説明

画像処理装置およびセンサーユニットの配置構造

【課題】 超音波センサーを利用しつつ、重送検出機能を従来に比較して向上させる。
【解決手段】 シート3を搬送する搬送路5と、搬送路5へ複数のシート3が重送されることを検出するためのセンサーユニット20とを備え、搬送路5には、シート3が起立した状態で搬送されるようにするとともに、センサーユニット20を、搬送路5を挟んで対向配置した超音波発振素子21および超音波受信素子22を備えた構成とした。さらに、超音波発振素子21および超音波受信素子22を、シート搬送方向に直交する仮想軸26上に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小切手等のシートに印刷やスキャンによる画像読み取りなどの画像処理を行うための画像処理装置に係り、特にこうした画像処理装置においてシートの二重送りを検出するためのセンサーユニットの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像処理装置において、複数枚のシートが重なって搬送される二重送り(重送)を防止するために、超音波センサーを用いて重送検出を行う技術が知られている(特許文献1、特許文献2)。これらの文献に記載された技術では、超音波センサーの発振素子と受信素子をシートの搬送路を挟んで対向した位置に配置しておき、発振素子から発振した超音波を受信素子によって受信し、受信素子の出力を所定の閾値と比較することにより、重送の検出判定を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4259238号
【特許文献2】特開2005−162424号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に超音波センサーは、構造上、紙粉等の塵埃がセンサーの受信面に付着した場合、検出すべき超音波エネルギーが減衰し、検出結果に大きく影響する。したがって、こうした塵埃の影響を最小限とすることにより、検出精度を向上させるような技術が望まれていた。
【0005】
本発明は、こうした事情に鑑みてなされたものであり、超音波センサーを利用しつつ、重送検出機能を従来に比較して向上させた画像処理装置およびセンサーユニットの配置構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は、以下のような適用例として実現することができる。
【0007】
(適用例1) 所定方向にシートを搬送する搬送路と、該搬送路に複数のシートが重なって搬送されることを検出するためのセンサーユニットとを備え、前記搬送路には、前記シートが起立した状態で搬送され、前記センサーユニットは、前記搬送路を挟んで対向配置された超音波発振素子および超音波受信素子を備え、前記超音波発振素子および前記超音波受信素子は、前記所定方向に直交する同一軸上に配置されていることを特徴とする画像処理装置。
このようにシートを起立させて搬送するようにしたため、シートから発生する紙粉等を下方に落下させることができる。さらに、この場合に、センサーユニットがシート搬送方向と直交する方向に延在する同一の軸上に配置されていることから、シートがセンサーユニットに面した位置を通過する時間を最小とすることができ、落下した紙粉等の影響を最小限とすることができる。
【0008】
(適用例2) 適用例1の画像処理装置であって、前記超音波受信素子は、前記超音波発振素子よりも上方に配置されている。
これにより、超音波エネルギーの減衰の影響を受けやすい超音波受信素子への紙粉等の影響をさらに減ずることができる。
【0009】
(適用例3) 適用例1または2の画像処理装置であって、前記超音波受信素子は、超音波を受信するための受信面を備え、前記受信面は斜め下方に面して配置されている。
このような構成とすることにより、受信面に付着した塵埃を重力により落下させることが可能となる。
【0010】
(適用例4) 適用例1から3のいずれか一つの画像処理装置であって、前記超音波受信素子は、前記搬送路からの距離が前記超音波発振素子と前記搬送路との間の距離に比較して小となる位置に設けられている。
このような構成により、超音波受信素子に対する紙粉等の影響をさらに減ずることが可能となる。
【0011】
(適用例5) 適用例1から4のいずれか一つの画像処理装置であって、前記超音波受信素子は、前記搬送路において搬送される前記シートの上部に対応する高さ位置に配置されている。
このような構成により、超音波受信素子に対する紙粉等の影響をさらに減ずることが可能となる。
【0012】
(適用例6) 搬送路に沿って起立した状態で搬送されるシートに対して所定の画像処理を行う装置に設けられて、前記シートの重送を検出するためのセンサーユニットの配置構造であって、前記シートの通過部を挟んで対向配置された超音波発振素子と、超音波受信素子とを備え、前記超音波発振素子および前記超音波受信素子は、前記搬送路に沿った方向から見た場合に前記通過部を通過するシートの上半分に対応する高さ位置に設けられている。
このようにシートを起立させた状態で、超音波センサーをシートの上部に対応する位置に配置したために紙粉等の塵埃の影響を最小限とすることができる。
【0013】
(適用例7) 適用例6のセンサーユニットの配置構造であって、前記超音波発振素子および前記超音波受信素子は、上方から見た場合に、前記通過部を通過するシートと直交するように配置され、前記搬送路に沿った方向から見た場合に前記通過部を通過するシートと斜めに交差するように配置されている。
このような構成としたことにより、超音波センサーをシートに対して斜めに配置して、シートからの超音波反射の影響を低減しつつ、シート搬送時にシートが超音波センサー部分を通過する時間を最小限とすることができる。
【0014】
(適用例8) 適用例7のセンサーユニットの配置構造であって、前記超音波受信素子は、前記超音波発振素子よりも上方に配置されている。
このような構成により、超音波受信素子への塵埃の影響を最小限とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る小切手処理装置を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示した小切手処理装置の内部の外観斜視図である。
【図3】図2に示したシート給送構造の斜視図である。
【図4】図3に示したシート給送構造のうち、センサーユニットに係る部分の拡大立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る小切手処理装置(画像処理装置)1の外観斜視図である。小切手処理装置1は、装置本体2に対して、小切手等のシート3を起立した状態で積層収容するホッパ(シート収容部)4が設けられるとともに、ホッパ4から送出されたシート3を起立した状態で搬送する搬送路5と、搬送路5に沿って搬送されるシート3に対して画像印刷、データの読み取り、あるいはスキャニング等を行う処理部6と、処理部6における処理が終了し、搬送路5を通じて排出されたシート3等を搬送路5から受けるための排出部7とを備えた構成となっている。
【0017】
図2は、小切手処理装置1の内部の構成を示す斜視図である。図2に示すように、ホッパ4が設けられた部分の周囲は、シート3を搬送路5に送り出すためのシート給送構造10として形成されている。
【0018】
図3は、シート給送構造10の詳細斜視図である。図中に示すように、シート給送構造10は、取付け台12と、取付け台12上に設けられ搬送路5に対してシート3を供給するシート供給部13と、取付け台12上に設けられて搬送路5へのシート3の重送を検出する重送検出部14とを備えた構成となっている。
【0019】
シート供給部13は、取付け台12上に設けられたホッパ4と、ホッパ4に起立状態で積層収容されたシート3を分離するためのピックアップローラー16と、ピックアップローラー16により分離されたシート3を搬送路5に搬送するための搬送ローラー17とを備えている。さらに取付け台12の下方には、モータ(駆動部)18が取り付けられている。モータ18は、ピックアップローラー16や搬送ローラー17と図示しないギアにより接続され、これらが回動する際の駆動源となる。
【0020】
また、重送検出部14は、シート3が搬送路5へ重送されることを検出するためのセンサーユニット20を有している。センサーユニット20は、超音波発振素子21と、超音波受信素子22と、超音波受信素子18からの出力信号を処理するための回路部24とを備えた構成となっている。
【0021】
図4は、図3におけるIV−IV矢視断面図であり、重送検出部14の構成を示す立断面図である。図中に示すように、センサーユニット20においては、シート3の通過部である搬送路5を挟んで、超音波発振素子21および超音波受信素子22が対向配置されている。超音波発振素子21および超音波受信素子22は、シート3の搬送方向(すなわち紙面と直交する方向)に直交する仮想軸26上に同軸に配置された構成となっている。
【0022】
超音波受信素子22は、超音波発振素子21よりも上方に配置されており、超音波を受信するための受信面22aが斜め下方に面するように位置させて設けられている。また、超音波受信素子22は、搬送路5からの距離L1が超音波発振素子21と搬送路5との間の距離L2に比較して小さくなるような位置に配置されている。これは、超音波受信素子22では減衰した超音波を受信することになるため、超音波を減衰させるシート3によりなるべく近い位置に配置した方が超音波検出の精度の観点から望ましいからである。
また、センサーユニット20は、その全体が、搬送路5を通過するシート3の半分より上の高さ位置に対応する位置(図中符号Hで示す範囲)に配置されており、特に、超音波受信素子22は、シート3の上部3aに対応する高さ位置に配置されている。
【0023】
このような構成としたために、センサーユニット20は、超音波発振素子21および超音波受信素子22が、上方から見た場合に、搬送路5を通過するシート3と直交するように配置され(図3参照)、また搬送路5に沿った方向から見た場合に搬送路5を通過するシート3と斜めに交差するように配置されている(図4参照)。このようにセンサーユニット20をシート3に対して傾斜させて取り付けることにより、超音波発振素子21から発振された超音波がシート3に反射して、再び超音波発振素子21に戻り、超音波発振素子21の振動に影響を与える現象、すなわち、超音波の多重反射の影響を低減することができる。
【0024】
上述の小切手処理装置1においては、搬送路5に、シート3が起立した状態で搬送され、搬送路5を挟んで対向配置された超音波発振素子21および超音波受信素子22が、搬送路5におけるシート3の搬送方向と直交する仮想軸26上に配置されている。このようにシート3を起立させて搬送するようにしたため、シート3から発生するの紙粉等を下方に落下させることができる。さらに、この場合に、センサーユニット20がシート3の搬送方向と直交する方向に配置されていることから、シート3の搬送時にシート3がセンサーユニット20に面した位置を通過する時間を最小とすることができ、落下した紙粉等の影響を最小限とすることができる。以上により、紙粉等の塵埃の影響を低減させて、重送の検出精度の向上を図ることが可能となる。
【0025】
この場合、超音波受信素子22を、超音波発振素子21よりも上方に配置したために、超音波エネルギーの減衰の影響を受けやすい超音波受信素子21への紙粉等の影響をさらに低減させて、検出精度の向上を図ることが可能である。
【0026】
さらに、超音波受信素子22において超音波を受信するための受信面22aが斜め下方に面して配置されていることから、受信面22aに付着した塵埃を重力により落下させることが可能であり、塵埃の影響を受けにくくすることができる。また、特殊な清掃手段等を使用してセンサー部の清掃を行う必要がなく、メンテナンス性がよい。
【0027】
また、上記のような構成とされた小切手処理装置1においては、超音波受信素子22は、搬送路5からの距離L1が超音波発振素子21と搬送路5との間の距離L2に比較して小となる位置に設けられている。このような構成としても、上記構成により、超音波受信素子22が紙粉等の影響をうけにくく、また、超音波受信素子22をシート3に近接させることにより、感度の良い超音波の検出が可能である。
【0028】
また、超音波受信素子22が、搬送路5において搬送されるシート3の上部3aに対応する高さ位置に配置されていることから、シート3の搬送に伴い紙粉が発生しても、紙粉が落下して超音波受信素子22に影響を及ぼす可能性を低減できる。これにより、塵埃の影響をさらに減ずることが可能となる。
【0029】
さらに、センサーユニット20が、搬送路5を通過するシート3の略上半分に対応する高さ位置に設けられていることから、センサーユニット20全体への紙粉等の塵埃の影響を最小限とすることができ、安定した重送検出性能が発揮できる。また、特殊な清掃手段が必要ないため、メンテナンス性がよい。
【0030】
また、超音波発振素子21および超音波受信素子22が、上方から見た場合に、搬送路5を通過するシートと直交するように配置され、搬送路5に沿った方向から見た場合にシート3と斜めに交差するように配置されていることから、シート3による超音波の多重反射の影響で誤検出が発生する可能性を低減しつつ、シート3の搬送時にシート3が超音波センサー部分を通過する時間を最小限とすることができる。したがって、センサーユニット20の最適な配置を実現することができる。
【0031】
以上において本発明の一実施の形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、他の構成を採用することができる。
例えば、上記実施の形態では、超音波受信素子22から搬送路5への距離L1が超音波発振素子21から搬送路5への距離L2より小さい構成とされていたが、これに代えて、超音波受信素子22から搬送路5への距離L1を超音波発振素子21から搬送路5への距離L2より大きくしてもよい。これにより超音波受信素子22への紙粉等の影響をさらに低減することができる。
【0032】
また、この他にも、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、他の構成を採用するようにしてもよく、また、これらの他の構成を適宜選択的に組み合わせてよいのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1…小切手処理装置(画像処理装置)、2…装置本体(本体部)、3…シート、3a…上部、5…搬送路、10…シート給送構造(重送検出ユニット)、14…重送検出部、20…センサーユニット、21…超音波発振素子、22…超音波受信素子、22a…受信面、26…仮想軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向にシートを搬送する搬送路と、該搬送路に複数のシートが重なって搬送されることを検出するためのセンサーユニットとを備え、
前記搬送路には、前記シートが起立した状態で搬送され、
前記センサーユニットは、前記搬送路を挟んで対向配置された超音波発振素子および超音波受信素子を備え、
前記超音波発振素子および前記超音波受信素子は、前記所定方向に直交する同一軸上に配置されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理装置であって、
前記超音波受信素子は、前記超音波発振素子よりも上方に配置されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像処理装置であって、
前記超音波受信素子は、超音波を受信するための受信面を備え、
前記受信面は斜め下方に面して配置されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像処理装置であって、
前記超音波受信素子は、前記搬送路からの距離が前記超音波発振素子と前記搬送路との間の距離に比較して小となる位置に設けられていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像処理装置であって、
前記超音波受信素子は、前記搬送路において搬送される前記シートの上部に対応する高さ位置に配置されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
搬送路に沿って起立した状態で搬送されるシートに対して所定の画像処理を行う装置に設けられて、前記シートの重送を検出するためのセンサーユニットの配置構造であって、
前記シートの通過部を挟んで対向配置された超音波発振素子と、超音波受信素子とを備え、
前記超音波発振素子および前記超音波受信素子は、前記搬送路に沿った方向から見た場合に前記通過部を通過するシートの上半分に対応する高さ位置に設けられていることを特徴とするセンサーユニットの配置構造。
【請求項7】
請求項6記載のセンサーユニットの配置構造であって、
前記超音波発振素子および前記超音波受信素子は、上方から見た場合に、前記通過部を通過するシートと直交するように配置され、前記搬送路に沿った方向から見た場合に前記通過部を通過するシートと斜めに交差するように配置されていることを特徴とするセンサーユニットの配置構造。
【請求項8】
請求項7記載のセンサーユニットの配置構造であって
前記超音波受信素子は、前記超音波発振素子よりも上方に配置されていることを特徴とするセンサーユニットの配置構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206854(P2012−206854A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75904(P2011−75904)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】