説明

画像処理方法、画像処理装置および記録物

【課題】交互駆動方式で印刷される画像であっても埋め込み画像の画素情報を失うことなく、多階調画像などの被埋め込み画像に2値画像などの埋め込み画像を重畳でき、偽変造耐性の優れた記録物を得ることができる画像処理方法および画像処理装置を提供する。
【解決手段】主走査方向にライン状に配列されたヘッドのうち偶数番目のヘッドと奇数番目ヘッドとで交互に画素を転写する交互駆動方式で印刷される画像を処理する画像処理方法であって、第1の画像データの各画素を千鳥状の配列に並び換え、この千鳥状の配列に並べられた各画素を正方向に45度回転させた状態に並び換え、この並び換えられた各画素に対し第2の画像(文字や幾何学模様など2値画像)の各画素を重畳し、この第2の画像の各画素を重畳した各画素を逆方向に45度回転させた状態で元の千鳥状の配列に並び換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、複数の発熱体をライン状に配列してなるライン形のサーマルヘッドを用いて熱転写記録を行なう熱転写記録方式に用いる画像処理方法および画像処理装置に係り、特に各種免許証等の個人認証用顔画像などの多階調画像を熱転写記録する溶融型熱転写記録方式に用いる画像処理方法および画像処理装置に関する。
また、本発明は、上記画像処理方法および画像処理装置を用いて作成された記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば、各種免許証、クレジットカード、会員証などの個人認証用の顔画像が入った画像表示体に顔画像を記録する方法としては、昇華型熱転写記録方法が主流となっている。この昇華型熱転写記録方法は、フィルム状支持体の上に昇華性(あるいは、熱移行性)の染料を熱転写可能にコーティングしてなる熱転写リボンと、昇華性染料を受容できる受容層を有する被記録媒体とを重ね合わせ、サーマルヘッドなどにより、記録する原画像データに基づき熱転写リボンを選択的に加熱し、被記録媒体に所望の画像を昇華転写記録するものである。
【0003】
この昇華型熱転写記録方法によれば、階調性豊かなカラー画像が手軽に記録できることは広く一般的に知られている。しかし、昇華型熱転写記録方法では、昇華性材料で染色できる材料が限られており、限られた被記録媒体に対してのみしか適応できないという欠点がある。また、一般的に昇華性染料は、耐光性、耐溶剤性などの画像耐久性が劣っているという欠点もある。
【0004】
一方、溶融型熱転写記録方法は、フィルム状支持体の上に着色顔料あるいは染料を樹脂やワックスなどのバインダに分散させたものをコーティングしてなる熱転写リボンを選択的に加熱し、被記録媒体にバインダごと転写し、所望の画像を記録するものである。
【0005】
この溶融型熱転写記録方法によれば、着色材料を一般的に耐光性の良いといわれる無機および有機顔料を選択できる。また、バインダに用いる樹脂やワックスなどを工夫することができるため、耐溶剤性を向上させることができる。基本的にバインダに対する接着性を有している被記録媒体であれば何でもよく、幅広い被記録媒体を選択することができるなど、昇華型熱転写記録方法に対して利点がある。
【0006】
しかし、溶融型熱転写記録方法は、転写したドットのサイズを変化させて階調記録を行なうドット面積階調法を用いているため、ドットサイズを正確にコントロールして多階調記録を行なうのには、様々な工夫が必要となる。たとえば、転写ドットの配列をいわゆる千鳥状に並べて記録する方法(以降、これを交互駆動方法と称す)がある(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
この交互駆動方法を用いると、サーマルヘッドの隣り合う発熱体の熱干渉が減らせられ、隣接画素の影響を受けることなく、ドットサイズをコントロールすることができるため、良好な多階調記録を行なうことができる。
【特許文献1】特公平6−59739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記方法には以下のような課題があった。
【0009】
すなわち、上記の交互駆動方式では、ドットを千鳥状に並び替えて画像を形成するため、ドットを転写しない部分の画素情報が失われてしまう。顔画像のような多階調画像では千鳥状に画素情報が失われても、顔画像としての情報を失うことはないが、文字や幾何学模様など2値画像では千鳥状にドットを転写してしまうと、ドットが転写されない部分の画素情報を失ってしまい、文字や幾何学模様として機能しなくなると言う課題がある。
【0010】
また、文字や幾何学模様などを多階調画像に重畳した画像を有する印刷物を形成することにより、偽造や変造がし難くなり、偽変造耐性に優れた印刷物を得ることができるが、重畳した文字や幾何学模様などの2値画像の画素情報を失ってしまう交互駆動方法を用いてしまうと、文字や幾何学模様として機能せず、偽変造耐性に優れた印刷物を得ることができないと言う課題がある。
【0011】
そこで、本発明は、交互駆動方式で画像を印刷しても埋め込み画像の画素情報を失うことなく、偽変造耐性の優れた記録物を得ることができる画像処理方法および画像処理装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、偽変造耐性の優れた記録物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の画像処理方法は、主走査方向にライン状に配列された複数のヘッドを用いて交互駆動方式で形成される画像を生成する画像処理方法であって、第1の画像データに対して、主走査方向の偶数番目と奇数番目の画素の濃度データを副走査方向の1ラインごとに交互に記録しないデータに置き換える第1の処理ステップと、この第1の処理ステップにより処理された第1の画像データが所定の角度回転するように各画素を並び換える第2の処理ステップと、この第2の処理ステップにより処理された第1の画像データに対して前記第1の画像とは別の第2の画像データを重畳する第3の処理ステップと、この第3の処理ステップにより処理された画像データに対して、前記第2の処理ステップにおける回転方向とは逆の方向に前記所定の角度回転させることにより、各画素の位置を前記第1の処理ステップで処理された後の位置に戻す処理を行なう第4の処理ステップとをを具備している。
【0014】
本発明の画像処理装置は、主走査方向にライン状に配列された複数のヘッドを用いて交互駆動方式で形成される画像を生成する画像処理装置であって、第1の画像データに対して、主走査方向の偶数番目と奇数番目の画素の濃度データを記録ラインごとに交互に記録しないデータに置き換える第1の処理手段と、この第1の処理手段により処理された第1の画像データが所定の角度回転するように各画素を並び換える第2の処理手段と、この第2の処理手段により処理された第1の画像データに対して前記第1の画像データとは別の第2の画像データを重畳する第3の処理手段と、この第3の処理手段により処理された画像データに対して、前記第2の処理手段における回転方向とは逆の方向に所定の角度回転させることにより、各画素の位置を前記第1の処理手段で処理された後の位置に戻す処理を行なう第4の処理手段とを具備している。
【0015】
本発明の記録物は、第1の画像に第2の画像が重畳された画像が記録されている記録物であって、前記第1の画像に第2の画像が重畳された画像は、前記第1の画像に対して主走査方向の偶数番目と奇数番目の画素の濃度データを副走査方向の1ラインごとに交互に記録しないデータに置き換え、この処理された第1の画像データが所定の角度回転するように各画素を並び換え、この処理された第1の画像データに対して前記第2の画像を重畳し、この処理された画像データに対して前記回転方向とは逆の方向に所定の角度回転させることにより各画素の位置を元に戻す処理が施されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、交互駆動方式で画像を印刷しても埋め込み画像の画素情報を失うことなく、偽変造耐性の優れた記録物を得ることができる画像処理方法および画像処理装置を提供できる。
【0017】
また、本発明によれば、高精度の真贋判別が可能となり、偽変造耐性の優れた記録物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る画像処理方法が適用される画像処理装置の構成を概略的に示すものである。この画像処理装置は、スキャナ部1、入力補正部2、色補正部3、画像重層部4、エンジン部5などにより構成される。画像を読取るためのスキャナ部(画像読取部)1から、R(赤),G(緑),B(青)信号に分化された、たとえば、カラー多階調画像(白黒多階調画像でもよい)が画像信号として入力される。この入力された画像信号は、入力補正部2で例えばガンマ補正等が行なわれ、色補正部3を経て、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)、あるいは、C,M,Y,K(ブラック)の各成分に分解された画像信号が生成される。
【0020】
C,M,YまたはC,M,Y,Kに分解された画像信号は、別の画像情報を重畳するため、画像重畳部4に送られ、ここで重畳処理を行なった後、複数の発熱体をライン状に配列してなるライン形のサーマルヘッドを用いた溶融型熱転写記録方式の画像出力部からなるエンジン部5に送られ、ここで記録媒体への画像出力が行なわれる。
【0021】
以下、説明を簡単にするため、多階調画像がモノクロ画像である場合について説明するが、カラー画像の場合でも同様に適用できる。
【0022】
次に、上記交互駆動方式による画像形成処理について説明する。
【0023】
上記エンジン部5では、交互駆動方式で記録媒体上に画像を形成するものとする。なお、ここでは、交互駆動方式では、主走査方向における奇数番目の転写ドット(画素)と偶数番目の転写ドット(画素と)とを副走査方向における1ラインごとに交互に転写する方式を交互駆動方式と称するものとする。たとえば、サーマルヘッドの発熱体の交互駆動する方法、詳しくは転写ドットを千鳥状に配列させて記録する方法を交互駆動方式と称するものとする。
【0024】
サーマルヘッドの発熱体の交互駆動は、奇数ラインの奇数番目の発熱体と偶数ラインの偶数番目の発熱体とを記録ラインごとに交互に駆動する方法である。このように交互駆動した場合、記録されたドット6は、図2に示すように、千鳥状に配列されて画像を形成する。ここで、主走査方向は、サーマルヘッドの発熱体並び方向であり、副走査方向はそれと直交する方向である。
【0025】
図3は、サーマルヘッドの発熱体と熱転写インクリボンのインク層内での温度分布を示すもので、図中の符号7はサーマルヘッドの発熱体を示している。交互駆動ではなく、全部の発熱体7を駆動して記録する場合は、図3(a)に示すように、隣接する発熱体7間の距離が狭いため、熱干渉を起こし、温度分布が平坦な形状になっている(図中の実線a)。すなわち、隣接する発熱体7間で温度コントラストがない状態になっている。このため、正確なドットサイズ変調が行なえず、多階調記録が困難になる。
【0026】
一方、図3(b)に示すように、記録ラインごとに隣接する発熱体7を駆動しない交互駆動の場合、駆動している発熱体7間の距離が広いこと(詳しくは発熱体並びピッチの2倍の距離)、サーマルヘッド内では駆動していない発熱体7に熱が逃げるため、熱干渉をほとんど起こすことがなく、温度分布は急峻な形状になっている(図中の実線b)。すなわち、隣接する発熱体7間で温度コントラストを取ることができている。
【0027】
このように、交互駆動を行なうことにより、孤立ドットを確実に形成でき、さらに、ドットサイズを隣接ドットの影響を受けることなく、確実に変調することができ、面積階調を利用した多階調記録が可能になる。
【0028】
次に、交互駆動方式のエンジン部5で印刷される画像に対する処理について説明する。
【0029】
図4は、たとえば、スキャナ部1により読込んだ画像データの画素配列を示しており、図中の数字は画素の主走査方向、副走査方向のライン数である。この副走査方向の1ライン(たとえば、図中の副走査ライン番号1−主走査ライン番号1〜512)の記録は、図示しないサーマルヘッド駆動回路に1ライン分のデータを転送し、サーマルヘッド駆動用データに展開した後、サーマルヘッドを駆動して行なわれる。
【0030】
サーマルヘッドの発熱体の交互駆動(交互駆動方式の画像形成装置)は、副走査方向の奇数ラインの奇数番目の発熱体と偶数ラインの偶数番目の発熱体を記録ラインごとに交互に駆動する。このため、交互駆動方式の画像形成装置で印刷される画像データは、図5に示すように、記録しない(発熱体を駆動しない)データ、この例では0データを千鳥状に配列し、画像データに応じて記録を行なう画素データを0データではない部分に配列したものになっていなければならない。
【0031】
ここで、交互駆動方式の画像形成装置で印刷される画像データの各画素は、主走査方向の隣の画素は0データになっていなければならない。これは、千鳥状の画素配列にする前の元画像に別の画像を重畳した後、千鳥状に画素を配列してしまうと、0データにした部分の画素の情報が失われてしまい、重畳した画像(埋め込み画像)の情報の一部が失われてしまうことを意味する。
【0032】
以下、上記画像重畳部4に適用される画像処理方法として、第1の画像処理方法と第2の画像処理方法について詳細に説明する。
【0033】
まず、第1の画像処理方法について詳細に説明する。
【0034】
図6は、第1の画像処理方法の流れを概略的に示したフローチャートである。まず、スキャナ部1は、各画素がY,M,CあるいはY,M,C,Kに分解された単色の原画像(第1の画像)データ(図7(a)参照)を取得する。上記入力補正部2および色補正部3では、上記スキャナ部1により取得された第1の画像データの各画素(図7(a)参照)に所望のデータ処理を行なう。上記入力補正部2および色補正部3により処理された第1の画像データは、画像重畳部4に供給される。上記画像重畳部4では、上記第1の画像データの各画素を、図7(b)に示すように、千鳥状の配列に並び換える(ステップS11)。このとき、千鳥状に配列する前の画素への処理において、奇数番目の副走査方向の行であり、且つ、偶数番目の主走査方向の列の画素のデータ値は、その主走査方向の隣の画素のデータ値との平均値でもよいし、その画素の値のままでもよい。
【0035】
次に、各画素が千鳥状配列に並べられた画像データに対して、画像の中心を軸として、本例では時計回り方向に45度回転するように各画素を並び換え、図7(c)に示すように、副走査方向の反対側に、本例では偶数番目の副走査方向ラインを奇数番目の副走査方向ラインに置き換えて、千鳥状に並べられた各画素を主走査方向、副走査方向に一列のライン状に並び換える処理を行なう(ステップS12)。
【0036】
これにより、図7(c)に示すように、画素「11」は、画像を45度回転したときの主走査方向幅の中心位置に移動する。「31」、「22」、「13」の画素は副走査方向の2ライン目に、画素「22」を画素「11」と同じ位置として、画素「31」と画素「13」を左右に割り振る。すなわち、[(副走査方向ライン番号+主走査方向ライン番号)/2]の副走査方向ラインに画素を移動する。このような画素の並び換えを行なうと、図7(c)のように、画素が1列にライン状に並び換えることができる。
【0037】
次に、1列にライン状に並び換えた画素で0データを除いた画素に、別の画像を重畳する処理を行なう(ステップS13)。重畳処理後の各画素を図8(a)に示す。この場合、重畳する別の画像は多値画像であってもよいし、文字や幾何学模様などの2値画像であってもよい。文字や幾何学模様などの2値画像を重畳する場合、並び換えた画素に2値画像の画素値を掛け合わせてやれば重畳することが可能となる。
【0038】
即ち、2値画像の印字する画素の画素値を「0」、印字しない画素の画素値を「1」とする。この為、画素値を掛け合わせることにより、印字する画素の画素値は「0」となり、印字しない画素の画素値は元のままとなる。画素値「0」の画素は印字されない為、0データとして2値画像を重畳できる。
【0039】
最後に、重畳処理を行なった図8(a)の画素を、図8(b)に示すように、図7(c)とは逆方向(反時計方向)に45度回転させることにより、元の千鳥状配列に並び換えを行ない(ステップS14)、一連の処理が終了する。ここで、図8(a)のように、1列にライン状に並び換えた画素に別の画像を重畳しているため、図8(b)のように画素データを失うことがなく、重畳した画像の画素情報を失うことがない。
【0040】
上述のように、多階調画像の画素を千鳥状に配列した後、画像を45度回転して、画素をライン状に一列に並び換え、そこに別の画像を重畳した後、45度逆回転させることにより千鳥状配列に戻すという簡単な処理を行なうことで、別の画像の画素情報を失うことなく、多階調画像に別の画像情報を重畳することができる。
【0041】
次に、第2の画像処理方法について詳細に説明する。
【0042】
図9は、第2の画像処理方法に係る画像処理方法の流れを概略的に示したフローチャートである。まず、上記スキャナ部1は、各画像がY,M,CあるいはY,M,C,Kに分解された単色の原画像(第1の画像)データ(図7(a)参照)を取得する。上記入力補正部2および上記色補正部3では、Y,M,CあるいはY,M,C,Kに分解された上記スキャナ部1により取得した第1の画像データの各画素(図7(a)参照)に所望のデータ処理を施す。上記入力補正部および上記色補正部3により処理された第1の画像データは、上記画像重畳部4に供給される。上記画像重畳部4では、まず、上記入力補正部2および上記色補正部3により処理された第1の画像(被埋め込み画像)の各画素を、図7(b)に示すように、千鳥状の配列に並び換える処理を行う(ステップS21)。このとき、上記ステップS21の処理では、処理前の第1の画像(千鳥状に配列する前の原画像)において、副走査方向における奇数番目の行で、且つ、主走査方向における偶数番目の列の各画素(あるいは、副走査方向における偶数番目の行で、且つ、主走査方向における奇数番目の列の各画素は、その主走査方向の隣の画素のデータ値との平均値に変換してもよいし、その画素の値のままでもよい。
【0043】
一方、上記画像重畳部4では、上記第1の画像データに重畳される第2の画像データ(埋め込み画像)に対する処理を行う(ステップS22)。この処理は、上記第2の画像データにおける各画素が失われないように、上記第2の画像データを45度回転させ、かつ、上記第2の画像データにおける各画素を副走査方向の1ラインごとに交互に主走査方向の奇数番目と偶数番目に配置した画像データに変換する処理である。この処理については、後で詳細に説明する。
【0044】
なお、上記第2の画像データは、予め設定されているものであっても良いし、文字情報などから生成されるものであっても良い。また、上記第2の画像データは、たとえば、外部から画像重畳部4に入力されるものであっても良い。
【0045】
また、上記ステップS22の処理は、上記第1の画像データに対する処理とは別途実施することが可能である。たとえば、上記ステップS22の第2の画像データに対する処理と上記ステップS21の上記第1の画像データに対する処理とは、平行して実行するようにしても良いし、順次実行するようにしても良い。さらには、第2の画像データが特定の画像データである場合などでは、上記ステップS22の処理を予め実施しておき、その処理結果としての処理済みの第2の画像データをメモリ等に保持しておくようにしても良い。
【0046】
次に、ステップS22で処理された第2の画像(第1の画像に重畳される埋め込み画像)を、ステップS21で各画素を千鳥状の配列に並び換えた第1の画像に重畳する処理を行う(ステップS23)。このような処理によって上記第1の画像データに上記第1の画像データを重畳した画像(重畳画像)は、上記画像重畳部4から上記エンジン部5へ供給される。これにより、上記エンジン部5では、上記のような処理によって得られた重層画像により、上記第2の画像データにおける各画素を失うことなく第1の画像に重畳した画像を記録媒体上に印刷するようになっている。
【0047】
次に、上記第1の画像に重畳される第2の画像に実施される処理について詳細に説明する。
【0048】
図10は、第2の画像処理方法を適用した場合の第2の画像データにおける各画素の配列を説明するための図である。ここでは、図10を参照しつつ第2の画像処理方法としての第2の画像に対する処理(上記ステップS22の処理)について説明する。なお、ここで、図10(a)は、第2の画像データにおける各画素の例を示す図であり、図10(b)は、図10(a)の第2の画像データに上記ステップS22の処理が施された第2の画像データにおける各画素を示すものとする。
【0049】
図10(a)に示す第2の画像データは、j行i列の画素から成るものとする。なお、図10(a)に示す第2の画像データを構成する各画素の内、図中に太枠で囲まれた領域の各画素が、第1の画像に重畳される画像として有効な画像を構成する画素となる。
【0050】
上記ステップS22の処理では、基準位置(たとえば画像の中心)の画素を軸として反時計回り方向に45度回転させ、かつ、主走査方向において1画素おきに各画素が配置されるように、上記第2の画像データが変換される。これにより、図10(a)に示す第2の画像データは、図10(b)に示す画像データの各画素が千鳥状に並べ替えられた画像データに変換される。
【0051】
ここで説明する第2の画像処理方法では、第2の画像の回転角度は反時計回りに45度とする。但し、上記回転角度は、45度に限定されるものではなく、たとえば、135度、225度、及び315度であっても良い。
【0052】
たとえば、図10(a)に示す第2の画像において、画素「11」は、行方向における基準位置で、かつ、列方向における1行目の画素である。なお、ここで、画素「11」の列を基準位置の列と称し、is番目の列と称するものとする。この画素「11」は、上記ステップS22の処理によって、図10(b)に示すように、主走査方向の1列目、且つ、副走査方向の1行目の位置に移動される。図10(a)に示す第2の画像において、画素「22」は、行方向における基準位置の列で、且つ、列方向の2行目の画素である。この画素「22」は、図10(b)に示すように、上記ステップS22の処理によって、主走査方向の2列目、且つ、副走査方向の2行目の位置に移動される。図10(a)に示す第2の画像において、画素「33」は、行方向における基準位置の列で、かつ、列方向の3行目の画素である。この画素「33」は、図10(b)に示すように、上記ステップS22の処理によって、主走査方向の3列目、且つ、副走査方向の3行目の位置に移動される。また、図10(a)に示す第2の画像において、画素「44」は、行方向における基準位置の列で、かつ、列方向の4行目の画素である。この画素「44」は、図10(b)に示すように、上記ステップS22の処理によって、主走査方向の4列目、且つ、副走査方向の4行目の位置に移動される。
【0053】
即ち、行方向における基準位置の列で、且つ、列方向のj行目に位置する画素は、上記ステップS22の処理によって、主走査方向のj列目で、副走査方向のj行目の位置に移動される。
【0054】
次に、図10(a)に示す第2の画像において、画素「31」は、行方向における基準位置の列から1つ前の列(is−1列目)で、かつ、列方向の2行目の画素である。この画素「31」は、図10(b)に示すように、上記ステップS22の処理によって、主走査方向の1列目で、且つ、副走査方向の3行目に移動される。図10(a)に示す第2の画像において、画素「42」は、行方向における基準位置の列から1つ前の列(is−1列目)で、かつ、列方向の3行目の画素である。この画素「42」は、図10(b)に示すように、上記ステップS22の処理によって、主走査方向の2列目、且つ、副走査方向の4行目に移動される。
【0055】
また、図10(a)に示す第2の画像において、画素「13」は、行方向における基準位置の列の次の列(is+1列目)で、かつ、列方向の2行目の画素である。この画素「13」は、図10(b)に示すように、上記ステップS22の処理によって、主走査方向の3列目、且つ、副走査方向の1行目に移動される。図10(a)に示す第2の画像において、画素「24」は、行方向における基準位置の列の次の列(is+1列目)で、かつ、列方向の2行目の画素である。この画素「24」は、図10(b)に示すように、上記ステップS22の処理によって、主走査方向の4列目、且つ、副走査方向の2行目に移動される。
【0056】
即ち、図10(a)に示す第2の画像において、j行i列に位置する画素は、行方向の基準位置の列から画素までの距離をa(a=is−i)とすると、図10(b)に示すように、主走査方向の(j+a)列目、且つ、副走査方向の(j−a)行目に移動(変換)される。たとえば、第2の画像において1行is列の画素は、主走査方向の1列目かつ副走査方向の1行目に移動される。また、第2の画像において2行(is−1)列の画素は、主走査方向の3(2+(is−(is−1)))列目かつ1(2−(is−(is−1))行目に移動される。第2の画像において2行(is+1)列の画素は、主走査方向の1(2+(is−(is+1)))列目かつ3(2−(is−(is+1))行目に移動される。
【0057】
上記したように、上記ステップS22の処理により、図10(a)に示すような第2の画像における各画素を失うことなく、図10(b)のように、45度回転した状態で、千鳥状に並び替えることができる。
【0058】
また、、実際に重畳する画像は、第2の画像において、上記ステップS22の処理により画素が失われない位置である必要がある。図10(b)に示すように、上記ステップS22の処理後の画像では、実施に印刷されない位置の画素(無効な画素)には印字されないデータである「0」が設定される。すなわち、実際に重層する画像を構成する画素は、第2の画像において上記ステップS22の処理で失われない領域に位置する画素である必要がある。言い換えれば、第2の画像において所定の領域(たとえば、図10(a)に示す太枠で囲まれた領域)の画像は、画素が失われることなく、交互駆動方式のエンジン部5で実際に印刷される画素として45度回転した状態で千鳥状に並べ替えられる。、たとえば、図10(a)に示す例では、太枠で囲まれた領域の画素は、上記ステップS22の処理で、失われることなく、交互駆動方式のエンジン部5で実際に印刷される画素として千鳥状に並び替えられる。
【0059】
なお、第1の画像に重畳する第2の画像は多値画像であってもよいし、文字や幾何学模様などの2値画像であってもよい。たとえば、文字や幾何学模様などの2値画像を第2の画像とする場合、並び換えた第1の画像の各画素に、上記ステップS22の処理が施された2値画像としての第2の画像を構成する各画素の画素値を掛け合わせてやれば重畳することが可能となる。
【0060】
即ち、2値画像(第2の画像)の印字する画素の画素値を「0」、印字しない画素の画素値を「1」とする。この場合、第2の画像の各画素の画素値には、第1の画像の対応する各画素の画素値が掛け合わされる。これにより、第2の画像において印字する画素が重畳された画素の画素値は「0」となり、第2の画像において印字しない画素が重畳された画素の画素値は第1の画像の画素値のままとなる。この結果、第2の画像において画素値が「0」の画素は印字されない為、0データとして2値画像を重畳できる。言い換えれば、第2の画像において画素値が「0」である画素は重畳された画像においても画素値が「0」となる。この為、多階調画像として第1の画像において、画素値が「0」でない画素にも、第2の画像の各画素を重畳することができ、第2の画像の画素を失うことがない。
【0061】
上述のように、多階調画像などの第1の画像を構成する各画素を千鳥状に配列する処理を行い、2値画像などの第2の画像を45度逆回転させ、かつ、第2の画像を構成する各画素を千鳥状の配列に並び換える処理を行い、上記千鳥状に配列された第1の画像に45度回転させた状態で千鳥状に配列された第2の画像を重層する処理を行う。これにより、第2の画像の画素を失うことなく、第1の画像に第2の画像を重畳することができる。
【0062】
図11は、上記した第1あるいは第2の画像処理方法を適用した画像処理装置で作成された記録物の一例を示している。この記録物11は、たとえば、第2の画像が重畳されている第1の画像としての顔画像12および文字情報13が印刷されている。つまり、上記第1の画像としての顔画像12には、拡大すると識別可能な第2の画像としての数字情報14が重畳されている。また、図11の例では、第2の画像としての数字情報14として、3画素×5画素からなる「1」および「2」が重畳されている。つまり、図11に示すように、印刷物に記録されている第1あるいは第2の画像処理方法により生成された画像では、第2の画像としての数字情報14の画素が失われることなく、第1の画像としての顔画像12に重畳されている。なお、図11内の符号15は、拡大したドットを示している。
【0063】
また、仮に、上記第1あるいは第2の画像処理方法が適用された画像処理装置で作成された記録物11を本物とすれば、上記第1あるいは第2の画像処理方法が適用されていない他の画像処理装置で作成された記録物11では、重畳した数字情報(第2の画像)14の画素情報が失われてしまう。言い換えれば、印刷物11に印刷されている画像において、重畳されているべき第2の画像の各画素が失われていなければ、当該記録物11は、本物であると判別でき、重畳されているべき第2の画像の画素が失われていれば、記録物11は本物ではないと判別できる。すなわち、数字情報14の画素情報が失われているか否かを検査すれば、記録物11が本物か否かが高精度に判別でき、記録物11の偽変造耐性を向上させることができる。
【0064】
上記した実施形態によると、交互駆動方式の画像形成装置で印刷される画像であっても、2値画像などの埋め込み画像(第2の画像)の画素情報を失うことなく、多階調画像などの被埋め込み画像(第1の画像)に埋め込むことができる。結果として、偽変造に対する耐性に優れた印刷物を作成することができる。
【0065】
なお、上記実施形態は、上述した内容のままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、画像処理装置の構成例を概略的に示すブロック図である。
【図2】図2は、サーマルヘッドの発熱体を交互駆動したときのドットの配置例を示す概略図である。
【図3】図3は、サーマルヘッドの発熱体と熱転写インクリボンのインク層内での温度分布を示す概略図である。
【図4】図4は、画像データの画素配列を示す概略図である。
【図5】図5は、画像データの画素配列を示す概略図である。
【図6】図6は、第1の画像処理方法の流れを概略的に説明するためのフローチャートである。
【図7】図7は、第1の画像処理方法を適用した場合の第1の画像データにおける各画素の配列を説明ための図である。
【図8】図8は、第1の画像処理方法を適用した場合の重畳画像データにおける各画素の配列を説明するための図である。
【図9】図9は、第2の画像処理方法の流れを概略的に説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、第2の画像処理方法を適用した場合の第2の画像データにおける各画素の配列を説明するための図である。
【図11】図11は、第1あるいは第2の画像処理方法により生成された画像を印刷した記録物の例を概略的に説明するための図である。
【符号の説明】
【0067】
1…スキャナ部、2…入力補正部、3…色補正部、4…画像重畳部、5…エンジン部、6…ドット、7…発熱体、11…記録物、12…顔画像、13…文字情報、14…重畳した数字情報、15…拡大したドット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向にライン状に配列された複数のヘッドを用いて交互駆動方式で形成される画像を生成する画像処理方法であって、
第1の画像データに対して、主走査方向の偶数番目と奇数番目の画素の濃度データを副走査方向の1ラインごとに交互に記録しないデータに置き換える第1の処理ステップと、
この第1の処理ステップにより処理された第1の画像データが所定の角度回転するように各画素を並び換える第2の処理ステップと、
この第2の処理ステップにより処理された第1の画像データに対して前記第1の画像とは別の第2の画像データを重畳する第3の処理ステップと、
この第3の処理ステップにより処理された画像データに対して、前記第2の処理ステップにおける回転方向とは逆の方向に前記所定の角度回転させることにより、各画素の位置を前記第1の処理ステップで処理された後の位置に戻す処理を行なう第4の処理ステップと、
を具備したことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
主走査方向にライン状に配列された複数のヘッドを用いて交互駆動方式で形成される画像を生成する画像処理方法であって、
第1の画像データに対して、主走査方向の偶数番目と奇数番目の画素の濃度データを副走査方向の記録ラインごとに交互に記録しないデータに置き換える第1の処理ステップと、
前記第1の画像データとは別の第2の画像データを所定の角度回転させ、かつ、前記第2の画像データにおける各画素を副走査方向の1ラインごとに交互に主走査方向の奇数番目と偶数番目に配置した画像データに変換する第2の処理ステップと、
この第2の処理ステップにより処理された第2の画像データを前記第1の処理ステップにより処理された第1の画像データに対して重畳する第3の処理ステップと、
を具備したことを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
前記第1の画像データは多階調画像であり、前記第2の画像データは文字や幾何学模様などの2値画像であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記所定の角度は45度であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像処理方法。
【請求項5】
主走査方向にライン状に配列された複数のヘッドを用いて交互駆動方式で形成される画像を生成する画像処理装置であって、
第1の画像データに対して、主走査方向の偶数番目と奇数番目の画素の濃度データを記録ラインごとに交互に記録しないデータに置き換える第1の処理手段と、
この第1の処理手段により処理された第1の画像データが所定の角度回転するように各画素を並び換える第2の処理手段と、
この第2の処理手段により処理された第1の画像データに対して前記第1の画像データとは別の第2の画像データを重畳する第3の処理手段と、
この第3の処理手段により処理された画像データに対して、前記第2の処理手段における回転方向とは逆の方向に所定の角度回転させることにより、各画素の位置を前記第1の処理手段で処理された後の位置に戻す処理を行なう第4の処理手段と、
を具備したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
主走査方向にライン状に配列された複数のヘッドを用いて交互駆動方式で形成される画像を生成する画像処理装置であって、
第1の画像データに対して、主走査方向の偶数番目と奇数番目の画素の濃度データを副走査方向の1ラインごとに交互に記録しないデータに置き換える第1の処理手段と、
前記第1の画像データとは第2の画像データを所定の角度回転させ、かつ、前記第2の画像データにおける各画素を副走査方向における1ラインごとに交互に主走査方向の奇数番目と偶数番目に配置した画像データに変換する第2の処理手段と、
この第2の処理手段により処理された第2の画像データを前記第1の処理手段により処理された第1の画像データに対して重畳する第3の処理手段と、
を具備したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
前記第1の画像データは多階調画像であり、前記第2の画像データは文字や幾何学模様などの2値画像であることを特徴とする請求項5または請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記所定の角度は45度であることを特徴とする請求項5または請求項6記載の画像処理装置。
【請求項9】
第1の画像に第2の画像が重畳された画像が記録されている記録物であって、
前記第1の画像に第2の画像が重畳された画像は、前記第1の画像に対して主走査方向の偶数番目と奇数番目の画素の濃度データを副走査方向の1ラインごとに交互に記録しないデータに置き換え、この処理された第1の画像データが所定の角度回転するように各画素を並び換え、この処理された第1の画像データに対して前記第2の画像を重畳し、この処理された画像データに対して前記回転方向とは逆の方向に所定の角度回転させることにより各画素の位置を元に戻す処理が施されていることを特徴とする記録物。
【請求項10】
第1の画像に第2の画像が重畳された画像が記録されている記録物であって、
前記第1の画像に第2の画像が重畳された画像は、前記第1の画像データに対して偶数番目と奇数番目の画素の濃度データを記録ラインごとに交互に記録しないデータに置き換えるとともに、前記第2の画像を所定の角度回転させ、かつ、前記第2の画像データにおける各画素を副走査方向における1ラインごとに交互に主走査方向の奇数番目と偶数番目の画素を配置した画像データに変換する処理を行い、この処理された第2の画像を前記交互に記録しないデータに置き換えた第1の画像に重畳する処理が施されていることを特徴とする記録物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−104642(P2007−104642A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232422(P2006−232422)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】