男性受精能アッセイ方法およびデバイス
精液サンプル中の前進方向の精子運動性および活動性精子の精子密度をアッセイするための方法およびデバイスが開示される。そのデバイスは、サンプルレザバ、下流収集領域、およびそのサンプルレザバと下流収集領域との間のマイクロチャネルを有する微小流体構造を備える。そのマイクロチャネルは、そのサンプルレザバに配置された精液サンプル中の精子が、そのマイクロチャネルに入り、そのマイクロチャネルに沿って、その収集領域へと向かってその中に移動するように、サンプル精子を、そのチャネル内での一方向の移動に制限するような寸法にされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、男性受精能をアッセイするための方法およびデバイスに関し、特に、前進方向の精子運動性および活動性精子の密度を決定するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
米国および他の先進国における夫婦は、ある医学的介入なくしては、子供をもうけることができないという、可能性が15〜20%ある。男性要因の不妊症は、約3分の1に対する直接的原因であり、失敗した授精の過半数においては、寄与因子(contributing factor)である。最も適切な医学的介入を計画するために、男性の精液サンプルの状態が、正確に決定されなければならない。男性受精能に関する世界保健機関基準によれば、男性受精能を支配する主要な要因は、精液の容積、および精子細胞密度、運動性、前進性、および形態である。これらの基準は、無関係ではない。例えば、高密度の前進する精子を有する精液サンプルはまた、高い運動性、および許容し得る低い割合の形態学的欠損を有する。従って、精液サンプル内の前進する精子細胞の密度を正確に測定し、これらの結果を国際医学標準と比較することによって、男性要因の不妊症は、失敗した授精の原因として除外され得るか、または現在の医学的行為に従って同定および処置され得る。
【0003】
現在、ほぼ全ての精液サンプルが、医師の紹介から派生して、大病院、医療施設、および産科クリニック(fertility clinic)での研究室状況において分析されている。訓練された技術者が、大部分の精液分析を行っている。そのサンプルは、顕微鏡下で観察され、精子細胞組成のいくつかの局面が定量される(例えば、密度、運動性%、形態的異常性%、および前進)。この時点で、精液細胞計数を実施する一人用の医師の処方箋不要の製品はまた、米国および英国で利用可能である。
【0004】
受精に失敗している夫婦のための精液サンプルの分析は、現在、いくつかの要因により制限されている。多くの夫婦は、困難性およびストレス要因(stressor)が、長期間繰り返されるまで、受精能(fertility)の問題に関する医学的助言を求めたがらない。一旦医学的助言が求められると、男性は特に、気恥ずかしさおよびプライバシーがないことに起因して、精液分析を求めることに自発的でない。訓練された職員および実験室試験の必要性は、部分的に、受精能の管理の費用が高いことの原因である。精液分析に代わる低費用かつ秘密が守られる手段(例えば、英国で利用可能な家庭内細胞計数アッセイ)は、その精液サンプル中の精子数と、他の細胞型との間の区別に失敗しており、そのサンプル内の精子細胞の任意の運動性特徴を分析するのに失敗している。従って、これらの制限を実質的に克服する、精子計数および運動性をアッセイするための家庭内での方法およびデバイスを提供することが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
一局面において、本発明は、精液サンプル中の前進方向における精子運動性および活動性精子の密度をアッセイするための方法を包含する。この方法を実施するにあたって、精液サンプルは、サンプルレザバに入れられ、チャネル内で下流収集領域に向かう一方向移動に精子を制限するマイクロチャネルへと、そのマイクロチャネルに沿って移動させる。その精子サンプル特徴は、そのマイクロチャネルを通る精子の移動速度および流動(flux)を測定する工程によって決定される。そのマイクロチャネルは、10〜100μmの範囲において幅および深さの好ましい各寸法を有する
1つの一般的な実施形態において、そのマイクロチャネルは、既知の長さを有し、その下流収集領域は、既知の容積を有する収集レザバを備え、そのマイクロチャネルを通る精子の移動速度および流動を測定する工程は、(1)その収集レザバ中に存在する細胞の濃度における変化を、時間の関数として測定する工程、(2)工程(1)、およびその収集レザバの容積から、そのサンプル中の活動性精子の密度を、時間の関数として決定する工程、および(3)工程(1)から、そのマイクロチャネルを通る下流方向の精子の平均移動速度を決定する工程、を包含し得る。より具体的には、工程(1)は、時間依存性関数を生成し、その関数の傾きは、単位時間あたりに上記収集レザバに存在する細胞数の変化に近似し、その関数の切片は、単位時間あたりのその収集レザバに存在し、その関数の切片は、その収集レザバにおける精子の第1の出現までの時間に近似する工程を包含し得、工程(2)は、その関数と、異なる既知の精子数および前進速度の精液サンプルを用いて生成された1以上の標準的な関数とを比較する工程を包含し得、工程(3)は、その切片から、その精子の前進方向における平均進行速度を決定する工程を包含し得る。
【0006】
この実施形態において、そのサンプル中の精子を蛍光レポーターで標識され得、工程(1)は、上記収集レザバ中で蛍光発光を測定する工程を包含し得る。この標識する工程は、精子を、切断可能なエステル基を有する蛍光レポーターに曝す工程を包含し得、その切断可能なエステル基は、非荷電状態において精子へのそのレポーターの取り込みを促進し、その荷電した、切断されたエステル状態において精子からのそのレポーターの流出を阻害する。
【0007】
別の一般的な実施形態において、そのマイクロチャネルの幅は、そのマイクロチャネルに沿って一列へと精子移動を制限するような幅であり、そのマイクロチャネルを通る精子の移動速度および流動を測定する工程は、(1)個々の精子がそのマイクロチャネルにおける検出ゾーンを通り越して上流方向から下流方向に移動する場合に、その個々の精子を検出する工程、(2)その検出ゾーンを通り過ぎて移動する精子数を計数する工程、および(3)その検出ゾーンを通る個々の精子の移動速度を検出する工程、を包含し得る。
【0008】
この実施形態におけるそのその検出ゾーンの幅は、好ましくは、約15〜40μmの間である。その検出ゾーンは、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定され得、工程(1)は、各検出器から受容したシグナルを相関させて、各検出事象のシグナル−対−ノイズ比を増強する工程をさらに包含し得る。あるいは、その検出ゾーンが、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定される場合、工程(3)は、その検出器から受容したシグナル間の時間間隔を使用して、そのマイクロチャネル内での精子の移動速度を決定する工程をさらに包含し得る。
【0009】
サンプル中の精子は、蛍光レポーターで標識され得、工程(1)は、その検出ゾーンを通る精子移動の蛍光を測定する工程を包含し得る。上記のように、その精子は、切断可能なエステル基を有する蛍光レポーターで標識され得、その切断可能なエステル基は、実質的に非荷電状態において精子へのそのレポーターの取り込みを可能にするが、荷電した、切断されたエステル状態において精子からのそのレポーターの流出を阻害する。
【0010】
あるいは、サンプル中の精子は、磁性粒子または導電性金属粒子で標識され得、工程(1)は、(i)その検出ゾーンに隣接して配置された回路要素によって生成され、かつ(ii)その検出ゾーンを通過する磁性粒子または導電性金属粒子で標識された精子に特徴的な、電気シグナルを測定する工程を包含し得る。工程(3)は、その検出ゾーンを通過する精子の移動速度を、その回路要素によって生成されるシグナル特徴の変化率から決定する工程を包含し得る。
【0011】
別の局面において、本発明は、精液サンプル中の精子運動性および運動性精子の密度をアッセイするためのデバイスを包含する。そのデバイスは、サンプルレザバ、下流収集領域、およびそのサンプルレザバとその下流収集領域との間に延びるマイクロチャネルを有する微小流体構造を備える。そのマイクロチャネルは、そのサンプルレザバ中に入れられた精液サンプル中の精子が、そのマイクロチャネルに沿って、その収集領域へ向かってそこに入り、かつ移動するように、サンプル精子をそのチャネル内での一方向移動に制限するような寸法にされている。そのマイクロチャネルまたは収集領域中の標識された精子の存在を検出するための検出器もまた備えられる。そのデバイスにおける電子ユニットは、(i)検出器シグナルを受容し、(ii)その受容した検出器シグナルに基づき、その精子サンプル中の精子運動性および密度を決定し、そして(iii)精子運動性および密度に関する情報を提示するために、その検出器に操作可能に接続されている。
【0012】
そのデバイスは、自己充足式ユニット(例えば、使い捨てユニット)として、その制御ユニットおよび検出器に電力供給するためのそのユニット自体の電源(電池)とともに形成され得る。そのデバイスにおけるマイクロチャネルは、10〜100μmの範囲にある好ましい幅および深さの寸法を各々有する。
【0013】
1つの一般的実施形態において、そのマイクロチャネルは、既知の長さを有し、その下流収集領域は、既知の容積を有する収集レザバを備え、その電子ユニットは、(1)その収集レザバに存在する細胞の濃度変化を時間の関数として測定し、(2)工程(1)、およびその収集レザバの容積から、そのサンプル中の活動性精子の密度を、時間の関数として決定し、そして(3)工程(1)から、下流方向においてそのマイクロチャネルを通る精子の平均移動速度を決定するように作動する。より具体的には、その電子ユニットは、工程(1)を実施するにあたって、時間依存性関数を生成するように作動し得、その時間依存性関数の傾きは、単位時間あたりにその収集レザバに存在する細胞数の変化に近似し、その時間依存性関数の切片は、その収集レザバ中の精子の第1の出現までの時間に近似し、工程(2)を実施するにあたって、その関数と、異なる既知の精子数および前進速度の精液サンプルで生成された1以上の標準関数と比較するように作動し得、工程(3)を実施するにあたって、その切片から、その精子の前進方向における平均進行速度を決定するように作動し得る。
【0014】
この実施形態において、その検出器は、LED、第1の光検出器および第2の光検出器、ならびに光学部材を備え、その光学部材は、(1)そのLEDからその第1の光検出器へと光を指向し、(2)そのLEDからその収集レザバを通って光を指向し、および(3)その収集レザバ捕獲からその第2の光検出器へと発っせられた蛍光を指向するように設計されている。その光学部材は、異なる屈折率を有する複数の光学要素から構成される一体型部材であり得る。
【0015】
別の一般的実施形態において、その検出器は、そのマイクロチャネルにおける検出ゾーンに隣接して配置される。この実施形態において、その電子ユニットは、(1)そのマイクロチャネルにおけるそのゾーンを通って上流方向から下流方向に個々の精子が移動する場合に、その個々の精子を検出し、(2)その検出ゾーンを通って移動する精子数を計数し、そして(3)その検出ゾーンを通る個々の精子の移動速度を決定するように作動し得る。この実施形態において、そのマイクロチャネルの幅は、好ましくは、約15〜40μmの間である。
【0016】
その検出ゾーンは、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定され得、工程(1)は、各検出器から受容した検出シグナルを相関させて、各検出事象についてのそのシグナル−対−ノイズ比を増強する工程を包含し得る。あるいは、その検出ゾーンが、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定される場合、工程(3)は、その検出器から受容したシグナル間の時間間隔を使用して、そのマイクロチャネル内の精子の移動速度を決定する工程を包含し得る。その検出器は、蛍光検出器であり得る。
【0017】
あるいは、その検出器は、その検出ゾーンに隣接して配置される回路要素を備え得、その回路要素は、磁性粒子または金属導電性粒子の直ぐ近くの移動に応答性であり、その結果、そのマイクロチャネルにおけるその検出ゾーンを通る磁性粒子または金属導電性粒子で標識された精子の移動は、その要素のインダクタンスを変化させる。この実施形態における電子ユニットは、その要素のインダクタンスにおける変化を検出するために、その要素に作動可能に連結された検出器回路を備え得る。その電子ユニットは、工程(3)を実施するにあたって、その検出ゾーンを通る精子の移動速度を、その回路要素によって生成されたシグナル特徴の変化率から決定するように作動し得る。
【0018】
そのデバイスにおけるサンプル受容レザバは、分解性の、液体不浸透性プラグを通って、そのマイクロチャネルの上流端部と連絡し得、そのレザバは、そのプラグを分解可能な酵素を含む。
【0019】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、以下の発明の詳細な説明が添付の図面とともによまれる場合に、より完全に明らかになる。
【0020】
(発明の詳細な説明)
(A.定義)
以下の用語は、別段記載されなければ、本出願において以下の意味を有する。
【0021】
「マイクロチャネル」とは、ファロピーオ管を介するインビボでの状況に類似の様式で、そのチャネルを通る精子運動を促進する幅および深さの寸法を有するチャネルを意味する。個々の前進する細胞を計数するために、そのチャネルは、精子を一列移動に制限するために、狭い。代表的には、そのマイクロチャネルは、約10〜100ミクロンの間の幅および深さの各寸法を有する。そのマイクロチャネルは、任意の断面外形(例えば、丸形または矩形)であり得、長さ数cmまでであり得る。
【0022】
「標識化合物」とは、精子細胞が検出可能な標識、好ましくは蛍光標識を含むという結果を有する、それらの表面または内部のいずれかの上で精子細胞に結合し得るかまたは組み込まれ得る任意の化合物をいう。
【0023】
「運動性」とは、移動の能力、および流体媒体を通る移動を可能にする精子細胞の特性に対して特異的な「精子運動性」をいう。
【0024】
「前進」とは、線形的様式で精子が移動する能力をいう。
【0025】
「活動性精子」とは、運動性でありかつ前進している精子細胞をいう。
【0026】
「精子数」とは、単一検出ユニットによって、活動性精子細胞の区別されかつ計数された数をいい、計数を行う容積による「精子濃度」に関連する。
【0027】
「精子密度」とは、集合精液サンプル中の活動性精子細胞の密度をいい、20×106精子細胞/cm3以上を有する受精能のあるサンプルが、世界保健機関標準に従う男性受精能の尺度である。
【0028】
(B.アッセイデバイス)
この節は、本発明のアッセイデバイスを記載し、3つの一般的実施形態を参照して、そのデバイスを例示する。図1〜7および12を参照して例示される第1の実施形態において、精液サンプル中の前進方向における精子運動性および活動性精子の密度は、サンプル受容レザバから、既知の長さの微小流体チャネルを通って、収集レザバへの精子移動速度および数によって決定される。ここで経時的な精子蓄積が測定される。図1、4、8、9、および12を参照して記載される第2の実施形態は、上流レザバと下流レザバとの間のチャネルに沿って個々の精子が移動する場合に、その個々の精子を検出するために、微小流体チャネルに沿って間隔を空けられた位置にある1対の光学検出アセンブリを使用する。第3の実施形態は、図1および10〜12において例示され、微小流体状況における電気インピーダンスにおける時間依存性変化に依存して、精子運動性および活動性精子密度を決定する。
【0029】
図1は、精液中の前進方向における精子運動性および活動性精子の密度を測定するための、本発明に従って構築された自己充足式デバイス20を例示する。(i)精子運動性特徴が決定される内部微小流体構造、(ii)その微小流体構造内で精子の移動および/または蓄積を嫌酒留するための検出システム、ならびに(iii)検出されたシグナルに基づいて精子特徴を決定するための、その検出システムに作動可能に連結された電子ユニット、を収容する外側ケース22がこの最初に示される。これらの構成要素の構築および操作は、以下で議論される。
【0030】
図1に見られるように、そのケース22は、記載されるように、そのデバイスにおける微小流体システム中のサンプル受容レザバと内部で連絡する、サンプル受容開口24を規定する。射出された精液容積全体の収集およびサンプル調製のための、キュベットまたはサンプル収集ホルダ26もまた示される。そのキュベットは、適切な男性受精能に関するWHO標準によって必須と決定される最小精液容積(例えば、1.5mL容積)の印を付ける容積インジケーター(示さず)とともに示され得る。そのキュベットは、そのホルダからデバイスにおける微小流体構造へ流体を移動させるために、そのデバイスの開口24に直接挿入され得るか、またはさらなるサンプル調製溶液は、より少量の射出精液容積全体、総サンプルの希釈液、または総サンプルと液体もしくは固体の化学物質との混合物を含むように提供され得る。
【0031】
サンプル受容ウェルに挿入されるそのキュベットは、集合サンプルホルダとよばれ、そのキュベットの底部面全体からなる底部開口部、またはその開口の底部における鋭いアクセス(例えば、シリンジ針)ポートによって容易に穿通される底部面内に設定されるいくつかのより小さな外形を有し得る。その底部面は、そのサンプルを漏らすことなく、穿通を可能にするようにゴムまたはワックスから作製され得る。そのサンプルは、毛細管作用によって、その流体経路に引き入れられ得る。そのサンプルホルダは、固体および/または液体の化合物(例えば、標識化合物および/または消化酵素)が予め充填され得るかまたはコーティングされ得る。消化酵素(例えば、コラゲナーゼまたはトリプシン)は、精液サンプルの天然のタンパク質分解性崩壊を容易にするために使用され得る。化合物(例えば、塩化ナトリウムおよびフルクトース)は、精液サンプルのインビトロでの生存性を増すために添加され得る。そのキュベットはまた、代表的には、以下で議論されるように、検出可能なレポーター(例えば、蛍光レポーター)で精子を標識するための精子標識試薬を含む。
【0032】
そのサンプルホルダは、液体試薬が、詰め替えられ得るか、またはこれらのサンプルホルダは、そのホルダにサンプルを添加するための別個の流体ディスペンサでユーザーに供給され得るかのいずれかである。その液体試薬は、HEPES緩衝化によって生理学的pHに維持される、水中の糖および塩(フルクトース、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、および塩化カリウムから主になるが、これらに限定されない)の等浸透圧の(約290mOsm)溶液を含み得る。
【0033】
そのホルダ中に予め充填された溶液または固体試薬は、標識化合物を含んでいてもよいし、その標識化合物は、充填レザバもしくはメスシリンダ中に固体形態で含まれていてもよい。その標識化合物は、濃度収量または量子収量、および精子細胞上または精子細胞中の高い蛍光のいずれかのために、活発な蓄積、分配、またはエステラーゼ活性に起因する増加した濃度のいずれかのために、あるいは液体挿入または環境変化のための量子収量の増加のために、溶液中で弱く蛍光を発する。
【0034】
一旦そのサンプルホルダがそのデバイスに挿入されると、鋭いアクセスポートが使用されて、その集合サンプルホルダの底部が穿通され、その集合サンプルはそれによって、アッセイデバイス内の流体経路へのアクセスを得る。あるいは、そのサンプルは、そのキュベット中の試薬と一旦混合されると、開口に注がれ得、その開口から、例えば、酵素溶解可能なプラグを溶解することによってまたはユーザーによるシールの除去後に、微小流体構造に入る。
【0035】
そのユーザーにアッセイ結果を表示するためのディスプレイウインドウ28もまた、図面に示される。ディスプレイ情報の2つの例示的な型が、図12Aおよび12Bを参照して、以下で議論される。デバイス20は、好ましい実施形態において、小さな携帯型の使い捨てデバイスとして製造される。
【0036】
(C.収集レザバ中での精子検出に基づくデバイス)
この節は、本発明の第1の実施形態に従って構築される収集レザバデバイスの構成要素を記載する。図2A〜2Fを参照すると、図2Fにおいて示され、微小流体構造30は、整列された上部プレート34(図2C)に結合された底部プレート32(図2A)から形成される。図2Aおよび2Bにおいて最もよく認められるように、底部プレート32は、そのプレートの上流端部領域におけるその上側表面に形成された涙形凹部36、その構造における収集レザバの一部を形成する中心円筒形レザバ凹部38、および下流凹部40を備える。その下側プレートおよび上側プレートを整列するにあたって、その2つがともに結合される場合に、使用される円形の整列凹部42、ならびに認められるように、構造30上に光学要素を整列するにあたって使用されるタブ44もまた、下側プレートにおいて形成される。
【0037】
ここで上部プレート34の構築を、図2C〜2Eを参照して考慮すると、サンプル受容開口46は、そのプレートの上流端部に形成される。そのプレートの下部側に形成される微小流体チャネル48は、2つの別個のチャネルセグメントを有する:上流供給凹部50から中心レザバ凹部52まで延びる上流セグメント48a、および凹部52を下流排水凹部54まで延ばす下流セグメント48。凹部50、54、ならびにそれぞれ、チャネルセグメント48a、48bの隣接部分は、図2Dにおいて拡大図で示される。凹部50(図2Eにおいて拡大図でみとめられる)は、底部プレートにおけるレザバ凹部38と同じ円形寸法を有し、そのアセンブリされた構造において、円筒形収集レザバ60(図2F)(ここで標識精子が、以下で議論されるように、検出のために回収される)中に、その回収レザバとともに形成される。例示的実施形態において、その収集レザバは、0.1〜1mmの間の円筒半径、および0.1〜1mmの間の深さを有して、0.001〜1mm3.の間の既知の容積を生じる。
【0038】
チャネルセグメント48bにおける凹部52の直ぐ下流には、チャネル迂回路56(図2E)があり、この迂回路は、その迂回路の下流に運動性精子の流動を制限するように機能し、それによって、そのレザバを超える運動性精子の移動を制限するように作用する。
【0039】
上記のように、そのマイクロチャネルは、この実施形態において、その2つのマイクロチャネルセグメント48a、48bを意味し、各々、約10〜100ミクロンの間、好ましくは、15〜60ミクロンの範囲の幅および深さの寸法を有する。そのマイクロチャネルは、任意の断面外形(例えab、半円形もしくは矩形)であり得、長さは数cmまでであり得る。機能的には、そのマイクロチャネル、特に、マイクロチャネルセグメント48aは、運動性精子がそのチャネルを通って、上流方向から下流方向であるが、精子がそのチャネル内でのそれらの移動方向を逆にする可能性が非常に低い、十分に制限された空間内で、進むことを可能にする寸法にされる。以下で認められるように、そのチャネル幅および/または深さは、そのチャネルを並んで通過して移動する精子を収容し得るか、または精子を一列の運動に制限し得る。前者の場合において、チャネル幅および深さの寸法は、好ましくは、50ミクロン〜100ミクロンの間であり;後者において、10〜30ミクロンの間である。
【0040】
プレート32、34の前述の記載から、および図2Fから理解され得るように、そのアセンブリされた構造は、開口46によって形成されたサンプル入り口ポートを有し、このポートは、下部プレートにおいて凹部36と連絡して、サンプル受容ステーション47を形成する。この下流端部において、凹部36は、凹部36から凹部50へと、かつこの凹部からマイクロチャネル48へと液体を移動させる能力のために、上部プレートにおける上流供給凹部50と重なる。ここでそのマイクロチャネルの中心領域は、円筒形収集レザバ60によって中断される。このレザバから、流体は、その下方マイクロチャネル48bから凹部54まで引っ張られ、その凹部54は、凹部40と重なり合い、凹部40および開口40によって形成される排液レザバ中の液体を分布させるように作用する。構造30においてちょうど記載されるその流体経路は、代表的には、製造中に適切な流体媒体(例えば、等張性塩溶液)で満たされ、使用前に密封される。サンプル流体がデバイスに添加される場合、そのサンプルは、サンプル受容ステーション中に再度充填された流体と混ざる。サンプル中、ここではサンプル受容ステーション中に含まれる精子は、このステーション全体に素早く分布され、以下で記載されるように、精子運動性および前進する精子の密度を決定するための起訴を形成する一連の精子移動事象を開始する。
【0041】
プレート32、34は、ポリマー物質、好ましくは、透明なポリマー(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、または十分に規定されかつ安定な成形された外形を提供することが公知の、任意の他の光学的に透明なポリマー)の射出成形を使用して製作され得る。あるいは、そのプレートは、種々の適切な物質(例えば、シリコン、が足す、石英、プラスチック、または他のポリマー)のいずれかに適用される周知の表面製作方法によって形成され得る。後者のアプローチにおいて、そのチャネルは、レーザー切除または化学的エッチングによって作製され得る。提唱されたサイズのチャネルは、切除において使用されるレーザーを収束させることによって、またはエッチングする前に基材をマスクするマイクロリソグラフィーを使用することによって達成され得る。各プレートは、0.5〜2cm、2〜4cm、および1〜2mmの代表的な幅、長さおよび厚みの寸法を有する。そのアセンブリされた構造の厚み全体は、代表的には、2〜3.5mmである。凹部52以外の凹部の厚み寸法は、代表的には、25〜100ミクロンである。
【0042】
その2つのプレートは、一旦形成され、互いに対して整列されると、従来の方法によって(例えば、化学的に、静電気的に、または熱および圧力(融合接着)を介して)結合される。
【0043】
図3を参照すると、微小流体構造30は、プレート64(例えば、プリント回路基板)上に取り付けられ、このプレートはまた、(i)発光ダイオード66(この発光ダイオードは、構造30におけるその収集レザバ中の蛍光サンプル物質のための励起光源として働く)、そのレザバにおけるサンプル物質からの発光を検出するように作動する、1対の光学検出器68、70、およびLEDからその検出器への励起波長および発光波長をそれぞれ指向するための一体型光学アセンブリ62(これは、以下に記載されるように、複数の光学要素を有する)を支持する。
【0044】
発光の検出は、光ダイオード、CCD、または他の半導体検出器(solid−state detector)を用いて達成され得る。これらは、安価で、信頼性が高く、迅速な応答を有し、かつ広い範囲の波長感度プロフィールおよびサイズにおいて利用可能である。例示的なLEDは、Uniroyalによって供給されるUNPRX465−0G1 LEDであり、これは、約450〜470nmの青色波長において主に発光する。例示的な光検出器は、Centronicにより供給されるOSD1−0光ダイオードである。
【0045】
図2Aおよび2Cから理解され得るように、その光学アセンブリは、その微小流体構造の中心「カットアウト」部分にまたがり、構造30におけるその光学要素とタブ44との間の適切な手段によって、そのカットアウト部分と整列される。その光学要素は、プレート64上に保持される取り付けブロック72と互いに咬み合うことによって、プレート64上でさらに整列される。
【0046】
そのアセンブリにおける種々の光学要素は、(i)LED源から光検出器68上へ光ビームを指向して、LED光強度に対する参照を提供すること(黒色光線によって示される)、(ii)励起光線をLEDからその微小流体構造の収集レザバへと収束させること(図3において黒色光線によって示される)、および(iii)そのレザバにおける蛍光レベルを測定するために、その収集レザバから光検出器70上に発光を指向すること(灰色光線によって示される)、におけるそれらの作動の記載から理解され得る。
【0047】
図3において認められるように、LED68からの発散性の光線は、彎曲した反射表面71から反射され、光検出器71の上に収束される。この検出器において測定される光強度は、そのLEDによって誘導される蛍光発光から得られる、検出器70において測定された光強度に対して、LED光強度を較正するために使用される。そのLEDからの発散性の光線はまた、収束レンズ要素72を通して指向され、示されるように、平行光線を有する光ビームを生成する。これらの光線は、直角反射表面74から反射され、その反射したビームは、そのデバイスにおけるフィルタ挿入物78において備えられた高域フィルタ76を通される。フィルタ76は、そのLEDによって生成される低周波数成分(例えば、蛍光発光波長との重なりを有する可能性がある赤色成分および緑色成分)を除去するように設計される。1つの好ましいフィルタは、450〜470nmのバンドパスフィルタである。その反射された、フィルタを通った光は、ここで、収束反射表面80から反射され、この収束反射表面は、その微小流体構造における収集レザバ60へと反射光を収束するように働く。そのサンプルレザバにおける励起光の強度は、プレート64上のレザバの下に配置される反射器82によってさらに増強される。
【0048】
図3における光線模式図から理解され得るように、上記の励起光の光学経路は、その図面において実質的に垂直方向にある方向に沿ってその光線を制限する。励起光と発光との間の重なりを最小にするために、蛍光発光は、その励起光線に対して実質的に直交する(すなわち、その図面において実質的に水平方向にある)発光光線から検出される。この発光は、その光学アセンブリにおける要素86を直接通されるか、またはその収集レザバの反対側の側面上に位置した反射器84からこの要素へと反射される。要素86へと指向される発光は、彎曲した反射表面88から、斜角反射器90へとそこから、およびフィルタ挿入物94に備えられる低域フィルタ92を通って反射される。そのフィルタは、蛍光発光波長を超える光周波数を除去するために設計された低域通過フィルタであり、そのLEDからの励起周波数を表す。1つの好ましいフィルタは、505〜540nmのバンドパスフィルタである。そのフィルタを通った発光ビームは、直角反射表面102から反射され、収束レンズ要素104を通過する検出器70への通過に収束され、次いで、その検出器は、その収集レザバ中のサンプル物質からの蛍光発光の強度を測定する。
【0049】
光学要素におけるその光学アセンブリは、単一の成形プラスチック片(例えば、成形ポリエーテル−スルホン、ポリカーボネート、またはアクリルポリマーもしくは比較的高い反射係数および良好な光透過を有する他のポリマー)として形成される。示される特定の実施形態において、そのアセンブリ全体は、単一のポリマー材料から形成されるが、他の実施形態において、例えば、制御された射出において異なるポリマー材料を型へと連続的に射出することによって、異なる屈折率を有するポリマーが使用され得る。そのプレート64上の反射表面は、反射コーティングを有する接着テープを付与することによって形成される。光学構成要素内の反射は、全内部反射によってなされる。
【0050】
そのサンプル中の精子は、任意の種々の公知の方法(標識抗体の結合または蛍光標識の選択的取り込みが挙げられる)によって、標識(例えば、蛍光標識)され得る。その後者の方法の好ましい実施形態は、図4において例示される。その図面は、外側膜102を有する個々の精子細胞100を示す。哺乳動物細胞膜に特徴的であるように、膜102は、荷電種よりも非荷電分子に対してより透過性である。その方法における蛍光標識剤は、蛍光レポーター基(F)および切断可能なエステル基(−−OC(O)−R)を有する蛍光分子であり、その切断可能なエステル基は、エステル結合において細胞内エステラーゼによって酸性蛍光分子およびアルコール加水分解生成物(R−OH)に切断され得る。1つの好ましい蛍光分子は、Molecular Probesによって作製されたカルセインAMエステルである。
【0051】
図面において示されるように、その分子は、エステル化される場合、主に非荷電状態で存在し、よって、膜102を横断して、細胞の中およびその外へと容易に移動し得る。一旦細胞内に入ると、その分子は、細胞内エステラーゼによる改変に供され、エステル連結を切断し、その細胞内pHにおいて負に荷電した形態で主に存在する酸性基を残す。この標識手順は、好ましくは、室温で少なくとも5〜15分間にわたって、好ましくは、細胞の最初の予備処理において行われる。そのデバイスの微小流体構造に添加されたその予備処理されたサンプル物質は、従って、内部移行した蛍光標識を有する精子の懸濁液、および主に切断されていない形態で細胞外標識を含む。
【0052】
別の一般的実施形態において、その精子は、光源(例えば、LED)からの蛍光よりむしろ、光散乱または光の吸収によって検出される。例えば、その精子は、抗体または他の精子結合剤を介して、呈色レポーターまたはUV吸収レポーターで標識され得、その抗体または他の精子結合剤に対してそのレポーターが誘導体化される。あるいは、細胞内で切断されて、例えば、荷電種を形成する呈色レポーターは、細胞を標識するにあたって使用され得る。この実施形態において、上記の工学システムは、蛍光よりむしろ、細胞からの光吸収または光散乱を検出するように改変される。このことは、そのレザバ中の精子の蓄積がその光検出器において光シグナルの減少を引き起こすように、例えば、上記の収集レザバの直下に、その工学要素に第2の光検出器(検出器70)を配置することによってなされ得る。
【0053】
精子運動性および活動性精子の密度の定量を可能にする精子運動性の動力学は、図5A〜5Cにおいて例示される。その図面は、微小流体構造30(供給凹部50の下流端部、マイクロチャネルセグメント48a、収集レザバ60、およびマイクロチャネルセグメント48bを備える)のそのマイクロチャネル部分を示す。予備処理された精液サンプルが最初に、時間t=0でそのデバイスに導入される場合、そのサンプル中の標識精子細胞は、そのサンプル受容ステーションに含まれる流体を通じて迅速に分布する。すなわち、マイクロチャネルセグメント48aは、図5Aに示されるように、任意の標識細胞を実質的に含まない。経時的に、例えば、時間t=tにおいて、運動性の前に移動する精子細胞は、チャネルセグメント48aへとそれらの通路を見いだし、その細胞の平均運動性に依存する移動速度でレザバ60に向かって移動し始める。運動性の前に移動する細胞がチャネルセグメント48aを通るそれらの道程が終わると、それらの細胞は、レザバ60中に蓄積し始め、そのレザバ中で測定される蛍光シグナルの増加がもたらされる。
【0054】
上記の細胞移動事象が、経時的なレザバ内での蛍光検出において現れるように、図6においてプロットされる。時間t=0において、測定される蛍光は、いくらかの低いバックグラウンドレベルにおいてであり、時間t1まで、標識細胞がそのレザバに最初に達し始めるとき、そのままである。ますます標識細胞がそのレザバ中に蓄積し始めると、その測定された全蛍光は、この図面において上昇し始め、t1を過ぎて、蛍光の変化/所定の期間の傾きにより、経時的に線形的上昇を示す。その傾きを、ゼロの傾き時間(t1)に戻して外挿することによって、チャネルセグメント48bを通る精子細胞の移動に必要な時間t1が、決定され得る。
【0055】
そのデバイスの電子構成要素は、マイクロプロセッサを含み、小さな電池により電力供給される。その検出器シグナルは、ADコンバーターまたはコンパレーターによりデジタル化され、次いで、マイクロプロセッサのRAMに保存される。そのマイクロプロセッサは、次いで、以下に記載される論理に従って、その密度および運動性を計算する。そのマイクロプロセッサの設計および構成は、所望の出力、およびここで記載される論理的操作が与えられれば、当業者に明らかである。
【0056】
デバイスのマイクロプロセッサによって行われる工程は、これらのアッセイの測定を実施するにあたって、図7におけるフロー図で示される。ボックス10におけるように、サンプルを最初にそのデバイスに添加すると、例えば、サンプル流体が2つの電極間の導電性経路を閉じることによって、112におけるように、クロックタイムを0に設定して、マイクロプロセッサにシグナルが送られる。作動はまた、センサを、そのサンプルウェルを覆っているホイルまたはプラグ構造に接続することによって、スイッチを介して、手動で行われ得る。その保護カバーを取り外すと、そのサンプルは、作動される。同時に、LED66にスイッチが入り、そのマイクロプロセッサは、検出器68および70から時間依存性蛍光発光シグナルを受容し始める。
【0057】
光学的検出は、レザバ60中の増大した傾向の信頼性の高いプロットを記録するに十分長い現在の時間t2にわたって、続けられる。この時間に達すると、論理116を介して、そのプロセッサは、118に示されるように、その蛍光曲線を分析して、標準曲線分析アルゴリズムを使用して、時間依存性蛍光曲線の傾き決定する。この曲線から、120において、「ゼロ切片」(ここでその傾きは、水平基線と交差する)が決定され、このことから、チャネルセグメント48aを通る活動性精子の平均移動時間(t1〜t0)および運動性精子の平均速度が、それぞれ、122、124において決定される。すなわち、その既知の平均移動時間およびチャネルセグメント48aの既知の長さから、そのチャネル内の前進方向に移動する細胞における運動性細胞の移動速度が計算され得る(速度=距離/時間t)。その計算された速度または精子運動性の定量的インジケーターは、126においてユーザーに表示される。
【0058】
運動性精子の密度を決定するために、118および120において決定された時間依存性曲線の傾きは、128において、複数の既知の傾きの各々(各々、異なる既知の精子サンプルで同一条件下で行われた時間依存性蛍光測定を表す)と比較され、130において保存される。図面において示されていないが、サンプルの蛍光曲線の傾きは、標準化された励起強度に合わせられて、そのデバイスにおいて検出器68として測定される実際のLED励起強度における変動が補償され、その結果、そのサンプル曲線およびモデル曲線の全てが、標準化励起値に基づく。曲線フィッティングおよびマッチングに適切な方法は、当該分野で周知である。一旦最良の曲線フィットが132において行われると、サンプル中の運動性精子の密度は、その最良フィットの曲線から推定され、126においてユーザーに表示される。
【0059】
そのデバイスの操作は、全てのこれらの実施形態において、本発明の3つの一般的実施形態全てを参照して、以下のD節で記載される。
【0060】
(D.マイクロチャネルを通る精子検出に基づくデバイス)
この節は、本発明の第2の実施形態に従って構築されたデバイスの構成要素を記載し、ここで精子運動性および密度の特徴は、微小流体チャネルに沿って間隔を空けられた位置での1対の光学検出器の位置により測定される。そのデバイスは、特に図1(これは、本発明の3つの実施形態全てに共通する外部ハウジング外形を示す)、図4(これは、精子細胞の蛍光標識を例示する)、図8A〜8C(これは、この実施形態の微小流体チャネルおよび光学感知構成要素をレジする)、図9(そのデバイスによって実施される電子的に制御されるアルゴリズムのフロー図を示す)、および図12(これは、3つの実施形態全てに共通する2つの外部出力ディスプレイを例示する). を参照して例示される。
【0061】
図8Aおよび8Bは、その第2の実施形態のデバイスにおける微小流体構造140の一部を例示する。ここでは、サンプル受容レザバ142、およびマイクロチャネル144の一部(その上流端部は、レザバ142と流体連絡状態にある)が示される。マイクロチャネルの反対の端部は、端部レザバと連絡し、この端部レザバは、既に計数された精子細胞がその検出チャネルを通って戻らないように作用する。いくつかの外形は、その検出チャネルを既に通過した精子細胞の収集のために、機能的に無限の端部レザバを生成するために使用され得る。
【0062】
構造140は、B節において上記で記載されたものに類似する方法を使用して製造され得る。その構造におけるマイクロチャネルは、上流から下流方向におけるチャネル中の精子移動を保証するために、上記のものに類似した幅および深さの寸法を有する。そのチャネルの長さは、好ましくは、2〜5cmの間である。
【0063】
2つの光学的検出システム146、148が、そのマイクロチャネルに沿って間隔を空けた位置で配置され、その光学検出システムは、各々、LED光源(例えば、LED152および154)、および光検出器(例えば、それぞれ、光検出器150および156)を備える。そのLEDおよび光検出器は、上記のデバイス20について記載されているものに類似しており、(i)アッセイ手順が開始される場合、そのLEDのマイクロプロセッサ作動、および(ii)所望の精子運動性および精子密度情報を生成するための光検出器シグナルの受容および処理、についてマイクロプロセッサ(示さず)に作動可能に接続される。光源および検出器の両方が、同じ一体化された部分に組み込まれ得る。以下に認められるように、単一の検出器からのシグナルは、そのチャネルを通過する精子を計数するために使用される。2つの光源−検出器対は、微小流体チャネル(示される実施形態において)に沿って配置されて、固定された距離にわたる個々の精子の移動時間が記録され続ける。
【0064】
図面に示されるサンプルは、上記のように調製される。サンプル調製または予備処理は、細胞蛍光標識および等浸透圧溶液中の細胞の懸濁を包含し得る。その調製されたサンプルは、上記のように、そのデバイスに導入され、初期時間t=0でそのマイクロチャネルの中へと通って精子移動が開始される。図8Aおよび8Bは、精子(例えば、精子158a)は、1つの検出ゾーンから他のゾーンへ移動した2つの密接に関連した時間t1およびt1+dにおけるそのマイクロチャネル中の精子の位置を表す。
【0065】
図8Cは、チャネル144を通って移動し、時間t1および時間t2で2つの検出ゾーンで検出される、細胞s1、細胞s2および細胞s3(図8Aおよび図8Bにそれぞれ示される細胞位置に対応する)についての蛍光シグナル追跡を示す。操作の際、デバイスプロセッサーは、各検出器で測定された各ピークを計数し、このピークを連続する新しい細胞番号Nに割り当てる。従って、例えば、細胞158aが検出器150によって検出された細胞番号Nに割り当てられる場合、同じ細胞が、検出器156によって検出される同じ番号に割り当てられるべきである。従って、対応する「同番号」の細胞間の時間間隔を比較することにより、このデバイスは、各精子「N」の検出器間の移動時間を検出し得る。これを、図8Cに図示し、この最下段枠(166)は、ピーク164およびピーク164’に対応する、それぞれ上流検出器および下流検出器で検出された蛍光シグナルピークを示す。
【0066】
マイクロチャネルを通る精子の移動は、一列のみ(マイクロチャネルの幅の制約に起因する)または単一および平行対の両方であり得る。1より多い細胞が検出ゾーンを同時に通る場合、これは、より幅が大きくかつ/またはより高い蛍光ピークに基づいて、多重細胞事象として記録される。マイクロチャネル幅/深さは、平行様式における1より多い精子細胞に適合し、マイクロプロセッサは、(i)ピークに寄与する細胞数をピーク高/幅から決定すること、および(ii)決定された精子細胞の数に対応するピーク細胞数番号の割り当て(例えば、N+1、N+2)のための、従来の単一分析能力を備え得る。
【0067】
平均精子運動性および活動性精子密度を測定するためのデバイスにおけるマイクロプロセッサの操作を、図9に流れ図で示す。まず、各検出器からの生の検出シグナル(160および162で示される)は、シグナル強度が静止の通過に対応する(事象)時間を決定するために、デジタイザー、次いで選別器を通過する(それぞれ170および172)。これらの時間を、各検出器について記録する。例えば、n番目の精子が第1検出器および第2検出器を通過する時間を、Tn1、Tn2とそれぞれ名付ける(176、178でそれぞれ示される)。上述のように、複数の細胞が検出ゾーンを任意の1時期に通る場合、より高くかつ/または幅の広いピークが、適切な細胞数として記録される。
【0068】
測定時間の間に各検出器を通る全ての精子の稼動数(N)を174で記録する。これは、サンプル中の活動性精子密度(マイクロチャネルにおける総数/時間に基づく)の基準を提供する。上述のように、実際の活動性精子密度は、サンプル中の実際の細胞数/時間を、各々複数の密度が既知のサンプルについて決定された複数の細胞数/時間標準と比較することにより、決定され得る。
【0069】
次いで、個々の細胞速度を、所定の精子の2つの検出器における到着時間の間の差異を取り、この値を検出器間の距離で割ることにより、計算する(180に示す)。多くの個々の精子速度を平均し、平均精子速度(Vn)を計算する。精子密度を、N、Vnおよび較正係数の積として概算される(182に示す)。較正係数は、独立に測定した精子密度を、次いで、NおよびVnで割ることによって決定され得る。デバイスの2つの例示的な表示を、デバイス12について上述したように、図12Aおよび図12bに示す。
【0070】
本実施例は、2つの離れた時点で精子位置を検出するために、隔たった検出器の対を有するが、このデバイスは、単一のLEDおよび検出器対による精子速度を測定するために容易に改変され得ることが理解され、ここで、速度は、ピーク幅の関数として測定される。
【0071】
(E.インピーダンス測定による精子検出に基づくデバイス)
この節は、第3の本発明に従って構築されたデバイスの構成要素を説明し、ここで、精子運動性および密度特性は、精子がチャネルを通って移動する場合に、マイクロチャネルを横切るかまたはマイクロチャネル内のインピーダンスの変化によって測定される。このデバイスは、特に、本発明の3つの実施形態全てに共通する外部ハウジング特徴を示す、図1に関連して示される。
【0072】
図10は、デバイスにおける例示的チャネルおよび電極の構成を図示し、図11Aおよび図11Bは、簡易化した様式で、システム中の回路構成要素、およびアッセイの過程の間に得られた代表的なインピーダンス曲線を図示し、そして図12は、2つの例示的な出力表示を図示し、これは、3つの実施形態全てに共通である。
【0073】
図10は、第3の実施形態デバイスにおける微小流体構造186の一部を図示する。ここで、サンプル受容レザバ188、収集レザバ192およびその間に延びるマイクロチャネルセグメント190を示す。構造186は、節Cで記載された構造30と実質的に同一の構造を有し得、同じ製品であり得る。
【0074】
電極194、196の対は、それぞれレザバ188,192内に配置され、2つの電極間に、電気的励起ユニット198および微小流体構造中の流体経路を備える回路の一部を形成する。
【0075】
図11Aで示されるように、2つの電極は、デバイスにおいて回路200の一部を形成し、選択周波数のAC電圧(例えば、約0MHzと1MHzとの間の選択周波数)を電極を横切って配置するAC電流供給源204、および任意の所定の周波数で回路内の電圧を測定する電圧計202を備える。所定の周波数の電気インピーダンスは、電極を横切って測定される:Z(f)=(V(f)/I(f)。所定の周波数における電気インピーダンスの実際の構成要素は、収集レザバ内の精子の蓄積に反応性である。特定の条件下で、実際のZ(f)は、図11Bに示すような時間曲線を融資、ここで、測定インピーダンスは、実質的に一定(開始時間t=0から精子が最初にマイクロチャネルから収集チャンバに侵入し始める時間t1までの基線レベル)のままであり、そしてインピーダンス曲線は、レザバ内に精子が蓄積する測定勾配と同じ測定勾配で増加する。レザバのインピーダンスを、有用な周波数の範囲にわたって周期的に走査し、測定の信頼性を改善するためのより多くの情報を得ることができる。また、インピーダンスを、電圧供給源および電流計を使用することによっても測定し得ることに留意する。
【0076】
インピーダンス曲線は、図6における蛍光曲線と同一のレザバを示し、かつデバイス内のマイクロプロセッサによって、平均精子運動性および活動性精子の密度を得たのと実質的に同一の方法で処理される。特に、マイクロプロセッサは、既知の密度の精子サンプルについての一連のインピーダンス曲線を有し、これを曲線マッチングにおいて使用して、ベストフィット密度値を決定する。デバイスの2つの例示的な表示を、デバイス12について上述したように、図12Aおよび図12bに示す。
【0077】
(F.デバイスの操作)
この節は、本発明の方法に従って精液サンプル分析を実施し、サンプルの精子数および運動性を決定する際のデバイスの操作を説明する。
【0078】
代表的なサンプルアッセイ方法において:
1.射精された精液の全量をサンプル回収バイアル中に収集し、男性受精能についてのWHO標準と体積を比較する。
【0079】
2.より少ない体積の精液もしくは希釈体積の精液または他の化学物質、化合物もしくは溶媒と混合した精液を入れたメスシリンダーまたは別個の容器を、デバイスのサンプル受容ウェル内に置く。サンプルホルダーの挿入部を、ウェル内に降りたときに電極が作動し、そして鋭い(sharpened)アクセスポートがサンプルホルダーの底に穴を開けて、内部デバイス流体チャネルを精液サンプルに接触させる位置に固定する。精液サンプルは、乾いたローディングレザバ内に流れ込むか、または事前充填(prefilled)流体チャネルと直ちに接触する。あるいは、処理サンプルは、マイクロチャネルが開けられた後、サンプル収集ウェル内に注がれ得る。記載した最初の2つの実施形態において、サンプル前処理は、サンプル精子を蛍光レポーターで標識する工程を包含する。第3の実施形態において、サンプルの標識は必須ではない。
【0080】
3.事前充填流体チャネルが乾いたローディングレザバと分離される場合、プロテアーゼ活性による膜様のプラグの分解が、液体サンプルのレザバ内への導入によって開始される。あるいは、シールを除去し、微小流体チャネルにおいてサンプルを流体に曝す。あるいは、サンプル容器を破裂させ、微小流体チャネルをサンプル流体に曝す。
【0081】
4.サンプルを微小流体チャネルに接触させる上記事象のいずれかは、t=0に時間を設定したデバイス内のタイミング機構(精子が最初にデバイスにおけるマイクロチャネル内に侵入し始め、そして中を移動し得る時間を示す)を始動させる。
【0082】
5.デバイスにおけるマイクロチャネル内に移動しそしてマイクロチャネルを通って移動する精子を、以下によって記録する:(i)第1の実施形態における収集レザバ内の蛍光放出測定、(ii)第2の実施形態におけるマイクロチャネルに沿った個々の標識化精子移動事象の速度および密度の測定、ならびに(iii)第3の実施形態におけるマイクロチャネルを横切るインピーダンスにおける変化の測定。
【0083】
6.WHO基準の計算を、マイクロプロセッサ(図7、図9および図11における3つの実施形態について示すコンピュータ理論)を用いて実施する。
【0084】
7.(図12Aに示すような)単純な定量的な様式または(図12bに図示するような)より定量的な様式で、ユーザーに結果が表示される。両図面において、表示ウインドウは、図1に示すデバイスにおける表示ウインドウ28に相当する。図12Aにおけるディスプレイインジケータは、アッセイが完了するのを待ち続け、そして一旦完了すると、「妊娠可能性が高い(likely fertile)」または「不妊の可能性が高い(likely infertile)」表示のどちらかを、測定精子運動性および活動精子密度に基づき、既知の精子運動性および密度値の標準参照表(standard look up table)を使用してサンプル精子をこれら2つのカテゴリーのうちの1つに分類し、ユーザーに示す。
【0085】
図12Bにおけるより詳細な表示において、正常値と比較した運動性精子の実際の百分率、および正常値と比較した実際の精子前進運動速度(sperm forward movement rate)を与える。
【0086】
上記の発明は例示のため、そして理解の明瞭化の目的で記載されているが、本発明の技術の見地から、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、特定の変更および改変が本発明に対しなされ得ることは、当業者に明らかである。特に、特許請求の範囲と一致する他の実施形態が、3つの開示された一般的実施形態の各々の範囲内の異なった特定の実施形態として企図される。
【0087】
例えば、多数の、独立した、同一の精液サンプルに起源する液体充填検出ラインを有することが所望され得る。2以上の流体充填チャネルが、同一の乾いたレザバからの多くの位置に起源し得る。この型の独立した測定は、各独立した測定は、測定全ての正確さに寄与するため、精子細胞計数および運動性特徴づけの高い精度を任意に可能にする。
【0088】
別の実施例として、第2の実施形態の改変として、種々の電気検出系および種々の電気時期検出系を使用して、個々の精子のマイクロチャネルに沿った通過を(例えば、精子細胞を収容するチャネル部分における電気容量の変化に依存するか、または金属標識した精子によって生成される磁気作用に基づいて)検出し得る。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従って構築されるアッセイデバイスを斜視図で示す。
【図2】図2A〜2Fは、(2A)本発明に従って構築された微小流体アセンブリの底部プレートの平面図、(2B)その入り口ポートをそのマイクロチャネルに接続するための中心検出レザバおよびウェルを示す、図2Aの線A−Aを通る断面図、(図2C)微小流体アセンブリにおける上面プレートの平面図、(2D)上面プレートにおいて形成される微小流体チャネルおよび対向するレザバの端部領域の詳細、(2E)上部プレートにおいて形成された微小流体チャネルおよびレザバ輪郭の詳細、(2F)上部プレートおよび底部プレートが重ねられたアセンブリ全体、を示す。
【図3】図3は、図2Aおよび2Cにおいて横断する線3−3に沿ってとった、本発明のアッセイデバイスにおける光学要素の断面図である。
【図4】図4は、エステル連結蛍光レポーターでサンプル精子を標識することを示す。
【図5】図5A〜5Cは、3つの異なる時点での、図1におけるデバイスの操作の間のサンプル運動および分布の状態を示す。
【図6】図6は、アッセイ操作の間に図1のデバイスにより生成される代表的な精子濃度関数を示す。
【図7】図7は、図1のデバイスにおける制御ユニットによって実施される操作のフロー図である。
【図8】図8A〜8Cは、(8Aおよび8B)本発明の第2の一般的実施形態における微小流体構造および関連する検出器の平面図、および(8C)2つの検出器から記録された代表的光学検出シグナルを示す。
【図9】図9は、図8に2つの検出器デバイスにおける制御ユニットによって行われる操作のフロー図である。
【図10】図10は、本発明の第3の一般的実施形態における微小流体構造および関連した検出器の平面図である。
【図11】図11Aおよび11Bは、図10の実施形態における、例示的回路(11A)および検出されたシグナル(11B)を示す。
【図12】図12Aおよび12Bは、本発明のデバイスにおける種々の出力ディスプレイを示す。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、男性受精能をアッセイするための方法およびデバイスに関し、特に、前進方向の精子運動性および活動性精子の密度を決定するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
米国および他の先進国における夫婦は、ある医学的介入なくしては、子供をもうけることができないという、可能性が15〜20%ある。男性要因の不妊症は、約3分の1に対する直接的原因であり、失敗した授精の過半数においては、寄与因子(contributing factor)である。最も適切な医学的介入を計画するために、男性の精液サンプルの状態が、正確に決定されなければならない。男性受精能に関する世界保健機関基準によれば、男性受精能を支配する主要な要因は、精液の容積、および精子細胞密度、運動性、前進性、および形態である。これらの基準は、無関係ではない。例えば、高密度の前進する精子を有する精液サンプルはまた、高い運動性、および許容し得る低い割合の形態学的欠損を有する。従って、精液サンプル内の前進する精子細胞の密度を正確に測定し、これらの結果を国際医学標準と比較することによって、男性要因の不妊症は、失敗した授精の原因として除外され得るか、または現在の医学的行為に従って同定および処置され得る。
【0003】
現在、ほぼ全ての精液サンプルが、医師の紹介から派生して、大病院、医療施設、および産科クリニック(fertility clinic)での研究室状況において分析されている。訓練された技術者が、大部分の精液分析を行っている。そのサンプルは、顕微鏡下で観察され、精子細胞組成のいくつかの局面が定量される(例えば、密度、運動性%、形態的異常性%、および前進)。この時点で、精液細胞計数を実施する一人用の医師の処方箋不要の製品はまた、米国および英国で利用可能である。
【0004】
受精に失敗している夫婦のための精液サンプルの分析は、現在、いくつかの要因により制限されている。多くの夫婦は、困難性およびストレス要因(stressor)が、長期間繰り返されるまで、受精能(fertility)の問題に関する医学的助言を求めたがらない。一旦医学的助言が求められると、男性は特に、気恥ずかしさおよびプライバシーがないことに起因して、精液分析を求めることに自発的でない。訓練された職員および実験室試験の必要性は、部分的に、受精能の管理の費用が高いことの原因である。精液分析に代わる低費用かつ秘密が守られる手段(例えば、英国で利用可能な家庭内細胞計数アッセイ)は、その精液サンプル中の精子数と、他の細胞型との間の区別に失敗しており、そのサンプル内の精子細胞の任意の運動性特徴を分析するのに失敗している。従って、これらの制限を実質的に克服する、精子計数および運動性をアッセイするための家庭内での方法およびデバイスを提供することが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
一局面において、本発明は、精液サンプル中の前進方向における精子運動性および活動性精子の密度をアッセイするための方法を包含する。この方法を実施するにあたって、精液サンプルは、サンプルレザバに入れられ、チャネル内で下流収集領域に向かう一方向移動に精子を制限するマイクロチャネルへと、そのマイクロチャネルに沿って移動させる。その精子サンプル特徴は、そのマイクロチャネルを通る精子の移動速度および流動(flux)を測定する工程によって決定される。そのマイクロチャネルは、10〜100μmの範囲において幅および深さの好ましい各寸法を有する
1つの一般的な実施形態において、そのマイクロチャネルは、既知の長さを有し、その下流収集領域は、既知の容積を有する収集レザバを備え、そのマイクロチャネルを通る精子の移動速度および流動を測定する工程は、(1)その収集レザバ中に存在する細胞の濃度における変化を、時間の関数として測定する工程、(2)工程(1)、およびその収集レザバの容積から、そのサンプル中の活動性精子の密度を、時間の関数として決定する工程、および(3)工程(1)から、そのマイクロチャネルを通る下流方向の精子の平均移動速度を決定する工程、を包含し得る。より具体的には、工程(1)は、時間依存性関数を生成し、その関数の傾きは、単位時間あたりに上記収集レザバに存在する細胞数の変化に近似し、その関数の切片は、単位時間あたりのその収集レザバに存在し、その関数の切片は、その収集レザバにおける精子の第1の出現までの時間に近似する工程を包含し得、工程(2)は、その関数と、異なる既知の精子数および前進速度の精液サンプルを用いて生成された1以上の標準的な関数とを比較する工程を包含し得、工程(3)は、その切片から、その精子の前進方向における平均進行速度を決定する工程を包含し得る。
【0006】
この実施形態において、そのサンプル中の精子を蛍光レポーターで標識され得、工程(1)は、上記収集レザバ中で蛍光発光を測定する工程を包含し得る。この標識する工程は、精子を、切断可能なエステル基を有する蛍光レポーターに曝す工程を包含し得、その切断可能なエステル基は、非荷電状態において精子へのそのレポーターの取り込みを促進し、その荷電した、切断されたエステル状態において精子からのそのレポーターの流出を阻害する。
【0007】
別の一般的な実施形態において、そのマイクロチャネルの幅は、そのマイクロチャネルに沿って一列へと精子移動を制限するような幅であり、そのマイクロチャネルを通る精子の移動速度および流動を測定する工程は、(1)個々の精子がそのマイクロチャネルにおける検出ゾーンを通り越して上流方向から下流方向に移動する場合に、その個々の精子を検出する工程、(2)その検出ゾーンを通り過ぎて移動する精子数を計数する工程、および(3)その検出ゾーンを通る個々の精子の移動速度を検出する工程、を包含し得る。
【0008】
この実施形態におけるそのその検出ゾーンの幅は、好ましくは、約15〜40μmの間である。その検出ゾーンは、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定され得、工程(1)は、各検出器から受容したシグナルを相関させて、各検出事象のシグナル−対−ノイズ比を増強する工程をさらに包含し得る。あるいは、その検出ゾーンが、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定される場合、工程(3)は、その検出器から受容したシグナル間の時間間隔を使用して、そのマイクロチャネル内での精子の移動速度を決定する工程をさらに包含し得る。
【0009】
サンプル中の精子は、蛍光レポーターで標識され得、工程(1)は、その検出ゾーンを通る精子移動の蛍光を測定する工程を包含し得る。上記のように、その精子は、切断可能なエステル基を有する蛍光レポーターで標識され得、その切断可能なエステル基は、実質的に非荷電状態において精子へのそのレポーターの取り込みを可能にするが、荷電した、切断されたエステル状態において精子からのそのレポーターの流出を阻害する。
【0010】
あるいは、サンプル中の精子は、磁性粒子または導電性金属粒子で標識され得、工程(1)は、(i)その検出ゾーンに隣接して配置された回路要素によって生成され、かつ(ii)その検出ゾーンを通過する磁性粒子または導電性金属粒子で標識された精子に特徴的な、電気シグナルを測定する工程を包含し得る。工程(3)は、その検出ゾーンを通過する精子の移動速度を、その回路要素によって生成されるシグナル特徴の変化率から決定する工程を包含し得る。
【0011】
別の局面において、本発明は、精液サンプル中の精子運動性および運動性精子の密度をアッセイするためのデバイスを包含する。そのデバイスは、サンプルレザバ、下流収集領域、およびそのサンプルレザバとその下流収集領域との間に延びるマイクロチャネルを有する微小流体構造を備える。そのマイクロチャネルは、そのサンプルレザバ中に入れられた精液サンプル中の精子が、そのマイクロチャネルに沿って、その収集領域へ向かってそこに入り、かつ移動するように、サンプル精子をそのチャネル内での一方向移動に制限するような寸法にされている。そのマイクロチャネルまたは収集領域中の標識された精子の存在を検出するための検出器もまた備えられる。そのデバイスにおける電子ユニットは、(i)検出器シグナルを受容し、(ii)その受容した検出器シグナルに基づき、その精子サンプル中の精子運動性および密度を決定し、そして(iii)精子運動性および密度に関する情報を提示するために、その検出器に操作可能に接続されている。
【0012】
そのデバイスは、自己充足式ユニット(例えば、使い捨てユニット)として、その制御ユニットおよび検出器に電力供給するためのそのユニット自体の電源(電池)とともに形成され得る。そのデバイスにおけるマイクロチャネルは、10〜100μmの範囲にある好ましい幅および深さの寸法を各々有する。
【0013】
1つの一般的実施形態において、そのマイクロチャネルは、既知の長さを有し、その下流収集領域は、既知の容積を有する収集レザバを備え、その電子ユニットは、(1)その収集レザバに存在する細胞の濃度変化を時間の関数として測定し、(2)工程(1)、およびその収集レザバの容積から、そのサンプル中の活動性精子の密度を、時間の関数として決定し、そして(3)工程(1)から、下流方向においてそのマイクロチャネルを通る精子の平均移動速度を決定するように作動する。より具体的には、その電子ユニットは、工程(1)を実施するにあたって、時間依存性関数を生成するように作動し得、その時間依存性関数の傾きは、単位時間あたりにその収集レザバに存在する細胞数の変化に近似し、その時間依存性関数の切片は、その収集レザバ中の精子の第1の出現までの時間に近似し、工程(2)を実施するにあたって、その関数と、異なる既知の精子数および前進速度の精液サンプルで生成された1以上の標準関数と比較するように作動し得、工程(3)を実施するにあたって、その切片から、その精子の前進方向における平均進行速度を決定するように作動し得る。
【0014】
この実施形態において、その検出器は、LED、第1の光検出器および第2の光検出器、ならびに光学部材を備え、その光学部材は、(1)そのLEDからその第1の光検出器へと光を指向し、(2)そのLEDからその収集レザバを通って光を指向し、および(3)その収集レザバ捕獲からその第2の光検出器へと発っせられた蛍光を指向するように設計されている。その光学部材は、異なる屈折率を有する複数の光学要素から構成される一体型部材であり得る。
【0015】
別の一般的実施形態において、その検出器は、そのマイクロチャネルにおける検出ゾーンに隣接して配置される。この実施形態において、その電子ユニットは、(1)そのマイクロチャネルにおけるそのゾーンを通って上流方向から下流方向に個々の精子が移動する場合に、その個々の精子を検出し、(2)その検出ゾーンを通って移動する精子数を計数し、そして(3)その検出ゾーンを通る個々の精子の移動速度を決定するように作動し得る。この実施形態において、そのマイクロチャネルの幅は、好ましくは、約15〜40μmの間である。
【0016】
その検出ゾーンは、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定され得、工程(1)は、各検出器から受容した検出シグナルを相関させて、各検出事象についてのそのシグナル−対−ノイズ比を増強する工程を包含し得る。あるいは、その検出ゾーンが、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定される場合、工程(3)は、その検出器から受容したシグナル間の時間間隔を使用して、そのマイクロチャネル内の精子の移動速度を決定する工程を包含し得る。その検出器は、蛍光検出器であり得る。
【0017】
あるいは、その検出器は、その検出ゾーンに隣接して配置される回路要素を備え得、その回路要素は、磁性粒子または金属導電性粒子の直ぐ近くの移動に応答性であり、その結果、そのマイクロチャネルにおけるその検出ゾーンを通る磁性粒子または金属導電性粒子で標識された精子の移動は、その要素のインダクタンスを変化させる。この実施形態における電子ユニットは、その要素のインダクタンスにおける変化を検出するために、その要素に作動可能に連結された検出器回路を備え得る。その電子ユニットは、工程(3)を実施するにあたって、その検出ゾーンを通る精子の移動速度を、その回路要素によって生成されたシグナル特徴の変化率から決定するように作動し得る。
【0018】
そのデバイスにおけるサンプル受容レザバは、分解性の、液体不浸透性プラグを通って、そのマイクロチャネルの上流端部と連絡し得、そのレザバは、そのプラグを分解可能な酵素を含む。
【0019】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、以下の発明の詳細な説明が添付の図面とともによまれる場合に、より完全に明らかになる。
【0020】
(発明の詳細な説明)
(A.定義)
以下の用語は、別段記載されなければ、本出願において以下の意味を有する。
【0021】
「マイクロチャネル」とは、ファロピーオ管を介するインビボでの状況に類似の様式で、そのチャネルを通る精子運動を促進する幅および深さの寸法を有するチャネルを意味する。個々の前進する細胞を計数するために、そのチャネルは、精子を一列移動に制限するために、狭い。代表的には、そのマイクロチャネルは、約10〜100ミクロンの間の幅および深さの各寸法を有する。そのマイクロチャネルは、任意の断面外形(例えば、丸形または矩形)であり得、長さ数cmまでであり得る。
【0022】
「標識化合物」とは、精子細胞が検出可能な標識、好ましくは蛍光標識を含むという結果を有する、それらの表面または内部のいずれかの上で精子細胞に結合し得るかまたは組み込まれ得る任意の化合物をいう。
【0023】
「運動性」とは、移動の能力、および流体媒体を通る移動を可能にする精子細胞の特性に対して特異的な「精子運動性」をいう。
【0024】
「前進」とは、線形的様式で精子が移動する能力をいう。
【0025】
「活動性精子」とは、運動性でありかつ前進している精子細胞をいう。
【0026】
「精子数」とは、単一検出ユニットによって、活動性精子細胞の区別されかつ計数された数をいい、計数を行う容積による「精子濃度」に関連する。
【0027】
「精子密度」とは、集合精液サンプル中の活動性精子細胞の密度をいい、20×106精子細胞/cm3以上を有する受精能のあるサンプルが、世界保健機関標準に従う男性受精能の尺度である。
【0028】
(B.アッセイデバイス)
この節は、本発明のアッセイデバイスを記載し、3つの一般的実施形態を参照して、そのデバイスを例示する。図1〜7および12を参照して例示される第1の実施形態において、精液サンプル中の前進方向における精子運動性および活動性精子の密度は、サンプル受容レザバから、既知の長さの微小流体チャネルを通って、収集レザバへの精子移動速度および数によって決定される。ここで経時的な精子蓄積が測定される。図1、4、8、9、および12を参照して記載される第2の実施形態は、上流レザバと下流レザバとの間のチャネルに沿って個々の精子が移動する場合に、その個々の精子を検出するために、微小流体チャネルに沿って間隔を空けられた位置にある1対の光学検出アセンブリを使用する。第3の実施形態は、図1および10〜12において例示され、微小流体状況における電気インピーダンスにおける時間依存性変化に依存して、精子運動性および活動性精子密度を決定する。
【0029】
図1は、精液中の前進方向における精子運動性および活動性精子の密度を測定するための、本発明に従って構築された自己充足式デバイス20を例示する。(i)精子運動性特徴が決定される内部微小流体構造、(ii)その微小流体構造内で精子の移動および/または蓄積を嫌酒留するための検出システム、ならびに(iii)検出されたシグナルに基づいて精子特徴を決定するための、その検出システムに作動可能に連結された電子ユニット、を収容する外側ケース22がこの最初に示される。これらの構成要素の構築および操作は、以下で議論される。
【0030】
図1に見られるように、そのケース22は、記載されるように、そのデバイスにおける微小流体システム中のサンプル受容レザバと内部で連絡する、サンプル受容開口24を規定する。射出された精液容積全体の収集およびサンプル調製のための、キュベットまたはサンプル収集ホルダ26もまた示される。そのキュベットは、適切な男性受精能に関するWHO標準によって必須と決定される最小精液容積(例えば、1.5mL容積)の印を付ける容積インジケーター(示さず)とともに示され得る。そのキュベットは、そのホルダからデバイスにおける微小流体構造へ流体を移動させるために、そのデバイスの開口24に直接挿入され得るか、またはさらなるサンプル調製溶液は、より少量の射出精液容積全体、総サンプルの希釈液、または総サンプルと液体もしくは固体の化学物質との混合物を含むように提供され得る。
【0031】
サンプル受容ウェルに挿入されるそのキュベットは、集合サンプルホルダとよばれ、そのキュベットの底部面全体からなる底部開口部、またはその開口の底部における鋭いアクセス(例えば、シリンジ針)ポートによって容易に穿通される底部面内に設定されるいくつかのより小さな外形を有し得る。その底部面は、そのサンプルを漏らすことなく、穿通を可能にするようにゴムまたはワックスから作製され得る。そのサンプルは、毛細管作用によって、その流体経路に引き入れられ得る。そのサンプルホルダは、固体および/または液体の化合物(例えば、標識化合物および/または消化酵素)が予め充填され得るかまたはコーティングされ得る。消化酵素(例えば、コラゲナーゼまたはトリプシン)は、精液サンプルの天然のタンパク質分解性崩壊を容易にするために使用され得る。化合物(例えば、塩化ナトリウムおよびフルクトース)は、精液サンプルのインビトロでの生存性を増すために添加され得る。そのキュベットはまた、代表的には、以下で議論されるように、検出可能なレポーター(例えば、蛍光レポーター)で精子を標識するための精子標識試薬を含む。
【0032】
そのサンプルホルダは、液体試薬が、詰め替えられ得るか、またはこれらのサンプルホルダは、そのホルダにサンプルを添加するための別個の流体ディスペンサでユーザーに供給され得るかのいずれかである。その液体試薬は、HEPES緩衝化によって生理学的pHに維持される、水中の糖および塩(フルクトース、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、および塩化カリウムから主になるが、これらに限定されない)の等浸透圧の(約290mOsm)溶液を含み得る。
【0033】
そのホルダ中に予め充填された溶液または固体試薬は、標識化合物を含んでいてもよいし、その標識化合物は、充填レザバもしくはメスシリンダ中に固体形態で含まれていてもよい。その標識化合物は、濃度収量または量子収量、および精子細胞上または精子細胞中の高い蛍光のいずれかのために、活発な蓄積、分配、またはエステラーゼ活性に起因する増加した濃度のいずれかのために、あるいは液体挿入または環境変化のための量子収量の増加のために、溶液中で弱く蛍光を発する。
【0034】
一旦そのサンプルホルダがそのデバイスに挿入されると、鋭いアクセスポートが使用されて、その集合サンプルホルダの底部が穿通され、その集合サンプルはそれによって、アッセイデバイス内の流体経路へのアクセスを得る。あるいは、そのサンプルは、そのキュベット中の試薬と一旦混合されると、開口に注がれ得、その開口から、例えば、酵素溶解可能なプラグを溶解することによってまたはユーザーによるシールの除去後に、微小流体構造に入る。
【0035】
そのユーザーにアッセイ結果を表示するためのディスプレイウインドウ28もまた、図面に示される。ディスプレイ情報の2つの例示的な型が、図12Aおよび12Bを参照して、以下で議論される。デバイス20は、好ましい実施形態において、小さな携帯型の使い捨てデバイスとして製造される。
【0036】
(C.収集レザバ中での精子検出に基づくデバイス)
この節は、本発明の第1の実施形態に従って構築される収集レザバデバイスの構成要素を記載する。図2A〜2Fを参照すると、図2Fにおいて示され、微小流体構造30は、整列された上部プレート34(図2C)に結合された底部プレート32(図2A)から形成される。図2Aおよび2Bにおいて最もよく認められるように、底部プレート32は、そのプレートの上流端部領域におけるその上側表面に形成された涙形凹部36、その構造における収集レザバの一部を形成する中心円筒形レザバ凹部38、および下流凹部40を備える。その下側プレートおよび上側プレートを整列するにあたって、その2つがともに結合される場合に、使用される円形の整列凹部42、ならびに認められるように、構造30上に光学要素を整列するにあたって使用されるタブ44もまた、下側プレートにおいて形成される。
【0037】
ここで上部プレート34の構築を、図2C〜2Eを参照して考慮すると、サンプル受容開口46は、そのプレートの上流端部に形成される。そのプレートの下部側に形成される微小流体チャネル48は、2つの別個のチャネルセグメントを有する:上流供給凹部50から中心レザバ凹部52まで延びる上流セグメント48a、および凹部52を下流排水凹部54まで延ばす下流セグメント48。凹部50、54、ならびにそれぞれ、チャネルセグメント48a、48bの隣接部分は、図2Dにおいて拡大図で示される。凹部50(図2Eにおいて拡大図でみとめられる)は、底部プレートにおけるレザバ凹部38と同じ円形寸法を有し、そのアセンブリされた構造において、円筒形収集レザバ60(図2F)(ここで標識精子が、以下で議論されるように、検出のために回収される)中に、その回収レザバとともに形成される。例示的実施形態において、その収集レザバは、0.1〜1mmの間の円筒半径、および0.1〜1mmの間の深さを有して、0.001〜1mm3.の間の既知の容積を生じる。
【0038】
チャネルセグメント48bにおける凹部52の直ぐ下流には、チャネル迂回路56(図2E)があり、この迂回路は、その迂回路の下流に運動性精子の流動を制限するように機能し、それによって、そのレザバを超える運動性精子の移動を制限するように作用する。
【0039】
上記のように、そのマイクロチャネルは、この実施形態において、その2つのマイクロチャネルセグメント48a、48bを意味し、各々、約10〜100ミクロンの間、好ましくは、15〜60ミクロンの範囲の幅および深さの寸法を有する。そのマイクロチャネルは、任意の断面外形(例えab、半円形もしくは矩形)であり得、長さは数cmまでであり得る。機能的には、そのマイクロチャネル、特に、マイクロチャネルセグメント48aは、運動性精子がそのチャネルを通って、上流方向から下流方向であるが、精子がそのチャネル内でのそれらの移動方向を逆にする可能性が非常に低い、十分に制限された空間内で、進むことを可能にする寸法にされる。以下で認められるように、そのチャネル幅および/または深さは、そのチャネルを並んで通過して移動する精子を収容し得るか、または精子を一列の運動に制限し得る。前者の場合において、チャネル幅および深さの寸法は、好ましくは、50ミクロン〜100ミクロンの間であり;後者において、10〜30ミクロンの間である。
【0040】
プレート32、34の前述の記載から、および図2Fから理解され得るように、そのアセンブリされた構造は、開口46によって形成されたサンプル入り口ポートを有し、このポートは、下部プレートにおいて凹部36と連絡して、サンプル受容ステーション47を形成する。この下流端部において、凹部36は、凹部36から凹部50へと、かつこの凹部からマイクロチャネル48へと液体を移動させる能力のために、上部プレートにおける上流供給凹部50と重なる。ここでそのマイクロチャネルの中心領域は、円筒形収集レザバ60によって中断される。このレザバから、流体は、その下方マイクロチャネル48bから凹部54まで引っ張られ、その凹部54は、凹部40と重なり合い、凹部40および開口40によって形成される排液レザバ中の液体を分布させるように作用する。構造30においてちょうど記載されるその流体経路は、代表的には、製造中に適切な流体媒体(例えば、等張性塩溶液)で満たされ、使用前に密封される。サンプル流体がデバイスに添加される場合、そのサンプルは、サンプル受容ステーション中に再度充填された流体と混ざる。サンプル中、ここではサンプル受容ステーション中に含まれる精子は、このステーション全体に素早く分布され、以下で記載されるように、精子運動性および前進する精子の密度を決定するための起訴を形成する一連の精子移動事象を開始する。
【0041】
プレート32、34は、ポリマー物質、好ましくは、透明なポリマー(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、または十分に規定されかつ安定な成形された外形を提供することが公知の、任意の他の光学的に透明なポリマー)の射出成形を使用して製作され得る。あるいは、そのプレートは、種々の適切な物質(例えば、シリコン、が足す、石英、プラスチック、または他のポリマー)のいずれかに適用される周知の表面製作方法によって形成され得る。後者のアプローチにおいて、そのチャネルは、レーザー切除または化学的エッチングによって作製され得る。提唱されたサイズのチャネルは、切除において使用されるレーザーを収束させることによって、またはエッチングする前に基材をマスクするマイクロリソグラフィーを使用することによって達成され得る。各プレートは、0.5〜2cm、2〜4cm、および1〜2mmの代表的な幅、長さおよび厚みの寸法を有する。そのアセンブリされた構造の厚み全体は、代表的には、2〜3.5mmである。凹部52以外の凹部の厚み寸法は、代表的には、25〜100ミクロンである。
【0042】
その2つのプレートは、一旦形成され、互いに対して整列されると、従来の方法によって(例えば、化学的に、静電気的に、または熱および圧力(融合接着)を介して)結合される。
【0043】
図3を参照すると、微小流体構造30は、プレート64(例えば、プリント回路基板)上に取り付けられ、このプレートはまた、(i)発光ダイオード66(この発光ダイオードは、構造30におけるその収集レザバ中の蛍光サンプル物質のための励起光源として働く)、そのレザバにおけるサンプル物質からの発光を検出するように作動する、1対の光学検出器68、70、およびLEDからその検出器への励起波長および発光波長をそれぞれ指向するための一体型光学アセンブリ62(これは、以下に記載されるように、複数の光学要素を有する)を支持する。
【0044】
発光の検出は、光ダイオード、CCD、または他の半導体検出器(solid−state detector)を用いて達成され得る。これらは、安価で、信頼性が高く、迅速な応答を有し、かつ広い範囲の波長感度プロフィールおよびサイズにおいて利用可能である。例示的なLEDは、Uniroyalによって供給されるUNPRX465−0G1 LEDであり、これは、約450〜470nmの青色波長において主に発光する。例示的な光検出器は、Centronicにより供給されるOSD1−0光ダイオードである。
【0045】
図2Aおよび2Cから理解され得るように、その光学アセンブリは、その微小流体構造の中心「カットアウト」部分にまたがり、構造30におけるその光学要素とタブ44との間の適切な手段によって、そのカットアウト部分と整列される。その光学要素は、プレート64上に保持される取り付けブロック72と互いに咬み合うことによって、プレート64上でさらに整列される。
【0046】
そのアセンブリにおける種々の光学要素は、(i)LED源から光検出器68上へ光ビームを指向して、LED光強度に対する参照を提供すること(黒色光線によって示される)、(ii)励起光線をLEDからその微小流体構造の収集レザバへと収束させること(図3において黒色光線によって示される)、および(iii)そのレザバにおける蛍光レベルを測定するために、その収集レザバから光検出器70上に発光を指向すること(灰色光線によって示される)、におけるそれらの作動の記載から理解され得る。
【0047】
図3において認められるように、LED68からの発散性の光線は、彎曲した反射表面71から反射され、光検出器71の上に収束される。この検出器において測定される光強度は、そのLEDによって誘導される蛍光発光から得られる、検出器70において測定された光強度に対して、LED光強度を較正するために使用される。そのLEDからの発散性の光線はまた、収束レンズ要素72を通して指向され、示されるように、平行光線を有する光ビームを生成する。これらの光線は、直角反射表面74から反射され、その反射したビームは、そのデバイスにおけるフィルタ挿入物78において備えられた高域フィルタ76を通される。フィルタ76は、そのLEDによって生成される低周波数成分(例えば、蛍光発光波長との重なりを有する可能性がある赤色成分および緑色成分)を除去するように設計される。1つの好ましいフィルタは、450〜470nmのバンドパスフィルタである。その反射された、フィルタを通った光は、ここで、収束反射表面80から反射され、この収束反射表面は、その微小流体構造における収集レザバ60へと反射光を収束するように働く。そのサンプルレザバにおける励起光の強度は、プレート64上のレザバの下に配置される反射器82によってさらに増強される。
【0048】
図3における光線模式図から理解され得るように、上記の励起光の光学経路は、その図面において実質的に垂直方向にある方向に沿ってその光線を制限する。励起光と発光との間の重なりを最小にするために、蛍光発光は、その励起光線に対して実質的に直交する(すなわち、その図面において実質的に水平方向にある)発光光線から検出される。この発光は、その光学アセンブリにおける要素86を直接通されるか、またはその収集レザバの反対側の側面上に位置した反射器84からこの要素へと反射される。要素86へと指向される発光は、彎曲した反射表面88から、斜角反射器90へとそこから、およびフィルタ挿入物94に備えられる低域フィルタ92を通って反射される。そのフィルタは、蛍光発光波長を超える光周波数を除去するために設計された低域通過フィルタであり、そのLEDからの励起周波数を表す。1つの好ましいフィルタは、505〜540nmのバンドパスフィルタである。そのフィルタを通った発光ビームは、直角反射表面102から反射され、収束レンズ要素104を通過する検出器70への通過に収束され、次いで、その検出器は、その収集レザバ中のサンプル物質からの蛍光発光の強度を測定する。
【0049】
光学要素におけるその光学アセンブリは、単一の成形プラスチック片(例えば、成形ポリエーテル−スルホン、ポリカーボネート、またはアクリルポリマーもしくは比較的高い反射係数および良好な光透過を有する他のポリマー)として形成される。示される特定の実施形態において、そのアセンブリ全体は、単一のポリマー材料から形成されるが、他の実施形態において、例えば、制御された射出において異なるポリマー材料を型へと連続的に射出することによって、異なる屈折率を有するポリマーが使用され得る。そのプレート64上の反射表面は、反射コーティングを有する接着テープを付与することによって形成される。光学構成要素内の反射は、全内部反射によってなされる。
【0050】
そのサンプル中の精子は、任意の種々の公知の方法(標識抗体の結合または蛍光標識の選択的取り込みが挙げられる)によって、標識(例えば、蛍光標識)され得る。その後者の方法の好ましい実施形態は、図4において例示される。その図面は、外側膜102を有する個々の精子細胞100を示す。哺乳動物細胞膜に特徴的であるように、膜102は、荷電種よりも非荷電分子に対してより透過性である。その方法における蛍光標識剤は、蛍光レポーター基(F)および切断可能なエステル基(−−OC(O)−R)を有する蛍光分子であり、その切断可能なエステル基は、エステル結合において細胞内エステラーゼによって酸性蛍光分子およびアルコール加水分解生成物(R−OH)に切断され得る。1つの好ましい蛍光分子は、Molecular Probesによって作製されたカルセインAMエステルである。
【0051】
図面において示されるように、その分子は、エステル化される場合、主に非荷電状態で存在し、よって、膜102を横断して、細胞の中およびその外へと容易に移動し得る。一旦細胞内に入ると、その分子は、細胞内エステラーゼによる改変に供され、エステル連結を切断し、その細胞内pHにおいて負に荷電した形態で主に存在する酸性基を残す。この標識手順は、好ましくは、室温で少なくとも5〜15分間にわたって、好ましくは、細胞の最初の予備処理において行われる。そのデバイスの微小流体構造に添加されたその予備処理されたサンプル物質は、従って、内部移行した蛍光標識を有する精子の懸濁液、および主に切断されていない形態で細胞外標識を含む。
【0052】
別の一般的実施形態において、その精子は、光源(例えば、LED)からの蛍光よりむしろ、光散乱または光の吸収によって検出される。例えば、その精子は、抗体または他の精子結合剤を介して、呈色レポーターまたはUV吸収レポーターで標識され得、その抗体または他の精子結合剤に対してそのレポーターが誘導体化される。あるいは、細胞内で切断されて、例えば、荷電種を形成する呈色レポーターは、細胞を標識するにあたって使用され得る。この実施形態において、上記の工学システムは、蛍光よりむしろ、細胞からの光吸収または光散乱を検出するように改変される。このことは、そのレザバ中の精子の蓄積がその光検出器において光シグナルの減少を引き起こすように、例えば、上記の収集レザバの直下に、その工学要素に第2の光検出器(検出器70)を配置することによってなされ得る。
【0053】
精子運動性および活動性精子の密度の定量を可能にする精子運動性の動力学は、図5A〜5Cにおいて例示される。その図面は、微小流体構造30(供給凹部50の下流端部、マイクロチャネルセグメント48a、収集レザバ60、およびマイクロチャネルセグメント48bを備える)のそのマイクロチャネル部分を示す。予備処理された精液サンプルが最初に、時間t=0でそのデバイスに導入される場合、そのサンプル中の標識精子細胞は、そのサンプル受容ステーションに含まれる流体を通じて迅速に分布する。すなわち、マイクロチャネルセグメント48aは、図5Aに示されるように、任意の標識細胞を実質的に含まない。経時的に、例えば、時間t=tにおいて、運動性の前に移動する精子細胞は、チャネルセグメント48aへとそれらの通路を見いだし、その細胞の平均運動性に依存する移動速度でレザバ60に向かって移動し始める。運動性の前に移動する細胞がチャネルセグメント48aを通るそれらの道程が終わると、それらの細胞は、レザバ60中に蓄積し始め、そのレザバ中で測定される蛍光シグナルの増加がもたらされる。
【0054】
上記の細胞移動事象が、経時的なレザバ内での蛍光検出において現れるように、図6においてプロットされる。時間t=0において、測定される蛍光は、いくらかの低いバックグラウンドレベルにおいてであり、時間t1まで、標識細胞がそのレザバに最初に達し始めるとき、そのままである。ますます標識細胞がそのレザバ中に蓄積し始めると、その測定された全蛍光は、この図面において上昇し始め、t1を過ぎて、蛍光の変化/所定の期間の傾きにより、経時的に線形的上昇を示す。その傾きを、ゼロの傾き時間(t1)に戻して外挿することによって、チャネルセグメント48bを通る精子細胞の移動に必要な時間t1が、決定され得る。
【0055】
そのデバイスの電子構成要素は、マイクロプロセッサを含み、小さな電池により電力供給される。その検出器シグナルは、ADコンバーターまたはコンパレーターによりデジタル化され、次いで、マイクロプロセッサのRAMに保存される。そのマイクロプロセッサは、次いで、以下に記載される論理に従って、その密度および運動性を計算する。そのマイクロプロセッサの設計および構成は、所望の出力、およびここで記載される論理的操作が与えられれば、当業者に明らかである。
【0056】
デバイスのマイクロプロセッサによって行われる工程は、これらのアッセイの測定を実施するにあたって、図7におけるフロー図で示される。ボックス10におけるように、サンプルを最初にそのデバイスに添加すると、例えば、サンプル流体が2つの電極間の導電性経路を閉じることによって、112におけるように、クロックタイムを0に設定して、マイクロプロセッサにシグナルが送られる。作動はまた、センサを、そのサンプルウェルを覆っているホイルまたはプラグ構造に接続することによって、スイッチを介して、手動で行われ得る。その保護カバーを取り外すと、そのサンプルは、作動される。同時に、LED66にスイッチが入り、そのマイクロプロセッサは、検出器68および70から時間依存性蛍光発光シグナルを受容し始める。
【0057】
光学的検出は、レザバ60中の増大した傾向の信頼性の高いプロットを記録するに十分長い現在の時間t2にわたって、続けられる。この時間に達すると、論理116を介して、そのプロセッサは、118に示されるように、その蛍光曲線を分析して、標準曲線分析アルゴリズムを使用して、時間依存性蛍光曲線の傾き決定する。この曲線から、120において、「ゼロ切片」(ここでその傾きは、水平基線と交差する)が決定され、このことから、チャネルセグメント48aを通る活動性精子の平均移動時間(t1〜t0)および運動性精子の平均速度が、それぞれ、122、124において決定される。すなわち、その既知の平均移動時間およびチャネルセグメント48aの既知の長さから、そのチャネル内の前進方向に移動する細胞における運動性細胞の移動速度が計算され得る(速度=距離/時間t)。その計算された速度または精子運動性の定量的インジケーターは、126においてユーザーに表示される。
【0058】
運動性精子の密度を決定するために、118および120において決定された時間依存性曲線の傾きは、128において、複数の既知の傾きの各々(各々、異なる既知の精子サンプルで同一条件下で行われた時間依存性蛍光測定を表す)と比較され、130において保存される。図面において示されていないが、サンプルの蛍光曲線の傾きは、標準化された励起強度に合わせられて、そのデバイスにおいて検出器68として測定される実際のLED励起強度における変動が補償され、その結果、そのサンプル曲線およびモデル曲線の全てが、標準化励起値に基づく。曲線フィッティングおよびマッチングに適切な方法は、当該分野で周知である。一旦最良の曲線フィットが132において行われると、サンプル中の運動性精子の密度は、その最良フィットの曲線から推定され、126においてユーザーに表示される。
【0059】
そのデバイスの操作は、全てのこれらの実施形態において、本発明の3つの一般的実施形態全てを参照して、以下のD節で記載される。
【0060】
(D.マイクロチャネルを通る精子検出に基づくデバイス)
この節は、本発明の第2の実施形態に従って構築されたデバイスの構成要素を記載し、ここで精子運動性および密度の特徴は、微小流体チャネルに沿って間隔を空けられた位置での1対の光学検出器の位置により測定される。そのデバイスは、特に図1(これは、本発明の3つの実施形態全てに共通する外部ハウジング外形を示す)、図4(これは、精子細胞の蛍光標識を例示する)、図8A〜8C(これは、この実施形態の微小流体チャネルおよび光学感知構成要素をレジする)、図9(そのデバイスによって実施される電子的に制御されるアルゴリズムのフロー図を示す)、および図12(これは、3つの実施形態全てに共通する2つの外部出力ディスプレイを例示する). を参照して例示される。
【0061】
図8Aおよび8Bは、その第2の実施形態のデバイスにおける微小流体構造140の一部を例示する。ここでは、サンプル受容レザバ142、およびマイクロチャネル144の一部(その上流端部は、レザバ142と流体連絡状態にある)が示される。マイクロチャネルの反対の端部は、端部レザバと連絡し、この端部レザバは、既に計数された精子細胞がその検出チャネルを通って戻らないように作用する。いくつかの外形は、その検出チャネルを既に通過した精子細胞の収集のために、機能的に無限の端部レザバを生成するために使用され得る。
【0062】
構造140は、B節において上記で記載されたものに類似する方法を使用して製造され得る。その構造におけるマイクロチャネルは、上流から下流方向におけるチャネル中の精子移動を保証するために、上記のものに類似した幅および深さの寸法を有する。そのチャネルの長さは、好ましくは、2〜5cmの間である。
【0063】
2つの光学的検出システム146、148が、そのマイクロチャネルに沿って間隔を空けた位置で配置され、その光学検出システムは、各々、LED光源(例えば、LED152および154)、および光検出器(例えば、それぞれ、光検出器150および156)を備える。そのLEDおよび光検出器は、上記のデバイス20について記載されているものに類似しており、(i)アッセイ手順が開始される場合、そのLEDのマイクロプロセッサ作動、および(ii)所望の精子運動性および精子密度情報を生成するための光検出器シグナルの受容および処理、についてマイクロプロセッサ(示さず)に作動可能に接続される。光源および検出器の両方が、同じ一体化された部分に組み込まれ得る。以下に認められるように、単一の検出器からのシグナルは、そのチャネルを通過する精子を計数するために使用される。2つの光源−検出器対は、微小流体チャネル(示される実施形態において)に沿って配置されて、固定された距離にわたる個々の精子の移動時間が記録され続ける。
【0064】
図面に示されるサンプルは、上記のように調製される。サンプル調製または予備処理は、細胞蛍光標識および等浸透圧溶液中の細胞の懸濁を包含し得る。その調製されたサンプルは、上記のように、そのデバイスに導入され、初期時間t=0でそのマイクロチャネルの中へと通って精子移動が開始される。図8Aおよび8Bは、精子(例えば、精子158a)は、1つの検出ゾーンから他のゾーンへ移動した2つの密接に関連した時間t1およびt1+dにおけるそのマイクロチャネル中の精子の位置を表す。
【0065】
図8Cは、チャネル144を通って移動し、時間t1および時間t2で2つの検出ゾーンで検出される、細胞s1、細胞s2および細胞s3(図8Aおよび図8Bにそれぞれ示される細胞位置に対応する)についての蛍光シグナル追跡を示す。操作の際、デバイスプロセッサーは、各検出器で測定された各ピークを計数し、このピークを連続する新しい細胞番号Nに割り当てる。従って、例えば、細胞158aが検出器150によって検出された細胞番号Nに割り当てられる場合、同じ細胞が、検出器156によって検出される同じ番号に割り当てられるべきである。従って、対応する「同番号」の細胞間の時間間隔を比較することにより、このデバイスは、各精子「N」の検出器間の移動時間を検出し得る。これを、図8Cに図示し、この最下段枠(166)は、ピーク164およびピーク164’に対応する、それぞれ上流検出器および下流検出器で検出された蛍光シグナルピークを示す。
【0066】
マイクロチャネルを通る精子の移動は、一列のみ(マイクロチャネルの幅の制約に起因する)または単一および平行対の両方であり得る。1より多い細胞が検出ゾーンを同時に通る場合、これは、より幅が大きくかつ/またはより高い蛍光ピークに基づいて、多重細胞事象として記録される。マイクロチャネル幅/深さは、平行様式における1より多い精子細胞に適合し、マイクロプロセッサは、(i)ピークに寄与する細胞数をピーク高/幅から決定すること、および(ii)決定された精子細胞の数に対応するピーク細胞数番号の割り当て(例えば、N+1、N+2)のための、従来の単一分析能力を備え得る。
【0067】
平均精子運動性および活動性精子密度を測定するためのデバイスにおけるマイクロプロセッサの操作を、図9に流れ図で示す。まず、各検出器からの生の検出シグナル(160および162で示される)は、シグナル強度が静止の通過に対応する(事象)時間を決定するために、デジタイザー、次いで選別器を通過する(それぞれ170および172)。これらの時間を、各検出器について記録する。例えば、n番目の精子が第1検出器および第2検出器を通過する時間を、Tn1、Tn2とそれぞれ名付ける(176、178でそれぞれ示される)。上述のように、複数の細胞が検出ゾーンを任意の1時期に通る場合、より高くかつ/または幅の広いピークが、適切な細胞数として記録される。
【0068】
測定時間の間に各検出器を通る全ての精子の稼動数(N)を174で記録する。これは、サンプル中の活動性精子密度(マイクロチャネルにおける総数/時間に基づく)の基準を提供する。上述のように、実際の活動性精子密度は、サンプル中の実際の細胞数/時間を、各々複数の密度が既知のサンプルについて決定された複数の細胞数/時間標準と比較することにより、決定され得る。
【0069】
次いで、個々の細胞速度を、所定の精子の2つの検出器における到着時間の間の差異を取り、この値を検出器間の距離で割ることにより、計算する(180に示す)。多くの個々の精子速度を平均し、平均精子速度(Vn)を計算する。精子密度を、N、Vnおよび較正係数の積として概算される(182に示す)。較正係数は、独立に測定した精子密度を、次いで、NおよびVnで割ることによって決定され得る。デバイスの2つの例示的な表示を、デバイス12について上述したように、図12Aおよび図12bに示す。
【0070】
本実施例は、2つの離れた時点で精子位置を検出するために、隔たった検出器の対を有するが、このデバイスは、単一のLEDおよび検出器対による精子速度を測定するために容易に改変され得ることが理解され、ここで、速度は、ピーク幅の関数として測定される。
【0071】
(E.インピーダンス測定による精子検出に基づくデバイス)
この節は、第3の本発明に従って構築されたデバイスの構成要素を説明し、ここで、精子運動性および密度特性は、精子がチャネルを通って移動する場合に、マイクロチャネルを横切るかまたはマイクロチャネル内のインピーダンスの変化によって測定される。このデバイスは、特に、本発明の3つの実施形態全てに共通する外部ハウジング特徴を示す、図1に関連して示される。
【0072】
図10は、デバイスにおける例示的チャネルおよび電極の構成を図示し、図11Aおよび図11Bは、簡易化した様式で、システム中の回路構成要素、およびアッセイの過程の間に得られた代表的なインピーダンス曲線を図示し、そして図12は、2つの例示的な出力表示を図示し、これは、3つの実施形態全てに共通である。
【0073】
図10は、第3の実施形態デバイスにおける微小流体構造186の一部を図示する。ここで、サンプル受容レザバ188、収集レザバ192およびその間に延びるマイクロチャネルセグメント190を示す。構造186は、節Cで記載された構造30と実質的に同一の構造を有し得、同じ製品であり得る。
【0074】
電極194、196の対は、それぞれレザバ188,192内に配置され、2つの電極間に、電気的励起ユニット198および微小流体構造中の流体経路を備える回路の一部を形成する。
【0075】
図11Aで示されるように、2つの電極は、デバイスにおいて回路200の一部を形成し、選択周波数のAC電圧(例えば、約0MHzと1MHzとの間の選択周波数)を電極を横切って配置するAC電流供給源204、および任意の所定の周波数で回路内の電圧を測定する電圧計202を備える。所定の周波数の電気インピーダンスは、電極を横切って測定される:Z(f)=(V(f)/I(f)。所定の周波数における電気インピーダンスの実際の構成要素は、収集レザバ内の精子の蓄積に反応性である。特定の条件下で、実際のZ(f)は、図11Bに示すような時間曲線を融資、ここで、測定インピーダンスは、実質的に一定(開始時間t=0から精子が最初にマイクロチャネルから収集チャンバに侵入し始める時間t1までの基線レベル)のままであり、そしてインピーダンス曲線は、レザバ内に精子が蓄積する測定勾配と同じ測定勾配で増加する。レザバのインピーダンスを、有用な周波数の範囲にわたって周期的に走査し、測定の信頼性を改善するためのより多くの情報を得ることができる。また、インピーダンスを、電圧供給源および電流計を使用することによっても測定し得ることに留意する。
【0076】
インピーダンス曲線は、図6における蛍光曲線と同一のレザバを示し、かつデバイス内のマイクロプロセッサによって、平均精子運動性および活動性精子の密度を得たのと実質的に同一の方法で処理される。特に、マイクロプロセッサは、既知の密度の精子サンプルについての一連のインピーダンス曲線を有し、これを曲線マッチングにおいて使用して、ベストフィット密度値を決定する。デバイスの2つの例示的な表示を、デバイス12について上述したように、図12Aおよび図12bに示す。
【0077】
(F.デバイスの操作)
この節は、本発明の方法に従って精液サンプル分析を実施し、サンプルの精子数および運動性を決定する際のデバイスの操作を説明する。
【0078】
代表的なサンプルアッセイ方法において:
1.射精された精液の全量をサンプル回収バイアル中に収集し、男性受精能についてのWHO標準と体積を比較する。
【0079】
2.より少ない体積の精液もしくは希釈体積の精液または他の化学物質、化合物もしくは溶媒と混合した精液を入れたメスシリンダーまたは別個の容器を、デバイスのサンプル受容ウェル内に置く。サンプルホルダーの挿入部を、ウェル内に降りたときに電極が作動し、そして鋭い(sharpened)アクセスポートがサンプルホルダーの底に穴を開けて、内部デバイス流体チャネルを精液サンプルに接触させる位置に固定する。精液サンプルは、乾いたローディングレザバ内に流れ込むか、または事前充填(prefilled)流体チャネルと直ちに接触する。あるいは、処理サンプルは、マイクロチャネルが開けられた後、サンプル収集ウェル内に注がれ得る。記載した最初の2つの実施形態において、サンプル前処理は、サンプル精子を蛍光レポーターで標識する工程を包含する。第3の実施形態において、サンプルの標識は必須ではない。
【0080】
3.事前充填流体チャネルが乾いたローディングレザバと分離される場合、プロテアーゼ活性による膜様のプラグの分解が、液体サンプルのレザバ内への導入によって開始される。あるいは、シールを除去し、微小流体チャネルにおいてサンプルを流体に曝す。あるいは、サンプル容器を破裂させ、微小流体チャネルをサンプル流体に曝す。
【0081】
4.サンプルを微小流体チャネルに接触させる上記事象のいずれかは、t=0に時間を設定したデバイス内のタイミング機構(精子が最初にデバイスにおけるマイクロチャネル内に侵入し始め、そして中を移動し得る時間を示す)を始動させる。
【0082】
5.デバイスにおけるマイクロチャネル内に移動しそしてマイクロチャネルを通って移動する精子を、以下によって記録する:(i)第1の実施形態における収集レザバ内の蛍光放出測定、(ii)第2の実施形態におけるマイクロチャネルに沿った個々の標識化精子移動事象の速度および密度の測定、ならびに(iii)第3の実施形態におけるマイクロチャネルを横切るインピーダンスにおける変化の測定。
【0083】
6.WHO基準の計算を、マイクロプロセッサ(図7、図9および図11における3つの実施形態について示すコンピュータ理論)を用いて実施する。
【0084】
7.(図12Aに示すような)単純な定量的な様式または(図12bに図示するような)より定量的な様式で、ユーザーに結果が表示される。両図面において、表示ウインドウは、図1に示すデバイスにおける表示ウインドウ28に相当する。図12Aにおけるディスプレイインジケータは、アッセイが完了するのを待ち続け、そして一旦完了すると、「妊娠可能性が高い(likely fertile)」または「不妊の可能性が高い(likely infertile)」表示のどちらかを、測定精子運動性および活動精子密度に基づき、既知の精子運動性および密度値の標準参照表(standard look up table)を使用してサンプル精子をこれら2つのカテゴリーのうちの1つに分類し、ユーザーに示す。
【0085】
図12Bにおけるより詳細な表示において、正常値と比較した運動性精子の実際の百分率、および正常値と比較した実際の精子前進運動速度(sperm forward movement rate)を与える。
【0086】
上記の発明は例示のため、そして理解の明瞭化の目的で記載されているが、本発明の技術の見地から、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、特定の変更および改変が本発明に対しなされ得ることは、当業者に明らかである。特に、特許請求の範囲と一致する他の実施形態が、3つの開示された一般的実施形態の各々の範囲内の異なった特定の実施形態として企図される。
【0087】
例えば、多数の、独立した、同一の精液サンプルに起源する液体充填検出ラインを有することが所望され得る。2以上の流体充填チャネルが、同一の乾いたレザバからの多くの位置に起源し得る。この型の独立した測定は、各独立した測定は、測定全ての正確さに寄与するため、精子細胞計数および運動性特徴づけの高い精度を任意に可能にする。
【0088】
別の実施例として、第2の実施形態の改変として、種々の電気検出系および種々の電気時期検出系を使用して、個々の精子のマイクロチャネルに沿った通過を(例えば、精子細胞を収容するチャネル部分における電気容量の変化に依存するか、または金属標識した精子によって生成される磁気作用に基づいて)検出し得る。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従って構築されるアッセイデバイスを斜視図で示す。
【図2】図2A〜2Fは、(2A)本発明に従って構築された微小流体アセンブリの底部プレートの平面図、(2B)その入り口ポートをそのマイクロチャネルに接続するための中心検出レザバおよびウェルを示す、図2Aの線A−Aを通る断面図、(図2C)微小流体アセンブリにおける上面プレートの平面図、(2D)上面プレートにおいて形成される微小流体チャネルおよび対向するレザバの端部領域の詳細、(2E)上部プレートにおいて形成された微小流体チャネルおよびレザバ輪郭の詳細、(2F)上部プレートおよび底部プレートが重ねられたアセンブリ全体、を示す。
【図3】図3は、図2Aおよび2Cにおいて横断する線3−3に沿ってとった、本発明のアッセイデバイスにおける光学要素の断面図である。
【図4】図4は、エステル連結蛍光レポーターでサンプル精子を標識することを示す。
【図5】図5A〜5Cは、3つの異なる時点での、図1におけるデバイスの操作の間のサンプル運動および分布の状態を示す。
【図6】図6は、アッセイ操作の間に図1のデバイスにより生成される代表的な精子濃度関数を示す。
【図7】図7は、図1のデバイスにおける制御ユニットによって実施される操作のフロー図である。
【図8】図8A〜8Cは、(8Aおよび8B)本発明の第2の一般的実施形態における微小流体構造および関連する検出器の平面図、および(8C)2つの検出器から記録された代表的光学検出シグナルを示す。
【図9】図9は、図8に2つの検出器デバイスにおける制御ユニットによって行われる操作のフロー図である。
【図10】図10は、本発明の第3の一般的実施形態における微小流体構造および関連した検出器の平面図である。
【図11】図11Aおよび11Bは、図10の実施形態における、例示的回路(11A)および検出されたシグナル(11B)を示す。
【図12】図12Aおよび12Bは、本発明のデバイスにおける種々の出力ディスプレイを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精液サンプル中の前進方向の精子運動性および活動性精子の密度をアッセイするための方法であって、該方法は、以下の工程:
(A)該サンプルをサンプルレザバ中に入れる工程、
(B)該サンプル中の精子を、該サンプルレザバから、該チャネル内で下流収集領域に向かう一方向移動に該精子を制限するマイクロチャネルへと、該マイクロチャネルに沿って移動させる工程、および
(C)該マイクロチャネルを通る精子の移動速度および流動を測定する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記マイクロチャネルは、10〜100μmの範囲において幅および深さの各寸法を有する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記マイクロチャネルは、既知の長さを有し、前記下流収集領域は、既知の容積を有する収集レザバを備え、工程(C)は、以下:
(C1)該収集レザバ中に存在する細胞の濃度における変化を、時間の関数として測定する工程、
(C2)工程(C1)、および該収集レザバの該容積から、該サンプル中の活動性精子の密度を、時間の関数として決定する工程、および
(C3)工程(C1)から、該マイクロチャネルを通る下流方向の精子の平均移動速度を決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
工程(C1)は、時間依存性関数を生成し、該関数の傾きは、単位時間あたりに前記収集レザバに存在する細胞数の変化に近似し、該関数の切片は、該収集レザバにおける精子の第1の出現までの時間に近似する工程を包含し、
工程(C2)は、該関数と、異なる既知の精子数および前進速度の精液サンプルを用いて生成された1以上の標準的な関数とを比較する工程を包含し、
工程(C3)は、該切片から、該精子の前進方向における平均進行速度を決定する工程を包含する、
方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、該方法は、前記サンプルを蛍光レポーターで標識する工程をさらに包含し、工程(C1)は、前記収集レザバ中に蛍光発光を測定する工程を包含する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記標識する工程は、精子を、切断可能なエステル基を有する蛍光レポーターに曝す工程であって、該切断可能なエステル基は、非荷電状態において精子への該レポーターの取り込みを促進し、かつ荷電した、切断されたエステル状態において精子からの該レポーターの流出を阻害する、工程を包含する、方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法であって、工程(C1)は、前記収集レザバにおける細胞依存性吸収または光散乱を測定する工程を包含する、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記マイクロチャネルの前記幅は、前記マイクロチャネルに沿って一列へと精子移動を制限するような幅であり、工程(C)は、(C1)個々の精子が該マイクロチャネルにおける検出ゾーンを通り越して上流方向から下流方向に移動する場合に、該個々の精子を検出する工程、(C2)該検出ゾーンを通り過ぎて移動する精子数を計数する工程、および(C3)該検出ゾーンを通る個々の精子の移動速度を決定する工程、を包含する、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記マイクロチャネルの前記幅は、約15〜40μmの間である、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、前記検出ゾーンは、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定され、工程(C)は、各検出器から受容したシグナルを相関させて、各検出事象のシグナル−対−ノイズ比を増強する工程をさらに包含する、方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、前記検出ゾーンは、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定され、工程(C3)は、該検出器から受容したシグナル間の時間間隔を使用して、前記マイクロチャネル内での精子の移動速度を決定する工程をさらに包含する、方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法であって、該方法は、該サンプルを蛍光レポーターで標識する工程をさらに包含し、工程(C1)は、前記検出ゾーンを通る精子移動の蛍光を測定する工程を包含する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記標識する工程は、精子を切断可能なエステル基を有する蛍光レポーターに曝す工程であって、該切断可能なエステル基は、実質的に非荷電状態において精子への該レポーターの取り込みを可能にするが、荷電した、切断されたエステル状態において精子からの該レポーターの流出を阻害する、工程を包含する、方法。
【請求項14】
請求項8に記載の方法であって、工程(C1)は、前記収集レザバ中における細胞依存性吸収または光散乱を測定する工程を包含する、方法。
【請求項15】
請求項8に記載の方法であって、該方法は、磁性粒子または導電性金属粒子で前記精子を標識する工程をさらに包含し、工程(C1)は、(i)前記検出ゾーンに隣接して配置された回路要素によって生成され、かつ(ii)該検出ゾーンを通過する磁性粒子または導電性金属粒子で標識された精子に特徴的な、電気シグナルを測定する工程を包含する、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、工程(C3)は、前記検出ゾーンを通過する精子の移動速度を、前記回路要素によって生成されるシグナル特徴の変化率から決定する工程を包含する、方法。
【請求項17】
精子運動性および精液サンプル中の運動性精子の密度をアッセイするためのデバイスであって、該デバイスは、以下:
サンプルレザバ、下流収集領域、および該サンプルレザバと該下流収集領域との間に延びるマイクロチャネルを有する微小流体構造を備え、該マイクロチャネルは、該サンプルレザバ中に入れられた精液サンプル中の精子が、該マイクロチャネルに沿って、該収集領域へと入り、かつ移動するように、該チャネル内での一方向移動に制限するような寸法にされている、微小流体構造、
該マイクロチャネルまたは収集領域中の標識された精子の存在を検出するための検出器、および
電子ユニットであっって、(i)検出器シグナルを受容し、(ii)該受容した検出器シグナルに基づき、該精子サンプル中の精子運動性および密度を決定し、そして(iii)精子運動性および密度に関する情報を提示するために、該検出器に操作可能に接続された、電子ユニット、
を備える、デバイス。
【請求項18】
請求項17に記載のデバイスであって、前記マイクロチャネルは、10〜100μmの範囲にある幅および深さの寸法を各々有する、デバイス。
【請求項19】
請求項17に記載のデバイスであって、前記マイクロチャネルは、既知の長さを有し、前記下流収集領域は、既知の容積を有する収集レザバ、および電子ユニットを備え、該電子ユニットは、(1)該収集レザバに存在する細胞の濃度変化を時間の関数として測定し、(2)工程(1)、および該収集レザバの容積から、該サンプル中の活動性精子の密度を、時間の関数として決定し、そして(3)工程(1)から、下流方向において該マイクロチャネルを通る精子の平均移動速度を決定するように作動する、デバイス。
【請求項20】
請求項19に記載のデバイスであって、前記電子ユニットは、工程(1)を実施するにあたって、時間依存性関数を生成するように作動し、該時間依存性関数の傾きは、単位時間あたりに前記収集レザバに存在する細胞数の変化に近似し、該時間依存性関数の切片は、該収集レザバ中の精子の第1の出現までの時間に近似し、工程(2)を実施するにあたって、該関数と、異なる既知の精子数および前進速度の精液サンプルで生成された1以上の標準関数と比較するように作動し、工程(3)を実施するにあたって、該切片から、該精子の前進方向における平均進行速度を決定するように作動する、デバイス。
【請求項21】
請求項19に記載のデバイスであって、前記検出器は、LED、第1の光検出器および第2の光検出器、ならびに光学部材を備え、該光学部材は、(1)該LEDから該第1の光検出器へと光を指向し、(2)該LEDから該収集レザバを通って光を指向し、および(3)該収集レザバ捕獲から該第2の光検出器へと発っせられた蛍光を指向するように設計されている、デバイス。
【請求項22】
請求項21に記載のデバイスであって、前記光学部材は、異なる屈折率を有する複数の光学要素から構成される一体型部材である、デバイス。
【請求項23】
請求項17に記載のデバイスであって、前記検出器は、前記マイクロチャネルにおける検出ゾーンに隣接して配置され、該電子ユニットは、
(1)該マイクロチャネルにおける該ゾーンを通って上流方向から下流方向に個々の精子が移動する場合に、該個々の精子を検出し、
(2)該検出ゾーンを通って移動する精子数を計数し、そして
(3)該検出ゾーンを通る個々の精子の移動速度を決定するように作動する、
デバイス。
【請求項24】
請求項23に記載のデバイスであって、前記マイクロチャネルの前記幅は、約15〜40μmの間である、デバイス。
【請求項25】
請求項23に記載のデバイスであって、前記検出ゾーンは、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定され、前記電子ユニットは、工程(1)を実施するにあたって、各検出器から受容した検出シグナルを相関させて、各検出事象についての前記シグナル−対−ノイズ比を増強するように作動する、デバイス。
【請求項26】
請求項23に記載のデバイスであって、前記検出ゾーンは、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定され、前記電子ユニットは、工程(3)を実施するにあたって、該検出器から受容したシグナル間の時間間隔を使用して、前記マイクロチャネル内の精子の移動速度を決定するように作動する、デバイス。
【請求項27】
請求項23に記載のデバイスであって、前記検出器は、蛍光励起光源および蛍光発光検出器を備える、デバイス。
【請求項28】
請求項23に記載のデバイスであって、前記検出器は、前記検出ゾーンに隣接して配置される回路要素を備え、該回路要素は、磁性粒子または金属導電性粒子の直ぐ近くの移動に応答性であり、その結果、前記マイクロチャネルにおける該検出ゾーンを通る磁性粒子または金属導電性粒子で標識された精子の移動は、該要素のインダクタンスを変化させ、該電子ユニットは、該要素の該インダクタンスにおける変化を検出するために、該要素に作動可能に連結された検出器回路を備える、デバイス。
【請求項29】
請求項28に記載のデバイスであって、前記電子ユニットは、工程(3)を実施するにあたって、前記検出ゾーンを通る精子の移動速度を、前記回路要素によって生成されたシグナル特徴の変化率から決定するように作動する、デバイス。
【請求項30】
請求項23に記載のデバイスであって、前記電子ユニットは、工程(2)を実施するにあたって、既知の期間にわたって検出ゾーンを通過する精子数を計数し、異なる既知の精子数の精液サンプルで生成された標準曲線上の匹敵する精子数/時間値を見出す様に作動する、デバイス。
【請求項31】
請求項17に記載のデバイスであって、前記サンプル受容レザバは、分解性の、液体不浸透性プラグを通って、前記マイクロチャネルの上流端部と連絡し、該レザバは、該プラグを分解可能な酵素を含む、デバイス。
【請求項32】
請求項15に記載のデバイスであって、自己充足式ユニットとして、前記制御ユニットおよび検出器に電力供給するための該ユニット自体の電源とともに形成される、デバイス。
【請求項1】
精液サンプル中の前進方向の精子運動性および活動性精子の密度をアッセイするための方法であって、該方法は、以下の工程:
(A)該サンプルをサンプルレザバ中に入れる工程、
(B)該サンプル中の精子を、該サンプルレザバから、該チャネル内で下流収集領域に向かう一方向移動に該精子を制限するマイクロチャネルへと、該マイクロチャネルに沿って移動させる工程、および
(C)該マイクロチャネルを通る精子の移動速度および流動を測定する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記マイクロチャネルは、10〜100μmの範囲において幅および深さの各寸法を有する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記マイクロチャネルは、既知の長さを有し、前記下流収集領域は、既知の容積を有する収集レザバを備え、工程(C)は、以下:
(C1)該収集レザバ中に存在する細胞の濃度における変化を、時間の関数として測定する工程、
(C2)工程(C1)、および該収集レザバの該容積から、該サンプル中の活動性精子の密度を、時間の関数として決定する工程、および
(C3)工程(C1)から、該マイクロチャネルを通る下流方向の精子の平均移動速度を決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
工程(C1)は、時間依存性関数を生成し、該関数の傾きは、単位時間あたりに前記収集レザバに存在する細胞数の変化に近似し、該関数の切片は、該収集レザバにおける精子の第1の出現までの時間に近似する工程を包含し、
工程(C2)は、該関数と、異なる既知の精子数および前進速度の精液サンプルを用いて生成された1以上の標準的な関数とを比較する工程を包含し、
工程(C3)は、該切片から、該精子の前進方向における平均進行速度を決定する工程を包含する、
方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、該方法は、前記サンプルを蛍光レポーターで標識する工程をさらに包含し、工程(C1)は、前記収集レザバ中に蛍光発光を測定する工程を包含する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記標識する工程は、精子を、切断可能なエステル基を有する蛍光レポーターに曝す工程であって、該切断可能なエステル基は、非荷電状態において精子への該レポーターの取り込みを促進し、かつ荷電した、切断されたエステル状態において精子からの該レポーターの流出を阻害する、工程を包含する、方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法であって、工程(C1)は、前記収集レザバにおける細胞依存性吸収または光散乱を測定する工程を包含する、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記マイクロチャネルの前記幅は、前記マイクロチャネルに沿って一列へと精子移動を制限するような幅であり、工程(C)は、(C1)個々の精子が該マイクロチャネルにおける検出ゾーンを通り越して上流方向から下流方向に移動する場合に、該個々の精子を検出する工程、(C2)該検出ゾーンを通り過ぎて移動する精子数を計数する工程、および(C3)該検出ゾーンを通る個々の精子の移動速度を決定する工程、を包含する、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記マイクロチャネルの前記幅は、約15〜40μmの間である、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、前記検出ゾーンは、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定され、工程(C)は、各検出器から受容したシグナルを相関させて、各検出事象のシグナル−対−ノイズ比を増強する工程をさらに包含する、方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、前記検出ゾーンは、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定され、工程(C3)は、該検出器から受容したシグナル間の時間間隔を使用して、前記マイクロチャネル内での精子の移動速度を決定する工程をさらに包含する、方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法であって、該方法は、該サンプルを蛍光レポーターで標識する工程をさらに包含し、工程(C1)は、前記検出ゾーンを通る精子移動の蛍光を測定する工程を包含する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記標識する工程は、精子を切断可能なエステル基を有する蛍光レポーターに曝す工程であって、該切断可能なエステル基は、実質的に非荷電状態において精子への該レポーターの取り込みを可能にするが、荷電した、切断されたエステル状態において精子からの該レポーターの流出を阻害する、工程を包含する、方法。
【請求項14】
請求項8に記載の方法であって、工程(C1)は、前記収集レザバ中における細胞依存性吸収または光散乱を測定する工程を包含する、方法。
【請求項15】
請求項8に記載の方法であって、該方法は、磁性粒子または導電性金属粒子で前記精子を標識する工程をさらに包含し、工程(C1)は、(i)前記検出ゾーンに隣接して配置された回路要素によって生成され、かつ(ii)該検出ゾーンを通過する磁性粒子または導電性金属粒子で標識された精子に特徴的な、電気シグナルを測定する工程を包含する、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、工程(C3)は、前記検出ゾーンを通過する精子の移動速度を、前記回路要素によって生成されるシグナル特徴の変化率から決定する工程を包含する、方法。
【請求項17】
精子運動性および精液サンプル中の運動性精子の密度をアッセイするためのデバイスであって、該デバイスは、以下:
サンプルレザバ、下流収集領域、および該サンプルレザバと該下流収集領域との間に延びるマイクロチャネルを有する微小流体構造を備え、該マイクロチャネルは、該サンプルレザバ中に入れられた精液サンプル中の精子が、該マイクロチャネルに沿って、該収集領域へと入り、かつ移動するように、該チャネル内での一方向移動に制限するような寸法にされている、微小流体構造、
該マイクロチャネルまたは収集領域中の標識された精子の存在を検出するための検出器、および
電子ユニットであっって、(i)検出器シグナルを受容し、(ii)該受容した検出器シグナルに基づき、該精子サンプル中の精子運動性および密度を決定し、そして(iii)精子運動性および密度に関する情報を提示するために、該検出器に操作可能に接続された、電子ユニット、
を備える、デバイス。
【請求項18】
請求項17に記載のデバイスであって、前記マイクロチャネルは、10〜100μmの範囲にある幅および深さの寸法を各々有する、デバイス。
【請求項19】
請求項17に記載のデバイスであって、前記マイクロチャネルは、既知の長さを有し、前記下流収集領域は、既知の容積を有する収集レザバ、および電子ユニットを備え、該電子ユニットは、(1)該収集レザバに存在する細胞の濃度変化を時間の関数として測定し、(2)工程(1)、および該収集レザバの容積から、該サンプル中の活動性精子の密度を、時間の関数として決定し、そして(3)工程(1)から、下流方向において該マイクロチャネルを通る精子の平均移動速度を決定するように作動する、デバイス。
【請求項20】
請求項19に記載のデバイスであって、前記電子ユニットは、工程(1)を実施するにあたって、時間依存性関数を生成するように作動し、該時間依存性関数の傾きは、単位時間あたりに前記収集レザバに存在する細胞数の変化に近似し、該時間依存性関数の切片は、該収集レザバ中の精子の第1の出現までの時間に近似し、工程(2)を実施するにあたって、該関数と、異なる既知の精子数および前進速度の精液サンプルで生成された1以上の標準関数と比較するように作動し、工程(3)を実施するにあたって、該切片から、該精子の前進方向における平均進行速度を決定するように作動する、デバイス。
【請求項21】
請求項19に記載のデバイスであって、前記検出器は、LED、第1の光検出器および第2の光検出器、ならびに光学部材を備え、該光学部材は、(1)該LEDから該第1の光検出器へと光を指向し、(2)該LEDから該収集レザバを通って光を指向し、および(3)該収集レザバ捕獲から該第2の光検出器へと発っせられた蛍光を指向するように設計されている、デバイス。
【請求項22】
請求項21に記載のデバイスであって、前記光学部材は、異なる屈折率を有する複数の光学要素から構成される一体型部材である、デバイス。
【請求項23】
請求項17に記載のデバイスであって、前記検出器は、前記マイクロチャネルにおける検出ゾーンに隣接して配置され、該電子ユニットは、
(1)該マイクロチャネルにおける該ゾーンを通って上流方向から下流方向に個々の精子が移動する場合に、該個々の精子を検出し、
(2)該検出ゾーンを通って移動する精子数を計数し、そして
(3)該検出ゾーンを通る個々の精子の移動速度を決定するように作動する、
デバイス。
【請求項24】
請求項23に記載のデバイスであって、前記マイクロチャネルの前記幅は、約15〜40μmの間である、デバイス。
【請求項25】
請求項23に記載のデバイスであって、前記検出ゾーンは、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定され、前記電子ユニットは、工程(1)を実施するにあたって、各検出器から受容した検出シグナルを相関させて、各検出事象についての前記シグナル−対−ノイズ比を増強するように作動する、デバイス。
【請求項26】
請求項23に記載のデバイスであって、前記検出ゾーンは、隣接する軸方向に間隔を空けられた1対の検出器によって規定され、前記電子ユニットは、工程(3)を実施するにあたって、該検出器から受容したシグナル間の時間間隔を使用して、前記マイクロチャネル内の精子の移動速度を決定するように作動する、デバイス。
【請求項27】
請求項23に記載のデバイスであって、前記検出器は、蛍光励起光源および蛍光発光検出器を備える、デバイス。
【請求項28】
請求項23に記載のデバイスであって、前記検出器は、前記検出ゾーンに隣接して配置される回路要素を備え、該回路要素は、磁性粒子または金属導電性粒子の直ぐ近くの移動に応答性であり、その結果、前記マイクロチャネルにおける該検出ゾーンを通る磁性粒子または金属導電性粒子で標識された精子の移動は、該要素のインダクタンスを変化させ、該電子ユニットは、該要素の該インダクタンスにおける変化を検出するために、該要素に作動可能に連結された検出器回路を備える、デバイス。
【請求項29】
請求項28に記載のデバイスであって、前記電子ユニットは、工程(3)を実施するにあたって、前記検出ゾーンを通る精子の移動速度を、前記回路要素によって生成されたシグナル特徴の変化率から決定するように作動する、デバイス。
【請求項30】
請求項23に記載のデバイスであって、前記電子ユニットは、工程(2)を実施するにあたって、既知の期間にわたって検出ゾーンを通過する精子数を計数し、異なる既知の精子数の精液サンプルで生成された標準曲線上の匹敵する精子数/時間値を見出す様に作動する、デバイス。
【請求項31】
請求項17に記載のデバイスであって、前記サンプル受容レザバは、分解性の、液体不浸透性プラグを通って、前記マイクロチャネルの上流端部と連絡し、該レザバは、該プラグを分解可能な酵素を含む、デバイス。
【請求項32】
請求項15に記載のデバイスであって、自己充足式ユニットとして、前記制御ユニットおよび検出器に電力供給するための該ユニット自体の電源とともに形成される、デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−511825(P2006−511825A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511743(P2005−511743)
【出願日】平成15年12月9日(2003.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2003/039069
【国際公開番号】WO2004/053465
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(505217837)アドバンスド フルイディックス ラボラトリーズ, エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月9日(2003.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2003/039069
【国際公開番号】WO2004/053465
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(505217837)アドバンスド フルイディックス ラボラトリーズ, エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]