説明

画像処理システム,画像処理装置,携帯型記憶手段,画像処理装置の制御プログラム

【課題】 事象記録機能を達成するためのコストを低減しつつ,同時にログ情報に関するセキュリティの向上を計ることの出来る画像処理システムなどを提供すること。
【解決手段】 画像処理装置に固有に設けられ,事象の種類とそれに対応する前記識別記号とを組み合わせて記憶する内蔵型記憶手段を備えてなる画像処理装置と,上記画像処理装置に対して取り外し自在であって,画像処理装置に発生した事象の種類に対応する識別記号と事象の発生時刻とを組み合わせて記憶する携帯型記憶手段とを備えてなる画像処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像形成動作などの画像処理動作における任意の事象を解析することが可能な画像処理装置,画像処理装置を含む画像処理システム,携帯型記憶手段及びこのような画像処理装置に適用される制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に,制御プログラム等のソフトウェアによって制御されて動作する機械装置の分野では,装置の開発途中や異常発生時においては,どのようなタイミングでどのような事象が起きるのかを検証して,問題点の解析を行う必要がある。
そのため,例えば公知の特許文献1では,所定のUSBメモリが,プリントサーバに装着されたときにプリントサーバに読み取られるファイルとしてログ情報指定ファイルを記憶する。このログ情報指定ファイルには,プリントサーバが取得可能なログ情報のうち取得したいログ情報を指定するための指定フラグが記憶されている。したがって,USBメモリをプリントサーバに装着するだけで,上記ログ情報指定ファイルにて指定されたログ情報がプリントサーバによりログ情報記憶領域に書き込まれるように構成されている。その結果,プリントサーバの設定を変更することなく,取得したいログ情報のみを容易に取得することができる。
また公知の特許文献2の場合,リムーバブル記憶媒体の記憶領域が,ヘッダと複数のログ情報書込領域とに分割して用いられる。各ログ情報書込領域は,それぞれ同一のモデル名のプリンタについてのログ情報を記録する領域として用いられる。一方,ヘッダは,複数の見出し情報格納領域に分割されており,各領域には,ある1つのモデル名と,このモデル名の装置についてのログ情報の記録先であるログ情報書込領域の先頭アドレス(格納開始アドレス)とが記録される。このようにモデル名とログ情報との関連付けを行っているため,どのログ情報がどのモデル名のプリンタについてのものであるかを把握することができる点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−310827号公報
【特許文献2】特開2005−59336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで,例えば画像形成装置などの画像処理装置においては,上記のような動作解析や使用状況の把握などを目的としてプログラムの動作や発生するイベント,状態の遷移,外部からの入力情報をログに記録する場合がある。このような場合,ログ情報として,事象(イベント)の内容と,その事象が発生した時間などのタイミングを特定できる情報を記録する必要がある。
上記のように画像処理装置の場合,複雑なログ情報を多数保持するためには,多くのメモリを搭載することが必要となるが,これは装置のコストを上昇させる原因となる。
このため,ログ情報を保存する記憶手段(メモリ,ストレージなど)として取り外し可能な携帯型記憶手段を装着してこれに上記ログ情報を記憶することで,既存の携帯型記憶手段を除く画像処理装置のコストを低減し,ログ情報の収集が不要となった後にはこの記憶手段を取り外すことで,不要なコストの上昇を抑えることができる。
しかしながら,ログ情報などは,画像処理装置の所有者にとって重要な秘密情報(セキュリティ情報)であるので,上記のように取り外し可能な記憶手段に画像処理装置のログ情報を保存することは,上記記憶手段の管理を誤るとセキュリティの観点から極めて大きい問題がある。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって,画像処理装置の外部からの情報の受信及び画像処理装置の状態の変化を含む事象を記録する事象記録機能と,事象の内容を解析する事象解析機能を備えた画像処理装置において,上記事象記録機能を達成するためのコストを低減しつつ,同時にログ情報に関するセキュリティの向上を計ることの出来る画像処理システムなどの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は画像処理装置とそれに取り外し自在に取り付けられる携帯型記憶手段との組み合わせからなるシステムとして捉えたとき,
画像処理装置の外部からの情報の受信及び当該画像処理装置の状態の変化を含む事象を記録する事象記録機能と,事象の内容を解析する事象解析機能を備えた画像処理装置であって,該画像処理装置に固有に設けられ,事象の種類とそれに対応する識別記号とを組み合わせて記憶する内蔵型記憶手段を備えてなる画像処理装置と,
前記画像処理装置に対して取り外し自在であって,該画像処理装置に発生した事象の種類に対応する識別記号と事象の発生時刻とを組み合わせて記憶する携帯型記憶手段と,を備えてなる画像処理システムとして把握される。
具体的に言えば,前記画像処理装置は,事象が生じるたびに,事象を解析し,発生した事象に対応した前記識別記号を発生させ,前記識別記号とこれに対応する事象の内容とを組み合わせて前記内蔵型記憶手段に書き込む事象記憶手段を備えてなる画像処理システムである。
また,前記画像処理装置は,事象が生じるたびに,事象を解析し,前記内蔵型記憶手段を参照して,発生した事象の前記識別記号を取得し,その識別記号と事象が発生した時間とを順次前記携帯型記憶手段に記憶する事象履歴記憶手段を備えてなる画像処理システムである。
前記内蔵型記憶手段及び/あるいは前記携帯型記憶手段は,不揮発性メモリなどの不揮発性記憶手段として構成することも可能である。
また,この発明は,上記システムの構成要素である画像処理装置として捉えた場合,
画像処理装置の外部からの情報の受信及び当該画像処理装置の状態の変化を含む事象を記録する事象記録機能と,事象の内容を解析する事象解析機能を備えた画像処理装置であって,該画像処理装置に固有に設けられ,事象の種類とそれに対応する前記識別記号とを組み合わせて記憶する内蔵型記憶手段を備えてなる画像処理装置において,
発生した事象の種類に対応する識別記号を前記内蔵型記憶手段を参照することで取得すると共に,取得した識別記号とその事象の発生時刻とを組み合わせて,当該画像処理装置に対して取り外し自在に装着される携帯型記憶手段に記憶する手段を備えてなることを特徴とする画像処理装置として把握される。
さらに,上記システムの構成要素である携帯型記憶手段としては,
画像処理装置の外部からの情報の受信及び当該画像処理装置の状態の変化を含む事象を記録する事象記録機能と,事象の内容を解析する事象解析機能を備えた画像処理装置に対して取り外し自在な携帯型記憶手段であって,
前記画像処理装置に発生した事象の種類に対応する識別記号と事象の発生時刻とを組み合わせて記憶する携帯型記憶手段として把握することが出来る。
さらにまた,上記画像処理システムを実行するために必要な画像処理装置の制御プログラムとして捉えたとき,
画像処理装置の外部からの情報の受信及び当該画像処理装置の状態の変化を含む事象を記録する事象記録機能と,事象の内容を解析する事象解析機能を備え,該画像処理装置に固有に設けられ,事象の種類とそれに対応する前記識別記号とを組み合わせて記憶する内蔵型記憶手段を備えてなる画像処理装置の制御プログラムであって,
前記画像処理装置に事象が生じた時に,発生した事象の種類に対応する前記識別記号を前記内蔵型記憶手段を参照して取得する手順と,取得した前記識別記号とその事象の発生時刻とを組み合わせて前記画像処理装置に対して取り外し自在の携帯型記憶手段に記憶する手順を備えてなる画像処理装置の制御プログラムが把握されうる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると, 画像処理装置の外部からの情報の受信及び当該画像処理装置の状態の変化を含む事象を記録する事象記録機能と,事象の内容を解析する事象解析機能を備えた画像処理装置であって,該画像処理装置に固有に設けられ,事象の種類とそれに対応する識別記号とを組み合わせて記憶する内蔵型記憶手段を備えてなる画像処理装置と,
前記画像処理装置に対して取り外し自在であって,該画像処理装置に発生した事象の種類に対応する識別記号と事象の発生時刻とを組み合わせて記憶する携帯型記憶手段と,を備えてなる画像処理システムが提供される。
従ってこのシステムでは,上記膨大な回数の事象について,単にその識別記号と発生時間のデータのみが前記携帯型記憶手段に記憶されるだけで十分な履歴(ログデータ)を残すことが出来,携帯型記憶手段について大きい容量を必要としないので,低コストで装置の事象(ログ)解析に十分なデータを提供することが出来る。
また,事象の内容に関するデータは,1個当りの容量は大きいが,この画像処理システムでは,内蔵型記憶手段に1個の事象に対して1個の内容説明を記憶するだけで,事象の発生の都度,事象内容を毎回記憶する必要が無く,内蔵型記憶手段についても容量の小さいものを採用することが出来,コストに低い装置を提供することが出来る。
そして,事象解析が必要でなくなれば,上記携帯型記憶手段を画像処理装置から取り外した別の用途に用いることが出来るので,上記携帯型記憶手段を用いることが実質的に画像処理装置のコストを上昇させない。
さらに,事象の解析に用いられるデータは,きわめて高度の秘密事項を含むものであるが,従来のように携帯型記憶手段に事象の内容とその発生時間が記憶されていれば,形態型記憶手段が画像処理装置から取り外された後には,一挙にセキュリティが低下する可能性がある。
その点,この発明にかかる画像処理システムでは,携帯型記憶手段に事象の内容が記憶されず,事象の識別記号とその発生時間が記憶されているのみであり,その結果,事象の識別記号とその発生時間だけでは事象の解析ができないために,取り外された携帯型記憶手段についてセキュリティの問題が生じる可能性がなくなり,きわめて安全である。
このようにこの発明においては,上記事象記録機能を達成するためのコストを低減しつつ,同時に事象の解析データ(ログ情報)に関するセキュリティの向上を計ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略を示すブロック図。
【図2】本発明に係る画像形成装置のプリント動作において発生する事象の種類,順番と各事象に付される識別記号のリストを示す図。
【図3】本発明に係る画像形成装置の複写動作において発生する事象の種類,順番と各事象に付される識別記号のリストを示す図。
【図4】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体的構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下添付図面を参照しながら,本発明の一実施形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0009】
まず,図4に示す断面図および図1に示す制御ブロック図を用いて,本発明の実施形態に係る複合機Xの全体構成について説明する。
複合機Xは,ブラック(BK),マゼンダ(M),イエロー(Y),シアン(C),の4色のトナーを用いるタンデム方式の画像形成装置の一例であるプリンタである。
複合機Xは,トナー像を形成し,記録紙に画像形成を行う画像形成部α1,その記録紙を前記画像形成部α1に供給する給紙部α2,及び画像形成の行われた記録紙の排出がなされる排紙部α3を有する。
パーソナルコンピュータ等の外部装置から不図示の通信部により受信された画像情報(印刷ジョブ)は,後述する印刷エンジン部2によりブラック(BK),マゼンダ(M),イエロー(Y),シアン(C),の4色各々に対する画素ごとの濃淡値情報である画素階調に変換される。
【0010】
前記画像形成部α1は,上記4色各々の像を担持する4つの感光体(ブラック用1BK,マゼンダ用1M,イエロー用1Y,シアン用1C),その感光体各々の表面を一様に帯電させる帯電装置,その帯電装置により予め帯電済みの前記感光体各々の表面を図外の画像処理部により決定される前記画素階調に対応する露光量の光を画素ごとに照射する(露光する)ことにより前記感光体1に静電潜像を書き込む図外の露光源,その静電潜像にトナーを供給することによりトナー像として現像する現像装置(5BK,5M,5Y,5C),前記感光体各々の表面に形成されたトナー像が順次転写され,そのトナー像を記録紙に転写する中間転写ベルト7,記録紙を搬送する搬送ローラ8,記録紙上に転写されたトナー像を加熱定着させる定着装置9,トナー像を記録紙に転写後の前記感光体表面の除電を行う図外の除電装置等を備えて概略構成される。
【0011】
前記感光体は,例えば,高硬度で性状が安定しているため耐久性に優れる一方,感度ムラに加えて帯電ムラが比較的顕著に表れやすいa−Si感光体等である。
前記帯電装置は,前記感光体1の表面をその軸方向に沿って一様に帯電させるものであるが,前記感光体に帯電ムラがある場合,前記帯電装置による帯電後(露光前)の電位(初期電位)には分布が生じる。
前記露光源は,前記感光体(1BK,1M,1Y,1C)の軸方向(主走査方向)に1画素ごとに複数のLEDが配列されたLEDアレイにより構成されたものの例を示している。この他,前記露光源は,レーザ光を前記感光体1の軸方向に走査するレーザスキャン装置等によって構成されたものであってもよい。
前記現像装置(5BK,5M,5Y,5C)は,前記感光体にトナーを供給する現像ローラを備え,その現像ローラに印加された電位(現像バイアス電位)と前記感光体1表面の電位との電位ギャップに応じて,前記現像ローラ上のトナーが前記感光体の面上に引き寄せられ,前記静電潜像がトナー像として顕像化される。
前記給紙部α2は,給紙カセット20,給紙ローラ26等を有して概略構成される。前記給紙カセット20に予め収容された記録紙は,前記給紙ローラ26が回転駆動することにより前記画像形成部α1に搬送される。
前記給紙部α2から送出された記録紙は,前記搬送ローラ8により搬送されつつ,前記中間転写ベルト7からトナー像が転写される。そして,トナー像が転写された記録紙は,前記定着装置9に搬送され,例えば加熱ローラ等により記録紙に加熱定着された後,前記排紙部α3に搬送されて排出される。
【0012】
前記した複合機Xの制御系の構成は,図1に示すように,大別して,制御部1,印刷エンジン部2,操作表示部3,スキャナ部4などに分類される。また,複合機Xは外部端末(以下,PC)5と接続,通信している。
複合機Xは,操作表示部3からの操作入力,或いはPC5からの入力情報に従って,制御部1が印刷エンジン部2を制御することにより,スキャナ部4により読み取られた画像情報,若しくはPC5より送信された画像情報を用紙に印刷することができる。
【0013】
制御部1は,図1に示されるように,CPU11(制御手段の一例)及びROM12,RAM13(一時記憶手段の一例),ハードディスク(記憶手段の一例,以下HDと略す)14等の周辺装置,書き込み自在の内蔵型記憶部6(本発明における内蔵型記憶手段の一例),メディア装着ポート7,タイマT,更にはASIC15等の制御回路を備える。
制御部1は,CPU11がRAM13に格納される参照データに基づいて,ROM12やHD14に予め記憶された制御プログラムを実行すると共にASIC15と連動することにより,画像形成動作を含めた,本発明の実施形態にかかる複合機Xの統括的な制御を行うものである。
なお,図1ではHD14は1つとしているが,複数のハードディスクで,入力された情報と,オペレーションシステムやアプリケーションといったプログラムを別々に記憶するように構成してもよい。
【0014】
前記制御部1には,さらに内蔵型記憶部16及び接続部17が接続されている。内蔵型記憶部16は,前記HD14と同様,複合機Xの固有の部材として設計されており,容易には取り外すことの出来ない記憶部である。内蔵型記憶部16は,画像処理装置の一例である該複合機Xに固有に設けられ,事象の種類とそれに対応する前記識別記号とを組み合わせて記憶する例えば,不揮発性メモリなどによって構成されているが,場合によっては,前記RAM13によって構成することも可能である。詳細は,追って説明するが,本発明における内蔵型記憶手段がこれに相当し,後記する事象の内容とそれに対応して付加される識別記号を関連付けして記憶する部材である。
接続部17は,例えばUSBポートやカードポートなどであり,SDカード18a,USBメモリ18b,そのほかのカード型記憶部18cなどの携帯型記憶部18を取り外し自在に接続する接続ポートである。
これらの携帯型記憶部18については追って詳しく説明するが,上記事象の発生時間(タイミング)とその事象の識別記号とを関連付けて記憶するもので,本発明における携帯型記憶手段の一例である。この携帯型記憶部18についても,不揮発性メモリによって構成してもよい。
【0015】
印刷エンジン部2は,不図示の感光体,帯電装置,露光装置,現像装置,転写装置,定着装置,給紙・搬送装置等の画像を形成するための各機器を備え,これら各機器は制御部1と通信している。
印刷エンジン部2は,これら各機器が操作表示部3で操作入力される画像形成要求,或いは通信部5aによって通信可能のPC5から送信される画像形成要求に従ってCPU11により制御されることにより,スキャナ部4で読み取られた画像情報或いは,PC5から送信された画像情報を用紙に印刷する。
【0016】
本実施形態に係る複合機Xでは,印刷エンジン部2により実際に用紙に画像情報を印刷する通常画像形成モードと,印刷エンジン部2を模擬的に動作させて制御プログラムの検証,解析や,複合機Xに起こりうる事象の検証を行うためのデバッグモードとに切り替えることが可能になっている。そして,そのような制御プログラムがROM12に記憶されている。なお,通常画像形成モードと,デバッグモードとの切り替えは,例えば操作表示部3或いは不図示の切替スイッチ等の切替手段によって行われる。
【0017】
〔通常画像形成モードと事象〕
通常の画像形成モードの一例として,複合機Xが外部のPC5から受信したプリントデータに基づいて印刷を行うといった印刷動作や,前記スキャナ部4から読み込んだ画像を印刷する複写動作,あるいは,ファクシミリ送受信動作,スキャナ部4から読み込んだ画像を一時記憶するスキャン動作などがある。
例えば上記のような印刷動作は,詳細に見ると複数の事象(イベント)から成り立っている。図2に識別記号1,2,3,…に対応付けして記載した「プリンタデータの受信開始」,「カセット給紙ローラON」,「カセット給紙センサON」…などは,印刷動作を行うためにCPU11が受信確認する現象であり,ここでは,これらを画像処理装置の事象と呼ぶ。従って,この発明における「画像処理装置の事象」とは,少なくとも,画像処理装置の外部からの情報の受信及び画像処理装置各部の状態の変化を含む現象であって,この現象の発生が前記CPU11によって認識され,これらの現象が生じるたびにCPU11がその内容を解析することが,前記CPU11の制御プログラムに記載されている現象をいうこととする。もちろん,CPU11は,上記のような現象の内容をいちいち解析しないような現象も受け付けるが,本発明においては,内容解析を行わない現象については問題としないので,これらは単なる現象として,事象としては扱わない。
【0018】
そして,この発明では,下記のように,CPUであらわされる制御部は,事象が発生したことを認識するとその都度,その事象がどのような内容でいつ生じたかといったことを解析する機能(事象解析機能)と,どのような事象が発生したかを記録する機能(事象記録機能)を備えている。
【0019】
具体的には,複合機Xは,追って詳しく説明するように,事象が生じるたびに,事象を解析し,発生した事象に対応した識別記号を発生させ,上記識別記号とこれに対応する事象の内容とを組み合わせて前記内蔵型記憶手段に書き込む事象記憶手段を備えている。
また,この複合機Xは,事象が生じるたびに,事象を解析し,前記内蔵型記憶手段を参照して,発生した事象の識別記号を取得し,その識別記号と事象が発生した時間とを順次前記携帯型記憶手段に記憶する事象履歴記憶手段を備えている。
【0020】
次に,一例として上記のような印刷動作について,どのような事象がどのような順序で発生し,制御部であるCPUによって認識され,さらに記憶されるかを制御する画像処理装置の制御プログラムの内容について図2を参照して説明する。
以下のような印刷動作は,複合機Xがプリンタとして動作する場合のものであり,最初にCPU11が外部のPC5からプリンタデータを受信した時から開始される。即ち,CPU11は,受信したデータを解析し,それが外部のPC5からのプリンタデータであると認識すると,その事象に順次識別記号を割り当てると共に,その事象を認識した時間を前記タイマTを参照して検出する。即ち,CPU11は,プリンタデータの受信開始という内容の事象とその事象に割り当てられた識別記号(図2では「1」)を前記内蔵型記憶部16に図2に示すように対応付けして記憶する。それと共に,CPU11は,上記事象の識別記号「1」とその発生時間(タイミング)とを対応付けて前記携帯型記憶部18に記憶する。
以下CPU11は,次に記載するような動作を次々に実行すると共に,事象1と同様に,事象の内容とその事象に割り当てた識別記号(図2では「2」以下)を,前記内蔵型記憶部16に図2に示すように対応付けして記憶すると共に,各事象の識別記号とその発生時間(タイミング)とを対応付けて前記携帯型記憶部18に次々と記憶する。
【0021】
図3は,携帯型記憶部18に記憶された事象の発生時間(タイミング)とその事象の識別記号のリストである。
以下,識別記号Nの事象を事象Nと記すことにする。
前記のように事象1において,プリンタデータの受信が開始されると,次にCPU11は,給紙カセットから用紙を送り出す給紙ローラの駆動源をONする。そして給紙ローラの駆動源がONになったことを検出する(事象2)。
給紙ローラがONされると,CPU11は,給紙カセット近傍に設けられた送り出される用紙を検出する給紙センサ(不図示)からの信号を検知し,これがONになったかどうかを判断し,ONであれば事象3として記憶する(事象3)。
給紙センサが用紙の通過を検知すると,CPU11は,送られた用紙先端がレジストローラ(不図示)に到着したかどうかを検知するレジストセンサからの信号を検知し,これがONになったかどうかを判断する(事象4)。
レジストセンサONの事象4が記憶されると,CPU11は,続いて前記給紙ローラの回転を停止(OFF)させる。給紙ローラの回転停止の信号を受信すると,CPU11はそれを事象5として記憶する(事象5)。
さらに,CPU11は,事象1で開始したプリンタデータの受信が完了したか否かを判断し,完了したと判断した場合には,事象6として記憶する。
続いてCPU11は,レジストローラの回転を開始する信号を送り,レジストローラの回転が開始された信号を受信すると,それを事象7として記憶する。
さらに,CPU11は,前記事象3で回転開始が判断された給紙センサがOFF(つまり用紙が通過した)となったことを給紙センサからの信号で確認する(事象8)。
その後,用紙への転写,定着などの事象(ここでは無視する)を経て,用紙が排出部に到着する。これによりCPU11は,排出部に設けられた排出センサがONになったことを示す信号を受信すると,排出センサONの事象を記憶する(事象9)。
また,この時点で,用紙はレジストセンサの部分を通過して,レジストセンサがOFFになるので,CPU11は,レジストセンサOFFの事象を記憶する(事象10)。
レジストセンサがOFFになるとCPU11は,レジストローラの回転停止信号をレジストローラの駆動部に送る。これによってレジストローラが停止(OFF)したという信号を受信し,制御部は,事象11として記憶する。
こうして画像形成が完了すると,用紙が排出部に排出され,排出センサが用紙を検出しなくなる(OFF)ので,排出センサOFFの事象(事象2)を確認して,CPU11は,事象12として記憶する。
以上で,PC5から送られたプリンタデータの印刷動作が終了する。
【0022】
この間,前記したように,順次発生し受信した事象について,CPU11は,その内容とこれに対応付けられた識別記号を内蔵型記憶部16に記憶すると共に,事象の識別番号と事象の発生時間を携帯型記憶部18に記憶する。図3には,時間0から始まった事象1の「プリンタデータの受信開始」から,時間5200における事象12の「排出センサOFF」までが事象1〜12として記載されている。
【0023】
このようにCPU11は,新しい事象が発生するたびに,その事象に識別記号を与えて,事象の内容とその識別記号を対応付けして内蔵型記憶部16に記憶すると共に,識別記号と発生タイミングを図2に示すように携帯型記憶部18に記憶するが,上記のような内蔵型記憶部16及び携帯型記憶部18は,RAMやSDメモリのような一時的な記憶手段でも,あるいはEPROMのような,書き込み自在の不揮発メモリでもよい。
また,RAMやSDメモリのような一時的な記憶手段であれば,画像処理装置の電源をOFFにした時に,記憶が消去されるので,画像処理装置が立ち上げられるたびに新しい識別記号が与えられることになる。
また,EPROMのような,書き込み自在の不揮発性メモリであれば,事象の内容とその識別記号について,一度記憶すればその都度新しい識別記号を発生させる必要が無いので,継続してログ記録(事象の記録)を取る場合には便利である。従って,少なくとも内蔵型記憶部16については不揮発性メモリが望ましいであろう。
【0024】
上記のようにして事象とその識別記号が内蔵型記憶部16に記憶されれば,同様な事象が繰り返された場合には,すでに内蔵型記憶部16に記憶された識別記号とその時間(タイミング)のみを携帯型記憶部18に記憶しておけば,事象の解析時に上記携帯型記憶部18の記憶内容のみを参照して解析することが出来る。
上記のような事象の繰り返しが行われる場合の一例として,操作表示部2の一例としての操作パネルに設けられたコピーキーが押されて,複写動作が実行される場合を説明する。
この場合,図2に示すように,新しい事象である「パネルコピーキーON」が制御部に感知され,これに事象の識別記号13が与えられ,内蔵型記憶部16に事象の識別記号13とその内容が記憶される。
これと共に,携帯型記憶部18には,図3に示すように,事象13の発生時間10000と事象の識別記号13が記憶される。
【0025】
以下のコピー処理は,実際には前記した時間0〜時間5200に発生した事象1〜事象12の何れかが繰り返される。
即ち,前記のように時間10000において,コピーキーが押されると,前記の事象1が繰り返され,プリンタデータの受信が開始されると共に,次のように,事象2〜が順次発生する。これらの事象は,すでに発生済み(即ち記憶済み)であるから,発生した事象の識別記号とその発生時間を対にして携帯型記憶部18に記憶するだけの処理になる。以下,順次発生する事象とその発生時間を箇条書きする。
事象2…給紙カセットから用紙を送り出す給紙ローラの駆動源をONする(時間11200)。
事象3… 送り出される用紙を検出する給紙センサ(不図示)からの信号を検知し,これがONになったかどうかを判断する(時間11300)。
事象4…送られた用紙先端がレジストローラ(不図示)に到着したかどうかを検知するレジストセンサからの信号を検知し,これがONになったかどうかを判断する(時間11500)。
事象5…前記給紙ローラの回転を停止(OFF)させる。給紙ローラの回転停止の信号を受信する(時間11550)。
事象7… レジストローラの回転を開始する信号を送り,レジストローラの回転が開始された信号を受信する(時間126500)。
事象8…前記事象3で回転開始が判断された給紙センサがOFF(つまり用紙が通過した)となったことを給紙センサからの信号で確認する(時間13000)。
事象9…用紙が排紙部に到着する。これにより排出センサがONになったことを示す信号を受信する(時間14000)。
事象10…この時点で,用紙はレジストセンサの部分を通過するので,レジストセンサがOFFになる(時間14100)。
事象11…レジストセンサがOFFになるとCPU11は,レジストローラの回転停止信号をレジストローラの駆動部に送る。これによってレジストローラが停止(OFF)したという信号を受信する(時間14200)。
事象12…画像形成が完了し,用紙が排出部に排出され,排出センサが用紙を検出しなくなる(OFF)ので,排出センサOFFを検出する。
以上で,複写処理が終了する。
【0026】
上記のように画像形成装置などの画像処理装置では,例えば1ヶ月に数万枚といった複写処理が行われるが,その処理はほとんど同じ事象の繰り返しであるので,上記のように各事象の識別記号を確認して記憶すると共にそのタイミング(時間)を記憶することで,事象の履歴を詳細に記録することが出来る。
その際,この実施形態では,上記膨大な回数の事象について,単にその識別記号と発生時間のデータのみが携帯型記憶部18に記憶されるだけで十分な履歴を残すことが出来,携帯型記憶部18について大きい容量を必要としないので,低コストで装置の事象(ログ)解析に十分なデータを提供することが出来る。
また,事象の内容に関するデータは,1個当りの容量は大きいが,この実施形態にかかる画像処理装置では,内蔵型記憶部16に1個の事象に対して1個の内容説明を記憶するだけで,事象の発生の都度,事象内容を毎回記憶する必要が無い。従って,内蔵型記憶部16についても容量の小さいものを採用することが出来,コストの低い装置を提供することが出来る。
さらに,事象解析には,どのような事象がどのような時間に発生したかを解析することが極めて重要であるが,この実施形態のように,前記内蔵型記憶部16と携帯型記憶部18が画像処理装置に装着されていれば,事象解析には十分である。
そして,事象解析が必要でなくなれば,上記携帯型記憶部18を画像処理装置から取り外すことが出来るし,携帯型記憶部18は,既存のメモリなどを利用することが出来るので,上記携帯型記憶部18を装着することが実質的に画像処理装置のコストを上昇させない。
さらに,事象の解析に用いられるデータは,きわめて高度の秘密事項を含むものであるが,従来のように携帯型記憶部18に事象の内容とその発生時間が記憶されていれば,携帯型記憶部18が画像処理装置から取り外された後には,その取り扱いに高度の注意を払う必要が生じる。
その点,この実施形態に係る画像処理装置,あるいは画像処理システムでは,携帯型記憶部18に事象の内容が記憶されず,事象の識別記号とその発生時間が記憶されているのみであり,事象の識別記号とその発生時間だけでは事象の解析ができないために,取り外された携帯型記憶部18についてセキュリティに注意を払う必要が無く,きわめて安全である。
【符号の説明】
【0027】
X 複合機(画像処理装置の一例)
1 制御部
2 印刷エンジン部
3 操作表示部
4 スキャナ部
11 CPU(制御手段の一例)
12 ROM
13 RAM(一時記憶手段の一例)
14 ハードディスク
15 ASIC
16 内蔵型記憶部(内蔵型記憶手段の一例)
18 携帯型記憶部(携帯型記憶手段の一例)
T タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置の外部からの情報の受信及び当該画像処理装置の状態の変化を含む事象を記録する事象記録機能と,事象の内容を解析する事象解析機能を備えた画像処理装置であって,該画像処理装置に固有に設けられ,事象の種類とそれに対応する識別記号とを組み合わせて記憶する内蔵型記憶手段を備えてなる画像処理装置と,
前記画像処理装置に対して取り外し自在であって,該画像処理装置に発生した事象の種類に対応する識別記号と事象の発生時刻とを組み合わせて記憶する携帯型記憶手段と,を備えてなる画像処理システム。
【請求項2】
前記画像処理装置は,事象が生じるたびに,事象を解析し,発生した事象に対応した前記識別記号を発生させ,前記識別記号とこれに対応する事象の内容とを組み合わせて前記内蔵型記憶手段に書き込む事象記憶手段を備えてなる請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記画像処理装置は,事象が生じるたびに,事象を解析し,前記内蔵型記憶手段を参照して,発生した事象の前記識別記号を取得し,その識別記号と事象が発生した時間とを順次前記携帯型記憶手段に記憶する事象履歴記憶手段を備えてなる請求項1あるいは2の何れかに記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記内蔵型記憶手段及び/あるいは前記携帯型記憶手段が,不揮発性の記憶手段である請求項1〜3の何れかに記載の画像処理システム。
【請求項5】
画像処理装置の外部からの情報の受信及び当該画像処理装置の状態の変化を含む事象を記録する事象記録機能と,事象の内容を解析する事象解析機能を備えた画像処理装置であって,該画像処理装置に固有に設けられ,事象の種類とそれに対応する前記識別記号とを組み合わせて記憶する内蔵型記憶手段を備えてなる画像処理装置において,
発生した事象の種類に対応する識別記号を前記内蔵型記憶手段を参照することで取得すると共に,取得した識別記号とその事象の発生時刻とを組み合わせて,当該画像処理装置に対して取り外し自在に装着される携帯型記憶手段に記憶する手段を備えてなることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
画像処理装置の外部からの情報の受信及び当該画像処理装置の状態の変化を含む事象を記録する事象記録機能と,事象の内容を解析する事象解析機能を備えた画像処理装置に対して取り外し自在な携帯型記憶手段であって,
前記画像処理装置に発生した事象の種類に対応する識別記号と事象の発生時刻とを組み合わせて記憶する携帯型記憶手段。
【請求項7】
画像処理装置の外部からの情報の受信及び当該画像処理装置の状態の変化を含む事象を記録する事象記録機能と,事象の内容を解析する事象解析機能を備え,該画像処理装置に固有に設けられ,事象の種類とそれに対応する前記識別記号とを組み合わせて記憶する内蔵型記憶手段を備えてなる画像処理装置の制御プログラムであって,
前記画像処理装置に事象が生じた時に,発生した事象の種類に対応する前記識別記号を前記内蔵型記憶手段を参照して取得する手順と,取得した前記識別記号とその事象の発生時刻とを組み合わせて前記画像処理装置に対して取り外し自在の携帯型記憶手段に記憶する手順を備えてなる画像処理装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−34163(P2012−34163A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171461(P2010−171461)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】