説明

画像処理装置、撮像装置およびプログラム

【課題】撮像領域を変更する速度が大きい場合に符号量が増大してしまうこと。
【解決手段】画像処理装置は、動画において撮像領域の変更速度が予め定められた基準値を超える期間である第1期間を特定する期間特定部と、第1期間以外の期間である第2期間より第1期間に、高い圧縮強度を適用して動画を圧縮する圧縮部と、を備える。プログラムは、動画において撮像領域の変更速度が予め定められた基準値を超える期間である第1期間を特定するステップと、第1期間以外の期間である第2期間より第1期間に、高い圧縮強度を適用して動画を圧縮するステップと、をコンピュータに実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、撮像装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮影のシーン判定を行い、判定されたシーン毎に圧縮率を決定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2010−199656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
撮像領域を変更する速度が大きい場合、動画を構成する画像間の相関関係が小さくなるので、符号量が増大してしまう。画像内容に変化を与える撮像状条件を変更する速度が大きい場合も、符号量が増大してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、画像処理装置は、動画において撮像領域の変更速度が予め定められた基準値を超える期間である第1期間を特定する期間特定部と、第1期間以外の期間である第2期間より第1期間に、高い圧縮強度を適用して動画を圧縮する圧縮部と、を備える。
【0005】
本発明の第2の態様においては、画像処理装置は、動画において画像内容に変化を与える撮像条件の変更速度が予め定められた基準値を超える期間である第1期間を特定する期間特定部と、第1期間以外の期間である第2期間より第1期間に、高い圧縮強度を適用して動画を圧縮する圧縮部と、を備える。
【0006】
本発明の第3の態様においては、撮像装置は、画像を撮像する撮像部と、上記画像処理装置と、を備える。
【0007】
本発明の第4の態様においては、プログラムは、動画において撮像領域の変更速度が予め定められた基準値を超える期間である第1期間を特定するステップと、第1期間以外の期間である第2期間より第1期間に、高い圧縮強度を適用して動画を圧縮するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0008】
本発明の第5の態様においては、プログラムは、動画において画像内容に変化を与える撮像条件の変更速度が予め定められた基準値を超える期間である第1期間を特定するステップと、第1期間以外の期間である第2期間より第1期間に、高い圧縮強度を適用して動画を圧縮するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0009】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】撮像装置100のシステム構成図を示す。
【図2】ASIC135におけるブロック構成の一例を示す。
【図3】ズーム倍率に基づき圧縮強度を制御する期間を模式的に示す。
【図4】ズーム倍率の変更速度の算出例を示す。
【図5】ズーム倍率の変更速度に基づく圧縮制御の一例を示す。
【図6】ズーム倍率の変更速度に基づく圧縮制御の他の例を示す。
【図7】ズーム倍率の変更速度に基づく圧縮制御の他の例を示す。
【図8】焦点の変更速度に関する補正データの一例をテーブル形式で示す。
【図9】画像領域毎に変更速度を判断する場面の一例を模式的に示す。
【図10】撮像装置100の起動から終了までの処理フローを示す。
【図11】動画撮影における動作フローの一例を示す。
【図12】圧縮部260がフレームを圧縮する動作フローの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、撮像装置100のシステム構成図を示す。撮像装置100は、交換レンズ120およびカメラ本体130を備える。交換レンズ120は、レンズマウント接点121を有するレンズマウントを備え、カメラ本体130は、カメラマウント接点131を有するカメラマウントを備える。レンズマウントとカメラマウントが係合して交換レンズ120とカメラ本体130が一体化されると、レンズマウント接点121とカメラマウント接点131が接続される。撮像装置100は、交換レンズ120とカメラ本体130とが一体化した状態で一眼レフカメラとして機能する。
【0013】
被写体光は、光軸に沿って撮影光学系としてのレンズ群122を透過して、撮像素子132の受光面に結像する。レンズ群122は、レンズMPU123によって制御される。例えば、レンズMPU123は、レンズモータを制御して、レンズ群122を構成するフォーカスレンズ群、変倍レンズ群を移動させる。これにより、レンズ群122の焦点調節、焦点距離の調節が行われる。
【0014】
レンズMPU123は、レンズマウント接点121およびカメラマウント接点131を介してカメラMPU133と接続され、相互に通信を実行しつつ協働して交換レンズ120とカメラ本体130を制御する。例えば、レンズMPU123は、カメラMPU133と協働して、画角内に設定された少なくとも1つの焦点調節領域の被写体に合焦するようレンズ群122の焦点調節を行う。また、レンズMPU123は、カメラMPU133から取得したズーム倍率を変更する指示に従って、レンズ群122のズームを担う変倍レンズの光軸方向の位置を調節する。レンズMPU123は、レンズ群122の焦点位置を示す情報およびレンズ群122の焦点距離を示す情報を、カメラMPU133に供給する。
【0015】
交換レンズ120は、ユーザが手動で焦点調整の操作を行うフォーカスリング25を有する。フォーカスリング25が操作されることで、フォーカスレンズ群が光軸方向に移動する。例えば、フォーカスレンズ群は、フォーカスリング25の光軸周りの回転に応じて、光軸方向に直進する駆動力を得る。また、交換レンズ120は、ユーザが画角調整の操作を行うズームリング24を有する。ユーザがズームリング24を操作することにより、レンズ群122の焦点距離が調整される。例えば、変倍レンズ群は、ズームリング24の光軸周りの回転に応じて、光軸方向に直進する駆動力を得る。レンズMPU123は、撮像装置100による動画撮影中に、焦点位置を示す情報、焦点距離を示す情報等のレンズ情報をカメラMPU133に供給する。
【0016】
撮像素子132は、レンズ群122を通過した被写体光により撮像する撮像部の一部として機能する。撮像素子132は、被写体像である光学像を光電変換する光電変換素子を有する。撮像素子132としては、例えばCMOSセンサ、CCDセンサ等の固体撮像素子を適用できる。撮像素子132は、被写体光束を受光することにより生じた蓄積電荷による画像信号としてのアナログ信号をA/D変換器134に供給する。A/D変換器134は、撮像素子132から出力されたアナログの画像信号をデジタルの画像信号に変換して画像データとして出力する。撮像素子132は、カメラMPU133からの指示を受けた駆動部140により駆動される。
【0017】
A/D変換器134が出力した画像データは、SDRAM136に記憶される。SDRAM136の少なくとも一部のメモリ領域は、撮像により生成された画像データを一時的に記憶するバッファメモリとして使用される。撮像素子132が被写体光束で連続して撮像した場合、撮像により順次に生成される画像データはSDRAM136に順次に記憶される。例えば、被写体光束で連続して静止画を撮像することにより得られた複数の静止画の画像データが、SDRAM136に順次に記憶される。また、被写体光束で動画を撮像することにより得られた動画を構成する複数の画像としてのフレームデータが、SDRAM136に順次に記憶される。
【0018】
ASIC135は、SDRAM136に記憶された画像データを順次処理する。ASIC135は、画像処理機能に関連する回路を一つにまとめた集積回路である。ASIC135は、SDRAM136の少なくとも一部のメモリ領域を画像処理用のワークエリアとして使用して画像処理を行う。
【0019】
具体的には、ASIC135は、画像データを、規格化された画像フォーマットの画像データに変換して出力する。例えば、ASIC135は、静止画データとしてのJPEGファイルを生成するための画像処理を行う。また、ASIC135は、動画を構成する複数の画像のそれぞれの画像データから、動画データとしてのMPEGファイルを生成するための画像処理を行う。カメラMPU133は、ASIC135によって生成された静止画データ、動画データ等の画像データを、不揮発性の記録媒体としての外部メモリ160に転送して記録させる。外部メモリ160としては、例えばフラッシュメモリ等の半導体メモリを例示することができる。
【0020】
ASIC135は、外部メモリ160への記録用に処理される画像データに並行して、表示用の画像データを生成する。生成された表示用の画像データは、表示制御部137の制御に従って表示画像信号に変換され、液晶ディスプレイ等の表示デバイスとしての表示部138に表示される。また、画像の表示と共に、もしくは画像を表示することなく、撮像装置100の各種設定に関する様々なメニュー項目も、表示制御部137の制御により表示部138に表示することができる。カメラMPU133は、表示制御部137を制御して、メニュー項目を表示部138に表示させる。
【0021】
撮像装置100は、上記の画像処理における各々の要素も含めて、カメラMPU133により直接的または間接的に制御される。システムメモリ139は、電気的に消去・記憶可能な不揮発性メモリであり、例えばフラッシュROM等により構成される。システムメモリ139は、撮像装置100の動作時に必要な定数、変数、プログラム等を、撮像装置100の非動作時にも失われないように記憶している。カメラMPU133は、定数、変数、プログラム等を適宜SDRAM136に展開して、撮像装置100の制御に利用する。カメラ本体130内の、ASIC135、SDRAM136、システムメモリ139、表示制御部137、カメラMPU133、外部メモリ160は、バス等の接続インタフェース145により、相互に接続される。
【0022】
操作入力部141は、ユーザによる設定操作等のユーザ操作を受け付ける。操作入力部141としては、電源スイッチ、レリーズボタン、動画撮影ボタン、各種操作ボタン、表示部138に一体に実装されたタッチパネル等を含む。カメラMPU133は、操作入力部141が操作されたことを検知して、操作に応じた動作を実行する。例えば、カメラMPU133は、レリーズボタンが操作された場合に、レリーズ動作を実行するよう撮像装置100の各部を制御する。カメラMPU133は、動画撮影ボタンが操作された場合に、動画撮影を実行するよう撮像装置100の各部を制御する。また、カメラMPU133は、表示部138に組み込まれたタッチパネルが操作された場合に、表示部138に表示されたメニュー項目および操作内容に応じた動作をするよう、撮像装置100の各部を制御する。また、カメラMPU133は、タッチパネルを通じて、ズーム倍率、焦点位置を変更するユーザ操作を受け付けてよい。
【0023】
センサ部142は、撮像領域の変更速度を検出する。例えば、センサ部142は、撮像装置100のパンニング角、チルト角等を検出するためのジャイロセンサ、撮像装置100の位置の変化を検出するための加速度センサ等、種々のセンサにより実装される。カメラMPU133は、センサ部142からのセンサ出力を取得して、パンニング角、チルト角、撮像位置の変化等を算出する。カメラMPU133は、算出した情報をASIC135に供給する。また、カメラMPU133は、ズーム倍率、焦点位置、被写界深度、絞り量等の撮像条件を示す情報を、ASIC135に供給する。カメラMPU133は、レンズMPU123から取得した焦点距離の情報に基づいて、ズーム倍率を算出してよい。カメラMPU133は、レンズMPU123から取得したフォーカスレンズ群の位置、フォーカスリング25の回転角等に基づいて、焦点位置を算出してよい。また、カメラMPU133は、レンズMPU123から取得した絞り値に基づいて、被写界深度を算出してもよい。
【0024】
ASIC135は、カメラMPU133から取得した情報を、画像データの付帯情報として画像データに付帯して記録する。また、ASIC135は、動画撮影中にカメラMPU133から取得した情報をフレームに対応づけて動画データに記録してよい。また、ASIC135は、後述するように、カメラMPU133から取得した情報に基づいて、動画のフレームを圧縮する圧縮強度を調節してよい。
【0025】
カメラ本体130の各要素および外部メモリ160は、電源170から電力供給を受ける。電源170としては、カメラ本体130に対して着脱できる例えばリチウムイオン電池などの二次電池、商用AC電源等を例示することができる。カメラMPU133は、電源170から撮像装置100の各部への電力供給を制御する。なお、二次電池は、撮像装置100を駆動する電池の一例である。電池とは、実質的に充電することができない非充電式の電池を含む。
【0026】
図2は、ASIC135におけるブロック構成の一例を示す。ASIC135は、変更速度特定部210、期間特定部220、変更領域特定部230、圧縮強度決定部240、圧縮部260を有する。変更速度特定部210、期間特定部220、変更領域特定部230、圧縮強度決定部240および圧縮部260の機能ブロックは、画像処理装置として機能し得る。
【0027】
変更速度特定部210は、動画撮影におけるズームの変更速度、撮像方向の変更速度、撮像位置の変更速度を特定する。例えば、変更速度特定部210は、カメラMPU133から取得した情報に基づいて、動画撮影におけるズーム倍率の変更速度、パンニング角の変更速度、チルト角の変更速度を特定する。ズーム倍率の変更速度、パンニング角の変更速度、チルト角の変更速度は、動画における撮像領域の変更速度の一例である。
【0028】
また、変更速度特定部210は、動画撮影における撮像条件の変更速度を特定する。例えば、変更速度特定部210は、カメラMPU133からズーム倍率、焦点位置、被写界深度等の撮像条件を示す情報を取得して、取得した情報に基づいて、動画撮影におけるズーム倍率の変更速度、焦点位置の変更速度、被写界深度の変更速度を特定する。ズーム倍率の変更速度、焦点位置の変更速度、被写界深度の変更速度等は、動画において画像内容に変化を与える撮像条件の一例である。
【0029】
期間特定部220は、動画において撮像領域の変更速度が予め定められた基準値を超える期間である第1期間を特定する。具体的には、期間特定部220は、変更速度特定部210が特定した撮像領域の変更速度が、予め定められた基準値を超える期間である期間を、第1期間として特定する。また、期間特定部220は、動画において画像内容に変化を与える撮像条件の変更速度が予め定められた基準値を超える期間である第1期間を特定する。具体的には、変更速度特定部210が特定した撮像条件の変更速度が、予め定められた基準値を超える期間である期間を、第1期間として特定する。
【0030】
変更領域特定部230は、撮像条件の変更速度に基づいて、画像内容に変化が生じた領域である変更領域を特定する。例えば、変更領域特定部230は、焦点位置の変更速度および焦点位置と、被写体までの距離とに基づいて、変更領域を特定する。例えば、特定被写体に合焦した状態では、焦点距離が少し変化するだけで特定被写体の像は比較的に大きく変化する。例えば、焦点距離が少し変化するだけで特定被写体の像は比較的に大きくボケる。一方、全く合焦していない被写体の像は、焦点距離が少し変化してもボケたままであり、画像内容として大きく変化しない。したがって、焦点位置が予め定められた基準値を超えて変化した場合に、変更領域特定部230は、より合焦した被写体の領域を変更領域としてより優先して特定してよい。
【0031】
被写界深度は、絞りによって拡大または縮小する。このため、絞りが変更された場合、合焦した特定被写体の近傍に位置する被写体のうち、特定被写体から光軸方向に離れた位置に存在する被写体ほど、画像内容が大きく変化する場合がある。例えば、絞りが絞られた状態で実質的に合焦した被写体の像は、絞りを開くことで被写界深度から外れて、比較的にボケが大きくなる。変更領域特定部230は、焦点位置および絞りの少なくとも一方が変更された場合に、画像領域のうちの一部の領域を変更領域として特定する。一方、ズーム倍率、パンニング角、チルト角、撮像位置が変更された場合は、変更領域特定部230は全画像領域を変更領域として特定する。
【0032】
圧縮強度決定部240は、圧縮部260による圧縮強度を制御する。具体的には、圧縮強度決定部240は、動画における第1期間以外の期間である第2期間より、第1期間に適用する圧縮する圧縮強度として、高い圧縮強度を決定する。圧縮部260は、圧縮強度決定部240が決定した圧縮強度に従って、各領域を圧縮する。すなわち、圧縮部260は、第2期間より第1期間に、高い圧縮強度を適用して動画を圧縮する。圧縮強度決定部240は、第1期間のフレームに、他のフレームとの間のフレーム相関を高めるフィルタ処理を適用すべき旨を決定する。また、圧縮強度決定部240は、第1期間のフレームに適用する量子化ステップの値を、第2期間のフレームに適用する量子化ステップの値より大きくする。このように、圧縮強度決定部240は、圧縮部260における不可逆圧縮の圧縮強度を決定する。圧縮強度は、上述したフィルタを適用するか否か、および、量子化ステップ等によって定められる。
【0033】
例えばズーム倍率が高速に変更されている期間は、フレーム間で画像内容が大きく変化する。このため、動画を再生した場合、人の目にはフレームの画質の良し悪しを十分に認識することできない場合がある。撮像装置100によれば、ズーム倍率が高速に変更されている期間に高い圧縮強度を適用する。このため、人の目に認識される画質に大きな影響を与えることなく、動画データをより高い圧縮強度で圧縮することができる。
【0034】
圧縮部260の具体的な動作について説明する。圧縮部260は、フィルタ部250、符号化部270、合成制御部280、合成部290を有する。符号化部270は、第1符号化部271および第2符号化部272を有する。
【0035】
フィルタ部250および符号化部270は、第1期間と第2期間とで異なる圧縮強度で圧縮する圧縮処理部として機能する。具体的には、フィルタ部250は、第1期間のフレームに、フレーム間の相関度を高めるフィルタ処理を適用する。例えば、フィルタ部250は、第2期間のフレームより第1期間のフレームに、より強い強度のノイズリダクションフィルタを適用してよい。このように、圧縮部260は、動画を構成する複数のフレームのうち、第1期間に撮像されたフレームに、フレーム間の相関度を高めるフィルタ処理を適用する。なお、フィルタ部250は、変更領域特定部230によって特定された変更領域に、当該フィルタ処理を適用してもよい。
【0036】
符号化部270は、フレーム間符号化、フレーム内符号化、量子化、可変長符号化等の動画の符号化処理を行う。圧縮強度決定部240が決定した圧縮強度に従って、各画像領域に圧縮符号化を施してよい。例えば、圧縮強度決定部240は、各期間に適用する量子化ステップの値を決定してよい。符号化部270は、圧縮強度決定部240が決定した量子化ステップの値で量子化を施してよい。
【0037】
符号化部270は、フレームの画像領域のうち、第1領域と第2領域とを並列して符号化する。一例として、変更領域以外の画像領域を第1領域として適用し、変更領域を第2領域として適用してよい。具体的には、第1符号化部271は、第1領域を圧縮し、第2符号化部272は、第2領域を圧縮する。すなわち、第1符号化部271および第2符号化部272は、それぞれ第1領域および第2領域を並行して圧縮する。
【0038】
なお、符号化部270は、異なる圧縮強度を適用する画像領域の数だけ、符号化器を有してよい。例えば、変更領域と、変更領域以外の領域とで異なる圧縮を適用する場合、符号化部270には2つの符号化部が設けられる。
【0039】
合成制御部280は、第1領域を圧縮することにより生成された第1圧縮データと、第2領域を圧縮することにより生成された第2圧縮データとを、合成部290に供給する。合成部290は、第1圧縮データと第2圧縮データとを合成して、1つの画像データを圧縮した圧縮データを生成する。合成制御部280は、合成部290に第1圧縮データおよび第2圧縮データを合成させるタイミングを制御する。例えば、合成制御部280は、第1符号化部271および第2符号化部272から出力される圧縮データをバッファし、全符号化部から圧縮データが出力された場合に、合成部290に圧縮データを一斉に出力する。合成制御部280により、各領域の圧縮に要する時間差を吸収することができる。このように、合成制御部280は、合成部290における圧縮データの合成を制御する。
【0040】
以上に説明したように、圧縮部260は、第2期間より第1期間に、高い圧縮強度を適用して動画を圧縮する。このため、人の目に認識される画質に大きな影響を与えることなく、動画データにおける全体の符号量を削減することができる。また、圧縮部260は、動画データの全体の符号量を目標符号量に適合するようにビットレート等を調節してよい。全体の符号量を目標符号量に適合させるよう制御することで、ズーム倍率が変更されていない期間に多くの符号量を割り当てることができる。このため、画質が認識され易い期間の画質をより高めることができる。
【0041】
図3は、ズーム倍率に基づき圧縮強度を制御する期間を模式的に示す。本図において、フレーム300が撮影されてからフレーム310が撮影されるまでの間、ズーム倍率は変化しない。ASIC135は、この期間に撮影されたフレームに対して、ズーム倍率に基づく圧縮強度の制御をしない。具体的には、フィルタ部250は、この期間に撮影されたフレームには第1強度のノイズリダクションフィルタを適用する。また、符号化部270は、比較的に小さい量子化ステップの値を適用して量子化する。
【0042】
本図において、フレーム311が撮影されてからフレーム321が撮影されるまでの間、ズーム倍率が変化する。ASIC135は、この期間に撮影されたフレームに対して、ズーム倍率の変化を判定して、ズーム倍率に基づき圧縮強度を可変に制御する。ズーム倍率に基づき圧縮強度を可変に制御する期間を、圧縮強度可変期間と呼ぶ場合がある。例えば、フィルタ部250は、ズーム倍率の変更速度が基準値を超える期間に撮影されたフレームに、第1強度より高い第2強度のノイズリダクションフィルタを適用する。また、符号化部270は、ズーム倍率の変更速度が基準値を超える期間に撮影されたフレームに、比較的に大きい量子化ステップの値を適用して量子化する。
【0043】
図4は、ズーム倍率の変更速度の算出例を示す。ここでは、交換レンズ120が備えるレンズ群122の焦点距離の変更速度を、ズーム倍率の変更速度の指標値として用いる。本図の例では、時刻t0まで焦点距離が一定であり、時刻t0から焦点距離の変更が開始される。符号410は、時刻t1で焦点距離の変更が終了した場合の変化速度を示し、符号420は、時刻t2で焦点距離の変更が終了した場合を示す。
【0044】
変更速度特定部210は、焦点距離の変更幅を、変更に要した時間幅で除算することにより、焦点距離の変更速度を算出する。例えば、f1=18mm、f6=200mmであり、t1−t0=2秒である場合、符号410で示す焦点距離の変更速度は91mm/sとなる。一方、t2−t0=4秒である場合、符号420で示す焦点距離の変更速度は45.5mm/sとなる。
【0045】
一例として、焦点距離の変化速度に関する基準値として90mm/sを設定した場合、本図の実線で示す焦点距離の変化に対して、期間特定部220は、期間t0〜t1を第1期間として特定する。焦点距離の変更速度が90mm/s以下の期間、例えば時刻t0までの期間および時刻t1以降の期間は、第2期間となる。一方、符号420で示すように焦点距離が変更された場合、全期間を第2期間として特定する。
【0046】
図5は、ズーム倍率の変更速度に基づく圧縮制御の一例を示す。本例は、ズームアップ操作に引き続きズームアウト操作をして元のズーム倍率まで戻した場合の圧縮制御の一例である。本図の縦軸および横軸のスケールは、図4と同様であるとする。本例では、時刻t0から時刻t10までの期間が圧縮強度可変期間となる。
【0047】
具体的には、焦点距離は時刻t0から時刻t5にかけてf1からf6まで長くされ、時刻t5から時刻t10にかけてf6からf1まで短くされる。本例では、時刻t0から時刻t5までの期間では、焦点距離の増加速度が徐々に高まっている。また、時刻t5から時刻t10までの期間では、焦点距離の低下速度が徐々に低くなっている。本例では、分かり易く説明することを目的として、焦点距離の時間発展が時刻t5に関して対称であるとする。
【0048】
本例において、焦点距離の変化速度に関する基準値として90mm/sを設定した場合、圧縮強度可変期間(t0〜t10)のうち、時刻t3から時刻t7までの期間が第1期間として特定される。すなわち、変更速度特定部210は、焦点距離の変更速度の大きさ、例えば、焦点距離の変更の速さが基準値を超える期間を、第1期間として特定する。時刻t3までの期間、および、時刻t7より後の期間は、第2期間となる。
【0049】
例えばユーザがズームリング24の回転速度を徐々に上げながらズームアップ操作をし、ズームリング24の回転速度を徐々に下げながらズームアウト操作をした場合に、本例のような焦点距離の時間発展が得られる。本図に関連して説明した処理によれば、ズーム倍率の変更操作の速度が小さく、人の目に画質を容易に認識できるような期間には、低い圧縮強度を適用するので、動画における見た目の画質が大きく劣化することを未然に防ぐことができる。一方、ズーム倍率の変更操作の速度が大きく、人の目に画質を容易に認識でききない期間には、高い圧縮強度を適用するので、符号量を大きく削減しつつ、動画における見た目の画質が大きく劣化することを未然に防ぐことができる。ここで、ズーム倍率の変更速度が大きいほど、フレーム相関が小さくなって発生符号量は大きくなる。撮像装置100によれば、発生符号量が大きい期間に高い圧縮強度を適用するので、全体の符号量を効果的に抑制することができる場合がある。
【0050】
図6は、ズーム倍率の変更速度に基づく圧縮制御の他の例を示す。本例は、比較的に高速なズームアップ操作に引き続き、ゆっくりとズームアウト操作をして、ズーム倍率を少し小さくした場合の圧縮制御の一例である。本図の縦軸および横軸のスケールは、図5と同様であるとする。本例では、時刻t0から時刻t6までの期間が、圧縮強度可変期間となる。
【0051】
具体的には、焦点距離は時刻t0から時刻t3にかけてf1からf6まで長くされ、時刻t3から時刻t6にかけてf6からf5まで短くされる。本例では、時刻t0から時刻t3までの期間は、焦点距離の増加速度は一定であるとする。また、時刻t3から時刻t6までの期間では、焦点距離の低下速度は一定であるとする。
【0052】
本例において、焦点距離の変化速度に関する基準値として90mm/sを設定した場合、圧縮強度可変期間(t0〜t5)のうち、時刻t0から時刻t3までの期間が第1期間として特定される。一方、時刻t3以降の期間は、第2期間となる。
【0053】
例えばユーザがズームリング24を一気に回転させてズームアップ操作をした後に、ズームリング24をゆっくりと戻してズームアウト操作をした場合に、本例のような焦点距離の時間発展が得られる。映像的な効果としては、ズーム倍率が最大のときに撮影されている被写体を強調するような効果が得られる。本例において、ズームリング24をゆっくりと戻してズームアウトしている期間のフレームには、比較的に低い圧縮強度が適用される。このため、被写体が特に強調されるべき期間の画質が低くなることを未然に防ぐことができる。このため、ユーザの撮影意図に沿った圧縮強度を適用することができる。
【0054】
なお、以上の説明では、焦点距離の変更速度にいわばリアルタイムに追随して、圧縮強度を制御するとした。しかし、一定の期間内における焦点距離の変更速度の平均値が基準値を超えるか否を判定してもよい。一例として、圧縮強度可変期間内の焦点距離の変更速度の平均値が、基準値を超えるか否かを判定してもよい。例えば、本例では、焦点距離の変更速度の平均値は、(f6−f1+f6−f5)/(t6−t0)である。焦点距離の変化速度に関する基準値として90mm/sを設定した場合、焦点距離の変更速度の平均値は基準値以下と判定される。したがって、時刻t0から時刻t6までの期間は全て第2期間として特定される。この場合、時刻t0から時刻t6までの期間の圧縮強度は比較的に小さくされ、高画質な動画となる。本例のような高速ズームアップ、低速ズームアウトの操作をする場合では、ズームアウト操作をゆっくりして時間をかけるほど、変更速度の平均値は小さくなる。このようにゆっくりしたズーミング操作された期間を含む場合、一連のズーム操作による映像効果を狙って撮影された可能性がある。したがって、一連のズーム操作が生じている期間にわたる変更速度に基づき圧縮強度を制御することで、ユーザの意図をきちんと画質に反映させることができる場合がある。
【0055】
図7は、ズーム倍率の変更速度に基づく圧縮制御の他の例を示す。本例は、比較的に短時間で高速にズーミング操作した場合の圧縮制御の一例である。本図の縦軸および横軸のスケールは、図5と同様であるとする。本例では、時刻t0から時刻t1までの期間が、圧縮強度可変期間となる。
【0056】
本例において、時刻t0から時刻t1までの期間における焦点距離の変更速度は、基準値を超える。しかし、焦点距離が変更されている期間は比較的に短時間であるため、第1期間としては特定されない。すなわち、期間特定部220は、変更速度が予め定められた時間長さより長い時間にわたって基準値を超える期間を、第1期間として特定する。
【0057】
圧縮強度を高めることによる符号量の削減量は、圧縮強度を高める期間が短いほど小さくなる。したがって、基準値を超えて焦点距離が変更されている期間が短いほど、圧縮強度を高めることによる符号量の削減量は小さくなる。焦点距離の変更速度が予め定められた時間長さより長い時間にわたって基準値を超えることを条件として圧縮強度を高めるように制御することで、符号量の削減効果が大きい期間に限定して圧縮強度を高めることができる。また、圧縮強度が頻繁に変わってしまうことを未然に防ぐことができる。
【0058】
なお、連続する期間に異なる圧縮強度を適用する場合、当該連続する期間の境界で圧縮強度の変化幅が予め定められた値以下になるよう、境界に接する一部期間の圧縮強度を漸増または漸減させてよい。例えば、圧縮部260は、第1期間および第2期間の境界の領域に適用する圧縮強度を漸減または漸増させることにより、第1期間および第2期間の境界の領域における圧縮強度の差を予め定められた値以下にしてよい。例えば、圧縮部260は、第1期間に続く第2期間内の一部の領域において、圧縮強度を境界に向けて漸増させてよい。圧縮部260は、第2期間に続く第1期間内の一部の領域において、圧縮強度を境界に向けて漸減させてよい。
【0059】
図3から図7にかけて、ズーム倍率の変更速度の一例として、レンズ群122の焦点距離の変更速度を指標とした。しかし、撮像領域は、レンズ群122の焦点距離だけでなく、いわゆる電子ズーム、デジタルズーム等と呼ばれる画像処理による拡大倍率を変更することによっても変更される。したがって、ズーム倍率の変更速度とは、当該拡大倍率の変更速度を含む概念である。例えば、期間特定部220は、レンズ群122の焦点距離および拡大倍率の組み合わせに基づくズーム倍率の変更速度に基づき、第1期間を特定してよい。
【0060】
図3から図7にかけて、撮像領域の変更速度の一例であるズーム倍率の変更速度に基づき、圧縮強度を高めるべき第1期間を特定する場合を説明した。上述したように、撮像領域の変更速度としては、ズーム倍率の変更速度の他に、動画撮影におけるパンニング角の変更速度、チルト角の変更速度、撮像位置の変更速度等を例示することができる。したがって、図3から図7にかけて説明した焦点距離の変更速度を指標として第1期間を特定することに替えて、パンニング角の変更速度を指標として第1期間を特定してもよい。また、チルト角の変更速度を指標として第1期間を特定してもよい。パンニング角の変更速度およびチルト角の変更速度は、撮像方向の変更速度の一例である。また、撮像位置の変更速度を指標として第1期間を特定してもよい。このように、動画撮影におけるいわゆる撮影シーン、構図の変更速度に基づき、第1期間を適切に決定することができる。
【0061】
なお、ズーム倍率の変更速度は、画像内容に変化を与える撮像条件の変更速度の一例でもある。上述したように、画像内容に変化を与える撮像条件の変更速度としては、ズーム倍率の変更速度の他に、焦点位置の変更速度、被写界深度の変更速度等を例示することができる。したがって、図3から図7にかけて説明した焦点距離の変更速度を指標として第1期間を特定することに替えて、焦点位置の変更速度を指標として第1期間を特定してもよい。また、被写界深度の変更速度を指標として第1期間を特定してもよい。このように、画像内容の全体に変化を与える撮像条件の変更速度に基づき、第1期間を適切に決定することができる。
【0062】
以上に説明したズーム倍率の変更速度、焦点位置の変更速度、被写界深度の変更速度、撮像方向の変更速度、撮像位置の変更速度の任意の組み合わせに基づき、第1期間を特定してよい。例えば、期間特定部220は、ズーム倍率の変更速度、焦点位置の変更速度、被写界深度の変更速度、撮像方向の変更速度、および撮像位置の変更速度の少なくともいずれかが基準値を超える期間を、第1期間として特定してよい。
【0063】
図8は、焦点の変更速度に関する補正データの一例をテーブル形式で示す。本データは、一例として交換レンズ120内にレンズ固有情報の一部として格納される。例えば、本データは、レンズMPU123の不揮発性のシステムメモリ内に格納されてよい。本データは、レンズMPU123を介してカメラMPU133に提供される。
【0064】
焦点位置の変更速度に基づき第1期間を特定する場合、焦点位置に関する指標値として、画像内容の変化量を適切に反映する指標値を用いることが望ましい。例えば、フォーカスリング25の回転速度を焦点位置の変更速度の指標値として用いる場合、回転速度が同じでもレンズ群122の焦点距離によって画像内容の変化量が異なる場合がある。例えばテレ端とワイド端では、フォーカスリング25の回転量に対応する画像の変化量が大きく異なる場合がある。
【0065】
本データは、レンズ群122の焦点距離と、補正係数とを対応づける。例えば、より長い焦点距離に、値がより大きい補正係数を対応づける。一例として、焦点位置の指標値としてフォーカスリング25の回転速度を用いた場合、変更速度特定部210は、レンズ群122の焦点距離に対応づけて格納されている補正係数を、フォーカスリング25の回転速度に乗じた値を、変更速度として算出する。期間特定部220は、当該変更速度が基準値を超える期間を、第1期間として特定する。このため、期間特定部220は、焦点位置の変化速度の指標値として、レンズ群122の焦点距離を考慮して画像内容の変化度合いを適切に反映した指標値を用いて、第1期間を特定することができる。
【0066】
図9は、画像領域毎に変更速度を判断する場面の一例を模式的に示す。フレーム900は、動画を構成する一つのフレームである。本例では、人物に合焦しており、遠方の山、雲等の被写体には合焦していないとする。
【0067】
ここで、遠方の被写体に合焦しない程度に焦点位置を人物の位置から少しずらした場合、遠方の被写体の像はあまり変化しない。一方、人物像のボケは大きく増大する。すなわち、焦点位置の操作により、合焦していない被写体が撮影された部分領域の画像内容よりも、合焦した被写体が撮影された部分領域の画像内容の方が大きく変化する。したがって、変更領域特定部230は、フレーム900内の画像領域のうち合焦した被写体像を含む部分領域910を変化領域として特定する。圧縮部260は、変化領域以外の部分領域920である非変化領域よりも変化領域に、高い圧縮強度を適用する。したがって、撮像装置100によれば、撮像条件の変更に応じて画像内容が高速に変化する部分領域を適切に特定して、その部分領域に他の部分領域よりも高い圧縮強度を適用することができる。
【0068】
なお、隣接する画像領域に異なる圧縮強度を適用する場合、当該隣接する画像領域の境界で圧縮強度の変化幅が予め定められた値以下になるよう、境界に接する一部領域の圧縮強度を漸増または漸減させてよい。例えば、圧縮部260は、変化領域および非変化領域の境界の領域に適用する圧縮強度を漸減または漸増させることにより、変化領域および非変化領域の境界の領域における圧縮強度の差を予め定められた値以下にしてよい。例えば、圧縮部260は、変化領域に隣接する非変化領域内の一部の領域において、圧縮強度を境界に向けて漸増させてよい。圧縮部260は、非変化領域に隣接する変化領域内の一部の領域において、圧縮強度を境界に向けて漸減させてよい。
【0069】
図10は、撮像装置100の起動から終了までの処理フローを示す。本フローは、操作入力部141の一部としての電源ボタンがONされた場合に、開始される。本フローは、カメラMPU133が主体となって撮像装置100の各部を制御することにより実行される。
【0070】
ステップS1000において、カメラMPU133は、初期設定を開始する。例えば、カメラMPU133は、撮像装置100を制御するための各種パラメータ等を、システムメモリ139からSDRAM136に展開する。また、レンズ群122からレンズ固有情報を取得して、SDRAM136にレンズパラメータとして展開する。レンズ固有情報としては、図8に関連して説明した補正係数を含む。そして、カメラMPU133は、例えば撮像モードスイッチ等を含む操作入力部141の状態、および、展開された各種パラメータに基づき、撮像装置100の各部の動作条件を設定する。例えば、撮像モードスイッチの位置に応じて、撮像モードを設定する。また、撮像モードに応じて、撮像条件や画像処理条件を設定する。例えば、撮像モードとしては、人物撮影に適した人物撮影モード、動物撮影に適した動物撮影モード、風景撮影に適した風景撮影モード等を例示することができる。
【0071】
続いて、ステップS1002において、表示部138への表示を行う。例えば、カメラMPU133は、撮像モード、撮像条件および画像処理条件等を識別する設定情報を、表示部138に表示させる。
【0072】
続いて、ステップS1004において、カメラMPU133は、操作入力部141に対するユーザ指示を判断する。ユーザ指示が諸設定を実行する指示である場合、カメラMPU133が主体となって、指示された設定処理を行う(ステップS1006)。設定処理としては、撮像モードを設定する処理、撮像条件を設定する処理、画像処理条件を設定する処理、動画撮影におけるフレームレートを設定する処理等を例示することができる。また、設定処理として、上述した撮像領域または撮像条件の変更速度に基づく圧縮強度の可変制御をするか否かをユーザが指定する処理を例示することができる。
【0073】
ステップS1004において、ユーザ指示が撮像実行に関する指示であると判断された場合、撮像実行に関する処理を行う(ステップS1012)。撮影実行に関する指示としては、ライブビューボタン、動画撮影ボタン、レリーズボタンに対する操作等を例示することができる。ステップS1004におけるユーザ指示が画像の再生を実行する指示である場合、再生処理を実行する(ステップS1022)。再生処理としては、外部メモリ160に記録された画像をサムネイル表示する処理、ユーザにより指示された画像を表示する処理等を例示することができる。
【0074】
ステップS1004においてユーザ指示がない場合は、環境光を測光する測光処理を行う(ステップS1032)。例えば、環境光の測光結果に基づき適正露出値を決定する。本測光処理は一定の時間間隔で実行され、現在の適正露出値が決定される。ステップS1032で決定した現在の露出値を示す情報は、表示部138にリアルタイムに表示され、ユーザに提示される。
【0075】
ステップS1006、ステップS1012、ステップS1022、ステップS1032の処理が完了すると、ステップS1008に進み、電源をOFFするか否かを判断する。例えば、電源ボタンがOFF位置に切り替えられた場合や、電源がONされてから予め定められた期間、ユーザ指示無しの状態が継続した場合等に、電源をOFFすると判断する。電源をOFFすると判断した場合は動作を終了し、電源をOFFしないと判断した場合はステップS1004に処理を移行させる。
【0076】
図11は、動画撮影における動作フローの一例を示す。本例では、ステップS1012の一部の処理として、動画撮影が指示された場合の動作フローを示す。本フローは、動画撮影ボタンが押し込まれた場合に、開始される。
【0077】
ステップS1102において、カメラMPU133が撮像装置100の各部に動画撮影を指示することにより、動画撮影が開始される。動画撮影が開始されると、フレームがSDRAM136に順次に取り込まれる。ASIC135において、画像処理対象のフレームがSDRAM136に取り込まれているか否かが判断される(ステップS1104)。
【0078】
画像処理対象のフレームが取り込まれた場合、ASIC135は、当該フレームの撮影タイミングでズーム操作がなされていたか否かを判断する(ステップS1106)。例えば、カメラMPU133を通じて提供されるレンズ群122の焦点距離の変更を指示するズーム操作、いわゆるデジタルズームによる拡大倍率の変更を指示するズーム操作に基づき、ズーム操作がなされた期間を特定して、当該期間にフレームの撮影タイミングが含まれるか否かを判断する。
【0079】
フレームの撮影タイミングにおいてズーム操作がなされていた場合、期間特定部220は当該期間内でズーム倍率の変更速度が基準値を超えるか否かを判断する(ステップS1108)。ズーム倍率の変更速度が基準値を超えると判断された場合、期間特定部220は、ズーム操作が予め定められた期間継続したか否かを判断する(ステップS1110)。ズーム操作が予め定められた期間継続した場合、圧縮強度決定部240は、圧縮強度を大に設定する(ステップS1112)。具体的には、フィルタ部250において強いノイズリダクション処理を適用する旨を設定する。
【0080】
続いて、ステップS1120において、圧縮部260は、圧縮強度決定部240が決定した圧縮強度に従って各領域を圧縮する。本処理の詳細については、図12に関連して後述する。
【0081】
続いて、ステップS1122において、動画撮影の処理を終了するか否かを判断する。例えば、動画撮影ボタンが再度押し込まれ、かつ、画像処理対象のフレームが存在しない場合に、動画撮影の処理を終了すると判断する。動画撮影の処理を終了すると判断された場合、本動作フローを終了する。動画撮影の処理を終了しないと判断された場合、ステップS1104に処理を進める。
【0082】
ステップS1106の判断において、撮影タイミングでズーム操作がなされていなかったと判断された場合、圧縮強度決定部240は圧縮強度を小に設定し(ステップS1114)、ステップS1120に処理を進める。また、ステップS1108の判断において、ズーム倍率の変更速度が基準値を超えないと判断された場合、圧縮強度決定部240は圧縮強度を小に設定し(ステップS1114)、ステップS1120に処理を進める。
【0083】
ステップS1110の判断において、ズーム操作が予め定められた期間継続していないと判断された場合、圧縮強度決定部240は圧縮強度の設定および圧縮を保留し、ステップS1104に処理を進める。そして、後のフレームに対するステップS1110の判断において、ズーム操作が予め定められた期間継続したと判断された場合に、圧縮強度決定部240は圧縮強度の設定が保留されているフレームに対して、圧縮強度を高く設定する。一方、後のフレームに対するステップS1108の判断で、ズーム操作が予め定められた期間継続することなく変更速度が基準値以下になったと判断された場合(ステップS1108:N)、または、ステップS1106の判断でズーム操作がなされなくなったと判断された場合(ステップS1106:N)に、圧縮強度の設定が保留されているフレームに対して圧縮強度を小に設定し(ステップS1114)、ステップS1120に処理を進める。
【0084】
図12は、圧縮部260がフレームを圧縮する動作フローの一例を示す。本フローは、図11のステップS1120における詳細な動作フローである。ここでは、図9に関連して説明したように、1フレームの画像領域の一部の領域が変更領域として特定された場合の動作について説明する。
【0085】
ステップS1200において、圧縮部260は、SDRAM136からフレームを読み出す。続いて、ステップS1202において、フィルタ部250は、読み出したフレームにノイズリダクション処理を施す。フィルタ部250は、圧縮強度が大に設定されたフレームには第2強度のノイズリダクション処理を適用し、圧縮強度が小に設定されたフレームには、第2強度よりも小さい第1強度のノイズリダクション処理を適用する。ここで、フィルタ部250は、変更領域に第2強度のノイズリダクション処理を適用し、変更領域以外の領域には第1強度のノイズリダクション処理を適用してよい。
【0086】
続いて、第1符号化部271に変更領域以外の領域のデータが供給され(ステップS1204)、第2符号化部272に変更領域のデータが供給される(ステップS1206)。
【0087】
第1符号化部271では、変更領域以外の領域のデータに対して、例えば量子化を含む符号化処理が行われる。第1符号化部271では、DCT変換、フレーム間圧縮またはフレーム内圧縮等の符号化処理が行われてもよい。第2符号化部272では、変更領域のデータに対して、第1符号化部271と同様の符号化処理が行われる。第1符号化部271および第2符号化部272は、例えば圧縮強度決定部240が各領域について決定した圧縮強度に対応する量子化ステップの値を適用して、それぞれの領域に対して量子化を行ってよい。第1符号化部271および第2符号化部272によりそれぞれ符号化された各領域のデータは、圧縮データとしてSDRAM136に一時的に記憶される。第1符号化部271および第2符号化部272が符号化を完了した場合、符号化が完了した旨を合成制御部280に通知する。
【0088】
ステップS1208において、合成制御部280は、第1符号化部271および第2符号化部272の両方の符号化が完了したか否かを判断する。第1符号化部271および第2符号化部272の少なくとも一方の符号化が完了していない場合、ステップS1208の判断を繰り返す。第1符号化部271および第2符号化部272の両方から符号化の完了通知があった場合、合成制御部280は、SDRAM136に一時的に記憶された各領域の圧縮データを合成部290に供給して合成させる(ステップS1210)。続いて、合成部290が圧縮データを合成することで生成された1つのフレームの圧縮データが、SDRAM136に記憶され(ステップS1212)、本動作フローは終了する。
【0089】
特に図11、図12において、動画の撮影をしながら圧縮強度を決定して圧縮するとした。しかし、例えば圧縮強度を大にする期間のフレームをマーキングしておき、マーキングしたフレームに対して高い圧縮強度を適用して圧縮してよい。例えば、動画撮影後に、当該マーキングしたフレームに対して高い圧縮を適用して圧縮してよい。具体的には、高い圧縮強度で圧縮されるべきフレームに、高い圧縮強度で圧縮されるべき旨の情報を付帯して、当該情報が付帯されたフレームに高い圧縮強度を適用して圧縮してよい。また、高い圧縮強度で圧縮されるべきフレームを特定する情報をSDRAM136等に一時的に記憶しておき、記憶された情報により特定されるフレームに対して高い圧縮強度を適用して圧縮してよい。マーキングした動画データを外部メモリ160に一旦記録した後に、記録された動画データを読み出して圧縮してもよい。
【0090】
以上に説明した撮像装置100によれば、画像内容の変化を与えるようなユーザ操作がなされた場合に高い圧縮強度を適用することで、見た目の画質が大きく劣化することを未然に防ぎつつ、全体の符号量を削減することができる。撮像装置100によれば、例えばユーザ操作等に基づき判断するので、画像を実質的に解析することなく、圧縮高度を高める期間を特定することができる。
【0091】
本実施形態の撮像装置100に関連して説明した処理は、撮像装置100の各部、例えばカメラMPU133等のプロセッサがプログラムに従って動作することにより、実現することができる。ASIC135による処理についても、プロセッサがプログラムに従って動作することにより、実現することができる。すなわち当該処理を、いわゆるコンピュータ装置によって実現することができる。コンピュータ装置は、上述した処理の実行を制御するプログラムをロードして、ロードしたプログラムに従ってハードウェアを制御することで、ソフトウェアとハードウェアとの協働動作により当該処理が実現される。コンピュータ装置は、当該プログラムを記憶しているコンピュータ読取可能な記録媒体を読み込むことによって、当該プログラムをロードすることができる。
【0092】
本実施形態において、レンズ交換式の一眼レフカメラとしての撮像装置100を取り上げて説明した。撮像装置としては、コンパクトデジタルカメラ、ミラーレス一眼カメラ、ビデオカメラ、撮像機能付きの携帯電話機、撮像機能付きの携帯情報端末、撮像機能付きのゲーム機器等の娯楽装置等、撮像機能を有する種々の機器を適用の対象とすることができる。また、ASIC135における処理として説明した画像処理に対応する画像処理を実行する機器として、パーソナルコンピュータの他、記録機能付きのテレビ、レコーダ等の画像記録装置を適用の対象とすることができる。また、処理対象とする画像データは、RAW画像のように実質的な画像処理が施されていない画像データだけでなく、圧縮等の種々の画像処理が施された画像データであってもよい。
【0093】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0094】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0095】
24 ズームリング、25 フォーカスリング、100 撮像装置、120 交換レンズ、121 レンズマウント接点、130 カメラ本体、131 カメラマウント接点、122 レンズ群、132 撮像素子、123 レンズMPU、133 カメラMPU、134 A/D変換器、135 ASIC、136 SDRAM、137 表示制御部、138 表示部、139 システムメモリ、140 駆動部、141 操作入力部、142 センサ部、145 接続インタフェース、170 電源、160 外部メモリ、210 変更速度特定部、220 期間特定部、230 変更領域特定部、240 圧縮強度決定部、250 フィルタ部、260 圧縮部、270 符号化部、271 第1符号化部、272 第2符号化部、280 合成制御部、290 合成部、300、310、311、321 フレーム、900 フレーム、910 部分領域、920 部分領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画において撮像領域の変更速度が予め定められた基準値を超える期間である第1期間を特定する期間特定部と、
前記第1期間以外の期間である第2期間より前記第1期間に、高い圧縮強度を適用して動画を圧縮する圧縮部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
動画において画像内容に変化を与える撮像条件の変更速度が予め定められた基準値を超える期間である第1期間を特定する期間特定部と、
前記第1期間以外の期間である第2期間より前記第1期間に、高い圧縮強度を適用して動画を圧縮する圧縮部と、
を備える画像処理装置。
【請求項3】
前記期間特定部は、前記変更速度が予め定められた時間長さより長い時間にわたって前記基準値を超える期間を、前記第1期間として特定する
請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記期間特定部は、ズーム倍率の変更速度、焦点位置の変更速度、被写界深度の変更速度、撮像方向の変更速度、および撮像位置の変更速度の少なくともいずれかが前記基準値を超える期間を、前記第1期間として特定する
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記圧縮部は、前記動画を構成する複数のフレームのうち、前記第1期間に撮像されたフレームに、フレーム相関を高めるフィルタ処理を適用する
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記圧縮部は、前記第1期間および前記第2期間の境界の期間に適用する圧縮強度を漸減または漸増させることにより、前記第1期間および前記第2期間の境界における圧縮強度の差を予め定められた値以下にする
請求項1から5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記圧縮部は、
前記動画を構成する画像内の第1画像領域および第2画像領域を並行して圧縮する圧縮処理部と、
前記第1画像領域を圧縮することにより生成された第1圧縮データと、前記第2画像領域を圧縮することにより生成された第2圧縮データとを合成する合成部と、
前記合成部に前記第1圧縮データおよび前記第2圧縮データを合成させるタイミングを制御する合成制御部と、
を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
画像を撮像する撮像部と、
請求項1から7のいずれか一項に記載の画像処理装置と
を備える撮像装置。
【請求項9】
動画において撮像領域の変更速度が予め定められた基準値を超える期間である第1期間を特定するステップと、
前記第1期間以外の期間である第2期間より前記第1期間に、高い圧縮強度を適用して動画を圧縮するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項10】
動画において画像内容に変化を与える撮像条件の変更速度が予め定められた基準値を超える期間である第1期間を特定するステップと、
前記第1期間以外の期間である第2期間より前記第1期間に、高い圧縮強度を適用して動画を圧縮するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−81101(P2013−81101A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220393(P2011−220393)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】