説明

画像処理装置、画像処理方法、画像形成装置、プログラムおよび記録媒体

【課題】特別な機能材料や読取り装置を必要することなく、透明トナーにより不可視情報を媒体に埋め込み、埋め込んだ不可視情報を抽出する。
【解決手段】透明トナー102が厚く塗布された原稿101を斜め方向からスキャンし、透明トナー102を塗布した矩形領域のエッジ部による影103を受光装置105により検出する。エッジ部の影103を、バーコードのように配置して、不可視情報を原稿中に埋め込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書類などの媒体上に透明トナーにより不可視情報を埋め込み、埋め込まれた情報を抽出する画像処理装置、画像処理方法、画像形成装置、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
情報の埋め込み技術として種々の手法が提案されている。例えば、近赤外線吸収剤を含有したトナーにより可視できない画像を形成し、赤外線を照射して不可視画像を読み取る方式(特許文献1を参照)があるが、特殊な光源や受光素子、トナーを使用することからコストが高くなる。
【0003】
そこで、印刷面を保護したり、あるいは印刷面の特定の部分だけに光沢を与える透明トナーを使用することにより、肉眼では見えないように情報を埋め込めるので、バーコードや地紋など黒や有色のトナーで情報を埋め込む従来の手法に比べて、元の原稿の読み易さを損なうことがなく、また、蛍光剤など特殊な機能材料を必要としない。
【0004】
ところで、透明トナーの検出は、通常の光源から光を照射して透明トナーの表面における光沢に相当する正反射光を受光することにより検出する方式を採っている(例えば、特許文献2、3を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、通常の可視画像を読み取るスキャナでは、正反射光ではなく、斜め方向から照射した光の原稿面での正反射以外の乱反射の一部を受光している。従って、原稿画像中に可視画像と透明トナーで形成された不可視画像がある場合に、透明トナー表面での光沢に相当する正反射光を受光する特殊な光学系を必要とすることからコストが高くなり、また、可視画像と不可視(光沢)画像を別々にスキャン(2回の読取り)しなければならず、画像の出力(生産性)も低下する。
【0006】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、特別な機能材料や読取り装置を必要することなく、透明トナーにより不可視情報を媒体に埋め込み、埋め込んだ不可視情報を抽出する画像処理装置、画像処理方法、画像形成装置、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定媒体に不可視情報を埋め込む画像処理装置であって、透明トナーにより形成されるエッジに前記不可視情報を埋め込む手段を備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低コストで不可視情報を埋め込み、埋め込んだ情報を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の原理を説明する図である。
【図2】本発明の実施例1に係る、情報を埋め込む画像処理装置の構成を示す。
【図3】情報を埋め込む画像処理装置の処理フローチャートである。
【図4】本発明の実施例2に係る、埋め込まれた情報を抽出する画像処理装置の構成を示す。
【図5】情報を抽出する画像処理装置の処理フローチャートである。
【図6】実施例2の情報の抽出処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態について図面により詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の原理を説明する図である。図1において、101は原稿、102は透明トナーを塗布した矩形領域、103は矩形領域のエッジ部の影、104は光源、105は受光装置(ラインセンサ)、106はコンタクトガラスを示す。
【0012】
図1(a)に示すように、透明トナー102が塗布された原稿101をスキャン(光源104を主走査方向に走査し、原稿を副走査方向に移動させる)することにより、図1(b)に示すように、透明トナーを塗布した矩形領域のエッジ部による影103が受光装置105により検出される。
【0013】
図1(c)は、図1(a)の断面(副走査方向)を示す。通常スキャナの原稿読取りでは、図1(c)に示すように、斜め方向の光源104から原稿101へ光を照射し、原稿101からの正反射光以外の乱反射光の一部を受光するように受光装置105を設置している。光沢のない通常の紙の表面は凸凹しているため、照射された光は様々な方向に乱反射し、その一部を受光装置105で受光している。
【0014】
一方、透明トナー102が塗られた光沢部は、その表面が平らで、光の大部分は正反射して、正反射する先の方向から見たとき、これが光沢として認識される。ところで、図1(c)のように、透明トナー102を十分な厚み(紙厚程度)で、真っ直ぐな矩形領域に塗れば、その領域の断面は凸形状となり、かつそのエッジ部分は平らではないので、エッジ部分の反射率は、エッジ以外の部分と異なり小さくなる。そのため、エッジ部分を通過する斜めからの光によって、そのエッジ部に影103が生じ、図1(b)に示すように、影103は主走査方向のエッジ部に沿って生じ、副走査方向のエッジ部には生じない。
【0015】
これは、切り貼り原稿をコピー機で複写した際に、切り貼り部のエッジに影が生ずるのと同様の原理であり、通常の正反射光以外の乱反射光の一部を受光する受光装置で影を読取ることが可能である。図1(d)の左図は、白紙(原稿)107上に透明トナーではなく、透明シート108を載せた例を示し、図1(d)の右図は、左図の原稿107をスキャンした画像を強調した図で、透明シート108のエッジ109が影として出力されている。
【0016】
このエッジ部の影を、例えば1次元バーコードのように配置することで、情報の埋め込みが可能となる。ただしコンテンツ(画像)と影の区別は難しく、コンテンツに重畳するとこれらを分離して識別するのは困難であるため、通常の可視インクでのバーコードなどのように、背景にコンテンツのない余白部を利用する。
【0017】
図2は、本発明の実施例1に係る、情報を埋め込む画像処理装置の構成を示す。図2において、201はPC、202は電子写真方式やインクジェット記録方式の画像形成装置、203はシステムコントローラ、204はラスタライズ処理部、205は中間調画像処理部、206はプロッタ、207は印刷物、208は透明バーコードである。
【0018】
図3は、情報を埋め込む画像処理装置の処理フローチャートである。図2、3を用いて実施例1の情報の埋め込み処理を説明する。
【0019】
ユーザーは、PC201に対して、透明色によるバーコード情報(不可視情報)の埋め込み印刷を指示する(ステップ301)。すなわち、ユーザーは、PC201の表示画面上で、例えば契約書の画像を選択し、埋め込みデータが例えば契約書の契約書コードである場合には、契約書コードを表示画面上で選択し、埋め込み印刷を指示する。
【0020】
PC201は、契約書コード(埋め込みデータ)をバーコードに符号化し、契約書の画像データ中にバーコードを埋め込み処理する(ステップ302)。この符号化処理は、例えば埋め込みデータを透明バーコード画像に変換する画像ファイルを参照することにより実施される。また、透明バーコード画像の埋め込み処理では、画像データ中の固定位置(例えば、画像データが形成されない余白領域)に透明バーコード画像を埋め込む。また、透明トナーは無色であるので、透明トナーを載せる領域を黒、透明トナーを載せない領域を白とする画像で、透明バーコード画像を作成する。
【0021】
次いで、PC201は、作成された印刷データを画像形成装置202へ転送処理する(ステップ303)。印刷データは、契約書の画像データと、透明バーコードの画像データよりなる。
【0022】
印刷データが転送されると、画像形成装置202のシステムコントローラ203は、印刷データの内、契約書の画像データをCMYKデータに色変換し、透明バーコードの画像データを透明トナーのデータに変換した後、画像形成装置202のラスタライズ処理部204は、印刷データをビットマップ画像データに展開し(ステップ304)、中間調画像処理部205は、例えば256階調のビットマップ画像データを2値あるいは少値の階調値のビットマップ画像データに変換する(ステップ305)。システムコントローラ203からCMYK色版と透明色版が出力され、プロッタ206に入力される。
【0023】
プロッタ206では、透明色部分を透明トナーの厚塗りで処理し、契約書の画像データと透明バーコード208を印刷して、印刷物207を出力する(ステップ306)。
【0024】
上記したように、本実施例では、通常の黒トナーでバーコードを埋め込む代わりに、透明トナーでバーコード(不可視情報)を埋め込めばよく、バーコードのマークの形状などは通常のバーコードと同じでよい。ただし、図1で説明したように、透明バーコードをスキャン時に、エッジに影が生ずる程度(例えば、一般的なコピー紙の紙厚0.08mmと同程度)に厚く透明トナーを載せて形成する。
【0025】
また、上記した透明トナーで形成されたバーコードの左右のエッジ部のみが情報として必要であるので、バーコードの内側を除いて、バーコードの左右のエッジ部のみを形成してもよい。例えば、図1(a)の透明トナーで形成されたバーコード102の場合、図1(b)の影103に相当する、左右のエッジ部のみで形成してもよい。これによりバーコードを形成する透明トナーの量を削減できる。
【実施例2】
【0026】
図4は、本発明の実施例2に係る、埋め込まれた情報を抽出する画像処理装置の構成を示す。図4において、401は透明バーコードが埋め込まれた印刷物などの原稿、402は透明バーコード、403は図1(c)に示すスキャナ、404はシステムコントローラ、405は透明バーコードのエッジの影を検出する影検出処理部、406はバーコード再構成処理部、407はバーコード復号処理部、408はバーコード復号データ(契約者コード)、409は操作表示部である。
【0027】
図5は、情報を抽出する画像処理装置の処理フローチャートである。図4、5を用いて実施例2の情報の抽出処理を説明する。
【0028】
スキャナ403(図1(c))が原稿401をプレスキャンすることにより、影検出処理部405は、原稿401中から、所定位置にあるバーコード領域を抽出する(ステップ501、502)。この処理では、原稿401中に影が存在する領域をバーコード領域として抽出する。次いで、スキャナ403は原稿401を本スキャンし、影検出処理部405は、抽出されたバーコード領域に対して、透明トナーのバーコードのエッジ影を検出する処理を実施する(ステップ503)。
【0029】
図6は、実施例2の情報の抽出処理を説明する図である。図6(a)は、抽出されたバーコード領域601にある透明トナーのバーコード602を本スキャンする場合を示す。図6(b)は、本スキャンによって検出された影603を示す。
【0030】
影検出処理部405は、本スキャンによって検出された影603を基に、副走査方向に順に、白→黒エッジ604、黒→白エッジ605であると判定処理し、また、エッジ(604、605)間の間隔情報を作成し、エッジ影検出結果としてバーコード再構成処理部406にわたす。
【0031】
バーコード再構成処理部406は、エッジとエッジ間隔情報を基にバーコードを再構成する(ステップ504)。図6(c)に示すように、バーコード再構成処理部406では、白→黒エッジ604と黒→白エッジ605を一組として、そのエッジ間隔により、バーコード606(黒のバーコード)を再構成することにより、白黒のバーコードが再構成される。
【0032】
バーコード復号処理部407は、再構成された白黒のバーコードを公知の方式によってバーコードを復号処理し(ステップ505)、操作表示部409に、バーコード復号データである、契約書コード408を表示する。
【0033】
上記した実施例では、簡単のため1次元バーコードで説明したが、本発明はQRコードのような2次元バーコードにも適用できる。また、埋め込む情報は、上記した例に限定されず、コンテンツを不正コピー、改ざんなどの侵害から守るため、著作者の固有の識別情報(例えば、著作者名)などを埋め込めばよい。
【0034】
本発明は、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。また、本発明の実施例の機能等を実現するためのプログラムは、ネットワークを介した通信によってサーバから提供されるものでも良い。
【符号の説明】
【0035】
101 原稿
102 透明トナーを塗布した矩形領域
103 矩形領域のエッジ部の影
104 光源
105 受光装置
106 コンタクトガラス
201 PC
202 画像形成装置
203 システムコントローラ
204 ラスタライズ処理部
205 中間調画像処理部
206 プロッタ
207 印刷物
208 透明バーコード
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開2005−221892号公報
【特許文献2】特開2010−102032号公報
【特許文献3】特開2007−116541号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定媒体に不可視情報を埋め込む画像処理装置であって、透明トナーにより形成されるエッジに前記不可視情報を埋め込む手段を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記埋め込む手段は、前記エッジの位置がバーコードのエッジ位置となるように、前記不可視情報を埋め込むことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記エッジは、所定の厚さの前記透明トナーにより形成することを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記バーコードの左右のエッジのみを前記透明トナーにより形成することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記埋め込む手段は、前記所定媒体の余白部に前記不可視情報を埋め込むことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
所定媒体に埋め込まれた不可視情報を抽出する画像処理装置であって、透明トナーにより形成されたエッジに光を照射する照射手段と、前記光の照射により生ずる前記エッジの影の位置を検出する検出手段と、前記検出された前記エッジの影の位置を基に前記埋め込まれた不可視情報を抽出する情報抽出手段を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
前記情報抽出手段は、前記エッジの影の位置を、バーコードのエッジ位置として復号する復号手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記復号手段は、前記エッジの影の位置を、白から黒へ変化するエッジと、黒から白へ変化するエッジと、エッジ間の間隔の組み合わせ情報に変換する第1の変換手段と、前記組み合わせ情報を基にバーコードに再構成する再構成手段と、前記再構成されたバーコードを前記不可視情報に変換する第2の変換手段とを備えたことを特徴とする請求項7記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記照射手段は、前記エッジに対して斜め方向から光を照射することを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
【請求項10】
所定媒体に不可視情報を埋め込む画像処理方法であって、透明トナーにより形成されるエッジに前記不可視情報を埋め込む工程を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
所定媒体に埋め込まれた不可視情報を抽出する画像処理方法であって、透明トナーにより形成されたエッジに光を照射する照射工程と、前記光の照射により生ずる前記エッジの影の位置を検出する検出工程と、前記検出された前記エッジの影の位置を基に前記埋め込まれた不可視情報を抽出する情報抽出工程を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
所定媒体の所定位置に埋め込む不可視情報を生成する生成手段と、前記生成された不可視情報を基に、前記所定位置に、所定の厚さの透明トナーによりバーコードを形成する形成手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項10または11記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項10または11記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−175605(P2012−175605A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38073(P2011−38073)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】