説明

画像処理装置、画像処理方法、コンピュータプログラム

【課題】 曲がり補正が行われる主走査方向の範囲が異なる場合においても、それぞれの範囲においての、適切な補正情報を生成する。
【解決手段】 画像形成部の露光走査の主走査方向の範囲を包含する範囲に対する、前記補正情報を、前記走査線の副走査方向の曲がりの情報に基づいて生成する。そして生成された補正情報のうち、前記露光走査の主走査方向の範囲に基づいた一部の補正情報を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
感光体をレーザビームで走査、露光して画像形成を行う画像形成装置がある。このような画像形成装置では、回転するポリゴンミラーでレーザビームを偏向して、感光体を走査することによって、画像データに基づく露光を行う。露光(露光走査)により形成された潜像を現像することで原画像を形成し、原画像を記録媒体上に転写、定着を行う。カラープリンタではこれをYMCK各色で行い、各色の原画像を重ね合わせることで、記録媒体に4色カラー画像を形成するものが知られている。
このような画像形成装置では、ポリゴンミラーの面倒れによる露光時の走査線(露光走査線)の曲がりに起因して、原画像が曲線状に歪んでしまう。これに対して、特許文献1では、露光走査線の曲がりを考慮して画像データを補正(曲がり補正)することにより、形成される原画像の歪みを相殺する。これらの曲がり補正は、露光走査によって潜像が形成される主走査方向の範囲(主走査幅の範囲とも呼ぶ)に対して、露光走査線の曲がりを近似的に表す補正情報を用いて行われる。
特許文献1に開示される曲がり補正には、画像データを副走査方向にずらすことで画像データの重心を画素単位でずらす乗り換え処理と、画像データの画素値を主走査方向の位置に従って変更して画像データの重心を画素単位未満でずらすスムージング処理がある。乗り換え処理を行うと、乗り換え処理が行われた画素位置(乗り換えポイント)の主走査方向前後に段差ができる。スムージング処理は、補正情報を用いることで乗り換えポイントを判定し、段差を平滑化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−034865
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリンタエンジン(プリンタ部、画像形成部とも呼ぶ)は機種によって、A3サイズまでの用紙に対応するもの、A4サイズまでの用紙に対応するものなど、露光走査によって潜像が形成される主走査方向の最大幅(主走査幅)が異なる。従来、補正情報は、この補正情報を生成するソフトモジュール(補正情報生成ロジック)によってプリンタエンジンの主走査幅分だけ生成され、生成された補正情報が曲がり補正に用いられるように設定されていた。
曲がり補正のうちスムージング処理は、設定された補正情報から乗り換えポイントの有無を判定して段差の平滑化を行うことで、画素単位未満で画像データの重心をずらす処理である。そのため、プリンタエンジンの主走査幅の端部付近に乗り換えポイントがあるか否かによって、曲がり補正による補正結果が異なってしまう。つまり、露光走査線の曲がりをスムージング処理によって相殺すべき主走査幅の端部付近において、設定された補正情報が、乗り換えポイントがないことを示す場合、スムージング処理が行われず、適切な曲がり補正が行われない。
このように、生成される補正情報がプリンタエンジンの主走査幅の範囲よりも広い範囲に対する補正情報を含まない場合、プリンタエンジンの主走査幅の端部付近において十分に露光走査線の曲がりを補正することができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の画像処理装置は、画像形成部が行う露光走査による走査線の副走査方向の曲がりを相殺するように、補正情報を用いて画像を副走査方向にずらして補正する画像処理装置であって、前記露光走査の主走査方向の範囲を包含する範囲に対する、前記補正情報を、前記走査線の副走査方向の曲がりの情報に基づいて生成する生成手段と、前記生成手段で生成された補正情報のうち、前記露光走査の主走査方向の範囲よりも主走査方向に広い範囲に対する補正情報を用いて、前記露光走査の主走査方向の範囲における画像の補正を行う補正手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、露光走査の主走査方向の範囲を包含する範囲に対する補正情報を生成し、露光走査の主走査方向の範囲に基づいて、そのうちの一部を用いることによって、曲がり補正を適切に行う画像処理装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明における画像処理装置として用いられるMFP100のシステムブロック図。
【図2】本発明の実施例1における曲がり補正処理を行うモジュールの一例を説明する図。
【図3】メモリ走査手段221について説明する図。
【図4】生成手段202の処理内容の一例を示す図。
【図5】スムージング処理手段222について説明する図。
【図6】実施例2における曲がり補正処理を行うモジュールの一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0009】
(実施例1)
[画像処理装置]
図1は、本実施例における画像処理装置として用いられるMFP(Multi Function Peripherial)100のシステムブロック図である。MFP100は、制御部110、スキャナ部130、プリンタ部140(画像形成部に相当する)、操作部150を有する。スキャナ部130は、原稿画像を読み取り、読み取った画像データを制御部110へ送信する。プリンタ部140は、制御部110から受信した画像データに基づいて画像形成処理を行う。本実施例における画像形成処理は電子写真方式を用いて行われるものであり、帯電された感光体(不図示)をレーザ(露光手段)によって露光走査して潜像を形成し、現像手段によって現像された潜像を記録媒体(記録紙などのシート)に転写、定着する処理である。プリンタ部140は画像形成手段として機能する。なお、以下の説明において、レーザによって行われる露光走査の走査線を露光走査線と呼ぶ。なお、本実施例はMFPに限定されるものではなく、プリンタ機能のみを有するプリンタに適用されても良い。また、この露光走査線による主走査方向の最大の露光範囲は、画像形成手段によって行える画像形成の範囲の最大幅(画像形成可能範囲と呼ぶことがある)に相当する。
【0010】
制御部110は、画像入力デバイスであるスキャナ部130や画像出力デバイスであるプリンタ部140と接続されており、画像情報の入出力を制御する。また、一方で、制御部110はLANやPSTN(公衆回線)などのネットワークを経由して不図示のホストコンピュータに接続されることが可能で、ホストコンピュータとの間の動画データまたは静止画データを含む画像情報や、デバイス情報などの入出力を制御する。
【0011】
制御部110は、CPU111から画像変換処理部124までの各処理部を有している。CPU111は、MFP100の動作全体を制御するものであり、RAM112に格納されたプログラムに基づいて動作する。RAM112はまた、画像データを一時的に記憶するための画像メモリでもある。ROM113はブートROMであり、システムのブートプログラムが格納されている。HDD(ハードディスクドライブ)114は、システムソフトウェア、画像データ、MFP100の動作を制御するためのプログラム等が格納されている。HDD114の格納するプログラムは、図2、図6のモジュールおよびフローチャートの処理を実現するためのコンピュータプログラムであって、CPU111によって実行されるプログラムを含む。HDD114に格納されたプログラムがRAM112にロードされ、CPU111はこれに基づいてMFP100の動作を制御する。
【0012】
操作部I/F115は、操作部150と制御部110を接続するインタフェースであり、操作部150に表示するための画像データを操作部150に出力する。また、操作部I/F115は、操作部150からユーザが入力した情報をCPU111に伝達する。LAN I/F116およびModem117はLANおよびPSTN(公衆回線)に接続されて、画像データおよび各種情報の入出力を司る。
【0013】
メモリ118は、HDD114と同様に静止画データやその他のデータを記憶する。
【0014】
ImageBus I/F119は、ImageBusを介して画像データの高速な入出力を制御するためのインタフェースである。
【0015】
Rip(ラスターイメージプロセッサ)部120は、LANおよびLAN I/F116を介して、ホストコンピュータ(不図示)から受信したPDL(ページ記述言語)をビットマップイメージに展開する。
【0016】
デバイスI/F121は、画像入出力デバイスであるスキャナ部130やプリンタ部140と制御部110とを接続し、画像データの同期系/非同期系の変換を行う。
【0017】
スキャナ画像処理部122は、スキャナ部130において原稿から読み取られた画像データに対して画像補正を行う。
【0018】
プリンタ画像処理部123は、プリンタ部140へ出力される画像データに対して画像補正を行う。具体的には、HDD114もしくはメモリ118に記憶された2値または多値の画像を、YMCK各色のハーフトーン処理した画像に変換した上で、それぞれの画像をビデオ信号に変換してプリンタ部140へ転送する。本発明における、曲がり補正のための画像補正も、プリンタ画像処理部123で行われる。画像変換処理部124は、HDD114もしくはメモリ118に記憶された画像データに対して画像変換を行う。具体的には、画像に対して回転処理、解像度変換処理などの処理を行う。また、画像変換処理部124は、2値画像を多値画像に変換したり、逆に多値画像を2値画像に変換したりする処理も行う。
【0019】
[曲がり補正処理]
図2は、本発明における曲がり補正処理を行うモジュールの一例を説明したものである。
【0020】
図2(a)は、HDD114に格納された図2(b)のフローチャートの処理を実行するためのプログラムがRAM112に展開され、CPU111によって実行されることで実現される、曲がり補正モジュール200を模式的に示したものである。曲がり補正モジュール200は、図2(a)に示される各手段を有する。
【0021】
図2(b)は、曲がり補正モジュール200が行う処理を表したフロー図である。
【0022】
ステップS211にて、曲がり情報取得手段201は、プリンタ部140の曲がり情報保持手段231の有する、露光走査線の曲がりの程度を示すレーザ曲がり情報を、曲がり情報通知手段232から取得する。本実施例では、レーザ曲がり情報の一例として、主走査方向の複数の位置それぞれにおける、基準位置からの露光走査線の副走査方向のずれ量(図4(a)参照)が説明される。
【0023】
ステップS212にて、生成手段202は、ステップS211にて取得されたレーザ曲がり情報に基づき、十分大きな主走査方向の範囲に対する補正情報(補正情報と呼ぶこともある)を生成(生成)する。なお、十分大きな主走査方向の範囲とは、プリンタ部140の行う露光走査の主走査方向の範囲を包含する主走査方向の範囲のことであり、プリンタ部140の行う露光走査の主走査方向の範囲よりも主走査方向に大きい範囲である。詳細については図4を用いて説明する。
【0024】
ステップS213にて、主走査幅情報取得手段203は、プリンタエンジンの主走査幅情報を取得する。本実施例では、エンジンの主走査幅情報は、エンジンの主走査幅の情報であって、予め主走査幅情報取得手段203が保持する情報とするが、これに限られない。つまりエンジンの主走査幅情報がプリンタ部140に保持され、主走査幅情報取得手段203がプリンタ部140から該主走査幅情報を取得(受信)するような構成であっても良い。この際プリンタ部140は、エンジンの主走査幅情報を主走査幅情報取得手段203へ通知する通知手段を有する。主走査幅情報通知手段としてエンジンの主走査幅とは、エンジンにおける主走査方向に印字可能な最大幅のことを指す。なお、主走査幅情報取得手段203が不図示のプリンタ部140の保持手段に保持されるエンジンの主走査幅情報を、該保持手段から取得する構成であっても良い。詳細については図4を用いて説明する。
【0025】
ステップS214にて、決定手段は、ステップS213にて取得されたエンジンの主走査幅情報に基づいて、ステップS212で生成した補正情報の、主走査方向の適用範囲を決定する。この適用範囲とは、プリンタ部140に基づいて決まる、プリンタ部140が行う露光走査の主走査方向の範囲に相当する。詳細については図4を用いて説明する。
【0026】
ステップS215にて、設定手段205は、ステップS212にて生成された補正情報のうち、ステップS214にて決定された適用範囲の範囲内における補正情報を特定し、プリンタ画像処理部123に対して設定する。具体的には、設定手段205は、プリンタ画像処理部123の有する不図示の画像処理チップのレジスタに、前記適用範囲内の補正情報を記憶する。なお、レジスタに記憶される補正情報は、S212にて生成された補正情報のうちの一部である。プリンタレジスタに記憶される補正情報は、プリンタ画像処理部123のメモリ走査手段221およびスムージング処理手段222の実行する曲がり補正処理に用いられる。詳細については図3、4、5を用いて説明する。
【0027】
図2(c)は、プリンタ画像処理部123の構成の一例を示した図である。なお、図2(c)には、プリンタ画像処理部123の行う画像処理のうち、メモリ118に記憶(展開)されたハーフトーン処理後の画像に対して行われる曲がり補正処理に関する処理部が示されている。すなわちメモリ118に展開された画像データをメモリ走査手段221によって走査し、走査された画像データに対してスムージング処理手段222によってスムージング処理を行う。メモリ走査手段221およびスムージング処理手段222の行う各処理については図3、4、5を用いて後述する。
【0028】
ビデオ変換手段223は、メモリ走査手段221およびスムージング処理手段222によって曲がり補正が行われた画像データをビデオ信号へ変換する。
【0029】
そして、ビデオ出力手段224は、デバイスI/F121を介してプリンタ部140へビデオ信号を出力する。
【0030】
図2(d)はプリンタ部140の構成の一例を示したものである。プリンタ部140は、レーザ曲がり情報を記憶する曲がり情報保持手段231および該レーザ曲がり情報を曲がり補正モジュール200の曲がり情報取得手段201へ通知する曲がり情報通知手段232を有する。なお、本実施例では、プリンタ部140が曲がり情報保持手段231および曲がり情報通知手段232を有する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば曲がり情報保持手段231や曲がり情報通知手段232は必ずしもプリンタ部140になくてもよく、制御部110内のRAM112、ROM113、HDD114にあってもよいし、HDD114内に格納されたプログラムを構成する1モジュールとして実装されていてもよい。
【0031】
[乗り換え処理]
まず、プリンタ画像処理部123の有するメモリ走査手段221について図3を用いて説明する。
【0032】
図3(a)に示すメモリ画像300は、メモリ118上に展開されたハーフトーン処理後のビットマップ画像データであり、アドレス0x10000000を先頭に展開された画像データを模式的に示したものである。図中に示すX方向とY方向はそれぞれ主走査方向と副走査方向である。図3(a)に示されるメモリ画像300は、X方向に10個のセグメント、Y方向に5ライン分の画像で、主走査方向(X方向)に向かって延びる1ライン分の直線を含む画像である。
【0033】
図3(b)はメモリ走査手段221の設定の一例を模式的に示したものである。メモリ走査手段221はメモリ走査開始に先立ち、ステップS215において設定手段205によって設定された走査開始アドレスおよび走査方向を参照する。ここで走査開始アドレスはメモリ領域の中のどの場所から走査を開始するかを示す情報である。また、走査方向は、走査開始アドレスから、アドレスが大きくなる方向(+方向)に走査するのか、アドレスが小さくなる方向(−方向)に走査するのかを示す情報である。図3(b)に示した例では走査開始アドレス「0x10000000」、走査方向「+方向」が設定されている。この設定の場合、メモリ走査手段221は、走査開始アドレス0x10000000から+方向に画像データの走査を行う。
【0034】
図3(b)にて長方形で示す複数のセグメント301は、メモリ走査手段221によってアクセスされる画像データの単位を示している。なお、X方向(主走査方向)のアクセス単位は1画素単位でも複数画素単位でもよいが、本実施例では64画素単位とする。また、Y方向(副走査方向)のアクセス単位は1ライン単位とする。つまり、1セグメントは64×1画素の画像データで構成される。
【0035】
図3(b)の各セグメント内に記載した番号は、メモリ走査手段221によるアクセスの順番を示したものであり、左端のセグメント1から+方向に同一ラインを一直線にアクセスするような設定となっている。
【0036】
図3(a)に示されるメモリ画像300に対して、メモリ走査手段221が図3(b)に示した設定で1ラインごとにまっすぐに走査を行い、プリンタ部140に出力する。露光走査線に曲がりがない場合、図3(c)に示すような直線311が記録媒体(例えば記録紙などのシート)に出力されることになる。しかしながら、プリンタ部140のポリゴンミラーの面倒れに起因する露光走査線の曲がりによって、直線311は例えば図3(d)に示すような曲線312として出力されてしまう。以下、曲線312のように露光走査線が曲がっているレーザによっても、最終的に直線311のような出力が得られるよう、露光走査線の曲がりを相殺する曲がり補正方法について記載する。
【0037】
図3(e)は、ステップS215にて設定手段205がプリンタ画像処理部123に対して設定した補正情報の走査設定の一例を示したものである。なお、曲線313は、曲がりを有する露光走査線を示すものであり、この露光走査線に従って直線のメモリ画像300を出力したものが、図3(d)に示した曲線312である。図3(e)は、図3(b)で示したメモリ走査手段221の開始アドレスおよび走査方向の走査設定に、乗り換えポイントの走査設定が加わった走査設定を示したものである。具体的には、重ねて図示した露光走査線を示す曲線312に沿うように走査されるように、メモリ走査手段221の走査設定を、あるセグメントからY方向(副走査方向)の+方向もしくは−方向に1ラインずつずらして走査するようにしたものである。すなわち、先頭セグメント321からメモリ画像の走査を開始し、セグメント322およびセグメント323のX方向(主走査方向)の位置で走査するセグメントの位置を副走査方向に1ラインずらして走査する。このように、走査されるセグメントの副走査方向の位置(副走査位置)を1ラインずらすことを、本実施例では「乗り換え」と呼び、セグメント322やセグメント323のように乗り換えが行われる主走査方向の位置(主走査位置)を「乗り換えポイント」と称する。また、このように乗り換えを行う処理を「乗り換え処理」と称する。図3(e)のような乗り換え処理の設定値の生成方法については、図4を用いて後述する。
【0038】
図3(f)は、図3(e)で示したメモリ走査手段221の走査設定で、メモリ画像300の第1ライン(アドレス0x10000000から走査が開始される主走査方向のライン)が走査される際の走査位置を模式的に示したものである。
【0039】
図中に示すように、セグメントを1番から順番に走査していくと、2番目であるセグメント331で示したような、メモリ画像300の画像データが存在しないセグメントを走査する場合がある。このような画像データの存在しないセグメントの走査時は、走査対象となっているセグメントに任意のデータ値を設定することができる。本実施例では、空白を表すデータが設定されているものとする。セグメント331と同様に、図中の斜線で塗りつぶしたセグメントは、空白を表すデータを転送しているものとする。
【0040】
図3(g)は、メモリ走査手段221が図3(e)のようにメモリ画像300全体を走査し、スムージング処理手段222によるスムージング処理を行わずにプリンタ画像処理部123から出力した画像データを模式的に示した図である。
【0041】
図3(g)は、図3(e)に示したメモリ走査手段221の走査設定に対して、副走査方向に関して逆方向に曲げて補正した画像データとなっている。
【0042】
ここでプリンタ画像処理部123は斜線で示した空白データを含めてプリンタ画像処理を行い、デバイスI/F121を通してプリンタ部140に出力することを考える。図3(h)は、図3(g)に示した画像データがプリンタ部140から出力され、レーザによって描画されたものを模式的に表した図である。図3(g)に示したように、逆方向に曲げて補正された画像データが露光走査のレーザの曲がりの影響を受けて出力されることによって、結果的に図3(d)の曲線312の曲がりを相殺した画像が描画される。
【0043】
以上のような乗り換え処理によって、露光走査線の曲がりを打ち消すような画像処理を行うことができる。
【0044】
[スムージング処理]
次にスムージング処理手段222の行うスムージング処理について、図5(a)、(b)を用いて説明する。
【0045】
図3(h)に示すように、乗り換え処理を行う場合はその乗り換えポイントが段差(乗り換え段差)として比較的容易に視認できてしまう。そこで、この乗り換えポイントに対してスムージング処理手段222によってスムージング処理を行い、乗り換えポイントを視認しにくくする。本実施例のスムージング処理は、プリンタ画像処理部123に設定された補正情報に基づいて判定される、乗り換えポイントにおいて行われる。本実施例の図5(a)、(b)に示される画像データにおいて、補正情報はセグメント505、513の主走査位置が乗り換えポイントであるという情報を含んでいることとする。
【0046】
2ラインの画像データにスムージング処理を行う場合、スムージング処理手段222は、セグメント505の位置に乗り換えポイントがあると判定する。そしてスムージング処理手段222は、乗り換えポイントの近傍(例えば図5(a)に示された範囲)において、副走査方向に隣接する2ライン間で画像データを再配分することで、乗り換え段差を滑らかにする。画像データの再配分処理とは、乗り換えポイントの近傍において、画像データの副走査方向の重心を、主走査位置に沿って徐々にずらしていくように、画像データのデータ値を分配する処理である。
【0047】
図5(a)は、メモリ上に展開された直線の画像をメモリ走査手段221で走査して、スムージング処理手段222に入力された画像データを模式的に示した図である。例えばこれをセグメント501からセグメント508、およびセグメント509からセグメント516の範囲にわたってスムージング処理を行うと、図5(b)に示すような、乗り換え段差が滑らかにされた画像データがスムージング処理手段222から出力される。なお、スムージング処理手段222から出力される画像データは、生成手段202で生成された補正情報を用いることでシミュレートできる。本実施例ではシミュレートされた画像データを、スムージング画像と呼ぶ。図5(b)に示した曲線521は、スムージング画像の一例であり、スムージング曲線と呼ぶことにする。
【0048】
スムージング処理を行う前は、上のラインにおいてはセグメント501の1画素目(左端)からセグメント504の64画素目(右端)までは濃度値(画素値)0、セグメント505の1画素目からセグメント508の64画素目までは濃度値15であるとする。また、下のラインにおいてはセグメント509の1画素目(左端)からセグメント504の64画素目(右端)までは濃度値15、セグメント513の1画素目からセグメント516の64画素目までは濃度値0であるとする。なお、1画素の画像データは0〜15の範囲の濃度値を持つとする。
【0049】
このような上のラインと下のラインとの間で画像データの再分配処理を行う。すなわち、乗り換えポイントの左側のセグメント501〜504の画像データは主走査位置に応じて決まる比率で下のラインのセグメント509〜512の画像データの濃度値が分配される。また、乗り換えポイントの右側のセグメント505〜508の画像データは主走査位置に応じて決まる比率で下のラインのセグメント509〜512の画像データに濃度値を分配する。この結果、上のラインにおいてはセグメント501の1画素目からセグメント508の64画素目までの計512画素について、濃度が0から15まで徐々に増加するような分配が行われる。例えば、セグメント501については、1画素目から32画素目までを濃度0、33画素目から64画素目までを濃度1とする分配が行われ、セグメント502の1画素目から32画素目までは濃度2、33画素目から64画素目までは濃度1となるような分配が行われる。下のラインにおいても同様に、濃度が15から0まで徐々に減少するような分配が行われる。
【0050】
以上のようなスムージング処理によって、乗り換え段差を視認しにくくし、より自然な曲がり補正処理が実現できる。
【0051】
[曲がり補正モジュール]
上記の乗り換え処理およびスムージング処理には、S215にて設定される補正情報が用いられる。この補正情報の設定を行う曲がり補正モジュール200の実行する処理について図4を用いて説明する。
【0052】
図4(a)は、曲がり情報取得手段201で取得したレーザ曲がり情報をもとに、露光走査線の曲がりを近似した近似曲線(以降、単に近似曲線を呼ぶ)を生成する過程の一例を示したものである。図4(b)、図4(c)は、図4(a)で示した近似曲線に対して、異なる主走査幅(図4(b)の幅410、図4(c)の幅420)をもつエンジンでの補正情報の生成結果を模式的に示した図である。また、図4(d)は、本発明における、図4(b)、(c)に示される主走査幅よりも大きな主走査幅(図4(d)の幅430)をもつ仮想的なエンジンに対する、補正情報の生成結果を模式的に示した図である。図4(a)から(d)のいずれも副走査方向に延びるY軸402を共有しており、またY軸402の主走査方向の位置を示すX座標403から等距離にあるX座標407、408も共有しているものとする。
【0053】
図4(a)において、X軸401は主走査方向を表すものであって、理想の露光走査線を表すものである。また、Y軸402はエンジン中央の位置を通る、X軸401と直交する副走査方向を表すものである。点403はX軸401とY軸402との交点(原点)を表す。プリンタ部140の曲がり情報保持手段231には、理想の露光走査線であるX軸401に対する実際の露光走査線の、X座標407、403、408におけるY座標404、405、406の値(すなわち露光走査線の副走査方向のずれ量)が保持されている。曲がり補正モジュール200の曲がり情報取得手段201は、これらのX座標407、403、408およびY座標404、405、406の値を取得する(図2(b)のステップS211)。
【0054】
生成手段202はこれらの3点のX座標407、403、408およびY座標404、405、406の値を取得し、これらの情報より、実際の露光走査線の曲がりを近似した近似曲線409を生成する。この生成される近似曲線は例えば2次曲線y=ax+bx+cなどである。
【0055】
図4(b)、(c)、(d)では、生成した近似曲線409をもとに、生成手段202が、幅の広さが異なるエンジンの主走査幅において、近似曲線409に沿った補正情報を生成した結果を示す。なお、補正情報は、曲がり補正(乗り換え処理およびスムージング処理)を行う際に用いられる値であれば形式は問わない。例えば、乗り換えポイントの主走査方向の位置とライン単位での副走査方向のずれ量を示す値であっても良い。なお、図4(b)に示されるエンジンの幅410を有するエンジンをエンジンAとし、図4(c)に示されるエンジンの主走査幅420を有するエンジンをエンジンBとし、図4(d)に示されるエンジンの主走査幅430を有するエンジンを仮想エンジンとする。ただし、仮想エンジンは、実体を持った実際のプリンタエンジン(以降、エンジンと称する)ではなく、ソフトウェアのプログラム上にシミュレートされる仮想的なエンジンである。以下でエンジンの主走査幅が異なることを、エンジンの機種が異なると呼ぶ。
【0056】
図4(b)、(c)、(d)を用いて、異なるエンジンに対する補正情報(例えばステップS215にて設定される乗り換えポイントの設定)について説明する。
【0057】
例えば、図4(b)に示すエンジン(エンジンAとする)での主走査幅が幅410である場合、エンジンAに適した補正情報は、図4(b)に示すセグメント1からセグメント14までの補正情報412である。主走査端部411は、エンジンAにおける補正情報の主走査端部を表す。具体的には、図4(b)ではセグメント1の主走査方向の先端側、およびセグメント14の主走査方向の後端側が、エンジンAにおける補正情報412の主走査端部となる。なお、本実施例では、幅410はエンジンAの主走査幅と等しい。しかし、エンジンAの主走査幅に対して曲がり補正を行えるため、幅410はエンジンAの主走査幅以上であっても良い。
【0058】
次に、図4(a)に示した近似曲線409に対する、エンジンAとは異なる幅420をもつエンジン(エンジンB)における補正情報422を図4(c)に示す。本実施例では、幅420をエンジンBの主走査幅と等しいものとする。このエンジンBに適した補正情報は、図4(c)に示すセグメント1からセグメント6までの補正情報422である。このとき、セグメント1の主走査方向の先端側、およびセグメント6の主走査方向の後端側が、エンジンBにおける補正情報の主走査端部421となる。
【0059】
このように異なるエンジンAおよびエンジンBに適した補正情報の範囲は異なるため、補正情報生成ロジックをエンジンの機種ごとに設計する場合、それぞれに適した構成のソフトウェアモジュールを実装する必要があり、開発コストが上昇する。そこで、本実施例の補正情報生成ロジックでは、図4(d)に示すように、ステップS211で取得されたレーザ曲がり情報に基づき、幅430を主走査幅としてもつ仮想的なエンジン(エンジンC)の補正情報432が生成される(ステップS212)。つまり、生成手段202は、レーザ曲がり情報に基づき、エンジンAおよびエンジンBのもつ主走査幅の範囲(幅410および幅420)を包含する範囲(幅430)に対する補正情報432を生成する。なお、ここでいうところの、範囲1を包含する範囲2とは、範囲1よりも広い範囲2のことである。
【0060】
補正情報432は、具体的には図中のセグメント1からセグメントNまでのそれぞれのセグメントの補正情報である。その上で、ステップS213にて取得されたエンジン主走査幅情報に基づき、決定手段204によって、エンジンCの主走査幅430の範囲内において補正情報適用範囲433(幅433)を決定することで、エンジンの補正情報を取得する(ステップS214)。
【0061】
例えば、エンジンBの補正情報を取得する場合について説明する。決定手段204は、主走査幅情報取得手段203を介して、図4(c)に示したエンジンBの主走査幅情報(幅420に相当)を受信する。そして、決定手段204は、受信したエンジンBの主走査幅情報に基づく範囲を補正情報適用範囲433として、補正情報適用範囲433における補正情報432を、補正情報434として取得する。すなわち、決定手段204は、補正情報432のうち、エンジンBの主走査幅の範囲に対応する範囲における補正情報を、補正情報434として取得する取得手段としても機能する。具体的にはセグメントnからセグメントn+5の補正情報432が補正情報434として取得される。そしてエンジンBの補正情報として、この補正情報434が設定手段205によってプリンタ画像処理部123に設定される(ステップS215)。このようにして設定された補正情報434を用いることで、エンジンBを有するMFP100のプリンタ画像処理部123は、エンジンBの主走査幅の範囲において適切な曲がり補正を実行することができる。
【0062】
このように曲がり補正モジュール200は、エンジンBに適した補正情報を、エンジンBを有するプリンタ画像処理部123に設定する。そして、プリンタ画像処理部123は、設定された補正情報に基づいて、エンジンBに適した乗り換え処理やスムージング処理を画像に対して実行する。
【0063】
エンジンAを有するMFP100のプリンタ画像処理部123に対しても、同様の方法で補正情報を設定することが可能であることは明らかである。この場合も、プリンタ画像処理部123は、設定された補正情報に基づいて、エンジンAに適した乗り換え処理やスムージング処理を画像に対して実行することができる。
【0064】
以上説明した通り、本実施例の補正情報生成ロジックを有する画像処理装置は、エンジンの機種が異なるなどの理由によって、異なる主走査幅をもつエンジンを有するMFP100のプリンタ画像処理部123に対しても、適切な補正情報が設定できる。つまり、本実施例の補正情報生成ロジックは、異なるエンジン機種を有するMFPに対しても適用でき、これまでエンジン機種ごとに設計・構成されていた補正情報生成ロジックを、エンジン機種によらず共通化することができる。その結果、開発コストを下げることができる。
【0065】
(実施例2)
本実施例は、曲がり補正の行われる主走査方向の範囲内だけではなく、範囲外で生じている露光走査線の曲がりを考慮したスムージング処理について説明する。なお、特に説明がない場合、本実施例の画像処理装置の構成は、実施例1のものと同様とする。
【0066】
従来、曲がり補正の行われる主走査方向の範囲(補正範囲)はエンジンの主走査幅と等しく、スムージング処理を含む曲がり補正は、エンジンの主走査幅と等しい範囲における補正情報を用いて行われていた。この場合のスムージング処理では、エンジンの主走査幅と等しい範囲における補正情報を用いるために、スムージング処理が施される主走査方向の範囲の端部において、スムージング処理のための補正値の近似誤差が発生することがあった。
【0067】
具体的には、従来の補正情報生成ロジックは、補正範囲内において、補正情報を生成する。すなわち、補正情報生成ロジックは、補正範囲の端部(図5(c)の端部531)で補正情報の生成を打ち切り、生成した補正情報をプリンタ画像処理部123に設定する。プリンタ画像処理部123は設定された補正情報に基づいてスムージング処理を行う。言い換えれば、プリンタ画像処理部123はスムージング処理において、エンジンの主走査幅の範囲よりも外側(図5(c)で言うところの端部531よりも右側)における補正情報を考慮しない。
【0068】
図5(c)のセグメント505、513の主走査位置が乗り換えポイントであって、端部531で補正情報の生成が打ち切られている場合、生成された補正情報は、セグメント505、513の主走査位置が乗り換えポイントであることを示す情報を含まない。つまり、補正情報は、セグメント501〜504、509〜512の範囲には乗り換えポイントがないことを示す。その結果、スムージング処理において露光走査線の曲がりを近似した近似曲線(以下、近似曲線と称する)と実際の露光走査線の曲がりとに差(近似誤差)が発生してしまう(図5(d)参照)。そして発生した近似誤差は、画像の中心方向に波及することがあり、結果的に画像全体の画質改善の妨げとなることがあった。
【0069】
実施例1で説明した方法によれば、異なる主走査幅をもつエンジンを有するMFP100のプリンタ画像処理部123に対しても、適切な補正情報が設定できる。本実施例では、実施例1の方法を拡張した方法を説明する。本実施例の方法によれば、実施例1の効果に加え、エンジンの主走査幅の範囲外での露光走査線の曲がりを考慮したスムージング処理を可能にする、補正情報を求めることができる。
【0070】
[補正情報の適用範囲に基づく近似誤差]
以下、図5を用いて、本実施例について詳述する。
【0071】
実施例1において説明された図5(a)は、乗り換え処理後の、スムージング処理手段222に入力される画像データを模式的に示した図である。図5(b)は、実施例1で説明したように、図5(a)に示した画像データに対して、セグメント501からセグメント508、およびセグメント509からセグメント516の範囲にわたってスムージング処理を行ったものである。図5(a)、(b)にて説明されるスムージング処理は、実施例1で説明したような、エンジンAの主走査幅に基づいて設定された補正情報を用いて行われる処理であり、例えば、図4(b)を用いて説明するところの、セグメント7〜セグメント14の範囲に対して行われる処理である。
【0072】
図5(c)は、エンジンの主走査幅が図5(a)でのエンジンの主走査幅よりも狭い場合の画像データを模式的に示した図である。この画像データは直線532のデータを含む。ここでセグメント504およびセグメント512の位置がエンジンの主走査幅の範囲の端部(主走査端部531)となる場合を考える。例えば、図5(c)における主走査端部531は、例えば図4(c)でのエンジンBの右側の主走査端部421に相当する場合を考える。この場合、主走査端部531に基づく範囲の補正情報がプリンタ画像処理部123に設定される。言い換えると、プリンタ画像処理部123には、主走査端部531までの範囲よりも外側の補正情報は設定されないことになる。本実施例における、主走査端部531に基づく範囲の補正情報は、セグメント501〜504、509〜512の範囲に乗り換えポイントがないことを示す。
【0073】
この場合において、スムージング処理手段222は、設定された補正情報を用いて、セグメント501〜504およびセグメント509〜512の範囲に対して処理を行う。すると、設定された補正情報はセグメント501〜504、509〜512の範囲には乗り換えポイントがないことを示すため、スムージング処理手段222は、この範囲には乗り換え段差が生じないと判定し、スムージング処理を行わない。その結果、スムージング処理手段222から出力される画像データは、直線532を含む画像データとなる。なお、補正情報からシミュレートされる直線532の画像データを説明の便宜上、スムージング曲線532と呼ぶ。
【0074】
ここで、スムージング曲線521(図5(b)参照)およびスムージング曲線532の重心位置を図5(d)に模式的に示すと、スムージング曲線521の重心位置は重心曲線541、スムージング曲線532の重心位置は重心曲線542で表される。主走査端部531の位置における、重心曲線541と重心曲線542との誤差は約1/2画素であり、600dpi換算では約21マイクロメートルとなる。すなわち、主走査端部531で補正情報のプリンタ画像処理部123への設定が打ち切られてしまうことで、スムージング曲線521に対して約21マイクロメートルの近似誤差をもつスムージング曲線532が出力されることになる。この結果、1つの色版(例えばシアン版)の画像において約21マイクロメートルの近似誤差が発生してしまうことになる。そのせいで、例えば異なる2色(例えばシアン版およびマゼンタ版)間でそれぞれ約21マイクロメートルの近似誤差をもつスムージング曲線が出力される場合、2色間の色ずれは約42マイクロメートルとなってしまうことがある。すなわち、明らかに視認できる色ずれが生じてしまい、画質劣化が発生することがある。さらに、この近似誤差によるずれは、画像の主走査方向の中央方向に向かって波及するため、主走査端部のみならず、画像全体の画質に影響を及ぼし、色ずれが画像全体で生じてしまう可能性がある。
【0075】
そこで、本実施例の画像処理装置は実施例1の決定手段204に変えて決定手段604を曲がり補正モジュール200に備える(図6(a))。この決定手段604は、補正情報に基づくスムージング画像をシミュレートすることによって、補正情報を設定すべき範囲(設定範囲)を決定する。以下で決定手段604の処理(図6のS614a、S614b)について説明する。
【0076】
[補正情報適用範囲の設定]
本実施例の決定手段604は、まず、図5(e)に示すように主走査幅情報取得手段203で取得したエンジン主走査幅の端部が主走査端部531だった場合、主走査端部531に基づいて規定される範囲を、補正情報適用範囲(図4(d)の例での補正情報適用範囲433)として設定する(S614a)。そして主走査端部531の主走査方向の位置よりも主走査方向の後端部(図5(e)の例では右側)に乗り換えポイントがあるかどうかを判定する。乗り換えポイントがある場合、決定手段604は、該乗り換えポイントを端部552とする。乗り換えポイントがない場合は、決定手段604は、仮想エンジン(図4(d)参照)の主走査幅の端部の位置(図4(d)の例での主走査端部431)を端部552とする(S614a)。なお上記では、主走査方向の後端部についての端部位置を広げる処理について説明したが、先端部側についても同様に主走査端部531、端部552があり、決定手段604は同様に端部の位置を設定する。なお、主走査端部531に基づいて規定される範囲とは、両端に設定される主走査端部531の間の主走査方向の範囲のことを指す。端部552に基づいて規定される範囲についても同様である。
【0077】
次に決定手段604は、設定された補正情報適用範囲(図4(d)の例での補正情報適用範囲433)に対応する補正情報が、プリンタ画像処理部123に設定される設定値として妥当かどうかを判定する。言い換えると、決定手段604は、補正情報適用範囲の妥当性を判定する(S614b)。この判定処理において、決定手段604は、補正情報適用範囲に基づいてスムージング曲線532をシミュレートする。
【0078】
具体的には図5(d)に示すように、主走査端部531における、重心曲線541と重心曲線542のY座標の差の値を、決定手段604は生成する。決定手段604はさらに、その近似誤差が妥当かどうかを判定するための閾値を保持しており、近似誤差と閾値とを比較することで、補正情報の妥当性を判定する。なお、近似誤差が閾値以下である場合に補正情報は妥当であると判定される。妥当でないと判定された場合には、決定手段604は、所定の範囲分(例えば4セグメント分)だけ補正情報適用範囲を広げる(S614a)。決定手段604は、広げた補正情報適用範囲における補正情報を用いてスムージング曲線532を再びシミュレート(再シミュレート)する(S614b)。そして決定手段604は、主走査端部531の位置における、再シミュレートされたスムージング曲線のスムージング曲線553に対する近似誤差を、前述のように生成し、補正情報適用範囲の妥当性を判定する(S614b)。これを繰り返し、決定手段604は、近似誤差が閾値以下であると判定されるような補正情報適用範囲を決定する。そして、決定された補正情報適用範囲における仮想エンジンの補正情報が、設定手段205によってプリンタ画像処理部123に設定される。補正情報が設定された後の処理は実施例1と同様である。
【0079】
[曲がり補正モジュール]
図6は、本発明における曲がり補正処理を行うモジュールの一例を説明したものである。
【0080】
図6(a)は、HDD114に格納された図6(b)の一連の処理フローを実現するためのプログラムがCPU111によってRAM112に展開されて実行されることで実現される、曲がり補正モジュール600の処理ブロックを模式的に示したものである。なお、図6(a)の各処理部の番号が図2(a)の各処理部の番号と同一の処理部については、図2(a)の各処理部と同様の構成である。
【0081】
図6(b)は曲がり補正モジュール600が行う処理を表したフロー図である。なお、図6(b)のステップ番号が図2(b)のステップ番号と同一の処理ステップについては、図2(b)で行われる処理ステップと同様の処理を行うため、処理の詳細についての説明は省略する。図6(a)、(b)について説明する。
【0082】
ステップS211において、曲がり情報取得手段201は、レーザ曲がり情報を取得する。
【0083】
ステップS212において、生成手段202は、S211で取得されたレーザ曲がり情報に基づき、仮想エンジンに対する補正情報を生成する。
【0084】
ステップS213において、主走査幅情報取得手段203は、エンジンの主走査幅情報を取得する。
【0085】
ステップS614aにおいて、決定手段604は、図5(e)を用いて前述したように、補正情報適用範囲を設定する。
【0086】
ステップS614bにおいて、決定手段604は、ステップS614aで設定された補正情報適用範囲の妥当性を判定する。判定方法の詳細は図5(e)を用いて前述したとおりである。
【0087】
判定の結果妥当であれば(ステップS614bでYES)、ステップS215において、設定手段205は、補正情報をプリンタ画像処理部123に対して設定する。判定の結果妥当でなければ(ステップS614bでNO)、ステップS614aにおいて補正情報適用範囲を広げる方向に変更する。補正情報適用範囲の変更方法は前述したとおりである。
【0088】
補正情報が設定された後の処理は、実施例1と同様であり、設定された補正情報に基づいて画像データの補正(乗り換え処理およびスムージング処理)をプリンタ画像処理部123が行って、プリンタ部140に出力する。
【0089】
なお、図6を用いて説明した本実施例の処理フローによれば、ステップS614a、S614bを繰り返すことによって、補正情報適用範囲を決定するようにしている。しかし、ステップS212で生成された、十分に大きな主走査幅を有する仮想エンジンCに対する補正情報を、ステップS614a、S615bを行わずに、ステップS215においてプリンタ画像処理部123に設定するようにしても良い。または、ステップS614aにおいて設定した端部552で規定される範囲に対する補正情報を、S615bの判定を行わずにステップS215において設定しても良い。
【0090】
以上説明した通り、本実施例によれば、補正情報を適用する範囲(補正情報適用範囲)を調整することができる。そのことにより、主走査端部における近似誤差および画像中央方向に波及する近似誤差を低減させることができ、画質を向上させることができる。
【0091】
(実施例3)
上記実施例において、曲がり補正モジュール200、600は、MFP100のCPU111がプログラムを実行することで実現されていたが、本発明はこれに限られない。すなわち、曲がり補正モジュール200、600を、MFP100とLANなどのネットワークを経由して接続されるホストコンピュータ(不図示)上に実現するようにしても良い。この場合、ホストコンピュータは、ホストコンピュータの有するHDD、RAM、ROMを用いて、曲がり補正モジュール200を実現するためのプログラムをホストコンピュータの有するCPUが実行する。また、このようなホストコンピュータにおいて曲がり補正処理(図2(b)、図6(b)参照)を行うシステムでは、曲がり補正処理をホストコンピュータが実行する前に、上記実施例1および2のMFP100のRIP部120やプリンタ画像処理部123が行う処理と同等の処理を、ホストコンピュータが実行する。そして曲がり補正処理までが行われた画像データを、ホストコンピュータがLANなどのネットワークを経由して、MFP100へ送信する。処理済みの画像データを受信したMFP100は、プリンタ部140によって画像形成を行う。
【0092】
なお、本実施例において、レーザ曲がり情報はプリンタ部140の曲がり情報保持手段に231によって保持され、ホストコンピュータ上に実現される曲がり情報取得手段によって取得される。エンジン主走査幅情報についても同様に、ホストコンピュータ上の主走査幅情報取得手段は、プリンタ部140の不図示のエンジン主走査幅情報保持手段からエンジンの主走査幅情報を取得する。
【0093】
このように、ホストコンピュータによって曲がり補正処理を実行することで、ホストコンピュータのCPUの演算処理能力を有効に活かすことが可能となる。また、ホストコンピュータによって曲がり補正処理を行うので、このような処理機能を備えていない廉価なMFPあるいはプリンタにおいても、曲がり補正処理が行われた画像を形成することができる。
【0094】
(その他の実施例)
上記の実施例では、メモリから読み出す際に乗り換え処理による画像データの画素単位の副走査方向の補正が行われた。しかし、本発明はこれに限られず、画素単位の副走査方向の補正を、画像データのメモリからの読み出し時ではなく、メモリへの書き込み時に行うようにしても良い。
【0095】
また、上記の実施例では、スムージング処理における画像データの再配分処理は、あるラインにおける画素値を主走査方向に沿って徐々に増加あるいは減少させるように、副走査方向に隣接する2画素間で分配する処理であった。しかし本発明はこれに限られない。例えば、スムージング処理を施す範囲において画像データを主走査方向の複数区間に分割し、各区間内の画素の取り得る画素値が0か15の2値とした場合を考える。この場合、副走査方向に隣接する2ライン間で、上のラインにおける画素値15の画素の区間内割合を徐々に増やしていくようにし、下のラインにおける画素値15の画素の区間内割合を徐々に減らしていくようにすればよい。その結果、スムージング処理を施す範囲全体を通してみれば画素単位未満の副走査方向の補正ができる。したがって、本発明はレーザビームによる露光を行うか行わないかによって潜像を形成する2値プリンタに対しても適用できる。
【0096】
また、上記の実施例では、乗り換え処理後にスムージング処理を行うようにしていたが、スムージング処理後に乗り換え処理を行っても良い。
【0097】
また、上記の実施例では、レーザビームで感光体を露光することによって画像形成する電子写真方式の画像形成装置を例として説明した。しかし、本発明は、複数種類のインクなどの現像剤をプリンタヘッドから用紙などのシートに着弾させることで画像形成するインクジェットプリンタなどの画像形成装置に対しても適用できる。この場合、上記実施例において説明したレーザの曲がり情報はプリンタヘッドの組付け誤差等による現像剤の着弾位置ずれを示す情報であるなどと、適宜インクジェットプリンタの構成に合わせて読み替えれば良い。
【0098】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。その処理は、上述した実施例の機能を実現させるソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部が行う露光走査による走査線の副走査方向の曲がりを相殺するように、補正情報を用いて画像を副走査方向にずらして補正する画像処理装置であって、
前記露光走査の主走査方向の範囲を包含する範囲に対する、前記補正情報を、前記走査線の副走査方向の曲がりの情報に基づいて生成する生成手段と、
前記生成手段で生成された補正情報のうち、前記露光走査の主走査方向の範囲よりも主走査方向に広い範囲に対する補正情報を用いて、前記露光走査の主走査方向の範囲における画像の補正を行う補正手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記補正情報は、副走査方向に前記画像データを画素単位でずらす主走査位置を示す情報を含み、
前記補正手段は、
前記補正情報に含まれる乗り換えポイントを示す情報に基づいて前記画像データを副走査方向にずらすことで画像データの重心を副走査方向に画素単位で補正し、
前記補正情報に含まれる乗り換えポイントを判定して前記乗り換えポイントにおける副走査方向に隣接する2画素間の画像データを再配分することで画像データの重心を副走査方向に画素単位未満で補正することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
画像形成部が行う露光走査による走査線の副走査方向の曲がりを相殺するように、補正情報を用いて画像を副走査方向にずらして補正する画像処理方法であって、
前記露光走査の主走査方向の範囲を包含する範囲に対する、前記補正情報を、前記走査線の副走査方向の曲がりの情報に基づいて生成する生成工程と、
前記生成工程で生成された補正情報のうち、前記露光走査の主走査方向の範囲よりも主走査方向に広い範囲に対する補正情報を用いて、前記露光走査の主走査方向の範囲における画像の補正を行う補正工程と、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項5】
画像形成部が行う露光走査による走査線の副走査方向の曲がりを相殺するように、補正情報を用いて画像を副走査方向にずらして補正する画像処理装置であって、
前記露光走査の主走査方向の範囲を包含する範囲に対する、前記補正情報を、前記走査線の副走査方向の曲がりの情報に基づいて生成する生成手段と、
前記生成手段で生成された補正情報のうち、前記露光走査の主走査方向の範囲に基づいて特定される一部の補正情報を用いて、前記画像の補正を行う補正手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−106261(P2013−106261A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249858(P2011−249858)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】