO、米国)をTrypLEに浸け、少しの間、直接クローンにアプライし、その後、培地で満たされた穴に移した。個々のクローンはさらなる実験及び増殖能の測定のために拡大した。
【0060】
安定的にトランスフェクションされた細胞におけるPIXの維持を分析するために、ゲノムDNAを、QIAmp DNA血液キット(Qiagen)を用いて1×106個の細胞から単離し、E1B分子及びPIX分子の数を、SYBR Green(ABI)検出化学反応によるABI 7000 TaqMan反応で25ng及び50ngのゲノムDNAにおいて測定した。定量のために使用したプライマーは、E1BについてはgTggTTgCTTCATgCTAgTg(配列番号13)及びTCTTCAgCAggTgACAgTTg(配列番号14)であり、PIXについてはACCTACgAgACCgTgTCTg(配列番号15)及びgAgCCgTCAACTTgTCATC(配列番号16)であった。E1Bは独立的に導入され、細胞が生存するために維持されなければならないので、この遺伝子は、PIXのコピー数及び遺伝子発現の強さを規格化するための内部マーカーとして役立つ。
【0061】
図12は、PIX導入遺伝子が、選択圧の不在下でさえ、CR浮遊細胞において安定的に維持されることを明らかにする。図12はまた、PIX陽性細胞が増殖速度の低下を受けることを明らかにする。本発明者らは、PIX発現プラスミドを安定的にトランスフェクションされた本発明者らの細胞(トリ細胞及びヒト細胞)のすべての細胞の増殖が、低下することを一貫して認めた。このことは、宿主細胞の生化学に対するPIXの影響を明らかにする。さらに、本発明者らは、コンフルエントな層への増殖を避けるための、PIX陽性の接着性CR細胞における傾向(増大した接触阻害)を認めた。
【0062】
実施例10:pIXを発現するアヒル体節細胞の作製
細胞株CSは胚の体節に由来し、特許出願WO05042728にもまた記載される。PIX陽性CS細胞の作製をCR系統についての上記手順と並行して行った。CRpIXに反して、浮遊培養物がCSpIXについては樹立されなかった。厳しい足場依存性がCS細胞の特徴である。浮遊状態で増殖しない細胞は、転移する能力がひどく損なわれているので、腫瘍形成性がほとんどないと見なすことができる。PIXタンパク質はCS細胞においてこの性質を変化させない。従って、このタンパク質は、多形質発現性ではあるが、形質転換表現型に影響を及ぼさないようである。この観察結果は、PIXがバイオ医薬プロセスにおいて安全に適用され得るという本発明者らの仮定を裏付けている。
【0063】
実施例11:CS細胞におけるMVA複製に対するPIXの影響
PIX発現のために安定的にトランスフェクションされたCS細胞、及び基準としての親のCS細胞を2×106細胞/穴で6ウエルプレートに播種し、翌日、MVAを0.1のm.o.i.で感染させた。CPEの進行における違いを記録するための写真を感染後48時間及び72時間で撮影した。感染後48時間での上清におけるウイルス収量、及び感染後72時間での全収量(溶解された細胞ペレットと合わせた上清)をミクロフォーカスアッセイで測定した。結果を図13に示す。CS細胞におけるPIXの存在は、親の基準細胞と比較したとき、感染後48時間ではCPEの開始を遅らせるようである。感染後72時間で、両方の培養物は完全に溶解される。このことは、CPEの程度における違いがCS.PIX集団におけるMVA不応性細胞及びMVA感受性細胞の混合物によるものでないことを示唆する。
【0064】
本発明者らが知る限り、PIX陽性細胞はどれも、同族のアデノウイルスとは異なるウイルスに対してはこれまで一度も調べられていない。
【0065】
実施例12:CR細胞におけるMVA複製に対するPIXの影響
PIXタンパク質の正の影響はまた、CR細胞についても定量された。CS細胞に反して、CR細胞は浮遊状態に適合化される。浮遊培養物は多くの工業的適用のために好ましい。従って、本発明者らは、接着培養とは対照的に、そのようなシステムにおけるPIXの影響を明らかにした。
【0066】
CR細胞については、PIX支持的な影響がCS細胞の場合ほど顕著でなく、しかし、本発明者らはMVAについてのより大きい力価を一貫して認めている。MVAの収量が一連の実験で最適化され、中位の細胞密度において感染後48時間で最大になることが見出された。図14は、浮遊クローンCR.HS(これは、非常に大きいMVA収量を有する細胞株として数個のクローンから選択された)、及びPIX(+)細胞株CR.MCXの比較を示す。横座標はm.o.i.(それぞれ、0.01、0.05又は0.1)を示し、縦座標はバーストを示し、バブルのサイズが細胞密度(それぞれ、8×106細胞/ml、2×106細胞/ml又は0.8×106細胞/ml)を示す。バーストは産出ウイルス(又は収量)対投入ウイルス(細胞数及びm.o.i.に依存する接種量)の比率であり、従って、増幅効率の大きさである。すべての形態において、PIX(+)細胞株は成績においてPIX(−)系統を上回っている。
【0067】
実施例13:PIXの核排除
PIX−GFP融合遺伝子は、生細胞におけるPIXタンパク質の分布を視覚化するために、また、利用可能な抗体の弱い結合活性を克服するために作製した。プラスミド76F(pEFPIX1)はAccI及びDraIの制限酵素で処理し、末端をKlenowポリメラーゼで平滑化した(すべてがNew England Biolabs(Beverly、MA 01915−5599、米国)から得られる)。完全なバンド形成パターンの中から、PIXのコード配列を含有する447bpの所望されるフラグメントをアガロースゲル抽出によって単離した(Qiagen(40724 Hilden、ドイツ)から得られるゲル抽出キット)。DraI制限酵素は配列「ttTAAa」を認識して、最後のチミジン残基の後を切断する(この場合、中央の「TAA」トリプレットはPIXオープンリーディングフレームの停止コドンである)。従って、この447bpフラグメントは停止コドンを有さない。このフラグメントを、SmaI(これもまた、New England Biolabsから得られる)により開環したプラスミドpEGFP−N1におけるEGFP遺伝子に融合することにより、PIXの後にEGFPが続く連続する融合遺伝子を作製する。得られたプラスミドをp9GFPと名付けた。発現した融合タンパク質は本書ではPIX−GFPと名付けられる。
【0068】
CS細胞及びCR細胞にp9GFPをトランスフェクションし、安定的なPIX−GFP発現のために300μg/mLのジェネテシン(Invitrogen)により選択した。異なるPIX−GFP発現の2つの集団が2週間以内に認められた。一方の集団は、通常、PIX−GFPの2個〜5個の明るいスポットを細胞質に有し、もう一方の集団は、細胞質におけるPIX−GFPのより均一な発現、及び核に近い領域におけるGFPシグナルのより散らばった蓄積を有した。両方の場合において、細胞の核は暗い領域として現れた。このことは、キメラタンパク質が核に進入しないか、又は進入しても、非常に少ないことを示唆する。CRpIXGFPにおける両タイプのクローンについての代表的な例を図15に示す。
【0069】
この結果と一致して、本発明者らは、検索アルゴリズムNetNES(Cour et al., Protein Eng. Des. Sel., 17、527-536 (2004))をPIXの一次配列に適用することによって、PIXのオープンリーディングフレームにおける核外移行配列を見出した。このプログラムによって同定されたNESは313−GCACAATTGGATTCTTTGACCCGGGAACTT−342(配列番号17)(翻訳されたとき、AQLDSLTREL;配列番号18)である。本発明者らが知る限り、そのようなシグナルがPIXタンパク質において記載されていることは初めてである。逆に、核局在化配列(NLS)はPIXについては文献に記載されず、また、本発明者らはそのようなシグナルを(例えば、コロンビア大学によってhttp://cubic.bioc.columbia.edu/cgi/var/nair/resonline.plにおいて提供されるアルゴリズムを使用して)検出することができない。
【0070】
従って、本発明者らのアヒル細胞におけるPIX−GFPの細胞質局在化はPIXの一次配列と一致している。
【0071】
実施例14:PIXのGFP融合改変体
PIX GFPの驚くべき核排除をさらなるPIX融合構築物により調べた。PIX−GFP−NLS発現プラスミドは、合成オリゴヌクレオチドのi185及びi186を挿入することにより上記のp9GFP構築物に由来した。これらのオリゴは80℃で5分間変性させ、室温に徐々に冷却することによって10mM MgCl2中でアニーリングさせて、
5’−GATGTACAAAGATCCGAAGAAGAACCGCAAAGGTTAACGCGGCCGCAC−3’(配列番号19)
3’−CTACATGTTTCTAGGCTTCTTCTTGGCGTTTCCAATTGCGCCGGCGTG−5’(配列番号20)
を得た。この二本鎖オリゴヌクレオチドをBsrGI及びNotIで消化し、p9GFPの同じ部位に挿入した。翻訳されたとき、挿入は、シミアンウイルス40のNLSに類似するNLS配列(PKKNRK;配列番号21)をPIX−GFP融合タンパク質に付加する。この挿入物とともに導入された新しいHpaI部位が、成功したクローニングを確認するための診断マーカーとして役立つ。得られたプラスミドはp9GFP NLSと呼ばれ、発現したタンパク質PIX−GFP−NLS及びタンパク質PIX−GFP−NLSをコードするオープンリーディングフレームは配列番号23及び配列番号22にそれぞれ示される。
【0072】
GFPタグ化PIX−RARA融合タンパク質は、プライマーEBR44A(5’−GGATCCTTCCTCCTCGGGCGGGTGT−3’;配列番号24)及びV293(5’−AACCAGCGCTACCATGAGCACCAACTCGT−3’;配列番号25)、ならびにテンプレートしてのプラスミド#67F(pEF PIX RARA NEO)を用いた、PIX−RARAを含有するフラグメントのPCR増幅によって作製した。1926bpのアンプリコンをポリヌクレオチドキナーゼで処理し、EcoRIで線状化され、かつKlenow酵素で平滑化されたpEGFP−C2(Clontech)に挿入した(すべての酵素が、New England Biolabsから得られる)。得られたプラスミドをp9 GFP RARAと名付け、発現したタンパク質をPIX GFP RARAと名付ける。
【0073】
図16は、一過性でトランスフェクションされたCHO細胞における様々なGFPタグ化タンパク質の細胞内分布を示す。
【0074】
実施例15:PIX及びインターフェロン
多くのウイルスが、TLR−3(toll様受容体3)を介して生得的な細胞性免疫応答を誘導する。TLR−3は二本鎖RNA(ウイルス複製の顕著な特徴的パターン)を認識する。TLR−3の機能には、NFkB及びI型インターフェロンの活性化がある(Alexopoulou et al., Nature、413、732-738 (2001))。インターフェロンは宿主細胞における抗ウイルス状態を媒介する。人工的な二本鎖RNAであるポリI:ポリC(ポリイノシン酸−ポリシチジル酸、Sigma)を介したインターフェロン誘導の影響を調べた。驚くべきことに、CR細胞及びCRpIX細胞はポリI:ポリC感受性をほとんど示さなかったが、CS細胞はこの誘導因子に対して明らかに応答した。予想外ではあったが、PIX陽性のCS細胞が、親のCS細胞よりも速く、また、親のCS細胞よりも低い濃度で応答した(図17)。本発明者らが知る限り、PIXとインターフェロンとの関係は、現在の文献には記載されていない。
【0075】
MVAについてのPIX支持的な効果は、CS細胞の方がCR細胞よりも強く、また、CS細胞が、CR細胞よりも良好に二本鎖RNA代用物に対して応答した。MVAがインターフェロンを誘導すること、及びこのウイルスにはまた、インターフェロンの応答を緩和するタンパク質が備わることは公知である。従って、CRp9GFP細胞及びCSp9GFP細胞におけるMVAに対するポリI:ポリC誘導因子の効果が明らかにされる。図18は、MVA感染細胞が、非感染の対照よりもポリI:ポリCによる損傷を受けることが少ないことを示唆する。この観測結果は、MVAが細胞性の生得的な免疫応答の誘導及び妨害の両方を行うという事実と一致し、また、トリ細胞におけるヒトアデノウイルス由来のPIXが、非常に弱毒化されたポックスウイルスの抗ウイルスタンパク質と共同して、後者ウイルスの収量を増大させるという本発明者らの予想外の観測結果と関連する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】細胞株NC5T11の過程(history)。A:無血清条件下で増殖させた初代細胞のニューロスフェア。B:5%のFCSを含むDMEM/F12で増殖させた初代細胞の単層。C:p79をトランスフェクションした後2週間での初代増殖巣。矢印は、初代細胞と不死性(immortal)細胞との境界を示す。D:5%のFCSを含むDMEM/F12における不死化(immortalized)細胞の均質な接着培養物。E:EXcell VPROでのシェーカーチューブにおけるNC5T11の浮遊培養物。
【図2】NC5T11においてE1A及びE1Bを検出する免疫蛍光。メタノールによる固定処理の後、細胞を、E1A及びE1B 55kそれぞれに対するラット抗体で処理し、その後、テキサスレッドコンジュゲート化抗ラット抗体で処理した。図2に示されるように、サンプルにおけるすべての細胞が、E1Aについて典型的な核染色、及びE1Bについての細胞質染色を示した。メタノールによる固定処理の後、細胞を、E1A及びE1B 55kそれぞれに対するラット抗体で処理し、その後、テキサスレッドコンジュゲート化抗ラット抗体で処理した。ここで示されるように、サンプルにおけるすべての細胞が、E1Aについて典型的な核染色、及びE1Bについての細胞質染色を示した。
【図3】選択されたaatクローンの比産生能。C55をトランスフェクションし、ピューロマイシンにより選択したNC5T11の細胞クローンを7×104個の細胞で12ウエルプレートに播種し、細胞数及びaat力価を、播種後1日目、2日目及び3日目で測定し、1日あたりの最大細胞比産生能を計算した。
【図4】振とう機での回分培養におけるNC5T11puro#8の発現分析。細胞を50mlのポリプロピレンシェーカーチューブ(TPP、スイス)において6×104細胞/mlで12mlのEXCELL VPROに播種し、1cmの半径及び160rpmの速度による回転に供した。200μlのサンプルを、4日目、7日目、9日目、11日目、15日目、18日目及び21日目で採取した。細胞密度及び生存率を、血球計を使用して、トリパンブルーによる染色の後で測定した。
【図5】クローンプールにおけるPCRによるpIX−RARA cDNAの検出。pIXRARA遺伝子を有するクローンプールを、F67のトランスフェクション及びヒグロマイシン選択によってNC5T11puro#8から作製した。RNAをRNA抽出キット(Machery Nagel、ドイツ)を使用して抽出し、cDNAをAMV逆転写酵素(Invitrogen)を使用して合成した。pIXフラグメントだけ又は完全なpIXRARA遺伝子についてのcDNAをプライマー1及びプライマー1及びプライマー164によりそれぞれ増幅した。
【図6】NC5T11puro#8及びNC5T11(#34、#35、#36、#37、#38)のヒグロマイシン抵抗性サブクローンにおける融合タンパク質の一部としてのpIX配列の、PCRによる検出。DNAは、6つのウエルで増殖させた細胞クローンから、SDS中での溶解と、それに続くフェノール抽出及び沈殿化によって、単離した。DNAは、プライマー1及びプライマー2により28サイクルで増幅した。
【図7】安定的にトランスフェクションされたNC5T11におけるpIXRARA遺伝子及びpIX遺伝子の安定性をE1Bについて測定した。E1A+E1B及びpIXRARAを別個のトランスフェクションで導入した。E1遺伝子は2年以上選択の不在下で維持されたので、安定的に組み込まれていると見なされる。ゲノムDNAを、2つの時点、すなわち、hyg選択を止めた直後(初期)、選択圧の不在下で2ヶ月の後(後期)で、選択された細胞クローンから単離した。PIX及びE1BのDNAレベルをリアルタイムPCRによって測定した。
【図8】NC5T11及びNC5T11puro#8のpIXRARA組換えクローンにおけるRA処理によって誘導される増殖遅延。細胞は、6μg/mlのレチノイン酸の存在下又は不在下、2×105個で6ウエルプレートに播種した。増殖遅延を、NC5T11においてではなく、RA処理されたクローン#12及びクローン#34において示す写真を、4倍の倍率での位相差画像化を使用して、播種後4日で撮影した。
【図9】PIXRARAはインターフェロンによるウイルス複製の阻害を妨げる。NC5T11細胞及びNC5T11#34細胞のうち、インターフェロンβにより処理された細胞に対し、EMCV(インターフェロン感受性ウイルス)を0.004のMOIで感染させた。細胞溶解物をA549細胞でのプラーク形成による力価測定に供した。
【図10】ベクターC55からα−1−アンチトリプシンを発現する細胞株NC5T11puro#8、及びベクターF67(pEFpIX−RARA)をC55に加えて有する細胞株NC5T11puro#8のサブクローン(#10、#12、#14)の発現分析。細胞を、12mlの総量で、50mlのポリプロピレンシェーカーチューブ(TPP、スイス)において6×104細胞/mlでEXCELL VPRO(JRH Biosciences)に播種し、1cmの半径及び160rpmの速度による回転に供した。
【図11】アヒルの網膜CR細胞におけるPIXの発現。左パネル:pIX細胞のゲノムDNAにおけるPIX遺伝子に対するPCR反応。ゲルローディング(左から右に):1kbマーカー(Invitrogen); CRpIXからのゲノムDNAに対するPCR;テンプレート非含有対照;CRpIXのトランスフェクションで使用されたプラスミドを用いた陽性対照。右パネル:CRpIX細胞におけるpIXタンパク質を検出するためのウエスタンブロット。レーン1:293細胞;レーン2:CRpIX細胞におけるpIXタンパク質。
【図12】アヒルの網膜細胞におけるPIX導入遺伝子の安定な維持。上段左パネル:MCX及びDXSは、並行して、また、選択を伴うことなく、3ヶ月以上培養されたCRpIXクローンの独立したアリコートである。3ヶ月後、TaqMan PCRを使用して、MCX及びDXSにおけるE1B導入遺伝子及びPIX導入遺伝子のコピー数を計数した。E1B導入遺伝子は、PIXに関係なく維持されるので、これら2つの遺伝子の比率は、PIX導入遺伝子の維持を示すものである。この比率は、MCXとDXSとの間において変化しなかった。その上、E1B mRNAに対するPIX mRNAの比率もまた変化せず、PIX mRNAは、E1B mRNAを上回っていた。このことはPIXの発現を示している。右パネル:MCX細胞及び親の(PIX陰性)CR.HS細胞を、2週間にわたってヒグロマイシン選択圧の存在下又は不在下で培養した(x軸上の黒線によって示される)。様々な時点でゲノムDNAを単離し(「A」、「B」及び「C」によって示される)、TaqMan定量に供した(下段左)。親の細胞はヒグロマイシンによって死んだが、MCX細胞は生存した。導入遺伝子の比率は一定のままであった。このことは、PIX導入遺伝子が、選択圧の存在下でもまた、安定に維持されることをさらに示している。親の細胞についての倍加時間は約32時間であるが、MCX細胞については41時間にすぎない。
【図13】CS細胞におけるMVA複製に対するPIXの効果。CS細胞及びCSpIX細胞にMVAを感染させ、CS細胞及びCSpIX細胞を、感染後48時間及び72時間でMVA複製についてアッセイした。MVAの収量は、PIX陽性のCS細胞の方が著しく高かった。また、位相差顕微鏡像において明白であるように、細胞変性作用が、48時間において、CSpIX細胞については遅れているようであった。しかしながら、両方の培養物は、感染後72時間で完全に溶解されることが明らかであるように、類似する程度にウイルスに対して感受性である。
【図14】CR細胞におけるMVA複製に対するPIXの効果。浮遊状態でのCR細胞及びCRpIX細胞を、様々な多重度による、様々なシード細胞密度での感染に供した。MVAの収量を感染後48時間でアッセイした。MVAの収量がy軸に示される。バブルのサイズはシード細胞密度を示す。中塗りのバブルはCRpIX細胞についての値を示し、白抜きのバブルは親細胞についての値を示す。すべての形態において、PIXはMVAの増幅速度において明らかな増大をもたらす。
【図15】アヒル細胞におけるPIX−GFPの細胞内分布。GFPタグ化PIXが、細胞質での少数の明るいスポット、及び大部分が核を除いて散らばった細胞質染色で現れる。他のクローンは、よりはっきりした散らばった細胞質染色、及び核のすぐ外側でのより強い蓄積を示す。
【図16】CHO細胞におけるPIX−GFP改変体の細胞内分布。細胞内におけるPIX分布の誘導された変化を調べるために、核局在化部位(NLS)の挿入、及びレチノイン酸受容体α(NLSを既に含有する細胞タンパク質)への融合を含む、様々な融合改変体を作製した。PIX−GFP改変体のための発現プラスミドを一過性でトランスフェクションしたCHO細胞を示す。
【図17】PIXの存在下でのインターフェロン誘導の影響。CSpIX細胞及びCRpIX細胞をポリI:ポリC(I型インターフェロン応答の公知の誘導因子)で処理し、親の細胞と比較した。CSpIX細胞は、ポリI:ポリCに対し、CS細胞よりも大きい感受性で反応した。CRpIX細胞及びCR細胞は、同程度で、かつCS細胞よりも低い程度に反応した。
【図18】PIX−GFPの存在下でのMVA感染及びインターフェロン誘導の効果。図に示されるように、CSp9GFP細胞及びCRp9GFP細胞をポリI:ポリCで処理し、これらの細胞にMVAを0.1のM.O.I.で感染させた。CS由来の細胞がインターフェロン誘導に対してより強く反応した。驚くべきことに、明るいPIX体は、両方の細胞株において誘導又は感染のとき、数が低下するようであり、これに対して、PIX−GFPの全体的なシグナル強度が増大する。その上、ポリI:ポリCによる誘導の効果が、処理後22時間で依然として接着しているCS細胞がより多数であることによって示されるように、MVAによる並行感染のときには改善される。
【配列表フリーテキスト】
【0077】
配列番号1〜2:アデノウイルスのpIXタンパク質
配列番号3〜4:融合タンパク質pIX−RARA
配列番号4:融合タンパク質pIX−RARA
配列番号5:Ad5 E1A+E1B
配列番号6〜11:プライマー
配列番号12:「短い」ヒト翻訳伸長因子2プロモーター
配列番号13〜16:プライマー
配列番号17〜18:NES
配列番号19〜20:NLSをコードする合成オリゴヌクレオチド
配列番号21:NLS
配列番号22〜23:融合タンパク質pIX−GFP−NLS
配列番号24〜25:プライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノウイルス以外の標的ウイルスあるいは1又はそれ以上の標的タンパク質を調製する方法であって、
(a)前記ウイルス、前記ウイルスをコードする核酸配列を有するベクター、あるいは前記1又はそれ以上の標的タンパク質をコードする核酸配列を有するベクターを宿主細胞に感染させるか又はトランスフェクションすることによって得ることができる発現細胞であって、異種調節タンパク質としてのアデノウイルスPIX又はその機能的改変体をコードする遺伝子をそのゲノムに安定的に組み込まれて有し、かつ前記調節タンパク質又はその機能的改変体を安定的に発現する発現細胞を培養すること、及び
(b)標的ウイルス又は標的タンパク質を単離すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
(i)前記異種調節タンパク質が転写及び/又は細胞増殖を調節し、前記調節タンパク質を含有しないウイルスの産生において、及び前記調節タンパク質又はその機能的改変体とは異なるタンパク質の産生において細胞の産生能を高める;及び/又は
(ii)前記異種調節タンパク質の前記機能的改変体が融合タンパク質であり、ただし、好ましくは、前記融合タンパク質は、本明細書中で定義されるアデノウイルスPIX調節タンパク質を含む少なくとも1つの第1のドメインと、アデノウイルスpIXの活性又は細胞内分布を調節又は拡大する少なくとも1つの第2のドメインとを含む;及び/又は
(iii)上記(ii)における前記少なくとも1つの第2のドメインが、転写調節因子(好ましくは、前記転写調節因子は、レチノイン酸受容体αを含む転写因子である)として作用するタンパク質又はペプチドを含み、マーカータンパク質(好ましくは、前記マーカータンパク質は、GFP、DsRed及びその改変体を含む蛍光マーカーである)であるか、又はLacZを含む酵素であるか、又はNLSを含む輸送ペプチドである;及び/又は
(iv)上記(ii)及び(iii)における前記第1及び第2のドメインが直接又はペプチドリンカーを介して互いに共有結合により結合する;及び/又は
(v)前記異種調節タンパク質又はその機能的改変体が、少なくとも1pg/μg細胞タンパク質の量で、好ましくは、少なくとも10pg/μg細胞タンパク質の量で前記宿主細胞及び前記発現細胞において発現する;及び/又は
(vi)前記異種調節タンパク質又はその機能的改変体が安定な同種プロモーター又は異種プロモーターの制御下にあり、ただし、好ましくは、前記プロモーターは構成的な細胞プロモーターであり、最も好ましくは、ヒトのトランスロケーション伸長因子2プロモーターである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異種調節タンパク質が、
(i)アデノウイルスPIXであり、好ましくは、配列番号2に示される配列を有するタンパク質である;又は
(ii)PIXとレチノイン酸受容体αとの融合タンパク質であり、好ましくは、配列番号4に示される配列を有する融合タンパク質である;又は
(iii)PIXとGFPとの融合タンパク質であって、NLS配列を含有する融合タンパク質であり、好ましくは、配列番号23に示される配列を有する融合タンパク質である;又は
(iv)PIXとGFPとの融合タンパク質、又はPIXと単離されたNLS配列との融合タンパク質である、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(i)前記宿主細胞及び発現細胞が、哺乳動物細胞及びトリ細胞を含む脊椎動物細胞であり、ただし、前記哺乳動物細胞は、好ましくは、ヒト細胞、マウス、ラット、ハムスターの細胞を含む齧歯類細胞などであり、最も好ましくは、ヒト胎児脳細胞(例えば、胎児ニューロン細胞及び胎児グリア細胞など)を含むヒト脳由来細胞、マウスのNSO細胞又はSp2/0細胞、BHK細胞又はCHO細胞であり、前記トリ細胞は、好ましくは、アヒル、ニワトリ、ウズラ又はガチョウの細胞であり、最も好ましくはアヒル網膜由来細胞又はアヒル体節由来細胞である;及び/又は
(ii)前記宿主細胞及び発現細胞が初代細胞又は以前に不死化された細胞に由来する;及び/又は
(iii)前記宿主細胞及び発現細胞が、アデノウイルスのE1タンパク質、好ましくは、マストアデノウイルスC群5型のE1タンパク質を含むさらなる不死化(ウイルス)遺伝子を有し、最も好ましくは、前記細胞は、配列番号5に示されるアデノウイルスのE1A遺伝子及び/又はE1B遺伝子を有する;及び/又は
(iv)前記細胞が、機能的な配列(例えば、選択マーカー配列、スプライスドナー/アクセプター部位、及び/又は、細胞において発現する標的核酸配列の組み込みを可能にするリコンビナーゼ認識配列など)をさらに有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(i)前記標的ウイルスが、野生型、変異ウイルス又は欠失ウイルス、低温適合ウイルス又は弱毒化ウイルス、ワクチン株、異種の遺伝子を有するウイルスベクター、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルス、ポックスウイルス(牛痘ウイルス(例えば、改変ワクシニアAnkaraなど)、鶏痘ウイルス又はカナリア痘ウイルスを含む)、及びアデノ随伴ウイルス(aav)など)から選択される;
(ii)前記1又はそれ以上の標的タンパク質が、抗体、組換えタンパク質(例えば、エリスロポイエチン、α−1−アンチトリプシン、血液凝固因子VIII、血液凝固因子IX及びインターフェロンなど)、ウイルス抗原(例えば、インフルエンザHA、インフルエンザNA、HBV−S、ヘルペスGタンパク質及び狂犬病Gタンパク質など)、及びペプチドホルモンから選択される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記宿主細胞及び発現細胞がヒト脳に由来し、好ましくはヒト胎児脳に由来し、最も好ましくはNC5T11細胞であり、前記細胞が、アデノウイルスPIX又はその機能的改変体をコードする核酸配列を異種調節タンパク質として有し、好ましくは、前記異種調節タンパク質が、配列番号1、配列番号3又は配列番号22に示される核酸によってコードされる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記宿主細胞がNC5T11#34細胞であり、前記発現細胞がNC5T11#34細胞に由来し、ただし、前記NC5T11#34細胞はDSMZにアクセション番号DSM ACC2744で寄託される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記宿主細胞及び発現細胞がトリ細胞であり、好ましくはアヒルの網膜又はアヒルの体節に由来し、前記細胞が、アデノウイルスPIX又はその機能的改変体をコードする核酸配列を異種調節タンパク質として有し、好ましくは、前記異種調節タンパク質が、配列番号1、配列番号3又は配列番号22に示される核酸によってコードされる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記宿主細胞がCR.PIX(17a11b)細胞であり、前記発現細胞がCR.PIX(17a11b)細胞に由来し、ただし、前記CR.PIX(17a11b)細胞はDSMZにアクセション番号DSM ACC2749で寄託される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の標的ウイルスあるいは1又はそれ以上の標的タンパク質を生産するための発現細胞。
【請求項11】
請求項6から9において定義される細胞である、請求項10に記載の発現細胞。
【請求項12】
請求項1から9又は請求項6から9のいずれか一項に記載の宿主細胞株に、ウイルス、前記ウイルスをコードする核酸配列を有するベクター、あるいは前記1又はそれ以上の標的タンパク質をコードする核酸配列を有するベクターをそれぞれ感染又はトランスフェクションすることを含む、請求項10又は11に記載の発現細胞を調製する方法。
【請求項13】
請求項6から9に記載の宿主細胞。
【請求項14】
適切な出発細胞に、前記調節タンパク質又はその機能的改変体を有するベクターをトランスフェクションすることを含む、請求項13に記載の宿主細胞を調製する方法。
【請求項15】
標的ウイルスあるいは1又はそれ以上の標的タンパク質を調製するための、請求項10又は11に記載の発現細胞の使用。
【請求項16】
アデノウイルスPIX調節タンパク質を含む少なくとも1つの第1のドメインと、転写調節因子として、及び/又は請求項2若しくは3に記載の細胞内標的化のためのシグナルとして作用するタンパク質又はペプチドを含む少なくとも1つの第2のドメインとを含む、融合タンパク質。
【請求項17】
請求項16に記載の融合タンパク質をコードする、ヌクレオチド配列。
【請求項18】
請求項17に記載のヌクレオチド配列を含む、ベクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2009−514544(P2009−514544A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539429(P2008−539429)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068234
【国際公開番号】WO2007/054516
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(505123882)プロバイオゲン アーゲー (4)
【Fターム(参考)】