説明

画像処理装置、投写型表示装置、映像表示システム、画像処理方法、コンピュータープログラム

【課題】表示画像に対応する画像データを処理する画像処理技術を提供する。
【解決手段】表示画像に対応する画像データを処理する画像処理装置であって、少なくとも、構成する画素数を示す解像度が、基準解像度Pの画像に対応する画像データを入力可能な入力部と、解像度Pの画像をM個に分割した画像の画像データを処理する機能を有するM個の画像処理部と、入力した画像が基準解像度Pの画像である場合には、該画像データをM個に分割した部分画像の各々をM個の画像処理部に処理させ、入力した画像が基準解像度Pより低解像度の解像度Qであって、N個(Nは、M−1以下の整数)の画像処理部により処理可能な大きさの画像である場合には、該画像データをL個(Lは、N+1以上M以下の整数)に分割した部分画像の各々を、M個の画像処理部のうちのL個の画像処理部に処理させる画像処理制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示画像に対応する画像データを複数に分割して処理する画像処理の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高解像度のプロジェクター、液晶テレビ、プラズマテレビなどの映像表示機器に搭載されている映像処理装置は、入力された表示画像に対応する画像データ(以下、表示画像データとも呼ぶ)を複数の画像データに分割し、並列に処理する方法をとる場合がある。具体的には、分割された画像データ(以下、部分画像データとも呼ぶ)を処理する画像処理部を複数備え、各画像処理部が並列に各部分画像データを処理する。このような技術としては下記特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−111969号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の画像データに分割して並列に処理をする方法を採用する映像処理装置の場合、入力される表示画像データが高解像度である場合も、低解像度である場合も、1つの画像処理部が処理をする画像データのデータ容量は同一であるのが一般的である。つまり、高解像度の表示画像データに対しては多くの画像処理部を用いて処理を行い、低解像度の表示画像データが入力された場合は、解像度の低下の割合に応じて、少ない数の画像処理部を用いて処理を行っている。低解像度の画像データを処理する場合には、高解像度の画像データの画像処理に加えて、解像度変換処理(例えば、バイキュービック法やバイリニア法による画素補間)が加わる。結果として、低解像度の画像データを処理する場合の方が、1つの画像処理部にかかる負荷が重くなると言う課題が指摘されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
表示画像に対応する画像データを処理する画像処理装置であって、少なくとも、構成する画素数を示す解像度が、基準となる解像度である基準解像度Pの画像に対応する画像データを入力可能な入力部と、解像度Pの画像をM個(Mは2以上の整数)に分割した画像の画像データを処理する機能を有するM個の画像処理部と、前記画像データを入力した画像が前記基準解像度Pの画像である場合には、該画像データをM個に分割した部分画像に対応する画像データの各々を前記M個の画像処理部に処理させ、前記画像データを入力した画像が前記基準解像度Pより低解像度の解像度Qであって、N個(Nは、M−1以下の整数)の画像処理部により処理可能な大きさの画像である場合には、該画像データをL個(Lは、N+1以上M以下の整数)に分割した部分画像に対応する画像データの各々を、前記M個の画像処理部のうちのL個の画像処理部に処理させる画像処理制御部と、前記M個またはL個の画像処理部が画像処理した部分画像に対応する画像データに基づいて、前記表示画像を再構築する処理を行なう画像合成部とを備えた画像処理装置。
【0007】
この画像処理装置によると、基準解像度Pより低い解像度Qの表示画像に対応する画像データを、部分画像データとして画像処理部で処理する場合に、解像度の低下の割合に比して、処理を行う画像処理部の数を減らすのではなく、解像度の低下の割合と比べて多い数であるL個、つまり「N+1」以上の数の画像処理部で処理を行う。
【0008】
通常、表示画像に対応する画像データの解像度を低下させると、解像度の低下に伴う処理を行う必要がある。例えば、その一つが解像度変換処理である。解像度変換としてはバイリニア法やバイキュービック法による画素補間処理が挙げられる。解像度の低下に伴って、処理を行う画像処理部の数を減らすと、基準解像度Pを処理する場合と比べて、1つの画像処理部が行わなければならない処理の負荷は増える。つまり、基準解像度Pの場合に1つの画像処理部が行っていた画像処理に、解像度変換処理が加わることとなる。
【0009】
一方、本発明に係る画像処理装置は、解像度の低下の割合と比べて多い数、つまり「N+1」以上の数の画像処理部で画像処理を行うので、解像度の低下の割合に比して処理を行う画像処理部の数を減らす画像処理装置と比べて、1つの画像処理部にかかる処理の負荷を低減することができる。従って、1つの画像処理部の性能を低減することができ、ひいてはコスト削減へと繋がる。
【0010】
[適用例2]
適用例1記載の画像処理装置であって、前記入力部は複数個あり、該各入力部は前記表示画像に対応する画像データを複数に分割した画像データとしてそれぞれ入力する画像処理装置。
この画像処理装置によると、入力部を複数備えるので、画像データを複数の入力部から、分割した態様で並列的に入力することが可能である。
【0011】
[適用例3]
適用例1または適用例2記載の画像処理装置であって、前記L個の画像処理部は、前記画像処理に先立って、前記入力部が入力した前記画像データを受け取り、該受け取った画像データを所定の数に分割し、該分割した画像データの少なくとも1つを留保して処理に供し、該留保しなかった前記分割した画像データを他の画像処理部へ分配する第1の画像処理部と、前記第1の画像処理部が前記分配した画像データを受け取る第2の画像処理部とを備える画像処理装置。
【0012】
この画像処理装置によると、入力した画像データを複数の画像処理部で処理する際に、第1の画像処理部が受け取り、その画像データを分割して第2の画像処理部へ分配するので、画像データを入力部が入力する際に各画像処理部に入力されるような入力の態様をとる必要がない。
【0013】
[適用例4]
適用例3記載の画像処理装置であって、前記第2の画像処理部は、前記第1の画像処理部から受け取った前記画像データを所定の数に分割し、該分割した画像データの少なくとも1つを留保して処理に供し、該留保しなかった前記分割した画像データを前記第1,第2の画像処理部以外の他の画像処理部へ分配し、前記L個の画像処理部は、前記第2の画像処理部が前記分配した画像データを受け取る第3の画像処理部を備える画像処理装置。
【0014】
この画像処理装置によると、第2の画像処理部が受け取った画像データを分割し第3の画像処理部に分配するので、画像データを入力部が入力する際に各画像処理部に入力されるような入力の態様をとる必要がない。
【0015】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか記載の画像処理装置であって、MとLとは等しい数である画像処理装置。
この画像処理装置によると、入力される画像データの解像度が低くなっても、M個の画像処理部で処理する。
【0016】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか記載の画像処理装置であって、前記基準解像度Pは「8K4K」である画像処理装置。
この画像処理装置は、いわゆるスーパーハイビジョンの画像データに対応している。
【0017】
[適用例7]
表示画像に対応する画像データに基づいて投写面に向けて投写画像を投写する投写型表示装置であって、適用例1ないし適用例6のいずれか記載の画像処理装置を備える投写型表示装置。
この投写型表示装置によると適用例1ないし適用例6のいずれか記載の画像処理装置を備えるので、1つの画像処理部にかかる処理の負荷を低減することができる。従って、投写型表示装置が備える1つの画像処理部の性能を低減することができ、ひいてはコスト削減へと繋がる。
【0018】
[適用例8]
映像表示システムであって、適用例1ないし適用例6のいずれか記載の画像処理装置を備え表示画像に対応する画像データに基づいて画像を表示する映像表示装置と、該表示画像に対応する画像データを格納し、該映像表示装置に、前記表示画像に対応する画像データを入力するストレージとを備える映像表示システム。
この映像表示システムによると、映像表表示装置は適用例1ないし適用例6のいずれか記載の画像処理装置を備えるので、映像表示装置が備える1つの画像処理部の性能を低減することができ、ひいてはコスト削減へと繋がる。
【0019】
[適用例9]
表示画像に対応する画像データを処理し、構成する画素数を示す解像度が、基準となる解像度である基準解像度Pの画像に対応する画像データを少なくとも処理する画像処理方法であって、前記表示画像に対応する画像データを入力し、前記入力した表示画像に対応する画像データが、前記基準解像度Pの画像である場合には、解像度RのM個(Mは2以上の整数)の部分画像に対応する画像データに分割して並列的に処理し、前記入力した表示画像に対応する画像データが、前記基準解像度Pより低解像度の解像度Qであって、N個(Nは、M−1以下の整数)に分割した場合の1つの部分画像が解像度R以下である場合には、該画像データをL個(LはN十1以上M以下の整数)に分割し、前記部分画像に対応する画像データの各々を並列的に処理し、前記処理をしたM個またはL個の部分画像に対応する画像データに基づいて、前記表示画像を再構築する処理を行なう画像処理方法。
【0020】
この画像処理方法によると、基準解像度Pより低い解像度Qの表示画像に対応する画像データを処理する場合に、解像度の低下の割合に比して画像データの分割数を減らすのではなく、解像度の低下の割合と比べて多い数であるL個、つまり「N+1」以上に分割して並列的に処理するので、画像処理には解像度変換を伴うが、1つの部分画像を処理する負荷を低減することができる。
【0021】
[適用例10]
表示画像に対応する画像データを処理し、構成する画素数を示す解像度が、基準となる解像度である基準解像度Pの画像に対応する画像データを少なくとも処理する画像処理機能をコンピューターに実現させるコンピュータープログラムであって、前記表示画像に対応する画像データを入力する機能と、前記入力した表示画像に対応する画像データが、前記基準解像度Pの画像である場合には、解像度RのM個(Mは2以上の整数)の部分画像に対応する画像データに分割して並列的に処理する機能と、前記入力した表示画像に対応する画像データが、前記基準解像度Pより低解像度の解像度Qであって、N個(Nは、M−1以下の整数)に分割した場合の1つの部分画像が解像度R以下である場合には、該画像データをL個(LはN十1以上M以下の整数)に分割し、前記部分画像に対応する画像データの各々を並列的に処理する機能と、前記処理をしたM個またはL個の部分画像に対応する画像データに基づいて、前記表示画像を再構築する処理を行う機能とをコンピューターに実現させるコンピュータープログラム。
【0022】
このコンピュータープログラムによると、基準解像度Pより低い解像度Qの表示画像に対応する画像データを処理する場合に、解像度の低下の割合に比して画像データの分割数を減らすのではなく、解像度の低下の割合と比べて多い数であるL個、つまり「N+1」以上に分割して並列的に処理する機能をコンピューターに実現させるので、画像処理には解像度変換を伴うが、1つの部分画像を処理する負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】映像表示システム10を説明する説明図である。
【図2】プロジェクターPJの構成を説明する説明図である。
【図3】映像処理装置100の構成を示した説明図である。
【図4】第6画像処理部306の内部構成を示すブロック図である。
【図5】第6画像処理部306での処理を模式的に示すブロック図である。
【図6】映像処理装置100における映像処理の流れを模式的に示した説明図である。
【図7】周辺画素データ交換処理を説明する説明図である。
【図8】映像表示システム10aを説明する説明図である。
【図9】入力モード変更処理の流れを説明する説明図である。
【図10】入力モードの変更に伴う部分画像データDIn1〜4の入力方法および処理方法について説明する説明図である。
【図11】画像処理の流れを説明するフローチャートである。
【図12】2K1kモードへの変更に伴う部分画像データの入力方法および処理方法について説明する説明図である。
【図13】変形例3を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
A.第1実施例:
(A1)映像表示システムの構成:
図1は第1実施例における映像表示システム10を説明する説明図である。映像表示システム10は、映像を投写して表示するプロジェクターPJと、プロジェクターPJが投写した映像を表示するスクリーンSCと、コンピューターPC1〜PC16と、記憶装置としての映像ストレージSt1〜St16と、コンピューターPC1〜PC16からのデータ出力を制御するマスターコンピューターPCMとから構成されている。プロジェクターPJは、コンピューターPC1〜PC16とデータ伝送用のケーブルで接続されており、複数種類の解像度の映像データを入力し、画像処理を行って、表示画像をスクリーンSCに投写表示する。各コンピューターPC1〜PC16は、マスターコンピューターPCMと、LAN(Local Area Network)ケーブルで接続されている。映像ストレージSt1〜St16は、コンピューターPC1〜PC16とデータ通信用のケーブルで接続されている。
【0025】
各映像ストレージSt1〜St16には、図1に示すように、プロジェクターPJがスクリーンSCに投写表示する映像の1画面分の表示画像データDIn0を水平方向に4分割、垂直方向に4分割、つまり計16分割した部分画像データDIn1〜DIn16が、その映像のフレームの数だけ格納されている。DIn1〜DIn16はそれぞれ、いわゆるフルHD相当のサイズの画像データである。このサイズの画像データは、一般に「2K1K」(解像度1920×1080)と呼ばれる。本説明で用いる「解像度」とは、1つの画像に対応する画像データを構成する画素数を示している。映像表示システム10の場合、2K1Kの部分画像データを縦に4つ、横に4つ並べて表示画像データDIn0は構成されており、表示画像データDIn0は一般に「8K4K」と呼ばれる解像度の画像データである。
【0026】
部分画像データDIn1〜16に対応する各々の画像は、後述するプロジェクターPJが備える映像処理装置100で処理される。映像処理装置100で処理された各画像データが、部分画像データDIn1〜DIn16として、プロジェクターPJを介してスクリーンSCに投写表示されることにより、1画面分の映像である表示画像データDIn0がスクリーンSCに表示される。そして、各部分画像データDIn1〜16が同期して、時系列的に連続してスクリーンSCに表示されることによりスクリーンSCには動画または静止画としての映像が表示される。
【0027】
コンピューターPC1〜PC16は、マスターコンピューターPCMからのLANを介した同期信号を受信して、映像ストレージSt1〜St16から同期して各部分画像データDIn1〜16を読み出し、プロジェクターPJに各々入力する。マスターコンピューターPCMは、上述したように、コンピューターPC1〜PC16が、映像ストレージSt1〜St16から部分画像データDIn1〜16を読み出すタイミングを制御するためのコンピューターである。ユーザーがマスターコンピューターPCMを操作して映像表示開始の指示を出すと、マスターコンピューターPCMは同期信号を各コンピューターPC1〜PC16に出力し、映像ストレージSt1〜St16からの各部分画像データDIn1〜16の読み出しが開始される。なお、部分画像データDIn1〜DIn16は、本実施例では、映像ストレージに格納されている状態、及びプロジェクターPJに送信される状態のいずれにおいてもデジタルデータである。
【0028】
次に、プロジェクターPJの構成について説明する。図2は、プロジェクターPJの構成を説明する説明図である。プロジェクターPJは、CPU20、ROM21、RAM22、LED/IF23、LED24、接続端子25、液晶パネル駆動部26、照明光学系27、液晶パネル28、投写光学系29、映像処理装置100、操作部Ctr、内部バス30を備える。CPU20は、プロジェクターPJ全体の制御を司る制御機能を備え、本実施例ではこれに加え、入力モード制御部65を備える。操作部Ctrは、入力される表示画像データDIn0が8K4Kである場合に設定する「8K4Kモード」、入力される表示画像データDIn0が4K2Kである場合に設定する「4K2Kモード」、表示画像データDIn0が2K1Kである場合に設定する「2K1Kモード」を選択するパネルを備えている。これらのモードを「入力モード」と呼ぶ。ユーザーは、入力する表示画像データDIn0の解像度に応じて、操作部Ctrを介して入力モードを設定する。映像表示システム10の場合、ユーザーは、入力モードとして「8K4Kモード」を設定する。
【0029】
接続端子25は、各コンピューターPC1〜16とプロジェクターPJとを接続するための端子であり、各PC1〜16から部分画像データDInを入力する。映像処理装置100は、接続端子25を介して入力された各部分画像データDInを処理し、処理後の映像データを液晶パネル駆動部26に出力する。液晶パネル駆動部26は、入力された映像データに基づいて、液晶パネル28を駆動する。液晶パネル28は、液晶パネル駆動部26で生成された信号を映像化する透過型液晶パネルであり、照明光学系27から照射される光を変調して投写に必要な光(投写光)をスクリーンSCへ向けて射出する。なお、液晶パネル28は、透過型液晶パネルに換えて、DMD(Digital Micromirror Device、DMDは登録商標)を用いたライトバルブとしてもよい。投写光学系29は、照明光学系27から、液晶パネル28を介して射出された光をスクリーンSCに拡大して投写する投写レンズ等(図示省略)を備える。
【0030】
次に、プロジェクターPJが備える映像処理装置100の構成について説明する。図3は、映像処理装置100の構成を示した説明図である。映像処理装置100は、コンピューターPC1〜PC16から接続端子25を介して入力された各部分画像データDIn1〜16を映像処理装置100に入力する映像入力部201〜216と、入力された部分画像データDIn1〜16を並列に処理する16個の画像処理部である第1画像処理部301〜第16画像処理部316と、各画像処理部で並列に処理された部分画像データに対応した画像データDIn1〜16を、1画面の画像データに合成する映像合成部40と、合成された表示画像データDIn0を、液晶パネル駆動部26に出力信号として出力する映像出力部50と、タイミング指示部60とを備える。画像処理部301〜316は互いにデータ交換用のバス45で接続されている。
【0031】
16個の画像処理部301〜316は、タイミング指示部60からの指示を受けて、各画像処理部301〜316が画像処理に必要な周辺画素データを互いに交換する。周辺画素データについては後で説明する。また各画像処理部は、分割された部分画像データDIn1〜16を、第1画像処理部301ではDIn1を処理し、第2画像処理部302ではDIn2を処理する、と言ったように、各画像処理部の符号の下2桁の番号と各部分画像データの符号の番号とが対応して処理を行っている。また、各画像処理部は、操作部Ctrでユーザーが設定した入力モードの情報(以下、入力モード信号とも呼ぶ)を、入力モード制御部65を介して受信する。
【0032】
タイミング指示部60は、各画像処理部で処理をした後の各部分画像データDInを、各画像処理部から同期して映像合成部40に出力するための同期出力信号を画像処理部301〜316に対して送信している。同期出力信号は、例えば、ドットクロックや、水平同期信号、垂直同期信号などの同期信号に基づいて生成され、各画像処理部301〜316に送信される。以下では、画像処理部の構成として、主として第6画像処理部306の構成について説明する。
【0033】
図4は、第6画像処理部306の内部構成を示すブロック図である。第6画像処理部306は、デジタル信号処理プロセッサー(DSP)としての機能を有するCPU71、動作プログラムなどを記憶したROM73、ワークエリアとして利用されるRAM75、表示画像データDIn0を分割した画像データ、つまり部分画像データDIn6より若干大きな記憶容量を有するフレームメモリー80、映像ストレージSt6から部分画像データDIn6を受け取る入力インターフェース81、映像合成部40に部分画像データDIn6を出力する出力インターフェース83、タイミング指示部60からのタイミング信号を受け取る指示入力インターフェース85、入力モード制御部65から入力モード信号を受け取るモード入力インターフェース87を備える。CPU71は、第6画像処理部306の全体の動作を統御するが、特にフレームメモリー80に高速にアクセスして、所定の画像処理(フィルター処理)を行なうことができる専用のプロセッサーである。なお、CPU71の機能は、FPGA(Field Programmable Array)や、画像処理専用LSIなどを用いて実現してもよい。
【0034】
次に各画像処理部の機能的な構成について説明する。図5は、第6画像処理部306での処理を模式的に示すブロック図である。第6画像処理部306は、機能的には、分割映像入力部361、データ交換部362、フレームメモリー制御部363、フレームメモリー364、フィルター処理部365、分割画像出力部366、データ分配制御部367を備える。なお、これらの各ブロックの動作は、実際には、CPU71が所定のプログラムを実行することにより実現される。これら各機能部の詳細は後で説明する。
【0035】
(A2)映像処理:
次に、映像処理装置100が行う8K4Kモードの時の映像処理について説明する。図6は映像処理装置100における映像処理の流れを模式的に示した説明図である。映像処理は、映像ストレージSt1〜St16(図1参照)から、映像入力部201〜216に、部分画像データDIn1〜DIn16が入力されることにより開始される。
【0036】
各画像処理部301〜316には、映像入力部201〜216から各分割映像入力部(図4参照)を介して、それぞれに部分画像データDIn1〜16が入力される(ステップS120)。各画像処理部のフレームメモリー制御部は、入力された部分画像データDInをフレームメモリーに記憶する。フレームメモリー制御部は、部分画像データDInのフレームメモリーへの記憶が完了すると、これをタイミング指示部60に通知する。タイミング指示部60は、各画像処理部301〜316における部分画像データDInの蓄積の状況を解析し、全部分画像データDIn1〜16の各画像処理部への入力が完了したと判断した場合(ステップS130:Yes)、各画像処理部のデータ交換部に対してデータ交換の開始を指示する。各データ交換部はタイミング指示部60からデータ交換開始の指示を受信すると、各画像処理部が処理を担当する部分画像データの処理に必要な周辺画素データを、所定の画像処理部内のデータ交換部と交換をする周辺画素データ交換処理を行う(ステップS140)。周辺画素データ交換処理については、後で詳しく説明する。データ交換は、画像データの受信が順次行なわれていることに鑑み、データ交換可能な画像処理部間でのデータ交換から順次指示するものとしてもよいが、本実施例では、ステップS130で示したように、本発明の理解を容易にするため、データ交換は、第1ないし第16画像処理部301〜316の全てが、画像データを受け取った後に行うものとした。
【0037】
各画像処理部のデータ交換部によって周辺画素データの交換が終了すると、各フレーム制御処理部が、フレームメモリーに記憶されている部分画像データDInと周辺画素データ交換処理によって取得した周辺画素データとを、各フィルター処理部に出力し、各フィルター処理部はそれら2つのデータを用いてフィルター処理を行う(ステップS150)。フィルター処理部はフィルター処理を終了すると、処理後のデータを各分割画像出力部を介して映像合成部40に出力する。この際、各画像処理部301〜316の各分割画像出力部は、並列的に、画像処理後の部分画像データDIn1〜16を映像合成部40に出力する。
【0038】
映像合成部40は、各分割画像出力部から並列的に受信した部分画像データDIn1〜16に対して、各部分画像データの配置の並べ替えを行い、各部分画像データを同期して表示した時に表示画像データDIn0として表示されるように各画像データの配置を整える配置決定処理を含む画像合成処理を行う(ステップS160)。映像合成部40は画像合成処理後、部分画像データを映像出力部50に送信する(ステップS170)。映像出力部50は、配置が整えられた各部分画像データDIn1〜16を映像合成部40から受信し、同期して液晶プロジェクターの液晶パネル駆動部に出力信号として出力する(ステップS180)。このような画像処理を、入力されてくる部分画像データDIn1〜16に対して繰り返し行うことによって、映像処理装置100は画像処理を行う。以上、映像処理装置100が行う8k4kモードの時の映像処理について説明した。
【0039】
(A3)周辺画素データ交換処理:
次に、上述した周辺画素データ交換処理(図6:ステップS140参照)について説明する。まず、周辺画素データについて説明する。図7は、具体例として、第6画像処理部306が部分画像データDIn6のフィルター処理を行うために必要な周辺画素データを説明する説明図である。フィルター処理部365は、部分画像データDIn6において処理の対象となる画素(以下、注目画素とも呼ぶ)を中心に、5行×5列のフィルター行列を用い、注目画素の周囲の2画素ずつの画素データを参照しながら注目画素に対してフィルター処理を行う。具体的には、エッジ強調やノイズ除去のためのラプラシアンフィルターやメディアンフィルター、その他、カルマンフィルター等の画像処理用フィルターによってフィルター処理を行う。このようなフィルター処理を行う場合、部分画像データDIn6の垂直方向に上と下、水平方向に左と右の計4辺(上辺、下辺、左辺、右辺)から内側に2画素ずつの画素が各々注目画素として処理対象となった場合、フィルター処理として参照する画素は部分画像データDIn6の周囲の部分画像データである部分画像データDIn1〜3,5,7,9〜11に含まれる画素にまで及ぶ。よって、第6画像処理部306は、部分画像データDIn6の周囲の部分画像データDIn1〜3,5,7,9〜11から、周辺画素データとして、図7に示す周辺画素データを取得する必要がある。第6画像処理部306のデータ交換部362は、これらの周辺画素データを、周辺画素データ交換処理(図6:ステップS140参照)によって、部分画像データDIn1〜3,5,7,9〜11を入力した画像処理部301〜303、305、307、309〜311からバス45を介して取得する。このようにして、周辺画素データ交換処理は行われる。そして、周辺画素データ交換処理後、各画像処理部は取得した周辺画素データを参照して、各部分画像データのDInフィルター処理を行い映像合成部40へ出力する。
【0040】
(A4)入力モード変更処理:
次に、プロジェクターPJに入力される表示画像データDIn0の解像度を変更する場合に行う入力モード変更処理について説明する。上記説明した映像表示システム10(図1参照)では、8K4Kの解像度の表示画像データDIn0を、2K1Kずつの部分画像データDIn1〜16に分割して各画像処理部301〜316に入力した。次に、入力される表示画像データDIn0の解像度を4K2Kに変更して入力する場合を考える。その様子を図8に示した。図8は、表示画像データDIn0として4K2Kのデータが入力される場合の映像表示システム10aを示した説明図である。映像表示システム10aの各構成要素は、映像表示システム10と同じであるので説明は省略する。異なる点は、プロジェクターPJと接続されるコンピューターがコンピューターPC1〜PC4の4台に、映像ストレージがSt1〜St4の4台になったこと、及び、DIn0の解像度が8K4Kから4K2Kになったことである。また、表示画像データDIn0が4K2Kのため、2K1Kの部分画像データを4つ、つまりDIn1〜DIn4を、プロジェクターPJに入力する態様となっている。各映像ストレージSt1〜St4から、各コンピューターPC1〜PC4を介して、プロジェクターPJにDIn1〜4が順次入力される。
【0041】
ユーザーは、入力モードの変更に伴い、プロジェクターPJの操作部Ctrから入力モードの変更設定を行う。図9は、入力モードが変更された場合の、プロジェクターPJで行われる入力モード変更処理の流れを説明する説明図である。ユーザーが操作部Ctrを介して入力モードの変更を行うと、入力モード制御部65が、ユーザーが設定した入力モードに応じた入力モード信号を各画像処理部が備えるデータ分配制御部(図5参照)に送信する(ステップS210)。各画像処理部のデータ分配制御部は、入力モード信号を受信すると、各画像処理部に入力される部分画像データDInの入力方法、処理方法を変更する(ステップS220)。変更後の部分画像データの入力方式および処理方式の詳細は後で説明する。その後、入力モード制御部65は、プロジェクターPJとコンピューターとを接続する接続端子25に備えられているLED24を、LED/IF23を介して点灯させる(ステップS230)。LED24は、コンピューターPC1〜PC4を、プロジェクターPJが備える16個の接続端子25のうちのどこに接続すればよいのかを、ユーザーに対して示すためのLEDである。本実施例の場合、4K2Kモードの時には、映像入力部201、203、209、211に対応する接続端子のLED24を点灯させる。このようにLED24を不規則に点灯させる理由は後で説明する。
【0042】
ユーザーは、点灯したLED24を確認し、コンピューターPC1〜PC4をLED24が点灯している接続端子25(映像入力部201、203、209、211に対応する接続端子)に接続する。その後、ユーザーがマスターコンピューターPCMを介して映像表示開始の指示を出すと、各映像ストレージSt1〜St4から、部分画像データDIn1〜4がプロジェクターPJに入力される。なお、上述したように、各部分画像データDIn1〜4の解像度は2K1Kである。
【0043】
次に、プロジェクターPJへの部分画像データDIn1〜4の入力とともに、各画像処理部で行われる部分画像データの入力方法、処理方法について説明する。図10は入力モードの変更に伴って変更された部分画像データDInの1〜4の入力方法および処理方法について説明する説明図である。8K4Kモードの場合の入力方法及び処理方法と比較をして説明するため、図10(A)には、8K4Kモードの場合の入力方法および処理方法、図10(B)には、4K2Kモードの場合の入力方法および処理方法をそれぞれ説明する説明図を示した。先に、比較例としての8K4Kモードの場合の部分画像データDInの入力方法、処理方法について図10(A)を用いて説明する。
【0044】
8K4Kモードの場合、映像表示システム10(図1参照)で説明したように、コンピューターPC1〜16から、各部分画像データDIn1〜16が、各映像入力部201〜216を介して、各画像処理部301〜316に入力される。図10(A)はその様子を示している。理解を容易にするため、各画像処理部301〜316をマトリックス状に表現している。この時、各画像処理部301〜316に入力されるDIn1〜16の解像度はそれぞれ2K1Kである。
【0045】
これに対して、4K2Kモードに入力モードを変更した場合を図10(B)に示した。4K2Kモードは、図8の映像表示システム10aで説明したように、コンピューターPC1〜4から、各DIn1〜4がプロジェクターPJに入力される。この時、入力モードの変更に伴い、ユーザーがコンピューターPC1を映像入力部201に、PC2を映像入力部203に、PC3を映像入力部209に、PC4を映像入力部211に接続したので、各2K1Kである部分画像データDIn1〜4は、各画像処理部301、303、309、311に入力される。そして、それぞれ入力された2K1Kの部分画像データDIn1〜4は、それぞれ4つに分割される。そして図10(B)に示すように、表示画像データDIn0として配置した場合に、互いに隣接するように、各画像処理部に対して、分割した部分画像のうちの3つを分配する(以下、分配処理とも呼ぶ)。
【0046】
第1画像処理部301に入力されたDIn1を例にして具体的に説明する。第1画像処理部301にDIn1が入力されると、第1画像処理部301が備える分割映像入力部(図5参照)を介してフレームメモリーに一旦記憶される。その後、データ分配制御部によって4つの部分画像データに分割される。以降、その4つのデータを、分割部分画像データDIn11、DIn12、DIn13、DIn14ともよぶ(図10(B)参照)。これら4つの分割部分画像データは、2K1Kの解像度の部分画像データDIn1を縦横それぞれ2分割(計4分割)にしたので、それぞれの解像度は「1K0.5K」である。そして、表示画像データDIn0における各分割部分画像データの配置関係に対応して、DIn11は第1画像処理部301に留保し、DIn12は第2画像処理部302に、DIn13は第3画像処理部303に、DIn14は第4画像処理部304に各々分配する。分配は、データ分配制御部が、画像処理部301〜316を互いに接続するバス45(図3参照)を介して各画像処理部302、305、306に送信することによって行われる。
【0047】
第1画像処理部301に入力されたDIn1を例にして説明した分配処理が、第3画像処理部303に入力された部分画像データDIn2、第9画像処理部309に入力された部分画像データDIn3、第11画像処理部311に入力された部分画像データDIn4に対しても同様に行われる。つまり、このように部分画像データDIn1〜4を、さらに4つに分割して、他の画像処理部に分配することで、入力される表示画像データDIn0の解像度が低解像度であっても、全ての画像処理部を用いて画像処理を行う。このように画像処理を行うために、各コンピューターPC1〜PC4と、画像処理部301、303、309、311とを接続する。上述した図9:ステップS230で、入力モード制御部65が、プロジェクターPJとコンピューターとを接続する接続端子部分(本実施例では映像入力部201、203、209、211に対応する接続端子)に備えられているLEDを点灯させるのはこのためである。
【0048】
次に、上記説明した分配処理を含む各画像処理部で行われる画像処理を、フローチャートによって説明する。これら処理は、部分画像データDIn1〜DIn4をコンピューターPC1〜4から直接に受信する画像処理部301、303、309、311(以下、主画像処理部とも呼ぶ)による処理と、これらの主画像処理部から分配処理によって分割部分画像データを受信する画像処理部301、303、309、311以外の画像処理部(以下、副画像処理部とも呼ぶ)による処理に分けることができる。
【0049】
図11は主画像処理部による画像処理の流れと、副画像処理による画像処理の流れとを説明するフローチャートである。図11(A)は主画像処理部による画像処理の流れを示し、図11(B)は、副画像処理部による画像処理の流れを示している。主画像処理部による画像処理は、各コンピューターPC1〜PC4から、各部分画像データDIn1〜DIn4が入力されることによって開始される。主画像処理部に各部分画像データが入力されると(ステップS310)、主画像処理部の各CPUは各分割映像入力部(図5参照)を介して、各フレームメモリーに記憶し、各データ分配制御部によって各部分画像データを4つの分割部分画像データに分割する(ステップS320)。その後、CPUは分割した分割部分画像データの内の3つを、副画像処理部に分配する(ステップS330)。分配処理後、各主画像処理部のCPUは、自身のフレームメモリーに留保した分割部分画像データと、他の画像処理が留保または分配によって保存した分割部分画像データとの間で、周辺画素データ交換処理を行う(ステップS340)。周辺画素データの交換後、それらの画素データを用いて分割部分画像データのフィルター処理を行う(ステップS350)。フィルター処理後、4K2Kの画像データを、8K4Kモードの際の表示画像の大きさに合わせるために、解像度を2倍に拡張する解像度変換処理を行う(ステップS360)。解像度変換処理としては、一般的に用いられている画素の補間処理を行っている。具体的には、バイキュービック法やバイリニア法などを用いている。解像度変換処理後、画像データを映像合成部40に出力することで(ステップS370)、主画像処理部による画像処理は終了する。
【0050】
一方、副画像処理部においては(図11(B))、主画像処理部が部分画像データを受信すると同時に開始され、主画像処理部から分割部分画像データを受信するまでは待機状態となる(ステップS430)。主画像処理部から分割部分画像データを受信すると(ステップS430:YES)、データ分割処理部を介してフレームメモリーに一旦記憶する(ステップS435)。分割部分画像データをフレームメモリーに記憶後、その分割部分画像データと、他の画像処理が留保または分配によって保存した分割部分画像データとの間で、周辺画素データ交換処理を行う(ステップS440)。周辺画素データの交換後、それらの画素データを用いて分割部分画像データのフィルター処理を行う(ステップS450)。フィルター処理後、上述した解像度変化を行う(ステップS460)。その後、解像度変換後の分割部分画像データを映像合成部40に出力することで(ステップS470)、副画像処理部による画像処理は終了する。
【0051】
映像合成部40は、主画像処理部によって送信された分割部分画像データと(図11(A):ステップS370)、副画像処理部によって送信された分割部分画像データと(図11(B):ステップS470)とを受信し、分割部分画像データの配置の並べ替えを行い、各分割部分画像データを同期して表示した時に表示画像データDIn0として表示されるように各画像データの配置を整える配置決定処理を含む画像合成処理を行う(図6:ステップS160参照)。映像処理装置100による以降の処理は図6のステップS170以降の処理と同様であるので説明は省略する。このようにして、各画像処理部は、8K4Kモードから4K2Kモードへ変更した場合に、データの入力方向、処理方法を変更する。
【0052】
次に、入力モードが2K1Kモードの場合、つまり表示画像データDIn0の画像データの解像度が2K1Kの場合の、画像データの入力方法、処理方法について説明する。図12は、2K1Kモードへの変更に伴って変更された部分画像データの入力方法および処理方法について説明する説明図である。表示画像データDIn0が2K1Kの場合、コンピューターPC1から2K1Kの部分画像データDIn1が、第1画像処理部301に入力される。つまり、ユーサーが操作部Ctrを介して行う入力モードの変換によって、上記説明したプロジェクターPJが行う入力モード変更処理において(図9参照)、接続端子部分に備えているLEDのうち、第1画像処理部301に対応する接続端子のLEDを点灯させる(図9:ステップS230参照)。LEDの点灯を視認し、ユーザーはコンピューターPC1とプロジェクターPJの映像入力部201(図3参照)とを接続する。その後、ユーザーがマスターコンピューターPCMを介して表示開始の指示を出す。これ以降の処理は、部分画像データDIn1の分配方法以外は、上述した4K2Kモードと同様であるので、ここでは2K1Kモードの場合の部分画像データDIn1の分配方法について説明する。
【0053】
図12に示すように、解像度が2K1Kである部分画像データDIn1が、コンピューターPC1から第1画像処理部301に入力される。第1画像処理部301のCPUは、入力された部分画像データDIn1をフレームメモリーに一旦記憶し、第1画像処理部301のデータ分配制御部が部分画像データDIn1を4つの分割部分画像データに分割する。そして4つのうちの3つの分割部分画像データを各々、画像処理部303、309、311に分配する。つまり、この処理段階においては、画像処理部301、303、309、311がそれぞれ1つずつ分割部分画像データを各フレームメモリー(図5参照)に保存する。その後、この4つの画像処理部のデータ分配制御部が、各フレームメモリーに保存した分割部分画像データを、更に4つに分割する。その後、分割部分画像データをさらに4分割した画像データ(以下、2段分割画像データとも呼ぶ)を、図12に示すように、各画像処理部に分配する。つまり、2K1Kモードの場合は、画像データの分配を、二段階に分けて分配する。以降の画像処理については、4K2Kモードの場合と同様の処理であるので説明は省略する。このようにして、各画像処理部は、2K1Kモードの場合に、画像データの入力及び処理を実行する。
【0054】
以上説明したように、本実施例におけるプロジェクターPJは、表示画像データDIn0の解像度が高い場合も低い場合も、全ての画像処理部に画像データを分配して、全ての画像処理部で画像処理を実行する。表示画像データDIn0が低解像度(本実施例では、4K2K、2K1K)の場合、画像処理部が実行する処理には解像度変換処理が含まれる(図11:ステップS360、ステップS460参照)。バイキュービック法やバイリニア法などの画素補間処理である解像度変換処理は、負荷の重い処理である。本実施例においては、解像度の低い表示画像データDIn0を入力した場合にも、各画像処理部に画像データを分配して処理させることによって、負荷の重い処理を各画像処理部で並列的に分配して行う。従って、入力される表示画像データDIn0の解像度に応じて、処理に用いる画像処理部の数を変更するプロジェクター、例えば、8K4Kモードの場合には16個の画像処理部で処理を行い、4K2Kモードの場合には解像度の低下の割合に応じて4つの画像処理部で処理を行うプロジェクターと比べて、本実施例におけるプロジェクターPJは、各画像処理部に必要とされるハードウェアリソースの仕様、性能を低減する事ができ、ひいては、コスト削減に繋がる。また、入力モードが変更され、プロジェクターPJに入力される表示画像データDIn0の解像度が変わっても、各画像処理部で解像度変換後に映像合成部40に出力されるので、映像合成部40では、入力モードの変更にかかわらず同一の処理内容を行うことができ、映像合成部40が入力モード別に処理手段を備える必要がない。
【0055】
特許請求の範囲との対応関係としては、映像処理装置100が、特許請求の範囲に記載の画像処理装置に相当し、解像度8K4Kが、特許請求の範囲に記載の基準解像度Pに相当し、解像度4K2K、2K1Kが、特許請求の範囲に記載の低解像度の解像度Qに相当する。また、4K2Kモードの場合、主画像処理部、副画像処理部が各々、特許請求の範囲に記載の第1の画像処理部、第2の画像処理部に相当する。
【0056】
2K1Kモードの場合、部分画像データDIn1を入力する画像処理部が、特許請求の範囲に記載の第1の画像処理部に相当し、分割部分画像データを他の画像処理部から入力する画像処理部が、特許請求の範囲に記載の第2の画像処理部に相当し、2段分割画像データを他の画像処理部から入力する画像処理部が、特許請求の範囲に記載の第3の画像処理部に相当する。また各入力モードの際に、コンピューターPCと接続されている映像入力部が、特許請求の範囲に記載の入力部に相当する。
【0057】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0058】
(B1)変形例1:
上記実施例では、プロジェクターPJは、例えば8K4Kモードの際には、2K1Kの部分画像を16個、部分画像データDIn1〜16として入力し、4K2Kモードの場合には2K1Kの部分画像データを4個、部分画像データDIn1〜4として入力した。つまり、1つの部分画像データDInの解像度を2K1Kとして説明したが、それに限ることなく、1つの部分画像データDInを「1K1K」や、「1K0.5K」など、表示画像データDIn0の分割可能な範囲で、部分画像データDInの解像度を任意に採用することができる。
【0059】
(B2)変形例2:
上記実施例では、プロジェクターPJは、表示画像データDIn0の解像度によらす、入力される部分画像データDInを分配処理することで、全ての画像処理部で画像処理を行ったが、それに限らず、4K2Kモードの際に、12個、8個、6個などの画像処理部で入力される部分画像データDInを分配して処理するとしてもよい。つまり、基準となる所定の解像度(本実施例では8K4K)と比べた表示画像データDIn0の解像度の低下の割合に比して、用いる画像処理部の数を減らすのではなく、「解像度の低下の割合に応じた画像処理部の数」より多い数の画像処理部を用いて、表示画像データDIn0を処理することによって、入力される表示画像データDIn0の解像度の低下の割合に応じて、処理に用いる画像処理部の数を減らすプロジェクターと比べて、個々の画像処理部に必要なハードウェアリソースの仕様、性能を低減することができる。
【0060】
(B3)変形例3:
上記実施例では、例えば4K2Kモードの場合には、2K1Kの部分画像データDInを4つ、主画像処理部に入力し、主画像処理部から副画像処理部に2段分割画像データを分配し、各画像処理部間で周辺画像交換処理後に、フィルター処理および解像度変換を行ったが、変形例3として、これらの処理の順序を変える事が可能である。例えば4K2Kモードでは、主画像処理部(画像処理部301、303、309、311)に部分画像データDIn1〜4を入力後、主画像処理部間で周辺画素データ交換処理を行い、フィルター処理まで行った後に、2段分割画像データに分割して副画像処理部に分配するとしてもよい。その後、各画像処理部で解像度変換を行い映像合成部40に出力する。このような処理の順序を採用すると、周辺画素データ交換処理を行う画像処理部は、主画像処理部だけとすることができる。このような処理としても、上記実施例と同様の効果を得ることができる。また、その他に、4K2Kモードおよび2k1Kモードの場合には、入力した部分画像データDInを分割する前に、各分割部分画像データ、及び、各2段分割画像データを処理する際に必要な周辺画素を含む形で分割するとしてもよい。その例を図13に示した。図13に示すように、例えば4K2Kモードの場合、画像処理部301に入力された部分画像データDIn1を4つに分割する際に、単に4つに分割するのではなく、各分割画像データに周辺画素も含めて分割する。このように分割をすれば、周辺画素データ交換処理を軽減することが可能である。またこのように処理をしても、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0061】
(B4)変形例4:
上記実施例では、プロジェクターPJに本画像処理の方法を採用したが、それに限らず、液晶テレビ、プラズマテレビ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の画像データを画像として表示する画像表示装置に対して適用が可能である。また、映像処理装置100をプロジェクターやその他の映像表示装置とは別体として構成してもよいし、映像表示システムとして統合した中に組み込んで構成してもよい。その他、映像処理装置を映像表示装置とは別体となった構成にして、映像処理装置から出力される映像データが複数個に分割された状態で複数の映像表示装置に出力され、各映像表示装置が表示する表示画像を表示面上で統合して表示するとしてもよい。例えば、映像処理装置から映像処理後の表示画像データDIn0を4つに分割した状態で、それぞれ分割された画像データを4つのプロジェクターに入力する。各プロジェクターは、各々の分割された画像を1つのスクリーンSCに投写表示し、スクリーンSC上で1つの表示画像として統合して表示される。
【符号の説明】
【0062】
10…映像表示システム
10a…映像表示システム
20…CPU
25…接続端子
26…液晶パネル駆動部
27…照明光学系
28…液晶パネル
29…投写光学系
30…内部バス
40…映像合成部
45…バス
50…映像出力部
60…タイミング指示部
65…入力モード制御部
71…CPU
80…フレームメモリー
81…入力インターフェース
83…出力インターフェース
85…指示入力インターフェース
87…モード入力インターフェース
100…映像処理装置
201〜216…映像入力部
301〜316…画像処理部
361…分割映像入力部
362…データ交換部
363…フレームメモリー制御部
364…フレームメモリー
365…フィルター処理部
366…分割画像出力部
367…データ分配制御部
P…基準解像度
Q…解像度
DIn1〜16…部分画像データ
DIn0…表示画像データ
P…解像度
PC…コンピューター
SC…スクリーン
PJ…プロジェクター
PC1〜16…コンピューター
PCM…マスターコンピューター
St1〜16…映像ストレージ
Ctr…操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画像に対応する画像データを処理する画像処理装置であって、
少なくとも、構成する画素数を示す解像度が、基準となる解像度である基準解像度Pの画像に対応する画像データを入力可能な入力部と、
解像度Pの画像をM個(Mは2以上の整数)に分割した画像の画像データを処理する機能を有するM個の画像処理部と、
前記画像データを入力した画像が前記基準解像度Pの画像である場合には、該画像データをM個に分割した部分画像に対応する画像データの各々を前記M個の画像処理部に処理させ、前記画像データを入力した画像が前記基準解像度Pより低解像度の解像度Qであって、N個(Nは、M−1以下の整数)の画像処理部により処理可能な大きさの画像である場合には、該画像データをL個(Lは、N+1以上M以下の整数)に分割した部分画像に対応する画像データの各々を、前記M個の画像処理部のうちのL個の画像処理部に処理させる画像処理制御部と、
前記M個またはL個の画像処理部が画像処理した部分画像に対応する画像データに基づいて、前記表示画像を再構築する処理を行なう画像合成部と
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理装置であって、
前記入力部は複数個あり、該各入力部は前記表示画像に対応する画像データを複数に分割した画像データとしてそれぞれ入力する
画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の画像処理装置であって、
前記L個の画像処理部は、
前記画像処理に先立って、前記入力部が入力した前記画像データを受け取り、該受け取った画像データを所定の数に分割し、該分割した画像データの少なくとも1つを留保して処理に供し、該留保しなかった前記分割した画像データを他の画像処理部へ分配する第1の画像処理部と、
前記第1の画像処理部が前記分配した画像データを受け取る第2の画像処理部と
を備える
画像処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像処理装置であって、
前記第2の画像処理部は、前記第1の画像処理部から受け取った前記画像データを所定の数に分割し、該分割した画像データの少なくとも1つを留保して処理に供し、該留保しなかった前記分割した画像データを前記第1,第2の画像処理部以外の他の画像処理部へ分配し、
前記L個の画像処理部は、前記第2の画像処理部が前記分配した画像データを受け取る第3の画像処理部を備える
画像処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか記載の画像処理装置であって、
MとLとは等しい数である
画像処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか記載の画像処理装置であって、
前記基準解像度Pは「8K4K」である
画像処理装置。
【請求項7】
表示画像に対応する画像データに基づいて投写面に向けて投写画像を投写する投写型表示装置であって、
請求項1ないし請求項6のいずれか記載の画像処理装置を備える
投写型表示装置。
【請求項8】
映像表示システムであって、
請求項1ないし請求項6のいずれか記載の画像処理装置を備え表示画像に対応する画像データに基づいて画像を表示する映像表示装置と、
該表示画像に対応する画像データを格納し、該映像表示装置に、前記表示画像に対応する画像データを入力するストレージと
を備える
映像表示システム。
【請求項9】
表示画像に対応する画像データを処理し、構成する画素数を示す解像度が、基準となる解像度である基準解像度Pの画像に対応する画像データを少なくとも処理する画像処理方法であって、
前記表示画像に対応する画像データを入力し、
前記入力した表示画像に対応する画像データが、前記基準解像度Pの画像である場合には、解像度RのM個(Mは2以上の整数)の部分画像に対応する画像データに分割して並列的に処理し、
前記入力した表示画像に対応する画像データが、前記基準解像度Pより低解像度の解像度Qであって、N個(Nは、M−1以下の整数)に分割した場合の1つの部分画像が解像度R以下である場合には、該画像データをL個(LはN十1以上M以下の整数)に分割し、前記部分画像に対応する画像データの各々を並列的に処理し、
前記処理をしたM個またはL個の部分画像に対応する画像データに基づいて、前記表示画像を再構築する処理を行なう
画像処理方法。
【請求項10】
表示画像に対応する画像データを処理し、構成する画素数を示す解像度が、基準となる解像度である基準解像度Pの画像に対応する画像データを少なくとも処理する画像処理機能をコンピューターに実現させるコンピュータープログラムであって、
前記表示画像に対応する画像データを入力する機能と、
前記入力した表示画像に対応する画像データが、前記基準解像度Pの画像である場合には、解像度RのM個(Mは2以上の整数)の部分画像に対応する画像データに分割して並列的に処理する機能と、
前記入力した表示画像に対応する画像データが、前記基準解像度Pより低解像度の解像度Qであって、N個(Nは、M−1以下の整数)に分割した場合の1つの部分画像が解像度R以下である場合には、該画像データをL個(LはN十1以上M以下の整数)に分割し、前記部分画像に対応する画像データの各々を並列的に処理する機能と、
前記処理をしたM個またはL個の部分画像に対応する画像データに基づいて、前記表示画像を再構築する処理を行う機能とを
コンピューターに実現させるコンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−180336(P2011−180336A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43978(P2010−43978)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】