説明

画像処理方法、画像処理装置および表示装置

【課題】より高い精度で立体視画像の視差を推定する。
【解決手段】画像処理方法は、第1の画像の1または複数の画素である第1の画素と、第2の画像において上記第1の画素群に対応する位置にある1または複数の画素である第2の画素とについて、上記第1の画像と上記第2の画像との間のバックマッチングによって第1の指標値を算出するステップ(ステップS103)と、上記第1の画素と上記第2の画素との間の相関性を示す相関性指標値を、上記第1の画素によって示される画像の複雑度を示す複雑度指標値を用いて正規化することによって第2の指標値を算出するステップ(ステップS105)と、上記第1の指標値と上記第2の指標値とをかけ合わせることによって第3の指標値を算出するステップ(ステップS107)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法、画像処理装置および表示装置に関し、特に、立体視画像の視差を検出する画像処理方法、画像処理装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体視画像を生成するために、例えば左眼画像と右眼画像に相当する2つの視点画像から視差を求める場合、ある画像を基準画像、他の画像を参照画像として、これらの画像の間でマッチング処理が行われる。具体的には、基準画像上のある画素(基準画素)について、参照画像上の相関性が高い画素(対応画素)が検出され、基準画素と対応画素との間の位置の差が、基準画素によって表示される画像の基準画像と参照画像との間の視差として検出される。
【0003】
この場合、基準画像では表示されているオブジェクトが参照画像では手前のオブジェクトに遮られて表示されていない状態(オクルージョン)が生じていると、基準画素に対する対応画素が正しく検出されない領域(オクルージョン領域)が発生する。そこで、基準画像と参照画像とを入れ替えてマッチング処理をするバックマッチングを用いてオクルージョン領域を検出し、検出されたオクルージョン領域における視差を、周辺領域で正しく検出された視差に基づいて推定する技術が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−282259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された技術では、オクルージョン領域の判定、およびそれに基づいた視差の推定の精度が十分ではない場合がある。そのため、より高い精度でオクルージョン領域を判定し、その結果としてより高い精度で視差を推定する技術が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、より高い精度で立体視画像の視差を推定することが可能な、新規かつ改良された画像処理方法、画像処理装置および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、第1の画像の1または複数の画素である第1の画素と、第2の画像において上記第1の画素群に対応する位置にある1または複数の画素である第2の画素とについて、上記第1の画像と上記第2の画像との間のバックマッチングによって第1の指標値を算出するステップと、上記第1の画素と上記第2の画素との間の相関性を示す相関性指標値を、上記第1の画素によって示される画像の複雑度を示す複雑度指標値を用いて正規化することによって第2の指標値を算出するステップと、上記第1の指標値と上記第2の指標値とをかけ合わせることによって第3の指標値を算出するステップとを含む画像処理方法が提供される。
【0008】
上記第1の画像および上記第2の画像は、相異なる視点に対応する立体視画像であり、上記第3の指標値は、上記第1の画像と上記第2の画像との間のマッチング処理によって検出された視差のうち、上記第1の画素に対応する位置での視差の信頼度を示す指標値であってもよい。
【0009】
上記画像処理方法は、上記第3の指標値に基づいて、上記第1の画素に対応する位置での視差が信頼し得るか否かを判定するステップと信頼し得ないと判定された上記第1の画素に対応する位置での視差を、上記検出された視差のうち信頼し得ると判定された別の位置での視差に基づいて推定された視差によって代替するステップとをさらに含んでもよい。
【0010】
上記第1の指標値は、上記第1の画像と上記第2の画像との間の水平方向および垂直方向のバックマッチングによってそれぞれ算出される指標値を足し合わせることによって算出されてもよい。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、第1の画像の1または複数の画素である第1の画素と、第2の画像において上記第1の画素群に対応する位置にある1または複数の画素である第2の画素とについて、上記第1の画像と上記第2の画像との間のバックマッチングによって第1の指標値を算出し、上記第1の画素と上記第2の画素との間の相関性を示す相関性指標値を、上記第1の画素によって示される画像の複雑度を示す複雑度指標値を用いて正規化することによって第2の指標値を算出し、上記第1の指標値と上記第2の指標値とをかけ合わせることによって第3の指標値を算出する指標値算出部を備える画像処理装置が提供される。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明のさらに別の観点によれば、表示部と、指標値算出部とを備え、上記指標値算出部は、第1の画像の1または複数の画素である第1の画素と、第2の画像において上記第1の画素群に対応する位置にある1または複数の画素である第2の画素とについて、上記第1の画像と上記第2の画像との間のバックマッチングによって第1の指標値を算出し、上記第1の画素と上記第2の画素との間の相関性を示す相関性指標値を、上記第1の画素によって示される画像の複雑度を示す複雑度指標値を用いて正規化することによって第2の指標値を算出し、上記第1の指標値と上記第2の指標値とをかけ合わせることによって第3の指標値を算出する表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、より高い精度で立体視画像の視差を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のパラメータ生成部の機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態における画像処理装置による処理の例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態における水平方向のバックマッチングの例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態における指標値算出の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.関連技術の説明
2.画像処理装置の構成
3.パラメータ生成部の構成
4.画像処理装置による処理
5.補足
【0017】
<1.関連技術の説明>
まず、本願発明の実施形態を理解するために必要な関連技術について説明する。
【0018】
(1−1.マッチング処理によるディスパリティの検出)
左眼画像と右眼画像に相当する2つの視点画像から視差(ディスパリティ)を検出する場合、マッチング処理が行われる。マッチング処理では、2つの視点画像のうちの第1の画像が基準画像になり、第2の画像が参照画像になる。マッチング処理は、基準画像および参照画像にそれぞれ含まれる、1または複数の画素を処理単位とする。具体的には、基準画像に含まれる任意の基準画素について、参照画像に含まれる画素の中で最も相関性が高い画素が対応画素として特定され、基準画素から対応画素への動きベクトル、すなわち基準画素と対応画素との位置の差が、基準画素によって表示される画像についてのディスパリティとして検出される。
【0019】
(1−2.オクルージョン領域におけるディスパリティの誤検出)
2つの視点画像の間では、第1の画像では表示されている領域が、第2の画像では手前のオブジェクトに遮られるなどして表示されていない場合がある。このような状態をオクルージョンという。これは、例えば、第1の画像では、第1のオブジェクトが第2のオブジェクトの背後に表示されているのに対して、第2の画像では、視点の変化によって、第1のオブジェクトが第2のオブジェクトの陰に隠れて表示されていないような場合である。ここで、オクルージョンが生じている場合に第1の画像でしか表示されない領域を、オクルージョン領域という。マッチング処理によるディスパリティの検出において、オクルージョン領域に含まれる基準画素については、対応画素にあたる画素が参照画像に存在しない。この場合、基準画素との相関性が最も高い参照画像の画素は、例えば基準画素の位置とはかけ離れた位置にある画素でありうる。それゆえ、マッチング処理において、オクルージョン領域に含まれる基準画素については、正しいディスパリティが検出されない場合がある。
【0020】
(1−3.バックマッチング)
バックマッチングは、例えば上記のようなオクルージョン領域におけるマッチング処理によるディスパリティの誤検出を判定する手法である。バックマッチングでは、ディスパリティの検出のための第1のマッチング処理の基準画像と参照画像とを入れ替えた第2のマッチング処理が行われる。つまり、第2のマッチング処理では、第2の画像が基準画像になり、第1の画像が参照画像になる。ある画素について、第2のマッチング処理の結果が第1のマッチング処理の結果と符合した場合、その画素についてマッチング処理によって検出されたディスパリティの信頼度は高いとみなされる。具体的には、第1のマッチング処理において画素xを基準画素として特定された対応画素が画素xである場合、第2のマッチング処理において画素xを基準画素として特定された対応画素が画素x、または画素xの近傍の画素であれば、画素xについてのマッチング処理によって検出されたディスパリティの信頼度は高いと推定される。
【0021】
(1−4.バックマッチングの課題)
上記のバックマッチングによって、オクルージョン領域におけるマッチング処理によるディスパリティの誤検出をある程度の精度で判定することは可能である。しかし、オクルージョン領域以外の領域でも、バックマッチングにおける第1のマッチング処理の結果と第2のマッチング処理の結果とは、必ずしも符合しない。例えば、画像が平坦な部分で、相隣接する画素が同様の画素値を有する場合などには、第1のマッチング処理の結果と第2のマッチング処理の結果との間には若干のずれが生じうる。それゆえ、各画素における第1のマッチング処理の結果と第2のマッチング処理の結果との差分値は、分散が大きい分布をとりうる。この場合、ディスパリティが誤検出されている領域としてオクルージョン領域を特定するためには、差分値に閾値を設定する必要がある。しかし、閾値の設定についての定量的な指標がないため、適切な閾値を設定することは難しい。結果として、バックマッチングによるディスパリティの誤検出の判定の精度は、十分ではない場合がある。
【0022】
以下で、かかる関連技術の課題に対処するための本発明の一実施形態について説明する。
【0023】
<2.画像処理装置の構成>
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る画像処理装置の概略構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0024】
画像処理装置10は、入力画像V,Vから出力画像V,V,・・・Vを生成する。入力画像V,Vは、それぞれ右眼画像および左眼画像に対応する視点画像であり、相異なる視点に対応する第1の画像および第2の画像の例である。一方、出力画像V,V,・・・Vは、立体視画像を表示するための複数の視点画像である。出力画像V,V,・・・Vは、例えば、4視点、6視点、8視点などの多視点に対応する画像でありうる。画像処理装置10は、入力画像V,Vを用いたマッチング処理によってディスパリティを検出し、検出したディスパリティに基づいて入力画像V,Vを合成することによって、出力画像V,V,・・・Vを生成する。
【0025】
ここで、上述のように、マッチング処理は、各画像に含まれる1または複数の画素を単位として実行される。画像処理装置10では、マッチング処理にブロックマッチング法が用いられる。ブロックマッチング法は、画像を所定の大きさの画素ブロックに分割し、基準画像に含まれる任意の基準画素ブロックについて、参照画像に含まれる画素ブロックの中で最も相関性が高い画素ブロックを対応画素ブロックとして特定する。基準画素ブロックから対応画素ブロックへのベクトル(例えば、それぞれのブロックの左上端の画素の位置を結ぶベクトル)が、基準画素ブロックにおけるディスパリティPとして検出される。
【0026】
なお、画像処理装置10では、各画素の輝度値の差分絶対値和(SAD:Sum of Absolute Difference)が、画素ブロック間の相関性を示す相関性指標値として用いられる。相関性指標値としては、SADの他に、例えば差分2乗和(SSD:Sum of Squared Difference)、または正規化相互相関(ZNCC:Zero-mean Normalized Cross-Correlation)などが用いられうる。マッチング処理には、ブロックマッチング法の他に、例えばDPマッチング法または位相相関限定法などの手法が用いられうる。これらの手法でも、処理の単位となる1または複数の画素について相関性指標値が設定される。
【0027】
画像処理装置10は、上記の機能を少なくとも有する、例えば映像編集装置、撮像装置、またはPC(Personal Computer)などの装置でありうる。画像処理装置10は、上記の機能を実現するために、パラメータ生成部100、オクルージョン判定部200および画像合成部300を少なくとも含む。これらの各部は、例えばDSP(Digital Signal Processor)によって実現されうる。画像処理装置10は、さらに、入力画像V,Vおよび出力画像V,V,・・・Vの入出力のためのHDMI(High Definition Multimedia Interface)などのインターフェース、ならびに処理に用いる画像および数値を格納するRAM(Random Access Memory)などの記憶装置を有してもよい。また、画像処理装置10は、入力画像V,Vを撮像するための撮像部、および出力画像V,V,・・・Vを表示するための表示部を有してもよい。
【0028】
パラメータ生成部100は、入力画像V,Vを用いて、マッチング処理、バックマッチング、および画像のアクティビティを算出する処理などを実行し、各種パラメータを生成する。パラメータ生成部100で生成されるパラメータには、ブロックマッチング処理において検出された入力画像V,VのディスパリティP、およびディスパリティPの信頼度を示す指標値Dが含まれる。ディスパリティPは、画像合成部300に提供され、指標値Dは、オクルージョン判定部200に提供される。なお、指標値Dは、バックマッチングによって得られたディスパリティ検出の信頼度を示す指標値Dに、入力画像V,Vの間の相関性指標値を画像のアクティビティで正規化した指標値Dをかけ合わせることによって生成される。かかるパラメータ生成部100の詳細な構成については後述する。
【0029】
オクルージョン判定部200は、パラメータ生成部100から提供された、ディスパリティPの信頼度を示す指標値Dに基づいて、入力画像V,Vにおけるオクルージョン領域を判定する。オクルージョン領域ではディスパリティは正しく検出されない、すなわち誤検出されていると考えられるため、オクルージョン領域は、指標値Dによって示されるディスパリティ検出の信頼度が所定の閾値を下回る画素ブロックとして特定されうる。特定されたオクルージョン領域の情報は、画像合成部300に提供される。後述するように、パラメータ生成部100から入力される指標値Dは、2極化した分布を有する値である。それゆえ、関連技術として紹介したディスパリティの結果に基づくディスパリティの誤検出判定に比べて、適切な閾値の設定が容易である。従って、オクルージョン判定部200は、高い精度でオクルージョン領域を判定することが可能である。
【0030】
画像合成部300は、パラメータ生成部100から提供されたディスパリティPと、オクルージョン判定部200から入力されるオクルージョン領域の情報とに基づいて、入力画像V,Vを合成することによって出力画像V,V,・・・Vを生成する。上述のように、オクルージョン領域において、パラメータ生成部100から提供されるディスパリティPは、誤検出されている可能性が高い。それゆえ、画像合成部300は、オクルージョン領域において、マッチング処理によって検出されたディスパリティPに代えて、オクルージョン領域の周辺の、ディスパリティPが正しく検出されている領域のディスパリティPから推定されたディスパリティの値を用いる。
【0031】
従って、オクルージョン判定部200によるオクルージョン領域の判定の精度は、画像合成部300によって生成される出力画像V,V,・・・Vの品質に影響する。オクルージョン領域の判定の精度が低い場合、例えば、オクルージョン領域において誤検出されているディスパリティPがそのまま用いられたり、正しく検出されているディスパリティPが用いられずに周辺領域のディスパリティから推定されたりしうる。結果として、出力画像V,V,・・・Vは不自然な立体視画像になりうる。一方、オクルージョン領域の判定の精度が高い場合、出力画像V,V,・・・Vはより自然な立体視画像になりうる。
【0032】
<3.パラメータ生成部の構成>
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係る画像処理装置のパラメータ生成部の構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置10のパラメータ生成部100の機能構成を示すブロック図である。
【0033】
上述のように、パラメータ生成部100は、入力画像V,Vを用いて、マッチング処理、バックマッチング、および画像のアクティビティを算出する処理などを実行し、各種パラメータを生成する。パラメータ生成部100で生成されるパラメータには、ブロックマッチング処理において検出された入力画像V,VのディスパリティP、および入力画像V,Vのディスパリティ検出の信頼度を示す指標値Dが含まれる。パラメータ生成部100は、上記の機能を実現するために、ブロックマッチング部111,113、アクティビティ算出部121,123、および指標値算出部130を有する。
【0034】
ブロックマッチング部111,113は、入力画像V,Vを用いたマッチング処理を実行する。上述のように、画像処理装置10では、マッチング処理にブロックマッチング法が用いられる。ブロックマッチング部111は、入力画像Vを基準画像、入力画像Vを参照画像としてマッチング処理を実行する。一方、ブロックマッチング部113は、入力画像Vを基準画像、入力画像Vを参照画像としてマッチング処理を実行する。入力画像Vを基準としてディスパリティPが検出される場合、ブロックマッチング部111によるマッチング処理の結果がディスパリティPとして画像合成部300に提供される。また、入力画像VRを基準としてディスパリティPが検出される場合、ブロックマッチング部113によるマッチング処理の結果がディスパリティPとして画像合成部300に提供される。
【0035】
ここで、ブロックマッチング部111,113のそれぞれにおけるマッチング処理は、互いに基準画像と参照画像が逆転した2つのマッチング処理である。それゆえ、ブロックマッチング部111,113のそれぞれにおけるマッチング処理の結果を相互に参照することによって、マッチング処理によるディスパリティの誤検出を判定するバックマッチングを行うことが可能である。例えば、ブロックマッチング部111におけるマッチング処理で、入力画像Vの画素ブロックBを基準画素ブロックとして特定された、入力画像Vの対応画素が画素ブロックBであるとする。この場合、ブロックマッチング部113におけるマッチング処理で、入力画像Vの画素ブロックBを基準画素ブロックとして特定された入力画像Vの対応画素ブロックが、画素ブロックB、または画素ブロックBの近傍の画素ブロックであれば、ブロックマッチング部111におけるマッチング処理によって検出されたディスパリティの信頼度は高いと推定される。
【0036】
アクティビティ算出部121,123は、入力画像V,Vについて、画像のアクティビティA,Aをそれぞれ算出する。アクティビティ算出部121は、入力画像Vのアクティビティを算出する。また、アクティビティ算出部123は、入力画像Vのアクティビティを算出する。画像のアクティビティAは、画像の複雑度を示す複雑度指標値であって、画素または画素ブロックごとに算出されうる。例えば、画素単位のアクティビティAは、対象になる画素と、その近傍(例えば8近傍)の各画素との間の輝度値の差分絶対値の平均値でありうる。また、例えば、画素ブロック単位のアクティビティAは、画素ブロック内の画素についての画素単位のアクティビティAの総和でありうる。なお、アクティビティAの算出には、輝度値の差分絶対値の他に、例えば輝度値の分散、またはダイナミックレンジなどが用いられてもよい。
【0037】
指標値算出部130は、ブロックマッチング部111,113、およびアクティビティ算出部121,123によって算出された値に基づいて、ブロックマッチング部111またはブロックマッチング部113において検出された入力画像V,VのディスパリティPの信頼度を示す指標値Dを算出する。指標値算出部130の処理については、後に詳述する。
【0038】
<4.画像処理装置による処理>
次に、図3〜5を参照して、本発明の一実施形態に係る画像処理装置による処理の例について説明する。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態における画像処理装置10による処理の例を示すフローチャートである。ここでは、画像処理装置10が、入力画像Vを基準にしてディスパリティPを検出し、それとともに指標値Dによってオクルージョン領域を判定して、周辺領域のディスパリティPを用いてオクルージョン領域のディスパリティを補充する。
【0040】
まず、パラメータ生成部100のブロックマッチング部111が、マッチング処理によって、入力画像Vを基準にしたディスパリティPを検出する(ステップS101)。次に、指標値算出部130が、ブロックマッチング部111によるマッチング処理の結果に加えて、ブロックマッチング部113によるマッチング処理の結果を参照して、入力画像Vの位置(x,y)にある画素ブロックについて、バックマッチングによって第1の指標値D(x,y)を算出する(ステップS103)。
【0041】
ここで、ステップS103は、第1の画像(入力画像V)の位置(x,y)にある1または複数の画素である第1の画素と、第2の画像(入力画像V)の位置(x,y)にある1または複数の画素である第2の画素とについて、第1の画像と第2の画像との間のバックマッチングによって第1の指標値D(x,y)を算出するステップである。
【0042】
次に、指標値算出部130が、入力画像Vの位置(x,y)にある画素ブロックについて、ブロックマッチング部111によって算出された入力画像V,Vの間のSAD値を、アクティビティ算出部121によって算出された入力画像VのアクティビティA(x,y)で正規化することによって、第2の指標値D(x,y)を算出する(ステップS105)。
【0043】
ここで、ステップS105は、第1の画素と第2の画素との間の相関性指標値(入力画像V,Vの間のSAD値)を、第1の画素によって示される画像の複雑度指標値(アクティビティA(x,y))を用いて正規化することによって第2の指標値D(x,y)を算出するステップである。
【0044】
次に、指標値算出部130が、第1の指標値D(x,y)と第2の指標値D(x,y)とをかけ合わせることによって、第3の指標値D(x,y)を算出する(ステップS107)。指標値算出部130は、第3の指標値D(x,y)を、ディスパリティPの信頼度を示す指標値Dとしてオクルージョン判定部200に提供する。
【0045】
次に、オクルージョン判定部200が、指標値算出部130から提供された指標値D、すなわち第3の指標値D(x,y)に基づいて、入力画像Vにおけるオクルージョン領域を判定する(ステップS109)。オクルージョン判定部200は、判定されたオクルージョン領域の情報を画像合成部300に提供する。
【0046】
ここで、ステップS109は、第3の指標値D(x,y)に基づいて、マッチング処理によって検出された位置(x,y)での視差(ディスパリティ)が信頼し得るか否かを判定するステップである。検出された視差が信頼し得る場合とは、位置(x,y)がオクルージョン領域に含まれない場合であり、検出された視差が信頼し得ない場合とは、位置(x,y)がオクルージョン領域に含まれる場合でありうる。
【0047】
次に、画像合成部300が、オクルージョン判定部200によって判定されたオクルージョン領域のディスパリティを、周辺領域のディスパリティから推定されたディスパリティによって代替する(ステップS111)。ここで、オクルージョン領域は、ブロックマッチング部111によるマッチング処理で検出されたディスパリティPの信頼度が低い、すなわちディスパリティが誤検出されていると推定される領域である。一方、周辺領域は、ディスパリティPの信頼度が高い、すなわちディスパリティが正しく検出されていると推定される領域である。
【0048】
ここで、ステップS111は、信頼し得ないと判定された位置(x,y)での視差(ディスパリティ)を、信頼し得ると判定された別の位置での視差に基づいて推定された視差によって代替するステップである。信頼し得ない視差とは、オクルージョン領域において検出されたディスパリティであり、信頼し得る視差とは、オクルージョン領域の周辺領域で正しく検出されたディスパリティでありうる。
【0049】
続いて、図4および図5を参照して、上記のステップS103、ステップS105、およびステップS107における処理について、さらに詳しく説明する。
【0050】
図4は、本発明の一実施形態における水平方向のバックマッチングの例を示す図である。図4において示される例では、入力画像Vを基準画像にした水平方向の第1のマッチング処理によって、各画素ブロックの座標(x,y)ごとに検出されるディスパリティu(x,y)、および入力画像Vを基準画像にした水平方向の第2のマッチング処理によって同様に検出されるディスパリティu(x,y)から、水平方向バックマッチング差分値D(x,y)が算出される。
【0051】
ここで、ディスパリティu(x,y)およびディスパリティu(x,y)は、いずれもマッチング処理において画素ブロック間で抽出されるベクトル量である。マッチング処理が水平方向について行われているため、これらのディスパリティのベクトルの向きは、左向きまたは右向きのいずれかである。それゆえ、図示されているように、ディスパリティは、単一の軸上で+と−によって表現されうる。なお、入力画像V,Vは、それぞれ左眼画像および右眼画像に対応する画像であるため、ディスパリティは主として水平方向に発生する。それゆえ、マッチング処理は図示されているように水平方向について行われる。後述するように、垂直方向についてのマッチング処理がさらに行われてもよい。
【0052】
上記の例において、水平方向バックマッチング差分値D(x,y)は、以下の式1によって算出される。
【0053】
【数1】

【0054】
ここで、ディスパリティu(x+u(x,y),y)は、第1のマッチング処理によって検出されたディスパリティu(x,y)を第1のマッチング処理における基準画素ブロックのx座標に加えた位置の画素ブロック、すなわち第1のマッチング処理における対応画素ブロックについて、第2のマッチング処理で検出されるディスパリティである。つまり、水平方向バックマッチング差分値D(x,y)は、第1のマッチング処理において「行くベクトル」と、第2のマッチング処理において「戻るベクトル」との和の絶対値である。「行くベクトル」と「戻るベクトル」とは、水平方向について逆向きのベクトルであるため、これらのベクトルが同じ大きさに近づくほど、和の絶対値である水平方向バックマッチング差分値D(x,y)の値は0に近づく。
【0055】
図5は、本発明の一実施形態における指標値算出の例を示す図である。図5には、水平方向バックマッチング差分値D(x,y)と垂直方向バックマッチング差分値D(x,y)とが加算されて第1の指標値D(x,y)が生成され、さらに、第1の指標値D(x,y)に、第2の指標値D(x,y)がかけ合わされて、第3の指標値D(x,y)が生成される例が示されている。
【0056】
水平方向バックマッチング差分値D(x,y)は、図4を参照して説明したように、入力画像Vを基準画像にした水平方向のマッチング処理によって検出されるディスパリティu(x,y)と、入力画像Vを基準画像にした水平方向のマッチング処理によって検出されるディスパリティu(x,y)との間の差分絶対値である。
【0057】
垂直方向バックマッチング差分値D(x,y)は、水平方向と同様にして求められる。すなわち、垂直方向バックマッチング差分値D(x,y)は、入力画像Vを基準画像にした垂直方向のマッチング処理によって検出されるディスパリティv(x,y)と、入力画像Vを基準画像にした垂直方向のマッチング処理によって検出されるディスパリティv(x,y)との間の差分絶対値である。
【0058】
第1の指標値D(x,y)は、水平方向バックマッチング差分値D(x,y)と垂直方向バックマッチング差分値D(x,y)を足し合わせることによって算出されうる。第1の指標値D(x,y)は、位置(x,y)の画素ブロックについて、ブロックマッチング部111またはブロックマッチング部113によって検出されたディスパリティの信頼度を示す指標値でありうる。第1の指標値D(x,y)は、例えば以下の式2によって算出されうる。
【0059】
【数2】

【0060】
なお、本実施形態において、入力画像Vと入力画像Vとは、それぞれ左眼画像と右眼画像とに対応する画像である。それゆえ、入力画像Vと入力画像Vとの間で生じているディスパリティは、主に水平方向のディスパリティである。しかし、例えば解像度が高い場合には、左眼画像と右眼画像とを撮像する撮像装置の位置の垂直方向のずれなどによって、垂直方向のディスパリティが生じる場合がある。そこで、本実施形態では、水平方向バックマッチング差分値D(x,y)と、垂直方向バックマッチング差分値D(x,y)とを加算して、マッチング処理によって検出されるディスパリティの信頼度を示す第1の指標値D(x,y)を生成する。例えば解像度がそれほど高くなく、垂直方向のディスパリティv(x,y)を無視しうる場合には、水平方向バックマッチング差分値D(x,y)がそのまま第1の指標値D(x,y)として用いられてもよい。
【0061】
第2の指標値D(x,y)は、位置(x,y)の画素ブロックについて、入力画像Vと入力画像Vとの間の相関性指標値I(x,y)を、画素ブロックのアクティビティA(x,y)で正規化することによって算出されうる。なお、指標値I(x,y)は、ブロックマッチング部111またはブロックマッチング部113によって算出される。また、アクティビティA(x,y)は、アクティビティ算出部121またはアクティビティ算出部123によって算出される。入力画像Vを基準にする場合は、アクティビティ算出部121によって算出されたアクティビティA(x,y)が、入力画像Vを基準にする場合は、アクティビティ算出部123によって算出されたアクティビティA(x,y)が、それぞれアクティビティA(x,y)として用いられうる。第2の指標値D(x,y)は、位置(x,y)の画素ブロックについて、ブロックマッチング部111またはブロックマッチング部113によって検出されたディスパリティの信頼度を示す指標値でありうる。第2の指標値D(x,y)は、例えば以下の式3によって算出される。
【0062】
【数3】

【0063】
第3の指標値D(x,y)は、第2の指標値D(x,y)に、上記の第1の指標値D(x,y)をかけ合わせることによって算出されうる。第3の指標値D(x,y)は、位置(x,y)の画素ブロックについて、ブロックマッチング部111またはブロックマッチング部113によって検出されたディスパリティの信頼度を示す指標値でありうる。第3の指標値D(x,y)は、例えば以下の式4によって算出されうる。
【0064】
【数4】

【0065】
ここで、図示されている例を参照して、指標値算出部130が指標値Dとして出力する第3の指標値Dについて、第1の指標値D(x,y)と比較してさらに説明する。
【0066】
まず、第1の指標値D(x,y)は、水平方向バックマッチング差分値D(x,y)、および垂直方向バックマッチング差分値D(x,y)を足し合わせたものである。図示された例において、例えば水平方向バックマッチング差分値D(x,y)は、オブジェクト(魚)の左側において、検出されたディスパリティの信頼度が比較的低いことを示している。なお、図示された例において、色がより白に近い部分には、検出されたディスパリティの信頼度がより高いことを示す値が分布している。一方、色がより黒に近い部分には、検出されたディスパリティの信頼度がより低いことを示す値が分布している。
【0067】
しかし、水平方向バックマッチング差分値D(x,y)では、信頼度が高い部分から低い部分までの値が段階的に分布している。例えば、水平方向バックマッチング差分値D(x,y)では、信頼度が最も高いことを示す値が分布している部分(白い部分)と、信頼度が最も低いことを示す値が分布している部分(黒い部分)との間に、これらの値の中間の値(ハッチング部分)が段階的に分布している。
【0068】
そのため、水平方向バックマッチング差分値D(x,y)を用いてオクルージョン領域を特定するためには、検出されたディスパリティについてどの程度の信頼度を示す値を閾値に設定するかが問題になる。例えば、閾値によって示される信頼度が低すぎれば、実際にはオクルージョンが発生している部分がオクルージョン領域とは判定されず、誤検出されたディスパリティがそのまま画像の合成に用いられてしまう。一方、閾値によって示される信頼度が高すぎれば、実際にはオクルージョンが発生していない部分がオクルージョン領域であると判定され、ディスパリティを推定によって補う部分が必要以上に広くなってしまう。
【0069】
これに対して、第3の指標値D(x,y)では、値が、検出されたディスパリティについて、信頼度が高いことを示す部分と、信頼度が低いことを低い部分とに二極化している。図示された例では、画像が、信頼度が最も高いことを示す値が分布している部分(白い部分)と、信頼度が最も低いことを示す値が分布している部分(黒い部分)とにほぼ二分されている。それゆえ、第3の指標値D(x,y)を用いてオクルージョン領域を特定する場合、閾値の設定は比較的容易である。従って、オクルージョン判定部200は、オクルージョン領域をより明確に判定することができる。その結果、画像合成部300では、より高い精度での視差の推定に基づいて、出力画像V,V,・・・Vを生成することができる。
【0070】
<5.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
例えば、上記実施形態では、画像処理装置の各部がDSPによって実現されうるものとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、画像処理装置の各部は、専用のハードウェアによって実現されてもよく、またCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)もしくはハードディスクなどの記憶装置、またはリムーバブルディスクもしくはフラッシュメモリなどの記憶媒体に格納されたプログラムを実行することによってソフトウェアとして実現されてもよい。
【0072】
また、例えば、上記実施形態では、2つのマッチング処理と、画像のアクティビティを算出する処理とが並列された要素によって実行されるものとしたが、これは必ずしも各処理の順序および各処理のための回路構成を限定するものではない。例えば、各処理は、並行して処理されてもよいし、順次処理されてもよい。また、各処理のための回路構成は、処理の順序に合わせて適宜設計されうる。
【0073】
また、上記実施形態では、画像処理装置について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、本発明は、表示装置として実施されてもよい。この場合、表示装置は、例えば上記実施形態で説明された画像処理装置の各部と同様の機能構成を有し、さらに画像合成部によって生成された出力画像を表示する表示部を有してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 画像処理装置
100 パラメータ生成部
200 オクルージョン判定部
300 画像合成部
111,113 ブロックマッチング部
121,123 アクティビティ算出部
130 指標値算出部
第1の指標値
第2の指標値
第3の指標値


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画像の1または複数の画素である第1の画素と、第2の画像において前記第1の画素に対応する位置にある1または複数の画素である第2の画素とについて、前記第1の画像と前記第2の画像との間のバックマッチングによって第1の指標値を算出するステップと、
前記第1の画素と前記第2の画素との間の相関性を示す相関性指標値を、前記第1の画素によって示される画像の複雑度を示す複雑度指標値を用いて正規化することによって第2の指標値を算出するステップと、
前記第1の指標値と前記第2の指標値とをかけ合わせることによって第3の指標値を算出するステップと、
を含む画像処理方法。
【請求項2】
前記第1の画像および前記第2の画像は、相異なる視点に対応する視点画像であり、
前記第3の指標値は、前記第1の画像と前記第2の画像との間のマッチング処理によって検出された視差のうち、前記第1の画素に対応する位置での視差の信頼度を示す指標値である、
請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記第3の指標値に基づいて、前記第1の画素に対応する位置での視差が信頼し得るか否かを判定するステップと、
信頼し得ないと判定された前記第1の画素に対応する位置での視差を、前記検出された視差のうち信頼し得ると判定された別の位置での視差に基づいて推定された視差によって代替するステップと、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の指標値は、前記第1の画像と前記第2の画像との間の水平方向および垂直方向のバックマッチングによってそれぞれ算出される指標値を足し合わせることによって算出される、請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項5】
第1の画像の1または複数の画素である第1の画素と、第2の画像において前記第1の画素群に対応する位置にある1または複数の画素である第2の画素とについて、前記第1の画像と前記第2の画像との間のバックマッチングによって第1の指標値を算出し、
前記第1の画素と前記第2の画素との間の相関性を示す相関性指標値を、前記第1の画素によって示される画像の複雑度を示す複雑度指標値を用いて正規化することによって第2の指標値を算出し、
前記第1の指標値と前記第2の指標値とをかけ合わせることによって第3の指標値を算出する指標値算出部を備える画像処理装置。
【請求項6】
表示部と、
指標値算出部とを備え、
前記指標値算出部は、
第1の画像の1または複数の画素である第1の画素と、第2の画像において前記第1の画素群に対応する位置にある1または複数の画素である第2の画素とについて、前記第1の画像と前記第2の画像との間のバックマッチングによって第1の指標値を算出し、
前記第1の画素と前記第2の画素との間の相関性を示す相関性指標値を、前記第1の画素によって示される画像の複雑度を示す複雑度指標値を用いて正規化することによって第2の指標値を算出し、
前記第1の指標値と前記第2の指標値とをかけ合わせることによって第3の指標値を算出する表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−164027(P2012−164027A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22065(P2011−22065)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】