説明

画像処理回路の診断方法、粒子画像解析装置、およびコンピュータプログラム

【課題】 従来に比して開発工数・設計工数の低減が可能な画像処理回路の診断方法、粒子画像解析装置、およびコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】 本発明に係る粒子画像解析装置は、粒子像を含む粒子画像に対して所定の画像処理を実行する画像処理プロセッサ15と、正常に動作する画像処理プロセッサ15に対して、テスト用粒子像を含むテスト用画像25を与えたときに得られる処理結果に相当するテスト結果データ27を予め記憶させてあるフラッシュメモリカード22aから、前記テスト結果データ27を読み出す読出手段と、前記画像処理プロセッサ15にテスト用画像25を与えたときに得られる処理結果と、前記読出手段によって前記フラッシュメモリカード22aから読み出されたテスト結果データ27とを照合し、画像処理プロセッサ15が正常に動作しているか否かを診断する診断手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子像を含む粒子画像に対して所定の画像処理を実行する画像処理回路を診断する画像処理回路の診断方法、当該診断方法の実施に使用する粒子画像解析装置、およびコンピュータを粒子画像解析装置として機能させるためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
主としてファインセラミックス粒子、顔料、化粧品パウダー等の紛体の品質を管理する目的で使用される粒子画像解析装置が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。この粒子画像解析装置は、シースフローセルによって粒子懸濁液の流れをシース液で取り囲み、細いまたは扁平な流れに変換し、この懸濁液流中の粒子を撮像して粒子像を含む粒子画像を取得し、当該粒子画像に対して所定の画像処理を実行することにより、粒子の大きさや形状に関する情報を取得することができるようになっている。一般的に、粒子画像には大量の粒子像が含まれているため、かかる粒子画像解析装置にあっては、その処理速度を可及的に高めることが要望されている。このため、粒子画像解析装置には、画像処理プロセッサ(画像処理回路)を有する専用の画像処理基板が内蔵されており、画像処理を高速に実行することが可能となっている。
【0003】
また、このような粒子画像解析装置には、画像処理プロセッサが使用するフレームメモリが読み書き可能か否かを診断したり、画像処理プロセッサが正常か否かを診断したりする自己診断機能が搭載されているものが存在する。
【0004】
【特許文献1】特開平8−136439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来の粒子画像解析装置にあっては、画像処理プロセッサの自己診断機能を有するものが存在したものの、この自己診断機能は、画像処理プロセッサが有する画像処理機能からは独立した機能であり、診断専用の機能として前記画像処理機能とは別個に設ける必要があった。したがってこの自己診断機能を搭載させるためには、自己診断機能を画像処理機能とは全く別に開発・設計する必要があり、そのため開発工数・設計工数が嵩むという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、従来に比して開発工数・設計工数の低減が可能な画像処理回路の診断方法、当該診断方法の実施に使用する粒子画像解析装置、およびコンピュータを粒子画像解析装置として機能させるためのコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像処理回路の診断方法は、粒子像を含む粒子画像に対して所定の画像処理を実行する画像処理回路を診断する画像処理回路の診断方法であって、前記画像処理回路にテスト用粒子像を含むテスト用画像を与えて前記所定の画像処理を実行させるステップと、前記画像処理回路による処理結果と、正常に動作する当該画像処理回路に対して、前記テスト用画像を与えたときに得られる処理結果に相当する診断用処理結果とを照合し、前記画像処理回路が正常に動作しているか否かを診断するステップとを有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る粒子画像解析装置は、粒子像を含む粒子画像に対して所定の画像処理を実行する画像処理回路と、正常に動作する当該画像処理回路に対して、テスト用粒子像を含むテスト用画像を与えたときに得られる処理結果に相当する診断用処理結果を予め記憶させてある記憶媒体から、前記診断用処理結果を読み出す読出手段と、前記画像処理回路にテスト用画像を与えたときに得られる処理結果と、前記読出手段によって前記記憶媒体から読み出された診断用処理結果とを照合し、前記画像処理回路が正常に動作しているか否かを診断する診断手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るコンピュータプログラムは、粒子像を含む粒子画像に対して所定の画像処理を実行する画像処理回路と、記憶媒体に記憶された情報を読み出す読出部とを備えるコンピュータを、前記画像処理回路に、前記テスト用画像を与えて前記所定の画像処理の実行を指示する画像処理実行指示手段と、正常に動作する当該画像処理回路に対して、テスト用粒子像を含むテスト用画像を与えたときに得られる処理結果に相当する診断用処理結果を予め記憶させてある記憶媒体から、前記読出部に前記診断用処理結果を読み出させる読出手段と、前記画像処理指示手段が前記画像処理回路に前記所定の画像処理の実行を指示したときに得られる処理結果と、前記読出手段によって読み出された診断用処理結果とを照合し、前記画像処理回路が正常に動作しているか否かを診断する診断手段として機能させることを特徴とする。
【0010】
このようにすることにより、画像処理回路の診断に当該画像処理回路が有する画像処理機能を利用するので、画像処理機能を利用して診断機能を開発・設計することができ、従来に比して開発工数・設計工数を低減することが期待できる。
【0011】
上記発明においては、 前記画像処理回路は、前記粒子画像に対して前記所定の画像処理を実行することにより、前記粒子画像から粒子像を含む部分画像を切り出すように構成されており、前記診断用処理結果は、正常に動作する前記画像処理回路に対して、前記テスト用画像を与えたときに得られる部分画像に相当する診断用部分画像を含み、前記診断手段は、前記画像処理回路にテスト用画像を与えて生成させた部分画像を含む前記処理結果と、前記読出手段によって前記記憶媒体から読み出された前記診断用処理結果とを照合するように構成されていることが好ましい。
【0012】
また、上記発明においては、前記ノイズ除去手段によるノイズ除去処理において、エラーが発生したか否かを判別する第1エラー発生判別手段と、前記輪郭強調手段による輪郭強調処理において、エラーが発生したか否かを判別する第2エラー発生判別手段と、前記2値化手段による2値化処理において、エラーが発生したか否かを判別する第3エラー発生判別手段と、前記エッジ抽出手段によるエッジ抽出処理において、エラーが発生したか否かを判別する第4エラー発生判別手段とをさらに備える構成とされていることが好ましい。
【0013】
このようにすることにより、ノイズ除去処理、輪郭強調処理、2値化処理、およびエッジ抽出処理のいずれの画像処理において異常が発生したかを特定することができる。
【0014】
上記発明においては、前記第1乃至第4エラー発生判別手段は、エラー発生判別対象の処理が開始されたか否かを判別する手段を夫々含むように構成されていることが好ましい。
【0015】
このようにすることにより、画像処理の開始異常(例えば、画像処理が開始されない)を検出することができる。
【0016】
上記発明においては、前記第1乃至第4エラー発生判別手段は、エラー発生判別対象の処理が終了したか否かを判別する手段を夫々含むように構成されていることが好ましい。
【0017】
このようにすることにより、画像処理の終了異常(例えば、画像処理が終了しない)を検出することができる。
【0018】
上記発明においては、前記画像処理回路は、粒子画像に含まれる粒子像の特徴を示す特徴情報を取得する特徴情報取得手段をさらに有し、前記診断用処理結果は、正常に動作する前記画像処理回路に対して、前記テスト用画像を与えたときに得られる特徴情報に相当する診断用特徴情報を含み、前記診断手段は、前記画像処理回路にテスト用画像を与えて生成させた特徴情報を含む前記処理結果と、前記読出手段によって記憶媒体から読み出された前記診断用処理結果とを照合するように構成されていることが好ましい。
【0019】
また、この場合においては、前記特徴情報取得手段は、粒子画像において粒子像が存在する位置を示す位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記エッジ抽出手段によって抽出されたエッジの直行成分、斜行成分、およびコーナ成分を夫々構成する画素数を各別に取得するエッジ画素数取得手段と、粒子像の面積値を取得する面積値取得手段とを有し、前記診断用特徴情報は、正常に動作する前記画像処理回路に対して、前記テスト用画像を与えたときに得られる位置情報、粒子像のエッジの直行成分、斜行成分、およびコーナ成分を夫々構成する画素数、ならびに粒子像の面積値に夫々相当する情報を含む構成とすることができる。
【0020】
このようにすることにより、画像データ(部分画像)に加えて、特徴情報も自己診断のチェック対象となり、より一層診断結果の信頼性が向上する。
【0021】
上記発明においては、前記読出手段が前記記憶媒体から情報を読み出すときに、エラーが発生したか否かを判別する第5エラー発生判別手段をさらに備える構成とすることが好ましい。
【0022】
このようにすることにより、記憶媒体からの情報の読出異常を検出することができる。またこの異常を特定することができ、異常発生箇所の特定が容易になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る画像処理回路の診断方法、粒子画像解析装置、およびコンピュータプログラムによれば、画像処理回路の診断に当該画像処理回路が有する画像処理機能を利用するので、画像処理機能を利用して診断機能を開発・設計することができ、従来に比して開発工数・設計工数を低減することが期待できる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係る画像処理回路の診断方法、粒子画像解析装置、およびコンピュータプログラムについて、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置の構成を示す斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係る粒子画像解析装置1は、粒子画像を撮像し、この粒子画像から粒子像を含む部分画像を生成する測定部2と、当該測定部2と電気通信ケーブル(図示せず)によって電気的に接続され、前記部分画像を測定部2から受信し、部分画像に対して画像処理を実行して粒子の解析を行うデータ処理部3とによって主として構成されている。
【0026】
図2は、本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置の測定部の構成を示すブロック図であり、図3は、本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置の測定部が備える撮像部2aの構成を示す模式図である。図2に示すように、測定部2は、撮像部2aと、画像処理基板4と、CPU基板5とによって主として構成されている。
【0027】
図3に示すように、撮像部2aは、試料液容器6と、シースフローセル7と、シリンジポンプ8a,8b,8cと、シース液容器9aと、排出液容器9bと、ストロボランプ10と、ビデオカメラ11とから主として構成されており、試料液容器6から粒子懸濁液をシースフローセル7へ供給し、この粒子懸濁液を取り囲むようにシース液をシースフローセル7へ送り込んで、扁平な懸濁液流を形成し、その懸濁液流に含まれる粒子をビデオカメラ11によって撮像するようになっている。
【0028】
撮像部2aの構成をさらに詳しく説明する。図3に示すように、シースフローセル7は、シース液受給口71と、試料液受給口72と、シース液と試料液の混合液を排出する排出口73とを有する。試料液容器6は上部が開放されており、内部に試料液を貯留することが可能であるように構成されており、その下部に排出口が設けられている。試料液容器6の排出口は流路を介して試料液受給口72に接続されている。試料液容器6の排出口と試料液受給口72との間の流路には電磁バルブ(以下、バルブという)41が設けられている。また、試料液容器6内の試料液を攪拌するための攪拌装置6aを備える。試料液は粒子を含む粒子懸濁液からなる。
【0029】
シリンジポンプ8aは吐出口51、シース液供給口52を有する。吐出口51は、流路を介してシースフローセル7のシース液受給口71に接続されている。吐出口51とシース液受給口71の間の流路にはバルブ44が設けられている。シース液容器9aは内部にシース液を貯留することが可能であるように構成されており、その下部に排出口が設けられている。シース液容器9aの排出口は流路を介してシース液供給口52に接続されている。シース液容器9aの排出口とシース液供給口52の間の流路にはバルブ46が設けられている。
【0030】
シリンジポンプ8bは2つの吐出口53、吸引口54を有し、シリンジポンプ8cは2つの吸引口55、シース液供給口56を有する。シリンジポンプ8bの吐出口53は流路を介してシリンジポンプ8cの吸引口55に接続されている。
【0031】
シースフローセル7の排出口73は流路を介してシリンジポンプ8bの吸引口54に接続され、当該流路は途中から分岐され、分岐先が排出液容器9bの上部に開放された開口部へ接続されている。排出口73から流路の分岐点までの間には、バルブ42が設けられており、当該分岐点から吸引口54の間の流路にはバルブ45が設けられている。また、前記分岐点から排出液容器9bの開口部の間の流路にはバルブ43が設けられている。
【0032】
そして、シリンジポンプ8cのシース液供給口56は流路を介してシース液容器9aの排出口に接続されている。シース液供給口56とシース液容器9aの排出口の間の流路にはバルブ47が設けられている。
【0033】
シリンジポンプ8a,8bは単一の第1駆動源61によって連動して駆動され、シリンジポンプ8cは第2駆動源62によって駆動されるようになっている。第1駆動源61は、ステッピングモータ61aと、モータ61aの回転運動を直線運動に変換してシリンジポンプ8aと8bに伝達する伝達機構61bとを備える。伝達機構61bは、ステッピングモータ61aの駆動軸に備えられた駆動プーリとタイミングベルトが張架された従動プーリから構成され、ステッピングモータ61aの回転運動を直線運動に変換する。
【0034】
第2駆動源62は、ステッピングモータ62aと、モータ62aの回転運動を直線運動に変換してシリンジポンプ8cに伝達する伝達機構62bを備える。伝達機構62bは、ステッピングモータ62aの駆動軸に備えられた駆動プリーとタイミングベルトが張架された従動プーリから構成され、ステッピングモータ62aの回転運動を直線運動に変換する。試料液容器6には、開放された上部から撹拌器6aが挿入され、容器6に貯留された試料液が撹拌されるようになっている。
【0035】
また、シースフローセル7には、シース液に包まれて細く絞られた試料液流に光を照射するためのストロボランプ10と、試料液流中の粒子を撮像するための対物レンズ37およびビデオカメラ11が設けられている。
【0036】
次に、画像処理基板4の構成について説明する。図2に示すように、画像処理基板4は、CPU12と、ROM13と、メインメモリ14と、画像処理プロセッサ15と、フレームバッファ16と、フィルタテスト用メモリ17と、バックグラウンド補正データ用メモリ18と、プライムコードデータ格納用メモリ19と、頂点データ格納用メモリ20と、結果データ格納用メモリ21と、フラッシュメモリカードリーダ22と、画像入力インタフェース23と、USbインタフェース28とから主として構成されている。CPU12、ROM13、メインメモリ14、画像処理プロセッサ15、およびフラッシュメモリカードリーダ22は、相互にデータ伝送が可能であるようにバス接続されており、画像処理プロセッサ15は、フレームバッファ16、フィルタテスト用メモリ17、バックグラウンド補正データ用メモリ18、プライムコードデータ格納用メモリ19、頂点データ格納用メモリ20、結果データ格納用メモリ21、および画像入力インタフェース23と夫々個別のバスによって接続されている。これにより、画像処理プロセッサ15から、フレームバッファ16、フィルタテスト用メモリ17、バックグラウンド補正データ用メモリ18、プライムコードデータ格納用メモリ19、頂点データ格納用メモリ20、および結果データ格納用メモリ21へ夫々データの読出し、書き込みが可能となっており、画像入力インタフェース23から画像処理プロセッサ15へデータの入力が可能となっている。
【0037】
CPU12は、ROM13に記憶されているコンピュータプログラムおよびメインメモリ14にロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するような本発明に係るコンピュータプログラムを当該CPU12が実行することにより、本装置が本発明に係る粒子画像解析装置として機能する。
【0038】
ROM13は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU12に実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータ等が記録されている。
【0039】
メインメモリ14は、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。メインメモリ14は、ROM13およびフラッシュメモリカード22aに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU12の作業領域として利用される。
【0040】
画像処理プロセッサ15は、メディアンフィルタ処理回路、ラプラシアンフィルタ処理回路、2値化処理回路、エッジトレース処理回路、重なりチェック回路、結果データ作成回路等の画像処理を実行可能なハードウェアによって構成された画像処理専用のプロセッサであり、FPGA、ASIC等によって構成することができる。
【0041】
フレームバッファ16、フィルタテスト用メモリ17、バックグラウンド補正データ用メモリ18、プライムコードデータ格納用メモリ19、頂点データ格納用メモリ20、および結果データ格納用メモリ21は、SRAMまたはDRAM等によって夫々構成されている。これらのメモリ16〜21は、画像処理プロセッサ15が画像処理を実行するときに、データの格納用に利用される。
【0042】
フラッシュメモリカードリーダ22は、フラッシュメモリカード22aに記憶されたデータを読み出すことができるように構成されている。フラッシュメモリカード22aは、フラッシュメモリ(図示せず)を有しており、外部から電力を供給されなくても、記憶したデータを保持することができるようになっている。また、フラッシュメモリカード22aには、次のようなテスト用画像25、テスト用背景画像26、およびテスト結果データ27が記憶されている。
【0043】
次に、テスト用画像25について説明する。テスト用画像25は、撮像部2aによって生成される粒子画像と同一の画素数(例えば512×480dot)のモノクローム多諧調画像であり、粒子像を模した模擬粒子像を含んでいる。図4は、テスト用画像25の一例を示す模式図である。この例では、テスト用画像25に2つの矩形の模擬粒子像25a,25bが描画されている。また、テスト用画像25の模擬粒子像25a,25b以外の領域には、適当な背景像が描画されている。この背景像は、図4では図を簡単にするために省略している。図2に示すように、フラッシュメモリカード22aには、複数のテスト用背景画像26が記憶されている。夫々のテスト用背景画像26には、テスト用画像25の背景像と概ね同一の背景像が描画されている。また、テスト結果データ27は、模擬粒子像25a,25bの診断用部分画像29、および模擬粒子像25a,25bの特徴を示す診断用特徴情報(模擬粒子像25a,25bがテスト用画像25の中で存在する位置、模擬粒子像25a,25bの面積値、ならびにエッジトレースした際に得られる直行カウント数、斜行カウント数、およびコーナカウント数)31を含むファイルである。このテスト結果データ27は、正常に動作する画像処理プロセッサ15に対してテスト用画像25を与え、画像処理を実行させたときに、画像処理プロセッサ15が生成するファイルと同一のデータとされている。
【0044】
さらに、フラッシュメモリカード22aには、本発明に係る画像処理回路の自己診断のコンピュータプログラム30が記憶されている。このコンピュータプログラム30は、粒子画像解析装置1の起動時に、フラッシュメモリカードリーダ22から読み出され、メインメモリ14にロードされて、CPU12が実行するようになっている。このコンピュータプログラム30をCPU12が実行することによって、粒子画像解析装置1は後述のように動作する。
【0045】
画像入力インタフェース23は、A/D変換器を含むビデオデジタイズ回路(図示せず)を備えている。画像入力インタフェース23は、ビデオカメラ11に電気信号線によって電気的に接続されており、当該ビデオカメラ11から、例えば1フレームのサイズが640×480dotのプログレッシブカメラビデオ信号が60fpsで入力されるようになっている。ビデオカメラ11から入力されたビデオ信号は、画像入力インタフェース23でA/D変換される。このようにデジタイズされた画像データ(粒子画像)は、フレームバッファ16に格納されるようになっている。
【0046】
このような画像処理基板4は、PCIバスを介してUSBインタフェース28に接続されている。USBインタフェース28は、図示しないUSB/RS−232C変換器を介してCPU基板5に接続されている。CPU基板5には、CPU、ROM、RAM等が設けられており、当該CPU基板5によって測定部2全体の制御が行われるようになっている。また、USBインタフェース28は、データ処理部3にUSBケーブルによって接続されている。
【0047】
データ処理部3は、パーソナルコンピュータによって構成されており、ディスプレイ装置と、CPU、ROM、RAM、ハードディスク等を備えた本体装置と、キーボードおよびマウスを含む入力装置とによって構成されている。ハードディスクには、オペレーティングシステムと、測定部2と通信し、測定部が測定した結果に基づいて所定の解析処理を行うためのアプリケーションプログラムとがインストールされており、前記オペレーティングシステム上でこのアプリケーションプログラムがCPUによって実行されることにより、当該パーソナルコンピュータがデータ処理部3として機能するようになっている。
【0048】
次に、本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置1の動作について説明する。本実施の形態に係る粒子画像解析装置1の動作は、起動時の自己診断動作と、自己診断動作によって装置が正常であると診断された後の通常運転動作とに大別される。まず、通常運転動作について説明する。
【0049】
通常運転動作では、まず、図3において、シリンジポンプ8aが、ピストンがシリンダから引き出された状態(吐出動作可能状態)に、シリンジポンプ8bが、ピストンがシリンダ内へ押し込まれた状態(吸引動作可能状態)にそれぞれ設定される。また、シリンジポンプ8cも吸引動作可能状態に設定する。この状態が初期状態となる。また、当該初期状態においては全てのバルブ41〜47は閉じられている。
【0050】
次に、初期状態からバルブ42、43、44、46が開放される。シース液容器9aにはあらかじめ陽圧が印加されており、このためシース液は容器9aから押し出され、バルブ46、シリンジポンプ8a、バルブ44、シースフローセル7、バルブ42、43を通って排出液容器9bへ排出される。これにより、シース液容器9aから、バルブ46、シリンジポンプ8a、バルブ44、シースフローセル7、バルブ42、43を通って排出液容器9bへ至る流体流通経路が洗浄される。そして、バルブ42、43、44、46が再度閉じられる。これによって、シース液がシリンジポンプ8aに充填される。
【0051】
次に、バルブ43、45、47が開放される。シース液は容器9aから押し出され、バルブ47、シリンジポンプ8c、シリンジポンプ8b、バルブ45、バルブ43を通って排出容器9bへ排出される。これにより、シース液容器9aから、バルブ47、シリンジポンプ8c、シリンジポンプ8b、バルブ45、バルブ43を通って排出液容器9bへ至る流体流通経路が洗浄される。そして、バルブ43、45、47が再度閉じられる。これによって、シース液がシリンジポンプ8b、8cに充填される。
【0052】
次に、バルブ41、42、44、45が開放され、ステッピングモータ61a、62aが駆動される。これにより、シリンジポンプ8aが流量Qの吐出動作を行い、これとともにシリンジポンプ8bが流量Qの吸引動作を行い、またシリンジポンプ8cが流量Qsの吸引動作を行うこととなる。
【0053】
図5は、図3に示したシースフローセル7の拡大断面図であり、シースフローセル7によって扁平な懸濁液流が形成される様子を示している。上記動作によって、シースフローセル7にシリンジポンプ8aから流量Qのシース液が流入すると共に試料容器6から流量Qsの試料液(粒子懸濁液)が流入する。そして、試料液はそのシース液で取り囲まれ、図5に示すように、液体力学的に懸濁液流は偏平に絞られてシースフローセル7の内を流れ、シース液と混合された流量(Q+Qs)の混合液となってシースフローセル7から排出される。
【0054】
排出された混合液の内、流量Qの混合液はシリンジポンプ8bによって吸引され、流量Qsの混合液はシリンジポンプ8cによって吸引される。このとき、このように偏平に絞られた懸濁液流に対して、ストロボライト10からパルス光を1/60秒ごとに周期的に照射することによって、1/60秒ごとに粒子の静止画像が対物レンズ37を介してビデオカメラ11で撮像される。
【0055】
測定する粒子が半透明状の場合には、その粒子に対して適当な染色を施すのが好ましい。図3には図示していないが、装置内に染色液ボトルを設け、試料をその染色液で染色するための反応チャンバーを付加してもよい。
【0056】
粒子を懸濁する溶媒は粒子特性(粒径や比重)に応じて最適なものを選べばよい。また、試料液の流れを確実に偏平にあるいは細く絞り込むため試料液の特性に応じて、例えば溶媒の粘度や比重に応じて、シース液の粘度や比重を変更するのが好ましい。図3には図示していないが、複数種類のシース液容器を設け、測定する試料に応じて使用するシース液の種類を容易に切り換えられるような機構を付加してもよい。
【0057】
懸濁液流の偏平な面をビデオカメラ11で撮像すれば、ビデオカメラ11の撮像エリア全体に渡って粒子像を捉えることができ、1回の撮像で多数の粒子を撮像できる。また、撮像される粒子の重心とビデオカメラ11の撮像面との距離をほぼ一定にすることができるので、粒子の大きさに関わらず常にピントの合った粒子像が得られる。さらに、流体力学的な効果によって、偏平な粒子や細長い粒子の向きが揃いやすく、粒子像を解析して得られる特徴パラメータは、ばらつきが小さく再現性が良い。
【0058】
複数回のパルス光照射によって撮像される粒子像の数は、懸濁液流を偏平にした場合には、ビデオカメラ11の撮像エリアの面積、試料液流の厚み、試料液の単位体積当たりの粒子数、および撮像回数(フレーム数)によって決まる。例えば、撮像エリアを200×200μm、試料流の厚みを5μm、粒子濃度を10000個/μl、撮像フレーム数を1800(撮像時間を30秒)とした時に撮像される粒子数は3600個となる。
【0059】
撮像エリアの面積は、ビデオカメラ11の受光面に対する結像倍率とそのサイズによって決まる。対物レンズ37の倍率を大きくすれば撮像エリアが小さくなるが、小さな粒子まで大きく撮像できる。対物レンズ37の倍率を小さくすれば撮像エリアが大きくなり、大きな粒子を撮像するのに適している。この装置では、対物レンズ37の倍率を選択あるいは測定途中に切り換えできるようにしており(図示せず)、粒径の測定レンジを広くしている。
【0060】
このようにしてビデオカメラ11によって撮像された静止画像(粒子画像)は、ビデオ信号として画像処理基板4へと出力される。画像処理基板4の画像入力インタフェース23では、与えられたビデオ信号をA/D変換し、デジタル画像データを生成する。そして、以下のような画像処理が実行される。
【0061】
図6は、本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置1の通常運転動作のうち、画像処理プロセッサ15の処理手順を示すフローチャートである。画像入力インタフェース23が出力した画像データは、DMA転送によりフレームバッファ16に格納される。画像処理プロセッサ15は、このようにフレームバッファ16に格納された粒子画像に対してノイズ除去処理を実行する(ステップS1)。このノイズ除去処理S1を具体的に説明する。前述したように、画像処理プロセッサ15には、メディアンフィルタ処理回路が設けられており、当該ノイズ除去処理S1においては、このメディアンフィルタ処理回路によるメディアンフィルタ処理が行われる。このメディアンフィルタ処理は、注目画素およびその8近傍画素を含む9画素について、夫々の輝度値(画素値)をソーティングし、そのメディアン(中間値)を注目画素の画素値とする処理である。
【0062】
次に、画像処理プロセッサ15は、懸濁液流に対する照射光の強度むら(シェーディング)を補正するためのバックグラウンド補正処理を実行する(ステップS2)。このバックグラウンド補正処理S2を具体的に説明する。懸濁液をフローセル9に供給する前に、シース液のみをフローセル9に送り込んで、粒子がフローセル9を通過していない状態とし、このときに光照射して得られる複数の画像データを予め画像処理基板4に取り込み、これらの画像データからバックグラウンド補正用画像を生成し、バックグラウンド補正データ用メモリ18に格納しておく。なお、このバックグラウンド補正用画像を生成する処理は、粒子の測定の都度、測定直前にCPU12によって実行される。かかるバックグラウンド補正用画像は、粒子画像のうち、粒子像が取り除かれた背景のみの画像と略合致する画像となっている。また、前述したように、画像処理プロセッサ15には、ラプラシアンフィルタ処理回路が設けられており、当該バックグラウンド補正処理S2では、このラプラシアンフィルタ処理回路によって、バックグラウンド補正用画像と、メディアンフィルタ処理後の粒子画像との比較演算を行い、粒子画像から概ね背景像を除去した補正画像を生成する。
【0063】
次に、画像処理プロセッサ15は、輪郭強調処理を実行する(ステップS3)。この輪郭強調処理S3を具体的に説明する。当該輪郭強調処理S3においては、ラプラシアンフィルタ処理回路によるラプラシアンフィルタ処理が行われる。このラプラシアンフィルタ処理は、注目画素およびその8近傍画素を含む9画素について、夫々の輝度値と対応する所定の係数とを乗じ、その乗算結果の和を注目画素の画素値とする処理である。図7は、本実施の形態における係数の設定値を説明する模式図である。図7に示すように、本実施の形態においては、注目画素X(i,j)に対応する係数を2、注目画素と上下左右で隣り合う4近傍画素X(i,j−1),X(i−1,j),X(i+1,j),X(i,j+1)に対応する係数を−1/4、および注目画素と斜め方向に隣り合う4画素X(i−1,j−1),X(i+1,j−1),X(i−1,j+1),X(i+1,j+1)に対応する係数を0としている。そして、次の式(1)によって、フィルタ処理後の注目画素の画素値Y(i,j)を算出する。また、かかる演算の結果が255を超える場合は255を出力し、負となる場合は0を出力する。
【0064】
【数1】

次に、画像処理プロセッサ15は、輪郭強調処理S3による処理後のデータに基づいて、2値化のスレシホールドレベル(2値化閾値)を設定する(ステップS4)。この処理を具体的に説明する。画像処理プロセッサ15のラプラシアンフィルタ回路には、輝度ヒストグラマ部が設けられており、ステップS4の処理は、この輝度ヒストグラマ部によって実行される。まず、画像処理プロセッサ15は、ラプラシアンフィルタ処理後の画像データから輝度ヒストグラムを作成し、この輝度ヒストグラムに対して所定のスムージング処理を行う。そして、スムージング後の輝度ヒストグラムから最頻度輝度値を求め、この際頻度輝度値を用いて次の式(2)によって2値化閾値を算出する。
2値化閾値=最頻度輝度値×A+B …(2)
式(2)において、A,Bは設定可能なパラメータであり、本実施の形態においては、Aは90、Bは0が夫々デフォルト値である。
【0065】
次に、画像処理プロセッサ15は、ステップS4の処理で設定したスレシホールドレベルで、ラプラシアンフィルタ処理後の画像に対して2値化処理を行う(ステップS5)。そして、2値化画像の各画素に対して、プライムコードおよび多重点情報を取得する(ステップS6)。ステップS5およびS6の処理を具体的に説明する。前述したように、画像処理プロセッサ15には、2値化処理回路が設けられており、この2値化処理回路によって、ステップS5およびS6の処理が実行される。プライムコードとは、注目画素およびその8近傍画素の9画素について求められる2値化コードであり、以下のように定義される。図8は、プライムコードデータ格納用メモリ19の内容を示す模式図である。図8には、プライムコードデータ格納用メモリ19のうち、1ワード中の構成を示している。図8に示すように、プライムコードデータ格納用メモリ19は、1ワード(11bit)中にプライムコード格納領域19aおよび多重点数格納領域19bの2つの領域を含んでいる。プライムコード格納領域19aは、図中bit0〜bit7で示す8bitの領域であり、多重点数領域19bは、図中bit8〜bit10で示す3bitの領域である。次に、プライムコードの定義について説明する。図9は、2値化画像データの3×3の画素領域における画素値の例を示す模式図である。図9に示すように、ここでは、2値化画像データのP0〜P8の9画素について、P1〜P3の画素値が0となっており、P0およびP4〜P8の画素値が1となっている。この場合のプライムコードを説明する。注目画素P8を除く夫々の画素P0〜P7は、プライムコード格納領域19aのbit0〜bit7に各別に対応している。つまり、プライムコード格納領域19aは、下位ビットから上位ビットへ向けて、画素P0〜P7の画素値が格納されるようになっている。すなわち、この場合のプライムコードは、2進数表記で11110001、16進数表記でF1となる。また、注目画素P8の画素値はプライムコードに含まれない。
【0066】
また、注目画素およびその8近傍画素によって構成される領域が、粒子像の境界の一部である場合、すなわちプライムコードが2進数表記で00000000以外の場合には、多重点情報が求められる。多重点とは、エッジトレースの際に何回通過する可能性があるかを示すコードであり、予めルックアップテーブルに全てのパターンに対応する多重点情報が記憶されており、このルックアップテーブルを参照することによって多重点数が求められる。図10は、多重点の概念を説明するための模式図である。図10に示す例においては、P2、およびP5〜P8の4画素の画素値が1であり、他の画素P0、P1、P3、およびP4の画素値は0である。このような場合には、図中矢符で示すようにエッジトレースの際に注目画素P8を2回通過する可能性がある。したがって、図10の例の場合においては、注目画素P8は2重点となり、多重点数は2となる。かかる多重点数は、多重点数格納領域19bに格納される。
【0067】
次に、画像処理プロセッサ15は、頂点データを作成する(ステップS7)。このステップS7の処理も、2値化処理回路によって実行される。頂点データとは、後のエッジトレースを開始する予定の座標を示すデータである。頂点であると判断されるのは、注目画素およびその8近傍画素を含む9画素の領域が、(1)注目画素P8の画素値が1である、(2)P1〜P4(注目画素P8の上方の3画素および左隣の1画素)の画素値が0である、(3)P0およびP5〜P7の4つの画素(注目画素P8の右隣および注目画素P8の下方の3画素)のうち、少なくとも1画素の画素値が1である、の3つの条件に全て合致するパターンの場合のみに限られる。画像処理プロセッサ15は、全画素の中から頂点に該当する画素を検索し、作成した頂点データ(頂点の位置を示す座標データ)を頂点データ格納用メモリ20に格納する。
【0068】
次に、画像処理プロセッサ15は、エッジトレース処理を実行する(ステップS8)。このエッジトレース処理S8を具体的に説明する。前述したように、画像処理プロセッサ15にはエッジトレース処理回路が設けられており、このエッジトレース処理回路によってエッジトレース処理S8が実行される。このエッジトレース処理S8においては、まず、頂点データからエッジトレースを開始する座標を特定し、この座標からプライムコード、および別途予め記憶されている進行方向を決定するためのコードに基づいて、粒子像のエッジトレースを行う。そして、画像処理プロセッサ15は、エッジトレースの際に、各粒子像の面積値、直行カウント数、斜行カウント数、コーナカウント数、および位置を算出する。ここで、粒子像の面積値とは、粒子像を構成する画素の総数、すなわち、エッジで囲まれた領域の内側に含まれる画素の総数をいう。また、直行カウント数とは、粒子像の3画素以上のエッジ画素が上下方向または左右方向に直線状に並ぶ場合に、その直線区間の両端のエッジ画素を除いたエッジ画素の総数、すなわち、粒子像のエッジのうち、上下または左右方向へ延びた直線成分を構成するエッジ画素の総数をいう。また、斜行カウント数とは、粒子像の3画素以上のエッジ画素が斜め方向に直線状に並ぶ場合に、その直線区間の両端のエッジ画素を除いたエッジ画素の総数、すなわち、粒子像のエッジのうち、斜め方向へ延びた直線成分を構成するエッジ画素の総数をいう。また、コーナカウント数とは、粒子像のエッジ画素のうち、隣り合う複数のエッジ画素が夫々異なる方向で接する(例えば、一方のエッジ画素とは上方で隣り合い、他方のエッジ画素とは左方で隣り合う)エッジ画素の総数、すなわち、粒子像のエッジのうち、コーナを構成するエッジ画素の総数をいう。また、粒子像の位置は、例えば粒子像の右端、左端、上端、および下端の座標とされる。画像処理プロセッサ15は、このような算出結果のデータを、画像処理プロセッサ15に内蔵されている内部メモリ(図示せず)に格納する。
【0069】
次に、画像処理プロセッサ15は、粒子の重なりチェック処理を実行する(ステップS9)。この粒子の重なりチェック処理S9を具体的に説明する。前述したように、画像処理プロセッサ15には重なりチェック回路が設けられており、この重なりチェック回路によって重なりチェック処理S9が実行される。当該重なりチェック処理S9においては、画像処理プロセッサ15が、前述したようなエッジトレース処理S8による粒子像の解析結果に基づいて、1つの粒子像(以下、外側粒子像という)の中に他の粒子像(以下、内側粒子像という)が包含されているか否かを判別し、内側粒子像が存在する場合には、内側粒子像を後の結果データ作成処理S10における部分画像の切り出し対象から除外する。次に、内側粒子像が存在するか否かの判別原理を説明する。図11は、内側粒子像が存在するか否かの判別原理を説明する模式図である。まず、2つの粒子像を選択し、図11に示すように、一方の粒子像G1のX座標(横方向座標)の最大値G1XMAXおよび最小値G1XMINならびにY座標(縦方向座標)の最大値G1YMAXおよび最小値G1YMINを特定し、同様に他方の粒子像G2のX座標の最大値G2XMAXおよび最小値G2XMINならびにY座標の最大値G2YMAXおよび最小値G2YMINを特定する。そして、以下の4つの条件を全て満たす場合、粒子像G1は粒子像G2を包含していると判別される。
(1)G1XMAXがG2XMAXより大きい。
(2)G1XMINがG2XMINより小さい。
(3)G1YMAXがG2YMAXより大きい。
(4)G1YMINがG2YMINより小さい。
かかる重なりチェック処理の結果データは、画像処理プロセッサ15の内部メモリに格納される。
【0070】
次に、画像処理プロセッサ15は、以上のようにして特定した夫々の粒子像を各別に含む部分画像を粒子画像から切り出し、画像処理結果データを作成する(ステップS10)。前述したように、画像処理プロセッサ15には結果データ作成回路が設けられており、この結果データ作成回路によって結果データ作成処理S10が実行される。この処理によって作成される部分画像は、粒子画像から、概ね1つの粒子像と、予め設定されている余白値によって定まる周囲の領域とを含む矩形領域を切り出した画像である。画像処理結果データは、上述したような画像処理によって認識された全ての粒子像についての前記部分画像、粒子像の位置、粒子像の面積値、直行カウント数、斜行カウント数、コーナカウント数等のデータを含んでいる。また、画像処理プロセッサ15は、かかる処理によって作成した画像処理結果データを結果データ格納用メモリ21に格納する。こうして、画像処理プロセッサ15による画像処理は終了する。画像処理プロセッサ15は、以上のような画像処理をパイプライン処理によって繰り返し実行し、各フレーム毎に部分画像を生成する。
【0071】
こうして結果データ格納用メモリ21に格納された画像処理結果データは、DMA転送によってUSBインタフェース28を介してデータ処理部3へ送信される。データ処理部3は、受信した画像処理結果データに含まれる部分画像に対して画像処理を実行し、各粒子像の粒径(円相当径)、円形度等を算出する。そして、受信した部分画像をディスプレイ画面にマトリックス状に並べて表示するとともに、選択されている部分画像の粒子の粒径および円形度を表示する。
【0072】
次に、本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置1の自己診断動作について説明する。かかる自己診断動作は、粒子画像解析装置1の起動時に行われ、粒子画像解析装置1の画像処理プロセッサ15が正常であるか否かが診断される。図12は、本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置1の自己診断動作におけるCPU12および画像処理プロセッサ15の処理手順を示すフローチャートである。CPU12は、フラッシュメモリカードリーダ22に、フラッシュメモリカード22aに記憶されている複数のテスト用背景画像26を読み出させ(ステップS21)、これらのデータを受け取る。ここで、CPU12は、フラッシュメモリカードリーダ22によるデータの読み出しエラーが発生したか否かを判別する(ステップS22)。このエラーには、フラッシュメモリカードリーダ22によるフラッシュメモリカード22aへのアクセス不能エラー、およびフラッシュメモリカードリーダ22によるデータ読出エラー等が含まれる。このようなエラーが検出された場合には(ステップS22でYes)、CPU12は当該エラーに予め対応付けられたエラーコードをセット、すなわちメインメモリ14の所定領域にエラーコードを格納し(ステップS23)、ステップS67へ処理を移す。このように、フラッシュメモリカードリーダ22が正常にデータ読み出しを行っているか否かを判別することによって、フラッシュメモリカードリーダ22もしくはフラッシュメモリカード22aの故障、またはフラッシュメモリカード22aにデータが存在しない等のエラーを検出することができる。つまり、ここで異常が検出された場合には、フラッシュメモリカードリーダ22またはフラッシュメモリ22aが異常箇所であるいうことを特定することができる。
【0073】
ステップS22において、エラーが検出されなかった場合には(ステップS22でNo)、CPU12は、複数のテスト用背景画像26のデータをフレームバッファ16に格納する(ステップS24)。次いで、CPU12は、画像処理プロセッサ15へノイズ除去処理の実行を指示する(ステップS25)。画像処理プロセッサ15は、かかるノイズ除去処理実行指示を待機し(ステップS26)、指示を受け付けた場合には(ステップS26でYes)、フレームバッファ16に格納されたテスト用背景画像26に対して上述したノイズ除去処理を実行する(ステップS27)。ここで、画像処理プロセッサ15は、内蔵するステータスレジスタ(図示せず)に、ノイズ除去処理の実行中/待機中を示すステータス情報をセットすることができるようになっており、CPU12は、かかるステータスレジスタを参照することにより、ノイズ除去処理中に画像処理プロセッサにエラーが発生したか否かを判別する(ステップS28)。さらに具体的にステップS28のエラー発生判別処理について説明する。ステップS25においてノイズ除去処理の実行を指示したにもかかわらず、ステップS28の処理において、画像処理プロセッサ15の前記ステータスレジスタの値がノイズ除去処理の待機中を示している場合には、CPU12は、ノイズ除去処理が開始されておらず、画像処理プロセッサ15にエラーが発生したと判別する。また、ノイズ除去処理の実行中のステータスがセットされている場合においても、ノイズ除去処理の開始から所定時間経過後にノイズ除去処理が終了していない、すなわちノイズ除去処理の実行中のステータスがセットされているときには、画像処理プロセッサ15にエラーが発生したと判別する。そして、かかるエラーが検出された場合には(ステップS28でYes)、CPU12は当該エラーに予め対応付けられたエラーコードをセットし(ステップS29)、ステップS67へ処理を移す。このように、メディアンフィルタ処理回路が実行するノイズ除去処理が正常に実行されているか否かを判別することによって、画像処理プロセッサ15の中のメディアンフィルタ処理回路が正常に機能しているか否かを判別することができる。つまり、ここで異常が検出された場合には、画像処理プロセッサ15の中でも、メディアンフィルタ処理回路が異常箇所であるいうことを特定することができる。
【0074】
画像処理プロセッサ15は、ノイズ除去処理の実行が完了した場合には、処理後のテスト用背景画像データをCPU12へ送信する(ステップS30)。CPU12は、ステップS28においてエラーが検出されなかった場合には(ステップS28でNo)、これらのテスト用背景画像データを画像処理プロセッサ15から受信し(ステップS31)、通常運転動作で説明したバックグラウンド補正用画像を生成する(ステップS32)。CPU12は、生成したバックグラウンド補正用画像のデータをバックグラウンド補正データ用メモリ18に格納する(ステップS33)。
【0075】
次に、CPU12は、フラッシュメモリカードリーダ22に、フラッシュメモリカード22aに記憶されているテスト用画像25を読み出させ(ステップS34)、このデータを受け取る。ここで、CPU12は、フラッシュメモリカードリーダ22によるデータの読み出しエラーが発生したか否かを判別する(ステップS35)。ステップS35の処理は、ステップS22の処理と同様であるので、その説明を省略する。エラーが検出された場合には(ステップS35でYes)、CPU12は当該エラーに予め対応付けられたエラーコードをセットし(ステップS36)、ステップS67へ処理を移す。
【0076】
ステップS35において、エラーが検出されなかった場合には(ステップS35でNo)、CPU12は、画像処理プロセッサ15にテスト用画像25のデータをフレームバッファ16に格納する(ステップS37)。次いで、CPU12は、画像処理プロセッサ15へノイズ除去処理の実行を指示する(ステップS38)。画像処理プロセッサ15は、かかるノイズ除去処理実行指示を受け付け(ステップS39)、フレームバッファ16に格納されたテスト用画像25に対して上述したノイズ除去処理を実行する(ステップS40)。CPU12は、ノイズ除去処理中に画像処理プロセッサ15にエラーが発生したか否かを判別する(ステップS41)。ステップS41の処理は、ステップS28の処理と同様であるので、その説明を省略する。そして、エラーが検出された場合には(ステップS41でYes)、CPU12は当該エラーに予め対応付けられたエラーコードをセットし(ステップS42)、ステップS67へ処理を移す。
【0077】
画像処理プロセッサ15は、ノイズ除去処理の実行が完了した場合には、処理後のテスト用画像と、バックグラウンド補正データ用メモリ18に格納されているバックグラウンド補正用画像とを用いて、通常運転動作において説明したバックグラウンド補正処理を実行する(ステップS43)。また、画像処理プロセッサ15は、バックグラウンド補正処理が完了した後に、通常運転動作において説明した輪郭強調処理を実行し(ステップS44)、輪郭強調処理の実行が完了した場合には、通常運転動作において説明したように、2値化のスレシホールドレベル(2値化閾値)を設定する(ステップS45)。CPU12は、ステップS41においてエラーが検出されなかった場合には(ステップS41でNo)、輪郭強調処理S44および2値化閾値設定処理S45において画像処理プロセッサ15にエラーが発生したか否かを判別する(ステップS46)。画像処理プロセッサ15は、内蔵するステータスレジスタ(図示せず)に、輪郭強調処理および2値化閾値設定処理の実行中/待機中を示すステータス情報をセットすることができるようになっており、ステップS46においては、CPU12が、かかるステータスレジスタを参照することにより、輪郭強調処理および2値化閾値設定処理中に画像処理プロセッサ15にエラーが発生したか否かを判別する。ステップS46のエラー検出処理の原理は、ステップS28のエラー検出処理の原理と同様であるので、その説明を省略する。そして、エラーが検出された場合には(ステップS46でYes)、CPU12は当該エラーに予め対応付けられたエラーコードをセットし(ステップS47)、ステップS67へ処理を移す。このように、ラプラシアンフィルタ処理回路が実行する輪郭強調処理および2値化閾値設定処理が正常に実行されているか否かを判別することによって、画像処理プロセッサ15の中のラプラシアンフィルタ処理回路が正常に機能しているか否かを判別することができる。つまり、ここで異常が検出された場合には、画像処理プロセッサ15の中でも、ラプラシアンフィルタ処理回路が異常箇所であるいうことを特定することができる。
【0078】
画像処理プロセッサ15は、輪郭強調処理および2値化閾値設定処理を完了した場合には、通常運転動作において説明したように、ラプラシアンフィルタ処理後の画像に対して2値化処理を実行し(ステップS48)、2値化処理の実行が完了した場合には、通常運転動作において説明したように、プライムコードおよび多重点情報を取得し(ステップS49)、またプライムコード・多重点情報取得処理が完了した場合には、通常運転動作において説明したように、頂点データを作成する(ステップS50)。CPU12は、ステップS46においてエラーが検出されなかった場合には(ステップS46でNo)、2値化処理S48、プライムコード・多重点情報取得処理S49、および頂点データ作成処理S50において画像処理プロセッサ15にエラーが発生したか否かを判別する(ステップS51)。画像処理プロセッサ15は、内蔵するステータスレジスタ(図示せず)に、2値化処理、プライムコード・多重点情報取得処理、および頂点データ作成処理の実行中/待機中を示すステータス情報をセットすることができるようになっており、ステップS51においては、CPU12が、かかるステータスレジスタを参照することにより、2値化処理、プライムコード・多重点情報取得処理、および頂点データ作成処理の実行中に画像処理プロセッサ15にエラーが発生したか否かを判別する。ステップS51のエラー検出処理の原理は、ステップS28のエラー検出処理の原理と同様であるので、その説明を省略する。そして、エラーが検出された場合には(ステップS51でYes)、CPU12は当該エラーに予め対応付けられたエラーコードをセットし(ステップS52)、ステップS67へ処理を移す。このように、2値化処理回路が実行する2値化処理、プライムコード・多重点情報取得処理、および頂点データ作成処理が正常に実行されているか否かを判別することによって、画像処理プロセッサ15の中の2値化処理回路が正常に機能しているか否かを判別することができる。つまり、ここで異常が検出された場合には、画像処理プロセッサ15の中でも、2値化処理回路が異常箇所であるいうことを特定することができる。
【0079】
画像処理プロセッサ15は、2値化処理、プライムコード・多重点情報取得処理、および頂点データ作成処理を完了した場合には、通常運転動作において説明したように、エッジトレース処理を実行する(ステップS53)。CPU12は、ステップS51においてエラーが検出されなかった場合には(ステップS51でNo)、エッジトレース処理S53において画像処理プロセッサ15にエラーが発生したか否かを判別する(ステップS54)。画像処理プロセッサ15は、内蔵するステータスレジスタ(図示せず)に、エッジトレース処理の実行中/待機中を示すステータス情報をセットすることができるようになっており、ステップS54においては、CPU12が、かかるステータスレジスタを参照することにより、エッジトレース処理の実行中に画像処理プロセッサ15にエラーが発生したか否かを判別する。ステップS54のエラー検出処理の原理は、ステップS28のエラー検出処理の原理と同様であるので、その説明を省略する。そして、エラーが検出された場合には(ステップS54でYes)、CPU12は当該エラーに予め対応付けられたエラーコードをセットし(ステップS55)、ステップS67へ処理を移す。このように、エッジトレース処理回路が実行するエッジトレース処理が正常に実行されているか否かを判別することによって、画像処理プロセッサ15の中のエッジトレース処理回路が正常に機能しているか否かを判別することができる。つまり、ここで異常が検出された場合には、画像処理プロセッサ15の中でも、エッジトレース処理回路が異常箇所であるいうことを特定することができる。
【0080】
画像処理プロセッサ15は、エッジトレース処理を完了した場合には、通常運転動作において説明したように、粒子の重なりチェック処理を実行する(ステップS56)。CPU12は、ステップS54においてエラーが検出されなかった場合には(ステップS54でNo)、重なりチェック処理S56において画像処理プロセッサ15にエラーが発生したか否かを判別する(ステップS57)。画像処理プロセッサ15は、内蔵するステータスレジスタ(図示せず)に、重なりチェック処理の実行中/待機中を示すステータス情報をセットすることができるようになっており、ステップS57においては、CPU12が、かかるステータスレジスタを参照することにより、重なりチェック処理の実行中に画像処理プロセッサ15にエラーが発生したか否かを判別する。ステップS57のエラー検出処理の原理は、ステップS28のエラー検出処理の原理と同様であるので、その説明を省略する。そして、エラーが検出された場合には(ステップS57でYes)、CPU12は当該エラーに予め対応付けられたエラーコードをセットし(ステップS58)、ステップS67へ処理を移す。このように、重なりチェック回路が実行する重なりチェック処理が正常に実行されているか否かを判別することによって、画像処理プロセッサ15の中の重なりチェック回路が正常に機能しているか否かを判別することができる。つまり、ここで異常が検出された場合には、画像処理プロセッサ15の中でも、重なりチェック回路が異常箇所であるいうことを特定することができる。
【0081】
画像処理プロセッサ15は、重なりチェック処理を完了した場合には、通常運転動作において説明したように、画像処理結果データの作成処理を実行する(ステップS59)。CPU12は、ステップS57においてエラーが検出されなかった場合には(ステップS57でNo)、結果データ作成処理S59において画像処理プロセッサ15にエラーが発生したか否かを判別する(ステップS60)。画像処理プロセッサ15は、内蔵するステータスレジスタ(図示せず)に、結果データ作成処理の実行中/待機中を示すステータス情報をセットすることができるようになっており、ステップS60においては、CPU12が、かかるステータスレジスタを参照することにより、結果データ作成処理の実行中に画像処理プロセッサ15にエラーが発生したか否かを判別する。ステップS60のエラー検出処理の原理は、ステップS28のエラー検出処理の原理と同様であるので、その説明を省略する。そして、エラーが検出された場合には(ステップS60でYes)、CPU12は当該エラーに予め対応付けられたエラーコードをセットし(ステップS61)、ステップS67へ処理を移す。このように、結果データ作成回路が実行する結果データ作成処理が正常に実行されているか否かを判別することによって、画像処理プロセッサ15の中の結果データ作成回路が正常に機能しているか否かを判別することができる。つまり、ここで異常が検出された場合には、画像処理プロセッサ15の中でも、結果データ作成回路が異常箇所であるいうことを特定することができる。
【0082】
CPU12は、ステップS60においてエラーが検出されなかった場合には(ステップS60でNo)、結果データ格納用メモリ21から画像処理結果データを読み出し(ステップS62)、フラッシュメモリカードリーダ22に、フラッシュメモリカード22aに記憶されているテスト結果データ27を読み出させる(ステップS63)。そして、画像処理結果データと、テスト結果データ27とを照合し(ステップS64)、照合の結果により、画像処理プロセッサ15にエラーが発生しているか否かを判別する(ステップS65)。正常に画像処理が行われた場合には、画像処理結果データとテスト結果データとが一致するはずであり、両データが一致していない場合には画像処理プロセッサ15にエラーが発生していることとなる。したがって、ステップS65においてエラーが検出された場合には(ステップS65でNo)、CPU12は当該エラーに予め対応付けられたエラーをセットし(ステップS66)、ステップS67へ処理を移す。また、ステップS65でエラーが検出されなかった場合も、CPU12はステップS67へ処理を移す。
【0083】
CPU12は、以上のような処理においてエラーを検出しなかった場合には、画像処理プロセッサ15は正常である旨を示す診断結果データを、またいずれかのエラーを検出した場合には、検出されたエラーのエラーコードを含む診断結果データを生成し、メインメモリ14に格納する(ステップS67)。そして、CPU12は、CPU基板5からの診断結果データの要求データを待機する(ステップS68)。ここでCPU基板5から要求データを受信した場合には(ステップS68でYes)、CPU基板5へと診断結果データを送信し(ステップS69)、処理を終了する。
【0084】
この後、CPU基板5は、データ処理部3との間で通信を開始し、データ処理部3から診断結果データの送信要求を受け付けた場合に、診断結果データをデータ処理部3へと送信する。データ処理部3では、この診断結果データが示す診断結果がディスプレイ装置の画面に表示される。例えば、診断結果データにエラーコードが含まれている場合には、データ処理部3は、このエラーコードを診断結果画面に表示する。このようにすることにより、ユーザまたは粒子画像解析装置1のメンテナンス業者等が当該エラーコードを確認して、画像処理基板4に発生しているエラーの種類、エラー発生箇所を特定することができる。
【0085】
また、以上説明した如き構成とすることにより、自己診断動作において、通常運転動作に必要な画像処理を画像処理プロセッサ15に実際に実行させ、当該画像処理が正常に実行されたか否かを判別するので、この自己診断動作で異常が検出されなければ、画像処理プロセッサ15の通常運転動作に必要な機能は保障されることとなる。
【0086】
また、画像処理プロセッサ15にSCAN回路、BIST(Built In Self Test)回路等を設け、これらによって画像処理プロセッサ15の自己診断を行う等、本実施の形態に係る画像処理プロセッサ15の診断機能と、他の診断機能とを組み合わせることも可能であり、このようにすることによって、自己診断の精度向上が期待できる。また、本実施の形態に係る画像処理回路の診断方法にあっては、上述したような診断専用の回路を画像処理プロセッサ15に内蔵する必要がなく、開発工数・設計工数を抑制することが期待できる。
【0087】
また、本実施の形態に係る画像処理回路の診断方法においては、他の診断方法では検出できなかった異常を検出することができる場合がある。
【0088】
また、本実施の形態に係る粒子画像解析装置1にあっては、画像処理プロセッサ15をメディアンフィルタ処理回路、ラプラシアンフィルタ処理回路、2値化処理回路、エッジトレース処理回路、重なりチェック回路、結果データ作成回路等の複数の機能ブロックに分けて構成している。本実施の形態に係る画像処理プロセッサ15のように、画像処理回路に複雑な処理を実行させる必要がある場合には、開発効率・保守効率を高めるために、画像処理回路を上記のように細かく機能ブロックに分けて設計し、上記機能ブロックごとにデバッグおよび評価を行うことが多い。そのため、デバッガとして開発・使用した機能(プログラム)をそのまま、またはこれを流用して本実施の形態に係る診断機能(プログラム)を実現することができる。したがって、このように複数の機能ブロックに分けて画像処理回路の開発・デバッグ・評価を行った場合には、特に開発効率・設計効率の向上が期待できる。
【0089】
なお、以上説明した実施の形態においては、テスト結果データ27が部分画像29および特徴情報31を含み、ステップS64の照合処理では、画像処理プロセッサ15による画像処理によって生成された部分画像、位置情報、面積値、直行カウント数、斜行カウント数、およびコーナカウント数と、テスト結果データ27との照合を行う構成について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、予め診断用の部分画像のみが与えられており、この診断用部分画像と、画像処理によって生成された部分画像との照合を行う構成としてもよい。
【0090】
また、本実施の形態においては、ICである画像処理プロセッサ15の診断を行う構成について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、ICの画像処理プロセッサと、他のデジタル回路とによって構成された画像処理回路全体の診断を行ってもよく、診断対象が画像処理専用の回路であれば、画像処理回路はどのような構成であってもよい。
【0091】
また、本実施の形態においては、フラッシュメモリカード22aにテスト用画像25、テスト用背景画像26、およびテスト結果データ27を記憶させておき、フラッシュメモリカードリーダ22によってこれらのプログラムまたはデータを読み出す構成について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、CD、DVD等の他の記録媒体にテスト用画像25、テスト用背景画像26、およびテスト結果データ27を記憶させておき、当該記録媒体を読み出し可能なCDドライブ、DVDドライブ等の他の記録媒体読出装置によってこれらのプログラムまたはデータを読み出す構成としてもよい。
【0092】
また、本実施の形態においては、画像処理基板4に設けられたCPU12によって画像処理プロセッサ15の自己診断機能に関するコンピュータプログラムが実行され、当該コンピュータプログラムをCPU12が実行したときに、画像処理プロセッサ15に処理要求を発して画像処理を実行させる構成について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、CPU基板5に内蔵されたCPUや、データ処理部3に設けられたCPU等、画像処理基板4の外部に設けられたCPUによって画像処理プロセッサ15の自己診断機能が実行され、当該コンピュータプログラムがこのようなCPU実行されているときに、前記CPUから画像処理プロセッサ15に処理要求を発して画像処理を実行させる構成としてもよい。
【0093】
また、本実施の形態においては、自己診断のコンピュータプログラム30を画像処理基板4の他の制御プログラムとは独立させて構成し、この自己診断のコンピュータプログラム30をフラッシュメモリカード22aに格納する構成としたが、これに限定されるものではなく、画像処理基板4の制御プログラムの内部に、ルーチンプログラムとして自己診断のコンピュータプログラムを組み込み、この制御プログラムをフラッシュメモリカード22aに格納してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係る画像処理回路の診断方法、粒子画像解析装置、およびコンピュータプログラムは、画像処理回路の診断に当該画像処理回路が有する画像処理機能を利用するので、画像処理機能を利用して診断機能を開発・設計することができ、従来に比して開発工数・設計工数を低減することが期待できるという効果を奏し、粒子像を含む粒子画像に対して所定の画像処理を実行する画像処理回路を診断する画像処理回路の診断方法、当該診断方法の実施に使用する粒子画像解析装置、およびコンピュータを粒子画像解析装置として機能させるためのコンピュータプログラムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置の測定部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置の測定部が備える撮像部の構成を示す模式図である。
【図4】テスト用画像の一例を示す模式図である。
【図5】図3に示したシースフローセルの拡大断面図であり、シースフローセルによって扁平な懸濁液流が形成される様子を示している。
【図6】本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置の通常運転動作のうち、画像処理プロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本実施の形態における係数の設定値を説明する模式図である。
【図8】プライムコードデータ格納用メモリの内容を示す模式図である。
【図9】プライムコードの定義を説明する模式図である。
【図10】多重点の概念を説明するための模式図である。
【図11】内側粒子像が存在するか否かの判別原理を説明する模式図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置の自己診断動作におけるCPUおよび画像処理プロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置の自己診断動作におけるCPUおよび画像処理プロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置の自己診断動作におけるCPUおよび画像処理プロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置の自己診断動作におけるCPUおよび画像処理プロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態に係る粒子画像解析装置の自己診断動作におけるCPUおよび画像処理プロセッサの処理手順を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子像を含む粒子画像に対して所定の画像処理を実行する画像処理回路を診断する画像処理回路の診断方法であって、
前記画像処理回路にテスト用粒子像を含むテスト用画像を与えて前記所定の画像処理を実行させるステップと、
前記画像処理回路による処理結果と、正常に動作する当該画像処理回路に対して、前記テスト用画像を与えたときに得られる処理結果に相当する診断用処理結果とを照合し、前記画像処理回路が正常に動作しているか否かを診断するステップと
を有する画像処理回路の診断方法。
【請求項2】
前記画像処理回路は、前記粒子画像に対して前記所定の画像処理を実行することにより、前記粒子画像から粒子像を含む部分画像を切り出すように構成されており、
前記画像処理回路に前記所定の画像処理を実行させるステップでは、前記画像処理回路に前記テスト用画像を与えて部分画像を生成させ、
前記画像処理回路が正常に動作しているか否かを診断するステップでは、前記画像処理回路によって生成された部分画像を含む前記処理結果と、正常に動作する当該画像処理回路に対して、前記テスト用画像を与えたときに得られる部分画像に相当する診断用部分画像を含む前記診断用処理結果とを照合する
請求項1に記載の画像処理回路の診断方法。
【請求項3】
粒子像を含む粒子画像に対して所定の画像処理を実行する画像処理回路と、
正常に動作する当該画像処理回路に対して、テスト用粒子像を含むテスト用画像を与えたときに得られる処理結果に相当する診断用処理結果を予め記憶させてある記憶媒体から、前記診断用処理結果を読み出す読出手段と、
前記画像処理回路にテスト用画像を与えたときに得られる処理結果と、前記読出手段によって前記記憶媒体から読み出された診断用処理結果とを照合し、前記画像処理回路が正常に動作しているか否かを診断する診断手段と
を備える粒子画像解析装置。
【請求項4】
前記画像処理回路は、前記粒子画像に対して前記所定の画像処理を実行することにより、前記粒子画像から粒子像を含む部分画像を切り出すように構成されており、
前記診断用処理結果は、正常に動作する前記画像処理回路に対して、前記テスト用画像を与えたときに得られる部分画像に相当する診断用部分画像を含み、
前記診断手段は、前記画像処理回路にテスト用画像を与えて生成させた部分画像を含む前記処理結果と、前記読出手段によって前記記憶媒体から読み出された前記診断用処理結果とを照合するように構成されている
請求項3に記載の粒子画像解析装置。
【請求項5】
前記画像処理回路は、
粒子画像に対してノイズ除去処理を実行するノイズ除去手段と、
当該ノイズ除去手段によってノイズを除去した粒子画像と、粒子画像から前記粒子像を除いた画像に相当する背景画像とに基づいて、粒子画像の背景を補正した画像を取得する背景補正手段と、
当該背景補正手段によって取得した画像に対して輪郭強調処理を実行する輪郭強調手段と、
当該輪郭強調手段によって輪郭強調処理を実行した画像に対して2値化処理を実行する2値化手段と、
当該2値化手段によって2値化処理を実行した画像に対してエッジ抽出処理を実行するエッジ抽出手段と
を有する請求項3または4に記載の粒子画像解析装置。
【請求項6】
前記ノイズ除去手段によるノイズ除去処理において、エラーが発生したか否かを判別する第1エラー発生判別手段と、
前記輪郭強調手段による輪郭強調処理において、エラーが発生したか否かを判別する第2エラー発生判別手段と、
前記2値化手段による2値化処理において、エラーが発生したか否かを判別する第3エラー発生判別手段と、
前記エッジ抽出手段によるエッジ抽出処理において、エラーが発生したか否かを判別する第4エラー発生判別手段と
をさらに備える請求項5に記載の粒子画像解析装置。
【請求項7】
前記第1乃至第4エラー発生判別手段は、エラー発生判別対象の処理が開始されたか否かを判別する手段を夫々含む請求項6に記載の粒子画像解析装置。
【請求項8】
前記第1乃至第4エラー発生判別手段は、エラー発生判別対象の処理が終了したか否かを判別する手段を夫々含む請求項4または7に記載の粒子画像解析装置。
【請求項9】
前記画像処理回路は、粒子画像に含まれる粒子像の特徴を示す特徴情報を取得する特徴情報取得手段をさらに有し、
前記診断用処理結果は、正常に動作する前記画像処理回路に対して、前記テスト用画像を与えたときに得られる特徴情報に相当する診断用特徴情報を含み、
前記診断手段は、前記画像処理回路にテスト用画像を与えて生成させた特徴情報を含む前記処理結果と、前記読出手段によって記憶媒体から読み出された前記診断用処理結果とを照合するように構成されている
請求項3乃至8のいずれかに記載の粒子画像解析装置。
【請求項10】
前記特徴情報取得手段は、粒子画像において粒子像が存在する位置を示す位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記エッジ抽出手段によって抽出されたエッジの直行成分、斜行成分、およびコーナ成分を夫々構成する画素数を各別に取得するエッジ画素数取得手段と、粒子像の面積値を取得する面積値取得手段とを有し、
前記診断用特徴情報は、正常に動作する前記画像処理回路に対して、前記テスト用画像を与えたときに得られる位置情報、粒子像のエッジの直行成分、斜行成分、およびコーナ成分を夫々構成する画素数、ならびに粒子像の面積値に夫々相当する情報を含む
請求項9に記載の粒子画像解析装置。
【請求項11】
前記読出手段が前記記憶媒体から情報を読み出すときに、エラーが発生したか否かを判別する第5エラー発生判別手段をさらに備える請求項3乃至10のいずれかに記載の粒子画像解析装置。
【請求項12】
粒子像を含む粒子画像に対して所定の画像処理を実行する画像処理回路と、記憶媒体に記憶された情報を読み出す読出部とを備えるコンピュータを、
前記画像処理回路に、前記テスト用画像を与えて前記所定の画像処理の実行を指示する画像処理実行指示手段と、
正常に動作する当該画像処理回路に対して、テスト用粒子像を含むテスト用画像を与えたときに得られる処理結果に相当する診断用処理結果を予め記憶させてある記憶媒体から、前記読出部に前記診断用処理結果を読み出させる読出手段と、
前記画像処理指示手段が前記画像処理回路に前記所定の画像処理の実行を指示したときに得られる処理結果と、前記読出手段によって読み出された診断用処理結果とを照合し、前記画像処理回路が正常に動作しているか否かを診断する診断手段として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項13】
前記画像処理回路は、前記粒子画像に対して前記所定の画像処理を実行することにより、前記粒子画像から粒子像を含む部分画像を切り出すように構成されており、
前記診断用処理結果は、正常に動作する前記画像処理回路に対して、前記テスト用画像を与えたときに得られる部分画像に相当する診断用部分画像を含み、
前記診断手段は、前記コンピュータを、前記画像処理回路にテスト用画像を与えて生成させた部分画像を含む前記処理結果と、前記読出手段によって前記記憶媒体から読み出された前記診断用処理結果とを照合させるように機能させる
請求項12に記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−71373(P2006−71373A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253283(P2004−253283)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】