説明

画像処理装置、その処理方法、画像形成システム、及びプログラム

【課題】
処理対象となるオブジェクトのサイズに応じて記録剤の低減処理を行なうようにした技術を提供する。
【解決手段】
画像処理装置は、1又は複数のオブジェクトを含むデータに基づいて画像形成装置が解釈可能な描画データを生成する。ここで、画像処理装置は、画像形成装置の印刷時に使用される記録剤の付与量を低減させるための記録剤低減モードが設定されるとともに、各オブジェクトのサイズに基づいた記録剤の付与量の低減が指示されている場合、データ全体に対する各オブジェクトの面積の比率を算出する算出手段と、当該算出された各オブジェクトの面積の比率に応じて各オブジェクトの色値を調整することにより各オブジェクト毎の記録剤の付与量の低減量を変更する調整手段と、調整後のオブジェクトを含むデータに基づいて描画データを生成する描画手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、その処理方法、画像形成システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像処理装置においては、同じ容量の記録剤でより多くの記録を可能にするべく、記録剤低減モードが設けられている。例えば、画像の輪郭部をそのままにし、輪郭部以外の内部を間引く処理を行なうことで、記録媒体に対する記録剤の付与量を低減させる技術が提案されている(特許文献1参照)。この処理では、画像の輪郭部をそのままにしているので、画像の視認性の低下を抑えることができる。
【0003】
ここで、人が色を認識する際の錯覚として、大きい面積で描かれている色は、同色でより小さい面積で描かれた色と比較して、明るい色はより明るく鮮やかに、暗い色はより暗く鈍い色に見える面積効果という現象が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−233224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、画像処理装置においては、ユーザにより記録剤低減モードが指示された場合、対象となる画像全体の濃度を一律に低下させてしまう。しかし、処理対象となる部分画像は様々なサイズがある。そのため、部分画像の濃度を一律に低下させてしまうと、処理後の部分画像の色は、そのサイズの違いに起因して、処理前の色と異なった色としてユーザに捉えられてしまう。このような現象が生じるのは、色の面積効果の錯覚によるユーザの認識の違いを考慮していないためである。
【0006】
例えば、ある明るい色の部分画像Aと、同色のAよりも面積の小さい部分画像aとがあり、また更に、部分画像Aと同程度のサイズでAよりも少し暗い部分画像Bがあるとする。このとき、部分画像A、a、Bのそれぞれに同じ割合で記録剤の低減処理を実施した場合、より白に近づける処理が行なわれることになる。そのため、いずれの部分画像においても、元の部分画像の色より明るくなるが、面積効果によって部分画像aが部分画像Aよりも暗いとユーザに錯覚させてしまう。そのため、部分画像a及び部分画像Bが同色であると、ユーザが誤認識してしまう場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、処理対象となるオブジェクトのサイズに応じて記録剤の低減処理を行なうようにした技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、1又は複数のオブジェクトを含むデータに基づいて画像形成装置が解釈可能な描画データを生成する画像処理装置であって、前記画像形成装置の印刷時に使用される記録剤の付与量を低減させるための記録剤低減モードが設定されるとともに、各オブジェクトのサイズに基づいた記録剤の付与量の低減が指示されている場合、前記データ全体に対する各オブジェクトの面積の比率を算出する算出手段と、前記算出手段により算出された各オブジェクトの面積の比率に応じて各オブジェクトの色値を調整することにより各オブジェクト毎の記録剤の低減量を変更する調整手段と、前記調整手段による調整後のオブジェクトを含むデータに基づいて前記描画データを生成する描画手段とを具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、処理対象となるオブジェクトのサイズに応じて記録剤の低減処理を行なうことができる。これにより、例えば、処理対象となるオブジェクトのサイズの違いに起因して生じる面積効果の錯覚を考慮した記録剤の低減を行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる画像処理装置を配して構成された画像形成システムの構成の一例を示す図。
【図2】本実施形態に係わる記録剤低減処理の概要を説明するための図。
【図3】図1に示す画像処理装置10における描画データの生成処理の概要を説明するための図。
【図4】図1に示す表示部11に表示される画面の一例を示す図。
【図5】オブジェクトのサイズに応じた記録剤の低減処理の概要を説明するための図。
【図6】オブジェクトのサイズに応じた記録剤の低減処理の概要を説明するための図。
【図7】図1に示す画像処理装置10の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図8】実施形態2に係わる画像処理装置10の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係わる実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施の形態に係わる画像処理装置を配して構成された画像形成システムの構成の一例を示す図である。
【0013】
画像形成システムには、画像処理装置10と、画像形成装置20とが設けられており、これら装置間は、通信可能に接続されている。なお、画像処理装置10と画像形成装置20との間の通信は、無線であっても有線であっても構わない。
【0014】
画像処理装置10は、各種画像処理を行なう。例えば、ユーザは、画像処理装置10において、各種文書等を作成し、当該文書等の印刷を指示する。画像処理装置10には、記録剤低減モードが設けられている。画像処理装置10においては、このモードが設定されている場合、画像形成装置20の印刷時に使用される記録剤の付与量を低減させるべく、描画データの生成が行なわれる。
【0015】
画像形成装置20は、画像処理装置10からの指示に基づいて、記録媒体(用紙、その他、布、プラスチック・フィルム等の記録剤を受容可能なものであれば何でも良い)上に画像を形成し印刷を行なう。
【0016】
ここで、画像処理装置10は、その機能的な構成として、表示部11と、入力部12と、通信部13と、制御部14と、レイアウトデータ作成部15と、プリンタドライバ16と、RAM17と、記憶部18とを具備して構成される。
【0017】
表示部11は、例えば、ディスプレイ等から構成され、各種情報をユーザに向けて表示する。表示部11には、例えば、レイアウトデータ等が表示される。入力部12は、例えば、キーボードやマウス等から構成され、ユーザからの指示を装置内に入力する。ユーザは、入力部12を介して、例えば、印刷実行命令を行なったり、レイアウトデータの作成を行なったりする。
【0018】
通信部13は、例えば、USB(Universal Serial Bus)やLAN(Local Area Network)、IEEE1394等の通信インターフェース等から構成される。通信部13は、外部装置(例えば、画像形成装置20)と画像処理装置10との間の通信を司る。
【0019】
レイアウトデータ作成部15は、画像形成装置20により印刷を行なうためのレイアウトデータを作成する。
【0020】
プリンタドライバ16は、レイアウトデータ作成部15により作成されたレイアウトデータを、画像形成装置20が解釈可能な描画データへ変換する。プリンタドライバ16には、描画部81が設けられる。描画部81は、レイアウトデータを描画データへ変換する。描画部81においては、この描画データの変換に際して、レイアウトデータ(全体画像)に含まれる1又は複数のオブジェクト(部分画像)に対して画像処理(濃度変換、間引き処理)を行なう。なお、オブジェクトの種類としては、例えば、テキスト、矩形、ビットマップ、グラデーション等が挙げられる。
【0021】
記憶部18は、例えば、ROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等から構成され、各種情報を記憶する。
【0022】
RAM(Random Access Memory)17は、各種情報を一時的に記憶する。制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等から構成され、画像処理装置10における処理を統括制御する。画像処理装置10における各種処理は、例えば、CPUがRAM17をワーク領域としてROMに記憶されたプログラムを読み込み実行することで実施される。
【0023】
制御部14においては、例えば、プリンタドライバ16を制御して、レイアウトデータを画像形成装置20が解釈可能な描画データへ変換させる。ここで、制御部14は、その機能的な構成として、モード設定部41と、サイズ判定部42と、面積比率算出部43と、色値取得部44と、明暗分岐値設定部45と、効果係数設定部46と、調整部47と、描画制御部48とを有している。
【0024】
モード設定部41は、入力部12を介したユーザの指示に基づいて、記録剤低減モードを設定する。なお、記録剤低減モード時には、画像処理装置10において、画像形成装置20の印刷時に使用される記録剤の付与量が低減されるべく、描画データの生成が行なわれる。本実施形態においては、記録剤の低減処理として間引き処理及び濃度変換処理のいずれかが各オブジェクトに対して行なわれる。このように本実施形態においては、画像処理によって、記録剤の低減が行なわれる。なお、濃度変換処理とは、オブジェクトを構成する画素(ピクセル)の濃度を低減させる処理であり、間引き処理とは、オブジェクトを構成する画素の間引きを行なう処理である。
【0025】
サイズ判定部42は、各オブジェクトが所定サイズ以上の面積を有しているか否かを判定する。ここで、所定サイズ以上でないと判定されたオブジェクトは、記録剤の低減処理の対象外となる。このように所定サイズ以上でないオブジェクトを処理の対象外とするのは、面積の小さいオブジェクトは、記録剤の低減処理を行なっても、たいした効果は望めず、また、処理の遅延も招いてしまうためである。
【0026】
面積比率算出部43は、データ全体(レイアウトデータ)に対する各オブジェクトの面積比率を算出する。色値取得部44は、各オブジェクトの色値を取得する。
【0027】
明暗分岐値設定部45は、各オブジェクトが明暗のいずれにあるかを判定する際の分岐点を規定する明暗分岐値を設定する。明暗分岐値は、入力部12を介してユーザにより入力され、明暗分岐値設定部45においては、当該入力された値を明暗分岐値として設定する。
【0028】
効果係数設定部46は、各オブジェクトのサイズの違いに起因して生じる面積効果を加味して記録剤の低減処理を行なう際に、その調整を行なうための係数(効果係数)を設定する。効果係数は、入力部12を介してユーザにより入力され、効果係数設定部46においては、当該入力された値を効果係数として設定する。
【0029】
調整部47は、各オブジェクトの色値と、明暗分岐値と、効果係数と、各オブジェクトの面積比率とに基づいて、各オブジェクト毎の色値を調整する。この調整は、各オブジェクトの印刷時に使用される記録剤の低減量をオブジェクトのサイズに応じて変更させるべく行なわれる。
【0030】
描画制御部48は、プリンタドライバ16における描画処理の実行を制御する。以上が、制御部14において実現される機能的な構成の一例について説明する。
【0031】
続いて、画像形成装置20は、その機能的な構成として、通信部21と、制御部22と、画像形成部23とを具備して構成される。
【0032】
通信部21は、USBやLAN、IEEE1394等の通信インターフェース等から構成され、外部装置(例えば、画像処理装置)と画像形成装置20との間の通信を司る。
【0033】
制御部22は、例えば、CPU、ROMやRAM等から構成され、画像形成装置20における処理を統括制御する。画像形成装置20における各種処理は、例えば、CPUがRAMをワーク領域としてROMに記憶されたプログラムを読み込み実行することで実施される。制御部22においては、例えば、画像処理装置10から受信した描画データを解釈して印刷イメージを生成し、当該印刷イメージを画像形成部23に転送する。
【0034】
画像形成部23は、印刷イメージに基づいて記録媒体上に画像を形成し印刷を行なう。なお、画像形成部23により印刷は、記録剤(インク、トナー等)を用いて行なわれる。画像形成部23は、インクジェット方式で構成されても良いし、電子写真方式で構成されても良く、その形式は特に問わない。
【0035】
以上が、画像形成システムの構成の一例についての説明である。なお、画像処理装置10に設けられた機能的な構成は、必ずしも図示した通りに実現される必要はなく、システム内におけるいずれかの装置にその全部若しくは一部が実現されていればよい。例えば、画像処理装置10において、各オブジェクト毎の色値を調整し、画像形成装置20において、当該調整された各オブジェクトの色値に従って描画データを生成するように構成しても良い。また、例えば、画像処理装置10が画像形成装置20に組み込まれて実現される形態であっても良い。
【0036】
次に、図2(a)及び図2(b)を用いて、本実施形態に係わる記録剤低減処理の概要について説明する。図2(a)には、図1に示す表示部11に表示される画面の一例が示される。より具体的には、図2(a)には、レイアウトデータ作成部15により作成されたレイアウトデータを含む画面が示されている。
【0037】
オブジェクト(矩形)31及び32は、人が一目見て認識ができるように、その目的に応じてサイズが異なる場合がある。レイアウトデータ(全体画像)は、複数のオブジェクト(部分画像)を含んで構成される。
【0038】
ここで、図2(a)に示す矩形31及び32に対して記録剤の低減処理を行なった場合、図2(b)に示す結果が得られる。より具体的には、図2(b)には、図2(a)に示す矩形31及び32に対して濃度変換処理を実施した後、当該変換後のデータに基づいて記録媒体上に印刷を行なった場合の概要が示されている。
【0039】
記録剤の低減処理が行なわれた後の矩形31aは、図2(a)に示す矩形31の輪郭部の濃度をそのままにした状態で矩形内部の濃度が変換されている。同様に、濃度変換が行われた後の矩形32aは、図2(a)に示す矩形32の輪郭部の濃度をそのままにした状態で矩形内部の濃度が変換されている。
【0040】
次に、図3を用いて、図1に示す画像処理装置10による描画データの生成処理の概要について説明する。
【0041】
画像処理装置10においては、印刷に際して、レイアウトデータ作成部15により作成されたレイアウトデータ(全体画像)を描画データに変換し、当該変換後の描画データを画像形成装置20に向けて送信する。レイアウトデータには、複数のオブジェクト(部分画像)が含まれる。
【0042】
ここで、本実施形態においては、オブジェクトには、属性情報、座標情報(位置情報)、及び輝度(RGB)が含まれる。その他、形状に関するデータや等も含まれる。また、塗りつぶし形態を示す情報も含まれていても良い。なお、これらのオブジェクトの情報は、レイアウトデータ作成部15により付与される。
【0043】
属性情報は、そのオブジェクトのサイズを示す情報を含む。制御部14においては、描画データを生成する際、そのオブジェクトのサイズに応じて描画データを生成する。これにより、記録剤低減モードが設定されている場合、プリンタドライバ16(描画部81)は、制御部14(描画制御部48)の制御に従って、そのオブジェクトのサイズに応じた描画データの生成を行なう。
【0044】
制御部14は、プリンタドライバ16を制御して、各オブジェクトをRAM17の描画領域A上で描画データに変換する。図3に示す一例の場合、RAM17の描画領域A上において、矩形を描画データに変換している態様が示されている。なお、本実施形態においては、矩形の座標情報は、左上座標及び右下座標を含んでいる。
【0045】
制御部14は、生成した描画データの輝度(R、G、B)を、Black、Yellow、Magenta及びCyanに変換する。このとき、記録剤低減モードが設定され、また、記録剤の低減率が設定されている場合、当該低減率に応じて、濃度変換処理や間引き処理が行なわれる。このようにして生成された描画データは、所定の通信インターフェースを介して画像形成装置20に送信される。描画データを受信した画像形成装置20は、当該描画データに基づいて記録媒体上に印刷を行なう。
【0046】
次に、図4を用いて、画像処理装置10の表示部11に表示される画面の一例について説明する。ここでは、記録剤低減モード設定画面について説明する。記録剤低減モード設定画面は、レイアウトデータを印刷する際に表示される。なお、この画面は、例えば、プリンタドライバ16により起動される。
【0047】
記録剤低減モード設定画面51には、記録剤低減モードをオンするかオフするかを選択するチェックボックス52が設けられる。図4の場合、チェックボックス52がチェックされており、記録剤低減モードが設定されることになる。なお、記録剤低減モード設定画面51表示時の初期状態(デフォルト)においては、チェックボックス52は、チェックされていない。
【0048】
記録剤低減モード設定画面51には、記録剤低減処理時に各オブジェクトのサイズを考慮した処理を行なうか否かを選択するチェックボックス53も設けられる。図4の場合、チェックボックス53がチェックされており、記録剤低減モード時には、オブジェクトの面積効果を加味した記録剤低減処理が実施されることになる。なお、記録剤低減モード設定画面51表示時の初期状態(デフォルト)においては、チェックボックス53は、チェックされていない。
【0049】
その他、記録剤低減モード設定画面51には、明暗分岐値の設定欄54及び効果係数の設定欄55も設けられる。明暗分岐値の設定欄54は、オブジェクトが明暗のいずれにあるかを判定する際の分岐点を設定する欄であり、この欄には、例えば、0〜100%までの値が設定される。例えば、入力の値が0(暗い)〜255(明るい)の値を有する場合、「50%」と設定されたときには、入力の値が0〜127ならば「暗い」、128〜255ならば「明るい」と判定する。そして、「暗い」と判定した場合、面積比率が小さいオブジェクトに対してはより暗くなるような(0に近付ける)処理を行なう。また、「明るい」と判定した場合、面積比率が小さいオブジェクトほど、より明るくなるような(255に近付ける)処理を行なう。
【0050】
効果係数の設定欄55は、面積効果を加味して記録剤の低減処理を行なう際に、その調整を行なうための係数(面積効果)を設定する欄である。効果係数は、レイアウトデータ(描画エリア)に対するオブジェクトの面積の比率に乗算される係数である。
【0051】
最低サイズ指定の設定欄56は、記録剤低減処理の対象となるオブジェクトを絞り込むための設定値が設定される欄である。より具体的には、この欄には、処理対象となるオブジェクトの最低サイズ(所定サイズ)が設定される。ここに設定されたサイズ以上でない面積のオブジェクトは、記録剤の低減処理の対象外となる。すなわち、面積の小さいオブジェクトに対して記録剤低減処理を行なっても、たいした効果は望めず、また、処理の遅延も招いてしまうため、このような設定項目が設けられる。なお、本実施形態においては、最低サイズは、図2(b)に示す輪郭部の幅hを単位として設定される。例えば、輪郭部3つが指定された場合には、h*3以上の幅を有さないオブジェクトは、記録剤の低減処理の対象外となる。
【0052】
次に、図5(a)及び図5(b)を用いて、記録剤低減処理の一例について説明する。ここでは、R(レッド)値が0〜127ならば「暗い」、128〜255ならば「明るい」と判定するものとする。図5(a)及び図5(b)の場合、明るい赤色を有するオブジェクトに対して記録剤低減処理を行なう場合を例に挙げて説明する。なお、ここでは、効果係数を「21」として説明するが、この値は適宜変更すれば良い。
【0053】
ここで、矩形65は、レイアウトデータ(全体画像)と同一の面積を有する矩形であり、面積比率が1.0*1.0となる。これに対して、矩形64は、面積比率が0.6*0.6となり、矩形63は、面積比率が0.4*0.4となり、矩形62は、面積比率が0.2*0.2となる。矩形61は、面積比率が0.05*0.05となる。一方、矩形66は、面積比率が1.2*1.2となり、レイアウトデータよりも大きな面積を有している。
【0054】
このような面積比率を有する矩形に対して記録剤の低減処理を行なう場合には、図5(b)に示すように、基準となる(レイアウトデータと同一の面積を有する)矩形65よりも面積の小さい矩形に対しては、より明るくするようにして記録剤の低減処理を行なう。例えば、面積比率0.6*0.6の矩形64に対しては、R値:243が設定されており、矩形65に設定されるR値:235よりも明るい色が設定されている。また、例えば、面積比率0.4*0.4の矩形63に対しては、それよりも更に明るいR値:248が設定されている。
【0055】
なお、図5(a)及び図5(b)を用いて説明した記録剤の低減処理の手法は、あくまで一例であり、適宜変更して行なうことができる。例えば、上述した色値の調整時に、R値が色値の上限である255に達してしまった場合、R値の変更のみでは、それ以上明るい色が得られないことになる。このような場合には、G及びBの値を変更するようにすれば良い。より具体的には、図6(a)及び図6(b)に示すように、面積比率が1.0*1.0の矩形75において、R値が上限(R値:255)である場合には、面積比率が1.0*1.0未満の矩形に対しては、G(グリーン)及びB(ブルー)の値を変更する。この場合、G及びBの値により、面積の小さい矩形に対してより明るくなる処理を行なっている。なお、G及びBの値がマイナスの場合には、矩形76のように、R値から同値を減算すれば良い。
【0056】
なお、色値の調整時にR値が色値の上限(又は下限)に達してしまった場合に限られず、単に、R値を変更せずに、G及びBの値を変更することでオブジェクトを明るく(又は暗く)するように構成しても良い。
【0057】
また、上述した説明では、明るい色を有するオブジェクトに対して記録剤低減処理を行なう場合について説明した。これに対して、暗い色を有するオブジェクトに対しては、色値に対して補正値を加算せずに、色値から補正値を減算すれば良い。
【0058】
次に、図7を用いて、画像処理装置10の処理の流れの一例について説明する。ここでは、ユーザにより印刷開始命令が行なわれた場合に、描画データを生成する際の処理の流れについて説明する。
【0059】
ユーザにより印刷開始命令がなされると、制御部14は、記録剤低減モードが指示されているか否かの判定を行なう(S101)。この判定は、図4で説明した記録剤低減モード設定画面51において、チェックボックス52がチェックされたか否かに基づいて行なわれる。
【0060】
判定の結果、記録剤低減モードが指示されていなければ(S101でNO)、描画部81において、全てのオブジェクトに対して通常塗りつぶし処理を行なった後(S114)、この処理を終了する。
【0061】
一方、記録剤低減モードが指示されていれば(S101でYES)、制御部14は、面積効果制御モードが指示されているか否かの判定を行なう(S102)。この判定は、図4で説明した記録剤低減モード設定画面51において、チェックボックス53がチェックされたか否かに基づいて行なわれる。
【0062】
判定の結果、面積効果制御モードが指示されていなければ(S102でNO)、制御部14は、全てのオブジェクトに対して通常の記録剤低減処理を行なう(S112、S113でNO)。そして、描画部81において、当該通常の記録剤低減処理が行なわれたオブジェクトを含むレイアウトデータに基づいて描画データを生成した後(S114)、この処理を終了する。
【0063】
一方、面積効果制御モードが指示されていれば(S102でYES)、制御部14は、サイズ判定部42において、処理対象オブジェクトのサイズを取得するとともに(S103)、当該サイズが所定サイズ以上であるか否かの判定を行なう。すなわち、処理対象オブジェクトが、図4で説明した記録剤低減モード設定画面51の設定欄56に指定されたサイズ以上であるか否かを判定する。
【0064】
判定の結果、所定サイズ以上でなければ(S104でNO)、制御部14は、当該オブジェクトに対して通常の記録剤低減処理を行なった後(S112)、全てのオブジェクトに対してS103〜S112の処理を実施したか否かを判定する。未処理のオブジェクトがあれば(S113でNO)、制御部14は、S103の処理に戻り、次のオブジェクトに対して上述した処理を行なう。
【0065】
また、S104の判定の結果、所定サイズ以上であれば(S104でYES)、制御部14は、面積比率算出部43において、処理対象オブジェクトの面積比率を算出する(S105)。すなわち、レイアウトデータに対する当該オブジェクトの面積比率を算出する。
【0066】
続いて、制御部14は、色値取得部44において、処理対象オブジェクトの色値を取得するとともに(S106)、調整部47において、S105の処理で算出した面積比率等に基づいて補正値を算出する(S107)。すなわち、図5(b)及び図6(b)で説明した補正値=「(1.0−√面積比率)*効果係数」を算出する。
【0067】
補正値の算出が済むと、制御部14は、調整部47において、S106の処理で取得した色値と、明暗分岐値とを比較する(S108)。この処理では、上述した通り、取得した色値が、図4で説明した明暗分岐値に示される割合以上(例えば、色値が128〜255)であれば、明るいと判定され、そうでなければ(例えば、色値が0〜127)、暗いと判定される。
【0068】
比較の結果、処理対象オブジェクトが明るいと判定された場合(S109でYES)、制御部14は、調整部47において、S106の処理で取得した色値に対してS107の処理で算出した補正値を加算する(S110)。これにより、小さいオブジェクトはより明るく処理されることになる。
【0069】
一方、処理対象オブジェクトが暗い(明るくない)と判定された場合(S109でNO)、制御部14は、調整部47において、S106の処理で取得した色値からS107の処理で算出した補正値を減算する(S111)。これにより、小さいオブジェクトはより暗く処理されることになる。
【0070】
その後、制御部14は、全てのオブジェクトに対してS103〜S112の処理を実施したか否かを判定する。未処理のオブジェクトがあれば(S113でNO)、制御部14は、再度、S103の処理に戻り、次のオブジェクトに対して上述した処理を行なう。一方、全てのオブジェクトを処理済であれば(S113でYES)、描画部81において、補正後(調整後)のオブジェクトを含むレイアウトデータに基づいて描画データを生成した後(S114)、この処理を終了する。
【0071】
なお、上述した説明では、S110及びS111の処理により補正値を加算/減算した際に、補正後の色値が0〜255の値を外れた場合については考慮されていないが、このような場合には、適宜対応すれば良い。例えば、色値が0未満になる場合には、該当値の色と異なる色の色値から減算するようにすれば良い。また、色値が255を越える場合には、該当値の色と異なる色の色値に加算するようにすれば良い。
【0072】
以上説明したように本実施形態によれば、オブジェクトのサイズに基づいて記録媒体に対する記録剤の付与量を調整して記録剤の低減を図ることができる。これにより、処理対象となるオブジェクトのサイズの違いに起因して生じる面積効果の錯覚を考慮して記録剤を低減させることができる。
【0073】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。実施形態2においては、図4で説明した明暗分岐値の設定を省略する場合について説明する。なお、実施形態2に係わるシステムや装置の構成は、上述した実施形態1と略同様となるため、ここでは、その説明については省略し、相違する点について重点的に説明する。
【0074】
実施形態1との相違点としては、補正後の色値の算出方法が挙げられる。具体的には、実施形態2においては、「((1.0−√面積比率)*効果係数)/(225−原色値)」により補正後の色値を算出する。この場合、明るい色のオブジェクトであればあるほど、補正後の色値が大きくなり、その結果、より明るい色が得られることになる。また、暗い色のオブジェクトであればあるほど、補正後の色値が小さくなり、その結果、より暗い色が得られることになる。
【0075】
ここで、図8を用いて、実施形態2に係わる画像処理装置10の処理の流れの一例について説明する。ここでは、ユーザにより印刷開始命令が行なわれた場合に、描画データを生成する際の処理の流れについて説明する。
【0076】
この処理では、まず、実施形態1を説明した図7のS101〜106の処理と同様の処理が実施される(S201〜S206)。続いて、制御部14は、調整部47において、処理対象オブジェクトの面積比率等に基づいて補正後の色値を算出し(S207)、記録剤低減処理を実施する(S208)。すなわち、上述した式を用いて補正後の色値を求め、当該補正後の色値に基づいて記録剤低減処理を実施する。
【0077】
その後、制御部14は、全てのオブジェクトに対してS203〜S208の処理を実施したか否かを判定する。未処理のオブジェクトがあれば(S209でNO)、制御部14は、再度、S203の処理に戻り、次のオブジェクトに対して上述した処理を行なう。一方、全てのオブジェクトを処理済であれば(S209でYES)、描画部81において、補正後のオブジェクトを含むレイアウトデータに基づいて描画データを生成した後(S210)、この処理を終了する。
【0078】
なお、S207の処理により得られる補正後の色値が0〜255の値を外れた場合には、実施形態1同様の手法により適宜対応すれば良い。
【0079】
以上説明したように実施形態2によれば、上述した実施形態1同様に、処理対象となるオブジェクトのサイズの違いに起因して生じる面積効果の錯覚を考慮して記録剤を低減させることができる。
【0080】
以上が本発明の代表的な実施形態の一例であるが、本発明は、上記及び図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0081】
例えば、上述した実施形態においては、図2で説明した通り、オブジェクトの輪郭部を残しつつ、その内部の濃度を減らすことにより、記録剤の低減を図る場合について説明したが、記録剤の低減は、これ以外の方法を用いても良い。例えば、オブジェクト全体に対して一律に濃度を低減させる手法であっても良いし、その他どのような手法を採用しても良い。
【0082】
また、上述した実施形態においては、全てのオブジェクトに対して記録剤の低減処理が行なわれる場合について説明したが、これに限られず、ユーザがオブジェクトを個別に設定できても良い。例えば、図2(a)に示す画面上で、記録剤の低減対象となるオブジェクト又は、低減対象外のオブジェクトをユーザにより選択させても良い。
【0083】
また、上述した実施形態においては、輪郭部の幅を単位として最低サイズを指定する場合について説明したが、これに限られず、最低サイズの指定は、例えば、面積の比率や、ピクセル数、等で行なうようにしても良い。
【0084】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のオブジェクトを含むデータに基づいて画像形成装置が解釈可能な描画データを生成する画像処理装置であって、
前記画像形成装置の印刷時に使用される記録剤の付与量を低減させるための記録剤低減モードが設定されるとともに、各オブジェクトのサイズに基づいた記録剤の付与量の低減が指示されている場合、前記データ全体に対する各オブジェクトの面積の比率を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された各オブジェクトの面積の比率に応じて各オブジェクトの色値を調整することにより各オブジェクト毎の記録剤の低減量を変更する調整手段と、
前記調整手段による調整後のオブジェクトを含むデータに基づいて前記描画データを生成する描画手段と
を具備することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
各オブジェクトの色値を取得する色値取得手段
を更に具備し、
前記調整手段は、
前記面積の比率が小さいオブジェクトであるほど、前記調整後のオブジェクトの色値が大きくなるように前記調整を行なう
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記調整手段は、
色値が大きいオブジェクトであるほど、前記調整後のオブジェクトの色値が大きくなるように前記調整を行なう
ことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
オブジェクトが明るい色値で構成されているか暗い色値で構成されているかの判定の基準となる明暗分岐値を設定する設定手段と、
前記調整手段は、
前記明るい色値で構成されていると判定されたオブジェクトに対しては、該オブジェクトの色値に対して該オブジェクトの面積の比率に基づいて算出された補正値を加算し、前記暗い色値で構成されていると判定されたオブジェクトに対しては、該オブジェクトの色値から前記補正値を減算する
ことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項5】
各オブジェクトが所定サイズ以上であるか否かを判定するサイズ判定手段
を更に具備し、
前記調整手段は、
前記サイズ判定手段により所定サイズ以上でないと判定されたオブジェクトに対して前記調整を行なわない
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記調整手段は、
各オブジェクトを構成する画素のうち、輪郭部を除く画素に対して前記調整を行なう
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
1又は複数のオブジェクトを含むデータに基づいて画像形成装置が解釈可能な描画データを生成する画像処理装置の処理方法であって、
算出手段が、前記画像形成装置の印刷時に使用される記録剤の付与量を低減させるための記録剤低減モードが設定されるとともに、各オブジェクトのサイズに基づいた記録剤の付与量の低減が指示されている場合、前記データ全体に対する各オブジェクトの面積の比率を算出する工程と、
調整手段が、前記算出手段により算出された各オブジェクトの面積の比率に応じて各オブジェクトの色値を調整することにより各オブジェクト毎の記録剤の低減量を変更する工程と、
描画手段が、前記調整手段による調整後のオブジェクトを含むデータに基づいて前記描画データを生成する工程と
を含むことを特徴とする処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
1又は複数のオブジェクトを含むデータに基づいて画像形成装置が解釈可能な描画データを生成する画像形成システムであって、
前記画像形成装置の印刷時に使用される記録剤の付与量を低減させるための記録剤低減モードが設定されるとともに、各オブジェクトのサイズに基づいた記録剤の付与量の低減が指示されている場合、前記データ全体に対する各オブジェクトの面積の比率を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された各オブジェクトの面積の比率に応じて各オブジェクトの色値を調整することにより各オブジェクト毎の記録剤の低減量を変更する調整手段と、
前記調整手段による調整後のオブジェクトを含むデータに基づいて前記描画データを生成する描画手段と
を具備することを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−252461(P2012−252461A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123578(P2011−123578)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】