説明

画像処理方法及び画像処理装置

【課題】画像記録及び画像消去の繰返しによるダメージを軽減して熱可逆記録媒体の劣化を防止できる画像処理方法及び画像処理装置の提供。
【解決手段】温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体を加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、前記画像記録工程で、複数の描画線が重なる重複部を有する画像を記録する際に、該重複部における各描画線が非連続に記録される画像処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録及び画像消去の繰返しによるダメージを軽減して熱可逆記録媒体の劣化を防止できる画像処理方法及び該画像処理方法に好適に使用可能な画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、熱可逆記録媒体(以下、単に「記録媒体」、又は「媒体」と称することがある)への画像記録及び画像消去は、加熱源を記録媒体に接触させて該媒体を加熱する接触式で行われている。該加熱源としては、通常、画像記録にはサーマルヘッドが用いられ、画像消去には熱ローラ、セラミックヒータなどが用いられている。
このような接触式の記録方法は、熱可逆記録媒体がフィルム、紙等のフレキシブルなものである場合には、プラテンなどによって記録媒体を加熱源に均一に押し当てることにより、均一な画像記録及び画像消去を行うことができ、かつ従来の感熱紙用のプリンタの部品を転用することによって画像記録装置及び画像消去装置を安価に製造することができるという利点があった。
しかし、熱可逆記録媒体が、特許文献1及び特許文献2に記載されているようなRF−IDタグなどを内蔵している場合には、熱可逆記録媒体の厚みが厚くなりフレキシブル性が低下して加熱源を均一に押し当てるためには高い圧力が必要となる。また、熱可逆記録媒体の表面に凹凸が生じると、サーマルヘッド等を用いて画像記録及び画像消去することが困難になる。更に、RF−IDタグが非接触で離れたところから記憶情報の読み取り及び書き換えが行われるのに対して、熱可逆記録媒体についても離れた位置から画像を書き換えたいという要望が生じてきている。
そこで、熱可逆記録媒体の表面に凹凸が生じた場合や、離れたところから記録媒体に対して画像の記録及び消去を行う方法として、非接触方式のレーザを用いた記録方法が提案されている。
【0003】
このようなレーザによる記録方法としては、高出力のレーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、その位置をコントロール可能な記録装置(レーザマーカー)が提供されている。この記録装置を用いて、レーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、媒体が光を吸収して熱に変換して、その熱で相変化することで記録及び消去を行うことが可能である。
このレーザマーカーは、モーターの作動による走査ミラー角度の変更によりレーザ光の照射方向を変えて走査し記録部にレーザ光照射することにより記録する。また、走査ミラー以外にXYステージを用いてレーザ光を走査する場合も同様にXYステージが停止状態から動き始めるまでの間、あるいは動いている状態から停止するまでの間は加減速のために走査速度が遅くなることから、記録の始点や終点には過剰なエネルギーが付与され、熱可逆記録媒体にダメージを与えてしまう場合がある。
【0004】
また、記録される文字には、“X”字のように中心部に交点からなる重なり部を有するもの、“V”字のように下部に屈曲点からなる重なり部を有するもの、“Y”字のように中心部に3つの描画線が重なる重なり部を有するものがある。描画線の直線部では一定の走査速度及び照射パワーであれば均一なエネルギーが付与されるが、屈曲点では走査ミラーの走査速度が遅くなり、その部分に過剰なエネルギーが付与される。また、重なり部では1回の記録で、2回分以上の過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去を繰り返すことにより熱可逆記録媒体にダメージを与えてしまうという問題がある。
これらの点については、従来の不可逆の感熱記録媒体では、過剰なエネルギーが印加されても大きな問題とならなかったが、画像記録及び画像消去を繰り返して行う熱可逆記録媒体では、同じ場所に過剰なエネルギーが付与されることによるダメージの蓄積により、高濃度で均一な画像記録と均一な画像消去を充分に行うことができなくなるという大きな課題がある。
【0005】
これらの問題を解決することを目的として、例えば特許文献3には、レーザ照射エネルギーを描画点毎に制御し、記録ドットが重なり合うように記録する場合や折り返して記録する場合に、その部分に付与するエネルギーを低下させる、また、直線記録を行う場合に所定間隔ごとにエネルギーを低下させることにより、局所的な熱ダメージを軽減して熱可逆記録媒体の劣化を防止することが記載されている。
また、特許文献4では、レーザ描画の際に変角点の角度Rに応じて、照射エネルギーに対して、次式、|cos0.5R|(0.3<k<4)を掛け合わせることでエネルギーを減らす工夫を行っている。これによりレーザで記録する際に線画の重なる部分に過剰なエネルギーが掛かることを防ぎ、媒体の劣化を減少させることができる、あるいはエネルギーを下げ過ぎずにコントラストを維持することが可能となる。
また、特許文献5には、非接触型リライトサーマルラベルに収束されたレーザビームを照射して所定の描画を行うに際し、光走査装置を、レーザ光の発振を行うことなく連続駆動させ、レーザ光を発振した場合に想定されるレーザビームの軌跡(仮想レーザビーム)が実質上等速運動している場合のみに、レーザ光を発振させてレーザ光の走査を行い、描画する非接触型リライトサーマルラベルの記録方法が提案されている。
【0006】
これらの先行技術の記録方法では、レーザ記録時の重なり合いにより、熱可逆記録媒体に過剰な熱エネルギーをかけないように工夫をしている。しかし、高出力レーザを用いて高濃度記録と均一な画像消去とを繰り返し行うと、描画線の始点部、終点部、重なり部だけでなく、直線部の中心部分も過剰に加熱され、熱可逆記録媒体の変形跡や気泡の発生が観察され、発色及び消色特性を担う材料自身が熱分解を起こし、充分な能力を発揮できなくなってしまう。その結果、画像を構成する始点部、終点部、重なり部、及び直線部を含む描画線全体について高濃度で均一な画像記録と均一な画像消去とを充分に行うことができず、繰り返し記録消去を行っても劣化の少ない画像処理方法としては不充分であり、更なる改良、開発が望まれているのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開2004−265247号公報
【特許文献2】特開2004−265249号公報
【特許文献3】特開2003−127446号公報
【特許文献4】特開2004−345273号公報
【特許文献5】特開2006−306063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、画像を構成する始点部、終点部、重なり部、及び直線部を含む描画線全体について高濃度で均一な画像記録と均一な画像消去を行うことができ、画像記録及び画像消去の繰返しによるダメージを軽減して熱可逆記録媒体の劣化を防止でき、放熱効果が高い画像処理方法、及び該画像処理方法に好適に使用可能な画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体を加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程で、複数の描画線が重なる重複部を有する画像を記録する際に、該重複部における各描画線が非連続に記録されることを特徴とする画像処理方法である。
<2> 画像消去工程が、熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより行われる前記<1>に記載の画像処理方法である。
<3> 重複部において各描画線の始点及び終点の少なくともいずれかが重なる前記<1>から<2>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<4> 重複部において各描画線の終点と終点が重なるように記録する前記<1>から<3>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<5> 重複部において各描画線の始点が重ならないように記録する前記<1>から<4>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<6> 描画線が、文字、記号、及び線図のいずれかを構成する線である前記<1>から<5>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<7> 熱可逆記録媒体が、支持体上に少なくとも熱可逆記録層を有してなり、該熱可逆記録層が第一の特定温度と該第一の特定温度よりも高温の第二の特定温度とで透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する前記<1>から<6>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<8> 熱可逆記録媒体が、支持体上に少なくとも可逆性感熱記録層を有してなり、該可逆性感熱記録層が樹脂及び有機低分子物質を含有する前記<1>から<7>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<9> 熱可逆記録媒体が、支持体上に少なくとも可逆性感熱記録層を有してなり、該可逆性感熱記録層がロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有する前記<1>から<7>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<10> 画像記録工程及び画像消去工程の少なくともいずれかにおいて、照射されるレーザ光の強度分布で、照射レーザ光の中心位置における光照射強度Iと、照射レーザ光の全照射エネルギーの80%面での光照射強度Iとが、次式、0.40≦I/I≦2.00を満たす前記<2>から<9>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<11> 前記<1>から<10>のいずれかに記載の画像処理方法に用いられ、
レーザ光出射手段と、
該レーザ光出射手段におけるレーザ光出射面に配置され、かつレーザ光の光照射強度を変化させる光照射強度調整手段とを少なくとも有することを特徴とする画像処理装置である。
<12> 光照射強度調整手段が、レンズ、フィルタ、マスク、ファイバーカップリング及びミラーの少なくともいずれかである前記<11>に記載の画像処理装置である。
【0010】
本発明の画像処理方法は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体を加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程において、複数の描画線が重なる重複部を有する画像を記録する際に、該重複部における各描画線が非連続に記録される。
該画像処理方法では、前記画像記録工程において、複数の描画線が重なる重複部を有する画像を記録する際に、該重複部における各描画線が非連続に記録される。即ち、前記重複部における各描画線を記録する順番を最適となるように調整し、例えば各描画線の終点と終点とが重なるように非連続に(別々に)記録することにより、例えばV字、F字のように重複部が屈曲していても、該重複部に過剰なエネルギーが付与されることを防止でき、画像記録及び画像消去の繰返しによる熱可逆記録媒体の劣化を抑制することができる。
【0011】
本発明の画像処理装置は、本発明の前記画像処理方法に用いられ、レーザ光出射手段と、該レーザ光出射手段におけるレーザ光出射面に配置され、かつレーザ光の光照射強度を変化させる光照射強度調整手段とを少なくとも有する。
該画像処理装置においては、前記レーザ光出射手段が、レーザ光を出射する。前記光照射強度調整手段が、前記レーザ光出射手段から出射されたレーザ光の光照射強度を変化させる。その結果、前記熱可逆記録媒体に画像を記録すると、画像の繰返し記録及び消去による前記熱可逆記録媒体の劣化が効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、複数の描画線が重なる重複部、更には画像を構成する始点部、終点部、屈曲部、及び直線部を含む描画線全体に過剰なエネルギーが付与されることを防止でき、画像記録及び画像消去の繰返しによるダメージを軽減して熱可逆記録媒体の劣化を防止できる画像処理方法、及び該画像処理方法に好適に使用可能な画像処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(画像処理方法)
本発明の画像処理方法は、画像記録工程及び画像消去工程の少なくともいずれかを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含んでなる。
本発明の前記画像処理方法においては、画像の記録及び画像の消去の両方を行う態様、画像の記録のみを行う態様、画像の消去のみを行う態様のいずれをも含む。
【0014】
<画像記録工程及び画像消去工程>
本発明の前記画像処理方法における前記画像記録工程は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に画像を記録する工程である。
本発明の前記画像処理方法における前記画像消去工程は、前記熱可逆記録媒体を加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する工程である。
本発明の前記画像処理方法における前記画像消去工程は、前記熱可逆記録媒体を加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する工程であり、熱源としてレーザ光を用いてもよく、レーザ光以外の熱源を用いてもよい。熱源の中でも、レーザ光を照射して加熱する場合、一本のレーザ光を走査して所定の面積全体に照射するのに時間を要することから、短時間で消去する場合には、赤外線ランプ、ヒートローラー、ホットスタンプ、ドライヤーなどを用いて加熱することにより消去するのが好ましい。また、物流ラインに用いる搬送用容器として発砲スチロール箱に前記熱可逆記録媒体を装備させた場合、該発泡スチロール箱自体が加熱されると溶融してしまうため、レーザ光を照射して前記熱可逆記録媒体のみを局所的に加熱することにより消去するのが好ましい。
前記熱可逆記録媒体に対し、前記レーザ光を照射して加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に非接触の状態で画像の記録及び消去を行うことができる。
なお、本発明の画像処理方法においては、通常、前記熱可逆記録媒体の再使用時に初めて画像の更新(前記画像消去工程)を行い、その後、前記画像記録工程により画像の記録を行うが、画像の記録及び消去の順序はこれに限られるものではなく、前記画像記録工程により画像を記録した後、前記画像消去工程により画像を消去してもよい。
【0015】
本発明の画像処理方法では、前記画像記録工程において、複数の描画線が重なる重複部を有する画像を記録する際に、該重複部における各描画線が非連続に記録される。
前記重複部における各描画線が連続的に記録されると、例えば重複部が屈曲している場合にはモーターの作動によるミラー角度の変更を瞬間的に行うことが難しいので、レーザ光の走査速度が低下し、該屈曲部(重複部分)に過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰返しにより熱可逆記録媒体に局所的なダメージが生じることがある。なお、前記重複部において各描画線が連続に記録される態様としては、前記重複部において各描画線の終点と始点とが重なるように記録する態様、などが挙げられる。
【0016】
ここで、前記非連続な記録とは、複数の描画線をレーザ光照射により記録中に、一旦レーザ光の照射を中断し、複数の描画線を別々に記録することを意味し、具体的には、(1)前記重複部において各描画線の終点と終点が重なるように記録する態様、(2)前記重複部において各描画線の始点と始点とが重なるように記録する態様、(3)前記重複部において各描画線の始点と、始点及び終点以外の位置(例えば描画線の中間点)とが重なるように記録する態様、(4)前記重複部において各描画線の終点と、始点及び終点以外の位置(例えば描画線の中間点)とが重なるように記録する態様、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0017】
また、前記描画線の始点部では、レーザ光の照射パワーの制御ができず不安定となり、過剰なパワーを熱可逆記録媒体に付与してしまうことがある(オーバーシューティング)ため、前記重複部において各描画線の始点が重ならないように記録することが好ましい。
前記描画線としては、文字、記号、及び線図のいずれかを構成する線であることが好ましい。
【0018】
ここで、V字を記録する場合について図1Aから図1Cを参照して説明する。
図1Aは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるV字の記録方法の一例を示す。まず、レーザ光を照射して描画線1をD1方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線2の始点の位置まで移動して、描画線2をD2方向に記録する。即ち、この図1AのV字の記録では、屈曲した重複部Tにおいて描画線1の終点と描画線2の終点とが重なり、描画線1と描画線2とは非連続的に(別々に)記録されるので、重複部Tに過剰なエネルギーが付与されず、画像記録及び画像消去を繰り返しても熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。なお、図1Aにおいて、描画線1及び描画線2を記録する順番は逆であっても構わない。
【0019】
また、図1Bは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるV字の記録方法の他の一例を示す。まず、レーザ光を照射して描画線1をD3方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線2の始点の位置(重複部T)まで移動して、描画線2をD4方向に記録する。即ち、この図1BのV字の記録では、屈曲した重複部Tにおいて描画線1の始点と描画線2の始点とが重なり、描画線1と描画線2とは非連続的に(別々に)記録されるので、重複部Tに過剰なエネルギーが付与されず、画像記録及び画像消去を繰り返しても熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。なお、図1Bにおいて、描画線1及び描画線2を記録する順番は逆であっても構わない。
なお、図1Bの記録では、重複部Tにおいて描画線1及び2が始点となるので、レーザ光の照射パワーの制御ができず不安定となり、過剰なパワーを熱可逆記録媒体に付与してしまうことがあるため、図1Aの記録に比べて、重複部に過剰なエネルギーが付与されてしまうおそれがある。したがって、V字を記録する場合には図1Aに示す記録方法が最も好ましい。
【0020】
これに対し、図1Cは、従来の画像処理方法における画像記録工程によるV字の記録方法の一例を示す。まず、レーザ光を照射して描画線1をD1方向に記録する。そのまま重複部Tを通り描画線2をD4方向に記録する。即ち、この図1CのV字の記録では、屈曲した重複部Tにおいて描画線1の終点と描画線2の始点とが重なり、連続的に記録され、屈曲した重複部Tでは、モーターの作動によるミラー角度の変更によりレーザ光の方向を変えるため、重複部Tでのレーザ光の走査速度が遅くなる。その結果、重複部Tに過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰り返しによって熱可逆記録媒体にダメージが生じる。
【0021】
また、Y字を記録する場合について図2A〜図2Hを参照して説明する。
図2Aは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるY字の記録方法の一例を示す。まず、レーザ光を照射して描画線11をD1方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線12の始点の位置まで移動して、描画線12をD2方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線13の始点の位置まで移動して、描画線13をD3方向に記録する。即ち、この図2AのY字の記録では、3つの描画線が重なる重複部Tにおいて描画線11の終点と描画線12の終点と描画線13の終点とがそれぞれ重なり、描画線11と描画線12と描画線13とが非連続的に(別々に)記録されるので、重複部Tに過剰なエネルギーが付与されず、画像記録及び画像消去を繰り返しても熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。なお、図2Aにおいて、描画線11、描画線12、及び描画線13を記録する順番は特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0022】
また、図2Bは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるY字の記録方法の他の一例を示す。まず、レーザ光を照射して描画線11をD4方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線12の始点の位置(重複部T)まで移動して、描画線12をD5方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線13の始点の位置(重複部T)まで移動して、描画線13をD6方向に記録する。即ち、この図2BのY字の記録では、3つの描画線が重なる重複部Tにおいて描画線11の始点と描画線12の始点と描画線13の始点とがそれぞれ重なり、描画線11と描画線12と描画線13とが非連続的に(別々に)記録されるので、重複部Tに過剰なエネルギーが付与されず、画像記録及び画像消去を繰り返しても熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。なお、図2Aにおいて、描画線11、描画線12、及び描画線13を記録する順番は特に制限はなく、適宜選択することができる。
図2Bの記録では、重複部Tにおいて3つの描画線が始点となるので、レーザ光の照射パワーの制御ができず不安定となり、過剰なパワーを熱可逆記録媒体に付与してしまうことがあるため、図2Aの記録に比べて、重複部に過剰なエネルギーが付与されてしまうおそれがある。したがってY字を記録する場合には図2Aに示す記録方法が最も好ましい。
【0023】
これに対し、図2C〜図2Hは、従来の画像処理方法における画像記録工程によるY字の記録方法の他の一例を示す。
図2Cでは、まず、レーザ光を照射して描画線11をD1方向に記録する。そのままレーザ光を照射して重複部Tを通り描画線12をD5方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線13の始点の位置まで移動して、描画線13をD3方向に記録する。
即ち、この図2CのY字の記録では、3つの描画線が重なる重複部Tにおいて描画線11の終点と描画線12の始点とが重なり、連続的に記録され、屈曲した重複部Tでは、モーターの作動によるミラー角度の変更によりレーザ光の方向を変えるため、重複部Tでのレーザ光の走査速度が遅くなる。その結果、重複部Tに過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰り返しによって熱可逆記録媒体にダメージが生じる。
【0024】
図2Dでは、まず、レーザ光を照射して描画線11をD1方向に記録する。そのままレーザ光を照射して重複部Tを通り描画線12をD5方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線13の始点の位置(重複部T)まで移動して、描画線13をD6方向に記録する。即ち、この図2DのY字の記録では、3つの描画線が重なる重複部Tにおいて描画線11の終点と描画線12の始点とが重なり、連続的に記録され、屈曲した重複部Tでは、モーターの作動によるミラー角度の変更によりレーザ光の方向を変えるため、重複部Tでのレーザ光の走査速度が遅くなる。その結果、重複部Tに過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰り返しによって熱可逆記録媒体にダメージが生じる。
なお、描画線11を記録した後、連続して描画線13を記録し、その後、描画線12を記録しても構わない。
【0025】
図2Eでは、まず、レーザ光を照射して描画線11をD1方向に記録する。そのままレーザ光を照射して重複部Tを通り描画線13をD6方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線12の始点の位置まで移動して、描画線12をD2方向に記録する。即ち、この図2EのY字の記録では、3つの描画線が重なる重複部Tにおいて描画線11の終点と描画線13の始点とが重なり、連続的に記録され、屈曲した重複部Tでは、モーターの作動によるミラー角度の変更によりレーザ光の方向を変えるため、重複部Tでのレーザ光の走査速度が遅くなる。その結果、重複部Tに過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰り返しによって熱可逆記録媒体にダメージが生じる。
【0026】
図2Fでは、まず、レーザ光を照射して描画線12をD2方向に記録する。そのままレーザ光を照射して重複部Tを通り描画線13をD6方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線11の始点の位置(重複部T)まで移動して、描画線11をD4方向に記録する。即ち、この図2FのY字の記録では、3つの描画線が重なる重複部Tにおいて描画線12の終点と描画線13の始点とが重なり、連続的に記録され、屈曲した重複部Tでは、モーターの作動によるミラー角度の変更によりレーザ光の方向を変えるため、重複部Tでのレーザ光の走査速度が遅くなる。その結果、重複部Tに過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰り返しによって熱可逆記録媒体にダメージが生じる。
なお、描画線12を記録した後、連続して描画線11を記録し、その後、描画線13を記録しても構わない。
【0027】
図2Gでは、まず、レーザ光を照射して描画線13をD3方向に記録する。そのままレーザ光を照射して重複部Tを通り描画線12をD5方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線11の始点の位置(重複部T)まで移動して、描画線11をD4方向に記録する。即ち、この図2GのY字の記録では、3つの描画線が重なる重複部Tにおいて描画線13の終点と描画線12の始点とが重なり、連続的に記録され、屈曲した重複部Tでは、モーターの作動によるミラー角度の変更によりレーザ光の方向を変えるため、重複部Tでのレーザ光の走査速度が遅くなる。その結果、重複部Tに過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰り返しによって熱可逆記録媒体にダメージが生じる。
なお、描画線13を記録した後、連続して描画線11を記録し、その後、描画線12を記録しても構わない。
【0028】
図2Hでは、まず、レーザ光を照射して描画線13をD3方向に記録する。そのままレーザ光を照射して重複部Tを通り描画線11をD4方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線12の始点の位置まで移動して、描画線12をD2方向に記録する。即ち、この図2FのY字の記録では、3つの描画線が重なる重複部Tにおいて描画線13の終点と描画線11の始点とが重なり、連続的に記録され、屈曲した重複部Tでは、モーターの作動によるミラー角度の変更によりレーザ光の方向を変えるため、重複部Tでのレーザ光の走査速度が遅くなる。その結果、重複部Tに過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰り返しによって熱可逆記録媒体にダメージが生じる。
【0029】
また、F字を記録する場合について図3A〜図3Hを参照して説明する。
図3Aは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるF字の記録方法の一例を示す。まず、レーザ光を照射して描画線21をD1方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線22の始点の位置まで移動して、描画線22をD2方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線23の始点の位置(重複部T2)まで移動して、描画線23をD3方向に記録する。即ち、この図3AのF字の記録方法では、屈曲した重複部T1において描画線21の終点と描画線22の終点とが重なり、重複部T2において描画線21の中間部と描画線23の始点とが重なり、描画線21と描画線22と描画線23とが非連続的に(別々に)記録されるので、重複部T1及びT2に過剰なエネルギーが付与されず、画像記録及び画像消去を繰り返しても熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。
なお、図3Aにおいて、描画線21及び描画線22を記録する順番は逆であっても構わない。
【0030】
図3Bは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるF字の記録方法の他の一例を示す。まず、レーザ光を照射して描画線21をD1方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線22の始点の位置まで移動して、描画線22をD2方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線23の始点の位置まで移動して、描画線23をD4方向に記録する。即ち、この図3BのF字の記録では、屈曲した重複部T1において描画線21の終点と描画線22の終点とが重なり、重複部T2において描画線21の中間部と描画線23の終点とが重なり、描画線21と描画線22と描画線23とが非連続的に(別々に)記録されるので、重複部T1及びT2に過剰なエネルギーが付与されず、画像記録及び画像消去を繰り返しても熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。
なお、図3Bにおいて、描画線21及び描画線22を記録する順番は逆であっても構わない。
【0031】
図3Cは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるF字の記録方法の他の一例を示す。まず、レーザ光を照射して描画線21をD5方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線22の始点の位置(重複部T1)まで移動して、描画線22をD6方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線23の始点の位置(重複部T2)まで移動して、描画線23をD3方向に記録する。即ち、この図3CのF字の記録では、屈曲した重複部T1において描画線21の始点と描画線22の始点とが重なり、重複部T2において描画線21の中間部と描画線23の始点とが重なり、描画線21と描画線22と描画線23とが非連続的に(別々に)記録されるので、重複部T1及びT2に過剰なエネルギーが付与されず、画像記録及び画像消去を繰り返しても熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。
なお、図3Cにおいて、描画線21及び描画線22を記録する順番は逆であっても構わない。
【0032】
図3Dは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるF字の記録方法の他の一例を示す。まず、レーザ光を照射して描画線21をD5方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線22の始点の位置(重複部T1)まで移動して、描画線22をD6方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線23の始点の位置まで移動して、描画線23をD4方向に記録する。即ち、この図3DのF字の記録では、屈曲した重複部T1において描画線21の始点と描画線22の始点とが重なり、重複部T2において描画線21の中間部と描画線23の終点とが重なり、描画線21と描画線22と描画線23とが非連続的に(別々に)記録されるので、重複部T1及びT2に過剰なエネルギーが付与されず、画像記録及び画像消去を繰り返しても熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。
なお、図3Dにおいて、描画線21及び描画線22を記録する順番は逆であっても構わない。
【0033】
図3Aと図3図とを対比すると、図3Bでは重複部において始点が重なっていないのに対して、図3Aでは重複部T2において描画線23の始点が重なっている。このため、図3Aでは、レーザ光の照射パワーの制御ができず不安定となり、過剰なパワーを重複部T2に付与してしまうおそれがある。
また、図3C及び図3Dは、重複部T1において描画線21及び描画線22の始点が重なっており、レーザ光の照射パワーの制御ができず不安定となり、過剰なパワーを重複部T2に付与してしまうおそれがある。
したがって、F字を記録する場合には図3Bに示す記録方法が最も好ましい。
【0034】
これに対し、図3E〜図3Hは、従来の画像処理方法における画像記録工程によるF字の記録方法の一例を示す。
図3Eでは、まず、レーザ光を照射して描画線21をD1方向に記録する。そのままレーザ光を照射して重複部T1を通り描画線22をD6方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線23の始点の位置(重複部T2)まで移動して、描画線23をD3方向に記録する。即ち、この図3EのF字の記録では、屈曲した重複部T1において描画線21の終点と描画線22の始点とが重なり、連続的に記録され、屈曲した重複部T1では、モーターの作動によるミラー角度の変更によりレーザ光の方向を変えるため、重複部Tでのレーザ光の走査速度が遅くなる。その結果、重複部T1に過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰り返しによって熱可逆記録媒体にダメージが生じる。
なお、重複部T2においては描画線21の中間部と描画線23の始点とが重なり、非連続的に記録が行われるので、重複部T2では過剰なエネルギーが付与されず、繰り返し記録によって熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。
【0035】
図3Fでは、まず、レーザ光を照射して描画線21をD1方向に記録する。そのままレーザ光を照射して重複部T1を通り描画線22をD6方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線23の始点の位置まで移動して、描画線23をD4方向に記録する。即ち、この図3FのF字の記録では、屈曲した重複部T1において描画線21の終点と描画線22の始点とが重なり、連続的に記録され、屈曲した重複部T1では、モーターの作動によるミラー角度の変更によりレーザ光の方向を変えるため、重複部T1でのレーザ光の走査速度が遅くなる。その結果、重複部T1に過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰り返しによって熱可逆記録媒体にダメージが生じる。
なお、重複部T2においては描画線21の中間部と描画線23の終点とが重なり、非連続的に記録が行われるので、重複部T2では過剰なエネルギーが付与されず、繰り返し記録によって熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。
【0036】
図3Gでは、まず、レーザ光を照射して描画線22をD2方向に記録する。そのままレーザ光を照射して重複部T1を通り描画線21をD5方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線23の始点の位置(重複部T2)まで移動して、描画線23をD3方向に記録する。即ち、この図3GのF字の記録では、屈曲した重複部T1において描画線22の終点と描画線21の始点とが重なり、連続的に記録され、屈曲した重複部T1では、モーターの作動によるミラー角度の変更によりレーザ光の方向を変えるため、重複部T1でのレーザ光の走査速度が遅くなる。その結果、重複部T1に過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰り返しによって熱可逆記録媒体にダメージが生じる。
なお、重複部T2においては描画線21の中間部と描画線23の始点とが重なり、非連続的に記録が行われるので、重複部T2では過剰なエネルギーが付与されず、繰り返し記録によって熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。
【0037】
図3Hでは、まず、レーザ光を照射して描画線22をD2方向に記録する。そのままレーザ光を照射して重複部T1を通り描画線21をD5方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線23の始点の位置まで移動して、描画線23をD4方向に記録する。即ち、この図3GのF字の記録では、屈曲した重複部T1において描画線22の終点と描画線21の始点とが重なり、連続的に記録され、屈曲した重複部T1では、モーターの作動によるミラー角度の変更によりレーザ光の方向を変えるため、重複部T1でのレーザ光の走査速度が遅くなる。その結果、重複部T1に過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰り返しによって熱可逆記録媒体にダメージが生じる。
なお、重複部T2においては描画線21の中間部と描画線23の終点とが重なり、非連続的に記録が行われるので、重複部T2では過剰なエネルギーが付与されず、繰り返し記録によって熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。
【0038】
また、X字を記録する場合について図4A〜図4Gを参照して説明する。
図4Aは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるX字の記録方法の一例を示す。まず、レーザ光を照射して描画線32をD2方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線31aの始点の位置まで移動して、描画線31aをD1方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線31bの始点の位置まで移動して、描画線31bをD3方向に記録する。即ち、この図4AのX字の記録方法では、重複部Tにおいて描画線31aの終点と描画線31bの終点と描画線32の中点とが重なり、描画線32と描画線31aと描画線31bとが非連続的に(別々に)記録されるので、重複部Tに過剰なエネルギーが付与されず、画像記録及び画像消去を繰り返しても熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。
【0039】
図4Bは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるX字の記録方法の一例を示す。まず、レーザ光を照射して描画線32をD2方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線31aの始点の位置(重複部T)まで移動して、描画線31aをD4方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線31bの始点の位置(重複部T)まで移動して、描画線31bをD5方向に記録する。即ち、この図4BのX字の記録方法では、重複部Tにおいて描画線31aの始点と描画線31bの始点と描画線32の中点とが重なり、描画線32と描画線31aと描画線31bとが非連続的に(別々に)記録されるので、重複部Tに過剰なエネルギーが付与されず、画像記録及び画像消去を繰り返しても熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。
【0040】
図4Cは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるX字の記録方法の一例を示す。まず、レーザ光を照射して描画線31をD1方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線32aの始点の位置まで移動して、描画線32aをD2方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線32bの始点の位置まで移動して、描画線32bをD6方向に記録する。即ち、この図4CのX字の記録方法では、重複部Tにおいて描画線32aの終点と描画線32bの終点と描画線31の中点とが重なり、描画線31と描画線32aと描画線32bとが非連続的に(別々に)記録されるので、重複部Tに過剰なエネルギーが付与されず、画像記録及び画像消去を繰り返しても熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。
【0041】
図4Dは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるX字の記録方法の一例を示す。まず、レーザ光を照射して描画線31をD1方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線32aの始点の位置(重複部T)まで移動して、描画線32aをD7方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線32bの始点の位置(重複部T)まで移動して、描画線32bをD8方向に記録する。即ち、この図4DのX字の記録方法では、重複部Tにおいて描画線32aの始点と描画線32bの始点と描画線31の中点とが重なり、描画線31と描画線32aと描画線32bとが非連続的に(別々に)記録されるので、重複部Tに過剰なエネルギーが付与されず、画像記録及び画像消去を繰り返しても熱可逆記録媒体にダメージが生じることがない。
【0042】
図4Eは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるX字の記録方法の一例を示す。まず、レーザ光を照射して描画線31をD1方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線32の始点の位置まで移動して、描画線32をD2方向に記録する。即ち、この図4EのX字の記録では、重複部Tにおいて描画線31と描画線32とが中点で重なり、描画線31と描画線32とが非連続的に(別々に)記録されているが、重複部Tでは、1回記録で2回分の過剰なエネルギーが付与され、重複部において各描画線の始点及び終点の少なくともいずれかが重なる図4A〜図4Dに比べて、画像記録及び画像消去の繰り返しによって熱可逆記録媒体にややダメージが生じる。
なお、図4Eにおいて画線31と描画線32を記録する順番は逆であっても構わない。
【0043】
これに対し、図4F及び図4Gは、比較態様に係る画像処理方法における画像記録工程によるX字の記録方法の一例を示す。
図4Fでは、まず、レーザ光を照射して描画線31aをD1方向に記録する。そのままレーザ光を照射して重複部Tを通り描画線32bをD8方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線32aの始点の位置まで移動して、描画線32aをD2方向に記録する。そのままレーザ光を照射して重複部Tを通り描画線31bをD5方向に記録する。即ち、この図4FのX字の記録では、重複部Tにおいて描画線31aと32bとが連続的に記録され、描画線32aと31bとが連続的に記録され、重複部Tではモーターの作動によるミラー角度の変更によりレーザ光の方向を変えるため、レーザ光の走査速度が遅くなる。その結果、重複部Tに過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰り返しによって熱可逆記録媒体にダメージが生じる。
なお、描画線31aと32b、及び描画線32aと31bを記録する順番は逆であっても構わない。
【0044】
図4Gでは、まず、レーザ光を照射して描画線32bをD6方向に記録する。そのままレーザ光を照射して重複部Tを通り描画線31aをD4方向に記録する。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線31bの始点の位置まで移動して、描画線31bをD3方向に記録する。そのままレーザ光を照射して重複部Tを通り描画線32aをD7方向に記録する。即ち、この図4GのX字の記録では、重複部Tにおいて描画線32bと31aとが連続的に記録され、描画線31bと32aとが連続的に記録され、重複部Tではモーターの作動によるミラー角度の変更によりレーザ光の方向を変えるため、レーザ光の走査速度が遅くなる。その結果、重複部Tに過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰り返しによって熱可逆記録媒体にダメージが生じる。
なお、描画線32bと31a、及び描画線31bと32a記録する順番は逆であっても構わない。
【0045】
前記描画線の記録方法における制御は、レーザ光源と、レンズ、フィルタ、マスク、ミラー等の光照射強度調整手段を調整することにより行うことができる。具体的には、位置の制御は、モーターの作動によるミラー角度の変更によりレーザ光の照射方向を変え走査させて行うことができる。
【0046】
本発明の画像処理方法は、前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて、照射されるレーザ光の光強度分布において、照射レーザ光の中心位置における光照射強度Iと、照射レーザ光の全照射エネルギーの80%面での光照射強度Iとが、次式、0.40≦I/I≦2.00を満たすことが好ましい。
ここで、前記照射レーザ光の中心位置とは、各位置の光照射強度と、各位置座標の積の総和を、各位置の光照射強度の総和で割って得ることができる位置であり、以下の式で示すことができる。
Σ(ri×Ii)/ΣIi
ただし、rは各位置座標、Iは各位置の光照射強度、ΣIiは全光照射強度を表す。
前記全照射エネルギーとは、熱可逆記録媒体上に照射されるレーザ光の全エネルギーを指す。
従来より、レーザを用いて何らかのパターンを形成する場合には、熱可逆記録媒体上をレーザ光が走査される進行方向(以下、「進行方向」という)の直交断面の光分強度布はガウス分布となっており、光照射の中心部は周辺部に比して光照射強度が極端に強いものであった。このガウス分布のレーザ光を前記熱可逆記録媒体に照射すると、前記中心部では温度が上がりすぎて画像の形成と消去とを繰り返すとその部分が劣化し、繰り返し回数が低下することとなり、また中心部の温度を劣化する温度まで上げないようにレーザ照射エネルギーを低下させると、画像のサイズが小さくなり、画像コントラストの低下や画像形成に時間がかかってしまうという問題があった。
そこで、本発明の前記画像処理方法では、前記画像記録工程において照射されるレーザ光の進行方向直交断面の光分強度布において、ガウス分布に比べて、前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度に対して小さくなるようにすることにより、画像の形成及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制しながら画像のサイズを小さくすることなく、画像コントラストを維持したまま繰返し耐久性の向上を実現している。
【0047】
ここで、前記照射レーザ光の光強度分布において、進行方向に対する直交方向の水平面で全エネルギーの20%を占め光強度の最大値を含むように分割した時、該水平面での光強度をIとして、前記照射レーザ光に対して光強度の中心となる部分の光強度をIとした時に、光強度比I/Iは、ガウス分布(正規分布)では前記比は2.30となる。
前記光強度比I/Iは、0.40以上とすることが好ましく、より好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.60以上で、特に好ましくは、0.70以上となる。また、光強度比は、2.00以下とすることが好ましく、より好ましくは1.90以下、更に好ましくは1.80以下で、特に好ましくは、1.70以下となる。
本発明において、前記比I/Iの下限としては、0.40とすることが好ましく、より好ましくは0.50、更に好ましくは0.60、特に好ましくは、0.70となる。また、本発明において、前記比の上限は、2.00とすることが好ましく、より好ましくは1.90、更に好ましくは1.80、特に好ましくは、1.70となる。
前記比I/Iが2.00を超えると、中心位置の光強度が強くなり、熱可逆記録媒体に過剰なエネルギーが加わり、繰返し画像記録を行ったときに熱可逆記録媒体の劣化による消え残りが発生することがある。一方、前記比I/Iが0.40を下回ると、周辺部に対して中心位置にエネルギーが加わらなくなり、画像を記録した時に線の中央部が発色せずに線が2本に割れることがあり、線の中央部を発色させるように照射エネルギーを上げると周辺部の光強度が強くなり過ぎて熱可逆記録媒体に過剰なエネルギーが加わり、繰返し記録及び消去を行ったときに線の周辺部に熱可逆記録媒体の劣化による消え残りが発生することがある。
更に、前記比I/Iが1.59より大きいと、中心位置の光照射強度が周辺部の光照射強度に対して強い光強度分布となることから、画像の記録及び消去の繰り返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制しながら、照射パワーを調整することにより照射距離を変更しなくても描画線の太さを変えることができる。
【0048】
レーザ光の強度分布を変化させたときの光強度分布曲線の例を図5B〜図5Eに示す。図5Bはガウス分布を示し、このような中心位置の光照射強度が強い光強度分布では、I/I値は大きくなる(ガウス分布の時、比I/I=2.3)。また、図5Cのような図5Bの光強度分布より中心位置の光照射強度が弱い光強度分布では、前記比I/Iは図5Bの光強度分布よりも小さくなる。図5Dのようなトップハット形状に近い光強度分布では、前記比I/Iは図5Cの光強度分布よりも更に小さくなる。図5Eのような中心位置の光照射強度が弱く、周辺部の光照射強度が強い光強度分布では、前記比I/Iは図5Dの光強度分布よりも更に小さくなる。よって、前記比I/Iは前記レーザ光の光照射強度分布の形状を表していることになる。
前記比I/Iが、1.59以下であると、トップハット形状あるいは中央部の光照射強度が周辺部の光照射強度に対して弱い強度分布となる。
【0049】
ここで、前記照射レーザ光の全照射エネルギーの80%面とは、前記照射レーザ光の全照射エネルギーの80%となるときの面における光強度を指し、例えば図5Aに示すように、レーザ光の光照射強度を高感度焦電式カメラを用いたハイパワー用ビームアナライザーを用いて測定し、得られた光照射強度を三次元グラフ化し、Z=0となる面に対して水平な面とZ=0の面で囲まれた全照射エネルギーの80%が含まれるように光強度分布を分割した時の水平な面を指す。
【0050】
前記レーザ光の光強度分布を測定する方法としては、前記レーザ光が、例えば、半導体レーザ、YAGレーザ等から出射され、近赤外領域の波長を有する場合には、CCD等を用いたレーザビームプロファイラを用いて行うことができる。また、例えば、COレーザから出射され、遠赤外領域の波長を有する場合には、前記CCDを使用することができないため、ビームスプリッタとパワーメータとを組合せたもの、高感度焦電式カメラを用いたハイパワー用ビームアナライザなどを用いて行うことができる。
本発明においては、照射レーザの種類を問わず効果があり、前記COレーザ、半導体レーザ、YAGレーザのいずれに対しても効果を示す。
【0051】
前記画像記録工程において照射されるレーザ光の出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1W以上が好ましく、3W以上がより好ましく、5W以上が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、1W未満であると、画像記録に時間がかかり、画像記録時間を短くしようとすると出力が不足して高濃度の画像が得られない。また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、200Wを超えると、レーザ装置の大型化を招くことがある。
前記画像記録工程において照射されるレーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300mm/s以上が好ましく、500mm/s以上がより好ましく、700mm/s以上が更に好ましい。前記走査速度が、300mm/s未満であると、画像記録に時間がかかる。また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15,000mm/s以下が好ましく、10,000mm/s以下がより好ましく、8,000mm/s以下が更に好ましい。前記走査速度が、15,000mm/sを超えると、均一な画像が記録し難くなる。
前記画像記録工程において照射されるレーザ光のスポット径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.02mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下が更に好ましい。
前記スポット径が小さいと、画像の線幅が細くなり、コントラストが小さくなって視認性が低下する。また、スポット径が大きくなると、画像の線幅が太くなり、隣接する線が重なり、小さな文字の印字が不可能となる。
また、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射される前記レーザ光の出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5W以上が好ましく、7W以上がより好ましく、10W以上が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、5W未満であると、画像消去に時間がかかり、画像消去時間を短くしようとすると出力が不足して画像の消去不良が発生する。また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、200Wを超えると、レーザ装置の大型化を招くおそれがある。
前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射されるレーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100mm/s以上が好ましく、200mm/s以上がより好ましく、300mm/s以上が更に好ましい。前記走査速度が、100mm/s未満であると、画像消去に時間がかかる。また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20,000mm/s以下が好ましく、15,000mm/s以下がより好ましく、10,000mm/s以下が更に好ましい。前記走査速度が、20,000mm/sを超えると、均一な画像消去がし難くなることがある。
前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射されるレーザ光のスポット径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することが出来るが、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上が更に好ましい。また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、14.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、7.0mm以下が更に好ましい。
前記スポット径が小さいと、画像消去に時間がかかる。また、スポット径が大きくなると、出力が不足して画像の消去不良が発生することがある。
【0052】
<画像記録及び画像消去メカニズム>
前記画像記録及び画像消去メカニズムには、温度に依存して透明度が可逆的に変化する態様と、温度に依存して色調が可逆的に変化する態様とがある。
前記透明度が可逆的に変化する態様では、前記熱可逆記録媒体における前記有機低分子が、前記樹脂中に粒子状に分散されてなり、前記透明度が、透明状態と白濁状態とに熱により可逆的に変化する。
前記透明度の変化の視認は、下記現象に由来する。即ち、(1)透明状態の場合、樹脂母材中に分散された前記有機低分子物質の粒子と、前記樹脂母材とは隙間なく密着しており、また、前記粒子内部にも空隙が存在しないため、片側から入射した光は散乱することなく反対側に透過し、透明に見える。一方、(2)白濁状態の場合、前記有機低分子物質の粒子は、前記有機低分子物質の微細な結晶で形成されており、該結晶の界面又は前記粒子と前記樹脂母材との界面に隙間(空隙)が生じ、片側から入射した光は前記空隙と前記結晶との界面、あるいは前記空隙と前記樹脂との界面において屈折し散乱するため、白く見える。
【0053】
まず、図6Aに、前記樹脂中に前記有機低分子物質が分散されてなる可逆性感熱記録層(以下、「記録層」と称することがある)を有する熱可逆記録媒体について、その温度−透明度変化曲線の一例を示す。
前記記録層は、例えば、T以下の常温では、白濁不透明状態(A)である。これを加熱していくと、温度Tから徐々に透明になり始め、温度T〜Tに加熱すると透明(B)となり、この状態で再びT以下の常温に戻しても透明(D)のままである。これは、温度T付近から前記樹脂が軟化し始め、軟化が進むにつれて該樹脂が収縮し、該樹脂と前記有機低分子物質粒子との界面、あるいは前記粒子内の空隙を減少させるため、徐々に透明度が上がり、温度T〜Tでは、前記有機低分子物質が半溶融状態となり、残った空隙を、前記有機低分子物質が埋めることにより透明となり、種結晶が残ったまま冷却されると比較的高温で結晶化し、その際、前記樹脂がまだ軟化状態にあるため、結晶化に伴う粒子の堆積変化に前記樹脂が追随し、前記空隙が生じず、透明状態が維持されるためであると考えられる。
更にT以上の温度に加熱すると、最大透明度と最大不透明度との中間の半透明状態(C)になる。次に、この温度を下げていくと、再び透明状態になることなく、最初の白濁不透明状態(A)に戻る。これは、温度T以上で前記有機低分子物質が完全に溶融した後、過冷却状態となり、Tより少し高い温度で結晶化し、その際、前記樹脂が結晶化に伴う体積変化に追随することができず、空隙が発生するためであると考えられる。
ただし、図6Aに示す温度−透明度変化曲線は、前記樹脂、前記有機低分子物質等の種類を変えると、その種類に応じて、各状態の透明度に変化が生じることがある。
【0054】
また、透明状態と白濁状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の透明度変化メカニズムを図6Bに示す。
図6Bでは、1つの長鎖低分子粒子と、その周囲の高分子とを取り出し、加熱及び冷却に伴う空隙の発生及び消失変化を図示している。白濁状態(A)では、高分子と低分子粒子との間(又は粒子内部)に空隙が生じ、光散乱状態となっている。これを加熱し、前記高分子の軟化点(Ts)を超えると、空隙は減少して透明度が増加する。更に加熱し、前記低分子粒子の融点(Tm)近くになると、該低分子粒子の一部が溶融し、溶融した低分子粒子の体積膨張のため、空隙に前記低分子粒子が充満して空隙が消失し、透明状態(B)となる。ここから冷却すると、融点直下で前記低分子粒子は結晶化し、空隙は発生せず、室温でも透明状態(D)が維持される。
次に、前記低分子粒子の融点以上に加熱すると、溶融した低分子粒子と周囲の高分子との屈折率にズレが生じ、半透明状態(C)となる。ここから室温まで冷却すると前記低分子粒子は過冷却現象を生じ高分子の軟化点以下で結晶化し、このとき前記高分子はガラス状態となっているため、前記低分子粒子の結晶化に伴う体積減少に、周囲の高分子が追随できず、空隙が発生して元の白濁状態(A)に戻る。
以上より、前記有機低分子物質が結晶化する前に画像消去温度に加熱されても、前記有機低分子物質は溶融状態であるため、過冷却状態となり、前記樹脂が前記有機低分子物質の結晶化に伴う体積変化に追随できず、空隙が発生するため、白濁状態になると考えられる。
【0055】
次に、温度に依存して色調が可逆的に変化する態様では、融解前の前記有機低分子物質が、ロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)であり、かつ融解した後であって、結晶化する前の前記有機低分子物質が、前記ロイコ染料及び前記顕色剤であり、前記色調が、透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
図7Aに、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる可逆性感熱記録層を有する熱可逆記録媒体について、その温度−発色濃度変化曲線の一例を示し、図7Bに、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを示す。
まず、初め消色状態(A)にある前記記録層を昇温していくと、溶融温度Tにて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度Tにて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお、図7Aに示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもTで凝集構造が変化し、相分離や前記顕色剤の結晶化が生じている。
以上より、前記顕色剤が融解して前記ロイコ染料と形成した前記発色混合物が結晶化する前に、画像消去温度に加熱されると、前記ロイコ染料と前記顕色剤との分離が妨げられ、結果として、発色状態を維持すると考えられる。
【0056】
前記有機低分子物質が融解しており、かつ結晶化前の状態であることを確認する方法、及び前記有機低分子物質が融解した後、結晶化するまでの時間の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、直線画像を記録した後、所定時間後に該直線画像に対して垂直方向に重なるように直線画像を記録し、これらの交点部が消去されているかどうかを判断することにより行うことができる。該交点部が消去されている場合、前記有機低分子物質が結晶化していると認められる。
前記交点部が消去されているとは、例えば、マクベス濃度計(RD914)を用い、前記交点部を含む直線画像の画像濃度を連続的に測定し、前記熱可逆記録媒体の透明度が可逆的に変化する態様では、画像濃度が1.2以上、前記熱可逆記録媒体の色調が可逆的に変化する態様では、画像濃度が0.5以下であることを意味する。なお、前記熱可逆記録媒体の透明度が可逆的に変化する態様では、背面に黒色紙(O.D.値=2.0)を敷いて測定する。
また、前記熱可逆記録媒体をX線解析することにより、結晶化しているかどうかを確認することもできる。前記有機低分子物質が結晶化している場合、前記有機低分子物質の種類に応じて独自の結晶構造を示し、X線解析によりその結晶構造に対応する散乱ピークを検出することができる。該散乱ピーク位置については、前記有機低分子物質単独のX線解析を行うことにより、容易に確認することができる。また、X線解析装置によっては、温度を変化させながら測定することも可能であるので、前記有機低分子物質を加熱溶融させた後、該有機低分子物質の結晶化の過程を確認することができる。
【0057】
[熱可逆記録媒体]
本発明の前記画像処理方法に用いられる前記熱可逆記録媒体は、支持体と、可逆性感熱記録層とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、保護層、中間層、アンダーコート層、バック層、光熱変換層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0058】
−支持体−
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱可逆記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0059】
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO、金属などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のフィルムなどが挙げられる。
前記無機材料及び前記有機材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機材料が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0060】
前記支持体には、塗布層の接着性を向上させることを目的として、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、などを行うことにより表面改質するのが好ましい。
また、前記支持体に、酸化チタン等の白色顔料などを添加することにより、白色にするのが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜2,000μmが好ましく、50μm〜1,000μmがより好ましい。
【0061】
−可逆性感熱記録層−
前記可逆性感熱記録層(以下、単に「記録層」と称することがある)は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する材料を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する材料は、温度変化により、目に見える変化を可逆的に生じる現象を発現可能な材料であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態とに変化可能である。この場合、目に見える変化は、色の状態の変化と形状の変化とに分けられる。該色の状態の変化は、例えば、透過率、反射率、吸収波長、散乱度などの変化に起因し、前記熱可逆記録媒体は、実際には、これらの変化の組合せにより色の状態が変化する。
【0062】
前記温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、温度制御しやすく、高コントラストが得られる点で、前記第一の特定温度と第二の特定温度とで透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化するものが特に好ましい。
具体的には、第一の特定温度で透明状態となり、第二の特定温度で白濁状態となるもの(特開昭55−154198号公報参照)、第二の特定温度で発色し、第一の特定温度で消色するもの(特開平4−224996号公報、特開平4−247985号公報、特開平4−267190号公報等参照)、第一の特定温度で白濁状態となり、第二の特定温度で透明状態となるもの(特開平3−169590号公報参照)、第一の特定温度で黒、赤、青等に発色し、第二の特定温度で消色するもの(特開平2−188293号公報、特開平2−188294号公報等参照)などが挙げられる。
これらの中でも、樹脂母材と該樹脂母材中に分散させた高級脂肪酸等の有機低分子物質とからなる熱可逆記録媒体は、第二の特定温度及び第一の特定温度が比較的低く、低エネルギーでの消去記録が可能な点で有利である。また、発消色メカニズムが、樹脂の固化と有機低分子物質の結晶化とに依存する物理変化であるため、耐環境性に強い特性がある。
また、後述するロイコ染料と可逆性顕色剤とを用いた、第二の特定温度で発色し、第一の特定温度で消色する熱可逆記録媒体は、透明状態と発色状態とを可逆的に示し、発色状態では、黒、青、その他の色を示すため、高コントラストな画像を得ることができる。
【0063】
前記熱可逆記録媒体における前記有機低分子物質(樹脂母材中に分散され、第一の特定温度で透明状態となり、第二の特定温度で白濁状態となるもの)としては、前記録層中で、熱により多結晶から単結晶に変化するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、一般に、融点が30℃〜200℃程度のものを使用することができ、融点が50℃〜150℃のものが好適である。
このような有機低分子物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカノール;アルカンジオール;ハロゲンアルカノール又はハロゲンアルカンジオール;アルキルアミン;アルカン;アルケン;アルキン;ハロゲンアルカン;ハロゲンアルケン;ハロゲンアルキン;シクロアルカン;シクロアルケン;シクロアルキン;飽和又は不飽和モノ若しくはジカルボン酸及びこれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;飽和又は不飽和ハロゲン脂肪酸及びこれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;アリールカルボン酸及びそれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;ハロゲンアリルカルボン酸及びそれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;チオアルコール;チオカルボン酸及びそれらのエステル、アミン又はアンモニウム塩;チオアルコールのカルボン酸エステル;などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
これらの化合物の炭素数としては、10〜60が好ましく、10〜38がより好ましく、10〜30が特に好ましい。エステル中のアルコール基部分は、飽和していてもよいし飽和していなくてもよく、ハロゲン置換されていてもよい。
また、前記有機低分子物質は、その分子中に、酸素、窒素、硫黄及びハロゲンから選択される少なくとも1種、例えば、−OH、−COOH、−CONH−、−COOR、−NH−、−NH、−S−、−S−S−、−O−、ハロゲン原子等を含んでいるのが好ましい。
更に具体的には、これらの化合物としては、例えば、ラウリン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ノナデカン酸、アラギン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸メチル、ステアリン酸テトラデシル、ステアリン酸オクタデシル、ラウリン酸オクタデシル、パルミチン酸テトラデシル、ベヘン酸ドデシル等の高級脂肪酸のエステルなどが挙げられる。これらの中でも、前記画像処理方法の第3の態様で用いられる有機低分子物質としては、高級脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の炭素数16以上の高級脂肪酸がより好ましく、炭素数16〜24の高級脂肪酸が更に好ましい。
【0065】
前記熱可逆記録媒体を透明化することができる温度範囲の幅を拡げるためには、上述した各種有機低分子物質を適宜組み合わせて使用してもよいし、該有機低分子物質と融点の異なる他の材料とを組み合わせて使用してもよい。これらは、例えば、特開昭63−39378号公報、特開昭63−130380号公報、特許第2615200号公報などに開示されているが、これらに限定されるものではない。
【0066】
前記樹脂母材は、前記有機低分子物質を均一に分散保持した層を形成すると共に、最大透明時の透明度に影響を与える。このため、該樹脂母材としては、透明性が高く、機械的安定性を有し、かつ成膜性の良好な樹脂であるのが好ましい。
このような樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニル;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−アクリレート共重合体等の塩化ビニル系共重合体;ポリ塩化ビニリデン;塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の塩化ビニリデン系共重合体;ポリエステル;ポリアミド;ポリアクリレート又はポリメタクリレート若しくはアクリレート−メタクリレート共重合体;シリコーン樹脂;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
前記記録層における、前記有機低分子物質と前記樹脂(樹脂母材)との割合は、質量比で2:1〜1:16程度が好ましく、1:2〜1:8がより好ましい。
前記樹脂の比率が、2:1よりも小さいと、前記有機低分子物質を前記樹脂母材中に保持した膜を形成することが困難となることがあり、1:16よりも大きくなると、前記有機低分子物質の量が少ないため、前記記録層の不透明化が困難になることがある。
【0068】
前記記録層には、前記有機低分子物質及び前記樹脂のほか、透明画像の記録を容易にするために、高沸点溶剤、界面活性剤等のその他の成分を添加することができる。
【0069】
前記記録層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂母材及び前記有機低分子物質の2成分を溶解した溶液、又は、前記樹脂母材の溶液(溶剤としては、前記有機低分子物質から選択される少なくとも1種を不溶なもの)に前記有機低分子物質を微粒子状に分散させた分散液を、例えば、前記支持体上に塗布及び乾燥させることにより行うことができる。
前記記録層の作製用溶剤としては、特に制限はなく、前記樹脂母材及び前記有機低分子物質の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。なお、前記分散液を使用した場合はもちろん、前記溶液を使用した場合も、得られる記録層中では前記有機低分子物質は微粒子として析出し、分散状態で存在する。
【0070】
前記熱可逆記録媒体における前記有機低分子物質は、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤からなり、第二の特定温度で発色し、第一の特定温度で消色するものであってもよい。前記ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体である。該ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、発消色特性、色彩、保存性等に優れる点で、フルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、異なる色調に発色する層を積層することにより、マルチカラー、フルカラーに対応させることもできる。
【0071】
前記可逆性顕色剤としては、熱を因子として発消色を可逆的に行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び、(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適に挙げられる。なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも、同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
前記(1)ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造としては、フェノールが特に好ましい。
前記(2)分子間の凝集力を制御する構造としては、炭素数8以上の長鎖炭化水素基が好ましく、該炭素数は11以上がより好ましく、また炭素数の上限としては、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0072】
前記可逆性顕色剤の中でも、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物が好ましく、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物がより好ましい。
【0073】
【化1】

【化2】

前記一般式(1)及び(2)中、Rは、単結合又は炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。Rは、炭素数1〜35の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、6〜35が好ましく、8〜35がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基は、1種単独で有していてもよいし、2種以上を併用して有していてもよい。
前記R、前記R、及び前記Rの炭素数の和としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限としては、8以上が好ましく、11以上がより好ましく、上限としては、40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
前記炭素数の和が、8未満であると、発色の安定性や消色性が低下することがある。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分枝鎖であってもよく、不飽和結合を有していてもよいが、直鎖であるのが好ましい。また、前記炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
X及びYは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、具体例としては、酸素原子、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、シュウ酸ジアミド基、アシル尿素基等が挙げられる。これらの中でも、アミド基、尿素基が好ましい。
nは、0〜1の整数を示す。
【0074】
前記可逆性顕色剤は、消色促進剤として、分子中に、−NHCO−基、及び−OCONH−基を少なくとも1つ有する化合物を併用するのが好ましい。この場合、消色状態を形成する過程において、前記消色促進剤と前記可逆性顕色剤との間に分子間相互作用が誘起され、発消色特性が向上する。
【0075】
前記ロイコ染料と、前記可逆性顕色剤との混合割合としては、使用する化合物の組合せにより適切な範囲が変化し一概には規定できないが、概ねモル比で、前記ロイコ染料1に対して前記可逆性顕色剤が0.1〜20であるのが好ましく、0.2〜10がより好ましい。
前記可逆性顕色剤が、0.1未満である場合、及び20を超える場合には、発色状態の濃度が低下することがある。
また、前記消色促進剤を添加する場合、その添加量は、前記可逆性顕色剤100質量部に対して0.1質量部〜300質量部が好ましく、3質量部〜100質量部がより好ましい。
なお、前記ロイコ染料と前記可逆性顕色剤とは、マイクロカプセル中に内包して用いることもできる。
【0076】
前記有機低分子物質が、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤からなる場合、前記可逆性感熱記録層は、これらの成分以外に、バインダー樹脂、架橋剤等を含んでなり、更に必要に応じて、その他の成分を含んでなる。
【0077】
前記バインダー樹脂としては、前記支持体上に前記記録層を結着することができれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から適宜選択した少なくとも1種の樹脂を混合して用いることができる。
前記バインダー樹脂としては、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線等によって硬化可能な樹脂が好ましく、イソシアネート系化合物等を架橋剤として用いた熱硬化性樹脂が特に好適である。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基等の架橋剤と反応する基を有する樹脂、又は水酸基、カルボキシル基等を有するモノマーとそれ以外のモノマーとを共重合させた樹脂、などが挙げられる。
このような熱硬化性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
【0078】
前記記録層中における前記ロイコ染料と前記バインダー樹脂との混合割合(質量比)としては、前記ロイコ染料1に対して、0.1〜10が好ましい。前記バインダー樹脂が、0.1未満であると、前記記録層の熱強度が不足することがあり、10を超えると、発色濃度が低下することがある。
【0079】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、などが挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、イソシアネート基を複数有するポリイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0080】
前記架橋剤の前記バインダー樹脂に対する添加量としては、前記バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する前記架橋剤の官能基の比で、0.01〜2が好ましい。前記官能基の比が、0.01未満であると、熱強度が不足することがあり、2を超えると、発色及び消色特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0081】
更に、架橋促進剤として、この種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
前記架橋促進剤としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の3級アミン類、有機スズ化合物等の金属化合物などが挙げられる。
前記熱架橋した場合の前記熱硬化性樹脂のゲル分率としては、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
【0082】
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。即ち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶けだし溶質中には残らなくなる。
【0083】
前記記録層におけるその他の成分としては、塗布特性や発色及び消色特性を改善したり制御するための各種添加剤が挙げられる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、可塑剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤などが挙げられる。
【0084】
前記記録層を作製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記バインダー樹脂、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤を、溶媒中に溶解乃至分散させた記録層用塗布液を、前記支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に、又はその後に架橋する方法、(2)前記バインダー樹脂のみを溶解した溶媒に、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤を分散させた記録層用塗布液を、前記支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に、又はその後に架橋する方法、(3)溶媒を用いず、前記バインダー樹脂と前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法、などが好適に挙げられる。
なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の熱可逆記録媒体として成形することもできる。また、前記記録層用塗布液は分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散させてもよいし、各々単独で溶媒中に分散させて混ぜ合わせてもよく、加熱溶解した後、急冷又は徐冷することによって材料を析出させてもよい。
【0085】
前記記録層の作製方法における、(1)又は(2)において用いる溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記バインダー樹脂、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤の種類等によって異なり、一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
なお、前記可逆性顕色剤は、前記記録層中では粒子状に分散して存在している。
【0086】
前記記録層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤等を添加してもよい。
前記記録層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した前記支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等の公知の方法を用いて行うことができる。
前記記録層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10秒間〜10分間程度、などが挙げられる。
前記記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。前記記録層の厚みが1μm未満であると、発色濃度が低くなるため画像のコントラストが低くなることがあり、20μmを超えると、層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、所望の発色濃度を得ることができなくなることがある。
【0087】
−保護層−
前記保護層は、前記記録層を保護する目的で、該記録層上に設けられるのが好ましい。
前記保護層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複数層に形成してもよいが、露出している層の最表面に設けるのが好ましい。
前記保護層は、バインダー樹脂を少なくとも含み、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0088】
前記保護層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、などが好適に挙げられる、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記UV硬化性樹脂は、硬化後非常に硬い膜を形成することができ、表面の物理的な接触によるダメージやレーザ加熱による媒体変形を抑止することができるため繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体を得ることができる。
また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るものの、同様に表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体を得ることができる。
【0089】
前記UV硬化性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマー;各種単官能又は多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマー;などが挙げられる。これらの中でも、4官能以上の多官能性のモノマー又はオリゴマーが特に好ましい。これらのモノマー又はオリゴマーを2種類以上混合することにより、樹脂膜の硬さ、収縮度、柔軟性、塗膜強度等を適宜調節することができる。
【0090】
前記モノマー又はオリゴマーを、紫外線を用いて硬化させるためには、光重合開始剤、光重合促進剤を用いることが好ましい。
前記光重合開始剤及び前記光重合促進剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記保護層の樹脂成分の全質量に対し、0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0091】
前記紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線の照射は、公知の紫外線照射装置を用いて行うことができ、該紫外線照射装置としては、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えたものなどが挙げられる。
前記光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。
前記光源から出射される光の波長としては、特に制限はなく、前記記録層に含まれる光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
前記紫外線の照射条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度等を適宜決定すればよい。
【0092】
また、良好な搬送性の確保を目的として、重合性基を有するシリコーン、シリコーングラフトをした高分子、ワックス、ステアリン酸亜鉛等の離型剤;シリコーンオイル等の滑剤などを添加することができる。
これらの添加量としては、前記保護層の樹脂成分全質量に対して、0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜40質量%がより好ましい。
前記添加量は、わずかでも効果を発現することはできるが、0.01質量%未満であると、添加による効果が得られ難くなることがあり、50質量%を超えると、下層との接着性に問題が生じる場合がある。
また、前記保護層中には、有機紫外線吸収剤を含有していてもよく、その含有量としては、前記保護層の樹脂成分全質量に対して、0.5〜10質量%が好ましい。
【0093】
更に、搬送性を向上させるために、無機フィラー、有機フィラーなどを添加してもよい。前記無機フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、タルク、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、静電気対策として、導電性フィラーを用いるのが好ましく、該導電性フィラーとしては、針状のものを用いるのがより好ましい。
前記導電性フィラーとしては、アンチモンドープ酸化スズで表面が被覆されている酸化チタンが特に好適に挙げられる。
前記無機フィラーの粒径としては、例えば、0.01μm〜10.0μmが好ましく、0.05μm〜8.0μmがより好ましい。
前記無機フィラーの添加量としては、前記保護層のバインダー樹脂1質量部に対し、0.001質量部〜2質量部が好ましく、0.005質量部〜1質量部がより好ましい。
【0094】
前記有機フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などが挙げられる。
【0095】
前記熱硬化性樹脂は、架橋されているのが好ましい。従って、該熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の、硬化剤と反応する基を有しているものが好ましく、水酸基を有しているポリマーが特に好ましい。
前記保護層の強度を向上させるためには、充分な塗膜強度が得られる点で、前記熱硬化性樹脂の水酸基価が、10mgKOH/g以上が好ましく、30mgKOH/g以上がより好ましく、40mgKOH/g以上が更に好ましい。充分な塗膜強度を付与することにより、繰返し消去及び記録を行っても、前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えることができる。前記硬化剤としては、例えば、前記記録層で用いられた硬化剤と同様なものを好適に使用することができる。
【0096】
前記保護層には、必要に応じて、従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤等を添加していてもよい。
更に、紫外線吸収構造を有するポリマー(以下、「紫外線吸収ポリマー」と称することがある)を用いてもよい。
ここで、前記紫外線吸収構造を有するポリマーとは、紫外線吸収構造(例えば、紫外線吸収性基)を分子中に有するポリマーを意味する。
前記紫外線吸収構造としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などが挙げられる。これらの中でも、耐光性が良好な点で、ベゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造が特に好ましい。
前記紫外線吸収構造を有するポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとスチレンからなる共重合体、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールとメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルとメタクリル酸メチルとからなる共重合体、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとメタクリル酸メチルとメタクリル酸t−ブチルとからなる共重合体、2,2,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノンとメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルとスチレンとメタクリル酸メチルとメタクリル酸プロピルとからなる共重合体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
前記保護層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、保護層の塗工方法、乾燥方法等は前記記録層の作製において説明した公知の方法を用いることができる。なお、前記紫外線硬化樹脂を用いる場合には、塗布して乾燥を行った後、紫外線照射による硬化工程が必要となるが、紫外線照射装置、光源、照射条件等については上述の通りである。
【0098】
前記保護層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜10μmがより好ましく、1.5μm〜6μmが更に好ましい。前記厚みが、0.1μm未満であると、前記熱可逆記録媒体の保護層としての機能を充分に発揮することができず、熱による繰返し履歴により、すぐに劣化し、繰返し使用することができなくなることがあり、20μmを超えると、前記保護層の下層にある記録層に充分な熱を伝えることができなくなり、熱による画像の記録と消去とが充分にできなくなることがある。
【0099】
−中間層−
前記中間層は、前記記録層と前記保護層との接着性向上、前記保護層の塗布による前記記録層の変質防止、前記保護層中の添加剤の前記記録層への移行の防止、などを目的として、両者の間に設けられるのが好ましい。この場合、発色画像の保存性を改善することができる。
前記保護層は、バインダー樹脂を少なくとも含み、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0100】
前記中間層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記記録層におけるバインダー樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。
前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0101】
また、前記中間層には、紫外線吸収剤を含有させるのが好ましい。該紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機系化合物及び無機系化合物のいずれをも用いることができる。
なお、前記有機系及び無機系紫外線吸収剤は、前記記録層に含有させてもよい。
また、紫外線吸収ポリマーを用いてもよく、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記保護層で用いるものと同様のものを好適に使用することができる。
【0102】
前記中間層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜5μmがより好ましい。
前記中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥方法、硬化方法等は、前記記録層の作製において説明した公知の方法を用いることができる。
【0103】
−アンダー層−
印加した熱を有効に利用し高感度化するため、又は前記支持体と前記記録層との接着性の改善や前記支持体への前記記録層材料の浸透防止を目的として、前記記録層と前記支持体との間に、アンダー層を設けてもよい。
前記アンダー層は、中空粒子を少なくとも含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0104】
前記中空粒子としては、例えば、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。
前記中空粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、10質量%〜80質量%が好ましい。
【0105】
前記アンダー層のバインダー樹脂としては、前記記録層、又は前記紫外線吸収構造を有するポリマーを含有する層と同様の樹脂を用いることができる。
また、前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク等の無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
前記アンダー層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜50μmが好ましく、2μm〜30μmがより好ましく、12μm〜24μmが更に好ましい。
【0106】
−バック層−
前記熱可逆記録媒体のカールや帯電防止、搬送性の向上のために、前記支持体の前記記録層を設ける面と反対側に、バック層を設けてもよい。
前記バック層は、バインダー樹脂を少なくとも含み、更に必要に応じて、フィラー、導電性フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0107】
前記バック層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記紫外線硬化樹脂、前記熱硬化性樹脂については、前記記録層、前記保護層、及び前記中間層で用いられるものと同様なものを好適に用いることができる。また、前記フィラー、前記導電性フィラー、前記滑剤についても同様である。
【0108】
−光熱変換層−
前記光熱変換層は、レーザ光を吸収し発熱する機能を有する層であり、レーザ光を吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。
前記光熱変換材料は、無機系材料と有機系材料とに大別できる。
前記無機系材料としては、例えば、カーボンブラックやGe、Bi、In、Te、Se、Cr等の金属又は半金属及びそれを含む合金が挙げられ、これらは、真空蒸着法や粒子状の材料を樹脂等で接着して層状に形成される。
前記有機系材料としては、吸収すべき光波長に応じて各種の染料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザを用いる場合には、700nm〜1,500nm付近に吸収ピークを有する近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、フェニレンジアミン系ニッケル錯体、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素などが挙げられる。画像記録及び消去を繰り返すためには、耐熱性に優れた光熱変換材料を選択するのが好ましい。
前記近赤外吸収色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、前記記録層中に混ぜ込んでもよい。この場合、前記記録層は、前記光熱変換層を兼ねることとなる。
前記光熱変換層を設ける場合には、通常、前記光熱変換材料は、樹脂と併用して用いられる。該光熱変換層に用いられる樹脂としては、特に制限はなく、前記無機系材料及び有機系材料を保持できるものであれば、公知のものの中から適宜選択することができるが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが好ましい。
【0109】
−接着層及び粘着層−
前記支持体の前記記録層形成面の反対面に、接着層又は粘着層を設けることにより、前記熱可逆記録媒体を、熱可逆記録ラベルの態様で得ることができる。
前記接着層及び前記粘着層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて一般的に使われているものの中から適宜選択することができる。
【0110】
前記接着層及び前記粘着層の材料は、ホットメルトタイプでもよい。また、剥離紙を用いてもよいし、無剥離紙タイプでもよい。このように前記接着層又は前記粘着層を設けることにより、前記記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカード等の厚手の基板の全面若しくは一部に、前記記録層を貼ることができる。これにより、磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、前記熱可逆記録媒体の利便性が向上する。
このような接着層又は粘着層を設けた熱可逆記録ラベルは、ICカード、光カード等の厚手のカードにも好適である。
【0111】
−着色層−
前記熱可逆記録媒体には、視認性を向上させる目的で、前記支持体と前記記録層との間に着色層を設けてもよい。
前記着色層は、着色剤及び樹脂バインダーを含有する溶液、又は分散液を対象面に塗布し乾燥する、あるいは単に、着色シートを貼り合せることにより形成することができる。
【0112】
前記着色層は、カラー印刷層とすることができる。
前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられる。
前記樹脂バインダーとしては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂などが挙げられる。
前記カラー印刷層の厚みとしては、特に制限はなく、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
【0113】
なお、前記熱可逆記録媒体は、非可逆性記録層を併用していてもよい。この場合、それぞれの記録層の発色色調は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、前記熱可逆記録媒体の記録層と同一面の一部若しくは全面、又は反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンタ、熱転写プリンタ、昇華型プリンタ等によって任意の絵柄などを形成した着色層を設けてもよく、更に前記着色層上の一部分又は全面に、硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けてもよい。
前記絵柄としては、例えば、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。
また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
更に、前記熱可逆記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のために、レリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
【0114】
−熱可逆記録媒体の形状及び用途−
前記熱可逆記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、タグ状、ラベル状、シート状、ロール状などに加工される。
また、カード状に加工されたものについては、プリペイドカード、ポイントカード、更にはクレジットカード等へ応用することができる。
更に、カードサイズよりも小さなタグ状のサイズでは、値札等に利用することができ、カードサイズよりも大きなタグ状のサイズでは、工程管理や出荷指示書、チケット等に使用することができる。
ラベル状のものは、貼り付けることができるために、様々な大きさに加工され、繰返し使用する台車や容器、箱、コンテナ等に貼り付けて工程管理、物品管理等に使用することができる。また、カードサイズよりも大きなシートサイズでは、記録する範囲が広くなるため、一般文書や工程管理用の指示書等に使用することができる。
【0115】
−熱可逆記録部材 RF−IDとの組合せ例−
前記熱可逆記録部材は、可逆表示可能な前記可逆性感熱記録層(記録層)と情報記憶部とを、同一のカードやタグに設け(一体化させ)、該情報記憶部の記憶情報の一部を前記記録層に表示することにより、特別な装置がなくてもカードやタグを見るだけで情報を確認することができ、利便性に優れる。また、情報記憶部の内容を書き換えたときには、熱可逆記録部の表示を書き換えることで、前記熱可逆記録媒体を繰り返し何度も使用することができる。
なお、前記情報記憶部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリ、光メモリ、RF−IDタグなどが好適に挙げられる。工程管理、物品管理等に使用する場合には、RF−IDタグが特に好適に使用可能である。
なお、前記RF−IDタグは、ICチップと、該ICチップに接続したアンテナとから構成されている。
【0116】
前記熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを有し、該情報記憶部の好適な例としては、RF−IDタグが挙げられる。
図8は、RF−IDタグの概略図の一例を示す。このRF−IDタグ85は、ICチップ81と、該ICチップ81に接続したアンテナ82とから構成されている。前記ICチップ81は、記憶部、電源調整部、送信部、及び受信部の4つに区分されており、それぞれが働きを分担して通信を行っている。通信はRF−IDタグ85と、リーダライタとのアンテナが電波により通信してデータのやり取りを行う。具体的には、RF−ID85のアンテナが、リーダライタからの電波を受信し共振作用により電磁誘導により起電力が発生する電磁誘導方式と放射電磁界により起動する電波方式との2種類がある。共に外部からの電磁界によりRF−IDタグ85内のICチップ81が起動し、チップ内の情報を信号化し、その後、RF−IDタグ85から信号を発信する。この情報をリーダライタ側のアンテナで受信してデータ処理装置で認識し、ソフト側でデータ処理を行う。
【0117】
前記RF−IDタグは、ラベル状又はカード状に加工されており、該RF−IDタグを前記熱可逆記録媒体に貼り付けることができる。前記RF−IDタグは記録層面又はバック層面に貼ることができるが、バック層面に貼るのが好ましい。
前記RF−IDタグと前記熱可逆記録媒体とを貼り合わせるためには、公知の接着剤又は粘着剤を使用することができる。
また、前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとをラミネート加工等で一体化してカード状やタグ状に加工してもよい。
【0118】
前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとを組み合わせた前記熱可逆記録部材の工程管理での使い方の一例を示す。
納品された原材料が入っているコンテナが搬送される工程ラインには、搬送されながら表示部に可視画像を非接触で書き込む手段と、非接触で消去する手段とが備えられ、更に、電磁波の発信によりコンテナに備えられたRF−IDの情報の読み取り、書き換えを非接触で行うためのリーダライタが備えられている。また、更に、この工程ラインには、コンテナが搬送されながら非接触にて読み書きされるその個別情報を利用して、物流ライン上で自動的に分岐や計量、管理などを行う制御手段が備えられている。
このコンテナに添付されたRF−ID付き熱可逆記録媒体に対して、物品名と数量などの情報を該熱可逆記録媒体と該RF−IDタグとに記録し、検品が実施される。次工程では納入された原材料に加工指示が与えられ、前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとに情報が記録され、加工指示書となり加工工程へと進む。次いで、加工された商品には発注指示書として発注情報が前記熱可逆記録媒体と前記RF−IDタグとに記録され、商品出荷後に回収したコンテナから出荷情報を読み取り、再度納品用のコンテナとRF−ID付き熱可逆記録媒体として使用される。
このとき、レーザを用いた前記熱可逆記録媒体への非接触記録であるため、コンテナ等から前記熱可逆記録媒体を剥がすことなく情報の消去記録を行うことができ、更に前記RF−IDタグにも非接触で情報を記録することができるため、工程をリアルタイムで管理することができ、また前記RF−IDタグ内の情報を前記熱可逆記録媒体に同時に表示することが可能となる。
【0119】
(画像処理装置)
本発明の画像処理装置は、本発明の前記画像処理方法に用いられ、レーザ光出射手段と、光照射強度調整手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してなる。
【0120】
−レーザ光出射手段−
前記レーザ光は前記レーザ光出射手段であるレーザ発振器から出射される。前記レーザ光出射手段としては、レーザ光を照射可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、COレーザ、YAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)などの通常用いられるレーザが挙げられる。
前記レーザ発振器は、光強度が強く、指向性の高いレーザ光を得るために必要なものであり、例えば、レーザ媒質の両側にミラーを配置し、該レーザ媒質をポンピング(エネルギー供給)し、励起状態の原子数を増やし反転分布を形成させて誘導放出を起こさせる。そして、光軸方向の光のみが選択的に増幅されることにより、光の指向性が高まり出力ミラーからレーザ光が放出される。
前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視領域から赤外領域が好ましく、画像コントラストが向上する点で、近赤外領域から遠赤外領域がより好ましい。
前記可視領域では、前記熱可逆記録媒体の画像記録及び画像消去のために、レーザ光を吸収して発熱させるための添加剤が着色するため、コントラストが低下することがある。
【0121】
前記COレーザから出射されるレーザ光の波長は、遠赤外領域の10.6μmであり、前記熱可逆記録媒体が該レーザ光を吸収するため、前記熱可逆記録媒体に対する画像の記録及び消去のために、レーザ光を吸収して発熱させるための添加物を添加することが不要となる。また、該添加物は、近赤外領域の波長を有するレーザ光を用いても、若干ではあるが、可視光をも吸収することがあるため、該添加物が不要となる前記COレーザは、画像コントラストの低下を防ぐことができるという利点がある。
【0122】
前記YAGレーザ、前記ファイバーレーザ、及び前記LDから出射されるレーザ光の波長は、可視〜近赤外領域(数百μm〜1.2μm)であり、現状の熱可逆記録媒体は、その波長領域のレーザ光を吸収しないため、レーザ光を吸収して熱に変換するための光熱変換材料の添加が必要となるが、波長が短いため高精細画像の記録が可能であるという利点がある。
また、前記YAGレーザ、及び前記ファイバーレーザは高出力であるため、画像の記録及び消去速度の高速化を量ることができるという利点がある。前記LDはレーザ自体が小さいため、装置の小型化、更には低価格化が可能であるという利点がある。
【0123】
−光照射強度調整手段−
前記光照射強度調整手段は、前記レーザ光の光照射強度を変化させる機能を有する。
前記光照射強度調整手段の配置態様としては、前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の光路上に配置される限り特に制限はなく、前記レーザ光出射手段との距離等については、目的に応じて適宜選択することができるが、前記レーザ光出射手段と後述するガルバノミラーの間に配置することが好ましく、後述するビームエキスパンダと前記ガルバノミラーの間に配置することがより好ましい。
【0124】
前記光照射強度調整手段は、前記レーザ光の光強度分布を、前記ガウス分布から、中心周辺の光強度に対する中心位置の光強度を小さくしていき、照射レーザ光の中心位置における光照射強度のIと、照射レーザ光の全照射エネルギーの80%面での光照射強度Iとが、0.40≦I/I≦2.00となるように変化させる機能を有するものが好ましい。これにより、画像記録及び画像消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制し、画像コントラストを維持したまま繰返し耐久性を向上させることができる。
【0125】
前記光照射強度調整手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、レンズ、フィルタ、マスク、ミラー、ファイバーカップリングなどが好適に挙げられる。これらの中でも、エネルギーロスの少ないレンズが好ましく、該レンズとしては、カライドスコープ、インテグレータ、ビームホモジナイザー、非球面ビームシェイパー(強度変換レンズと位相補正レンズとの組合せ)、非球面素子レンズ、回折光学素子などを好適に使用することができ、特に非球面素子レンズ、回折光学素子が好ましい。
フィルタ、マスク等を用いる場合、前記レーザ光の中心部をカットすることにより光照射強度を調整することができる。また、ミラーを用いる場合、コンピュータと連動して機械的に形状が変えられるディフォーマブルミラー、反射率あるいは表面凹凸が部分的に異なるミラーなどを用いることにより光照射強度を調整することができる。
近赤外、可視光の発振波長を有するレーザの場合は、ファイバーカップリングすることによって、光照射強度の調整を容易に行うことができるので好ましい。近赤外、可視光の発振波長を有するレーザとしては、半導体レーザ、固体レーザ等が挙げられる。
なお、前記光照射強度調整手段による、光照射強度の調整方法については、後述する本発明の画像処理装置の説明において詳述する。
【0126】
前記光照射強度調整手段として、非球面ビームシェイパーを用いた、光照射強度の調整方法の一例について、以下に説明する。
例えば、強度変換レンズと位相補正レンズとの組合せを用いる場合には、図9Aに示すように、前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の光路上に、2枚の非球面レンズを配設する。そして、1枚目の非球面レンズL1により、目的とする位置(距離l)にて、ガウス分布に対して、前記比I/Iを小さくなる(図9Aでは、フラットトップ形状)ように調整して、強度変換する。その後、強度変換されたビーム(レーザ光)を平行伝搬させるために、2枚目の非球面レンズL2で位相の補正を行う。その結果、前記ガウス分布の光強度分布を変化させることができる。
また、図9Bに示すように、前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の光路上に、強度変換レンズLのみを配設してもよい。この場合、ガウス分布した入射ビーム(レーザ光)について、強度の強い部分(内部)は、X1に示すように、ビームを拡散させ、逆に強度の弱い部分(外部)は、X2に示すように、ビームを収束させることにより、前記比I/Iが小さくなる(図9Bでは、フラットトップ形状)ように変換することができる。
更に、前記光照射強度調整手段として、ファイバーカップリングした半導体レーザとレンズとの組合せによる、光照射強度の調整方法の一例について、以下に説明する。
ファイバーカップリングした半導体レーザでは、レーザ光がファイバー中を反射を繰り返しながら伝搬していくため、ファイバー端より出射するレーザ光の光強度分布は、前記ガウス分布とは異なり、前記ガウス分布と前記フラットトップ形状との中間に相当するような光強度分布となる。このような光強度分布を、前記フラットトップ形状となるように、ファイバー端に集光光学系として複数枚の凸レンズ及び/又は凹レンズを組み合わせたものを取り付ける。
【0127】
ここで、図10に、本発明の画像処理装置の一例を示す。
この図10に示す画像処理装置は、出力40WのCOレーザを有するレーザマーカー(サンクス株式会社製、LP−440)の光路中に、前記光照射強度調整手段として、例えばレーザ光の中心部をカットするマスク(不図示)を組み込み、レーザ光の進行方向直交断面における光強度分布を、前記周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が変化するように調整可能としている。
【0128】
前記レーザ光出射手段における画像記録/消去用ヘッド部分の仕様は、可能レーザ出力範囲:0.1〜40W、照射距離可動範囲:特に限定なし、スポット径範囲:0.18〜10mm、スキャンスピード範囲:max 12,000mm/s、照射距離範囲:110mm×110mm、焦点距離:185mmである。
【0129】
前記画像処理装置は、前記レーザ光出射手段及び前記光強度調整手段を少なくとも有している以外には、光学ユニット、電源制御ユニット、及びプログラムユニットを備えていてもよい。
【0130】
前記光学ユニットは、レーザ光出射手段であるレーザ発振器110、ビームエキスパンダ102、スキャンニングユニット105、fθレンズ106、などで構成されている。
前記ビームエキスパンダ102は、複数のレンズを並設してなる光学部材であり、前記レーザ光出射手段であるレーザ発振器110と、後述するガルバノミラーの間に配置され、レーザ発振器から出射されるレーザ光を径方向に拡大してほぼ平行光としている。前記レーザ光の拡大率は1.5倍〜50倍の範囲が好ましく、その時のレーザ光のビーム径は3mm〜50mmが好ましい。
前記スキャンニングユニット105は、ガルバノメータ104と、該ガルバノメータに取り付けられたガルバノミラー104Aとで構成されている。そして、前記レーザ発振器110から出力されたレーザ光を、前記ガルバノメータ104に取り付けられたX軸方向とY軸方向との2枚のガルバノミラーで104Aが高速回転走査することにより、熱可逆記録媒体107上に、画像の記録又は画像の消去を行うことができる。高速での光走査を可能にするには、ガルバノミラー走査が好ましい。前記ガルバノミラーのサイズは前記ビームエキスパンダで拡大された平行光のビーム径に依存し、3mm〜60mmの範囲が好ましく、6mm〜40mmの範囲がより好ましい。
前記平行光のビーム径を小さくし過ぎると、fθレンズで集光後のスポット径を小さくすることができなくなることがある。一方、前記平行光のビーム径を大きくし過ぎると、ガルバノミラーのサイズが大きくなり高速での光走査ができなくなることがある。
前記fθレンズ106は、前記ガルバノメータ104に取り付けられたガルバノミラー104Aによって等角速度で回転走査されたレーザ光を、前記熱可逆記録媒体107の平面上で等速度運動させるレンズである。
前記電源制御ユニットは、放電用電源(COレーザの場合)又はレーザ媒質を励起する光源の駆動電源(YAGレーザなど)、ガルバノメータの駆動電源、ペルチェ素子などの冷却用電源、画像処理装置全体の制御を司る制御部、などで構成されている。
前記プログラムユニットは、タッチパネル入力やキーボード入力により、画像の記録又は消去のために、レーザ光の強さ、レーザ走査の速度等の条件入力や、記録する文字等の作成及び編集を行うユニットである。
【0131】
本発明の前記画像処理方法及び前記画像処理装置は、ダンボール等の容器に貼付したラベル等の熱可逆記録媒体に対して、非接触式にて、高いコントラストの画像を高速で繰返し記録及び消去可能で、しかも繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制することができる。このため、物流・配送システムに特に好適に使用可能である。この場合、例えば、ベルトコンベアに載せた前記ダンボールを移動させながら、前記ラベルに画像を記録及び消去することができ、ラインの停止が不要な点で、出荷時間の短縮を図ることができる。また、前記ラベルが貼付されたダンボールは、該ラベルを剥がすことなく、そのままの状態で再利用し、再度、画像の消去及び記録を行うことができる。
また、前記画像処理装置は、レーザ光の光照射強度を変化させる前記光照射強度調整手段を有しているので、画像の繰返し記録及び消去による前記熱可逆記録媒体の劣化を効果的に抑制することができる。
【実施例】
【0132】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0133】
(製造例1)
<熱可逆記録媒体の作製>
温度に依存して色調が可逆的(透明状態−発色状態)に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
【0134】
−支持体−
支持体として、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
【0135】
−アンダー層−
スチレン−ブタジエン系共重合体(日本エイアンドエル社製、PA−9159)30質量部、ポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、ポバールPVA103)12質量部、中空粒子(松本油脂株式会社製、マイクロスフェアーR−300)20質量部、及び水40質量部を添加し、均一状態になるまで約1時間撹拌して、アンダー層塗布液を調製した。
次に、得られたアンダー層塗布液を前記支持体上に、ワイヤーバーにて塗布し、80℃にて2分間加熱及び乾燥して、厚み20μmのアンダー層を形成した。
【0136】
−可逆性感熱記録層(記録層)−
下記構造式(1)で表される可逆性顕色剤5質量部、下記構造式(2)及び(3)で表される2種類の消色促進剤をそれぞれ0.5質量部ずつ、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価:200)10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
【0137】
(可逆性顕色剤)
【化3】

【0138】
(消色促進剤)
【化4】

【化5】

【0139】
次に、前記可逆性顕色剤を粉砕分散させた分散液に、前記ロイコ染料としての2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1質量部、下記構造式(4)で表されるフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGANOX565)0.2質量部、光熱変換材料(株式会社日本触媒製、イーエクスカラーIR−14)0.03質量部、及びイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)5質量部を加え、よく撹拌させて記録層用塗布液を調製した。
【0140】
【化6】

【0141】
次に、得られた記録層用塗布液を、前記アンダー層形成済みの支持体上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み11μmの記録層を形成した。
【0142】
−中間層−
アクリルポリオール樹脂50質量%溶液(三菱レーヨン株式会社製、LR327)3質量部、酸化亜鉛微粒子30質量%分散液(住友セメント株式会社製、ZS303)7質量部、イソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.5質量部、及びメチルエチルケトン7質量部を加え、よく攪拌して中間層用塗布液を調製した。
次に、前記アンダー層、及び前記記録層が形成された支持体上に、前記中間層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて2時間加熱し、厚み2μmの中間層を形成した。
【0143】
−保護層−
ペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)3質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)3質量部、ジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA−120)3質量部、シリカ(水澤化学工業株式会社製、P−526)1質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール11質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌して平均粒径が約3μmになるまで分散し、保護層用塗布液を調製した。
次に、前記アンダー層、前記記録層、及び前記中間層が形成された支持体上に、前記保護層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmの保護層を形成した。
【0144】
−バック層−
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸=5.15μm、短軸=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌してバック層用塗布液を調製した。
次に、前記記録層、前記中間層、及び前記保護層が形成された支持体における、これらの層が形成されていない側の面上に、前記バック層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmのバック層を形成した。以上により、製造例1の熱可逆記録媒体を作製した。
【0145】
(製造例2)
<熱可逆記録媒体の作製>
温度に依存して透明度が可逆的(透明状態−白濁状態)に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
【0146】
−支持体−
支持体として、厚み175μmの透明PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラー175−T12)を用いた。
【0147】
−可逆性感熱記録層(記録層)−
塩化ビニル系共重合体(日本ゼオン株式会社製、M110)26質量部を、メチルエチルケトン210質量部に溶解させた樹脂溶解液中に、下記構造式(5)で表される有機低分子物質3質量部、及びベヘン酸ドコシル7質量部を加え、ガラス瓶中に直径2mmのセラミックビーズを入れて、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製)を用い48時間分散し、均一な分散液を調製した。
【0148】
【化7】

【0149】
次に、得られた分散液に、光熱変換材料(株式会社日本触媒製、イーエクスカラーIR−14)0.07質量部、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン株式会社製、コロネート2298−90T)4質量部を添加し、感熱記録層液を調製した。
次に、前記支持体(磁気記録層を有するPETフィルムの接着層)上に、得られた感熱記録層液を塗布し、加熱及び乾燥した後、更に65℃環境下に24時間保存して樹脂を架橋させ、厚み10μmの感熱記録層を設けた。
【0150】
−保護層−
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂の75質量%酢酸ブチル溶液10質量部(大日本インキ化学工業株式会社製、ユニディックC7−157)、及びイソプロピルアルコール10質量部よりなる溶液を、ワイヤーバーで前記感熱記録層上に塗布し、加熱及び乾燥した後、80W/cmの高圧水銀灯で紫外線を照射して硬化させ、厚み3μmの保護層を形成した。以上により、製造例2の熱可逆記録媒体を作製した。
【0151】
(実施例1)
製造例1の熱可逆記録媒体を用い、以下のようにして画像処理を行い、繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0152】
−画像記録工程−
レーザとして、集光光学系f100を装備した140Wのファイバーカップリング式高出力半導体レーザ装置(イエナオプティック社製、NBT−S140mkII、中心波長:808nm、光ファイバコア径:600μm、NA:0.22)を用い、レーザ出力10W、照射距離91mm、スポット径約0.55mmとなるように調整して、XYステージの送り速度1,200mm/sで、製造例1の熱可逆記録媒体に対し、図1Aに示す記録方法に従って、“V”字の記録を行った。即ち、図1Aに示すように、レーザ光を照射して描画線1をD1方向に記録した。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線2の始点の位置まで移動させて、描画線2をD2方向に記録した。重複部Tでは描画線1の終点と描画線2の終点とが重なり、非連続に記録される。
このとき、レーザ光における光強度分布を測定したところ、図5Cに示す光強度分布曲線が得られ、I/I値は、1.75であった。
【0153】
−画像消去工程−
続いて、前記レーザ装置を用い、レーザ出力15W、照射距離86mm、スポット径3.0mmとなるように調整し、XYステージの送り速度1,200mm/sで、前記熱可逆記録媒体に記録された“V”字の画像を消去した。
【0154】
<繰り返し耐久性の評価>
前記画像記録工程及び前記画像消去工程を、繰り返して、最後に、消去工程を行い、“X”字の重なり部、及びこれら以外の直線部における熱可逆記録媒体の印字した消去部の反射濃度の画像評価を行った。反射濃度の測定は、グレースケール(Kodak社製)をスキャナー(キャノン社製、Canoscan4400)で取り込み、得られたデジタル階調値と反射濃度計(マクベス社製、RD−914)で測定した濃度値との間で相関を取り、消去した消去部を前記スキャナーで取り込んで得られたデジタル階調値を濃度値に変換して反射濃度値とした。
本発明において、消去部の濃度が、前記熱可逆記録層が樹脂及び有機低分子物質を含有する熱可逆記録媒体では、濃度が1.5以上、前記熱可逆記録層がロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有する熱可逆記録媒体では、濃度が0.15以下である場合に、画像の消去が可能であるとした。なお、前記熱可逆記録層が樹脂及び有機低分子物質を含有する熱可逆記録媒体では、背面に黒色紙(O.D.値=1.7)を敷いて測定した。
前記画像記録工程及び前記画像消去工程を繰り返して、10回おきに消去部の濃度を測定して、消去が不可になる前の回数を表1に示す。
【0155】
<レーザ光強度分布測定>
レーザ光の強度分布測定は、以下の手順で行った。
レーザとして半導体レーザ装置を用いた場合、まず、照射距離が熱可逆記録媒体に記録するときと同じ位置になるようにレーザビームアナライザー(Point Grey Research社製、Scorpion SCOR-20SCM)を設置し、レーザ出力が3×10−6となるように透過ミラー、フィルターを組合わせたビームスプリッター(OPHIR社製、BEAMSTAR-FX-BEAM SPLITTER)を用いて減光し、レーザビームアナライザーでレーザ光強度を測定した。次に、得られたレーザ光強度を三次元グラフ化してレーザ光の強度分布を得た。
また、レーザとしてCOレーザ装置を用いた場合は、ハイパワー用レーザビームアナライザー(Spiricon社製、LPK−CO−16)を用い、レーザ出力が0.05%となるようにZn−Seウエッジ(Spiricon社製、LBS−100−IR−W)及びCaFフィルター(Spiricon社製、LBS−100−IR−F)を用いて減光してレーザ光強度を測定した。
【0156】
(実施例2)
レーザとして、集光光学系fθレンズ(焦点距離:150mm)を装備した25Wのファイバーカップリング式高出力半導体レーザ装置(LIMO社製、LIMO25-F100-DL808、中心波長:808nm、光ファイバコア径:100μm、NA:0.11)を用い、レーザ出力10W、照射距離150mm、スポット径約0.75mmとなるように調整して、ガルバノミラーによる光走査で速度1,200mm/sで、製造例1の熱可逆記録媒体に対し、図1Aに示す記録方法に従って、“V”字の記録を行った。
このとき、レーザ光における光強度分布において、I/I値は、1.65であった。
画像消去工程は、レーザ出力20W、照射距離195mm、スポット径3mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整し、0.59mmの間隔で直線状にレーザ光を走査して画像を消去した。このとき、レーザ光における光強度分布において、I/I値は、1.70であった。
その他の条件は、実施例1と同様にして、繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0157】
(実施例3)
実施例1において、製造例1の熱可逆記録媒体の代わりに製造例2の熱可逆記録媒体を用いた以外は、実施例1と同様にして、画像記録及び画像消去を行い、実施例1と同様にして、繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0158】
(実施例4)
実施例2において、画像記録工程で図1Bに示す記録方法に従って、“V”字の記録を行った以外は、実施例2と同様にして、画像記録及び画像消去を行い、実施例2と同様にして、繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
なお、図1Bに示す記録方法では、レーザ光を照射して描画線1をD3方向に記録した。ここで、レーザ光照射を停止し、描画線2の始点の位置(重複部T)まで移動させて、描画線2をD4方向に記録した。重複部Tでは描画線1の始点と描画線2の始点とが重なり、非連続に記録される。
【0159】
(実施例5)
実施例2において、画像記録工程で図1Cに示す“V”字の記録方法を下記に示すように非連続となるように変更した以外は、実施例2と同様にして、画像記録及び画像消去を行い、実施例2と同様にして、繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
実施例5における図1Cに示す“V”字の記録方法では、レーザ光を照射して描画線1をD1方向に記録した。ここで、レーザ光照射を停止し、再度重複部Tから描画線2をD4方向に記録した。この場合、重複部Tでは描画線1の終点と描画線2の始点とが重なるが、非連続に記録される。
【0160】
(実施例6)
実施例2の画像記録工程において、焦点距離を160mm、レーザ出力11Wに変更して、レーザ光における光強度分布において、I/I値が2.00になった。その他の条件は、実施例2と同様にして、繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0161】
(実施例7)
実施例2の画像記録工程において、焦点距離を144mm、レーザ出力13Wに変更して、レーザ光における光強度分布において、I/I値が0.40になった。その他の条件は、実施例2と同様にして、繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0162】
(実施例8)
実施例2の画像記録工程において、焦点距離を163mm、レーザ出力11Wに変更して、レーザ光における光強度分布において、画像記録工程のI/I値が2.05になった。その他の条件は、実施例2と同様にして、繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0163】
(実施例9)
実施例2の画像記録工程において、焦点距離を143mm、レーザ出力14Wに変更して、レーザ光における光強度分布において、画像記録工程のI/I値が0.34になった。その他の条件は、実施例2と同様にして、繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0164】
(実施例10)
<熱可逆記録媒体の作製>
製造例1において、前記熱可逆記録媒体の作製の際に、前記光熱変換材料を用いなかった以外は、製造例1と同様にして、製造例3の熱可逆記録媒体を作製した。
【0165】
<画像記録工程>
出力40WのCOレーザを備えたレーザマーカー(サンクス株式会社製、LP−440)を用い、レーザ光の光路中に、該レーザ光の中心部をカットするマスクを組み込んだ。そして、レーザ光における光強度分布において、I/I値が1.60になるように調整した。
次いで、前記レーザマーカーを用い、レーザ出力14.0W、照射距離198mm、スポット径0.65mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整して、製造例3の熱可逆記録媒体に対し、図1Aに示す記録方法に従って“V”字の記録を行った。
【0166】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザマーカーの光路中から、レーザ光の中心部をカットする前記マスクを取り外し、レーザ出力22W、照射距離155mm、スポット径約2mm、スキャンスピード3,000mm/sとなるように調整した。そして、前記熱可逆記録媒体に記録された“V”字の画像を消去した。
次に、実施例1と同様にして、繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0167】
(実施例11)
<熱可逆記録媒体の作製>
製造例2において、前記熱可逆記録媒体の作製の際に、前記光熱変換材料を用いなかった以外は、製造例2と同様にして、製造例4の熱可逆記録媒体を作製した。
【0168】
<画像記録工程>
出力40WのCOレーザを備えたレーザマーカー(サンクス株式会社製、LP−440)を用い、レーザ光の光路中に、該レーザ光の中心部をカットするマスクを組み込んだ。そして、レーザ光における光強度分布において、I/I値が1.60になるように調整した。
次いで、前記レーザマーカーを用い、レーザ出力12.0W、照射距離198mm、スポット径0.65mm、スキャンスピード1,000mm/sとなるように調整して、製造例4の熱可逆記録媒体に対し、図1Aに示す記録方法に従って“V”字の記録を行った。
【0169】
<画像消去工程>
続いて、前記レーザマーカーの光路中から、レーザ光の中心部をカットする前記マスクを取り外し、レーザ出力17W、照射距離155mm、スポット径約2mm、スキャンスピード3,000mm/sとなるように調整した。そして、前記熱可逆記録媒体に記録された“V”字の画像を消去した。
次に、実施例1と同様にして、繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0170】
(比較例1)
実施例2において、画像記録工程で図1Cに示す記録方法に従って、“V”字の記録を連続的に行った以外は、実施例2と同様にして、画像記録及び画像消去を行い、実施例2と同様にして、繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
なお、図1Cに示す記録方法では、レーザ光を照射して描画線1をD1方向に記録した。そのまま重複部Tを通り描画線2をD4方向に連続的に記録した。重複部Tでは描画線1の終点と描画線2の始点とが重なり、連続に記録される。
【0171】
(比較例2)
実施例3において、画像記録工程で図1Cに示す記録方法に従って、“V”字の記録を連続的に行った以外は、実施例3と同様にして、画像記録及び画像消去を行い、実施例3と同様にして、繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
なお、図1Cに示す記録方法では、レーザ光を照射して描画線1をD1方向に記録した。そのままレーザ光を照射して重複部Tを通り描画線2をD4方向に連続的に記録した。重複部Tでは描画線1の終点と描画線2の始点とが重なり、連続に記録される。
【0172】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明の画像処理方法及び画像処理装置は、熱可逆記録媒体に対して、非接触式にて、高コントラストの画像を高速で繰返し記録及び消去可能で、しかも繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制することができるので、例えば入出チケット、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器等のステッカー、物流管理用途、製造工程管理用途などの大きな画面、多様な表示に幅広く用いることができ、特に、物流・配送システムや工場内での工程管理システムなどの使用に適したものである。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1A】図1Aは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるV字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図1B】図1Bは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるV字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図1C】図1Cは、従来の画像処理方法における画像記録工程によるV字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図2A】図2Aは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるY字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図2B】図2Bは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるY字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図2C】図2Cは、従来の画像処理方法における画像記録工程によるY字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図2D】図2Dは、従来の画像処理方法における画像記録工程によるY字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図2E】図2Eは、従来の画像処理方法における画像記録工程によるY字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図2F】図2Fは、従来の画像処理方法における画像記録工程によるY字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図2G】図2Gは、従来の画像処理方法における画像記録工程によるY字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図2H】図2Hは、従来の画像処理方法における画像記録工程によるY字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図3A】図3Aは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるF字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図3B】図3Bは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるF字の記録方法の他の一例を示す概略図である。
【図3C】図3Cは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるF字の記録方法の他の一例を示す概略図である。
【図3D】図3Dは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるF字の記録方法の他の一例を示す概略図である。
【図3E】図3Eは、従来の画像処理方法における画像記録工程によるF字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図3F】図3Fは、従来の画像処理方法における画像記録工程によるF字の記録方法の他の一例を示す概略図である。
【図3G】図3Gは、従来の画像処理方法における画像記録工程によるF字の記録方法の他の一例を示す概略図である。
【図3H】図3Hは、従来の画像処理方法における画像記録工程によるF字の記録方法の他の一例を示す概略図である。
【図4A】図4Aは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるX字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図4B】図4Bは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるX字の記録方法の他の一例を示す概略図である。
【図4C】図4Cは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるX字の記録方法の他の一例を示す概略図である。
【図4D】図4Dは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるX字の記録方法の他の一例を示す概略図である。
【図4E】図4Eは、本発明の画像処理方法における画像記録工程によるX字の記録方法の他の一例を示す概略図である。
【図4F】図4Fは、比較態様に係る画像処理方法における画像記録工程によるX字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図4G】図4Gは、比較態様に係る画像処理方法における画像記録工程によるX字の記録方法の一例を示す概略図である。
【図5A】図5Aは、本発明で用いられる照射レーザ光の強度分布の一例を示す概略説明図である。
【図5B】図5Bは、通常のレーザ光の光強度分布(ガウス分布)を示す概略説明図である。
【図5C】図5Cは、レーザ光の光強度分布を変えたときの光強度分布の一例を示す概略説明図である。
【図5D】図5Dは、レーザ光の光強度分布を変えたときの光強度分布の一例を示す概略説明図である。
【図5E】図5Eは、レーザ光の光強度分布を変えたときの光強度分布の一例を示す概略説明図である。
【図6A】図6Aは、熱可逆記録媒体の透明−白濁特性を示すグラフである。
【図6B】図6Bは、熱可逆記録媒体の透明−白濁変化のメカニズムを表す概略説明図である。
【図7A】図7Aは、熱可逆記録媒体の発色−消色特性を示すグラフである。
【図7B】図7Bは、熱可逆記録媒体の発色−消色変化のメカニズムを表す概略説明図である。
【図8】図8は、RF−IDタグの一例を示す概略説明図である。
【図9A】図9Aは、本発明の画像処理装置における光照射強度調整手段の一例を示す概略説明図である。
【図9B】図9Bは、本発明の画像処理装置における光照射強度調整手段の一例を示す概略説明図である。
【図10】図10は、本発明の画像処理装置の一例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0175】
1、11、21、31 描画線
2、12、22、32 描画線
3、13、23 描画線
81 ICチップ
82 アンテナ
85 RF−IDタグ
102 ビームエキスパンダ
104 ガルバノメータ
104A ガルバノミラー
105 スキャニングユニット
106 fθレンズ
107 熱可逆記録媒体
110 レーザ発振器
T、T1、T2 重複部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体を加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程で、複数の描画線が重なる重複部を有する画像を記録する際に、該重複部における各描画線が非連続に記録されることを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
画像消去工程が、熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより行われる請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
重複部において各描画線の始点及び終点の少なくともいずれかが重なる請求項1から2のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項4】
重複部において各描画線の終点と終点が重なるように記録する請求項1から3のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項5】
重複部において各描画線の始点が重ならないように記録する請求項1から4のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項6】
描画線が、文字、記号、及び線図のいずれかを構成する線である請求項1から5のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項7】
熱可逆記録媒体が、支持体上に少なくとも熱可逆記録層を有してなり、該熱可逆記録層が第一の特定温度と該第一の特定温度よりも高温の第二の特定温度とで透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する請求項1から6のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項8】
熱可逆記録媒体が、支持体上に少なくとも可逆性感熱記録層を有してなり、該可逆性感熱記録層が樹脂及び有機低分子物質を含有する請求項1から7のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項9】
熱可逆記録媒体が、支持体上に少なくとも可逆性感熱記録層を有してなり、該可逆性感熱記録層がロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有する請求項1から7のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項10】
画像記録工程及び画像消去工程の少なくともいずれかにおいて、照射されるレーザ光の強度分布で、照射レーザ光の中心位置における光照射強度Iと、照射レーザ光の全照射エネルギーの80%面での光照射強度Iとが、次式、0.40≦I/I≦2.00を満たす請求項2から9のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の画像処理方法に用いられ、
レーザ光出射手段と、
該レーザ光出射手段におけるレーザ光出射面に配置され、かつレーザ光の光照射強度を変化させる光照射強度調整手段とを少なくとも有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
光照射強度調整手段が、レンズ、フィルタ、マスク、ファイバーカップリング及びミラーの少なくともいずれかである請求項11に記載の画像処理装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図7A】
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【図10】
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【図6B】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2008−179133(P2008−179133A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327612(P2007−327612)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】