説明

画像データ転送装置およびインクジェット記録装置

【課題】記録ヘッドへの画像データ転送に必要な期間が確保できない状態となっても、出力画像の品質をある程度確保できるようにする。
【解決手段】記録タイミングを検出する検出手段と、記録タイミングをトリガとして記録ヘッドへ各ノズルに対応した2ビット以上の階調の画像データをシリアル転送する手段であって、各ノズルに対応した画像データの上位ビットを先に転送し、該上位ビットの全データを転送後、画像データの下位ビットのデータを転送する転送手段と、下位ビットのデータの転送中に検出手段により次の記録タイミングを検出した場合、転送手段に、データ転送を中止させ、次のデータ転送を開始させる転送制御手段と、データ転送の中止時に、下位ビットデータを補完する補完手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データ転送装置およびインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、インクを吐出する複数の吐出ノズルで構成された記録ヘッドをキャリッジに搭載し、このキャリッジを記録媒体の搬送方向に対し直交する方向に移動(主走査)しながら、インクを吐出することで、画像を形成する。
【0003】
その記録ヘッドに備えられたアクチュエータを駆動するためのデータである画像データを制御部側から記録ヘッドのドライバICに転送する転送方法として、一般的には、シリアルデータ転送を用い、記録ヘッドのノズル数(=アクチュエータ数)分だけ転送クロックをパルス出力して、ドライバICのシフトレジスタに格納するようにする方法が既に知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、階調数の多い画像データを、信号線数を増加することなく転送する目的で、1ノズル当りの複数ビットの階調データの各ビットとノズル番号の組み合わせにより構成されたデータをシリアル転送することにより、転送に必要なデータ信号線数が画像データの階調数に依存せず一定となるようにした構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の画像データ転送方法でドライバIC内のレジスタに正常な画像データを格納するには、記録ヘッドのノズル数分の転送期間が必要であり、キャリッジ速度変動によって記録周期が転送期間よりも短くなり、転送中に次の記録タイミングが発生した場合、転送エラーが生じて不吐出となり、異常画像(縦白スジ)を形成してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、インクジェット記録装置におけるキャリッジ速度(主走査速度)の変動により、記録ヘッドへの画像データ転送に必要な期間が確保できない状態となっても、出力画像の品質をある程度確保できるようにすること、すなわち、出力画像自体は異常画像の扱いではあるが、その異常度は縦白スジ等の一目で異常とわかるようなものとならないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、インクジェット記録装置の記録ヘッドへ画像データを転送する画像データ転送装置において、記録タイミングを検出する検出手段と、前記記録タイミングをトリガとして記録ヘッドへ各ノズルに対応した2ビット以上の階調の画像データをシリアル転送する手段であって、各ノズルに対応した画像データの上位ビットを先に転送し、該上位ビットの全データを転送後、前記画像データの下位ビットのデータを転送する転送手段と、前記下位ビットのデータの転送中に前記検出手段により次の記録タイミングを検出した場合、前記転送手段に、データ転送を中止させ、次のデータ転送を開始させる転送制御手段と、前記データ転送の中止時に、下位ビットデータを補完する補完手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、上記画像データ転送装置はインクジェット記録装置に搭載することが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリアル転送する画像データの転送順序を、全ノズル分の画像データの上位ビットを先に転送し、次にその下位ビットを転送することにより、データ転送期間の前半で画像データの全ての上位ビットが確定させ、データ転送中に次の記録タイミングが来たら、現在の転送を中止して、次の転送を開始し、転送中止した場合に不定となる下位ビットは補完するので、画像データ転送に必要な期間が確保できない状態となっても、出力画像が縦白スジ等の異常度の高い画像とならず、出力画像の品質をある程度確保できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、一実施形態であるインクジェット記録装置の機構的概略構成を示す図である。
【図2】図2は、同実施形態のインクジェット記録装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、記録ヘッド駆動部を含むキャリッジ、および記録ヘッド制御部と、記録ヘッド制御部からキャリッジへ送られる信号を示すブロック図である。
【図4】図4は、記録ヘッド駆動に係る諸信号のタイミングチャートである。
【図5】図5は、同実施形態におけるヘッド駆動信号(共通駆動信号および階調制御信号)を示す図である。
【図6】図6は、記録ヘッドへの画像データの転送順序のタイミングチャートである。
【図7】図7は、記録ヘッド駆動部のシフトレジスタの回路図である。
【図8】図8は、従来の画像データ転送方法の問題を説明する図である。
【図9】図9は、本実施形態における記録ヘッドへの画像データ転送順序を示すタイミングチャートである。
【図10】図10は、画像データ補完時の、記録ヘッド駆動に係る諸信号のタイミングチャートである。
【図11】図11は、同実施形態における、記録ヘッド駆動部のシフトレジスタの回路例を示す図である。
【図12】図12は、図11に示した回路例でのタイミングチャートである。
【図13】図13は、同実施形態における、記録ヘッド駆動部のシフトレジスタの他の回路例(回路例2と記す)を示す図である。
【図14】図14は、図13に示した回路例2でのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる画像形成装置の一実施の形態としてのインクジェット記録装置について詳細に説明する。
【0012】
はじめに、インクジェット記録装置の機構的概略構成について、図1を用いて説明する。図1は、インクジェット記録装置の機構的概略構成を示す図である。
【0013】
本インクジェット記録装置は、キャリッジ1、ガイドロッド2、プーリー3、主走査モータ4、タイミングベルト5、記録ヘッド6、インク吐出ノズル7、搬送ベルト8、副走査モータ9、プーリー10、タイミングベルト11、搬送ローラ12、エンコーダセンサ13、エンコーダシート14、維持ユニット15、および空吐出受け16等を備えて構成される。
【0014】
キャリッジ1はガイドロッド2により保持され、プーリー3を介して主走査モータ4との間に渡されたタイミングベルト5を介して主走査方向に走査する。このキャリッジ1には、例えばイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する記録ヘッド6が搭載されており、この記録ヘッド6に配列されたインク吐出ノズル7からインクを吐出できるようになっている。
【0015】
また、搬送ベルト8は、副走査モータ9によってプーリー10およびタイミングベルト11を介して搬送ローラ12が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0016】
キャリッジ1を主走査方向に移動させながら必要な位置でインク滴を吐出することによって搬送ベルト8上の記録媒体の表面に画像を形成する。キャリッジ1の位置情報は、キャリッジ1に固定されたエンコーダセンサ13で、筐体に固定されたエンコーダシート14に等間隔で記録されたパターンを移動しながら読み取って、そのカウントを加算/減算することで得ることができる。
【0017】
このような主走査方向のキャリッジ移動とインク吐出動作を1回行うことで、ノズル列の長さと同じ幅のバンドに対して画像を形成することができ、1バンド分の画像形成が終了したら副走査モータ9を駆動して搬送ベルト8を周回移動させることにより記録媒体を副走査方向に移動させて、再度1バンド分の画像形成動作をさせるように繰り返すことで、記録媒体の任意の場所に画像を形成することができる。
【0018】
なお、キャリッジ1の主走査方向の一方側には搬送ベルト8の側方に記録ヘッド6の維持回復を行う維持ユニット15が配置され、他方側には記録ヘッド6から空吐出を行う空吐出受け16がそれぞれ配置されている。
【0019】
続いて、本実施形態のインクジェット記録装置の電気的構成について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態のインクジェット記録装置の電気的構成を示すブロック図である。
【0020】
制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、共通駆動信号発生部及びデータ転送部を兼ねる記録ヘッド制御部104、主走査制御部105、副走査制御部106、ホストI/F107などを備えている。
【0021】
インクジェット記録装置全体の制御を行うためのファームウェアや、記録ヘッド6を駆動する記録ヘッド駆動部111に対して送出する共通駆動信号を生成するための駆動波形データはROM102に格納されている。RAM103は各種バッファ及びワークメモリ等として使用されて各種データが記憶される。ホストI/F107を介しホストPC110から印刷ジョブ(画像データ)を受信すると、CPU101はこの画像データをRAM103に格納する。
【0022】
主走査制御部105は主走査エンコーダ108からの検出信号に基づいてキャリッジ1の主走査方向の位置を検出して、主走査モータ4を駆動制御することでキャリッジ1の位置制御を行う。この主走査制御部105によってキャリッジ1を主走査方向の任意の位置に移動させることができる。
【0023】
副走査制御部106は副走査エンコーダ109からの検出信号に基づいて搬送ローラ12の回転量及び回転位置を検出して、副走査モータ9を駆動制御することで搬送ベルト8の移動及び停止の際の位置制御を行う。この副走査制御部106によって、搬送ベルト8上の記録媒体を副走査方向の任意の位置に移動させることができる。
【0024】
記録ヘッド制御部104は、主走査制御部105を介して主走査エンコーダ108から得られるキャリッジ1の位置情報に連動し、RAM103に格納された画像データ、ROM102に格納された駆動波形データに基づく共通駆動信号、およびその他の制御信号を各記録ヘッド駆動部111に転送する。各記録ヘッド駆動部111は、記録ヘッド制御部104より転送された画像データ等をもとに、対応する記録ヘッド6を駆動し、インク滴を吐出する。なお、図2では、4つの記録ヘッド(1〜4)6とその記録ヘッド駆動部111を例示している。
【0025】
続いて、記録ヘッド駆動部111の構成を示し、本実施形態における記録ヘッド6の制御について、図3および図4を用いて説明する。図3は、記録ヘッド駆動部111を含むキャリッジ1、および記録ヘッド制御部104と、記録ヘッド制御部104からキャリッジ1へ送られる信号を示すブロック図であり、図4は、記録ヘッド駆動に係る諸信号のタイミングチャートである。
【0026】
記録ヘッド制御部104は、記録ヘッド駆動部111に対し記録ヘッド6のノズル数(=アクチュエータ数)分の(シリアルデータである)画像データSDを、図4のt1の期間に、画像データ転送クロックSCKによってシフトレジスタ201に転送する。
【0027】
記録ヘッド制御部104からの画像データSDの転送が完了すると、図4のt2の期間に、転送データラッチ信号SLnにより、シフトレジスタ201に転送済みの画像データを、ノズル毎の各ラッチ部(ラッチ202)に記憶させる。
【0028】
この画像データのラッチ後、図4のt3の期間に、共通駆動信号Vcomには各階調値のインク滴をインク吐出ノズル7から吐出させるための駆動波形が記録ヘッド制御部104から出力される。このとき、駆動波形マスクパターンMNが、階調制御のために共通駆動信号の駆動波形のタイミングに合わせて、共通駆動信号に含まれる駆動パルスを選択するように遷移する。
【0029】
記録ヘッド駆動部111内では、階調デコーダ203によって階調制御信号MNとラッチされた画像データとが論理演算され、レベルシフタ204により、階調デコーダ203のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ205が動作可能なレベルへ変換される。そして、このレベルシフタ204を介して与えられる階調デコーダ203の出力でアナログスイッチ205を開閉することにより、記録ヘッド6内の各アクチュエータ206は、そのノズルに対応した駆動信号(駆動波形)VoutNを受け、各アクチュエータ206により各ノズルから画像データに基づいたインク吐出が行われることとなる。
【0030】
ここで、本実施形態におけるヘッド駆動信号(共通駆動信号および階調制御信号)を図5に示し、ヘッド駆動信号と吐出されるインク滴の関係について説明する。
【0031】
記録ヘッド6に入力される共通駆動信号Vcomは、複数の駆動パルスの集まりで構成されており、駆動パルスの組み合わせによって、各ノズルの画像データに対する吐出インク滴のサイズが決定される。この駆動パルスは、上記駆動波形マスクパターンMNにより選択される。そして、駆動波形マスクパターンMNにより選択された共通駆動信号の駆動パルスは階調制御信号としてアクチュエータ206に出力される。なお、図5に示した例は、画像データが2bitの場合であり、滴サイズは0〜3の4種類が選択できる。
【0032】
(A)滴サイズ0の場合:駆動パルス<1>を出力することにより、アクチュエータ206を微駆動する(この場合インク滴は吐出されない)。
【0033】
(B)滴サイズ1の場合:駆動パルス<4>を出力することにより、記録ヘッド6にて小滴が形成される。
【0034】
(C)滴サイズ2の場合:駆動パルス<3>および<4>を出力することにより、記録ヘッド6にて中滴が形成される。
【0035】
(D)滴サイズ3の場合:駆動パルス<2>、<3>および<4>を出力することにより、記録ヘッド6にて大滴が形成される。
【0036】
下記の表1に、画像データと吐出されるインク滴(吐出滴サイズ)の関係を示す。
【0037】
【表1】

【0038】
次に、記録ヘッド制御部104から記録ヘッド駆動部111への画像データの転送について、図6および図7を用いて説明する。図6は、記録ヘッド6への画像データの転送順序のタイミングチャートであり、図7は、記録ヘッド駆動部111のシフトレジスタ201の回路図である。なお、図6および図7は、ノズル数=160ノズルの場合の例である。
【0039】
画像データは、各ノズルに対する画像データの上位ビットについてはノズル160からノズル1の順で信号線SD[1]を使用して転送され、各ノズルに対する画像データの下位ビットについてはノズル160からノズル1の順で信号線SD[0]を使用して転送される。従って、160個のSCKパルスで、最初に転送されてきたノズル160に対する画像データは、図7に示すシフトレジスタ201の右端まで転送されることとなる。シフトレジスタ201内の各レジスタに正常な画像データをするにはノズル数分のSCKパルスが必要であり(ここでは160パルス)、途中で転送を中止することはできない。
【0040】
次いで、従来の画像データ転送方法の問題を、図8を用いて説明する。図8は、従来の画像データ転送方法の問題を説明する図である。
【0041】
上記のように記録ヘッド駆動部111内のシフトレジスタ201に正常な画像データを格納するには記録ヘッド6のノズル数分の転送期間が必要である。従来の画像データ転送方法では、図8に示すように、キャリッジ速度変動によって記録周期が転送期間よりも短くなり、転送中に次の記録タイミングが発生した場合、その記録タイミングは無効となって、1記録周期分、データ転送が実施されずに、記録ヘッド6が駆動されない期間が発生する。このような場合、出力画像は縦白スジに見える重大な異常画像となってしまう、という問題があった。
【0042】
このような問題があることから、本実施形態では以下のように画像データの転送を行う。図9は、本実施形態における記録ヘッド6への画像データ転送順序を示すタイミングチャートである。
【0043】
図9に示すように、本実施形態では、画像データを「全ノズル分の上位ビットデータを転送後、全ノズル分の下位ビットデータを転送する」という順序でシリアル転送することを特徴としている。これにより、画像品質に大きく関わる全ての上位ビットデータはデータ転送期間の前半で確定するため、後半の下位ビット転送中に次の記録タイミングが来た場合でも(これは、キャリッジ1の移動をエンコーダセンサ13で検出することにより検知できる)、転送中のデータ転送を中止し、次のデータ転送を開始することができる。データ転送を中止した際に不定の下位ビットデータは、既に確定している上位ビットの値を元に補完するようにする。下記の表2に、この画像データの転送方法による画像データと吐出されるインク滴の関係を示す。
【0044】
【表2】

【0045】
上位ビットが0で、下位ビットが不定の場合、予想される本来の吐出滴サイズは「滴なし」か「小滴」であるが、この場合は、「インク不吐出」か「インク吐出」の選択ともいえる。インクジェット記録装置の印字領域において白データ(インク不吐出)の領域の占める割合は大きく、この場合は「滴なし」に補完することが望ましい。一方、上位ビットが1で、下位ビットが不定の場合、予想される吐出滴サイズは「中滴」か「大滴」である。補完の方法がレジスタ設定値等によらず固定である場合、本来は中滴である画像データを大滴に補完した際に無駄に消費されるインク消費量を考慮すると、「中滴」に補完することが望ましい。
【0046】
上位ビットが1で、下位ビットが不定の場合、予想される吐出滴サイズは「中滴」か「大滴」であり、どちらに補完するのが適しているかは、記録ヘッド6やヘッド駆動信号の特性、およびユーザが望む出力画像の品質も関連する。このため、記録ヘッド制御部104に補完設定レジスタ(図示せず)を備えて設定可能としておく構成の方が上記表2の例より望ましい。なお、この設定は、例えば、ホストPC110からの印刷設定時等に設定することが可能である。
【0047】
下記の表3では、補完設定値が0の場合は中滴に補完し、補間設定値が1の場合は大滴に補完するようにしている。なお、下記の表3において、補完設定の“−”は、補完設定値が吐出滴サイズの決定に関与しないことを示す。
【0048】
【表3】

【0049】
次に、図10に、画像データ補完時の、記録ヘッド駆動に係る諸信号のタイミングチャートを示す。この図は、上記表3に示した関係に基づいたタイミングチャートである。
【0050】
補完動作時、同図に示すように、記録ヘッド制御部104は駆動波形マスクパターンMN[1]をMN[0]と同じ信号遷移で出力し、MN[3]をMN[2]と同じ信号遷移で出力するように動作する。これにより、補完動作時は、画像データが00、01のどちらであっても、アクチュエータ206に与えられる駆動波形は正常動作時の画像データ=00の駆動波形(滴なし)となり、画像データが10、11のどちらであっても、駆動波形は正常動作時の画像データ=10の駆動波形(中滴)となる。
【0051】
ここで、図11に、本実施形態における、記録ヘッド駆動部111のシフトレジスタ201の回路例(回路例1と記す)を示し、図12に、図11に示した回路例1でのタイミングチャートを示す。
【0052】
図11の回路例1では、シフトレジスタ201に与える画像データ転送クロックを、データ転送期間の前半のみパルス出力するSCK1と、データ転送期間の後半のみパルス出力するSCK2の2系統に分割した構成となっている。転送データSD[0]は、ノズル1からノズル80までのデータを転送し、転送データSD[1]は、ノズル81からノズル160までのデータを転送する。画像データ転送クロックが複数系統になった分、記録ヘッド制御部104および記録ヘッド駆動部111間の信号線数が増加するが、記録ヘッド駆動部111内のシフトレジスタ201の回路規模は増加しない構成となっている。
【0053】
続いて、図13に、本実施形態における、記録ヘッド駆動部111のシフトレジスタ201の他の回路例(回路例2と記す)を示し、図14に、図13に示した回路例2でのタイミングチャートを示す。
【0054】
図13の回路例2では、上位ビットのシフトレジスタ201の画像データ転送クロックsck1は、外部からの画像データ転送クロックSCKと転送データラッチ信号SLnを入力するOR論理回路から出力される内部生成のゲーテッドクロックであり、データ転送期間の前半のみ(ノズル数の1/2のパルス数だけ)パルス出力する。転送データラッチ信号SLnは、記録タイミング時にL(ロー)となり、全ノズルの上位ビットデータの転送が完了した時にH(ハイ)となる。シフトレジスタ201の後段のラッチ202は、転送データラッチ信号SLnの立下りエッジでラッチ動作する。この構成により、データ転送期間の前半は、シフトレジスタ201の上位ビットに対応する部分には、内部生成の画像データ転送クロックsck1により画像データの上位ビットが転送され、データ転送期間の後半は、シフトレジスタ201の下位ビットに対応する部分に、画像データ転送クロックSCKにより画像データの下位ビットが転送される。回路例2は、図11に示した回路例1と比べ、シフトレジスタ201内に論理回路を追加した分、回路規模が増加するが、記録ヘッド制御部104および記録ヘッド駆動部111間の信号線数を従来から増加せずに実現できる。
【0055】
以上説明したように、上記実施形態は、シリアル転送する2ビット以上の画像データの転送順序を、「全ノズルの上位ビットを転送し、次に全ノズルの下位ビットを転送する」ようにすることで、データ転送期間の前半で全ノズルの上位ビットを確定させ、後半の下位ビット転送中に次の記録タイミングが来た場合は、画像データの転送を中止して、その場合に不定の下位ビットは、確定している上位ビットの値と、予め設定された設定値に従って補完することが特徴になっている。このように制御することで、キャリッジ速度(主走査速度)の変動により、画像データ転送に必要な期間が確保できない状態であっても、出力画像が縦白スジ等の異常度の高い画像とならないなど、出力画像の品質をある程度確保することができる。また、他の効果として、キャリッジ速度(主走査速度)の制御における速度変動の制約が緩和でき、その結果、装置本体のコストを低減する効果も得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 キャリッジ
2 ガイドロッド
3 プーリー
4 主走査モータ
5 タイミングベルト
6 記録ヘッド
7 インク吐出ノズル
8 搬送ベルト
9 副走査モータ
10 プーリー
11 タイミングベルト
12 搬送ローラ
13 エンコーダセンサ
14 エンコーダシート
15 維持ユニット
16 空吐出受け
100 制御部
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 記録ヘッド制御部
105 主走査制御部
106 副走査制御部
107 ホストI/F
108 主走査エンコーダ
109 副走査エンコーダ
110 ホストPC
201 シフトレジスタ
202 ラッチ
203 階調デコーダ
204 レベルシフタ
205 アナログスイッチ
206 アクチュエータ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開2007−069373号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録装置の記録ヘッドへ画像データを転送する画像データ転送装置において、
記録タイミングを検出する検出手段と、
前記記録タイミングをトリガとして記録ヘッドへ各ノズルに対応した2ビット以上の階調の画像データをシリアル転送する手段であって、各ノズルに対応した画像データの上位ビットを先に転送し、該上位ビットの全データを転送後、前記画像データの下位ビットのデータを転送する転送手段と、
前記下位ビットのデータの転送中に前記検出手段により次の記録タイミングを検出した場合、前記転送手段に、データ転送を中止させ、次のデータ転送を開始させる転送制御手段と、
前記データ転送の中止時に、下位ビットデータを補完する補完手段と
を備えることを特徴とする画像データ転送装置。
【請求項2】
前記補完手段による下位ビットデータの補完は、確定済みの上位ビットデータの値によって異なるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の画像データ転送装置。
【請求項3】
前記補完手段による下位ビットの補完において、上位ビットデータの値と補完する下位ビットデータの組合せが、インク滴の吐出/不吐出を選択するものであった場合は、インク不吐出となる方へ補完することを特徴とする請求項2に記載の画像データ転送装置。
【請求項4】
前記補完手段による下位ビットの補完において、上位ビットデータの値と補完する下位ビットデータの組合せが、何れもインク滴を吐出し、インク滴サイズを選択するものであった場合は、滴サイズの小さい方へ補完することを特徴とする請求項2に記載の画像データ転送装置。
【請求項5】
前記補完手段による下位ビットの補完において、滴サイズの小さい方または大きい方のどちらへ補完するかをユーザが任意に設定可能としたことを特徴とする請求項4に記載の画像データ転送装置。
【請求項6】
前記補完手段による下位ビットデータの補完は、記録ヘッドを駆動する際使用する共通駆動信号をマスクするための駆動波形マスクパターン信号を操作することで各ノズルの駆動波形を決定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の画像データ転送装置。
【請求項7】
前記転送手段は、前記記録ヘッドを駆動する記録ヘッド駆動部内に搭載された画像データを格納するためのシフトレジスタへのクロックを、上位ビットデータを格納するためのクロックと、下位ビットデータを格納するためのクロックを独立して供給することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像データ転送装置。
【請求項8】
前記転送手段は、前記記録ヘッドを駆動する記録ヘッド駆動部内に搭載された画像データを格納するためのシフトレジスタへの上位ビットデータを格納させるクロックは、転送データラッチ信号を該クロックのイネーブル信号として共用し、上位ビットデータを転送する期間のみ動作するクロックとして前記記録ヘッド駆動部内にて内部生成することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像データ転送装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の画像データ転送装置を搭載したインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−35142(P2013−35142A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170543(P2011−170543)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】