説明

画像処理装置、プログラムおよび画像処理方法

【課題】 術前後において脳の形態的変化が生じた場合であっても、術後の脳の形態を術前の形態に補正し、脳血流量等を適切に比較することができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】 画像処理装置は、術前および術後の脳血流画像を入力し、術前および術後の脳血流画像を解剖学的標準画像に変換し、術前の脳血流画像から解剖学的標準画像への変換に用いた変換パラメータを記憶しておく。次に、術前の脳血流画像の変換に用いた変換パラメータを用いて、術後の脳血流画像の解剖学的標準画像を逆変換して術前の脳の形態に対応する術後の脳血流画像の補正画像を得て、術前の脳血流画像と逆変換によって得られた補正画像とを比較して脳血流量の増減を求め、術前の脳の形態画像に重畳して脳血流量の増減を示す情報を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部診断画像の画像処理装置に関し、特に、手術等に起因する脳の形態的な変化を補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
脳神経外科領域の治療において、開頭手術によって直接脳を操作する場合がある。例えば、脳血管障害の治療方法として、EC−ICバイパス術(頭蓋外−頭蓋内動脈バイパス術)がある。EC−ICバイパス術は、慢性期の、特に循環予備能が著しく低下した症例に効果があるとされている。
【0003】
手術が有効であったかの評価には、術前後の頭部診断画像が用いられる。例えば、上述したEC−ICバイパス術等を行った場合には、術前後の脳血流量を比較することによって、血流が十分に回復しているか、過灌流(hyperperfusion)を起こしていないか等を確認する。
【0004】
脳血流量の評価には、脳血流画像が用いられる。具体的には、術前と術後のそれぞれにおいて脳血流画像を撮像し、術前と術後の画像を局所的に比較する(非特許文献1−4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tatsuya Ishikawa, et.al.「Cerebral haemodynamics and long term prognosis after extracranial-intracranial bypass surgery」Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry, 1995;59:625-628
【非特許文献2】清水宏明 他「EC−ICバイパス術後の経時的脳血流SPECT所見」The Mt.Fuji Workshop on CVD Vol.24(2006)
【非特許文献3】小笠原邦昭 他「133XeSPECTによる定量的評価に基づいた慢性期内頸動脈閉塞性病変に対するバイパス術の効果」脳卒中の外科 27:14-18,1999
【非特許文献4】黒田敬 他「慢性期脳虚血症例における脳血流不全の診断」脳神経外科 18(2):167-173, 1990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、外科的手術を行うと、術前後で脳の形態が変化する場合がある。脳の形態的変化が生じた場合、術前画像と術後画像の局所的な比較に基づく頭部診断画像の評価が著しく困難になる。
【0007】
また、術後画像に異常が発見された場合には、術前におけるMRI等の形態画像と重ね合わせて、異常部位の形態的な位置情報を取得することが有効である。しかし、手術によって脳の形態的変化が生じていると、このような画像の重ね合わせによる情報収集は困難である。
【0008】
そこで、本発明は、上記背景に鑑み、脳の形態的変化が生じた場合であっても、術後または術前の脳の形態を補正し、例えば、脳血流量等を適切に比較できる頭部診断画像を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像処理装置は、術前の頭部診断画像および術後の頭部診断画像を入力する画像入力部と、頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換する画像変換部と、前記画像変換部による変換によって得られた前記解剖学的標準画像と、前記頭部診断画像から前記解剖学的標準画像への変換に用いた変換パラメータを記憶する記憶部と、前記術前の頭部診断画像の変換に用いた変換パラメータを用いて、術後の頭部診断画像の解剖学的標準画像を逆変換して術前の脳の形態に対応する術後の頭部診断画像の補正画像を得る画像逆変換部と、前記画像逆変換部による逆変換によって得られた前記補正画像を表示する画像表示部とを備える。頭部診断画像は、頭部の診断に用いられる画像であって、例えば、SPECT、PET、MRI、CT等によって撮像された画像である。
【0010】
上記は、術後の頭部診断画像を術前の頭部診断画像の形態に補正する場合の構成であるが、術前の頭部診断画像を術後の頭部診断画像の形態に補正する場合には、画像逆変換部は、上記とは反対に、術後の頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換した際に用いた変換パラメータを用いて、術前の頭部診断画像の解剖学的標準画像を逆変換して術後の脳の形態に対応する術前の頭部診断画像の補正画像を得ればよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、術前の頭部診断画像を解剖学的標準化する際に用いた変換パラメータを用いて、術後の頭部診断画像の解剖学的標準画像を逆変換することにより、術後の頭部診断画像を術前の頭部診断画像と同じ脳の形態に合わせることができる。これにより、例えば、頭部診断画像として、術前後における脳血流量画像を比較することにより、術前後における脳血流量の変化を適切に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態の処理の概要を示す図である。
【図2】本実施の形態に係る画像処理装置の機能ブロックを示す図である。
【図3】本実施の形態に係る画像処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【図4】本実施の形態に係るプログラムの構成を示す図である。
【図5】本実施の形態に係る画像処理装置の動作を示す図である。
【図6】本実施の形態に係る画像処理装置の別の動作を示す図である。
【図7】(a)術前の脳血流画像を示す図である。(b)本発明の方法により補正を行った術後の脳血流画像を示す図である。(c)本発明の方法により補正を行った術前後の脳血流量の変化を測定した結果を示す図である。
【図8】(a)術前の脳血流画像を示す図である。(b)補正を行っていない術後の脳血流画像を示す図である。(c)補正を行わないで術前後の脳血流量の変化を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態の画像処理装置について図面を参照しながら説明する。本実施の形態では、術前の脳血流画像と術後の脳血流画像とを比較して、脳血流量の変化を求める画像処理装置を例として説明するが、本発明の画像処理装置は、脳血流画像以外の頭部診断画像を処理することも可能である。
【0014】
図1は、本実施の形態の画像処理装置の処理の概要を示す図である。本実施の形態の画像処理装置は、まず、術前の脳血流画像を取得し、術前の脳血流画像の解剖学的標準化を行う。解剖学的標準化は、公知の方法、例えば、Minoshima S et.al., J.Nucl.Med.,1994,35,p1528-1537またはFriston K.J. et.al, Human Brain Mapping,1995,2,p189-210に記載された方法によって行うことができる。このときに、解剖学的標準化に用いた変換パラメータを記憶しておく。ここで、変換パラメータには、線形変換パラメータL.libと、非線形変形パラメータS.libがある。
【0015】
次に、画像処理装置は、術後の脳血流画像を取得し、術後の脳血流画像の解剖学的標準化を行い、解剖学的標準画像を得る。画像処理装置は、術前の脳血流画像を変換するときに用いた変換パラメータを用いて、術後の脳血流画像の解剖学的標準画像を逆変換する。これによって術後の脳血流画像を術前の脳血流画像の形態に補正した補正画像が得られる。画像処理装置は、術前の脳血流画像と、補正された術後の脳血流画像とを比較し、脳の各部位における脳血流量の変化を求める。以上、本実施の形態の画像処理装置の処理の概要について説明した。
【0016】
図2は、本実施の形態の画像処理装置10の機能ブロックを示す図である。画像処理装置10は、SPECT装置20にて撮像した画像を入力する画像入力部11と、入力された画像等の各種情報を記憶する記憶部16と、入力された画像を解剖学的標準画像に変換する画像変換部12と、術後の脳血流画像の解剖学的標準画像を術前の患者の脳の形態の画像に逆変換する画像逆変換部13とを備えている。画像処理装置10の記憶部16には、SPECT装置20から入力された術前画像および術後画像と、術前画像を解剖学的標準化した際に用いた変換パラメータと、術前および術後の解剖学的標準画像とが記憶される。画像変換部12は、術前の脳血流画像を解剖学的標準画像に変換したときに用いた変換パラメータを出力し、記憶部16に記憶させる。
【0017】
画像処理装置10は、術前の脳血流画像と術後の脳血流画像とを比較して脳血流量の増減を求める脳血流量比較部14と、脳血流量比較部14にて求めた脳血流量の増減を示す情報を術前の患者の脳の形態画像に重畳して表示する画像表示部15とを備えている。脳血流量比較部14は、術後の脳血流画像として、画像逆変換部13にて、術前の脳の形態に逆変換された脳血流画像の補正画像を用い、術前の脳血流画像との比較を行う。具体的には、術前の脳血流画像と術後の脳血流画像において、対応する箇所の画素値を比較演算し、脳血流量の増減を計算する。
【0018】
図3は、本実施の形態の画像処理装置10のハードウェア構成を示す図である。画像処理装置10は、CPU30と、メモリ31と、通信インターフェース32と、モニタ33と、キーボード34とがバス35を介して接続されて構成されている。画像処理装置10は、このほかに、CD−ROMドライブや、USBインターフェース等を備えてもよい。通信インターフェース32は、SPECT装置20と接続するために用いられる。これによりSPECT装置20から大容量の画像データを受信することができる。メモリ31には、本実施の形態の画像処理装置10の機能を実現するためのプログラム36が記憶されている。
【0019】
図4は、プログラム36の構成を示す図である。プログラム36は、画像入力モジュール40と、画像変換モジュール41と、画像逆変換モジュール42と、脳血流量比較モジュール43と、脳血流量表示モジュール44とを有している。画像入力モジュール40をCPU30で実行することにより、コンピュータは上記した画像入力部11の機能を実現する。画像変換モジュール41をCPU30で実行することにより、コンピュータは上記した画像変換部12の機能を実現する。画像逆変換モジュール42をCPU30で実行することにより、コンピュータは上記した画像逆変換部13の機能を実現する。脳血流量比較モジュール43をCPU30で実行することにより、コンピュータは上記した脳血流量比較部14の機能を実現する。脳血流量表示モジュール44をCPU30で実行することにより、コンピュータは上記した脳血流量表示部15の機能を実現する。従って、CPU30が、メモリ31からプログラム36を読み出し、実行することにより画像処理装置10の機能が実現され、以下に説明する画像処理装置10の各処理が行われる。
【0020】
図5は、実施の形態の画像処理装置10の動作を示す図である。画像処理装置10は、術前に、SPECT装置20にて撮像した患者の脳血流画像を、SPECT装置20から受信して入力する(S10)。画像処理装置10は、入力した術前の脳血流画像を記憶部16(メモリ)に記憶する(S10)。画像処理装置10の画像変換部12は、術前の脳血流画像を記憶部16から読み出し、読み出した脳血流画像の解剖学的標準化を行い、術前の脳血流画像の解剖学的標準画像を生成する(S12)。画像変換部12は、生成した術前の解剖学的標準画像と、変換に用いた変換パラメータを記憶部16に記憶する(S14)。
【0021】
画像処理装置10は、術後に、SPECT装置20にて撮像した患者の脳血流画像を、SPECT装置20から受信して入力する(S16)。画像処理装置10は、入力した術後の脳血流画像を記憶部16に記憶する(S16)。画像処理装置10の画像変換部12は、術後の脳血流画像を記憶部16から読み出し、読み出した脳血流画像の解剖学的標準化を行い、術後の脳血流画像の解剖学的標準画像を生成する(S18)。画像変換部12は、生成した術後の解剖学的標準画像を記憶部16に記憶する(S20)。
【0022】
次に、画像処理装置10の画像逆変換部13は、術後の解剖学的標準画像と、術前の脳血流画像の解剖学的標準化に用いた変換パラメータを記憶部16から読み出す。画像逆変換部13は、読み出した変換パラメータを用いて、術後の解剖学的標準画像を逆変換し、術後の脳血流画像を術前の脳血流画像の形態に補正した補正画像を生成する(S22)。画像逆変換部13は、生成した補正画像を脳血流量比較部14に入力する。
【0023】
脳血流量比較部14は、記憶部16から術前の脳血流画像を読み出し、画像逆変換部13から入力された補正画像と比較し、脳血流量の増減を求める(S24)。画像処理装置10は、画像表示部15にて、脳血流量の比較結果を表示する(S26)。この際、画像表示部15は、脳血流量の増減を示す情報を、術前の患者の脳の形態画像に重畳して表示する。例えば、脳血流量の増加率に応じて定めた色を着色することにより、脳の各部位における脳血流量の改善の度合いを容易に把握できるようにすることができる。また、術前と術後の脳血流量の画像において、脳血管障害の重症度を表す「ステージ」の情報を求め、求めた情報を表示することとしてもよい。
【0024】
ここでは、術前と術後の脳血流量を比較し、脳血流量の増加率に応じた着色をする例について説明しているが、脳血流量の比較を行わないで、術前の脳血流画像と術後の脳血流画像の補正画像を単に表示することも可能である。
【0025】
本実施の形態の画像処理装置10は、術前の脳血流画像を解剖学的標準化する際に用いた変換パラメータを用いて、術後の脳血流画像の解剖学的標準画像を逆変換することにより、術後の脳血流画像を術前の脳血流画像と同じ形態に合わせることができ、術前後における局所的な脳血流量の変化を適切に求めることができる。これにより、術前後の形態的な変化に起因するアーチファクトが大幅に改善され、局所の脳血流変化率の測定精度を向上できる。また、本実施の形態では、解剖学的標準画像ではなく、患者の脳の形態に重畳して脳血流量の増減を表示しているので、診断対象の患者の脳の画像上で、どの部位の血流が術前後でどれくらい変化したかを適切に把握できる。
【0026】
本実施の形態では、術後の脳血流画像の解剖学的標準画像を逆変換することにより術前の脳血流画像の形態に補正する例について説明したが、反対に、術前の脳血流画像の解剖学的標準画像を逆変換することにより術後の脳血流画像の形態に補正することもできる。この場合、逆変換には、術後の脳血流画像を解剖学的標準化する際に用いた変換パラメータを用いる。
【0027】
図6は、術前画像を術後画像の形態に補正する動作を示す図である。画像処理装置10は、術前に、SPECT装置20にて撮像した患者の脳血流画像を、SPECT装置20から受信して入力する(S30)。画像処理装置10は、入力した術前の脳血流画像を記憶部16(メモリ)に記憶する(S30)。画像処理装置10の画像変換部12は、術前の脳血流画像を記憶部16から読み出し、読み出した脳血流画像の解剖学的標準化を行い、術前の脳血流画像の解剖学的標準画像を生成する(S32)。画像変換部12は、生成した術前の解剖学的標準画像を記憶部16に記憶する(S34)。
【0028】
画像処理装置10は、術後に、SPECT装置20にて撮像した患者の脳血流画像を、SPECT装置20から受信して入力する(S36)。画像処理装置10は、入力した術後の脳血流画像を記憶部16に記憶する(S36)。画像処理装置10の画像変換部12は、術後の脳血流画像を記憶部16から読み出し、読み出した脳血流画像の解剖学的標準化を行い、術後の脳血流画像の解剖学的標準画像を生成する(S38)。画像変換部12は、生成した術後の解剖学的標準画像と変換に用いた変換パラメータを記憶部16に記憶する(S40)。
【0029】
次に、画像処理装置10の画像逆変換部13は、術前の解剖学的標準画像と、術後の脳血流画像の解剖学的標準化に用いた変換パラメータを記憶部16から読み出す。画像逆変換部13は、読み出した変換パラメータを用いて、術前の解剖学的標準画像を逆変換し、術前の脳血流画像を術後の脳血流画像の形態に補正した補正画像を生成する(S42)。画像逆変換部13は、生成した補正画像を脳血流量比較部14に入力する。
【0030】
脳血流量比較部14は、記憶部16から術後の脳血流画像を読み出し、画像逆変換部13から入力された補正画像と比較し、脳血流量の増減を求める(S44)。画像処理装置10は、画像表示部15にて、脳血流量の比較結果を表示する(S46)。この際、画像表示部15は、脳血流量の増減を示す情報を、術後の患者の脳の形態画像に重畳して表示する。例えば、脳血流量の増加率に応じて定めた色を着色することにより、脳の各部位における脳血流量の改善の度合いを容易に把握できるようにすることができる。また、術前と術後の脳血流量の画像において、脳血管障害の重症度を表す「ステージ」の情報を求め、求めた情報を表示することとしてもよい。
【0031】
ここでは、術前と術後の脳血流量を比較し、脳血流量の増加率に応じた着色をする例について説明しているが、脳血流量の比較を行わないで、術前の脳血流画像の補正画像と術後の脳血流画像を単に表示することも可能である。
【0032】
本実施の形態では、SPECT画像を比較する例について説明したが、本発明は、SPECT画像に限らず、PET画像、MRI画像にも適用できる。また、本実施の形態では、脳血流画像の比較を行う例について説明したが、例えば、てんかんの焦点除去手術の術前、術後の画像を比較することも行うことができる。
【0033】
上記した実施の形態では、術前と術後の頭部診断画像の比較を行う例について説明したが、本発明は術前後の頭部診断画像の比較に限らず、頭部の形態が変化する前後の頭部診断画像を比較する際に用いることができる。この場合、変化後の形態を変化前の形態に補正してもよいし、変化前の形態を変化後の形態に補正してもよい。ここで、前者の場合の変化前の形態、または、後者の場合の変化後の形態のように、形態を揃えてもらう方を第1の頭部診断画像、形態を補正する方を第2の頭部診断画像とし、画像処理について説明する。第1の頭部診断画像、第2の頭部診断画像をともに、解剖学的標準画像に変換する。この際、第1の頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換するために用いた変換パラメータを記憶しておく。続いて、第2の頭部診断画像の解剖学的標準画像を記憶しておいた変換パラメータを用いて逆変換し、第2の頭部診断画像を第1の頭部診断画像の形態に補正する。このような処理を行うことで、術前後の場合に限らず、形態の変化した頭部診断画像を適切に補正することができ、形態変化前後の画像を局所的に比較することが可能となる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明は下記の内容に限定されるものではない。本実施例では、EC−ICバイパス術を施した72歳女性の術前後の脳血流画像を本発明の方法による補正を行って比較した。なお、比較例として、補正を行わない脳血流画像の比較結果も示す。
【0035】
被験者に、塩酸N−イソプロピル−4−ヨードアンフェタミン(123I)注射液(日本メジフィジックス株式会社製)を222MBq投与し、東芝製GCA9300型のSPECT装置を用いて、脳血流画像を撮像した。
【0036】
図7(a)は術前の脳血流画像を示す図、図7(b)は本発明の方法により補正を行った術後の脳血流画像を示す図、図7(c)は本発明の方法により補正を行って脳血流量の比較をした結果を示す図である。図8(a)は術前の脳血流画像を示す図、図8(b)は補正を行っていない術後の脳血流画像を示す図、図8(c)は補正を行わないで脳血流量の比較をした結果を示す図である。図中、矢印で示す部分は、前大脳動脈領域である。この症例では、実際には、前大脳動脈領域における血流変化はほとんどないにもかかわらず、補正を行っていない例では、−14.98%となり、明らかに過小評価をした。これに対し、本発明の方法により、術後画像の補正を行った例では、前大脳動脈領域における血流変化は−2.92%となり、実際に近い値が示され、かなりの改善が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上に説明したように、本発明は、術前後における脳血流量の変化を適切に求めることができるという効果を有し、例えば、EC−ICバイパス術の術前後の血流評価に有用である。
【符号の説明】
【0038】
10 画像処理装置
11 画像入力部
12 画像変換部
13 画像逆変換部
14 脳血流量比較部
15 画像表示部
16 記憶部
20 SPECT装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
術前の頭部診断画像および術後の頭部診断画像を入力する画像入力部と、
頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換する画像変換部と、
前記画像変換部による変換によって得られた前記解剖学的標準画像と、前記頭部診断画像から前記解剖学的標準画像への変換に用いた変換パラメータを記憶する記憶部と、
前記術前の頭部診断画像の変換に用いた変換パラメータを用いて、術後の頭部診断画像の解剖学的標準画像を逆変換して術前の脳の形態に対応する術後の頭部診断画像の補正画像を得る画像逆変換部と、
前記画像逆変換部による逆変換によって得られた前記補正画像を表示する画像表示部と、
を備える頭部診断画像の画像処理装置。
【請求項2】
前記術前の頭部診断画像と前記画像逆変換部による逆変換によって得られた前記補正画像において対応する箇所の画素値を比較する頭部診断画像比較部を備え、
前記画像表示部は、比較結果を表示する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記頭部診断画像として脳血流画像を用いる請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記頭部診断画像として脳血流画像を用い、
前記頭部診断画像比較部は、術前の脳血流画像と前記画像逆変換部による逆変換によって得られた前記補正画像において対応する箇所の画素値を比較することによって、術前と術後における脳血流量の増減を求め、
前記画像表示部は、術前の脳の形態画像に重畳して脳血流量の増減を示す情報を表示する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
術前の頭部診断画像および術後の頭部診断画像を入力する画像入力部と、
頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換する画像変換部と、
前記画像変換部による変換によって得られた前記解剖学的標準画像と、前記頭部診断画像から前記解剖学的標準画像への変換に用いた変換パラメータを記憶する記憶部と、
前記術後の頭部診断画像の変換に用いた変換パラメータを用いて、術前の頭部診断画像の解剖学的標準画像を逆変換して術後の脳の形態に対応する術前の頭部診断画像の補正画像を得る画像逆変換部と、
前記画像逆変換部による逆変換によって得られた前記補正画像を表示する画像表示部と、
を備える頭部診断画像の画像処理装置。
【請求項6】
第1の頭部診断画像および第2の頭部診断画像を入力する画像入力部と、
頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換する画像変換部と、
前記画像変換部による変換によって得られた前記解剖学的標準画像と、前記頭部診断画像から前記解剖学的標準画像への変換に用いた変換パラメータを記憶する記憶部と、
前記第1の頭部診断画像の変換に用いた変換パラメータを用いて、第2の頭部診断画像の解剖学的標準画像を逆変換して第1の頭部診断画像の形態に対応する第2の頭部診断画像の補正画像を得る画像逆変換部と、
前記画像逆変換部による逆変換によって得られた前記補正画像を表示する画像表示部と、
を備える頭部診断画像の画像処理装置。
【請求項7】
頭部診断画像を表示するためのプログラムであって、コンピュータに、
術前の頭部診断画像を入力するステップと、
術前の頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換するステップと、
前記術前の頭部診断画像から前記解剖学的標準画像への変換に用いた変換パラメータを記憶部に記憶するステップと、
術後の頭部診断画像を入力するステップと、
術後の頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換するステップと、
前記記憶部から前記変換パラメータを読み出し、読み出した前記変換パラメータを用いて、術後の頭部診断画像の解剖学的標準画像を逆変換して術前の脳の形態に対応する術後の頭部診断画像の補正画像を得るステップと、
前記逆変換によって得られた前記補正画像を表示するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項8】
前記術前の頭部診断画像と前記補正画像において対応する箇所の画素値を比較するステップと、
前記比較の結果を表示するステップと、
をコンピュータに実行させる請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記頭部診断画像として脳血流画像を用いる請求項7または8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記頭部診断画像として脳血流画像を用い、
前記頭部診断画像を比較するステップは、術前の脳血流画像と前記補正画像において対応する箇所の画素値を比較することによって、術前と術後における脳血流量の増減を求め、
前記比較の結果を表示するステップは、術前の脳の形態画像に重畳して脳血流量の増減を示す情報を表示する請求項8に記載のプログラム。
【請求項11】
頭部診断画像を表示するためのプログラムであって、コンピュータに、
術前の頭部診断画像を入力するステップと、
術前の頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換するステップと、
術後の頭部診断画像を入力するステップと、
術後の頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換するステップと、
前記術後の頭部診断画像から前記解剖学的標準画像への変換に用いた変換パラメータを記憶部に記憶するステップと、
前記記憶部から前記変換パラメータを読み出し、読み出した前記変換パラメータを用いて、術前の頭部診断画像の解剖学的標準画像を逆変換して術後の脳の形態に対応する術前の頭部診断画像の補正画像を得るステップと、
前記逆変換によって得られた前記補正画像を表示するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項12】
頭部診断画像を表示するためのプログラムであって、コンピュータに、
第1の頭部診断画像を入力するステップと、
第1の頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換するステップと、
前記第1の頭部診断画像を前記解剖学的標準画像に変換するために用いた変換パラメータを記憶部に記憶するステップと、
第2の頭部診断画像を入力するステップと、
第2の頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換するステップと、
前記記憶部から前記変換パラメータを読み出し、読み出した前記変換パラメータを用いて、第2の頭部診断画像の解剖学的標準画像を逆変換して第1の頭部診断画像の形態に対応する第2の頭部診断画像の補正画像を得るステップと、
前記逆変換によって得られた前記補正画像を表示するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項13】
画像処理装置によって頭部診断画像を表示する方法であって、
前記画像処理装置が、術前の頭部診断画像を入力するステップと、
前記画像処理装置が、術前の頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換するステップと、
前記画像処理装置が、前記術前の頭部診断画像から前記解剖学的標準画像への変換に用いた変換パラメータを記憶部に記憶するステップと、
前記画像処理装置が、術後の頭部診断画像を入力するステップと、
前記画像処理装置が、術後の頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換するステップと、
前記画像処理装置が、前記記憶部から前記変換パラメータを読み出し、読み出した前記変換パラメータを用いて、術後の頭部診断画像の解剖学的標準画像を逆変換して術前の脳の形態に対応する術後の頭部診断画像の補正画像を得るステップと、
前記画像処理装置が、前記逆変換によって得られた前記補正画像を表示するステップと、
を備える画像処理方法。
【請求項14】
前記画像処理装置が、前記術前の頭部診断画像と前記補正画像において対応する箇所の画素値を比較するステップと、
前記画像処理装置が、前記比較の結果を表示するステップと、
を備える請求項13に記載の画像処理方法。
【請求項15】
前記頭部診断画像として脳血流画像を用いる請求項13または14に記載の画像処理方法。
【請求項16】
前記頭部診断画像として脳血流画像を用い、
前記頭部診断画像を比較するステップは、術前の脳血流画像と前記補正画像において対応する箇所の画素値を比較することによって、術前と術後における脳血流量の増減を求め、
前記比較の結果を表示するステップは、術前の脳の形態画像に重畳して脳血流量の増減を示す情報を表示する請求項14に記載の画像処理方法。
【請求項17】
画像処理装置によって頭部診断画像を表示する方法であって、
前記画像処理装置が、術前の頭部診断画像を入力するステップと、
前記画像処理装置が、術前の頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換するステップと、
前記画像処理装置が、術後の頭部診断画像を入力するステップと、
前記画像処理装置が、術後の頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換するステップと、
前記画像処理装置が、前記術後の頭部診断画像から前記解剖学的標準画像への変換に用いた変換パラメータを記憶部に記憶するステップと、
前記画像処理装置が、前記記憶部から前記変換パラメータを読み出し、読み出した前記変換パラメータを用いて、術前の頭部診断画像の解剖学的標準画像を逆変換して術後の脳の形態に対応する術前の頭部診断画像の補正画像を得るステップと、
前記画像処理装置が、前記逆変換によって得られた前記補正画像を表示するステップと、
を備える画像処理方法。
【請求項18】
画像処理装置によって頭部診断画像を表示する方法であって、
前記画像処理装置が、第1の頭部診断画像を入力するステップと、
前記画像処理装置が、第1の頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換するステップと、
前記画像処理装置が、前記第1の頭部診断画像を前記解剖学的標準画像に変換するために用いた変換パラメータを記憶部に記憶するステップと、
前記画像処理装置が、第2の頭部診断画像を入力するステップと、
前記画像処理装置が、第2の頭部診断画像を解剖学的標準画像に変換するステップと、
前記画像処理装置が、前記記憶部から前記変換パラメータを読み出し、読み出した前記変換パラメータを用いて、第2の頭部診断画像の解剖学的標準画像を逆変換して第1の頭部診断画像の形態に対応する第2の頭部診断画像の補正画像を得るステップと、
前記画像処理装置が、前記逆変換によって得られた前記補正画像表示するステップと、
を備える画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−203009(P2011−203009A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68538(P2010−68538)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名: 一般社団法人 日本核医学会 刊行物名: 「核医学」第46巻3号 発行年月日:平成21年9月30日発行
【出願人】(510081528)
【出願人】(000230250)日本メジフィジックス株式会社 (75)
【Fターム(参考)】