説明

画像信号生成装置

【課題】複数の表示装置を介し情報を共有するシステムを構築する場合において、総重量、部品点数、スペース、消費電力、コストを低減できる画像信号生成装置を提供する。
【解決手段】画像信号生成部1a、1bは、1つのフィールド画像の表示期間毎に、複数のフィールド画像の形成用画像信号を順次生成すると共に時分割多重化する。信号分離部1dは、1つのフィールド画像の表示期間毎に、時分割多重化された複数の画像信号を、その時分割タイミングに対応して互いに異なる出力端子Ox1、Oy1、Ox2、Oy2、Ox3、Oy3、Ox4、Oy4に導くことで互いから分離する。複数の表示装置4a、4b、4c、4dが互いに異なる出力端子Ox1、Oy1、Ox2、Oy2、Ox3、Oy3、Ox4、Oy4に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に航空機において複数の表示装置を用いて画像情報を共有するのに適した画像信号生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、難破船や遭難者等の救難用に用いられる航空機においては、救難目標の発見時に搭乗員により操作される入力装置により目標ロック信号が入力されると、飛行機や搭乗員の位置や姿勢や頭部の向き等の情報から救難目標の位置を演算装置により演算し、その演算結果に応じて救難目標の位置等を表すシンボル画像を形成するための画像信号を画像信号生成装置により生成し、そのシンボル画像を頭部装着型表示装置やヘッドアップディスプレイ等により外界の救難目標と重畳して表示している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−225998号公報
【0003】
図9は、複数の表示装置101により画像を同時に表示するための従来例を示し、各表示装置101は個別の画像信号生成装置102に接続される。各画像信号生成装置102は、救難目標位置の演算結果に応じて命令信号OPを出力するCPU102aと、命令信号OPに応じてデジタルX偏向信号XdとデジタルY偏向信号Ydを出力するシンボルジェネレータ102bと、デジタルX偏向信号XdをアナログX偏向信号XaにデジタルY偏向信号YdをアナログY偏向信号Yaにそれぞれ変換するD/A変換器102cとを有する。各表示装置101は、CRT101aと、アナログX偏向信号とアナログY偏向信号に基づいてCRT101aの画面上にシンボル画像をストロ―ク表示するための駆動回路101bを有する。
【0004】
図10は、従来の画像信号生成装置102から出カされるアナログX偏向信号XaとアナログY偏向信号Yaの電圧値と時間との関係を示す。この場合、1つのフィールド画像の表示期間(1/60秒)毎に、一つのフィールド画像を形成するためのアナログX偏向信号XaとアナログY偏向信号Yaが生成されるのみである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような救難用航空機においては、救難目標を発見した搭乗員以外の搭乗員に救難目標位置情報を共有させるため、複数の表示装置によりシンボル画像を同時に表示することが要望されている。しかし、図9に示すように複数の表示装置101によってシンボル画像を同時に表示しようとすると、複数の画像信号生成装置102が必要になって、総重量、部品点数、スペース、消費電力、コストが増大し、軽量化が必要な航空機に搭載するのが困難になるという問題がある。本発明は、そのような従来技術の問題を解決することのできる画像信号生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像信号生成装置の特徴は、1つのフィールド画像の表示期間毎に、複数のフィールド画像の形成用画像信号を順次生成すると共に時分割多重化する画像信号生成部と、1つのフィールド画像の表示期間毎に、時分割多重化された複数の画像信号を、その時分割タイミングに対応して互いに異なる出力端子に導くことで互いから分離する信号分離部とを備え、複数の表示装置が互いに異なる前記出力端子に接続される点にある。
本発明によれば、1つのフィールド画像の表示期間毎に、単一の画像信号生成装置により複数のフィールド画像形成用画像信号を順次生成すると共に時分割多重化し、1つのフィールド画像の表示期間毎に、時分割多重化された複数のフィールド画像形成用画像信号を、その時分割タイミングに対応して互いに異なる出力端子に導くことで互いから分離し、1つのフィールド画像の表示期間毎に、それら互いから分離した複数のフィールド画像形成用画像信号に対応する複数のフィールド画像を、信号分離部の各出力端子に接続される互いに異なる複数の表示装置によって表示することができる。これにより、単一の画像信号生成装置により生成される信号に対応する画像を、複数の者が互いに異なる複数の表示装置を介して実質的に同時に視認することができる。よって、航空機において複数の表示装置により画像情報を共有する場合、本発明の画像信号生成装置を搭載することで、航空機の搭載重量を軽減できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の表示装置を介して情報を共有するシステムを構築する場合において、総重量、部品点数、スペース、消費電力、コストを低減し、航空機に搭載するのに適した軽量の画像信号生成装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の画像信号生成装置1を搭載した航空機に装備される救難目標位置指示システムであって、航空機2の搭乗員3に装着される第1〜第4の表示装置4a、4b、4c、4dと、入力装置5と、検出装置6と、演算装置7とを備える。搭乗員3は、航空機2の側面の見張窓8から救難目標を探索する。
【0009】
各表示装置4a、4b、4c、4dは、頭部への装着部を構成する例えばヘルメット11と、ヘルメット11により保持される表示器12と、ヘルメット11に保持されるバイザー兼用のコンバイナ13とを備える頭部装着型とされ、外界風景に画像を重畳させて表示することができる。なお、図1においては1台の表示装置4aのみを詳細に示すが、残りの表示装置4b、4c、4dも同様の構成を有する。図2に示すように、本実施形態の各表示器12は、CRT12aと、アナログX偏向信号とアナログY偏向信号に基づいてCRT12aの画面上にシンボル画像をストロ―ク表示するための駆動回路12bとから構成され、シンボル画像に対応する表示光を出射する。コンバイナ13は、表示器12から出射される表示光を光路変更して搭乗員3の目に導く。これにより、搭乗員3の前方に画像が形成される。コンバイナ13としては、例えば、ハーフミラーやホログラム素子を用いることができる。ハーフミラーを用いる場合は反射により表示光の光路を変更し、ホログラム素子を用いる場合は回折により表示光の光路を変更する。コンバイナ13は前方からの光を透過するので、シンボル画像とコンバイナ13の前方に実際に存在するものの双方を搭乗員3は視認できる。
【0010】
入力装置5は、例えば押し釦スイッチにより構成され、搭乗員3により操作されることで演算装置7に目標ロック信号を出力する。検出装置6は、搭乗員3の視認位置や救難目標位置を演算するのに必要な情報を検出するもので、例えば、航空機2の位置を検出するGPS用受信機21、飛行高度を検出する高度計22、機首の向きを検出する方向センサ23、バンク角を検出する角度センサ24、ヘッドモーショントラッカ25等から構成され、ヘッドモーショントラッカ25は、ヘルメット11に取り付けられるセンサ25aにより機体側に取り付けられるソース25bの信号を検知することで、航空機2に対する搭乗員3の視線の向きに対応した信号を出力する。なお、入力装置5やヘッドモーショントラッカ25は各搭乗員3それぞれに対応して装備される。演算装置7は、画像信号生成装置1、入力装置5、検出装置6に接続され、入力装置5からの目標ロック信号や検出装置6からの信号に応じて搭乗員3の視認位置や救難目標位置に対応する信号を出力する。
【0011】
図2に示すように、画像信号生成装置1は、CPU1aとシンボルジェネレータ1bにより構成される画像信号生成部と、D/A変換器1cと、アナログマルチプレクサ(信号分離部)1dとを有する。CPU1aは、演算装置7による演算結果に応じた命令信号OPを出力する。命令信号OPは、例えば直線や円等から構成されるシンボル画像を、各表示装置4a、4b、4c、4dの画面における演算装置7により求められた搭乗員3の視認位置や救難目標位置に対応する位置にストローク描画するための命令コードに対応する。本実施形態のシンボル画像は、図3Aに示すような表示装置4の表示視野42の中心において表示される照準画像41や、図3Bに示すような救難目標50の位置に対応して表示される目標シンボル画像51とされる。
【0012】
シンボルジェネレータ1bは、命令信号OPに対応する画像をX、Y座標系で表示するためのデジタルX偏向信号Xd1〜Xd4とデジタルY偏向信号Yd1〜Yd4を生成する。D/A変換器1cは、デジタルX偏向信号Xd1〜Xd4をアナログX偏向信号Xa1〜Xa4にデジタルY偏向信号Yd1〜Yd4をアナログY偏向信号Ya1〜Ya4にそれぞれ変換する。図4は、D/A変換器1cから出力されるアナログX偏向信号Xa1〜Xa4とアナログY偏向信号Ya1〜Ya4の電圧値と時間との関係を示し、両偏向信号Xa1〜Xa4、Ya1〜Ya4は、1つのフィールド画像の表示期間(1/60秒)毎に、表示装置4a、4b、4c、4dと同数の複数のフィールド画像を順次形成するために用いられる。すなわち、1つのフィールド画像の表示期間毎に、CPU1aは従来例の4倍の命令信号OPを出力し、これによりシンボルジェネレータ1bは、第1の表示装置4aにおけるフィールド画像の形成用画像信号として第1デジタルX偏向信号Xd1と第1デジタルY偏向信号Yd1を1/240秒間生成し、次いで第2の表示装置4bにおけるフィールド画像の形成用画像信号として第2デジタルX偏向信号Xd2と第2デジタルY偏向信号Yd2を1/240秒間生成し、次いで第3の表示装置4cにおけるフィールド画像の形成用画像信号として第3デジタルX偏向信号Xd3と第3デジタルY偏向信号Yd3を1/240秒間生成し、次いで第4の表示装置4dにおけるフィールド画像の形成用画像信号として第4デジタルX偏向信号Xd4と第4デジタルY偏向信号Yd4を1/240秒間生成し、これら順次生成した第1〜第4の画像信号Xd1〜Xd4、Yd1〜Yd4を時分割多重化して出力する。本実施形態においては第1〜第4の画像信号Xd1〜Xd4、Yd1〜Yd4は互いに全て同一の画像を形成するものとされる。
【0013】
マルチプレクサ1dは、D/A変換器1cとの接続用の入力端子Ix、Iyと、CPU1aとの接続用補助入力端子Iaと、第1〜第4出力端子Ox1、Oy1、Ox2、Oy2、Ox3、Oy3、Ox4、Oy4とを有する。CPU1aが出力する命令信号OPは、補助入力端子Iaからマルチプレクサ1dに入力される2ビットの切替信号OP(0)、OP(1)を含み、図4に示すように、切替信号OP(0)、OP(1)の値の組み合わせは、上記画像信号の時分割タイミングで、すなわち1/240秒毎に順次(L,L)、(L,H)、(H,L)、(H,H)のように変化する。その切替信号OP(0)、OP(1)に応じマルチプレクサ1dは、1つのフィールド画像の表示期間毎に、時分割多重化されてD/A変換された第1〜第4の画像信号Xa1〜Xa4、Ya1〜Ya4を、その時分割タイミングに対応して互いに異なる出力端子Ox1、Oy1、Ox2、Oy2、Ox3、Oy3、Ox4、Oy4に導くことで互いから分離する。図5〜図8は、互いから分離された第1〜第4の画像信号Xa1〜Xa4、Ya1〜Ya4の電圧値と時間との関係を示す。第1〜第4の表示装置4a、4b、4c、4dが互いに異なる出力端子Ox1、Oy1、Ox2、Oy2、Ox3、Oy3、Ox4、Oy4に接続され、第1〜第4の画像信号Xa1〜Xa4、Ya1〜Ya4が対応する表示装置4a、4b、4c、4dの駆動回路12bに伝送される。これにより、1つのフィールド画像の表示期間毎に複数の表示装置4a、4b、4c、4dそれぞれが1つのフィールド画像を表示するように、単一の画像信号生成装置1により各表示装置4a、4b、4c、4dを駆動できる。
【0014】
上記実施形態によれば、1つのフィールド画像の表示期間毎に、単一の画像信号生成装置1により複数のフィールド画像形成用画像信号Xd1〜Xd4、Yd1〜Yd4を順次生成すると共に時分割多重化し、1つのフィールド画像の表示期間毎に、時分割多重化された複数のフィールド画像形成用画像信号Xa1〜Xa4、Ya1〜Ya4を、その時分割タイミングに対応して互いに異なる出力端子Ox1、Oy1、Ox2、Oy2、Ox3、Oy3、Ox4、Oy4に導くことで互いから分離し、1つのフィールド画像の表示期間毎に、それら互いから分離した複数のフィールド画像形成用画像信号Xa1〜Xa4、Ya1〜Ya4に対応する複数のフィールド画像を、各出力端子Ox1、Oy1、Ox2、Oy2、Ox3、Oy3、Ox4、Oy4に接続される互いに異なる複数の表示装置4a、4b、4c、4dによって表示することができる。これにより、単一の画像信号生成装置1により生成される信号に対応する画像を、複数の搭乗者3が互いに異なる複数の表示装置4a、4b、4c、4dを介して実質的に同時に視認して情報を共有できる。
【0015】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、頭部装着型表示装置に代えて外界風景に画像を重畳させて表示するヘッドアッブディスプレイを用いてもよく、また、外界風景と重畳させることなく画像のみを表示する表示器から構成される表示装置を用いてもよい。また、表示装置の数は特に限定されず、1つのフィールド画像の表示期間毎に生成される画像信号の数と時分割数と信号分離部の出力端子の数を表示装置の数に対応させればよい。表示器はデジタル信号により駆動される液晶ディスプレイのようなフラットパネルディスプレイであってもよく、この場合は上記実施形態におけるようなD/A変換器は不要である。時分割多重化される複数の画像信号は、互いに全て異なる画像を表示するものでもよいし、互いに同一の画像と互いに異なる画像の双方を表示するものでもよい。また、本発明の画像信号生成装置を航空機に搭載することなく利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の画像信号生成装置を用いた救難目標位置指示システムの構成説明図
【図2】本発明の実施形態の画像信号生成装置の構成説明図
【図3A】本発明の実施形態の画像信号生成装置に接続される表示装置による表示画像の一例を示す図
【図3B】本発明の実施形態の画像信号生成装置に接続される表示装置による表示画像の他の一例を示す図
【図4】本発明の実施形態の画像信号生成装置により時分割多重化された画像信号と切替信号の電圧値と時間との関係を示す図
【図5】本発明の実施形態の画像信号生成装置から出力される第1の画像信号の電圧値と時間との関係を示す図
【図6】本発明の実施形態の画像信号生成装置から出力される第2の画像信号の電圧値と時間との関係を示す図
【図7】本発明の実施形態の画像信号生成装置から出力される第3の画像信号の電圧値と時間との関係を示す図
【図8】本発明の実施形態の画像信号生成装置から出力される第4の画像信号の電圧値と時間との関係を示す図
【図9】従来例の画像信号生成装置の構成説明図
【図10】従来例の画像信号生成装置から出力される画像信号の電圧値と時間との関係を示す図
【符号の説明】
【0017】
1 画像信号生成装置
1a CPU
1b シンボルジェネレータ
1d アナログマルチプレクサ
4a、4b、4c、4d 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのフィールド画像の表示期間毎に、複数のフィールド画像の形成用画像信号を順次生成すると共に時分割多重化する画像信号生成部と、
1つのフィールド画像の表示期間毎に、時分割多重化された複数の画像信号を、その時分割タイミングに対応して互いに異なる出力端子に導くことで互いから分離する信号分離部とを備え、
複数の表示装置が互いに異なる前記出力端子に接続される画像信号生成装置。
【請求項2】
航空機に搭載される請求項1に記載の画像信号生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−174051(P2006−174051A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363261(P2004−363261)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】