説明

画像処理システム、画像処理方法、及びコンピュータプログラム

【課題】 フレーム画像を複数の領域に分割して複数の画像処理装置で並列に処理するに際し、隣接する領域を扱う画像処理装置が参照する画素の読み出しにかかるメモリ帯域の増大を抑える。
【解決手段】 フレーム画像の垂直方向(上下)で隣接する分割フレーム画像の垂直方向(上下方向)における画像処理の方向を相互に反対の方向にする。さらに、フレーム画像の水平方向(左右)で隣接する分割フレーム画像の水平方向(左右方向)における画像処理の方向を相互に反対の方向にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム、画像処理方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、フレーム画像を複数の領域に分割して、複数の画像処理装置で、分割されたフレーム画像を並列に処理するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
映像の高精細化が進み、HD(High Definition)の解像度を超える4K2Kや8K4Kと呼ばれる映像を処理できるシステムの開発が行われている。例えば、4K2Kの映像の各フレーム画像を4つの領域に分割し、それぞれ異なる画像処理装置に入力して並列に画像処理を行い、その後、これらを再合成して4K2Kの映像を生成することで高解像度の画像を処理する画像処理システムを実現している。
【0003】
ところで、一般的に、画像処理装置の信号処理では、映像信号の空間周波数を加工するフィルタ処理が実行される。フィルタ処理では、注目画素の近傍の画素の情報を用いて信号処理が行われる。したがって、分割されたフレーム画像が異なる画像処理装置で扱われる場合、各画像処理装置は、分割されたフレーム画像の境界付近の画素に対してフィルタ処理を行うため、他の画像処理装置で扱われる領域に含まれる画素を参照する必要がある。各画像処理装置は、自装置が扱う領域に含まれる注目画素に対して順にフィルタ処理を施す中で、分割されたフレーム画像の境界付近の画素を処理するタイミングで、隣接する領域を扱う画像処理装置から、注目画素の近傍の画素の情報を受け取ることが必要となる。
【0004】
特許文献1では、上下に隣接する領域の画像を、当該画像を構成する水平ラインの垂直方向の走査方向を異なる向きにして、フレームメモリから読み出す映像出力装置が提案されている。これによれば、上下に隣接する領域の画像を扱う画像処理装置間で、分割されたフレーム画像の上下の境界付近の画素に対する画像処理のタイミングを合わせることができる。よって、注目画素の近傍の画素が処理対象と異なる領域にある場合にも、注目画素の近傍の画素の取得にかかるオーバーヘッドを抑えることができる。すなわち、上下に隣接する領域の画像を扱う画像処理装置間で画像処理のタイミングが合わない場合、注目画素の近傍の画素を必要とする一方の画像処理装置は、他方の画像処理装置が当該近傍の画素を画像メモリより読み出すまで処理を待たされるのを回避できる。あるいは、隣接する領域を扱う画像処理装置が、注目画素の近傍の画素を必要とするタイミングに合わせて、当該画素を扱う画像処理装置において画像メモリから当該近傍の画素の読み出しを行う場合にメモリ帯域を増大させてしまうことを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−10613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、各画像処理装置は、処理対象の画像を、当該画像を構成する水平ラインの水平方向の走査方向を同じ向きにして読み出す。このため、分割されたフレーム画像の左右の境界付近の画素に対する各画像処理装置での画像処理を同じタイミングで実行することができない。したがって、各画像処理装置は、分割されたフレーム画像の左右の境界付近の画素について、自装置の処理対象の画素の読み出しと、他の画像処理装置が参照する必要のある近傍の画素の読み出しとをそれぞれ個別に行う必要がある。このため、各画像処理装置において、フレームメモリからの画像データの読み出しに必要なメモリ帯域が増大するという課題があった。
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、フレーム画像を複数の領域に分割して複数の画像処理装置で並列に処理するに際し、隣接する領域を扱う画像処理装置が参照する画素の読み出しにかかるメモリ帯域の増大を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理システムは、フレーム画像を複数の領域に分割した複数の分割フレーム画像を、複数の画像処理装置で並列に処理する画像処理システムであって、前記複数の画像処理装置は、前記分割フレーム画像の注目画素の画像データを、当該注目画素から所定の範囲にある近傍の画素の画像データを用いて画像処理する画像処理手段と、他の画像処理装置で処理される分割フレーム画像の画素のうち、少なくとも前記注目画素から所定の範囲にある近傍の画素の画像データを当該他の画像処理装置から入力する入力手段と、前記画像処理手段により画像処理された分割フレーム画像を表示装置に送信する送信手段と、を有し、前記画像処理手段は、前記注目画素の近傍の画素が、前記分割フレーム画像と隣接する他の分割フレーム画像にある場合には、当該画素の画像データを、前記入力手段により入力された画像データの中から取得し、前記フレーム画像の垂直方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の垂直方向の処理順序が相互に反対となり、且つ、前記フレーム画像の水平方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の水平方向の処理順序が相互に反対となるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フレーム画像の垂直・水平方向で隣接する分割フレーム画像の垂直・水平方向の処理順序を、垂直・水平方向で隣接する分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で反対にする。よって、フレーム画像を複数の領域に分割して複数の画像処理装置で並列に処理するに際し、隣接する領域を扱う画像処理装置が参照する画素の読み出しにかかるメモリ帯域の増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像処理システムの主要部の構成の第1の例を示す図である。
【図2】分割フレーム画像のブロックとバンドを概念的に示す図である。
【図3】各画像処理装置が共有する画素を示す図である。
【図4】各画像処理装置における画像データの処理順序を示す図である。
【図5】他の分割フレーム画像との隣接領域にある注目画素とその近傍の画素を示す図である。
【図6】分割フレーム画像の読み出し順序を示す図である。
【図7】画像処理システムの主要部の処理の概要を説明するフローチャートである。
【図8】フレーム画像を分割する方法の他の例を示す図である。
【図9】画像処理システムの主要部の構成の第2の例を示す図である。
【図10】分割フレーム画像のデータの送信順序を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、画像処理システムの主要部の構成の一例を示すブロック図である。また、図7は、画像処理システムの主要部の処理の概要の一例を説明するフローチャートである。本実施形態の画像処理システムは、4K2Kの映像のフレーム画像を4つの領域に分割し、4つの画像処理装置で、分割されたフレーム画像を並列に画像処理し、画像処理されたそれぞれの分割されたフレーム画像を4つの表示装置で再合成して表示するものである。尚、4つの画像処理装置の基本構成は同じであるため、以下、画像処理装置100について詳細に説明し、その他の3つの画像処理装置110、120、130の詳細な説明を省略する。また、特に断らない限りは、以下、「分割前の4K2Kの映像のフレーム画像」を「4K2Kフレーム画像」、「4つの領域に分割し各画像処理装置に入力されるフレーム画像」を「分割フレーム画像」又は単に「フレーム画像」と呼ぶ。また、各画像処理装置は、例えば、CPU、メモリ、HDD、及び各種のインターフェースを備えたコンピュータにより実現することができる。また、画像処理装置100〜130は、物理的に独立した装置であっても、一体で構成された装置であってもよい。画像処理装置100〜130を一体で構成する場合には、例えば、以下に示す機能を有する(単一の)コンピュータで複数の画像処理装置を実現することができる。
【0011】
入力部101は、映像信号を入力する手段であり、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)インターフェース等のインターフェースを持つ。入力部101は、分割して入力される映像信号から分割フレーム画像を構成する画素情報を抽出する(ステップS701)。さらに入力部101は、分割フレーム画像を、所定の数の画素を含むブロック単位で分割し、ブロック単位で画像メモリ106に書き込む(ステップS702)。本実施形態では、入力部101は、256ピクセル×8ピクセルのブロック単位で、分割フレーム画像を分割する。
【0012】
画像処理部102は、1ブロック分の画像データを保持可能なバッファを2面以上有し、画像メモリ106内の分割フレーム画像に対してブロック単位で連続的にメモリアクセスを行う。図2は、入力部101が分割フレーム画像を分割することにより得られるブロックと、各ブロックに対して画像処理部102が画像処理を実施する単位であるバンドの一例を概念的に示す図である。
図2において、分割フレーム画像200は、縦方向に複数のバンド202に分割され、各バンド202は、縦方向に複数のブロック201を有する。尚、図2では、1つのバンド、1つのブロックのみに符号を付している。
【0013】
画像処理部102は、バンド202ごとにバンド202内のブロック201を順に処理する。このため、画像処理部102は、その内部にあるバッファを参照することで、上下に隣接するブロック201の間の境界の画像処理で必要とする近傍画素を取得することができる。
画像処理部102は、入力部101が画像メモリ106に書き込んだ画像データを、バンド202ごとにブロック201の単位で読み出す(ステップS703)。そして、後述するようにして、読み出したブロック201の注目画素の近傍の画素が全て読み出されると、画像処理部102は、フィルタ処理等の画像処理を行う。そして、画像処理部102は、画像処理を施した画像データをブロック201の単位で画像メモリ106に書き込む(ステップS710)。このとき、画像処理部102は、後述する処理順序制御部103からのバンド202の読み出し順序と、バンド202内のブロック201の読み出し順序との指定を、後述する処理順序制御部103から受けて注目画素を特定する(ステップS704)。そして、画像処理部102は、注目画素の情報と、当該注目画素の近傍の画素のうち自装置の処理対象の分割フレーム画像内の画素の情報とを読み出す(ステップS705)。
【0014】
本実施形態では、画像処理部102は、画像処理として8タップのフィルタを用いたフィルタ処理を行うものとする。画像処理部102は、ブロック単位で読み出した画素ごとに、当該画素から8ピクセル以内に位置する近傍の画素を参照する。処理対象である注目画素が、分割フレーム画像の境界付近であった場合(ステップS706でYESの場合)、画像処理部102は、次の処理を行う。すなわち、画像処理部102は、近傍画素共有部104を通して、隣接する分割フレーム画像に含まれる近傍の画素の情報を、当該分割フレーム画像を扱う画像処理装置から受信する(ステップS707)。
【0015】
これと同時に、画像処理部102は、読み出したブロック201に他の画像処理装置が参照する必要のある画素(他の画像処理装置の注目画素の近傍の画素)が含まれる場合(ステップS708でYESの場合)、次の処理を行う。すなわち、画像処理部102は、当該近傍の画素を、隣接する分割フレーム画像を扱う画像処理装置に対して送信する(ステップS709)。
図3は、各画像処理装置が共有する画素の一例を示す図である。各画像処理装置の近傍画素共有部104は、4K2Kフレーム画像300において、各分割フレーム画像の境界から8ピクセル以内の境界領域301(斜線で示す領域)にある画素の情報を互いに共有する(保持する)。
処理順序制御部103は、画像処理装置100が扱う分割フレーム画像の4K2Kフレーム画像300内の位置に応じて、画像処理部102における画像データの処理順序を決定する。前述したように、画像処理部102は、この処理順序に基づいて、注目画素を特定する(ステップS704)。
【0016】
図4は、各画像処理装置における画像データの処理順序の一例を示す図である。
処理順序制御部103は、上下で隣接する分割フレーム画像(分割フレーム画像200a、200c・分割フレーム画像200b、200d)の「フレームの垂直方向(上下方向)の処理順序」が反対になるように画像データの処理順序を決定する。さらに、処理順序制御部103は、左右で隣接する分割フレーム画像(分割フレーム画像200a、200b・分割フレーム画像200c、200d)の「フレームの水平方向(左右方向)の処理順序」が反対になるように画像データの処理順序を決定する。
【0017】
すなわち、図4において、分割フレーム画像200aについては、バンド202の処理方向は+X方向であり(右向きの白抜き矢印の方向を参照)、バンド202内のブロック201の処理方向は+Y方向となる(下向きの白抜き矢印の方向を参照)。分割フレーム画像200bについては、バンド202の処理方向は−X方向であり(左向きの白抜き矢印の方向を参照)、バンド202内のブロック201の処理方向は+Y方向となる(下向きの白抜き矢印の方向を参照)。分割フレーム画像200cについては、バンド202の処理方向は+X方向であり(右向きの白抜き矢印の方向を参照)、バンド202内のブロック201の処理方向は−Y方向となる(上向きの白抜き矢印の方向を参照)。分割フレーム画像200dについては、バンド202の処理方向は−X方向であり(左向きの白抜き矢印の方向を参照)、バンド202内のブロック201の処理方向は−Y方向となる(上向きの白抜き矢印の方向を参照)。
【0018】
近傍画素共有部104は、4K2Kフレーム画像300の中で処理対象の分割フレーム画像200と隣接する他の分割フレーム画像との境界領域301に含まれる画素の情報を、当該他の分割フレーム画像を処理する画像処理装置の近傍画素共有部と共有する。ここで、本実施形態では、画像処理部102におけるフィルタ処理として8タップのフィルタを用いる場合を例に挙げている。
【0019】
図5は、他の分割フレーム画像との隣接領域にある注目画素とその近傍の画素の一例を概念的に示す図である。
注目画素500は、分割フレーム画像200aの画像処理で処理対象とする注目画素である。注目画素500の画像処理に際し、画像処理部102は、注目画素500の近傍の画素501(斜線の領域内の画素)として、注目画素500から8ピクセル以内に位置する画素の参照を必要とする。図5に示す通り、近傍の画素501は、画像処理部102が処理対象としている分割フレーム画像200aの中だけでなく、分割フレーム画像200aに隣接する分割フレーム画像200b〜200dの中にも含まれる。近傍画素共有部104は、通信経路108を介して、分割フレーム画像200aに隣接する分割フレーム画像200b〜200dを処理対象とする各画像処理装置110〜130から近傍の画素501の情報を取得する。そして、近傍画素共有部104は、取得した近傍の画素501の情報を画像処理部102に送信する(ステップS707)。
【0020】
また、近傍画素共有部104は、画像処理部102が処理対象として画像メモリ106から読み出した分割フレーム画像200aの画像データの中から、他の画像処理装置110〜130が参照する必要のある画素の情報(画像データ)を特定する。そして、近傍画素共有部104は、特定した画素の情報(画像データ)を、通信経路108を介して、他の画像処理装置110〜130に送信する(ステップS709)。すなわち、画像処理部102が、画像メモリ106からブロック201aの情報を読み出し、その内部のバッファに格納した時点で、近傍画素共有部104は、ブロック201aに含まれる近傍の画素の情報を、他の画像処理装置110〜130に送信する。
【0021】
同様に、画像処理部102の読み出し対象のブロックがブロック201bであった場合、近傍画素共有部104は、ブロック201bに含まれる近傍の画素を、分割フレーム画像200bを扱う画像処理装置110に対して送信する。また、画像処理部102の読み出し対象がブロック201cであった場合、近傍画素共有部104は、ブロック201cに含まれる近傍の画素を、分割フレーム画像200cを扱う画像処理装置120に対して送信する。
【0022】
画像処理部102は、読み出したブロック201内の全ての画素を注目画素とし、その注目画素に対する画像処理が終了していない場合(ステップS711でNOの場合)、未処理の注目画素に対して前述した処理を行う。そして、読み出したブロック201内の全ての画素(注目画素)の画像処理が終了し、且つ、処理対象の分割フレーム画像の全てのブロック201に対する画像処理が終了した場合(ステップS712でYESの場合)、出力部105は、次の処理を行う。
【0023】
すなわち、出力部105は、画像処理部102によって画像処理が行われた分割フレーム画像を画像メモリ106より読み出し、その各画素の情報を表示装置109に対応する走査方向に並び替えて表示装置109に送信する。
図6は、出力部105における分割フレーム画像の読み出し順序の一例を示す図である。図6において、各画像処理装置の出力部105は、分割フレーム画像200a〜200d内のブロック201を、+X方向に読み出してX方向のブロック201を全て読み出す。その後、出力部105は、読み出し対象のブロックのY方向の位置を+Y方向に1つずらして、分割フレーム画像200a〜200d内のブロック201を、+X方向に読み出してX方向のブロック201を全て読み出す。以上の読み出しをY方向のブロック201の全てについて行うまで繰り返し行う。すなわち、出力部105は、分割フレーム画像200aに対し、ブロック201d、201e、201b、201b、201fの順に読み出し、表示装置109に対応したライン単位に画像データを並び替えて表示装置109に送信する。
【0024】
同期部107は、分割して入力される映像信号に含まれる同期信号を検出して、画像処理装置100の内部の画像処理部102及び出力部105の動作を制御するための同期信号を生成する。また、同期部107は、生成した同期信号を、他の画像処理装置110〜130に対して送信する。各画像処理装置は、各画像処理装置の同期信号に基づいて、画像処理装置間の各部の動作のタイミングを決定する。これにより、各画像処理装置間の各部の動作のタイミングを合わせることができる。
通信経路108は、画像処理装置間でデータを送受信するためのチップ間インターフェースであり、PCI(Peripheral Component Interconnect)バスやPCIe(PCI Express)バス等の手段を用いる。
【0025】
以上のように本実施形態では、4K2Kの映像のフレーム画像を4つの領域に分割し、4つの画像処理装置110〜130で分割フレーム画像200a〜200dを並列に処理する画像処理システムを例に挙げて説明した。本実施形態の画像処理システムでは、フレーム画像の垂直方向(上下)で相互に隣接する分割フレーム画像の垂直方向(上下方向)における画像処理の方向を相互に反対の方向にする。さらに、フレーム画像の水平方向(左右)で相互に隣接する分割フレーム画像の水平方向(左右方向)における画像処理の方向を相互に反対の方向にする。処理順序制御部103は、画像処理の順序がこのような方向となるように、画像処理装置110における分割フレーム画像200aの処理順序を決定する。これによって、各画像処理装置110〜1103は、分割フレーム画像200a〜200dの境界付近の画素に対する画像処理を同じタイミングで行うことができる。このため、処理対象とする画素を含む画像データの読み出しと、他の画像処理装置で必要とする近傍の画素の読み出しとを一度で行うことができる。このため、近傍の画素の読み出しにかかるメモリ帯域を削減することが可能となる。
【0026】
本実施形態では、4K2Kの映像のフレーム画像300を4つの領域に分割して、それぞれの分割フレーム画像200a〜200dを、異なる4個の画像処理装置100〜130で並列に処理する例を示した。しかしながら、フレーム画像の分割例はこれに限られるものではない。図8は、フレーム画像を分割する方法の他の例を示す図である。例えば、図8に示すように、8K4Kの映像のフレーム画像を16の領域に分割して、それぞれの分割フレーム画像を、異なる16個の画像処理装置で並列に処理することも考えられる。この場合も、図8の白抜きの矢印に示すように、上下、左右で隣接する分割フレーム画像で、画像処理の方向が、それぞれ垂直方向、水平方向で反対の方向になるように各画像処理装置の処理順序を決定することで、前述したのと同様の効果を得ることができる。
【0027】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、分割フレーム画像が入力部101に入力され、入力部101で分割フレーム画像をブロック単位で分割し、処理順序制御部103で各ブロックの処理順序を決定する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、各画像処理装置の前段に、分割フレーム画像をブロック単位で分割する分割装置を設け、この分割装置で、分割フレーム画像をブロック単位で分割し、各画像処理装置での処理順序と同じ順序で各画像処理装置に送信する。このように本実施形態と第1の実施形態とは、各画像処理装置の前段に分割装置を設けたことによる構成及び処理が主として異なる。よって、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図8に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0028】
図9は、画像処理システムの主要部の構成の一例を示すブロック図である。図9に示す画像処理システムは、4K2Kの映像のフレーム画像を4つの領域に分割し、4つの画像処理装置で、分割されたフレーム画像を並列に画像処理し、画像処理されたそれぞれの分割されたフレーム画像を4つの表示装置で再合成して表示するものである。尚、4つの画像処理装置1100〜1130の基本構成は同じであるため、画像処理装置1100以外については、内部のブロックの図示を省略する。
【0029】
図10は、分割装置1200における分割フレーム画像のデータの送信順序の一例を概念的に示す図である。分割装置1200は、例えば、CPU、メモリ、HDD、及び各種のインターフェースを備えたコンピュータにより実現することができる。
図10において、分割装置1200は、分割フレーム画像200a、200b、200c、200dの順に巡回して分割フレーム画像を構成するブロック201を、各画像処理装置1100〜1130に送信する。分割装置1200は、上下で隣接する分割フレーム画像(分割フレーム画像200a、200c・分割フレーム画像200b、200d)の「フレームの垂直方向(上下方向)の処理順序」が反対になるように画像データの送信順序を決定する。さらに、分割装置1200は、左右で隣接する分割フレーム画像(分割フレーム画像200a、200b・分割フレーム画像200c、200d)の「フレームの水平方向(左右方向)の処理順序」が反対になるように画像データの送信順序を決定する。
【0030】
すなわち、分割装置1200は、ブロック201d、201g、201h、201i、201j、201k・・・の順で各画像処理装置1100〜1130に、各ブロック201の画像データを送信する。これにより、各画像処理装置1100〜1130は、入力部101で画像データの並べ替えや画像メモリ106への書き込みを行う必要がなくなり、入力されるブロック単位の画像データをそのまま画像処理部102で処理することができる。ここで、分割装置1200が各画像処理装置1100〜1130に送信する画像データの単位や、分割フレーム画像200a〜200dを巡回する順序は、前述した順序に限るものではない。
【0031】
尚、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0032】
(その他の実施例)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、まず、以上の実施形態の機能を実現するソフトウェア(コンピュータプログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給する。そして、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)が当該コンピュータプログラムを読み出して実行する。
【符号の説明】
【0033】
102 画像処理部、103 処理順序制御部、104 近傍画素共有部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム画像を複数の領域に分割した複数の分割フレーム画像を、複数の画像処理装置で並列に処理する画像処理システムであって、
前記複数の画像処理装置は、
前記分割フレーム画像の注目画素の画像データを、当該注目画素から所定の範囲にある近傍の画素の画像データを用いて画像処理する画像処理手段と、
他の画像処理装置で処理される分割フレーム画像の画素のうち、少なくとも前記注目画素から所定の範囲にある近傍の画素の画像データを当該他の画像処理装置から入力する入力手段と、
前記画像処理手段により画像処理された分割フレーム画像を表示装置に送信する送信手段と、を有し、
前記画像処理手段は、前記注目画素の近傍の画素が、前記分割フレーム画像と隣接する他の分割フレーム画像にある場合には、当該画素の画像データを、前記入力手段により入力された画像データの中から取得し、
前記フレーム画像の垂直方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の垂直方向の処理順序が相互に反対となり、且つ、前記フレーム画像の水平方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の水平方向の処理順序が相互に反対となるようにしたことを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
前記分割フレーム画像を受信すると、当該分割フレーム画像をメモリに書き込む書き込み手段と、
前記フレーム画像の垂直方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の垂直方向の処理順序が相互に反対となり、且つ、前記フレーム画像の水平方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の水平方向の処理順序が相互に反対となるように、前記メモリに書き込まれた前記分割フレーム画像の処理順序を決定する決定手段と、を有し、
前記画像処理手段は、前記決定手段により決定された順序で、前記分割フレーム画像を処理することを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記書き込み手段は、前記分割フレーム画像を所定の単位で分割してメモリに書き込み、
前記決定手段は、前記所定の単位の分割フレーム画像の画像処理の順序を決定し、
前記画像処理手段は、前記決定手段により決定された順序で、前記分割フレーム画像を前記所定の単位で処理することを特徴とする請求項2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記フレーム画像を受信すると、当該フレーム画像を分割して複数の分割フレーム画像とし、前記分割フレーム画像を、当該分割フレーム画像を処理する前記画像処理装置に送信する分割装置を有し、
前記分割装置は、前記フレーム画像の垂直方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の垂直方向の処理順序が相互に反対となり、且つ、前記フレーム画像の水平方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の水平方向の処理順序が相互に反対となるように、前記分割フレーム画像のデータの送信順序を決定し、
前記画像処理手段は、前記分割装置により送信された順序で、前記分割フレーム画像を処理することを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記分割装置は、前記フレーム画像を所定の単位で分割し、前記所定の単位で、前記分割フレーム画像のデータの送信順序を決定し、
前記画像処理手段は、前記分割装置により送信さされた順序で、前記分割フレーム画像を前記所定の単位で処理することを特徴とする請求項4に記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記複数の画像処理装置は、前記画像処理手段の動作の同期と前記送信手段の動作の同期とを当該複数の画像処理装置でとるための同期信号を生成する同期手段をさらに有し、
前記同期信号に基づいて、前記画像処理手段と前記送信手段の動作のタイミングを決定することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の画像処理システム。
【請求項7】
前記複数の画像処理装置は、前記複数の分割フレーム画像の境界から所定の範囲にある隣接領域の画像データを共有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の画像処理システム。
【請求項8】
フレーム画像を複数の領域に分割した複数の分割フレーム画像を、複数の画像処理装置で並列に処理する画像処理方法であって、
前記分割フレーム画像の注目画素の画像データを、当該注目画素から所定の範囲にある近傍の画素の画像データを用いて画像処理する画像処理工程と、
他の画像処理装置で処理される分割フレーム画像の画素のうち、少なくとも前記注目画素から所定の範囲にある近傍の画素の画像データを当該他の画像処理装置から入力する入力工程と、
前記画像処理工程により画像処理された分割フレーム画像を表示装置に送信する送信工程と、を有し、
前記画像処理工程は、前記注目画素の近傍の画素が、前記分割フレーム画像と隣接する他の分割フレーム画像にある場合には、当該画素の画像データを、前記入力工程により入力された画像データの中から取得し、
前記フレーム画像の垂直方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の垂直方向の処理順序が相互に反対となり、且つ、前記フレーム画像の水平方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の水平方向の処理順序が相互に反対となるようにしたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
前記分割フレーム画像を受信すると、当該分割フレーム画像をメモリに書き込む書き込み工程と、
前記フレーム画像の垂直方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の垂直方向の処理順序が相互に反対となり、且つ、前記フレーム画像の水平方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の水平方向の処理順序が相互に反対となるように、前記メモリに書き込まれた前記分割フレーム画像の処理順序を決定する決定工程と、を有し、
前記画像処理工程は、前記決定工程により決定された順序で、前記分割フレーム画像を処理することを特徴とする請求項8に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記書き込み工程は、前記分割フレーム画像を所定の単位で分割してメモリに書き込み、
前記決定工程は、前記所定の単位の分割フレーム画像の画像処理の順序を決定し、
前記画像処理工程は、前記決定工程により決定された順序で、前記分割フレーム画像を前記所定の単位で処理することを特徴とする請求項9に記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記フレーム画像を受信すると、当該フレーム画像を分割して複数の分割フレーム画像とし、前記分割フレーム画像を、当該分割フレーム画像を処理する前記画像処理装置に送信する分割工程を有し、
前記分割工程は、前記フレーム画像の垂直方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の垂直方向の処理順序が相互に反対となり、且つ、前記フレーム画像の水平方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の水平方向の処理順序が相互に反対となるように、前記分割フレーム画像のデータの送信順序を決定し、
前記画像処理工程は、前記分割工程により送信された順序で、前記分割フレーム画像を処理することを特徴とする請求項8に記載の画像処理方法。
【請求項12】
前記分割工程は、前記フレーム画像を所定の単位で分割し、前記所定の単位で、前記分割フレーム画像のデータの送信順序を決定し、
前記画像処理工程は、前記分割工程により送信さされた順序で、前記分割フレーム画像を前記所定の単位で処理することを特徴とする請求項11に記載の画像処理方法。
【請求項13】
前記画像処理工程の動作の同期と前記送信工程の動作の同期とを前記複数の画像処理装置でとるための同期信号を生成する同期工程をさらに有し、
前記同期信号に基づいて、前記画像処理工程と前記送信工程の動作のタイミングを決定することを特徴とする請求項8〜12の何れか1項に記載の画像処理方法。
【請求項14】
前記複数の画像処理装置は、前記複数の分割フレーム画像の境界から所定の範囲にある隣接領域の画像データを共有することを特徴とする請求項8〜13の何れか1項に記載の画像処理方法。
【請求項15】
フレーム画像を複数の領域に分割した複数の分割フレーム画像を、複数の画像処理装置で並列に処理することをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記分割フレーム画像の注目画素の画像データを、当該注目画素から所定の範囲にある近傍の画素の画像データを用いて画像処理する画像処理工程と、
他の画像処理装置で処理される分割フレーム画像の画素のうち、少なくとも前記注目画素から所定の範囲にある近傍の画素の画像データを当該他の画像処理装置から入力する入力工程と、
前記画像処理工程により画像処理された分割フレーム画像を表示装置に送信する送信工程と、コンピュータに実行させ、
前記画像処理工程は、前記注目画素の近傍の画素が、前記分割フレーム画像と隣接する他の分割フレーム画像にある場合には、当該画素の画像データを、前記入力工程により入力された画像データの中から取得し、
前記フレーム画像の垂直方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の垂直方向の処理順序が相互に反対となり、且つ、前記フレーム画像の水平方向で隣接する前記分割フレーム画像を画像処理する2つの画像処理装置で、前記分割フレーム画像の水平方向の処理順序が相互に反対となるようにしたことを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−25618(P2013−25618A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160881(P2011−160881)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】