説明

田植機の散布装置

【課題】苗載台上の苗マットの条間距離に応じて、容易にノズルの先端位置を変更し得る、作業性を向上させた田植機の散布装置を提供する。
【解決手段】後部に苗載台31を着脱可能に装着し、苗載台31の後方であって、苗載台31に架設したフレーム53と、フレーム53に固定した散布物ホッパー54と、散布物ホッパー54に繰出部55を介して苗載台31下部の各条ごとに設けたホース56aa,56baと、ホース56aa,56baの先端に取付けたノズル56ab,56bbとからなり、苗載台31上の苗マットの床土上に散布物ホッパー54の薬剤をノズル56ab,56bbを介して散布し、ノズル56ab,56bbは、苗マットの条間幅に対応して、苗載台31の左右方向に設置位置を変更自在とする位置変更手段60,60´,60´´を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載台上の苗マット載置部上に設置した苗マットの床土上に、散布物ホッパーの薬剤を、ノズルを介して散布する田植機の散布装置に関し、より詳細には、ノズルが、苗マットの条間幅に対応して、苗載台の左右方向に設置位置を変更自在とする位置変更手段を備える田植機の散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の田植機には、後部に着脱可能に装着した苗載台の後方に、フレームなどを介して、苗載台上における苗マットの床土上に、防虫剤を施薬する箱施用剤散布装置を備え、移植後の苗に害虫や葉イモチ、紋枯病などの発生を抑制するもの(特許文献1および特許文献2など)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−253009号公報
【特許文献2】特開2006−158380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような田植機の箱施用剤散布装置では、散布物ホッパーに接続されるホースをフレームに取付けて固定することで、そのホース先端に備えられるノズルの位置が決まってしまう。ここで、苗載台の苗マット載置部による苗マットの条間距離(条間隔)がメーカーによって異なるものがあり、この箱施用剤散布装置を、異なる条間距離を有する苗載台に取付けたり、あるいは箱施用剤散布装置と同じメーカーの苗載台であっても、条間距離が変更された場合などには、ノズルが各条の両端に位置せず、薬剤散布時に、各条内の床土上に薬剤が散布されない部分を生じるため、一部の苗が害虫により被害を被る恐れがあり、作業性および生産性が悪いという問題があった。
そこで、この発明の目的は、苗載台上の苗マットの条間距離に応じて、容易にノズルの先端位置を変更し得る、作業性を向上させた田植機の散布装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、前記苗載台の後方であって、前記苗載台に架設したフレームと、前記フレーム上に固定した散布物ホッパーと、前記散布物ホッパーに繰出部を介して前記苗載台下部の各条ごとに設けたホースと、前記ホースの先端に取付けたノズルとからなり、前記苗載台上の苗マット載置部上に設置した苗マットの床土上に、前記散布物ホッパーの薬剤を、前記ノズルを介して散布する田植機の散布装置において、前記ノズルは、前記苗マットの条間幅に対応して、前記苗載台の左右方向に設置位置を変更自在とする位置変更手段を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の田植機の散布装置において、前記変更手段は、前記ホースの内側固定部の周囲に複数設けた弾性ピンと、前記ホースの外側回動部の周囲に設けた複数の、前記弾性ピンを嵌入可能とする位置決め穴とからなることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の田植機の散布装置において、前記変更手段は、前記ホースの内側回動部に設けた突起と、前記ホースの外側固定部の周囲に設けた、前記突起に嵌合可能とし、上端をスライドレールで連通させた複数の位置決め溝とからなることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の田植機の散布装置において、前記変更手段は、前記ホースの固定部および回動部であって、一方の端部周囲に設けた複数の位置決め凹部と、他方の端部周囲に設けた複数の、前記位置決め凹部に緊合可能とする凸部と、からなり、前記位置決め凹部および凸部は、弾性部材で形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、苗載台の後方であって、苗載台に架設したフレームと、フレーム上に固定した散布物ホッパーと、散布物ホッパーに繰出部を介して苗載台下部の各条ごとに設けたホースと、ホースの先端に取付けたノズルとからなり、苗載台上の苗マット載置部上に設置した苗マットの床土上に、散布物ホッパーの薬剤を、ノズルを介して散布する田植機の散布装置において、ノズルは、苗マットの条間幅に対応して、苗載台の左右方向に設置位置を変更自在とする位置変更手段を備えるので、苗載台メーカーの違いや、条間距離の変更などによって、苗マットの条間距離が異なる場合でも、ノズルの先端位置を容易に変更でき、ノズルから苗マットの床土上に確実に薬剤を散布させることができる。従って、作業性を向上させた田植機の散布装置を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、変更手段は、ホースの内側固定部の周囲に複数設けた弾性ピンと、ホースの外側回動部の周囲に設けた複数の、弾性ピンを嵌入可能とする位置決め穴とからなるので、位置決め穴に弾性ピンを嵌入させることで、作業者は別途工具類を用いることなく、容易にノズル位置を変更することができる。従って、作業性を向上させた田植機の散布装置を提供することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、変更手段は、ホースの内側回動部に設けた突起と、ホースの外側固定部の周囲に設けた、前記突起に嵌合可能とし、上端をスライドレールで連通させた複数の位置決め溝とからなるので、該当する位置決め溝に突起を摺動させることで、作業者は別途工具類を用いることなく、容易にノズル位置を変更することができる。従って、作業性を向上させた田植機の散布装置を提供することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、変更手段は、ホースの固定部および回動部であって、一方の端部周囲に設けた複数の位置決め凹部と、他方の端部周囲に設けた複数の、位置決め凹部に緊合可能とする凸部とからなり、位置決め凹部および凸部は、弾性部材で形成したので、凸部を位置決め凹部に緊合することにより、変形させた位置決め凹部内で凸部を挟持固定させるため、作業者は別途工具類を用いることなく、容易にノズル位置を変更することができる。従って、作業性を向上させた田植機の散布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一例としての田植機の全体側面図である。
【図2】田植機の平面図である。
【図3】箱施用剤散布装置を備える苗載台の背面図である。
【図4】散布物ホッパーを含むユニットの拡大斜視図である。
【図5】弾性ピンおよび位置決め穴からなる位置変更手段を備える搬送部の構造図である。
【図6】ノズル設置位置の変更を示す説明図である。
【図7】突起および位置決め溝からなる位置変更手段を備える搬送部の側面図である。
【図8】弾性部材で形成した位置変更手段を備える搬送部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、この発明の一例として、田植機の全体側面図、図2は田植機の平面図である。
【0015】
この例の田植機1は、図1〜2に示すように、作業者が搭乗する走行車体10の車体フレーム11には、前部にエンジン12と、後部にミッションケース13とが設けられ、ミッションケース13の前方両側にフロントアクスルケース14を介して水田走行用前輪15が支持されるとともに、ミッションケース13の後部両側にリヤアクスルケース16を介して水田走行用後輪17が支持されている。
【0016】
また、エンジン12とその近傍の部材は、ボンネット18で被覆され、ミッションケース13とその近傍の部材は、ステップ19を有する車体カバー20によって被覆されている。そして、車体カバー20の上部に運転席21が取り付けられ、その運転席21の前方に操向ハンドル22が設けられている。
【0017】
走行車体10の後部には、多条植え用(図例では8条であるが、限定されない)の苗載台31や複数の植付爪32を具備する植付部30が連らなる。この植付部30は、トップリンク33およびロワーリンク34を含む3点昇降リンク機構を用いて、走行車体10に連結されている。そして、走行車体10の後部とロワーリンク34との間に介設された図示しない油圧シリンダーの伸縮動作によって、昇降自在に構成されている。
【0018】
また、前高後低に設置された苗載台31は、板状の前傾式であり、下部ガイドレール35および上部ガイドレール36を介して、中央及び左右の植付伝動ケース37に対して左右往復摺動自在に支持されている。その植付伝動ケース37の下方には、中央及び左右の植付用均平フロート38,39が、植付深さ調節部材を介して支持されている。従って、植付部30を降下させて、このフロート38,39を着地させることにより、苗載台31上の苗マットから取り出す苗の植付深さを設定するように構成している。
【0019】
次に、本願発明の特徴である箱施用剤散布装置について詳述する。図3は箱施用剤散布装置を備える苗載台の背面図、図4は散布物ホッパーを含むユニットの拡大斜視図である。
【0020】
図3に示すように、上述した苗載台31には、散布装置として箱施用剤散布装置51が着脱自在に装着される。この箱施用剤散布装置51は、苗載台31の上方(機体後方)に設けられ、苗の移植と同時に苗マットに施薬するものであり、苗載台31の苗マット載置部52に対向して配置される。なお、苗載台31上における苗マット載置部52の機体進行方向1列を1条とするため、図例の苗載台31は8条用とされる。なお、図中では苗マットおよびフロート38,39などを省略して示した。
【0021】
そして、この箱施用剤散布装置51は、フレーム53や、複数の散布物ホッパー54のそれぞれに備えた繰出部55、搬送部56などで構成される。
【0022】
また、フレーム53は、各植付部30にステー58を介して支持し、苗載台31の後方を苗載台31に対して左右幅方向に着脱自在に架設したものであり、このフレーム53に複数の散布物ホッパー54が左右一直線に取付けられる。
【0023】
このとき、フレーム53は、各散布物ホッパー54における蓋部54aの上端部位置が、苗載台31の高さの半分よりも低い位置aになるように、苗載台31の両端部位置に架設される。
【0024】
散布物ホッパー54は、図示しない苗マットに施薬する薬剤を貯溜するものであり、図4に示すように、各散布物ホッパー54のそれぞれ上部には蓋部54aが設けられ、この蓋54aを開けて散布物ホッパー54の内部に薬剤を補充する。なお、蓋部54aは、散布物ホッパー54の本体に対して図示しない留め具を用いて開閉自在に適宜取付けられるものである。
【0025】
また、各散布物ホッパー54の下部は、その左右両端部を、中央部から下方に向けて二方向に傾斜させた、地面の水平面に対して20度程度の安息角αを有する斜設部54ba,54bbを備えるとともに、左右それぞれの下部が漏斗状になっており、左右両端の底部bには開口部54ca,54cbがそれぞれ設けられている。なお、安息角αは、20度以上とすることができるが、散布物ホッパー54の容積を大きく取れるように20度程度にすることが好ましい。
【0026】
従って、散布物ホッパー54に貯溜された薬剤は、自重で散布物ホッパー54の下端部に降下するとともに、斜設部54ba,54bbに沿って左右二方向に分岐され、各底部bの開口部54ca,54cbから、これら下方に接続された繰出部55a,55bに落下する。
【0027】
なお、この箱施用剤散布装置51が取り扱う薬剤は、移植後の苗に害虫や葉イモチ、紋枯病などの発生を抑制する防虫剤として、主に粉体の原料を粒状に成形したものであるが、これに限定されるものではない。
【0028】
次いで、各繰出部55a,55bは、散布物ホッパー54に貯溜された薬剤を所定量ずつ繰り出すものであり、それぞれ繰出ケース55aa、55baや図示しない繰出ロール、ロール軸55cなどで構成される。
【0029】
なお、ロール軸55cは、ギア59を介して隣設する散布物ホッパー54における繰出部55のロール軸55cに連結されるとともに、このロール軸55cの一端部または中途部には、苗載台31の適宜位置に取付けられた図示しない駆動モータが連結される。なお、ロール軸55cは、植付部30を駆動させる不図示のPTO軸により駆動させてもよい。
【0030】
そして、散布物ホッパー54の下端部に連結される各繰出ケース55aa、55baは、上下面が開口した箱状の部材であり、その内部にそれぞれ前記繰出ロールを収容する。また、繰出ケース55aa、55baの内部空間は、前記繰出ロールを挟んで上半部と下半部に区画される。従って、散布物ホッパー54から落下してきた薬剤は、繰出ケース55aa、55baの上半部の空間に充填される。
【0031】
なお、前記繰出ロールは、略円柱形状の部材であり、その外周面には複数の溝が設けられ、この溝の長手方向は、各繰出ロールの両端面を貫通するロール軸55cの長手方向(軸心方向)と略一致する。
【0032】
また、ロール軸55cは、前記各繰出ロールを、繰出ケース55aa、55baの内部で回動可能に軸支するための軸であり、これら繰出ロールに貫設され、ロール軸55cの両端は、繰出ケース55aa、55baの左右側面から突出される。そして、ロール軸55cを回動駆動することにより、繰出ケース55aa、55baに収容された前記繰出ロールが回動される。
【0033】
そして、繰出ケース55aa、55baの上半部の空間に充填された薬剤の一部は、前記各繰出ロールの外周面に接触され、さらにその一部が、これら繰出ロールの外周面に設けられた溝に収容される。そして、これら繰出ロールを回動させると、この繰出ロールの溝に収容された薬剤のみが繰出ケース55aa、55baの下半部の空間に移動し、この溝から下方に落下する。
【0034】
なお、前記繰出ロールに設けられる溝の本数、長さ、深さ、幅を変更することにより、繰り出される薬剤の量を適宜選択することができる。
【0035】
次に、繰出部55a,55bのそれぞれには、搬送部56a,56bが連結される。この搬送部56a,56bは、これら繰出部55a,55bにより繰り出された薬剤を搬送し、図示しない苗マットの床土上に施薬するものである。
【0036】
そして、この搬送部56a,56bのそれぞれは、主にホース56aa,56baおよびノズル56ab,56bbなどで構成される。従って、1つの散布物ホッパー54は、各繰出部55a,55bを介して2本のホース56aa,56baを備える構成とされる。なお、ホース56aa,56baまたはノズル56ab,56bbを伸縮自在な構造にして、ノズル56ab,56bbを、苗マット載置部52の下端位置まで伸長し、これらノズル56ab,56bbから地面に散布物を散布させる構成にすることもできる。
【0037】
なお、本願発明の箱施用剤散布装置51では、1つの散布物ホッパー54は、繰出部55a,55bや搬送部56a,56bなどを一体的に構成したユニットuをなすものであり、それぞれをユニットuごとに一体的に着脱可能とされる。
【0038】
つまり、箱施用剤散布装置51は、複数のユニットuから構成されるものである。なお、散布物ホッパー54の本体においても、この底部の開口部まで一体成型した構成とされる。
【0039】
従って、苗載台31の苗マット載置部52は、例えばその両端に位置する各1条の苗マット載置部52もしくは、左右一方の端部に位置する2条分の苗マット載置部52を取り外して、苗載台31の中央部に位置する苗マット載置部52の後方に折り畳み収納する際、これら苗載台31の中央部に位置するユニットuをフレーム53から脱着し、苗マット載置部52の折り畳み収納を阻害しない位置のフレーム53´にユニットuごと一体的に装着することができる。
【0040】
そして、繰出部55a,55bから繰り出された薬剤が、ホース56aa,56ba内を落下して、ノズル56ab,56bbから図示しない苗マットの床土上に薬剤が散布される。
【0041】
なお、ノズル56ab,56bbの下端には、図示しない筒状の回転体を回動自在に外嵌し、該回転体の外周に複数の図示しない突起を設けて、前記苗マットと当接可能に配置するとともに、該回転体より突出してノズル56ab,56bb先端内面に延設したスクレーパsが設けられる。
【0042】
従って、スクレーパsにより、この苗の移植時に薬剤が散布されると同時に苗載台31が左右往復動し、この往復動に伴い前記回転体が苗などに当接して回転し、この回転によりノズル56ab,56bb先端に付着した泥や薬剤などを掻き取り、ノズル56ab,56bbの詰まりを防止させることができる。
【0043】
このような配置により、苗載台31上に配列させた苗マット載置部52の2条に対する施薬を、1つの散布物ホッパー54により、この散布物ホッパー54に設けられた2本の各ホース56aa,56baで行う構成とされる。
【0044】
従って、苗載台31上における苗マット載置部52(苗マット)が偶数条nを備える場合であれば、そのn/2個の散布物ホッパー54が、フレーム53に取付けられ、各条の施薬がこれらn/2個の散布物ホッパー54により行われる。
【0045】
また、苗マット載置部52が奇数条mを備える場合であれば、(m−1)/2+1個の散布物ホッパー54が、フレーム53に取付けられ、各条の施薬がこれらn/2個の散布物ホッパー54により行われる。
【0046】
なお、この場合、フレーム53に取付けられた散布物ホッパー54の中の1つだけは、散布物ホッパー54の底部に、繰出部55および搬送部56を1箇所のみの配置とし、1つの散布物ホッパー54から1本のホース56により、苗マット載置部52の1条だけに施薬する構成とされる。
【0047】
従って、この散布物ホッパー54は、底部に繰出部55を接続するための開口部54を1箇所設けた漏斗状の直方体や立方体などの形状であってもよいが、上述した中央部から下方に向けて二方向に傾斜させた斜設部54ba,54bbを有する形状であれば、一方の繰出部55を塞ぎ、他方の繰出部55のみを使用する構成としてもよい。
【0048】
本願発明の散布物ホッパー54は、ノズルの設置位置を変更可能とする位置変更手段を備えるものである。図5は弾性ピンおよび位置決め穴からなる位置変更手段を備える搬送部の構造図、図6はノズル設置位置の変更を示す説明図、図7は突起および位置決め溝からなる位置変更手段を備える搬送部の側面図、図8は弾性部材で形成した位置変更手段を備える搬送部の側面図である。
【0049】
図5に示すように、搬送部56a(図中では搬送部56の一方を示すものであり、搬送部56bであってもよい)は、位置変更手段60を備えるホース56aaおよびノズル56abからなり、このホース56aaは、ノズル56abを下端に取付ける内側回動部61と、この内側回動部61を回動可能に嵌入するとともに、上端部を繰出部55aに取付けた外側固定部62とから構成される。
【0050】
内側回動部61における上端部の外周面には、その対向位置にバネなどの弾性体61bにピン61cを取付けた弾性ピン61aが押縮自在に設置される。
【0051】
一方、外側固定部62の上部外周面には、弾性ピン61aを嵌入可能とする位置決め穴62aが、外周面に沿って対向位置に複数貫設される。従って、搬送部56aは、内側回動部61を外側固定部62に嵌合させるとともに、各弾性ピン61aを外側固定部62の対向する位置決め穴62aに嵌入させて、内側回動部61を固定するとともに、ノズル56abの設置位置が固定される。
【0052】
ここで、箱施用剤散布装置51を、通常とは異なる苗載台31に装着させるなどして、上述したノズル56abの設置位置を、図6に示すように、苗マット載置部52による図示しない苗マットの条間距離(条間隔)に応じて変更する場合であって、例えば、通常よりも条間距離が長い前記苗マットに対応させてノズル56ab(56bb)を機体外方に向けて変更する際には、作業者はまず、位置決め穴62aから突出する各弾性ピン61aを、指で位置決め穴62aから突出しない位置まで押縮する。
【0053】
次いで、作業者は、ノズル56abが機体外方に向くように内側回動部61を回動させ、ノズル56abが前記苗マットの左(ノズル56bbの場合右)端部に位置する位置決め穴62aaに各弾性ピン61aを弾性体61bの付勢により嵌入させて、内側回動部61を固定するとともに、ノズル56abの設置位置が固定される。なお、位置決め穴62aの設置間隔は、前記苗マットの左右端部にノズル56abが位置する、前記苗マットの長さ幅に応じて複数形成される。
【0054】
このような構成により、作業者は別途工具類を用いることなく、位置決め穴62aに弾性ピン61aを嵌入させることで、容易にノズル56ab,56bbの位置を変更でき、箱施用剤散布装置51は、条間距離の異なる苗載台31でも楽に装着使用することができる。なお、ノズル56abの設置位置を機体内方に変更させる場合は、上述と同じ要領で逆方向に作用させるため、説明を省略する。
【0055】
次に、位置変更手段の別実施例を説明する。この場合、ホース56aaに備える位置変更手段60´として、図7に示すように、内側回動部61´における上端部の外周面には、その対向位置に突起61a´が設けられる。
【0056】
一方、外側固定部62´の外周面上部には、突起61a´を滑動可能とするスライドレールlが形成されるとともに、このスライドレールlから外周面の対向位置に沿って、スライドレールlと同じ幅を有する複数の位置決め溝62a´が、外周面の中途位置まで形成される。
【0057】
従って、搬送部56aは、内側回動部61´を外側固定部62´に嵌合させるとともに、各突起61a´を外側固定部62の対向する位置決め溝62a´に嵌入させて、内側回動部61´を固定するとともに、ノズル56abの設置位置が固定される。なお、突起61a´は先端に膨らみ部を設け、突起61a´のスライドレールlおよび位置決め溝62a´からの抜脱を防止する構成とされる。
【0058】
ここで、上述のように、ノズル56ab(56bb)を機体外方に向けて変更する際には、作業者はまず、内側回動部61´を上昇させて、位置決め溝62a´から突出する各突起61a´を、スライドレールl内に摺動させる。
【0059】
次いで、作業者は、ノズル56abが機体外方に向くようにして、各突起61a´を、スライドレールl内に沿って、内側回動部61´を回動させ、ノズル56abが前記苗マットの左(ノズル56bbの場合右)端部に位置する位置決め溝62aa´の下端まで内側回動部61´を下降させるとともに各突起61a´を下降させて、内側回動部61を固定し、ノズル56abの設置位置が固定される。なお、位置決め溝62a´の設置間隔は、前記苗マットの左右端部にノズル56abが位置する、前記苗マットの長さ幅に応じて複数形成される。
【0060】
このような構成により、作業者は別途工具類を用いることなく、該当する位置決め溝62a´に突起61a´を摺動させることで、容易にノズル56ab,56bbの位置を変更でき、箱施用剤散布装置51は、条間距離の異なる苗載台31でも楽に装着使用することができる。
【0061】
さらに、位置変更手段は以下のような構成にすることもできる。この場合、ホース56aaに備える位置変更手段60´´として、図8に示すように、下部回動部61´´における上端の外周面には、その外周面に沿って複数の下部をやや拡開させた位置決め凹部63が設けられる。
【0062】
なお、位置決め凹部63を含む上端外周面は、合成ゴムなどの弾性部材で構成される。また、位置決め凹部63の設置間隔は、前記苗マットの左右端部にノズル56abが位置する、前記苗マットの長さ幅に応じて複数形成される。
【0063】
また、上部固定部62´下端の外周面には、位置決め凹部63を緊合可能とし、位置決め凹部63と同数の下方に凸とする凸部64が形成される。なお、これら凸部64を含む下端外周面も合成ゴムなどの弾性部材で構成される。
【0064】
従って、上述のように、ノズル56ab(56bb)の位置を変更する際には、作業者はまず、下部回動部61´´を下降させて、位置決め凹部63と凸部64の嵌合を解除し、ノズル56abの変更位置まで下部回動部61´´を回動させた位置における位置決め凹部63に凸部64を嵌合させることで、凸部64の押し込みにより変形した位置決め凹部63に凸部64が緊合し、下部回動部61´´が固定される。
【0065】
このような構成にすることで、凸部64を位置決め凹部63に緊合することにより、変形させた位置決め凹部63内で凸部64を挟持固定させるため、作業者は別途工具類を用いることなく、容易にノズル56ab,56bbの位置を変更でき、箱施用剤散布装置51は、条間距離の異なる苗載台31でも楽に装着使用することができる。
【0066】
なお、凸部64および位置決め凹部63は上述の形成位置に限定されず、凸部64を下部回動部61´´に、位置決め凹部63を上部固定部62´´に形成してもよい。また、凸部64を拡開形状にしてもよい。
【0067】
以上詳述したように、この例の田植機1の箱施用剤散布装置51(散布装置)は、後部に苗載台31を着脱可能に装着し、苗載台31の後方であって、苗載台31に架設したフレーム53と、フレーム53に固定した散布物ホッパー54と、散布物ホッパー54に繰出部55を介して苗載台31下部の各条ごとに設けたホース56aa,56baと、ホース56aa,56baの先端に取付けたノズル56ab,56bbとからなり、苗載台31上の苗マットの床土上に散布物ホッパー54の薬剤をノズル56ab,56bbを介して散布し、ノズル56ab,56bbは、苗マットの条間幅に対応して、苗載台31の左右方向に設置位置を変更自在とする位置変更手段60,60´,60´´を備えるものである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
なお、この発明は、散布装置を装着可能とする、苗載台を備えるあらゆる田植機に適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 田植機
31 苗載台
51 箱施用剤散布装置
54 散布物ホッパー
55a,55b 繰出部
56a,56b 搬送部
56aa,56ba ホース
56ab,56bb ノズル
60,60´,60´´ 位置変更手段
61,61´,61´´ 下部回動部
61a 弾性ピン
61a´ 突起
61b 弾性体
61c ピン
62,62´,62´´ 上部固定部
62a´ 位置決め溝
63 位置決め凹部
64 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗載台の後方であって、前記苗載台に架設したフレームと、
前記フレーム上に固定した散布物ホッパーと、
前記散布物ホッパーに繰出部を介して前記苗載台下部の各条ごとに設けたホースと、
前記ホースの先端に取付けたノズルと、
からなり、前記苗載台の苗マット載置部上に設置した苗マットの床土上に、前記散布物ホッパーの薬剤を、前記ノズルを介して散布する田植機の散布装置において、
前記ノズルは、前記苗マットの条間幅に対応して、前記苗載台の左右方向に設置位置を変更自在とする位置変更手段を備えることを特徴とする田植機の散布装置。
【請求項2】
前記変更手段は、前記ホースの内側固定部の周囲に複数設けた弾性ピンと、前記ホースの外側回動部の周囲に設けた複数の、前記弾性ピンを嵌入可能とする位置決め穴と、からなることを特徴とする、請求項1に記載の田植機の散布装置。
【請求項3】
前記変更手段は、前記ホースの内側回動部に設けた突起と、前記ホースの外側固定部の周囲に設けた、前記突起に嵌合可能とし、上端をスライドレールで連通させた複数の位置決め溝と、からなることを特徴とする、請求項1に記載の田植機の散布装置。
【請求項4】
前記変更手段は、前記ホースの固定部および回動部であって、一方の端部周囲に設けた複数の位置決め凹部と、他方の端部周囲に設けた複数の、前記位置決め凹部に緊合可能とする凸部と、からなり、前記位置決め凹部および凸部は、弾性部材で形成したことを特徴とする、請求項1に記載の田植機の散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−62176(P2011−62176A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217698(P2009−217698)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】