説明

田植機

【課題】 植付深さ調節に関係なく、ロータの整地作用を一定に保つことができるようにすることを課題とする。
【解決手段】 車体の後方に苗植付部を昇降可能に設け、該苗植付部には苗載タンクと苗植付装置と苗植付面を整地するフロートとを備え、該フロ−トをフロ−ト吊持リンク(28)で吊持し、横軸(30)を支点に回動操作する植付深さ調節レバ−(29)を設け、該植付深さ調節レバ−(29)を上向きに回動操作するとフロ−トが下がって浅植となり、該植付深さ調節レバ−(29)を下向きに回動操作するとフロ−トが上がって深植となる構成とし、フロ−トの前側に左右横方向の軸芯回りに強制回転駆動される整地ロ−タを設け、該整地ロ−タは、植付深さ調節に応じて上下動するようフロートの上下動に連動する構成とした田植機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圃場の整地面に苗を植え付ける田植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
フロ−トの前側に代掻ロ−タを設けることにより、代掻と同時に苗の植付作業を行うようにした田植機は、知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−125617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の代掻ロ−タは、フロ−トの前面上端より高く設定されていた為、ロ−タにより跳ね上げられる泥土がフロ−ト上面に飛散し、この飛散泥土がフロ−ト上に積り積ってフロ−ト本来の整地機能を阻害する問題があった。
【0005】
本発明の目的は上記の問題点を解消することにある。また、植付深さ調節に関係なく、ロータの整地作用を一定に保つことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、車体(1)の後方に苗植付部(7)を昇降可能に設け、該苗植付部(7)には苗載タンク(12)と苗植付装置(14)と苗植付面を整地するフロート(15)とを備え、該フロ−ト(15)をフロ−ト吊持リンク(28)で吊持し、横軸(30)を支点に回動操作する植付深さ調節レバ−(29)を設け、該植付深さ調節レバ−(29)を上向きに回動操作するとフロ−ト(15)が下がって浅植となり、該植付深さ調節レバ−(29)を下向きに回動操作するとフロ−ト(15)が上がって深植となる構成とし、フロ−ト(15)の前側に左右横方向の軸芯回りに強制回転駆動される整地ロ−タ(20)を設け、該整地ロ−タ(20)は、植付深さ調節に応じて上下動するようフロート(15)の上下動に連動する構成とした田植機とした。
【0007】
請求項2に係る発明は、フロ−ト(15)にはセンタフロ−ト(15C)及びサイドフロ−ト(15l,15r,15L,15R)を備え、該センタフロ−ト(15C)の迎い角を検出する迎い角検出センサ(31)を設け、該迎い角検出センサ(31)の検出値が所定値となるよう油圧切替バルブを制御し、苗植付部(7)を圃場面に対して所定の高さに維持させる構成とした請求項1に記載の田植機とした。
【0008】
請求項3に係る発明は、フロ−ト(15)にはセンタフロ−ト(15C)及びサイドフロ−ト(15l,15r,15L,15R)を備え、車体(1)には左右の後輪(3)を備え、該左右の後輪(3)の後方位置で且つサイドフロ−ト(15l,15r,15L,15R)の前側位置に設けた整地ロ−タ(20)を、センタフロ−ト(15C)を跨ぐ門型伝動ケ−ス(21)内のロ−タ伝動軸(22)によって駆動する構成とした請求項1又は2に記載の田植機とした。
【0009】
請求項4に係る発明は、フロ−ト(15)にはセンタフロ−ト(15C)及びサイドフロ−ト(15l,15r,15L,15R)を備え、車体(1)には左右の後輪(3)を備え、該左右の後輪(3)の後方位置で且つサイドフロ−ト(15l,15r,15L,15R)の前側位置に整地ロ−タ(20)を設け、センタフロ−ト(15C)の前側部分には泥土を整地ロ−タ(20)側に掻き寄せながら整地する整地具(25)を設けた請求項1乃至3の何れかに記載の農作業機とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、植付深さ調節レバ−(29)の回動操作により植付深さを調節できると共に、植付深さ調節に関係なく、フロート(15)接地面とロータ(20)との所定の関係位置が保持されるので、ロータ(20)の整地作用を一定に保つことができる。
【0011】
請求項2に係る発明によると、請求項1に係る発明の効果に加えて、迎い角検出センサ(31)により、センタフロ−ト(15C)の迎い角を検出し、苗植付部(7)を圃場面に対して所定の高さに維持させることができる。
【0012】
請求項3に係る発明によると、請求項1又は2に係る発明の効果に加えて、左右の後輪(3)の後方位置で且つサイドフロ−ト(15l,15r,15L,15R)の前側位置に設けた整地ロ−タ(20)を、センタフロ−ト(15C)を跨ぐ門型伝動ケ−ス(21)内のロ−タ伝動軸(22)によって駆動することができる。また、前記整地ロ−タ(20)は、左右の後輪(3)の後方位置に設置されるので、車輪跡をきれいに整地することができる。しかも、センタフロ−ト(15C)にて発生する泥波を前記整地ロ−タ(20)で受け止めて後方に排出することができ、高速走行しても隣接条(隣接の苗植付条列)への泥押しが防げる。
【0013】
請求項4に係る発明によると、請求項1乃至3の何れかに係る発明の効果に加えて、整地ロ−タ(20)は、左右の後輪(3)の後方位置に設置されるので、車輪跡をきれいに整地することができる。また、整地具(25)によって掻き寄せられる泥土は隣の整地ロ−タ(20)側に導かれるため、整地具(25)への泥溜りを防止することができ、センタフロ−ト(15C)による整地均平効果を高めることができ、フロ−ト(15)本来の整地効果を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】田植機の側面図
【図2】田植機の要部の平面図
【図3】同上要部の側面図
【図4】同上要部の側面図
【図5】田植機の要部の平面図
【図6】同上要部の側面図
【図7】同上要部の側面図
【図8】同上要部の斜視図
【図9】同上要部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は、乗用型多条植田植機を示すものであり、車体1の前後には走行車輪としての左右一対の前輪2,2及び後輪3,3が架設されている。車体上前部に操作ボックス4及びステアリングハンドル5等を有する操縦装置6が設置され、車体後方部には昇降可能な苗植付部7が装備されている。操縦装置6の後側に運転席8が設置され、運転席の下側に田植機の各部に動力を伝達するエンジン9が搭載されている。
【0016】
苗植付部7は、油圧昇降シリンダ10の伸縮により昇降リンク機構11の上下方向の回動により、上下に昇降するように設けられている。また、苗植付部7は、左右に往復動する苗載タンク12、1株分の苗を切取って土中に植込む植込杆13を有する苗植付装置14、苗植付面を整地するフロ−ト15等からなる。
【0017】
左右の前輪2,2はミッションケ−ス16内のミッション装置から回転動力を伝達するよう連動構成している。ミッションケ−ス16の後部から後方に動力を伝達する左右の後輪伝動軸17を設け、該左右の後輪伝動軸17の駆動により左右それぞれの後輪伝動ケ−ス18内に伝動し、該後輪伝動ケ−ス18から突出する後輪車軸3aを駆動して左右の後輪3,3を駆動するようになっている。
【0018】
苗植付面を整地する前記フロ−ト15は、苗植付装置によって8条列の苗植付ができるように5基のフロ−トを左右横方向に配設した構成としている。つまり、中央に位置する2条植用センタフロ−ト15Cとこの左右両側に位置する1条植用サイドフロ−ト15l,15r及び2条植用サイドフロ−ト15L,15Rとからなる構成である。なお、各フロ−トの前面は、接地面側から前方上方に向けて湾曲形成するものであり、受ける泥波を左右に振り分けながら後方に押し流す構成である。
【0019】
センタフロ−ト15Cは、サイドフロ−ト15l,15r及び15L,15Rの前面より前方に長く突出位置するよう配設している。サイドフロ−ト15l,15r及び15L,15Rの前側には、左右横方向に架設したロ−タ軸19回りにこのロ−タ軸と一体的に強制回転駆動される整地ロ−タ20を設けている。この整地ロ−タ20は、センタフロ−ト15Cを跨ぐ門型伝動ケ−ス21内のロ−タ伝動軸22によって駆動するよう連動構成してあり、そして、前記後輪伝動ケ−ス18の後部から後方の前記整地ロ−タ20に回転動力を伝達するための動力取出軸23を突設し、該動力取出軸23の駆動によりユニバ−サルジョイント軸24を介して門型伝動ケ−ス21内のロ−タ伝動軸22a,22b,22cに伝動し、ロ−タ軸19を駆動して整地ロ−タ20,20を回転駆動するようになっている。前記門型伝動ケ−ス21は苗植付部7のフレ−ム又はフロ−ト15上に装着支持される。整地ロ−タ20は後輪伝動ケ−ス18内から駆動する構成であるため、走行停止時にはロ−タも停止するので安全であり、しかも、走行速に比例した回転数が得られる。
【0020】
また、整地ロ−タ20は、この回転軌跡の上周面が各サイドフロ−ト15l,15r、15L,15Rの前面上端よりも低くなるように設定して、整地ロ−タによる飛散泥土をサイドフロ−トの前面で受け止めるようにし、フロ−ト上面への泥土飛散を抑制するように構成している。
【0021】
特に、この整地ロ−タ20,20によれば、左右の後輪3,3の後方位置に設置されることになるので、車輪(後輪3)跡をきれいに整地することができる。また、センタフロ−トにて発生する泥波もこの整地ロ−タで受け止めて後方に排出することができ、高速走行しても隣接条(隣接の苗植付条列)への泥押しが防げることになる。
【0022】
なお、図4に示すように、サイドフロ−ト15l,15r、15L,15Rの前面部Fで整地ロ−タ20の上方部を覆うように構成しておくと、フロ−ト上面への泥土飛散防止効果をより高めることができる。
【0023】
図5及び図6に示すように、センタフロ−ト15Cの前側には、泥土を左右の整地ロ−タ20,20側に向けて掻き寄せながら整地するレ−キ状の固定式整地具25が設けられている。この整地具25は、前記門型伝動ケ−ス21に固着支持されるが、平面視で略V字型に形成されていて、しかも、この左右両端が左右の整地ロ−タ20,20の内端側に臨むよう配置されている。
【0024】
従って、センタフロ−トの前方水田面は、まず、先行する整地具25によって予め整地され、その後、追従するセンタフロ−ト15Cにて整地される。整地具25による整地時に土塊がある時には左右の整地ロ−タ20の回転圏内に導かれてこなされる。
【0025】
また、前記整地ロ−タ20は、植付深さ調節に応じて上下動するようセンタフロ−ト15Cの動きに連動させた構成としている。つまり、整地ロ−タ20を上下させるための前記門型伝動ケ−ス21に装着したロ−タ支持リンク26をセンタフロ−ト15Cの支持リンク27に連結するように構成する。従って、植付深さ調節に関係なく、フロ−ト接地面とロ−タ円周との所定の関係位置寸法が同一に保持されることになり、ロ−タの整地作用を一定に保つことができる。
【0026】
図7に示す実施例について説明すると、28はセンタフロ−ト15Cを吊持するフロ−ト吊持リンク、29は植付深さ調節レバ−で、該レバ−を横軸30を支点として上向きに回動操作するとフロ−トが下がって浅植となり、下向きに回動操作するとフロ−トが上がって深植となるようになっている。
【0027】
31はフロ−ト迎い角検出センサ、32a,32bは迎い角検出ロッド、33a,33bは迎い角検出ア−ム、34,34は上下平行リンクである。平行リンク34,34の前後両端は前後の支持リンク27,27にて枢着連結されている。35は後部支持リンク27と植付深さ調節レバ−29とを結ぶ調節ロッドである。
【0028】
そして、前記迎い角検出センサ31は、前部支持リンク27に装着支持されてあり、該センサ31がセンタフロ−ト15Cの機体に対する迎い角Aを検出するように設けられ、該センサ31からの信号が制御部に入力されるようになっている。そして、苗植付部7を下降させての植付状態で、制御部において前記フロ−ト迎い角検出センサ31の検出値が所定値となるよう油圧切替バルブを制御して、植付部7を圃場面に対して所定の高さに維持させるものである。
【0029】
なお、前記整地ロ−タ20は、特に、図8及び図9に示すように、先端が波型20aとなるよう中空の樹脂材でブロ−成形し、該ロ−タ先端部にパ−ティングライン20bを設けた構成としている。かかる構成によれば、ロ−タ自体の軽量化を図ることができ、耐摩耗性も高く維持することができる。
【0030】
苗植付作業時には、苗載タンク12に土付マット状苗を収納載置して車体1を走行し、苗植付部7を牽引しながら各部を回転駆動する。すると、苗植付部7は、下部のフロ−ト15で土壌表面に支持されて滑走されながら、左右往復移動する苗載タンク12から植込杆13が一株分づつの苗を分割して土壌表面に植付けて行く。このようにして、一行程の走行で8条列の苗植付け作業が行われる。
【符号の説明】
【0031】
1:車体、3:後輪、7:苗植付部、12:苗載タンク、14:苗植付装置、15:フロ−ト、15C:センタフロ−ト、15l,15r,15L,15R:サイドフロ−ト、20:整地ロ−タ、21:門型伝動ケ−ス、22:ロ−タ伝動軸、25:整地具、28:フロ−ト吊持リンク、29:植付深さ調節レバ−、30:横軸、31:迎い角検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(1)の後方に苗植付部(7)を昇降可能に設け、該苗植付部(7)には苗載タンク(12)と苗植付装置(14)と苗植付面を整地するフロート(15)とを備え、該フロ−ト(15)をフロ−ト吊持リンク(28)で吊持し、横軸(30)を支点に回動操作する植付深さ調節レバ−(29)を設け、該植付深さ調節レバ−(29)を上向きに回動操作するとフロ−ト(15)が下がって浅植となり、該植付深さ調節レバ−(29)を下向きに回動操作するとフロ−ト(15)が上がって深植となる構成とし、フロ−ト(15)の前側に左右横方向の軸芯回りに強制回転駆動される整地ロ−タ(20)を設け、該整地ロ−タ(20)は、植付深さ調節に応じて上下動するようフロート(15)の上下動に連動する構成とした田植機。
【請求項2】
フロ−ト(15)にはセンタフロ−ト(15C)及びサイドフロ−ト(15l,15r,15L,15R)を備え、該センタフロ−ト(15C)の迎い角を検出する迎い角検出センサ(31)を設け、該迎い角検出センサ(31)の検出値が所定値となるよう油圧切替バルブを制御し、苗植付部(7)を圃場面に対して所定の高さに維持させる構成とした請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
フロ−ト(15)にはセンタフロ−ト(15C)及びサイドフロ−ト(15l,15r,15L,15R)を備え、車体(1)には左右の後輪(3)を備え、該左右の後輪(3)の後方位置で且つサイドフロ−ト(15l,15r,15L,15R)の前側位置に設けた整地ロ−タ(20)を、センタフロ−ト(15C)を跨ぐ門型伝動ケ−ス(21)内のロ−タ伝動軸(22)によって駆動する構成とした請求項1又は2に記載の田植機。
【請求項4】
フロ−ト(15)にはセンタフロ−ト(15C)及びサイドフロ−ト(15l,15r,15L,15R)を備え、車体(1)には左右の後輪(3)を備え、該左右の後輪(3)の後方位置で且つサイドフロ−ト(15l,15r,15L,15R)の前側位置に整地ロ−タ(20)を設け、センタフロ−ト(15C)の前側部分には泥土を整地ロ−タ(20)側に掻き寄せながら整地する整地具(25)を設けた請求項1乃至3の何れかに記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−178170(P2009−178170A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120024(P2009−120024)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【分割の表示】特願2000−299807(P2000−299807)の分割
【原出願日】平成12年9月29日(2000.9.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】