説明

画像処理装置、画像処理方法並びに画像処理プログラム

【課題】階調曲線の調整の際に欠落した入力画素を簡易に、かつ自然に補間することができる画像処理装置、画像処理方法並びに画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】入力画素を横軸にとると、調整後の階調曲線LF´,RF´の両端が左右方向に狭まって、狭まった分だけ入力画素の欠落が生じる。そこで、調整された調整後の階調曲線LF´,RF´の端部に位置する画素まで存在する元の階調曲線LF,RFの部分を補間部分として、元の階調曲線LF,RFの補間部分と調整後の階調曲線LF´,RF´とを接合することにより、階調曲線の補間部分を補間する。このように、元の階調曲線の補間部分(欠落箇所)を利用して、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合すれば、欠落した入力画素を簡易に、かつ自然に補間することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線画像に対して画像処理を行う画像処理装置、画像処理方法並びに画像処理プログラムに係り、特に、放射線画像の入力画素値に対して階調処理を施す技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置として、現在、ディジタル画像を生成することができる医用画像診断装置が普及しており、コンピュータを利用して様々な画像処理を行うことで、ユーザに見やすい画像を提供することができる。医用画像診断装置として、例えばディジタル一般撮影装置やディジタルマンモグラフィ装置などのX線撮影装置では、画像処理の一つとして階調処理を行っている(例えば、特許文献1参照)。ここで、階調処理とは、最終的に閲覧表示する画像(すなわち閲覧画像)を適切な濃度やコントラストになるような画像に変換する処理のことである。
【0003】
階調処理では、図9に示すように、変換前の画像(入力画像)の画素値を横軸に、変換後の画像(出力画像)の画素値を縦軸にとった座標平面上に、入力画像と出力画像との画素値変換の対応を示すテーブル(Look Up Table: LUT)(特許文献1の図3、段落番号「0052」、「0069」、「0204」を参照)をプロットしたグラフを用いて階調曲線を図示化するのが一般的である(特許文献1の図6、段落番号「0067」、「0068」を参照)。この座標平面上において、階調曲線の傾きを変えることで画像のコントラストの調整を、階調曲線をシフト(平行)移動させることで濃度の調整をそれぞれ行うことができる。以降では、対象の入出力画像を14bit画像(最小画素値0,最大画素値16383(=214−1))とする。
【0004】
階調処理を行うことで撮影された画像(撮影画像)を見やすくする必要があるが、撮影画像の階調が適切でない場合、階調曲線の全ての領域の傾きを手動で調整するのは多大な時間と労力を要する。そのため、撮影毎に見やすいとされる階調曲線をそれぞれ予め用意して(特許文献1の段落番号「0069」、「0070」、「0204」を参照)、各々の曲線を用いた階調処理をそれぞれ行うことが多い。これらの階調曲線は一般にS字状(sigmoid) (「シグモイド型」とも呼ばれる)を描き、単調増加連続関数である。これらの用意された階調曲線を用いても画像が見にくい場合に、階調曲線に対して上述のような調整(傾き調整、シフト調整)を施す。
【0005】
しかし、同じ撮影部位でも被検体(患者)の骨格や体型の相違あるいは撮影部位中の注目部位の相違などによって撮影画像の特徴は互いに異なるので、階調曲線の調整が必要になることがほとんどである。調整を簡単に行うために、何かしらの調整のためのパラメータでもって階調曲線全体を変形させる手法が採られる。
【0006】
そこで、階調曲線全体の変形の手法として、曲線の回転がある(特許文献1の段落番号「0069」〜「0071」を参照)。これは、階調曲線上のある点を中心として、曲線を回転させることで画像のコントラストを調整する手法である。この回転を用いて、階調曲線を時計周りに回転させれば、図10の二点鎖線から実線に示すように傾きが小さくなってコントラストが小さくなり、階調曲線を反時計周りに回転させれば、図11の二点鎖線から実線に示すように傾きが大きくなってコントラストが大きくなる。なお、厳密には、シグモイド型である階調曲線を回転させると、一部領域において単調増加でなくなる箇所が発生する場合があるので、曲線の各領域に回転させたような傾きを持たせる。したがって、例えば入力画素のスケールを圧縮させることで、図12の二点鎖線から実線に示すように、曲線の各領域に回転させたような傾きを持たせることも可能である。
【0007】
回転によるコントラストの調整では、調整に必要なパラメータ(物理量)は、元となる階調曲線のタイプ、階調調整のための傾きを決める回転量、どの点を中心にして回転させるのかを表す回転中心の3種だけで済むので、簡単な操作でコントラストを調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−178731号公報(第9,11−13,26,33,35,49頁、図3,6,26)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記の回転によるコントラストの調整では、階調曲線を反時計周りに回転させた場合(すなわちコントラストを大きくした場合)に、図11の点線に示すように、入力画素の一部が曲線上に存在しなくなるという現象が発生する。また、圧縮により回転させた傾きを持たせてコントラストを大きくした場合にも、図12の点線に示すように、圧縮した分だけ入力画素の一部が曲線上に存在しなくなるという現象が発生する。このように、階調曲線を調整することにより両端において入力画素が欠落する。しかし、その画素値を持つ入力画素が存在する以上、その画素値に対する何らかの対応する出力画素を用意する必要がある。
【0010】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、階調曲線の調整の際に欠落した入力画素を簡易に、かつ自然に補間することができる画像処理装置、画像処理方法並びに画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、上記の問題を解決するために鋭意研究した結果、次のような知見を得た。
【0012】
すなわち、従来では、欠落した入力画素の両端における傾きを持つ直線を、階調曲線の両端から当該入力画素の両端までそれぞれ描くことで、欠落した入力画素値に対する出力画素値の補間を行っていた。具体的には、欠落した入力画素での接線を図13の太線Aのように描くことで補間を行う。なお、階調曲線の出力画素値が設定された最大画素値(ここでは14bit)を超える場合には、図13の太線Bに示すように最大画素値の14bitで打ち止めとする。
【0013】
しかしながら、この図13の方法では、階調曲線の非補間部分がシグモイド型であるのに対して、補間部分は直線となってしまう。また、補間部分は両端の傾きしか考慮されないので、全体の形状を考慮にいれない補間となってしまう。そのため、圧縮や回転後の階調曲線は全体的に不自然な形状となる。そのため、この階調曲線から得られる画像の一部の階調が不自然になる可能性が存在する。
【0014】
一方で、欠落した入力画素が不自然になるのは、圧縮や回転前である調整前の階調曲線(すなわち画像の特徴部分)を利用せずに傾きのみで補間するのが理由だと考えられる。さりとて、階調曲線を調整しないとコントラストを適切に調整することができずに、調整後のコントラストを生かすことができない。そこで、階調曲線を調整しつつ、調整により欠落した入力画素およびそれに対応する出力画素については調整前の階調曲線を利用すれば、欠落した入力画素を自然に補間することができ、かつ調整前の階調曲線を利用するので、欠落した入力画素を簡易に補間することができるという知見を得た。ひいては、欠落箇所以外(すなわち階調曲線の非補間部分)については従来通りの調整を行えば、画像の特徴部分を残しつつ調整後のコントラストを生かすことができるという知見を得た。
【0015】
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係る画像処理装置は、放射線画像に対して画像処理を行う画像処理装置であって、前記放射線画像の入力画素値に対して階調処理を施すことにより出力画素値を出力する階調処理手段と、前記入力画素値と前記出力画素値との対応を表す元の階調曲線を調整して調整後の階調曲線を出力する曲線調整手段と、その曲線調整手段で調整された前記調整後の階調曲線の端部に位置する画素まで存在する前記元の階調曲線の部分を補間部分として、前記元の階調曲線の補間部分と前記調整後の階調曲線とを接合することにより、階調曲線の補間部分を補間する曲線補間手段とを備え、前記曲線調整手段により調整され、前記曲線補間手段により補間された前記階調曲線を用いて、前記階調処理手段が前記階調処理を施して前記出力画素値を並べて階調処理後の最終的な放射線画像を出力することを特徴とするものである。
【0016】
[作用・効果]この発明に係る画像処理装置によれば、入力画素値と出力画素値との対応を表す元の階調曲線を曲線調整手段により調整して調整後の階調曲線を出力する際に、入力画素の一部が曲線上に存在しなくなって入力画素の欠落が生じる場合がある。つまり、入力画素を横軸にとると、調整後の階調曲線の両端が左右方向に狭まって、狭まった分だけ入力画素の欠落が生じる。そこで、その曲線調整手段で調整された調整後の階調曲線の端部に位置する画素まで存在する元の階調曲線の部分を補間部分として、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合することにより、階調曲線の補間部分を曲線補間手段は補間する。このように、元の階調曲線の補間部分(欠落箇所)を利用して、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合すれば、欠落した入力画素を簡易に、かつ自然に補間することができる。さらに、欠落箇所以外(すなわち階調曲線の非補間部分)については曲線調整手段により調整を行うので、画像の特徴部分を残しつつ調整後のコントラストを生かすことができる。
【0017】
また、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合する際に、その接合点での元の階調曲線の補間部分の出力画素値と調整後の階調曲線の出力画素値とが合致しない可能性がある。その場合には、これら出力画素値の差分を、元の階調曲線の補間部分、調整後の階調曲線のいずれか少なくとも一方に作用させて、差分を差分補正手段が補正することで接合点での接合を自然に行うことができる。上述の差分補正手段は、上述の補正を演算により行ってもよいし、ユーザが手動により行ってもよい。
【0018】
同様に、曲線調整手段は、上述の調整を演算により行ってもよいし、ユーザが手動により行ってもよい。また、曲線補間手段は、上述の補間を演算により行ってもよいし、ユーザが手動により行ってもよい。
【0019】
また、この発明に係る画像処理方法は、放射線画像に対して画像処理を行う画像処理方法であって、前記放射線画像の入力画素値と出力画素値との対応を表す元の階調曲線を調整して調整後の階調曲線を出力する曲線調整工程と、その曲線調整工程で調整された前記調整後の階調曲線の端部に位置する画素まで存在する前記元の階調曲線の部分を補間部分として、前記元の階調曲線の補間部分と前記調整後の階調曲線とを接合することにより、階調曲線の補間部分を補間する曲線補間工程と、前記曲線調整工程で調整され、前記曲線補間工程で補間された前記階調曲線を用いて、前記入力画素値に対して階調処理を施して前記出力画素値を並べて階調処理後の最終的な放射線画像を出力する階調処理工程とを備えることを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]この発明に係る画像処理方法によれば、曲線調整工程で調整された調整後の階調曲線の端部に位置する画素まで存在する元の階調曲線の部分を補間部分として、曲線補間工程では、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合することにより、階調曲線の補間部分を補間する。このように、元の階調曲線の補間部分(欠落箇所)を利用して、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合すれば、欠落した入力画素を簡易に、かつ自然に補間することができる。
【0021】
また、この発明に係る画像処理装置でも述べたように、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合する際に、その接合点での元の階調曲線の補間部分の出力画素値と調整後の階調曲線の出力画素値とが合致しない可能性がある。その場合には、差分補正工程では、これら出力画素値の差分を、元の階調曲線の補間部分、調整後の階調曲線のいずれか少なくとも一方に作用させて、差分を補正することで接合点での接合を自然に行うことができる。
【0022】
上述の画像処理方法において、元の階調曲線を複数に分割して、分割された各々の階調曲線のそれぞれに近似曲線を当てはめて関数化することにより、当該関数化された曲線を利用して、上述の曲線補間工程では階調曲線の補間部分を補間するのが好ましい。すなわち、当てはめられた近似曲線における補間部分を元の階調曲線の補間部分として利用することができる。
【0023】
近似曲線を当てはめる手法において、階調曲線がシグモイド型の場合には、以下のように変曲点を用いて当てはめるのが好ましい。変曲点とは、平面上の曲線で曲がる方向が変わる点のことを示す。幾何学的に言えば、曲線上で曲率の符号(プラス・マイナス)が変化する点(この点では0となる)を示す。これは幾何学的または解析学的に、次の各定義と同値である。
・その点における接線が曲線自体と交差する点。
・曲線を2回連続微分可能とする関数y=f(x)上の点(x,y)として表した場合に、2次導関数f´´(x)の符号が変化する点。
・1次導関数f´(x)が極値をとる点。
【0024】
階調曲線がシグモイド型の場合には、平面上の曲線で曲がる方向が変わる点である変曲点が存在する。そこで、元の階調曲線の変曲点を境界にして複数に分割して、漸近指数曲線を上述の近似曲線として当てはめて関数化することにより、当該関数化された曲線を利用して、曲線補間工程では階調曲線の補間部分を補間する。
【0025】
特に、階調曲線が、後述する図4や上述した図9などに示すように1つのシグモイド型で単調増加連続関数からなる場合には、変曲点は1つのみとなるので、以下のように変曲点を用いて当てはめるのが好ましい。すなわち、元の階調曲線の変曲点を境界にして2つに分割して、変曲点を境界にして分割された階調曲線のうち、入力画素値・出力画素値が小さい方の階調曲線に上述の漸近指数曲線を当てはめる。単調増加連続関数の場合には、入力画素値・出力画素値が小さい方の階調曲線は指数曲線に近い形状を描くので、漸近指数曲線を当てはめて関数化する。一方、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線については、以下の曲線を当てはめて関数化する。
【0026】
一例として、入力画素値・出力画素値を座標軸にそれぞれ並べた座標平面上で上述の漸近指数曲線を回転した曲線を、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線に当てはめて関数化することにより、それぞれ関数化された曲線を利用して、曲線補間工程では階調曲線の補間部分を補間する。シグモイド型の階調曲線の場合には、変曲点を点対称とした曲線を描くので、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線については、漸近指数曲線を約180°回転させた形状に近くなる。そこで、上述の回転した曲線を、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線に当てはめて関数化することができる。
【0027】
他の一例として、漸近指数曲線の逆関数である対数曲線を、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線に当てはめて関数化することにより、それぞれ関数化された曲線を利用して、曲線補間工程では階調曲線の補間部分を補間する。シグモイド型の階調曲線の場合には、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線については、漸近指数曲線の逆関数である対数曲線に近い形状を描く。そこで、上述の対数曲線を、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線に当てはめて関数化することができる。
【0028】
なお、曲線調整工程で調整され、曲線補間工程で補間された階調曲線において、出力画素値が設定された最大画素値を超えるときには当該出力画素値を最大画素値に打ち止める打ち止め工程を備えるのが好ましい。同様に、出力画素値が“0”を下回る場合には、当該出力画素値を“0”に打ち止める。
【0029】
また、この発明に係る画像処理プログラムは、放射線画像に対する画像処理をコンピュータに実行させるための画像処理プログラムであって、前記放射線画像の入力画素値と出力画素値との対応を表す元の階調曲線を調整して調整後の階調曲線を出力する曲線調整工程と、その曲線調整工程で調整された前記元の階調曲線の部分を補間部分として、前記元の階調曲線の補間部分と前記調整後の階調曲線とを接合することにより、階調曲線の補間部分を補間する曲線補間工程と、前記曲線調整工程で調整され、前記曲線補間工程で補間された前記階調曲線を用いて、前記入力画素値に対して階調処理を施して前記出力画素値を並べて階調処理後の最終的な放射線画像を出力する階調処理工程とを備え、これらの工程での処理をコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【0030】
[作用・効果]この発明に係る画像処理プログラムによれば、曲線調整工程で調整された調整後の階調曲線の端部に位置する画素まで存在する元の階調曲線の部分を補間部分として、曲線補間工程では、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合することにより、階調曲線の補間部分を補間する。このように、元の階調曲線の補間部分(欠落箇所)を利用して、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合すれば、欠落した入力画素を簡易に、かつ自然に補間することができる。
【発明の効果】
【0031】
この発明に係る画像処理装置、画像処理方法並びに画像処理プログラムによれば、調整された調整後の階調曲線の端部に位置する画素まで存在する元の階調曲線の部分を補間部分として、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合することにより、階調曲線の補間部分を補間する。このように、元の階調曲線の補間部分(欠落箇所)を利用して、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合すれば、欠落した入力画素を簡易に、かつ自然に補間することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例に係るX線撮影装置のブロック図である。
【図2】一連の操作および画像処理の流れを示したフローチャートである。
【図3】一連の画像処理の流れを示したフローチャートである。
【図4】実施例に係る階調曲線の概略図である。
【図5】実施例に係る階調曲線の概略図である。
【図6】実施例に係る階調曲線の概略図である。
【図7】変形例に係る階調曲線の概略図である。
【図8】さらなる変形例に係る階調曲線の概略図である。
【図9】代表的な階調曲線の概略図である。
【図10】コントロラストを小さくしたときの階調曲線の概略図である。
【図11】コントロラストを大きくしたときの階調曲線の概略図である。
【図12】コントロラストを大きくしたときの階調曲線の概略図である。
【図13】直線で補間したときの階調曲線の概略図である。
【実施例】
【0033】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係るX線撮影装置のブロック図である。本実施例では、画像処理部(画像処理装置)は、例えばディジタル一般撮影装置やディジタルマンモグラフィ装置などのX線撮影装置に用いられる場合を例に採って説明する。
【0034】
本実施例に係るX線撮影装置は、図1に示すように、被検体Mを載置した天板1と、被検体Mに向けてX線を照射するX線管2と、X線管2から照射されて被検体Mを透過したX線を検出するフラットパネル型X線検出器(以下、「FPD」と略記する)3と、FPD3によって検出されたX線に基づいて画像処理を行う画像処理部4と、画像処理部4によって各種の画像処理されたX線画像を表示する表示部5と、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成された入力部6とを備えている。画像処理部4は、この発明における画像処理装置に相当し、画像処理部4は、この発明における階調処理手段や曲線調整手段や曲線補間手段や差分補正手段にも相当する。
【0035】
画像処理部4は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。なお、各種の画像処理を行うためのプログラム等をROM(Read-only Memory)などに代表される記憶媒体に書き込んで記憶し、その記憶媒体からプログラム等を読み出して画像処理部4のCPUが実行することでそのプログラムに応じた画像処理を行う。特に、曲線調整や曲線補間や階調処理に関するプログラムを実行することで、そのプログラムに応じた曲線調整や曲線補間や階調処理をそれぞれ行う。曲線調整や曲線補間や階調処理に関するプログラムは、この発明における画像処理プログラムに相当する。
【0036】
実際の操作および画像処理の流れについて、図2〜図6を参照して説明する。図2は、一連の操作および画像処理の流れを示したフローチャートであり、図3は、一連の画像処理の流れを示したフローチャートであり、図4〜図6は、実施例に係る階調曲線の概略図である。
【0037】
(ステップS1)画像入力
X線管2(図1を参照)から照射されて被検体M(図1を参照)を透過したX線をFPD3(図1を参照)が検出して、FPD3に入射されたX線量に応じたX線検出信号に変換する。そのX線検出信号を画素値として、画像処理部4(図1を参照)に入力する。なお、各々の画素値を各々に該当する画素にそれぞれ割り当てて並べることで、X線画像が入力画像として画像処理部4に入力される。本実施例では、画像処理部4に入力される画素値を、X線画像の入力画像の画素値(あるいはX線画像の入力画素値)と呼ぶ。
【0038】
(ステップS2)階調タイプ選択
次に、被検体Mの骨格や体型毎あるいは撮影部位や撮影部位中の注目部位毎に予め記憶された入力画像と出力画像との画素値変換の対応を示すテーブル(LUT)の中から、対象となる階調曲線のタイプをユーザが選択する。
【0039】
(ステップS3)画像処理
ステップS2で選択されたタイプの階調曲線を用いて、画像処理部4はX線画像の入力画素値に対して階調処理などの画像処理を施す。階調処理以外の画像処理としては、ラグ補正やオフセット補正などがある。具体的な階調処理については後述する。
【0040】
(ステップS4)画像出力
ステップS3でX線画像の入力画素値に対して階調処理などの画像処理を施すことで出力画素値を出力する。各々の出力画素値を各々に該当する画素にそれぞれ割り当てて並べることで、階調処理などの画像処理後の最終的なX線画像を出力する。出力された最終的なX線画像を表示部5(図1を参照)に表示する。
【0041】
続いて、具体的な階調処理について詳述する。階調処理を含む画像処理については、上述したように、画像処理部4のCPUがプログラムを実行することにより行う。
【0042】
(ステップT1)変曲点検索
後述するステップT3で階調曲線を調整することにより入力画素の欠落が生じる場合がある。そこで、調整後に欠落が生じない程度に、元の階調曲線を左右に伸ばす。左右に伸ばす方法として、元の階調曲線に対して後述するステップT4の曲線当てはめを行い関数化することで、任意の入力画素に対する出力画素を確保する。このように関数化して確保することで階調曲線の左右の両端は存在しなくなる。
【0043】
先ず、ステップS2で選択されたタイプの(元の)階調曲線の変曲点を検索する。そのために、曲線上の各点間の傾き(接線)を順に見ていく。このとき、各点において隣り合う傾きが異なる点を抽出しておく。抽出された点の集合をA[](図示省略)とする。また、図4に示すように、傾きの変化の正負が変化する点(すなわち曲線上の曲率の符号が変化する点)を変曲点Pとする。
【0044】
図4の階調曲線は単調増加関数であるので、画素値が大きくなるにつれて、A[]での傾きの変化が逆に徐々に大きく(すなわち階調曲線の2次導関数はプラスに)なり、変曲点Pを境にして、A[]での傾きの変化が徐々に小さく(すなわち階調曲線の2次導関数はマイナスに)なる。ステップT1の変曲点検索については、各点間の傾きを演算により算出して自動に行ってもよいし、図4の階調曲線を表示部5に表示してユーザが入力部6(図1を参照)で変曲点(と思われる点)を任意に入力指定することにより手動に行ってもよい。
【0045】
(ステップT2)曲線分割
図4の変曲点Pを境界にして階調曲線を左右に2つに分割する。図4に示すように、入力画素値・出力画素値が小さい方の階調曲線(図4の左側の曲線)をLとし、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線(図4の右側の曲線)をRとする。
【0046】
(ステップT3)曲線調整
ステップS2で選択されたタイプの階調曲線に対して、上述した図10や図11に示すような階調曲線の回転、あるいは上述した図12に示すような圧縮を行って、階調曲線を調整する。
【0047】
調整については回転や圧縮以外にも、入力画素のスケールの拡大や出力画素のスケールの拡大・圧縮や階調曲線自体の拡大・縮小や反転(単調増加連続関数から単調減少連続関数への反転)や、図4の階調曲線を表示部5に表示してユーザが入力部6の例えばマウスにより曲線をドラッグして微調整を行うことなども含まれる。ステップT3の曲線調整については、演算により自動に行ってもよいし、図4の階調曲線を表示部5に表示してユーザが入力部6で調整することにより手動に行ってもよい。ステップT3の曲線調整は、この発明における曲線調整工程に相当する。
【0048】
(ステップT4)曲線当てはめ
曲線Lは一般的な指数曲線の形に近似しているので、A[]の中で曲線Lに属する点に対して、y=a*b+c(x:入力画素値、y:出力画素値)となるようにa,bおよびcをそれぞれ決定して漸近指数曲線回帰を行い、近似曲線として当てはめる。当てはめによって得られた曲線の関数をLF(図5に一部を図示)とする。このようにして曲線Lについて当てはめを行い関数化する。
【0049】
これに対して、曲線Rは一般的な指数曲線の形に対して変曲点Pを支点にして約180°回転させた形になるので、A[]の中で曲線Rに属する全ての画素値を反転させて、同様の漸近曲線回帰を行い、近似曲線を求める。近似曲線を求めることによって得られた曲線の関数をRF(図5に一部を図示)とする。なお、完全に180°に回転させる必要はなく、図4の階調曲線に合わせて最も合う角度分だけ回転させればよい。このようにして曲線Rについて当てはめを行い関数化する。
【0050】
ステップT4の曲線当てはめについては、漸近曲線回帰を演算により行って自動に行ってもよいし、図4の階調曲線を表示部5に表示してユーザが入力部6の例えばマウスにより曲線をドラッグして調整して手動で行ってもよい。なお、ステップT4の曲線当てはめを手動で行う場合には、曲線当てはめ後にそれぞれの近似曲線(関数LF,RF)を演算により算出して漸近曲線回帰を自動的に行ってもよい。
【0051】
また、RFについては、回転させる以外に漸近指数曲線の逆関数である対数曲線を当てはめることにより求めてもよい。この場合においても、ステップT4の曲線当てはめについては、漸近曲線回帰を演算により行って自動に行ってもよいし、階調曲線を表示部5に表示してユーザが入力部6で調整することにより手動に行ってもよい。
【0052】
(ステップT5)曲線補間
ステップT3で曲線調整を行うことにより、入力画素の一部が曲線上に存在しなくなって入力画素の欠落が生じる場合には、図5に示すように、ステップT4で当てはめられて関数化された元の階調曲線(関数)LF,RFと、ステップT3で調整された調整後の階調曲線LF´,RF´とをそれぞれ接合する。
【0053】
図5では、曲線調整により、入力画素を横軸にとると、調整後の階調曲線LF´,RF´の両端が左右方向に狭まって、狭まった分だけ入力画素の欠落が生じる場合を図示している。したがって、図5では、調整後の階調曲線LF´,RF´の端部に位置する画素まで存在する元の階調曲線(関数)LF,RFの部分を補間部分として、元の階調曲線(関数)LF,RFの補間部分と調整後の階調曲線LF´,RF´とを接合することにより、階調曲線の補間部分を補間する。図5では、接合点Eにて元の階調曲線(関数)LFの補間部分と調整後の階調曲線LF´とを接合し、接合点Eにて元の階調曲線(関数)RFの補間部分と調整後の階調曲線RF´とを接合する。ステップT5の曲線補間については、演算により自動に行ってもよいし、ユーザが入力部6で調整することにより手動に行ってもよい。ステップT5の曲線補間は、この発明における曲線補間工程に相当する。
【0054】
(ステップT6)差分補正
ステップT5において、元の階調曲線(関数)LF,RFの補間部分と調整後の階調曲線LF´,RF´とを接合する際に、その接合点E,Eでの元の階調曲線LF,RFの補間部分の出力画素値と調整後の階調曲線LF´,RF´の出力画素値とが合致しない可能性がある。
【0055】
図6(a)に示すように、元の階調曲線(関数)LFの補間部分と調整後の階調曲線LF´とを接合する際に、その接合点Eでの元の階調曲線LFの補間部分の出力画素値と調整後の階調曲線LF´の出力画素値とが合致しない場合を例に採って説明する。この場合には、これら出力画素値の差分を、元の階調曲線(関数)LFの補間部分、調整後の階調曲線LF´のいずれか少なくとも一方に作用させて、差分を補正する。
【0056】
例えば、図6(b)に示すように、出力画素値の差分を、元の階調曲線(関数)LFの補間部分のみに作用させて、調整後の階調曲線LF´を固定する場合には、図6(b)のときには元の階調曲線(関数)LFの補間部分(の出力画素値)について当該差分を減算してシフトすることで、図6(b)の二点鎖線から実線に示すように差分を補正する。逆に、図6(c)に示すように、出力画素値の差分を、調整後の階調曲線LF´のみに作用させて、元の階調曲線(関数)LFの補間部分を固定する場合には、図6(c)のときには調整後の階調曲線LF´全体(の出力画素値)について当該差分を加算してシフトすることで、図6(c)の二点鎖線から実線に示すように差分を補正する。
【0057】
一方、図6(d)に示すように、出力画素値の差分を、元の階調曲線(関数)LFの補間部分および調整後の階調曲線LF´の双方に作用させて、差分を補正してもよい。この場合には、元の階調曲線(関数)LFの補間部分(の出力画素値)について減算して、図6(d)の二点鎖線から実線に示すシフト分と、調整後の階調曲線LF´全体(の出力画素値)について加算して、図6(d)の二点鎖線から実線に示すシフト分との合計が当該差分になればよい。したがって、例えば当該差分の中点において接合点Eでの出力画素値が合致するように当該差分の半分のシフト分だけ加減算を行うなど、それぞれのシフト分については特に限定されない。
【0058】
なお、非補間部分の調整後の階調曲線LF´については、非補間部分がステップT3の曲線調整で求められる部分であり、この部分は元の階調曲線の調整パラメータ(回転量や回転中心など)によって求められる。したがって、非補間部分の調整後の階調曲線LF´は厳密な曲線調整の結果によって得られるものであるので、非補間部分の調整後の階調曲線LF´については、極力変更を加えないようにするのが好ましい。その意味では、図6(b)、図6(c)および図6(d)の接合方法の中では、元の階調曲線(関数)LFの補間部分のみに作用させて、調整後の階調曲線LF´を固定する図6(b)の接合方法が最も好ましい。
【0059】
図6(a)では、接合点Eでの元の階調曲線LFの補間部分の出力画素値の方が、接合点Eでの調整後の階調曲線LF´の出力画素値よりも高い場合を図示して説明したが、接合点Eでの元の階調曲線LFの補間部分の出力画素値の方が、接合点Eでの調整後の階調曲線LF´の出力画素値よりも低い場合には、図6で説明した加算・減算を逆にして行えばよい。なお、元の階調曲線(関数)RFの補間部分と調整後の階調曲線RF´とを接合する際に、その接合点Eでの元の階調曲線RFの補間部分の出力画素値と調整後の階調曲線RF´の出力画素値とが合致しない場合については、図6(a)〜図6(d)と同様の加減算を行えばいいので、その説明について省略する。
【0060】
ステップT6の差分補正については、演算により自動に行ってもよいし、ユーザが入力部6で調整することにより手動に行ってもよい。ステップT6の差分補正は、この発明における差分補正工程に相当する。
【0061】
(ステップT7)打ち止め
ステップT6の差分補正も含めて、ステップT3の曲線調整で調整され、ステップT5の曲線補間で補間された階調曲線において、出力画素値が設定された最大画素値を超えるときには、図13の太線Bでも述べたように当該出力画素値を最大画素値に打ち止める。また、同様に出力画素値が“0”を下回る場合には,当該出力画素値を“0”に打ち止める。ステップT7での打ち止めについては、演算により自動に行ってもよいし、ユーザが入力部6で調整することにより手動に行ってもよい。ステップT7の打ち止めは、この発明における打ち止め工程に相当する。
【0062】
(ステップT8)階調処理
ステップT6の差分補正も含めて、ステップT3の曲線調整で調整され、ステップT5の曲線補間で補間された階調曲線を用いて、入力画素値に対して階調処理を施す。そして、階調処理後に得られた出力画素値を並べて階調処理後の最終的なX線画像を出力する。このステップT8は、この発明における階調処理工程に相当する。
【0063】
このステップT1〜T7での処理によって得られた階調曲線については、曲線を回転させたにもかかわらず一部が直線になって全体的に不自然な形状となるという問題や、曲線の一部のみを利用した補間という問題を解決し、回転後の階調曲線全体が不自然な形になることなくシグモイド型を描くことが可能になる。特に回転量が大きいときには、その差が顕著になる。これにより、ユーザは、ステップT3での階調調整に対する手間を増やすことなく、より自然な階調で画像を表示することが可能となる。
【0064】
本実施例に係る画像処理部4(画像処理装置)によれば、入力画素値と出力画素値との対応を表す元の階調曲線を画像処理部4の曲線調整の機能により調整して調整後の階調曲線を出力する際に、入力画素の一部が曲線上に存在しなくなって入力画素の欠落が生じる場合がある。つまり、入力画素を横軸にとると、調整後の階調曲線の両端が左右方向に狭まって、狭まった分だけ入力画素の欠落が生じる。図5の場合では、調整後の階調曲線LF´の入力最小画素値(左端)の部分で、入力画素の欠落が生じ、調整後の階調曲線RF´の入力最大画素値(右端)の部分で、入力画素の欠落が生じている。
【0065】
そこで、画像処理部4の曲線調整の機能で調整された調整後の階調曲線の端部に位置する画素まで存在する元の階調曲線の部分を補間部分として、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合することにより、階調曲線の補間部分を画像処理部4の曲線補間の機能は補間する。図5の場合では、調整後の階調曲線LF´の入力最小画素値(左端に位置する画素)まで存在する元の階調曲線(関数)LFの部分を補間部分として、調整後の階調曲線RF´の入力最大画素値(右端に位置する画素)まで存在する元の階調曲線(関数)RFの部分を補間部分としている。そして、接合点Eにて元の階調曲線(関数)LFの補間部分と調整後の階調曲線LF´とを接合し、接合点Eにて元の階調曲線(関数)RFの補間部分と調整後の階調曲線RF´とを接合することにより、階調曲線の補間部分を補間している。
【0066】
このように、元の階調曲線の補間部分(欠落箇所)を利用して、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合すれば、欠落した入力画素を簡易に、かつ自然に補間することができる。さらに、欠落箇所以外(すなわち階調曲線の非補間部分)については画像処理部4の曲線調整の機能により調整を行うので、画像の特徴部分を残しつつ調整後のコントラストを生かすことができる。
【0067】
元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合する際に、その接合点での元の階調曲線の補間部分の出力画素値と調整後の階調曲線の出力画素値とが合致しない可能性がある。例えば、図6(a)でも述べたように、元の階調曲線(関数)LFの補間部分と調整後の階調曲線LF´とを接合する際に、その接合点Eでの元の階調曲線LFの補間部分の出力画素値と調整後の階調曲線LF´の出力画素値とが合致しない場合には、これら出力画素値の差分を、元の階調曲線(関数)LFの補間部分、調整後の階調曲線LF´のいずれか少なくとも一方に作用させて、差分を補正することで接合点Eでの接合を自然に行うことができる。上述の画像処理部4の差分補正の機能は、上述のように補正を演算により行ってもよいし、入力部6で調整することによりユーザが手動により行ってもよい。
【0068】
同様に、画像処理部4の曲線調整の機能は、上述のように調整を演算により行ってもよいし、入力部6で調整することによりユーザが手動により行ってもよい。また、画像処理部4の曲線補間の機能は、上述のように補間を演算により行ってもよいし、入力部6で調整することによりユーザが手動により行ってもよい。

また、本実施例に係る図3に示す画像処理方法によれば、ステップT3の曲線調整で調整された調整後の階調曲線の端部に位置する画素まで存在する元の階調曲線の部分を補間部分として、ステップT5の曲線補間では、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合することにより、階調曲線の補間部分を補間している。このように、元の階調曲線の補間部分(欠落箇所)を利用して、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合すれば、欠落した入力画素を簡易に、かつ自然に補間することができる。
【0069】
また、本実施例に係る画像処理部4(画像処理装置)でも述べたように、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合する際に、その接合点での元の階調曲線の補間部分の出力画素値と調整後の階調曲線の出力画素値とが合致しない可能性がある。その場合には、ステップT6の差分補正では、これら出力画素値の差分を、元の階調曲線の補間部分、調整後の階調曲線のいずれか少なくとも一方に作用させて、差分を補正することで接合点での接合を自然に行うことができる。
【0070】
本実施例では、好ましくは、元の階調曲線を複数(図4では2つ)に分割して、分割された各々の階調曲線のそれぞれに近似曲線(図5では関数LF,RF)を当てはめて関数化することにより、当該関数化された曲線を利用して、ステップT5の曲線補間では階調曲線の補間部分を補間している。すなわち、当てはめられた近似曲線における補間部分を元の階調曲線の補間部分として利用することができる。
【0071】
近似曲線を当てはめる手法において、本実施例のように階調曲線がシグモイド型の場合には、好ましくは、変曲点を用いて当てはめる。上述したように、変曲点とは、平面上の曲線で曲がる方向が変わる点のことを示す(図4、図5の変曲点Pを参照)。階調曲線がシグモイド型の場合には、平面上の曲線で曲がる方向が変わる点である変曲点が存在する(図4、図5では1つの変曲点P)。そこで、元の階調曲線の変曲点(図4、図5では変曲点P)を境界にして複数(図4では2つ)に分割して、漸近指数曲線を上述の近似曲線として当てはめて関数化することにより、当該関数化された曲線を利用して、ステップT5の曲線補間では階調曲線の補間部分を補間している。
【0072】
特に、階調曲線が、本実施例の図4などに示すように1つのシグモイド型で単調増加連続関数からなる場合には、変曲点は1つのみとなるので、好ましくは、図4の変曲点Pを用いて当てはめる。すなわち、元の階調曲線の変曲点Pを境界にして2つに分割して、変曲点Pを境界にして分割された階調曲線L,Rのうち、入力画素値・出力画素値が小さい方の階調曲線(図4の左側の曲線L)に上述の漸近指数曲線(y=a*b+c)を当てはめる。単調増加連続関数の場合には、入力画素値・出力画素値が小さい方の階調曲線(ここでは曲線L)は指数曲線に近い形状を描くので、漸近指数曲線を当てはめて関数化する。一方、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線(図4の右側の曲線R)については、上述したような式で当てはめて関数化している。
【0073】
一つは、入力画素値・出力画素値を座標軸にそれぞれ並べた座標平面上で上述の漸近指数曲線を回転した曲線を、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線(ここでは曲線R)に当てはめて関数化することにより、それぞれ関数化された曲線を利用して、ステップT5の曲線補間では階調曲線の補間部分を補間している。シグモイド型の階調曲線の場合には、図4に示すように変曲点Pを点対称とした曲線を描くので、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線(ここでは曲線R)については、漸近指数曲線を約180°回転させた形状に近くなる。そこで、上述の回転した曲線を、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線(ここでは曲線R)に当てはめて関数化することができる。
【0074】
もう一つは、漸近指数曲線の逆関数である対数曲線を、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線(ここでは曲線R)に当てはめて関数化することにより、それぞれ関数化された曲線を利用して、ステップT5の曲線補間では階調曲線の補間部分を補間している。シグモイド型の階調曲線の場合には、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線(ここでは曲線R)については、漸近指数曲線の逆関数である対数曲線に近い形状を描く。そこで、上述の対数曲線を、入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線(ここでは曲線R)に当てはめて関数化することができる。
【0075】
本実施例の場合にはステップT6の差分補正も含めて、ステップT3の曲線調整で調整され、ステップT5の曲線補間で補間された階調曲線において、出力画素値が設定された最大画素値を超えるときには当該出力画素値を最大画素値に打ち止め、出力画素値が“0”を下回るときには、当該出力出力画素値を“0”に打ち止めるステップT7の打ち止めを行う。
【0076】
本実施例に係る画像処理プログラムは、X線画像に対する画像処理をコンピュータ(図1では画像処理部4のCPU)に実行させるための画像処理プログラムであって、図4の各ステップT1〜T8での処理をコンピュータ(画像処理部4のCPU)に実行させている。
【0077】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0078】
(1)上述した実施例では、放射線としてX線を例に採って説明したが、X線以外の放射線(例えばγ線など)に適用してもよい。
【0079】
(2)上述した実施例では、画像処理部(画像処理装置)は、医用等に用いられる、図1に示すような天板1に被検体を載置して撮影を行うX線撮影装置に用いられていたが、これに限定されない。例えば、工業用等に用いられる非破壊検査装置のように被検体(この場合には検査の対象物が被検体)をベルト上に運搬させて撮影を行う装置に用いられてもよいし、医用等に用いられるX線CT装置などに用いられてもよい。また、撮影を行う装置を外部装置として別装置で構成し、画像処理部(画像処理装置)を単体に使用してもよい。
【0080】
(3)上述した実施例では、階調曲線は、図4などに示すようなシグモイド型で単調増加連続関数であったが、階調処理を行うものであれば、2次式以上の多項式で表されたタイプ、図7に示すようにシグモイド型を2つ以上並べたようなタイプ、図8に示すように単調減少連続関数のようなタイプで画素値の反転とともに階調処理を行うタイプなどに例示されるように、特に限定されない。
【0081】
(4)上述した実施例では、近似曲線を当てはめて関数化したが、必ずしも近似曲線を当てはめて関数化する必要はない。例えば、入力画素値と出力画素値との対応を表すテーブルを用意するとともに、スプライン補間等で補間したデータを元の階調曲線のテーブルとして用意し、元の階調曲線の補間部分を利用して、元の階調曲線の補間部分と調整後の階調曲線とを接合することにより、階調曲線の補間部分を補間してもよい。
【0082】
(5)上述した実施例では、階調曲線がシグモイド型の単調増加連続関数であったことから、補間部分が曲線であったが、補間部分が直線あるいは直線で近似できる曲線であれば、直線で補間してもよい。
【0083】
(6)上述した実施例では、調整された調整後の階調曲線の左右の両端(入力最小画素値および入力最大画素値)に位置する画素まで存在する元の階調曲線の部分を補間部分として左右の両端をそれぞれ補間したが、欠落部分が最小画素値側のみ、あるいは最大画素値側のみの場合には、一方のみを補間してもよい。
【0084】
(7)上述した実施例では、図6に示すように差分補正を行ったが、接合点において出力画素値が合致する場合、あるいは合致しなくても目立たない場合には、必ずしも差分補正を行う必要はない。
【0085】
(8)上述した実施例では、当てはまられた近似式は指数関数や対数関数であったが、2次式以上の多項式を近似式として当てはまるなど、具体的な近似式のタイプについては特に限定されない。
【0086】
(9)上述した実施例では、元の階調曲線の変曲点を境界にして複数(実施例では2つ)に分割したが、階調曲線がシグモイド型以外の場合には、必ずしも変曲点を境界にして複数に分割する必要はない。例えば極値を境界にして分割してもよいし、当てはめられる近似式のタイプが互いに異なる箇所を境界にして分割してもよい。
【0087】
(10)上述した実施例では、元の階調曲線の変曲点を境界にして2つに分割したが、分割数については2つに限定されない。例えば、図7に示すようにシグモイド型を2つ以上並べたようなタイプでは、変曲点Pが3つ存在するので、4つに分割してもよい。
【符号の説明】
【0088】
4 … 画像処理部
LF,RF … 元の階調曲線(関数)
LF´,RF´ … 調整後の階調曲線
,E … 接合点
P … 変曲点
L … 入力画素値・出力画素値が小さい方の階調曲線
R … 入力画素値・出力画素値が大きい方の階調曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像に対して画像処理を行う画像処理装置であって、
前記放射線画像の入力画素値に対して階調処理を施すことにより出力画素値を出力する階調処理手段と、
前記入力画素値と前記出力画素値との対応を表す元の階調曲線を調整して調整後の階調曲線を出力する曲線調整手段と、
その曲線調整手段で調整された前記調整後の階調曲線の端部に位置する画素まで存在する前記元の階調曲線の部分を補間部分として、前記元の階調曲線の補間部分と前記調整後の階調曲線とを接合することにより、階調曲線の補間部分を補間する曲線補間手段と
を備え、
前記曲線調整手段により調整され、前記曲線補間手段により補間された前記階調曲線を用いて、前記階調処理手段が前記階調処理を施して前記出力画素値を並べて階調処理後の最終的な放射線画像を出力することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記元の階調曲線の補間部分と前記調整後の階調曲線とを接合するために、その接合点での前記元の階調曲線の補間部分の出力画素値と前記調整後の階調曲線の出力画素値との差分を、前記元の階調曲線の補間部分、前記調整後の階調曲線のいずれか少なくとも一方に作用させて、差分を補正する差分補正手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記差分補正手段は、前記補正を演算により行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記曲線調整手段は、前記調整を演算により行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記曲線補間手段は、前記補間を演算により行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
放射線画像に対して画像処理を行う画像処理方法であって、
前記放射線画像の入力画素値と出力画素値との対応を表す元の階調曲線を調整して調整後の階調曲線を出力する曲線調整工程と、
その曲線調整工程で調整された前記調整後の階調曲線の端部に位置する画素まで存在する前記元の階調曲線の部分を補間部分として、前記元の階調曲線の補間部分と前記調整後の階調曲線とを接合することにより、階調曲線の補間部分を補間する曲線補間工程と、
前記曲線調整工程で調整され、前記曲線補間工程で補間された前記階調曲線を用いて、前記入力画素値に対して階調処理を施して前記出力画素値を並べて階調処理後の最終的な放射線画像を出力する階調処理工程と
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の画像処理方法において、
前記元の階調曲線の補間部分と前記調整後の階調曲線とを接合するために、その接合点での前記元の階調曲線の補間部分の出力画素値と前記調整後の階調曲線の出力画素値との差分を、前記元の階調曲線の補間部分、前記調整後の階調曲線のいずれか少なくとも一方に作用させて、差分を補正する差分補正工程を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の画像処理方法において、
前記元の階調曲線を複数に分割して、分割された各々の階調曲線のそれぞれに近似曲線を当てはめて関数化することにより、当該関数化された曲線を利用して、前記曲線補間工程では階調曲線の補間部分を補間することを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の画像処理方法において、
前記元の階調曲線の変曲点を境界にして複数に分割して、漸近指数曲線を前記近似曲線として当てはめて関数化することにより、当該関数化された曲線を利用して、前記曲線補間工程では階調曲線の補間部分を補間することを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の画像処理方法において、
前記元の階調曲線の変曲点を境界にして2つに分割して、前記変曲点を境界にして分割された階調曲線のうち、前記入力画素値・前記出力画素値が小さい方の階調曲線に前記漸近指数曲線を当てはめて関数化し、前記入力画素値・前記出力画素値を座標軸にそれぞれ並べた座標平面上で前記漸近指数曲線を回転した曲線を、前記入力画素値・前記出力画素値が大きい方の階調曲線に当てはめて関数化することにより、それぞれ関数化された曲線を利用して、前記曲線補間工程では階調曲線の補間部分を補間することを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
請求項9に記載の画像処理方法において、
前記元の階調曲線の変曲点を境界にして2つに分割して、前記変曲点を境界にして分割された階調曲線のうち、前記入力画素値・前記出力画素値が小さい方の階調曲線に前記漸近指数曲線を当てはめて関数化し、前記漸近指数曲線の逆関数である対数曲線を、前記入力画素値・前記出力画素値が大きい方の階調曲線に当てはめて関数化することにより、それぞれ関数化された曲線を利用して、前記曲線補間工程では階調曲線の補間部分を補間することを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
請求項6から請求項11のいずれかに記載の画像処理方法において、
前記曲線調整工程で調整され、前記曲線補間工程で補間された前記階調曲線において、前記出力画素値が設定された最大画素値を超えるときには当該出力画素値を前記最大画素値に打ち止め、前記出力画素値が“0”を下回るときには当該出力画素値を“0”に打ち止める打ち止め工程を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
放射線画像に対する画像処理をコンピュータに実行させるための画像処理プログラムであって、
前記放射線画像の入力画素値と出力画素値との対応を表す元の階調曲線を調整して調整後の階調曲線を出力する曲線調整工程と、
その曲線調整工程で調整された前記調整後の階調曲線の端部に位置する画素まで存在する前記元の階調曲線の部分を補間部分として、前記元の階調曲線の補間部分と前記調整後の階調曲線とを接合することにより、階調曲線の補間部分を補間する曲線補間工程と、
前記曲線調整工程で調整され、前記曲線補間工程で補間された前記階調曲線を用いて、前記入力画素値に対して階調処理を施して前記出力画素値を並べて階調処理後の最終的な放射線画像を出力する階調処理工程と
を備え、
これらの工程での処理をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−3762(P2013−3762A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133074(P2011−133074)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】