説明

画像信号処理装置、画像信号処理方法、及び撮像装置

【課題】色ずれの発生を抑え、色むらノイズを低減すること。
【解決手段】補正処理部色差空間の原点を含む無色領域Anと、無色領域Anの内外を区画する第1の境界線B1と、第1の境界線B1より原点側であって色差抑制幅Cwdにて規定される抑制領域An3と、抑制領域An3内とその抑制領域の内側の領域An2を区画する第2の境界線B2とが設定されている。補正処理部は、色差信号Cb,Crの値が無色領域Anより外側の場合、入力色差信号Cb,Crに対する補正量を「0」として出力色差信号を生成し、色差信号Cb,Crの値が抑制領域An3より内側の場合、入力色差信号Cb.Crを「0」に近づける補正をして出力色差信号を生成する。更に、補正処理部は、色差信号Cb,Crの値が抑制領域An3内の場合、入力色差信号Cb,Crを、第1の境界線B1上の値と、第2の境界線B2上の値との間に補正して出力色差信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
色むらノイズを低減する画像信号処理装置、画像信号処理方法、画像処理装置、及び撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置は、CCD型やCMOS型等の撮像素子から出力される画像信号を輝度信号(Y)と色差信号(Cb,Cr)に変換し、その変換後の画像信号をメモリカード等の外部記録媒体に記録している。
【0003】
画像信号は、撮像素子の高画素化により1つの画素に入射する光量の減少や、夜間等において増感撮影した場合などのように、多くのノイズが含まれている。ノイズを低減する手法の一つは、注目画素の値とその周辺の画素の値を利用するさまざまな空間フィルタを用いるものである(例えば、特許文献1参照)。空間フィルタは、高周波成分を除去するローパスフィルタ、中央値を採用するメディアンフィルタなどである。これらの空間フィルタは主に輝度成分の高周波成分のノイズに対して有効である。
【0004】
ノイズを低減する他の手法の一つは、色差信号(Cb,Cr)から画像の彩度を求め、輝度信号(Y)と彩度とに基づいて、輝度及び彩度が小さい画像に対して色差信号(Cb,Cr)を可変するものである(例えば、特許文献2参照)。この手法は、空間フィルタに比べ、本来の色とは異なる色がまだらに着色する色むらノイズに有効である。色むらノイズは、輝度成分と比べて低周波成分を多く含み、広範囲に分布するためと思われる。
【特許文献1】特開平2−249365号公報
【特許文献2】特開2006−332732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、撮像素子の高画素化や高感度撮影の要求にともない、色むらノイズは暗部のみにとどまらず、輝度レベルの全域に渡って観測されるようになっている。しかし、上記の手法では、対応するために、輝度及び彩度の大きな画像に対して色差信号を可変することになるため、色差信号の値が全体的に変化し、記憶される信号が示す色が被写体の色とずれる、即ち、色差レベルの全域に亘って色ずれが発生する。従って、上記の手法では、このような色むらノイズを低減することが難しい。
【0006】
また、上記のようにノイズが大きな画像信号は、輝度信号におけるノイズも大きい。このため、上記の手法は、輝度に依存する処理のために、輝度ノイズと相関をもつ新たな色むらノイズを生成する場合がある。
【0007】
この装置及び方法は、色ずれの発生を抑え、色むらノイズを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この画像信号処理装置は、2つの色差信号を互いに交差する2つの軸とする色差空間において、前記色差空間の原点を含む無色領域と、前記無色領域の内外を区画する第1の境界線と、前記第1の境界線より原点側であって色差抑制幅にて規定される抑制領域と、前記抑制領域内とその抑制領域の内側の領域を区画する第2の境界線とが設定され、前記色差信号の値が前記無色領域より外側の場合、前記入力色差信号に対する補正量を「0」として前記出力色差信号を生成する第1の補正手段と、前記色差信号の値が前記抑制領域より内側の場合、前記入力色差信号を「0」に近づける補正をして前記出力色差信号を生成する第2の補正手段と、前記色差信号の値が前記抑制領域内の場合、前記入力色差信号を、前記第1の境界線上の値と、前記第2の境界線上の値との間に補正して前記出力色差信号を生成する第3の補正手段と、を有する。
【0009】
この装置によれば、無色領域外の入力色差信号に対して補正量が「0」の出力色差信号が出力される、つまり入力色差信号と等しい値の出力色差信号が生成されるため、新たな色ずれの発生が抑えられる。また、抑制領域より内側の入力色差信号が「0」に近づけられて出力色差信号が生成されるため、色むらノイズが低減される。更に、抑制領域内の入力色差信号が、第1の境界線上の値と、前記第2の境界線上の値との間に補正されて出力色差信号が生成されるため、出力色差信号の値が急激に変化することがない、即ち色の急激な変化が抑えられる。
【0010】
この画像信号処理装置は、2つの入力色差信号の絶対値和を算出する絶対値和演算部と、前記絶対値和と第1の基準値とを比較し、その比較結果に応じた無色領域判定信号を生成する信号生成部と、前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい第2の基準値よりも小さい場合に、前記入力色差信号を「0」に近づける補正を行って抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値と前記第2の基準値との間にある場合に、前記入力色差信号を、絶対値和が前記第1の基準値である場合における出力値と絶対値和が前記第2の基準値である場合における出力値との間の値に補正した抑制色差信号を生成する色差抑制部と、前記入力色差信号と前記抑制色差信号と前記無色領域判定信号が入力され、前記無色領域判定信号に基づいて、前記絶対値和が前記第1の基準値以上の場合に前記入力色差信号を選択してその選択した信号を出力色差信号として出力し、前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい場合に前記抑制色差信号を選択してその選択した信号を出力色差信号として出力する出力選択部と、を有する。
【0011】
この装置によれば、色差抑制部が生成する出力色差信号は、絶対値和が第2の基準値よりも小さい場合に、入力色差信号を「0」に近づける補正がなされているため、色むらノイズが低減される。また、色差抑制部が生成する出力色差信号は、絶対値和が第1の基準値と第2の基準値との間にある場合に、入力色差信号が、絶対値和が第1の基準値である場合における出力値と絶対値和が第2の基準値である場合における出力値との間の値に補正されているため、出力色差信号の値が急激に変化することがない、即ち色の急激な変化が抑えられる。更に、出力選択部が無色領域判定信号に応じて選択した入力色差信号を出力色差信号として出力する、つまり入力色差信号と等しい値の出力色差信号が出力されるため、新たな色ずれの発生が抑えられる。
【0012】
この画像信号処理装置は、2つの入力色差信号の絶対値和を算出する絶対値和演算部21と、前記絶対値和が前記第1の基準値以上の場合に、前記入力色差信号と等しい抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい第2の基準値よりも小さい場合に、前記入力色差信号を「0」に近づける補正を行って抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値と前記第2の基準値との間にある場合に、前記入力色差信号を、絶対値和が前記第1の基準値である場合における出力値と絶対値和が前記第2の基準値である場合における出力値との間の値に補正した抑制色差信号を生成する色差抑制部と、を有する。
【0013】
この装置によれば、色差抑制部が生成する出力色差信号は、絶対値和が第2の基準値よりも小さい場合に、入力色差信号を「0」に近づける補正がなされているため、色むらノイズが低減される。また、色差抑制部が生成する出力色差信号は、絶対値和が第1の基準値と第2の基準値との間にある場合に、入力色差信号が、絶対値和が第1の基準値である場合における出力値と絶対値和が第2の基準値である場合における出力値との間の値に補正されているため、出力色差信号の値が急激に変化することがない、即ち色の急激な変化が抑えられる。更に、色差抑制部が生成する出力色差信号は、絶対値和が第1の基準値以上の場合に入力色差信号と等しい値となるため、新たな色ずれの発生が抑えられる。
【発明の効果】
【0014】
開示の画像信号処理装置、画像信号処理方法は、色ずれの発生を抑え、色むらノイズを低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、撮像装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、デジタルカメラ10は、撮像センサ11、検波部12、信号変換部としての信号処理部13、コード変換部としてのJPEG(Joint Photographic Experts Group)エンコード部14、外部メモリインターフェース15、システムメモリとしてのSDRAM(Synchronous DRAM)16、コントローラ17を有している。検波部12、信号処理部13、JPEGエンコード部14、外部メモリインターフェース15、コントローラ17はコントローラバス18を介して相互に接続されている。例えば、検波部12、信号処理部13、JPEGエンコード部14、外部メモリインターフェース15、コントローラ17は1つのチップ上に形成され、画像信号処理装置を構成する。また、デジタルカメラ10は、カード型記録装置としての外部記録媒体19が着脱可能に構成されており、デジタルカメラ10に挿入された外部記録媒体19は外部メモリインターフェース15と接続される。
【0016】
撮像センサ11は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサであり、複数の画素を有する。撮像センサ11は、光学レンズ等を通じて被写体から入射した光をこれらの画素において電気信号に変換するとともに、該電気信号をA/D変換部(図示略)でデジタル信号に変換してなる撮像データを、検波部12を通じてSDRAM16に格納する。
【0017】
なお、撮像センサ11は、水平方向のラインをなす一連の画素の電気信号を垂直方向に順次転送しつつ、垂直方向端部に転送された一連の画素の電気信号を水平方向に順次転送する態様で、画像全体の撮像データを形成・出力する。撮像センサ11は、例えば赤色(R)、緑色(G),青色(B)のフィルタがベイヤ配列されたカラーフィルタ(図示略)を有している。撮像センサ11は、カラーフィルタの配列に応じた、即ちベイヤ配列の撮像データを出力する。検波部12は、撮像データを通じて画像全体から評価値を取得するとともに、撮像データをSDRAM16に格納する。
【0018】
信号処理部13は、SDRAM16に格納された撮像データを入力し、公知の方法によりベイヤ配列である撮像データを補間し、公知の方法により補間後の撮像データを輝度信号Yと2つの色差信号Cb,CrとからなるYCbCr信号に変換する。Cbは青の差分信号、Crは赤の差分信号を示す。
【0019】
信号処理部13は、信号補正部としての補正処理部13aを有している。補正処理部13aは、変換後の色差信号Cb,Crに対して、設定された画像処理パラメータに従って所定の補正処理を行い、補正後の色差信号Cb’,Cr’を生成する。尚、信号処理部13は、信号変換と同時、変換直後又は補正後のYCbCr信号に対して、他のノイズリダクション(例えば高周波成分を除去する空間フィルタを用いた処理)、輪郭強調、色変換などのフィルタ処理や、画像の解像度変換などの各種処理を行うようにしてもよい。そして、信号処理部13は、処理後のYCbCr信号(輝度信号Y及び補正後の色差信号Cb’,Cr’)をSDRAM16に格納する。
【0020】
信号処理部13は、変換後の色差信号Cb,Crに対して、設定された画像処理パラメータに従って、色むらノイズを抑制するノイズ抑制処理を行う。尚、信号処理部13は、信号変換と同時、又は変換後のYCbCr信号に対して、他のノイズリダクション、輪郭強調、色変換などのフィルタ処理や、画像の解像度変換などの各種処理を行うようにしてもよい。
【0021】
JPEGエンコード部14は、SDRAM16に格納されたYCbCr信号を入力し、YCbCr信号を圧縮コードとして例えばJPEGコードに変換してSDRAM16に格納する。外部メモリインターフェース15は、SDRAM16から入力したJPEGコードを外部記録媒体19に格納する。
【0022】
コントローラ17は、検波部12、信号処理部13、JPEGエンコード部14及び外部メモリインターフェース15の動作等を制御する。例えば、コントローラ17は、信号処理部13における画像処理パラメータを設定する。コントローラ17は、デジタルカメラ10に備えられた図示しないキーの操作に従って選択された各種設定項目の値を画像処理パラメータとして設定する。
【0023】
次に、上記補正処理部13aにおける補正処理について詳述する。
補正処理部13aには、色差信号Cb,Crが表現される空間(色差空間)において、色差信号の値が「0」、つまり色差空間の中心点であって無色な点を中心とする所定範囲の無色領域が規定されている。補正処理部13aは、色差信号Cb,Crの値が無色領域に含まれるか否かを判断し、無色領域に含まれる色差信号Cb,Crの色差値を「0」に近づけた値の抑制色差信号を生成し、無色領域に含まれない色差信号Cb,Crの色差と等しい抑制色差信号を生成する。
【0024】
更に、補正処理部13aには、無色領域内において、上記補正を抑制する抑制領域が規定されている。抑制領域は、無色領域を規定する枠である無色領域境界に沿って所定の色差抑制幅に設定されている。補正処理部13aは、色差信号Cb,Crの値が抑制領域よりも内側の場合には上記したように色差値を「0」に近づけた値の抑制色差信号を生成する。そして、補正処理部13aは、色差信号Cb,Crの値が抑制領域内の場合には、その値に応じて上記の補正を抑制する。
【0025】
上記無色領域を規定する値を第1の基準値とし、第1の基準値よりも小さい値であって上記色差抑制幅により設定される値を第2の基準値とする。補正処理部13aは、色差信号Cb,Crの値が第1の基準値よりも大きい場合には色差信号Cb,Crの値と等しい値の抑制色差信号を生成する。また、補正処理部13aは、色差信号Cb,Crの値が第2の基準値よりも小さい場合には色差信号Cb,Crの値を無色である「0」に近づけた値の抑制色差信号を生成する。更に、補正処理部13aは、色差信号Cb,Crの値が第2の基準値と第1の基準値の間にある場合には、色差信号Cb,Crの値を、第1の基準値に対応する出力値と第2の基準値に対応する出力値との間の値の抑制色差信号を生成する。
【0026】
即ち、補正処理部13aは、第1の基準値以上の色差信号Cb,Crを補正する第1の補正手段と、第2の基準値以下の色差信号Cb,Crを補正する第2の補正手段と、第1の基準値と第2の基準値との間の色差信号Cb,Crを補正する第3の補正手段として機能する。第1の補正手段は、第1の基準値以上の色差信号Cb,Crをそれと等しい値に補正する、つまり第1の基準値以上の色差信号Cb,Crと等しい値の抑制色差信号を生成する。第2の補正手段は、第2の基準値以下の色差信号Cb,Crの値を「0」に近い値に補正する。第3の補正手段は、色差信号Cb,Crの値を、第1の基準値に対応する出力値と第2の基準値に対応する出力値との間の値に補正する。
【0027】
一例として、第2の補正手段として機能する補正処理部13aは、第2の基準値以下の色差信号Cb,Crの値を「0」に補正する、つまり値が「0」の抑制色差信号を出力する。また、第3の補正手段として機能する補正処理部13aは、色差信号Cb,Crの値を、第1の基準値に対応する出力値と第2の基準値に対応する出力値(=0)とを結ぶ直線上の値に補正した値の抑制色差信号を出力する。
【0028】
上記の無色領域の一例を図5に示す。
色差信号Cr,Cbは、画素に入射された光、つまり被写体を表現する色情報を有し、表現する色に応じて正負の種々の信号レベルをとる。色差空間(Cb−Cr空間)において、第1の基準値として無色領域境界値Cnonが画像処理パラメータに設定されている。そして、横軸(Cb軸)における値Cnon,−Cnonと縦軸(Cr軸)における値Cnon,−Cnonとを結ぶ直線、即ち、
|Cb|+|Cr|=Cnon
で表わされる直線を境界線B1とし、その境界線B1内を無色領域Anとする。この無色領域An内の値が第2,第3の補正手段における補正対象となる。
【0029】
更に、画像処理パラメータには、色差抑制幅Cwdが設定されている。そして、各軸Cb,Crにおいて、無色領域境界値Cnon(−Cnon)から色差抑制幅Cwdだけ中心に近い点の値を第2の基準値Cn2(−Cn2)とする。そして、上記の無色領域境界と同様に、横軸(Cb軸)における値Cn2,−Cn2と縦軸(Cr軸)における値Cn2,−Cnon2を結ぶ直線、即ち、
|Cb|+|Cr|=Cn2
で表わされる直線を境界線B2とし、境界線B2の内側を領域An2,境界線B1と境界線B2との間の領域を領域An3とする。この領域An2内の値が第2の補正手段における補正対象であり、領域An3内の値が第3の補正手段における補正対象となる。
【0030】
図6は、色差信号Crが「0」の場合における入力色差信号Cbと出力色差信号Cb’の関係を示す図である。入力色差信号Cbが0に近づくにしたがい、無色領域境界値Cnonの境界内(領域An3)では、色差抑制幅Cwdの幅を持って、より「0」に近づく方向に補正される。すなわち、色差が抑制される。境界線B1の前後(無色領域Anの内外)における変化は滑らかに接続されるので、色差が不連続になることを防ぎ、画像品質の低下を防いでいる。
【0031】
図7は、色差信号Cb,Crの値が等しい(Cb=Cr)場合における入力色差信号Cbと出力色差信号Cb’の関係を示す図である。この条件においても、図6に示す入力色差信号Cr=0の場合と同様に、境界線B1の前後における変化は滑らかに接続されるので、色差が不連続になることを防ぎ、画像品質の低下を防いでいる。
【0032】
次に、補正処理部13aの構成例を説明する。
図2に示すように、補正処理部13aは、絶対値和演算部21と、色差抑制部22と、出力選択部23を有している。
【0033】
色差信号Cb,Crは絶対値和演算部21に供給される。絶対値和演算部21は、次式に従って、色差信号Cb,Crのそれぞれの絶対値を合計した絶対値和Csumを算出する。
【0034】
Csum=|Cb|+|Cr|
次に、絶対値和演算部21は、設定された画像処理パラメータに含まれる第1の基準値としての無色領域境界値Cnonと、前述の絶対値和Csumとの大小比較を行い、その比較結果に応じた無色領域判定信号Cselを生成する。例えば、絶対値和演算部21は、無色領域境界値Cnonが絶対値和Csumよりも小さければHレベルの無色領域判定信号Cselを、そうでなければLレベルの無色領域判定信号Cselを生成する。即ち、無色領域判定信号Cselは、色差信号Cb,Crの値が無色領域An内か否かを示す。
【0035】
色差抑制部22は、色差信号Cb,Cr、及び絶対値和演算部21から出力される絶対値和Csumを入力とし、設定された無色領域境界値Cnon及び色差抑制幅Cwdに基づいて、抑制色差信号Cb2,Cr2を生成する。色差抑制部22は、上記の第2及び第3の補正手段の動作により、抑制色差信号Cb2,Cr2を生成する。
【0036】
出力選択部23は、絶対値和演算部21から出力される無色領域判定信号Cselに基づいて入力色差信号Cb,Crと抑制色差信号Cb2,Cr2の何れか一方を選択し、その選択した信号を出力する。無色領域判定信号Cselは、入力色差信号Cb,Crとの絶対値和Csumと無色領域境界値Cnonを大小比較した結果に対応する。無色領域境界値Cnonは、図5に示すように、色差信号Cb,Crの値が「0」に近い無色領域Anを区画設定する。絶対値和Csumが無色領域境界値Cnonよりも小さい場合、色差信号Cb,Crの値が無色領域An内であることを示し、絶対値和Csumが無色領域境界値Cnonよりも大きい場合、色差信号Cb,Crの値が無色領域An外であることを示す。従って、出力選択部23は、入力色差信号Cb,Crが無色領域内である(Csel=H)場合に色差抑制部22の出力である抑制色差信号Cb2,Cr2を選択し、その選択した信号を上記第2又は第3の補正手段における抑制色差信号として出力する。一方、出力選択部23は、入力色差信号Cb,Crが無色領域内ではない(Csel=L)場合に入力色差信号Cb,Crを選択し、その選択した信号を上記第1の補正手段における抑制色差信号として出力する。
【0037】
図3に示すように、色差抑制部22は、乗算係数演算部31と、クリップ部32と、乗算部33を有している。
乗算係数演算部31は、絶対値和演算部21から出力される絶対値和Csumを入力として、設定された無色領域境界値Cnonおよび色差抑制幅Cwdを使用して、
K1=Csum−Cnon+Cwd
により乗算係数K1を算出する。
【0038】
クリップ部32は、乗算係数演算部31から出力される乗算係数K1を入力として、乗算係数K1の値が「0」以下であったら出力を「0」にクリップし、乗算係数K1の値が色差抑制幅Cwd以上であったら出力を色差抑制幅Cwdにクリップし、そのどちらでもないのであれば乗算係数K1を出力するクリップ処理を施した乗算係数K2を出力する。
【0039】
上記の設定により、第2の基準値Cn2は、
Cn2=Cnon−Cwd
であるため、上記の乗算係数K1は、
K1=Csum−Cnon+(Cnon−Cn2)
K1=Csum−Cn2
となる。つまり、乗算係数K1は、絶対値和Csumが第2の基準値Cn2以下の場合に「0」以下となる。従って、クリップ処理後の乗算係数K2は、絶対値和Csumが第2の基準値Cn2以下の場合に「0」となり、絶対値和Csumが無色領域境界値Cnon(第1の基準値)以上の場合に色差抑制幅Cwdとなる。
【0040】
乗算部33は、色差信号Cb,Crに対して、クリップ部32の出力である乗算係数K2および設定された色差抑制幅Cwdに基づいて、
Cb2=Cb×K2/Cwd
Cr2=Cr×K2/Cwd
により抑制色差信号Cb2,Cr2を算出する。
【0041】
尚、色差抑制幅Cwdを2の補数に制限すると、除算をシフト演算で代用することができる。これにより、乗算部33の回路構成を、除算を行う回路構成に比べて小さくすることが可能である。
【0042】
次に、補正処理部13aの詳細な回路の一例を図4に従って説明する。
絶対値和演算部21aは、絶対値化回路41a,41bと加算回路41cとを有している。絶対値化回路41a,41bはそれぞれ色差信号Cb,Crを絶対値化した信号を出力する。加算回路41cは、絶対値化回路41aの出力信号に絶対値化回路41bの出力信号を加算して生成した絶対値和Csumを出力する。
【0043】
色差抑制部22の乗算係数演算部31は、2つの減算回路42a,42bを有している。減算回路42aには絶対値和演算部21aから出力される絶対値和Csumと、無色領域境界値Cnonが入力される。減算回路42aは、無色領域境界値Cnonから絶対値和Csumを減算した結果を出力する。減算回路42bには、色差抑制幅Cwdと、減算回路42aの出力信号が入力される。減算回路42bは、色差抑制幅Cwdから減算回路42aの出力信号を減算した結果を乗算係数K1として出力する。
【0044】
クリップ部32には、乗算係数演算部31にて生成された乗算係数K1、色差抑制幅Cwdとクリップする「0」とが入力される。クリップ部32は、乗算係数K1を色差抑制幅Cwdと「0」によりクリップして得られた乗算係数K2を出力する。
【0045】
乗算部33は、2つの乗算回路43a,43bと2つの除算回路43c,43dを有している。乗算回路43aには色差信号Cbと乗算係数K2が入力される。乗算回路43aは、色差信号Cbに乗算係数K2を乗算した結果を出力する。同様に、乗算回路43aは入力される色差信号Crに乗算係数K2を乗算した結果を出力する。除算回路43cには、乗算回路43aの出力信号と色差抑制幅Cwdが入力される。除算回路43cは、乗算回路43aの出力信号を色差抑制幅Cwdで除算した結果を抑制色差信号Cb2として出力する。同様に、除算回路43cは、入力される乗算回路43aの出力信号を色差抑制幅Cwdで除算した結果を抑制色差信号Cr2として出力する。
【0046】
出力選択部23aは、判定回路44aと2つの選択回路44b,44cとを有している。判定回路44aには、乗算係数演算部31の減算回路42aから出力される信号が入力される。この減算回路42aの出力信号は、無色領域境界値Cnonから絶対値和Csumを減算した結果である。判定回路44aは、減算回路42aの減算結果が「0」以上であるか否かを判定し、その判定結果に応じて無色領域判定信号Cselを出力する。例えば、判定回路44aは、減算回路42aの減算結果が「0」以上の場合にLレベルの無色領域判定信号Cselを出力し、減算回路42aの減算結果が「0」未満の場合にHレベルの無色領域判定信号Cselを出力する。従って、図2に示す絶対値和演算部21は、図4に示す絶対値和演算部21aと乗算係数演算部31の減算回路42aと出力選択部23aの判定回路44aとから構成される。
【0047】
判定回路44aから出力される無色領域判定信号Cselは、2つの選択回路44b,44cに供給される。選択回路44bには入力色差信号Cbと抑制色差信号Cb2が入力され、選択回路44cには入力色差信号Crと抑制色差信号Cr2が入力される。選択回路44bは、無色領域判定信号Cselに応じて入力色差信号Cb又は抑制色差信号Cb2を選択し、その選択した信号を出力色差信号Cb’として出力する。同様に、選択回路44cは、無色領域判定信号Cselに応じて入力色差信号Cr又は抑制色差信号Cr2を選択し、その選択した信号を出力色差信号Cr’として出力する。例えば、無色領域判定信号CselがLレベルの場合、選択回路44b,44cは、入力色差信号Cb,Crを選択し、その入力色差信号Cb,Crと等しい出力色差信号Cb’,Cr’を出力する。また、無色領域判定信号CselがHレベルの場合、選択回路44b,44cは、抑制色差信号Cb2,Cr2を選択し、その抑制色差信号Cb2,Cr2と等しい出力色差信号Cb’,Cr’を出力する。
【0048】
尚、色差抑制幅Cwdを2の補数に制限すると、除算回路43c,43dに換えてシフト演算回路が用いられる。これにより、乗算部33の回路構成を、除算を行う回路構成に比べて小さくすることが可能である。
【0049】
画像処理パラメータに含まれる無色領域境界値Cnonは、色差信号Cb,Crの最大値に対して、例えば5%〜15%の範囲に設定しておくのが好ましい。色差信号Cb,Crはデジタル値であり、例えば、−128〜127の範囲とすると、無色領域境界値Cnonは8又は16に設定される。
【0050】
また、画像処理パラメータに含まれる色差抑制幅Cwdは、無色領域境界値Cnonの1/4〜1/2の範囲に設定しておくのが好ましい。この好適な範囲を図8に従って説明する。図8において、横軸は色差空間の中心点からの距離、縦軸は色差信号Cbの値である。入力色差信号Cbの値を○点で示し、色差抑制幅Cwdを無色領域境界値Cnonの1/2に設定した時の出力色差信号Cb’の値を◇点で示し、色差抑制幅Cwdを無色領域境界値Cnonの1/8に設定した時の出力色差信号Cb’の値を×点で示している。
【0051】
色差抑制幅Cwdが無色領域境界値Cnonに比べて小さい(図中、1/8に設定した点)と、補正後の出力色差信号Cb’,Cr’が非無色領域(図中、無色領域境界値Cnonより上側の領域)の点P1の値と、無色領域の点P2の値との差が大きい、即ち色差が急激に変化するため、色の変化が激しい(着色から急激に無色に変化する)ため、色差を補正した部分が目立ってしまう。一方、色差抑制幅Cwdが無色領域境界値Cnonに近い値に設定すると、図8において、色差抑制幅Cwdを無色領域境界値Cnonの1/2に設定した点よりも入力色差信号Cbに近くなる。その結果、値が「0」の出力色差信号Cb’が少なくなる、又は出力色差信号Cb’の値が「0」から遠くなるため、色むらノイズの抑制効果が少なくなる、つまり色むらノイズが目立ってしまう。従って、上記のように、色差抑制幅Cwdを無色領域境界値Cnonの1/4〜1/2の範囲に設定することで、色の急激な変化を抑えるとともに、色むらノイズを低減することができる。
【0052】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)補正処理部13aには、2つの入力色差信号を互いに交差する2つの軸とする色差空間において、色差空間の原点を含む無色領域Anと、無色領域Anの内外を区画する第1の境界線B1と、第1の境界線B1より原点側であって色差抑制幅Cwdにて規定される抑制領域An3と、抑制領域An3内とその抑制領域の内側の領域An2を区画する第2の境界線B2とが設定されている。補正処理部13aは、色差信号Cb,Crの値が無色領域Anより外側の場合、入力色差信号Cb,Crに対する補正量を「0」として出力色差信号Cb’,Cr’を生成する。また、補正処理部13aは、色差信号Cb,Crの値が抑制領域An3より内側の場合、入力色差信号Cb.Crを「0」に近づける補正をして出力色差信号Cb’,Cr’を生成する。更に、補正処理部13aは、色差信号Cb,Crの値が抑制領域An3内の場合、入力色差信号Cb,Crを、第1の境界線B1上の値と、第2の境界線B2上の値との間に補正して出力色差信号Cb’,Cr’を生成する。
【0053】
従って、無色領域An外の入力色差信号Cb,Crに対して補正量が「0」の出力色差信号Cb’,Cr’が出力される、つまり入力色差信号Cb,Crと等しい値の出力色差信号が生成されるため、新たな色ずれの発生が抑えられる。また、抑制領域An3より内側の入力色差信号Cb,Crが「0」に近づけられて出力色差信号Cb’,Cr’が生成されるため、色むらノイズが低減される。更に、抑制領域An3内の入力色差信号Cb,Crが、第1の境界線B1上の値と、第2の境界線B2上の値との間に補正されて出力色差信号Cb’,Cr’が生成されるため、出力色差信号Cb’,Cr’の値が急激に変化することがない、即ち色の急激な変化が抑えられる。
【0054】
(2)絶対値和演算部21は、2つの入力色差信号Cb,Crの絶対値和Csumを算出する。信号生成部としての絶対値和演算部21は、絶対値和Csumと第1の基準値Cnonとを比較し、その比較結果に応じた無色領域判定信号Cselを生成する。色差抑制部22は、絶対値和Csumが第1の基準値Cnonより小さい第2の基準値Cn2よりも小さい場合に、入力色差信号Cb,Crを「0」に近づける補正を行って抑制色差信号Cb2,Cr2を生成する。また、色差抑制部22は、絶対値和Csumが第1の基準値Cnonと第2の基準値Cn2との間にある場合に、入力色差信号Cb,Crを、絶対値和Csumが第1の基準値Cnonである場合における出力値と絶対値和が第2の基準値である場合における出力値との間の値に補正した抑制色差信号Cb2,Cr2を生成する。出力選択部23は、入力色差信号Cb,Crと抑制色差信号Cb2,Cr2と無色領域判定信号Cselが入力され、無色領域判定信号Cselに基づいて、絶対値和Csumが第1の基準値Cnon以上の場合に入力色差信号Cb,Crを選択してその選択した信号を出力色差信号Cb’,Cr’として出力し、絶対値和Csumが第1の基準値Cnonより小さい場合に抑制色差信号Cb2,Cr2を選択してその選択した信号を出力色差信号Cb’,Cr’として出力する。
【0055】
従って、補正処理部13aは、入力色差信号Cb,Crの絶対値和Csumを算出する演算部21を備えている。この絶対値和Csumを算出することにより、入力色差信号Cb,Crの値と、無色領域Anを規定する第1の基準値Cnon及び第2の基準値Cn2とを容易に比較することが可能となり、演算負荷の増加を抑えることができる。また、色差抑制部22が生成する抑制色差信号Cb2,Cr2は、絶対値和Csumが第2の基準値Cn2よりも小さい場合に、入力色差信号Cb,Crを「0」に近づける補正がなされているため、色むらノイズが低減される。また、色差抑制部22が生成する抑制色差信号Cb2,Cr2は、絶対値和Csumが第1の基準値Cnonと第2の基準値Cn2との間にある場合に、入力色差信号Cb,Crが、絶対値和Csumが第1の基準値Cnonである場合における出力値と絶対値和Csumが第2の基準値Cn2である場合における出力値との間の値に補正されているため、出力色差信号Cb’,Cr’の値が急激に変化することがない、即ち色の急激な変化が抑えられる。更に、出力選択部23が無色領域判定信号Cselに応じて選択した入力色差信Cb,Cr号を出力色差信号Cb’,Cr’として出力する、つまり入力色差信号Cb,Crと等しい値の出力色差信号Cb’,Cr’が出力されるため、新たな色ずれの発生が抑えられる。
【0056】
(3)乗算係数演算部31は、絶対値和Csumに基づいて乗算係数K1を算出する。従って、この乗算係数K1は、2つの入力色差信号Cb,Crの双方に用いることができるため、それぞれの信号Cb,Crに対する乗算係数を算出する必用がなく、演算負荷が少なく、短時間で乗算係数K1を算出することができる。
【0057】
尚、上記各実施の形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態において、撮像素子としてカラーフィルタがベイヤ配列された撮像センサ11を用いたが、その他の配列の撮像センサを用いても良い。また、画素の配列方向は直交する2つの軸に限らない。更には、各色の画素がチップの深さ方向に形成された撮像センサを用いても良い。
【0058】
・上記実施形態において、補正処理部13aは、色差信号Cb,Crの値を、第1の基準値に対応する出力値と第2の基準値に対応する出力値(=0)とを結ぶ直線上の値に補正したが、二次曲線、三次曲線等の任意の曲線上の値に補正するようにしてもよい。
【0059】
・上記実施形態において、無色領域Anを区画する境界を、Cb軸上の値Cnon,−CnonとCr軸上の値Cnon,−Cnonをそれぞれ結ぶ直線として無色領域Anを菱形状に設定したが、無色領域Anを任意の多角形状又は円状に設定しても良い。
【0060】
・上記実施形態において、補正処理部13aは色差信号Cb,Crを補正するように構成した、つまり信号処理部13において、撮像データをYCbCr信号に変換した。これを、YUV信号やCIELAB信号等の信号に変換し、色情報を持つ信号を補正するようにしてもよい。
【0061】
・クリップ部32が算出する第2の乗算係数K2は、色差抑制幅Cwdによりクリップされている。このクリップされた領域は、無色領域An外に対応する。そして、乗算部33の演算において、乗算係数K2を色差抑制幅Cwdで除算した結果は、色差抑制幅Cwdでクリップされた領域において「1」となる。従って、この領域において算出される抑制色差信号Cb2,Cr2は、入力色差信号Cb,Crの値と等しくなる。このため、図2における出力選択部23、及び絶対値和演算部21において無色領域判定信号Cselを算出する部分の回路を省略してもよい。
【0062】
上記各実施形態に関し、以下の付記を開示する。
(付記1)
入力色差信号を補正し、前記入力色差信号における色むらノイズを抑制した出力色差信号を生成する処理を行う画像信号処理装置であって、
2つの色差信号を互いに交差する2つの軸とする色差空間において、前記色差空間の原点を含む無色領域と、前記無色領域の内外を区画する第1の境界線と、前記第1の境界線より原点側であって色差抑制幅にて規定される抑制領域と、前記抑制領域内とその抑制領域の内側の領域を区画する第2の境界線とが設定され、
前記色差信号の値が前記無色領域より外側の場合、前記入力色差信号に対する補正量を「0」として前記出力色差信号を生成する第1の補正手段と、
前記色差信号の値が前記抑制領域より内側の場合、前記入力色差信号を「0」に近づける補正をして前記出力色差信号を生成する第2の補正手段と、
前記色差信号の値が前記抑制領域内の場合、前記入力色差信号を、前記第1の境界線上の値と、前記第2の境界線上の値との間に補正して前記出力色差信号を生成する第3の補正手段と、
を有することを特徴とする画像信号処理装置。
(付記2)
前記第2の補正手段は、前記色差信号の値が前記抑制領域より内側の場合、前記入力色差信号を「0」とする補正をして前記出力色差信号を生成すること、を特徴とする付記1に記載の画像信号処理装置。
(付記3)
前記第3の補正手段は、前記入力色差信号の値を、前記入力色差信号で示される前記色差空間上の点と前記原点を通る直線が前記第1の境界線及び前記第2の境界線と交わる第1及び第2の交点の値の間を、前記入力色差信号に応じて補間した値に補正すること、を特徴とする付記1又は2に記載の画像信号処理装置。
(付記4)
前記第1の境界線は、両軸の値の絶対値和が第1の基準値となる直線に設定され、
前記第2の境界線は、両軸の値の絶対値和が第2の基準値となる直線に設定され、
前記第1の補正手段は、前記入力色差信号の絶対値和と前記第1の基準値とを比較して前記入力色差信号が前記無色領域より外側か否かを判断すること、
を特徴とする付記1又は2に記載の画像信号処理装置。
(付記5)
入力された色差信号の色むらノイズを抑制する処理を行う画像信号処理装置であって、
2つの入力色差信号の絶対値和を算出する絶対値和演算部と、
前記絶対値和と第1の基準値とを比較し、その比較結果に応じた無色領域判定信号を生成する信号生成部と、
前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい第2の基準値よりも小さい場合に、前記入力色差信号を「0」に近づける補正を行って抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値と前記第2の基準値との間にある場合に、前記入力色差信号を、絶対値和が前記第1の基準値である場合における出力値と絶対値和が前記第2の基準値である場合における出力値との間の値に補正した抑制色差信号を生成する色差抑制部と、
前記入力色差信号と前記抑制色差信号と前記無色領域判定信号が入力され、前記無色領域判定信号に基づいて、前記絶対値和が前記第1の基準値以上の場合に前記入力色差信号を選択してその選択した信号を出力色差信号として出力し、前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい場合に前記抑制色差信号を選択してその選択した信号を出力色差信号として出力する出力選択部と、
を有することを特徴とする画像信号処理装置。
(付記6)
入力された色差信号の色むらノイズを抑制する処理を行う画像信号処理装置であって、
2つの入力色差信号の絶対値和を算出する絶対値和演算部21と、
前記絶対値和が前記第1の基準値以上の場合に、前記入力色差信号と等しい抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい第2の基準値よりも小さい場合に、前記入力色差信号を「0」に近づける補正を行って抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値と前記第2の基準値との間にある場合に、前記入力色差信号を、絶対値和が前記第1の基準値である場合における出力値と絶対値和が前記第2の基準値である場合における出力値との間の値に補正した抑制色差信号を生成する色差抑制部と、
を有することを特徴とする画像信号処理装置。
(付記7)
前記色差抑制部は、
絶対値和Csumと、第1の基準値Cnonと、色差抑制幅Cwdに基づいて、第1の乗算係数K1を、
K1=Csum−Cnon+Cwd
により算出する乗算係数演算部と、
前記第1の乗算係数K1を「0」と前記色差抑制幅Cwdでクリップ処理した第2の乗算係数K2を算出するクリップ部と、
前記入力色差信号Cb,Crと、前記第2の乗算係数と前記色差抑制幅Cwdに基づいて、抑制色差信号Cb2,Cr2を
Cb2=Cb×K2/Cwd
Cr2=Cr×K2/Cwd
により算出する乗算部と、
を有することを特徴とする付記5又は6に記載の画像信号処理装置。
(付記8)
色差信号の色むらノイズを抑制する処理を前記色差信号が入力される画像信号処理装置が実行する画像信号処理方法であって、
前記画像信号処理装置は、
2つの色差信号を互いに交差する2つの軸とする色差空間において、前記色差空間の原点を含む無色領域と、前記無色領域の内外を区画する第1の境界線と、前記第1の境界線より原点側であって色差抑制幅にて規定される抑制領域と、前記抑制領域内とその抑制領域の内側の領域を区画する第2の境界線とが設定され、
前記色差信号の値が前記無色領域より外側の場合、前記入力色差信号に対する補正量を「0」として前記出力色差信号を生成する第1の補正処理と、
前記色差信号の値が前記抑制領域より内側の場合、前記入力色差信号を「0」に近づける補正をして前記出力色差信号を生成する第2の補正処理と、
前記色差信号の値が前記抑制領域内の場合、前記入力色差信号を、前記第1の境界線上の値と、前記第2の境界線上の値との間に補正して前記出力色差信号を生成する第3の補正処理と、
を実行することを特徴とする画像信号処理方法。
(付記9)
前記画像信号処理装置は、前記第2の補正処理において、前記色差信号の値が前記抑制領域より内側の場合、前記入力色差信号を「0」とする補正をして前記出力色差信号を生成すること、を特徴とする付記8に記載の画像信号処理方法。
(付記10)
前記画像信号処理装置は、前記第3の補正処理において、前記入力色差信号の値を、前記入力色差信号で示される前記色差空間上の点と前記原点を通る直線が前記第1の境界線及び前記第2の境界線と交わる第1及び第2の交点の値の間を、前記入力色差信号に応じて補間した値に補正すること、を特徴とする付記8又は9に記載の画像信号処理方法。
(付記11)
前記第1の境界線は、両軸の値の絶対値和が第1の基準値となる直線に設定され、
前記第2の境界線は、両軸の値の絶対値和が第2の基準値となる直線に設定され、
前記画像信号処理装置は、前記第1の補正処理において、前記入力色差信号の絶対値和と前記第1の基準値とを比較して前記入力色差信号が前記無色領域より外側か否かを判断すること、を特徴とする付記8又は9に記載の画像信号処理方法。
(付記12)
入力色差信号の色むらノイズを抑制する処理を前記入力色差信号が入力される画像信号処理装置が実行する画像信号処理方法であって、
前記画像信号処理装置は、
2つの入力色差信号の絶対値和を算出する絶対値和演算処理と、
前記絶対値和と第1の基準値とを比較し、その比較結果に応じた無色領域判定信号を生成する信号生成処理と、
前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい第2の基準値よりも小さい場合に、前記入力色差信号を「0」に近づける補正を行って抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値と前記第2の基準値との間にある場合に、前記入力色差信号を、絶対値和が前記第1の基準値である場合における出力値と絶対値和が前記第2の基準値である場合における出力値との間の値に補正した抑制色差信号を生成する色差抑制処理と、
前記入力色差信号と前記抑制色差信号と前記無色領域判定信号が入力され、前記無色領域判定信号に基づいて、前記絶対値和が前記第1の基準値以上の場合に前記入力色差信号を選択してその選択した信号を出力色差信号として出力し、前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい場合に前記抑制色差信号を選択してその選択した信号を出力色差信号として出力する出力選択処理と、
を実行することを特徴とする画像信号処理方法。
(付記13)
入力色差信号の色むらノイズを抑制する処理を前記入力色差信号が入力される画像信号処理装置が実行する画像信号処理方法であって、
前記画像信号処理装置は、
2つの入力色差信号の絶対値和を算出する絶対値和演算処理と、
前記絶対値和が前記第1の基準値以上の場合に、前記入力色差信号と等しい抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい第2の基準値よりも小さい場合に、前記入力色差信号を「0」に近づける補正を行って抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値と前記第2の基準値との間にある場合に、前記入力色差信号を、絶対値和が前記第1の基準値である場合における出力値と絶対値和が前記第2の基準値である場合における出力値との間の値に補正した抑制色差信号を生成する色差抑制処理と、
を実行することを特徴とする画像信号処理方法。
(付記14)
前記色差抑制処理は、
絶対値和Csumと、第1の基準値Cnonと、色差抑制幅Cwdに基づいて、第1の乗算係数K1を、
K1=Csum−Cnon+Cwd
により算出する乗算係数演算処理と、
前記第1の乗算係数K1を「0」と前記色差抑制幅Cwdでクリップ処理した第2の乗算係数K2を算出するクリップ処理と、
前記入力色差信号Cb,Crと、前記第2の乗算係数と前記色差抑制幅Cwdに基づいて、抑制色差信号Cb2,Cr2を
Cb2=Cb×K2/Cwd
Cr2=Cr×K2/Cwd
により算出する乗算処理と、
を含むことを特徴とする付記12又は13に記載の画像信号処理方法。
(付記15)
複数の画素が形成され、各画素の入力光量に応じた撮像データを生成する撮像素子と、
前記撮像データを輝度信号と色差信号とに変換する信号変換部と、
付記1乃至7のうちの何れか1項に記載の画像信号処理装置からなる信号補正部と、
前記信号補正部により補正された色差信号と前記輝度信号とを所定の圧縮コードに変換するコード変換部と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】デジタルカメラのシステム構成を示すブロック回路図である。
【図2】信号処理部のブロック回路図である。
【図3】色差抑制部のブロック回路図である。
【図4】信号処理部の回路図である。
【図5】無色領域を示す特性図である。
【図6】信号処理部の処理を示す特性図である。
【図7】信号処理部の処理を示す特性図である。
【図8】距離−信号値特性を示す説明図である。
【符号の説明】
【0064】
21,21a 絶対値和演算部
22 色差抑制部
23,23a 出力選択部
An 無色領域
B1 第1の境界線
B2 第2の境界線
Cb,Cr 色差信号、入力色差信号
An3 抑制領域
Cb2,Cr2 抑制色差信号
Cn2 第2の基準値
Cwd 色差抑制幅
Cnon 第1の基準値
Csel 無色領域判定信号
Csum 絶対値和

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力色差信号を補正し、前記入力色差信号における色むらノイズを抑制した出力色差信号を生成する処理を行う画像信号処理装置であって、
2つの入力色差信号を互いに交差する2つの軸とする色差空間において、前記色差空間の原点を含む無色領域と、前記無色領域の内外を区画する第1の境界線と、前記第1の境界線より原点側であって色差抑制幅にて規定される抑制領域と、前記抑制領域内とその抑制領域の内側の領域を区画する第2の境界線とが設定され、
前記入力色差信号の値が前記無色領域より外側の場合、前記入力色差信号に対する補正量を「0」として前記出力色差信号を生成する第1の補正手段と、
前記入力色差信号の値が前記抑制領域より内側の場合、前記入力色差信号を「0」に近づける補正をして前記出力色差信号を生成する第2の補正手段と、
前記入力色差信号の値が前記抑制領域内の場合、前記入力色差信号を、前記第1の境界線上の値と、前記第2の境界線上の値との間に補正して前記出力色差信号を生成する第3の補正手段と、
を有することを特徴とする画像信号処理装置。
【請求項2】
前記第2の補正手段は、前記入力色差信号の値が前記抑制領域より内側の場合、前記入力色差信号を「0」とする補正をして前記出力色差信号を生成すること、を特徴とする請求項1に記載の画像信号処理装置。
【請求項3】
前記第3の補正手段は、前記入力色差信号の値を、前記入力色差信号で示される前記色差空間上の点と前記原点を通る直線が前記第1の境界線及び前記第2の境界線と交わる第1及び第2の交点の値の間を、前記入力色差信号に応じて補間した値に補正すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の画像信号処理装置。
【請求項4】
前記第1の境界線は、両軸の値の絶対値和が第1の基準値となる直線に設定され、
前記第2の境界線は、両軸の値の絶対値和が第2の基準値となる直線に設定され、
前記第1の補正手段は、前記入力色差信号の絶対値和と前記第1の基準値とを比較して前記入力色差信号が前記無色領域より外側か否かを判断すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の画像信号処理装置。
【請求項5】
入力された入力色差信号の色むらノイズを抑制する処理を行う画像信号処理装置であって、
2つの入力色差信号の絶対値和を算出する絶対値和演算部と、
前記絶対値和と第1の基準値とを比較し、その比較結果に応じた無色領域判定信号を生成する信号生成部と、
前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい第2の基準値よりも小さい場合に、前記入力色差信号を「0」に近づける補正を行って抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値と前記第2の基準値との間にある場合に、前記入力色差信号を、絶対値和が前記第1の基準値である場合における出力値と絶対値和が前記第2の基準値である場合における出力値との間の値に補正した抑制色差信号を生成する色差抑制部と、
前記入力色差信号と前記抑制色差信号と前記無色領域判定信号が入力され、前記無色領域判定信号に基づいて、前記絶対値和が前記第1の基準値以上の場合に前記入力色差信号を選択してその選択した信号を出力色差信号として出力し、前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい場合に前記抑制色差信号を選択してその選択した信号を出力色差信号として出力する出力選択部と、
を有することを特徴とする画像信号処理装置。
【請求項6】
入力された入力色差信号の色むらノイズを抑制する処理を行う画像信号処理装置であって、
2つの入力色差信号の絶対値和を算出する絶対値和演算部21と、
前記絶対値和が第1の基準値以上の場合に、前記入力色差信号と等しい抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい第2の基準値よりも小さい場合に、前記入力色差信号を「0」に近づける補正を行って抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値と前記第2の基準値との間にある場合に、前記入力色差信号を、絶対値和が前記第1の基準値である場合における出力値と絶対値和が前記第2の基準値である場合における出力値との間の値に補正した抑制色差信号を生成する色差抑制部と、
を有することを特徴とする画像信号処理装置。
【請求項7】
入力色差信号の色むらノイズを抑制する処理を前記入力色差信号が入力される画像信号処理装置が実行する画像信号処理方法であって、
前記画像信号処理装置は、
2つの入力色差信号を互いに交差する2つの軸とする色差空間において、前記色差空間の原点を含む無色領域と、前記無色領域の内外を区画する第1の境界線と、前記第1の境界線より原点側であって色差抑制幅にて規定される抑制領域と、前記抑制領域内とその抑制領域の内側の領域を区画する第2の境界線とが設定され、
前記入力色差信号の値が前記無色領域より外側の場合、前記入力色差信号に対する補正量を「0」として出力色差信号を生成する第1の補正処理と、
前記入力色差信号の値が前記抑制領域より内側の場合、前記入力色差信号を「0」に近づける補正をして前記出力色差信号を生成する第2の補正処理と、
前記入力色差信号の値が前記抑制領域内の場合、前記入力色差信号を、前記第1の境界線上の値と、前記第2の境界線上の値との間に補正して前記出力色差信号を生成する第3の補正処理と、
を実行することを特徴とする画像信号処理方法。
【請求項8】
入力色差信号の色むらノイズを抑制する処理を前記入力色差信号が入力される画像信号処理装置が実行する画像信号処理方法であって、
前記画像信号処理装置は、
2つの入力色差信号の絶対値和を算出する絶対値和演算処理と、
前記絶対値和と第1の基準値とを比較し、その比較結果に応じた無色領域判定信号を生成する信号生成処理と、
前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい第2の基準値よりも小さい場合に、前記入力色差信号を「0」に近づける補正を行って抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値と前記第2の基準値との間にある場合に、前記入力色差信号を、絶対値和が前記第1の基準値である場合における出力値と絶対値和が前記第2の基準値である場合における出力値との間の値に補正した抑制色差信号を生成する色差抑制処理と、
前記入力色差信号と前記抑制色差信号と前記無色領域判定信号が入力され、前記無色領域判定信号に基づいて、前記絶対値和が前記第1の基準値以上の場合に前記入力色差信号を選択してその選択した信号を出力色差信号として出力し、前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい場合に前記抑制色差信号を選択してその選択した信号を出力色差信号として出力する出力選択処理と、
を実行することを特徴とする画像信号処理方法。
【請求項9】
入力色差信号の色むらノイズを抑制する処理を前記入力色差信号が入力される画像信号処理装置が実行する画像信号処理方法であって、
前記画像信号処理装置は、
2つの入力色差信号の絶対値和を算出する絶対値和演算処理と、
前記絶対値和が第1の基準値以上の場合に、前記入力色差信号と等しい抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値より小さい第2の基準値よりも小さい場合に、前記入力色差信号を「0」に近づける補正を行って抑制色差信号を生成し、前記絶対値和が前記第1の基準値と前記第2の基準値との間にある場合に、前記入力色差信号を、絶対値和が前記第1の基準値である場合における出力値と絶対値和が前記第2の基準値である場合における出力値との間の値に補正した抑制色差信号を生成する色差抑制処理と、
を実行することを特徴とする画像信号処理方法。
【請求項10】
複数の画素が形成され、各画素の入力光量に応じた撮像データを生成する撮像素子と、
前記撮像データを輝度信号と入力色差信号とに変換する信号変換部と、
請求項1乃至6のうちの何れか1項に記載の画像信号処理装置からなる信号補正部と、
前記信号補正部により補正された色差信号と前記輝度信号とを所定の圧縮コードに変換するコード変換部と、
を有することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−194721(P2009−194721A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34751(P2008−34751)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】