説明

田植機

【課題】植付部の上昇をともなうことなく植付部の駆動を停止させることができ、圃場面に苗を植え付ける植付作業の作業性の向上を図った田植機を提供する。
【解決手段】植付部3の昇降を切り替える昇降シリンダ43と、植付クラッチ33の入切を切り替えるクラッチモータ34と、植付部3の下部に設けたセンターフロート38の接地を検出するフロート接地検出手段21と、クロスレバー61の操作を検出するレバー位置センサー62と、植付部3の昇降と植付クラッチ33の入切を制御するコントローラ46とを備え、クロスレバー61は中央を中立位置とし、少なくとも2方向に操作可能な中央復帰型スイッチで構成し、コントローラ46はセンターフロート39の接地が検出され、且つ植付クラッチ33がON状態のとき、クロスレバー61が1回上昇操作されると昇降シリンダ43を作動させず、クラッチモータ34を作動させて植付クラッチ33をOFF状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行部の後方において、植付部を昇降可能に備えた田植機の技術に関し、より詳しくは、前記植付部の制御方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、走行部の後方に植付部を昇降可能に連結し、操向ハンドルの近傍に設けた操作スイッチなどによって、前記植付部の昇降動作や、前記植付部の駆動・停止動作などを制御する田植機は、公知となっている(例えば、「特許文献1」を参照。)。
このような田植機においては、圃場面に苗を植え付ける植付作業中に、植付部を停止させる必要が生じた場合、該植付部を一旦上昇させたうえで、該植付部の駆動の断接を行う植付クラッチを切断する必要があった。
よって、植付部を上昇させたまま圃場面を走行すれば、該圃場面に車輪跡が残るため、植付部を停止させる必要が生じた場合には、その都度、田植機の走行を停止させる必要があった。
また、植付部を上昇させると、植付作業の進行方向をマーキングする線引きマーカは、前記植付部にともなって上方に回動される。しかし、植付部を下降させると、前記線引きマーカは、前記植付部にともなうことなく、上方に停止した状態を維持することとなる。よって、植付部を下降させ、該植付部の駆動を開始した直後においては、再度線引きマーカを下方に回動させて操作しなおす必要があった。
【0003】
このように、従来の田植機においては、植付部の停止にともなって、走行の停止や、線引きマーカの再操作を余儀なく課されることとなり、前記植付作業に関する作業性や操作性の向上を図る必要があった。
【0004】
また、従来の田植機においては、植付部の前部に圃場面を整地する整地ロータが備えられており、操作スイッチによって該整地ロータの駆動の入操作が行われた状態で、植付部が最上位位置にまで上昇されると、該整地ロータの駆動は停止することとなっている。
ここで、例えば自由降下や振動などによって、植付部が意図せず最上位位置以外の位置に下降すれば、無駄に整地ロータの駆動が開始され、前記植付作業に関する作業性や操作性の向上を図る必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3236574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上に示した現状の問題点に鑑みてなされたものであり、走行部の後方に植付部を昇降可能に連結し、操向ハンドルの近傍に設けた操作スイッチなどによって、前記植付部の昇降動作や、前記植付部の駆動・停止動作などを制御する田植機であって、前記植付部の上昇をともなうことなく、前記植付部の駆動を停止させることができ、圃場面に苗を植え付ける植付作業の作業性や操作性の向上を図った田植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、走行機体の後部に植付部を昇降可能に設け、該走行機体に設けた運転操作部に、該植付部の昇降および植付クラッチの入切を操作する植付操作手段を配設した田植機において、植付部の昇降を切り替える昇降用アクチュエータと、植付クラッチの入切を切り替える植付用アクチュエータと、植付部の下部に設けたフロートの接地を検出するフロート接地検出手段と、植付操作手段の操作を検出する手段と、植付部の昇降および植付クラッチの入切を制御する制御装置と、を備え、前記植付操作手段は、中央を中立位置とし、少なくとも2方向に操作可能な中央復帰型のスイッチで構成し、前記制御装置は、前記フロート接地検出手段によって前記フロートの接地が検出され、且つ前記植付クラッチが「入」状態のとき、前記植付操作手段が1回上昇操作されると、前記昇降用アクチュエータを作動させず、前記植付用アクチュエータを作動させて、植付クラッチを「切」状態にするものである。
【0009】
請求項2においては、請求項1に記載の田植機であって、前記制御装置は、前記フロート接地検出手段によって前記フロートの非接地状態が検出され、且つ前記植付部が下降中であり、且つ前記植付クラッチが「入」状態のとき、前記植付操作手段が上昇操作されると、前記昇降用アクチュエータを停止させるとともに、前記植付用アクチュエータを作動させて、植付クラッチを「切」状態にするものである。
【0010】
請求項3においては、請求項1に記載の田植機であって、前記制御装置は、前記フロート接地検出手段によって前記フロートの非接地状態が検出され、且つ前記植付部が最上昇位置よりも下方の位置にて停止しており、且つ前記植付クラッチが「入」状態のとき、前記植付操作手段が上昇操作されると、前記昇降用アクチュエータを作動させて、植付部を上昇させるとともに、前記植付用アクチュエータを作動させて、植付クラッチを「切」状態にし、このような前記植付部の上昇中に、前記植付操作手段が下降操作されると、前記植付クラッチの「切」状態を維持しつつ、昇降用アクチュエータを停止させ、さらに、このような昇降アクチュエータの停止中に、再び前記植付操作手段が下降操作されると、前記昇降用アクチュエータを作動させて、植付部を下降させるとともに、前記植付クラッチの「切」状態を維持するものである。
【0011】
請求項4においては、走行機体の後部に植付部を昇降可能に設け、該植付部の前部に整地ロータを作用位置と収納位置に変更可能に配設するとともに、前記走行機体に設けた運転操作部に、前記植付部の昇降および植付クラッチの入切を操作する植付操作手段と、前記整地ロータの駆動の入切を操作するロータ操作手段とを配設した田植機において、整地ロータの駆動の入切を切り替えるロータ駆動アクチュエータと、植付部の最上昇位置を検出する手段と、植付部の昇降を切り替える昇降用アクチュエータと、植付クラッチの入切を切り替える植付用アクチュエータと、植付操作手段の操作を検出する手段と、植付部の昇降と、植付クラッチの入切と、整地ロータの駆動の入切とを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記ロータ操作手段によって前記整地ロータの駆動の入操作が行われ、且つ前記植付操作手段による前記植付部の下降操作が検出され、且つ前記植付部が最上昇以外の位置にあることが検出されると、前記ロータ駆動アクチュエータを「入」状態にするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明における田植機によれば、植付部の上昇をともなうことなく、該植付部の駆動を停止させることができ、圃場面に苗を植え付ける植付作業の作業性や操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係る田植機の全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】植付部の制御ブロック図。
【図4】操作パネルをハンドル軸の軸心上から見た図。
【図5】クロスレバーの傾倒操作の前後における植付部の昇降状態や、植付クラッチの断接状態や、センサーフロートの接地状態について、表によって示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、図中の矢印Fで示す方向を田植機1の前進方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等はこの前進方向を基準とするものである。
【0015】
まず、本発明に関わる田植機1の全体構成について、図1および図2を用いて説明する。
田植機1は、走行部2の後部に、昇降リンク機構4を介して植付部3を配設したものであり、走行部2により走行しながら、植付部3により苗を圃場に植え付けるように構成されている。なお、本実施例では、田植機1は、8条植えの乗用田植機とするが、特に限定するものではなく、例えば、6条植えや10条植えの乗用田植機であってもよい。
【0016】
走行部2においては、車体フレーム5の前部上に、エンジン6が載置されて、ボンネット11により上方および側方から覆われるとともに、エンジン6後方の車体フレーム5には、ミッションケース77が支持される。さらに、車体フレーム5の前下部には、フロントアクスルケース7を介して左右の前輪8・8が支持されるとともに、車体フレーム5の後部には、リアアクスルケース9を介して左右の後輪10・10が支持されている。
【0017】
これにより、エンジン6からの動力が、ミッションケース77に入力された後、該ミッションケース77内にある油圧式無段変速装置等の変速機構によって変速され、この変速動力が、前記左右の前輪8・8と左右の後輪10・10とにそれぞれ伝達され、走行部2が前進走行または後進走行できるようにしているのである。
【0018】
走行部2において、車体フレーム5上部の前後方向中央部には、運転操作部15が配設される。前記運転操作部15の前方には、ボンネット11が設けられ、該ボンネット11後部には、ダッシュボード14が配設される。
【0019】
そして、ダッシュボード14の上部には、操作パネル24が設けられ、該操作パネル24に、操向ハンドル16や、後述する各種操作具・表示具が配設されている。また、操向ハンドル16の後方には、運転席18が配設され、該運転席18の周囲には、乗降用や苗補給用のステップ等が形成されているのである。
【0020】
植付部3において、走行部2の後方には、植付フレーム29が配設され、該植付フレーム29下部の中央付近には、図示せぬ植付ミッションケースが支持される。また、前記植付ミッションケースより左右両側方に延出された伝動軸ケース47からは、4個の植付伝動ケース26・26・・・が後方に延設されるとともに、該植付伝動ケース26・26・・・は、左右方向に適宜の間隔をとって配設されている。
【0021】
そして、植付伝動ケース26後端部の左右両側には、ロータリーケース27が回動自在に支持され、該ロータリーケース27には、回動支点を挟んで長手方向両側にそれぞれ2個の植付爪28・28が支持されているのである。
なお、ロータリーケース27は、植付条数と同数、即ち、本実施例では、8個備えられている。
【0022】
植付伝動ケース26の上方には、前高後低の傾斜状態で苗載台25が配設されている。
前記苗載台25は、前記植付フレーム29の後部に、上下の図示せぬガイドレールを介して支持されており、図示せぬ横送り機構によって、左右方向に往復横送り可能に構成される。
【0023】
そして、前記苗載台25は、8条分設けられ、その下端側が前記各ロータリーケース27と対向するように、左右方向に並設されており、前記ロータリーケース27が回転すると、植付爪28によって、該当する苗載台25上の苗マットから、1株の苗が切り取られるようにしている。
【0024】
また、図2に示すように、苗載台25には、条数に合わせた苗縦送りベルト32が設けられている。
前記苗縦送りベルト32は、苗載台25が左右往復横送りのストローク端に到達するごとに、図示せぬ縦送り機構により、苗載台25上の苗マットを下方へ向かって縦送りするようにしているのである。
【0025】
以上のような構成において、エンジン6からの動力が、前述した植付ミッションケース等を介して各ロータリーケース27に伝達されると、該ロータリーケース27が回転するとともに、ロータリーケース27の前後の植付爪28により苗載台25上の苗マットから苗が交互に取り出され、これにより、苗が圃場に植え付けられていく。
【0026】
同時に、エンジン6からの動力が、前記植付ミッションケース等を介して前述した横送り機構と縦送り機構に伝達されると、苗載台25上の苗マットが、苗載台25の左右方向の往復横送りに応じて、縦送り機構により苗縦送りベルト32を介して下方へ向けて縦送りされ、これにより、苗載台25上の苗マットが植付爪28に対して適正な位置に移動する。
【0027】
ここで、前記エンジン6からロータリーケース27、横送り機構、および縦送り機構に動力を伝達するための動力伝達機構において、その伝達経路の途中部には、植付クラッチ33(図3を参照)が介設されている。
【0028】
そして、植付クラッチ33が接続されると、前記エンジン6からの動力が横送り機構、苗縦送りベルト32、およびロータリーケース27に伝達され、逆に、植付クラッチ33が切断されると、エンジン6からの動力は横送り機構、苗縦送りベルト32、およびロータリーケース27には伝達されないのである。
なお、このような植付クラッチ33の接続・切断動作については、後述する各種操作具により、切り替えられるようにしている。
【0029】
植付伝動ケース26の下方には、センターフロート38とサイドフロート39・39とが備えられる。
前記センターフロート38は、左右中央に位置し、センサーフロートとして設けられる。また、前記サイドフロート39・39は、センターフロート38の左右両側に位置するようにして配設される。
【0030】
そして、これらのセンターフロート38およびサイドフロート39・39は、それぞれの前部側が後部側を回動支点として上下動するように支持され、田植機1の走行にともなって、圃場面を整地するように構成されているのである。
【0031】
図1に示すように、フロート38・39・39と後輪10・10との間における昇降リンク機構4の下方には、整地装置51が配設される。
前記整地装置51は、これらのフロート38・39・39の前方に配設され、左右方向に延出する整地ロータ52を具備し、走行部2のリアアクスルケース9に設けられた動力取出機構53(図3を参照)と、ユニバーサルジョイント65などを介して連動連結されている。
【0032】
ここで、整地ロータ52は、上下方向に延出するリンク機構57の下端部において支持されており、該リンク機構57の上端部は、植付フレーム29に設けた昇降操作レバー55(図3を参照)と連結されている。
【0033】
そして、前記昇降操作レバー55の操作によりリンク機構57を介して整地装置51(より具体的には、整地ロータ52)が、昇降可動する構成となっている。つまり、整地ロータ52は、植付部3に対して昇降可能に構成され、植付部3の昇降とともに昇降される。
【0034】
このように、整地装置51は、前記昇降操作レバー55の上げ操作によりリンク機構57を介して上昇し、上限位置(以下、「収納位置」と記載する)に到達して、収納状態(非接地状態)になる一方、前記昇降操作レバー55の下げ操作によりリンク機構57を介して下降し、下限位置(以下、「作用位置」と記載する)に到達して、植付部3が接地状態の時、圃場の整地可能な状態となるのである。
【0035】
植付フレーム29の下部の左右両側には、それぞれ左右の線引きマーカ40L・40Rが回動自在に支持されている。
前記左右の線引きマーカ40L・40Rは、その基端部40La・40Raを回動支点として上方に回動されることにより収納され、この収納状態から下方に回動されることにより、その先端を左側方または右側方に突出させて、圃場に線引きを行うようにしているのである。
【0036】
次に、以上のような構成からなる田植機1において、昇降リンク機構4、植付クラッチ33、整地ロータ52、および線引きマーカ40L・40Rの手動による駆動制御に関し、図1、図3を用いて説明する。
このうちの昇降リンク機構4は、図1に示すように、植付フレーム29の上下部に後端でそれぞれ軸支されるトップリンク41・ロワリンク42と、運転席18の下方に設ける油圧式の昇降シリンダ43(図3を参照)とによって構成される。
【0037】
そして、トップリンク41の前端は、走行部2のリアフレーム48の上部に軸支される一方、ロワリンク42は、前部に側面視三角状の支持体42aを有し、該支持体42aの前部が、リアフレーム48の下部に軸支されるとともに、支持体42aの上部に、昇降シリンダ43の図示せぬピストンロッドの後端が連結されているのである。
【0038】
図3に示すように、昇降シリンダ43には、電磁制御弁45が接続され、該電磁制御弁45のソレノイドは、信号線を介して、昇降操作や植付操作を制御するコントローラ46に接続されている。
【0039】
そして、コントローラ46からの植付部昇降信号によって電磁制御弁45が作動し、昇降シリンダ43に作動油が供給されてピストンロッドが伸縮し、トップリンク41およびロワリンク42を介して植付部3が昇降される構成となっている。
【0040】
植付クラッチ33には、電動式のクラッチモータ34の出力部が、図示せぬリンク機構を介して連結され、該クラッチモータ34は、信号線を介して前記コントローラ46に接続されている。
【0041】
そして、コントローラ46からのクラッチ断接信号によってクラッチモータ34が作動し、植付クラッチ33が接続または切断されて、エンジン6からの動力が、前述した横送り機構や、苗縦送りベルト32や、ロータリーケース27に対し、伝達または遮断される構成となっている。
【0042】
動力取出機構53には、電動式のクラッチ機構54が設けられ、該クラッチ機構54は、信号線を介して、コントローラ46に接続されている。
【0043】
そして、コントローラ46からのクラッチ断接信号に基づいて、クラッチ機構54が可動し、エンジン6からの動力が、整地ロータ52に対して伝達あるいは遮断される構成となっている。
【0044】
左右の線引きマーカ40L・40Rにおいては、前記基端部40La・40Raに、図示せぬ左右のワイヤを介して、各々電動式の左右のマーカモータ44L・44Rが接続され、該マーカモータ44L・44Rは、信号線を介してコントローラ46に各々接続されている。
【0045】
そして、コントローラ46からのマーカ選択信号によってマーカモータ44L・44Rのいずれかが作動して、前記ワイヤの一方が牽引され、選択された線引きマーカ40Lあるいは線引きマーカ40Rは、その係止が解除されて下方に回動し、圃場に突出される構成となっている。
なお、これら線引きマーカ40L・40Rの収納は、植付部3の上昇にともない図示せぬワイヤが引っ張られ、線引きマーカ40L・40Rが回動しながら引き上げられるようにして行われる。
【0046】
一方、コントローラ46には、入力手段として、様々な検出手段が電気的に接続されている。即ち、コントローラ46には、フロート接地検出手段21や植付部位置検出手段22が電気的に接続されている。
【0047】
そして、フロート接地検出手段21は、センターフロート38の前部上方に配置されて、センターフロート38の上下動を検出することによりセンターフロートが圃場に接地した状態であるか否かを検出して、コントローラ46に出力信号を送信するようになっている。
【0048】
また、植付部位置検出手段22は、昇降リンク機構4の回動部に配置されて、植付部3が最上昇位置に到達した状態であるか否かを検出して、コントローラ46に出力信号を送信するようになっている。
【0049】
このように、昇降リンク機構4の昇降シリンダ43、植付クラッチ33、整地ロータ52の動力取出機構53、線引きマーカ40L・40R、および各種検出手段21・22が接続される前記コントローラ46には、さらに、操作パネル24上に設けた植付操作手段となるクロスレバー61の、操作検出手段としてのレバー位置センサー62が、信号線を介して接続されている。
そして、該レバー位置センサー62によって検出したクロスレバー61の傾倒位置は、レバー位置信号として、前記コントローラ46に送信される。
【0050】
ここで、クロスレバー61は、中央を中立位置70とし、少なくとも2方向に操作可能な中央復帰型のスイッチで構成される。つまり、クロスレバー61は、十字(前後左右)方向に回動操作可能として、回動基部にレバー位置センサー62として4つのスイッチが設けられている。
より具体的には、クロスレバー61は、操作パネル24上を前後左右の方向のみに傾倒可能な傾倒軸部61aと、該傾倒軸部61aの下端で前後左右への傾倒機構を備える基部61bと、前記傾倒軸部61aの上端に設けたグリップ部61cとから構成され、これらのうちの基部61bを覆うカバー63内に、レバー位置センサー62が設けられている。
【0051】
このような構成において、前記クロスレバー61を傾倒操作すると、レバー位置センサー62からの操作信号に基づき、コントローラ46から、植付部昇降信号、クラッチ断接信号、およびマーカ選択信号が、それぞれ電磁制御弁45、クラッチモータ34、クラッチ機構54、およびマーカモータ44L・44Rに送信され、植付部3の昇降、植付クラッチ33の断接、クラッチ機構54の断接、および左右の線引きマーカ40L・40Rの選択が行われるのである。
【0052】
次に、操作パネル24における各種操作具・表示具の配設構成について、図4を用いて説明する。
操作パネル24は、側面視で前高後低となるように後下がりに傾斜されて運転席18(図1を参照)に向かって下り傾斜する傾斜面101と、該傾斜面101よりも大きな傾斜角度を有した傾斜面を有する第一膨出部102・第二膨出部103とから構成され、これらの第一膨出部102・第二膨出部103は、操作パネル24の前後部に形成されている。
【0053】
第一膨出部102は、操作パネル24の前部の左右方向略中央部に形成され、その中に表示パネル104が配設されている。
そして、表示パネル104は、長手方向を左右に向けた略長方形状の画面で構成され、植付部3(図1を参照)における各作業状況を表示できるようにしている。
【0054】
なお、表示パネル104には、以下で説明する条止めスイッチ117・118・119・120や圃場条件スイッチ124等の各操作手段の初期設定状況が表示されるが、本実施例における田植機1においては、この初期設定の項目送りや初期値の確定操作等の機能を、後述するクロスレバー61の傾倒操作によって行うことも可能としている。
これにより、操作性の優れたクロスレバー61を初期設定に使用することができ、各種操作手段の初期設定にかかる時間の短縮や、操作精度の向上を図ることができる。
【0055】
第二膨出部103は、操作パネル24の後部から前後方向略中央にかけて形成されるとともに、幅広の膨出後部103Aと、該膨出後部103Aよりも少し低位にあって、表示パネル104と略同幅内を前方に突出する膨出前部103Bとから構成される。
【0056】
膨出前部103Bの後部略中央には、ハンドル軸17が、軸心方向を前記傾斜面101と直交するようにして配設され、前記ハンドル軸17に、操向ハンドル16が支持されている。
【0057】
また、ハンドル軸17には、速度固定レバー19が設けられており、図示せぬ変速ペダルの操作により走行速度を変更して、作業者が所望する走行速度に達した時に、前記速度固定レバー19を操作することで、走行部2がその走行速度を維持しながら走行できる構成となっている。
【0058】
ここで、操向ハンドル16のハンドル軸17には、操向角度を検出する操向センサ64(図3を参照)が設けられている。
前記操向センサ64は、信号線を介してコントローラ46に接続されており、操向ハンドル16の操向角度を角度信号としてコントローラ46に送信可能としている。
【0059】
そして、コントローラ46が操向センサ64から受信した角度信号に基づいて、マーカモータ44L・44Rにはマーカ選択信号が送信され、自動的に該マーカモータ44L・44Rが作動し、線引きマーカ40L・40Rの係止が解除されて圃場への突出が行われる構成となっている。
【0060】
膨出前部103Bにおいて、ハンドル軸17よりも左方には、速度選択スイッチ等のスイッチ類111とコンビネーションスイッチ112とが各々前後両側に配設され、ハンドル軸17よりも右方には、苗載台25(図1を参照)をストローク端に移動させるための苗台自動端寄せスイッチ113が配設されている。
【0061】
ここで、前記コンビネーションスイッチ112は、ホーンボタン、フラッシャスイッチ、ライトスイッチを有する操作具であり、中央部のホーンボタンを押すと警報が鳴り、ホーンボタンの下方に位置する略直方体形状のフラッシャスイッチを左右に回転させると、回転させた側の図示せぬ方向指示器が点滅する。
なお、前記ホーンボタンの左方に位置する略直方体形状のライトスイッチを前方に回転させると、前照灯が点灯する。
【0062】
また、整地ロータ52は、前記昇降操作レバー55の回動基部にロータスイッチが設けられ、昇降操作レバー55を上昇位置に操作すると、整地ロータの駆動が「切」とされ、下降位置に操作すると「入」位置となり駆動可能とされる。
【0063】
そして、本実施例における田植機1においては、昇降操作レバー55を下降位置にセットした状態で、整地ロータ52の駆動を開始させるための条件として、後述するクロスレバー61の傾倒操作によって、植付部3を下降させるための植付部昇降信号が、コントローラ46から電磁制御弁45に送信され(図3を参照)、且つ前述した植付部位置検出手段22によって、植付部3が最上昇位置に達していない状態であることが検出され、且つ、前記昇降操作レバー55が「入」とされて、整地ロータ52の駆動が指示されていることを必要とする制御方法となっている。
【0064】
即ち、本実施例における田植機1は、走行部(走行機体)2の後部に植付部3を昇降可能に設け、該植付部3の前部に整地ロータ52を作用位置と収納位置に変更可能に配設するとともに、前記走行部(走行機体)2に設けた運転操作部15に、前記植付部3の昇降および植付クラッチ33の入切を操作するクロスレバー(植付操作手段)61と、前記整地ロータ52の駆動の入切を操作する昇降操作レバー(ロータ操作手段)55とを配設した田植機1であって、整地ロータ52の駆動の入切を切り替えるクラッチ機構(ロータ駆動アクチュエータ)54と、植付部3の最上昇位置を検出する手段である植付部位置検出手段22と、植付部3の昇降を切り替える昇降シリンダ(昇降用アクチュエータ)43と、植付クラッチ33の入切を切り替えるクラッチモータ(植付用アクチュエータ)34と、クロスレバー(植付操作手段)61の操作を検出する手段であるレバー位置センサー62と、植付部3の昇降と、植付クラッチ33の入切と、整地ロータ52の駆動の入切とを制御するコントローラ(制御装置)46と、を備え、前記コントローラ(制御装置)46は、前記昇降操作レバー(ロータ操作手段)55によって前記整地ロータ52の駆動の入操作が行われ、且つ前記クロスレバー(植付操作手段)61による前記植付部3の下降操作が検出され、且つ前記植付部3が最上昇以外の位置にあることが検出されると、前記クラッチ機構(ロータ駆動アクチュエータ)54を「入」状態にする構成となっている。
【0065】
このような構成を有することで、本実施例における田植機1においては、昇降操作レバー55によって作用位置にある整地ロータ52の駆動の入操作が行われた状態で、植付部3が最上位位置にまで上昇され、該整地ロータ52の駆動が停止している場合、自由降下や振動などによって、たとえ植付部3が意図せず、最上位位置以外の位置に下降したとしても、整地ロータ52が駆動されることはない。
従って、本実施例における田植機1においては、圃場面に苗を植えつける植付作業中に、植付部3を最上位位置にまで上昇させる必要が生じた場合であっても、無駄に整地ロータ52が駆動されて、田植機1本体の周囲を汚したり、損傷を与えたりするようなこともなく、前記植付作業性の向上を図ることができるのである。
【0066】
苗台自動端寄せスイッチ113の前方には、植付部傾斜設定器114が配設され、該植付部傾斜設定器114の左方には、植付深さを自動調節するか否かを設定するための植付深さ自動調節ダイヤル115が配設されている。
なお、前記植付部傾斜設定器114は、油圧を制御することにより植付部3の左右水平に対する角度を設定するものである。
【0067】
膨出後部103Aの左右略中央には、エンジンキー差込口116が配設され、該エンジンキー差込口116よりも左方には、条止めスイッチ117・118・119・120が備えられる。
【0068】
ここで、エンジンキー差込口116は、電源を「入」とし、エンジン6を始動させるためにキーを差し込む穴であり、作業者がキーを差し込み、電源を入位置から始動位置まで回すと、図示せぬセルモータが回転し、エンジン6が始動される。
【0069】
また、前記条止めスイッチ117・118・119・120は、植付クラッチ33(図1を参照)を操作するスイッチであり、該条止めスイッチ117・118・119・120の入切操作により、対応する条のロータリーケース27の駆動・停止を可能としている。
【0070】
ここで、本実施例における田植機1においては、条止めスイッチ117・118・119・120の操作によって入力された、条止め状態(いずれのロータリーケース27を駆動あるいは停止させるか)に関する情報は、常にコントローラ46に記憶されるようになっている。
【0071】
そして、エンジンキー差込口116にキーが差し込まれ、エンジン6が始動された直後には、該エンジン6が停止された直前における条止め状態に関する情報が、常に復帰されるようになっている。
【0072】
また、本実施例における田植機1においては、コントローラ46に自己保持回路が設けられており、作業者によって、エンジンキー差込口116に差し込まれたキーが、入位置から切位置に回されると、クラッチモータ34(図3を参照)およびクラッチ機構54は、常に切断状態となる構成となっている。
【0073】
従って、再びエンジン6の始動を開始した直後においては、エンジン6からの動力が、常に、横送り機構や苗縦送りベルト32やロータリーケース27、あるいは整地ロータ52に対して遮断された状態となっているため、作業者によっては、エンジン6の始動開始後における田植機1の状態を予期しやすく、該田植機1の操作性を向上させることができる。
【0074】
一方、エンジンキー差込口116よりも右方には、植付速度を設定する植付設定ダイヤル121が配設され、該植付設定ダイヤル121のさらに右方には、感度ボリューム122、ブザー停止スイッチ123が順に配設されている。
【0075】
前記感度ボリューム122は、圃場の硬軟に応じて感度を調節するものであり、前述したセンターフロート38に設けられる図示せぬフロート接地検出手段21(図3を参照)からの信号に対する前記昇降シリンダ43の昇降動作を、圃場が硬い場合には鈍感とし、柔らかい場合には敏感となるように調節するものである。
【0076】
また、前記ブザー停止スイッチ123は、植付クラッチ警報、苗継警報等のために、走行部2または植付部3に設けられた警報ブザーが鳴った時、作業者が認識すれば手動で警報ブザーの鳴動を停止させるものである。
【0077】
傾斜面101のうち、第一膨出部102・第二膨出部103よりも左方の傾斜面101には、主変速レバー66が配設される。
前記主変速レバー66は、ミッションケース77(図1を参照)内の変速機構に連動連結されており、傾斜面101に形成されたガイド溝101aに沿って主変速レバー66を操作すると、田植機1の走行モードを、位置P1で「後進」、位置P2で「低速前進」、位置P3で「苗継」、位置P4で「中立」、位置P5で「移動」の各走行モードに切り替えることができる。
なお、この傾斜面101には、コップ等を置くための円形窪み105が形成されている。
【0078】
一方、第一膨出部102・第二膨出部103よりも右方の傾斜面101には、手前から順に、クロスレバー61、圃場条件スイッチ124、ボンネット解除スイッチ125が配設されている。
【0079】
ここで、前記クロスレバー61は、前述したように、植付部3(図1を参照)の昇降、植付クラッチ33の断接、クラッチ機構54の断接、および左右の線引きマーカ40L・40Rの選択、という複数の操作を単一の操作具に集約可能としたものである。
【0080】
また、前記圃場条件スイッチ124は、「深水」、「標準」、「枕地」の各圃場の状態に応じて植付深さを設定するとともに、図示せぬ油圧ストップバルブの入切によって植付部3の昇降動作の許可と禁止を行う油圧ストップスイッチ機能も備えている。
【0081】
さらに、前記ボンネット解除スイッチ125は、ボンネット11(図1を参照)を開閉するためのものである。
【0082】
ところで、このような傾倒操作が可能なクロスレバー61には、前述した駆動制御が可能なコントローラ46により、傾倒操作に応じて以下のような機能が割り当てられている。
即ち、前記クロスレバー61を中央の中立位置70から1回前方(植付部下降方向)に傾倒すると、植付部下降信号が電磁制御弁45(図3を参照)に送信され、昇降シリンダ43を伸長させて植付部3が下降し、さらに、中立位置70からもう1回前方に傾倒すると、クラッチ接続信号がクラッチモータ34に送信され、植付クラッチ33が接続されて、エンジン6からの動力が苗縦送りベルト32やロータリーケース27に伝達され、これにより、植付作業が開始可能とされる。
【0083】
逆に、前記クロスレバー61を中立位置70から1回後方(植付部上昇方向)に傾倒すると、クラッチ切断信号がクラッチモータ34に送信され、植付クラッチ33が切断されて、植付作業が停止し、さらに、中立位置70からもう1回後方に傾倒すると、植付部上昇信号が電磁制御弁45に送信され、昇降シリンダ43を縮小させて植付部3が上昇する。
【0084】
一方、クロスレバー61を中立位置70から左方に傾倒すると、左のマーカモータ44Lがマーカ選択信号によって作動し、左の線引きマーカ40Lは、その係止が解除されて圃場に突出される。
【0085】
逆に、前記クロスレバー61を中立位置70から右方に傾倒すると、右のマーカモータ44Rがマーカ選択信号によって作動し、右の線引きマーカ44Rは、その係止が解除されて圃場に突出される。
【0086】
このように、クロスレバー61を前後方向に傾倒すると、植付部3の昇降と植付クラッチ33の断接を行い、クロスレバー61を左右方向に傾倒すると、傾倒側にある線引きマーカ40L・40Rを選択するように設定されている。
即ち、植付部3の動作方向がクロスレバー61の傾倒方向と略平行になるとともに、線引きマーカ40L・40Rの動作側がクロスレバー61の傾倒側と一致することとなり、植付部3、左右の線引きマーカ40L・40Rの動作状況と、クロスレバー61の傾倒操作とを、分かり易く関連づけることができる。
【0087】
従って、クロスレバー61の前後方向への傾倒操作に、植付部3の昇降と植付クラッチ33の断接を連動させるとともに、クロスレバー61の左右方向への傾倒操作に、左右の線引きマーカ40L・40Rの選択・解除を連動させる制御構成を備えるので、クロスレバー61の傾倒操作と、植付部3、左右の線引きマーカ40L・40Rの動作状況との関連性を高めることができ、作業者はクロスレバー61の操作方法を容易に理解して、圃場での畦際旋回の際の誤操作や操作遅れを一層確実に防ぐことができるのである。
【0088】
なお、本実施例における田植機1においては、例えば多目的仕様として、走行部2の後部に、昇降リンク機構4を介して、植付部3とは異なる作業機械を装着させるような場合には、クロスレバー61の傾倒操作によって、以下に示すような制御がなされるように構成することも可能である。
【0089】
即ち、走行部2の後部より植付部3が取り外され、且つ昇降リンク機構4を介して、未だ前記作業機械が装着されていない状態においては、昇降リンク機構4の上下方向を移動させたい方向に、クロスレバー61を傾倒操作することによって、実際に昇降リンク機構4が移動し、且つ昇降リンク機構4の移動については、クロスレバー61を実際に傾倒操作している間に限って実行されるような構成としてもよい。
つまり、走行部2の後部において、植付部3あるいは前記作業機械などなにも装着されていない場合においては、クロスレバー61の傾倒操作によって、昇降リンク機構4のインチング操作を行える構成とすることも可能である。
【0090】
このような構成を有することで、本実施例における田植機1においては、昇降リンク機構4の状態について、少しだけ上昇させる、あるいは少しだけ下降させる必要が生じた場合、従来の田植機のような、昇降中の昇降リンク機構4に対して、すばやく逆操作を行って、所定の状態に停止させるような不確実な操作を行う必要もなく、所望する方向に、所望する移動量だけクロスレバー61を傾倒させることで、容易に操作することができる。
【0091】
また、このように、本実施例における田植機1においては、走行部2の後部において、植付部3あるいは前記作業機械などが装着されている場合と、装着されていない場合とによって、クロスレバー61の傾倒操作に対する制御を変更する構成とすることが可能である。そして、このような構成とした場合、田植機1においては、別途他の操作具を設けることもなく、一つの操作具(クロスレバー61)によって、昇降リンク機構4の状態を所望の状態に移動させることができ、経済的である。
【0092】
次に、クロスレバー61の傾倒操作に対する、植付部3の昇降状態や、植付クラッチ33の断接状態や、センサーフロートの接地状態の制御方法について、図5を用いて詳述する。
図5は、クロスレバー61の操作前後における、植付部3の昇降状態や、植付クラッチ33の断接状態や、センサーフロート(より具体的には、センターフロート38。以下同じ。)の接地状態について、各々の状態別に示した表である。
【0093】
以下、各条件No.の具体的内容を説明する。
条件No.1によって示されるように、植付部3が最上昇位置にて「停止」された状態で、クロスレバー61が「下げ」操作されると(一回目)、植付部3は「下降中」となり、また植付クラッチ33は「OFF」の状態のまま継続される。
【0094】
条件No.2によって示されるように、植付部3が最上昇位置よりも下方の位置にて「停止」し、且つセンサーフロートが「非接地」状態で停止し、且つ植付クラッチ33が「ON」の状態である場合において、クロスレバー61が「下げ」操作されると、植付部3は下降し(「下降中」となり)、また植付クラッチ33は「ON」の状態のまま継続される。
なお、現実には油圧ストップにより植付部3は下降途中で停止された状態であるため、前記油圧ストップを解除しない限り、植付部3は下降しない。
【0095】
条件No.3によって示されるように、植付部3が最上昇位置よりも下方の位置にて「停止」し、且つセンサーフロートが「非接地」状態で停止し、且つ植付クラッチ33が「OFF」の状態である場合において、クロスレバー61が「上げ」操作されると、植付部3は上昇され(「上降中」となり)、また植付クラッチ33は「OFF」の状態のまま継続される。
【0096】
条件No.4によって示されるように、植付部3が最上昇位置よりも下方の位置にて「停止」し、且つセンサーフロートが「非接地」状態で停止し、且つ植付クラッチ33が「ON」の状態である場合において、クロスレバー61が「上げ」操作されると、植付部3は上昇され(「上降中」となり)、また植付クラッチ33は「OFF」の状態となる。
【0097】
条件No.5によって示されるように、クロスレバー61の「下げ」操作により、既に植付部3が「下降中」であり、且つ植付クラッチ33が「OFF」の状態とされ、且つセンサーフロートが「非接地」状態である場合において、クロスレバー61が「下げ」操作されると、植付部3は「下降中」のまま継続され、また植付クラッチ33は「ON」の状態となる。
【0098】
条件No.6によって示されるように、クロスレバー61の「下げ」操作により、既に植付部3が「下降中」であり、且つ植付クラッチ33が「ON」の状態とされ、且つセンサーフロートが「非接地」状態である場合において、クロスレバー61が「下げ」操作されると、植付部3は「下降中」のまま継続され、また植付クラッチ33は「ON」の状態のまま継続される。
【0099】
条件No.7によって示されるように、クロスレバー61の「下げ」操作により、既に植付部3が「下降中」であり、且つ植付クラッチ33が「OFF」の状態とされ、且つセンサーフロートが「非接地」状態である場合において、クロスレバー61が「上げ」操作されると、植付部3の下降は「停止」され、また植付クラッチ33は「OFF」の状態のまま継続される。
【0100】
条件No.8によって示されるように、クロスレバー61の「下げ」操作により、既に植付部3が「下降中」であり、且つ植付クラッチ33が「ON」の状態とされ、且つセンサーフロートが「非接地」状態である場合において、クロスレバー61が「上げ」操作されると、植付部3の下降は「停止」され、また植付クラッチ33は「OFF」の状態となる。
【0101】
条件No.9によって示されるように、クロスレバー61の「上げ」操作により、既に植付部3が「上昇中」であり、且つ植付クラッチ33が「OFF」の状態とされ、且つセンサーフロートが「非接地」状態である場合において、クロスレバー61が「下げ」操作されると、植付部3の上昇は「停止」され、また植付クラッチ33は「OFF」の状態のまま継続される。
【0102】
条件No.10によって示されるように、クロスレバー61の「上げ」操作により、既に植付部3が「上昇中」であり、且つ植付クラッチ33が「OFF」の状態とされ、且つセンサーフロートが「非接地」状態である場合において、クロスレバー61が「上げ」操作されると、植付部3の上昇は継続され(「上昇中」の状態のまま継続され)、また植付クラッチ33は「OFF」の状態のまま継続される。
【0103】
条件No.11によって示されるように、クロスレバー61の「下げ」操作により植付部3が下降し、センサーフロートが「接地」状態となって、田面に追従した状態となり、且つ植付クラッチ33が「OFF」の状態である場合において、クロスレバー61が「下げ」操作されると、植付部3は「田面追従」の状態のまま継続され、また植付クラッチ33は「ON」の状態となる。
【0104】
条件No.12によって示されるように、クロスレバー61の「下げ」操作により植付部3が下降し、センサーフロートが「接地」状態となって、田面に追従した状態となり、且つ植付クラッチ33が「ON」の状態である場合において、クロスレバー61が「下げ」操作されると、植付部3は「田面追従」の状態のまま継続され、また植付クラッチ33も「ON」の状態のまま継続される。
【0105】
条件No.13によって示されるように、クロスレバー61の「下げ」操作により植付部3が下降し、センサーフロートが「接地」状態となって、田面に追従した状態となり、且つ植付クラッチ33が「OFF」の状態である場合において、クロスレバー61が「上げ」操作されると、植付部3は上昇され(「上降中」となり)、また植付クラッチ33は「OFF」の状態のまま継続される。
【0106】
条件No.14によって示されるように、クロスレバー61の「下げ」操作により植付部3が下降し、センサーフロートが「接地」状態となって、田面に追従した状態となり、且つ植付クラッチ33が「ON」の状態である場合において、クロスレバー61が「上げ」操作されると、植付部3は「田面追従」の状態のまま継続され、また植付クラッチ33は「OFF」の状態となる。
【0107】
なお、前述したように、植付クラッチ33が「ON」状態となれば、エンジン6からの動力が、横送り機構、苗縦送りベルト32、およびロータリーケース27に伝達され、これら横送り機構、苗縦送りベルト32、およびロータリーケース27は、駆動状態となる。
一方、植付クラッチ33が「OFF」状態となれば、エンジン6からの動力が、該植付クラッチ33を介して遮断され、これら横送り機構、苗縦送りベルト32、およびロータリーケース27は、停止状態となる。
【0108】
また、前記「接地」状態は、センターフロート38(およびサイドフロート39・39)が圃場面に接地して前部が持ち上げられて、該圃場面の高低差に追従可能な状態を示す。
一方、「非接地」状態は、植付部3が上昇されて、センターフロート38(およびサイドフロート39・39)の前部が下降し、圃場面に接地していない状態を示す。
【0109】
以上に示したように、クロスレバー61の操作としては、植付部3が最上昇位置や下降途中位置で停止している状態において(条件No.1)、一回目の下降操作(「下げ」操作)で植付部3が下降し、二回目の下降操作で植付クラッチがON(作動)するようになっている。
【0110】
また、植付部3が「下降中」(条件No.7・8)や「上昇中」(条件No.9)である際に、反対方向のクロスレバー61の操作がされると(つまり、植付部3が「上昇中」および「下降中」である場合に、それぞれクロスレバー61が「下げ」操作および「上げ」操作されると)、植付部3の昇降は「停止」され、植付クラッチ33も「OFF」の状態とされる。
一方、植付部3が「上昇中」(条件No.10)や「下降中」(条件No.5・6)である際に、同じ方向のクロスレバー61の操作がされると(つまり、植付部3が「上昇中」および「下降中」である場合に、それぞれクロスレバー61が「上げ」操作および「下げ」操作されると)、植付部3の上昇または下降が継続される。
【0111】
また、植付クラッチ33が「ON」の状態で、クロスレバー61が「下げ」操作されると(条件No.2・6・12)、該植付クラッチ33の「ON」の状態は継続される。
一方、植付部3が「ON」の状態で、クロスレバー61が「上げ」操作がされると(条件No.4・8・14)、植付クラッチ33は「OFF」の状態となる。
【0112】
また、植付クラッチ33が「OFF」の状態で、クロスレバー61が「上げ」操作されると(条件No.3・7・10・13)、該植付クラッチ33の「OFF」の状態は継続される。
一方、植付クラッチ33が「OFF」の状態で、クロスレバー61が「下げ」操作されると、植付部3が「下降中」(条件No5)または「田面追従」(条件No11)である場合には、植付クラッチ33は「ON」の状態となり、また植付部3が上昇位置で停止している場合には(条件No1)、該植付部3は下降して植付クラッチ33は「OFF」のままとなり、また植付部3が「上昇中」の場合(条件No9)には、該植付部3の上昇は「停止」されて植付クラッチ33は「OFF」の状態が継続される。
【0113】
以上のように、本実施例における田植機1は、走行部(走行機体)2の後部に植付部3を昇降可能に設け、該走行部(走行機体)2に設けた運転操作部15に、該植付部3の昇降および植付クラッチ33の入切を操作するクロスレバー(植付操作手段)61を配設した田植機1であって、植付部3の昇降を切り替える昇降シリンダ(昇降用アクチュエータ)43と、植付クラッチ33の入切を切り替えるクラッチモータ(植付用アクチュエータ)34と、植付部3の下部に設けたフロート群38・39・39(より具体的には、センターフロート38)の接地を検出するフロート接地検出手段21と、クロスレバー(植付操作手段)61の操作を検出する手段であるレバー位置センサー62と、植付部3の昇降および植付クラッチ33の入切を制御するコントローラ(制御装置)46と、を備え、前記クロスレバー(植付操作手段)61は、中央を中立位置とし、少なくとも2方向(前後方向)に操作可能な中央復帰型のスイッチで構成し、前記コントローラ(制御装置)46は、前記フロート接地検出手段21によって前記センターフロート39の「接地」が検出され、且つ前記植付クラッチ33が「ON(入)」状態のとき、前記クロスレバー(植付操作手段)61が1回上昇操作されると、前記昇降シリンダ(昇降用アクチュエータ)43を作動させず、前記クラッチモータ(植付用アクチュエータ)34を作動させて、植付クラッチ33を「OFF(切)」状態にする構成となっている。
【0114】
このように、本実施例における田植機1においては、圃場面に苗を植えつける植付作業中であっても、植付部3を一旦上昇させることなく、植付クラッチ33を「OFF」状態にすることができるため、植付作業を行うことなく植付部3を下降させた状態のまま、圃場面を走行することが可能となり、前記植付作業性の向上や操作性の向上を図ることができる。
【0115】
即ち、従来の田植機のような、例えばスイッチ操作により植付部3を操作する構成においては、植付作業中に植付クラッチ33を「OFF」状態にしたい場合、植付部3を一旦上昇させる必要があった。
そのため、従来の田植機においては、植付部3を上昇させたまま圃場面を走行すると、該圃場面に車輪跡が残るため、植付クラッチ33を「OFF」状態にする場合には、その都度、一旦停止して、植付クラッチ33を操作する必要があった。
【0116】
これに対して、本実施例における田植機1においては、従来の田植機のように植付クラッチ33を操作する際において、その都度一旦停止することなく、圃場面に車輪跡を残さずに、該圃場面を走行することが可能となり、前記植付作業性の向上を図ることができるのである。
【0117】
また、植付部3の上昇にともなって、線引きマーカ40L・40Rも上方に回動されてしまうため、従来の田植機においては、植付部3を再び下降させた後に、再度線引きマーカ40L・40Rも下方に回動させて、操作しなおす必要があった。
【0118】
これに対して、本実施例における田植機1は、植付部3を下降させた状態のまま、植付クラッチ33を「OFF」状態にすることができるため、再度線引きマーカ40L・40Rを操作しなおす必要もないのである。
【0119】
また、本実施例における田植機1において、前記コントローラ(制御装置)46は、前記フロート接地検出手段21によって前記フロート群38・39・39(より具体的には、センターフロート38)の「非接地」状態が検出され、且つ前記植付部3が下降中であり、且つ前記植付クラッチ33が「ON(入)」状態のとき、前記クロスレバー(植付操作手段)61が「上げ(上昇)」操作されると、前記昇降シリンダ(昇降用アクチュエータ)43を停止させるとともに、前記クラッチモータ(植付用アクチュエータ)34を作動させて、植付クラッチ33を「切」状態にする構成となっている。
【0120】
一方、従来の田植機においては、植付クラッチ33が「ON」状態であり、且つ植付部3が下降中である場合、とっさに該植付部3を停止させる必要が生じても、クロスレバー61を2回「上げ」操作(1回目のクロスレバー61の「上げ」操作によって、植付クラッチ33を「OFF」状態とし、2回目のクロスレバー61の「上げ」操作によって、植付部3を「停止」状態とする。)する必要があった。
【0121】
このようなことから、本実施例における田植機1においては、従来の田植機とは異なり、植付部3が下降中にクロスレバー61を2回操作することなく1回の操作で、植付クラッチ33を「OFF」状態とするとともに、植付部3を「停止」状態とすることができるため、操作性が向上するのである。
なお、本実施例における田植機1においては、その後の2回目のクロスレバー61の「上げ」操作によって、植付部3の上昇が開始される。
【0122】
また、本実施例における田植機1において、前記コントローラ(制御装置)46は、前記フロート接地検出手段21によって前記フロート群38・39・39(より具体的には、センターフロート38)の「非接地」状態が検出され、且つ前記植付部3が最上昇位置よりも下方の位置にて停止しており、且つ前記植付クラッチ33が「ON(入)」状態のとき、前記クロスレバー(植付操作手段)61が「上げ(上昇)」操作されると、前記昇降シリンダ(昇降用アクチュエータ)43を作動させて、植付部3を上昇させるとともに、前記クラッチモータ(植付用アクチュエータ)34を作動させて、植付クラッチ33を「OFF(切)」状態にし、このような前記植付部3の上昇中に、前記クロスレバー(植付操作手段)61が「下げ(下降)」操作されると、前記植付クラッチ33の「OFF(切)」状態を維持しつつ、昇降シリンダ(昇降用アクチュエータ)43を停止させ、さらに、このような昇降シリンダ(昇降用アクチュエータ)43の停止中に、再び前記クロスレバー(植付操作手段)61が下降操作されると、前記昇降シリンダ(昇降用アクチュエータ)43を作動させて、植付部3を下降させるとともに、前記植付クラッチ33の「OFF(切)」状態を維持する構成となっている。
【0123】
このように構成することによって、植付部3の「上昇中」に該植付部3を下げたい場合、1回目の「下げ」操作によって植付部3が「停止」し、さらに2回目の「下げ」操作によって植付部3が下降を開始する。このとき、操作レバーを2回連続して「下げ」操作するので、従来では、植付クラッチ33は「ON」状態となる。しかし、植付部3が「下げ」の状態で植付クラッチ33を「OFF」の状態として、田植機1を進行したい場合があるが、このとき、植付クラッチ33を「OFF」の状態とするためには、もう一度、植付部3を最上昇位置まで上げる必要があった。これは、操作に時間がかかり、作業者にとって違和感を感じる制御方法となっていた。
【0124】
このようなことから、本実施例における田植機1においては、従来の田植機とは異なり、植付部3の上昇中にクロスレバー61を2回連続して「下げ」操作する場合には、一回目の「下げ」操作で、植付部3の上昇が停止し、且つ植付クラッチ33が「OFF」の状態とし、二回目のクロスレバー61の「下げ」操作により、植付クラッチ33をOFFの状態のまま下降させ、さらに「下げ」(三回目)の操作により植付クラッチ33をONとすることで、作業者にとって違和感を感じさせることもなく、操作性を向上させることができるのである。
【符号の説明】
【0125】
1 田植機
2 走行部(走行機体)
3 植付部
15 運転操作部
21 フロート接地検出手段
22 植付部位置検出手段
33 植付クラッチ
34 クラッチモータ(植付用アクチュエータ)
38 センターフロート
39 サイドフロート
43 昇降シリンダ(昇降用アクチュエータ)
46 コントローラ(制御装置)
52 整地ロータ
54 クラッチ機構(ロータ駆動アクチュエータ)
61 クロスレバー(植付操作手段)
62 レバー位置センサー
70 中立位置
111A 入切スイッチ(ロータ操作手段)
111A 入切スイッチ(ロータ操作手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に植付部を昇降可能に設け、該走行機体に設けた運転操作部に、該植付部の昇降および植付クラッチの入切を操作する植付操作手段を配設した田植機において、
植付部の昇降を切り替える昇降用アクチュエータと、
植付クラッチの入切を切り替える植付用アクチュエータと、
植付部の下部に設けたフロートの接地を検出するフロート接地検出手段と、
植付操作手段の操作を検出する手段と、
植付部の昇降および植付クラッチの入切を制御する制御装置と、
を備え、
前記植付操作手段は、中央を中立位置とし、少なくとも2方向に操作可能な中央復帰型のスイッチで構成し、
前記制御装置は、
前記フロート接地検出手段によって前記フロートの接地が検出され、且つ
前記植付クラッチが「入」状態のとき、
前記植付操作手段が1回上昇操作されると、
前記昇降用アクチュエータを作動させず、
前記植付用アクチュエータを作動させて、植付クラッチを「切」状態にする、
ことを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記フロート接地検出手段によって前記フロートの非接地状態が検出され、且つ
前記植付部が下降中であり、且つ
前記植付クラッチが「入」状態のとき、
前記植付操作手段が上昇操作されると、
前記昇降用アクチュエータを停止させるとともに、
前記植付用アクチュエータを作動させて、植付クラッチを「切」状態にする、
ことを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記フロート接地検出手段によって前記フロートの非接地状態が検出され、且つ
前記植付部が最上昇位置よりも下方の位置にて停止しており、且つ
前記植付クラッチが「入」状態のとき、
前記植付操作手段が上昇操作されると、
前記昇降用アクチュエータを作動させて、植付部を上昇させるとともに、
前記植付用アクチュエータを作動させて、植付クラッチを「切」状態にし、
このような前記植付部の上昇中に、前記植付操作手段が下降操作されると、
前記植付クラッチの「切」状態を維持しつつ、
昇降用アクチュエータを停止させ、
さらに、このような昇降アクチュエータの停止中に、再び前記植付操作手段が下降操作されると、
前記昇降用アクチュエータを作動させて、植付部を下降させるとともに、
前記植付クラッチの「切」状態を維持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項4】
走行機体の後部に植付部を昇降可能に設け、該植付部の前部に整地ロータを作用位置と収納位置に変更可能に配設するとともに、前記走行機体に設けた運転操作部に、前記植付部の昇降および植付クラッチの入切を操作する植付操作手段と、前記整地ロータの駆動の入切を操作するロータ操作手段とを配設した田植機において、
整地ロータの駆動の入切を切り替えるロータ駆動アクチュエータと、
植付部の最上昇位置を検出する手段と、
植付部の昇降を切り替える昇降用アクチュエータと、
植付クラッチの入切を切り替える植付用アクチュエータと、
植付操作手段の操作を検出する手段と、
植付部の昇降と、植付クラッチの入切と、整地ロータの駆動の入切とを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記ロータ操作手段によって前記整地ロータの駆動の入操作が行われ、且つ
前記植付操作手段による前記植付部の下降操作が検出され、且つ
前記植付部が最上昇以外の位置にあることが検出されると、
前記ロータ駆動アクチュエータを「入」状態にする、
ことを特徴とする田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−235705(P2012−235705A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104797(P2011−104797)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】