説明

田植機

【課題】送風手段を苗継作業や植付作業中断等の状況に応じて適切な作動状態としながら、送風手段の省電力化を図ることができる田植機を提供する。
【解決手段】走行部10に植付部40を昇降可能に連結した田植機1において、主変速レバー52と、主変速レバー52が苗継位置P3にあることを検出するマイクロスイッチ85と、ホッパ25、繰出機構26、およびブロワ27を有する施肥装置22と、主変速レバー52が苗継位置P3に操作されているときのブロワ27の作動状態を停止状態または低風量での作動状態の一方に選択するための選択スイッチ77と、ブロワ27の作動を制御して、マイクロスイッチ85により主変速レバー52が苗継位置P3に操作されたことが検出されたとき、ブロワ27を選択スイッチ77による選択に基づいて停止状態または低風量での作動状態にする制御装置80と、を具備するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機の技術に関し、特に、苗継作業時に施肥装置の送風手段を停止する田植機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植付と同時に施肥を行うための施肥装置を具備する田植機は公知となっている。施肥装置は、肥料を収容するホッパと、ホッパの下部に配設され肥料を所定量ずつ繰り出す繰出手段と、肥料を施肥位置まで風力により搬送する送風手段とを具備する。
送風手段であるブロワは、モータにより作動されて、エンジンを始動すると作動されるようにしており、植付作業時にホッパから繰出手段によって繰り出された肥料を施肥位置まで風力により搬送する手段である。この送風手段は、例えば、苗継時には植付を行わないため、肥料を施肥位置まで搬送する必要は無く、ブロワを作動する必要も無い。そこで、走行変速用操作手段である主変速レバーを苗継位置に操作した場合には、ブロワの作動を停止する技術が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−70663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、苗継作業は、圃場の大きさ(往復の距離)や条止めを行った場合や複数人で苗継ぎ作業を行う場合等の状況によっては、作業時間が長くかかる場合や短時間で終了する場合がある。従来のように主変速レバーを苗継位置としてブロワの作動を停止させる構成の場合、苗継作業が短時間で終了し、速やかに植付作業を再開する場合には、ブロワの回転数が元の回転数に戻るのに時間がかかりブロワの風量が不足し、所定量の肥料が搬送されない場合があった。一方、圃場端で苗継作業と、補助苗台に苗マットを補給する作業と、施肥装置のホッパに肥料を補給する作業等がある場合には、作業時間が長くなるため、ブロワは停止させたほうが、バッテリの電力消費が少なく、騒音も低下させることができる。また、植付作業の中断も同様に作業時間に長短がある。
【0005】
そこで、本発明は係る課題に鑑み、送風手段を苗継作業や植付作業中断等の状況に応じて適切な作動状態としながら、送風手段の省電力化を図ることができる田植機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、走行部に植付部を昇降可能に連結した田植機において、苗継位置を含む複数段の変速操作位置に操作可能な走行変速用操作手段と、前記走行変速用操作手段が苗継位置にあることを検出する変速操作位置検出手段と、肥料を収容するホッパ、前記ホッパの下部に配設され肥料を所定量ずつ繰り出す繰出手段、および繰り出した肥料を施肥位置まで搬送する送風手段を有する施肥装置と、前記走行変速用操作手段が苗継位置に操作されているときの前記送風手段の作動状態を停止状態または低風量での作動状態の一方に選択するための選択操作手段と、田植機が走行状態にあるか否かを検出する走行状態検出手段と、前記送風手段の作動を制御して、前記変速操作位置検出手段により前記走行変速用操作手段が苗継位置若しくは中立位置に操作されたことが検出されたとき又は走行状態検出手段により走行停止状態であることが検出されたときは、前記送風手段を前記選択手段による選択に基づいて停止状態または低風量での作動状態にする制御装置と、を具備するものである。
【0008】
請求項2においては、前記走行変速用操作手段が苗継位置に操作された時点からの経過時間を計測するタイマ手段を具備し、前記制御装置は、前記選択操作手段により低風量での作動状態が選択されている場合、前記タイマ手段の計測結果に基づいて、前記走行変速用操作手段が苗継位置に操作された時点から、予め設定された第一設定時間以上経過したとき、前記送風手段を低風量での作動状態から停止状態にするものである。
【0009】
請求項3においては、前記植付部の位置を検知する昇降位置検知手段を具備し、前記制御装置は、前記昇降位置検知手段により検出した植付部の位置が設定高さ以上に上昇したか否かを判断し、設定高さ以上に設定高さ以上に上昇したときには、前記送風手段を低風量での作動状態とするものである。
【0010】
請求項4においては、前記走行変速用操作手段が苗継位置に操作された時点からの経過時間を計測するタイマ手段を具備し、前記制御装置は、前記タイマ手段の計測結果に基づいて、前記走行変速用操作手段が苗継位置に操作された時点から、予め設定された第二設定時間を経過するまでは、前記送風手段の作動状態を変更せず、前記第二設定時間以上経過したときには、前記送風手段を前記選択手段による選択に基づいて停止状態または低風量での作動状態にするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、苗継作業時における施肥装置の送風手段の作動状態として、停止状態または低風量での作動状態を択一的に選択することが可能となる。したがって、苗継作業に要する時間に応じて作業者が、停止状態または低風量を選択でき、停止状態を選択した場合には、送風手段の省電力化を効果的に図ることができる。一方、低風量での作動状態を選択した場合には、肥料の繰出を停止させた状態で送風手段の省電力化を図りつつ苗継作業後に植付作業に復帰するのに伴って施肥作業を速やかに再開させることができる。つまり、送風手段を苗継作業時の状況に応じて適切な作動状態としながら、送風手段の省電力化を図ることができる。
【0013】
請求項2においては、苗継作業が第一設定時間内で終われば、速やかに植付作業を再開させることができ、第一設定時間内に終わらないときは、送風手段を低風量での作動状態から停止状態に自動的に変更することが可能となる。したがって、送風手段を無駄に作動させることがなくなり、省電力化を図ることができる。また、第一設定時間はタイマで設定できるため、作業者の作業速度や作業量等に応じて任意の時間に設定することが可能となる。
【0014】
請求項3においては、苗継作業以外の作業を行うために植付部を上昇させて植付・施肥作業を中断したときや圃場端で旋回する場合等では、送風手段の風量を低下させるため、送風手段の省電力化を図りつつ当該作業後に施肥作業を速やかに再開させることができる。
【0015】
請求項4においては、走行変速用操作手段を苗継位置に操作して、施肥作業を中断するとき、施肥装置の繰出手段を停止させても、送風手段を第二設定時間が経過するまでは作動させることが可能となり、繰出手段から施肥位置までの搬送管内に残る肥料を、確実に排出することができる。したがって、残留した肥料によって搬送管に詰まりが生じる可能性を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機の全体構成を示す側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る田植機の全体構成を示す平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る田植機のダッシュボードの側面概略図。
【図4】本発明の一実施形態に係る田植機のダッシュボードを運転席側から見た図。
【図5】本発明の一実施形態に係る田植機のダッシュボードの後方斜視図。
【図6】本発明の一実施形態に係る田植機のガイド溝の平面図。
【図7】本発明の一実施形態に係る田植機の制御装置を示すブロック図。
【図8】第一実施形態に係る苗継作業時のブロワ27の制御フロー図。
【図9】第二実施形態に係る苗継作業時のブロワ27の制御フロー図。
【図10】第二実施形態に係る苗継作業時のブロワ27の制御フロー図。
【図11】第三実施形態に係る苗継作業時のブロワ27の制御フロー図。
【図12】第四実施形態に係る苗継作業時のブロワ27の制御フロー図。
【図13】第四実施形態に係る苗継作業時のブロワ27の制御フロー図。
【図14】第五実施形態に係る苗継作業時のブロワ27の制御フロー図。
【図15】第六実施形態に係る苗継作業時のブロワ27の制御フロー図。
【図16】第六実施形態に係る苗継作業時のブロワ27の制御フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の一実施例に係る田植機1の全体構成について、図1、図2を用いて説明する。なお、本実施形態においては、田植機は八条植えの田植機とするが、これは特に限定するものではなく、例えば六条植えや十条植えの田植機であってもよい。
【0018】
図1に示すように、田植機1は、走行部10と植付部40とを有し、走行部10により走行しながら、植付部40により苗を圃場に植え付けることができるように構成される。植付部40は、走行部10の後方に配置されて、この走行部10の後部に昇降機構30を介して昇降可能に連結される。
【0019】
走行部10においては、エンジン14が車体フレーム11の前部に設けられて、ボンネット15により被覆される。ミッションケースが車体フレーム11の前部に支持されて、エンジン14の下方に配置される。
【0020】
フロントアクスルケース6が車体フレーム11の前部に支持され、前車輪12が当該フロントアクスルケース6の左右両側に取り付けられる。リアアクスルケース7が車体フレーム11の後部に支持され、後車輪13が当該リアアクスルケース7の左右両側に取り付けられる。
【0021】
そして、動力伝達機構が、エンジン14の動力が前記ミッションケースを介して左右の前車輪12と左右の後車輪13とにそれぞれ伝達されて、これらの前車輪12および後車輪13が回転作動するように構成される。これにより、走行部10が前進または後進走行可能とされる。
【0022】
走行部10において、車体フレーム11の前後中途部に運転操作部が設けられる。運転操作部の前部には、操向操作用の環状の操向ハンドル18や、変速操作用の変速ペダルなどが配置される。運転操作部の後部には、運転席19が操向ハンドル18の後方に位置するように配置される。
【0023】
そのうえ、運転操作部の操向ハンドル18や運転席19の周りに、ダッシュボード17や、一部を乗降用ステップとする車体カバー16や、その他のレバーやスイッチ等の操作具が配置される。これらの操向ハンドル18、変速ペダル、およびその他の操作具によって、走行部10および植付部40に対して適宜の操作を行うことが可能とされる。
【0024】
走行部10において、予備苗載台24が車体フレーム11の前部の左右両側から立設された各取付フレーム23に取り付けられて、ボンネット15の左右両側方に配置される。そして、予備苗が予備苗載台24に載置されて、植付部40への苗補給が可能とされる。
【0025】
走行部10において、施肥装置22が車体フレーム11の後部に支柱フレーム20などを介して支持されて、運転操作部の運転席19の後方に配置される。施肥装置22は、エンジン14からの動力により作動されて、圃場に施肥を行うことができるように構成される。
【0026】
施肥装置22は、肥料を収容するホッパ25と、繰出手段である繰出機構26と、送風手段であるブロワ27と、搬送管である搬送ホース28と、を具備する。
【0027】
ホッパ25は、各条に粒状の肥料を収容するための容器であり、植付条数と同数、即ち本実施形態では八つ備えられる。また、ホッパ25に貯留された肥料は、ホッパ25の出口から繰出機構26により一定量ずつ繰り出されるように構成されている。
【0028】
繰出機構26は、ホッパ25の下部に配設される。また、繰出機構26は、図示せぬ繰出用動力伝達機構を介してエンジン14からの動力により作動され、一定量ずつ肥料を搬送ホース28へ落下させる。
【0029】
ブロワ27は図示せぬ送風パイプ内へ風を送る装置である。ブロワ27は電気モータの回転により作動される送風機であり、ブロワ27の作動は制御装置80により制御される。またブロワ27から送られた風は送風パイプ内を通り、各搬送ホース28内へ送られる。
【0030】
搬送ホース28は、各条ごとに繰出機構26から後述の植付爪45による植付位置近傍の施肥位置まで延設されており、植付条数と同数、即ち本実施形態では八つ備えられる。搬送ホース28は、各条に繰出機構26より落下した肥料を案内するものである。各搬送ホース28はそれぞれ送風パイプに連結されており、ブロワ27から送られる風は送風パイプを通って搬送ホース28へ流入する。
【0031】
このような構成において、ホッパ25から繰出機構26によって搬送ホース28内へと供給された肥料は、ブロワ27から供給される風により、搬送ホース28を介して植付位置近傍まで搬送され、圃場に放出される。このようにして、施肥装置22により圃場に施肥が行われる。
【0032】
植付部40においては、植付ミッションケースが植付フレーム49の下部中央付近に支持され、伝動軸ケースが当該植付ミッションケースから左右両側方に延設される。四つの植付伝動ケース46がそれぞれ前記伝動軸ケースから後方に延設されて、左右方向に適宜の間隔をとって配置される。
【0033】
ロータリケース44が各植付伝動ケース46の後端部左右両側に回動自在に支持される。ロータリケース44は植付条数と同数、即ち本実施形態では八つ備えられる。そして、二つの植付爪45が、ロータリケース44の回転支点を挟むように、このロータリケース44の長手方向両側にそれぞれ取り付けられる。
【0034】
苗載台41が植付伝動ケース46の上方に前高後低の傾斜状態で配置されて、植付フレーム49の後部に上下のガイドレールを介して左右方向に往復動可能に取り付けられる。苗載台41は、図示せぬ横送り機構により左右往復横送り可能とされる。
【0035】
複数条(8条)の苗マット載置部を備える苗載台41は、それぞれの下端側が一つのロータリケース44と対向するように、左右方向に並べられる。そして、苗マットが各苗載台41に載置されて、ロータリケース44の回転時に植付爪45により1株の苗が当該苗載台41上の苗マットから切り取り可能とされる。
【0036】
条数に合わせた苗縦送りベルト47が苗載台41に設けられる。苗縦送りベルト47は、苗載台41が左右往復横送りのストローク端に到達するごとに、縦送り機構により苗載台41上の苗マットを下方へ向かって縦送りするように作動可能とされる。
【0037】
そして、エンジン14の動力が植付ミッションケースなどを介して各ロータリケース44に伝達されて、このロータリケース44が回転作動するように構成される。これにより、ロータリケース44の回転作動にともなって、二つの植付爪45が交互に苗を苗載台41上の苗マットから取り出して圃場に植付可能とされる。
【0038】
同時に、エンジン14の動力が植付ミッションケースなどを介して横送り機構および縦送り機構に伝達されて、苗載台41が横送り機構により左右往復横送りされ、苗載台41上の苗マットが載台の左右往復横送りに応じて縦送り機構により苗縦送りベルト47を介して下方へ向けて縦送りされるように構成される。これにより、苗載台41上の苗マットが植付爪45に対して適切な位置に移動される。
【0039】
ここで、エンジン14から施肥装置22、ロータリケース44、横送り機構および縦送り機構に動力を伝達するための動力伝達機構は、植付クラッチを含み、植付クラッチの断接に応じて、エンジンの動力が苗縦送りベルト47とロータリケース44とに伝達され、または、伝達されないように構成される。この植付クラッチの断接は、後述する条止めスイッチ62、63、64、65の操作により切り替えられる。
【0040】
植付部40においては、また、中央2条分ずつの圃場面を整地する左右のセンターフロート42と、左右2条分ずつの圃場面を整地する左右のサイドフロート43とが、それぞれの前部側が後部側を回動支点として上下動自在となるように植付フレーム49側に支持されて、植付伝動ケース46の下方に配置される。
【0041】
植付部40においては、また、線引きマーカ48が植付フレーム49の下部の左右両側に回動可能に支持される。左右の各線引きマーカ48は、その基端側を回動支点として、上方へ向かって回動されることにより収納され、この収納状態から下方へ向かって回動されることにより先端側を左または右側方へ突出させて、圃場に線引きを行うことができるように構成される。
【0042】
また、前述の昇降機構30が走行部10と植付部40との間に設けられる。具体的には、トップリンク31とロワリンク32とが走行部10と植付部40との間に架設され、昇降用シリンダがロワリンク32と走行部10との間に連結される。そして、この昇降用シリンダの伸縮動作によって、植付部40が走行部10に対して上下方向に回動可能、即ち昇降可能とされる。
【0043】
次に、ダッシュボード17およびその周囲の構成について、図3、図4、図5を用いて説明する。
【0044】
なお、以下の説明では、ダッシュボード17の上面が形成する面をダッシュボード面17aとし、操向ハンドル18の上面が形成する面をハンドル面18aとし、植付操作パネル51の上面が形成する面を植付操作パネル面51aとし、表示パネル50の上面が形成する面を表示パネル面50aとする。
【0045】
図1、図3に示すように、コラム8がボンネット15の後部付近に立設されて、ダッシュボード17が当該コラム8の上部に張設されている。そして、環状の操向ハンドル18がダッシュボード17の上方に配置されて、ダッシュボード面17aから上方に向かって突出されたハンドル軸9の突出端部に連結されている。
【0046】
ダッシュボード面17aは、側面視で前高後低となるように後下がりに傾斜した状態に形成されて、運転席19に向かって下り傾斜する傾斜面とされる。このダッシュボード面17aの略左右中央であって前後中央よりもやや後側に、ハンドル軸9が軸心方向を当該ダッシュボード面17aと直交させるように配置されている。また、ダッシュボード面17aには、植付操作パネル51と表示パネル50とが配設されている。
【0047】
図3、図4、図5に示すように、ダッシュボード面17aにおいて、ハンドル軸9の前方であって、ダッシュボード面17aの左右方向略中央部に、表示パネル50が配置されている。表示パネル50は、長手方向を左右に向けた略長方形状の画面で構成されており、植付部40における作業状況を表示可能に構成される。
【0048】
また、ダッシュボード面17aにおいて、ハンドル軸9の後方には、略長方形状の植付操作パネル51が設けられている。植付操作パネル面51aには、植付作業時に使用する植付用操作手段が設けられている。好ましくは、植付用操作手段には、植付作業時に使用頻度が高い操作手段が設けられる。
【0049】
本実施形態においては、植付操作パネル面51aに、植付用操作手段として、条止め操作ユニット60、感度ボリューム55、ブザー停止スイッチ56が配置されている。また、植付操作パネル面51aには、エンジンキー差込口57が配置されている。なお、植付操作パネル面51aに配置される植付用操作手段は、これらに限定されるものではない。
【0050】
表示パネル50の表示パネル面50aと植付操作パネル51の植付操作パネル面51aとは、ダッシュボード面17aにおいて、ハンドル軸9を挟んで前後に配置され、側面視で互いに略平行な傾斜面とされている。そして、運転席19に着座した作業者から見て、表示パネル面50aが環状の操向ハンドル18の内周側に位置し、植付操作パネル面51aが操向ハンドル18の後部付近に位置するようになっている。
【0051】
図4、図5に示すように、条止め操作手段である条止め操作ユニット60は、自動マーカスイッチ61、条止めスイッチ62、63、64、65を有する。自動マーカスイッチ61、条止めスイッチ62、63、64、65は、それぞれ隣り合うスイッチと左右方向に所定間隔を開けて、左方から順に配置されている。
【0052】
自動マーカスイッチ61は、植付作業時に適切な隣接条間を保ち、直進の目標となるように圃場上面に線を引く線引きマーカ48の出し入れ(突出または収納)を、田植機1の旋回操作に伴い、左右交互に自動的に切り替えるように設定するスイッチである。
【0053】
条止めスイッチ62、63、64、65は、上述の施肥装置22及び植付クラッチを操作するスイッチである。条止めスイッチ62、63、64、65を一度操作することによって、施肥装置22の条止めクラッチが断となり、植付クラッチが作動して断となり、操作されたスイッチに対応した条の繰出機構26と苗縦送りベルト47とロータリケース44とに動力が伝達されなくなって、繰出機構26と苗縦送りベルト47とロータリケース44が停止する。この状態で、条止めスイッチ62、63、64、65を再度操作することによって、植付クラッチが作動して接となり、操作されたスイッチに対応した条の繰出機構26と苗縦送りベルト47とロータリケース44とに動力が伝達されて、繰出機構26と苗縦送りベルト47とロータリケース44が作動する。
【0054】
感度ボリューム55は、圃場の硬軟に応じて感度を調節するものであり、フロートセンサからの信号に対する昇降アクチュエータの昇降作動を、硬い場合には鈍感とし、柔らかい場合には敏感となるように調節するものである。
【0055】
ブザー停止スイッチ56は、植付クラッチ警報、苗つぎ警報、肥料補給警報、肥料詰り警報等のために、走行部10または植付部40に設けられた警報ブザーが鳴ったとき、作業者が認識すれば手動で警報ブザーの鳴動を停止させるためのスイッチである。
【0056】
エンジンキー差込口57は、電源をONとし、エンジン14を始動させるためにキーを差し込む穴である。作業者がキーを差し込み、電源をON位置から始動位置まで回すと、セルモータが回転し、エンジン14が始動する。
【0057】
このように、条止め操作ユニット60、感度ボリューム55、ブザー停止スイッチ56からなる植付用操作手段が植付操作パネル面51aに配置される一方、この植付用操作手段以外の操作手段がダッシュボード面17aに配置されている。
【0058】
操向ハンドル18及び植付操作パネル51の左方には、走行変速用操作手段である主変速レバー52が配置されている。主変速レバー52は、ダッシュボード面17aに形成されたガイド溝52aに沿って操作され、田植機1の走行モードを「移動」、「低速前進」、「後進」、「苗継」、「中立」の各走行モードに切り替える操作手段である。
【0059】
図6に示すように、ガイド溝52aは、前後方向に所定幅を有する溝52bと、左右方向に所定幅を有する溝52cと、前後方向に所定幅を有する溝52dとにより構成されている。溝52cは、溝52bと接続されて、この溝52bの前後中央部から右方に延出される。溝52dは、溝52bよりも右側にずれた位置で当該溝52bと接続されて、この溝52bの前端部右側から前方に延出される。
【0060】
ガイド溝52aの後端部の領域、即ち溝52bの後端部の領域は、後進位置P1に設定される。主変速レバー52が後進位置P1に操作されたとき、走行モードが「後進」に切り替えられて、田植機が後進走行可能な状態となる。
【0061】
ガイド溝52aの中央部外側部、即ち溝52bの前端部の領域は、低速前進位置P2に設定される。主変速レバー52が低速前進位置P2に操作されたとき、走行モードが「低速前進」に切り替えられて、田植機が低速で前進走行可能な状態となる。
【0062】
ガイド溝52aの低速前進位置P2と後進位置P1との間で右側方の領域、即ち溝52cの右端部の領域は、苗継位置P3に設定される。主変速レバー52が苗継位置P3に操作されたとき、走行モードが「苗継」に切り替えられて、前車輪12および後車輪13への動力の伝達、並びに苗縦送りベルト47、ロータリケース44および繰出機構26への動力の伝達が停止される。この走行モードは、作業者が植付作業時に運転席19を離れ苗載台41で苗継を行う場合に選択される。
【0063】
ガイド溝52aの後進位置P1と低速前進位置P2との中間部の領域、即ち溝52bの略前後中央部であって溝52cとの接続部付近央部の領域は、中立位置P4に設定される。なお、ガイド溝52aの前端部および後端部以外の領域は中立域となっている。
【0064】
ガイド溝52aの前端部の領域、即ち溝52dの前端部の領域は、移動位置P5に設定される。主変速レバー52が移動位置P5に操作されたとき、走行モードが「移動」に切り替えられて、田植機1が前進走行可能な状態となる。この走行モードは、主に田植機1を道路などにおいて走行させる場合に選択される。
【0065】
ガイド溝52aにおいて、苗継位置P3における溝52cの縁部には、変速操作位置検出手段となるマイクロスイッチ85が配設されている。マイクロスイッチ85は、主変速レバー52が苗継位置P3に操作されたとき、この主変速レバー52と接触して、ON・OFFを切り替えられる。
また、ガイド溝52aにおいて、中立位置P4における溝52bの縁部には、変速操作位置検出手段となる中立位置センサスイッチ86が配設されている。中立位置センサスイッチ86は、主変速レバー52が中立位置P4に操作されたとき、主変速レバー52の位置を感知して、ON・OFFを切り替えられる。
【0066】
また、操向ハンドル18のハンドル軸9には、図4、図5に示すように、速度固定レバー53が設けられている。速度固定レバー53は、変速ペダルの操作により走行部10が所望の走行速度に達したときに操作されて、走行部10がその走行速度を維持しながら走行できるようにするための操作手段である。
【0067】
また、操向ハンドル18の右方には、油圧植付レバー54が設けられている。油圧植付レバー54は、植付部40の昇降、植付の入切、植付時の変速の操作を行う操作手段である。
【0068】
なお、ダッシュボード面17aに配置されるものは以上の操作手段に限定されず、操作手段の配置も図4、図5に示す配置に限定されない。他にダッシュボード面17aに配置される操作手段としては、例えば、速度選択スイッチ71、コンビネーションスイッチ72、油圧ストップスイッチ73、植付部傾斜設定器74、圃場条件スイッチ75、シーソスイッチ76がある。
【0069】
速度選択スイッチ71は、田植機1の速度を「低速」、「中速」、「標準」の各速度モードに切り替える操作手段である。速度選択スイッチ71は、表示パネル50と植付操作パネル51との間かつハンドル軸9の左側方で、表示パネル50寄りに配置されている。
【0070】
コンビネーションスイッチ72は、ホーンボタン、フラッシャスイッチ、ライトスイッチを有する操作手段である。コンビネーションスイッチ72は、表示パネル50と植付操作パネル51との間かつハンドル軸9の左側方で、植付操作パネル51寄りに配置されている。
【0071】
コンビネーションスイッチ72において、中央部のホーンボタンを押すと警報(ホーン)が鳴る。ホーンボタンの下方に位置する略直方体形状のフラッシャスイッチを左右に回転させると、回転させた側のフラッシャランプ(方向指示器)が点滅する。このフラッシャランプの点滅により、田植機1の旋回方向を知らせることが可能となる。ホーンボタンの左方に位置する略直方体形状のライトスイッチを前方に回転させると、前照灯が点灯する。
【0072】
油圧ストップスイッチ73は、植付部40の上昇・下降用の油路の流れを停止させ、植付部40の昇降高さを固定するのに使用する操作手段である。油圧ストップスイッチ73は、表示パネル50と植付操作パネル51との間かつハンドル軸9の右側方で、植付操作パネル51寄りに配置されている。
【0073】
植付部傾斜設定器74は、油圧を制御することにより植付部40の左右水平に対する角度を設定するための操作手段である。植付部傾斜設定器74は、表示パネル50と植付操作パネル51との間かつハンドル軸9の右側方で、表示パネル50寄りに配置されている。
【0074】
圃場条件スイッチ75は、「深水」、「標準」、「枕地」の各圃場の状態に応じて植付深さを設定する操作手段である。圃場条件スイッチ75は、表示パネル50の右側方かつ油圧植付レバー54の前方に配置されている。
【0075】
シーソスイッチ76は、モータの制御により植付部40を前後水平に保つための操作手段である。シーソスイッチ76は、表示パネル50の右側方かつ油圧植付レバー54の前方で圃場条件スイッチ75と並べて配置されている。
【0076】
選択スイッチ77は、主変速レバー52が苗継位置P3に操作されたとき、ブロワ27からの送風を停止状態とするか又は低風量での作動状態とするかのどちらかを選択する選択手段である。選択スイッチ77は、表示パネル50の右側方かつ圃場条件スイッチ75およびシーソスイッチ76の前方に配置されている。但し、配置位置は限定するものではない。
【0077】
次に、施肥装置22の送風手段であるブロワ27の作動及び停止を司るブロワ制御回路について説明する。
【0078】
図7に示すように、田植機1は、ブロワ27やエンジン14等の作動を制御する制御装置80を具備する。但し、エンジン14等の電機部品との接続は省略している。制御装置80の出力側には、ブロワ27のモータが接続されている。一方、制御装置80の入力側には、選択スイッチ77と、タイマ手段であるタイマ81と、昇降位置検知手段である昇降位置検知センサ82と、マイクロスイッチ85と、中立位置センサスイッチ86と、走行状態検出手段である走行速度センサ87と、が接続されている。
【0079】
タイマ81は、ブロワ27が低風量での作業状態となった時点から時間tを計測し、時間tが第一設定時間T1以上となった場合、すなわちブロワ27が低風量での作業状態となった時点から第一設定時間T1が経過した場合には制御装置80に対して信号を送信するものである。該タイマ81には、第一設定時間T1を予め設定するための設定器81aが接続されている。
【0080】
また、昇降位置検知手段である昇降位置検知センサ82は、トップリンク31またはロワリンク32の回動部に取り付けられており、例えばポテンショメータ等のセンサで構成されている。
【0081】
また、走行状態検出手段である走行速度センサ87は、ミッションケースに取付けられている。走行速度センサ87は田植機1の走行速度を検出する。
【0082】
[第一実施形態]
次に苗継作業時のブロワ27の制御方法について図8を用いて説明する。
【0083】
まず、制御装置80は主変速レバー52が苗継位置P3にあるか否かについて判断する(ステップS10)。ここで、主変速レバー52が苗継位置P3に操作されたときは、マイクロスイッチ85がOFFからONに切り替えられることから、制御装置80は主変速レバー52が苗継位置P3にあると判断する。制御装置80は、マイクロスイッチ85がOFFのとき、主変速レバー52が苗継位置P3にないと判断する。
制御装置80は、主変速レバー52が苗継位置P3にないと判断したときは、再びステップS10の判断を行う。
【0084】
主変速レバー52が苗継位置P3にある場合には、制御装置80は、選択スイッチ77で停止状態が選択されているか否かについて判断する(ステップS20)。選択スイッチ77で停止状態が選択されていた場合は、制御装置80はブロワ27を停止させる(ステップS30)。
【0085】
次に、制御装置80は主変速レバー52が苗継位置P3にあるか否かについて判断する(ステップS35)。主変速レバー52が苗継位置P3にある場合には、制御装置80は再びステップS35を行う。また、主変速レバー52が苗継位置P3にない場合には、制御装置80は、ブロワ27を通常の風量で作動させ(ステップS36)、再びステップS10を行う。
【0086】
このように構成することにより、主変速レバー52を苗継位置P3に操作したとき、制御装置80はブロワ27を停止させる。これにより、ブロワ27の省電力化を効果的に図ることができ、騒音も低減できる。
【0087】
また、ステップS20において、選択スイッチ77で停止状態が選択されていなかった場合、すなわち、選択スイッチ77で低風量での作動状態が選択されていた場合は、タイマ81により主変速レバー52が苗継位置P3にある時間tの計測を開始し(ステップS40)、ブロワ27のモータの回転数を低回転として、ブロワ27の風量を低風量とする(ステップS45)。
次に、制御装置80は、主変速レバー52が苗継位置P3にあるか否かについて判断する(ステップS50)。主変速レバー52が苗継位置P3にない場合には、苗継作業から植付作業へ復帰したと判断し、ブロワ27を通常の風量に戻し(ステップS55)、再びステップS10の判断を行う。主変速レバー52が苗継位置P3にある場合には、時間tが第一設定時間T1以上であるか否かについて判断し(ステップS60)、時間tが第一設定時間T1より短い場合には、制御装置80は再びステップS50の判断を行う。
【0088】
また、ステップS60において、時間tが第一設定時間T1以上であると判断された場合は、タイマ81をリセットし(ステップS70)、制御装置80はブロワ27を停止状態へ移行させる(ステップS80)。
【0089】
次に、制御装置80は主変速レバー52が苗継位置P3にあるか否かについて判断する(ステップS85)。主変速レバー52が苗継位置P3にある場合には、制御装置80は再びステップS85を行う。また、主変速レバー52が苗継位置P3にない場合には、制御装置80は、ブロワ27を通常の風量で作動させ(ステップS86)、再びステップS10を行う。
【0090】
このように構成することにより、主変速レバー52を苗継位置P3に操作したとき、第一設定時間T1の間、ブロワ27のモータの回転数を低回転に設定してブロワ27を低風量で作動させる。
そして、第一設定時間T1の間に主変速レバー52を苗継位置P3以外の位置に操作したときは、制御装置80は作業に復帰したものと判断し、ブロワ27の風量を通常に戻して作動させる。また、第一設定時間T1を経過しても主変速レバー52を苗継位置P3に操作した状態で維持したときは、制御装置80はブロワ27を停止状態に移行させる。
これにより、肥料の繰出を停止させた状態でブロワ27の省電力化を図りつつ苗継作業後に植付作業に復帰するのに伴って施肥作業を速やかに再開させることができる。つまり、ブロワ27を苗継作業時の状況に応じて適切な作動状態としながら、ブロワ27の省電力化を図ることができる。
そして、苗継等の作業が終了して、主変速レバー52を苗継位置P3から低速前進位置P2や移動位置P5に操作した場合には、マイクロスイッチ85がOFFとなり、ブロワ27が再度作動される。
【0091】
制御装置80は、昇降位置検知センサ82によって検知された植付部40の位置(高さ)が所定の位置より上方にあるか否かについて判断する。植付部40の位置が所定の位置より上方にあった場合には、制御装置80は、現在植付作業を行っていないと判断して、ブロワ27を低回転での作業状態にするものである。
【0092】
このように構成することにより、苗継作業以外の作業を行うために植付部40を上昇させて施肥作業を中断したとき、ブロワ27の省電力化を図りつつ当該作業後に施肥作業を速やかに再開させることができる。
【0093】
[第二実施形態]
また、主変速レバー52が苗継位置P3に操作された場合には、この操作から第二設定時間T2が経過するまで、ブロワ27を通常の風量とすることもできる。
そこで、苗継作業時のブロワ27の制御方法について図9および図10を用いて説明する。なお、第一実施形態と同一の制御を行う部分については、図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0094】
タイマ81は、ブロワ27が低風量での作業状態となった時点から時間t2を計測し、時間t2が第二設定時間T2以上となった場合、すなわちブロワ27が低風量での作業状態となった時点から第二設定時間T2が経過した場合には制御装置80に対して信号を送信するものである。タイマ81には、第二設定時間T2の設定時間を予め設定するための設定器81aが接続されている。
【0095】
ステップS10において主変速レバー52が苗継位置P3に操作された場合には、主変速レバー52が苗継位置P3にある時間t2の計測を開始し(ステップS110)、時間t2が第二設定時間T2以上であるか否かについて判断する(ステップS120)。ステップS120において、時間t2が第二設定時間T2よりも短い、すなわち、第二設定時間T2を経過していないと判断した場合には、再びステップS120の判断を行う。ステップS120において、時間t2が第二設定時間T2以上である、すなわち、第二設定時間T2が経過したと判断した場合はステップS20を処理し、ステップS20以降は、第一実施形態と同一の制御を行うものである。
【0096】
第二設定時間T2は第一設定時間T1に比べて微小な時間であり、この第二設定時間T2は、肥料が繰出機構26から繰り出されて、ブロワ27から送られる風によって施肥位置まで搬送される時間であり、搬送ホース28が長ければ長いほど長くなる。つまり、第二設定時間T2は、肥料が繰り出されてから施肥位置まで達する時間であり、この第二設定時間T2を経過すると、搬送ホース28内に肥料が残留することはなく、肥料の固化による詰まりが発生する可能性を排除することができる。
【0097】
このように構成することにより、施肥作業を中断するとき、施肥装置22の搬送ホース28内に残留した施肥を排出することができる。
【0098】
[第三実施形態]
また、主変速レバー52が中立位置P4に操作された場合には、ブロワ27を通常の風量とすることもできる。
そこで、主変速レバー52が中立位置P4に操作されたか否かの判別によるブロワ27の制御方法について図11を用いて説明する。なお、第一実施形態と同一の制御を行う部分については、図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
まず、制御装置80は主変速レバー52が中立位置P4にあるか否かについて判断する(ステップS210)。ここで、主変速レバー52が中立位置P4に操作されたときは、中立位置センサスイッチ86がOFFからONに切り替えられることから、制御装置80は主変速レバー52が中立位置P4にあると判断する。制御装置80は、中立位置センサスイッチ86がOFFのとき、主変速レバー52が中立位置P4にないと判断する。
制御装置80は、主変速レバー52が中立位置P4にないと判断したときは、再びステップS210の判断を行う。
【0099】
主変速レバー52が中立位置P4にある場合には、制御装置80は、選択スイッチ77で停止状態が選択されているか否かについて判断する(ステップS20)。選択スイッチ77で停止状態が選択されていた場合は、制御装置80はブロワ27を停止させる(ステップS30)。
【0100】
次に、制御装置80は主変速レバー52が中立位置P4にあるか否かについて判断する(ステップS235)。主変速レバー52が中立位置P4にある場合には、制御装置80は再びステップS235を行う。また、主変速レバー52が中立位置P4にない場合には、制御装置80は、ブロワ27を通常の風量で作動させ(ステップS36)、再びステップS210を行う。
【0101】
このように構成することにより、主変速レバー52を中立位置P4に操作したとき、制御装置80はブロワ27を停止させる。これにより、ブロワ27の省電力化を効果的に図ることができ、騒音も低減できる。
【0102】
また、ステップS20において、選択スイッチ77で停止状態が選択されていなかった場合、すなわち、選択スイッチ77で低風量での作動状態が選択されていた場合は、タイマ81により主変速レバー52が中立位置P4にある時間tの計測を開始し(ステップS40)、ブロワ27のモータの回転数を低回転として、ブロワ27の風量を低風量とする(ステップS45)。
次に、制御装置80は、主変速レバー52が中立位置P4にあるか否かについて判断する(ステップS250)。主変速レバー52が中立位置P4にない場合には、苗継作業から植付作業へ復帰したと判断し、ブロワ27を通常の風量に戻し(ステップS55)、再びステップS210の判断を行う。主変速レバー52が中立位置P4にある場合には、時間tが第一設定時間T1以上であるか否かについて判断し(ステップS60)、時間tが第一設定時間T1より短い場合には、制御装置80は再びステップS250の判断を行う。
【0103】
また、ステップS60において、時間tが第一設定時間T1以上であると判断された場合は、タイマ81をリセットし(ステップS70)、制御装置80はブロワ27を停止状態へ移行させる(ステップS80)。
【0104】
次に、制御装置80は主変速レバー52が中立位置P4にあるか否かについて判断する(ステップS285)。主変速レバー52が中立位置P4にある場合には、制御装置80は再びステップS285を行う。また、主変速レバー52が中立位置P4にない場合には、制御装置80は、ブロワ27を通常の風量で作動させ(ステップS86)、再びステップS210を行う。
【0105】
このように構成することにより、主変速レバー52を中立位置P4に操作したとき、第一設定時間T1の間、ブロワ27のモータの回転数を低回転に設定してブロワ27を低風量で作動させる。
そして、第一設定時間T1の間に主変速レバー52を中立位置P4以外の位置に操作したときは、制御装置80は作業に復帰したものと判断し、ブロワ27の風量を通常に戻して作動させる。また、第一設定時間T1を経過しても主変速レバー52を中立位置P4に操作した状態で維持したときは、制御装置80はブロワ27を停止状態に移行させる。
これにより、肥料の繰出を停止させた状態でブロワ27の省電力化を図りつつ走行停止後に植付作業に復帰するのに伴って施肥作業を速やかに再開させることができる。つまり、ブロワ27を走行停止時の状況に応じて適切な作動状態としながら、ブロワ27の省電力化を図ることができる。
そして、主変速レバー52を中立位置P4から低速前進位置P2や移動位置P5に操作した場合には、中立位置センサスイッチ86がOFFとなり、ブロワ27が再度作動される。
【0106】
[第四実施形態]
また、主変速レバー52が中立位置P4に操作された場合には、この操作から第二設定時間T2が経過するまで、ブロワ27を通常の風量とすることもできる。
そこで、主変速レバー52が中立位置P4に操作されたか否かの判別によるブロワ27の制御方法について図12および図13を用いて説明する。なお、第三実施形態と同一の制御を行う部分については、図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0107】
タイマ81は、ブロワ27が低風量での作業状態となった時点から時間t2を計測し、時間t2が第二設定時間T2以上となった場合、すなわちブロワ27が低風量での作業状態となった時点から第二設定時間T2が経過した場合には制御装置80に対して信号を送信するものである。タイマ81には、第二設定時間T2の設定時間を予め設定するための設定器81aが接続されている。
【0108】
ステップS210において主変速レバー52が中立位置P4に操作された場合には、主変速レバー52が中立位置P4にある時間t2の計測を開始し(ステップS310)、時間t2が第二設定時間T2以上であるか否かについて判断する(ステップS320)。ステップS320において、時間t2が第二設定時間T2よりも短い、すなわち、第二設定時間T2を経過していないと判断した場合には、再びステップS320の判断を行う。ステップS320において、時間t2が第二設定時間T2以上である、すなわち、第二設定時間T2が経過したと判断した場合はステップS20を処理し、ステップS20以降は、第三実施形態と同一の制御を行うものである。
【0109】
第二設定時間T2は第一設定時間T1に比べて微小な時間であり、この第二設定時間T2は、肥料が繰出機構26から繰り出されて、ブロワ27から送られる風によって施肥位置まで搬送される時間であり、搬送ホース28が長ければ長いほど長くなる。つまり、第二設定時間T2は、肥料が繰り出されてから施肥位置まで達する時間であり、この第二設定時間T2を経過すると、搬送ホース28内に肥料が残留することはなく、肥料の固化による詰まりが発生する可能性を排除することができる。
【0110】
このように構成することにより、施肥作業を中断するとき、施肥装置22の搬送ホース28内に残留した施肥を排出することができる。
【0111】
[第五実施形態]
また、走行速度センサ87により走行停止状態であると判断された場合には、ブロワ27を通常の風量とすることもできる。
そこで、走行停止状態であるか否かの判別によるブロワ27の制御方法について図14を用いて説明する。なお、第一実施形態と同一の制御を行う部分については、図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
まず、制御装置80は走行速度センサ87によって検出する速度に基づいて走行停止状態であるか否かについて判断する(ステップS410)。ここで、走行速度センサ87によって検出された速度が0である場合を走行停止状態と定義し、それ以外の状態を走行状態と定義する。
制御装置80は、走行状態であると判断した場合は、再びステップS410の判断を行う。
【0112】
走行停止状態であると判断した場合には、制御装置80は、選択スイッチ77で停止状態が選択されているか否かについて判断する(ステップS20)。選択スイッチ77で停止状態が選択されていた場合は、制御装置80はブロワ27を停止させる(ステップS30)。
【0113】
次に、制御装置80は走行停止状態であるか否かについて判断する(ステップS435)。走行停止状態である場合には、制御装置80は再びステップS435を行う。また、走行状態である場合には、制御装置80は、ブロワ27を通常の風量で作動させ(ステップS36)、再びステップS410を行う。
【0114】
このように構成することにより、走行停止状態であるとき、制御装置80はブロワ27を停止させる。これにより、ブロワ27の省電力化を効果的に図ることができ、騒音も低減できる。
【0115】
また、ステップS20において、選択スイッチ77で停止状態が選択されていなかった場合、すなわち、選択スイッチ77で低風量での作動状態が選択されていた場合は、タイマ81により走行停止状態である時間tの計測を開始し(ステップS40)、ブロワ27のモータの回転数を低回転として、ブロワ27の風量を低風量とする(ステップS45)。
次に、制御装置80は、走行停止状態であるか否かについて判断する(ステップS450)。走行状態である場合には、植付作業へ復帰したと判断し、ブロワ27を通常の風量に戻し(ステップS55)、再びステップS410の判断を行う。走行停止状態である場合には、時間tが第一設定時間T1以上であるか否かについて判断し(ステップS60)、時間tが第一設定時間T1より短い場合には、制御装置80は再びステップS450の判断を行う。
【0116】
また、ステップS60において、時間tが第一設定時間T1以上であると判断された場合は、タイマ81をリセットし(ステップS70)、制御装置80はブロワ27を停止状態へ移行させる(ステップS80)。
【0117】
次に、制御装置80は走行停止状態であるか否かについて判断する(ステップS485)。走行停止状態である場合には、制御装置80は再びステップS485を行う。また、走行状態である場合には、制御装置80は、ブロワ27を通常の風量で作動させ(ステップS86)、再びステップS410を行う。
【0118】
このように構成することにより、走行停止状態であるとき、第一設定時間T1の間、ブロワ27のモータの回転数を低回転に設定してブロワ27を低風量で作動させる。
そして、第一設定時間T1の間に走行状態となったときは、制御装置80は作業に復帰したものと判断し、ブロワ27の風量を通常に戻して作動させる。また、第一設定時間T1を経過しても走行停止状態を維持したときは、制御装置80はブロワ27を停止状態に移行させる。
これにより、肥料の繰出を停止させた状態でブロワ27の省電力化を図りつつ走行停止後に植付作業に復帰するのに伴って施肥作業を速やかに再開させることができる。つまり、ブロワ27を走行停止時の状況に応じて適切な作動状態としながら、ブロワ27の省電力化を図ることができる。
そして、走行状態となった場合には、ブロワ27が再度作動される。
【0119】
[第六実施形態]
また、走行停止状態となった場合には、この時点から第二設定時間T2が経過するまで、ブロワ27を通常の風量とすることもできる。
そこで、走行状態であるか否かの判別によるブロワ27の制御方法について図15および図16を用いて説明する。なお、第五実施形態と同一の制御を行う部分については、図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0120】
タイマ81は、ブロワ27が低風量での作業状態となった時点から時間t2を計測し、時間t2が第二設定時間T2以上となった場合、すなわちブロワ27が低風量での作業状態となった時点から第二設定時間T2が経過した場合には制御装置80に対して信号を送信するものである。タイマ81には、第二設定時間T2の設定時間を予め設定するための設定器81aが接続されている。
【0121】
ステップS410において走行停止状態となった場合には、走行停止状態である時間t2の計測を開始し(ステップS510)、時間t2が第二設定時間T2以上であるか否かについて判断する(ステップS520)。ステップS520において、時間t2が第二設定時間T2よりも短い、すなわち、第二設定時間T2を経過していないと判断した場合には、再びステップS520の判断を行う。ステップS520において、時間t2が第二設定時間T2以上である、すなわち、第二設定時間T2が経過したと判断した場合はステップS20を処理し、ステップS20以降は、第三実施形態と同一の制御を行うものである。
【0122】
第二設定時間T2は第一設定時間T1に比べて微小な時間であり、この第二設定時間T2は、肥料が繰出機構26から繰り出されて、ブロワ27から送られる風によって施肥位置まで搬送される時間であり、搬送ホース28が長ければ長いほど長くなる。つまり、第二設定時間T2は、肥料が繰り出されてから施肥位置まで達する時間であり、この第二設定時間T2を経過すると、搬送ホース28内に肥料が残留することはなく、肥料の固化による詰まりが発生する可能性を排除することができる。
【0123】
このように構成することにより、施肥作業を中断するとき、施肥装置22の搬送ホース28内に残留した施肥を排出することができる。
【0124】
以上のように、走行部10に植付部40を昇降可能に連結した田植機1において、苗継位置P3を含む複数段の変速操作位置に操作可能な主変速レバー52と、主変速レバー52が苗継位置P3にあることを検出するマイクロスイッチ85と、肥料を収容するホッパ25、ホッパ25の下部に配設され肥料を所定量ずつ繰り出す繰出機構26、および繰り出した肥料を施肥位置まで搬送するブロワ27を有する施肥装置22と、主変速レバー52が苗継位置P3に操作されているときのブロワ27の作動状態を停止状態または低風量での作動状態の一方に選択するための選択スイッチ77と、田植機1が走行状態にあるか否かを検出する走行速度センサ87と、ブロワ27の作動を制御して、マイクロスイッチ85により主変速レバー52が苗継位置P3若しくは中立位置P4に操作されたことが検出されたとき又は走行速度センサ87により走行停止状態であることが検出されたときは、ブロワ27を選択スイッチ77による選択に基づいて停止状態または低風量での作動状態にする制御装置80と、を具備するものである。
このように構成することにより、苗継作業時における施肥装置22のブロワ27の作動状態として、停止状態または低風量での作動状態を択一的に選択することが可能となる。したがって、停止状態を選択した場合、ブロワ27の省電力化を効果的に図ることができる。一方、低風量での作動状態を選択した場合、肥料の繰出を停止させた状態でブロワ27の省電力化を図りつつ苗継作業後に植付作業に復帰するのに伴って施肥作業を速やかに再開させることができる。つまり、ブロワ27を苗継作業時の状況に応じて適切な作動状態としながら、ブロワ27の省電力化を図ることができる。
【0125】
また、主変速レバー52が苗継位置P3に操作された時点からの経過時間tを計測するタイマ81を具備し、制御装置80は、選択スイッチ77により低風量での作動状態が選択されている場合、タイマ81の計測結果である経過時間tと第一設定時間T1とを比較して、主変速レバー52が苗継位置P3に操作された時点から、予め設定された第一設定時間T1以上経過したとき、ブロワ27を低風量での作動状態から停止状態にするものである。
このように構成することにより、苗継作業が所定時間内に終わらないとき、ブロワ27を低風量での作動状態から停止状態に変更することが可能となる。したがって、ブロワ27を無駄に作動させることがなくなり、省電力化を図ることができる。
【0126】
また、植付部40の位置を検知する昇降位置検知センサ83を具備し、制御装置80は、昇降位置検知センサ83により検出した植付部40の位置が設定高さ以上に上昇したか否かを判断し、ことが検知されると、ブロワ27を低風量での作動状態とするものである。
このように構成することにより、苗継作業以外の作業を行うために植付部40を上昇させて施肥作業を中断したとき、ブロワ27の省電力化を図りつつ当該作業後に施肥作業を速やかに再開させることができる。
【0127】
また、主変速レバー52が苗継位置P3に操作された時点からの経過時間t2を計測するタイマ81を具備し、制御装置80は、タイマ81の計測結果である経過時間t2と第二設定時間T2とを比較して、主変速レバー52が苗継位置P3に操作された時点から、第二設定時間T2を経過するまでは、ブロワ27の作動状態を変更せず、第二設定時間T2以上経過したときには、ブロワ27を選択スイッチ77による選択に基づいて停止状態または低風量での作動状態にするものである。ここでの第二設定時間T2は、第一設定時間T1よりも短く設定される。
このように構成することにより、主変速レバー52を苗継位置P3に操作して、施肥装置22の繰出機構26を停止させても、ブロワ27を即座には停止させずに第二設定時間T2が経過するまでは作動させることが可能となり、繰出機構26から施肥位置までの搬送ホース28内に残る肥料を、確実に排出することができる。したがって、残留した肥料によって搬送ホース28に詰まりが生じる可能性を排除することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 田植機
10 走行部
22 施肥装置
25 ホッパ
26 繰出機構
27 ブロワ
28 搬送ホース
40 植付部
52 主変速レバー
77 選択スイッチ
80 制御装置
81 タイマ
82 昇降位置検知センサ
85 マイクロスイッチ
87 走行速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部に植付部を昇降可能に連結した田植機において、
苗継位置を含む複数段の変速操作位置に操作可能な走行変速用操作手段と、
前記走行変速用操作手段が苗継位置にあることを検出する変速操作位置検出手段と、
肥料を収容するホッパ、前記ホッパの下部に配設され肥料を所定量ずつ繰り出す繰出手段、および繰り出した肥料を施肥位置まで搬送する送風手段を有する施肥装置と、
前記走行変速用操作手段が苗継位置に操作されているときの前記送風手段の作動状態を停止状態または低風量での作動状態の一方に選択するための選択操作手段と、
田植機が走行状態にあるか否かを検出する走行状態検出手段と、
前記送風手段の作動を制御して、前記変速操作位置検出手段により前記走行変速用操作手段が苗継位置若しくは中立位置に操作されたことが検出されたとき又は走行状態検出手段により走行停止状態であることが検出されたときは、前記送風手段を前記選択手段による選択に基づいて停止状態または低風量での作動状態にする制御装置と、を具備することを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記走行変速用操作手段が苗継位置に操作された時点からの経過時間を計測するタイマ手段を具備し、
前記制御装置は、前記選択操作手段により低風量での作動状態が選択されている場合、前記タイマ手段の計測結果に基づいて、前記走行変速用操作手段が苗継位置に操作された時点から、予め設定された第一設定時間以上経過したとき、前記送風手段を低風量での作動状態から停止状態にすることを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記植付部の位置を検知する昇降位置検知手段を具備し、
前記制御装置は、前記昇降位置検知手段により検出した植付部の位置が設定高さ以上に上昇したか否かを判断し、設定高さ以上に設定高さ以上に上昇したときには、前記送風手段を低風量での作動状態とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の田植機。
【請求項4】
前記走行変速用操作手段が苗継位置に操作された時点からの経過時間を計測するタイマ手段を具備し、
前記制御装置は、前記タイマ手段の計測結果に基づいて、前記走行変速用操作手段が苗継位置に操作された時点から、予め設定された第二設定時間を経過するまでは、前記送風手段の作動状態を変更せず、前記第二設定時間以上経過したときには、前記送風手段を前記選択手段による選択に基づいて停止状態または低風量での作動状態にする、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−62173(P2011−62173A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217628(P2009−217628)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】